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2015年11月30日月曜日

「衆参ダブル選」はもはや“前提”状況 自民幹部の相次ぐ発言…支持率も追い風 ―【私の論評】自民党は、衆参同時選挙の公約に、是が非でも10%増税の見送りを加えよ、でなければ地獄をみることになる(゚д゚)!


五郎丸ポーズで集中力を高める?安倍首相=29日、東京都内のホテル

来年夏の「衆参ダブル選」が現実味を帯びてきた。自民党幹部がダブル選の可能性にいち早く言及し、谷垣禎一幹事長も否定しなかったからだ。実際、「ダブル選を想定した」といわれる国会日程が固まるなど、環境は着々と整いつつあるようにも見える。まもなく年末だが、選挙に向かって走り出す政治家も出てきそうだ。

「いろいろな可能性は、そりゃありますよ」

谷垣氏は29日、自民党立党60年記念式典終了後、記者団からダブル選の可能性について聞かれ、否定しなかった。

実は、谷垣発言には前触れがあった。佐藤勉国対委員長が28日、秋田県大仙市で「(選挙活動を)甘くみないで。来年ダブル選があるかもしれない」と1日早く言及していたのだ。幹部の相次ぐ発言が「ダブル選現実論」に拍車をかけているのは間違いない。

政府・与党が、来年1月4日に通常国会を召集する方針を固めたこともダブル選の根拠となっている。

通常国会は法律で150日間と定められている。会期延長しなければ会期末は6月1日となり、この日に衆院を解散すれば「7月10日投開票」で参院選との同日選が可能になるのだ。1月5日以降の招集では日程が合わず、ダブル選は成立しない。国会日程をみれば、ダブル選はもはや“前提”といえる状況だ。

22日投開票の「大阪ダブル選」で大阪維新が2勝し、橋下徹大阪市長の求心力が回復したことも大きい。安倍晋三首相は憲法改正で意気投合する橋下氏に期待しており、ダブル選を仕掛けて橋下氏を国政に引っ張り出そう-という思惑も見え隠れする。

内閣支持率も追い風となりそうだ。日本経済新聞とテレビ東京が27~29日に実施した世論調査で、内閣支持率は49%となり、10月下旬の前回調査から8ポイントも上昇した。共同通信が28、29日に実施した世論調査でも、内閣支持率は48・3%と前回調査より3・5ポイント増で回復傾向は顕著だ。

安倍政権は2017年4月に消費税10%への増税を控えている。衆院解散が増税の直前や直後のタイミングとなると、与党に不利なのは明らかだ。その前に解散を打つタイミングを探るのは当然で、政権を取り巻くあらゆる状況が「ダブル選現実論」を後押ししている。

【私の論評】自民党は、衆参同時選挙の公約に、是が非でも10%増税の見送りを加えよ、でなければ地獄をみることになる(゚д゚)!

確かに安倍内閣の支持率は、あがっています。これはすでに政権成立から2年近くたっていて、過去の内閣と比較すると、かなりの支持率の高さであると思います。さらに、最近では最も人気がないと思われた安保法制の成立を実施したことを考えると、破格の支持率の高さです。


時事通信が6~9日に実施した11月の世論調査によると、安倍内閣の支持率は前月比0・7ポイント増の40.5%で、4カ月ぶりに4割台に回復しました。不支持率は同1.6ポイント減の36.1%。

内閣支持率は8月以降、安全保障関連法に対する批判などが響いて4割を切っていました。安倍晋三首相が今月初めに日韓、日中韓首脳会談を約3年半ぶりに行い、近隣国との関係改善に努めたことなどが

支持率回復につながったとみられます。

安倍内閣が重要政策に掲げる「1億総活躍社会」について聞いたところ、「支持する」は38.0%、「支持しない」は37.5%で、賛否がほぼ拮抗(きっこう)した。

環太平洋連携協定(TPP)が日本経済にどのような影響を与えるかについて、「良い影響」とみる人は20.9%、「悪い影響」は15.8%でした。輸出入それぞれに複雑な利害が絡むため、「どちらとも言えない」が55.3%に上りました。

内閣を支持する理由(複数回答)は、「他に適当な人がいない」が17.1%と最も多く、「リーダーシップがある」12.8%、「首相を信頼する」9.7%と続いた。支持しない理由(同)は、「期待が持てない」17.5%、「首相を信頼できない」15.7%、「政策が駄目」15.6%の順でした。

これだと、確かに自民党にとって、来年の衆参同時w選挙の条件が整ってきたといえると思います。

それしても、w選挙が規定状況になりつつあるとは、頼もしいかぎりです。何度も続いた悪夢のような、短期政権はもうなくなるかもしれません。ただし、そのためには、一つ条件があると思います。

それについては、以前のこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
GDP600兆円実現に必要な消費再増税の見送りと日銀法改正 ―【私の論評】10%増税で、GDP600兆円どころか、安倍政権崩壊は免れない(゚д゚)!
 
記者会見で新しい「三本の矢」を表明した
安倍晋三首相=9月24日、東京・永田町の自民党本部

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に消費税増税の見送りと、日銀法改正が必要であることに関する部分のみコピペします。
自民党総裁に再選された安倍晋三首相が記者会見で、経済に注力するとして、「新3本の矢」が披露された。(1)希望を生み出す強い経済(2)夢を紡ぐ子育て支援(3)安心につながる社会保障-という3項目だ。 
これらの3項目のロジカルな関係をいえば、1番目の「強い経済」がすべてだ。これがうまくできれば、2番目の「子育て支援」と3番目の「社会保障」もうまく進むはずだ。 
こうした中期の経済成長の場合、達成手段は金融政策と財政政策になる。新聞では「旧3本の矢」とかいわれているが、今も有効なはずだ。甘利氏は、2%の物価目標は変わっていないとしている。 
甘利氏は「東京五輪後に達成可能」としているが、これから名目3%成長が続けば、21年度には名目GDPが600兆円に達するという意味である。名目3%は今の政府が掲げている中期目標である。

しかし、政府が掲げる名目3%目標の内訳は、実質2%、インフレ率1%になっていて、インフレ目標2%と矛盾している。さらに、17年4月から消費増税しても成長率への影響は軽微だというのが前提になっている。 
この前提は既に誤りであることがわかっているのに、政府の中期財政試算でも修正されていない。このため、甘利氏がいう東京五輪後に達成可能というのも実は怪しい。 
インフレ目標2%なら名目4%になるはずで、そうであれば東京五輪前年の19年度でほぼ600兆円になる。17年4月からの10%への消費再増税をやらなければ、これはかなり可能性の大きい数字である。 
いまだにデフレ脱却がおぼつかないので、この際、日銀法改正をしたうえでインフレ目標を3%に引き上げるのもアリだ。そうなれば、18年度にほぼ600兆円が実現可能だ。安倍総裁の任期は18年9月までであり、常識的には自分の任期内での目標のはずだ。それを達成するためには、17年の消費再増税の見送りと日銀法改正によるインフレ目標3%が必要となる。
いずれにしても、もし10%増税を平成17年度に、予定通り実行してしまえば、たとえ来年衆参w選挙で自民党が大勝したとしても、GDP600兆円はおろか、平成18年度の政権が安倍政権であろうが、誰の政権であろうが、経済が破滅的な状況になり、政権が崩壊するのは必至とみるべきでしょう。

14年度からの8%増税は大失敗であり、すでに日本経済はリセッション入しているとみるべきことは、先日もこのブロクに掲載したばかりです。17年度の10%は絶対に見送るべきです。

さて、このブログでは、増税など全く必要のないことを繰り返し述べてきました。また、同じように文書で長々と掲載するのは、私自身も疲れますし、ブログの読者の方もそうだと思いますので、以下に最近見た動画を掲載します。



これをご覧いただくと、そそも日本は財政危機にあるわけでもなく、ましてや増税する必要性も全くないことがおわかりになると思います。

このような状況にある日本がわざわざ、8%増税で大失敗したにもかかわらず、再度10%増税すれば、確実に経済がかなり停滞して、とんでもないことになり、自民党政権は崩壊します。それこそ、地獄をみることになります。

安倍総理には是が非でも、衆参両院同時選挙の公約として、しっかりと10%見送りを取り入れるべきです。それも、前回のように、17年4月まで10%増税を見送るなどとするのではなく、数値などで明確に、物価、雇用や、GDPなどの目標を数値化して、その目標が達成できない限り増税を見送るようにすべきです。

それを公約とすれば、さらに自民党は盤石の体制を築くことができるでしょう。PKO法案後の選挙のとき社会党が崩壊して消えたように、安保法案を「戦争法案」などとして、レッテル貼りをした、野党はことごとく自民党に蹴散らされることになります。

しかし、10%増税を予定通りに、実施してしまえば、せっかく選挙に大勝利しても、政権は崩壊し、その後はとんでもないことになり、自民党が再度下野することになります。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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日本経済はリセッション入り?中国「わが国経済の減速を喜べない日本」―【私の論評】主要な原因は8%増税によるGDPギャップの放置!中国向け輸出減少は軽微(゚д゚)!



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2015年3月31日火曜日

安保法制は「戦争法案」ではない 中国の脅威を無視する人たちの“ありえない”前提―【私の論評】大東亜戦争無謀論は虚妄であることを理解して、安全保障の問題を真剣に考えるべき(゚д゚)!

安保法制は「戦争法案」ではない 中国の脅威を無視する人たちの“ありえない”前提

自民、公明両党は18日、新たな安全保障法制に関する与党協議会を開き、
座長の高村正彦自民党副総裁と座長代理の北側一雄公明党副代表が共同で
作成した法制骨格の最終案を提示した。以下図表、写真はブログ管理人挿入

自民・公明両党は安全保障法制の骨格について合意した。一部の野党は「戦争法案」と批判しているが、安保法制を整備すると本当に戦争に近づくのだろうか。

安保法制の骨格は、自衛隊の海外活動での3原則である

(1)国際法上の正当性
(2)国会の関与などの民主的統制
(3)自衛隊員の安全


以上の下で、自衛隊の活動について、

(1)武力攻撃に至らないグレーゾーン事態対応
(2)他国軍への後方支援
(3)国際的な平和活動
(4)集団的自衛権
(5)邦人救出

以上の5分野などで広げる。


こうした当たり前のことに懸念を持つ人は、一国平和主義者か、米軍が一方的に守ってくれるはず、という自国にだけ好都合で国際的にはありえない前提を持っているのだろう。

一国だけで平和が達成できるほどに強大な国家でなければ、集団的自衛権でまとまった方が安全であり、防衛コストは安くつく。しかも、その方が国家として安全になる。

戦後、日本の再軍備を過剰に心配した米国が、日本の軍事力を弱体化させるために一方的な防衛義務を甘受したのが、日米安全保障条約だ。ところが、冷戦構造の終わりとともに、米国が日本の防衛費負担に根を上げはじめた。日本も国際関係の中で、相応の負担を考えざるをえなくなった。

実は、米国は日本の他にも韓国、フィリピンと似たような相互安全保障条約を締結している。しかも、韓国もフィリピンも日本と似たような戦争否定の憲法を持っているが、いずれも集団的自衛権は議論の余地なく行使可能だ。日本だけが、再軍備への懸念で米国から特別扱いを受けてきただけなのだ。

それも、もうなくなろうとしている。国際情勢の変化を読めないで安保法制の整備に反対するのであるから、整備するよりも日本を危険にさらす危険性の方が大きいだろう。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

この記事は要約です。詳細はこちらから(゚д゚)!

【私の論評】大東亜戦争無謀論は虚妄であることを理解して、安全保障の問題を真剣に考えるべき(゚д゚)!

高橋洋一氏といえば、元大蔵官僚で、経済評論に関しては定評があります。しかし、高橋氏は他の事柄についても造詣が深い方です。さすがに、大蔵官僚、それもキャリア組ということになれば、エリートであることには間違いなく、安全保障などの面でも的確な論評をされています。

上記の論評も、特に付け加える必要もなく、理路整然としています。こうしたことに反対する人々に、次の言葉をおくりたいです。
いつまでもあると思うな親と金、無いと思うな運と災難』
無論アメリカは日本の親でも何でもありませんが、大東亜戦争終了後のアメリカは戦後体制の雄として、日本を軍事的に庇護してきたことは事実です。

いつまでも、アメリカに安全保障に関して、いままで同じように頼ることができると考えるのは間違いです。金に関しても、いまのところ日本は、デフレの悪影響があるだけで、それを克服さえすれば、何の心配もありません。しかし、その状況がいつまでも続くとは考えるべきではありません。

そもそも、安全保障に関しては、アメリカの都合によって、アメリカが一方的に日本の番犬になることを日本に対して強要してきたものです。その手口は、以下の動画をご覧いただければ、良くお分かりになるものと思います。


しかし、この動画でもまだ足りない部分があります。

大東亜戦争は、最初から無謀な戦いであるなどというアメリカの一方的な刷り込みが今の日本では大勢を占めています。

しかし、これそのものが大きな間違いです。大東亜戦争開始直前の日米の軍事力を比較すると、日本には約二倍の軍事力がありました。しかも、アメリカは太平洋と、ヨーロッパにも軍隊を派遣しなければならず、太平洋方面では日本の四分の一と見ても良いくらいのものでした。

ソ連の脅威もあるにはあったのですが、1990年代にソ連が崩壊した後に公開された文書によれば、実はあのノモンハン事件も日本が圧倒的に勝利をおさめていたことが今ではわかっています。

日本は、日露戦争と同じように、対米戦でも、勝利を収める可能性は十分にありました。無論、勝つとはいっても、日本が米国本土にまで進出するという意味ではなく、日露戦争と同じように、有利な条件で講和をして、勝利するということは十分にあり得たことでした。というより、大東亜戦争直前当時の関東軍や、聯合艦隊など、世界最強であり、米国もソ連もうっかり手を出せるような相手ではありませんでした。

無論これは、戦争末期に向けて、物量にまさるアメリカにより、挽回されていくのですが、それにしても、日本は失うものがあまりに大きく、それが彼我の差につながっていったというのが現実でした。

そうして、なぜ失うものが大きくなっていったかといえば、様々な問題がありますが、大まかにいうと、海軍の作戦や、軍隊の運用にあまりに問題がありすぎました。

ここでは、本題ではないので、簡単にまとめますが、絶対国防圏は戦況が悪化してから作成されたものですが、最初からこの範囲以内を上限として進めれば良かったものをはるかにこれを超えて、戦線を拡大したり、戦線内の全部の島に守備隊を配備するなど、愚劣な作戦が本来勝てるはずであった戦いを敗北に導いたのです。このことについては、いずれこのブログでも詳細を掲載しようと思います。

藍色の点線が絶対国防圏だった クリックすると拡大します

そうして、最も愚劣だったのは、海軍であり、その中でも米内光政と、山本五十六の愚将ぶりが、日本の敗戦を色濃く導いてしまいました。

日本が勝利したかもしれないということは、米国側としては何としても隠したいところです。だからこそ、WGIPでもともと、物量が豊富な米国には日本は到底及びもつなく、最初から勝ち目が全くない戦に敗北したという観念を日本人に植えつけたのです。

大東亜戦争無謀論を簡単に信じこむような理解力では、とても日本の安全保障を論ずることはできません。実際、今までの日本では、妄想に支配されてきました。妄想を信じるような頭では、正しい判断などできるはずがありません。



話を現在に戻します。戦後の多くの日本人は、WGIPにすっかり洗脳され、国として最も重要な安全保証のことはすっかり忘れ去り、とにかく戦争そのものを完璧に忌避するという性向を持つに至りました。

無論、中国が建国以来繰り返し、これからも繰り返していくであろう、侵略戦争については確かにこれは、良いことではありません。絶対に避けるべきものです。しかし、戦争をしようとすればできる、あるいは振りかかる火の粉を払う程度のことまで、否定してしまうというのが、今の多くの日本人です。

そんな夢物語のようなことがいつまでも続くはずはありません。このような妄想は、大東亜戦争無謀論とともに、葬り去る必要があります。

そのときにはじめて、多くの日本人が、安全保障についてまともに考えることができると思います。そうして、それは多くの日本人が、歴史を虚心坦懐にふりかえれば、十分にできることだと思います。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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2014年6月20日金曜日

日本に残された「3つの選択肢」―【私の論評】ちょと待ってくれ、まずはデフレを解消しなければ何をやってもモグラ叩きになるのではないかい、そろそろデフレと低成長を所与のものと考えるのはやめようよ(゚д゚)!

日本に残された「3つの選択肢」



日本の出生率がいまと変わらず、平均寿命が5歳延びると仮定すると、私たちにとって、これから選べる選択肢は次の3つになると思います。これらは大まかな数字で試算しているので、1つの指針として考えてください。

社会保障を現状維持のままで、消費税を40%に引き上げる

社会保障を3割削減して、消費税を30%に引き上げる

退職年齢を75歳に引き上げて、消費税を20%に引き上げる

この3つの選択肢を並べた場合、国民を論理的に説得できるのは、どれだと思いますか。

国民全体を説得するのに、①の選択肢はあまりにも厳しすぎます。消費税を40%に引き上げると説明しただけで、国民は拒絶反応を起こすでしょう。②は①ほどではないにせよ、特に高齢者からの拒否反応が強く、国の財政が危機的状況にならない限り、実行するのは難しいでしょう。

ところが③なら、まだ国民を説得する余地があります。

国民皆年金ができたのは1961年ですが、当時の平均寿命は68歳にすぎませんでした。支給開始年齢が60歳だったので、平均寿命で見れば8年間の年金がもらえる計算になっていました。

財政状態が日本ほどは悪くない欧州の国々では、引退年齢を65歳から67歳、68歳に引き上げようとしています。欧州諸国よりも平均寿命が高く、今後も平均寿命が延びていく可能性が高いことを考えると、もともと日本の年金は欧州に比べて支給開始年齢が早すぎたのです。

欧州の年金制度は、持続性では日本よりまともでしたが、財政危機をきっかけに、年金の支給開始年齢が引き上げられることになりました。欧州よりも財政状態の悪い日本が、そうした歴史の教訓に学ばない理由はありません。

ここで、私たちは歴史に学ばないと、とんでもない苦難に遭ってしまうでしょう。財政と社会保障制度の抜本的な改革をする前に、日本が財政危機になってしまうと、国民の負担は私の想定よりも重くなることは間違いありません。それを避けるには、なんとしても10年以内に社会保障のあり方を見直し、年金支給開始年齢を大幅に引き上げることが自明の理なのです。

上の記事は要約です。詳細を知りたいかたはこちらから(゚д゚)!

【私の論評】ちょと待ってくれ、まずはデフレを解消しなければ何をやってもモグラ叩きになるのではないかい?そろそろデフレと低成長を所与のものと考えるのはやめようよ(゚д゚)!

上の記事について、エコノミストの村上尚己氏は以下にようにツイートしています。
この村上氏のツイート私も全くこのとおりだと思います。デフレと低成長を前提にものごとを考えていては、結局モグラたたきになるだけです。この記事で述べているように、デフレ・低成長を前提として、それは変わらぬ所与のものとして、実際に上にあげてある3つの選択肢の中からいずれを選んだとしても、結局様々な問題が発生して何の抜本的解決にはなりません。

デフレと低成長を放置すればどうなるか?

仮に、デフレと低成長を放置しおけば、結局上の3つの選択肢のどれを選択したとしても、長い年月がたてはたつほど、国民所得が増えるどころか、少なくなり、結局社会保障の原資である、税収も減ります。

物の値段が下がり続けるのがデフレ
税収が減ったからといって増税したとしても、結局さら税収が減るだけです。だからといって、また増税したとしてして、それを何回も繰り返せば、いずれ消費税を100%にしても、税収は増えなくなります。それでも、税収が減ったからといってさらに増税すれば、いずれ100%を超えます。

100%といえば、たとえば、米を100円で購入したとしたら、 消費税を含めて200円を支払わなければならないということになります。


そうなると、人々はどうすることでしょうか?多くの人は、米と自分の持っているものを交換するようになります。そうです。自給自足の経済に移行することになります。

もしかすると、野菜や小麦も自分で栽培し、魚なども自分で採るようになるかもしれません。そうして、お金は、自給自足では事足りない、希少なものを購入するときだけに遣うようになります。そうなれば、企業も製造業であれば、自社で製造したものと、他社の製造したものなどを物々交換するようになると思います。



そうして、給与はお金が少しで、あとは米や生活必需品などで支払らわれるようになるかもしれません。

小売業などは人々の物々交換する量が多くなれば、成り立たなくなり、昔のようなほんとうに小さな商店が復活することになると思います。そこでは、お金による取引は一部で、米やその他による物々交換が主流になると思います。

これは、社会システムの後退です。このようになれば、ますます税収は減ります。あるい税収そのものがなくなるかもしれません。そのときには、日本政府は事実上解体して、小さな自給自足の部落が経済主体となるかもしれません。日本という国は、皇室を頂点とした概念上の存在にしかすぎなくなり、自給自足の小部落が、人々の生活の場となります。

いずれ社会システムが崩壊する

ただし、あまり小さいと安全保障上の問題もでてくるので、昔のように独自の経済システム、防衛システムを持つ藩のような組織ができあがるかもしれません。藩をまとめ幕府のような存在ができあがるかもしれません。

いや、そうなる前に小さな自給自足の部落が主体となったときに、なにもかも弱体化して、中国に攻めこまれ、中国の属国ならまだいいですが、中国の一省となってしまうかもしれません。そうなれば、中国人が多く移り住み、日本人は排斥されるようになります。そうなれば、自ら国を滅ぼす馬鹿な日本人など、役に立たないわけですから、そうなります。

デフレと低成長を所与のものとして、これを放置してどこまで、財政を優先するとこのようなことになります。

まずは、デフレを解消せず増税一辺倒であれば、いきつく先は自給自足経済にならざるを得ません。しかし、デフレを解消すれば、黙っていても経済成長をするようになります。そりゃそうです。需要が増えてくるわけですから、そうなります。

そうなったときに、財政再建などを考えれば良いわけで、デフレを放置しておいては、財政再建もままならず、自給自足経済という社会システムの後退を招き、国民は極度の貧困状況に陥り、それこそ、アジアやアフリカの最貧国のような常態になり、いずれ内乱が勃発するか、中国などの攻めこまれ日本という国は消滅することになります。

歴史に学ぶなら中途半端ではなく古今東西の役に立つものを優先的に学べ

上の記事では、最後のほうで歴史に学べとしていますが、ここに提示されている歴史はあまりに偏りすぎています。

アメリカでは、ドラッカー氏が、年金支給開始の年月が引き上げらるべきだと主張してから、数年と経ずに本当にそうなりました。ヨーロッパの先進国もそれに追随しました。

しかし、当時のアメリカやヨーロッパの国々は、少なくともデフレではありませんでした。もし、その頃現在の日本のように長期にわたってデフレが続いていたとしたら、ドラッカー氏も年金の支給開始がどうのこうのと言う前に、まずはデフレを解消せよと言ったに違いありません。

今の日本が歴史から学ぶとすれば、上記のようなことではなく、古今東西のデフレを解消した事例や失敗事例です。

失敗事例として、近くは、イギリス、イタリア、スペイン、ボルトガルの事例です。これらのすべての国では、財政再建を目的として増税をして失敗し、結局税収が増えず、財政再建もままならず、苦しんでいます。

そうして、成功事例として、一番先に学ぶべきは、世界恐慌(日本では昭和恐慌)に陥ったときの日本の対処の仕方です。

それまで、世界恐慌の原因につき、陰謀説など様々な説が流布されていましたが、どれも決め手に欠けていいましたが、1990年台の研究により、その原因は深刻なデフレであったことがはっきりしています。

このデフレから当時の日本だけが、世界で一番先に脱却することができました。それは、高橋是清による、金融緩和政策と、積極財政です。デフレやデフレまでいかなくなくても、不況に陥ったときに実施すべきは、金融緩和と積極財政です。これは、マクロ経済の理論からも、過去の歴史からもはっきりしています。

このブログでは、過去に高橋是清による経済対策についても掲載したことがあります。以下のその記事のURLを掲載します。

高橋是清によるデフレ脱却事例
ポール・クルーグマンの新著『さっさと不況を終わらせろ』−【私の論評】まったくその通り!!
この記事では、日本のデフレ脱却成功事例として、江戸時代の「宝永の改鋳」と、高橋是清のデフレ克服策をあげました。

詳細はこの記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事の締めくくりの部分のみ掲載させていただきます。
現在でも、不況のときに、緊縮財政、金融引き締めをしては、かえって経済が悪くなるということです。不況のときには、財政などあまり気にせずに、積極財政と金融緩和策をしなければならないというのが当たり前の真ん中の常識です。ケインズなんぞまったく知らなかった、江戸幕府や、高橋是清も、この常識に従って成功しているのです。現在の不況は、この常識に従わなかったことが大きな要因の一つです。非常識派は、過去の歴史を振り返ったり、現在の出来事を直視せず、ただただ、自分の頭の中でつくりだした、非常識な常識を唯一正しいものとして、押し付けているだけてあり、思い上がりも甚だしいです。
ブログ冒頭の記事も、デフレ・低成長を所与として、ものごとを考えているという点で全く非常識であると言わざるをません。

高橋是清

政治家の中にもこの非常識を信じて疑わないものが多いです。だから、このブログでも以前から、与野党を政治家の白痴化ということを指摘させていただいているのです。

デフレを放置してそれを前提として物事を考えても、全く意味がありません。上で示したように、いつまでも放置しておけば、社会システムの後退を招くばかりです。

現在日本で大きな問題が10あったとして、デフレを解消すれば、5つから6つくらいの大問題は、他に何をしなくてもそれだけで自動的に解消します。4つから、5つの問題はそれでも解消しないかもしれません。しかし、解決の糸口くらいは期待できるようになります。しかし、デフレを解消しなけば、10の問題すべてが解消できません。

何かをやれば、何かがだめになるというモグラたたきをするだけになります。

はやく、多くの政治家が、白痴常態から目覚めるか、白痴のままであり続けるならやめるべきと思います。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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