2018年3月23日金曜日

【石平のChina Watch】「精神的日本人」の登場―【私の論評】現代中国の精日から次世代中国リーダーがでてくるかもしれない(゚д゚)!

【石平のChina Watch】「精神的日本人」の登場

 中国で最近、「精日=精神的日本人」と呼ばれる人々の存在が注目を集めている。

 例えば2月20日、2人の若者がネット上にアップした1枚の写真が波紋を呼んだ。四川省出身の唐さん(25)と南京市在住の宗さん(22)が、南京市内の山中にある日中戦争遺跡のトーチカをバックに撮った記念写真である。そのとき2人は、旧日本陸軍の軍服を身につけ、オモチャの軍刀と小銃を手に持ち、日の丸の旗を掲げていた。それがネット上で公開されると、2人は直ちに「悪質な精日」だと認定され、「日本の侵略戦争に対する賛美だ!」「民族感情を踏みにじった卑劣行為!」との批判の声が全国的に広がった。そして22日、2人の身元は警察によって割り出され、拘束される憂き目にあったのである。

四川省出身の唐さん(25)と南京市在住の宗さん(22)が
撮影した写真の一枚

 旧日本軍の「軍服」を着ただけで警察の厄介になるとはいかにも中国らしい出来事であるが、事態はこれで終息したわけではない。今月8日、全人代の記者会見に臨んだ王毅外相は、この一件に関連して記者から「精日のことをどう思うか」と聞かれ、顔色を変えて「中国人の堕落者だ!」と声を荒らげた。

「精日のことをどう思うか」と聞かれ、顔色を変え「中国人の堕落者だ!」と声を荒らげた王毅外相

 このように、ただ1枚の「コスプレ写真」が政府高官である王外相の厳しい批判まで招いたのだが、ここに出てくる「精日=精神的日本人」とは、一体どういう人たちなのか。

 「精日」という言葉はそもそも最近の新造語だから、いかなる辞典にも載せられていない。中国国内最大の検索エンジンである「百度」を見てみると、「精日」に対する定義は実に簡単で、「精神的に自分のことを日本人と同一視する人々のこと」である。百度はさらに、「精日の特徴」について一言を付け加えている。「精神的日本人の中には、日本を崇拝して自らの民族を恨み、中国人であることを恥じる極端な者もいる」という。

 今月9日付の法制晩報が掲載した記事も前述の百度と同様、「精神的においては自分自身のことを日本人と同一視する人々」と定義している。こうした人々の特徴について、法制晩報はさらに、「精神的日本人たちは、ファッションや生活習慣が日本風になるだけでなく、日本社会のモラルやマナーに従って行動する」と報じている。そして法制晩報の取材によると、「精神的日本人」のほとんどは10代か20代の若者であるという。

中国江蘇省南京市で2015年に開かれた「南京日本文化交流会」。
「渋谷系」「原宿系」などの化粧が紹介された

 こうしてみると、「精神的日本人」の多くは要するに、ファッションからマナーまで、日本の精神文化に傾倒し自らの民族的アイデンティティーを変えて日本人になろうとする人々のことであろう。

 ここで注目すべきなのは、前述の法制晩報も指摘しているように、「精神的日本人」のほとんどが10代か20代の若者であることだ。周知のように、今の中国の10代20代の若者たちは全員、1990年代からの「反日教育」の中で育った世代である。物心がついてから政府主導の反日教育をたっぷりと受けていながら、その中の一部が「精神的日本人」になろうとしているとは、まさに興味深い。

 つまり彼らの出現は、中国政府の反日教育の部分的失敗を意味すると同時に、わざと日本軍の軍服を身につけて記念写真を撮る前述の2人の若者の行動は、「日本軍がすなわち悪」という政府の反日教育に対する彼らの正面からの造反でもある。

 そして、「中国人であることを恥じる」という百度の解釈からも分かるように、「精神的日本人」になろうとする若者たちの多くはむしろ、現代中国の堕落と醜悪に嫌気がさしているからこそ、「理想」としての日本文化に同化しようとするのではないかと思う。若者層における「精神的日本人」の登場は、興味深い現象の一つであろう。
                 

【プロフィル】石平せき・へい 1962年、中国四川省生まれ。北京大学哲学部卒。88年来日し、神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。民間研究機関を経て、評論活動に入る。『謀略家たちの中国』など著書多数。平成19年、日本国籍を取得。

【私の論評】現代中国の精日から次世代中国リーダーがでてくるかもしれない(゚д゚)!

政府を刺激している、これら精日といわれる人々は、アニメや芸能人にとどまらず、一般の人も巻き込んで、旧日本軍を賛美しています。
ブログ冒頭の石平氏の記事にも掲載された、日本軍の服装をして南京虐殺事件の戦地の前で記念撮影した2人が、ネット上に投稿し自慢する事件が起きました。

南京虐殺事件は中国が対日交渉に利用しているのですが、記念碑などは作ったまま放置されていて、警備もされていないし荒地になっています。

嘘で固めた南京大虐殺記念館

南京市公安局はネットユーザーによる告発を受けて2人を逮捕し15日間の拘留処分にしました。

中国では逮捕するのに、理由は不要で裁判所の許可も要らないし、罪状を発表する必要もありません。

2015年にも、中国全土で弁護士数百人が逮捕されたましたが、警察はドアを蹴破って理由も告げずに彼らを連れ去りました。

警察に問い合わせても逮捕した者の現状や理由の説明はされないし、裁判の経緯や判決も公表する義務もありません。

そのため、この二人がその後どうなったのかは、つまびらかではありません。

中国で日本好きを公言したり日本軍のコスプレをするのは相当なリスクを負うし、本人達もおそらくそれを分かってやっています。

それでもこうした人が増えているのは、中国に思想の自由がないことの反動なのでしょう。

この2人が、逮捕されたにも関わらず、模倣した人が再び南京市で同じようなコスプレ写真を撮り、ウェイボー(微博)に投稿しました。

因みに日本軍の軍服はネット上で2,000円以下でたくさん売られていて、サイズも選べたのですが、現在は取締りで買えなくなったようです。

皮肉にも日本軍の軍服が中国でブームになった理由は、政府が抗日ドラマを大量生産したからで、日本軍の将兵は、中国人にはお馴染みのキャラになっています。

中国の抗日ドラマにでてくる日本兵は中国人にはおなじみのキャラ

抗日ドラマの中の日本軍は悪逆非道なことばかりするのですが、それもある種の「かっこ良さ」に見えているようです

王毅外相は3月8日にブログ冒頭の記事にもあるように、「精日中国人的敗類」(精神的日本人は中国人のくず)と激怒してみせましたが、政府高官がそう言わざるを得ないほどに増えているようです。

抗日ドラマやネット弾圧強化によって、中国では自国に疑問を持ち日本について関心を持つ人が増えたのです。

「毛沢東は日本かぶれで日本軍と協力していた」という日本人があまり知らないことも、中国のネット上では(隠語で)揶揄されています。

「日本は中国を侵略した」ということがよく言われてきましが、それは正しくはありません。日本が中国に進出したのは、もともと中国の内戦に巻き込まれた、というのが実情です。しかし日本は、それでも中国に足を踏み入れた以上、中国の内戦を止め、中国を救おうと奔走しました

それは中国に安定と秩序をもたらすための人道的、道義的介入でした。当時の中国はひどい混迷と分裂の状態にあり、内乱と騒乱にあけくれる史上最悪の内戦国家でした。

各軍閥(ぐんばつ)は血で血を争う抗争を続け、その犠牲となっているのは一般民衆でした。民間の犠牲者は、ときに数百万人、また数千万人にも達していました。そのうえ、頻繁に起こる飢饉により、百万人単位の民衆が餓死するといった事態も、何度も起きていました。これを何とかしようとし、日本は泥沼にはまってしまったのです。

そうして、日本は最終的には蒋介石率いる国民党軍と宣戦布告なしの戦争をするに至りました。実際毛沢東の共産党軍は、当初は蒋介石率いる国民党軍と比較すると弱小で国民党軍と直接戦うことなく、中国内を逃げ回っていました。

とこが、日本軍が国民党軍と戦争をしたため、国民党軍は弱体化し、中国共産党軍がこれを打ち負かし、台湾に追い出し、毛沢東は大陸に中華人民共和国を建国することができました。

実際、毛沢東は戦後、中華人民共和国を設立できたのは、日本軍のおかげてあると述懐していたそうです。

毛沢東はかなりの、日本かぶれでもあり西郷隆盛を尊敬し、中国で明治維新を起こそうと考えて共産主義運動を始めましたた。

青年時代の毛沢東

日本の敗戦後に日本軍と日本人の復員を助けたのは徹底した日本好きだった毛沢東でした。無論、一方では洗脳や対日工作もしました。

毛沢東は、日本に留学したことはありませんでしたが、日本は、19世紀末から20世紀初頭にかけて、清国(中国)からの留学生を毎年喜んで受け入れました。日本は清国から学びに来る彼らに、知識を与え、独立心を育てていきました。

その中国人留学生の数は、ピーク時の1906年には、2〜3万人にものぼったといいます。中国人留学生が日本の港に到着して、まず驚いたことは、小さな学童たちがみな学校へ通う姿でした。それは当時の中国では、考えられない光景だったからです。中国では、学校というのはごく一部の人々のためでした。大多数の人は字が読めませんでした。

しかし、向学心に燃えた中国人たちが、競って日本に学んでやって来るようになりました。のちに中国に、親日また反共(反共産主義)の南京国民政府を樹立した汪兆銘も、法政大学で学んだ人物です。日本は彼らを喜んで受け入れ、中国の未来のために官民をあげて支援していったのです。

しかし、日本人の中には共産主義に共鳴するものたちも存在し、それらが留学生たちに共産主義思想を植え付けました。それが、後に中国が共産化するきっかけにもなりました。

ただし、毛沢東自身は、共産党は当時極貧だった中国をまとめるための方便に使ったようです。毛沢東自身は、米国と近い関係になりたいと考え、戦後に米国に秋波を送りましたが、米国がそれに一切応じなかったために、仕方なく当時のソ連と接近したといわれています。

このような中国の歴史は、現在の中国では捏造され、日本軍は平和な中国に一方的に侵略したことにされています。そうして、この憎き日本軍を中国の共産軍が打ち破り、独立したことになっています。その憎き日本軍は、南京で数十万の市民を虐殺したことにされています。

この捏造により、中国共産党ははじめて、中国人民に現在の中国共産党の統治の正当性を主張できるのです。だからこそ、戦後70周年のときに、噴飯ものの「抗日軍事パレード」を開催したのです。

このようなこと、少し歴史を深く調べれば、すぐに虚偽であることがわかります。中国政府はこうした事を国民に知られてはならず、より一層精日を警戒するのです。

中国で精日が増えているといことは、共産党の歴史の捏造に気づく若者が増えているということかもしれません。

現在の中国の共産党一党独裁はかなり制度疲労をおこしています、現在の状態がそのままつづくとは考えられません。この体制が崩れたとき、かつての毛沢東が精日だったように、現在の中国の精日から次世代の中国のリーダーがでてくるかもしれません。

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2018年3月22日木曜日

米が歴史的な新対中政策 協調路線転換、対決も辞さず ジョージ・ワシントン大のロバート・サター教授―【私の論評】米エスタブリッシュメントは金無し中国に興味なし(゚д゚)!

米が歴史的な新対中政策 協調路線転換、対決も辞さず ジョージ・ワシントン大のロバート・サター教授

ロバート・サター氏

 「米中関係が歴史的な変革を迎えた」-。米国歴代政権の国務省や国家情報会議で中国政策を30年余、担当したロバート・サター氏(現ジョージワシントン大学教授)は産経新聞とのインタビューでトランプ政権や議会が一致して長年の中国への協調を基本とする関与政策を止める形で新たな対中対決政策へと踏み出したことを明らかにした。新対中政策では日本との連帯への期待も大きいという。3月中旬に行われた同氏とのインタビューの主な内容は次のとおり。(ワシントン 古森義久)

 --米国の中国対応は現在どういう状態か

 「米国の対中政策はいま歴史的とも呼べる大きな過渡期に入り、変革を迎えた。米中国交樹立以来の『中国との協力分野を増やしていけば、中国は米国にとって利益となる方向へと変わる』という前提に基づく関与政策が米国をむしろ害することが明白となったからだ。

 トランプ政権が公表した最近の国家安全保障戦略や国家防衛戦略もこれまでの姿勢を変え、中国を競合相手、修正主義勢力と断じ、米国の価値観に反するなど対決や警戒を中心に据えた。これら厳しい表現は政府レベルで中国に対して使われたことはこれまでなかった」

 --米国の態度を根本から変えさせた原因はなにか

 「中国の戦略的な動向や意図の本質が明確になったことだ。今回の中国の全国人民代表大会(全人代=国会)でも明らかになったように、中国共産党政権はまずアジア太平洋で勢力を強め、他国に追従を強いて、米国をアジアから後退させようともくろんでいる。『中国の夢』というのはグローバルな野望なのだ。米国主導の国際秩序を嫌い、それに挑戦して、米国の弱体化を図る。軍事、経済、政治などあらゆる面での中国政府の動きが米国を敵視しての攻勢なのだ」

 --米側では中国のそうした実態を今になってわかったというのか

 「いや基本的に米国の国益をすべての面で害するという中国の挑戦が明白になったのはこの1年半ぐらいだといえる。南シナ海での軍事膨張、貿易面での不公正慣行、国際経済開発での中国モデルの推進、国内での独裁の強化など、みな米国への挑戦なのだ。私は2009年ごろから中国のこの基本戦略は認識していたが、オバマ政権下ではなお中国との協調こそが米国を利するという政策が主体だった」

 --中国の対外戦略の基本は米国敵視なのか

 「基本はそうだが、米国が強く反発するとなると、攻勢を抑制する。だがその一方で最近の習近平国家主席はロシアのプーチン大統領と緊密に連携し、米国の力を侵食する手段を画策している。軍事面をも含めてだ。

 現代版シルクロード経済圏構想『一帯一路』も中国のパワー誇示の野望の一環だといえる。インフラ建設ではあまり実体のない計画をいかにも巨大な実効策のように宣伝する。情報戦争と呼べるプロパガンダなのだ」

 --ではこれからの米国は中国にどう対峙していくのか

 「米国は総合国力を強くして中国を押し返さなければならない。米国が本気で押せば、中国も慎重になる。米国はその際に日米同盟への依存をも高めることになる。安倍晋三首相は中国の本質をみる点で優れている。トランプ大統領も対中政策では安倍氏から学んでいる。

 中国の膨張戦略はたぶんに米国がもう弱くなってきたという認識から発している。米側では中国のその認識がわかり、中国には対決をも辞さずに強固に立ち向かわねばならないという思考が強くなったのだ。この思考はトランプ政権だけでなく議会でも超党派の支持がある」

【私の論評】米エスタブリッシュメントは金無し中国に興味なし(゚д゚)!

米国の対中国政策が歴史的な転換をし、中国を競合相手、修正主義勢力と断じ、米国の価値観に反するなど対決や警戒を中心に据えることになったとしています。

では、以前の体制はどのようなものだったのでしょうか。これをしっかり把握しておかないと、その変化が良く認識できなくなります。

それを理解するには、以下の動画をご覧いただけると良くご理解いただけるものと思います。この動画は、2015年11月9日のものです。

丁度米国の大統領選挙でトランプ政権が登場する前の年のものです。思い起こすと、この時には米国でも日本でもトランプ大統領の登場を予想する人は誰もいませんでした。


この動画をご覧いただけれは、まずは、米国はいわゆるエスタブリッシュメントといわれる、ほんの一部の支配層が支配する国であることが良く理解できます。そのエスタブリッシュメントのうちの多数派の中国に対するエンゲージメント派は、いずれ中国は民主化するであろうと見ていたようで、中国は将来的にアメリカにとって自分たちが御せる良い市場になると信じていたようです。

この動画で伊藤貫氏は、米国には親中派のエンゲージメント派と中国反対派のコンテインメント(封じ込め)派が存在しており、アメリカの富の大きな部分を握ってるわずか上位0.1%エスタブリッシュメントの多くがエンゲージメント派であるため、エンゲージメント派が圧倒的に有利であると語っています。


ただし、この動画の伊藤­貫は、ルトワック氏のような軍事や戦略の専門家ではないことと、アメリカに長期間滞在しアメリカのエスタブリッシュメントやエンゲージメント派に多大な影響を受けていると見られます。

そのためでしょうか、中国の軍事力を過大に評価しているところがあります。現実の中国の軍事力は、伊藤氏の想定よりはるかに遅れています。たとえば、中国の巡航ミサイルは音速を超えたレベルで巡航すると述べていますが、これは最近そうではないことが明らかにされています。

確かに音速を超えて巡航はするのですが、標的に突入する直前には速度を通常の巡航ミサイルなみに落とした上で狙いを定めて突入するということが、軍事専門家によって解明されています。そのため、思ったほどの脅威ではないということが解明されています。

中国の巡航ミサイル

しかし、この点を除けば、伊藤貫氏の見解は、この当時までは正しいものだったと思います。これは当時の米国のエンゲージメント派の中国に対する見方だったのだと思います。軍事的にも強いので、中国とは協調すべきであるという考え方だったのでしょう。

これは、確かに2015年あたりまでは、米国の正しい見方であったかもしれません。しかし、トランプ大統領が登場したあたりからこれが変わり始めました。ただし、選挙期間中は、中国に対して対抗心をむき出しにしたトランプ氏でしたが、トランプ氏が大統領になった当初は、彼自身もエスタブリッシュメントに対抗するのは得策ではないと考え、中国政策を決め兼ねていた部分があったと思います。

しかし、米国のエスタブリッシュメントの中国に対する見方が、最近変わってきたのだと思います。だからこそ、トランプ大統領も中国への対決姿勢を露わにしたのです。

なぜ変わったといえるかといえば、それは非常に簡単に理解できることです。それは、中国からの資金の流失がとまらないという現実があるからです。

それに関しては、このブログでも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【田村秀男のお金は知っている】外貨準備増は中国自滅のシグナル 習近平氏の野望、外部からの借金なしに進められず―【私の論評】頼みの綱の一帯一路は幻影に過ぎない(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事に掲載した上のグラフをみると一目瞭然ですが、中国からの資金流出が止まりません。

中国からの資金流出は2015年には一旦止まったようにも見えたのですが、16年からまた流出が増え、17年中も増え続けました。その動きは今年に入ってからも止まりません。この状況は、中国の外準は海外からの借金で賄われていることを示しています。

中国の過去の経済発展は、中国内のインフラを整備に投資することによって実現することができました。しかし、国内ではインフラ整備が一巡して、現状では大きな投資先はなくなりました。

ここで、中国政府が国内の構造改革に着手して、国内産業を育成するために投資をするなどのことをすれば、米国のエスタブリッシュメントも中国に対する見方を変えなかったかもしれません。しかし、これを実行するためには、民主化、政治と経済の分離、法治国家化もある程度すすめなければなりません。これは、まさにエンゲージメント派の抱いていたシナリオでした。

とこが、中国政府は不可思議な投資をはじめました。それは、例の「一帯一路」です。このプロジェクトは失敗することが最初から目に見えているようなものです。これが失敗する理由は、このブログにも掲載したことがあります、その記事を以下の【関連記事】のところに掲載しておきます。興味のある方は是非ご覧になって下さい。

国内投資と、海外投資では明らかな違いがあります。国内投資の場合は、たとえ中国政府が多大な投資をして大失敗したとしても、それは国内を回り回って、国内景気を上向かせたり、雇用を生み出したりした後に、結局税金という形で中国政府が回収できます。

ところが、「一帯一路」のような海外投資場合は、そうではありません。失敗はただの失敗で、かなり多くの部分が中国からは消えてしまいます。

中国の中国による中国のための一帯一路

ただし、中国は実際には中国企業にこのブロジェクトを請け負わせ、労働者も中国から覇権して、なるべく外貨獲得につとめようとしているようです。しかし、労働者だって食事はするし、たまには休暇を楽しんだりするはずで、それまで規制して全部中国から持ってきたものを食べたり、休暇のたびに中国に帰るなどということは不可能で、やはり幾分かの資金は現地に落ちるはずです。

さらに、海外投資は自国より経済成長が圧倒的に高いところに投資すれば、利益率も高まりますが、そうではないところに投資すれば利益率は低下します。

中国は最近は経済の成長率が鈍化したとはいえ、それでも他国と比較すれば、高い方です。であれば、最初から利益率が低いですから、中国企業に受注させるなどの姑息なことをしても、あまり意味がありません。

それに、自分たちの利益だけを重視するようにすれば、当該国はプロジェクトを受け付けなくなります。やはり多少とも、当該国自身やその国の企業に儲けさせるようにしなければ、どこの国もこのブロジェクトを受け付けなくなります。そうなると、たたでさえ低い利益率がますます低くなります。

このような政策をとってしまったからこそ、中国からますます資金が逃避する事態を招くようになってしまったのです。

米国のエスタブリッシュメントは、中国でも金儲けができ、自分もともに栄えることができれば、中国に対する見方を変えることはなかったでしょうが、現状では、様子見に入っているのだと思います。

要するに、米エスタブリッシュメントもまずは金無し中国には興味がないのです。そうして、現在の中国は金が無いどころか、米国の価値観に反する行動をしていることは明らかになりました。

仮に中国が再び経済発展をしたとしても、中国の市場は米エスタブリッシュメントの御しやすい市場になるとは限らないことが明らかになってきたのです。さらには、中国の覇権の及ぶ地域も、自分たちが御しやすい市場になることはないと見るようになったのです。

米中国交樹立以来の『中国との協力分野を増やしていけば、中国は米国にとって利益となる方向へと変わる』という前提に基づく関与政策が米国をむしろ害することになることに米エスタブリッシュメントも気づいたのです。

さらに、最近では習近平が中国憲法を変えてまで、終身独裁を宣言するということをしてしまいました。これは、中国が北朝鮮のような体制になるようなものです。これでは、エンゲージメント派がいくら中国はいずれ民主化するなどと擁護しても、信憑性が全くなくなってまいました。

だからこそ、米の対中政策は歴史的な転換点を迎えているのです。

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中国の「一帯一路」がピンチ?大型プロジェクト取り消す国が相次ぐ―米華字メディア―【私の論評】"一帯一路"は過去の経済発展モデル継続のための幻想に過ぎない(゚д゚)!


2018年3月21日水曜日

中国の内政干渉に豪州警戒 移民通じ政界浸透…諜報規制強化へ―【私の論評】日本の倒閣運動に習近平の意図?

中国の内政干渉に豪州警戒 移民通じ政界浸透…諜報規制強化へ

 オーストラリアで、中国が豪州社会への影響力を拡大しているとの警戒感が強まっている。中国系住民の増加や中国企業の相次ぐ投資計画に加え、昨年夏以降、内政干渉が指摘され始めたためだ。議会では、中国を念頭に外国人の献金禁止や諜報活動への監視を強化する法案の審議が行われており、来月にも審議を終え報告書を提出する見通し。

保安情報機構(ASIO)のルイス長官

 防諜機関、保安情報機構(ASIO)のルイス長官は16日、両院合同委員会の公聴会で、中国の当局者から情報の見返りに金銭の提供を持ちかけられたとする経済紙記者の記事について、ASIOが把握する事例と「驚くほど近い」と証言。諜報監視強化の必要を訴えた。

 法案は、ターンブル政権が昨年12月に提出した。昨年公表の国勢調査で、自らを中国系だと答えた数は、前回調査(2011年)の86万人から120万人に増加。約50万人が中国大陸生まれで、「共産党から逃れてきた過去の移民と異なり、経済発展後の移住で本国と結び付きが強い」(研究者)とされる。公共放送ABCは昨年6月、豪州で事業を行う中国人富豪が多額の政治献金で政治的影響力を行使しようとした実態を報じた。

 ターンブル政権は昨年11月、14年ぶりに改訂した外交政策白書で「外国政府やその代理人」による内政への「干渉」に言及。その翌月には、南シナ海問題などで中国寄りの発言をしていた野党、労働党のダスティアリ上院議員がこの富豪に公安情報を漏らした疑いで辞職表明した。同議員は富豪から献金も受けており、中国の「浸透」が鮮明に示される形となった。

 豪州の初代駐中国大使ステファン・フィッツジェラルド氏は産経新聞の取材に「報道では豪州における中国の影響力が実態以上に誇張されている面もあるが、習近平政権は海外に移民した市民にまで祖国への忠誠を求めるなど、一線を越えている」と話した。(シドニー 田中靖人)

【私の論評】日本の倒閣運動に習近平の意図?

ブログ冒頭の記事を読んでいて、日本国内では中国人の数はどのくらいになっているのか気になったので、調べていました。

法務省が公表した最新のデータによりますと、16年末の時点で在日外国人数が238万2822人に達し、15年末と比べて約15万人増加して過去最高となりました。そのうち、技能実習の在留資格者が22万8588人で、前年比で18.7%増加しました。また、不法滞在者も6万5270人となり、3年連続で増加しました。

在日外国人のうち中国人が69万5522人で最も多く、次いで韓国人の45万3096人、フィリピン人の24万3662人と続きました。ベトナム人は19万9990人で前年比36.1%増加しました。日本企業の海外市場進出に伴い、日本語が注目されており、技能実習生や留学生が増加しているのだといいます。

また、永住者と特別永住者が全体の4割以上を占めており、留学生は前年比で12.4%増加し、27万7331人となりました。 


オーストラリアの人口は2400万人ですから、中国人の比率は、5%になります。日本の人口は約1億2000万人ですから、中国人の比率は、0.58%です。比率でみると低いですが、それにしても、日本でも表にはあまりでてこないものの、中国による日本国内での工作活動など当然あるものと考えるべきです。

現在、トランプ政権ではドラゴンスレイヤー(対中強硬派)が今後の対中政策を主導していいくことになったことは、このブログにも掲載しました。そうして、トランプ政権の対中強硬策は日米中三ヵ国の関係の全面的見直しへと発展していくことになります。これは、日本が中国に対峙するには都合の良いことです。

それにしても、中国共産党がなぜ現状のような力を持ったのかといえば、中国による対米工作や、対日工作があったからということは間違いないです。

さて、日本に対して中国がどの程度の規模で工作を行っているかといえば、ますはその数に驚かされます。中国が日本に送り込んでいるスパイは5万人に上り、彼らのターゲットは自衛官も含まれているといいます。自衛官にハニートラップを仕掛けて情報を得ているものもいるが、自衛官と結婚して妻になったものもいます。実際、外国人妻を持つ自衛官約800人のうち、7割の妻が中国人だといいます。

雑誌『週刊大衆』は昨年4月17日、作家でフリーランスの記者でもある時任兼作氏の話として伝えました。中国のスパイは中国大使館のある東京、そして中国領事館のある札幌、新潟、名古屋、大阪、福岡、長崎をベースに活動しています。

札幌中国領事館

中華街の実力者もサポートして、中国人留学生や政府関連部門のスタッフ、学者、文化人、飲食店の店員、スナックの女性、風俗嬢など様々な姿で日本社会に入り込んでいます。こうして彼らは、日本中に巨大なスパイネットワークを構成し、情報収集などの諜報活動を行っています。

同誌は、自衛隊の基地周辺にも大勢の中国人女性スパイが潜伏していると報じています。例えば、雨の日に偶然出会ったふりをして、傘の貸し借りを通じて自衛隊員に接近するそうです。

日本の警察関係者によると、女性スパイは沖縄の普天間基地・辺野古移設問題にも絡んでいます。「中国は今、沖縄諸島を狙っている」からだといいます。

もちろん、中国当局は日本以外にも膨大な数のスパイを世界各国に潜入させ、軍事やビジネス、法輪功の情報などあらゆる情報を収集しています。そのため、各国もこの動きに常に警戒しています。

ニューズウィーク米国版は以前に、中国当局が諜報戦に全力を注いでいると報じていました。中国国安部は数十年にわたって、主に米国籍を持つ中国人をスパイにスカウトしてきました。中でも、当局が欲しているのは米国の国防や情報機関に関わる人物や、センシティブな業界で働く人で、ここ数年は中国系以外の米国人を積極的にスパイとして登用しています。

例えば昨年3月末、米国務院で長年勤務してきた女性職員、キャンディス・クレボーン氏が米司法部から起訴されました。彼女は長期にわたって中国当局のスパイと接触し、機密情報を提供してきました。その見返りとして数万ドルの現金及び謝礼の品を受け取っていたといいます。確定すれば、最高で20年の実刑判決が下されます。彼女は、元ヒラリー・クリントンの部下でした。


ドイツ地方紙・ダルムシュタット・エヒョーの4月17日の報道によると、同国ヘッセン州の内政当局が「中国人スパイに注意を!」との警告メールを発信しました。メールによると、中国人スパイがLinkedInやFacebookといったSNSでおおっぴらに活動しており、彼らは科学者や政府職員、コンサル会社のマネージャーなどに扮してドイツ官僚、将校、外交官、科学者や大学生など、中国当局に有益な人物を選んで接触を試みています。

この警告メールはヘッセン州の関連企業や大学院、政府機関等に送信されました。疑わしい人物から接触された場合、直ちに当局関連部門に報告するようにと呼びかけています。

習近平

さて、話をまた中国に戻します。昨年から、第二期習近平政権がスタートしました。さらに、今年に入って憲法を改正して、終身主席ができるような体制に変えました。習近平は独裁者を目指しているのです。その習近平が先の党大会では2050年までに「社会主義強国」となり米国を凌ぐ軍事力を持つと宣言。日本に対しては従来に増して強硬姿勢を貫くことが予想されます。その先兵となるのが中国の対日工作機関です。

日中国交正常化45周年の昨年、安倍晋三首相は中国大使館主催の祝賀会に出席(9月28日)。両国首脳の相互訪問を実現したい考えを示しました。これを受け、日中関係の改善だと歓迎する声があります。

しかし、これはあくまで表面上の動きに過ぎないです。これまで中国は、外交の劣等生らしく傍若無人な外交戦略で日本を揺さぶる一方、あらゆる手段で対日工作を仕掛けてきました。政界では反中派を抑え込み、親中派議員を増やすことに注力。近年は小渕優子氏ら「親中派二世」にも接近していました。

親中派二世の小渕優子氏

それが最近、変化したという。産経新聞外信部次長の矢板明夫氏が語っています。

「以前の中国は、旧田中派を中心とする政治家と裏で握って親中派を作る一方、日中友好7団体などを舞台に政財界とのパイプ作りに奔走した。

しかし安倍政権が対決姿勢を強めて世間的にも反中感情が広がるなか、わずかな親中派を作っても焼け石に水で意味がなくなった。大使館中心の諜報活動などは継続しているが、一時、政財界への裏工作は少なくなった」(矢板氏)

代わりに習近平政権が進めるのが、“反日日本人”を支援、育成し利用する工作です。

「最近の中国は、歴史問題などで中国側の意見を支持するリベラルな日本人を積極的に支援している。左派の活動家や弁護士、研究者などの言説を紹介して反日を煽り、内政への不満をそらす戦略です」(矢板氏)

実際に近年、中国メディアに登場して中国寄りの発言をする日本人が目立つ。

たとえば、明治学院大学国際平和研究所研究員の石田隆至氏は、人民日報(2016年8月15日付)に寄稿した「日本は隣国の正義に耳を傾けるべき」の記事で日本の安保法制を厳しく批判し、「東アジアにとっての真の脅威は中国ではなく日本である」と結論づけた。

石田隆至氏

歴史学者の笠原十九司氏は昨年9月、南京で開かれたシンポジウム「南京大虐殺と日本の戦争犯罪」に出席。「安倍内閣は、大虐殺の歴史を否定する態度を取る者が少なくありません」などと憂慮を示したといいます。中国の国営通信社が伝えました。

歴史学者の笠原十九司氏

中国はこうした言説を徹底的に利用すると評論家の石平氏は指摘しています。

「南京大虐殺を『事実』とするコメントは中国政府の公式見解と合致し、『東アジアの脅威は日本』とのコメントは中国脅威論を取り消すための材料となる。官製メディアに掲載される日本人の意見はその後、反日宣伝材料として繰り返し利用されます」

もう一つ見逃せない動きは、中国で相次ぐ日本人の「スパイ拘束」です。

たとえば昨年9月18日、大連市国家安全局はスパイ活動に関わったとして日本人ビジネスマン1人を逮捕しました。これで2015年以降、スパイ容疑で中国当局に拘束された日本人は12人に上ります。

「そもそも拘束された日本人は通常のビジネスを行っていただけと考えられます。しかも昔なら“親中派議員”を使い水面下で交渉をしたが、最近の中国は堂々と公表する。

9月18日は満州事変の発端となった柳条湖事件の日であり、反日ナショナリズムを煽るにはうってつけの日でした」(矢板氏)

中国は、日本の倒閣運動などにも関与しているものと考えるべきだと思います。何しろ、日本にはスパイ防止法もないので、やりたい放題だと思います。

最近の、財務省の文書書き換え問題なども、野党は完璧に倒閣のために利用しています。あの問題で、唯一信憑性のある書き換え前の決済文書と、書き換え後の決裁文書を読めば、常識的に判断してどう考えても、政治家の関与はないとみるのが普通ですが、野党やマスコミはとにかく倒閣に利用したいがために、新たな証拠もないにもかかわらず、未だにこれを追求しています。マスコミも右に習えです。

これは、かなり異常です。テレビが主たる情報源のワイドショー民はそうは思わないかもしれませんが、多くのネット民にはかなり異常にみえることでしょう。私としては、この背景にはなんとしても安倍内閣を葬り去りたい習近平の意図があるものと思います。歴史問題などで中国側の意見を支持するリベラルな日本人を動員している可能性が大きいです。私が習近平なら当然そうします。

現状の中国は、外資がかなり不足しています。外準を海外の借金で賄っている状況です。今の中国は海外から借金がないと、一帯一路などへの大きな投資はできません。そのため、習近平としては日本に接近し、日本から外貨を獲得しよとうとの意図もあったようですが、これに対して安倍総理は一筋縄ではいかないようです。

安倍総理としては、今のままなら金は貸さない、何かこちらの条件を飲めば貸す可能性もなきにしもあらずという姿勢なのだと思います。これでは、中国の思い通りにならないたため、習近平としては、ことごとく中国に逆らう憎き安倍内閣をはやく潰して、親中派政権に取り替えたいと考えているでしょう。

政府としては、これも含めて、明らかにして欲しいものです。それにしても、近々さすがに政府も具体的な動きをするのではないかと思います。特に、野田中央公園の売却に関して、辻元清美氏の関与などについて表面化させるなどの行動に出る可能性が大きいです。そうなると、森友学園の8億の円値引きが正当だったことを明らかにすることができます。

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2018年3月20日火曜日

【日本の選択】野党に政権担当能力がない悲劇 弱点の多い安倍政権を支持せざるを得ず―【私の論評】ポスト安倍の自民党も政権担当能力があるとは言えない(゚д゚)!

【日本の選択】野党に政権担当能力がない悲劇 弱点の多い安倍政権を支持せざるを得ず

第3次安倍第3次改造内閣 写真はブログ管理人挿入 以下同じ

 財務官僚による決裁文書の改竄(かいざん)など、脇の甘さが目につく安倍政権だが、この政権を支えているのは、どのような人たちなのだろうか。

 私自身は、極めて消極的な安倍政権の支持者である。安倍晋三首相を熱烈に支持しているわけではないし、自民党以外は一切認めないという自民党原理主義者でもない。しかし、他に選択肢がまったく存在しないから、安倍政権を支持せざるを得ないのである。

 端的に言えば、「野党が政権を担う能力を有していない」との判断から、多くの国民が安倍政権を消極的に支持しているのではないだろうか。

 安倍政権や自民党が完璧だとは思わないが、「野党よりはまし」という判断から安倍政権が支持される結果になっている。安倍政権の最大の応援団は「野党の無能さ」だという、笑うに笑えない冗談のような現実を見ると、眩暈(めまい)がしそうになる。

 立憲民主党をはじめとする野党があまりに不甲斐ないのは周知の通りだが、広く国民に訴えておきたい事実がある。

あまりに不甲斐ない野党の筆頭、立憲民主党、彼らは立憲民主主義とは何を意味するかさえ知らない

 岡田克也元外相率いる「無所属の会」というグループ(衆院会派)がある。「無所属の会」なのだから、無所属の政治家の集まりだろうと思うのが、国民の常識というものだ。

 だが、彼らは国民が想像する無所属の政治家ではない。民進党の政党交付金で政治活動し、民進党の役職に就いている政治家も存在する。具体的には岡田氏は「無所属の会」の代表でありながら、民進党の常任顧問に就いている。

 民進党を離党し、本当の意味で無所属を貫いている鷲尾英一郎衆院議員=新潟2区=は自身のブログで昨年11月17日、「無所属の会」を以下のように批判していた。

 「民進党の政党交付金で政治活動し、民進党の役職を受けているメンバーが会派をつくっているのであれば、会派の名称は『無所属の会』ではなく、まさに『民進党』がふさわしいではないか」

 まことに正論である。鷲尾氏が指摘するように、彼らは正々堂々と「民進党」を名乗るべきなのだ。

無所属とはいえない「無所属の会」の看板かけ

 「無所属の会」について、週刊ポスト(2018年2月16・23日号)が「一人メシ事件」として、次のような記事を掲載していた。

 1月16日夜、都内のホテルで会合が開かれた。十数人の出席者には弁当が用意されておらず、岡田代表だけが会合前にスーパーで購入したサンドイッチを食べ、腹を空かせた議員から「代表だけ食べるのか」と不満がもれたという。

 何があろうとも、現在の野党に政権を担当させるわけにはいかないと考える日本国民は健全だ。常識ある野党が出現しない限り、弱点の多い自民党政権が継続せざるを得ない。日本の悲劇である。

 ■岩田温(いわた・あつし) 1983年、静岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、同大学院修士課程修了。拓殖大学客員研究員などを経て、現在大和大学政治経済学部政治行政学科専任講師。専攻は政治哲学。著書に『平和の敵 偽りの立憲主義』(並木書房)、『人種差別から読み解く大東亜戦争』(彩図社)、『「リベラル」という病』(同)など。

【私の論評】ポスト安倍の自民党も政権担当能力があるとは言えない(゚д゚)!

まずは、最近の最大の政局に関する動画を以下に掲載しておきます。


この動画は、そもそも根拠が明確であり、かなり理解しやすいです。この動画で、上念司氏は、以下のように主張しています。

まずは、財務省は佐川氏の国会での証言にあわせて、文書を書き換えたということ。そのために、元々は政治家は一切関与していないことがはっきりしていたものが、そうではなくなってしまったとしています。

私も、その通りだと思います。財務省が書き換えたとした文書は、財務省のサイトから誰でも閲覧することができます。そのリンク先を以下に掲載します。


  • 決裁文書についての調査の結果(平成30年3月12日)(PDF:150KB)PDF
  • 決裁文書の書き換えの状況(PDF:7612KB)PDF
  • 平成30年3月14日付け資料(PDF:198KB)PDF
  • 平成30年3月19日付け資料(PDF:263KB)PDF
  • これらを、野党やマスコミのように、最初から「政治家の関与あり」という想定など捨てて、虚心坦懐に読むと、上念氏と同じような結論が導き出せるはずです。

    次に、土地価格については、さらに、森友学園の隣の野田中央公園の土地は、元々は14億円だったものただで売却されているという事実があります。さらに、これには補助金が3000万円も支払われています。

    結局のところ、ゴミが埋まっているので、補助金をつけてでも持って行ってくれということです。

    ゴミが埋まっていることを隠して、近畿財務局は篭池氏に8億円値引きで売ったのです。そうして、差し引き1億円程度が国庫に入っているわけです。そのブロセスに問題があったことから、篭池氏はそのことに気づいたのです。

    その時に、篭池氏はありもしない、政治家や安倍総理、昭恵夫人らがバックについているかのようにいろいろ名前を出したということです。天皇陛下が来たなどと、平気で嘘をつくような男のいうことですから、ほとんどでまかせとみるべきでしょう。

    それに対して近畿財務局は、ゼロ回答だったわけです。これが、書き換え前の決済文書には書かれてあったにもかかわらず、その部分が削除されてしまったため、政治家に不利な内容になってしまいました。そうして、誰に有利かといえば、国会で間違った答弁をしてしまった佐川氏に有利なものになっています。

    これらの事実からみると、やはり、財務省(もしくは理財局)が佐川氏の国会答弁にあわせて、近畿財務局に書き換えを指示して、書き換えさせたと考えるのが、最も自然な解釈であると考えられます。

    近畿財務局

    書き換え前、書き換え後の文書が公開されているわけですから、これをしっかり読めば、上記のような解釈しかしようがないわけです。もし、今後佐川氏が国会招致において、政治家家からの指示があったとか、安倍総理や昭恵夫人の関与があったなどといえば、文書と完璧に矛盾することになるため、そのようなことはしないでしょう。

    さすがに、佐川氏も昨年の国会答弁で余計な答弁をしたため、辞任せざるをえなくなったので、再度国会に招致されたときにはかなり慎重になることでしょう。

    考えられる対応は、核心に迫る事柄については、篭池被告人のように「調査中であるので、答弁できません」ということで終わることになると思います。さらに、昭恵夫人を仮に国会に招致したとしても、野党にとって都合の良い答弁をするなどということは全く考えられません。

    このような状況だと、最初は、興味を持って安倍政権対退陣すべしなどと煽られていたワイドショー民も飽きて、それこそあれど有利であると考えられていた希望の党が選挙の最中に勢いを失ったように、野党の主張(野党自身ではありません)も指示を失って、現在の政権の支持率の低下も回復することになります。

    その頃に、野党が別の対策や、新たな政局を見いだせるなら、さらに安倍政権を窮地に追い込むことができるかもしれませんが、そもそも、公開された文書を見ている限りにおいて、結局昨年と同じように、安倍総理はおろか一人の政治家を辞めさせたりすることはできないでしょう。

    今後、野党やマスコミは「アベにくし」のあまり、篭池夫妻という、頭のあまり良さそうとも思えない、詐欺師らに引っ掻き回さたということがはっきりしてくることになります。そうなると、野党の支持率はますます下がることになります。そのことが全く見えていない野党は、政策論争ができないのは無論のこと、政局すらまともに見ることが出来ないということで、国民の信頼をさらに失うことになります。

    篭池夫妻

    ブログ冒頭の記事で、岩田氏は、「私自身は、極めて消極的な安倍政権の支持者である。安倍晋三首相を熱烈に支持しているわけではないし、自民党以外は一切認めないという自民党原理主義者でもない。しかし、他に選択肢がまったく存在しないから、安倍政権を支持せざるを得ないのである」と述べています。

    私自身は、程度の差はあるとは思いますが、もともと政治とは、特に民主的な政治はそのようなものであると思っています。

    もし、何もかも自分にとって満足と思えるような政権がでてきたとすれば、それは独裁政権に違いないと思います。そうして、自分は独裁者になっているか、独裁者の親族などの、独裁者に極めて近い存在になってるかのいずれかであると思います。

    私自身は、安倍政権は金融政策で雇用状況を改善したということで、過去20年間のいずれの政権よりも、パフォーマンスが高いと思います。また、安全保障においても、過去のいずれの政権よりも突っ込んだ議論し、そうして少しずつでも間違いなく前進していると評価しています。

    ただし、自民党ということでみると、金融政策も財政政策も、安倍総理やその側近のごく一部しか理解しておらず、もし安倍政権が崩壊して、他の人が総理大臣になって新たな自民党政権をつくったとしても、またまた日本はデフレスパイラルの底に沈み、とんでもないことになり、誰の政権であったにしても短期政権になり、その後も同じことを繰り返すと思います。

    小泉進次郎氏のような若い自民党の議員こそ、まともにマクロ経済を理解して欲しいと思うのですが、全くそうではありません。

    安全保障についても、自民党には親中派の政治家も多いことですから、安倍内閣が崩壊となれば、これも後退する可能性が大きいです。

    それを思うと、野党に政権を任せられないのは自明の理として、安倍総理以外には、いまのところ総理大臣を任せられる人物は自民党内にはいないと思います。これこそ、本当に目眩がしそうな現実です。

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    2018年3月19日月曜日

    「事実上の皇帝」習近平とプーチンに、トランプは対抗できるのか―【私の論評】19世紀の皇帝たちの無謀な試みを阻止せよ(゚д゚)!

    「事実上の皇帝」習近平とプーチンに、トランプは対抗できるのか

    ドクターZ

    いくらでも任期が延ばせる国

    二人の皇帝とトランプ米大統領
    トランプ政権が誕生してから1年以上が経過したいま、米中露それぞれが首脳の強権体制を強める動きに出てきた。
    中国共産党は国家主席の任期を無制限にすることを検討中。これが実現すれば「習近平皇帝」誕生といったところだが、対抗するかのように、ロシアのプーチン大統領も「世界全土を射程範囲に収める」という新型巡航ミサイルを発表し、通算4選についての意気込みまで明らかにしている。
    中露がトランプ大統領の再選まで視野に入れて中央集権体制を整えているとすれば、今後三国の関係はどのような変化を遂げていくのだろうか。
    まず、米中露の社会体制のおさらいをしておこう。
    イギリスのエコノミスト・インテリジェンス・ユニットが'17年に発表した世界167ヵ国・地域が対象の「民主主義指数」を見ると、アメリカは21位、ロシアは135位、中国は139位となっている。中国は共産党の実質的な一党独裁であり、憲法より共産党の決定のほうが優位になっている。そのため、国家主席の任期を無制限にするのは難しいことではない。
    共和制の体をとるロシアも実際のところは独裁体制だが、大統領の任期の上限は2期12年と決められている。プーチン大統領は'12年から通算3期目だが、一度大統領を退いて再び当選するという裏技でこのルールを回避している。しかも、メドベージェフ氏が大統領を務めていた間もプーチン氏は大きな影響力を持っていたとされているから、実質的には10年以上覇権を握っていることになる。
    アメリカの2期8年という大統領任期は比較的厳格に守られていて、歴代大統領のうちグロバー・クリーブランドだけが連続ではなく、一度退いてから再び同職を務めている。憲法をあっさり改正して任期を撤廃する中国、裏技でいくらでも任期を延ばせるロシアに比べれば、ずっと民主的なほうだ。
    では、中露で元首の「皇帝化」が進むとなにが起こるのか。
    まず、外交政策や安全保障において「強権国家化」が進むだろう。実際、中国の習近平主席は「海洋強国」を掲げており、ロシアの新型ミサイル開発も覇権主義を明確にするものだ。
    中露の強権国家化が進むと、アメリカでもトランプ大統領の再選への後押しの動きは強くなる可能性がある。トランプ大統領の主張は、かつてレーガン大統領が冷戦中の'80年代に訴えた「強いアメリカ」の再来であり、強国化が進む二国を意識してのものだ。
    それでは、米中露三大国の歩む道はどうなるかといえば、その他の諸国がどこに付くのかが問題になってくる。政治体制からすれば、欧州はアメリカ、アフリカは中国、ロシアはその隙間をついて協調関係を結ぶことになるだろう。
    しかし、トランプ大統領は目下関税強化を進めていて、長期的には本来味方とするべき民主主義国の多くを敵に回すかもしれない。仮にトランプ大統領が再選しても、任期はあと6年。長く感じるかもしれないが、中露の指導者の任期は実質無限だ。徐々に20世紀以前のような帝国体制を整える二大国に対して、アメリカは民主主義のよさを訴えながら、互角に渡り合えるだろうか。
    『週刊現代』2018年3月24日号より
    【私の論評】19世紀の皇帝たちの無謀な試みを阻止せよ(゚д゚)!
    中国とロシアという2つの帝国の登場により、世界に国際秩序の崩壊と地域戦争の勃発という2つの重大な危機が迫っていることについては、このブログでも以前掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
    支那とロシアが崩壊させる自由主義の世界秩序―【私の論評】世界は戦後レジームの崩壊に向かって動いている(゚д゚)!
    ロバート・ケイガン氏
    詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
     ケーガン氏(ブログ管理人注:昨年)1月24日に「自由主義的世界秩序の衰退」と題する同論文を発表した。同氏はこの論文で、第2次大戦以降の70余年の間、米国主導で構築し運営してきた自由主義の世界秩序は、崩壊に向かう最大の危機を迎えたと指摘する。 
     危機の原因となっているのは、支那とロシアという反自由主義の二大国家の挑戦だ。1991年のソ連崩壊以後の米国の歴代政権が「唯一の超大国」の座に安住し、とくにオバマ政権が軍事力を縮小して「全世界から撤退」したことがその状況を招いたという。 
    支那、ロシアの軍事力行使の危険性が高まる 
     ケーガン氏の論文の要点をまとめると以下の通りである。 
    ・世界は第2次世界大戦の終結から現在まで、基本的には「自由主義的世界秩序」に支えられてきた。この秩序は民主主義、自由、人権、法の統治、自由経済などを基盤とし、米国の主導で構築され運営されてきた。 
    ・しかしこの世界秩序は、ソ連崩壊から25年経った今、支那とロシアという二大強国の挑戦により崩壊の危機を迎えるにいたった。 
    ・支那は南シナ海、東シナ海へと膨張し、東アジア全体に覇権を確立して、同地域の他の諸国を隷属化しようしている。ロシアはクリミア併合に象徴されるように旧ソ連時代の版図の復活に向かっている。両国はその目的のために軍事力の行使を選択肢に入れている。 
    ・支那とロシアの軍事的な脅威や攻撃を防いできたのは、米国と同盟諸国が一体化した強大な軍事力による抑止だった。 
    ・だが、近年は米国の抑止力が弱くなってきた。とくにオバマ政権は対外的な力を行使しないと宣言し、国防費の大幅削減で米軍の規模や能力はすっかり縮小してしまった。 
    ・その結果、いまの世界は支那やロシアが軍事力を行使する危険性がかつてなく高まってきた。武力行使による膨張や現状破壊を止めるには、軍事的対応で抑止することを事前に宣言するしかない。
    トランプ政権は米軍の再増強や「力による平和」策を宣言しながらも、世界における超大国としての指導的立場や、安全保障面での中心的役割を復活させることには難色をみせている。

    しかし、ケーガン氏は、世界の危機への対策としては、米国が世界におけるリーダーシップを再び発揮することだといいます。


    日本の保守層は、「戦後レジーム」からの脱却ということを主張してきました。私も、当然のことながらこれには賛成です。

    ただし、私たちは現在中国、ロシアが「戦後レジーム」を崩壊させるほうに動いていることを理解すべきです。そうして、その崩壊の方法は、日米などとは全く関係なく、自分たちの都合の良い方向に曲げようとしています。

    習近平支那皇帝とプーチン露西亜皇帝
    そうして、彼らの望む新たな秩序は、民主化、政治と経済の分離、法治国家があまりなされていなかった、19世紀の体制です。そもそも、中国もロシアも軍隊などは近代化を推し進めながら、国の体制としては元々遅れているので、世界に新たな秩序を作り出すとすれば、19世紀の帝国のような体制を目指さざるを得ません。

    シンガポールのような独裁政権の国家であれば、これに対してあまり違和感はないかもしれません。しかし、世界には民主的な体制に移行したり、移行しようと努力している国々も多いです。

    ただし、現在中国にもロシアにも誤算があります。ロシアについては、現状ではGDPが韓国なみであり、日本の東京都と同じくらいの規模しかありません。

    プーチンは資源国としての成長を目指しましたが、現在石油などの価格は低迷しています。そのため、いくら頑張ったとしても、世界規模の新秩序の樹立には取り組みたくてもできません。せいぜい、周辺諸国に対してこれをかろうじて実現できるくらいのことで終わってしまう可能性のほうが大きいです。

    中国に関しては、過去においては、国内の大規模なインフラ整備によって経済成長をしてきましたが、国内ではもうすでに投資案件が一巡してしまったので、習近平は一帯一路なるブロジェクトを推進しています。これは、中国主導で世界各地にインフラ整備をして新たな交易路をつくりだそうというものです。

    しかし、この構想は最初から頓挫することが運命づけられたようなブロジェクトです。これは、失敗に終わり、中国はしばらく中進国の地位から抜け出すことができない可能性が大きいです。そうなると、中国も世界に中国にとって都合の良い新秩序を樹立するのはかなり難しいかもれません。

    さらに、ロシアは、中国とは仲良くならないでしょう。プーチンは、シベリアなどに侵食してくる中国を脅威だとみているからです。むしろ、ロシアは中国をにらみ、本当は日米と協力を広げたいはずです。

    とはいいながら、ロシアはクリミア侵攻などで、米国などから制裁を受けている真っ最中でもあります。だから、おいそれと日米接近というわけにもいきません。

    2014年3月4日、ベルベク空軍基地を占拠するロシア軍に対して
    歌を歌いながら行進し、基地の返還を求めるウクライナ軍兵士

    このようなことから、中露が「戦後レジューム」を壊して、新たな世界の秩序を樹立するためには、現実には様々な一筋縄ではいかない、状況にあります。私は、これは失敗する確率のほうが高いと思います。しかし、失敗するまでの過程で、中露両国が世界中で様々な軋轢を生み出す可能性は十分あります。

    そうして、最悪のシナリオでは米・中・露三つ巴の戦争が起こる可能性さえあり得るということを銘記すべきでしょう。さらに、このことは日本を含めた世界中の国々に大きな影響を与えます。日本は、遅ればせながら今からでもそれに備える必要があります。

    戦後体制が崩れれば、そのときには我が国は、北朝鮮のICBMにも、中国の海洋進出にも、あらゆる安全保障に関する課題について日本は米国に全面的に頼ることはできないと考えて臨むべきです。

    日本の背後には、いつでも、アメリカが存在していて、必ず助けるてくれるとは限らないと、覚悟するよりないのです。少なくとも、尖閣は自分で守らなければならないことなるでしょう。

    自分の国のことを他国に憚らず自分で決め、自分で守るのは、トランプ大統領に言われることもなく、自明の理屈なのです。無論その時に、米国との対等同盟関係を築くことも選択肢の一つです。

    しかし、アメリカに頼りきって、アメリカに守られながら生きる日本の時代、日本にとっての「戦後レジーム」は、間もなく終了するとみなすべきなのです。そもそも、これは当然のことです。どんなに強固な体制であっても同じ体制が永遠に続くことなどあり得ないのです。時代の変化にあわせて変わっていくのが自明の理です。


    戦後レジームが終わりを迎え、新たなレジームができあがったとき、それを中露の思い通りのものにするわけにはいかないのです。日米、EU、その他多くの国々も、19世紀の遅れた体制に戻るわけにはいかないのです。これだけは、何としても防がなればならないのです。

    それには、ケーガン氏が主張するように、米国は世界でのリーダーシップを取り戻し、日本もアジアでのリーダーシップをとりもどさなけばならないです。先程、中露が世界で「戦後レジーム」に変わって新たな秩序を樹立するのは非常に難しいということをあげました。この事実に加えて米国などの軍事力には到底かなわないことを悟らせれば、これから両国が世界で軋轢を起こすこともなくなるでしょう。

    そのためには、日本は軍事的には普通の国に生まれ変わらなければなりません。そうして、昨年は実質上の日英同盟が復活しましたが、いずれ日米英豪印同盟なども構築して、中露に対抗していかなければならないのです。それ以外に世界の平和と安定を維持することはできません。

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    2018年3月18日日曜日

    中国で“爆買い”企業が続々凋落 バブル崩壊の兆し? 経済評論家・渡辺哲也―【私の論評】一帯一路も凋落することを予見させる出来事(゚д゚)!

    中国で“爆買い”企業が続々凋落 バブル崩壊の兆し? 経済評論家・渡辺哲也

    安邦保険集団(アンバン・グループ)

     中国の多くの複合企業体で異変が起きている。中国金融当局は2月23日、国内大手保険会社の安邦保険集団(アンバン・グループ)を公的管理下に置くと発表した。

     安邦は、2015年に米ニューヨークの名門ホテルとして知られるウォルドルフ・アストリアや米不動産投資信託(REIT)のストラテジック・ホテルズ・アンド・リゾーツを55億ドル(現在の為替レートで5775億円)で手中に収めるなど、積極的に海外資産の買収を繰り返してきた企業である。

     今回の公的管理の背景には、不良債権の増加と破綻リスクの拡大を恐れる金融当局の判断があったといわれている。

     ここ数年、中国企業による海外での大型買収が相次いでいたが、市場ではその買収価格に対して、「高すぎる」との評価が強く、結果的にこの高額買収案件が不良債権化し始めたわけである。安邦同様に積極的な買収を繰り返してきた復星集団(フォースン・グループ)、大連万達集団(ワンダ・グループ)、海航集団(HNAグループ)も流動性危機に陥っており、現在、それらの企業体も危機的な状況にあるとみられている。

    2012年5月21日、大連万達集団は世界2位の映画館チェーン・AMCエンターテイメント
    ・ホールディングスの買収。世界最大の映画館チェーンとなった。

    中国では、バブルで金余りが生じる一方、国内投資物件の高騰により投資先が不足し、海外企業や海外資産の買収がブームになっていた。そして、中国企業が競り合う形で海外の投資物件の価格を釣り上げてしまっていたわけである。

     しかし、高値で買えば、利回りが悪化するのは当然の話であり、多くの投資案件で調達金利に対して運用利回りが低いという逆ザヤが生じた。

     このような投資案件だが、たとえ運用利回りが逆ザヤであっても、それ以上に高い価格で買う投資家がいれば問題ないが、そうでなければ金利に押しつぶされる形で破綻する。そして、これが今、各所で起きているのである。

     中国の金融監督当局は昨年6~7月、外貨不足への対応と金融リスクの拡大懸念から、海外投資の規制を一気に強化し、投資拡大をしてきた企業に対しての締め付けを強化した。

     その結果、さらに高値で買う企業がなくなってしまい、高額投資案件の多くが不良債権として認識され始めたのである。これが企業財務に対する懸念を生み、金利の高騰により企業の資金調達を困難にしてしまったのである。

     現在、このような企業の多くは企業財務の健全化と手元資金の確保のため、買収した資産の売却を急いでいるが、買収価格以上の売却は困難とみられており、売却による損失がさらに企業を苦しめてゆくものと考えられる。

     これは、その資金の貸し手である大手銀行を巻き込む形で社会問題化してゆく可能性が高い。このような光景は、バブル崩壊後に見られる特徴的なものであり、1990年代後半から2000年ごろにかけて日本でも数多く起きた現象と同じだ。

     「新時代の中国の特色ある社会主義」を掲げ、再び社会主義色を強めるとする習近平体制は、資本主義の与えたこの大きな試練にどのように対応するのだろうか。

     渡辺哲也(わたなべ・てつや) 経済評論家。日大法卒。貿易会社に勤務した後、独立。複数の企業運営などに携わる。著書は『突き破る日本経済』など多数。48歳。愛知県出身。

    【私の論評】一帯一路も凋落することを予見させる出来事(゚д゚)!

    中国政府は、先月安邦保険集団の呉小暉会長を起訴していました。同集団の違法性のある経営手法で、保険金の支払い能力が損なわれる可能性があるためだとしていました。安邦は近年、ニューヨーク市の最高級老舗ホテル、ウォルドルフ・アストリアを含む海外の企業や不動産を積極的に買収していました。同社の爆買いの背景には、共産党内の敵対勢力があると睨んだ習近平政権は「人民元流出規制」を名目に、同社を失墜させた模様です。

    ニューヨーク市の最高級老舗ホテル、ウォルドルフ・アストリア

    中国保険監督管理委員会2月23日の発表によると、同社顧客の資産保護のため、2019年2月22日までの一年間、政府が同社を管理するとしています。保監会主導で、中国人民銀行(中央銀行)や銀行、証券、為替の監督機関から成るチームが同社の管理に当たります。巨大企業体の安邦保険の総資産規模は32兆円以上と言われていました。

    ブルームバーグ2月13日付の記事によれば、米不動産大手ブラックストーン・グループが現在、ウォルドルフ・アストリアを買い戻すことを検討しているといいます。

    当局によると、政府作業部会は安邦保険の通常業務を継続するといいます。安邦保険の呉小暉会長について、「経済犯罪の疑いで起訴されている」と明記しましーた。

    この政府発表は、安邦保険が2014年10月、ヒルトン・ワールドワイドから、外資による買収では当時、米国史上最高金額である19億5000万ドル(約2164億5000万円)で購入した米ニューヨークの老舗ホテル、ウォルドルフ・アストリアが、中国政府の手中に入ることを意味します。

    ストラテジックホテル&リゾート、JWマリオット・エセックス・ハウス、ワシントンのフォーシーズンズホテルなども、中国政府の管理下に置かれることになります。

    習近平政権の監督当局は数年前から、グローバル規模で不動産を積極的に買収する安邦保険の背後に注目していました。呉小暉会長は、元国家主席である故・鄧小平の孫娘と結婚しており、共産党内の江沢民派とも近い人物とされます。米政府系VOAは政治評論家の陳破空氏らの分析として、同社の株主は、こうした習近平政権と敵対する勢力が多く、呉氏が「金庫番」を担っていたとの見方を伝えました。



    香港紙「蘋果日報」2017年4月22日付によると、中国当局は、2016年から米国保険会社や高級ホテルグループの買収計画を進めていた安邦保険に、ストップをかけました。保険監督管理委員会は、総資産に占める海外での投資額比率が高すぎるとして、同社の海外買収案を却下しました。

    2017年6月、呉氏が中国当局に突然拘束されました。習近平政権は、金融機関の腐敗にメスを入れ、海外人民元の流出についても厳しく取り締まりを進めている最中でした。

    安邦保険集団(アンバン・グループ)を中国政府の管理下に置かれたのは、以上のように中国国内の権力闘争の結果であることがわかります。そうして、この権力闘争は今のところ習近平派が勝利を収めています。

    ブログ冒頭の渡辺氏の記事にもあるように中国では、バブルで金余りが生じる一方、国内投資物件の高騰により投資先が不足し、海外企業や海外資産の買収がブームになっていました。そして、中国企業が競り合う形で海外の投資物件の価格を釣り上げてしまっていました。

    しかし、高値で買えば、利回りが悪化するのは当然の話であり、多くの投資案件で調達金利に対して運用利回りが低いという逆ザヤが生じたのです。

    これは、安邦保険集団(アンバン・グループ)以外の、復星集団(フォースン・グループ)、大連万達集団(ワンダ・グループ)、海航集団(HNAグループ)も似たような状況でしょう。

    しかし、習近平も似たようなことを国家レベルで行っています。それは、いわずと知れた「一帯一路」です。これを実現するため、中国は世界各地で様々な大きな投資を繰り返しています。

    この「一帯一路」は妄想に過ぎないことを、以前このブログでとりあげたことがあります。その記事のリンクを掲載します。
    中国の「一帯一路」がピンチ?大型プロジェクト取り消す国が相次ぐ―米華字メディア―【私の論評】"一帯一路"は過去の経済発展モデル継続のための幻想に過ぎない(゚д゚)!


    詳細は、この記事をご覧いただくものとして、一帯一路が最初から無理筋のブロジェクトであることを示した部分を以下に引用します。

    "
    これ(ブログ管理人注:一帯一路のこと)は、あたかも海運を一種の“新発見”と捉えているかのようです。しかし、実際のところは、大航海時代以来、あらゆる沿海先進国が海運の発展を試みてきました。

    “上海自由貿易区”によって今や世界最高のサービスを提供するシンガポール港から積替港の地位を奪う、その理由は、上海から日本・韓国への距離がシンガポールに近いからである等など、こうした考え方自体が噴飯ものです。

    貨物を最終目的地に直接運ぶことができるのに、なぜ改めて積替を行う必要があるのでしょうか。欧州などを原産地とする貨物が、マラッカ海峡通った後に、なぜ遠回りして上海に行く必要があるのでしょうか。もしそのような必要があるなら、香港や珠海デルタがとうの昔にシンガポールを市場から駆逐していたはずです。

    シンガポールと香港の持つ優位性で、自由貿易よりも更に重要なのは、法律制度と資本の保護です。欧米諸国が中国と貿易を行う際、シンガポールや香港で貨物の受け渡しをするのは、中国の制度を信用していないからです。

    中国は依然として独裁政治で、態度が横暴な“大国”であり、この状況は変わりません。こうした中で、いわゆる“自由貿易区”を実施しても、中国の関税に穴が開くだけのことです。最終的には関税の全面的な取消しとなるか、植民地時代の租界になるだけであり、根本的に実施不可能です。

    いわゆる“一帯”—“シルクロード経済帯”など、これはより荒唐無稽の極みにある妄想と言って良いです。大航海時代以来、古代のシルクロードはすでに完全に競争力を失っており、とうの昔に荒廃しているのです。


    アフガニスタン、パキスタン、旧ソビエト連邦の中央アジア5か国等は、インフラや経済的収益をもたらす商機が欠乏しているのみならず、先天的要因である商業ルートの地理的制約が大きく、これをお金で解決することは根本的に不可能です。

    タジキスタンと中国の間の唯一の国境検査所である“カラスウ検査所”を例にとると、この検査所はパミール高原に位置する。当地は海抜4368メートルで、基本的に人や動物が住まない所です。

    当地にはウラン鉱の放射能や食料・水不足の問題があるほか、検査所の通過に6回の予約が必要となり、毎年冬には、5か月もの長きに亘って閉鎖されます。このようないわゆる“商業ルート”が、海運に対してどうやって競争力を確保できるというのでしょうか。

    ロシアは、国を横断するシベリア鉄道を保有していますが、この鉄道の緩慢な貨物輸送に競争力はありません。また、ロシアは、制度が閉鎖的でインフラが不足しています。例えば、高速道路を見かけることは極めて稀です。

    しかも、ロシアは中国を泥棒のように警戒し、中国がウラジオストック等の極東地域を“回収”することをおそれています。鉄道線路の軌道を統一しないほか、中国が制度や開発に口出しすることを容認しません。

    極東パイプラインの問題を見ればすでに明らかなことですが、ロシアは日本を引き入れて中国と競争させたがっているだけで、しかも日本側に偏向しています。

    中央アジア及び西アジアの国々の一部は、依然として全体主義国家であり、その開発の難度は北朝鮮にひけをとりません。

    中国吉林省が長年をかけて勝ち取った豆満江の海上アクセスを例にとると、これは経済的に一攫千金の案件であったのですが、北朝鮮とロシアの反応は長期間消極的でした。わずか70キロの河道を開通させるのに、中国は10年以上の年月をかけたのです。

    豆満江の流路
    ちなみに、豆満江とは、中朝国境の白頭山(中国名:長白山)に源を発し、中華人民共和国(中国)、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)、ロシアの国境地帯を東へ流れ日本海に注ぐ、全長約500kmの国際河川のことです。

    これは、いわゆる“一帯一路”がたとえ“実施不可能”ではないにしても、その本質は、中国が長年取り組んできた課題を再包装したものにすぎないことを物語っています。
    "
    以上のような妄想を実現するために、中国は世界各地で多大な投資を行っているわけです。これは、中国企業による海外企業や海外資産の買収よりもさらに危険な賭けです。

    これが成功するとはとても思えません。この妄想に多大な投資をすれば、中国企業による海外投資のように、いずれ利回りが悪化するのは当然の話であり、多くの投資案件で調達金利に対して運用利回りが低いという逆ザヤが生じることになります。

    そうして、中国は多大な資金を失い、一帯一路から結局撤退することになります。習近平は、その責任を取らなければなりません。

    その責任をとるには、何よりも再び中国の経済を活性化すれば良いのですが、それを危うくするほど一帯一路の失敗はかなり甚大なものになると思います。国内の投資であれば、それがたとえ大失敗したとしても、投資した多大な資金は国内の雇用に寄与するし、それは巡り巡って中国政府が税金として回収することになります。しかし、海外の投資ではそういうことにはなりません。

    習近平は、一帯一路なる妄想に賭けるべきではありませんでした。中国のGDPに占める個人消費の割合は、未だ30%台です。現状では、40%台に近づいているようではありますが、それにしても、日本をはじめとする多く先進国の60%台、米国の70%台よりはかなり低いです。恒常的に40%にすることができれば、それだけで中国はかなり経済発展できるはずです。

    しかし、習近平はそうはしませんでした。結局海外投資に打って出ました。中国国内でのインフラ投資が一巡して、現状では大きな案件がないので、海外に活路を求めたのでしょうが、これが吉と出る可能性は低いです。

    個人消費を伸ばす政策をとらなかったのは、そのためには、国内である程度構造改革をしすすめて、民主化、政治と経済の分離、法治国家化をしなければならないからです。そうしなければ、国内での産業は活発にはなりません。そうなると、中国の共産党による一党独裁性をある程度は改めなければならなくなります。

    しかし、それを習近平は忌避したものと考えられます。もし、これを実行することにすれば、たとえ権力闘争などの多少の荒療治は追認されたかもしれません。そうして、中国の改革者として、中国史に名前を残せたかもしれません。

    しかし、習近平は破滅の道を選んでしまいました。今のままだと、10年以内に失脚することになるでしょう。

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