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2016年10月22日土曜日

トランプ氏の支持率上昇、クリントン氏に4ポイント差まで迫る―【私の論評】驚天動地の急上昇の背景には何があるのか、日本はどう対処すべきか(゚д゚)!


10月21日、ロイター/イプソスが発表した米大統領選に向けた支持率調査によると、共和党候補の
ドナルド・トランプ氏の支持率が上昇した。写真は同日、ノースカロライナ州で演説するトランプ氏
ロイター/イプソスが21日発表した米大統領選に向けた支持率調査によると、共和党候補のドナルド・トランプ氏の支持率が上昇。トランプ氏による女性へのセクハラ疑惑などが取り沙汰されているにも関わらず、民主党候補ヒラリー・クリントン氏との差を縮めた。

調査は14─20日、全米50州で有権者1640人を対象にオンラインで実施。クリントン氏の支持率は44%、トランプ氏は40%となった。7─13日に実施された調査ではクリントン氏が8ポイントの差をつけていたが、そのリードは半分に縮まった。

また、今回の調査からは、トランプ氏が過去に女性に対するわいせつ行為を働いたと考えているとの回答が63%に達したこともわかった。

【私の論評】驚天動地の急上昇の背景には何があるのか、日本はどう対処すべきか(゚д゚)!

この驚天動地の急上昇の背景には何があるかといえば、大きく言って2つの事柄があると考えられます。

まず一つ目は、ヒラリー候補が大統領になった場合、おそらく現オバマ大統領の政策が継承され、あまり変わりがないことが予想されるということです。

アメリカではオバマ大統領の評判は地に堕ちています。日本で例えると、それこそオバマ大統領にルーピーと呼ばれた、鳩山元首相よりもまだ酷いというような感覚です。

ここで、オバマの失政を振り返っておきます。

2011年12月にオバマ大統領は、イラクから米軍を撤退させましたが、その時期があまりに早すぎました。この判断によって、中東はさらに混乱することになりました。そもそも、イラクからの撤退はオバマにとっては2008年大統領選挙戦略の切り札の一つでした。同年の大統領選では、「イラク戦争反対を表明していた唯一の有力候補」として、自己PRに全面的に使い、厭戦気分が高まっていたアメリカ国民の心を捕らえました。

 2012年アフガニスタンに向かう米軍兵士たち
大統領就任後、オバマは、アルカイダとの戦いの「主戦場」と位置づけるアフガニスタンに米軍をシフトさせるという大きな方針を掲げます。同時にイラクの都市部から戦闘部隊を撤収、郊外の基地に再配置するとともに、「2010年8月末までにイラク駐留の主力部隊の撤退を開始し、2011年末までにイラクから完全撤退する」という出口政策のシナリオを打ちたてます。

実際、このシナリオ通りにイラクからの撤退が進んでいきました。2011年末というイラク撤退日程は、12年選挙でのオバマ自身再選を後押しする “手柄”の一つにしようという狙いもありました。

さらに、2014年5月には、「アルカイダは相当部分掃討した」として、アフガニスタンからの米軍撤退期限も2016年末に設定することを発表しました。このアフガン撤退の2016年末という日程は、オバマ政権の8年間のフィナーレの時期です。「イラク・アフガン戦争の完全終結」は、オバマ政権の華々しい最大の遺産(レガシー)がとなるはずでした。しかし、イラク早期撤退の代償として、ISISが台頭するという事態を招いてしまいました。

ISISはシーア派色の強いマリキ政権に反発するスンニ派の住民も味方につけ、勢力を拡大させてきました。イラク情勢がさらに不安定化すれば、米軍の再び軍事介入する可能性も高まります。

アフガン撤退を遅らようとする意見も既に次第に大きくなっています。オバマ政権の「イラク・アフガン戦争の完全終結」までのこれまでのシナリオは完全に崩壊しました。

拘束されたアメリカ人5人がイランによって開放されたことを伝えるCNNのニュース
さらに、核武装を目指すイランに弱腰な姿勢をとったことも、5人のアメリカ人がイラン当局に拘束されたことを受けて、16年1月に4億ドル(約408億円)の金を秘密裏に支払ったのも大失敗でした。

8月になってそれが明らかになったときは、多くのアメリカ人が憤激したはずです。これによってオバマはアメリカ人を人質にすれば多額の身代金を得られるという、悪しき前例を作ってしまったようなものです。共和党は、4億ドルの金がシリアのアサド政権に流れる恐れもあると批判していましたが、本当にその通りかもしれません。

移民制度改革を発表したオバマ大統領
そうして、さらに酷いのはオバマ大統領が不法移民に対して寛容な措置をとったことです。確かにアメリカは「移民の国」です。アメリカの「建国の理念」に賛同する移民たちが、アメリカに活力を与え、発展させてきたというのは事実です。しかし、アメリカは断じて「不法移民の国」ではありません。

にもかかわらず、オバマ大統領はアメリカ国内に1100万人いるとされる不法移民の強制送還免除を目的とした「移民制度改革」まで打ち出したのです。もしこの法律が施行されていたとしたらアメリカ生まれの子を持つ親など不法移民の約500万人に合法滞在が認められる可能性がありました。

結局はテキサス州などアメリカの26州が「大統領の権限を逸脱している」として提訴し、米連邦最高裁の判断が真っ二つに分かれ、米連邦高裁の「移民制度改革は無効」との判断が維持されたことにより、この政策は何とか食い止めることができました。しかし、オバマ政権下の8年間で不法移民が増えたのは事実です。それが治安の悪化など、アメリカ国内で現在大きな問題になっています。

さらに、ここでは詳細は述べませんが、ウクライナ問題でも煮え切らない態度を取り続けたオバマは、結局ロシアのクリミア併合を許してしまいました。

このような失政続きのオバマです。オバマと同じく民主党のクリントン候補が大統領になった場合、このような外交政策が継承される可能性が大きいです。これに関しては、多くのアメリカ国民が懸念を抱くのは当然のことです。

二つ目には、このブログにも何度か掲載したように、アメリカのメディアは非常に偏っていて、そのほとんど9割がリベラル・左派勢力に握られており、保守派は1割に過ぎないという実体があるということです。そのため、日本でも報道されるアメリカは、アメリカのメディアによるものがほとんどで、多くの日本人はアメリカの半分しか知らないというのが実情です。

米大統領選の第3回テレビ討論会で司会を勤めた米FOXニュースのクリス・ウォーレス氏
この状況は、日本国内の状況にたとえると、産経新聞は存在せず全部の新聞がリベラル・左派新聞であり、保守派新聞は、テレビなどのマスコミもほとんど全部がリベラル・左派であり、唯一FOXニュースだけが例外で保守であるという状況です。

この状況ですから、米国内では民主党のクリントン候補に対して肯定的に、共和党のトランプ氏に対しては否定的という傾向があります。だから、米国ではトランプ氏に否定的な報道が多くなるのは当たり前といえば当たり前です。

これに関しては、以下の動画をご覧いただくとさらに良くご理解いただけるものと思います。


これに関しては、トランプ氏自身も以前から懸念を述べていました。米西部ネバダ州ラスベガスで今月19日開かれた米大統領選の第3回テレビ討論会では、司会は保守系の米FOXニュースのクリス・ウォーレス氏が務めました。FOXニュースから大統領候補討論会の司会者が出るのは初めてのことです。トランプ氏は過去の討論会で、CNNテレビなどリベラル派の司会がクリントン氏の味方をしていると不満を漏らしていました。

ウォーレス氏は告発サイト「ウィキリークス」の流出メールで、クリントン氏が環太平洋経済連携協定(TPP)など自由貿易に前向きな姿勢を示していたことを追及。トランプ氏が「ありがとう」と応じる場面もありました。

今回のトランプ氏の支持率の上昇は、最後のテレビ討論会の司会者がFOXニュースのクリス・ウォーレス氏だったことや、このままではアメリカは大変なことになると考え焦燥感を抱いた保守層が、以前よりもより積極的に大統領選挙に関与するようになったからと考えられます。

アメリカ大統領選に関する報道で、日本のメディアは盛んに「アメリカは内向きになっている」という報道を続けています。

確かに各候補者は、外交問題ではなく国内問題に関して主張する機会が多かったのですが、だからといって、アメリカが内向きになっているというわけでもありません。というより、アメリカは「原点回帰」をしようとしているとみるべきです。

典型的なリベラルの発言を掲載した共和党派によるfacebookの写真
現在、アメリカには歪な「米国型リベラリズム」はびこっています。これは、多くのまともなアメリカ人なら誰もが感じていることでしょう。そうして「米国型リベラリズム」の象徴がオバマ大統領であり、民主党なのです。

だからこそ、メディアではほとんど報道されないものの、現実には半分を占める、保守層はリベラリズムをたたき潰して、強いアメリカを取り戻そうとしているのです。

「原点回帰」の動きはアメリカだけの話ではありません。ヨーロッパでも同様の動きが起きています。イギリスの欧州連合(EU)離脱もその象徴といえるものと思います。

イギリスは財政破綻や難民問題など、ヨーロッパが抱える問題に巻き込まれることに嫌気がさし、EU離脱の道を選んだのです。

この動きはまさに「原点回帰」です。だからといってイギリスが内向きになっているかといえば、そんなことはありません。イギリスはEU離脱で国境をはっきりさせただけです。

そうして、共和党の大統領候補であるドナルド・トランプ氏も同様の考えを持っているようです。彼が不法移民について激しく批判しているのも、国家の破壊につながりかねない、うさん臭いグローバリズムにはうんざりしているからです。

しかし、ニューヨーク・タイムズ紙やCNNなど、民主党の広告塔といっても過言ではないアメリカのリベラル・左派メディアは、トランプ氏の考えが気に入らないようです。トランプ氏が共和党予備選挙に出馬して以降、ずっと批判を続けてきました。

日本のメデイアもこれに右にならえであり、同じく最初からトランプ氏を色物、際物として色眼鏡で見た報道を繰り返してきました。

米国の「リベラルメデイアの顔」。多くの日本人は彼らの主張が
アメリカの主流であると信じて疑わないが、彼らの主張は
アメリカの半分しか現していない。クリックすると拡大します。
しかし、現時点でもトランプ氏が大統領になる可能性は捨て切れません。にもかかわらず、上の動画にもあったように、安倍総理はクリントン氏とは会談したものの、トランプ氏とは会談していません。

もし、トランプ氏が大統領になったとしたら、現在の日本ではトランプ氏と全くパイプも何もない状態で、アメリカとの外交をしなければならないことになります。

さらに、ヒラリー氏が大統領になったとしても、ヒラリー大統領が代表するのはアメリカの半分にしか過ぎないどころか、もっと小さいかもしれないことを認識すべきです。

議会は、今でも共和党のほうが多数です。そうして、忘れてならないのは、アメリカ大統領は平時においては、世界で最も権力のないリーダーであるということです。

多くの人は、アメリカでは大統領に権限が集中していると勘違いしているようですが、実はそうではありません。なぜこのような勘違いがはびこったかというと、第二次世界大戦中の大統領などを思い浮かべからでしょう。

アメリカでは、総力戦のような戦争になると、戦争を遂行するために、権力が大統領に集中する仕組みになっているのです。だから、多くの人は戦争中のアメリカの大統領を思い浮かべ、アメリカの大統領は強大な権力を持っていると勘違いしているのでしょう。しかし、平時の大統領はアメリカ議会の承認がなければ何もできません。さらに、平時のアメリカでは司法がかなり強い権力を握っています。

トランプ氏が大統領になれなかったにしても、それに対する反動として議会はさらに共和党の勢力が強くなる可能性が十分ありますし、今でも共和党のほうが多数派です。

そうなると、日本も保守層とのパイプを持っておく必要がありますし、私達も、アメリカの報道に関しても、アメリカや日本のリベラル・左派的なものだけではアメリカの半分しか知ることが出来ないことを認識して、FOXニュースや弱小なその他のアメリカ保守メディアに注目していくべきでしょう。

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2016年7月26日火曜日

相模原の障害者施設、刺され19人死亡 26歳の元職員逮捕 「障害者なんていなくなってしまえ」供述―【私の論評】鬼畜の仕業、良心を持たないサイコパスに対処するには?

相模原の障害者施設、刺され19人死亡 26歳の元職員逮捕 「障害者なんていなくなってしまえ」供述

植松聖容疑者(フェイスブックから)
【産経新聞号外】障害者施設19人刺殺[PDF]

26日午前2時45分ごろ、相模原市緑区千木良の障害者施設「津久井やまゆり園」に「刃物を持った男が侵入してきた」と110番通報があった。神奈川県警や相模原市消防局によると、男に刺されるなどして19人が死亡、26人が負傷した。うち13人が重傷とみられる。県警は殺人未遂と建造物侵入の疑いで、現場近くに住む元職員、植松聖容疑者(26)を逮捕した。

県警によると、植松容疑者は午前3時ごろ、津久井署に「私がやりました」と車で出頭した。所持していたカバンから複数の包丁やナイフが見つかり、血痕が付いたものもあった。「ナイフで刺したことは間違いない」などと認め、「障害者なんていなくなってしまえ」という趣旨の供述もしているという。

事件のあった津久井やまゆり園前に集まった緊急車両=26日
死亡した19人は19~70歳で男性9人、女性10人。負傷者は男性21人、女性5人。東京医大八王子医療センター(東京都八王子市)によると、重傷者のうち同センターに搬送された男女4人はいずれも意識不明。首に刺し傷があり、胸や腕などにも複数の傷があった。北里大病院(神奈川県相模原市南区)にも13人が運ばれ、首に傷があった。

県警によると、入所者がいた居住棟1階の窓ガラスが割られ、近くにハンマーが落ちていた。植松容疑者が出頭した際に乗ってきた車の後部座席には、血の付いた結束バンドのようなものが複数本あり、施設からの通報には「縛られている人がいる」との内容も含まれていたことから、植松容疑者が犯行時に被害者を縛っていた可能性もある。県警は、詳しい経緯や動機を調べ、事件の全容解明を進める。

神奈川県などによると、植松容疑者は平成24年から同施設に勤務し、今年2月に「自己都合」を理由に退職した。在職時は入所者の生活支援を担当していたという。

現場はJR中央線の相模湖駅から東へ約2キロ。山に囲まれた住宅地で、近くに市立小学校もある。

【私の論評】鬼畜の仕業、良心を持たないサイコパスに対処するには?

この犯罪は、今後明らかにされる様々な背景は抜きにして、鬼畜の仕業としかいいようがありません。

このような凄惨な事件が起こるたびに思うのは、いわゆるサイコパスという言葉です。サイコパスとは、日本語では精神病質(せいしんびょうしつ、英: psychopathy、サイコパシー)とは、反社会的人格の一種を意味する心理学用語であり、主に異常心理学や生物学的精神医学などの分野で使われています。その精神病質者をサイコパス(英: psychopath)と呼びます。

精神障害の診断と統計マニュアル(DSM)や疾病及び関連保健問題の国際統計分類(ICD)においては反社会性パーソナリティ障害(Antisocial personality disorder/ASPD, dissocial personality disorder/sociopath)として分類されています。


犯罪心理学者のロバート・D・ヘアはサイコパスを以下のように定義しています。
  • 良心が異常に欠如している
  • 他者に冷淡で共感しない
  • 慢性的に平然と嘘をつく
  • 行動に対する責任が全く取れない
  • 罪悪感が皆無
  • 自尊心が過大で自己中心的
  • 口が達者で表面は魅力的
オクスフォード大学の心理学専門家ケヴィン・ダットンによると、サイコパスの主な特徴は、極端な冷酷さ・無慈悲・エゴイズム・感情の欠如・結果至上主義、です。

別の言い方をすると、他人に対する思いやりに全く欠けており、罪悪感も後悔の念もなく、社会の規範を犯し、人の期待を裏切り、自分勝手に欲しいものを取り、好きなように振る舞うのです。

日本国の精神保健及び精神障害者福祉に関する法律・第5条に、「この法律で『精神障害者』とは、統合失調症、精神作用物質による急性中毒又はその依存症、知的障害、精神病質その他の精神疾患を有する者をいう」と定義され、精神障害者に該当しつつ、保護の対象者と成る事を法的に認めているが、必ずしも全てが該当するとも言えず、時代相応の医学(科学)的な診断結果に基づいて判断されます。

植松聖容疑者 自身のフエイスブックの写真 23歳の誕生日の時のもの
さて、植松聖はいわゆる、サイコ・パスなのかどうかは、これからの調査を待たなければ何ともいえない部分もありますが、あの鬼畜とも呼ぶべき犯行手口からすれば、おそらくサイコ・バスなのでしょうし、彼のような人物をサイコ・パスと呼ばずして誰をそう呼ぶのか、私にはわかりません。

そうして、サイコ・パスは遺伝的なものなのか、それとも環境によるものなのでしょうか。精神疾患の原因として遺伝的な要素もあるともされています。そうなると、サイコ・パスも遺伝的要素が強いのでしょうか。

しかし「犯罪は遺伝するのか」といったテーマは社会的にはタブー視されており、語られることはほとんどありません。

とはいえ、こうしたテーマについての調査がないわけではありません。

海外では「サイコパスと遺伝」についての驚くべき研究結果も発表されています。

社会的にタブーとされるテーマについて、様々な研究の成果を紹介しながら論じ、ベストセラーとなっている『言ってはいけない 残酷すぎる真実』(橘玲・著)では、「犯罪と遺伝」について、次のように述べています。

言ってはいけない 残酷すぎる真実 (新潮新書)

 現代の精神医学では、犯罪を引き起こすような精神障害は「反社会性パーソナリティ障害」と呼ばれている。とはいえ、ずるがしこいひとや残酷な人間はどんな社会にも一定数いるし、これを安易に治療の必要な「病気」にしてしまうと、刑法における責任能力との関係でやっかいな問題が出てくるから、どこからを「障害」と見なすかはあいまいにならざるを得ない。 
 だがそれでも、誰が見ても「異常」な人間はいる。 
 イギリスで、1994年から3年間に生まれた5000組の双子の子どもたちを対象に、反社会的な傾向の遺伝率調査が行なわれた。それによると、「冷淡で無感情」といった性格を持つ子どもの遺伝率は30%で、残りの70%は環境の影響だとされた。この「環境」には当然、子育ても含まれるだろうから、これは常識的な結果だ。 
 次いで研究者は、教師などから「矯正不可能」と評された、きわめて高い反社会性を持つ子どもだけを抽出してみた。 
 その結果は、衝撃的なものだった。 
 犯罪心理学でサイコパスに分類されるような子どもの場合、その遺伝率は81%で、環境の影響は2割弱しかなかった。しかもその環境は、子育てではなく友だち関係のような「非共有環境」の影響とされた。
もちろん、あくまでもイギリスでの一研究結果に過ぎず、また犯罪全般ではなく「サイコパス」に限っての話である点は忘れてはならないものです。安易に「犯罪と遺伝」を結びつけるのは許されないことでしょう。

しかし、昨今、何不自由なく育ったにもかかわらず、異常な殺人や誘拐などをおこなった「少年」「少女」のニュースがよく伝えられます。恵まれた環境で、教育熱心な親に育てられたのに、理解しがたい残酷な事件を起こす若者の「動機」については、多くの場合、納得のいく説明はなされないままです。

こうした事件について考える上では重要な視点なのではないでしょうか。そうして、植松聖についても、そのような視点も失わず、見ていくべきものと思います。

サイコ・パスに関しては、現在では相当研究が進んでいて、専門家によるサイコ・パス・チエック・リストも開発されており、サイコパス的な資質のあるなしを専門家によってチエックできます。

実際、英国国立医療技術評価機構(NICE)は精神病質の診断基準を満たす人口に対しては、認知行動介入を検討するとしています。また併発疾患を治療することで、精神病質によるリスクを減少させることができます。

また、これに携わるスタッフは有害事象リスクが高いため、スタッフには高レベルの支援と厳重な監督が提供されなければならないとしています。ただし、日本ではまだまだ認識が低く、十分に対策がなされているとはいえません。

だから、私たちは身近にサイコパスがいる場合には、自ら対処しなければならない部分が大きいです。

スタンリー・キューブリックの映画「時計じかけのオレンジ」のテーマはサイコパスの治療
以下に、サイコパスの性格や特徴、対処法などについて抜粋します。

サイコパスに共通していること
  • 先を見ることができない
  • 今より前のことしか考えられない
  • 目先のことしか考えられない
  • 協調性がない
  • うぬぼれが強い
  • ちょっとしたことですぐキレる
  • 人を利用して勝ち上がる
  • 自分の事しか考えない
  • 人の話をきかない
  • 全部自分が正しい、絶対自分が悪いと認めない
  • 自分より立場の低い人に説教(いじめ)して、潰しにかかる。
サイコパスへの対処法
  • どうしても接する必要がある相手なら慎重に接すること
  • なるべくサイコパスから離れる事
この性格や特徴に該当する人が、あなたの周りにもいるかもしれません。危険を感じたら離れるようにしましょう。

私たちが自分でできるということは、このくらいしかありません。そうして、ある程度サイコパスの人が明らかに度を超した振る舞いをすれば、まずは警察等に相談すべきです。

しかし、警察なども実際に大きな犯罪が起きていない場合は、なかなか動かないというのが実体です。いざとなれば、自分の身に降りかかる火の粉は自分で振り払わなければなりません。

しかし、私などはいざというときは、ある程度自分で振り払うこともできるかもしれません。それでも、相手によりけりです。

そうして、小さな子どもや、お年寄りや、今回犠牲になられたような、障害者の方々ではどうしようもないというのが実情です。

そうなると、日本でも自衛のため、民間警備員が小火器を携行したらどうかという議論あっても、良いのではないかと思います。

外国の民間警備員は銃火器を装備するのが当たり前
欧米ではこれは、普通のことです。本日は、石平氏のツイートが炎上していました。以下にそのツイートを掲載します。
このツイートは、警備員や職員を責めていると受け取る人も多く、石平氏はさらに以下のようなツイートを発信しています。
この施設にも、夜中には警備員や、当直の人は当然いたとは思いますが、それでもこの犯行は止められなかったのでしょう。とにかく、勝手のわかった人間が方はしから殺傷に及んだわけですから、警備員や職員など途中で気づいたにしても、武装も何もしていなかったのでとめようもなかったのかもしれません。

そのあたりのことも、これから徐々に明らかにされてはいくでしょうが、いずれにしても、このような事件が発生した場合、なかなか止められないのも事実です。

このような無力の人が多く住んでいたり、滞在するような施設では、民間警備員が小火器を携行して、いざというときに対処するということが検討されても良いはずです。そうすれば、全員とはいかなくても、何人かでも助けることができたかもしれません。

とにかく、いわゆるサイコパスには理屈は通じません、これはテロも同じことです。どんなに防ごうとしても、サイコパスがらみの事件・事故は起こるときは起こるわけです。私たちの社会は、その時に備える体制づくりがあまりにも遅れています。

また、サイコパスには大量殺人をするような事例ばかりではありません。マーサ・スタウト博士の著書「良心を持たない人たち」の副題は「25人に一人の恐怖」となっています。

驚くべきことに、欧米の社会ではなんと人口の4%にあたる人がサイコパスだと言われているのです。

単純に人数の割合で考えれば、一クラス30人くらいの学校なら学級ごとに一人か、あるいは二人くらい、全く良心を持たない恐ろしい人間が紛れ込んでいる事になります。


これほどの高確率であるにも関わらず、大きな社会問題に発展することが少ない事からも、サイコパスが社会にいかに上手く紛れ込んでいるのがわかるでしょう。

ただし、サイコパスの出現率は国や地域によってもかなり差があるようです。特に日本を始めとした東洋の国々ではサイコパスの割合は大きく下がり、欧米社会の10分の1くらいであるとも言われています。

とはいいながら、確実にごく少数ながら、サイコパスは必ず存在するわけで、そのような人と関わりを持たなければならない場合もないとはいえません。私たちは、個人としてもそのような時の対処の方法がわかっていないと思います。

日本であれば、学校などでも、職場などでも教えられることはありません。やはり、これも自分で学ぶよりほかありません。

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2015年4月20日月曜日

危機的状況の中国経済 “外資流出”対処に必死 追加緩和もガタガタ―【私の論評】習近平と岡田には、何も新しいことは発信しないという共通点が!このままでは、両者とも座して死を待つばかり(゚д゚)!


習国家主席は危機的状況の中国経済をどう立て直すのか

中国経済が危機的状況を深めている。中国人民銀行(中央銀行)は金融機関から預金の一定割合を強制的に預かる預金準備率を20日から1・0%引き下げる金融緩和策を打ち出した。外資の流出への対処に必死な様子がうかがえ、アジアインフラ投資銀行(AIIB)に日本の参加を求めている理由もこのあたりにありそうだ。

中国は1~3月期国内総生産(GDP)成長率が7・0%と6年ぶりの低水準に落ち込んでおり、預金準備率を引き下げることで、企業が金融機関から資金を借りやすくするのが狙いだ。

中国では預金準備率を0・5%ずつ上げ下げするのが一般的で、1・0%も一気に引き下げたのはリーマン・ショック直後の2008年11月以来。世界的な金融ショック並みの危機感を中国当局が抱いていることになる。

人民銀は昨年11月と今年3月に利下げも実施しており、立て続けの緩和策を打ち出した。

さらには鉄道など大型公共事業の認可といった景気下支え策を連発、株価こそ急騰しているものの、目立った効果は表れていない。通貨供給量は政府目標を下回っており、中国からの外資の流出が止まっていない様子がうかがえる。

週刊東洋経済元編集長の勝又壽良氏は、「インフラ投資以外に成長産業分野が存在しない中国の矛盾が噴出するなか、AIIB設立で解決しようとしている」と指摘する。

習近平国家主席はインドネシアで開かれるアジア・アフリカ会議(バンドン会議)の首脳会議に出席、安倍晋三首相と接触する可能性もある。AIIB参加を直接頼むのかも注目されそうだ。

【私の論評】習近平と岡田には、何も新しいことは発信しないという共通点が!このままでは、両者とも座して死を待つばかり(゚д゚)!

上の記事では、中国経済の現在の危機的状況のみを掲載していますが、その原因については語っていません。原因に関しては、あまりにも馬鹿馬鹿しいというのが事実で、ここでうだうだと説明しません。以下に、これを説明する上念司氏の動画を掲載します。


さて、上の動画で解説しているように、非常に馬鹿馬鹿しいことにより、中国の経済は崩壊するのは、最初からわかっていたことであり、それが日本の金融緩和をきっかけとして、いよいよ表に出てきたというのが、今の中国の姿です。

そうして窮余の策として、ブログ冒頭の記事にあるように、「インフラ投資以外に成長産業分野が存在しない中国の矛盾が噴出するなか、AIIB設立で解決しようとしている」のです。

今の中国にとっては経済を回復させるための窮余の策が、AIIBなのです。これがうまく行かなければ、中国経済は崩壊します。しかし、仮に米国や日本がこれに参加して、うまくいったにしても、これも一時しのぎにしかなりません。中国経済崩壊までの期間を一時的に伸ばすだけです。

実は、2008年のリーマン・ショックにより、中国の経済は崩壊していたのですが、それを何とか自転車操業的に最近まで引き伸ばしてきたものが、日本が金融緩和に転じたため、円安・デフレ解消方向に向かったため、これにより、元々駄目な中国の経済が窮地に陥っているので、それを何とかしようとしてAIIB構想をぶちあげたわけです。

こんなバスなら乗り遅れたくないが、AIIBは?

しかし、中国が後ろ盾となるインフラ投資銀行では、格付けも低くなるため、資金調達コストが高くなるため貸出金利も当然高くなります。これでは、最初から他の国際金融機関との競争に負けており、勝負にならないわけですし、自国の金融もままならない中国は、国際金融のノウハウもほんどないわけで、これは、最初から頓挫するのが決まったようなものです。

安倍晋三首相は20日夜のBSフジ番組で、中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)について、「疑問が残されたまま入っていいことはない」と述べ、参加に慎重な姿勢を重ねて示しています。米国は、オバマ大統領が入ろうとしたとしても、議会の厚い壁があるので、ほんど絶望的です。これで、中国は最後の頼みの綱も絶たれたわけです。

ところで、民主党の岡田克也代表は本日、都内の日本外国特派員協会で記者会見し、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)について「6月末の設立協定制定に影響力を発揮できるのであれば、今から交渉に加わるのも選択肢ではないか」と述べたそうです。「主要7カ国(G7)の協調が日本が入る前提だ」とも語ったそうです。

本日午前、早稲田大学で公演する岡田民主党代表

一体どうなっているのでしょう。もし民主党政権が続いていたなら、喜び勇んですぐに加入したと思います。まさに、中国の思う壺ですね。

こんなことしか言えないからでしょうか外国人記者からは、岡田氏の言動は物足りないようです。岡田克也代表は本日、東京都千代田区の日本外国特派員協会で記者会見を行っています。外国メディアの記者からは「民主党から(安倍政権の政策への)代替案が出てこない。国民を興奮させる政策を打ち出すべきだ」などと批判が続出しました。

岡田氏は「次の選挙を考えたときに、有権者が興奮するが、実はあまり中身のない政策を打ち出すべきか。それとも、冷静に判断してもらえる正直な政策、ただ、あまり興奮はしないかもしれない政策を打ち出していくべきか。これは重要な選択肢だ」となどと反論しました。

ただ外国メディア記者からは「自民党との差別化を図るべきだ」などの注文が相次ぎ、岡田氏は「違いは示している。人口減少、財政危機などについて誠実に応え、夢が持てる政策を打ち出していく」と説明しました。

日本外国特派員協会で記者会見する民主党の岡田代表
確かに、民主党は自民党を攻めきれていないです。これでは、まともに野党の役割は果たせていませんし、果たせないです。

それにしても、習近平も岡田氏にも共通点があるようです。中国も、民主党も危機に貧しているのですが、岡田氏といういうか、民主党は自民党に変わる代替案も出せず、国会では政策論争はほとんどできず、くだらない個人攻撃ばかり繰り返しています。本当は危機的状況なのに、まるでそうではないかのように、何も新しいことを発信しません。

中国も表面的には、変わっているものの、海外からの金を導入して、インフラ整備することで経済を発展させることばかり考えて、内需を拡大することを全く考えていません。何も新しいことを発信しません。そういわれてみれば、民主党もなぜか、金融緩和は内需拡大策でもあるのに、これには消極的です。

これでは、両者とも座して死を待つばかりです。習近平と岡田は、こんなことでリーダーといえるのでしょうか。情けない限りです。

私はそう思います。皆さんは、どう思われますか?

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2013年11月18日月曜日

スティグリッツ:「貧富の格差に対処する国と対処しない国に世界は分裂しはじめた」―【私の論評】中間層を育成することが、過去の経済成長の基本中の基本であったことが忘れ去られている!これは、単なる平等主義とは違う!!

ジョセフ・スティグリッツ「貧富の格差に対処する国と対処しない国に世界は分裂しはじめた」

ジョセフ・スティグリッツ

われわれは不公平な世界に向かっているのか?

もっとも富裕な国、とりわけアメリカの所得と富の格差はこの数十年で急拡大し、そして悲劇的なことに、この大不況以来さらに悪化したことが広く知られている。

しかしほかの国はどうだろうか。国家間の格差は、中国やインドのような新興国の経済力が、何億もの貧困者を引き上げたことで縮小しているのだろうか。貧しい国や中所得国では、格差は悪化しているのだろうか、それとも改善しているのだろうか。われわれは公平な世界へと向かっているのだろうか、それとも不公平な世界へと向かっているだろうか。

これらは入り組んだ問題だ。世界銀行のエコノミストであるブランコ・ミラノビッチらによる最近の研究はその答えをいくつか示している。

・・・・・・・・<中略>・・・・・・・・・

「格差は技術変化を受け入れた副産物」というウソ

ミラノビッチ氏によれば、1988年から2008年にかけて、世界人口の上位1%の所得が60%も増加する一方で、最下層5%の所得にはまったく変化がない。ここ数十年で、中位所得は著しく上がったが、いまだに法外な不均衡がある。

8%の人間が世界中の所得の50%を懐に入れ、同様に最上層の1%だけが15%をわが物にしている。利子配当収入は、富裕国の金融・産業界のエグゼクティブのようなグローバルエリートや、中国、インド、インドネシア、ブラジル諸国の「新興中産階級」にもっとも厚い。では、取り損なったのは誰か。それは、アフリカ、ラテンアメリカの一部、共産主義崩壊後の東欧および旧ソビエトの人びとだ、とミラノビッチ氏は指摘する。

アメリカは世界に恐ろしい具体例を示している。非常に多くの点で「世界に先駆ける」国だけに、他国がそれに続けば、将来いいことは起こり得ない。

一方、アメリカで広がる所得と富の格差は、西側世界で広範に見られる傾向である。OECDの2011年度の研究によれば、所得格差は、1970年代後半から1980年代前半にかけてアメリカとイギリス(さらにイスラエル)で最初に広がりはじめた。この傾向は、1980年代後半にさらに拡大した。所得格差はこの10年で、平等主義的な国であったドイツ、スエーデン、デンマークでさえ拡大した。フランス、日本、スペインという少数の例外を除き、多くの先進国で、最上層10%の稼ぎ手が急浮上したが、最下層の10%ははるかに遅れてしまった。

しかしこの傾向は、普遍的でも回避できないものでもない。同じころ、チリ、メキシコ、ギリシャ、トルコ、ハンガリーは、国によるがきわめて甚だしい所得格差を首尾良く減らし、格差とは政治的産物で、単なるマクロ経済動向によるものではないことを示した。

格差はグローバリゼーション、労働、資本、モノ、サービスの移動、スキルや高学歴の従業員を優遇する、回避できない技術変化の副産物だ、というのは真実ではない。

先進経済諸国の中で、アメリカは壊滅的なマクロ経済の結果、所得と機会における格差が最悪だ。アメリカの国内総生産はこの40年間で4倍以上となり、この25年間ではほとんど倍増したが、ご存じのとおり利益はトップに集中し、そしてますますトップ中のトップへ集中している。

昨年、最上層1%のアメリカ人は、全国民の所得のうち22%を、同じく0.1%は11%を懐に入れた。2009年以来の利子配当収入総額の95%は最上層1%の手に渡ったことになる。

最近発表された国勢調査によれば、アメリカの中位所得者は、ほぼ4半世紀のあいだ動くことがなかった。典型的なアメリカ人の所得は、(インフレ補正後で)45年前より低く、4年制大学の卒業資格を持たない高卒者は40年前よりも約40%所得が低い。

「誰のための繁栄なのか」

アメリカ人の間での格差は、富裕層への減税と金融機関への規制緩和に伴い、30年前から拡大しはじめた。これは偶然の一致ではない。われわれがインフラや教育、健康保険制度、さらに社会的セーフティーネットへの投資を減らすにつれ格差は著しくなった。拡大する格差は、アメリカの政治制度と民主的な国家統治が蝕まれることで、ますます強化されている。

そしてヨーロッパ諸国は、この悪しき先例をかなり熱心に追いかけているようだ。イギリスからドイツにいたる緊縮財政の信奉が、結果として高い失業率、賃金下落、増大する格差を招いた。今回、再選したドイツ首相のアンゲラ・メルケルや、欧州中央銀行総裁マリオ・ドラギは、ヨーロッパの問題は、福祉への膨張した支出の結果だと論じている。しかしその考え方は、単にヨーロッパに不景気(とさらには大不況)をもたらしただけだった。

底は脱した、つまり「公式には」不況は終わったと言っても、EUの2700万人の失業者にとってそれは慰めにもならない。大西洋の両岸で緊縮財政強硬派が、「断固進め!」と言う。繁栄に必要な苦い薬だというわけだ。しかしそれは一体、誰のための繁栄なのか。

度を超えた金融化という事実は、アメリカに次いで不平等が甚だしいイギリスの危うい現状や、増大する格差の説明に役立つ。多くの国で、弱体な企業統治と衰退する社会的つながりが、CEOと労働者間の報酬の格差をますます拡大させてきた(ILOの推計による)。

アメリカ大企業の500対1のレベルにはまだ達していないにしろ、いまでも、大不況以前よりも格差は大きい(役員への報酬を制限してきた日本は注目すべき例外だ)。経済的なパイを拡大することなく、システム操作で、パイの大きい部分を獲得するレントシーキングというアメリカ生まれのイノベーションが、グローバル化してしまったのだ。

「富の分配か分裂か」という時代へ突入

グローバル化による不均衡は、世界中に被害をもたらした。国境を越え移動する資本は、労働者には賃金の譲歩を、政府には法人税減税を要求した。その結果、どん底への競争、賃金と労働条件が脅かされるようになった。政府から資金援助された、科学技術の巨大な進歩にたよる、アップルのような先端企業もまた、税金逃れに手際の良さを発揮してきた。取ることには熱心だが、お返しはない。

子どもの間での格差と貧困は、あまりにもひどい道徳上の恥だ。貧困が怠惰とお粗末な選択の結果だとする右派の考えを、この事実はあざ笑う。

子どもは親を選べない。アメリカでは4人に1人、スペインやギリシャでは6人に1人、オーストラリア、イギリス、カナダでは10人に1人強の子どもが貧困生活をおくっている。公平な経済の創造をしている国もあるのだから、これは回避できないことではない。たとえば半世紀前の韓国では、10人中1人しか学士になれなかった。しかし現在では世界でもっとも高い学卒率の国の1つである。

以上の理由で、単に持つ者と持たざる者に分裂した世界というだけでなく、それに対処しない国と対処する国に分裂した世界にわれわれは足を踏み入れた、と私は見ている。

いくつかの国は、繁栄を分かち合う社会を創り上げることに成功するだろう。また私は、こういう成功こそが本当に持続可能だと信じている。しかし、一方では格差を荒れ狂うままにする国もあるだろう。こういう分裂した国の富裕層は、ゲーテッド・コミュニティー(※2)に引きこもり、貧困者からは完全に隔離され、その生活はほとんど理解の外だろう。そしてその逆もまた然りだ。

私はこういう方向を選択したように見える地域社会をいくつか訪れてみた。そこは世間から隔離された富裕層の特区であれ、絶望的な貧民地区であれ、われわれが住みたいと思うような場所ではない。

【私の論評】中間層を育成することが、過去の経済成長の基本であったことが忘れ去られている!中間層が育てば、富裕層も貧困層もともに利益をこうむることになる。これは、単なる平等主義とは違う!!

上の記事を徹底的に要約し要点中の要点だけをまとめると、以下のようになります。
1.チリ、メキシコ、ギリシャ、トルコ、ハンガリーは、国によるがきわめて甚だしい所得格差を首尾良く減らし、格差とは政治的産物で、単なるマクロ経済動向によるものではないことを示した。 
2.格差はグローバリゼーション、労働、資本、モノ、サービスの移動、スキルや高学歴の従業員を優遇する、回避できない技術変化の副産物だ、というのは真実ではない。 
3.いくつかの国は、繁栄を分かち合う社会を創り上げることに成功するだろう。また私は、こういう成功こそが本当に持続可能だと信じている。しかし、一方では格差を荒れ狂うままにする国もあるだろう。
まずは、上記の要約1.について解説します。格差とは、マクロ経済動向によるものではなく、政治的産物であることがいくつかの国の事例で明らかになっているということです。多くの識者が、格差とはグローバル経済を含めたマクロ経済動向によるものとしています。要するに、安い賃金の国で生産された物品・サービスが高い国の賃金の国々に流れ込み、いずれ世界は標準化されるのですが、その過渡期では偏りが出ることになり、それが、格差が発生する原因だというのです。そんなのは、嘘っぱちだということは、よく考えれば素人でもわかります。

貧困の原因は、膜経済ではく政治氏テムの不備にある

要約2については、日本ではデフレが続き、国内である程度の価格平準化などが進んでいる面もありますが、それにしても、東京の地価は地方に比較すればまだまだ高いですし、賃金も東京都内は高く、地方では低いです。同じスキルを持つ、同じ事業の労働者であれば、あきらかに東京の方が賃金が高く、地方では低いです。

これは、おそらく統計資料を整えるようになってから同様の変らぬ傾向だと思います。同じ国の中ですら、完璧に平準化はされていません。それは当たり前のことです。需要の供給のバランスからそうなっています。地方で東京と同じ賃金で、労働者を雇うことはありません。東京で、最初は安い賃金で地方の労働力を雇いいれたとして、時間がたつうちに、労働者は賃金の低い職場から賃金の高い職場に移ることになります。そうなれば、地方なみの低賃金で人を雇うことは困難になり賃金をあげざるを得なくなります。

日本という人口は1億2千万という人口の多い(中国、インド、アメリカなどは例外中の例外、これらをのぞけば日本の人口はかなり多いほう。ちなみに、ニュージーランド、などは数百万に過ぎない。イギリス、フランス、ドイツなども数千万にすぎない、ロシアは、1億4千万と、日本より若干多いだけです)ものの、国土面積が狭い国ですら建国から2000年以上たっても、結局完全に平準化されていません。このような事実からみても、いくら対象がグローバルに広がっても、完全に平準化される時代が来るはずがありません。というより、グローバル化したから突然賃金や、物価など完璧に平準化されるなどという考えは、まともな経済学の考え方いえば、異端といっても良い考え方です。でも、その異端の考えが、政治家などの中で、理解されていないところに問題があります。

格差は政治システムの不備により助長されている
要約3.は、全くその通りです。アメリカ、中国、EUの中でも先進国は、格差を荒れ狂うままにする国になる可能性が大きいです、そうして、日本はデフレのため現在格差が目だつようにはなりましたか、それでも日本以外の国よりは格差は少なく、デフレを解消した場合、ふただひ中間層が増えるとともに、中間層により経済活動が増え、繁栄を分かち合う社会を創り上げることに大成功することでしょう。またステグリッツ氏が語るように、日本の大成功こそが本当に持続可能だと考えます。

現在世界は、日本が数十年でなしとげ、欧米が数百年かけてなしとげた、中間層の拡大による経済の拡大を忘れています。過去の先進国のすべてが、この道をたどり、高い経済成長を実現したことを忘れています。さらにその豊かさを維持したことにより、より良い社会を構築できたことをすっかり忘れています。中間層による経済活動による経済成長という事実は、今でも新興国などで繰り返されていることです。例外はありません。

いくら、国が豊かになっても、格差は残ります、一握りの富裕層、一握りの貧困層は残ります。しかし、中間層が多ければ、貧富の差はより縮まります。ステグリッツのいう、格差のない社会を実現するのは、多数の中間層です。私たちが、すでに経験済みのこの原則を理解しないで、

そうして、これに近いことをすでに日本は、実現してきました。そうです、高度成長時代の日本がそうです。奇跡の経済成長率といわれた10%台の成長を毎年実現していました。


当時の日本は、まだまだインフラが整備されていなかったため、この整備をするということでも、随分GDPを引きあげていましたが、今の日本ではかなりインフラが整備されてしまっているので、この時代の成長率のように大きな伸びはないでしょうが、それでも、かなりの経済成長率が期待できます。

そうして、すでに豊になった日本でも、高度成長時代の熱狂が再現されると思います。そうして、日本が、単に経済的に豊になることだけを追求することなく、社会を充実させることに向かえば、日本は、それこそ黄金の国ジパングと昔のヨーロッパ人があこがれたような国を本当に実現することが可能です。そうして、日本は世界のトップランナーになることができます。

そうなればそうなったで、社会問題はいろいろ発生しますが、その社会問題とは、従来のものではなく、次世代の社会問題になり、それを解決するノウハウを日本が身につけたならば、次世代社会のモデルを創設することになり、世界に範を示す存在となることでしょう。

一方で格差を荒れ狂うままにする国には、将来はありません。アメリカも今のまま、中間層を減らすような、政治を続けていれば、いずれ没落します。格差を放置する中国は、今後5年以内に国力がかなり衰え、崩壊の危機にさらされ、今のままであれば、10年以内に必ず分裂します。もう、先がありません。

中国富裕層


だからこそ、私たちは、上記のステグリッツの警告を真摯に受け止める必要があります。そうして、現在残念ながら、来年の4月からの増税を決めてしまった日本は、デフレ解消まで遠回りをすることになりますが、それでも、世界の中をみわたせば、これから先一番見込みがあるのは日本です。なぜなら、景気が悪いといいながら、深刻なデフレに見舞われている国はないからです。そうして、デフレは純然たる貨幣現象であり、必ず克服できます。

しかも、日本とは異なり、ほとんどの国は借金をかかえています。そうして、経済は不況という範囲内を納まっており、デフレという特殊な状況にはないからです。日本の場合は、好景気、不況という景気の循環から逸脱したデフレという状況にあるとはいいながら、政府の借金はあるものの、国は借金どころか、海外に貸し付けてる金の金額が過去20年間1位という事実があるからです。このデフレから脱出できれば、人々が消費を増やすのみにあらず、今まで海外に貸し付けていたお金が、日本に大量に投資されることになり、かなり経済成長が期待できるからです。日本の中間層を活気づけるのは、デフレ解消と、中間層を多数輩出させる、政治システムです。そうして、それは、可能です。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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