2020年1月28日火曜日

「コロナウイルス大流行」が貿易戦争完敗の中国にトドメを刺すか―【私の論評】今年は新型肺炎で、文・習・金の運命が大きく変わる(゚д゚)!

「コロナウイルス大流行」が貿易戦争完敗の中国にトドメを刺すか



米中貿易戦争は習近平の完敗だ

 2018年9月24日の記事「米中冷戦、食糧もエネルギーも輸入依存の中国全面降伏で終わる」で、米中貿易戦争は、「トランプ大統領(米国)の圧勝」、「習近平国家主席(中国)の惨敗」で終わるであろうと述べたが、それがいよいよ現実のものになりそうである。

新型コロナウイルス「中国の情報隠蔽」を考えて患者数を予測したら…

 共産主義中国に忖度した日本のオールド・メディアは、習近平氏の体面を取り繕うために、1月15日に米中によって署名された「第1段階の合意」がいかにも引き分けのように取り繕っている。

 しかし、いつもは「大本営発表」ならぬ「共産党発表」で、ありもしない成果をプロパガンダする中国共産党が、今回は静かで、中国内の報道そのものさえ規制しようとしている。これは、「習近平惨敗」の事実を、中国人民に隠すためのものと思われる。


 あの北朝鮮でさえ、金正恩斬首作戦の実現性を証明した、イラクにおけるイランのソレイマニ司令官斬首作戦の事実を隠しきれず、国民のほとんどが知ることになった段階で公にしている。

 いずれ「習近平惨敗」の事実が国民の間に広がれば、香港・台湾における「民主主義渇望のうねり」で、政治的に厳しい状況に追い込まれているだけではなく、武漢から始まった「新型コロナウィルス」の流行で「泣きっ面にハチ」状態の習近平政権崩壊は意外に近いかもしれない。

 「新型コロナウィルス」は、自然の不可抗力ではあるが、習近平政権の対策は、楽観的な見通しに終始し情報公開に消極的であった。

 2002年から流行が始まったSARSの大騒動での学習効果があるため、少しはましになったが、共産党の隠ぺい体質が流行を広げた人災といってよいであろう。

 このままの状態では、世界的大流行が避けられないかもしれない。

 そうなれば、習近平政権は海外だけではなく、国内の被害者からも厳しい批判を浴びるだろう。

どのように惨敗したか

 「第1段階の合意」の内容をきちんと分析すれば、「引き分け」などという解釈の入る余地はなく、中国の惨敗、米国の圧勝であることは明らかである。

 まず、米国は署名に先立って共産主義中国に対する「為替操作国」の認定を解除している。

 中国が為替操作国に認定されたのは昨年8月であるが、米国財務省の為替報告書によれば、それ以来中国は米国に恭順の意を示し、「市場介入をほとんど手控えたようだ」とされる。

 つまり、今回の為替操作国からの解除は、「恭順の意を示した中国」に対して、米国が「そろそろ勘弁してやろう」と寛容な態度を示しただけなのだ。

 もちろん、共産主義中国の言葉など信用しないトランプ氏は、保全措置を講じている。

 「中国が人民元切り下げを行わないという『実行可能なコミットメント』を行ったほか、為替のデータ公表に同意した」ため解除したのだと説明している。つまり、「自国の為替市場を米国の厳重な監視下に置く」ことに同意をしたのにも等しい。

 これは、単純に為替操作国に認定されるよりも厳しい状況であるから、習近平氏が国民に隠したい事情も良くわかる。

 ちなみに、米国がウォッチしている対象国は、20ヵ国ほどであるが、中国の解除で「為替操作国」はなくなった。なお、「監視対象国」には引き続き中国が含まれる。

米国は何も失っていない

 さらに、1月15日に署名された合意内容には、

 1.「中国政府による米国の技術と企業機密の窃取に対する取り締まりの強化」
 2.「農産物の2017年(貿易戦争開始前)の水準に比べて倍以上の輸入増加」

 など多数かつ重要な中国側の譲歩内容が含まれる。

 特に、対米貿易黒字の縮小に向けた中国による今後2年間で2000億ドル(うち農産品は320億ドル)相当の追加購入計画は重要だ。

 この合意に基づいて、中国は米国からの農産物の輸入を最初の1年で125億ドル、2年目は195億ドル増やすと表明した。この額(合計320億ドル)を、貿易戦争が始まる前の2017年に中国が輸入していた240億ドルに上乗せするので、輸入額は2017年当時の倍以上になる。

 11月に大統領選挙を控えたトランプ氏にとって、農民票は極めて重要で、その確保の道筋をつけたのだから、上機嫌であるはずである。

 それに対して、資源、エネルギー、軍備、人材その他あらゆる分野で米国に太刀打ちできない中国の「数少ない切り札」である「農産物輸入カード」をトランプ氏に献上せざるを得なかった習近平氏の機嫌が悪いのも当然だ。

 その見返りに米国が提供するのは、昨年9月に発動した制裁第4弾のスマートフォンやパソコンの部品、衣類や靴といった日用品などの中国製品に課した追加関税15%を7.5%に引き下げることくらいだ。

 さらに、これらの合意の実行を、監視・担保する制度も盛り込まれ、実行されなければ、合意内容は取り消される可能性がある。

 忘れてはならないの、この貿易戦争を仕掛けたのは米国であり、第1弾から第4弾までの関税は米国が一方的に設定したものだ。その米国の都合で一方的に「追加」したた関税のごく一部を「微調整」するだけで、これだけの成果を得たのだ(1弾~3弾は25%の制裁関税率を堅持している)。

 つまり、貿易戦争と名付けられた「実質的経済制裁」に音をあげた共産主義中国が「後生ですから緩和してください」と泣きを入れて、「貢物」を差し出したのに対して、トランプ政権は「制裁のごく一部の緩和」で応じたのだ。

 このような見事な「トランプ流交渉術」には驚かされる。1月16日の記事「勝つためには手段を選ばない男・トランプとは何者か…ルーツを探る」で述べた様に、基本的に政治家というよりもビジネスマンであるトランプ氏は、面子よりも実利を大事にする。

 だから、習近平氏の面子を保つ手伝いをすることなど朝飯前であるし、それによって「大きな実利」を手に入れたわけである。

習近平政権は断崖絶壁に追い込まれている

 1月20日の記事「香港大騒乱、台湾・蔡氏圧勝でアジアの春はやってくるのか」で述べた様に、「アジアの春」とも呼ぶべき「民主主義を渇望するうねり」に対して習近平政権はなすすべがない。

 香港では、5大要求のうち1つにしか応じないものの、天安門大虐殺(事件)の時のように戦車で国民をひき殺すような荒療治もできず、指をくわえて見ている。区議会議員選挙での親中派の惨敗は大きな痛手である。

 さらに、台湾総統選挙での蔡氏圧勝がダメ押しとなった。

 ニュージーランドやオーストラリアでも、政治・選挙に関する干渉を行っているくらいであるから、両選挙への中国共産党の干渉はすさまじいものであったはずだが、それでも「民主主義渇望のうねり」を抑え込むことができなかったのだ。「打つ手がない」というのが習政権の現状であろう。

 さらには、12月24日の記事「ウイグル人権法案、じつは『日本企業』が他人事とはいえない可能性」で述べた様に、米国をはじめとする諸外国から「天井の無いアウシュビッツ」として批判されるウイグルやチベットなどでの人権問題も重くのしかかる。

 鄧小平による改革・解放が軌道に乗る前の中国は、当時鉱物資源の開発収入が比較的多かった北朝鮮よりも貧しかった。さらに、「竹のカーテン」を引いた鎖国状態で8000万人(西側推定、人為的飢餓を含む)もの人民を虐殺したとされる。

 これまでの動きを見ると、経済でも政治でも「毛沢東暗黒時代」への回帰が避けられないようだ。

 しかし、香港・台湾だけではなく、天井の無いアウシュビッツとも呼ばれるウイグルやチベットなの虐げられた人々、そして「民主主義を愛する人々」にとっては「世界最大の民主主義の敵」の崩壊は朗報である。

クリスマスプレゼント未遂の金正恩の運命

 このように追い込まれている習近平政権に、朝鮮半島の国々にかまう余裕はないといえるだろう。

 トランプ氏の真意を誤解し、「クリスマスプレゼントを楽しみにしていろよな!」という大言壮語を吐いた金正恩氏は、クリスマス前に公開(流出? )された、米国と韓国の合同で行われた「斬首作戦ビデオ」におびえることになる。

 その結果、年末の異例(通常は1日)の4日間にわたる朝鮮労働党中央委員会第7期第5回総会で、プレゼント作戦失敗のごまかしとクーデタ対策を行うことになる(クーデタ首謀者になりうる人間を自分の目の前に集めたことになる)。さらには、恒例の自身の言葉による「新年の辞」を、「総会の報告」に代えてお茶を濁した。

 また、韓国の文在寅政権も、これでもかこれでもかという問題を抱えて悲惨である。

 まず、文在寅氏自身と取り巻きに迫りくる検察の捜査妨害に躍起だ。なりふり構わぬ人事などで、当面の検察の攻勢をかわすことができるかもしれないが、その姿を見ている国民は4月15日の総選挙でどのように判断するであろうか? 

 さらには、文政権の従北ぶりを見かねたハリス駐韓米大使の「韓国の北朝鮮政策に関する親切な忠告」に逆切れして、大使の母親が日本人という出自や口ひげにまで文句をつけるありさまだ。米国は、2015年の「リッパート駐韓米大使襲撃事件」を忘れたわけではない。

 この事件でリッパート氏は、あと1~2センチずれたら死に至るという傷を受け、「この攻撃は私個人に対するものではなく、米国という国家に対するものだ」と発言したともいわれる。朴槿恵大統領とオバマ大統領の話し合いによって、大きな政治問題になることは回避できたが、文在寅大統領とトランプ大統領の間の意思の疎通はないに等しく、小さな火種が「大政治問題になる可能性」がある。

在韓米軍撤退と斬首作戦

 追い詰められた習近平政権と混迷の極にある朝鮮半島の南北国家の状況を考えれば「在韓米軍撤退と引き換えに、金正恩斬首作戦と米傀儡政権の樹立容認」を中国が行うというシナリオも荒唐無稽ではなくなってきた。

 在韓米軍は、中国への牽制という意味合いもある。しかし、本来は共産主義独裁国家である北朝鮮に対抗するために駐留しているのだから、北の共産主義独裁政権が打倒されれば、駐留する意味がなくなる。

 もともと、第2次世界大戦後、米国は「日本海が重要な防衛ライン」だと公言していた。しかし、そのメッセージを誤って受け取った金日成氏が、米国は介入しないであろうと判断し韓国を侵略した。

 そこで、朝鮮戦争が始まり、第2次世界大戦が終わったばかりで戦争はもうこりごりだと思っていた米国も、共産主義陣営による民主主義陣営の侵略を認めることができないために参戦した。しかも、その朝鮮戦争は「休戦」という形でいまだに続いているので、米国としても韓国から撤退するわけにはいかないのだ。

 つまり、在韓米軍はいってみれば、「事故の結果」駐留するようになったのであり、北朝鮮がクーデタや斬首作戦で崩壊し、親米政権が樹立されれば必要がない。もとの「日本海防衛路線」に戻るだけだ。

 また、現在の文政権を「共産主義の侵略から守るべき自由主義陣営」と呼ぶのは極めて難しい。

 金正恩氏同様、文在寅氏も「自分の首」の心配をする必要がありそうだ。

大原 浩(国際投資アナリスト)

【私の論評】今年は新型肺炎で、文・習・金の運命が大きく変わる(゚д゚)!

米中貿易交渉「第1段階の合意」が、中国側の完膚なきまでの敗北であり、米国の完全勝利だったことについては、このブログでも述べたことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
米中貿易「第1段階合意」が中国の完敗である理由―【私の論評】米国の一方的な完勝、中共は米国の要求に応ずることができず、やがて破滅する(゚д゚)!
       13日に北京で会見する財政相副大臣の廖岷。重要な会見の
       はずなのに出席者はいずれも副大臣級ばかりだった

この記事は、評論家の石平氏の記事を元記事として、私自身の考えを述べたのですが、石平氏も昨年12月の米中合意は、合意とは名ばかりであり、中国の完敗としています。

これは、合意内容そのものを読んだだけでもわかります。日本のメディアはそのようなことは報道せず、淡々と合意内容の事実のみを報道するのみで、あれではまるで引き分けのような印象を受けてしまいますが、内容は不平等条約と言っても良いくらいの、米国の一方的な大勝利でした。

ブログ冒頭の記事にもあるように、米国は署名に先立って共産主義中国に対する「為替操作国」の認定を解除しています。これに関しては、私の見方は、上の記事「大原 浩」氏とは別の見方をしているのですが、ここでは話の本筋から離れてしまうので。詳細は説明しません。

これについては、このブログにも以前掲載したことがあり、【関連記事】のところに当該記事を掲載しておきますので、興味のある方はこれを是非ご覧になってください。

さて、話を整理すると、中国は最近は負けが込んでいます。しかも、昨年の暮れ近くから現在まで、負け続けと言っても良いです。

昨年11月には、香港区議会議員選挙で大敗しました。次には、1月11日の台湾総選挙でも親中派は大敗北ました。中国は、これらの選挙に大規模に介入しているにもかかわらず、大敗北です。

習近平の中国は、まさに面目を叩き潰されたというのが実情でしょう。そうして、今度は、新型肺炎による不手際が明るみに出つつあります。現状では、まだ新型肺炎が蔓延しつつあり、各国もそれに対する対策に腐心していることや、中国が発生源ということで、大きな被害を被っていることから、現状では中国指導部に対する批判の声は大きくはありません。

しかし、一度これが収束すれば、一昨日もこのブログで指摘したように、SARSに続き、今回も似たようなことを繰り返したWHOと中国は、世界から糾弾されることになるでしょう。糾弾どころか、これから犠牲者が増えれば、増えるほど、国内外から怨嗟の声があがることでしょう。

そうして、この糾弾や怨嗟は、現在の習近平政権を揺るがすことは間違いないです。米国としても、これを許容することはしないでしょう。中国が貿易協定の合意を守らなければ、トランプ政権としてはさらに制裁を厳しくすることになるでしょう。

それでも、中国がある程度の民主化、政治と経済の分離、法治国家化をすすめることがなければ、ためらわずに次の制裁に打ってでて、中国が他国に影響が及ぼせないくらいまで、経済的に弱体化するまで制裁を続けることでしょう。中国を第2のソ連にするくらいまで、制裁を続けるでしょう。

中国が頑なに、体制を変えなければ、このブログにも以前にも示したとおり、中国に対してかなり思い切った軍事作戦を敢行するかもしれません。ただし、それは中国に対して直接軍事攻撃を行うというものではなく、北朝鮮に対する軍事攻撃です。

その目的は、無論核をいつまでも撤去しない北朝鮮に対して核を無力化するものですが、それは、日本の報道機関の報道する表向きの理由です。その本質は、金正恩と幹部を殺害することにより、中国を強く牽制することです。

この斬首作戦が成功すれば、中国共産党は無論大パニックになるはずです。習近平と幹部らは、斬首されるか、貿易交渉の合意を守るかどちらかを選ぶことを迫られることになります。そうなれば、中国で政変が起こるかもしれません。

その時期は、無論新型肺炎が終息してからになります。それには、数カ月はかかるでしょう。

いずれにせよ、習近平体制は崩れることになるでしょう。崩れなかったとすれば、中国の崩壊も視野にいれなければならなくなるでしょう。

それは、中国崩壊自体が間近に迫っているいることを意味するかもしれないからです。誰も、最期の皇帝役などつとめたくありません。すべての幹部は、習近平を悪者に仕立てて、自己保身を図ることに邁進していることを示しているかもしれないからです。

そうして、日本の報道機関は全く報道しませんが、現在北朝鮮と北朝鮮の核は、結果として、中国の朝鮮半島への侵入を防いでいます。北朝鮮の核ミサイルは、韓国や日米だけではなく、北京等をも狙っているからです。

このブログでは過去に何度か、掲載してきたように、実は金王朝を継続したい金正恩は、中国の干渉を極度に嫌っています。

もし北が核武装をしていなければ、金王朝はとうに崩れて、朝鮮半島全体が中国の派遣の及ぶ範囲になっていたかもしれません。

最後に、韓国ですが、米軍が北を攻撃して、金正恩らを斬首し、核施設などを破壊した後には、米国は北朝鮮に親米政権ができるように腐心することでしょう。そのときには、北に米軍が中短距離ミサイルを設置できるようにするかもしれません。

そうなると、このブログでかねてから主張してきたように、韓国は安全保障条の単なる空き地になることが予想されます。要するに安全保障上では、日米にとって関係のない空き地のような存在になるということです。

今年は文・習・金の運命が大きく変わる年になるかもしれない・・・・

第二次世界大戦直後は、北朝鮮のほうが韓国よりも、GDPは大きく、韓国より豊かでした。それは、なぜかといえば、日本が朝鮮半島を統治していたころは、産業の中心は現在の北朝鮮のほうであり、韓国は農村がメインの産業だったからです。

韓国が北朝鮮のGDPを追い越したのは、1970年代になってからのことでした。米軍が北を軍事攻撃した後は、当然なから、韓国は軍事的にも、経済的にも空き地のような存在になり、第二次世界大戦直後のように韓国は貧乏な農業国に戻るかもしれません。

ブログ冒頭の大原 浩氏の記事は、私とは表現などは違うものの、結局私が以前からこのブログで主張してきたことと同じであり、まさに我が意を得たりという思いがしました。いずれにせよ、今年は文・習・金の運命が大きく変わる年になることでしょう。

しかし、これくらいのことは、最近の世界情勢を踏まえていれば、誰もが当然のこととする事柄だと思います。日本のマスコミは情けなさ過ぎます。

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2020年1月27日月曜日

習近平「新型肺炎対策」の責任逃れと権謀術数―【私の論評】SARSに続き、今回も似たようなことを繰り返したWHOと中国は、世界から糾弾されて当然(゚д゚)!


中国で新型ウイルス肺炎拡大 各国で警戒

<新型肺炎の被害拡大を防ぐため、共産党政権は対策本部を急きょ設立した。だが、そのメンバー人事は予想外のものだった>

1月25日、中国共産党政治局常務委員会は新型肺炎に関する対策会議を開いた。昨年12月8日に新型肺炎が武漢で発見されて拡散して以来、共産党最高指導部がようやく開いた最初の対策会議なので、その中身が当然注目された。

まず今後の対策について、新華社通信が配信した対策会議の正式発表は冒頭からこう述べる。

「1月25日、中共中央政治局常務委員会は会議を開き、新型肺炎への対策に関する報告を聴取。疫情(疫病情況)の(拡大)防止・コントロール、特に患者の治療についての再研究・再手配・再動員を行なった」

つまり会議は、今後における新型肺炎の拡散防止と治療について、どういう措置をとるのかを研究し、実行のための手配や動員を行なった。ここで注目すべきなのは、「再研究・再手配・再動員」における「再」という言葉の連発である。

その意味するところは、共産党政治局常務委員会が事実上、今までの研究と手配と動員は不十分であることを認めた点にある。今までのやり方は不十分だったからこそ、「再研究・再手配・再動員」が必要となったのであろう。つまり政治局常務委員会は、今までの不手際を間接に認めた上で、対策の見直しや態勢の立て直しを図ろうとしている。

そこで態勢立て直しのためにとった重要な措置の1つが、党中央の「疫情対策指導小組」の設置である。

新型肺炎を防ぐ「指導小組」の疑問点

どういう組織なのかを理解するため、まず「小組」という言葉の意味を簡単に説明しておこう。中国共産党の中央指導部には多くの「小組」が設置されている。日本で言えば「統括本部」あるいは「対策本部」のようなものである。例えば「中央財経指導小組」は党と政府による経済運営・財政運営の統括本部であり、「中央外事工作指導小組」は即ち外交政策とその運営を統括する中国外交の最高司令塔である。

上述の「疫情対策指導小組」は、すなわち党中央新設の「新型肺炎対策本部」であり、党と政府と軍の全力を動員して疫病拡散の阻止や治療を行うという危機対策の司令塔なのである。

今になっての「対策本部」の設置はどう考えても遅すぎた感があるが、設置したこと自体は評価できよう。しかし、発表された「疫情対策指導小組」の中身やその布陣を見ていると、この「指導小組」は果たして、危機対策の司令塔の役割を果たせるのか、かなり疑問だ。

まず一つ不思議なことに、25日に新華社通信に配信された上述の共産党政治局常務委員会の正式発表は、「疫情対策指導小組」の設置を伝えたものの、誰かがこの「小組」の「組長」となっているかに一切言及してない。

何かの対策本部の設置を決めれば、同時にその長となる人事を発表するのは普通だ。事態が緊急である場合はなおさらである。しかし政治局常務委員会はどうやら、「疫情対策指導小組」の設置を決めておきながら、そのトップとなる人選を直ちに決められなかったようである。

「組長人事」はどうして迅速に決められなかったのか。考えられる理由の一つは、習近平国家主席自身を含めて中央指導部の誰もその役割を引き受けたくなかった、ということだ。

本来なら、習自身が「組長」の最適な人選である。国家の一大事への対処に当たって、共産党総書記・国家主席・軍事委員会主席として党国家の最高指導者・軍の最高司令官である彼こそ危機対策の司令塔の司令になるべきであろう。

実際、習は今まで前述の「中央財経指導小組」組長、「中央外事工作指導小組」組長のほかに十数の「組長」を兼任している。組長になることがこれほど好きな彼が今回の「疫情対策指導小組」の組長にならないのは、むしろ異例で筋が通らない。そして最高指導者の彼が進んで組長になろうとすれば、それを止める人も反対する人もいないはずである。しかし最高指導者の習は国家が存亡の危機に直面しているこの肝心な時に、先頭に立つことも全責任を負うことも拒否した模様である。

対策本部トップを引き受けた人物

最高指導者がこの有様では、共産党政権の新型肺炎対策はどこまで機能するか疑問だが、翌日の26日になると、疫情対策指導小組の組長人事がやっと判明した。李克強首相がそれを引き受けたのである。その日、李が組長として「疫情対策指導小組」の第1回目の会議を開いたと伝えられている。

新型肺炎対策本部のトップを押し付けつけられた?李首相(右)と押し付けた?習主席

この人事は普段なら「これでも良い」と思われようが、現在の重大なる緊急事態への対処に当たって決して強力な人事とは言えない。中国の場合、首相とはいっても、党総書記・国家主席・軍事委員会主席という三位一体の最高権力者よりはずっと弱い存在である。ましてや、「習近平一強」「習近平個人独裁」が確立されている現在、李が存在感の薄く権力も小さい、弱い首相であることは周知のとおりである。

この李が組長になっても、危機対策の司令塔としての役割を果たして果たせるかどうかは覚束ない。習ではなく李が組長となった時点で、疫情対策指導小組が強力な指導力を発揮することはもはや期待できなくなった、と言ってもいい。

これだけではない。さらに驚いたのは、李以外の疫情対策指導小組の布陣である。

まず、李の補佐役として指導小組の副組長となっているのは、政治局常務委員の王滬寧である。筆者はこの人事を人民日報で知ったとき、まさに狐に包まれたような異様な感じを受けた。

王は今、党内きっての理論家としてイデオロギーや宣伝を担当している。しかし、学者出身の彼は、地方や中央で政治の実務を担当した経験は一度もない。はっきり言って、理論家の王に今の危機で何らかの問題処理能力を果たすことは全く期待できない。副組長として実務面で李をサポートするはまずあり得ないが、その一方で政治局常務委員として、そして党内のイデオロギーの担当として、李の仕事に余計な口出しをしてくるのは必至だろう。王が副組長となったことで、ただでさえ無力な李はなおさら手足を縛られてしまう。

王を副組長に任命するこの人事を主導したのは当然李ではなく、王に近い習その人であると思われる。つまり習は、李に組長の大役を頼んでおきながら、安心して李に任せるのではなく、王を使って李首相を牽制したいのであろう。

副組長人事だけでなく、指導小組のメンバーの人選にも習の思惑が反映されている。

保健衛生の専門家がいない

新華社通信の発表で判明した指導小組の主要メンバーのうち、党中央弁公室主任の丁薛祥、党中央宣伝部長の黄坤明、北京市党委員会書記の蔡奇の3人がいずれも習の腹心の中の腹心であることは中国政界の常識である。上述の王滬寧を入れると、主要メンバーの半数が習近平派によって固められていることが分かる。

さらに奇妙なことに、主要メンバーには公安部長の趙克志や国務院秘書長の肖捷が入っているが、彼らと同じ大臣(閣僚)クラスの国家衛生健康委員会主任の馬暁偉や、衛生部長の陳竺の名前が見当たらない。

こうしてみると、危機の緊急対策本部としての疫情対策指導小組の人選は、実務重視・実行能力重視の視点から選ばれたわけでは決してなく、むしろ李への牽制という習の政治的思惑からの人事であることが一目瞭然である。

つまり習は国家の緊急事態に際し、自ら先頭に立って危機に当たる勇気もなければ責任感もなく、その責任を首相の李に押し付けてしまった。一方で、李に全権を委ねて李が思う存分仕事できる環境を作ってあげるのでもなく、逆に側近人事を行って李の仕事を牽制し、その手足を縛ろうとしている。

習のリーダーシップはもはや最悪と言うしかなく、この無責任さといい加減さで当面の危機を乗り越えられるわけはない。貧乏くじの役割を引き受けた李も要所要所で習の牽制を受け、きちんとしたリーダーシップを発揮できない。

このような指導体制で、今回の新型肺炎の事態収拾と危機克服は期待できそうもない。状況はまさに絶望的である。

【私の論評】SARSに続き、今回も似たようなことを繰り返したWHOと中国は、世界から糾弾されて当然(゚д゚)!

新型肺炎に関して、WHO(世界保健機構)が非常事態宣言を出さなかった事が激しく糾弾されることになるでしょう。習近平は事態を把握できていなかった可能性もあります。

WHOが大スポンサーの中国共産党を忖度した事が裏目に出たばかりか、台湾の締め出しも非難されることになるでしょう。日本としては世界の先頭に立って台湾のWHO加盟を訴えるべきです。

WHOが大スポンサーの中国共産党を忖度した事については、以下の記事が詳しいです。
「空白の8時間」は何を意味するのか?――習近平の保身が招くパンデミック
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事より、結論部分のみ引用します。
 たとえ「緊急事態宣言」を受けたとしても、パンデミックを起こさないことの方が遥かに重要だと思うが、それを選択できないところに中国の欺瞞的な構造がある。地方政府の危なさと共に、こういった所に「ポキッと折れるかもしれない」中国の脆弱性が潜んでいるのである。 
 このような国の国家主席と「責任を共にすると誓い」、国賓として来日させようとしているのが日本の安倍内閣だ。天皇陛下と握手する場面を全世界にばらまかせることによって、習近平政権のやり方に正当性を与えようとしている。 
 このような状況にあってもなお、習近平を国賓として招聘するなどということが、どれほど恐ろしい未来を日本にそして全世界にもたらすか、安倍内閣は真相を見る目を持つべきだ。 
 野党も何をしているのか。習近平の国賓来日が、どれほど危険な将来をもたらすか、そのことにも目を向けた大局的な国会議論を望む。
日本では、新型のコロナウイルスによる肺炎について、安倍総理大臣は衆議院予算委員会で28日の閣議で、国内で感染が確認された場合、法律に基づいて強制的な入院などの措置を取ることができる「指定感染症」にする方針を明らかにしました。

     新型のコロナウイルスによる肺炎について、衆議院予算委員会で
    「指定感染症」にする方針を明らかにした安倍総理

この中で、安倍総理大臣は「政府としては、感染拡大が進んでいることを踏まえ、これまでに関係閣僚会議を開催し、水際対策のいっそうの徹底、検査体制の整備、国民に対する迅速かつ的確な情報提供、日本人渡航者や滞在者の安全確保などについて関係省庁で連携して、万全の対応をとるよう指示を行った」と述べました。

そのうえで、安倍総理大臣は「感染者に対する入院措置や、公費による適切な医療等を可能とするため、今般の新型コロナウイルスに関する感染症を感染症法上の『指定感染症』などにあすの閣議で指定する方針だ」と述べ、今回の肺炎について、28日の閣議で、国内で感染が確認された場合、法律に基づいて強制的な入院などの措置を取ることができる「指定感染症」にする方針を明らかにしました。

また、安倍総理大臣は中国政府との調整を加速させ、民間のチャーター機などあらゆる手段を通じて現地に滞在する日本人の希望者全員を速やかに帰国させる方針を重ねて明らかにしました。

新型コロナウイルスによる肺炎が「指定感染症」に含まれると、国内で感染が確認された場合、感染症法に基づいて強制的な措置をとることができます。

具体的には、都道府県知事が患者に対して感染症の対策が整った医療機関への入院を勧告し、従わない場合は強制的に入院させられるほか、患者が一定期間、仕事を休むよう指示できるようになります。入院などでかかる医療費は公費で負担されます。

指定の期間は原則1年間で、さらに最大で1年延長することができます。

指定感染症にはこれまでに平成15年に重症急性呼吸器症侯群「SARS」、平成25年にH7N9型の鳥インフルエンザなどが指定され、今回の肺炎が指定されれば平成26年の中東呼吸器症候群「MERS」以来、5例目となります。

指定までにかかる期間について厚生労働省は「過去には、2週間ほどかかった例もあったが、今回はそれよりも早く指定できるようにしたい」としています。

厚生労働省によりますと新型コロナウイルスによる肺炎については、指定感染症だけでなく検疫感染症にも指定される見通しです。

検疫感染症に指定されると、空港や港などの検疫所で感染が疑われる人が見つかった場合、法律に基づいて検査や診察を指示できるようになります。

具体的には、空港や港などで入国者に症状が出ていないかを質問し、感染が疑われる症状があった場合は検査や診察を受けるよう指示できます。

さらに、入国時に感染の疑いがある人については、一定期間、健康状態について報告を求めることができます。

これらに従わない場合は罰則を課すことができます。

日本としては、WHOが非常事態宣言を考慮したのか、新型肺炎に関して対応が鈍かったようですが、ようやく動きはじめました。

            スイス・ジュネーブのWHO本部で開かれた新型コロナウイルスによる肺炎感染に
            関する記者会見で発言するテドロス事務局長(2020年1月22日)

WHOをが非常事態宣言を出さなかったことに考慮したとしても、万が一国内で、新型肺炎が蔓延するようなことにでもなれば、多くの人命が失われたり、経済活動もままなくなるのは明らかなので、このような措置に踏み切ったのでしょう。

2020年に入ってからの27日間で世界は中東戦争の危機、オーストラリアの山火事による大量絶命の危機、新型肺炎によりグローバルパンデミックの危機に直面しているのに、習近平は自らの保身に走ることで、本当に新型肺炎に対処しようとしてるのか、はなはだ疑問です。現在のWHOも自らの使命を果たすつもりがあるのか、疑問です。

世界中の他の国々も続々と、日本政府のような措置をすでにとったか、とりつつあります。WHOの緊急事態宣言がない中で、世界中の国々がこうした措置をとっているのですから、WHOと中国の動きはなんともお粗末というか、現実を直視せず、中国人民に対してだけではなく、他の国々に対する裏切り行為でもあります。

現在は、我が国をはじめ、世界の国々は当面はパンデミックを封じ込めることに集中すべきですが、これが収束した場合には、WHOや中国を徹底的に糾弾すべきです。糾弾するだけではなく、制裁すべきです。

SARS続き、今回も似たようなことを繰り返したWHOと中国は糾弾されて当然です。それでも改めなければ、対中冷戦に本気で取り組んでいる米国のように、他国も中国に対して厳しい制裁を課すべきです。そうして、WHOにも厳しい措置をとるべきです。

中国とWHOがまともにならなければ、世界にはいつまでもパンデミックの危機を拭い去ることはできません。頭が19世紀か、もしかすると18世紀であるかのような両者をこのまま捨置くわけには絶対にいきません。両者とも、本当にかなり痛い目に合わせないと、いつまでも同じことを繰り返すことになるだけです。

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2020年1月26日日曜日

沖縄・豚コレラ殺処分で自衛官が流した涙―【私の論評】すっかり忘れさられたもう一つの疫病「豚コレラ」!中国は元々カントリーリスクが高いことを再認識せよ(゚д゚)!

沖縄・豚コレラ殺処分で自衛官が流した涙

     飼育豚が豚コレラに感染した沖縄県うるま市の養豚場で、防疫作業をする
     県職員と自衛隊員ら=8日午後0時1分(小型無人機から)

陸上自衛隊の松田みずき陸士長(23)は一児の母だ。沖縄県南風原(はえばる)町の出身。敵のミサイルや戦闘機を撃ち落とす03式中距離地対空誘導弾(中SAM)を運用する同県沖縄市の第15高射特科連隊第3中隊に所属している。息子は2歳になった。

1月8日、松田陸士長に思わぬ任務が舞い込んだ。うるま市と沖縄市の養豚場で豚コレラ(CSF)の感染が確認されたたため、県が第15旅団に災害派遣を要請した。これを受け、同旅団は隷下の第15高射特科連隊を中心に部隊を編成した。任務の内容は、豚の殺処分支援や消毒活動だ。

自衛官数人が豚をベニヤ板で囲い込み、獣医のもとへ誘導する。獣医が電気ショックを与えた後、心臓に注射して安楽死させる。死体を仮置き場に運ぶのは自衛官の役割だ。松田陸士長が最初に担当した豚は、おなかに赤ちゃんがいる母豚だった。

「自分も同じ一人の母親として、すごく心が痛かった」

松田陸士長はこう振り返る。周囲には泣いている同僚もいた。第15高射特科連隊本部管理中隊の野上光3等陸曹(29)も涙を流した一人だ。「豚を育てていらっしゃる方のことを思うと涙が出てしまった。最初はちょっと、やっていけるのかなと思った」と語る。

ベテラン自衛官にとっても緊張を強いられる任務だった。自分の地元が危機にさらされているなら、なおさらだ。第15後方支援連隊整備中隊の安慶名光明1等陸曹(49)は豚コレラが発生したうるま市出身。「初めてのことだったので戸惑いもあった」と打ち明ける。同級生の県庁職員を現場で見つけて気持ちが軽くなったが、若い隊員が養豚場の臭いに慣れることができず、気を配らなければならなかった。

殺処分を受ける豚が暴れることも隊員を悩ませた。豚は大きいもので体重300キロを超える。農林水産省担当者は「映画『もののけ姫』にでかいイノシシが出てくるでしょ。あんな感じです」と解説する。松田陸士長と同じ中隊の金城保享1等陸曹(36)は堂々とした体格の自衛官だが、「押さえ込むときにものすごい力を要した」という。

心のケアが課題

第15旅団は8日から20日までの13日間、豚コレラ対策支援のため、約570人の隊員を派遣した。同県内で殺処分された豚は20日時点の県発表で7農場の計9043頭。各養豚場では約35人の小隊規模で6時間交代のローテンションを組み、24時間態勢で「有事」に対処した。

15旅団にとって、懸案の一つは隊員の心の問題だった。昨年、岐阜県や愛知県で豚コレラ感染を受けて殺処分が行われた際は、精神的苦痛を訴える隊員が相次いだという。今回の派遣では心理ケアを専門とする自衛官3人を投入し、一日の任務が終わるたびにミーティングを開いた。どうしても耐えられない隊員は配置転換するなどして対応した。

現地指揮官を務めた第15高射特科連隊長の内村直樹1等陸佐(47)は「その日の任務が終わった後にどう感じたか、つらかったことがないかということを吐き出せた。一人ひとりの隊員に異常がないか、細やかに確認を取った」と説明する。殺処分の際に泣いた野上3等陸曹は、上官から「それは、おかしいことではないんだよ。みんなそうなんだよ」と声をかけられたという。

対象となった7農場の防疫措置が終了したことを受けて陸自の災害派遣が終了した20日、玉城デニー知事(60)は中村裕亮旅団長(54)に「誠にありがとうございました。本当にありがとうございました」と頭を下げた。県畜産課の担当者も「今回ここまでこられたのは、自衛隊の協力があってのことだと実感している」と語る。

活動に疑問の声も

ただ、こうした活動に自衛隊を使うことには疑問の声もある。元陸自東部方面総監の渡部悦和氏(64)は「南西諸島に対する中国の脅威が高まる中で、沖縄を取り巻く状況は非常に厳しい。訓練すべきときに、豚コレラの災害派遣は本当に適切だったのだろうか」と話す。

自衛隊の災害派遣は「公共性」「緊急性」「非代替性」の3要件が満たされたときに都道府県知事が要請できる。「非代替性」とは、自衛隊が派遣される以外に適切な手段がない状態を指す。「各自治体の体力によって『非代替性』があるかどうかの判断は異なる」というのが、防衛省統合幕僚監部の説明だ。

渡部氏は平成16年に京都府で鳥インフルエンザが発生した際の殺処分支援で現地指揮官を務めた経験から「自治体だけではなく、農協や建設業界には人も機材もある中で、すぐに自衛隊にやらせるのはおかしい」と批判する。

ただ、災害派遣は自衛官にとって目に見えて「県民の役に立った」と実感できる貴重な機会ともいえる。

「任務から帰ってきたら、県庁の皆さんから『ありがとうございました』との言葉をいただいて、グッとくるものがあった。『多少きつくてもしようがないやろ』という現場の意見はあった」

派遣隊員ら(左から安慶名1曹、安田1曹、野上3曹、松田陸士長)=20日午後、県庁

第15旅団隷下第51普通科連隊第3中隊の安田翔一1等陸曹(35)はこう語る。

第15高射特科連隊第2中隊長の斎藤祐太3等陸佐(34)は「国民の安心と安全のためにこのような任務につくことができ、任務を完遂できたことをとても誇りに思う」と胸を張った。

【私の論評】すっかり忘れさられたもう一つの疫病「豚コレラ」!中国は元々カントリーリスクが高いことを再認識せよ(゚д゚)!

最近は、中国の新型肺炎ウイルスの蔓延により、日本では豚コレラのことはすっかり忘れラさられたかの如くですが、これも重大な事件です。そうして、後で詳細を述べますが、この豚コレラも中国が発生源とみられています。

陸自の災害派遣が沖縄で終了しました。これは、沖縄豚コレラの新たな発生は食い止められたことを意味します。

上の記事にもある通り、これまでの過程において、自衛隊員はとてつもなく、大変な目にあったようです。自衛隊員の皆様本当にご苦労さまでした。

それにしても、自衛隊が災害派遣されている最中に、本州方面からいつもいらしている、左翼活動家の方々は一体何をしていたのでしょう。沖縄県民のことを本当に考えていらっしゃるなら、沖縄の豚コレラ防疫活動に、ボランティアの形でも参加すべきではなかったでしょうか。

沖縄県としても、自衛隊に頼る前に、これらの人々をボランティアとして、防疫活動に携わさせることなど考えなかったのでしょうか。沖縄といえば、基地反対派の方々が、元気一杯に市民活動に従事されている様子、YouTubeなど(下の動画など)でみかけますが、あの方々は何をしていらしたのでしょうか。


それにしても、何もかも、自衛隊に依存する行政とは何なのでしょうか。災害も豚コレラも鳥インフルエンザも、本来なら行政の仕事のはずです。多くの職員を低賃金の非正規雇用にして、その場しのぎの行政をやっているから、事が起これば自衛隊頼みとなってしまうのでしょう。

自衛隊も大幅に定員不足が続き、個々の隊員の負荷は重いです。本来の訓練に支障も出ることでしょう。本当に沖縄に限らず、各自治体はもしもの場合にどうするのか普段から考えておいていただきたいものです。普段から、各自治体の正職員が、リーダーとなり、ボランティアなどを動員して、いざというときに適切な行動ができるように、普段から訓練しておくべきものと思います。

それでも、災害などの規模大きすぎて、自分たちの手ではどうにもならなかったときに、自衛隊に頼るべきです。沖縄の場合は無論正規職員の一部は防疫活動に従事していてはいたようでしたが、どうだったのか、この観点からも国会などで論議をすべきです。

豚コレラ、アフリカ豚コレラ対策チームとして農水省のみならず、法務省、財務省、法制局、調査室との打ち合わせが連日続いています。来週も予算委員会で与野党対決の場面ばかりが取り上げられると思いますが、食料の安全保障に関しては国会の審議を横目でにらみながら、地道な作業を続けています。具体的にはいかのようなことが実施されています。
・家畜伝染病予防法改正法第一弾(予防的殺処分の対象にアフリカ豚熱を入れる)
・家畜伝染病予防法改正法第二弾(国家防疫体制の強化も含めた総合的な見直し)
・出入国管理及び難民認定法改正法(水際対策のさらなる強化)
・養豚農家振興法の見直し検討など
それにしても、今回の新型肺炎は、無論のこと、この豚コレラの発生源もまだはっきり特定されてわけではないですが、中国だといわれています。

一昨年9月に26年ぶりに発生し、現在も猛威を振るっている豚コレラの感染経路について、農林水産省の疫学調査チームが昨年中間とりまとめを公表しました。中国やその周辺国からの旅行客が不正に肉を持ち込むなどしてウイルスが日本に入り、ウイルスを含む肉が廃棄されて野生イノシシに感染したのが発端になった可能性があるとしています。

豚コレラより致死率が高く、有効な治療法やワクチンがない、アフリカ豚コレラが中国や北朝鮮などで発生し、新たな脅威にもさらされています。


中間とりまとめでは、発生源の特定はできていないようですが、今後も調査を継続して、発生源をつきとめていただきたいものです。ただし、中国が感染源でない可能性もありますが、今回の豚コレラの感染源が中国だったとしても全くおかしくはありません。

中国とのビジネスには、中国固有のカントリーリスクがあります。日本国内でも、中国のインバウンド消費に糠喜びしていると、今回の新型肺炎ウイルスや、豚コレラで足元をすくわれかねません。

実際中国ではアフリカ豚コレラ感染のまん延で、今年に入って飼育数の3分の1に当たる2億頭を超える豚が処分されるなど、食卓に欠かせない豚肉の価格が急騰しているのですが、これにいま、中国マフィアが目を付けているといいます。アフリカ豚コレラに感染した豚を安く買い取って、他の省に運び、健全な豚の肉と偽って、高く売りつけたりして荒稼ぎしているというのです。

このブログでもかねてから主張しているように、現状の日本におけるインバウンド消費など、GDPの1%にすぎません。消費税増税をした現在、大型の経済対策をすぐに行い、物価目標を未だに達成できない日銀も従来の異次元の金融緩和の姿勢にもどすべきです。

それなしに、単純にインバウンド消費を増やせば、日本国内がニセコ化するだけです。

今回の新型肺炎、豚コレラ騒動で、日本人いかに不確かな中国のインバウンド消費に頼ることが危険なのかを学ぶべきです。そのような危機から日本を守るには、日本国内の景気を良くして、インバウンド消費に頼らなくて良くすることです。

無論「来る者拒まず」という格言にもあるとおり、わざわざ日本に来たいとする外国人を拒む必要はないですが、それにしても、外国人にだけ特化した施設をつくり、日本人を受け付けないようなことまで、無理して行うことは全くありません。日本には、もともとそのようなことをしなくても、国内を豊かにできる潜在能力が十分有り余るほどあることを忘れるべきではありません。

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2020年1月25日土曜日

新型肺炎の最大の犠牲者は中国の貧困層―【私の論評】中国はもっと社会・経済的に豊かにならなければ、世界の伝染病の発生源になり続ける(゚д゚)!


漢口駅の入り口をマスク 姿で警備する武装警察


<新型コロナウイルスに接触する可能性が最も高く、そして感染を中国全土に広げるのは貧困層の出稼ぎ労働者>

中国湖北省の省都・武漢。1月23日の夜明け、例年なら翌日から1週間にわたる春節(旧正月)の休暇を前に、多くの人でごった返しているはずの駅と空港に人影はない。

武漢で発生したとみられる新型コロナウイルスの感染者が急増しているのを受け、同市は23日から交通機関の運行を停止。主要道路も封鎖され、帰省や旅行を予定していた1100万人の住民の多くは、足止めを食らうことになった。アメリカに例えれば、多くの人が帰省する感謝祭の2日前に、シカゴ都市圏全域が封鎖されるようなものだ。

だが、新型ウイルスのリスクに最もさらされているのは、感染者が見つかった米西海岸のワシントン州やタイの首都バンコクの住民ではない。中国の貧困層だ。

世界中どこの貧困層もそうだが、中国の貧困層は適切な医療を受けにくい状況にある。だが、新型コロナウイルスに接触した可能性が最も高く、それが最も急速に拡散する可能性が高いのは貧困層であり、政府が突然打ち出した過激な対策の最大の影響を被るのも、中国の貧困層だ。

問題のウイルスは、武漢の海鮮市場で、動物からヒトに感染したとみられている。海鮮市場とは言うものの、この市場はオオカミの子からヘビ、コウモリ(今回の感染源とみられている)など珍しい野生動物を幅広く扱っていた。

中国の生鮮市場はどこもそうであるように、動物を扱う不潔で危険な仕事を担っていたのは、主に出稼ぎの単純労働者だ。

武昌と漢陽、そして漢口という歴史ある3つの地区が合わさった武漢は、20世紀末に不動産開発を軸に急成長を遂げた。だが、武漢の医療システムは街の急速な成長に追い付いておらず、今回の危機で既に極限状態にある。

23日に武漢の交通機関がストップしたとき、出稼ぎ労働者や地方出身の大学生の多くは、既に故郷に向けて出発した後だった。こうした人たちによるコロナウイルスの「持ち帰り」が危惧されるなか、各地の公衆衛生当局にとって、最新情報の収集は最重要課題となっている。

ところが現実には、武漢の近隣都市で感染者が確認されたニュースよりも、韓国やタイで感染者が見つかったニュースのほうがずっと早く報じられているのが現実だ。

武漢の病院はパンク寸前
監視社会の意外な抜け穴

国外で感染が確認された中国人旅行者は、平均的な中国人よりもはるかに金持ちだ。それは外国旅行に行くだけの経済力がある時点で明白だ。中国のパスポート保有者は、人口の10%にも満たない。

バンコク行きの飛行機のエコノミークラスで咳をしている中国人客は、相乗りトラックに揺られて町外れの実家を目指す労働者や、長距離バスで遠い地方の故郷に帰省する労働者よりも、はるかに新型肺炎に感染している可能性を認識しやすい。

それに多くの出稼ぎ労働者は、少しばかり体調が悪くても、誰もが仕事を休むこの時期に帰省するチャンスを逃したくないと思うだろう。

中国は監視社会だが、その網は穴だらけだ。テクノロジーによるプロファイリングシステムで中流階級はかなり可視化されているが、貧困層は抜け落ちている。

全ての市民が常時携帯しているはずの身分証を、持っていない人もいる。紛失したが、高い旅費をかけて役所まで行って再発行する余裕がない人。そもそも出生を届け出ていない人もいる。彼らは身分証が必要な鉄道や飛行機ではなく、監視が難しいバスや相乗りのトラックを利用する。

彼らはインターネット上でも追跡が難しい。中国では微信(ウィーチャット)のようなサービスが広く浸透していると言われているが、ネット普及率はようやく60%を超えた程度だ。微信のアカウントや身分証を、家族で共有する例も少なくない。

予防や治療の「格差」

公衆衛生に関しては、地方は置き去りにされがちだ。手洗いやマスクなどの感染予防策や、健康に関する情報はなかなか広まらない。電話やネット回線の有無が、健康を守るための情報を左右する。

情報だけではない。コロナウイルスが武漢の外に広がるにつれて、公衆衛生の関連用品が不足し始めており、都市部から離れている病院ほど必要な医療品が届きにくい。

上海では春節で工場が休業する時期と重なり、マスクの供給不足に拍車が掛かっている。ある工場は、通常の3倍の給料で休日出勤を募集している。こうしたリソース不足と従来の格差が相まって、持てる者と持たざる者の「感染予防格差」が広がりそうだ。

さらに、ウイルスに感染した貧困層は、病院に行く可能性がかなり低い。中国の医療制度は、中流階級さえ、適切な治療を受けるのが難しいことで悪名高い。国民の大多数にとって、質の高い医療へのアクセスはないに等しいのだ。

医療の資源は、政策によって大都市や首都圏に集められている。中国人医師の大半は学部レベルかそれ以下の教育しか受けておらず、資格のある臨床医師(アメリカの医学博士に相当)は大都市の病院にしかいない。それらの病院も今や患者であふれ、スタッフはパンク寸前だ。

公的な医療保険も近年は拡充されているが、社会保障は戸口(戸籍管理制度)と結び付けられている。戸口の登録は基本的に出身地に縛られ、居住地や受けられる教育、公共サービスも限定される。

従って、地方の住民が、優秀な医師のいる都市部の病院で公的保険を使って受診することはできない。戸口のある土地から遠く離れた所で働く出稼ぎ労働者は、保険を全く利用できない。

彼らは命の危険が迫るまで病院に行かず、自分で治そうとするか、伝統的な民間療法に頼る。日常的に健康状態が悪くウイルスの影響を受けやすいため、風邪と勘違いしやすくなる。

武漢市内でマスクを着用して清掃作業をする女性(1月22日)

こうした要因を全て悪化させるのが年齢だ。1月23日に当局が公表したデータによれば、これまでの死者17人の平均年齢は73歳で、大部分を退職者が占める。最もリスクが高いのはより高齢で既往症のある人々という状況に変わりはない。

だが出稼ぎ労働者は適切な年金や良質な医療を利用できず、40~50代以上であることも多い。若い頃から同年代の中流層に比べて過酷な労働条件で働いてきた人々もいる。

こうした貧困層は比較的見えにくく、かつ軽視されていることも、中国当局が公式発表している患者数(22日時点で500人以上)が外国の推計(1700人以上)と大きく懸け離れている一因だ。当局は患者の存在を隠蔽しているというより、患者を見つけられずにいるのかもしれない(恐らくその両方だろう)。

1月中旬から市内全域と他の交通の要所で診断などが無料になった(義務付けられた)ことで、こうした状況はいくらか改善されるだろう。だが、医療施設は都心部に集中しがちで、新型肺炎と診断されても十分な治療を受けられない可能性もある。

過去の四川大地震や唐山大地震への対応でも、国は都市部を優先し、農村部の住民は自分たちで対処せざるを得なかった。武漢では市民の足であるバスや地下鉄やフェリーなどの公共交通機関が運行停止に。低所得層の看護師や若手の医師などがシフト勤務のために移動するのに支障が出る恐れもある。

不満や不安のはけ口にも

貧困層は診断や治療の面では見落とされがちだが、抑圧の対象としては逆に目を付けられやすい。武漢周辺で検疫が強化されるなか、当局からひどい扱いを受ける可能性もはるかに高い。惨事はしばしばエリート層をパニックに陥れ、貧困層やよそ者を孤立させる。76年の唐山大地震の後には、農村部から都市部に避難してきた人々を、都市部の民兵組織が略奪者として殴り殺したり、射殺したりした。

武装した検疫官や町に閉じ込められた市民の間に不安が広がれば、こうした危険な衝突が起きかねない。封鎖された市内で治療に必要な物資などの供給と日々の活動が低下しているだけに、なおさらだ。意図的な誤報も出回っている。そのリスクは世間の対応を遅らせると同時に、「噂の流布」に対する司法当局の取り締まり強化につながってもいる。何がフェイク情報の拡散で何が政府批判なのか、当局の線引きは不明瞭なままだ。

検疫はウイルスの拡散防止に役立つだろうが、医療や検疫のシステムにとって最も見えにくい中国の労働者階級については既に手遅れだ。特に出稼ぎ労働者は長い道のりを長時間かけて移動しなければならないため、春節が始まる頃にはもう移動を始めている。彼らを見つけて救いの手を差し伸べるのは容易ではないが、何としてもやらなければ事態は改善しない。

<本誌2020年2月4日号掲載>
【私の論評】中国はもっと社会・経済的に豊かにならなければ、世界の伝染病の発生源になり続ける(゚д゚)!

中国の湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎について、中国での感染は5500人規模に広がっているとする推計結果を、北海道大医学研究院の西浦博教授(理論疫学)らが24日、医学専門誌に発表しました(https://www.mdpi.com/2077-0383/9/2/330#)。中国で患者の診断や報告システムが十分機能していない可能性があるといいます。

西浦さんらは、日本やタイ、米国など、24日朝までに中国本土以外で報告された計13人の感染者のデータと、武漢市からそれらの地域への渡航者数などから、統計的に中国本土での感染者数を導き出しました。

中国政府は24日時点で、感染者は計830人としています。西浦さんは「実際の感染者数は数百人ではなく数千人のオーダーで、感染元が明らかでない感染者がかなりの数いるだろう」としています。

これは、上の記事でも指摘されてるように、「貧困層」は比較的見えにくく、かつ軽視されていることも要因であると考えられます。中国当局が公式発表している患者数(22日時点で500人以上)が外国の推計(1700人以上、北大での推計の5500人以上)と大きく懸け離れている一因でしょう。当局は患者の存在を隠蔽しているというより、患者を見つけられずにいるのかもしれない(恐らくその両方だろう)」という指摘とも合致しているものと思われます。

李克強指数でみると、中国のGDPは2015年にはすでにマイナス成長になっていた可能性が・・

中国の統計データは、信用できないということは、このブログでも経済分野では過去に何度か掲載してきました。経済分野でも重要なGDPにおいては、過去において何度も、中央政府が発表した全体の数値よりも、各々の省があげてきたものの総計のほうが高いということがありました。

ただし、信用できない中国の経済統計のなかでも、農業生産と工業生産に関しては、しっかりデータを取っている節がうかがえます。小売や物流といった第三次産業に関する統計には弱点があるものの、計画経済を進めるために、1950年代からしっかり生産量のデータをとっていたようです。

この農業および工業の2015年のGDP成長率を産業別のデータのなかから見ると、農林業に畜産と漁業を加えたところで3.6%、工業が6.0%の成長となっています。この業種別GDPのほかに、自動車、鉄鋼、電力といった主要二七の工業製品の生産量データも出されます。

これらをチェックしてみると、2015年上半期に六%以上の成長を達成した製品は四製品のみ。さらに、13の工業製品は、伸び率がマイナスを記録しています。

工業製品の生産量の伸びは平均で一%程度。工業製品のデータに関しては割と正確に採取されます。そうなると、産業別の成長率六%の伸びと、工業製品別の生産量の伸びとが、かなり乖離していることがわかります。

粉飾の匂いがプンプンするのは工業成長率6%です。こういった数値を積み重ね、重ね合わせていくと、どうしても中国経済GDP6.9%成長というのは、相当にゲタを履かせた数値だということが判明します。中国の実際のGDPは、公式発表されている数値の三分の一程度と見るのが妥当だと思います。

中国においては、統計数値などは、まともなものではなく、政治的メッセージと受け取るべきなのかもしれません。感染などの統計もそう受け取るのが妥当なのかもしれません。

話が少しずれてしまいましたが、中国の統計はもともと、経済の統計も信用ならないわけですから、おそらく北大の西浦博教授の出した推計地のほうが、正しいと認識しておいたほうが良いでしょう。

私のは、ブログ冒頭の記事のように、「貧困層」の実態を素早く把握できないことが、SARS感染の場合も、今回の新型肺炎の場合も、中国政府が素早く感染などに対応できない最大の原因だと思います。無論、日本国内で報道されているように、隠蔽体質ということもあると思います。

いずれにしても、中国の社会が遅れていることが、中国が疫病に素早く対応できないことの原因です。

これは、すぐにでも取り除かなければ、私達は中国を源とする疫病にいつまでも悩まされることになるのです。

以下にSARSkの感染源ともなった、キクガシラコウモリのスープの動画のついたツイートを掲載します。このツイートでは、このキクガシラコウモリが今回の新型肺炎の原因となったとされていますが、これ自体はまだ確認はされていません。




やはり、中国もある程度は、他の先進国のように、まずは民主化、政治と経済の分離、法治国家化をすすめ、中間層が自由に社会経済活動をできるよにすべきです。機会的に、貧困層を豊かにしようとして、韓国のように最低賃金を単純にあげるようなことをすれば、逆効果になり、雇用を激減させることになるだけです。

ようはある程度まともな社会にして、その次にまともな経済・財政政策を行いつつ、まずは貧困層に対して、医療などの面で手厚い保護をし、さらにいずれは経済的にも貧困を撲滅すべきです。

中国は国全体では、GDPは世界第2位(ただし、先に述べたように、中国の統計はデタラメなので、実際は1/3だったとすれば、ドイツ以下で世界第四位)ですが、一人あたりのGDPは、世界70位です。中国は未だ貧困であり、特に富裕層に富が集中し、貧困の度合いはいまだに酷いものです。

貧困層をなくし、衛生的な環境を整備し、まともな医療体制や、防疫体制を築くためにも、中国はもっと豊かにならなければならないのです。特に、社会的にもっと豊かにならなければならないです。現在の中国は国全体では、人口が多く(つい最近14億人になったばかり)て、経済大国のようにみえますが、現実はそうではないのです。特に社会は遅れたままです。

中国共産党は、自分たちや一部の富裕層だけが富んでいて、多数の貧困層がいる現状を変えるべきなのです。そうしなければ、いつまでも、世界の伝染病の発生源になりつづけます。無論、富裕層や共産党の幹部でさえ、伝染病に悩まされ続けることになります。これは、小手先ではできません。社会を変えなければできないことです。

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歴史も証明。中国という国を滅ぼしかねぬ新型肺炎という「疫病」―【私の論評】新型肺炎の感染拡大で、習近平の国賓待遇での日本訪問は難しくなった(゚д゚)!

2020年1月24日金曜日

歴史も証明。中国という国を滅ぼしかねぬ新型肺炎という「疫病」―【私の論評】新型肺炎の感染拡大で、習近平の国賓待遇での日本訪問は難しくなった(゚д゚)!

歴史も証明。中国という国を滅ぼしかねぬ新型肺炎という「疫病」

体温検査を受ける武漢を出て列車で移動する乗客。1月23日、杭州市

中国の武漢市を中心に猛威を振るう新型肺炎。1月25日の春節を含む大型連休には億単位の中国人が移動するとも言われ、パンデミックの可能性も囁かれていますが、過去にも中国から多くの疫病が世界に広がったとするのは、台湾出身の評論家・黄文雄さん。黄さんは自身のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』で、中国の「疫病史」を紹介するとともに、現在も複数存在する「中国発の疫病」が世界に広がる要因を記しています。

※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2020年1月22日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

【中国】「中国発パンデミック」はなぜ厄介なのか

新型肺炎、発症者540人超に拡大 死者は17人

中国湖北省武漢市を中心として広がる新型肺炎の感染が止まりません。ついに死者は17人、発症者540人超にも拡大しました。ついにアメリカでも武漢を訪れていた男性1人の感染者が確認されました。中国以外では、アメリカ、日本、韓国、タイで発症者が出ています。WHO(世界保健機関)が緊急事態宣言を出す可能性も出てきました。

死亡率は現在のところ2%でまだ低いですが、これから上昇していく可能性もあります。ちなみに、SARS(重症急性呼吸器症候群)も中国の広東省を発端として各国に広がりましたが、このときは発症者8,096人のうち774人が死亡しています(致死率9.6%)。

Summary of probable SARS cases with onset of illness from 1 November 2002 to 31 July 2003

また、2012年から中東やヨーロッパで発症例が報告され、2015年には韓国でも流行したMERS(中東呼吸器症候群)は、2,494人が発症し、そのうち死者は858人(致死率34.4%)でした。

Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS-CoV)

これに比べれば、まだまだ致死率は低いものの、前回のメルマガでも書いたように、これから旧正月によって一気に拡大する可能性があります。

また、かつてユーラシア大陸で流行った疫病は、必ずといっていいほど日本に入ってきています。江戸時代には天然痘(疫病)、麻疹(はしか)、赤痢が見られ、このうち天然痘は18世紀前期に大流行。麻疹も同時期に2~3回大流行し、赤痢は18世紀から19世紀にかけて大流行しました。いうまでもなく、中国からの伝染です。

中国では、1880年に広東と寧波でコレラが大流行。翌81年には北京でも大流行しました。この感染経路は、発源地を広東とする2003年のSARS流行とそっくりです。そして、中国でのコレラ大流行直後の1882年10月~11月の中旬、日本でもコレラが大流行することになります。北里柴三郎や初代内務省衛生局長であった長与専斉によれば、その日本侵入経路の起点は中国で、これがまず長崎に入り、そうして日本全国へ広がったといいます。

日本では、これに対処するため、1885年に函館、新潟、横浜、神戸、下関、長崎の港に常設の消毒所を設置。その後、1899年に「海港検疫法」が公布されるなどして、検疫制度が確立していきます。こうした取り組みが中国からの疫病侵入を防ぐ力となったのは言うまでもありません。しかし、一方の中国は、現在に至るまで根本的な対策は取られないままできているのです。

この日本と中国の衛生観念や防疫意識の違いは、台湾にも如実に見て取れます。日本植民地時代の台湾には、疫病の大々的な流行がほとんど見られませんでした。というのも、総督府は1900年代に入ってすぐに、都市計画に始まって衛生教育に至るまでを徹底して実施。北里柴三郎に依頼して、その一番弟子を台湾に呼んでまで、防疫をはじめとする公衆衛生に取り組んできたからです。

それが終戦で一変しました。日本が台湾から引き上げ、かわりに中国軍が台湾に進駐したとたん、すでに絶滅していたはずのコレラ、天然痘、ペスト、チフス、マラリアといった疫病の大流行が台湾全島を急襲したのです。1946年にはペストとコレラの、翌47年には天然痘の大流行に見舞われています。台湾から見た中国人とは、まさに疫病神以外の何者でもありませんでした。

中国でも日本軍が進出した際、地方の農民が大歓迎するケースも少なくありませんでした。それは、日本軍が通過した地方は、かならず伝染病が消えていき、衛生の問題と課題が消えるからでした。

中国の疫病流行は、すでに史前から甲骨文に刻まれています。現在、その甲骨文から確認できる殷周時代の古代人の疫病は約16~20種類もあります。そして、周初から漢代に至る「大疫」(疫病大流行)の記録では、しきりに「死者万数」「人多死」「士卒多死」「其死亡者三分有─」と、多くの死者を出したことを示す文言が繰り返し出ているのです。

中華帝国以後の中国は二千余年間、周期的、加速的に水害、旱魃等の天災に見舞われてきました。そして、旱魃の後に大飢饉が、水害の後に大疫病が発生するというのが、いわば「定番」になっています。歴代王朝の「正史」には疫病の大流行が数年ごとに、時には連年で記録されていることが、それを証明しています。

中国の歴代王朝は、実際には「大飢」や「大疫」によって滅ぼされた場合が多くあります。「大飢」によって生まれた流民が「大疫」の媒介や運び役となって世界へ拡散していくのです。

たとえば明の滅亡については、政治腐敗と、それに蜂起した農民反乱軍によって滅亡したと語られていますが、実は、それだけが要因ではありません。明末には「大疫」や「大飢」が間断なく襲い、餓死者や疫死者が続出。流民、流賊、流寇もあふれていたのです。これもまた、農民が反乱する要因にもなっていました。

ことに明末の万暦、崇禎年間(1573~1644年)には、華北地方で疫病が猛威をふるい、少なくとも1,000万人の死者が出ました。主にペストや天然痘です。明王朝は、実はこの大疫によって倒れたのであり、清に滅ぼされたわけではないのです。

また、黒死病(ペスト)といえば、中世のヨーロッパを襲った恐るべき流行が、史上でもっとも有名で、1348~51年の3年間で、人口の3分の1を死に至らしめています。その伝染経路については諸説があありますが、もっとも有力なのは中国大陸を発源地とするものです。

下の版画はパウル・フュルスト(Paul Fürst)の『Doktor Schnabel vonRom(ローマの嘴の医者)』(1656年)です。

当時はペストの原因として瘴気(悪性の空気)が考えれており、ハーブやスパイスが詰められた この独特のマスクは、ガスマスクの役割を果たしていました。ちなみに、当時の主な治療法は蛭(ヒル)による瀉血でした。


最初に大流行したのは南宋王朝です。この時、南征中だったモンケ・カーン(チンギス・カーンの孫、フビライ・カーンの兄)が病死していますが、その病気がペストだったとも指摘されています。南宋と戦っている間にモンゴル軍に伝染したのです。

このモンゴル軍の遠征を通じて、ペストは西アジア、クリミア、ベネチア、北アルプスを経て北上し、やがて全ヨーロッパに伝わっていきました。

元末の至正年間(1344~62年)の間には、「大疫」だけでも11回も起こっています。中華帝国の人口は、1200年には1億3,000万人いたとも推定されていますが、ペストの大流行によって、すでに1331年の時点で3分の2が死んでいます。ユーラシア大陸の東西ともにペストに襲われ、人口が大量に減ったのです。

また、それより以前、隋の煬帝末期の610年から唐初の648年の約40年間には、7回も疫病が大流行。隋も瘟疫で倒れています。

その他、インフルエンザ系の疫病はSARSに限らず、その発源地はほとんどが中国です。たとえば、1918年の秋に全世界で猛威を振るったインフルエンザ。感染者は地球人口の20~40%にも及び、感染からわずか4ヵ月で2,000万人が死亡し、その死亡率は約2.5%でした。日本でも2,000万人以上が感染し、死者は約40万人に上っています。

これが「スペイン風邪」と呼ばれるインフルエンザで、名称からスペインが発源地であると誤解する人が多いですが、実は、これも中国が発生源でした。そもそもは、1917年に中国の南方で発生したものが、船便を通じて世界各国へと拡散したのです。

中国で医療衛生が制度化されたのは、なんと20世紀になってからのこと。義和団事件後に変法派官僚によって、やっと天津に衛生総局が設立(1902年)されたのです。それも、中国から世界にペストがばら撒かれることを危惧した列強からの強い要請があって、ようやく重い腰を上げたというのが本当のところです。外国人を排斥する大事件が引き金になって、その外国の圧力によってようやく医療衛生が制度化されるという、皮肉な話です。

一方、儒教の影響が現在も色濃い中国では、医師の社会的地位は非常に低いものです。たとえば日本と台湾では、通常、成績がいい学生が大学の医学部へ進みますが、中華の世界ではまったく逆で、成績の悪い学生が医師になるのです。だから、中国では現在も医者は軽んじられる存在なのです。

たとえば、中国では医者に対する患者の暴力行為が頻発しており、「医閙(イナオ)「医傷」などと呼ばれています。その件数は年間数万件にも及ぶため、中国政府は2018年に、毎年8月19日を「中国医師の日」にすることを定め、医者を尊重するよう呼びかけているほどです。

また、2012年の調査によると、臨床医の初任給は1カ月あたり平均2,339元ですが、中国の新卒の平均的な初任給は1カ月あたり3,051元であり、医師と看護師がもっとも低水準なのです(「中国網」2013年10月8日付)。このような状態であるため、誰も医師になりたがらないし、医療体制も低いままなのです。

また、日本のような医療保険制度がほとんど普及していない中国では、高額な医療費のために、病気になっても医者にかからない人民も多い。そのため、疫病が拡大してしまうのです。

もちろん、中国は言論統制の国であり、また、WHOまでもカネの力で牛耳っているため、事実隠蔽が平然と行われ、そのために被害が大きくなってしまうという点も重要です。

このように、中国発の疫病が世界に広がる要因は複数存在しています。日本人にとって、これからもっとも注意すべきは、パンデミックの流行です。中国への渡航、あるいは中国人観光客が多く集まる場所へ出かけていく場合には、十分に気をつける必要があります。

【私の論評】感染拡大で、習近平の国賓待遇での日本訪問は難しくなった(゚д゚)!

約20年前に流行したSARSは当初、ハクビシンが感染源と疑われましたが、現在はキクガシラコウモリが感染源であると考えられています。今回の新型肺炎の感染源は竹ネズミかアナグマ、蛇と説が分かれています。いずれもジビエ(野生の鳥獣食)として食されており、市場での取引を通じて人間に伝染したとの見方が強いです。

キクガシラコウモリのスープ
無論、他国の食文化を単純に否定するつもりはないですが、こうした食文化にも、病気を蔓延させる原因がある可能性ず大きいです。日本では、欧米では食べないクジラや、魚の刺し身を食すという食習慣がありますが、そもそも海産物であること、さらに細心の注意をはらった調理などにより、それが大規模な感染症の原因になったということは聞いたことがありません。

いくら食文化といっても、それが大規模な感染症を招くというリスクがあるなら、中国としてもそのような食文化は廃するか、それが不可能なら感染症を防ぐ方向で議論をすすめるべきです。


      竹ネズミの調理の動画。このくらいの衛生的な環境で調理されるなら
      問題はないのかもしれないが、劣悪な環境下での調理もあり得る

それに中共政府の対応も悪すぎです。もともと中国では、2019年12月の時点で、武漢で原因不明の肺炎患者が出ているとの情報がSNS上で出回っていました。その後も「海外で患者が出ているのに、国内の他地域にいないわけがない」との声があがっていました。

それから1カ月あまりで情報公開が始まったのは遅きに失した感が否めないです。中国の報道機関「財新メディア」は、現地からの報道として「複数の医師が最終的な感染者は6000人を超える可能性があると推計している」と報じました。財新はかつて当局によるSARS情報隠ぺいをスクープして名を馳せたジャーナリストの胡舒立氏が率いる独立系メディアです。

一方で当局寄りの論調が強い「環球時報」も、「武漢の対応の遅さを教訓とし、その他の地方での対応を急げ」という社説を掲げました。「早くから患者の全面隔離を実施し、伝染の経路をふさぐべきだった」と主張し、武漢当局を厳しく批判する内容ですが、こちらは責任を地方政府に押しつけ、中央への波及を防ぐ算段と見えなくもありません。

中国では24日から、春節に合わせた大型連休が始まりました。延べ約30億人が大移動する見込みで、日本など海外への旅行客も700万人を超える見通しです。

中国共産党機関紙、人民日報(電子版)によると、新型肺炎の発症者は24日朝までに31の省・自治区・直轄市のうち29で確認されており、武漢市だけ封鎖しても、新型肺炎が一気に国内外に拡散する危険性があります。

習近平は「(感染防止の取り組みが)非常に差し迫って重要だ」「(感染に関する情報は)直ちに発表しなければならない」と指示していますが、「社会全体の安定を断固として守らなければならない」とも述べており、パニックを阻止するための情報統制を示唆しました。

今後、日本国内で感染拡大・死者発生という事態になれば、初期の封じ込めに失敗した中国のトップ、習氏を「国賓」として歓迎できるのでしょうか。特に、仮に日本でも多くの人々がなくなることがあった場合、その責任者ともいえる人物を国賓として迎え入れるということは、国民感情が許さないと思います。

習近平

これ以外にも、元々中国は尖閣諸島付近の艦船による示威行動がますます過激になっているということもあります。これらをやめたというなら、国賓として迎えるということも筋が通りますが、そうでなければ、日本政府がいかに、丁寧に説明してもどう考えても無理筋です。

安倍首相は22日、衆院本会議での代表質問で、習氏の「国賓」招聘(しょうへい)について「日本と中国は地域や世界の平和と繁栄に大きな責任を有しており、その責任を果たす意思を内外に示す機会としたい」「同時に、中国との間には懸案が存在している。主張すべきは主張し、中国側の前向きな対応を強く求めていく」と語っています。

新型肺炎の拡大は、習氏の「国賓」来日に直撃するのでしょうか。もしそうなれば、無論習近平は国内の疫病の問題を放置して、来日することは許されないでしょう。やはり、常識的に国内に陣取り、疫病対策の陣頭指揮をとるべきです。

仮に、日本で同じようなことがおこったとして、総理大臣がそれを無視して外遊ということになれば、とんでもないことになります。

日本としても、新型肺炎が蔓延している中、その当事者であり責任者でもある元首を国賓として迎え入れるなどということは、常識的にあり得ないです。

新型肺炎をめぐる中国の情報統制のような対応を見る限り、中国は発生国として国際的責任を果たしているとは思えません。習近平が国賓として来日すれば、天皇陛下も含めて日本全体で歓迎しなければならないですが、これまでの経緯もあり、祝賀ムードで迎えることを国民が許すとは考えにくいです。新型肺炎の感染拡大で、さらに習近平の国賓待遇での日本訪問は難しくなったのではないでしょうか。

【関連記事】

2020年1月23日木曜日

「健全財政」にこだわる不健全 財務省に飼い慣らされている「諮問会議」は専門家の仕事をせよ ―【私の論評】財政破綻は夜迷いごと、南海トラフ大地震があっても日本は財政破綻しない(゚д゚)!

高橋洋一 日本の解き方

経済財政諮問会議であいさつする安倍首相(右から2人目)=17日午前、首相官邸

 内閣府が経済財政諮問会議で、国と地方の基礎的財政収支が2025年度に3・6兆円程度の赤字になるという中期財政試算を示した。消費税率を引き上げても財政の悪化が続き、目標とする25年度の黒字化は遠のいたと報じられている。

 最近の指標は軒並み悪化しており、結局昨年10~12月の日本経済はかなり悪かったという結果となった。一応、補正予算を打ったが、東京五輪・パラリンピック後の秋口にも再び景気対策の必要性が出てくるのではないか。そのときに、財務省の「緊縮病」が気になるところだが、これは中期財政試算にも垣間見える。

 政府は国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)を25年度に黒字転換する目標を掲げるが、実現はさらに厳しくなったと強調する。試算の成長実現ケースで、25年度のPBは3・6兆円の赤字。昨年7月時点の試算(2・3兆円の赤字)より悪化したとし、麻生太郎財務相も17日の閣議後の記者会見で「歳出改革の取り組みをさらに進めなければならない」と語った。

        政府は国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)を
        25年度に黒字転換する目標を掲げる

 なぜ、PBを目標としているかといえば、PBの動きが、ネット債務残高対国内総生産(GDP)比の動きを規定するからだ。ネット債務残高対GDPがどんどん大きくなれば(数学的な表現では「発散」すれば)、財政破綻とも言えるような状況になるわけで、そのためにPBを管理しなければいけない。

 試算では、成長率の高い「成長実現ケース」と成長率の低い「ベースラインケース」がある。PB対GDPは、成長実現ケースで25年度均衡化は無理だが、27年度均衡化するくらいに改善するが、ベースラインケースでは、1・3%程度の赤字を続ける。その結果、グロス債務残高対GDPは成長実現ケースで低下傾向になるが、ベースラインケースでは高止まりするとされている。

 この結果を、ネット債務残高対GDPでみれば、成長実現ケースで現在のゼロ程度がマイナス、つまり純資産がプラス状態になるが、ベースラインケースでもゼロ程度を維持できるとなる。

 はっきり言えば、国の場合、ネット債務残高が多少のプラス、つまり債務超過でも問題なく、ネット債務残高をマイナスにする必要はない。例えば、日本でPB対GDPが2%程度の赤字を10年間継続しても、せいぜいドイツと同じ程度になるだけで、財政状況は悪いわけではない。こうした状況にもかかわらず、目標とする25年度の黒字化ができなくなったのは問題だというのは、おかしな議論である。

 特に、今のマイナス金利を生かして、将来投資をするのは、ネット債務残高対GDPを悪化させない意味でも優れている。今の状態で、PB黒字化はほとんど意味がないにもかかわらず、教条的に「目標順守」というのは、健全な経済政策ではない。経済財政諮問会議の専門家は、財務省の走狗(そうく)になるのではなく、もっとしっかりすべきだ。(元内閣参事官・嘉悦大教授 高橋洋一)

【私の論評】財政破綻は夜迷いごと、南海トラフ大地震があっても日本は財政破綻しない(゚д゚)!
日本の財政を考えるときに、良く出てくる言葉が「財政破綻」です。日本が財政破綻しないことはこのブログでも何度か述べてきました。それについては、過去のこのブログの記事か、まともなエコノミストである高橋洋一氏や田中秀臣氏の記事などを読んでいただきたいと思います。

日本では、大手新聞も財務省の走狗に成り果て、「財政破綻」を煽っている

本日は、今後数百年もしかすると、数千年の間には、「日本政府が破産する」と投資家たちが信じて国債を投げ売りし、国債が暴落して日本政府の資金調達が困難になる場面があるかもしれませんが、しかし、それでも大丈夫であることを掲載しようと思います。

日本政府が破産すると信じる投資家は、国債を売るだけではなく、円をドルに替えるはずです。政府の子会社が発行した日本銀行券が紙屑になることを恐るからです。それにより、超ドル高になるでしょう。

そうなると政府は、外貨準備として保有している巨額のドルを高値で売却し、受け取った資金で暴落した国債を買い戻すことができます。1兆ドルの外貨準備を1ドル300円で売却し、300兆円の資金を得て、それを用いて額面の3割に暴落した日本国債を買い戻すと、発行済み国債1000兆円がすべて買い戻せることになるのです。

発行済み国債をすべて買い戻した日本政府は、破綻するどころか、無借金の超優良財務体質を手にするわけです。

こうして考えると、元々統合政府(政府+日銀)の借金ということでは、米国や英国、フランスよりも借金が少ない上に、日本の投資家らが、万が一日本が財政破綻すると信じて、日本国債を投げ売りするようなことが起こっても、日本の財政が破綻する可能性は非常に小さいことがわかります。

もちろん、南海トラフ大地震で日本経済が破綻してしまうケースなどを考えれば、財政も実質的に破綻するのかもしれませんが、しかし、そうなったらそうなったで、政府は膨大な建設国債などを発行して、インフラの復旧などを数十年という長い年月かけて行うでしょう。

さすがの財務省も、このような大地震が起こったときには、「赤字国債は将来世代へのつけとなる」などという、世迷言はいってはおられなくなって、膨大な国債を発行するはすです。もし、それでも世迷言をいうなら、財務省などこの世からなくしてでも、政府は国債発行に踏み切るてしょう。

そうなれば、このブログにも掲載したように、日本は外国からお金を借りているわけでもなく、完全雇用でもないので(関連記事:   消費増税の「悲惨すぎる結果」が判明…日本の景気、打つ手はあるのか―【私の論評】令和年間には、日本の潜在能力を極限まで使い、超大国への道を歩むべき(゚д゚)!)参照)将来世代へのつけということもなく、復興に成功して、全く新しい国に生まれ変わることになるだけです。財政は破綻しないでしょう。

財政赤字は巨額だから、早急に緊縮財政を実施しないと、将来の財政破綻が防げなくなるという人がいますが、そうではない、ということは、はっきりしています。

そのため、性急に増税して景気を悪化させるリスクを負うくらいなら、増税を急がず、増税しても失業が増えないようなタイミングを狙って増税をすれば良かったと思います。



まあ、それでも増税してしまったのですから、マイナス金利の現状では国債を100兆円くらいは、大量に発行しても、うまくいけばゼロ金利かほんのわずかプラスになるだけですから、政府は発行で2兆円儲けて、残りは基金として様々な経済対策を行えば良いのです。

こう考えると、日本が財政破綻するというのは、ほんとに杞憂もしくは世迷言としか考えられません。


2020年1月22日水曜日

中東で、中国が米国に取って代わることはできない―【私の論評】中国は中東への危険な一歩を歩みだした(゚д゚)!

中東で、中国が米国に取って代わることはできない

宮本アジア研究所代表






イランのザリフ外相(左)と中国の王毅外相
第2次世界大戦後に作り上げられた国際的な仕組みは現在、大きく動揺している。国際秩序の動揺と言ってもよいだろう。

 このように言うと、自由貿易に代表される自由な経済秩序や、国連、世界貿易機関(WTO)に代表される多国間主義といったグローバルな政治と経済のメカニズムの動揺に目が行きがちだ。だが、地域情勢も不安定化し始めている。最も顕著なのが、これまで中東と呼ばれてきた地域である。

 第2次世界大戦後、地域の安定は大国同士の関係でほぼ決まった。米ソ冷戦が終わり、米国が唯一の超大国となり、一見したところ米国は圧倒的な存在となった。だが実際には、米国の相対的な力は一貫して低下してきていた。特にトランプ政権となり、外交上のミスを連発し、米国の影響力は急速に低下している。

 その「力の空白」を埋めるように、中東においてイランとトルコが影響力を強めている。どちらも歴史において大帝国を張ったことのある国である。米国を取り去ると、この2国が浮上してくる。歴史を生き抜いてきた伝統の力は大したものだと、つい納得したりする。

 加えて、中東において中国とロシアの存在感が増大しているという。イラン危機は米中覇権戦争の一環だという見方まで現れている。果たしてそうであろうか?

中東進出は、危険を抱え込むこと

 ロシアはロシア帝国とソ連の後継であり、ロマノフ王朝時代から中東と深い関係にある。ソ連時代も中東において米国と覇を競った。土地勘もあり、やり方も知っている。しかし今日のロシアは、依然として強大な軍事力を誇っているものの、英国際戦略研究所(IISS)によれば2017年の軍事支出は日本より少ない。GDP(国内総生産)は韓国より小さく日本の3分の1にまで縮んでいる。総合国力において昔の面影はもはやない。影響力においても限りがあるということだ。

 中国はどうか。国力を急速につけてきているが、歴史上、中東と全く関わってこなかった。中国の経験と知識には限界がある。

 中国の一帯一路構想が、世界制覇に向けた中国のグランドデザインのように喧伝(けんでん)されている。しかし中国の現場から伝わってくる感触は、それとはほど遠い。大きなスローガンを次々に打ち出すものの、それを支え実行する理念、原則、ルール、実施の仕組みは、現場に近づけば近づくほど中身が見えなくなるのだ。

 それに進出地域における経験と知識の不足という壁が立ちはだかる。これが中国の実態と言ってよい。

 中国の中東への進出は、中国が新たに大きな危険を抱え込むということでもある。

 一帯一路構想を、中国を中心にかつて存在した朝貢貿易システムの再現と捉える人もいる。だが昔は、マルコポーロの例から分かるように、中国に来る人たちが道中のリスクをすべて負担した。しかし今度は中国が自ら出かける。リスクは中国が負わなければならない。中国が中東に積極的に関与するということは、宗教や民族など様々な理由から怨念が渦巻き、複雑で、世界一危険とみられる場所に足を突っ込むということなのだ。

【私の論評】中国は中東への危険な一歩を歩みだした(゚д゚)!

米中間の覇権争いが激化する中、米国の中東での最大の同盟国であるイスラエルが2020年にも中国との間で自由貿易協定(FTA)を締結する見通しになりました。関係者が明らかにしました。実現すれば、中国が中東・欧州で影響力を拡大するための一歩となります。シリア駐留軍撤収で米国の存在感が薄れる中、中東での米中の勢力図も変化しそうです。

中国とイスラエルのFTA交渉は2016年から続いており、最新の交渉は約1カ月前に行われました。両国のFTA締結に向けた動きは、両国の蜜月関係を浮き彫りにしています。

ブルームバーグのまとめによると、米国はイスラエルとの貿易総額で中国をなお上回っているものの、イスラエルからの対米輸出は15年以来、年々減少。この一方、同期のイスラエルからの対中輸出は7割近く増加しました。

中国は巨大経済圏構想「一帯一路」を進める上で中東を欧州・アフリカ市場進出のための足掛かりとして重視しています。中東との関係強化の軸足を経済に置いており、今や中東最大の投資国です。米中対立が激化する中、アラブ首長国連邦(UAE)など中東の親米国が中国と敵対関係になることを避ける狙いもあります。


中国の習近平国家主席は昨年9月下旬、北京を訪問していたイラクのアブドルマハディ首相と会談し、緊張が続くイラン情勢について、「関係当事国は行動を自制し、平和的に問題を解決しなければならず、必要に応じて中国はすべての関係各国と協議を行う用意がある」と表明しました。

また、アブドルマハディ首相は、中国が進める経済圏構想「一帯一路」に新たに参加することを表明しました。昨年の両国間の貿易額は300億ドルを超えるなど、近年両国間の経済関係は深まっています。今後、イラク再建に向け、経済や社会インフラ、文化や治安など多方面での中国からの支援が加速するといいます。

イラクというと、冷戦以降、常に米国による戦争の最前線でした。政治的な米国の関与のイメージがどうしても強いですが、今後、中国とイラクの関係が米国の政策にどう影響を与えるのかが注目されまする。

中国はアラブの盟主であるサウジアラビアとの結びつきも強めています。習近平氏は昨年2月、北京を訪問したサウジアラビアのムハンマド皇太子と会談し、経済分野での連携をさらに強化することで一致しました。

ムハンマド(左)と習近平(右)

具体的には、中国の一帯一路構想と、ムハンマド皇太子が主導する2030年までにサウジを近代国家にするための国家目標「ビジョン2030」とのコラボレーションを緊密にし、中国が製油所の建設などでサウジアラムコに100億ドルを投資することなどが決定されました。昨年には、中国にとってサウジアラビアは最大の石油供給国となりました。

また、サウジアラビアは9月下旬、日本や中国など約50ヶ国に対する観光ビザの発給を開始しました。ムハンマド皇太子のもと、サウジアラビアは「脱石油」政策と経済の多角化を進めており、観光業を含み、今後いっそう両国の経済関係が深まることが予想されます。

ただし、中国は同地域の米国の軍事活動を阻害しないよう配慮しています。シンクタンク、欧州外交評議会(ECFR)はリポートで「中国は米国が主導する中東での安全保障構造へ挑戦することや、同地域の政治で主要な役割を果たすことに対して強い意欲を示していない」と指摘しました。

それでも米国は中国の動きを警戒しており、中国、イスラエル間の経済関係強化は波紋を広げることになりそうです。米国はイスラエルが中国の投資に対して十分な調査を行っているかどうか、第5世代(5G)移動通信システムのインフラ整備をめぐる中国の影響を抑制しているかについて神経をとがらせています。

また、米国海軍第6艦隊が寄港することのあるハイファ港をめぐり、中国国営企業が同港に関与することについて懸念を表明しています。

米中の板挟みとなるイスラエルは難しい対応を迫られています。テルアビブ大学の国家安全保障研究所のイスラエル・中国プログラムの責任者であるアサフ・オリオン氏は「中国との貿易を続ける一方で、米国との同盟関係を裏切ることがないよう、適切な線引きをしなければならない」と説明しました。

米国の圧力を受け、イスラエルは安全保障の観点から外国企業による投資の可否を審査する諮問委員会を設置したばかりです。しかし、その一方で中国とのFTA締結に動いている事実は、米国と安全保障をめぐる懸念を共有しつつも、中国との通商関係を強化するというバランス取りに苦慮している姿勢を浮き彫りしています。

こうした中でイスラエルが計画通り対中FTAを締結できるかどうかは予断を許さないです。イスラエル経済産業省のコーエン外国貿易局長は「対中交渉はいわば“ハーフタイム”にあり、米中双方との市場アクセス拡大に注力している。わが国は象同士のけんかを見ているネズミのようなものだ」と話したとされています。

一帯一路構想によって中国と中東諸国の経済的な結びつきが強まれば、今後何が生じるのでしょうか。

一つに、中国の中東接近によって、中東地域における米中摩擦が増えるかもしれないです。中東は地理的にアジア、欧州、アフリカの真ん中に位置し、中国が進めるシルクロード経済ベルト上にあります。中国による展開が進めば進むほど、米中摩擦の可能性は高まるでしょう。中国は、表立って米国との政治的対立は避けようとするでしょうが、今後の中東情勢において大きな利害関係者になるかもしれないです。

それにしても、やはり中国の中東における経験と知識の不足という壁が立ちはだかったいます。これが中国の実態です。中国の中東への進出は、中国が新たに大きな危険を抱え込むということでもあります。

そもそも、イスラム教の本質など中国人の多くはほとんど理解していないのではないでしょうか。私達の先進国の人間が、想定する平和とは、戦争のない状態です。少なくとも、中国でもこの考えは、先進国と変わらないかもしれません。

ところがイスラム教の想定する平和は、これとは随分違います。いくら戦争がなくてもイスラム教が世界を支配していない場合は平和ではなく、だからその平和を実現するために戦い続けなければならないというのがイスラムの考えで、これをジハードというのです。私達から見るとテロでも彼らから見ると宗教的な義務なのです。そういう観点からすると、イスラム教は平和の宗教ではありません。

テロも宗教的な義務

これは、意外と習近平の考えと会い通ずるところがあるかもしれません。なぜなら習近平も世界の新たな秩序、それにも中国の価値観でそれをつくりあげようとしているからです。

ただし、中国の国内のようなやり方で、中東でもゴリ押しすると、とんでもないしっぺ返しを食らうかもしれません。東南アジアでやっているように、多額の借款で中東諸国の港や、施設などを取り上げる等のことをすれば、それこそテロの標的になるということも十分考えられます。

さらに、先日もこのブログでも解説したように、これだけ困難な地域であるにもかかわらず、それに対する見返りとしては、石油だけということができます。そもそも、中東で一番豊かな国ともみられているサウジアラビアですら、そのGDPは日本の福岡県と同程度です。

中東全部をあわせても、GDPということでは、九州全体にも満たないのです。私自身は、米国がこの地域への関与を弱めることが大正解だと思います。無論、トランプ氏にとって大きな選挙基盤でもある、米国福音派は、イスラエルを守ることは米国の義務であると考えているようで、そのためトランプ氏はすぐに中東からの関与をやめてしまうということはないです。

ただし、日本としては石油の大部分をこの地域から輸入しているわけですから、米国とは事情が異なります。日本が普通の国であれば、米国よりもさらに、中東に関与を深めていたかもしれません。それこそ、今頃米国にとって変わろうとしていたかもしれません。ただし、イスラエルと米国の関係は日本も無視はできません。

しかし、そのイスラエルが中国との関係を強化しようとしているのですから、これはトランプ大統領にとっても、中東からの関与を減少させることに間する良い言い訳にもなるかもしれません。

中国やロシアが中東に拘泥して、体力を消耗させるようにもっていき、トランプ大統領は、やはり中国との対峙に再優先順位を置き、中国の体制変換を促すか、それが不可能であれば、中国の経済が衰退して、他国に影響を及ぼせなくなるくらいまで、冷戦を継続すべきです。

中国は中東への危険な一歩を踏み出したようです。本当は、一帯一路のため中東がどうのこうのなどということなどは捨て置き、冷戦に対する備えをすることを最優先すべきです。習近平は未だ、米中冷戦はいずれ終焉し、米中は元通りなるという甘い幻想を捨てきれないようです。

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