2018年10月6日土曜日

「Gray War(灰色戦争)」に入った米国と中国―【私の論評】現状が続けば中共は崩壊し、米国は世界唯一の超大国の座を維持することに(゚д゚)!

「Gray War(灰色戦争)」に入った米国と中国

米日豪印の4本柱に英仏を加えた4+2体制の構築が不可欠に



米海軍誘導ミサイル駆逐艦ディケーター 写真はブログ管理人挿入 以下同じ

「Gray War(灰色戦争)」という新たな概念
 米海軍作戦部長のジョン・M・リチャードソン大将は、今年(2018年)9月はじめ、ワシントンで開催されたディフェンス・ニューズ(Defense News)主催の会議において「Gray War(灰色戦争)」という新たな概念を提唱した。

 そして「本格戦闘に至る前の段階」(Areas Short of Open Warfare)での対処がいかに重要であるかを述べた。

 「Gray War(灰色戦争)」は、わが国でも大きな課題となっている「グレーゾーン事態」あるいは「グレーゾーンの戦い」に相当する概念と解釈される。

 それを主として軍事の対象領域である戦争(War)と捉え、しかも、日本で言えば海上幕僚長に相当する米海軍現役最高位の軍人が公言にしたところに重大な意味がある。

 会議の講演の中でリチャードソン作戦部長は、南シナ海はもちろん中東領域での中国およびロシアとの対立は「本格戦闘に至る前の段階における灰色戦争」であると述べた。

 そして、米海軍は、「灰色戦争」に勝利する能力を備えなければならないと強調した。

 繰り返すと、米国は、現在の中国との対立を「本格戦闘に至る前の段階」にあると認識し、その渦中にある「灰色戦争」に勝利すると明言しているのである。

 それを象徴するかのように、最近になって米軍は、西太平洋以西、特に東シナ海と南シナ海における軍事的プレゼンスを強化している。

 米国防総省は9月26日、核兵器搭載可能な米空軍の「B52」戦略爆撃機が、尖閣諸島をめぐり日中が対立する東シナ海や中国の軍事拠点化が進む南シナ海の上空を飛行したことを明らかにした。

 その際B52は、航空自衛隊の戦闘機の先導で尖閣諸島付近や、中国が東シナ海に設定した防空識別圏内を飛行したと報道されている。

B52戦略爆撃機

 9月30日には、米海軍のイージス駆逐艦「ディケーター」が、「航行の自由作戦」の一環として南沙諸島のガベン礁などの領海(12海里)内を航行したようだ。

 また、インド洋に長期派遣中であった海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦(DDH)「かが」は、南シナ海において英海軍のフリゲート艦「アーガイル」と共同訓練を実施した。

 このように、日米を中心に英仏などが米国の「灰色戦争」に共同連携する動きを強め、中国の海洋進出と覇権拡大への対抗姿勢を鮮明にしつつある。

「国家安全保障戦略」に基づく既定路線
 このような米軍の動きは、昨年(2017年)12月にドナルド・トランプ米大統領が公表した米国の「国家安全保障戦略」(NSS2017)の方針に沿った「既定路線」と見ることができる。

 NSS2017は、中国(とロシア)を力による「現状変更勢力」、すなわち「米国の価値や利益とは正反対の世界への転換を図る勢力」として名指しで非難し、米国に挑戦し、安全や繁栄を脅かそうとしている「ライバル強国」であると位置づけた。

 そして、中国はインド太平洋地域で米国に取って代わり、国家主導の経済モデルの範囲を拡大し、地域の秩序を好きなように再編成しようとしていると指摘している。

 そのうえで、「我々は新たな対立の時代に入っている」と述べ、米国は中国(とロシア)に対抗して世界各地の係争地域において、米軍の増強や近代化そして同盟国との連携などによってこうした脅威に立ち向かい、「このゲームで米国は勝利する」と宣言している。

 また、NSS2017は、「強い経済は、米国民を守り、米国の生活様式を支え、米国の影響力を維持する」として米国経済を活性化し、米国の国力と優位を回復する必要性を強調している。

 特に中国を睨んで、巨額で慢性的な貿易赤字は許容しないとし、自由で公正、互恵的な経済関係を追求するとしている。

 また、研究、技術および革新の分野で先頭に立たなければならないとして、米国は知的財産を盗用し自由な社会の技術を不当に利用する者から、自国の安全保障の基盤技術を守ることなど、いわゆる経済安全保障の見地から、中国との貿易戦争を予見させる内容になっている。
 今年7月初め、米国が340億ドル分の中国産品輸入に対する25%の関税引き上げを実施したことに始まった米中貿易戦争は、関税措置での制裁と報復の応酬が激しく繰り返される中、出口戦略を見出せない状況が続いている。

 しかし、この問題は、中国が「将来的には地球規模での優位を確立し、米国に取って代わろうとしている」との米国の対中認識が示すように、国際社会の首座を巡る米中の覇権争い、すなわち地球規模での地政戦略的支配権争いが基底をなしている。 米中相互に遠大な戦略の一部であるがゆえに、その解決が容易でないことだけは、はっきりしている。
そして、貿易戦争は、通商的・経済的対立にとどまらず、政治、軍事、情報、サイバー戦など広範な分野へと拡大する危険性を孕んで推移し、「長く、厳しい対立の時代」に入る始まりにすぎないといっても過言ではないのである。

米中は貿易戦争から全方面対決へ

 経済分野においては、対中融和派とされるウィルバー・ロス商務長官やスティーブ・ムニューシン財務長官に代わって強硬派のロバート・ライトハイザー通商代表部(USTR)代表やピーター・ナバロ米国家通商会議(NTC)委員長、ラリー・クドロー国家経済会議(NEC)委員長が貿易問題で実権を握り、タカ派色が強まっていると伝えられている。

 また、外交・安全保障分野では、国際協調派のジェームズ・マティス国防長官は健在であるようだが、ジョン・ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)やマイク・ポンペオ国務長官など、いわゆるタカ派と呼ばれる側近がトランプ大統領に大きな影響力を持つようになり、米政権の顔ぶれは対中強硬派で固まったようだ。

 2018年9月28日付ロイターの『アングル:トランプ政権、中国向け「圧力戦略」が新局面入りか』という記事は、政府高官の話として下記のように伝えている。

 長年の対中強硬派として知られるボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が中心となって、貿易摩擦の枠を超え、サイバー活動や台湾、南シナ海の領有権問題なども含めて、中国に対して強い姿勢を取るようトランプ大統領を説得した。

 新たな戦術はまだ策定中だが、中国への圧力強化により、今後数週間で米国側からのさらなる強硬発言や、新たな政策措置が出てくるだろう。

 その見通しの背景としては、米中関係が緊迫化する中で、トランプ大統領が、先の国連安保理会合で、中国が11月の米中間選挙で共和党が不利になるよう介入し、通商問題におけるトランプ氏の強硬姿勢に一矢報いようとしていると非難したことに現れていると指摘している。

 対中関税措置のほかにも、米国は中国に対し、ロシアから戦闘機やミサイルシステムを購入して米制裁に違反したとして、中国人民解放軍の兵器管理部門を制裁対象に指定した。

 また、バラク・オバマ政権下で延期されていた台湾への3億3000万ドル(約375億円)相当のF16戦闘機の部品などの売却も承認した。

 さらに、中国によるネット上の盗難行為やスパイ行為に対しても、より厳しい行動を取ることを米国政府は検討している。

 前述のとおり、米国の中国向け「圧力戦略」は、NSS2017の対中脅威認識を背景に一貫した展開を見せている。

 そして、「中国は、われわれの政策を撤回させるためにあらゆる手段を講じている」「中国は、政治的、経済的、通商的、軍事的な手段やメディアを使い、中国共産党の利益を得ようとしている」とし、中国は、ロシアがクリミア半島併合で仕掛けた「ハイブリッド戦」と同じ「Gray War(灰色戦争)」を、米国に仕かけていると見ているのである。

 以上の文脈からすると、トランプ政権は、長期的・戦略視点に立って、たとえ中国から激しい反応を引き起こす恐れがあっても、より幅広く押し返そうとする全方面対決を決意していると言えるのではないだろうか。

日米豪印の「4本柱」による安全保障協力体制

 安倍晋三首相が、米ニューヨークで開かれた、先の国連総会での一般討論演説で、「北東アジアの戦後(冷戦)構造を取り除く」(カッコは筆者)と述べたことは、極めて重要である。

 北東アジアでは、終戦から73年経った今日でも戦後は終わっておらず、また、戦後とほぼ同時に始まった冷戦も完全には終わっていない。

 中国、ロシア、北朝鮮をめぐる外交・安全保障の問題がそれである。

 なかでも中国は、国力の増大に伴ってグローバルなパワーバランスに大きな変化をもたらし、軍事的動向にも顕著な影響を及ぼしている。

 それを念頭に、安倍晋三首相は、改めて国連の場で「自由で開かれたインド太平洋戦略を進める」と述べた。

 「私が『自由で開かれたインド太平洋戦略』を言いますのは、まさしくこれらの国々(ASEAN諸国や太平洋島しょ国等)、また米国や豪州、インドなど、思いを共有するすべての国、人々とともに、開かれた、海の恵みを守りたいからです」(カッコは筆者)と訴えた。

国連で演説する安倍総理

 この戦略を実効性ある現実的なものに高めるには、日本は、まず自主防衛力を強化することが先決だ。

 そのうえで、日米豪印の「4本柱」を中心として、基本的価値や戦略的目標・利害を共有する努めて多くの国・地域を有機的に連結した多国間主義による安全保障ネットワークを構築することである。

 この際、日米豪印による「4本柱」を、インド太平洋地域に強い戦略的利害関係をもつ英仏の「2本の支柱」によって補強できれば、安全保障のアーキテクチャーが一段と強化されるのは請け合いである。

 そして、日米豪印と英仏によって構築される「4+2」の安全保障協力体制に、台湾やフィリピン、マレーシア、ベトナム、シンガポールなどの力を結集すれば、中国の海洋侵出と世界的覇権拡大の野望を抑え込む、国際的な多国間枠組みを一段と強化・発展させることができるのである。

【私の論評】現状が続けば中共は崩壊し、米国は世界唯一の超大国の座を維持することに(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事の以下の結論部分は、このブログで私も主張してきたものです。
日米豪印による「4本柱」を、インド太平洋地域に強い戦略的利害関係をもつ英仏の「2本の支柱」によって補強できれば、安全保障のアーキテクチャーが一段と強化されるのは請け合いである。

そして、日米豪印と英仏によって構築される「4+2」の安全保障協力体制に、台湾やフィリピン、マレーシア、ベトナム、シンガポールなどの力を結集すれば、中国の海洋侵出と世界的覇権拡大の野望を抑え込む、国際的な多国間枠組みを一段と強化・発展させることができる。
そうして、安倍総理はまさにこの体制を築くために総理に就任直後から全方位外交に傾注してきました。この体制は完成に近づきつつあります。

さて、この体制にも大きな影響を及ぼす米中の経済冷戦はどのようになるのでしようか。

これについては、85年ほど前に起きた銀をめぐる米中間の対立に、昨今の米中貿易摩擦といくつかの類似点があり、米中関係もしくは国際関係の今後を占うためのヒントが含まれています。

各国の金本位制採用とそれに伴う銀売却、1929年に始まった世界恐慌によるデフレーション、銀鉱脈の発見による銀生産の増大などにより銀の価格は低下し、世界恐慌前には1オンス65セント程度あった銀価格は25セント程度にまで落ち込みました。

これに危機を感じた米国の銀業界は積極的なロビーイングを行いました。このころ米国内の銀生産は西部山岳の7州(アリゾナ・カルフォルニア・コロラド・アイダホ・モンタナ・ネバダ・ユタ)に偏り、米上院では人口の多寡にかかわらず各州2名の上院議員がいるので、7州14名の上院議員は「シルバー・メン」と呼ばれて一大勢力を形成していました。

シルバー・メンは、①各国に働きかけて銀需要の喚起と供給の制限を図る、②銀価格を引き上げて、銀を通貨として使用している中国等の購買力を引き上げ(つまり、ドル安元高に誘導する)、米国の輸出を増やす、③銀を通貨発行準備の一部とすることで貨幣供給量を拡大する、などの主張を行いました。

シルバー・メンの声を聞かざるをえないフランクリン・ルーズベルト大統領は銀買い上げ法の施行(1934年)等いくつかの銀価格引き上げ政策を採用し、その結果銀価格は高騰し1オンス70セントをも超えるに至りました。

米国の保守派からは、ソ連と対峙していた日本に戦争を仕掛け、
ソ連と手を組んだ大悪人とみられているフランクリン・ルーズベルト

つまりは、国際経済関係のなかで苦境に陥っている国内産業の声を聞き、自国を最優先して他国を犠牲にする典型的なアメリカ・ファースト政策です。

当時の中国の状況をみると、銀本位制度を採用する中国は、世界恐慌のときには銀価格下落のおかげで自国通貨である元が銀価格に並行して下落し、元安が世界恐慌という大火事に対する防火壁となり、中国は延焼を免れました。

ところが米国の銀価格引き上げ政策が始まると状況が一変しました。銀を米国にもっていけば高値で買い取ってもらえるのですから大量の銀が中国から米国へ流出。中国国内の銀流通総量の3分の1にもなる銀が国外に出ました。中国の貨幣供給量は一気に収縮し、中国経済は深刻なデフレーションに陥って株価は暴落、小銀行や工場、商店が相次いで閉鎖に追い込まれました。銀恐慌に陥ったのです。

中国はどう対処したかといえば、中華民国政府は応急的、一時しのぎ的な対処ではなく、大胆で根源的な策を採りました。1935年11月、約500年続いた銀本位制度を捨て去る幣制改革を断行したのです。これにより、もはや米国の政策により中国経済が翻弄されることがなくなりました。

中華民国十二年発行 竜鳳壱圓(ONE DOLLAR)銀貨
直径:39.39㎜ 重量:26.8g 現在の買取価格 ~65,000円

一連の出来事を通じて、各国の経済にどのような影響があったのでしょうか。主には次の点を挙げることができます。

まず米国については、銀業界は結局損をしました。中国を銀本位制からの離脱に追い込んだがために、もはや地球上に銀を通貨として使う者はほとんどいなくなったのです。銀に対する需要は大いに減退し、銀価格は数カ月のうちに1オンス当たり20セント程度も下落しました。

日本については、一時的ながらも漁夫の利を得ました。

中国は幣制改革を断行する直前、銀の輸出に対して高率の税を課すことで銀流出を食い止めようとしました。ところがその結果、銀の内外価格は数十%も乖離するようになり銀の密輸が激増しました。中国の銀は北方の山海関を越えて満州国に密輸出され、日本はそれを高値で売却して大きな利益を得たのです。

中国については、経済が大いに復活しました。1元40セントを超えていた為替レートは1元30セントを下回るまで下落し、貿易量が増え、生産活動は上昇し、物価は緩やかに上昇しました。恐慌状態にあった中国経済は米国の銀政策を契機とする幣制改革により一気に回復しました。

そして世界経済には、巡り巡って構造変化がもたらされました。中国の銀本位制度からの離脱により銀は大航海時代から続いた国際通貨としての地位を失いました。一方で、米ドルは基軸通貨としての地位を高めました。

中国は幣制改革を実行するにあたり、銀に代わる対外支払準備をある程度確保しておく必要がありました。幣制改革実行直後に中国は米国に5000万オンスの銀を売りドルを獲得して、それを対外支払準備としました。それまで中国経済はイギリス、もしくはポンドの強い影響下にあったのですが、これにより米国、もしくはドルの影響下に軸足が移ったのです。両大戦間期は基軸通貨としての地位がポンドからドルへと移行した時期ですが、米国の銀政策がポンドからドルへの交替を後押しすることとなりました。

ドル紙幣でできたビキニを着用する女性たち ロンドンにて

この85年前の歴史経緯をトランプ政権と中国とのあいだの貿易摩擦に当てはめつつ考えてみるとどうなるでしょうか。

銀をめぐる米中間の対立においてはポンドからドルへと基軸通貨の重心が移動し、米国は覇権国の地位を引き寄せましたが、それから約85年を経た今回の米中対立でも再度米国の地位を大幅に引き上げることが予想できます。

ここ20年くらいは、米国は中国によって、知的財産権を無視され、富を一方的に略奪されていたようなものです。今回の経済冷戦の行き着く先は、この略奪がなくなるということですから、途中経過はどうあれ、最終的には米国が唯一の超大国に返り咲くことになるでしょう。

まずは、今回の貿易戦争は、米国が知的財産権を全く守る気がないどころか、積極的に侵害しようとする中国に守らせることを主目的としているということであり、貿易戦争はその手段にすぎないということです。ここが、85年前の米国とは全く異なります。大義は米国のほうにあります。

そのため、この戦争は長く続きます。中国が音を上げ、知的財産権を守るように体制を変えることになるか、中国が体制を変えなければ、中国が経済的にも軍事的にも他国に影響が与えられないほどに弱体化するまで続けられるでしょう。

ただし、中国が知的財産権を守るように体制を変えるといっても、それはかなり困難です。現在の中国は、民主化、経済と政治の分離、法治国家がなされていません。知的財産権を守る体制にするためには、これらを先進国並みに変えなければできないです。

民主化、経済と政治の分離、法治国家化を推進するためには、驚天動地の構造改革をしなければなりません。これを実行すれば、現在の中国共産党は統治の正当性を失って、崩壊した後他の政治勢力がとって変わることになるかもしれません。

それをおそれて、この驚天動地の構造改革を実施しなければ、中国の待つ未来は、図体が大きいだけの、他国に対して影響力が全くない内にこもったアジアの凡庸な独裁国家となることでしょう。ただし、この場合も、中共は弱体化し、多くの人民が不満を持ち、内乱等が勃発して中共は崩壊することになるでしょう。

このまま、米国が経済冷戦と、ブログ冒頭の記事のように、米日豪印の4本柱に英仏を加えた4+2体制を構築さらにASEAN諸国も巻き込み、中国に軍事的に対峙して、中国の封じ込めに成功した場合、いずれにしても中共は崩壊することになるでしょぅ。

これは、当時からすれば、抜本的な構造改革である銀本位制を放棄した当時の中国(中華人民共和国)が、経済的には安定し、日本との戦いには米国などの支援があったため、なんとか勝つことができましたが、統治の正当性を主張することが出来ず、結局共産勢力に負けて、台湾に逃亡したことと類似しています。

結局現在の中共が、米国の経済冷戦と、灰色冷戦に負けて、抜本的な構造改革を断交した場合、現在の中国も過去の中国のように、経済が安定し発展するかもしれませんが、やはり統治の正当性を失い、中国共産党幹部は海外に逃亡することでしょう。彼ら幹部は、すでにドルなどで天文学的な額の蓄財をして海外に大部分を送金し、家族なども移住させ、中共が崩壊したときに自分たちも後から移住できるように準備を整えています。

中共が崩壊した中国では、中国は分裂することでしょう。そうして、おそらくいくつかの民主化、政治と経済の分離、法治国家化の進展度合いが異なる国々が成立することでしょう。これらのうち進展度合いが高い国が、米国と接近して、いずれ経済的に大成功を収めることができるかもしれません。

その後には、米国は中国による富の簒奪を免れ、しばらくの間は超大国は米国一国という時代、すなわち現在と同じような体制から中共が抜け落ちた体制が続くことになるでしょう。

ただし、これは経済冷戦や灰色冷戦が中途半端で終わらない場合です。オバマ政権のように、中途半端で終わらせれば、中共がしぶとく中国に生き残るだけとなります。やはり、この戦争は中国が抜本的に変わるまで続けなければならないのです。

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2018年10月5日金曜日

米議会で人気コメディアンなど数百人逮捕 キャバノー最高裁判事候補に抗議―【私の論評】この世界は、個人中傷キャンペーン等の嘘もすぐに見破られるところとなった(゚д゚)!

米議会で人気コメディアンなど数百人逮捕 キャバノー最高裁判事候補に抗議

BBC
After the FBI report's release, activists have gathered in the Senate office building to protest Judge Kavanaugh's nominationImage copyrightREUTERS
Image captionキャバノー判事の米最高裁判事承認に抗議して大勢が上院議員会館に集まった。赤い幕には「すべての生存者を信じる」と書かれている(4日、ワシントン)
性的暴行疑惑で揺れる米最高裁判事候補の承認手続きをめぐり4日、数千人が連邦議会などで抗議し、人気コメディアンのエイミー・シューマー氏など数百人が逮捕された。保守派のブレット・キャバノー高裁判事(53)を最高裁判事に推す与党・共和党は、連邦捜査局(FBI)の捜査の結果、性的暴行の疑いは晴らされたと表明。野党・民主党は反発している。
女性を中心とした数千人のデモ隊は4日、キャバノー判事が現在勤めるコロンビア特別区控訴裁判所を出発点に、市内を行進した。連邦議会議事堂や最高裁の前で集会を開き、「キャバノーは辞めさせなくては!」と繰り返した。さらには、上院のハート議員会館で座り込み、警察に退去を命じられるも拒否。警察によると、302人が逮捕された。その中には、シューマー氏やモデルのエミリー・ラタコウスキ氏も含まれていたという。
抗議する人たちは、「(性的暴行の)すべての生存者を信じる」と書かれた横断幕や、「女性の声を聞かなくては」、「務める資格なし」、「最高裁を救え」、「キャバ・ノー」などと書かれたプラカードを掲げて、承認に抗議した。
連邦議会警察は、廊下を歩く議員たちと抗議する人たちの間に柵を設置した。
ニューヨークのトランプ・タワー前でも抗議集会があった。
Comedian Amy Schumer (C) joins a protest on Capitol HillImage copyrightGETTY IMAGES
Image caption人気コメディアンのエイミー・シューマー氏(中央)も上院での抗議に参加し、逮捕された

承認の見通しは

上院本会議で過半数が承認に賛成すれば、キャバノー判事は終身の最高裁判事となる。
現在の最高裁判事はすでに保守派5人、リベラル4人で、保守派が優勢な構成。終身の最高裁判事たちの政治的傾向が圧倒的に保守寄りになった場合、その判決はトランプ氏の任期満了後も長く米社会に影響を及ぼすことになる。
現在の上院は、共和党が51対49で多数党だが、僅差だけに数人の穏健派議員が造反すれば承認は否決される。
しかし、上院司法委員会でその穏健派共和党議員の1人、ジェフ・フレーク議員(アリゾナ州選出)が求めた連邦捜査局(FBI)の捜査の結果、フレーク議員を含め穏健派議員2人が4日、性的暴行疑惑は裏づけられなかったなどと発言。キャバノー判事承認の公算が強まったとみられている。
上院共和党は5日午前10時半(日本時間同日午後11時半)に「討論終結」の議決を予定している。最終的な承認採決は6日午後5時半(日本時間7日午前6時半)ごろになる見通し。

Protesters outside court holding signs, one saying: SUSAN COLLINS DON'T BETRAY WOMEN, VOTE NO.Image copyrightREUTERS
Image caption連邦最高裁の前で、キャバノー判事の承認に反対する人たち。手前左のプラカードは共和党穏健派の1人、スーザン・コリンズ上院議員に「女性を裏切らないで、反対して」と呼びかけている

FBI報告書を評価

カリフォルニア州パロアルト大学で心理学を教えるクリスティーン・ブラジー・フォード教授は、お互いが10代のころにキャバノー氏に性的暴行を受けたと9月末に上院司法委員会で証言したキャバノー判事は同じ公聴会で、疑惑をすべて否定した。
フレーク議員が、フォード教授の証言内容をFBIが捜査しない限り自分は本会議で承認に反対すると表明したのを受け、ドナルド・トランプ大統領はFBIに捜査を指示。FBIは捜査報告書を4日までにホワイトハウスに提出し、ホワイトハウスが上院に提示した。
上院議員たちによるとFBIは、フォード教授の証言に関連する証人5人に事情聴取したほか、イェール大学でキャバノー氏に露出した性器を突きつけられたと名乗り出たデボラ・ラミレス氏の主張についても4人から事情を聞いた。キャバノー判事はいずれの告発内容も否定している。
上院司法委員会のチャック・グラスリー委員長(共和党)は、「捜査の結果、問題行動があった様子はいっさい伺えなかった」と明を発表した
一方で、同委員会の民主党筆頭委員、ダイアン・ファインスタイン議員は、FBIの報告書は「不完全な捜査の産物」で、事実関係を裏づけられる複数の重要証人が捜査協力を申し出たにもかかわらず、FBIはあえて事情を聞かなかったと非難した。司法委に所属する民主党のリチャード・ブルーメンソール議員は記者団に「ごまかしだ」と述べた。
これに対して、フレーク議員は「裏づけとなる追加情報はなかった」と発言。同じく共和党穏健派のスーザン・コリンズ上院議員(メイン州)も、「とても綿密な捜査だった」と評価した。
同様に造反の可能性があるとみられていた共和党のリーサ・ムルコウスキ上院議員(アラスカ州)は4日、事務所で性的暴行の生存者と面会したと言われている。
一方で、承認に賛成を検討していたとされる民主党のハイディ・ハイトキャンプ上院議員(ノースダコタ州)は、キャバノー判事の「過去の行状に関する懸念」を理由に、承認に反対することにしたと発表した。
民主党側でもう1人、賛否を明らかにしていないジョー・マンチン上院議員(ウェストバージニア州)は、5日の午前中にFBIの報告を読み終えるつもりだと話した。
ホワイトハウスのラージ・シャー報道官は、「(キャバノー判事を)批判する側は、高校生の飲酒について果てしない調査を求めている」と批判した。
一方で、共和党穏健派のジョーン・コーニン上院議員は同僚議員たちに、「これは自分たちがアティカス・フィンチかどうかが問われている」と発言し、周りを驚かせた。アティカス・フィンチとはハーパー・リー作の小説「アラバマ物語」に登場する弁護士で、人種差別の激しい1930年代のアラバマ州で白人女性を強姦したと無実の罪に問われた黒人男性を弁護する。
私は無実だ」 キャバノー判事と共和党、激しく反撃

この間、上院公聴会での激しい口調や、民主党議員に向かって飲酒で記憶をなくしたことはあるのかなど繰り返し問いただした攻撃的な態度、自分に対する性的疑惑は民主党やビル・クリントン夫妻による政治的工作だなどと批判した政治的偏向ぶりなどを非難されているキャバノー判事は、米紙ウォールストリート・ジャーナルに論説を寄稿し、「自分の口調がきつかったことは承知している。言うべきでないこともいくつか言ってしまった」と書いた。
米政界では11月6日に、連邦議会などの中間選挙が行われる。民主党が下院の過半数を奪還する可能性があるだけに、共和党は中間選挙の前に保守派判事を最高裁に送り込みたい構えだ。

【私の論評】この世界は、個人中傷キャンペーン等の嘘もすぐに見破られるところとなった(゚д゚)!

ドナルド・トランプ米大統領は今年の7月、連邦最高裁判事の引退に伴い、その後任として、保守派で熱心なカトリック教徒でもあるブレット・キャバノー判事(53)を指名しました。

トランプ政権による判事の指名は2人目です。今後、上院の承認手続きを経て就任となる見通しでした。 前任のアンソニー・ケネディ判事(81)は、保守派ではあるものの、同性結婚合法化や人工中絶などを支持することもあり、リベラル寄りでした。

一方、後任のキャバノー氏は人工中絶に反対の立場を取るなど、典型的な保守です。

 これにより、長官を含む計9人の最高裁メンバーのうち、「保守派5人・リベラル派4人」の構図が明確になると指摘されていました。 

オバマ政権下の2016年6月、最高裁は、テキサス州の州法である人工中絶の制限を無効とするリベラル的な判断を下しました。州法は、人工中絶を行う病院に対し、廊下の幅や空調などに厳しい規制を課していました。

 最高裁は、5対3で同州法が無効と判断 (保守派判事の急死により、1人欠員していた)。このリベラル的な判決を決定づけたのが、今回引退するケネディ判事による投票でした。

もしケネディ判事が州法を有効と判断していれば、4対4の可否同数となっていました。 新たにキャバノー氏が就任することで、最高裁の判断が保守的になると期待されています。最高裁判事は、引退や弾劾、死亡した場合を除いて終身制です。

トランプ政権後も、司法に「保守の遺伝子」が残り続けることになるでしょう。 司法の保守回帰への期待に加えて、米メディアで興味深い論点が報じられていました。

7月9日付FOXニュースに、このような題の寄稿記事が掲載されました。 

「トランプが指名した最高裁判事ブレット・キャバノーは、私たちの最も聖なる権利である信教の自由を守ると信頼できる」 

寄稿したのは、「ファースト・リバティ・インスティチュート(First Liberty Institute)」という組織のCEOを務める、ケリー・シャックルフォード氏。同組織は、アメリカ国民の信教の自由を守ることを目的とした、国内最大の非営利団体です。

ケリー・シャックルフォード氏

 シャックルフォード氏は、全国民に信教の自由を保障する「合衆国憲法修正第一条」に関するキャバノー氏の実績などから、こう述べています。 

「彼(キャバノー氏)の意見は、政府が神から与えられた人間の権利を守るために存在し、憲法は、権利を守ることを信託された政府が、権利を侵害することがないよう存在するという原則に、一貫して忠実だ」

 注目すべきは、最高裁判事を選ぶ際に、信教の自由をどのように扱ってきたかという実績が問われているということです。信教の自由が、あらゆる権利の根幹を成すという考えが現れていると言えます。

日本ではあまり見られない事象です。 トランプ氏の最高裁判事の指名からは、司法の方向性と、信教の自由の重要性をうかがい知れます。

リベラル・左派としてはこの信仰の自由というのが気に食わないのでしょう。信仰の自由は守られるべきことですが、リベラル・左派にとっては、ピューリタン的な考えかたが世の中で息を吹き返すことは我慢ならないのだと思います。

しかし、それは彼らの考え方であって、米国の人口の少なくとも、およそ半分は存在するとみられる保守層は、ピューリタン的考え方を自らの信条としたり、信条とまではいかなくてもかなり親和的です。

ただし、米国の大手新聞はすべてが、リベラルであり、大手テレビ局はFOXTVを除いてすべてが、リベラルであるため、この保守派の考えなど長年無視されてきました。

しかし、トランプ大統領誕生により、米国には保守層が厳然として存在することが誰の眼にも明らかになりました。

ブレット・キャバノー氏の無罪は、はっきりしているようです。それは国際政治学者の藤井厳喜氏は以下の動画で断言しています。



この動画にあるように、被害を受けた女性のとされる人の証言が全くあやふやであることと、米国では司法関係者も政治職についたりするので、キャバーノ氏は過去24年にわたり6回もFBIの身辺調査を受けて、何もでてきていなかったと言う事実もあります。

これは、10月の中間選挙に向けて民主党はかなり追い詰められていることから、選挙キャンペーの一環として、このようなバカ真似した可能性が高いです。

このようなことは日本でもあったことです。たとえば「もりかけ」騒動です。あれだけマスコミや野党政治家などが騒いで、国会で時間を費やしたにもかかわらす、何にもでてきませんでした。

米国でも、トランプ氏個人に対する中傷も酷いものがありました。しかし、このようなキャバノー氏、トランプ氏、安倍氏に対する推定有罪的な中傷キャンペーンはあまり効果がないようです。

今やネットで様々な情報が得られる時代です。情報源がほとんどテレビや新聞という年配者は別にして、70歳未満の人だと自分の意志でいくらでも、多くの情報源にあたることができます。

そんな時代に、いくら中傷キャンペーンをやっても世界のどこの国でもすぐに見破られてしまうことでしょう。中国や北朝鮮などの例外を除けは世界は変わったのです。

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2018年10月4日木曜日

政府の“プロパガンダ”も成果なし? 世界中で中国の「好感度」が上がらないワケ ―【私の論評】中国の行き詰まりは、日本のパブリック・ディプロマシーにとってまたとないチャンス(゚д゚)!

政府の“プロパガンダ”も成果なし? 世界中で中国の「好感度」が上がらないワケ 

 「残念なことに、中国が11月の中間選挙に介入しようと試みていることが分かった」

 9月26日、国連安全保障理事会でドナルド・トランプ米大統領がそう発言して話題になっている。トランプは続けて、「彼らは、私が貿易問題で中国に盾突いた初めての米大統領だから、私、あるいは共和党に勝利してほしくないのだ」とも述べている。

 この翌日には、その根拠となるような話を、写真入りでTwitterにアップ。中国国営英字紙チャイナ・デイリーの写真とともに「中国は実際に(アイオワ州の地方紙)デモイン・レジスター紙や他の新聞で、ニュース記事のように見せたプロパガンダ広告を入れている」というメッセージをポストした。

 こうしたトランプの発言は、11月の中間選挙に向けたアピール以外の何物でもない。また米国のテリー・ブランスタッド駐中国大使も9月28日、「中国政府は、プロパガンダを広めるために、米国が守る言論と報道の自由という伝統を利用している」と発言している。こちらは中国だけでなく、トランプを意識したアピールだと見ることができるだろう。

 もちろん、中国によるプロパガンダは実際に行われているし、そもそも今に始まったことではない。最近、中国が世界的にイメージ向上を狙ったプロパガンダを強化していることも確かだ。だが、実は中国のプロパガンダは、トランプが懸念するほどの力はなく、成果も出ていない、というのが実情だと言える。そこで、世界に対する中国の「プロパガンダ」の実態について探ってみたい。

世界で展開されている中国のプロパガンダ。その実態とは?

■「世界は中国をもっと知る必要がある」

 2016年末、中国の国営テレビ局である中国中央電視台(CCTV)の外国語放送を行う部門が、「CGTN」という新たな部門として再スタートすると発表された。CGTNの発足は、中国政府による対外的な情報発信の強化を意図しており、プロパガンダ強化の一環だとされる。

 最近のプロパガンダの強化は、習近平国家主席の肝いりだとみられている。習はこれまで「世界は中国についてもっとよく知る必要がある」と主張したり、「中国のストーリーをうまく伝える能力を高めなければならない」などとコメントし、やる気をアピールしている。

 さらに18年3月には、中国政府がCCTVと、対外向けラジオ局である中国国際放送局(CRI)、そして国内向けの中央人民広播電台(CNR)を統合し、「ヴォイス・オブ・チャイナ(中国の声)」という組織の発足を発表。ヴォイス・オブ・チャイナは世界最大規模の放送局になり、60以上の言語で放送を行うという。公式発表によると、ヴォイス・オブ・チャイナは「中国共産党の見解と指針、政策を広めること」を目的に、「国際的な放送の力を強化する」ことになる。

 米CNNは、戦時中からある米国営放送「ヴォイス・オブ・アメリカ」をまねたヴォイス・オブ・チャイナは、「中国政府の新たなプロパガンダ兵器」だと指摘している。

 こうした最近の動きは、プロパガンダを今以上に組織的に行うのが目的であり、今後、世界的に中国のポジティブな情報を浸透させたいという狙いがある。

 これまでも、中国が世界でプロパガンダ工作を行ってきたことは知られている。中国政府は、対外的なさまざまなプロパガンダ工作のために、年間100億ドル(約1兆1000億円)を費やしているとも言われている。

 例えば、有名なところでは、孔子学院が最たる例だろう。孔子学院は世界140カ国以上に施設を設置しており、日本でも私立大学との提携でいくつもの学院が開設されている。そこで中国政府の方針にのっとった「中国文化」が教えられている。ただ、FBI(米中央情報局)は18年2月、スパイ工作やプロパガンダ行為をしているとして孔子学院を捜査していると述べている。

 また、中国政府の裏工作も暴露されている。中国は、CRIやフロント企業を使って、米国など世界14カ国にある33のラジオ局で主要株主になるなどして、目立たないように裏でコンテンツを支配していることが明らかになっている。そうした局では、中国寄りの放送はするが、中国に都合の悪いニュースを排除しているという。

■好感度は上がっていない

 冒頭でトランプが批判した中国国営英字紙のチャイナ・デイリーの件も、いまさら驚くような話ではない。チャイナ・デイリーは、デモイン・レジスター紙に「チャイナ・ウォッチ」という4ページにわたる広告セクションを入れていた。ただこのやり方は、欧米メディアでは珍しい話ではなく、チャイナ・デイリーは広告セクションにページを入れてもらうために「広告費」を支払っている。日本などでも広く行われている、いわゆる「記事広」(編集記事のように見せた広告)のようなものである。

 またこんなケースもある。英国では、デイリー・メール紙がオンライン版に中国国営の人民日報の記事を週40本掲載するという契約で契約料を受け取っている。デイリー・メール紙から見れば単なるビジネスだが、中国側からすればプロパガンダ戦略の一環である。

 筆者が留学していた米国のマサチューセッツ工科大学(MIT)でも、学内の掲示板のあるコーナーには、学校新聞「ザ・テック」に並んでチャイナ・デイリーがいつも山積みにされていた。学内のあちこちで、無料で手に取れるように置いてあったのである。他の大学でも同じように置かれているところが少なくなく、さらには国連関連の機関などにも配られているという。

 このように、中国はあの手この手でプロパガンダを実施してきた。ただ残念ながら、こうした取り組みの効果は、これまでのところ微妙だと言わざるを得ない。米調査機関のピュー研究所が世界38カ国で実施した調査では、09年に中国政府が対外プロパガンダの強化を始めたとき、中国を好意的に見ている人は50%ほどいた。だが17年にはそれが3ポイント低下。少なくとも、好感度アップにはつながっていなかった。

 また、米ジョージ・ワシントン大学国際関係大学院中国政策プログラムのディレクターで中国専門家のデイビッド・シャンボー教授は、「圧倒的にネガティブな見方が多く、好感度は時間をかけて落ちている。09年と15年を比べると好感度は20%も落ちている」と指摘している。

 少なくとも、イメージは以前と比べて大して良くなっていないということだろう。そんな背景から、中国は最近になって、あらためて強化策を行っていると考えられている。

プロパガンダを強化してきたが、中国のイメージは大して良くなっていない

■国内弾圧でイメージ悪化

 ただ残念ながら、世界に向けて大枚をはたいて実施しているプロパガンダも、国内での過剰な弾圧によって、一瞬にして全てが台無しになってしまうケースが相次いでいる。最近でも、18年8月に山東大学の中国人元教授が、山東省の自宅から米国のラジオ番組に電話で生出演している最中に、治安当局者が自宅になだれ込む事態が起きた。

 元教授は生放送で政府に批判的なコメントをしていたのだが、最後に「表現の自由があるのだ!」という言葉を残して中継は切られた。結局、元教授はその場で拘束されたのだが、この顛末(てんまつ)は欧米メディアで大きく報じられ、多くが中国の強権イメージを再認識することになった。

 またアフリカ東部のケニアでも18年9月、ケニア警察が不法移民取り締まりのためにCGTNのアフリカ本部を強制捜査して中国人記者らを一時拘束する騒動が起きている。また在ケニアの中国人実業家がケニア人を「みんな猿みたいだ」などと発言する動画が拡散され、この中国人は逮捕された。この1件も世界的に大きく報じられている。

 政府がどれだけ中国政府や文化のイメージを向上させようと画策しても、SNSなどが広く普及している現代では、中国当局の恐ろしさと一部の中国人らの素行の悪さは隠し切れない。

 まずは国内の現実に目を向け、そこから改善しないことには、プロパガンダもなんら意味を成さなくなる。中国は、対外的なPR活動なんかよりもまずは国内に目を向けるべきである。

 ちなみに、11月の米中間選挙までは、トランプの対中ネガティブキャンペーンは話半分で聞いておいたほうがいいだろう。

【私の論評】中国の行き詰まりは、日本のパブリック・ディプロマシーにとってまたとないチャンス(゚д゚)!

「残念なことに、中国が11月の中間選挙に介入しようと試みていることが分かった」というトランプ大統領の発言は単なるネガティブキャンペーンとはいえないでしょう。実際にあらゆる手段を講じて中国はこれに介入しようとしているに違いありません。

中国の真の姿を知ってしまえば、このように考えるのが当たり前です。これを単純にネガティブキャンペーンと受け取る人は、米国のリベラルメデイアによるキャンペーンによりかなり偏向した見方しかできなくなった人だと思います。とはいいながら、中国の対米国プロパガンダもしくは対中国パブリック・ディプロマシーは最近効果がなくなってきているのは事実です。


今日、海外の世論をめぐり、各国はパブリック・ディプロマシー(PD)(定義は後に掲載します)を活発に展開するようになりました。特に米国はPDの主戦場であり、米国世論をめぐる各国のPD合戦は凄まじいものがあります。

しかし、今、その環境が変容しつつあります。その原因が、中国の対米世論工作、つまりはPDの行き詰まりです。中国ではPDを「公共外交」と呼び、中国のソフトパワーを行使する手段として、これを重視してきました。

ただし、中国は自らの民主化されておらず、政治と経済が分離されおらず、法治国家化もされていない現状は表に出さず、自らの良い面を強調し、日本などは貶めるような工作をしてきたので、これはPDというよりは、やはり本質的には旧来のプロパガンダと変わりはないだけで、目先を変えただけのものが中国のPDということできると思います。

中国は、これまで米国においても活発にPDを展開してきましたが、ここに来て手詰まり感を見せ始めました。その一例が、全米に設置されている孔子学院の相次ぐ閉鎖です。例えば、フロリダ州北フロリダ大学は、学内に設置されている孔子学院を、2019年2月には閉鎖する方針を固めました。

孔子学院の設置は、中国のPDの中でも特に重視される手法の一つです。孔子学院は中国政府の非営利教育機構であり、中国語や文化の教育をはじめ、宣伝、中国との友好関係の醸成などの一環として世界中の教育機関に設置されています。特に米国における文化・教育の普及活動には熱心です。

孔子学院をめぐっては、最近になって、米国内で「中国政府の政治宣伝機関と化している」などとの批判が高まる傾向にあります。孔子学院は中国政府から資金を得ており、米国の教育機関から、「学問の自由に反する」と批判され、また、学内で中国に有利なプロパガンダを宣伝していると懸念されています。

米国では孔子学院に逆風が吹いている

このように、日本PDの最大のライバルともいうべき中国の米国に対する働きかけは難航しています。日本においても、PDの必要性が叫ばれる今日、こうした状況をどのように捉えるべきなのでしょうか。

PDとは、海外における自国の利益と目的達成のために、メディアでの対外情報発信や、海外の個人や組織との文化や教育に関する交流などの活動を通じ、海外における自国のプレゼンスやイメージの向上を目指す活動を指します。

大戦期に各国が戦略として用いた「プロパガンダ」が元々の形態であるとされます。しかし、戦後は「プロパガンダ」という言葉がネガティブなイメージとして想起されるようになり、PDという言葉が誕生しました。冷戦終結後には、ソフトパワーの重要性が増大したことや、世論が政府の政策決定において果たす役割が増大したことなどから、米国を中心に、各国がPDを重視する政策を採用していきました。


中国のPDは、日本がPDの重要性について着目するかなり以前から政治、経済、文化など、あらゆる分野において活発に展開してきました。その起源は天安門事件にあるといわれています。1989年6月4日に生起した天安門事件によって欧米諸国のメディアなどが作り上げた中国のマイナスイメージを払拭することが、当初の目的であったのです。

21世紀に入ると、中国は目覚ましく台頭していきます。中国の経済発展が急速に進行し、米国をはじめ、国際社会における中国のプレゼンスは格段に高まっていくこととなりました。

そして中国は、天安門事件以降の経験などから、PDが米国内の世論形成に大きな役割を持っていることを認識し、米国向けに積極的な活動を行ってきました。米国の政府機関などを通じた間接外交だけでなく、例えば、米国在住の華人を同胞として重視した地方都市における草の根レベルでの働きかけ、企業や市民団体との連携など、政府が前面に出ない形のPDを展開してきたのです。

とりわけ米国一般世論に働きかけるためには多彩なメディア戦略が必要だとの認識から、米国メディアへの働きかけをはじめ、中国中央電視台米国 (CCTV America)の発足や、China Watchの広告広報など、多大な努力を払ってきました。

特に2012年に米国に開局したCCTV Americaは、演出戦略などが卓越しているといわれます。多くの米国人をはじめとする外国人に視聴してもらうために、キャスターの人選や多言語化など、多様な演出の工夫を凝らしてきたことが功を奏したのでしょう。

文化・教育面では、孔子学院の拡大をはじめ、米国メトロポリタン・オペラで中国を舞台とした巨大オペラを上演するなどして、中国のイメージ向上に努力してきました。

メトロポリタン・おベラ

特に孔子学院については、中国の代表的なPDとしても有名で、海外の大学などの教育機関に設立しています。中国が米国に設置した孔子学院の数は110であり、世界全体における同学院の総数525(2018年9月時点)の約21%を占めます。これは、ほかの地域や国における数と比較して、群を抜いて多いです。

こうした中国の対米PDの影響は、米国世論にも表れ始めました。米国における対日世論調査(2016年度末まで外務省が実施)において、自国にとっての「アジアにおける最も重要なパートナー」を、「日本」ではなく「中国」と位置付ける見方が増え始めたのです。特に、日本がPD強化戦略をとる以前は、有識者の間にもこの考え方が浸透しており、2010年には「中国」が「日本」を20ポイントも追い抜き、調査開始以来最大の開きとなりました(中国56%、日本36%)。

そして、その後しばらくの間、「中国」が「日本」を上回る情況が続くこととなりました(下グラフ参照)。

外務省データより作成(以下同じ)

さらに中国は、日本を劣勢に立たせる形で、米国の対中政策に有利に作用させようとするPDも展開してきました。例えば、中国や韓国が国際社会において対日批判を激しく行う状況が多発し、その韓国の活動に中国が協力する形でPDを展開しています。その影響は、徐々に米国国内でも現れるようになりました。現地メディアが日本の慰安婦問題や靖国神社参拝問題に関し、日本を批判的に取り上げるようになっていたのです。

中国にとって都合が良いのは、日米関係が悪化することです。しかし、中国が単独で、米国の対日感情を悪化させたわけではないです。米国内でも中国のプレゼンスが増大しており、米国自身が日米同盟を維持しながら中国とも良好な関係を構築しようとしたこともその一因です。

そうしたなか、同盟国の日本が歴史認識をめぐる問題や領土問題などで中国と対立することに対して、米国内で不快感が広がっていきました。さらに、歴史認識をめぐる日本政府の強硬な姿勢が、中国の反日的なPDを後押しする形となり、米国が「失望」という声明を出すこととなってしまいました。こうした状況を背景として、米国世論のなかでも、日本より中国をアジア最大のパートナーと見なす考え方が増えていったのだと考えられます。

このように、中国の米国におけるPD戦略は、日本にとって不利に作用していました。安倍政権による2015年度のPD強化戦略も、こうした事態に対する強い危機感があったからだと考えられます。

しかし、冒頭の記事にもみられるように、中国のプロパガンダ(PD)は、効き目がないようです。日米関係を悪化させるかに見えた中国の対米PDが、行き詰っているように見受けられます。しかも、文化、経済、政治と、多岐にわたる分野で上手くいっていないようです。

文化面でいえば、先に紹介した、米国各州の教育機関における孔子学院の相次ぐ閉鎖です。米議会では、共和党のルビオ上院議員をはじめ複数の議員が、孔子学院の閉鎖を働きかける活動を展開しており、これまで、シカゴ大学やペンシルバニア大学をはじめ、最近では2017年9月にイリノイ大学の、2018年4月にテキサス農工大学の孔子学院が次々に閉鎖を決定しています。

さらに2018年2月には、米連邦捜査局(FBI)が孔子学院に対して、スパイ活動容疑やプロパガンダ活動容疑で捜査を開始しました。

また、経済面では、トランプ政権誕生後、米中の貿易摩擦が「貿易戦争」と呼ばれるまでに緊迫しており、中国の通信機器大手であるHuaweiなどの通信機器の販売を制限・禁止する動きを見せています。そのHuaweiは、2018年に入ってから、米国におけるロビー活動費を大幅に削減し始めました。米国議会に対するロビー活動を縮小させたのです。

同社は民間企業でありながら、中国人民解放軍の退役軍人が創業した「人民解放軍のスピンオフ企業」ともいわれており、米国では中国人民解放軍や情報機関との関係が疑われていた企業です。

一見すると、米中の貿易摩擦の一環とも受け取られるこの問題は、実はPDの問題でもあります。政府が関係するロビー活動がPDの手法の一つといわれることに鑑みても、Huaweiは中国のPDの担い手の一部であるといえるからです。

さらに、政治面では、中国政府がワシントン所在の有力シンクタンクに資金提供を行っているとされており、それが最近になって米国内で問題となっています。2018年8月25日までに米議会が発表した報告書によると、中央統一戦線工作部(統戦部)が主体となり、米国政府に影響力を持つシンクタンクに資金提供し、中国寄りの立場をとるよう働きかけを行っていたといいます。

統戦部は、海外におけるPDを実施する組織であり、プロパガンダ工作も行っているとされます。報告書によると、統戦部と深い関わりを持つ中国の非営利団体「中米交流基金」が、ジョンズ・ホプキンズ大高等国際問題研究大学院をはじめ、ブルッキングス研究所、戦略国際問題研究所(CSIS)、大西洋評議会、カーネギー国際平和基金など、米国の外交政策策定に影響力を持つ多数のシンクタンクと研究活動などを通して提携していたといいます。

さらに、同基金がワシントンにおいて数十万ドルもの予算を投じてロビー活動を行ったり、統戦部が全米の巨大留学生組織「中国学生学者連合会」と連携してスパイ活動に準ずる活動を行ったりしているともいわれています。共和党のクルーズ上院議員も、これを問題視し、今年1月にはテキサス大学に対して交流基金からの資金提供を受けないよう促しています。


中国のPDの強みは、共産党独裁体制のもと、予算や人員といった豊富な資源を状況に応じて自在に投与できることです。米国の議員や大手企業幹部に働きかけるために多額の予算を組み、ロビー活動を通じて親中派を増やしているともいわれます。

中国は、経済・文化交流を通じて世論を誘導あるいは分断し、敵の戦闘意思を削ぎ、戦わずして中国に屈服するよう仕向けることを目的とした「三戦:輿論戦(世論戦)、法律戦、心理戦」を掲げています。PDは中国にとって安全保障戦略の重要な一部でもあるのです。その中国の対米PDが、今、転換点を迎えています。この状況を受けて、日本はどうすべきでしょうか。日本のPDの今後のあり方について検討してみます。

以下に日本のPDのあり方について考える際に注意すべき3つの点を確認しておきます。

(1) 世論の変化に敏感に。中国の動向など外部要因を吟味。
二次安倍政権発足当初は日中間で揺れていた米国世論も、最近では再び日本寄りになってきています。前出の外務省の世論調査において、2014年以降は「日本」が逆転する一方、「中国」を「アジアにおける最も重要なパートナー」とする一般世論は、減少傾向にあります(下グラフ参照)。

しかし、こうした状況を楽観視して良いわけではないです。有識者に限っていえば、日本を「アジアにおける最も重要なパートナー」と見なす考え方が減少傾向にあるからです。2014年はこれまで最も多い58%が日本を「最も重要なパートナー」と見なしていたのですが、それ以降は年々減少し、2016年には前年より14ポイントも落としてしまいました(グラフ3参照)。


米国の有識者は、政府の政策決定に直接的な影響力を持ちます。アジア最大のパートナーとして「日本」を選ぶ有識者の割合は「中国」より上回っているものの、その考え方が減少傾向にあるのは望ましくないです。
2016年にネガティブな視点が出てきた背景には、2016年11月に行われた米大統領選で勝利したトランプ大統領の影響があります。トランプ氏が選挙中から日米同盟を軽視するような発言を繰り返したり、TPPからの離脱を表明したりしたことが、今後の日米関係に対する米国有識者の見方に影響したと考えることもできるでしょう。
ただし、トランプ氏は保守派であり、米国の保守派の歴史の見方は近年変わってきており、単純な「日本悪玉論」は忌避される傾向にあることは、以前のこのブログに掲載したことがあります。 
世論調査の結果と日本PDの関連についての判定は簡単ではないです。しかし、検証が困難だからといって、何もしなくて良い訳ではないです。日本は、米国におけるPD環境が変化しつつあることを認識し、中国の対米PDの行き詰まりを、自らのPDを一層推し進めるチャンスと捉えるべきです。PDの効果が表れるのには時間がかかります。中長期的な視点が必要とされるのです。
(2) PDに安全保障の視点を。日本主導で海外シンクタンクとのタイアップ。
日本のPDのあり方を考える時、PDを展開する国の関心を理解することが重要です。特に米国に対してPDを展開する際は、「中国の台頭」や日米同盟の存在を無視することはできず、安全保障の視点を交えてPD戦略を考えなければならないです。例えば、日本に対する米国社会の支持を得るべく、広報や宣伝活動に加えて、日本主導で米シンクタンクなどと共同研究や机上演習を行い、その成果物を、米国メディアを通じて米国内の一般世論に働きかけていくのも一案です。安全保障分野での、こうした双方向性を重視したPDは、新しい取り組みとなることでしょう。
(3) 感情的にならない。グローバル・スタンダードに沿った理知的な発信を。
歴史認識をめぐる問題については、中国や韓国が、海外(特に米国)において反日的ロビー活動を行ってきました。過去には、国際社会における中韓の反日ロビー活動は一定の「成果」を挙げており、当時は、日本もこうした海外の反応に抗議する形で発信してきました。
しかし、最近では、世界的に女性の権利擁護の意識が高まり、女性への性犯罪は厳しく断罪されています。そして慰安婦問題は、国際社会では今日の人権や女性の権利の問題として受け止られる傾向にあるのが現状です。
強硬な抗議を展開するだけでは、実情をよく理解しない国々に感情的な反応と捉えられかねないです。中韓に反発しているという印象を与えることは、かえって日本にとって不利になります。グローバル・スタンダードに沿った理知的な発信とするためには、間接的ではあっても、現在の日本がどのような国であるのかを発信することによって、日本の悪いイメージを植え付けようとする中韓の試みを無効化することができるでしょう。
中国は「日米離反」が中国の対米PDの主目的である。日本が歴史問題で中韓の挑発に乗ってしまえば、向こうの思う壺となってしまうのです。
対米PDの最終的な着地点は、日本に対するポジティブな米国世論が定着、拡大し、より幅広いグループや年代に日本に興味を持ってもらい、日米関係が発展することです。その鍵は、従来のPDが重視する広報や文化を通じた交流のみならず、政治や安全保障といった分野でも協力し、一般から有識者まで、幅広い米国の個人や団体などとの関係を発展させることにあります。

日本の多様な魅力の発信拠点であるジャパン・ハウスは、ロンドン、ロサンゼルス、サンパウロの世界の3大都市でオープンし、強力に発信し始めました。しかし、これらの都市が存在する国以外でも、中国をめぐる世論やPD環境が変化しているのです。そこには、日本にとって、有利な変化も不利な変化もあります。

ジャパンハウス・ロサンジェルス

日本におけるPDの考え方やその戦略は、未だ発展途上にあります。これからの時代の外交にあっては、周辺の国や地域の情勢や考え方の変化を敏感に受け止め、世界的な視野に立ち、独りよがりになることなく、相手から受け入れられるメッセージを発信ことが必要となってきます。また、PDの効果を左右させうる外部要因を上手く利用する形で、自らのPDの方途も柔軟に適応させていく能力が求められるでしょう。

特に「中国のPDの行き詰まり」は、日本のPDにとってまたとないチャンスであると考えられます。

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2018年10月3日水曜日

中国、米国留学禁止を通達…米中貿易摩擦で米国による人質化を懸念、機密情報が中国に流出か―【私の論評】中国人留学生は、本人の意志に関係なく既にスパイか工作員か国家の意志によりいつでもそうなり得る(゚д゚)!

中国、米国留学禁止を通達…米中貿易摩擦で米国による人質化を懸念、機密情報が中国に流出か

トランプ大統領

 中国共産党指導部はこのほど、トランプ米大統領が「米国に来るほとんどすべての学生はスパイだ」との内容の発言を行ったことを受けて、北京や地方の党・政府組織に対して、「幹部子弟の米国留学の禁止および留学中の幹部子弟の年内帰国に関する通達」と題する内部文書を伝えたことが明らかになった。

 米中貿易摩擦が激化し、両国関係が日増しに悪化するなか、党政府幹部子弟が「人質」化することや、スパイの嫌疑をかけられて拘留されることなどを危惧するとともに、留学費用などで米国を経済的に利することを嫌ったためとみられる。

留学生による機密情報の国外流出を懸念

 米政治メディア「ポリティコ」は8月8日、トランプ氏が7日夜、ニュージャージー州の自身のゴルフ場で開いた経営者との夕食会で、「中国人学生スパイ説」を唱えたと伝えている。ホワイトハウスは発言の内容を確認していないものの、米国務省報道官は記者会見で、「米国は中国と強い人的つながりを持っているが、学生の一部が米国の技術や情報を持ち帰ることを懸念している」と述べて、留学生による機密情報の国外流出の事実を認めたかたちだ。

 トランプ政権は昨年12月、安全保障政策の基本方針を示す「国家安全保障戦略」のなかに、競争相手国への知的財産の流出を防ぐためビザ発給手続きを見直し、「特定国からの理工系留学生への規制を検討する」ことを明記している。これを受けて、今年に入り、すでに中国の知的財産権侵害に対抗する制裁措置を発動した。

 このようななか、国務省は今年6月、ロボット工学や航空工学など高度な製造技術を専攻する中国人学生へのビザ発給を厳格化しており、オバマ前政権が1年から5年に拡大した有効期間を逆に1年に戻してもいる。

 さらに、トランプ政権は中国からの輸入品に25%もの関税をかけるなどの対中制裁を次々に発表していることから、「中国指導部は貿易摩擦問題が短期間で解決するのは難しく、米中関係の悪化も長期化するとみて、党幹部子弟の帰国および今後の米国留学禁止を打ち出した」と北京の外交筋は明かした。

 米国国務省教育文化局などの調査によると、昨年6月末現在、米国の中国人留学生は前年比6.8%増の約35万人で、11年連続で増加中だ。2016-2017年度における米国の大学の留学生数は前年比3.4%増の107万8800人だが、そのうち中国大陸部からの留学生の比率は32.5%を占めており、大半は中国における特権階級である党幹部の子弟とみられる。

 同筋は「習近平国家主席の一人娘の習明沢さんがハーバード大学に留学していたのは有名だ。米中関係が良好な時期には米政府も幹部子弟に配慮したが、トランプ政権下では逆に目をつけられ人質化することを中国指導部は恐れているようだ」と指摘。

 さらに、指導部による留学禁止通達の狙いをもう一つ付け加えると、経済的な問題だ。米国国務省教育文化局などの調査によれば、留学生が昨年度1年間で米国にもたらした経済効果は369億ドル(6273億円)で、45万人の雇用を創出している。

 同筋は「指導部から見れば、留学により、幹部子弟が米当局に目をつけられるほか、貿易摩擦で中国の経済的な基盤が切り崩されるなか、中国人留学生が米国経済にも利益をもたらしていることに我慢ができないのではないか」との分析も明らかにしている。
(文=相馬勝/ジャーナリスト)

【私の論評】中国人留学生は、本人の意志に関係なく既にスパイか工作員か国家の意志によりいつでもそうなり得る(゚д゚)!

中国の情報当局の工作員がアメリカの大学に入り込み、テクノロジー分野などの情報を入手している疑いがありますが、大学側はこの重大な問題にほとんど気づいていないと、クリストファー・レイFBI長官が2月13日に警告しています。

クリストファー・レイFBI長官

レイは上院情報委員会の公聴会で、中国人スパイとおぼしき人々は「教授、研究者、学生」など様々な立場でアメリカの最高学府に入り込んでいると述べました。オンライン紙マクラッチーDCの報道によれば、中国のスパイ網は全米に張り巡らされているため、全米各地のFBI支部が捜査に乗り出す必要があると、レイは訴えました。

FBIは中国政府が資金援助を行っている大学の教員らを監視しているが、それらの大学はキャンパスでのスパイ活動にまったく気づいていないと、レイは語りました。。

「大学関係者があきれるほど無防備なことが問題だ。アメリカでは研究開発の場は非常にオープンで、それは素晴らしいことだが、彼らはそこにつけ込んでいる」

マクラッチーによれば、全米各地の大学にいる中国人留学生はざっと35万人。アメリカで学ぶ外国人留学生は100万人なので、その35%にも上ります。

レイによれば、中国がアメリカの大学に目をつけたのは、次世代テクノロジーが次々に生まれる場だからです。

「アメリカはイノベーション大国で、大学発のベンチャーで有望な技術がどんどん生まれている」

大学は研究者や学生が情報を盗むことなど想定していないため、現状では情報が漏れ放題になっているが、大学当局の意識を変えれば、有効なスパイ対策ができると、レイは指摘しました。

「民間部門は(スパイ活動を)見抜くことに慣れていない。何に気をつけるべきか、彼らを教育する必要がある」

米国での中国人留学生は、単にスパイの脅威だけではありません。他にも重大な脅威があります。

中華人民共和国(PRC)には「国防動員法」という法律があります。2010年2月26日に採択・公布され、同年7月1日から施行されています。ちなみにこの法律は、準備期間に26年もかけたのだそうです。

まず、「国防動員」とは何でしょうか。手元にあるブックレット「中国『国防動員法』-その脅威と戦略と」によると、「国家あるいは政治的集団が平時体制から戦時体制に移行し、戦争に必要な人力、物資、財力などの調達を統一的に行うためにとる措置、および行動」であって、「武装力動員、国民経済動員、人民防空動員および政治動員に区分」されると書いてあります。

一言でいえば「国防動員」とは「戦争動員」のことです。日本でもかつて「国家総動員法」が制定されていました。学徒動員や女子挺身隊などは、国家総動員法に基づいて実施されました。

ところが中国の「国防動員法」は、日本の「国家総動員法」とは少し違います。戦争中だけでなく、平時であっても中国人民を動員できるのです。いや、動員できるのは中国人民に限りません。PRCの領土内にある外国系企業も動員の対象です。

つまり、この法律が適用された場合、例えば兵器に転用できる部品を生産するようPRCが外国企業に要請し、その要請に応じない場合、外国企業は罰金などの処罰を受ける可能性があるということです。

ちなみに動員対象の中国人民については、「18歳から60歳の男性公民と18歳から55歳の女性公民は、国防勤務を請け負わなければならない」という規定があり、妊婦など一定の条件に当てはまる人は動員を免除されます。しかし、その免除条件の中に、「外国に居住する人」とは書かれていません。

つまり、米国に数三十五万人はいる中国人留学生や技能研修性も、中国から戦争のための動員命令が来たら、それに従うしかないのです。武器さえあれば、兵士に早変わりです。

長野オリンピックの聖火リレー沿道に翻った「五星紅旗」

そうして中国は国防動員法に基づく動員命令の予行演習を、2008年4月に日本の長野県で実施済みです。この時は、4000人の中国人留学生が長野に動員されたと言われています。私は、当時テレビでこの様子をみましたが、本当に異様な光景でした。

中国が北京オリンピックの聖火リレーの際、長野県の善光寺に協力を仰いだところ、仏教徒であるチベット人民を弾圧する中国に協力は出来ないと善光寺が断り、さらにチベット支援者が長野に集結することになったので、中国も中国人留学生を動員して、この運動を邪魔しようとしたわけです。

外出先から家に帰ると、自分の部屋の中に最寄駅から長野まで往復の切符と動員の指示書、そして大きな「五星紅旗」(PRC国旗)が置いてあったと証言した中国人留学生もいたそうです。

日本の大手マスコミはこれをほとんど報じなかったので、知っている人は今でも少数派です。これについては、YouTube やGoogleで「長野 五星紅旗」と検索すれば、今でもかなりの動画や写真を見ることができます。

https://goo.gl/210hqb
https://youtu.be/JAdrqYcrcxE

これらの写真や動画を見れば、中国による「日本侵略」が、とっくの昔に始まっている事実が分かるはずです。それに危機感を持たない日本人が多いことに、焦燥感を覚えています。

サンフランシスコでもパリでも、五星紅旗が沿道に林立しました。各国の在住中国人に動員がかかっていたからです。

パリ共和国広場に集合した中国人留学生たち
米国は、現在中国に貿易戦争を挑んている最中です。この米国で中国人留学生が「国防動員法」に基づき、何か米国内で工作をする可能性は否定できません。米国に限らず、日本や他の先進国なとは要警戒です。

これは、人種差別とか中国差別という問題ではありません。日米などにいる中国人の背後には中共が背後に控えてるということであり、中共の命令一で、中国人がいつどこで何をするかわからないということで、非常に危険です。これは、個人的資質とか、人柄などとは全く関係のない問題です。国家が法律で、個人を縛っているということです。

いずれの国でも、中国人留学生は、本人の意志に関係なく既にスパイか工作員か国家の意志によりいつでもそうなり得るということです。

中国が「国防動員法」が廃止しない限り、いずれの国でも中国からの留学生などは厳しく制限すべきです。原則留学禁止にすべきです。

このような異様な中共(中国人ということではなく、中国共産党のこと)はやはり、ぶっ叩き潰すしかないようです。

いままで、日米をはじめとして、先進国は中共に対して甘すぎました。トランプ大統領のように、徹底的に中共の面子を潰すべきです。

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