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2019年4月5日金曜日

安倍首相は「令和」機に消費税と決別を デフレ不況深刻化の元凶 ―【私の論評】令和年間を「消費税増税」という大間違いから初めてはいけない(゚д゚)!


元号を発表する菅官房長官

 5月から「令和」の時代に移ることになった。漢和辞典によれば、「令」の原義は神々しいお告げのことで、清らかで美しいという意味にもなるという。日本の伝統とも言える「和」の精神にふさわしい。

 だが、ごつごつとした競争を伴う経済社会では、清らかに和やかに、では済まされない。

 野心と挑戦意欲に満ちた若者たちがしのぎを削り合ってこそ、全体として経済が拡大する。経済成長は国家が担う社会保障の財源をつくり出し、競争社会の安全網を充実させ、和を生み出す。社会人になっていく若者たちの負担が軽くなるし、家庭をつくり子育てしていけるという安心感にもつながる。

 そこで、新元号決定直後の安倍晋三首相の会見をチェックしてみると、「次の世代、次代を担う若者たちが、それぞれの夢や希望に向かって頑張っていける社会」「新しい時代には、このような若い世代の皆さんが、それぞれの夢や希望に向かって思う存分活躍することができる、そういう時代であってほしいと思っています。この点が、今回の元号を決める大きなポイント」と「若者」に繰り返し言及し、若者が「令和」時代を担うと期待している。

 だが、超低成長のもとでは「令」も「和」も成り立ち難い。若者は経済成長という上昇気流があってこそ、高く飛べると楽観できる。ゼロ成長の環境下では、殺伐とした生活しか暮らせないケースが増える。

 グラフは、平成元年(1989年)以来の日本の実質経済成長率の推移である。日本と同じく成熟した資本主義の米欧の年平均の実質成長率が2~3%台だというのに、日本はゼロコンマ%台のまま30年が過ぎた。原因は人口構成の高齢化、アジア通貨危機、リーマン・ショックなどを挙げる向きが多いが、ホントにどうなのか。



 高齢化はドイツなど欧州でも進行している。アジア通貨危機では直撃を受けた韓国はV字型回復を遂げたし、リーマンでは震源地の米国が慢性不況を免れた。いずれも日本だけがデフレ不況を深刻化させた。経済失政抜きに日本の停滞は考えにくい。

 最たる失政は消費税にある。政府は平成元年に消費税を導入、9年(97年)、そして26年(2014年)に税率を引き上げた。結果はグラフの通り、実質成長率はよくても1%台に乗るのがやっとで、家計消費はマイナス続き、外需頼みである。

 消費税はデフレ圧力を生み、経済成長を抑圧するばかりではない。所得が少ない若者や、子育てで消費負担が大きい勤労世代に重圧をかける。今秋の消費税率10%への引き上げは、首相が力説した、若者が担うはずの「令和」時代に逆行すると懸念せざるをえない。

 首相はデフレ下の増税に決別し、経済成長最優先という当たり前の基本路線に回帰すべきだ。その宣言は秋の消費税増税中止では物足りない。思い切って消費税率の引き下げを打ち出す。平成が終わり、令和にシフトする今こそ、政策転換のチャンスではないか。(産経新聞特別記者・田村秀男)

【私の論評】令和年間を「消費税増税」という大間違いから初めてはいけない(゚д゚)!

最たる失敗は確かに冒頭の記事にもあるように、諸費税増税です。他が駄目であっても、少なくとも消費税増税をしていなけれは、日本の経済はこれほど低迷することはありませんでした。

トリンプは、2018年11月29日、世相を映すブラジャーの新作として、東京スカイツリーを
モチーフにした「平成ブラ」(非売品)を発表しました。トリンプは1987年から世相を反
映した下着を定期的に発表し、今回が63作目でしたが、世相ブラは今回で終了するそうです。

「平成」には経済に関して本当に良い思い出は少ないです。先進国の中で、日本だけが経済成長しませんでした。世界各国の国内総生産(GDP)の推移をグラフで書くと、日本だけが横ばいで、この意味で「平に成った」と皮肉ることもできるかもしれません。

先進国で唯一ともいっていいくらいの「デフレ」で悩まされました。少なくとも「失われた25年」といえるでしょう。平成30年間のうちの25年ですから、ほとんどの期間が失われていたということになります。

そうして。もう一つ日本を駄目にしたのは、日銀による金融政策です。日本が最初にデフレになったのは、インフレ率が高くないにもかかわらず、日銀がバブル潰しとして金融引き締めを行ったからです。それは間違いだったのに、その後も日銀が間違いを続けたため、日本はデフレ状況から抜け出すことができませんでした。さらに、これに消費税増税が追い打ちをかけました。

新しい元号「令和」の決定を受け、記者会見で談話を発表する安倍首相

しかしそれは、平成最後の安倍晋三政権でただされました。2013年4月から、異次元の金融緩和を行い、日本経済が急速に改善しはじめました。ただし、その後2014年4月から、消費税を8%にあげ、さらには2016年9月で事実上の金融引き締めを行い、景気も17年12月あたりがピークとなってその後下降気味で、すでに腰折れしているようです。

今月1日に公表された日銀短観は、これらを確認するものでした。大企業・製造業の業況判断指数は、前回の昨年12月調査から7ポイント悪化し、悪化幅は12年12月調査以来、6年3カ月ぶりの大きさとなりました。

平成は、日銀の間違いから始まって、間違いで終わるのでしょうか。そうして、「令和」元年は、10%への消費税増税という間違いから始まるのでしょうか。

もし、そうなれば、「若い世代の皆さんが、それぞれの夢や希望に向かって思う存分活躍することができる、そういう時代」とは程遠い時代になります。

また、若者が真っ先に苦しむ時代になります。それだけは、避けたいです。令和年間を「消費税増税」という大間違いから初めてはいけないのです。

【関連記事】

2019年3月14日木曜日

景気後退はなぜ起きた? リーマン・ショックや東日本大震災、増税と金融政策で説明可能だ―【私の論評】世界情勢と国内景気後退にもかかわらず、消費税増税にひた走る財務省とマスコミの思考回路(゚д゚)!

景気後退はなぜ起きた? リーマン・ショックや東日本大震災、増税と金融政策で説明可能だ

高橋洋一 日本の解き方

景気動向指数は3カ月連続の悪化となり、基調判断も下方修正された。中国経済減速の影響と解説されているが、国内要因はなかったのか。

 以前の本コラムで、内閣府の景気動向指数研究会(座長=吉川洋・立正大教授)が、2012年12月から続く景気拡大期間がいまなお続いていると判定していることについて、異論があると書いた。正直にいって、景気動向指数(一致指数)のデータを素直に見る限り、14年4月の消費増税の悪影響がその前後ではっきり出ており、そこに景気の「山」があり、16年6月あたりで「谷」がある。

 研究会座長は、消費増税しても景気への影響は軽微だという主旨の発言をしていた。それは結果として間違いだったが、その後の研究会の意見が左右されたようにも思われ、すっきりしない印象だとも書いている。

 景気動向指数(一致系列)は、生産指数(鉱工業)、鉱工業用生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、所定外労働時間指数(調査産業計)、投資財出荷指数(除輸送機械)、商業販売額(小売業、前年同月比)、商業販売額(卸売業、前年同月比)、営業利益(全産業)、有効求人倍率(除学卒)を採用し、これらから機械的に算出している。景気動向指数研究会のような「解釈」は疑問であるが、景気の動きを素直に客観的にみるにはいい指標だ。

 1月はマイナス2・7ポイント、昨年12月はマイナス1・3ポイント、11月はマイナス1・8ポイントと3カ月連続のマイナスになったので、基調判断は下方修正された。

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 一方、月例経済報告といい、内閣府が資料を作るが、関係閣僚会議に提出された後了承という経過を経て公表される「政府の見解」がある。

 2月の月例経済報告では、基調判断は「景気は、緩やかに回復している」としており、景気動向指数のものと異なっている。月例経済報告は、さまざまな経済指数を分析するとともに指標の動きの背景にある経済環境や企業の景況感などを総合的に勘案した結果であり、機械的な算出ではないからだ。

 筆者は、機械的な算出の景気動向指数をより重視しているが、これまでの動きを見ると、マクロ経済政策(金融政策、財政政策)と外的要因(リーマン・ショックと東日本大震災)で転換点の「山」と「谷」はほぼ説明可能だ。

 中国経済という要因は確かにあるが、17年12月あたりが「山」で、それ以降下降している。これは、効果ラグを考慮すると16年9月のイールドカーブコントロール(長短金利操作)による金融引き締めの結果とも読める。それに最近の中国要因が加味されたとみるほうがいいだろう。これまでの、00年8月のゼロ金利解除、06年3月の量的緩和解除の後、半年~1年半くらいの後に景気の転換点を迎えているからだ。

 国内要因で景気が落ち目になったときの外的ショックは、下り坂で押されるのと同じで、大きく景気が落ち込む悪影響になるので要注意だ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】世界情勢と国内景気後退にもかかわらず、消費税増税にひた走る財務省とマスコミの思考回路(゚д゚)!

世界経済の先行き不安が広がりつつあります。中国経済の減速は続いており、米中新冷戦が拍車をかけかねないです。英国のEU(欧州連合)離脱の破壊的衝撃も懸念されます。

日本経済は景気拡大局面を続けてきましたが、国際情勢の懸念もあって足元は弱含みです。こうしたなか、政府は今年10月、消費税率10%への引き上げを断行できるのでしょうか。

永田町には「安倍晋三首相は最終的に増税を回避するのではないか?」と推察する向きも多いです。

総額で初めて100兆円を上回る2019年度予算案の審議が4日、参院予算委員会で始まりました。 当然、消費税も議論になりました。

茂木敏充経済再生相

茂木敏充経済再生相は、野党議員から消費税増税を考え直すように迫られて、「16年後半以後の日本経済は、プラス成長で推移するなか、 財政再建をしっかりやりながら、(人材に投資する)『人づくり革命』などをするためにも消費税率の引き上げは不可欠だ」と語りました。

今年10月の増税は法律で決められている。このため、閣僚は増税を「既定路線」とした答弁を続けています。

ただ、世耕弘成経産相は、増税対策について問われて、「国際経済状況が非常に不透明であることを鑑みながら…」と前置きして、「税率の引き上げ以上に消費を喚起したい」と答弁しました。

世耕弘成経産相

消費増税などやっている場合でないことはあまりにも明らかです。にもかかわらず、絶対に増税すべきという人たちがいます。そういう人たちの思考回路は一体どうなっているのでしょうか。特に財務省とマスコミの思考回路はどうなっているのでしょう。

彼らが、政治家やマスコミの増税論を主導する理由は、表向きには、いわゆるエコノミストらが正当化する増税の必要性です。ここでは、その必要性に関しては、マクロ経済的に見てあまりにもバカバカしいので、詳細は掲載しません。しかし、なぜそのような"必要性"を持ち出してまで、増税をしたいのでしょうか。

こうした疑問に対して、元財務官僚の経験を元に、財務省の批判をしている冒頭の記事を書かれている経済学者・高橋洋一氏は、著書でこう語っています。

「財務省では、せいぜい向こう三年間か普通は一年間という短期的な視野でしか経済を考えない。財務官僚の頭を支配しているのは、目先の財政収支の均衡なのである」「財政収支の均衡をはかるために最も確実で、手っ取り早いのは増税である。責任問題から見ても、増税のほうが心理的に楽である」(高橋洋一著『消費税「増税」はいらない!』)

高橋洋一氏
つまり、財務省は「増税が財政再建につながらない」ことを知りながら国民を偽っているというより、本気で「財政再建するなら増税がいい」と信じている部分があるのです。

「最も確実で、手っ取り早いのは増税」「増税のほうが心理的に楽」という指摘も、興味深いです。「税率を上げると、税収が下がる」という理論も、当事者にしてみれば怖い話なのかもしれません。

「想い人を追いすぎると、想い人が離れていく」ことが、当人には分からない……ようなものかもしれません。「想い人を追わないなんて、それこそ、離れていきそうな気がして不安……」。そんな気分なのでしょうか。

財務省が増税したい動機については、他にも「増税することで、一部業界への税率を軽減する権限が増える」という"悪代官"路線もあります。とにかく、財務省としては権限を増すことは省益につながると考えているようです。

次に、マスコミの多くが表立って増税に反対しない動機について触れてみます。

マスコミ、特に経済記者には、財務省に決して嫌われてはいけない理由があります。それは、「経済の特ダネは財務省が握っている」ということです。

経済情報という面で、財務省に勝てる存在は日本にいません。財務省は、全国の家計や企業のお金のやり取りを把握し、税金を徴収しています。

つまり、全国の経済活動に関わる膨大な情報が、霞ヶ関に集まってくるのです。一方、巨大マスコミである日経新聞がどんなに頑張っても、GDP(国内総生産)ひとつ計算できません。

特ダネを狙うことで出世競争をする新聞記者にとって、最強の情報源である財務官僚を、敵に回すわけにいかないのです。むしろ、心を開いてもらい、官僚の仕事に後押しになるような記事を書くくらい、"ずぶずぶ"の関係にならなければ、大事な情報は得られないのです。

これについては、元日経新聞のエリート記者であり今は産経新聞で増税の大批判をしている田村秀男氏は、自身が書いた記事について、財務官僚から「それでいいんでしょうかねえ、田村さん……」と何度も言われたり、幹部が財務省OBに「おタクの田村はひどいな」とささやかれたという話を告白しています(田村秀男著『日経新聞の真実』)。

田村秀男氏

ただし、財務省は客観的な経済統計データを発表する義務があります。そのデータを分析すれば、財務省が何を言おうと、あるいは何も教えてもらえなくても、日本の実体経済を理解することができますが、現在の大手新聞の経済記者の能力があまりにも低く、それがほとんどできないというのが実体です。

私の実感では、一部の例外を除いておそらくほとんどの大手経済記者の頭の中には、高校の「経済社会」で学ぶ経済知識すらないのではないかと思います。

信じがたいことですが、現在まともにデータと理論にもとづき分析できる大手新聞の経済記者は田村秀男氏を含めて数人しかいないでしょう。そのため、現在大手新聞の経済欄はほとんどが、財務省の発表もしくは増税派の識者の発言などを取材したものになっています。

また、役人が報道発表を「ハトの豆まき」と呼んでいたことがあったそうです。私も幼いころは、鳩の前に豆を並べて、歩かせたいルートを歩かせて遊んだこともありましたが、官僚は情報を与える対価として、メディアを思うように動かすこともできるわけです。

現在本当に消費税増税をしてしまえば、日本発の不況が世界を悩ますことにもなりかねません。このような消費税増税は絶対反対すべきです。

コラム:日本の純資産はプラマイゼロ、IMFの新国富論―【私の論評】財務省は解体し複数の他官庁の下部組織として組み入れ、そのDNAを絶つべき(゚д゚)!

【田村秀男の日曜経済講座】消費税増税素通りの無責任国会 デフレの悪夢を招き寄せるのか―【私の論評】IMFにも米財務省にも指摘された、日本の消費税増税の非合理(゚д゚)!

「G20大阪サミット」財務官僚が絶対に失敗できない「内部事情」―【私の論評】二ヶ月後に消費税「再々延期」が決定されるこれだけの理由(゚д゚)!

株急落は来年の様々なリスクの前兆、消費増税の余裕はない―【私の論評】財務省は本気で全国民から恨まれ、米国を敵にまわしてまでも増税できるほど肝が座っているのか?

2019年2月24日日曜日

【田村秀男の日曜経済講座】消費税増税素通りの無責任国会 デフレの悪夢を招き寄せるのか―【私の論評】IMFにも米財務省にも指摘された、日本の消費税増税の非合理(゚д゚)!

【田村秀男の日曜経済講座】消費税増税素通りの無責任国会 デフレの悪夢を招き寄せるのか

 今通常国会は小役人による厚生労働省の統計不正追及に終始し、国民経済を左右する10月からの消費税率引き上げはそっちのけだ。消費税増税はデフレという悪夢を招き寄せかねないのに、真剣な論戦がないのは国政の責任放棄ではないのか。

 「悪夢」と言えば、安倍晋三首相が先の自民党大会で旧民主党政権をそう決めつけた。首相はその前の国会施政方針演説で「デフレマインドが払拭されようとしている」と明言した。首相は、国民にとっての民主党政権時代の最大の悪夢はデフレ不況であることを念頭に、アベノミクスがデフレ病を克服しつつあると誇示したかったのだろう。

 ニュースを見ると、人件費や物流費の上昇を受けて今春以降、牛乳、ヨーグルト、カップ麺、高速バス運賃などの値上げが予定されている(18日付産経朝刊)。物価が全般的かつ継続的に下がるというのが経済学教科書でいうデフレの定義だが、生活実感には必ずしもそぐわない。

 物価がたとえ上がっていても、賃金上昇が追いつかないと、デフレ圧力というものが生じる。懐具合がよくないのだから消費需要が減退する。低販売価格を強いられる企業は賃上げを渋る。こうして物価が下落に転じ、賃金も道連れになる。それこそがデフレの正体だ。こじれると賃金が物価以上に下がる。

 政府がわざわざ国民生活をデフレ圧力にさらすのが消費税増税だ。モノやサービス全体を一挙に増税で覆いかぶせる。平成9年度、橋本龍太郎政権が消費税率を3%から5%に上げると、物価は強制的に上がったが、名目国内総生産(GDP)の成長が止まった。その後、物価下落を上回る速度で名目GDPが縮小する長期トレンドに陥った。



 上述したように、消費税増税後、産業界全体が賃金や雇用を減らすようになり、物価の全般的な下落と国民全体の所得減が同時進行する悪循環が起きた。グラフを見よう。旧民主党政権が発足した平成21年以降の名目GDP、GDP全体の物価指数であるデフレーターと日銀による資金供給(「マネタリーベース」)の前年同期比の増減率を比べている。旧民主党政権下では、リーマンショック後のデフレから抜け出せない中、23年3月の東日本大震災に遭遇するとGDP、物価ともマイナスに落ち込んだ。

 思い起こせば、旧民主党政権は確かに無策そのものだった。筆者は22年初め、経済学者の故宍戸駿太郎筑波大学名誉教授らとともに政権を奪取した旧民主党の鳩山由紀夫首相(当時)に直接会って、財政ばかりでなく金融でも量的拡大策をとるよう進言した。鳩山氏は大きな目をくるくる回しながら聞き入れ、「そうですね、金融緩和は重要ですね」と同意した。

総理大臣だった頃の鳩山由紀夫氏


 だが、日銀は一向に動かないままだ。しばらくたったあと、たまたま国会の会議室で出会った鳩山元首相に問いただすと、「官房長官を通じて、日銀に申し上げたのですが、断られました」とあっさりしたものだった。

 日銀の白川方明総裁(同)は金融政策ではデフレを直せないという「日銀理論」の権化のような存在だ。白川日銀が東日本大震災後、資金供給を増やしたのはつかの間で、資金を回収する引き締めに戻し、デフレを高進させた。

財務官僚は、うぶな旧民主党政権を消費税大幅増税の踏み台にした。野田佳彦首相(同)は言われるがままに消費税増税に向けた旧民主、自民、公明の3党合意を成立させた。税率を3%、2%の2段階で引き上げる内容だった。

 省内では「欧州でもそんな大幅な引き上げは景気への悪影響を懸念して避け、小刻みな幅にとどめる」との慎重論が出たが、幹部は「民主党政権の今こそ千載一遇の好機だ」と一蹴した。デフレを放置し、慢性デフレを悪化させる消費税増税にのめり込んだ旧民主党は、衆院総選挙で脱デフレと大胆な金融緩和を唱える安倍自民に惨敗した。

 安倍政権は異次元金融緩和を中心とするアベノミクスで景気を拡大させたが、26年度の消費税率8%への引き上げで大きくつまずいた。デフレーターもGDPも大きく落ち込んだあと、輸出主導で少し持ち直したが、昨年後半は2四半期連続で名目GDPが前年同期比マイナスになった。

 頼みの外需では米国景気拡大が止まった上、中国経済は昨年後半から減速が目立つ。トランプ米政権による対中制裁関税の追い打ちで中国の景気悪化は加速する情勢だ。安倍首相がそれでも消費税率10%を実施するなら、「悪夢」という言葉はブーメランになって自身を襲いかねない。

【私の論評】IMFにも米財務省にも指摘された、日本の消費税増税の非合理(゚д゚)!

日本の消費増税をめぐる議論は、全部嘘です。

「日本は1000兆円の借金を抱えていて財政が破綻する。財政再建のために、消費税を増税するしかない」これは、明らかな嘘です。

「日本は少子高齢化が進んでいて、社会保障の財源が足りないから、消費税を増税するしかない」これも、完璧な嘘です。

しかし日本のメディアでは、そのような「嘘の言説」だけ流します。結果として、そのような嘘が日本ではあたかも「まじめな議論」として通り、まことしやかに語られるどころか、様々な理由で増税に反対すれば、倫理的におかしいなどと批判されてしまうことすらあります。

逆に「消費税に関する議論は嘘ばかりだ」と声を上げると、白眼視される雰囲気さえあります。それは長い年月をかけて培われてきた、日本の「特殊な言論空間」以外の何者でもありません。

消費税の議論は、主に3つあります。
1 財政破綻論 
2 社会保障論 
3 景気論
このうち、1の財政破綻論が嘘であることは、2018年10月にIMF(国際通貨基金)が発表したレポートで世界中にバレてしまいました。これについては、このブログでも掲載したことがあります。
コラム:日本の純資産はプラマイゼロ、IMFの新国富論―【私の論評】財務省は解体し複数の他官庁の下部組織として組み入れ、そのDNAを絶つべき(゚д゚)!

IMFのレポートの内容は、私が従来から主張していたことと同じです。まず財政は、資産と負債の両方が書かれたバランスシート(貸借対照表)で見るものであり、資産と負債の差額である純資産(ネット資産)で判断するものです。

純資産で見ると、日本の財政はバランスが取れており、むしろ健全である、というのが私が主張してきたことです。

IMFレポートも、国の財政は負債だけでなく、資産と併せて見るべきものだと指摘しています。その観点から見ると、じつは日本の財政はG7中、カナダに次いで健全であることが示されています。

またIMFが発表するまでもなく、日本の財政が破綻状態にないことは、世界中の金融のプロたちはよく知っています。

その証拠に、世界で経済的リスクが高まると、決まって「リスク回避」や「安全資産への逃避」を理由に円通貨が買われ、円高になります。経済リスクがあるときに、財政破綻の可能性が高い国の通貨を買う人はいません。先進国のなかでも日本が財政破綻する可能性は低いと知っているから、安全な資産として円が買われるのです。

ところが、財務省は「1000兆円の国の借金」ばかりを喧伝し、マスコミも同じことしか書きません。

しかし借金の額だけを見ても、前述のバランスシートで判断しなければ国の財政のことはわかりません。増税を目論む財務省は、自分たちにとって都合の悪いIMFレポートには触れてほしくなさそうですが、このレポートは世界に向けて公表されたものであり、世界の誰でも読めるものです。

「日本の財政は破綻しそうにない」事実が世界に公開され、「財政破綻だから増税する」という財務省のロジックは、まったく根拠のないものであることが明確になりました。

次に、2 の社会保障論も全くの嘘です いま増税派は、財政破綻論から増税論を語るのは分が悪くなってきたと思ったのか、「社会保障費のための消費増税」という論点に軸足を移しています。

かいつまんでいえば「少子高齢化が進み、年金・医療などの社会保障の財源が足りなくなる。消費税を増税しなければならない」という論です。

しかし、この論も全くの嘘で、間違いといわざるをえません。なぜなら年金、医療、介護の3つの社会保障は、基本的には税ではなく「保険方式」で運営されているからです。実際、世界のいずれの国でも古今東西、社会保障を税で賄うなどという途方もない嘘を言ったのは、日本の財務省とそれに追随する日本のマスコミや識者だけです。

最後に、3 の景気論です。

安倍首相は、リーマンショック級のことがなければ消費増税を行なう、といっていますが、一ついえば世界経済、とくに英国のEU離脱の行方が心配です。

私は、英国のEU離脱は世界経済にリーマンショック級の影響を与える可能性がある、としてきました。その当時は「合意ある離脱」が前提であり、英国政府の予測では、GDPに与える悪影響は3・6~6.0%でした。

いまは「合意なき離脱」を覚悟せざるをえない状態であり、そのインパクトは二倍程度でしょう。であれば、まさにリーマンショック級になるのは避けられないと思います。

米中貿易戦争での中国の景気ダウンも心配です。

中国はまだ成長率6%台といっていますが、この数字が当てにならないのは誰でも知っています。本当に6%台なら景気対策の必要はないでしょうが、中国は20兆円台の減税をやろうとしています。

そのなかで、いま16%の消費税率(増価税率)を10%へ引き下げるとしています。あの中国ですら消費減税しようとしているのですから、これもリーマンショック級といって良いでしょう。

日本としては政策総動員を準備すべきであり、このタイミングで消費増税をするのは間違いです。リーマンショック時に「蚊に刺されたような」と楽観視し、適切な政策が打てずに大混乱したことを忘れてはいけません。

そうして、最後に米国財務省の動きも掲載しておきます。

米国財務省による米外国為替半期報告書に次のような記載があります、"In Japan, growth also has become more uncertain, with setbacks highlighted by a large, tax-induced contraction in the second quarter."

これを日本語に翻訳すると、

「第2四半期の消費税増税という政策的逆行(setback アベノミクスの経済成長路線を妨げた・逆行)のせいで景気後退してしまったので、日本の経済成長率の見通しはより不透明になりつつある」です。

この報告書の本編は以下のリンクからご覧いただけます。


第2四半期の消費税増税とは、2014年の4月の8%への消費税増税を指します。米国財務省は、これが失敗し景気後退したとはっきり述べているわけです。

米国財務省が日本に対して増税を延期しろって直接言うと内政干渉になってしまいますから、婉曲的な表現にして、その中で増税延期を迫っているとみるのが妥当な見方だと思います。これについては、日本のマスコミは完全無視です。

トランプ大統領はなぜ「日本の消費税」に怒るのか、安倍総理は理解しているのか?

このブログで過去にも述べたように、トランプ政権は、日本の消費税を日本の輸出産業に対する補助金のようにみなしていて、反対しています。さらに、米国では元々消費税は不公平な税制とみなしています。これに関しては下の【関連記事】のところに当該記事を掲載しておきますので、詳細を知りたいかたはこの記事をご覧になって下さい。

世界にリーマン級の危機が訪れているにもかかわらず、わざわざ増税するのには何か魂胆があると米国側にみられて、実際増税すれば、それへの対抗措置として日米通商交渉で関税を上げられてしまうということにもなりかねません。

以上に述べたように、これだけのリスクがあり、IMFと米国財務省からも指摘されているのに、なぜ来年消費税を10%に上げるのは異常といっても過言ではないです。

【関連記事】

コラム:日本の純資産はプラマイゼロ、IMFの新国富論―【私の論評】財務省は解体し複数の他官庁の下部組織として組み入れ、そのDNAを絶つべき(゚д゚)!

2018年9月22日土曜日

【日本の解き方】二度あることは三度ある!? 消費増税「スキップ」あるか 改憲とデフレ脱却の切り札に―【私の論評】安倍総理は増税を再延期を公約として参院選になだれ込む(゚д゚)!

【日本の解き方】二度あることは三度ある!? 消費増税「スキップ」あるか 改憲とデフレ脱却の切り札に

総裁選後はじめて官邸に入る安倍総理

自民党総裁選で安倍晋三首相が3選されたが、憲法改正やアベノミクスの今後など、残る首相在任期間中の課題は少なくない。

 憲法改正の手続きは、国会が改正案を示し、最終的には国民が投票で決めるが、まず衆参両院の憲法審査会に国会議員が憲法改正原案を提出するところから始まる。まだ、安倍政権はスタートにも立っていない。

 今回の総裁選を受けて、憲法改正について自民党内での意見集約が進むだろう。安倍首相は国会議員から多くの支持を受けているので、争点はいつ、憲法改正原案を自民党として国会に提出できるかである。

 仮に提出できれば、衆参両院において憲法審査会での可決、本会議において総議員の3分の2以上の可決があってから、憲法改正を国会が発議でき、国民投票にかけられる。国民投票では賛成過半数によって、ようやく憲法改正ができる。

 このように憲法改正では、衆参両院の3分の2と国民投票による過半数という普通の法律にはない高いハードルが待っている。

 安倍政権は、この憲法改正のスケジュールをどう考えているのだろうか。最短でいけば、総裁選後、自民党内で憲法改正原案をもんで来年の通常国会に提出し、衆参3分の2で国民投票案を可決して、その半年後に国民投票というスケジュールだ。来年には改元もあるので、新しい時代に新しい憲法という流れだ。自公は衆参ともに3分の2をとっているので、参院選前に国民投票案を可決しやすいという環境を生かせる。

 しかし、これは公明党がどう出てくるかが問題になる。もし「参院選前にはやめてくれ」となるとスケジュールは崩れ、来年7月の参院選で自公で3分の2を維持しなければ、憲法改正は遠のく。

 となると、来年の通常国会を諦め、参院選で再び勝利を目指していくのか。そのためには、来年10月に予定されている消費増税をぶっ飛ばすのが政治だ。

 もちろん、来年10月の増税はすでに法律があり、準備作業に入っている。財務省は、システム対応が行われているので、来年になってからの消費増税のスキップは社会混乱を招くと主張するはずだ。

 ただし、実務を考えると、来年春に増税スキップを打ち出せばギリギリ間に合うだろう。そうした公約で参院選に突入すればいい、と筆者は考えている。

 これは、アベノミクスの課題対応にもなり、一石二鳥である。というのは、消費増税スキップはデフレ完全脱却の切り札になるからだ。

 来年10月の消費増税の悪影響をなくすためには、バブル景気並みの良い環境と、かなりの規模の減税を含む財政措置が必要だが、消費増税をスキップすればそうした措置も不要で、デフレ完全脱却への近道になる。

 安倍政権は、これまで2回も消費増税をスキップした。二度あることは三度あっても不思議ではない。確かに、安倍首相は来年10月の消費増税を明言しているが、来年7月の参院選の前に「君子豹変す」となっても筆者は驚かない。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】安倍総理は増税を再延期を公約として参院選になだれ込む(゚д゚)!

来年の10月に消費税を10%にした場合、経済が相当落ち込むことは想像に難くないです。なにしろ、今度はかなり消費税が計算しやすくなります。1000円のものを購入すれば、消費税は100円です。1万円なら千円です。10万円なら1万円です。かなり計算が苦手の人でも、すぐに正確に計算できます。これは、かなり消費に悪影響を与えることになるでしょう。

10%への消費税増税が日本経済にかなり悪影響を与えることや、現状では消費税をあげる必要など全くないことはこのブログで何度も掲載してきて、いまさら再度似たようなことを掲載するのも何やら倦怠感すら覚えてしまうほどなので、それは本日はやめておきます。

その変わり目先を変えた変わった見方を掲載しようと思います。それは、産経新聞特別記者の田村秀男氏の記事です。以下にその記事のリンクを掲載します。
【田村秀男のお金は知っている】自民総裁選に物申す、「消費税増税中止」の議論を
この記事は、9月15日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にグラフと、一部を引用します。

グラフは10年前のリーマン・ショック前後からの家計消費動向である。リーマン後、急速に落ち込み、アベノミクス開始後に急回復したが、増税で台無しだ。最近になって持ち直す兆しが見えるが、3%の税率上げ幅分を差し引くと、消費水準は10年前を大きく下回る。 
安倍首相は来年の再増税について「自動車とか、住宅とかの耐久財の消費を喚起する、あるいは商店街等々の売り上げに悪い影響がないように、きめ細やかな対応をしていきたい」と述べたが、小手先の対応に腐心するよりも、すっぱりと中止を宣言すべきではないか。 
石破氏は「経済の7割は個人消費が支えている。個人が豊かにならなければ消費は増えない」と一見もっともらしく語るが、所得がわずかに増えたところで、消費税増税で年間8兆円以上も家計からカネを吸い上げ、内需を抑圧しておいて、どうやって賃金が上がると言うのだろうか。他方で「地方創生」を最重要目標に据えるが、飼料代が増税分だけ負担増になるのに、卵1個の出荷価格の1円上げすらままならぬ地方の養鶏家の苦境にどう応えるのか。 
消費税と自然災害は無関係とみなす向きもあるだろうが、天災はすなわち人災である。人災とは政策の無為または失敗を意味する。国土の安全は治山治水インフラ、それを維持、運営するコミュニティーと組織・機構が整備されなければならない。支えるのはカネである。 
財務官僚が政治家やメディアに浸透させてきた「財源がない」という呪文こそは、国土保全に対する危機意識をマヒさせ、インフラ投資を妨げてきた。「財政健全化」を名目にした消費税増税によって、デフレを呼び込み、税収を減らして財政収支を悪化させ、さらに投資を削減するという悪循環を招いた。「備えあれば憂い無し」という常識が失せたのだ。 
もとより、国家の政策とは、安倍首相が強調するように「政治主導」で決まる。家計簿式に単純な収支計算によって国家予算の配分を決める財務官僚にまかせる従来の方式では大規模で長期にわたる資金を動員する国土安全化計画を遂行できるはずはない。 
多発性の災害までが加わった「国難」に対処する手始めは、消費税増税の中止など緊縮財政思考の廃棄とすべきではないか。
石破氏は経済の7割は個人消費が支えていると言っていますが、これは日本のGDPに占める個人消費の割合が六十数パーセントであることを示しているのだと思います。

増税すると、個人消費が低迷して結局GDPの成長率が落ちてしまうということです。そのことをこのグラフは良く示していると思います。

このグラフ各年は、4月始まりで3月終わりとなっているのでしょう。2014年の4月から、消費税の3%分を差し引いた家計消費はどんどん下がっています、17年でも元の水準に戻っていません。これは、各家庭が増税前よりも消費を減らしているということです。

8%増税で、これだけ消費が低迷しているわけですから、10%増税などしたらとんでもないことになります。

このようなことは、安倍総理はしっかりと自覚していると思います。というより、財務省はもとより、増税推進派の官僚や政治家、マスコミなどは全く信用しておらず、根強い不信感を抱いていると思います。



現状では、安倍首相と菅官房長官が財務省に包囲されてしまい、消費増税阻止のハードルが高くなっているという説が有力のようですが、これは増税派の願望かもしれません。

しかし、それを一応事実であるとして仮定すると、財務省は国民からの文書改ざん、トップのセクハラ疑惑での辞任、パワハラ的構造などでの批判など一切影響をうけずに自分たちの思いのままに政治を攻略していることになります。

さすがの財務省もここまで強くはないと思います。私は、安倍総理は総裁選の前後は無論のこと、後になってもしばらくは増税の再延長などには意図して意識して全く触れないようにしているのではないかと思っています。

なぜなら、そうすれば、財務省や大多数の議員、マスコミ、識者らの増税賛成派に警戒心を与え、増税推進のための大キャンペーンをはられて、それこそ2013年の8%増税決定のときのようになってしまうことを恐れているのではないかと思います。

私としては、やはり憲法改正の国民投票を成功させるため、高橋洋一氏もブログ冒頭の記事で主張しているように、増税の先送りを後押しに利用すべきだと思います。最近は改憲派が増えてきたとはいっても、依然護憲派の力も大きいです。何より、マスコミが護憲派の後押しをするということが大きいです。

改憲派の人でも、いざ国民投票となって、投票するということになれば、おそらくその時にはマスコミが徹底してかつてないほどの巨大な護憲大キャンペーンをすることでしょうから、それに押されて一時的にも護憲のほうに回る人も増える可能性が大です。

そんな時に、消費税10%引き上げをすでにしてしまっていたとすれば、それに伴う駆け込み需要・反動減を抑えるための大型景気対策を実施したとしても世論の不興は避けられないです。憲法改正の国民投票で過半数の賛成票を集めるためには増税の再々延期をすべきです。

そうして、護憲派を強力につなぎとめ、デフレからの完全脱却と、改憲も成功させるのです。そうして、それは安倍総理にとっても良いことです。もし、増税をそのまま強行してしまえば、再び個人消費が今度は8%増税のときよりもさらに低迷して、日本はデフレに舞い戻ります。そうなれば安倍政権は改憲どころか、安倍おろしの嵐が吹き荒れ、政権の座から追われることにもなりかねません。

そんなことは、当の安倍総理が絶対に避けることでしょう。最近、文部科学省の戸谷一夫事務次官が汚職事件の責任を取って辞任し、前任の前川喜平氏と2代続けて事務方トップが不祥事により途中で辞める事態になっています。

辞任した文部科学省の戸谷一夫事務次官

さて、先程の述べたように、財務省は国民からの文書改ざん、トップのセクハラ疑惑での辞任、パワハラ的構造などで批判を浴びています。確かに、佐川国税庁長官が辞任したり、次官は辞任したりはしていますが、まだこれでは甘いと言わざるを得ません。

私は、来年の4月あたりに、さらなる財務省の悪事が露見して、先の文部省人事よりもさらに厳しい人事が行われ、事務次官辞任はもとより、かなりの人数が辞任などに追い込まれたりで、財務省を骨抜きにした後に安倍総理は、増税スキップを打ち出し、それを公約としてで参院選に突入するのではないかと睨んでいます。

財務省に言いたいです、「首を洗って待て」と。一国の総理を甘く見るととんでもないことになります。一国の総理をなめているということは、多くの国民をなめていることでもあります。ふざけるなと言いたいです。

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2017年1月18日水曜日

「賃金上昇でも消費伸びない」 経団連見解は消費増税スルー…財務省路線に乗り続けるのか―【私の論評】スロートレードの現状では企業にとって内需拡大が望ましいはず(゚д゚)!

「賃金上昇でも消費伸びない」 経団連見解は消費増税スルー…財務省路線に乗り続けるのか

経団連の榊原定征会長 写真はブログ管理人挿入 以下同じ
 経団連の榊原定征会長は5日の記者会見で、「過去3年、賃金引き上げを続けているにもかかわらず、個人消費が伸びていない」と話したという。

 経団連は、今年の春季労使交渉における経営側の基本姿勢として、将来不安を解消するため、社会保障制度改革の推進や教育費の負担軽減策などを盛り込んだ「経営労働政策特別委員会報告(経労委報告)」を17日に正式決定、政府に要望する。

 これまで経団連は、法人税の減税などを政府に働きかけ、実現させている。法人税減税と同時に消費税増税も主張してきた。大企業中心の圧力団体として自己の利益に沿った提言を行っており、法人減税と規制緩和が提言の柱である。

 ここで残念なのは、法人減税に関する理論武装がまったくないことだ。理論的には、法人税は二重課税の典型なので、個人段階で税の捕捉が十分にできれば、法人税は不要であるという基本から提言すればいい。そうなると、個人所得の捕捉のために、マイナンバー制や歳入庁創設が必要だということにつながるだろう。

 ところが、経団連傘下の大企業は、租税特別措置による恩恵も大きく、財務省には頭が上がらないようだ。そのためか、こうした「王道」の提言にはあまり積極的ではなく、財務省が唱える財源論に乗っかり、消費増税を主張してきた。ただし、法人減税と消費増税がバーターというのではさすがに国民の批判を浴びるので、社会保障改革として消費増税を主張してきたようにみえる。

 そうした経団連の「努力」もあってか、2014年4月から消費増税は実施された。ところが、「消費増税しても景気は悪くならない」という財務省の主張はウソであり、実際に14年4月以降、景気は落ち込んでいる。

経団連ビル
 「賃上げをしても消費が伸びない」というのは、経団連も主張してきた消費増税には触れずに、消費低迷に言及したもので、なかなか滑稽な話だ。標準的な経済理論によれば、消費が伸びていないのは可処分所得が伸びていないからであり、可処分所得が伸びないのは、消費増税に加えて、賃金の上昇が不十分なためだ。

 そうであれば、消費を伸ばすために消費減税や消費増税の凍結を主張してもいいはずだが、「民僚」ともいわれる経団連は自らの政策提言の失敗を認めず、消費増税路線のままだろう。経労委報告の提言でも社会保障制度改革の推進が掲げられているからだ。

 経団連は、賃金の上昇を恐れており、これ以上の金融緩和も望まないのだろう。追加緩和で完全雇用が実現すれば賃金上昇が本格化するからだ。一方で財務省の路線に乗って緊縮財政と消費増税の旗も降ろさない。

 となると、残るのは規制緩和、構造改革によって消費増加という、ちょっと不可解な方向性だ。未来への投資として、教育・科学技術を国債発行で賄う案でも出せばいいと思うのだが…。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】スロートレードの現状では企業にとって内需拡大が望ましいはず(゚д゚)!

上の高橋洋一氏の記事で解説していたように、経団連は、結局のところ自分たちに都合が良い政策をしてもらうための、圧力団体であるという側面があることは否めません。つい最近までは、日本の一番強力な圧力団体というと、農協と創価学会体でした。しかし、農協は自民党との不和によってその地位を失いました。

そうして、経団連や日本医師会もそれに次ぐ圧力団体といえると思います。現実には、法人減税と消費増税がバーターということで、消費増税を主張してきたのが事実です。

8%消費税を導入して消費が伸びなくなるのは当たり前です。そうして、増税後に消費が低迷しているのは、明確な事実です。それについては、以前もこのブログに何度か掲載しています。その記事の典型的なものを以下に掲載します。
日本の景気は良くなったのか 消費弱くデフレ突入の瀬戸際 財政と金融の再稼働が必要だ―【私の論評】何としてでも、個人消費を改善しなければ、景気は良くならない(゚д゚)!
この記事より、消費税増税の悪影響に関する部分を以下に掲載します。
消費増税の悪影響を如実に示すグラフを以下に掲載します。

この統計は、総務省「家計調査」のなかの一つです。この統計は、全国約9000世帯を対象に、家計簿と同じように購入した品目、値段を詳細に記入させ、毎月集めて集計したものです。


増税から一年半以上たっても消費税引き上げ直後の“反動減”の時期に当たる4月95.5、5月92.5とほとんど変わらない数字です。特に2015年11月は91.8と増税後最悪を更新しました。 
増税前後のグラフを見ていただければ、L字型となっていて、数値が底ばい状態であることが判ります。これは反動減などではなく、構造的な減少です。現時点でも、2015年の平均を100とした指数で90台の後半をさまよい続けています。データでみれば一向に個人の消費が上向く兆しはありません。 
この構造的な個人消費の低下は、当然のことながら平成14年4月からの消費税増税によるのです。 
平成14年3月までは、105円出して買えていたものが増税で108円出さなければ買えなくなりました。その一方で、多くの消費者の給料は消費税増税分をまかなえるほど上昇していません。それは以下のグラフをみてもわかります。
名目賃金は、2013年あたりで下げ止まり、若干上昇傾向です。実質賃金は、2015年あたりで下げ止まり16年からは上昇傾向にはあります。ただし、実質賃金は日銀の金融緩和政策によって、雇用状況が改善して、パート・アルバイトや正社員であっても、比較的賃金の低い若年層が多く雇用されると、一時的に下がります。このグラフだけ見ていていては、現実を認識できません。

そこで、例を挙げると、たとえば昨年2015年の春闘で、日産自動車は大手製造業最高の賃上げを記録しました。そのベースアップ(基本給の賃上げ分)を含む1人当たり平均賃金改定額は1万1千円、年収増加率は3・6%。しかしベースアップ分だけなら、月5千円で、2%を切ります。他にも物価上昇が起きている中で、これでは消費増税増加分すらまかなえません。日産という自動車大手最高の賃上げでもこういう状況でした。

日本中のサラリーマンの給料が実質的に目減りをしたのです。これが2014年4月から続く「消費不況」の大きな原因です。
上の消費支出のグラフは2015年までしか掲載されていないので、以下にその続きも含んだグラフを掲載します。


消費税増税直後よりは、良いですが、それでも2016年の8月は前年同月比で-4.6%ですから、どうみても悪いとしか言いようがありません。この傾向は、現在も続いています。

やはり、2014年4月からの消費増税の影響はかなりなくなってきているのですが、消費の力強さがないために、景気回復はまだしっかりしていない。そうなってくると、企業の設備投資にも慎重になるのはやむをえず、昨年はGDPの伸びが横ばいにとどまったのです。

これは、日本のGDPに占める個人消費の割合が60%であり、最大であるということを考えると当然といえば当然です。消費が伸びていないのは可処分所得が伸びていないからであり、可処分所得が伸びないのは、消費増税に加えて、賃金の上昇が不十分なためです。これは、上のグラフにより、明白です。

これらの事実があるにもかかわらず、「賃上げをしても消費が伸びない」という榊原定征氏の発言は、経団連も主張してきた消費増税には触れずに、消費低迷に言及したものであり、ブログ冒頭の記事で、高橋氏が言及しているように、滑稽といわざるをえません。

経団連(日本経済団体連合会)は昨年6月2日、定時総会を開催しました。2期3年目となる榊原定征会長はその総会で挨拶に立ち、「首相の決定を尊重したい」と安倍政権による消費増税延期を支持していました。さらに、「政権と経済界は車の両輪」と発言し、安倍政権との「蜜月」をアピールして見せました。

しかし、今年の5日の記者会見での榊原定征会長の「過去3年、賃金引き上げを続けているにもかかわらず、個人消費が伸びていない」という発言は、やはり財務省を意識したものでしょう。

やはり、財務省があの手この手で、攻勢をかけた結果として、榊原会長は再度財務省側についたか、官邸と、財務省の間で揺り動いているのかもしれません。

ちなみに、経団連の他の商工会議所も経済同友会も財務省よりです。これらの団体も消費増税すべきとの考えです。

経団連に所属する企業は、大企業であり、輸出をしている企業も多いです。そうして、この「輸出」をめぐっては、過去にはなかった大きな世界的な変化があります。それは、現在の世界が「スロー・トレード」の時代に突入しているという現実です。

スロー・トレードとは、「実質GDPが成長しても貿易量が増えない」現象のことです。IMF(国際通貨基金)のデータによると、1990年代は世界の実質GDP成長率が平均3.1%だったのに対し、貿易量は6.6%も拡大した。貿易の成長率が、実質GDPの2倍以上に達していたのです。

それが、2000年から2011年までは、GDP4%成長に対し、貿易量が5.8%成長と倍率が下がりました。そして、2012年から2015年を見ると、GDP3.3%成長に対し、貿易量は3.2%となっているのです。ついに貿易量の成長率が、GDP成長率を下回ってしまったのです。


この原因は様々な要因があるとは思いますが、まずは世界貿易を牽引する役割を担ってきた新興国の自立ということがあると思います。

少し前までの新興国では資源などを先進国に輸出し、それで得た外貨で先進国から製造品を輸入する構図がありました。成長著しい新興国は、こうして経済を発展させました。しかし経済規模が大きくなると、製造品を自国で作り、自国で消費する方が効率的となります。

自動車やスマホなどを見ても、中国や台湾、インドなどの新興国メーカーが台頭してきている背景はそれが理由です。
こうして新興国が自立し、「自国生産・自国消費」を進めることが貿易量の低下の原因となっている面は否めません。

そうして、もう一つは、反グローバル主義の台頭あります。これまで世界は、貿易量の増加でグローバル化が進みました。

先進国ではこのグローバル化によって、雇用や生産を新興国に奪われていると考えています。
そこで台頭してきたのが、反グローバル主義です。アメリカでは反グローバル主義のトランプ氏が大統領選に勝利し、国内での製造への転換を図ろうとしています。

WTOの発表でも08年以降G20で導入された関税引き上げなどの措置は1671件にのぼり、撤廃は408件を大きく上回っています。

このスロートレード、長引くのか、あるいは収束するのか、今のところは判断が難しいです。

スロートレードが長引くと、世界経済の減速につながるのは確かです。なぜなら、各国得意分野と不得意分野があるからです。人間と同じように、不得意分野を補い合うことで効率が高まり、世界規模で生産性が上がる。それに歯止めがかかるということです。
このスロートレードが長引かないことを祈るばかりですが、これからも続くことも考えられるし、景気循環的に定期的にやってくるようになるのかもしれません。

これを前提とすれば、やはり日本も含めて、世界中の国々がまずは自国の内需を高めることが望ましいはずです。

日本は、貿易立国だなどとする人々もいますが、それは事実ではありません。実際、20年ほど前までは、日本のGDPに占める割合は8%に過ぎませんでした。現在は、11%程度です。

日本は、昔から内需大国だったのです。スロートレードの現在、大企業は輸出の伸びはあまり期待できないわけですから、日本の内需が拡大したほうが良いはずです。

中小企業も、財務省からの補助金があったにせよ、まずは内需が伸びないようでは死活問題です。補助金があっても、内需が低迷すれば、中小企業は成り立ちません。

増税すれば、個人消費が低迷して内需は低迷します。これは、決してすべての企業にとって良いはずはありません。

これを考えれば、経団連などの企業の団体こそ、消費税延期、消費税減税、さらなる量的金融緩和を主張すべきです。とにかく、日本国内の内需を拡大する方向にもっていくべきであると主張するのが当然です。ましてや、デフレを放置したり、デフレスパラルにどっぷりと再びはまることになる消費税増税などとんでもないです。

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2016年6月12日日曜日

次の消費増税にむけて財務省が打った「布石」〜「給付型奨学金」をめぐる唐突な態度変更の理由―【私の論評】負けたふりの安倍総理!年内衆院解散でデフレ根絶か?

次の消費増税にむけて財務省が打った「布石」〜「給付型奨学金」をめぐる唐突な態度変更の理由

日本は奨学金制度も、財政・金融政策も遅れている、この3つを解消しないと根本的解決にはならない
図、写真はブログ管理人挿入。以下同じ。

 財務官僚は国民を見ていない!?

先送りから一転、「給付型奨学金」を導入する方針が決まった。

これまで日本の大学には、返済が義務づけられている「貸与型奨学金」しかなかったが、政府は返済が不要である「給付型奨学金」を、早ければ2017年度にも創設するという。

奨学金制度を所管する文部科学省は、4月中旬、給付型奨学金について財務省との協議に着手。ただ、給付型には一定の恒久財源が必要になることから、財務省は難色を示していた。それを受け、政府も導入に関する結論を先送りする方針を固めていた。

それがなぜ、一転導入へと変わったのか。政府関係者は「財務省の態度が軟化したため」とするが、そうだとすれば、財務省が態度を変えたのはなぜか。

これには、消費増税の見送りが深く関係していると、私は読んでいる。

伊勢志摩サミットが終わった5月28日夜、安倍晋三首相は消費増税見送りの方針を示した。するとすぐさま、財務省は麻生太郎財務相を通じて、見送り反対の意向を発表した。

財務省が消費増税見送りに反対するやり方はいつも同じで、「消費増税なしでは社会保障費がまかなえず、予算が組めない」という脅しである。

財務省がこの脅しをできるのは、そもそも消費税が、「社会保障目的税」とされているからだ。そのため、社会保障関係者は、この理屈を持ちだされると、消費増税に賛成せざるを得なかった。

消費増税の先送りが決まったことで、財務省による来年度予算での社会保障関係費の締め付けは、間違いなく厳しくなるだろう。

 増税こそ財務省の悲願

ただし、'15年10月に予定されていた消費増税を先送りされた時も、やはり社会保障関係費の締め付けはあった。だが、何とか社会保障関係費の激減は免れた。景気が回復していたため、税収も増加し、予算編成はそれほど苦しくなかったからだ。

つまり、消費増税が先送りされても、社会保障関係費は何とか賄えるという結果が、すでに出ているのだ。

言わずもがな、消費増税を悲願とする財務省にとって、この事実は非常に都合が悪い。そこで財務省は、返済不要の給付型奨学金の創設を飲み、文科省に気前のいいところを見せたわけだ。恩を売ることで、文科省を消費増税の応援団にしようとしたのである。

「給付型奨学金を容認してもいい」と財務省が文科省に伝えたのは、安倍首相が意向を固めた5月28日の前である。ここにも、財務省の計算が見て取れる。

消費増税の延期は、これから参院選の公約となって、参院選後に正式に政府方針となる。そのときには、2017年度の予算編成方針も決まる。

だが、消費増税の先送りが決まったため、予算は抑制されることになり、給付型奨学金もご破算になる可能性は高い。そこで財務省は、給付型奨学金を導入したいならば、やはり消費増税が必要であるという、文科省関係者の意見を引き出すつもりだろう。

来年4月の消費増税は難しくなった。だが財務省としては、「その次」の際は、何としても先送りをさせたくない。そこで今回、奨学金問題でその布石を打ったわけだ。財務省の長期戦略は侮れない。

【私の論評】負けたふりの安倍総理!年内衆院解散でデフレ根絶か?

まずは、上に記事で日本には「給付型奨学金」がないというのは間違いです。ブログ冒頭に掲載したグラフでは、ゼロになっていますが、これは違います。「給付型奨学金」は存在します。ただし、一部の本当に優秀な学生にしか給付されません。実際私が学生だったときに、私の先輩の大学院生が「給付型奨学金」を受けていました。

確か、月十数万程度だったと思います。ただし、その方はかなり優秀でした。大学院卒業と同時に、アメリカに数年公費留学しました。今はどうされているかわかりませんが、そのまま研究室に残っていたとすれば、いずれ母校か、いずれかの大学の教授になられたのではないかと思います。
返さなくていい給付型奨学金をくれる団体
先のは、大学院生の例ですが、経済的に恵まれていなくて、かなり優秀な学生(大学・高校)についても昔から、そうして今も「給付型奨学金」があります。ただし、並の学生は、対象になりません。優秀でないともらえません。だから、上のグラフは、並の学生がもらえる「給付型奨学金」のことを指しているのだと思います。

優秀な人で経済的に恵まれていない人は、このようなところに問い合わせてみるべきです。というより、本当に優秀であれば、学校の先生などが黙っていても教えてくれるのではないかと思います。


さて、ブログ冒頭の記事にもあった、日本の「貸与型奨学金」の惨状について、NHKクローズアップ現代で、報道をしていました。その内容を元にして以下に簡単にまとめます。
『奨学金破産』の衝撃 若者が...家族が...
奨学金が返済できずに自己破産するケースが、累計で1万件になりました。大学は出たが、非正規の仕事で収入が少なく、滞納、督促、裁判所命令と追い込まれて、累が家族にまで及ぶケースもあるといいます。昔はこんな話はあまり聞いたことがありません。どこかがおかしいです。

仙台で自己破産した29歳の保育士の女性は、母子家庭で、高校、大学と奨学金を受け残債は約600万円ありました。非正規のため月収は14万円前後で、生活費を差し引くと月5万円の返済ができませんでした。「自力でやっていけると思っていたのですが、返せず、延滞金がついて、このままでは一生払い続けないといけないと思ったのです」。

自己破産は苦渋の決断でした。「迷惑をかけたくない」と婚約も解消しました。悲惨です。彼女が何か悪いことをしたのかと言いたくなります。

自己破産を申請中の愛知県の20代の女性は正社員で4年働いたのですが、昨年失業して返済ができなくなりました。借りた奨学金はまだ407万円あります。自己破産で女性の支払いは免除されるのですが、請求は身元保証人の60代の父親に行きます。毎月2万2000円を払って15年かかります。「共倒れになりそうで怖い」。 
子どもは自己破産。保証人の老親に数百万円の督促
奨学金は経済に余裕のない家庭の子が仕送りやアルバイトで足らない分を補うものですが、大学の授業料は私立でいま86万円、国立で53万円です。親の仕送り額は2015年の平均は8万6700円と最低を更新しました。学生の2人に1人が奨学金を借りています。それに伴って返済の滞納は14年は32万人で増えつつあります。

日本学生支援機構はこの数年、回収を強化しています。返済予定日を過ぎると5%の延滞金、3か月続くと個人信用情報機関に登録、さらに債権回収専門会社の督促が始まり、自宅訪問や会社に電話がきます。9か月後には一括支払いの督促が裁判所からきます。まるでサラ金です。2014年、裁判所からの督促は8400件、10年で40倍になりました。

大阪の62歳の男性は4人の子供を育て上げ、いまは離婚して独り暮らし。老後のため中古マンションをローンで購入した直後、次男の奨学金の一括返済の督促状が届きました。次男は大学院に進学して、850万円の奨学金を受けていました。非正規のカウンセラーをしているのですが収入が少なく返済できませんでした。父も住宅ローンがあります。民事再生で200万円に減額して分割払いとしましたが、残り600万円の請求が、もう1人の保証人である別れた妻にいきました。元妻は自己破産するしかありませんでた。

東京大の小林雅之教授は「終身雇用制なら安定して返済できたんでしょうが、非正規だとこれができない。社会全体の問題です」といいます。 
授業料高く給付型支援少ない日本!「教育の公的負担」先進国で最低
日本は先進国の中でも教育の公的支援が非常に少ない国です。北欧やドイツは私的負担はありません。アメリカ、イギリス、カナダは授業料は高いですが、給付型の補助が多いです。フランス、イタリアなどは授業料が安く、給付型の補助があります。授業料が高く、給付型が少ないのは日本くらいのものです。

教育評論家の尾木直樹さんは「これが僕が育った国なのかとショックです」といいます。日本学生支援機構の仕組みを「金融機関の教育ローンと同じ。スカラーシップの精神がまったくない。サラ金より酷い」といいます。

支援機構は日本育英会から奨学金事業を引き継いだのですが、焦げ付きの解消が命題でした。「自己責任」を前面に出して回収強化となりました。「次の世代のための奨学金の原資を作らないといけない」といいます。その結果がサラ金化です。

政府は2日(2016年6月)に一億総活躍プランを決定して、給付型奨学金の創設に向けて議論を進めるとしました。これに尾木さんは「非常識な国家なんです」と手厳しいです。国際人権A規約では高等教育は無償となっていますが、日本はこの条項を外して1996年に批准しました。2012年にようやくこれを受け入れたのですが、「この4年間何もしてなかった」(尾木さん)

親に負担をかけまいと借りた奨学金が老後の親を苦しめる。そうして取り立てた資金が次の奨学金になり、新たな破産予備軍を作り出すという構図です。「未来への投資」どころか、「未来を潰す」奨学金とは何なのか。根本から考え直す必要があります。

このような酷い状況は、従来はあまりありませんでした。少なくとも20年くらいまえまでは・・・・。なぜそういうことになったのかといえば、日本はいわゆるデフレ気味になってから、20年近くにもなるからです。最近では、もうデフレとは言えない状況になっていますが、それても過去のデフレの悪影響が色濃く残っています。まずは、このことを忘れるべきではありません。

過去の日本は深刻なデフレ・スパイラルのどん底に沈んでいた

そうして、デフレの元凶はなんであったかといえば、それは官僚です。特に、財務省の官僚は、景気が悪かろうが、なんであろうが、お構いなしに、とにかく増税を推進してきました。これが、日本をデフレ・スパイラルのどん底に陥れました。

その他にもありとあらゆる手段を講じて国民に対しては、緊縮財政を強いる一方、自分たちは、金を貯めこみ、その貯めこんだ金を特別予算につみあげたり、官僚の天下り先である外郭団体などに大量に貸し付けました。

何のためにそうしたかといえば、財務省などの官僚の引退後の天下り生活をハッピーライフにするためです。そうして、その体質は今も続いています。そのため、GDPの60%を占める個人消費が低迷して、GDPは下がる一方でした。しかし、財務省は国民生活など二の次にして、財務省の省益を一番に優先して、今でも増税体質を変えていません。

一方、デフレの元凶は、少し前までの日銀の官僚もそうでした。不況であろうがなんであろうが、とにかく何かといえば、金融引き締めをくりかえし、日本がデフレになりかけても、金融緩和をすることなく、さらに引き締めをし、日本が完璧にデフレスパイラルのどん底に入った後でも、それを繰り返しました。そのため、雇用環境がかなり悪化して、非正規雇用が増え、失業率も増えました。

しかし、日銀は2013年から金融緩和に転じ、それ以降緩和を継続して今日に至っています。そのために、雇用環境が改善して、正規雇用の人数も増えましたし、大卒・高卒の就職も最高水準にまで達し、今日に至っています。

雇用状況が劇的に改善された日本、ただし過去のデフレの悪影響は色濃く残っている
クローズアップ現代の酷い事例の数々は、過去の日銀の政策があまりにも悪い結果によるものです。今後も、現状のまま推移すれば、このような酷い事例はなくなるはずです。ただし、これにはいくつかの条件をクリアしての話です。

その条件とは、まずは日銀が日本経済がデフレから完璧に脱却し、経済が順調に推移するようになりまで、金融緩和を継続することです。それと、財務省が、日本経済が順調に推移するようになるまで、増税などは止めて、できれば積極財政をすることです。

この条件がクリアできなければ、またまた、クローズアップ現代のような酷い事例が発生することになります。そうして、日本経済がデフレから完璧脱却できなければ、たとえ給付型の奨学金が増えたにしても、根本的には問題は解消されないことになります。

折角デフレが解消しかけている今の日本で、増税を実施すれば、デフレからなかなか脱却できないばかりか、せっかく金融緩和で良くなった雇用環境もいずれ悪化することになります。

現状増税をするとせっかく金融緩和で良くなった雇用も悪化するおそれがある!
そうすると、どういうことになるかといえば、せっかく給付型奨学金をもらい、大学や大学院を卒業したとしても、就職先がないということになります。そうなると、奨学金の返済がない分は、楽なのですが、非正規雇用などに甘じたり、場合によっては、それさえも得られないような人たちが大勢でてくることになります。そうなると、とんでもないことになります。

大学や大学院を卒業しても、正規雇用がないということになれば、当然のことながら給料が少ないわけですから、多くの人々が消費を控えることになります。そうなるとどうなるかといえば、税収が減ります。そうなると、どうなるかといえば、財務省はまたまた増税キャンペーンを行うことになります。

そうして、増税が実施されると、個人消費が減り、税収が減ります、そうなるとまた財務省は増税キャンペーンを行うことになります。結局どういうことになるかといえば、いつまでも増税が繰り返されることになり、増税の無限ループになってしまいます。

平成14年度からの8%増税が大失敗だったことは明白

しかし、そうすることによって、財務省の省益はますます堅固なものになり、官僚のハッピーライフはより確かなものになります。そうして、これにさらに日銀が金融引き締めに走れば、日本は再びデフレ・スパイラルのどん底に沈むことになります。

そうなると、大学や大学院を給付型奨学金で金銭的には楽に卒業できたとしても、雇用環境がかなり悪化して、そもそも正規雇用の道がかなり閉ざされ、ほんの一部の人しか正社員になれなくなります。

運良く正社員になったとしても、いつリストラされるのかわからいな状況に陥ります。そうなれば、また増税しなければならなくなり、当然のことながら、いつまでもこのようなことは繰り返すことはできないので、いずれ財務省の増税路線も頓挫して、特別会計の資金や、外郭団体などに貸しつけた資金を使わざるを得なくなります。

しかし、それでもデフレは継続し、政府の使えるお金にも限度があるので、役所の人間をリストラするか、給料を少なくせざるを得なくなります。そうなると、官僚の定年後のハッピーライフどころではなくなります。増税路線を堅持するにしても、いずれ限界がくるのは明らかです。

こんな馬鹿げたことを防ぐには、結局のところ、日本経済がデフレから完璧に脱却して、経済が加熱気味で完璧にインフレ傾向になるまで、日銀は金融緩和を継続し、財務省は減税、給付金、公共工事などの積極財政をすることです。

それによって、日本はデフレから完璧に脱却し、成長軌道にのります、そうすると経済成長ができるようになり、そうなると無論のこと税収も増えます。税収が増えると、それだけで、給付型奨学金の財源も増えるわけです。

一部の経済学者など、日本は成長しないという人もいますが、これ暴論です。過去の日本がデフレでないにもかかわらず、経済成長しなかったのなら、この話も理解できまが、デフレのまっただ中では、成長しないのが当たり前です。

いずれの道を選ぶべきかといえば、当然のことながら、本当は財務省にとっても、景気が上向くまで、積極財政を実行することです。

しかし、現在の財務省はそんなことはおかまいなしに、とにかく何が何でも増税するという姿勢は崩していません。


そのことは、安倍総理の「増税見送り」という言葉にも現れています、結局のところ未だ財務省は全面敗北はしていないので、「増税凍結」とはならなかったのです。ただし、これは実質的には、「凍結」と同じです。安倍総理は、「負けたふり」をしているのです。

なぜなら、増税予定だった17年4月から2年半後の2019年10月といえば、安倍首相の自民党総裁任期である18年9月を過ぎてしまいます。実務的にも19年10月から増税しようとすれば、ぎりぎり19年3月ごろまでに決断すれば良いことになります。

いずれにせよ安倍首相の任期が終わった時点なので、10%への増税をするかどうか本当に決めるのは、安倍総裁の任期が延長され首相に留任しないかぎり、次の首相という話になります。次の首相が誰になるか分からないのに加えて、次期首相が安倍首相の約束を守るかどうかもわかりません。

いまの衆院議員の任期は18年12月です。それまでに衆院選があればもちろんですが、任期満了で総選挙になったとしても、選挙結果次第で、最終決断する19年3月時点では自民党政権が続いているかどうかさえも分かりません。

つまり2年半後の政権が決まっていないのだから、増税がどうなるかは当然、分かりません。結局、はっきりしているのは「いまの安倍政権が続いている間は増税しません」という話だけなのです。

延期というなら、次は実施できる条件がそろっていなくてはならないはずですが、そんな条件はいま安倍政権の手元にはありません。だから、これは再延期というより実質的には「安倍政権による凍結」というべきです。
自民党「屋台村」、被災地名物に舌鼓 谷垣コック、牛タンカレー振る舞う。牛たんカレーをよそって配る
谷垣禎一幹事長(右)と稲田朋美政調会長(左から2人目)3月12日日午後、東京・永田町の自民党本部
増税推進派の麻生太郎財務相や谷垣禎一自民党幹事長、稲田朋美政調会長らが「増税を延期するなら解散を」と求めていました。

財務省は負けたふりがうまいです。そもそも、10%への消費増税は選挙を経ずに決めたのに、増税延期には国民の信を問わなければいけないということははまさに、「民主主義に対する官僚支配の構図」以外の何ものでもありません。「衆参同日選挙で消費増税の延期」という発想自体が財務省の「わな」です。

しかし、今回安倍総理は「衆院解散総選挙」で国民の信を問うということをせずに、増税延期を決めました。しかも、言葉では「増税延期」という言葉をつかいましたが、実質的には上記で説明したように「増税凍結」です。だから、私は先程、安倍総理は「負けたふり」をしていると掲載したのです。

このように実質的に財務省に対して、勝利をしている安倍総理ですが、以前のこのブロクにも掲載したように、過去の例では、サミット議長国の年は、ほとんどが衆院を解散して、総選挙を実施しています。

今年も、その例外ではないかもしれません。そうして、増税凍結を決めた参院選の後に、年内に衆院の解散総選挙を実施するかもしれません。

そのときの、争点は、以前のブログにも掲載したように、機動的財政・金融政策の実施の宣言ということになるかもしれません。

機動的財政政策とは、景気が悪すぎれば、減税などの積極財政を行い、景気が良すぎれば、増税などの積極財政を行うように財政政策を変えること、そうして財政政策の目標は無論のこと政府が定めます。財務省は、政府の目標に従い専門的な立場から、その目標を達成するための手段を自由に選ぶことができるようにします。

機動的金融政策とは、景気が悪すぎれば、金融緩和を行い、景気が良すぎれば、金融引き締め策ができるように金融政策を変えること、そうして金融政策の目標は政府が定めます。日銀は、専門家的な立場から、その目標を達成するための手段を自由に選ぶことができるようにします。

これが本当の意味で、中央銀行の独立性です。今の日銀法では、日銀の政策決定委員会で日本国の金融政策を決定するという、世界的にみても不可思議な決定方法になっています。これを是正するには、当然のことながら、日銀法の改正が必要です。

要するに、わざわざ選挙で国民の信を問うなどといことをしなくても、政府が財政・金融政策の目標を決定できるようにするという、世界の中では当たり前のことをできるようにするということです。

私は、これを機動的財政・金融政策であると解釈しています。そうして、安倍総理が伊勢志摩サミットで共同宣言に盛り込んだ、「機動的財政政策」とは当然のことながら、私の解釈と同じものであると思います。

もう国民も、デフレには飽々しており、一刻もはやくデフレから脱却したいと考えていると思います。無論安倍総理もそのように考えています。そうして、デフレから完全脱却できる方法が、政府による機動的な財政・金融政策です。安倍総理としては、これを国民にわかりやすく説明して、本当に機動的な財政・金融政策ができるようにして、デフレからの早期脱却を実現していただきたいものです。

それが実現できないうちに、給付型寄付金だけを導入しても、問題の根本的な解決にはなりません。「給付型寄付金+デフレから脱却、ならびにデフレに陥らない経済対策、デフレに陥っても素早く脱却できる機動的な財政、金融政策」を目指し、NHKクローズアップ現代のような事例などこれから起こらないように根絶していただきたいです。

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2016年5月29日日曜日

消費税増税2年半延期 安倍首相が麻生、谷垣氏らへ方針伝達 麻生氏は「解散」主張―【私の論評】安倍総理は、伊勢志摩サミット声明に盛り込んだ「機動的財政政策」で衆院選大勝利(゚д゚)!

消費税増税2年半延期 安倍首相が麻生、谷垣氏らへ方針伝達 麻生氏は「解散」主張



安倍晋三首相は28日夜、首相公邸で麻生太郎副総理兼財務相、自民党の谷垣禎一幹事長、菅義偉官房長官と会談し、来年4月に予定している消費税率10%への引き上げを平成31年10月まで再び延期する方針を伝えた。国会会期末の6月1日にも発表したい考えで、政府・与党内の調整を急ぐ。

会談で首相は、消費税率の引き上げを「2年半延期したい」と伝えた。これに対し、麻生、谷垣両氏は財政規律維持の観点から予定通りの増税を求めて異論を唱え、引き続き協議することになった。

増税烈士の麻生、谷垣両氏
麻生氏は「再延期するなら衆院を解散して国民の信を問うべきだ」とも主張した。首相は同調せず、菅氏は公明党に配慮して衆参同日選を見送るべきだとの考えを示した。

連立与党の公明党も社会保障の財源確保のため再延期には否定的な立場をとってきた。首相は近く、同党の山口那津男代表とも会談して理解を求める。

26日の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)の世界経済に関する討議で首相は、現在の状況が「リーマン・ショック前の状況と似ている」と指摘。世界経済が直面するリスク回避のため、あらゆる政策をとることで合意した伊勢志摩サミットの議論を踏まえ、政策を総動員して対応する方針を示していた。

首相は28日の政権幹部との会談でも、同様の観点から消費税増税の再延期の必要性を説明した。再延期については27日の記者会見では「是非も含めて検討し、参院選前に明らかにしたい」と語っていた。

ただ、首相は26年11月に消費税増税を1年半延期して衆院を解散した際に「再び延期することはない」と断言。その後は、20年のリーマン・ショックや23年の東日本大震災級の事態の発生を再延期の条件としていた。 

首相は新たな経済対策を盛り込んだ28年度第2次補正予算案の編成に向けた検討にも入った。補正の規模は5兆~10兆円程度になるとみられ、近く閣議決定する「骨太の方針」や「ニッポン1億総活躍プラン」から施策を盛り込む。

【私の論評】安倍総理は、伊勢志摩サミット声明に盛り込んだ「機動的財政政策」で衆院選大勝利(゚д゚)!

さて、消費税増税見送りはこれで決まったと見て良いと思います。なぜなら、いくら麻生、谷垣両氏が財政規律の立場からこれに反対したとしても、増税すればさらに個人消費は落ち込み、税収が減ることは過去の三度の3%、5%、8%増税のときであまりにもはっきりしすぎているからです。

むしろ、財政規律を重視するというのなら、10%増税はすべきではないです。にもかかわらず、なぜ増税するかといえば、財務省が税金の配賦権限を強め、さらに霞が関で絶大な権力を得ようという魂胆があり、財務省がそれを目指して、税と社会保障の一体改革などとして、無理やり増税が正しいというキャンペーンを繰り返し、政治家や新聞などのマスコミなどを巻き込んできたからです。

最近発表された今年1月〜3月期のGDPの発表をみても、どう考えても増税すべきでないことは、あまりにもはつきりしすぎています。それについては、このブログでも最近掲載したばかりです。その記事のリンクを以下に掲載します。
やはり嘘だった財務省の「増税の影響は軽微」 衆参ダブル選再燃も―【私の論評】政府は私が中学の時に味わった、鮮烈なアハ体験を国民に味合わせるべきだ(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事より2016年1〜3ガ突きのGDPのポイントと、うるう年効果に関する表、ならびに最近のGDPの推移を以下に再掲します。


本年度2月のうるう年効果、公表されたGDPの値から"うるう年効果"を控除したのが実質値


さて、公表されたGDPの1月〜3月の値は、実質成長0.4%で、年率換算では1.7%です。しかし、この値は無論のこと、うるう年効果は相殺されたものではありません。うるう年効果を相殺すると、1月 〜3月期のGDPの修正値は、0.1%、年率換算では0.5%です。

これをみれば、ぎりぎりプラスであり、もし海外情勢などの何か別な悪い要因が少しでも重なれば、マイナスになった可能性は大です。

これではとても、実質経済が安定しているとはいえません。ちなみに、昨年の10月〜12月もマイナスでした。2期連続でマイナスになれば、マクロ経済学では不況期入とみなしますから、日本経済はぎりぎりで、不況期入にはならなかったわけです。

この状況をみれば、8%増税の悪影響は明白であり、この上さらに来年の4月から、10%増税ということにでもなれば、とんでもないことになったことでしょう。

この状況をみて、アベノミクスは失敗などという人も多いですが、現在のところ金融緩和の政策が奏効して、雇用環境がかなり良くなっています。今春卒業した大学生の就職率は97・3%で、前年同期から0・6ポイント増え、調査を始めた1997年以来最高とななりました。

文部科学省と厚生労働省が今月20日発表した。2011年に最低(91・0%)を記録した後、5年連続で改善し、これまでの最高だったリーマン・ショック前の08年3月卒(96・9%)を上回りました。高卒の就職率もかなり改善しています。金融政策は成功しているのです。少し前までは、非正規雇用ばかり増えているなどと語っている人もいましたが、これをみれば、もはやどう考えても正規雇用も増えつつあるのは明らかです。


中には、まだ「実質賃金がー」と叫ぶ方もいるようですが、これははっきり間違いです。これは最初からわかっていることですが、雇用情勢が急激に改善しているときには、実質賃金は下がります。

このようなことは常識で考えてもわかります。今季高卒や大卒の採用が大幅に改善しているわけですから、大企業などで高卒や大卒を大量にある企業が雇用したとします。従来よりも、高卒・大卒の若くて、賃金が低い人の構成比率が増えるわけですから、会社全体の平均賃金は下がります。国全体でも同じことです。

だから、正確にいえば、8%増税が大失敗であったことは疑う余地がありません。これで、増税せよという人の神経が全く理解できません。さらにこのブログには、何度か掲載したきたように、現状認識として今の日本の財政状況は悪くはありません。連結政府(統合政府)のB/Sでネット債務残高のGDP比は40%以下で米英より良い状況です。財政再建は一般論として必要でも今の状況で優先順位はかなり低いです。仮に必要としてその手法として増税は間違いです。現状では、経済成長が最適です。

麻生氏、谷垣両氏は一体この現実をどう認識しているのでしょうか。彼らの言動は、増税のための増税と主張しているようにしか見えません。彼らは、増税烈士というあだ名がふさわしいかもしれません。

ところで、衆院解散で衆参ダブル選挙になるかどうかは、まだ五分五分の状況です。

この状況に関して、日経新聞では以下の様に論評しています。
12年12月に発足した安倍政権は安倍、麻生、菅の3氏と、経済再生相だった甘利明氏をあわせた「3A1S」で運営していた。1月に甘利氏が政治資金問題で辞任に追い込まれた後は「2A1S」の状態が続いています。 
しかし、増税再延期と同日選をめぐる結果が出れば、首相を頂点とした麻生、菅両氏の三角関係が、二等辺三角形なのか、そうでないのかがはっきりする。
麻生氏は再延期に反対し、同日選に賛成。一方、引き続き公明党と足並みをそろえる菅氏は再延期派で、同日選には否定的だ。28日夜の会合でも、首相は2人の意見の違いを把握できたはずだ。 
 サミット成功とオバマ米大統領の歴史的な広島訪問という大きな実績を築き、首相は勢いに乗る。ただ、政治決断の着地の仕方によっては、自身を支える政権幹部との関係を変えるリスクもある。
しかし、現実にはさらなる日経新聞の予想を上回るサプライズも考えられます。それは、8%減税が大失敗だったことははっきりしているわけですから、この悪影響を取り除くために、消費税減税を行い消費税を5%にして、その是非を問うために、衆院を解散して、衆参同時選挙にするというサプライズです。

8%増税は、大失敗とわかったわけですから、まともに考えればこの道もあり得るわけです。8%増税をそのままにして、新たな経済対策を組んだとしても、少なくとも10兆円、できれば20兆円クラスの対策でなければ、焼け石に水です。

無論、これはやってできないわけではありません。財源をどうするのかなどとい話もありますが、それはたとえば、為替特会労働特会もあるわけで、特に雇用情勢が良くなりかつ円高傾向の現在では、労働特会を主に用い、為替特会を為替対策に使いつつも余剰の分も一部使うなどの方法でも、十分すぎるほどです。

しかし、これには欠点もあります。経済対策は長期にわたっては続けられないということです。一方、8%増税も含めて、消費税増税は一度増税されると、それは不可逆的で永遠につづくものと見られています。

実際、過去には消費税は、上がる一方で、下がることはありませんでした。だから、経済情勢はどうであれ、一度決まった消費税率は下がることはないと思われています。

これでは、結局大規模な経済対策を行っても、それは一時のことであり、一度あげられた消費税率は、永遠に下がらないものと多くの国民は、思っているため一時の経済対策を行っても、長期的には消費が冷え込む恐れがあります。

しかし、ここで消費税を5%に減税したらどういう効果があるでしょうか。無論、8%増税の悪影響を取り除くことができます。しかし、これは一つの効果でしかありません。もう一つ大きな効果があります。それは、一時上がった消費税は下がることもあり得ると多く国民に理解してもらえることになります。これは、マクロ経済学では当たり前のど真ん中です。増税、減税は政府がその時々で採用する財政政策の一つすぎないのです。

マクロ経済循環 そもそも増税論者の頭の中にはこの循環がないのでは?まさか
政府がお金を支出するとそれは、この世の中から消えると思っているのでは?
そもそも、増税は緊縮財政の一つの手法です。これは、景気が良すぎでインフレのときなどに景気を冷ます効果があります。

一方減税は、積極財政の一つの手法です、景気が悪くてデフレのときなどに景気を浮揚させる効果があります。

安倍総理は、今回減税して、消費税を5%に戻し、今後政府は景気が悪すぎのときには消費税減税を、景気が良すぎの時には消費税増税をするという機動的な財政政策を行うことを宣言して、その是非を衆院選でその是非を国民に問うようにすべきです。実際に安倍総理は、伊勢志摩サミットの共同宣言で「機動的財政政策」という文言を盛り込んでいます。この言葉、マスコミなどはネガティブに受け取っているようですが、ポジティブに受け取ると、このようにも解釈できます。

同時に、日銀も不景気のときには、金融緩和を景気が良すぎるときには、金融引き締めという機動的な金融政策を行うことも、宣言して、衆院選でその是非を国民に問うようにするのです。できれば、それを実行できるように、日銀法の改正も宣言すると良いと思います。

そのような宣言して、衆院選に勝利できれば、財務省や日銀が政府の意向に沿わない、財政政策や、金融政策を実行しようと思ってもできなくなくなります。

これは、サプライズ中のサプライズです。これを実行して、過去の日本のように15年以上もの間デフレスパイラルの泥沼に沈むようなことが二度ないようにしていただきたいものです。これを宣言して、実行すれば、あっという間に日本経済は、回復軌道にのります。

このような衆院解散であれば、解散そのものと減税という2つの大サプライズを起こすことができます。

そうして、この2つとサプライズは大いに有り得ることです。もう、安倍総理も国民も、日銀と財務省に悩まされることにはうんざりです。そうして、上記のような要求は当たり前のど真ん中の、マクロ経済のど真ん中の政策を日銀や財務省に実行してほしいというだけで、根拠も明確ですし、説明をすれば、大多数の国民も認めるでしょうから、市場もかなり好感するでしょうし、衆院選も大勝利になります。

これは、たとえ衆参同時でなくても、まずは今回は参院選だけで、消費税見送りをして、その後に衆院を行うにしても、これを争点にすれば、かなりの大サプライズです。伊勢志摩サミットでも声明に盛り込んだ、「機動的財政政策」により機動的に景気が過熱したときには増税、景気が落ち込んだときには減税をその時々の経済状況に応じて実行することを宣言すれば、日本の経済政策の分岐点にもなる画期的なことになります。

衆参同時であろうが、衆院単独であろうが、ぜひとも実行していただきたいものです。

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