2017年8月13日日曜日

自民・二階幹事長の「財政出動10兆円構想」は実現可能か?―【私の論評】自民党は「補正予算10兆円」で支持率上昇、再度安定政権を目指す(゚д゚)!

自民・二階幹事長の「財政出動10兆円構想」は実現可能か?

もちろん財務省は黙っていないが…

 財政拡張は悪手ではない
都議選の大敗や稲田朋美防衛相の辞任などでやや失速気味の自民党。そんななか、党内ではアベノミクス路線を改めて強調する動きが強まっている。

自民党の二階俊博幹事長は自身の派閥の研修会で、「現状の日本経済はいまだにデフレから脱却できていない」と強調。そのうえで「10兆円程度の大型補正予算を編成する必要がある」などと宣言し、今後もアベノミクスを続行していくべきだとの姿勢を崩さなかった。

二階幹事長
2ケタ規模の補正予算ともなると気が気でないのは財務省で、なんとか食い止めようと働きかけてくることは想像に難くない。はたして二階幹事長のプランの可能性はいかほどなのか。

実は、この時期に改めて財政拡張を行うのは決して悪手ではない。そのことを裏付ける指標がある。GDPギャップと呼ばれるものがそれだ。

GDPギャップとは、その国の経済が持っている供給力(潜在GDP)と現実の需要との間にある乖離のことだ。潜在GDPは完全雇用などの状況を前提にして推計されるもので、このギャップがプラスのときは好景気または景気過熱、マイナスのときは不況と判断される。

内閣府は、このGDPギャップについて、'17年1-3月期ではプラス0.1%としている。つまり、日本はいま好景気に差し掛かろうとしてはいるのだが、実は「もう安心」と判断するのは早合点で、経済政策の観点からはまだまだ「不十分」なのである。

 財務省はどう動くか

内閣府の過去のデータを遡ってみると、'07年あたりはGDPギャップがプラス2%と高水準にあったが、当時も物価の面からはデフレ状態にあった。実際にインフレ率が上昇したのはその後の'08年半ば過ぎのこと。

この過去データから言えることは、内閣府が発表するGDPギャップがプラス2%程度になって、ようやくインフレ率が上がり出す、つまりは本格的に景気が上向いてくるということなのである。

アベノミクスでは金融政策と財政出動を組み合わせ、インフレ率の「2%上昇」を目標にしているが、消費増税の影響などもあり数値はなかなか上向きにならず、日銀は'19年に達成時期を延期すると発表している。

つまり、現状のGDPギャップから見ても、財政出動はまだまだ実施の余地があり、二階幹事長の「10兆円程度」という財政出動は、デフレから脱却するためには妥当な規模であるといえる。

もっとも、この動きに財務省は黙っていられないはずだ。

「増税ではなく国債発行で補正予算を組むのは、支持率回復のためだ。このままでは財政再建は厳しくなる一方だ」

こうマスコミに語り、財務省の人々は自民党を牽制するだろう。

7月、安倍首相はこれまで導入に否定的だった「教育国債」について「可能性から排除しない」姿勢を示した。もちろん財務省はこれらのことを快く思っていない。彼らは、この際、安倍政権が退陣して、財政再建派で財務省の言いなりになる政権ができないかと願っている。

反安倍政権に財政再建派が多いことを考えると、秋の補正予算で二階構想が実現するかどうかは、安倍政権を倒閣する動きとも絡んでくるので見物だ。

【私の論評】自民党は「補正予算10兆円」で支持率上昇、再度安定政権を目指す(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事の、二階幹事長の「10兆円程度の大型補正予算を編成する必要がある」という発言が気になりました。

この数字には妥当性があるのかどうかというところが非常に気になりました。上の記事では、GDPギャップについても記載があり、そこから妥当な規模であるとの論評があります。

しかし、この指摘は間違いだと思います。下の図1は、2000年以降四半期ベースで見たGDPギャップとインフレ率の関係です。左軸にGDPギャップ率、右軸にインフレ率(消費者物価総合対前年比)をとっています。GDPギャップは半年後(2四半期後)のインフレ率とかなりの相関関係があります。

◆図表1:GDPギャップ率とインフレ率(半年後)
ここで、GDPギャップとインフレ率の関係から、「2%インフレ」にするために必要なGDPギャップ水準を算出してみると、+4.5%程度です。

それを埋め合わせるためには、有効需要25兆円程度が必要になります。1単位の財政出動による需要創出効果を示す財政乗数が、内閣府のいう1.2程度としても、この有効需要を作るための財政出動は20兆円程度です。

財政乗数とは、財政支出乗数のことです。これは、「財政支出を1単位増加させたとき、国民所得がどれだけ増加するか」の値す。

政府支出乗数( government expenditure multiplier)とは、限界消費性向をc,限界租税性向をtとすると,政府支出が1だけ増加するとき,総需要の増加分は,政府支出の増加分だけでなく、それに加えて政府支出の増加分が生み出す家計消費支出の増加を含むので、均衡国民所得は 1/(1-c(1-t))だけ増加します。この比率1/(1-c(1-t))が政府支出乗数、あるいは財政支出乗数といいます。

いずれにせよ、現状の日本がデフレから完璧に脱却するために必要な財政出動は、20兆円程度ということです。

10兆円は、この半分ですから、とてもじゃないですが、デフレから完璧に脱却できるような規模ではないです。

では、二階幹事長の言う「10兆円」と一体どこから出てきた数字なのか、いろいろ調べて見ましたが、いずれを調べてみても、その根拠らしいものは見つかりませんでした。

そこで、ここから私の憶測ですが、本来は20兆円であることは、二階氏も誰から経済に明るい人に聴いて十分理解しているのかもしれませんが、いきなり20兆というと、財務省はかなり難色を示すので、まずは10兆としたのだと思います。

そうして、本予算も大きめにして、実際に走ってみてみれば、10兆円規模であれば、数兆円の補正予算よりははるかにましで、デフレから完全脱却はできないものの、それなりに効果があり、その効果によってある程度税収が増えることが期待できます。

デフレ・ギャップが20兆円もあるにもかかわらず、過去には、5兆円規模の補正予算が組まれ実行されたこともありましたが、これでは焼け石に水でほとんど効果がありませんでした。

しかし、デフレ脱却には不十分といいながら、さすがに10兆円規模ともなれば、それなりに効果はあり、少なくと統計値上には何らかの効果が現れてくるはずです。

その時に統計数値を根拠にして、また追加補正をするなどのことが考えられます。

本来は8%増税をして、個人消費が低迷してしまい、未だデフレから脱却できないのですから、最も良い手は、減税して消費税を5%にすることです。

しかし、ここ日本ではそれをしたくても、財務省の力が強くなかなかできないというのが実情なのです。本来財務省など政府の下部機関であり、政府の財政目標は政府が決めて、財務省はそれに従うべきです。

なぜなら、政府は国民の選挙により信託を受けた人々によって運営され、経済運営に失敗すれば、次の選挙では、有権者が気にいらなければ当選しないかもしれません。

しかし、財務省などの官僚はそうではありません。だから、本来は財政政策の目標は政府が定めて、財務省は専門家的な立場から、それを実行するというのが正しいあり方です。

ところが、現実には日本の財務省はまるで、これが一つの政治グループであるかのように、振る舞い、様々な同調圧力を用いて、結果としてこの国を支配しています。

テレビ番組で財務省の悪事を説明する高橋洋一氏
多くの人は財務省の言いなりで、まともな経済理論からするとおかしくて噴飯物の議論が、平気で公共の電波を通じて撒き散らされています。無知な政治家ならともかく、いわゆる主流派といわれる経済学者や評論家、アナリストまでそうなのですから、財務省の「同調圧力」は凄まじいものがあります。この日本という国はどこまで「財務省支配」がいきわたっているのか、本当に末恐ろしいです。

このような財務省支配がいきわたっている日本においては、政府ですら財務省に一定の配慮をしなければならないのです。

そのため、自民党は次善の策として、10兆円の財政出動を念頭に置いているのではないかと思います。

ブログ冒頭の記事では、「反安倍政権に財政再建派が多いことを考えると、秋の補正予算で二階構想が実現するかどうかは、安倍政権を倒閣する動きとも絡んでくるので見物だ」としています。

実際、この10兆円が実現すれば、先にあげたように次の展開も考えられますが、実現しなければ、安倍政権は終焉を迎える可能性がかなり高いです。

財務省の期待される役割は調整役だか、実体は調整でなくて同調圧力になっている
しかし、総理は改憲も長期政権も諦めていません。内閣支持率の低下を受け、安倍政権があたかも「崩壊前夜」のような印象を振りまくメディアもありますが、これは政治の根本を見ない希望的観測にすぎません。

細田派、麻生派、額賀派、岸田派、二階派の主要5派閥は安倍政権を支え続けると明言しています。実際、次の総裁選で安倍総理が負けて誰であれ他の人が総理になった場合、まだ安倍総理のように安定した政権を維持できるかはかなり疑問符がつきます。

それくらいであれば、ここしばらくは安倍政権を支え、再度支持率をあげ安定政権を目指すほうが得策です。

いずれにせよ、今般の内閣改造ではっきりしたのは、当分の間、日本政治の主役は安倍総理であり続けるということです。このあたりは、三浦瑠麗氏の以下の記事を読んでいただくと、良くご理解いただけるものと思います。
内閣改造 総理は改憲も長期政権も諦めていない 三浦瑠麗氏
そうなると、たとえ財務省が自民党を内部分裂させようとして、様々な同調圧力を加えてきたにしても、それに与する派閥は存在しないでしょう。さらに、野党に対して同調圧力をかけて何かしようとしても、民進党も支持率を落とし、蓮舫代表も退いている状況であり、自民党の派閥に何か働きかけるなどいうことはできません。

日本ファーストの会も未だ実体はなく、当面国政に影響を及ぼすことなどあり得ません。

そうなると、自民党は挙党一致で、内閣支持率をあげて再度安定政権を目指し「10兆円補正予算」に突っ走ることになります。

これには、さすがに財務省も「同調圧力」だけでは、対処できないでしょう。かといって、財務省は実力行使はできません。もしそれをすれば、法律違反になります。さすがに、財務省もここまではしないでしょう。

だとすれば、「10兆円補正予算」の実行と、その後の対処もうまくいくのではないでしょうか。しかし、これはあくまで自民党が挙党一致でこれに邁進した場合の想定です。そうでなければ、安倍政権終焉という結果を招くでしょう。

自民党が派閥抗争に傾けば、そうなります。これからどうなっていくか、動静を見守り、またレポートさせていただきます。

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2017年8月12日土曜日

米朝対立が破裂寸前!北「グアムに4発同時発射」緊急声明 広島、高知通過と日本にも脅し―【私の論評】北朝鮮の軍事力を等身大に見てみよう(゚д゚)!

米朝対立が破裂寸前!北「グアムに4発同時発射」緊急声明 広島、高知通過と日本にも脅し

九州周辺の上空で米空軍機と共同訓練を行う航空
自衛隊のF2戦闘機(下)=30日午前(航空自衛隊提供)
 米国と北朝鮮の対立が破裂寸前となった。狂気の独裁者、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長率いる北朝鮮が10日、国営メディアを通じ、「米グアムへの弾道ミサイル4発同時発射を検討している」と宣言したのだ。レッドラインを完全に越えて、威嚇姿勢を強める無法国家に対し、ドナルド・トランプ米大統領は核戦力行使の可能性まで口にし、一歩も引かない構えを示している。今月21日からの米韓合同軍事演習、来月9日の北朝鮮建国記念日を控え、朝鮮半島の緊張は極度に高まっている。

 「わが朝鮮人民軍戦略軍はグアムの主要軍事基地を制圧、牽制し、米国に厳重な警告信号を送るために、中・長距離戦略弾道ロケット『火星12』型の4発同時発射で行うグアム包囲射撃を慎重に検討している」

 北朝鮮の国営メディア、朝鮮中央通信は10日朝、朝鮮人民軍戦略軍司令官の発表として、こう伝えた。

 発表では、トランプ氏が8日、「炎と怒りに直面することになる」とツイッターに投稿したことを、「ゴルフ場にいた米軍統帥権者は情勢の方向を全く判断できなかったまま、『火炎と憤怒』だの、何のという妄言をまたもや並び立てて、わが火星砲兵たちの興奮した神経をいっそう鋭く刺激している」と揶揄(やゆ)した。

 米国と強固な同盟関係にある日本に対しても、火星12型ミサイルが「島根県、広島県、高知県の上空を通過する」と脅しをかけた。同通信によると、朝鮮人民軍戦略軍は8月中旬までに、4発同時発射計画を最終完成し、発射待機態勢で命令を待つという。

 これは冗談では済まされない。

 北朝鮮は1998年と2009年に、日本上空を越えて弾道ミサイルを発射している。今年3月には、同国西岸から弾道ミサイル4発を日本海に向けて発射している。

 北朝鮮がグアム攻撃の能力を持つ可能性は高いが、グアム島には、B1爆撃機などが配備されているアンダーセン空軍基地や、原子力潜水艦の基地アプラ港があり、米軍の重要戦略拠点になっている。同時発射は事実上、米国に対する「宣戦布告」といえる。

 正気を失ったかにみえる北朝鮮に対し、トランプ氏の発言も過激化している。9日のツイッターへの書き込みでは、「現在の米国の核戦力は世界最強だ。できれば使わないで済むことを願うが、われわれが世界最強の国でなくなるときは絶対に来ない!」と核戦力を誇示したのだ。

 トランプ氏だけではない。軍人出身で、開戦リスクを熟知するジェームズ・マティス国防長官も強硬姿勢に転じた。

 9日に出した声明で、「北朝鮮は孤立をやめ、核兵器追求を放棄する道を選ぶべきだ。『体制の終焉(しゅうえん)、人民の破滅』につながるいかなる行動の検討もやめる必要がある」と発表した。これまで、マティス氏は「軍事的に解決しようとすれば信じがたい規模の悲惨な事態をもたらす」と述べ、外交的解決を訴えていた。正恩体制の「終焉」にまで言及した今回の声明は、マティス氏が慎重姿勢を転じたようにも読み取れる。

 米朝の緊迫ムードが高まるなか、世界最強の米軍が誇る原子力空母「ロナルド・レーガン」が9日、母港の米海軍横須賀基地に帰港した。

 今月21日からは、韓国で定例の米韓合同軍事演習「乙支(ウルチ)フリーダムガーディアン」(UFG)が始まる。演習に合わせ、米原子力空母2隻が今月中旬、朝鮮半島近海に展開することが検討されており、「ロナルド・レーガン」の帰港は、それに向けた準備の可能性もある。

 さらに、北朝鮮は9月9日、建国記念日という節目を迎える。演習の始まる今月21日から9月上旬という期間は、「米朝開戦のリスク」が最も高まる時期といえるのだ。

 米朝激突となれば、日本には「戦後最大級の危機」が襲いかかることになる。安倍晋三首相は先の内閣改造で、「有事にも対応できる布陣」を敷いたとされるが、この国家的試練を乗り越えられるのか。

【私の論評】北朝鮮の軍事力を等身大に見てみよう(゚д゚)!

さて、ブログ冒頭の記事を読むと、なにやら、すぐにでも米北の戦争がおこり、とんでもないことになるような感触を受ける人も多いのではないでしょうか。

確かに北朝鮮のミサイルは年々能力を高め潜在的な脅威となっていることは確かです。しかし、日本のマスコミは北朝鮮軍の実力を報道することもなく、危機を煽るばかりです。これだけでは、正しく状況を判断できません。本日は、北朝鮮軍の実力に関して掲載します。
 
北朝鮮は2012年に人工衛星の打ち上げに成功しており、ICBMの基本的な技術は持っているはずですが、まだ実験すらしていません。つまり米国に届く長距離ミサイルが実戦配備されるには、今後数年を要するとみられます。

2012年に人工衛星の打ち上げに成功した北朝鮮
米軍基地のあるグアム島を射程に入れた中距離弾道弾ムスダンは実戦配備されているとみられますが、昨年10月に試射され失敗に終わっています。ムスダンは中国製とみられることから、発射に際しては中国の許可が必要となるはずです。

つまり、安全装置を解除するためには暗証番号を入力する必要があり、その番号はその都度、中国に聞かなければならないのです。正しい番号が入力されずに発射されれば、発射は失敗に終わる仕組みです。

昨年4月15日に北朝鮮が移動式の中距離弾道ミサイル(IRBM)「ムスダン」の発射に失敗した際、現場にいたミサイル技術者らが死亡、もしくは負傷し、移動式発射車両も破損したといいます。 

米国の保守系メディア「ワシントン・フリー・ビーコン」は20日、米軍関係者や外交消息筋の話を引用し「北朝鮮は東海岸にムスダンIRBM2基を配備し、発射試験を準備した。ところが1発目のIRBMが発射からわずか5-6秒後、90メートルほど上昇したところで爆発し、もう1基は発射もできなかった」「ムスダンの発射失敗に関する報告書の内容をよく知る外交消息筋は『ムスダンの発射失敗の原因は、燃料システムやターボポンプの問題とみられる』と語った」と伝えたとしています。

これが事実がどうかはわかりませんが、当時は米国によるサイバー攻撃ではないかという噂も流れました。

私は、これは金正恩がムスダンを打ち上げようとしても、ちゅうごくが暗証番号を教えなかったので、暗証番号を解読させて打ち上げに及んだのではないかと思います。ただし、その暗証番号は間違ったものであった可能性が高いと思います。

ムスダンの暗号は複数あって、正常に作動して打ち上げを成功させるものと、異常を起こし途中で失敗するものもあったものと思います。北朝鮮の科学者は、暗証番号を解読したつもりが、それは正常に作動させるものではなかったという可能性があります。

「米グアムへの弾道ミサイル4発同時発射を検討している」といくら、金正恩氏が力んでみても、中国の許可がなければこれは不可能です。中国がこれを許可するとはとても思えません。

当然米国もこれを承知しており、それを知った上で、トランプ氏やマティス氏は金正恩の「米グアムへの弾道ミサイル4発同時発射を検討している」という威嚇に対して、威嚇で応じたということです。

ムスダンの発射
もちろん、北朝鮮製の弾道弾もあるにはあります。例えば、3月6日に4発発射され、秋田沖に着弾した「スカッドER」は北朝鮮製です。また、日本を射程に入れる「ノドン」も北朝鮮製であり、発射に中国の許可を必要としません。5月14日に発射した中距離弾道弾「火星12号」も同様です。

しかし、これらのミサイルは旧式の液体燃料型であり、発射に際してはその都度、数時間かけて燃料注入をしなければなりません。つまり発射の予兆を探知されやすく、米軍による攻撃の格好のターゲットになります。また、壊滅しそこなったとしても日米韓の分厚いミサイル防衛システムに阻まれることは必定です。

そして、懸念が広がっている核爆弾の開発状況については、昨年9月に5回目の核実験に成功し、今後近いうちに、6回目の実験を実施するのは確実とみられています。しかし、弾道弾に搭載できるように小型化、軽量化するには、まだ数年を要するでしょう。

北朝鮮の潜水艦の中で最も大きい1,700トンロミオ級を視察した金正恩
また、北朝鮮の海軍は排水量1700トンのロメオ級潜水艦を20隻程度保有していますが、これは旧ソ連製であり実力としては第二次世界大戦当時の標準的能力しか有していないです。現在3500トン級の戦略潜水艦を建造中ですが、まだ完成にはほど遠いです。日米の対潜水艦能力は世界最高水準にあり、これに対して北朝鮮の潜水艦は全く無力です。

北朝鮮海軍の潜水艦が日本海で1週間にわたって活動していると、NHKが2014年7月23日に米国政府当局者の話として報じました。

それによると、「潜水艦はディーゼル型のロメオ級で、アメリカの監視記録では、この型の潜水艦の場合、通常、4日程度で活動を終えるが、今回はこれを超えておよそ1週間に及び、これまでで最も長い」また、「アメリカ軍はこれまでにない特異な行動だとしてその目的などについて分析を進めている」だと伝えました。

ロメオ級は北朝鮮の主力潜水艦だが、旧ソ連で1950年代に開発された旧式です。弾道ミサイルの発射機能は備えておらず、騒音の大きいディーゼルエンジンで航走し、最大潜航可能時間は約半日程度です。米軍や海上自衛隊のソナーから逃れるのは難しく、うまく水中に隠れても、空気補充のため浮上した際にレーダーで必ず探知されてしまいます。

つまり、この潜水艦自体は日米にとってまったく脅威にならないということです。

では、北朝鮮はなぜこんなことをしたのか。すぐに思い浮かぶのは、弾道ミサイル潜水艦の実戦配備に向けた訓練だろうということです。

核弾頭を搭載した潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射台となる原子力弾道ミサイル潜水艦は、米国やロシアなどにおいては、核戦争勃発時の報復攻撃の柱となることを期待され運用されてきました。水中を自在に動き回る隠密性により、他の核戦力に比べ、敵からの第一撃を生き延びる可能性が高いためです。

しかし、ディーゼル推進で静寂性に欠け、長時間の潜航が出来ない北朝鮮の潜水艦に、このような役割を担うことはできません。

ということは、金正恩党委員長は恐らく、いざという時には先制攻撃に使う目的でSLBMをも開発しているものと思われます。実際、その後SLBMを発射という報道を北朝鮮はしていましたが、これは明らかにフェイクとわかる代物でした。

北朝鮮のミグ29
北朝鮮空軍、正式名称「朝鮮人民軍空軍」は、全軍の航空機運用を一手に引き受けており、数の上では1000機もの航空機を保有、うち半数の500機を戦闘機が占める世界トップクラスの兵力を誇る空軍です。
ところが500機の戦闘機のうち現代戦闘機といえる能力を持つ機種はせいぜいMiG-23とMiG-29のみであり、両機をあわせても100機に足りません。また1996(平成8)年にロシアよりMiG-29を購入し、1999(平成11)年にはカザフスタンより旧型のMiG-21bisを購入して老朽機の更新に当ててたのが最後、それ以降はまったく更新が行われていない状況です。
ミグ23は第3世代型の旧式機であり、第4世代型のFA18やわが国のF15に太刀打ちできる代物ではありません。

ミグ29は第4世代型ですが、パイロットの年間飛行時間が20時間程度と日米の150時間以上と比べて極端に少なく、格闘戦は不可能です。これに関しては、中国のパイロットですら、慢性的な部品不足などにより航空機の稼働率が低いため、年間25時間程度といわれています。最新鋭スホーイ27の部隊でもやっと年間100間程度と推測されていることから、北朝鮮のパイロットの技量は推して知るべし水準のものでしょう。

しかも、山口県の岩国の米軍基地には第5世代型のF35が配備されており、ミグ29を一瞬にして壊滅できる実力を誇っています。それに自衛隊もF35の配備をはじめました。

北朝鮮のT27戦車
北朝鮮の陸軍はT72やT62といった旧ソ連製戦車を多数保有していますが、やはり世代的に古く米国のM1戦車の敵ではありません。自走砲として注目されているのが300ミリ多連装ロケット砲ですが、制空権を維持できない状態では戦車同様、米軍の戦闘攻撃機の餌食になるしかありません。

北朝鮮の特殊部隊は10万~20万人いるとされ、北朝鮮軍の中では唯一危惧されるべき存在です。潜水艦による北朝鮮武装兵士浸透事件が起きた1996年、北朝鮮が米国のグリーンベレー、英国のSAS(特殊空挺部隊)等に比肩しうる強力な特殊戦部隊を育成していたことが判明し、米国を震撼させました。

何よりも驚くのはその数です。北の特殊部隊の兵力は当時8万から10万人と言われましたが、これは世界でも類を見ない多さです。

江陵浸透事件 手前が射殺された北朝鮮工作員
この部隊の練度の高さが証明されたのは1996年9月の江陵浸透事件です。

韓国の江原道江陵市近辺で工作員を回収する北朝鮮特殊潜水艦が座礁した時、乗組員と工作員を合わせた26名が韓国内に逃亡。軍と警察の掃討作戦は二か月を要し、韓国側は軍人12名、警察官1名、民間人4名の犠牲者を出しました(負傷者17名)。
1名の工作員を追うのに数十人規模の人員が動員される有様だったのです。

海保巡視船が北朝鮮の不審船を撃ち、沈めた時も、北朝鮮工作員は自沈を選んだことから見ても、彼らは本国への強い忠誠心を見せています。

日本人拉致事件を見れば分かるように、すでにこの工作員メンバーはスパイ天国の日本に多数、入り込んでいると見られています。

朝鮮有事勃発とあらば、彼らが日本各地で活動を開始する危険性が高まります。

金正男暗殺のような事態が日本の要人を狙って引き起こされる可能性がありますし、原発に向けてテロ部隊が夜半に上陸してくる可能性も否定できません。

ただし、これを管理している国家保衛省の上級幹部が最近多数解任されており、有事に際してどれほど動けるのかは不明です。

テレビの報道をだけをみていると、頻繁にミサイル発射の報道がなされており、北朝鮮の軍事力については報道されてはいません、これではあまりにバランスに欠けているので、本日は北朝鮮の軍事力の実体について、触れてみました。

最後に一言ですが、たとえ圧倒的に相手側が劣勢であったにしても、戦争とは個別の戦闘の集合の結果あり、いくつも戦闘から成り立っているものです。

ということは、日米韓は、北朝鮮と戦争をした場合、日米韓は必ず大勝利します。特に空海では圧倒的でしょう。ただし、個別の戦闘では負けることもあるわけで、そのときには自衛隊員や軍人も犠牲になることもありえますし、市民も犠牲になる場合もあります。

韓国や日本国内にも、北朝鮮の特殊部隊が攻撃を仕掛けるかもしれません。すでに国内に潜入している工作員がこの攻撃に加わるかも知れません。だとしても、補給路がたたれるし、そもそも北朝鮮は大人数の特殊部隊を韓国や日本に送り込むことはできません。

昼であれば、すぐに発見されてしまいます。夜陰に乗じて少数の部隊を送り込むことができるだけです。

そのため、日本国内での戦闘があったにしても、小規模で短期で終息するものと考えられます。それでも、犠牲者は出る可能性はあります。

北朝鮮有事の場合は、その覚悟はしておかなければならないということです。

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2017年8月11日金曜日

「総理のご意向」の論点ずらし 加計報道とイメージ操作―【私の論評】国民を馬鹿にして愚弄するメディア(゚д゚)!

「総理のご意向」の論点ずらし 加計報道とイメージ操作

前回の本コラムで、「加計学園問題は『絶好の教材』 問われるメディア・リテラシー」を書いたが、その最後のところで、前川喜平・前文科次官の規制改革に対する考え方として、2005年7月の規制改革会議の議事録をあげた。今日のコラムではその続編とともに、マスコミの争点ずらしを述べよう。

この議事録でわかるように、前川氏(当時は課長)は、規制の説明責任について、規制官庁にないという「暴言」を吐き、発言を打ち切られた。規制改革会議に出入り禁止になったわけだ。


規制改革会議の後日談

実は、この話には後日談がある。当時の規制改革会議には白石真澄さんが議長代理で参加していた。白石さんは現在、関西大学の教授で、2009年の千葉県知事選に立候補したこともあるが、容姿端麗な方だ。規制改革会議終了後、雑談の中で「白石さんはお美しいですね」とか、たわいもない会話があった。もちろん、これは単なるリップサービスに過ぎず、そのとき参加していた人間は誰も問題視していなかった。

白石真澄さん  確かに前川の顔を見ているよりははるかに良い
ところが、その一連の会話を録音し、誰かがメモにして雑誌社に持ち込み、発言をねつ造し、「破廉恥な会話をしているのが、規制改革会議の実態だ」と、会議から2年後の2007年5月に週刊誌記事にさせた。

今となっては笑い話で済んでいるが、その当時は、大変な騒ぎだった。「こんな日常会話をリークされ、ねつ造記事がでるのは我慢できない」と、草刈隆郎さんをはじめとして規制改革会議メンバーが当時の規制改革担当大臣のところへ抗議までした。そして、文科大臣にまで抗議している。

文科省告示が直され、申請できるように

一体、誰がこんな情報をリークしたのか。内閣府内で会議のテープを保管している人間を調べればすぐにわかることだった。調査してみたところ、文科省からの出向者でした。さらによく調べてみると、その人物は、メールでこの情報を文科省に流したことまでわかっている。文科省内の『誰か』にわたり、その『誰か』が雑誌にたれ込んだのだ。

文科省のやり方はこんな具合だったが、それにしても前川氏は最近、マスコミにもあまりでない。本コラムを読んでいれば、前川氏の「行政がゆがめられた」というのは、50年間も新設学部の申請さえされない門前払いの文科省告示が直され、申請できるようになったという話だ。門前払いがおかしく、「ゆがめられていた行政」が少し直った程度だ。なので、さすがにマスコミももう使えないのだろう。

思い返せば、発端は、5月17日付の朝日新聞記事「加計学園の新学部『総理のご意向』 文科省に記録文書」である。

ところが、「総理のご意向」という証拠はまったく出ない。筆者は、「総理のご意向」がないことは、文科省と内閣府が公表に合意した特区会議の議事録を見ればわかると言ってきた。

ところが、朝日新聞は、「総理のご意向」が証明できないので、論点をずらしている。最近の記事では、「特区会議に加計幹部 議事要旨に出席・発言の記載なし」だ。

これで、議事録はあてにならないというイメージ操作をするが、文科省メモより、「総理のご意向」があったかどうかはより的確に判断できる。

そもそも、特区で提案者は今治市であり、オブザーバーである加計学園が議事録に載らないことは当然である。もっとも、議事録のあら探しのようであるが、ますます「総理のご意向」が入る余地がないことが分かるだけになっているのを朝日新聞は気がつかないようだ。

【私の論評】国民を馬鹿にして愚弄するメディア(゚д゚)!

朝日新聞は、議事録とはどういう正確なものであるのか、全くわかっていないか、わかっていながら、倒閣にすこしでもプラスにするため、あえて知らないふりをして情報操作しているとしか思えません。

議事録とは会議や打ち合わせの内容、経過や結論などを記録し、それを伝えるための文書です。 人類の歴史をひもといても、会議は常に重要な役割を果たしており、それは現代社会においても同様です。 会社、企業間、顧客との間において会議は日常的に開催され、また企業以外の場面においても、さまざまな会議が開催されています。

ITが発展していなかったときには、議事録は会議が終わった後に会議参加者に確認をとり、間違いなどが起こらないようにしたものです。

ITが発達した現在では、会議が終わった直後に、大きなスクリーンに議事録を映し出し、参加者全員がそれを見ながら、その場で修正を入れるなどのことすることもあるくらいです。そのようなことを可能にするシステムがすでに稼働しています。

朝日新聞は議事録の取扱について、誤ったのは、こだけではありません。戦略特区に関するワーキンググループの議事録に関しては、読んだのか読んでいないのか、朝日新聞は全く報道しませんてした。これを読めば、ワーキンググループの段階で、文科省はボロ負けで、勝負はついたという状況であったことが手に取るようにわかります。

このような状況であれば、総理のご意向などなくても、加計学園の獣医学部開設は決まってしまっていて、その後に総理がわざわざご意向を振りかざすなどとということは全く考えられません。これは、たとえが悪いかもしれませんが、日米戦争で日本が負けた後で、米国大統領が日本に対して何らかの違法な工作を行ったと言っているようなものです。

こちらのほうは報道せずに、議事要旨に加計幹部の出席・発言の記載がないことを報道するのは意図的な印象操作以外の何者でもありません。もし、加計幹部の発言の内容が出ていたとしたら、そちらのほうが余程問題です。もし発言があったとすれば、朝日新聞がその内容を報道することには意味があり、新聞としての社会的使命を果たすことになります。

しかし、発言内容がないことをニュースにするとは、なんともはや、問題外の所業といえます。とにかく、倒閣のために少しでも有利な印象操作をしたとしか受け取れません。

朝日新聞などのメディアもこの有様ですが、テレビの印象操作も酷いものでした。

BPO(放送倫理・番組向上機構)が公式HPにおいてマスコミの偏向報道に関する意見を受け取ったと公表しました。ついに制裁に乗り出すのではないかと期待が集まっています。


公式HPでは「2017年7月に視聴者から寄せられた意見」にて視聴者の意見が総合され、以下のように集約されています。
・テレビは「~と思う」「~と思われても仕方ない」などという表現で主観に基いて政権批判をしており、公共の電波として不適切。 
・コメンテーターが反対意見を言おうとすると司会者が遮ることすらある。
・証拠がないまま憶測で政権批判がなされている。 
・テレビとインターネットの情報の乖離が激しい。政治の偏向報道で国民がテレビからますます離れていく。 
・中立性が全くなく、視聴者が騙されてしまうことも懸念される。
偏向報道がこれだけネット上で批判されてもマスコミは一向に理不尽な安倍政権批判をやめないので、もはや強制的にペナルティを与えるしかないのかもしれません。そしてその力をもっているのはBPOだけであり、国民の最後の頼みの綱となっています。


ジャーナリストの末延吉正氏は今の偏向報道は前例がない異常事態だと指摘しています。末延らがニュース女子という番組で語った内容を以下に掲載しておきます。

末延吉正氏
末延吉正「僕も長く政治をウォッチしメディアの中で働いてきたけど、最近の左派メディアほど酷かったものは見た事がない。つまり、国会の審議やニュースそのもの、事実を全く伝えない。自分の作文でつくったようにやる。あれほど新聞・テレビがあそこまで事実を曲げて成立するのか。総理が濡れ衣で可哀想だっていう証言もあったのに、それを一行も書かない新聞・テレビは酷すぎる。朝日とTBSは本気で反省すべき」 
須田慎一郎「原点を辿れば前川さんの嘘が発端なんじゃないかなって思う」 
末延吉正「うん、もとはね」
加戸前知事と前川喜平の証言バトルでは、歴史的経緯を丁寧に説明した加戸前知事に軍配が上がったにもかかわらず、マスコミは前川喜平の勘違いを既成事実に仕立て上げようと必死でした。

メディアの報道が不自然に偏っていることはすでに数字で実証された通りです。


これは、一般社団法人日本平和学研究所が調べたものです。無論、関係する報道すべてをビデオに録画して、そこから時間を計測したものです。

加計学園問題の報道時間8時間44分59秒のうち、前川喜平の発言は2時間33分46秒も取り上げられたのに、加戸前知事の発言は6分1秒しか取り上げられませんでした。さらに原英史氏(国家戦略特区ワーキンググループ委員)の発言は2分35秒のみで、安倍総理に有利な証言はことごとくカットされました。

上念司氏
これらの証拠が出揃う中、上念司氏は放送法4条違反を根拠にTBSひるおびをBPOに告発すると虎ノ門ニュースに予告しました。

あくまで検討中ということですが、上念司氏の行動力なら本当にやるはずだと多くの人が期待しています。ひるおびには、川井重勇都議会議長と小池都知事の握手シーンをカットすることで事件を捏造した前科もあります。

これまでの悪行について痛いしっぺ返しを受けることになるのではないでしょうか。ただし、BPOについては「委員会のメンバーが政治的に偏った思想をもっている人が多いので抗議しても無駄」という声も一方ではあります。


これが本当ならBPOをさらに監視する機関が必要なのかもしれません。果たしてBPOは視聴者からの意見を適正に処理するのかどうか、今後の動きをしっかりと見届けていきたいです。

それにしても、現在のようにネットで情報がかなり得られる時代にもかかわらず、このような印象操作をする新聞やテレビは、本当にこの程度の印象操作で国民を手玉にとれると思っているようです。本当に国民を愚弄していると思います。

一旦は、情報操作に乗った人たちも、結局問題が何かもわからないようなことに、付き合わされ飽きてしまっているのではないかと思います。

以前にもこのブログに掲載したように、私は近所のお年寄りとも付き合いがありますが、これらのお年寄りたちも、最初は関心をもって見ていたようですが、ここしばらくは、ほとんどの人が加計問題の報道は、飽きて見なくなっています。

いまでさえ、この様子ですから、半年、一年もすれば、何もでてこない報道には完璧に関心を失い、そうこうするうちに、衆院選挙が行われ、加計問題で野党の無意味な追求が仇となり、民進党などの野党は歴史的惨敗を喫し、当のメデイアも唖然とするほどの結果になるのではないかと思います。

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2017年8月10日木曜日

安倍内閣内閣が問われる「20兆円財政出動」で物価目標2%達成―【私の論評】今国債を刷らずして、一体いつ刷るというのか?

安倍内閣内閣が問われる「20兆円財政出動」で物価目標2%達成
高橋洋一:嘉悦大学教授

 秋の臨時国会では補正予算が提出される。政府が掲げる「2%物価目標」を実現するには、その規模はどの程度が適切なのだろうか。

 そのカギを握るのが、「GDPギャップ」である。それを埋めるには25兆円程度の有効需要を上乗せすればよく、いまの国債市場の玉不足を考えれば、国債増発による財政出動は正当化される。

 インフレ目標の達成に経済政策の余地はある

「GDPギャップ」は、実際のGDP(国民総生産)と潜在GDPの差の、潜在GDPに対する比率と定義されている。

 問題なのは、潜在GDPである。一般的には、経済の過去のトレンドから見て平均的な水準で、資本や労働力などの生産要素を投入した時に実現可能なGDPとされているが、GDPギャップの大きさについては、前提となるデータや推計方法によって結果が大きく異なるため、相当の幅をもって見る必要がある。

 このことはGDPを推計している内閣府や日銀でも注意事項として認識はされている。

 内閣府は最近、GDPギャップの推計方法を若干、改訂した。その値は2017年1-3月期では+0.1%としている。もっとも、この結果をもって、GDPギャップがないから既に完全雇用だ、経済対策は必要ないと早合点はできない。内閣府の潜在GDPは必ずしも完全雇用を意味していないのだ。

 その理由を簡単に言えば、まだインフレ率は上がっていない以上、まだ失業率は下がる余地があり、インフレ目標達成とさらなる失業率の低下のために、経済対策の余地はあるということだ。

 日銀の算出しているGDPギャップについても、内閣府と似た傾向になっており、注意が必要だ。いずれにしても、内閣府と日銀によるGDPギャップの絶対的な水準をそのまま鵜呑みにしないほうがいい。

 ただしGDPギャップについては、その絶対的な水準ではなく、その変化はおおいに参考になる。内閣府のデータは公表されているので、それを活用してみよう。

 2%の物価上昇には25兆円の有効需要が必要

 まず、失業率とインフレ率の関係(フィリップス曲線)を整理しておこう。

 それを子細に見ていくと、ちょっと違った姿が見える。

 失業率とインフレ率は、逆相関になっているが、実は、両者の間を、GDPギャップが介在している。

 例えば、GDPギャップがマイナスで大きいと物価が下がり、失業率が大きくなる。逆にGDPギャップがプラスで大きいと物価が上がり、失業率が小さくなる。

 下の図1は、2000年以降四半期ベースで見たGDPギャップとインフレ率の関係である。左軸にGDPギャップ率、右軸にインフレ率(消費者物価総合対前年比)をとっている。GDPギャップは半年後(2四半期後)のインフレ率とかなりの相関関係がある。

◆図表1:GDPギャップ率とインフレ率(半年後)
 ここで、GDPギャップとインフレ率の関係から、「2%インフレ」にするために必要なGDPギャップ水準を算出してみると、+4.5%程度である。

 それを埋め合わせるためには、有効需要25兆円程度が必要になる。1単位の財政出動による需要創出効果を示す財政乗数が、内閣府のいう1.2程度としても、この有効需要を作るための財政出動は20兆円程度である。

 財政出動で構造失業率2%程度まで下げられる

 また、この財政出動はGDPギャップを縮小させるので、インフレ率の上昇とともに、これ以上、下げられない「構造失業率」までは失業率の低下をもたらすはずだ、

 下の図2は、2000年以降の、四半期ベースで見たGDPギャップと失業率の関係である。左軸にGDPギャップ率、右軸に失業率をとっている。図をわかりやすくするために、左軸は反転させて表示しているが、GDPギャップはやはり半年後(2四半期後)の失業率とも、かなりの逆相関関係がある。

◆図表2:GDPギャップ率と失業率(半年後)
 GDPギャップと失業率の関係式から見た、GDPギャップ+4.5%程度に対応する失業率は2.7%程度である。

 ここで、筆者が、2016年5月19日付けの本コラム(「日銀の「失業率の下限」に対する見方は正しいか」)で書いたことを参照してもらいたい。

 その構造失業率の推計値は、同じく2.7%である。もちろん、経済学は精密科学ではないので、2.7%ピッタリということではなく、2%半ばという程度である。

 ただし、2016年5月の本コラムでは、UV分析を用いている。、構造失業率の推計方法には、UV分析とフィリップス曲線による分析(特にNAIRU[インフレを加速させない失業率]の推計)がある。

 今回のコラムは、フィリップス曲線による分析と本質的に同じだが、いずれにしても、二つの異なる分析によっても、日本の構造失業率が2%半ばと同じになっているのは興味深いことだ。

 数学の証明問題では、二つ以上の方法により証明すると、その命題はより正しいとされるが、経済学でも別の二つの方法で同じ結果であれば、よりもっともらしいといえるだろう。

 以上の分析を総合すると、構造失業率は2%半ば程度であろうとともに、それに対応するインフレ率はインフレ目標の2%である。

 であれば、有効需要25兆円、財政出動に換算して20兆円規模を求めることは、インフレ目標2%を達成し、同時にこれ以上下げられない構造失業率2%半ばを達成することになる。つまり適度なインフレの下で、回避できない失業を除いて人々に完全雇用を実現する合理的な政策である。

 国債は玉不足増発も正当化される

 ただし、財政出動しても、その効果がただちに発揮されずに、実体経済への影響が出た後、インフレ率と失業率に波及するには時間差がある。

 もっとも、インフレ率も失業率もともに、GDPギャップから半年程度のラグなので、インフレ率がまだ2%に達しないようであれば、金融緩和しても実害はあまりない。

 急激にインフレ率が高くなることを心配する向きもあるが、物価が上がるとしても1年以内にインフレ率5%ということはほとんど考えられない。5%のみならず、一桁インフレであっても、その社会的コストは大きいとはいえないので、今のような状況ではインフレを過度におそれる心配はないだろう。

 いずれにしても、内閣府や日銀が示しているGDPギャップは、完全雇用とインフレ目標達成の観点から見ると、“過大評価”の数字である。筆者の分析では、たとえGDPギャップがプラスになっても、そう簡単にはインフレ率は上昇しないし、インフレを過度に心配すべきでないことをデータが示している。

 これに対して、そうした過大な財政出動は財源の裏付けが必要であり、国債発行では財政再建に反するという、いつもの財務省の声が聞こえて来そうだ。

 だが、その心配が無用であることは、2月23日付け本コラム(「日本の財政再建は「統合政府」で見ればもう達成されている」)などで何度も繰り返して述べている。

 むしろ問題は、現在の国債市場において、国債の玉不足になっており、日本銀行の「異次元緩和」にも支障が生じている事態であることも付け加えておこう。そうした観点から、国債発行による財政出動も正当化できる。

 こうしたまともな政策を安倍政権が実施できるかどうか、内閣改造の真価が問われている。

(嘉悦大学教授 高橋洋一)

【私の論評】今国債を刷らずして、一体いつ刷るというのか? 

ブログ冒頭の記事で、高橋洋一氏は2つの計算方式で計算した結果日本の構造失業率の推計値は、同じく2.7%としています。

私は、過去の統計値からこのくらいではないかと思っています。それについては、以前もこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。

日銀 大規模な金融緩和策 維持を決定―【私の論評】日銀は批判を恐れずなるべくはやく追加金融緩和を実行せよ(゚д゚)!


この記事は、2016年6月16日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとしして、以下にこの記事から、構造失業率に関する部分のみを引用します。

"

構造的失業率などについて以下に簡単に解説しておきます。

総務省では、失業を発生原因によって、「需要不足失業」、「構造的失業」、「摩擦的失業」の3つに分類しています。 
  • 需要不足失業―景気後退期に労働需要(雇用の受け皿)が減少することにより生じる失業 
  • 構造的失業―企業が求める人材と求職者の持っている特性(職業能力や年齢)などが異なることにより生じる失業 
  • 摩擦的失業―企業と求職者の互いの情報が不完全であるため、両者が相手を探すのに時間がかかることによる失業(一時的に発生する失業)
日銀は、構造失業率が3%台前半で、直近の完全失業率(4月時点で3・2%)から下がらないので、これ以上金融緩和の必要がないという考えが主流のようです。

過去の失業率をみてみると、以下のような状況です。

過去20年近くは、デフレなどの影響があったので、あまり参考にならないと思ういます。それより前の過去の失業率をみると、最低では2%程度のときもありました。過去の日本では、3%を超えると失業率が高くなったとみられていました。

このことを考えると、日本の構造失業率は3%を切る2.7%程度ではないかと考えられます。

であるとすれば、現在の完全失業率3.2%ですから、まだ失業率は下げられると考えます。だとすれば、さらに金融緩和をすべきでした。

しかし、日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁は、すでに実際の失業率が構造失業率に近い水準まで下がっているのに、なぜ賃金が上昇しないのか、疑問を持っていたようです。にもかかわらず、今回は追加金融緩和を見送ってしまいました。
"
この長期のグラフをみても、日本の構造的失業率はどうみても2%台であることは間違いないです。

ただこの数値自体には私自身は、それほどこだわっていません。これは、政策判断するときのひとつの目安にしかすぎないものです。ただいずれにせよ日銀の3%台との見方は高すぎです。

実際には構造的失業と思われていた部分でも循環的要因に反応するところがあります。そのため金融政策で考えたときは、やはり期待インフレ率と実際のインフレ率を目安にしなくてはいけないです。2.7%が真の構造的失業の水準か否かはそれで判断できます。

それにしても、物価目標も未だ達成できないのですから、これはどう考えてみても、未だ失業率は、構造的失業率には達していないとみるべきです。日銀は、すぐにでもさらなる量的緩和を実施すべきです。

次に、国債についてですが、日本銀行は今年の3月24日、約8年ぶりとなる国債売り現先オペを実施しました。大規模な国債買い入れを背景に深刻化している民間金融機関の国債保有不足を受けたもので、レポ市場で国債の貸し手が特に少なくなる年度末に対応した。短期国債買い入れオペも取りやめ、期末の短期金利は急上昇しましたた。

午前9時30分の金融調節で日銀は国債売り現先オペ1兆円を通知。国債を売却して一定期間後に買い戻す同オペには2兆601億円の応札があり、1兆2億円が落札された。按分レートはマイナス0.11%。応札する金融機関からの銘柄指定がない売り現先オペの実施は2008年11月28日以来となりました。今回の対象期間は年度末をまたぐ3月27日から4月3日までの1週間物でした。

日銀の大規模な国債買い入れによる金融緩和が続く中、今後は国債需要が強まる四半期末ごとにレポ市場での需給逼迫(ひっぱく)が強まる可能性があります。日銀は短国の買い入れを減らして流通量を増やしていますが、それでも国債が足りなかったのです。

このような状況では、本来は国がこの状況に対応するため、国債を刷り増すべきでした。政府(財務省)が本来すべき仕事をしなかったため、日銀はこのようなことをせざるを得なくなったのです。

まさに、高橋洋一氏が語っているように、「現在の国債市場において、国債の玉不足になっており、日本銀行の「異次元緩和」にも支障が生じている事態である」のです。

このようなときは、当然のことながら、国債を刷り増す必要があります。こんなことを言うと、自民党内部のたとえば小泉進次郎のような若手議員ですら、「国債は、将来世代へのつけ」などという、奇妙奇天烈、摩訶不思議な反論が出るかもしれません。

しかし現実に市場に流通している国債が少なくこのままでは金融緩和にも支障が出るほどなのですから、当然のことながら、国債発行による財政出動は正当化されるどころか、いままさに実行しなければならないはずのものなのです。

今国債を刷らずして、一体いつ刷るというのか? と言いたいです。

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2017年8月9日水曜日

【北ミサイル】北朝鮮が「グアム周辺に火星12を発射」と米トランプ政権に警告 小野寺防衛相名指しで「日本列島を焦土化できる」とも―【私の論評】北朝鮮の脅威が顕著になると、円高になるのはなぜ(゚д゚)!


「火星14」発射の様子
北朝鮮の朝鮮人民軍戦略軍は、北朝鮮に対するトランプ米政権の軍事的圧迫を非難し、中長距離弾道ミサイルと称する「火星12」で「グアム島周辺への包囲射撃を断行する作戦案を慎重に検討している」と警告する報道官声明を発表した。朝鮮中央通信が9日、伝えた。

 声明は、作戦案が間もなく最高司令部に報告され、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が決断を下せば「任意の時刻に同時多発的、連発的に実行されるだろう」と主張。米国に「正しい選択」をし「軍事的挑発行為を直ちにやめるべきだ」と迫った。

 トランプ政権が大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験を行ったり、戦略爆撃機を韓国に飛来させたりしていることに反発したもので、爆撃機の出撃基地のあるグアムをけん制して警告を送るためだとしている。火星12は、5月に試射され、グアムに届く5千キロ前後の射程があると推測されている。

 朝鮮中央通信は9日、「敵基地攻撃能力」保有の検討に言及した小野寺五典防衛相や、安倍晋三首相を名指しで非難し、「日本列島ごときは一瞬で焦土化できる能力を備えて久しい」と威嚇する記事も報じた。

【私の論評】北朝鮮の脅威が顕著になると、円高になるのはなぜ(゚д゚)!

北朝鮮で有事が発生し、日本にミサイルが飛んでくるかもしれない事態になったと普通に考えるとこれは、日本にとってはマイナスな出来事ですので、ドルが買われて、円が売られる円安になるのではと思われます。

しかし、現実にはそうではありません。本日もブログ冒頭の記事のよう似、北朝鮮の危機が有るにも関わらず、円相場は上昇しました。

東日本大震災
東日本大震災の時には、日本は大きな打撃を受けたにもかかわらず、円高になり、G7の国際協調による為替介入を招く事態になりました。

実は、日本にマイナスな東日本大震災の時にも円高になったときの理由は、以前にもこのブログに掲載したように、震災からの復興のため、復興のための資材を購入したりするため、円の需要がかなり高まったためです。

そうして、このようなことは、先進国では良くあることです。実際、東日本大震災の少し前に、オーストラリアで大水害が発生したましたが、このときもいっときオーストラリア・ドルが高騰しました。

ご存知のように、その後も円高が続きましたが、それは、円の需要が高まって円高傾向になったにもかかわらず、当時の日銀が金融緩和をせず、引き締め状況を維持したからです。2013年からは、大規模な金融緩和に踏み切ったため、それまでの超円高は是正され、円安傾向となりました。

金融緩和すれば、通貨安傾向に、金融引締めをすれば、通貨高傾向になります。為替相場は、六割がたはこれで説明がつきます。

簡単に言うと、米国が金融緩和をして、日本が金融引締めをすれば、ドル安、円高傾向になります。米国が金融引締めをして、日本が金融緩和をすれば、ドル高、円安傾向になります。

米国も、日本も金融緩和をしていれば、より量的な金融緩和の度合いが高いほうの通貨が安くなります。

そうなると、金融緩和をどんどん実施すれば、自国通貨をかなり安くできて、有利になると思われる方もいらっしゃるかもしれまんせんが、これにも限度があります。

どこまでも、金融緩和を続ければ、いずれハイパーインフレを招き、良いことはありません。だから、緩和を続けて自国通貨を安くするという、通貨戦争なる幻想はなりたちません。

日本銀行
これで、為替は6割りがたが決まってしまいます。そうして、長期的には通貨高、通貨安はこれが原因でほとんどが決まります。ただし、短期的には、様々な要素があるので、後の4割は、他の要因で決まるわけです。

しかし、今回の北朝鮮の脅威に関しては、特に日銀が北朝鮮の脅威に対応して、金融政策を実行しているわけではないにもかかわらず、北朝鮮の脅威が顕著になったときには、実際には円高傾向になっています。これは、日銀の金融政策とは関係のない動きです。ではなぜ、このようなことが起こるのでしょうか。
それは、大きく3つの理由によると考えられます。

①機関投資家や海外投資家のポジション解消のため
②株価下落による海外投資家の為替ヘッジのため
③日本企業や投資家などのリパトリのため

1つずつ解説したいと思います。

円高理由その1 機関投資家や海外投資家のポジション解消
最初の円高になる理由は、リスク高まったときにおこる機関投資家や海外投資家のポジション解消の動きです。 
大きなリスクがあるときは、相場がどちらに振れるかわからないために投資家がポジションを解消してフラットにする動きが活発になります。 
トランプ政権下で円安ドル高の傾向が高かったためにドル買いのポジション持っている人が多くいて、その投資家たちがポジション解消するとドル売り円買いになり、円高になるということです。
円高理由その2 株価下落による海外投資家の為替ヘッジ
北朝鮮で有事が起こった場合は、まず間違いなく日本株が下落することが予想できます。 
その際に日本市場特有の海外投資家の取引割合が6~7割という特殊性で海外投資家の動きがドル円為替にも波及してきます。 
海外投資家が日本株を買う場合は、自国の通貨から日本円に両替して日本株を買います。 
その際に為替変動のリスクがあるために同時に日本円の売りを行います。いわゆる為替ヘッジと呼ばれるもので、日本円に両替する=日本円を買うという行為を行う場合に反対の注文の日本円を売るという取引をすることによって、為替リスクを避けるというものです。 
株価が下落した場合は、株を売る際に日本円を売るという注文を解消し、日本円を買うことになります。 
株が下落すると日本円を買う注文が入り、円高になるのです。 
さらに海外投資家が、日本株を買う場合は、レバレッジを利かせて日本円を売る注文を出します。 
株価が下落した場合は、証拠金を積み増して、ロスカットを防ぐために円買いを積み増すことも起こります。 
このように日本の株価が下落した場合に海外投資家の為替ヘッジの動きのために円高になるのです。
円高理由その3 日本企業や投資家などのリパトリ
リパトリとは、リパトリエーションの略で企業や投資家が海外から本国に資金を引き揚げることを指します。 
東日本大震災の際にも保険金の支払いなどで保険会社が海外資産の一部を日本円に買える動きが出ています。 
日本に打撃があった場合は、日本で必要なお金を集めるために海外の資産を日本円に変える動きが出てきます。 
その場合も日本円が買われて、円高傾向になります。 
東日本大震災の時には、先に述べたように、円の需要が高まったにもかかわらず、日銀が金融引締めの姿勢を崩さなかったことが、円高の主要因であったことを述べました。 
それと同時に、このリパトリを先読みしてのヘッジファンドなどの円買いが入り、さらに円高に拍車をかけました。 
北朝鮮の脅威が高まると、円高になる理由として上記の3つの動きがあると思われます。ただし、短期(1年以内)の為替はほとんどがランダムウォークであり、予測は困難です。

北朝鮮有事が起こる確率は極めて小さいと思いますので、1994年や2003年のように米国側が攻撃をあきらめるというシナリオが一番ありえそうですが、最悪のシナリオを想定しておくのも重要なことだと思います。

最後にアナリストでも意見が分かれていますので、北朝鮮有事の際に円高になるか円安になるか予想した記事を一覧にします。

私が調べた限りですので、抜け漏れ等はありますが、参考にしてください。

○円高予想

・ロイター:コラム:北朝鮮有事の円相場シミュレーション=佐々木融氏

・日経新聞:北朝鮮有事で円高どこまで 豊島逸夫の金のつぶやき

・Newsweek 「トランプ円高」が加速 朝鮮半島リスクとドル高けん制で

・MONEY VOICE 北朝鮮の隣なのに安全通貨?「無慈悲な日本円買い」はなぜ起こるのか=久保田博幸

○円安予想

・ロイター:コラム:朝鮮半島有事の「日本売り」シナリオ=斉藤洋二氏

・SnkeiBiz:最悪なら「円安」シナリオも…迫る「Xデー」 朝鮮半島有事で日本経済どうなる

・フィスコ:【市況】【フィスコ・コラム】:円:北朝鮮リスク、円はどちらに動くのか?

アナリストの記事では、円高のほうが若干多いようです。私も、その立場をとります。なぜなら、北朝鮮有事の場合でも日本が甚大な被害を受けなければ、上記で述べたようなことが繰り返されることになるからです。

さらに、このようなことはあってはならないことですが、実際に核ミサイルが日本の都市に落とされたとして、現状の北朝鮮の核では大都市の場合は、たとえ、北朝鮮が全部の核を打ち込んでも全部を破壊することは不可能であるため、かなり大きな被害にあったとしても、日本国のインフラなどの大部分は残り、いずれ復興に入るはずです。

そうなれば、東日本大震災のときと同じく、円の需要が増し、当然のことながら、円高となります。

その時に、日銀が金融緩和をすれば、円高を防ぐことができます。東日本大震災あたりまでの、日銀はしょっちゅう金融政策を間違えていましたが、13年頃からようやくまともになりました。北の脅威が顕著になれば、円高にふれることはわかりきっているので、今後はまともな政策を実行していただきたいものです。

それにしても、国家破綻に近かった、ロシア危機や韓国通貨危機、アルゼンチンのデフォルト時には、当然のことながら超通貨安に悩まされました。

日本の場合は、国家が破綻するほどの災厄に見舞われれば別ですが、そうでなければ、円高にみまわれるということですから、いかに日本が強固な基盤の上に成り立っているのか良くわかります。

北朝鮮ウォンなど、今でも価値が低いですが、北有事ということにでもなれば、国際的には紙くず同然になるものと思います。

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2017年8月8日火曜日

安売りでも売れない韓国車 「THAADだけが理由ではない」お得意さまの中国で販売激減のウラ―【私の論評】韓国車が世界的に売れない本当の理由(゚д゚)!

安売りでも売れない韓国車 「THAADだけが理由ではない」お得意さまの中国で販売激減のウラ

ヒュンダイ自動車の本社(左)とキア自動車の本社(右)。ただしキアはヒュンダイの傘下にはいっている
 韓国の自動車業界が不振にあえいでいる。最大手の現代(ヒュンダイ)自動車や傘下の起亜(キア)自動車は、中国市場での販売が6割減と壊滅状態だ。在韓米軍の高高度防衛ミサイル(THAAD)配備に対する中国の報復措置だけが原因ではなく、安売りに頼ってきた産業構造に問題があるとの指摘もある。

 北朝鮮が7月28日に2度目の大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射した後、韓国がTHAADの追加配備を決めたことについて、中国の外務次官補は韓国の駐中国大使を呼んで抗議するなど、中国の韓国に対する怒りは収まっていない。

 そうしたなか、現代自の6月の中国市場での販売台数は前年同月比64%減、起亜は同62%減となった。4~6月期の最終利益も現代自が51%減、起亜が53%減と大幅減益に見舞われており、両社にとって最大のお得意さまである中国市場での不振が直撃した形だ。

 7月の数字についても聯合ニュースは「1~6月の減少幅と近いレベルの不振が予想される」とする現代・起亜関係者の話を報じた。

 韓国の政府系シンクタンク、産業研究院のリポートによると、同国の自動車産業全体でも同じ傾向で、「2012年の(沖縄県・尖閣諸島問題をめぐって)日本車が中国市場で受けた打撃よりも大きい」と分析する。

 韓国メーカーは、中国の報復措置が不振の原因と説明しているが、リポートでは「韓国メーカーの競争力低下が中国市場で苦戦している原因だ」とみる。

 日本の自動車に比べてブランドイメージが低いうえ、中国の自動車メーカーも品質や安全性が向上、競争力をつけていることが韓国車低迷の背景にあるとして、「低価格、高品質だけでなく、デザインや機能などの差別化の推進が必要だ」と提言しているのだ。

 中央日報によると、韓国は昨年の自動車生産台数でインドに抜かれて世界トップ5の座から転落したが、今年に入って7位のメキシコにも差を詰められているという。

 同紙は、2013年に日銀が量的緩和政策を実施して以来、日本の自動車メーカーが円安で得た収益を研究開発に投じたことも“日韓格差”の一因に挙げている。

 欧州市場でも、日本と欧州連合(EU)が経済連携協定(EPA)交渉で大枠合意し、10%の自動車関税が協定発効から7年で撤廃される予定で、韓国車の価格優位性は風前のともしびだ。

【私の論評】韓国車が世界的に売れない本当の理由(゚д゚)!

2017年5月4日、韓国・東亜日報によると、日本に進出した唯一の韓国車ブランド・現代(ヒュンダイ)自動車の昨年の日本市場での販売台数は180台で、うち乗用車は7台、残りはすべてバスでした。一方、日本車の韓国での販売台数は3万5429台で、日本で販売された韓国車の197倍に上りました。

ただ、バスについては、日本ではここ数年、訪日外国人の増加や東京五輪開催決定により、大型観光バスの需要が急増しています。

右ハンドル仕様にするなど、日本人のニーズに
応えた現代自動車の大型バス「ユニバース」
日本メーカーは作っても作っても納車が追いつかず、その結果、ヒュンダイから購入しているケースが出ているとみられるからです。

三菱ふそうなど日本勢は「五輪前までは高水準の受注が続く」とみて、期間従業員を含む作業員の増員や休日出勤、残業の増加などで増産体制を強化する構え。ヒュンダイの大台乗せも一過性の可能性があります。

韓国輸入自動車協会によると、16年に韓国で最も売れた輸入車ブランドトップ10に、日本の3社の名前が挙がりました。7位レクサス(1万594台)、8位トヨタ(9265台)、10位ホンダ(6636台)です。

こうして韓国で日本車の販売好調が続く中、日本市場での韓国車の販売実績は惨たんたるものです。日本自動車輸入組合の統計によると、16年に日本で売れた韓国車はわずか180台で、54の輸入車ブランドの中では33位、シェアは0.05%でした。販売1位はメルセデス・ベンツ(6万7495台)で、2位BMW(5万828台)、3位フォルクスワーゲン(4万7726台)など上位5位までをドイツ車が占めました。

現代車は、韓国完成車メーカーの中で唯一01年に日本に進出したのですが、04年に販売台数2524台でピークを迎えた後は下落に転じ、10年に日本市場での乗用車販売から正式に撤退しました。

進出当初は韓流ドラマ「冬のソナタ」の主演俳優ペ・ヨンジュンを広告モデルに起用したものの、市場開拓には至りませんでした。現代車の関係者は、「日本の消費者は自国ブランドへの愛着が強く、日本車の品質や安全性が非常に高水準ということもあり、外国ブランドが入り込むのが難しい」と説明しました。

2005年ペ・ヨンジュンを広告モデルに起用し、「ソナタ」の販売を開始
日本国内で販売される現代自動車ブランドで現在残るのはバスなどの商用車のみで、10年以降、日本で売れた韓国製乗用車は、在日韓国公館で使用されるものか、一部の消費者が個人的に韓国で購入し日本で新車登録したものに限られます。

ヒュンダイの乗用車が売れなかったのは、日本の同クラスの車より高い価格設定をしたことや、当時の人気車種がコンパクトカー、ミニバンで、セダン中心のヒュンダイとのラインアップにずれがあったからです。

つまり、市場のニーズに対応しきれなかったのです。当時の韓国メディアは「閉鎖的な日本市場が撤退の原因」と報じるなど、韓国民の日本に対する被害者意識は今でも根強い。こうした意識を払拭しなければ、日本での地位向上は進まなでしょう。

さらに、ヒュンダイが悲願とする高級ブランドへの脱皮も今ひとつです。2月23日に米消費者情報誌コンシューマー・リポートが発表した自動車部門別ブランドランキングでは、日本車が7部門で最高評価を得たのに対し、ヒュンダイブランドは1部門にとどまりました。これでは、ブランド嗜好の高い日本人の支持は得にくいでしょう。

こうした状況のため、韓国自動車メーカーは日本市場への進出には否定的です。あるメーカーの関係者は「収益を出すことができない市場に入ろうとする企業はない。日本では韓国車の認知度が低く、当面は日本市場の開拓が容易ではないだろう」と述べています。

この報道に対し、韓国のネットユーザーからは「日本全体で韓国の乗用車販売がわずか7台というのは正直とても衝撃的」「年間でたった7台の販売って、笑わせる」「7台って…日本人が買ったんじゃなくて、日本に住んでいる韓国人が買ったのでは?」など、年間で乗用車販売数がわずか7台だったことに多くの驚きの声が寄せられました。

また、「国産車(日本車)の方が高性能なのに、あえて性能の低い韓国車を買う人なんていないだろう」「当然だ。僕でも日本車を選ぶ」「日本車は性能もいいし、燃費もいいからね」など、日本車に対する肯定的な意見も多く聞かれました。

一方米国での韓国車のシェアはどうなっているのかについても興味のつきないところです。それは、下のグラフをご覧になって下さい。
米国の主要メーカー新車販売台数
ヒュンダイも、キアも日本市場のように売れていないということはないのですが、2017年7月のシェアでは、ヒュンダイは3.8%、キアは4.0%に過ぎません。シェア増減では、ヒュンダイは-27.9%、キアは-5.9%とともに下落しています。

これには、何か原因がはるはずと思い調べたところ、やはり妥当な原因がありました。

それは、ヒュンダイが史上初のリコール勧告を拒否し、タイヤが突然外れるが欠陥ではないと発表したためのようです。

韓国史上初めて政府のリコール勧告を拒否し、ヒアリングを受けた上で韓国国土交通部から強制リコールを通知された現代自動車に疑惑の目が注がれています。
 
ここにきて現代自は是正計画書を提出したのですが、2度にわたるリコール勧告を拒否した姿勢に対し、同部は欠陥隠蔽(いんぺい)の可能性が排除できないとして検察に捜査を依頼しました。

米運輸省道路交通安全局(NHTSA)は米国でのリコール措置が適切だったかを判断する調査に入りました。韓国メディアも「品質信頼度と対外イメージ失墜は避けられない」と突き放している状況です。

国紙・中央日報(日本語電子版)によると、強制リコールの対象は、欠陥が確認された現代・起亜自動車の12車種・24万台です。

大気汚染を防止する部品の欠陥で走行中にエンジンが止まる可能性がある車両と、ハブナットの欠陥でタイヤが外れる可能性がある車両だといいます。

これらの欠陥に対しては同部が技術調査や専門家審議などを経て、3月と4月に2度にわたってリコールを勧告したのですが、現代自は「安全運行に支障をきたす欠陥ではない」と拒否。 ヒアリングを経て5月に強制リコール処分の通知を受けました。

ここにいたって現代自は強制リコールにひとまず従う方針を表明したのですが、「リコール命令とわれわれが主張している無償修理は実は大きく異ならない。  
ただし、安全に関連した問題でない場合、リコールをしなくてもよいためヒアリングまで受けることになった」と釈明。欠陥が安全問題と関連するかどうかをめぐっては、依然として同部との間に温度差があることを浮き彫りにしました。

こうした欠陥の公表に後ろ向きともとれる現代自の姿勢に米国当局も動き出しました。ロイター通信によると、NHTSAが現代・起亜自動車が2015年と今年に米国で実施しました。

3回のリコール措置が適切だったかを判断するための調査に着手したといいます。リコールが不適切だったと判断されれば最高1100億ウォンの罰金が科されることになります。 

当初リコールの原因となったとみられた事故の事例を以下に掲載します。以下は2014年9月の事故です。

ガールズグループLADIES’CODE(レディースコード)のメンバーが3日、交通事故に遭い1人が亡くなり2人が重傷を負うなか、事故車両である現代車の「グランドスターレックス」のタイヤが外れてエアバックが作動しなかったことが問題になっていました。 

レデイーズコード この中のウンビとリセがなくなっている
3日、LADIES’CODE所属事務所の関係者によると、事故原因は「ソウルに移動する途中、突然タイヤが外れたため」であり「運転席、後座席などのエアバックが膨らまなかった」と明らかにしました。

韓国地上波放送局SBS(ソウル放送)のニュース番組『8時ニュース』によると、現代車関係者は「エアバックが作動するのは状況によって違う。現在、警察側でもブラックボックスを確認しているとのことなので、ひとまず警察の調査が終わってからでないと我々も内容が分からない」と話したと明かしました。

また警察は事故車両やブラックボックスなどを国立科学捜査研究院に鑑定依頼し、正確な事故原因を調査していくと説明しました。

以下が実際の事故車両の写真です。
 



左後輪のドライブシャフトが折れて、ガードレールにぶつかって、かつエアバッグが膨らまなかったそうです。

しかも、毎日経済の記事によるとこれがレンタカー屋に入って初日の車で、このLADIES' CODEというグループに貸したのがはじめてだったそうです。つまり、金属疲労などあり得ないということです。

一人が死亡、一人が重体、一人が重傷でした。後に一人が亡くなっています。この状況では、これだけで済んで幸いだったというレベルのようにみえます。

監視カメラも目撃者もいないところで事故だったということなので、事故原因は完全に判明しているわけではありません。

事故当初は車の欠陥が原因とされていたのですが、10月20日、京畿道龍仁西部警察署は、ワゴン車を運転するマネージャーのスピードの出し過ぎにより車輪が外れたと発表。実況見分でワゴン車の速度が135km/h以上出ていたとして、水原地方検察庁はマネージャーに対し、懲役2年6ヵ月を求刑。2015年1月15日に公判が開かれ、1審で1年2ヵ月の禁固刑を受けたが、翌日に控訴しました。

4月15日に開かれた控訴審で禁固1年2ヵ月、執行猶予2年、社会奉仕160時間、順法運転の講義受講40時間の判決を受けて釈放されました。

この事故自体は、車の欠陥によるものではなかったようですが、ただし疑問を持つ人も未だに多いです。

確かに、この事故車両グランドスターレックスにだけ特に脱輪が多いという情報もありませんし、通常の衝突試験もそう悪い結果ではありませんでした。しかし、車輪を固定するボルトは一定以上の強度はあるものの、一定の負荷が加わるっと破断しやすいボルトなのかもしれません。

まず、ボルトが折れている事から整備ミスという説は一蹴でできるのですが、少し調べてみると、気になる苦情が目立つ事に気がつきました。それは腐食が多いという苦情です。そして、プロペラシャフト接続部の衝撃吸収機能が落ちて未舗装の道路やスピードバンプなどを高速で繰り返し過ぎる場合、トランスミッションオイルが漏れ出る現象が発見されています。他にもフライホイールに過剰な遊びが発生するという報告もあります。

これでは、いくらあの事故が車の欠陥化によるものではないといわれても、実際に乗るのは憚られます。

このようなことと、ヒュンダイ自動車の史上初のリコール拒否も相まって、顧客に不信感をつのらせたことが、販売不振の原因であると考えられます。

これでは、世界的に韓国の車が売れなくなったのも理解できます。そうして、一見頑なに見えた日本人のブランド志向による、韓国車忌避は結局のところ正しかったのかもしれません。

今頃日本にも、米国や中国のように韓国車が大量に存在していれば、大問題になっていたかもしれません。

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2017年8月7日月曜日

【沖縄が危ない!】全国に広がる「同調圧力」「沖縄メディア化」の不気味 決まり文句乱発、思考停止に似た危うさ ―【私の論評】沖縄本島を笑えない!財務省の同調圧力(゚д゚)!

【沖縄が危ない!】全国に広がる「同調圧力」「沖縄メディア化」の不気味 決まり文句乱発、思考停止に似た危うさ 

 2009年西表島に入港した護衛艦に反対する市民団体
反基地感情が強い沖縄の土地柄を語る際、よく使われるのが「同調圧力」という言葉だ。県民が内心、「沖縄を守るには、ある程度の基地が必要」と思うことがあっても、地域、職場、家庭などでの立場上、口にできない雰囲気がある。私の経験上、「同調圧力」が最も強いのは沖縄メディアの内部であり、特に駆け出しの記者は、徹底的に反基地イデオロギーの洗礼を受ける。

 十数年前、石垣島に海上自衛隊の艦船が休養のため寄港した。当時の石垣市長はガリガリの反自衛隊で、島全体が冷たい雰囲気だったが、港に集まった記者たちも、のっけからけんか腰だった。

 新人だった私がどう記事を書くか迷っていると、他社の先輩が「こう書けばいいよ」と、過去に自衛艦が寄港した際の新聞記事を渡してくれた。「武装した軍艦が平和な島に乱入し、住民を不安に陥れている」というような内容だ。親切な先輩には現在でも感謝しているが、沖縄の記者たちは、このように現場で「成長」していく。

 そのころ学校の平和教育で、戦争の悲惨さを強調するだけの授業に疑問を感じた私は「他国の脅威についても教えるべきだ」と指摘する短いコラムを書いた。

 すると上司は「戦争体験者たちの心を傷つける気か」と頭ごなしに怒鳴りつけ、原稿はボツ。当時、「中国が尖閣諸島を奪いに来る」などと口にしようものなら極右扱いされた。

 そんな石垣島を一変させたのは、皮肉にも当の中国だ。近年、尖閣周辺で傍若無人な領海侵犯を繰り返しているため、石垣島は今や、高校生でさえ堂々と「中国は脅威だ」と発言する時代になった。メディアの「同調圧力」もほぼ消えた。

 しかし、沖縄本島では時間が止まったままのようだ。「同調圧力」が怖いのは、長い間さらされ続けていると、他人に植え付けられた先入観で物事を見る癖がついてしまうことだ。沖縄メディアの反基地報道はまるで金太郎飴であり、思考停止に似た危うさを感じる。

 本土には「同調圧力」など存在しないと思っていたが、最近の全国紙やテレビを見ると、特に憲法改正や加計学園問題で「反安倍政権」のヒステリックな論調が台頭している。

 権力批判はいいのだが、言っていることがどれもそっくりなのが気になる。「安倍一強の緩み」などといった決まり文句の乱発など、自分の足で真剣に取材しているとはとても思えない。

 「同調圧力」「沖縄メディア化」が全国的に進行しているように見えるのは、不気味な現象だ。時流に流されない冷静さを、メディアはどこまで堅持できるだろうか。=おわり

 ■仲新城誠(なかしんじょう・まこと)1973年、沖縄県石垣市生まれ。琉球大学卒業後、99年に地方紙「八重山日報社」に入社。2010年、同社編集長に就任。同県のメディアが、イデオロギー色の強い報道を続けるなか、現場主義の中立的な取材・報道を心がけている。著書に『「軍神」を忘れた沖縄』(閣文社)、『翁長知事と沖縄メディア 「反日・親中」タッグの暴走』(産経新聞出版)、『偏向の沖縄で「第三の新聞」を発行する』(同)など。

【私の論評】沖縄本島を笑えない!財務省の同調圧力(゚д゚)!

同調圧力(どうちょうあつりょく 英: Peer pressure)とは、地域共同体や職場などある特定のピアグループ(英: Peer group )において意思決定を行う際に、少数意見を有する者に対して暗黙のうちに多数意見に合わせることを強制することを指します。

人生船出の新入社員集合写真。同じ服装同じ頭髪「クローン?」「既製品?」
少数意見を有する者に対して態度変容を迫る手段にはさまざまな方法があります。少数意見を有する者に対して物理的に危害を加える旨を通告するような明確な脅迫から、多数意見に逆らうことに恥の意識を持たせる、ネガティブ・キャンペーンを行って少数意見者が一部の変わり者であるとの印象操作をする、「一部の足並みの乱れが全体に迷惑をかける」と主張する、少数意見のデメリットを必要以上に誇張する、同調圧力をかけた集団から社会的排除を行うなどです。

日本は、ブログ冒頭の記事のように沖縄だけではなく、社会そのものに、とにかく本音でモノを雰囲気が醸し出されることがあります。組織に属する会社員は誰もが、程度の差はあれある程度感じるところではないかと思います。

本当に必要なのは忍耐なのに、我慢を美徳とし、嫌いな仕事を続ける姿を美化する。みんなと足並みを揃えて、どこか違う雰囲気を持つ人間を排他的に扱う。このようなことが、日本のあらゆる組織に多かれ少なかれ存在します。

そうして、日本には違いを間違いとみなし、周囲をコントロールして支配するという悪しき構造が根付いているようです。

実は、わが国の中枢に、自分たちにしか通じない非常識を頑なに守るため、周囲をコントロールして支配する集団がいることを御存じでしょうか。

それは何かといえば、財務省です。

安倍総理が消費増税は、予定通り行うとの発言が、新聞に掲載されていました。しかし、同時に安倍総理は同時に「デフレマインドを払拭するには至っていない。デフレから脱却すれば税収が安定的に増えていく」と述べ、デフレ脱却が最優先であると重ねて主張していました。

安倍総理
なぜ、このような発言をしなければならないのか、といえば、財務省に配慮してのことだと思います。非常識な財務省は、デフレであろうが何であろうが、何かといえば増税しようとします。そのような、財務省をいたずらに刺激したくなかったのでしょう。8%増税で大失敗した安倍総理は、10%増税をしてしまえば、日本経済はとてつもないことになり、自分自身にとっても、自民党にとっても良くないことは百も承知だと思います。

残念ながら、今の日本は、総理大臣ですら、財務省に一定の配慮しなればならないという歪な構造になっているのです。
そうして、相変わらず、多くの人間は財務省の言いなりで、まともな経済理論からするとおかしくて噴飯物の議論が、平気で公共の電波を通じて撒き散らされています。無知な政治家ならともかく、いわゆる主流派といわれる経済学者や評論家、アナリストまでそうなのですから、財務省の「同調圧力」は凄まじいものがあります。この日本という国はどこまで「財務省支配」がいきわたっているのか、本当に末恐ろしいです。

10%増税は、初歩的な間違いです。消費税率が8%から10%にあげると、それに連動して、自動的に2.5兆円×2%=5兆円の税収が上がると本当に思っている人がいることです。いや、そうとしか思えない議論をしている人がいると言った方が正確かもしれません。

典型的な例が、「社会保障の財源確保のためには10%増税が必要」「財政再建のためには10%増税が必要」等々です。私自身は、景気が良くなりすぎて、明らかにインフレとなり、さらにそれが経済に悪影響を及ぼすようになったときは、増税した方が良い場合もあることは認めます。しかし、景気が悪い時に増税すれば逆に税収が落ちることは歴史が証明することでもあり、絶対に反対です。

97年に消費税を3%から5%に上げてから、国の税収が54兆円(97年)から40兆円前後(2010年)まで落ち込んだことは記憶に新しいです。未だデフレから完璧に脱却していないここ日本で、無理やり消費税を10%に上げてその分だけ税収が上がる経済状況ではありません。

財務省が主張する、巨額の財政赤字は虚偽であることは、このブロクでにも何度か掲載してきました。しかし、この虚偽を虚偽でないと仮定してみても、財務省の言い分は間違っています。

証財政再建は「経済成長」「増税」「歳出削減」のベストミクスで達成されものです。これすらわかっていない人が多いです。もし本当に、1000兆円の借金があったとして、増税だけで返すのは不可能です。何しろ、これは消費増税400%分相当です。

歳出削減は徹底的に行うにしても一般会計予算が90兆円台だから限界があります。この大借金を持続的に何年かかっても返していくためには、経済成長による税収増しかないです。

10%増税を先送りすれば、国債の信認が低下し、国債が暴落し金利が急上昇して財政が破たんするという議論もあります。ここに至っては「笑止千万」と言わなければならないです。

これは、20年以上前から、増税したい財務省(当時は大蔵省)が国民を脅すために、「狼少年」のように言い募ってきたことですが、8%増税の大失敗が明らかになった現在でさえ、「財務省御用達」の経済学者やコメンテーターがこれを真顔で語るのには、呆れ果てて二の句が告げません。

そもそも、「国債の信認」は「経済のファンダメンタルズ」で決まり、その「ファンダメンタルズ」は頗る良いというのが厳然たる「事実」です。

すなわち、日本は最大の貯蓄超過国であり、国債はほとんど国内(96%)で極めて低金利(0.5%以下)で安定的に消化されています。日本は世界最大の債権国であり外貨準備も世界最高です。日本はまさに「強固なファンダメンタルズ」を有しています。さらに、日本の国債のほとんどは、自国通貨建てであり、とてもデフォルトするなどということはあり得ません。

たかだか10%増税を先送りしたところで「国債が暴落し長期金利が急上昇」することはありえない。そうして、上述したロジックは、財務省が2002年、日本国債の格付けが下げられた時、まさにその格付け会社に反論した、その通りのことを私が敷衍しているだけです。信じられない人は財務省のHPを見てほしい。今でも堂々とこのロジックはアップされています。財務省は、国内向けと対外向けと説明を変えているのです。完全な「二枚舌」を使っているのです。

よく日本の借金は1000兆円を超える。財政状況は最悪だ。だからこそ消費増税は必要だとも言われます。しかし、借金だけ取り出して「大変だ!大変だ!」と騒いでいる国は日本にはありません。日本には、資産も多数あります。

こういうと、資産とはいっても、土地や建物などすぐ売れないから、資産があるからといって、安心ではないなどとドヤ顔で言う人もいますが、日本の場合は純金融資産がとてつもない巨額であり、これを考慮にいれると、そもそも日本の借金はさほどではありません。

さらには、政府と日銀まで含めた総体を統合政府といいますが、統合政府ベースでは、もう日本は、借金など存在せず、黒字になっています。政府の借金だけ、統合政府ベースではみないというのでは、現実が見えなくなります。

これは、民間会社でも同じことです。あの超優良企業のトヨタですら、貸借対照表上の「借金」(負債)だけ取り出せば20兆円にのぼります。誰がそれでトヨタは破たん寸前だと評することができようか。財務省の「国の借金1000兆円」はまさにこの論理です。

統合ベースでの政府の借金の推移
かつて、麻生財務大臣は、消費増税は「国際公約」だと主張していたことがあります。これも財務省の振り付けです。日本人は「舶来」に弱い。しかし、国際社会の真意は、一国の税制に細かく注文をつけることより、「日本が経済成長して世界経済をけん引してほしいというのが、本音です。

そのためには「財政破綻してもらっては困るから増税も」という程度のことです。何が何でも予定通り増税して逆に日本経済が腰折れ、悪化したら、世界経済のけん引役も果たせず、それは困るというのが国際社会の真意でしょう。だからこそ、オバマ政権時代から、米財務長官や海外エコノミスト、メディアから「増税延期」という声が出ているのです。財務省のプロパガンダに惑わされてはいけないです。

事ほど左様に、本当に経済学的に財政学的におかしな議論がまかり通っているというのが今の日本の現状です。財務官僚が執拗に、オピニオンリーダーの所を回って、こうした「経済の非常識」「財政の非常識」を振れ回っているのです。財務省も財務省ですが、それにだまされるか、だまされたふりをしているのか、わかりませんが、したり顔でメディアでしゃべる御用学者やコメンテータの情けなさといったらありません。

彼らは、完璧に財務省の「同調圧力」に屈服しているのです。

「同調圧力」は沖縄だけの問題ではないのです。日本には様々な「同調圧力」がありとあらゆる組織に根付いているのです。

私たちは、それに屈服するわけにはいかないのです。いずれ、わが国の社会に深く根付いた「同調圧力」を払拭しなければならないのです。そうでなければ、まともな社会は構築できません。

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