安倍首相が、2017年4月の消費税率10%への引き上げを先送りする場合の状況について、「世界経済の収縮」を条件に掲げ始めた。
これまでは「リーマン・ショックや大震災のような重大な事態」が起きない限り、予定通り実施する考えを強調してきた。与党内では「首相は軌道修正を図っている。再増税を見送る可能性が高まっているのではないか」(自民党中堅)との見方も出ている。
首相は最近の国会審議で、予定通り税率を引き上げる方針を明言する一方、「世界経済の大幅な収縮が実際に起きているかなど、専門的見地からの分析を踏まえ、その時の政治判断で決める」(24日の衆院財務金融委員会)などと強調している。
26日の衆院総務委員会でも、「株価、市場変動のみでなく、実体経済にどういう影響が出ているかも含め考えないといけない」と語った。年初から急激な円高、株安が進み、世界経済が不安定になる中、再増税を既定路線にしたくないとの思いが強まっているようだ。
周辺には「消費税を8%に引き上げたら景気が冷え込んだ。上げなければ、税収は今頃もっと増えていただろう」と、半ば悔やむように語っている。
【私の論評】消費税先送り以外にもこれだけある衆参同時選挙の根拠だが(゚д゚)!
上の記事に掲載されているように、消費税先送りの可能性がますます高まってきています。このブログでも過去に何度か、8%増税でも大失敗ということはっきりしたのに、10%増税などしてしまえば、安倍政権は崩壊するという趣旨のことを掲載してきました。
それを回避すためにも、安倍総理は10%増税見送りも公約として、衆参同時選挙に打って出るであろうことを掲載しました。
さて、それに関しては以下の【関連記事】のところに、それに関する記事を掲載しておきますので、それをご覧になってください。
しかし、それ以外にも今年は最初から予定の決まっている参院選挙の他にも、安倍総理は、衆院を解散して、衆参同時選挙に打って出る背景がいくつかあります。本日は、それについて掲載します。
また参議院では比例区も重要です。野党としては他の野党との違いを打ち出すことが重要です。みんな仲良く、というわけにはいきません。この状態で、衆議院の小選挙区での選挙協力は非常に困難です。一方で激しく争い、他方では選挙協力というのはなかなかできることではありません。
与党の自民党と公明党はそうした選挙協力はかなりスムーズにできるようになっています。野党は大変です。つまり衆参同時選挙は与党に圧倒的に有利になります。
第二に2016年5月26日、27日に開催予定の伊勢志摩サミットも考慮すべきです。このサミットのホストは安倍首相です。メディアでの露出度がかなり高くなり、内閣支持率もさらに上がる可能性が高いです。その勢いを保ったまま、6月半ばに衆議院解散、7月中旬か下旬に衆参同時選挙となると、またまた与党の大勝利となる可能性が高いです。
第二に2016年5月26日、27日に開催予定の伊勢志摩サミットも考慮すべきです。このサミットのホストは安倍首相です。メディアでの露出度がかなり高くなり、内閣支持率もさらに上がる可能性が高いです。その勢いを保ったまま、6月半ばに衆議院解散、7月中旬か下旬に衆参同時選挙となると、またまた与党の大勝利となる可能性が高いです。
その頃には安保関連法案の採決の影響はかなり小さくなっているでしょう。サミットにはアメリカが参加し、中国も韓国も参加しないのですから、安保関連法案もその時にはむしろ自民党に追い風になることでしょう。
伊勢志摩サミットのポスター |
第三に、第46回衆議院選挙は2012年12月16日に行われ、第47回衆議院選挙は2014年12月14日に行われています。その間は僅かに2年でした。
2016年7月に次の衆議院選挙が行われるなら、1年半くらいの間しかありません。46回選挙でも47回選挙でも自民党は圧勝しています。ということは、自民党の議員はほとんどの選挙区に現職としているのですが、野党議員は非常に少ないということです。
選挙期間が短くなると、各選挙区に候補者さえ擁立できない状態に陥ることになります。民主党は野党の最大政党として候補者をたてたいところですが、これほど時間に余裕がないというのであれば、なかなか実行できません。不戦敗に近い選挙区が多く生まれるの可能性が高いです。
台47回衆議院議員選挙後の議席数 |
以上の4点から、衆参同時選挙は多いにありそうな状況です。
衆参両院で計150人規模となります。両党は新たな党名や綱領の検討に着手する一方、夏の参院選に向けて他の野党にも合流を呼びかけ、野党勢力の結集を図ろうとしています。
さて、以上4つの背景から、衆参同時選挙は多いにありそうなのですが、私はこの中で、安倍総理を衆参同時選挙に踏み切らせる背景として最も大きいのは何かと問われれば、やはり増税見送りのためということだと思います。
8%増税の大失敗は、日を追うごとに明らかになっています。ブログ冒頭の記事にもあったように安倍総理は、「消費税を8%に引き上げたら景気が冷え込んだ。上げなければ、税収は今頃もっと増えていただろう」と考えています。
ただし、アベノミクスが始まってから、税収が減ったということは全くありません。それは以下のグラフでも明らかです。
アベノミクスが始まって以来税収は増え続けています。しかし、なぜか26年6月あたりからは、上のグラフをみてもわかるように、対民間支出が減って、結果として増税+支出減の緊縮財政を行っています。これでは、景気が良くなるはずがありません。
これは、おそらく財務省による緊縮財政路線のためこのようなことになっているものと思います。安倍総理としては、10%増税阻止と、財務省のさらなる緊縮路線を打破するためにも、腹の中では衆参同時選挙も予定にあがっているものと思います。ただし、どのタイミングにするのか、機会をうかがっているということだと思います。
それにしても、民主党は最近は増税に反対のようですが、民主党のロジックでは、議員定数大幅削減がなければ消費増税しないというものです。自民党は、菅官房長官の発言にみられるように、税収が下がるくらいなら消費増税しないというものです。
では、民主党の主張通りに、衆院議員の定数を10減らして、軽減税率を適用せずに全品目10%の消費税にしたとしたらどうなるというのでしょうか。
まずは、単純に議員定数を減らすのでは、憲法上の急務である一票の格差を是正するのはむしろ難しくなります。
そうして、軽減税率を適用せずに全品10%の消費税にしたとしたら、以下のグラフをご覧いただいてもおわかりのように、低所得層のほうが負担率が高くなるという逆進性がさらに高くなります。民主党は、このようなことは全く考慮に入れないのでしょうか。
そうして、10%増税をしてしまえば、ブログ冒頭の記事で菅官房長官が語るように、税収は下がることが十分見込まれます。同じ増税反対にしても、自民党ののほうが経済ロジックとしてまともです。
このような最初から崩れたロジックしか展開できない、民主党であれば、いくら維新の党と合流して、党名を変えたにしても、次の選挙で勝利することはかなわないと思います。
こうした状況をみていると、ますます今年の夏には衆参両院同時選挙の可能性が高まったようです。
それに、同日選になれば、有権者の関心は高まり、投票率が上がることになります。固い組織票に頼る公明党にとっては、投票率が上昇すれば、その分、投票総数に占める公明党の比率が低くなります。それも同日選を避けたい大きな理由です。
同日選で憲法改正を正面から訴えれば、護憲勢力が強く反発し、有権者の関心が高まって投票率がさらに上昇、自民党には不利に働くという見方もあります。
過去3回の総選挙の投票率(選挙区)と自民党の勝敗を見てみましょう。
▽2009年=69%、自民党119議席で惨敗、民主党政権誕生要するに、自民党は低投票率の選挙で圧勝し、高投票率の時には敗れているのです。衆参同日選で憲法が争点となり、投票率が上がれば、自民党にとって有利とはいえない構図になります。ただし、2014年より、2012年のほうが投票率がわずかながら高いですが、それでも議席数は2014年よりは、2012年のほうが4議席多いです。この傾向は今後も続くのか、それを見極めるのは困難です。
▽2012年=59%、自民党294議席で圧勝、安倍政権誕生
▽2014年=53%、自民党290議席で再び圧勝、安倍政権存続
町村信孝前衆院議長の死去に伴うこの補欠選挙には、自民党から町村氏の娘婿新人和田義明氏(44)が立候補する予定です。野党からは民主党系の女性候補が出馬し、共産党も支援する構えです。与野党一騎打ちの選挙で自民党が大勝利ということになれば、解散機運は一気に高まることになるでしょう。
和田義明氏 |
加えて、解散の判断を大きく左右するのは春先の経済情勢です。アベノミクスは、一本目の矢の金融緩和が効果を発揮したものの、二本目の財政出動に関しては、財政出動どころか、増税して緊縮財政を行い、さらに上のグラフでも示したように、26年6月あたりから、実質的に緊縮財政に入っています。
この状況を打開するためには、選挙の前に補正予算を組んで、大々的な経済対策を実行することが肝要です。できれば、最低でも10兆円規模の補正予算を組んで、経済対策を実施することです。
2016年春先になっても、8%増税の悪影響でマイナス成長が続き国民にとって景気回復の実感が薄ければ、安倍首相が衆院解散に踏み切れるような環境にはなりません。しかし、かといって、今の状況を放置しておき、17年度4月からの増税を実行すれば、日本経済はとんでもない状況陥り、失われた20年の再来となる可能性は十分あります。
2016年春先になっても、8%増税の悪影響でマイナス成長が続き国民にとって景気回復の実感が薄ければ、安倍首相が衆院解散に踏み切れるような環境にはなりません。しかし、かといって、今の状況を放置しておき、17年度4月からの増税を実行すれば、日本経済はとんでもない状況陥り、失われた20年の再来となる可能性は十分あります。
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