2020年1月8日水曜日

イラン報復、米軍基地攻撃 イラク2カ所にミサイル十数発―トランプ大統領演説へ―【私の論評】米イともに、きわめて抑制的に対処し戦争拡大を防いでいる(゚д゚)!


ソレイマニ司令官の遺族を弔問するイラン最高指導者
ハメネイ師=テヘラン、最高指導者事務所が3日提供

 イランは8日、革命防衛隊コッズ部隊のソレイマニ司令官が米軍に殺害されたことに対する報復として、イラクにある駐留米軍基地2カ所を弾道ミサイル十数発で攻撃した。米側によると、米兵に死者はいなかったとみられるが、米兵の死傷者の有無によっては、米国によるイラン本土攻撃も考えられる。トランプ米大統領は8日朝(日本時間同日夜)に演説し、イランへの対応策を表明する見通し。

 トランプ氏はこれまで「米軍基地や米国人を攻撃すれば、ためらうことなく美しい最新鋭兵器をイランに投入する」などと警告してきた。それにもかかわらず、イランが弾道ミサイル発射という直接的な攻撃に踏み切ったことで、報復合戦の激化は避けられない。トランプ政権の一方的な核合意離脱から悪化の一途をたどる米イラン関係は、より危険な段階に入った。

 イランの革命防衛隊も、多数の地対地ミサイルを発射したと明らかにした。作戦名は「殉教者ソレイマニ」。声明では、米軍が駐留する国々に対し、米軍に協力すれば「標的となり得る」と警告した。最高指導者ハメネイ師は8日、「軍事行動では不十分だ。米国は戦争や分断、破壊を引き起こしており、この地域は米国の存在を受け入れない」とけん制した。

 イランのメディアは、攻撃で「米部隊側の80人が死亡、200人が負傷した」と伝えたが、真相は不明だ。

【私の論評】米イともに、きわめて抑制的に対処し戦争拡大を防いでいる(゚д゚)!

上の記事は、イラン側の声明を一方的に掲載しているだけですので、真偽の程は確かではありません。

トランプ政権関係者によると、イランが発射したミサイル15発のうち4発は標的に届かず、イラク人の負傷が確認されています。イラクで軍事行動をとるイランの部隊が、米国への報復攻撃を意図しつつイラク人を殺してしまったということです。このイランからの攻撃はわざと標的を外した可能性が高いと分析しているようです。

イランのSima Newsが伝えたアサド基地に向けた発射されたミサイルとされる画像

イラン は華々しく米軍を攻撃した映像をばらまいて反撃したという事実と、「米部隊側の80人が死亡、200人が負傷した」という情報で、国民を納得させた上で、事態を収拾終させたいのかもしれません。

イラン国内でナショナリズムを盛り上げ過ぎてたので米軍に対して何もしないでいれば、逆に国民から批判されることになります。しかし米国と全面戦争すると軍が壊滅することになります。 イランとしても、適当なところで鉾を収めたがっているようです。

CNN報道によると、今回のイラン軍によるイラン領内の米軍基地攻撃は事前にイラン側から予告があり、そのために米兵が適切に避難できた可能性があります。実に抑制された報復です。

イランは米国がこの攻撃に報復しなければ、攻撃を止めると言っているようです。ボールは今、トランプの側にあり、もし今回の攻撃に過剰な報復をすれば戦争は青天井でエスカレートするでしょうが、常識的な釣り合いの取れた対応であればここで収まる可能性があります。

マスコミや識者の人たちの中には、「第三次世界大戦になる!」とか「米国ガー!」と煽っている人たちもいますが、彼らはロシアがウクライナのクリミア地域に侵攻していた事実は忘れているようです。 軍事大国のロシアが侵攻していても第三次世界大戦にはなっていませんし、ましてやイラン程度で第三次世界大戦にはならないと考えるのが普通です。

世界レベルで「第三次世界大戦」がトレンド入、Siriに「第三次世界大戦はいつ始まりますか」と
  質問すると恐ろしい答がかえってくるとか

にもかかわらず、なにやらマスコミ等は「イランは何もしてないのに米国が突然要人を暗殺した」かのような話に無理やり持っていこうとしていて、歴史の書き換えとやらをまさにこの瞬間リアルタイムで目撃しているような気さえします。

マスコミなどは毎日の実施されているシリアのアサド政権の空爆に憤らないで、米国が絡んだ時だけ憤るのは何か変な思考のくせがあるようです。マスコミにも問題がありますが、解説する中東イスラム研究者や国際政治学者のほぼ全員が反米(反共和党)左派の視点しか提供しないことも問題です。反米なので親イランゆえにイランの公式発表を右から左に流すだけで、広く中東や世界から俯瞰して今回の問題を論じる人が誰もいないのは異常です。


立憲民主党枝野氏は「イラン司令官の殺害は(略)中東の安定を損なうリスクが非常に高い」と述べ、スレイマーニーの存在自体が20年以上にわたり中東の安定を大きく損なわせてきた事実に対する無知を露呈させています。知りもしない中東情勢を政権批判に利用するのは不逞不遜です。

米国もイランも本格的な総力戦をしたいわけではありません。 だからこそ、両サイドが極めて政治的で抑制的な手段を取り部分的な戦争に終始させているのに、マスコミなどが戦争だ、それも世界大戦だと煽るのは、何がしたいのか意味不明です。これは、トランプ政権への攻撃なのでしょうか。日本では、安倍総理への攻撃なのでしょうか。 この短絡思考はどうにかならないものでしょうか。

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2020年1月7日火曜日

日本と世界を取り巻く“不透明感” 東京五輪後に景気落ち込みの懸念…2次補正予算通過後に解散の選択肢も―【私の論評】安倍政権が憲法改正を推進したいなら、秋に異次元のサプライズを演出しなければならない(゚д゚)!


高橋洋一 日本の解き方

東京五輪の開会式の舞台となる国立競技場

2020年の日本は、経済指標が悪化するなかで東京五輪・パラリンピックを迎える。米大統領選や米中貿易戦争、英国の欧州連合(EU)離脱、中東情勢など、世界の政治や経済に影響を及ぼす事案はどう動くだろうか。

 まず国内の政治スケジュールでは、1月から通常国会が開かれる。召集日は1月20日を軸に検討されており、150日間で6月中旬までの会期となる。冒頭に補正予算が審議され、3月いっぱいまで来年度予算が審議される。中国の習近平国家主席の来日は、国会開会中の春に予定されている。

 東京都知事選は6月18日告示、7月5日投開票だ。そして東京五輪は7月24日に開幕し、8月9日に閉幕する。そして11月上旬には大阪都構想の住民投票が行われる予定だ。

 世界を見ると、1月にトランプ米大統領の弾劾裁判が上院で開かれる。2月から各州で大統領選の予備選が実施され、11月に本選が行われる。

 EUでは1月31日に英国の離脱期限が到来する。昨年の英総選挙の結果を受けて、いよいよブレグジットが実現する。

 その他の地域では、1月11日、台湾総統・立法委員選挙がある。3月には中国で全国人民代表大会(全人代)が開かれる。6月10~12日に先進7カ国(G7)首脳会議が米ワシントン郊外のキャンプデービッドで、G20首脳会議は11月21、22日にサウジアラビアでそれぞれ開催される。



 安倍晋三首相の自民党総裁としての任期は21年9月までだ。今の衆院議員は17年10月の総選挙で選ばれたので任期はやはり21年9月までとなる。衆院解散については21年に入ると「追い込まれ解散」となって不利だとみられており、20年中の可能性が高いだろう。

 通常国会で補正予算を通してから解散総選挙という選択肢も一時、話題になっていたが、実務上の制約があるうえ、秋元司衆院議員がIR(カジノを含む統合リゾート)関連で逮捕されたので、その線は薄くなった。なにしろ、現職国会議員の逮捕は、10年1月の陸山会事件における石川知裕議員以来だ。

 当面、政府と与党は、補正予算と来年度予算の成立を図り、昨年10月の消費増税による景気の落ち込みを避けたいところだ。補正予算が通れば、当面の景気の下支えになる。

 しかし、世界経済は不透明だ。米中貿易戦争は11月の米大統領選頃まで本格的な解決は期待できない。というのは、これが経済だけではなく安全保障や人権問題にも関わってくるので、議会は共和党も民主党も中国に対し強硬姿勢を取っているためだ。トランプ大統領は選挙対策としても安易な妥協はできない。

 ブレグジットによる欧州の景気後退や不透明感も気になるところだ。

 となると五輪後の20年秋に景気の落ち込みがありうるので、再び臨時国会で補正予算という議論になるだろう。そこで解散総選挙という選択肢も出てくるのではないか。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】安倍政権が憲法改正を推進したいなら、秋に異次元のサプライズを演出しなければならない(゚д゚)!

私も、高橋洋一氏のように、通常国会で補正予算を通してから解散総選挙と睨んでいました。それについては、以前このブログに掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
【日本の解き方】IMFの「消費税引き上げ論」と真水「10兆円」の補正予算浮上…財務省の“絶妙”な対応―【私の論評】いまのところ、1月解散,2月選挙という可能性が最も高い(゚д゚)!
消費税は時の与党に国政選挙での苦戦を強いてきました。導入直後の1989年の参院選で自民党は大敗。10%までの引き上げを決めた旧民主党は2012年の衆院選で壊滅的敗北を喫しました。その後を受けた安倍内閣が連勝したことは、2度の増税延期と無縁ではありません。 
そこで有力視されるのが来年秋以降です。「増税直後の選挙は負ける」とみて、東京五輪・パラリンピックを間に挟み、増税の影響を薄める狙いがあります。年明けからは五輪準備が本格化し、物理的にも解散が難しくなります。公明党が要請した軽減税率の仕組みは複雑で、「混乱が生じれば支持者が離れる」(同党関係者)との懸念もあり、こうした見方を後押ししています。 
ただし、増税の影響が表れる10~12月期の国内総生産(GDP)の速報値が発表されるのは来年の2月17日です。このため「数字が出る前に解散を打った方がいいのではないか」(自民党関係者)との声もあります。野党側は立憲民主、国民民主両党が会派合流を決めたものの、離党の動きが出るなど臨戦態勢が整わず、与党にとっては好条件です。

1月解散となると、まさに選挙戦の最中にGDPの速報値が発表されることになるわけですが、その時に何の経済対策も打っていなければ、与党が大敗北となることが予想されます。
総選挙の開票開始後間もなく、自民党大敗の趨勢が判明、当選者もまばらな
ボードをバックに質問を受ける同党の麻生太郎総裁=2009年8月31日

しかし、そのときに真水の10兆円の対策を打つことを公約とすれば、話は随分と変わってきます。特に、先日もこのブログでも説明したように、現状では国債の金利はマイナスであり、国債を大量に刷ったとしても何の問題もありません。これは、多くの人に理解しやすいです。10兆円どころか、もっと多くを刷れる可能性もあります。 
この対策とともに、日銀がイールドカーブ・コントロールによる現状の引き締め気味の金融政策をやめ、従来の姿勢に戻ることになれば、このブログにも以前掲載したように、マクロ経済的には増税の悪影響を取り除くこともできます。

安倍政権がこれを公約として、丁寧に政策を説明すれば、十分勝てる可能性はあります。来年秋以降ということになると、経済がかなり悪くなっていることが予想され、自民党の勝ち目は半減する可能性が大です。秋以降でなくても、選挙が後になれば、なるほど増税の悪影響がでてきます。 
そうなると、いまのところ、1月解散,2月選挙という可能性が最も高いのではないでしょうか。
 ただしこの見立ては、実務上の制約があるうえ、秋元司衆院議員がIR(カジノを含む統合リゾート)関連で逮捕されたので、その線は薄くなりました。

こうなると、やはり高橋洋一氏が主張するように、オリンピック終了後の秋に解散総選挙という可能性がかなり高まったと考えられます。

ただし、今回補正予算が実施されるのは、4月からということで、増税してから半年ということで、秋口にはかなり経済が悪化している可能性が大きいというより、何か特別なことがない限りかなり悪化します。そうなると、選挙では経済関連でかなりの対策を打つことを公約としなければ、自民党にはかなり不利です。

上にも述べたように、消費税導入直後の1989年の参院選で自民党は大敗。10%までの引き上げを決めた旧民主党は2012年の衆院選で壊滅的敗北を喫しました。その後を受けた安倍内閣が連勝したことは、2度の増税延期と無縁ではありません。

 安倍総理は、アベノミクスで、大きな支持を得たという経緯があります。特に雇用面では若い世代などからは圧倒的な支持を受けています。多くの国民は、憲法や安保よりもまずは、自分たちの暮らし向きが大事なのです。これはどの国でも変わりません。

安倍政権が宿願である憲法改正を実現するためには、何が何でも次の選挙では、大勝し改憲勢力を2/3以上にしなければならないはずです。さらに、今後安倍政権下で、憲法改正をするつもりなら、昨年「桜を見る会問題」などで、憲法改正論議がなされなかったことから、時間の壁があり、その壁を破るためには、安倍四選が不可欠です。

そのためにも、衆院選で大勝利しなければ、四選はかなり不利です。やはり、選挙で大勝利するためには、凡庸な公約ではかなり不利になります。これを打開するためには、やはり経済面等でたとえば、異次元の金融緩和に匹敵するような目新しいサプライズでありながら、誰にでも最初から簡単に納得できるか、わかりやすく説明すれば誰もが納得できて、強く訴求できるサプライズを演出しなければなりません。

私自身は、以前考えていた1月解散、2月総選挙よりは、秋に解散総選挙のほうが、このようなサプライズが期待できると思います。



そのサプライズに関しては、このブログにいくつか掲載してきました。たとえば消費税を5%に戻すこと。国債の金利がマイナスであるため、マイナス分の金利は、発行した政府の儲けとなることから、国債を100兆円刷って、政府が金利分を設けて、その他は基金にして、国土強靭化などにも用いるとか・・・・。

さらには、日銀法を改正して、日本国の金融政策の目標は政府が定め、日銀はその目標を専門家的立場から実行する方法を選ぶことができるようにするとか・・・・。これによって、日銀の独立性は世界水準の中央銀行の独立性と同等になるわけです。

考えれば、他にもあります。たとえば、習近平を国賓としして招くことをやめるとか、防衛費のGDP1%枠を破るとか・・・・。ちなみに、防衛費を上昇させ、国内でその面に投資すれば、当然ながら景気にも良い影響を及ぼします。他にもあるかもしれませんが、まずはこれらだけでも、かなり支持率がアップすると思います。

全部とはいわなくても、このうち2つくらいでも実行すれば、大サプライズになります。これにより、次回の衆院選は自民党の大勝利となり、安倍四選も可能となり、さらには憲法改正も可能になります。

安倍政権には、秋のサプラズに期待したいです。

【私の論評】

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2020年1月6日月曜日

中国の軍事脅威を再びけん制したベトナム国防白書―【私の論評】これからの伸びしろが大きいベトナムに日本は貢献できる(゚д゚)!

中国の軍事脅威を再びけん制したベトナム国防白書

岡崎研究所

 11月25日、ベトナムの国防省は「2019年ベトナム国防白書」を公表した。ベトナムの国防白書の発表は、2009年以来、10年振りになる。これにより、ベトナムの国防政策の透明化が図られた。軍事予算も公表され、2018年のベトナムの国防費は58億ドル(約6300億円)とされ、これは国内総生産(GDP)比では2.36%にあたる。

 今回公表されたベトナムの国防白書に記述された南シナ海に関するベトナムの立場、考え方には、全体として特に目新しいことはない。ただ、10年ぶりに国防白書を公表し、その中で南シナ海問題を詳細に論じることにより、ベトナムの基本的考えを改めて強調し、世界にアピールすることが目的であったと言えよう。それは、この問題についてのベトナムの危機感を表すものである。アピール先の世界とは、第一に、ベトナムの立場を理解する米国、日本などの西側諸国である。第二には、紛争相手国の中国である。第三は、本来はベトナムの仲間ながら、カンボジアのように中国の代弁者のような国もいて、なかなかベトナム支持でまとまってくれない ASEAN(東南アジア諸国連合)であろう。

 南シナ海におけるベトナムと中国の紛争の歴史は古い。例えば、西沙諸島(別名パラセル諸島)では以前より中越間の武力衝突があり、1974年には中国が最後のベトナム軍を追放し、中国軍の駐屯地を設営している。一方、ベトナムは、2018年に総工費180万ドル(約1億9000万円)をかけてパラセル博物館を建設し、パラセルがベトナム領であることをアピールしている。 

中国・ベトナム間で衝突が起こった西沙諸島(別名パラセル諸島)

 2007年には、中国艦船がベトナム漁船を銃撃する事件が起きた。2017年には、ベトナムがスペインの石油大手レプソルに南シナ海での石油開発権を与えたが、中国の圧力で開発を断念している。本年2019年7月、中国の海洋調査船が海警局の艦船を引き連れてベトナムのEEZ(排他的経済水域)に入り、ベトナムが抗議したところ、10月に作業が終了したとして退去した。

 南シナ海の紛争に対処するため、ASEANと中国はかねてより南シナ海の行動規範を作るべく話し合いを行い、本年11月の首脳会議で行動規範の今後2年以内の策定を目指す方針で一致した。ただしASEANが国際海洋条約に基づいた規範を求めているのに対し、中国は法的規制のないものを目指しているなど、両者の見解がどこまで一致しているかは定かでなく、行動規範が合意されるとしても同床異夢的なものになる恐れがある。

 ベトナムは、南シナ海をはじめとして中国の軍事的脅威を受けている。国防白書が「ベトナムは海軍、沿岸警備隊、国境警備隊、国際機関の艦船がベトナムの港を訪問したり、修繕、必要物資の調達のためベトナムの港に立ち寄ったりすることを歓迎する」と述べているのは、中国の脅威に対する一つの牽制とみてよいだろう。

 日本にとってベトナムは国際海洋の法的原則の遵守で利害を同じくするなど、東南アジアで重要な友邦国であり、ベトナムとの戦略的関係の強化は必要であろう。本コラムの2018年6月15日付「中国と粘り強く戦うベトナム、日本ができること」でも触れたが、日本とベトナムは共に「自由で開かれたインド太平洋地域」を推進する海洋国家である。既に日本は、ベトナムに対して海上保安庁やJICA等様々な機関を通じて、海洋の安全保障に関する国際協力を行なってきた。能力構築支援等、中長期的に継続することによって成果があがるものもある。今後もこれらの支援を維持、発展させることが、インド太平洋地域の平和と繁栄につながるだろう。

【私の論評】これからの伸びしろが大きいベトナムに日本は貢献できる(゚д゚)!

米中貿易対立の行方には世界が注目しています。5Gに代表されるように、中国ファーウェイの進める技術覇権戦略に対し、トランプ政権は全面戦争もいとわない姿勢を見せています。そのような米中対立の激化から「漁夫の利」を得ようとしているのがベトナムです。

ベトナム人の耐久力の強さは歴史が証明しています。フランスの植民地から脱却し、中国との国境戦争にも負けず、ベトナム戦争では「世界最強」とうたわれた米軍を追い出し、独立を勝ち取ったことは記憶に新しいです。

米中貿易戦争の煽りで、米国から中国製品が締め出される恐れが日に日に大きくなっているため、中国に進出していた外国企業や米国市場で大儲けしていた中国や香港の企業が相次いでベトナムに製造拠点を移し始めています。

サプライチェーンが大きく変動するなかで、「チャイナ・プラス・ワン」の代名詞ともなったベトナムの占める役割は拡大の一途をたどっています。


ベトナムの強みは政権の安定と経済成長路線にほかありません。2019年のGDP予測は6.7%と高く、インフレ率も失業率も4%を下回っています。しかも、地方の少数民族の貧困は問題はありますが、国全体で見れば貧困率は1.5%にすぎず、周辺の東南アジア諸国とは大違いです。

特に注目株といわれるのがビン・グループです。ベトナム最大手の不動産開発やショッピングモール、病院、学校経営で知られる企業ですが、昨年、ベトナム初の国産自動車製造会社ビン・ファストを立ち上げ、2019年から販売を開始しました。また、同社はスマホ製造も開始し、韓国のサムスンへの最大の供給メーカーの座を獲得し、自前のブランドで国際市場へ打って出る準備を着々と進めています。

そんな活気溢れる若い国に魅せられ、米国のトランプ大統領はすでに2度も足を運んでいます。 日本は昨年、ベトナムとの国交樹立45周年を祝ったばかりで、安倍首相も「トランプ大統領に負けてはならぬ」と2度の訪問を実現させています。

また、年明け早々茂木外務大臣はASEAN=東南アジア諸国連合の議長国、ベトナムを訪問してミン外相と会談し、中国が南シナ海で海洋進出を強めていることへの懸念を共有し、海洋安全保障で緊密に連携していくことで一致しました。

ことし最初の外国訪問として東南アジア4か国を歴訪している茂木外務大臣は日本時間の6日午後、ベトナムの首都ハノイでミン外相と会談しました。

会談で茂木大臣がことしベトナムがASEANの議長国と国連安全保障理事会の非常任理事国であることから「国際的なパートナーとして特に重要視している」と述べたのに対し、ミン外相は「日本の主導的で積極的な役割を歓迎する」と応じました。

そして両外相は中国が南シナ海で海洋進出を強めていることへの懸念を共有したうえで、海洋安全保障の分野で緊密に連携していくことで一致しました。

また北朝鮮が弾道ミサイルの発射を繰り返していることを踏まえ、完全な非核化に向けた連携を確認しました。

さらにベトナムも参加するTPP=環太平洋パートナーシップ協定の参加国拡大や、両国のほか、インドや中国など合わせて16か国によるRCEP=東アジア地域包括的経済連携の早期妥結に向けた協力も確認しました。

日本ではあまり知られていませんが、ベトナムの外交手腕はしたたかというか、小国の常として、そうせざるを得ない部分があります。日本にとっては拉致問題が未解決のために国交正常化交渉が進まない北朝鮮とも、親密な関係を構築しています。

金正恩労働党委員長自らが「ベトナムに学べ」と大号令をかけているほど、北朝鮮におけるベトナムの存在は大きくなる一方です。昨年2月に開催された2度目の米朝首脳会談も、ベトナムのハノイが舞台となりました。

要は、米国とも、中国、北朝鮮とも、はたまたロシアや日本ともがっちりと手を握っています。それが未来の大国ベトナムの真骨頂でもあり、欠点でもあるところです。

そのようなベトナムが今、もっとも力を注いでいるのがIT産業の育成です。2012年に「科学技術に関する国家戦略」を策定したベトナム。そこで掲げられた目標は「2020年までにGDPの45%をハイテク産業で生み出す」という野心的なものです。この方針の下、情報技術省が中心となり、国内のIT関連企業の育成が始まりました。

もともと「新しいもの好き」の国民性で知られるベトナム人です。国内6000万人のネット利用者の大半にとって、フェイスブックとユーチューブが欠かせません。特にフェイスブックの利用者は急速に伸びており、5800万人に達し、世界では7番目となったといいます。

また、メッセージ送信アプリのザロはベトナムでは3500万人が利用しており、中国のテンセントの傘下にあるWeChatやフェイスブックが運用するWhatsAppより人気が高いです。

そうした外国のアプリに依存するのではなく、ベトナム独自のソーシャルメディアを広める方向をベトナム政府は打ち出しました。「2022年を目標に国産のIT技術でソーシャルメディア市場の70%を押さえる」ことが決定されました。
今後ビジネスの主流に躍り出るに違いないネット販売の分野でも、自国企業を支援する考えを鮮明に打ち出しています。そのため、この分野では圧倒的なシェアを誇る中国のJD.comが、ベトナムのローカル企業のティキへの投資を決めたほどです。

そうしたなか、ベトナム最大の民営企業であるビン・グループも新たな動きを見せ始めました。人工知能(AI)とソフトウェア開発を専門にする新会社を立ち上げるというのです。

ビン・グループ会長 ファム・ニャット・ブオン氏

その名は「ビンテック」。米国のシリコンバレーのベトナム版を目指すという触れ込みです。ビッグデータの活用を主眼とし、関連するハイテク分野を先導するとの方針が発表されました。

こうした動きは明らかにベトナム政府の標榜する「2020年国家戦略」に沿ったものです。実は、こうした国家戦略を立案、推進する要役を果たすのが情報技術省であり、そのトップに就任したのが元ビエッテルの社長のフン氏。ビエッテルといえばベトナム最大のテレコム会社で、その影響力はミャンマーなど周辺の途上国に広く及んでいます。

彼らの意図する戦略はグーグルやフェイスブックに流れている莫大な広告収入を、ベトナム企業に引っ張ろうとするものです。SNSが急速に拡大するベトナムでは毎年、3億7000万ドルの広告収入が発生しています。しかし、現状では、これらの収入はすべ米て国企業に流れているため、なんとしてもその流れを変えたいということです。

とはいいながら、これはベトナムが国家を挙げて推進するIT革命の一端にすぎません。まだまだ新たな新規事業が目白押しです。医療や教育の分野もしかり、農業や観光の分野もしかりです。そんな実験国家でもあるベトナム。どこまで未来への夢が実現できるのでしょうか。また、そのなかで日本がどのような役割を担えるのでしょうか。

日本はベトナム産の農産物の輸出拡大に欠かせない検疫や食の安全検査を改善するために、12億円の資金援助も約束しました。それでなくとも、経済的に豊かになったベトナムでは消費者の健康志向が強まっています。

農薬や化学肥料を使わない日本式の無農薬、有機栽培の食材への関心と需要は今後、大きく伸びるに違いありません。安全安心を売り物とする日本の食材は現地消費者の間では高い評価を得ています。

ベトナムでは一昨年末に実施された世論調査で、消費者の82%が「2018年は個人所得が増えた」と回答し、63%が「2019年はお金を使うには良い時期だ」と述べていました。それだけ、懐具合に自信を抱いているというわけです。

もっともお金を使う予定の品目は何かと聞くと、40%の回答は「健康増進に役立つもの」といいます。ベトナムでも日本人の健康長寿ぶりはよく知れ渡っています。日本製の健康食材や健康グッズは化粧品と並んで売れ筋です。この分野での日本ブランドは圧倒的な強みを発揮し続けるでしょう。
日本への熱い期待と信頼を寄せるベトナム。2018年には新規株式上場による資金調達額でシンガポールを抜くという快挙を達成しました。この「未来の大国」との関係をより深化させることが、日本の未来を大きく左右するに違いありません。ベトナム航空では日本路線にボーイングの最新鋭大型機を投入し、人的・経済的結びつきを強める上で一役買っています。

機を見るに敏なベトナム人。日本と共に「第4次産業革命」を進める計画も明らかにしました。頼もしいパートナーといえます。急成長を遂げるアジア市場のダイナミズムを取り入れる上でも親日国ベトナムとの連携は欠かせないです。
日本は、自由で開かれ、国際法秩序に基づく海洋を維持するという普遍的価値を米豪英仏等と共有している。そして今、この価値観とヴィジョンを、ベトナムとも共有する。
南シナ海で中国と領有権を争っているベトナムであるが、中国は一方的に人工島を建設し、そこを「防衛」という名目で軍事化している。中国を刺激しないように、「中国」という固有名詞こそ上げないが、中国を意識して、日本がベトナムを支援し、ベトナムも日本に感謝していることは、明らかです。
ベトナム・中国国境

ベトナムは海洋のみならず、陸でも中国と国境を接しています。かつて中越国境紛争もありました。山にある中越国境線上に「平和の門」が設置されています。これは1998年頃の話ですが、中国とベトナムそれぞれの兵士が監視していたのですが、中国は、毎日、その「平和の門」を少しずつベトナム側に移動させたそうです。
すなわち、中国は、徐々に徐々に自国の領土を広げてきたのです。ベトナム側は、負けじと毎日、その「平和の門」を元の位置に戻したと言います。ベトナム人は辛抱強いのでしょう。そして、おそらく、ベトナム戦争で大国の米国を「名誉の撤退」に追いやったように、大国に対しても毅然と戦う粘り強さを持ち合わせているのでしょう。

日本は、そのベトナムを様々な角度から支援しています。特に、南シナ海をめぐる海洋安全保障の分野では、すぐに軍事衝突にならないように、海上保安庁の役割が大きくなっています。

以前、ベトナムの海上警察はベトナム海軍に入っていましたが、それを別組織にして海上保安庁のような組織を創設することは、日本が知見を与えたものです。巡視艇供与はハード面の支援ですが、こういうアイデアを出すというのは、目に見えにくい日本のソフト・パワーでしょう。

今後も、日本の海洋大国としての知見や経験は、インド太平洋地域の中小諸国に、多々役立つでしょう。そうすることで、国際社会が求める「自由で開かれた海洋」が保たれることになるのでしょう。日本は経済だけではなく、安全保証の面でも、これからの伸びしろの大きいベトナムに貢献することができます。

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2020年1月5日日曜日

米vsイラン“一触即発”状態! 殺害された司令官は「対米テロ首謀者」 米大使館近くにロケット弾4発、トランプ氏「イランが報復したら…」―【私の論評】米国の優先は中東よりも中国、それは今年も変わらない(゚д゚)!

米vsイラン“一触即発”状態! 殺害された司令官は「対米テロ首謀者」 米大使館近くにロケット弾4発、トランプ氏「イランが報復したら…」

トランプ米大統領の指示で殺害されたイランのソレイマニ司令官を悼み、デモを行うテヘラン市民


 米国とイランの緊張がさらに高まっている。イラン革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」のガーセム・ソレイマニ司令官が米軍に殺害された現場となったイラクの首都バグダッドで4日、米大使館近くにロケット弾4発が撃ち込まれたのだ。一方、米政府は「ソレイマニ氏=対米テロの首謀者」と認識しており、米国内にはドナルド・トランプ大統領の判断を支持する声も多い。トランプ氏は同日、報復への徹底抗戦を警告した。日本の左派メディアの「反米」報道だけでは、状況を見誤りそうだ。

 「米国に死を!」

 バグダッドで4日行われたソレイマニ氏の葬列の行進開始に合わせて、市民数千人が街頭で弔意を示す一方、こう反米色をあらわにした。

 こうしたなか、バグダッド中心部の米大使館近くなど3カ所に4日、ロケット弾計4発が撃ち込まれた。死者は確認されていない。犯行声明は出ていない。イランはイスラム教シーア派の大国だが、隣国イラクにもシーア派は多数いる。

 イランの最高指導者ハメネイ師は「厳しい復讐(ふくしゅう)」が待っていると米国に警告している。中東地域の米関連施設が攻撃目標となるとの見方が強い。

 これに対し、米国の理解は違う。

 トランプ氏は、攻撃に踏み切った根拠について、「ソレイマニ氏が、イラクとシリア、レバノン、中東にいる米外交官と米軍将兵を今にも攻撃しようとしているとの確度の高い情報があった」「攻撃は戦争を阻止するためだ。戦争を起こすためではない」「米国民を守るために、すべての措置を講じる」と声明(3日)で説明した。

 さらに、トランプ氏は4日のツイッターで、イランが報復した場合、イランの重要施設を含む52カ所を短時間で攻撃し「大きな打撃を与える」と警告した。米軍部隊約3000人を中東に増派する方針も決めている。

トランプ大統領

 日本の左派メディアは、ソレイマニ氏について「イランの国民的英雄」「ハメネイ師に次ぐナンバー2の実力者」などと伝えているが、これだけでは日本人をミスリードする危険性がある。

 米CNN(日本語版)は4日、ソレイマニ氏が率いた「コッズ部隊」を「米国からは外国テロ組織と見なされている」とし、「国防総省は、ソレイマニ司令官と指揮下の部隊が『米国や有志連合の要員数百人の殺害、数千人の負傷に関与した』としている」と伝えた。

 英BBC(同)も同日、「米政府からすれば、ソレイマニは大勢のアメリカ人を死なせてきた、血染めの張本人だった」と解説した。

 ともかく、日本がエネルギーを大きく依存する中東の情勢が緊迫しているのは間違いない。

【私の論評】米国の優先は中東よりも中国、それは今年も変わらない(゚д゚)!

日本メディアにはソレイマニがさも立派な人物だったと強調する記事が多いようです。そこまでいかなくとも、あたかも先進国などのまともな軍隊の司令官のような扱いをするのが多いようです。

それを読んだ一般人はそんな立派な人物を殺したトランプは愚かだ、トランプのせいで戦争が始まると考えるのではないかと思います。ソレイマニが最恐テロリストである事実は、ほとんど指摘されていません。

イランではヒジャーブをとった女性が禁錮刑となり、同性愛者が処刑され、11月に開始した反体制デモ参加者2000人近くが革命防衛隊に殺害されています。

私も一昨日、このブログの記事で「ソレイマニ司令官」という表現をしてしまいましたが、無論ソレイマニは、イラン正規軍の司令官でも、ましてや先進国の正規軍の司令官のような存在でもないので、この表現は良くなかったと反省しています。「革命防衛隊というテロリストのリーダー」あたりが穏当な表現だったと思います。

さて、ソレイマニ氏殺害に続き、上の記事にもあるように、トランプ大統領は、イランが報復した場合、イランの重要施設を含む52カ所を短時間で攻撃し「大きな打撃を与える」と警告しています。さらに、米軍部隊約3000人を中東に増派する方針も決めているとあります。

では、米国とイランの対立が戦争にまで拡大するかといえば、そのようなことはないと思います。

そもそも、米国にとっては中東はさほど重要ではありません。それを示すデータなどを以下に掲載します。以下に中東の名目GDPを掲載します。


これを見ると、サウジアラビアがトップであり、石油で儲けた王族などがイメージされ、さもありなんと思いがちですが、サウジアラビアのGDPは、昨日の記事でも掲載したように、世界で18番目です。

ところが、昨日もこのブログで述べたように、米国のペンシルベニア州よりも少ないです。2017年のサウジアラビアのGDPは約6830億ドル、ペンシルベニア州のGDPは7520億ドルでした。そして、ペンシルベニア州のGDPはアメリカ50州のうち6位です。

ちなみに、サウジアラビアのGDPの規模は日本の県と比較すると、ほぼ福岡県相当です。

無論、経済の大きさだけで、米国にとっての中東の重要度を推し量ることはできませんが、それにしてもこの程度ということを認識しておくべきです。

では、なぜ米国が中東をかつてはかなり重視して、米国中央郡を中東に配置していたかといえば、やはり中東が世界最大の石油の輸出国だったからです。そうして、米国は石油輸入国だったからです。

ところが、この状況も昨年から変わりました。米エネルギー情報局(EIA)が昨年11月29日発表した統計で、9月の米国の原油・石油製品の1日当たりの輸出量が、輸入量を上回ったことが分かりました。シェールオイルの生産増が輸出を押し上げました。米ブルームバーグ通信によれば、単月で純輸出国となるのは政府の記録が残る1949年以来、70年間で初めてです。

原油市場では、米国によるシェールオイル増産が相場の押し下げ要因になっています。一方、中東地域への依存度が低下することで同地域に対する米国の関与が薄まり、地政学的なリスクが高まる恐れもあります。
9月の輸入は、石油輸出国機構(OPEC)加盟国やペルシャ湾地域などからの分が大きく減り、前年同月比約12%減に落ち込んだ。これに対し輸出は約18%増となり、1日当たりで8万9000バレルの輸出超過となりました。

この傾向は続き、米国は2020年には年間でも原油・石油製品の純輸出国になる見通しです。エネルギー市場で米国の存在感が高まり、原油価格を下押しする圧力になります。米国の中東への依存が減り、トランプ政権の外交戦略にも影響する可能性があります。

米シェールオイルの最大鉱区パーミアン盆地にある原油貯蔵タンク。米テキサス州

ただし、中東に関しては、争乱の耐えない地域であることや、米国や同盟国に対するテロを目論む組織も多数存在することから、米国が全く関与しなくなるということはないでしょう。

さらには、トランプ大統領の支持基盤である米国福音派は、イスラエルを守ることは米国の使命であると考えているようで、この面からもトランプ大統領はこれを疎かにできないという背景もあります。

ところが、昨日も述べたように、今や中国のGDPは米国に次いで第二位で、一人あたりのGDPは未だ中進国の中でも低いレベルなのですが、中国共産党は、その全体の経済力を自由に使うことができるということで、現状では、世界で唯一米国に経済的にも、軍事的にも脅威を与える存在です。

であれば、昨日このブログでも掲載したように、やはりトランプ政権は、中国に対峙することを最優先順位においていると考えるべきです。

米中の貿易交渉第一次合意の結果について、米国は監視を続け、3ヶ月後(今年3月)には判断を下します。これを過ぎでも、中国が合意内容を守らない場合は、米国は無論対中国制裁を上乗せすることになります。それでも、守らなければさらに厳しい制裁を課すことになるでしょう。

それでも、WTOに加盟した中国が、体裁だけ整えて結局約束を守らず、WTOそのものを無意味にしてしまったことを米国は悔いています。

今回米中貿易協定を中国が結局反故にした場合、米国は思い切った制裁手段に出ることが予想されます。一つは、かつてなかったようなほどの大規模な金融制裁です。もう一つは、見せしめのために、北朝鮮に軍事攻撃を仕掛けることです。

昨日も述べたように、北への軍事攻撃も、全面戦争にはならないでしょうが、それにしても金正恩ならびに幹部の殺害もしくは捕獲と、核施設の破壊はするでしょう。どの程度の破壊になるかは、未知数ですが、少なくとも長距離ミサイルは確実に破壊するでしょう。

これを実行する可能性は十分あります。そうなると、習近平とその取り巻きにはかなりの脅威を与えることができます。

ただし、これも今年の3月を過ぎてすぐということでないでしょう。北朝鮮は中国の干渉を嫌っているため北朝鮮とその核が、朝鮮半島全体への中国の浸透を防ぎ、結果としてバランスが保たれてきました。そのバランスが崩れるか、あらかじめバランスが崩れることが予想された場合は、米国は躊躇なく北朝鮮に武力行使するでしょう。それが、年内になる可能性もあります。

いずれにせよ、米国の優先は中東よりも中国、それは今年も変わらないでしょう。これが変わらない限り、習近平と中共幹部は枕を高くして寝ることはできないでしょう。

2020年1月4日土曜日

今年、米国が北朝鮮に軍事攻撃の可能性も…トランプ再選で中国共産党崩壊が加速か―【私の論評】年始早々のソレイマニ氏の殺害は、中国との本格対峙のための前哨戦か?

今年、米国が北朝鮮に軍事攻撃の可能性も…トランプ再選で中国共産党崩壊が加速か


トランプ大統領

 2020年が幕を開けた。

 19年は日韓関係が戦後最悪の状態を迎えたといわれ、18年に続き米中貿易戦争が世界経済の大きなリスクとなった。しかし、12月には安倍晋三首相と韓国の文在寅大統領が1年3カ月ぶりに会談を行い、米中間の通商協議では第1段階の合意がなされるなど、事態は少しずつ動き出しつつある。

バブル崩壊の中国を追い詰める米国

 では、20年はどう動くのか。

 まず、米中合意に関しては、アメリカが1600億ドル相当の中国製品に対する関税発動を見送るとともに1200億ドル相当の中国製品に対する関税を従来の15%から7.5%に引き下げ、中国はアメリカ産の農産物を320億ドル追加購入し、さらにエネルギーやサービスの購入も増やすという内容だ。

 これは、いわば「額」に対する合意であり、問題の本質である中国の構造改革にまでは踏み込んでいない。また、中国側が大きく妥協したことにより合意に至ったが、その内容を中国側が履行しなければ、アメリカは再び関税強化に踏み切ることを明言している。さらに、複数回に分割される可能性も浮上している第2段階の合意についても、アメリカは中国が第1段階の合意内容を履行してからだとしている。つまり、交渉の本番は今年ということだろう。

 そもそも、アメリカは中国に「外国企業の企業活動の保証」「知的財産権の保護」「資本移動の自由化」「為替の自由化」「国有企業の解体や不正な産業保護の廃止」を求めており、中国の国家資本主義を問題視している。これは単なる貿易問題ではなく文明と文明の衝突であり、アメリカが最終的に中国共産党の崩壊を狙っている以上、今後も終わりなき戦いが繰り広げられるのであろう。

 19年6月から始まった香港デモが長期化し内政に火種を抱える中国は、経済面でも苦しい状況が続いている。企業物価指数が下落し消費者物価指数が上昇しており、景気悪化の中で物価が上がるスタグフレーションの状態にあるのだ。また、民間企業のデフォルト率が過去最高を記録し、高額消費の流れを示すといわれる自動車販売台数も17カ月連続で前年割れとなるなど、さまざまな経済指標を見る限り、バブル崩壊が顕在化している。

 一方、アメリカは11月に香港での人権尊重や民主主義の確立を支援する「香港人権・民主主義法」を成立させ、12月には台湾への武器供与や軍事支援などを盛り込んだ「国防権限法」を成立させるなど、中国に圧力をかけている。いずれも中国は強く反発しているが、中国のもうひとつの火種である新疆ウイグル自治区の少数民族弾圧に関しても、アメリカは「ウイグル人権法」を成立させる見込みであり、中国にとっては分の悪い戦いが続くことになるだろう。

 また、1月11日には台湾総統選挙が行われるが、現職の蔡英文総統が優勢と見られている。独立派の蔡総統が再選を果たせば、中国にとって向かい風となることは確実だ。

米国が北朝鮮へ軍事行動に出る可能性も

 選挙といえば、今年はアメリカ大統領選挙イヤーである。現状では民主党に有力な候補者がおらず、ドナルド・トランプ大統領の再選が有力視されているが、仮にトランプ政権が2期目に突入すれば、中国および北朝鮮への対応はますます厳しいものになるだろう。

 19年2月に行われた米朝首脳会談が決裂に終わって以来、北朝鮮の非核化交渉は不透明な状態が続き、金正恩朝鮮労働党委員長は再び弾道ミサイル発射を繰り返すなど、18年の米朝合意は事実上の白紙に戻っている。これは、北朝鮮がミサイルおよび核開発を停止し、その間はアメリカが北朝鮮の安全を保証するという内容であったが、北朝鮮は大陸間弾道ミサイル(ICBM)のエンジン燃焼試験を行った可能性も取り沙汰されている。

 そのため、北朝鮮は自ら安全保障を放棄しており、条件的にはアメリカが軍事オプションを行使してもおかしくない状況をつくり出しているわけだ。アメリカとしても、この状況を放置しておくわけにもいかず、なんらかの行動に出る可能性はあるだろう。

 いわば、北朝鮮は対米融和路線から崖っぷち外交に逆戻りしたわけだが、その北朝鮮にすり寄る姿勢を見せているのが韓国だ。

 昨年、日本の輸出管理強化に反発して軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の一方的な破棄を通告したものの、失効当日になって「破棄通告を停止」するという離れ業を見せた韓国は、文大統領が指名したチョ・グク前法相が数々の不正疑惑によりスピード辞任し逮捕寸前まで追い詰められるなど、青瓦台と検察当局との対立が深まっている。任期5年の折り返しを迎えた文政権は4月に総選挙を控えており、国内世論の支持を得るために、さらに反日的な姿勢を強めるとも見られている。

 また、日本は19年の天皇譲位に伴う改元に続いて、20年も記念すべき年となる。夏に東京オリンピック・パラリンピックが開催され、それに先立ち、春には次世代通信規格「5G」の商用サービスが始まる。

 また、五輪前の7月には東京都知事選挙が控えており、11月には安倍晋三首相の連続在職日数が大叔父の佐藤栄作氏を超えて歴代1位となる予定だ。安倍首相はすでに19年11月の時点で通算在任日数で歴代1位を記録しているが、12年12月から続く連続在職日数でも憲政史上最長となるかどうかが注目される。

英国、いよいよEU離脱へ

 イギリスのEU(ヨーロッパ連合)離脱も、20年の世界の関心事のひとつだ。12月に行われた総選挙でボリス・ジョンソン首相率いる与党・保守党が圧倒的勝利を収め、1月31日の“ブレグジット”がほぼ確定した。2月以降は完全離脱の準備のための「移行期間」に入り、年末までにEUとの間で新たな自由貿易協定で合意するという課題は残っているものの、長期間の混乱に終止符が打たれることの意味は大きいだろう。

 もともと「栄光ある孤立」を外交方針としてきたイギリスは、ヨーロッパ大陸を捨てたことで、今後はアメリカをはじめとする「ファイブ・アイズ」(アメリカ、イギリスのほかにカナダ、オーストラリア、ニュージーランド)との関係を重視する戦略に転換するものと思われる。

 また、EUに加盟している以上は他国との貿易協定を結ぶことはできなかったが、今後は個別の貿易協定交渉も前に進むことになるだろう。日本との間でもTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)への参加を前提とした交渉が進んでおり、安全保障に関しても共同声明により、すでに準同盟関係が構築されている。また、ブレグジットが確定したことで、イギリスは元宗主国である香港の問題に関しても積極的に関与する体制が整ったといえる。

 いずれにせよ、20年は米大統領選とブレグジットのゆくえが世界的な注目を集め、同時にアメリカが中国および北朝鮮とどのようなディール(取引)を見せるのかが重要なポイントとなりそうだ。

(文=渡邉哲也/経済評論家)

【私の論評】年始早々のソレイマニ氏の殺害は、中国との本格対峙のための前哨戦か?

中国情勢に関しては、このブログでも昨年は様々な内容を掲載させていただきました。その中でも今後の対米関係を最も予感させると思われる記事のリンクを以下に掲載します。
米中貿易「第1段階合意」が中国の完敗である理由―【私の論評】米国の一方的な完勝、中共は米国の要求に応ずることができず、やがて破滅する(゚д゚)!
      昨年12月13日に北京で会見する財政相副大臣の廖岷。重要な会見の
         はずなのに出席者はいずれも副大臣級ばかりだった
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、一部を以下に引用します。米中貿易「第1段階合意」には7項目の合意事項があります。その合意事項の(7)の内容が今後の中国を運命づけるものとなったと私は考えています。
合意項目(7)の「双方による査定・評価と紛争処理」の意味は自ずと分かってくる。要するに今後において、中国側が自らの約束したことをきちんと実行しているかどうかを「査定・評価」し、それに関して双方で「紛争」が起きた場合はいかにそれを「処理」するかのことであろう。中国側の発表では一応「双方による査定・評価」となっているが、実際はむしろ、アメリカ側が一方的に中国側の約束履行を「査定・評価」することとなろう。
これは、はっきり言えば、米国による合意6項目が中国により履行されているかどうかを米国が監視を意味します。企業などでたとえると、外部から監査するようなものです。

米国はこの監査を本気で行うつもりです。その覚悟をナバロ氏やライトハイザー氏が述べています。
中国が「第一段階」の貿易協定に違反すれば米国は一方的報復を行う可能性がある、とホワイトハウスのピーター・ナバロ通商製造政策局長は15日、FOXニュースのエド・ヘンリーに語りました。 
https://www.foxbusiness.com/markets/us-retaliation-phase-one-trade-china
「私が合意で最も気に入っている部分は強制の仕組みだ。それによってもし中国が合意に違反しそれに関して何もできなければ、我々は90日以内に、基本的に一方的に報復できる」とナバロは語った。「だからそのことについては強力な合意だ。中国が約束した2,000億ドル分の農産物、エネルギー・サービス、そして製品を買うか見てみよう。それは最も容易に観察できることだろう――見たままだのことだ」
ナバロは視聴者に、米国がまだ3,700億ドル相当の中国製品に関税をかけていることを思い出させました。 
「これは中国に対話を続けさせるための保険であると同時に、我々の技術的重要資産に対する保護でもある」とナバロは語りました。
ピーター・ナバロ通商製造政策局長

ロバート・ライトハイザー米国通商代表は15日朝のCBS「Face the Nation」で同じことを指摘し、合意には「本当に確かな強制力」があると説明しました。
「最終的にこの合意全体が機能するかどうかは、米国ではなく中国で誰が決定を行うかによって決まるだろう」とライトハイザーは語りました。「強硬派が決定すれば1つの結果を得ることになる。改革派が決定を行うなら、それが我々の希望だが、別の結果を得ることになる。これがこの合意についての考え方であり、2つのとても異なる制度を両者の利益に統合しようという中での第一歩だ」
どのような反応だとしても「相応」となるとライトハイザーは述べました。
これは、以下の6項目に関して、米国が監視するということです。 
 (1)知的財産権に関する合意、(2)中国による技術移転の強要の是正、(3)食品と農産物に関する合意、要するに中国側がアメリカ側の要求に応じてアメリカから大豆や豚肉などの食品・農産物を大量に購入すること、(4)金融サービスに関する合意、アメリカ側が求めている中国国内の金融サービスの外資に対する開放、(5)為替とその透明度に関する合意、(6)貿易拡大に関する合意、中国側はアメリカ側の要求に応じてアメリカからの輸入を大幅に増やすことを約束
そうして、この合意項目が履行されていなければ、90日以内に、基本的に一方的に報復するということです。

(2)、(3)、(6)関しては、中国がすぐに実行しようと思えばできます。他の項目はなかなかできないというのが中国の実情だと思います。これは、資金を投下して政府が掛け声をかけて、できなければ、武力鎮圧して無理にでも実行させれば、できるというものではないからです。

これを実行するには、ある程度以上の民主化、政治と経済の分離、法治国家化は避けて通れません。中共自体がこのような経験が全くありません。中共幹部には、何をどうしたら良いのかさえ理解していないかもしれません。それに、実行すれば、中共は国内で統治の正当性を失い崩壊する可能性が大きいです。

上の記事にもあるように、今回は中国側が大きく妥協したことにより合意に至ったのですが、その内容を中国側が履行しなければ、米国は再び関税強化に踏み切ることを明言しています。さらに、複数回に分割される可能性も浮上している第2段階の合意についても、米国は中国が第1段階の合意内容を履行してからだとしています。つまり、交渉の本番は今年なのです。

中国側が、従来のようなつもりで、これを上辺だけ実行したようにみせかけても、米国は納得しないでしょう。そんなことは、中国のWTO加盟後の中国の不誠実な対応で懲りています。

であれば、もうすでに3ヶ月後(今年3月以降)には、米国から報復されることはほぼ確定です。これは、バブル崩壊中の中国を追い詰めることになります。これによって、中共崩壊へまっしぐらということにもなりかねません。

一方、トランプ大統領としては、中国問題がメインであり、北朝鮮、韓国はその従属関数程度にとらえていることでしょう。

なぜそうなのかといえば、米国民にとって一番の関心事は、経済だからでしょう。これは、日本でも同じことです。いや、世界中の国々がそうです。

多くの国の国民にとって経済、もっといえば暮らし向きが一番大事なのです。大多数の国民が、大金持ちにはなれなくても、努力すれば正当に報われ、将来に期待を持てるような政治を為政者が実行してくれれば、大多数の国民は満足なのです。

ただし、無論将来に期待を持てるようにするためには、安全保証も大事なことです。ただし、先立つのは国内経済なのです。本格的な総力戦にでもならない限り、これはどこの国でも同じことです。

しかし、中国が不公正な貿易や、技術の剽窃や安全保障の面で米国を脅かしつつあったので、トランプ氏は中国を叩くことを最優先したのです。

考えてみれば、韓国など日本の東京都と同程度のGDPです。ロシアも同程度です。北朝鮮などさらに小さいです。EU諸国も、EU単位ではなく、国別にみれば、いずれの国も日本よりもGDPが小さいです。

中東も同じです。サウジアラビアのGDP(国内総生産)は、世界で18番目です。ところが、米国のペンシルベニア州よりも少ないです。2017年のサウジアラビアのGDPは約6830億ドル、ペンシルベニア州のGDPは7520億ドルでした。そして、ペンシルベニア州のGDPはアメリカ50州のうち6位です。

中国は1人あたりのGDPでは、まだまだ低くく中進国の中でも低レベルですが、それにしても国レベルでいえば、人口は、13.86億人で14億人に迫る勢いで、GDPも米国についで世界第二位です。中国共産党は、この経済を裏付けに他国にはできないこともできるのです。中国のみが現在では米国の安全保障と、経済を大きく脅かす存在なのです。

このような事実をみると、米国が中国問題をメインとして、他は従属関数と考えるのは当然といえば当然です。これをトランプ大統領は「米国第一主義」と表現しているのです。そう考えれば、トランプ氏の言うことは何も矛盾していません。米国第一主義を貫くためにこそ、中国と対峙するのです。他は従属関数に過ぎないのです。


現在、北朝鮮は核を保有しているとはいえ、金正恩は、金王朝存続のために中国の干渉をひどく嫌っています。そのため、結果として北朝鮮とその核の存在が、中国の朝鮮半島全体への浸透を防いでいます。

しかし、このバランスが崩れ、中国、北朝鮮、韓国が協力関係を強め、中国主導で38度線を有名無実とし、米国と対峙したり、同盟国である日本に攻勢を強める様子をみせたりすれば、トランプ大統領は、躊躇することなく、中国と直接の軍事対決は避けつつ北朝鮮を攻撃するでしょう。

そうして、そのときはサラフィー・ジハード主義組織ISILの指導者バクダディや、イラン革命防衛隊のコッズ部隊を率いていたソレイマニ司令官を殺害したように、金正恩を斬首することでしょう。場合によっては、他の幹部も狙い撃ちするかもしれません。

これにより、米国は習近平ならびに、中共幹部にかなりの衝撃を与えることになります。米国との合意事項を守ることと、命を失うことのいずれを選ぶのかということになれば、たとえ、中共が崩壊しても合意事項を守るということになるでしょう。

年始早々の、ソレイマニ氏の殺害は、今年3月以降に考えられる、中国との本格的対峙に備えるための前哨戦のようなものと捉えるべきです。実際、米国はイラン精鋭部隊、革命防衛隊のソレイマニ司令官をイラクで殺害し中東地域で緊張が高まる中、イラクのメディアはアメリカ軍が3日、現地の民兵組織を標的にした新たな攻撃を行い、6人が殺害されたと伝えています。

米国のニューズウィークは、国防総省関係者の話として、攻撃はシーア派民兵組織「イマーム・アリ旅団」の指導者を標的に行われ高い確率で殺害したとみられると伝えています。

「イマーム・アリ旅団」は、イラクの複数のシーア派民兵組織で構成される「人民動員隊」の中の有力部隊で、ニューズウィークによりますと、今回の攻撃はイランの精鋭部隊、革命防衛隊のソレイマニ司令官を殺害した作戦の一環として、2日にトランプ大統領が承認したということです。


トランプ大統領は、今年3月以降の中国との対峙に備えて、中東における脅威を少しでも減らしておくため、年初に攻勢にでたものと見られます。


2020年1月3日金曜日

トランプ大統領の指示でイラン精鋭部隊司令官を殺害-米国防総省―【私の論評】半年前に米軍の大型無人機が革命防衛隊によって撃墜された大事件の報復か?事態は急展開(゚д゚)!

トランプ大統領の指示でイラン精鋭部隊司令官を殺害-米国防総省

ソレイマニ司令官は革命防衛隊のコッズ部隊を率いていた有力者

イランは反撃を迫る「強い圧力」にさらされる-元CIAのピラー氏

トランプ米大統領が命じた米軍によるイラクでの空爆でイランの精鋭部隊、革命防衛隊の司令官1人が死亡した。米国とイランとの対立が深まる恐れがある。


米国防総省は2日夜、トランプ大統領の指示を受けたバグダッド国際空港付近での空爆により、革命防衛隊の有力者ソレイマニ司令官が死亡したと発表。ソレイマニ司令官は「米国の外交官やイラクや中東に駐留する米軍を攻撃する計画を積極的に策定していた」と説明した。

ソレイマニ司令官殺害を受け、米国とイランの緊張の高まりが他国も巻き込みかねない武力衝突につながるとの懸念が強まった。米株価指数先物と3日のアジア株はこのニュースを受けて反落。原油相場は急伸した。安全資産需要が強まり米国債先物と円がいずれも上昇している。

イランの最高指導者ハメネイ師は、ソレイマニ司令官を殺害した者に対する「手厳しい報復」を表明。国営タスニム通信によれば、同国政府は3日間の服喪を宣言した。

イランのザリフ外相はツイッターで、米軍による同司令官殺害を「国際的なテロ行為」と非難。「米国は不正な冒険主義の結果について全責任を負うことになる」とし、「極めて危険で愚かなエスカレーション」だと批判した。

トランプ大統領は現時点でコメントを出していないが、米国の星条旗の画像をツイートしている。


革命防衛隊コッズ部隊を率いていたソレイマニ氏

革命防衛隊コッズ部隊を率いていたソレイマニ氏は、イラン・イラク戦争の兵役経験者で、イラクとシリアにおける過激派組織「イスラム国(IS)」打倒に尽力し、米国の影響力に対抗する人物としてイランで称賛される著名人。ジョージタウン大学のシニアフェローで、米中央情報局(CIA)元職員のポール・ピラー氏は、イランは反撃を迫る「強い圧力」にさらされるだろうと述べ、対立がエスカレートする可能性はにわかに高まったと指摘した。

原題:Top Iranian Commander Killed in U.S. Airstrike on Trump Orders (抜粋)

【私の論評】半年前に米軍の大型無人機が革命防衛隊によって撃墜された大事件の報復か?事態は急展開(゚д゚)!

コッズ部隊はイランの革命防衛隊の国外介入用特殊部隊です。ソレイマニ司令官は将来を嘱望されていたエリート中のエリートで、その殺害はイランに非常に大きな衝撃を与えたはずです。

何らかの報復は必至で、米国は戦争をも覚悟した強い意志を持って作戦を決行したのでしょう。半年前にホルムズ海峡でアメリカ軍の大型無人機が革命防衛隊によって撃墜される大事件がありましたが、その報復を結果的に達成したことになります。

昨年撃墜されたとみられる米軍の無人偵察機「RQ─4Aグローバルホーク」の同型機

イランは無人機撃墜だけでなくコッズ部隊の支援を与えたシーア派民兵組織「カタイブ・ヒズボラ」によるイラクのキルクーク近くの基地襲撃などアメリカ軍への攻撃を繰り返しており、報復の連鎖が続いています。

今回の攻撃ではイランのソレイマニ司令官と一緒に「カタイブ・ヒズボラ」の指導者も殺害されています。ソレイマニがイラクに居たのは大規模な対米テロ作戦の指揮を執る為だったと思われます。
わずか数ヶ月間にイスラム国指導者バグダディに次ぎ世界最大のテロ支援国家イランのスレイマニ司令官を殺害したのですから、トランプ政権にとっては大成果です。これは、いずれトランプ大統領の支持率が、パグダディ殺害のときに上がった時のように上がるでしょう。

このブログでも掲載したように、イスラム国指導者バグダディを「厳格な宗教学者」と記したワシントンポスト紙は、世界的テロリストの筆頭格であったイラン革命防衛隊クドゥス部隊のスレイマーニー司令官を「最も尊敬された軍事指導者」と描写。左派メディアにとって反米テロリストは英雄だということのようです。



一方では、トップが死んでもイスラム過激派テロのイデオロギーもメカニズムも残存するのが実態です。それでもテロと戦い続けるしかないのです。

日本のメディアもおかしげな、報道をしているところもあります。代表的なのは、時事です。

時事通信はスレイマーニー暗殺について「関係各国・組織から3日、米国を非難する声が相次いだ」とあたかも国際世論が反米であるかのような記事を出し印象操作をしています。非難しているのはイラン影響下にあるシリア、ヒズボラ、ハマスとロシアのみです。


ソレイマニがこれまでシリアとイラクでどれほど多くの人々を虐殺してきて、これからも虐殺していったであろうことを知れば、ソレイマニ排除こそ人道的な措置とも言えます。

イラン最高指導者ハメネイ師、ローハーニー大統領らはスレイマーニー司令官の報復を宣言、現在報復作戦を検討中と伝えられています。イラクのアブドゥルマフディ首相も暗殺を実行したアメリカを非難する声明を発表しました。米国当局は在イラクの米国人に即時出国を要請しました。事態は急展開しています。


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2020年1月2日木曜日

安倍首相、任期中の改憲「黄信号」 窮屈な日程…打開には総裁4選か―【私の論評】任期中の改憲には、時間の壁と、もう一つ大きな経済という壁がある(゚д゚)!


参院予算委で答弁する安倍首相

 安倍晋三首相の自民党総裁任期満了が来年9月末に迫る中、悲願の憲法改正にどれだけ近づけるかが今年の焦点となる。ただ、昨年の臨時国会で改憲手続きを定めた国民投票法改正案の採決は見送られ、改憲日程はすでに想定よりも大幅に遅れている。自民党内には早くも、首相が改憲を実現するには総裁任期の延長が必要だとの声も出始めている。

国民投票法改正案で誤算

 「首相の任期中の改憲はすでに黄信号だ」

 自民党の衆院憲法審メンバーはこう語る。自民党は昨年の臨時国会で国民投票法改正案を成立させた上で、今年の通常国会から憲法改正原案の作成に向けた本格議論に入る青写真を描いていた。改憲原案の議論には少なくとも2国会を要するとされることから、発議に持ち込むのは最速でも今秋にも開かれる臨時国会の終盤という目算だった。

 しかし、昨年の臨時国会では首相主催の「桜を見る会」の疑惑などが影響し、改正案の採決は見送られた。自民党は20日召集見通しの通常国会で改正案の成立を図ると同時に、改憲の本体議論を並行させることで巻き返しを図りたい考えだ。

 ただ、議論の場となる衆参の憲法審査会が始動するのは、令和2年度予算成立後の4月以降になる見通しだ。7月には東京都知事選や東京五輪が控えているため会期延長も想定できず、審議時間は限られる。野党が昨年の臨時国会のような遅滞戦術に出る公算も大きく、通常国会は改正案の成立で手いっぱいというのが実情だ。


 それでも、これが実現できれば首相任期中の改憲の目は残る。国民投票は国会発議後60日から180日の間に行う。今秋の臨時国会で改憲原案を国会に提示し、来年の通常国会で発議すれば、ぎりぎりながら任期満了前の国民投票は可能だ。

原案すり合わせだけでも…

 しかし、それも一筋縄にはいかない。国民投票で賛成多数とする上でも改憲原案は超党派で国会に提示するのが理想だが、安倍政権下での改憲に反対する立憲民主党などの野党が乗ってくる気配はない。

 自民党は連立を組む公明党や改憲に前向きな日本維新の会などとの共同提出を念頭に置くが、公明党にしても憲法9条への自衛隊明記など自民党が示す改憲案に賛同しているわけではない。改憲原案のすり合わせだけを考えても相当の時間がかかる見通しだが、与党間で本格的に協議している形跡はない。

 首相は改憲について「必ずや私の手で成し遂げたい」と公言している。改憲までの道のりは綱渡りだが、自民党中堅は「今年中に衆院解散・総選挙を行って勝利し、党総裁4選を認めさせるしか方法はない」と話している。

【私の論評】任期中の改憲には、時間の壁と、もう一つ大きな経済という壁がある(゚д゚)!

上の記事を簡単にまとめてしまうと、憲法改正議論が遅れているので、このままでは時間の壁により、安倍総理は任期中に、宿願の憲法改正ができない可能性がある。その壁を克服するには、総裁四選をするしかないというものです。

しかし、たとえ安倍総理が4選を果たしたとしても、なお大きな壁があります。それは、経済の悪化です。今年の秋頃には確実に景気が下降しているのは確実です。それについては、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【日本の解き方】令和元年の日本経済を冷やした“最悪のタイミング”での消費増税 景気対策は1度では済まない―【私の論評】すでにあらゆる数値が悪化!政府の景気対策は明らかに後手にまわり、手遅れに(゚д゚)!
浅草仲見世通り昨年暮れから新春のような賑わいをみせていた


詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事の結論部分のみを引用します。

そもそも補正予算の成立が遅すぎるのです。増税に伴う景気減速が目に見えていたにもかかわらず、10~12月の臨時国会での補正予算成立を目指さず、政府は1月20日に召集される通常国会での早期成立を目指す姿勢です。 
仮に1月中に補正予算が成立しても、実際に予算が執行されるのは年度末の3月になってしまいます。つまり、増税から半年も追加対策を打てぬまま時間が過ぎてしまうわけです。 
高橋洋一氏が冒頭の記事で主張するように、景気対策を一度で済ますことなく、来年度(’20年度)の補正もすぐさま打たないと景気の下支えは難しいです。政府の対策が後手に回っているのは明らかです。 
’20年はオリンピックイヤー。東京五輪直前にテレビをはじめ、家電の駆け込み需要が発生する可能性もありますが、「6月にはキャッシュレス決済のポイント還元制度が終了して消費の落ち込みが一層激しくなり、さらに五輪後にはインバウンド需要が急速に萎むでしょう。 
そうして、本格的な景気後退局面入りになるのは明らかです。果たして、いつまで安倍政権は「緩やかに回復している」と言い続けられるのでしょうか。 令和2年の日本は、いまののままでは、経済がかなり落ち込むことを覚悟をすべきです。
 自民党の規則では4選は禁じられているため、安倍現総裁の任期も最長で令和3年の9月までとなります。そして10月には衆議院議員も前回の選挙から4年がたち、任期満了となるため、それまでに動きを見せるという意味では、令和3年の冒頭までに総選挙を行うことは十分に考えられます。

私自身は、IR問題が起こる前には、来年1月解散、2月総選挙であると睨んでいました。その根拠としては、経済が落ち込む前に大規模な経済対策などを打つことを公約として、選挙をすれば十分に勝つ可能性があるからです。

秋以降だと、たとえある程度大規模な経済対策を実施したにしても、実施開始は4月以降ですから、経済がかなり落ち込むのは、目に見えているからです。しかし、IR問題が出てきたので、この線は崩れる可能性もあります。

いずれにしても、安倍政権は憲法改正を確実に成功させるためには、経済の底上げをして、衆院で勝利して、憲法改正勢力を2/3以上にしておく必要があります。


安倍政権は国会で改憲勢力が2/3以上にならなければ、改憲できない

私としては、安倍政権が憲法改正を確実にしたいというのなら、総裁四選は無論のこと、国民誰もが経済が浮揚すると思える経済対策を打つべきだと思います。

そのためには、一見夢物語にも思える、消費税を5%に戻すという案も俎上に乗せるべきと思います。そもそも、消費税を上げると景気が悪くなるから経済対策を実行するというのが、おかしなことです。経済が悪くなるとわかっているなら、増税などしなければ良いのです。

今回の10%でまた景気が悪化すれば、多くの国民は消費税増税は大失敗だったと認識するようになると考えられます。

それに、消費税を5%に戻すことができれば、日本でも景気が悪くなれば、減税などの積極財政を実施、景気が加熱すれば、増税などの緊縮財政を実行するなど、米英などでは当たり前の、機動的財政政策ができるようになるでしょう。

ただし、これには、増税しないと財政破綻するなどという、財務省の大嘘も論破しなければなりません。安倍政権が憲法改正をしたいというのなら、これは避けて通れないでしょう。

さらに、日銀法も改正して、日本国の金融政策の目標は政府が定め、日銀は専門家的な立場から、それを実行するための手段を自由に選べるようにすべきです。何しろ、これこそが、世界標準の中央銀行の独立性なのですから、そうすべきです。

そうして、早急に従来の異次元の金融緩和に戻すべきです。それに、経済対策としては、こちらのほうがより重要です。なぜなら、政府がいくら積極財政をとろうと、日銀が金融引き締めをしていれば、市場で流通するマネーは減衰するからです。これらによって、経済が回復すると市場が確信すれば、まずは株価が上がりはじます。そうして、衆院での自民党の勝利も確実になります。

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