2021年1月28日木曜日

牙を剥く中国、「海警法」のとんでもない中身―【私の論評】未だに尖閣、台湾を含む第一列島線を確保できない中国の焦り(゚д゚)!

牙を剥く中国、「海警法」のとんでもない中身

いよいよ東シナ海、尖閣で実力行使か


(福島 香織:ジャーナリスト)

 日本の大手メディアでも大きく報道され注目を集めている中国の「海警法」が全人代(全国人民代表大会)常務委員会で可決され、2月1日から施行される。

 この法律は、昨年(2020年)6月に可決した武警法改正と、これから審議される海上交通安全法改正案とセットとなって、おそらく日本の尖閣諸島を含む東シナ海情勢や、南シナ海情勢に絡む米国との関係に大きな影響を与えていくことになろう。この一連の法改正は、中国と海上の島嶼の領有権を巡り対立している諸外国にとって大きな脅威となることは間違いない。

 「海警法」成立の最大の意義は、中国海上警察が戦時に「中国第2海軍」としての行動に法的根拠を与えられるということだろう。つまり、戦時には法律に基づいて武装警察部隊系統の中に明確に位置付けられ、中央軍事委員会総指揮部、つまり習近平を頂点とする命令系統の中に組み入られることになる。

 そしてその背景にあるのは、習近平政権として、東シナ海、南シナ海における島嶼の主権をめぐる紛争に対してより積極的なアクションを考えている、ということではないだろうか。

 2018年からすでに中国人民武装警察部隊海警総隊司令員(中国海警局長)が、人民解放軍海軍出身で、かつて東海艦隊副参謀長を務めた軍人であることは、海警が準軍隊扱いであり、その目標が東シナ海、台湾海峡にあるということを示していた。

 尖閣の建造物を強制撤去?

 海警法の全文はすでに司法部ホームページなどで公表されている。昨年12月3日まで公表されていた草案は11章88条だったが、可決された法律は11章84条となった。ニュアンスが若干マイルドになった印象もあるが、国際社会が懸念していた内容は大きく変わっていない。

 まず最大のポイントは第20条の、「中国当局の承認なしに、外国組織、個人が中国管轄の海域、島嶼に建造建や構築物、固定、浮遊の装置を設置した場合、海警がその停止命令や強制撤去権限をもつ」ことだろう。日本にとっては、例えば尖閣諸島の魚釣島に日本青年社が建てた燈台は、この法律に照らしあわせれば、中国当局に撤去権限がある、という主張になる。万一、中国の第2海軍の装備を備えた海警船が、本気でこの燈台の撤去に動き出したとき、日本は海上保安庁が対応にあたるのだろうか。それとも自衛隊が出動するのだろうか。

 米国や東南アジアの国々にとって気になるのは、第12条2項。重点保護対象として、排他的経済水域、大陸棚の島嶼、人工島嶼が挙げられている。これは南シナ海で中国がフィリピンやベトナムと争って領有を主張する南沙(スプラトリー)諸島や西沙(パラセル)諸島、そして台湾が実効支配する太平島や東沙諸島を想定しての条文だろう。

 第21条には、「外国軍用船舶、非商業目的の外国船舶が中国管轄海域で中国の法律に違反する行為を行った場合、海警は必要な警戒と管制措置をとり、これを制止させ、海域からの即時離脱を命じる権利を有する。離脱を拒否し、深刻な損害あるいは脅威を与えるものに対しては、強制駆逐、強制連行などの措置をとることができる」とある。となれば、中国が領有を主張する海域、例えば尖閣諸島周辺で、海上保安庁や海上自衛隊の船が海警船と鉢合わせすれば、どのような衝突が起きても不思議ではない。

 第22条では「国家主権、海上における主権と管轄が外国の組織、個人による不法侵入、不法侵害などの緊迫した危機に直面した時、海警は本法およびその他の関連法に基づき、武器使用を含む一切の必要な措置をとって侵害を制止し、危険を排除することができる」とある。つまり、日本側が大人しく海域から離脱しなければ、十分に戦闘は起こりうる、ということになる。

 第27条では、「国際組織、外国組織、個人の船舶が中国当局の承認を得て中国管轄海域で漁業および自然資源勘査、開発、海洋科学研究、海底ケーブルの敷設などの活動を行うとき、海警は法にのっとり人員と船を派遣して監督管理を行う」とある。

 そして第29条は、「違法事実が決定的で、以下の状況のいずれかに当たる場合、海警当局の執行員は現場で罰則を科すことを決定できる。(1)個人に対する500元以下の罰金あるいは警告を課す場合、組織に対する5000元以下の罰金あるいは警告を課す場合。(2)海上で罰則を科すことができず、なお事後処罰が困難な場合。その場で決定した罰則は所属の海警機構に速やかに報告を行う」とある。

 第30条では、「現場の罰則は適用されないが、事実がはっきりしており、当人が自ら過ちを認め罰を認めた場合、かつ違反の事実と法律適用に異議のない海上行政案件の場合、海警機構は当人の書面の同意書を得て、簡易の証拠とし、審査・承認して迅速な手続きを行う」としている。

 以上の条文を続けて読むと、例えば尖閣諸島周辺で日本人が漁業を行ったり海洋調査を行うには、中国当局の承認と監視が必要で、承認を得ずに漁業や海洋調査を行って海警船に捕まった場合、罰金を支払う、あるいは書面で罪を認めれば、連行されて中国の司法機関で逮捕、起訴されることはないが、日本人が「尖閣諸島は中国の領土である」と認めた証拠は積み上がる、ことになる。

 外国船に対して武器を使用する状況とは

 武器の使用規定については第6章にまとめられている。それによると、海警警察官は次のような状況において携行武器を使用できるとしている。

(1)法に従い船に上がり検査する際に妨害されたとき。緊急追尾する船舶の航行を停止させるため
(2)法に基づく強制駆逐、強制連行のとき
(3)法に基づく執行職務の際に妨害、阻害されたとき
(4)現場の違法行為を制止させる必要があるとき

 また、次の状況においては警告後に武器を使用できるとしている。

(1)船舶が犯罪被疑者、違法に輸送されている武器、弾薬、国家秘密資料、毒物などを搭載しているという明確な証拠があり、海警の停船命令に従わずに逃亡した場合
(2)中国の管轄海域に進入した外国船舶が違法活動を行い、海警の停船命令に従わず、あるいは臨検を拒否し、その他の措置では違法行為を制止できない場合

 さらに次の場合は、個人の武器使用だけでなく艦載武器も使用できるとしている。

(1)海上における対テロ任務
(2)海上における重大な暴力事件への対処
(3)法執行中の海警の船舶、航空機が、武器その他の危険な手段による攻撃を受けた場合

 国際法との整合性はグレーだが

 そもそも中国はなぜ今、海警法を制定したのか。米国の政府系メディア「ボイス・オブ・アメリカ」に、上海政法学院元教授の独立系国際政治学者、陳道銀氏の次のような気になるコメントが掲載されていた。

「中国海警は将来、さらに重要な影響力を持つようになる」
「目下、中国海軍の主要任務は近海防衛だ。もし戦時状態になれば、海警の法執行パワーはさらに強化される。きっと海軍と同調協力する。南シナ海、台湾海峡、東シナ海などの近海作戦において海上武装衝突が起きる場合、対応するのは海警であろう」
「海警局の法執行の根拠となる法律は今までなかった。中国の目下の建前は法治国家の建設だ。法的根拠を明確にしたことで、少なくとも今後は外部勢力に海警がどのようなことをできるかをわからせようとするだろう」

 つまり習近平政権として、海警設立の本来の目的を周辺諸国に見せつける準備がようやく整ったことになる。今後、“近海防衛”における衝突発生の可能性がますます高まるが、中国としては、海洋覇権国家に至るための、たどるべき道をたどったというわけだ。

 ただし、この海警法が国際法と整合性があるかというと、きわめてグレーゾーンが大きい。例えば法律にある“管轄海域”と表現されている海域はどう定義されているのか。国際海洋法に基づけば、中国が勝手に人工施設をつくった南シナ海の岩礁は、中国の管轄海域でもないし、尖閣諸島周辺海域も“まだ”中国の管轄海域ではない。

 だが、67ミリ砲の艦砲と副砲、2基の対空砲を含む海軍艦船なみの艦載兵器を備えた海警船が目の前に現れ、その照準が自分たちに向けられたとき、漁船や海洋研究船の船員たちは「この海域は中国の管轄海域ではない」と強く言えるだろうか。

【私の論評】未だに尖閣、台湾を含む第一列島線を確保できない中国の焦り(゚д゚)!

上の記事をご覧になれて、皆さんはどう思われるでしょうか。私自身は、以上のような記事は、当然中国を警戒し、中国の横暴に備えるべきであることを主張しているのだとは思いますが、大事な部分が抜けていると思います。

それは、日本が中国に尖閣を奪取されたときに、何も打つ手を考えていないようにも見えることです。このブログでも度々掲載しているように、日本はこのような事態に備えています。そうして、中国はこの日本の備えを打ち破ることは、後少なくとも数十年は不可能です。

では、その備えとは何かといえば、日本の米国に次ぐ世界第二の対潜哨戒能力と、静寂性に優れた高性能の潜水艦です。

世界各国海軍が使用している潜水艦は現在、主要な推進装置に原子力機関を使用するかどうかで、原子力潜水艦と通常動力潜水艦に分類されています。

通常動力は基本的に、水中潜航中は電池で推進モーターを回します。電池がなくなると、ディーゼルエンジンで推進しつつ、電池を充電するため水上に浮上するか、水上に空気吸入用シュノーケルを突き出して水面近くの水中を航行します。

例えるならば、ハイブリッド自動車のような仕組みです。原子力潜水艦が登場するまで、潜水艦とは通常動力潜水艦であり、このような潜水艦はディーゼル・エレクトリック潜水艦とも呼ばれます。

米海軍はかつては通常動力潜水艦を建造し、運用していました。しかし、原子力潜水艦を採用してからは通常動力潜水艦を捨て去り、現在は原子力潜水艦しか運用していません。それに伴い、原子力潜水艦を製造しているアメリカの潜水艦メーカーは、通常動力潜水艦を造る能力を失ってしまっています。

通常動力潜水艦を持たない米海軍は潜水艦戦訓練のためスウェーデン海軍から通常動力AIP潜水艦「ゴトランド」を乗組員ごと借り受けました。(提供:米海軍 撮影:2005年米海軍、サンディエゴ米海軍潜水艦基地)

この潜水艦は、米軍の演習において「空母を撃沈」しています。もちろん空母が単独で移動していたわけではなく、空母を護衛する潜水艦を含む艦隊と空母打撃群として行動していたときに察知されずに接近し、雷撃命中判定を得たと言う事です。米軍海軍が通常型潜水艦を甘く見ていた事が明らかになった一件でもあり、米軍では通常型潜水艦対策のモデル艦として運用されている優秀な艦です。

米軍がスウェーデンから借り受けた通常動力AIP潜水艦「ゴトランド」

一方、原子力の使用に抵抗感が強い日本では、原子力潜水艦は採用されず、海上自衛隊の潜水艦は全て、通常動力潜水艦です。三菱重工業(神戸)と川崎重工業(神戸)が建造しています。日本技術陣が生み出す海自潜水艦は、世界でも屈指の性能を有していると国際的に評価が高いです。

とりわけ2018年10月4日に進水した「おうりゅう」(三菱重工業が製造中)は画期的な新鋭潜水艦で、アメリカ海軍はじめ、世界各国の海軍関係者の間で注目されている。なお、「おうりゅう」はすでに2020年3月に、就役した。第1潜水隊群第3潜水隊に編入され呉基地に配備されました。

「おうりゅう」が世界中から注目される理由は、世界に先駆けてリチウムイオン電池を採用したことありました。

「おうりゅう」は「そうりゅう」型潜水艦と呼ばれる通常動力潜水艦の11番艦です。それまでの10隻の「そうりゅう」型潜水艦は、スターリングAIP(非大気依存推進)システムとディーゼル・エレクトリックシステムを併用する推進方式でした。

この方式の通常動力潜水艦はAIP潜水艦と呼ばれ、原子力潜水艦でないにもかかわらず、極めて長期間にわたって海中に潜航した状態を維持できるため、各国海軍では先進的潜水艦として評価が高いです。とは言え、実際にAIP潜水艦を建造している国は、スウェーデン、日本、ドイツ、中国など極めて少数です。

ただし、いずれの潜水艦も静寂性(ステルス性)は、日本の潜水艦よりも劣ります。特に、中国の潜水艦は工作技術が格段に劣っているため、静寂性(ステルス性)に劣り、日米を含む先進国のソナーにすぐに発見されてしまいます。

これとは、反対には日本の潜水艦は、静寂性に優れ、中国の対潜哨戒能力ではこれを発見することはできません。これは、中国に発見されることなく、日本の潜水艦は世界中にいかなる海域でも巡航することができるということです。

しかしながら、この「おうりゅう」からはAIPシステムが姿を消し、ディーゼル・エレクトリックシステムに回帰しました。ただし、AIP潜水艦を含むこれまでの通常動力潜水艦で使われてきた鉛電池(エレクトリック推進の動力源)に代えて、リチウムイオン電池が搭載されたのです。

スマートフォンやラップトップコンピューターなどに採用されているリチウムイオン電池は、これまでの潜水艦で用いられてきた鉛電池に比べて充電時間が大幅に短縮できるという、潜水艦にとっては何より望ましい特徴を持ちます。

そうして何よりも、優れているのは静寂性です。日本の高度の工作技術とリチュウム電池を使用することにより日本の「おうりゅう」以降の通常型潜水艦は、静寂性(ステルス性)においては、ほぼ「無音」といっても良い性能を持つに至りました。この意味するところは、日本の潜水艦はいかなる国の対潜哨戒もくぐり抜け、自由に世界中のどこの海域でも潜航できるということです。

リチュウム電池化は、他にも多くのメリットをもたらしました。第1次大戦や第2次大戦中の潜水艦は、必要に際して潜航可能な軍艦という位置づけだったが、現代の潜水艦は、水中を潜航して作戦行動をとることが前提となっています。そのため、電池の持続時間を極大化するとともに、電池の充電時間を極小化することは、以前の潜水艦以上に現代の通常動力潜水艦にとっては最大の関心事でした。

さらに、コンパクトで強力なリチウムイオン電池は、鉛電池と同じ容量の場合、発生するエネルギー量は2倍以上といわれていて、潜水艦の水中機動性能を飛躍的に向上させることができます。つまりは潜水艦の作戦能力を強化することを意味します。

また鉛電池は、戦闘中などに潜水艦が激しい動きを余儀なくされた際、内部から酸素が放出されて電池が壊れたり、水素が放出されて電池が爆発したり、電池内に充塡されている硫酸に海水が浸入して有毒ガスを発生したりするといった危険性がありました。しかし、リチウムイオン電池にそのような危険性はありません。

このようにリチウムイオン電池は潜水艦にとって明らかに多くのメリットをもたらします。しかし、かねてよりリチウムイオン電池は何らかの状況下で加熱された場合、温度の急上昇が起こり、発火・爆発する恐れがあると指摘されていました。

実際、スマートフォンや「テスラ・モーターズ」の電気自動車などで発火・炎上事故が発生しています。しかしながら、日本の技術陣(三菱重工業、GSユアサ)は強靱で安定した隔壁や、自動消火システムなど極めて安全性の高い潜水艦用リチウムイオン電池を生み出しました。

2016年発火したサムスンのスマホ。リチュウム電池は中国製だった

20年に「おうりゅう」が就役し、海上自衛隊によりリチウムイオン電池潜水艦の作戦運用が良好であったため、AIP潜水艦に代わって、リチウムイオン電池潜水艦が通常動力潜水艦の花形的存在となりました。

そうして、日本の潜水艦は昨年の「たいげい」(リチュ厶イオン式)の進水をもって、
2010年版『防衛計画の大綱』で述べた、国益の保護と「来たり得る脅威への対処」を理由に、潜水艦の保有数を16隻から22隻に増やす方針を実現しました。

日本は、旧型を保持しつつ新型で補う戦略を取りました。つまり、おやしお型潜水艦の就役期間を18年から24年に延長する一方で、そうりゅう型やたいげい型に代表される新型潜水艦の建造を加速したのです。「たいげい」は就役後、先に就役したおやしお型潜水艦10隻及びそうりゅう型潜水艦11隻と共に海上自衛隊の今後の潜水艦戦力の中核となります。

公式データによと、新たに進水した「たいげい」は長さ84メートル、幅9.1メートルで、基準排水量は3000トンに達し、乗員70名体制。動力源としてリチウムイオン電池を採用し、水中航行時間は現在そうりゅう型が保持する約2週間という記録を遥かに上回っています。

昨年進水した「たいげい」

「たいげい」型の進水は、リチウムイオン電池技術がすでに比較的成熟し、大規模装備の潜水艦部隊の条件を満たすことを示しています。

また、従来のディーゼル・エレクトリック方式潜水艦のシステムにあった様々な部品を取り払ったことで、「たいげい」は水中音響学的特徴がさらに減弱し、敵による監視や追跡の難度が高まりました。平たくいえば、いかなる国も「たいげい」を探知することはできないということです。

火力面では、そうりゅう型と同等の武器システムを搭載しています。艦首に533mm魚雷発射管6門を装備し、米国のMk-37魚雷、日本の89式魚雷、AGM-84対艦ミサイル「ハープーン」の発射に用います。搭載弾数は30発です。

近年、日本は自国の潜水艦のアジア太平洋周辺海域における活動状況を控えめにしか公表してないため、日本国内ではその実力がほとんど知られていません。例えば昨年は海上自衛隊の潜水艦とヘリコプター母艦「かが」、護衛艦「いかづち」などによる特別派遣部隊がアジア太平洋の重要海域で合同演習を実施した後、ベトナム・カムラン湾に寄港しました。

日本の主な戦略的企図は、第1に、対潜演習を利用して、アジア太平洋の重要海域における自らのプレゼンスを強化し、空中、水上、水中の「全方位、立体式」介入を可能にする。第2に、米国のインド太平洋戦略と連携して、海洋安全保障が牽引する形で、地域の重要国との防衛協力関係を格上げすることです。

日本は潜水艦の建造と活動の動向を公表すると同時に、アジア太平洋地域の関係国に対する関係強化と、支援を徐々に強めています。日本の地域戦略の意図に対して中国が懸念するのは、必至であり、アジア太平洋の海洋安全保障情勢の安定に寄与することになります。

これについては、このブログで過去にも述べきたように、日本の対潜哨戒能力が中国よりはるか優れていて、潜水艦の静寂性(ステルス性)も優れているため、今後少なくとも数十年は、日本は中国の尖閣への侵攻を含む日本侵攻を防ぐことができます。

何しろ、日本の潜水艦は中国に発見されることなく、何れの海域でも自由に潜航できるのに対して、中国の潜水艦は日本にすぐに発見され、すぐに撃沈されることになるでしょうから、勝負は最初から決まっています。中国は「おやしお型潜水艦」ですら、探知するのが困難です。

それでも、中国が尖閣を奪取した場合、日本はすぐに動くことができず、国会で論議が行われるかもしれませんが、1年以上も放置したというのであれば、中国の意図は成就するかもしれませんが、3ヶ月以内にでも政府が決心して重い腰をあげて、尖閣を守る決心をすれば、必ず奪還できます。

それに、中国が尖閣を奪取をすれば、日本世論は中国に激昂し、尖閣の奪還はもとより、中国の横暴に対抗するため、改憲がなされるどころか、中国成敗の声がまきおこることになるでしょう。なにしろ、昨年の米ピュー・リサーチ・センターの世論調査では、日本人の86%もが、中学に対して否定的な考えを持っていることが明らかになっています。

日本は数隻の潜水艦隊が、交代で常時尖閣を包囲すれば良いのです。そうして、上陸した人民解放軍か民兵の補給を絶てば良いのです。近づく補給船には、警告し、それでも従わない場合は撃沈すれば良いです。輸送機も警告して、それに従わなければ、撃墜してしまえば良いのです。

こういうと、中には、中国が強大な軍事力で攻めてきたらどうなるとか、核攻撃したらどうなると言う方もいらっしゃるかもしれませんが、中国が、強大な陸上部隊を送ってきても、超音速ミサイルで攻撃しようとしても、ドローンを何千機、何万機派遣しても、宇宙兵器で攻撃しようとしても、発見できない敵に対しては攻撃できません。攻撃しても無駄になるだけです。

それに、核兵器など使えば、米国や他国も巻き込む懸念もありおいそれと使うことはできません。尖閣諸島を奪うために核兵器を使えば、馬鹿丸出しで、世界から嘲笑の的になります。それに、世界の中国に対する脅威は頂点に達し、多くの国々が中国と戦う用意をすることになるでしょう。日本もそうなります。

さすがの日本も、中国に対しては軍事攻撃も辞さない構えをするでしょう。今まで、攻撃をしてこなかった領海・領空を侵犯した艦船や航空機などにも、躊躇なく攻撃を加えることになるでしょう。

日本は、尖閣を奪還するにしても、潜水艦で包囲すれば良いだけなので、大きな犠牲も出さず、補給を絶ち、最終的には尖閣に上陸した部隊を全員捕虜にすることになると思います。

こうしたことは、当然のことながら、人民解放軍の幹部は理解しているでしょう。このブログでも何度か述べているように、中国海軍のロードマップでは、昨年2020年には中国海軍は第2列島線を確保することになっていますが、未だに台湾や尖閣諸島を含む第一列島線すら確保できていません。

その苛立ちが、「海警法」の改定や、頻繁な尖閣諸島付近での示威行動につながっているのだと思います。中国としては、軍事的に到底かなわないので、様々な脅しを何度もしかけることで、日本が折れてくるのを狙っているのでしょう。

しかし、このような脅しに屈するべきではありません。日本としては、そろそろ、かなりウザくなっきましたから、潜水艦を用いて脅すくらいのことをしても良いでのではないかと思います。日本はすでに潜水艦を尖閣諸島付近に潜ませているでしょうが、なかなかそれを表に出さないので、中国は挑発して試しているというとこがあるのかもしれません。

これには、どこかで対処しないと、中国側は「日本はいくら挑発しても日本にとって無敵であるはずの潜水艦は出してこない」との誤ったメッセージを与えてしまいます。そうなる前に、突然艦船にソナーを照射するとか、中国軍からすれば全く予想していなかったところで、魚雷を発射したり、ミサイルを飛ばして爆発させるなどの演習を尖閣付近行っても良いかもしれません。


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2021年1月27日水曜日

バイデン政権の対中政策で「戦略的忍耐」復活か オバマ政権時代の外交失策を象徴 識者「政権の本音が出た可能性」 ―【私の論評】当面外交が定まらないバイデン政権だが、日本政府は最悪の事態に備えよ(゚д゚)!

 バイデン政権の対中政策で「戦略的忍耐」復活か オバマ政権時代の外交失策を象徴 識者「政権の本音が出た可能性」 

激突!米大統領選

アントニー・ブリンケン新国務長官

 ジョー・バイデン米政権の外交・安全保障チームが、やっと本格始動する。米上院本会議は26日、国務長官にアントニー・ブリンケン氏(58)を充てる人事を賛成多数で承認したのだ。バイデン政権は「対中強硬姿勢の維持」を表明したばかりだが、報道官から突然、「戦略的忍耐(Strategic patience)」というキーワードが飛び出し、物議を醸している。バラク・オバマ政権時代の外交失策を象徴する言葉であり、日本をはじめ、同盟国の懸念となりそうだ。


 「(中国は)米国にとり最も重大な外交的懸案」「(ドナルド・トランプ前政権に続き中国に)強い立場で臨んでいく」

 国務長官に指名されたブリンケン氏は19日、上院外交委の公聴会でこう語った。ハーバード大学卒、コロンビア大学法科大学院修了のエリートで、オバマ元政権で国務副長官を務めた。バイデン大統領の次男に中国疑惑が指摘されるなか、ブリンケン氏の存在が安心感を与えていた。

 ところが、中国の習近平国家主席による「ダボス・アジェンダ」での講演を受けて、ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は25日、次のように語った。

 「米国は、21世紀のありようを決める苛烈な戦略的競争を中国と展開している」「多少の『戦略的忍耐』を持って対応したい」

 「戦略的忍耐」とは、オバマ政権時代に対北朝鮮政策に用いられた言葉で、北朝鮮に圧力をかけながら態度変更を待つ戦略だ。だが、北朝鮮はこの間に、核・ミサイル開発を高度化させた。外交界では「大失敗」「大失策」というのが定説となっている。

 トランプ前政権でも、マイク・ペンス副大統領が2017年の訪韓時に、「戦略的忍耐の時代は終わった」と皮肉を込めて語っている。

 サキ報道官は、オバマ元政権で国務省報道官を務めた。バイデン政権が、中国に対して「戦略的忍耐」という用語を出してきた意味は何なのか。

 米国政治に詳しい福井県立大学の島田洋一教授は「サキ報道官が『戦略的忍耐』が『無為』『失敗』の代名詞とされてきたことを熟知していないわけがない。バイデン政権の本音が出た可能性もある。報道官は、首脳会談で大統領と同席が許され、ときに助言する立場でもある。『戦略的忍耐』という言葉を用いながら、政権側から釈明や訂正もまだ出ていないのは危ういのではないか」と語った。

【私の論評】当面外交が定まらないバイデン政権だが、日本政府は最悪の事態に備えよ(゚д゚)!

米・ホワイトハウスのサキ報道官は1月25日、アメリカの対中政策について、「米中は厳しい競争関係にある」と対抗姿勢を示す一方、「戦略的忍耐を持ってこの問題に取り組みたい」と話し、今後、同盟国などと協議しながら中国に対応して行く考えを示しました。


ただ「戦略的忍耐」という言葉は、オバマ政権のときに北朝鮮に使っていた言葉です。あまり良いイメージはありません。オバマ政権が戦略的忍耐をしていたら、北朝鮮はどんどん核開発してしまいました。

多くの人は、結局この時と同じような姿勢で臨みつつ、放置ということなのかと思ってしまうかもしれません。しかしこれは報道官見解です。トランプ氏であれぱば、トップダウンでツイッターで発信していたでしょう。

バイデンさんはそういうことはしません。全部ボトムアップでやって行くでしょう。「厳しい姿勢」と言いつつ、「戦略的忍耐」と言うということは、どちらを言っているのかわかりません。「途中でどちらかを消せばいい」と考えている可能性が高いです。

結局報道官報道官レベルに発言させ、反応を探っている状況であると考えられます。両方言っておいて、大統領がどちらかを言うという形にするのでしょう。大統領にフリーハンドで残しておき、様子をみて最終的に大統領が意思决定してそれを、正式に公表するのでしょう。

あとで「大統領はこう決めた」というやり方です。ボトムアップでやって行くと、こういうことが多いです。大統領ではないのに食い違ったら困るので、両方言っておく方が無難です。報道官レベルではまだなんとも言えない状況にありながら、それでも質問等があれば応えないわけにもいかず、無難にこなしているところでしょう。

バイデン政権は、始まったばかりで外交方針がわからないので、「戦略的忍耐」「米中は厳しい競争関係にある」などの表現がされると、1つ1つ反応して「どうなのか」と考えてしまいがちです。

こういうときも全体で判断すべきです。AもBもという言うということは、まだわからないし決まっていないということと解釈すべきです。トランプ大統領からの引き継ぎ期間等がほとんどなかったので、これから決めるのでしょう。

特に中国について、「対抗姿勢は前と同じだ」と言っているということは、あとから変わるということです。トランプ政権を引き継いでいるのだから、スタート時点は当然、同じなのです。でもそのあとはわからないです。3ヵ月から半年くらい経たなければ、本音はわからないのではないでしょうか。

特に政権交代したときには、そのくらいしないと定まって行かないです。トランプ氏も、大統領選のときは北朝鮮のことは何も話していませんでした。外交はその時々で変わって行くので今の時点では、わかりません。

一方、国内政治では、イエレン財務長官が正式に指名されました。国内は外交に比較するとかなりわかりやすいと思います。当然のことながら、当面はコロナ対策一色です。イエレン氏は元FRB議長でしたし、雇用重視の人です。失業率を下げるために猛烈な財政出動をするでしょう。

現在は、外交より国内優先になるので、そういう意味で、中国についてバイデン政権がどのような政策をとるかはまだわからないのです。

米国の国内財政出動は1.9兆ドルで、日本円にして200兆円規模だと言われています。これは、余程のことがない限り、通るでしょう。下院では、民主党が優勢ですし、上院は民主と共和党の割合は、50対50です。。

最終的にはは副大統領が投票できるので上院も民主党が多数だと思って良いです。1.9兆ドルには、共和党も反対しづらいでしょうあるとすれば、財政懸念があるというくらいです。いまは長期的な低金利水準ですから、長期的にはメリットがあるとイエレンさんは言っています。長期債を財源にすることは全く正しいです。

ただし、「戦略的忍耐」という言葉は時には、何もせずにして相手の暴走を傍観する口実にも使われるものです。バイデン政権は対中姿勢は心配ではあります。サキ報道官も、明らかに大失敗した「戦略的忍耐」という言葉を使うべきではなかったと思います。

トランプ政権のポンぺオ国務長官は離任直前の19日、中国共産党政権によるウイグル自治区のウイグル族ら少数民族への迫害を「ジェノサイド」(集団虐殺)と認定するなど、任期が終わる直前まで中国共産党政権の脅威をアピールしてきました。

ポンペオ前国務長官

その後継者、アントニー・ブリンケン新国務長官(オバマ政権下では国務副長官)は上院承認公聴会でトランプ政権の中国政策に同意すると発言していました。

バイデン新大統領もブリンケン新国務長官も外交問題の専門家であり、中国共産党政権の実態をよく知っているはずです。それにもかかわらず、バイデン政権発足後の21日、米国務省のウェブサイトから「中国の脅威」、次世代移動通信網(5G)セキュリティらの問題が主要政策項目(Policy Issues)から取り下げられていることは何を意味するのでしようか。

さらに、同サイトには、反腐敗、気候と環境保護、新型コロナウイルスなど17項目が掲載されているにもかかわらず、先に述べた「中国の脅威」や5G項目が削除されています。その理由は説明されていません。そうして、今回の「戦略的忍耐」発言です。しかも、中国に対する施策に関連した発言です。

中国共産党政権がバイデン新政権発足を受け、覇権政策を修正して対話路線に変えたということはありません。にもかかわらず、米国務省の主要政策項目から「中国の脅威」を削除することは北京に誤解を与える危険性があります。

中国共産党は相手が弱く出れば、必ず強く出てきます。バイデン新政権が中国に対して懐柔政策に出れば、北京は待ってましたといわんばかりにさまざまな工作を展開することになるでしょう。

「中国の脅威」だけではありません。新政権の対イラン政策も懸念材料です。バイデン新大統領は就任する前から、トランプ大統領が離脱したイラン核合意に再復帰する意向を表明してきました。

バイデン氏は昨年9月の選挙戦でトランプ大統領のイラン核合意からの離脱を「失敗」と断言し、「トランプ大統領がイラン・イスラム革命防衛隊ゴッツ部隊のソレイマニ司令官を暗殺したためにイランが米軍基地を攻撃する原因となった」と述べ、対イラン政策の修正を示唆してきました。

トランプ前米大統領は2018年5月8日、「イランの核合意は不十分」として離脱しましたが、イラン当局は米国の関心を引くために同国中部のフォルドゥのウラン濃縮関連活動で濃縮度を20%に上げたばかりです。バイデン氏はイランの核の脅威を軽視してはならないでしょう。

バイデン新大統領はトランプ政権の新型コロナ対策が不十分だったと頻繁に批判してきましたが、40万人以上の米国人の命を奪った新型コロナが中国武漢発であり、中国政府が感染発生直後、その事実を隠蔽した事実に対しては批判を控えてきました。

マスク嫌いのトランプ前大統領は新型コロナの発生源については感染拡大当初からはっきりと中国側を批判してきました。


バイデン民主政権下には既に相当親中派・媚中派が入り込んでいるとみるべきでしょう。同時に、リベラルなメディアには中国資本が入り、情報工作をしています。それだけにバイデン新大統領が明確な対中政策を確立しなければ、中国共産党の懐柔作戦に嵌ってしまう危険性が大きいです。

バイデン新政権下の国務省ウェブサイトの主要政策項目から「中国の脅威」が削除されたというニュースと「戦略的忍耐」はその懸念を裏付けるものとみて良いと思います。

ただし、先にも述べたように、バイデン政権の対中国政策は、3ヶ月、半年後をみないとわからいな部分があるのも事実です。

そのため、少なくと3ヶ月から、半年はトランプ政権の対中国政策が踏襲されることになるでしょう。まだ、若干の時間はあります。日本政府としては、この時間を有効に活用して、他国とも協同したうえで、バイデン政権が中国に対する宥和策が取らないように、働きかけていくべきでしょう。

そのためには、ファイブアイズとの関係強化も、クワッドの強化も役立つでしょう。ファイブアイズは米国内の情報もかなり取得しているでしょう。特に英国や豪州は、バイデン政権の弱みなどもかなりつかんでいるはでず。利用しない手はありません。

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2021年1月26日火曜日

【日本の選択】バイデン大統領就任演説の白々しさ 国を分断させたのは「リベラル」、トランプ氏を「悪魔化」して「結束」はあり得ない―【私の論評】米国の分断は、ドラッカー流の見方が忘れ去られたことにも原因が(゚д゚)!

 【日本の選択】バイデン大統領就任演説の白々しさ 国を分断させたのは「リベラル」、トランプ氏を「悪魔化」して「結束」はあり得ない

トランプ前大統領はアメリカを分断した「悪魔」だったのか

 ジョー・バイデン氏が20日(日本時間21日未明)、第46代米国大統領に就任した。多くの「リベラル」メディアは、バイデン大統領誕生を歓迎しているような様子である。だが、私は素直にこの大統領の就任を祝う気になれない。「リベラル」という病が米国、そして日本を蝕(むしば)んでいるように思えてならないからだ。

 就任演説を読むと「民主主義」を11回、「結束」を8回も呼びかけている。私が注目したいのは「結束」の部分だ。例えば、次のような表現がある。

 「大統領に就任した今日、私は米国を1つにすること、国民、国を結束させることに全霊を注ぐ。国民の皆さんに、この大義に加わってくれるようにお願いする。怒り、恨み、憎しみ、過激主義、無法、暴力、病、そして、職と希望の喪失という共通の敵と戦うために結束すれば、素晴らしく大切なことを成し遂げられる」

 あまりに白々しいセリフだと思うのは、私だけだろうか。

 ドナルド・トランプ前大統領が米国を「分断」させた。だからこそ、バイデン氏は「結束」を強調すると言いたいのだろうが、それほど単純な話ではないだろう。

 真剣に考えてみて、実際に米国を分断させたのは誰なのか?

 米国国民というアイデンティティーを否定し、さまざまなマイノリティーのアイデンティティーを過度に強調してきたのは「リベラル」ではないのか。

 民族的、性的マイノリティーの人権を擁護するのは当然だ。しかし、彼らの人権のみを過度に強調し、米国の庶民を敵視するような風潮がなかっただろうか。こうした米国を分断させる「リベラル」への憤りの念が、トランプ氏への支持につながっていたのだろう。

 ツイッター、フェイスブックといったSNSは、トランプ氏が米連邦議会議事堂襲撃を煽ったとしてアカウントを停止した。「言論を封殺した」という指摘もある。

 常識に立ち戻って考えてみるべきだ。こうした言論の統制が「結束」をもたらすはずがない。自らの意見を表明することすらできないとの大衆の憤りの念は、米国内の分断を深めるだけだ。

 私はトランプ氏を熱烈に支持した一人ではない。日本の国益を第一に考える愛国者として、その外交感覚には危うさを覚えていた者である。だが、彼を「悪魔化」してしまうことを憂慮している。トランプ氏、そしてトランプ支持者を悪魔のように扱うことによって、米国の「結束」が甦(よみがえ)ることはあり得ないからだ。

 「リベラル」は、国民としてのアイデンティティーを否定することが、知的に洗練されたことであるかのようにみなす。

 だが、これは間違いだ。国家なくして人権の擁護はあり得ない。国民としてのアイデンティティーを取り戻すことこそが肝要なのだ。

 ■岩田温(いわた・あつし) 1983年、静岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、同大学院修士課程修了。拓殖大学客員研究員などを経て、現在、大和大学政治経済学部准教授。専攻は政治哲学。著書・共著に『「リベラル」という病』(彩図社)、『偽善者の見破り方 リベラル・メディアの「おかしな議論」を斬る』(イースト・プレス)、『なぜ彼らは北朝鮮の「チュチェ思想」に従うのか』(扶桑社)など。ユーチューブで「岩田温チャンネル」を配信中。

【私の論評】米国の分断は、ドラッカー流の見方が忘れ去られたことにも原因が(゚д゚)!

冒頭の岩田氏の記事にもあるように、バイデンは就任演説で、「大統領に就任した今日、私は米国を1つにすること、国民、国を結束させることに全霊を注ぐ。国民の皆さんに、この大義に加わってくれるようにお願いする。怒り、恨み、憎しみ、過激主義、無法、暴力、病、そして、職と希望の喪失という共通の敵と戦うために結束すれば、素晴らしく大切なことを成し遂げられる」と述べました。



では、具体的にはどうすれば、その結束や団結が達成できるとバイデンは考えているのでしょうか。バイデンは就任演説で「対峙しなければならず、打ち負かすべき政治的過激主義の台頭や白人至上主義、国内テロがある」と明確にし、「私たちが直面する敵、怒り、恨みと憎しみ、過激主義、無法、暴力」という言葉を用いながら、「事実そのものが操作されたり、捏造されたりする文化を拒否しなければいけない」と言明しました。

これは、すべての聴衆にとり、バイデン氏の「打ち負かすべき敵」が誰を指していたのかは明々白々でした。それは、非リベラルであり、トランプ陣営であり、陰謀論者であり、ツイッターやフェイスブックにアカウント停止されるような人々です。つまり、民主党やリベラルエリートの政敵です。

バイデン氏のメッセージに「結束」「団結」と、「打ち負かすべき敵との対峙」が矛盾する形で混在しています。バイデン氏は、自らの政敵であるトランプ陣営に対する戦いに国民を「参戦」させ、同じ敵を叩くことにより、彼が意図する「結束」と「団結」がもたらされることを説いているのです。

事実、バイデンは、「私の魂のすべては、米国をまとめること、国民を一つにまとめること、この国を結束させることにある。すべての国民に、この大義に参加してもらいたい」と支持を訴え、同時に、非リベラルやトランプ支持派を意味する「打ち負かすべき政治的過激主義の台頭や白人至上主義、国内テロ」「敵、怒り、恨みと憎しみ、過激主義、無法、暴力」の打倒を誓っています。

これでは、岩田氏も語っているように、トランプ氏やその支持者を「悪魔化」して「結束」を解いているのであって、米国民の結束を説いているのではないのは、あまりにはっきりしすぎています。だから、白けるのです。

今回の選挙で、トランプ支持者が、極少数派であったとすれば、あるいはこれでも良かったかもしれません。しかし、今回の大統領選挙では実にトランプ大統領7100万票も獲得しているのです。これは、決して少数派とはいえません。半分近くが、トランプ大統領を支持したのです。

この分断を招いたのはトランプだと言う人も多いですが、元々米国社会は分断していましたし、特に90年代以降においては分断の原因は、“リベラル”といわれる側にありました。

経済的な格差が拡大する中、リベラル派が多文化主義やマイノリティなどの問題に入れ込みすぎて、ラストベルトと呼ばれる地域に住む白人労働者層を包摂しなくなっていってしまいました。

民主党オバマ政権は明らかに失敗し、ラストベルトや南部の白人を置いてきぼりにしてしまいました。


"Yes We Can"の兵庫に代表されるように、圧倒的な陶酔感の中で現れた「国民統合」の象徴がオバマでしたが、就任してからは、皮肉なことに国民が徹底的に分断してしまいました。2008年の大統領選挙で国民統合を訴えたオバマが「国民を分裂させた大統領」になってしまったのはたまらない皮肉です。

そこにトランプが出てきて、“俺が支えるぞ”と力強く言ったので、多くの人がこれを支持したのです。いわば民主党やリベラル派に対する失望、絶望がトランプ大統領を生んだのです。

今は米国でも日本でも、“リベラル”と呼ばれるものがリベラルではなくなっているようです。例えばメリトクラシーの問題です。要するに、アメリカンドリームというものがあるのだからこどもたちに勉強させましょう、そうして頑張ればチャンスを与えよう、というもので、共和党も民主党も同じようなことを言っています。

確かにチャンスを与えることは大切です。しかし、そもそも勉強できるような家庭環境ではなかったり、本を読むような環境がなかったりと、意欲さえも持てずに貧困から抜け出ることができない子ども大勢います。

大人でさえ、“頑張ればできる”と言われても、“今さら俺は頑張れないよ”という人たちがいるはずです。そういう人たちにも目を配り、包摂するのが真のリベラルのはずです。しかし、民主党を支持する高学歴エリートそのようなことには無頓着のようです。

 これが、90年代以降の欧米が抱えている問題です。これを解決しない限り、米国の分断は収まりません。

そうして、バイデンはこの問題を解決できないでしょうし、トランプ大統領もこれに対処しようとはしていたのですが、根本的な解決方法はみいだせないままのようでした。

私は、意外とこの問題はAIが解消する可能性があるのではないかと思っいます。多くの人はAIに既存の仕事が奪われることを心配しています。しかし、そうとばかりはいえないと思います。

AIに関しては、夢物語とも脅威とも受け取る人が相半していると思います。しかし、これについては正しい認識をすべきでしょう。

AIに関しては、私自身は簡単なブログラムなら学生のときに作成したことがあります。それで、わかったのですが、結局のところAIも人がブログラミングしないと何もできないということです。

高度に発達したAIでは、それこそ、医師や弁護士などが頭の中で実施しているような、様々なことができますが、いくら高度であっても、手順が決まったものでないとできません。そのかわり、手順の決まったものなら、かなり高度なものでもできます。

先日このブログでGoogleのコロナ感染者の予測の例をあげましたが、この予測ではAIが活躍しています。ただし、このAIが実施しているのは、古典的な微分方程式を解くことです。初期条件を与えれば、AIが微分方程式を解いてくれるのです。

初期条件として与えるのは、その時々でコロナ感染者数のみです。実行再生産数などは考慮していません。その時々のコロナ感染者数の増減の速度には、病院の状況や、ワクチンの有無とか、薬の有無や有効性など諸々すべてが含まれていることとを前提として方程式が組まれています。

そのため、大雑把な傾向を知るには十分に役立ちますが、正確無比ということはあり得ません。しかし、それでも役に立っています。そうして過去の予測の状況をみると確かに大雑把な傾向はつかめます。

過去には、この微分方程式は人が解いていたのですが、AIにそれを実行させると、人間よりはるかに短い時間でできますので。日々頻繁に更新できます。これは、人間にはできないことです。

このようなAIはたとえば、保険数理士などの仕事はすぐに任せられるでしょう。ただし、人間が最終的に確認するので、人が全くいらなくなるということはないでしょうが、それにしても、一人の保険数理士が多数の計算をこなすことになるでしょうから、現在のような人数の保険数理士が必要ではなくなるのは確実です。

このようなことは、今までいわゆる知識労働といわれた職業にすべてあてはまるでしょう。企業のマネジメントや弁護士や医師も例外ではなくなるでしょう。とにかく、手順が決まっていることについては、ほとんどがAIが実施することになるでしょう。

ただ、全く新しいく、手順化されていないものは、AIは無理です。ただし、既存の手続きまではAIが実施し、その後手順化されていない部分のみ人間が実行することになるでしょう。

そうなると、何が起こるでしょうか。かつてのラストベルトや南部の白人がおいてきぼりを食らったように、民主党支持派を含むすべてのいわゆる高学歴エリートがおいてきぼりを食らうことになるのです。

その時になってはじめて、高学歴エリートは、ラストベルトや南部の白人の気持ちが理解できるようになるかもしれません。

ただし、ラストベルトや南部の白人をおいてきぼりにしない方法もあります。それは、トランプ大統領が実施したように、中国からの輸入品に関税をかけることでは、根本的には解決できません。無論、トランプ大統領が中国と対峙したのは間違いではありませんが、それでは米国内の問題を根本的に解決することはできません。

AIにできることとして、手順の決まったことであれば、教育の機会均等ということがあげられます。人間であればできないことがAIにはできます。それこそ、一人の子供朝から晩までつききっきりで無理なく、教育をするということさえ可能になります。そうして、こうした道具を主体的に利用できる人を育てることができれば、教育の格差は解消されることになるでしょう。

そうなると、誰もが自分の強みと弱みをかなり早い時期から認識して、強みを伸ばすことができます。多くの人が強みに特化すれば、それだけで世の中は変わるでしょう。

ドラッカーは人の強みについて以下のように述べています。

誰でも、自らの強みについてはよくわかっていると思う。だが、たいていは間違っている。わかっているのは、せいぜい弱みである。それさえ間違っていることが多い。しかし、何ごとかをなし遂げるのは、強みによってである。弱みによって何かを行うことはできない。(『プロフェッショナルの条件』)

ドラッカーは、この強みを知る方法を教えています。“フィードバック分析”です。なにかまとまったことを手がけるときは、必ず9ヵ月後の目標を定め、メモしておきます。9ヵ月後に、その目標とそれまでの成果を比較します。目標以上であれば得意なことであるし、目標以下であれば不得意なことです。

ドラッカーは、こうして2~3年のうちに、自らの強みを知ることができるといいます。自らについて知りうることのうちで、この強みこそが最も重要です。

このフィードバック分析から、いくつかの行なうべきことが明らかになります。行なうべきではないことも明らかになるといいます。

AIを用いれば、子どもの頃から、そうして大人になっても、詳細なフィードバック分析ができるでしょう。さらにその時代に適応して、自らが最も強みが発揮できるのは何であるかも知る手立てができるようになります。そための知識も、無理なく得られるようになります。

地理的にも自国内はもとより、世界中で、自分の強みを発揮できる地域を特定できるようになるでしょう。そのように考えると、AIは使い方によっては、人にかつては考えられなかったような多様で奥行きの深い様々な機会を提供するようになるでしょう。

しかし、使い方を誤れば、米国のラストベルトや南部の白人のように打ち捨てられる人を増やすことになります。

基本的な考え方としては、テクノロジーでも政治でも、経済でもすべてが社会を良くするため存在しているということを忘れないことだと思います。ただし、これは無論社会主義をすすめることではありません。

わたしたちが異質な新しい社会に入ったことがはじめて明らかになったのは、イデオロギーとしてのマルクス主義と社会システムとしての共産主義の双方の崩壊によってでした。ところが、社会システムとしての共産主義を破壊したのと同じ力が、資本主義も老化させつつあると認識すべきです。

その力は何かといえば〝知識〟です。「基本的な経済資源、すなわち経済用語でいうところの『生産手段』は、 もはや、資本でも、天然資源(経済学の『土地』)でも、『労働』でもありません。それは知識となったのです。そうして、AIはその知識を生産的に効率的に使うためのツールなのです。

ドラッカー氏

「知識」が反資本主義でも、非資本主義でもないドラッカーがいうところの、「ポスト資本主義社会」という新しい〝知識社会〟を誕生させたのです。現在では、知識の仕事への適用である『生産性』 と『イノベーション』によって価値は創造されるのです。そうして、これからの最も重要な社会勢力が、〝知識労働者〟〝テクノロジスト〟になったのです。
きわめて多くの知識労働者が知識労働と肉体労働の両方を行う。そのような人たちをテクノロジストと呼ぶ。テクノロジストこそ、先進国にとって唯一の競争力要因である」(『明日を支配するもの』)
現代社会はすでに、知識に裏付けられた技能を使いこなす者が無数に必要とされるようになったのです。それは技能者というよりも、「テクノロジスト」です。ドラッカーは、若者のなかでも最も有能な者、知的な資質に最も恵まれた者、最も聡明な者にこそ、テクノロジストとしての能力を持ってほしいと語っていました。

先進国の一員であり続けたいのならば、米国がものづくりから離れるなど、もってのほかでした。純粋の知識労働者を持つだけでは、最先端を進むことは不可能だからです。ものづくりこそ、重要なのです。それに気づいたトランプ氏はその点では、優れていたと思います。

物理学、生化学、高等数学の知識について国境はありません。たとえばインドは、その貧しさにもかかわらず、質量ともに、世界最高水準の医師とコンピュータープログラマーを擁します。他方で知識の裏付けはないですが、低賃金でも働く肉体労働者は途上国に豊富に存在します。

じつは、従来は、テクノロジストによる競争力優位を実現していたのはかつて米国だけでした。
テクノロジストについて体系的で組織だった教育が行われているのはごくわずかの国でしかない。したがって今後数十年にわたり、あらゆる先進国と新興国においてこのテクノロジストのための教育機関が急速に増えていく。(『明日を支配するもの』)
本来米国では、テクノロジストを育てていくべきだったのに、それを怠ってしまったのが、失敗の本質だったと思います。

テクノロジストが大勢育っていれば、そうしてサンベルトや南部の白人たちが、テクノロジストに転換していれば、大きくて深刻な分断は起こらなかったはずです。というより、ある程度の分断は、互いに競い合うということで、決して悪いことではないと思うのですが、米国の分断は度が過ぎます。

トランプの取り巻きの中にも、ドラッカーの教えを熟知して指南する人もいなかった違いありません。もしそのような人がいれば、トランプ氏のやり方も随分変わったかもしれません。トランプ氏は実業家であるので、ドラッカー流の考え方はかなり受け入れやすかったに違いありません。

そうして、ドラッカー流のマネジメントは、あらゆる組織にあたはまります。政府も例外ではありませんし、ドラッカーはいずれ、政府の本来の仕事は統治であり、それ以外に関する機能は外に出すべきであるなどの革新的な提言も行っていました。

なぜ顧みられなくなってしまったのでしょう。一昔前だと、米国でもドラッカー流の経営学は、第一線の経営者に熟知され、敬愛されていましたが、現在は残念ながら、ドラッカー流の経営学は、米国の主流の経営学者からは忘れさられ、因果関係や数理的な分析ばかりが主流となり、経営者でも昔のように信奉する人は少なくなってしまったからでしょう。

日本の経営学者でも、ドラッカーは時代遅れなどと言う経営学者もいますが、はっきりいいますが、そのような人はそもそもドラッカーの書籍などの読み込みが少なすぎるのではないでしょうか。因果関係一辺倒で、ドラッカー流の見方をできない経営学者を私は信用していません。そういう学者には私はこういいたいです。「実際に会社の経営をしてみろ!そこまでいかなくとも、少なくとも業績が良く、かつまともな企業の経営者のことを仔細に観察せよ!」と・・・・・。

そのためもあって、私はかつてはドラッカーの論文が掲載されていてよく読んでいたハーバード・ビジネス・レビューなども読まなくなってしまいました。しかし、今でもドラッカーの著書は折に触れて読んでいます。そうして、その時々で新たな発見があります。

これは、やはりドラッカーがあまりに偉大すぎて、ビジョナリー・カンパニーの著者ジム・コリンズは例外として、目立った継承者がいなかったということにも原因があると思いますこれに対して、日本では元々ドラッカー流の経営学が受け入れられる素地があったのだと思います。

このような風潮が米国の競争力を従来よりは、低下させてしまったのだと思います。同じころ、日本では平成年間のほとんどを財務省が緊縮財政に走り、日銀が金融引締一辺倒に走り、日本も競争力を低下させてしまいました。

トランプ氏もバイデン氏も今一度、ドラッカーの主張に耳を傾けてほしいものです。日本では、ドラッカー流の見方は今でもある程度根付いているようですが、マクロ経済についてもっとまともな議論ができるよう素地をつくるべきと思います。

米国でも多くの人が、ドラッカー流の見方も考慮に入れて、政治を見ていれば、今日のような深刻な分断はなかったのではないかと思い、残念な気持ちになります。

日米ともに、ドラッカー流の経営学という先達の考え方を大切にし、さらに発展させていくべきと思います。

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2021年1月25日月曜日

【産経・FNN合同世論調査】若者や学生からの支持高く 施策奏功か―【私の論評】GOTOトラベル、緊急事態宣言の次はワクチンとオリンピックで中高年層の心を蝕むマスコミの手口(゚д゚)!

【産経・FNN合同世論調査】若者や学生からの支持高く 施策奏功か

菅総理

 産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が23、24両日に実施した合同世論調査では、若者世代で菅義偉(すが・よしひで)内閣の支持率が高かった。新型コロナウイルスのワクチンへの期待に加え、携帯電話料金の引き下げなど若者をターゲットにした施策を積極的に打ち出していることも、支持率向上に影響したとみられる。

 年代別の内閣支持率を見ると、「支持する」と回答した20代は62.7%に上り、「支持しない」の31.7%を大きく上回った。「支持しない」の回答で最も多かったのは60代の51.7%で、次いで70代の51.6%となった。

 職業別では、「支持する」と回答した学生は68.1%となり、正規、非正規雇用、自営・フリーランスからの回答は、いずれも過半数を占めた。「支持しない」との回答が最も多かったのは主婦・主夫だった。

 ただ、内閣支持率の高い若者世代も政府の新型コロナ対策に関する評価は厳しい。「評価する」は男性20代で36.9%、女性20代で33.9%と低調。「評価しない」は男性20代が61.4%、女性20代が66.1%となった。

山田太郎参議院議員

 これまで、首相は若者世代の将来の負担上昇を防ぐために、75歳以上の医療費窓口負担について所得基準を単身世帯の年収「200万円以上」と改めるなど、若年層を狙った施策が相次いでいる。24日にはインターネットに詳しい自民党の山田太郎参院議員から発信力強化に向けた助言を受けるなど、若者への支持拡大に余念がない。

【私の論評】GOTOトラベル、緊急事態宣言の次はワクチンとオリンピックで中高年層の心を蝕むマスコミの手口(゚д゚)!

菅内閣の支持率等のグラフ等、詳しい内容については以下の記事を御覧ください。


さて、上の記事では、「年代別の内閣支持率を見ると、「支持する」と回答した20代は62.7%に上り、「支持しない」の31.7%を大きく上回った。「支持しない」の回答で最も多かったのは60代の51.7%で、次いで70代の51.6%となった」とあります。

どうしてこうなるかといえば、やはり若者は、ネットを情報源にしているからでしょう。若者というと、SNSなどを思い浮かべがちですが、多くの若者は、SNSだけではなく、厚生労働省等が出す資料なども見ています。私の身の回りでも、若者はそのような傾向がありますが、40歳代以上は、テレビなどが情報源になっている人が相変わらず多いです。

千人あたりの、感染者数と重傷者数をグラフにすると、以下のようになります。やはり、日本が世界で最も少ないです。


そもそも、テレビなどではいたずらに恐怖を煽っていて、なにやら最近は感染者数が増えて、破滅的な状況にでもあるような報道ぶりです。

しかし、冷静に元データにあたるようなことをすれば、日本だけが感染者や死者が増えているのではなく、他国も増えており、むしろ日本は少ない状況にあることがわかります。

そうして、以前もこのブログに掲載したのですが、南半球では昨年の夏(北半球の冬にあたる)には感染者が北半球に比較して増えましたが、最近は減少傾向です。

このようなことをみれば、日本の最近の感染者数が増える傾向は、元々感染学者が警告していたように、冬になって気温が下がり、乾燥したからというのが妥当な見方です。GoToトラベルが感染者を増やしたとか、政府の自粛勧告が手遅れだったと考えるのが妥当といえるようなデータは見当たりません。

昨年「GoToトラベル」について、マスコミは止めろとの大合唱でした。ちょうど同じころ、韓国では、GoToトラベルのような事業は展開していないにもかかわらず、日本のように感染者が増えていました。それは、当然とといえば当然で、GoToトラベルによる人の移動は全体の1%程度しかなく、コロナ感染拡大の「元凶」になっているとは言いがたいものでした。

しかし、理不尽なことにマスコミは止めろと大合唱していました。政府は、それを受けて「とりあえず」止めたようです。感染が止まればそれでよし、止まらなければGO TOは無関係とわかるのでよし、だったのでしよう。

そうして、GoTOを政府がやめると、一方でマスコミは「観光が大変だ」と、まるでマッチポンプのような報道を続けました。GoToを止めても感染者増加したため、ハッキリ言ってマスコミの主張はデタラメだったということははっきりしましたが、マスコミは全く反省していません。

昨年12月はじめの新型コロナ対策についても、マスコミは「大きすぎる」と批判しました。その後の新型コロナ対策を見据えたものだったのですが、マスコミは全く先も見えず、無意味なから騒ぎばかりして、テレビや新聞の視聴者や購読者を脅しつづけています。

それどころか、今年1月に政府が出した緊急事態宣言について、マスコミは「遅すぎるし、支援が少ない」とまで批判しました。これは、流石に異様です。

これについては、高橋洋一氏が「医療崩壊を防ぐために…3月までに使える「9.3兆円」活用が日本を救う 重要なのは「アメとムチ」のバランス」で、マスコミの小鳥脳(少し前のことも覚えていないこと)と批判していました。

日本のコロナ対策のための、財政出動はGDP比でみても世界最高レベルです。海外から見れば、日本は感染が少なく経済も痛んでいません。それは、下のグラフ(20201018FinacialTimesのグラフ)をみれば一目瞭然です。


このグラフの横軸は、100万人あたりの死者数です。縦軸はGDPの落ち込みです。日本は先進国の中ではかなり健闘していることが良くわかります。

そうして、わずか1ヶ月前の12月初めに、緊急事態宣言が再発令に備えた予算額を用意したのに、「遅すぎるし、支援が少ない」とはあきれてしまいます。しかも、1ヶ月前には「大きすぎる」と批判したことをすっかり忘れています。

現在、日本医師会から「医療崩壊」の危険性が叫ばれていますが、昨年5月の2次補正予備費10兆円に対して、大きすぎると批判したのはマスコミと一部野党でした。それで関係者が萎縮してしまったことは否めないです。

昨年夏頃に新型コロナがひと段落したと判断されたため、現場の医師会、知事からの具体的な要請もなく、積極的な予算消化もないまま、無為な時間を過ごしてしまったというのが実体です。

現在できることは、病床余力のある民間病院での新型コロナ専用病床への転用について補助金を出すことですが、これは既に行われている。さらに、医師・看護師、その他看護助手、消毒業者等の直接コロナ患者へのケアに携わる人達の手当アップもすべきです。そうして、資金的には有り余るほどあるので、菅政権は着実に実行していくことでしょう。

以上のような馬鹿げた、小鳥の小脳的な奉読を繰り返してきた、マスコミですが、次の標的はワクチンです。

接種は2月中〜下旬からと予定されていますが、その予算手当は、昨年5月の2次補正で1300億円計上されています。このワクチン接種は、予防接種法に基づくものなので、実務についてこれまで厚労省中心で都道府県、市町村で検討されてきまし。昨年12月には実務マニュアルも作られ、自治体向けに説明会も行われています。

1948年予防接種法制定当初は義務接種であり、違反した場合の罰則まで規程されていました。しかし、1960年代あたりから集団接種などで、複数の人に対して注射針を変えずに接種するなどの不適切事例があり、1976年改正で、罰則なし義務接種となりました。

1980年代から、予防接種の副作用に関するマスコミ報道が多くなり、そうした世論に押され、予防接種法改正で定期接種は努力義務とされました。その結果、各種接種率は低下し、感染症流行の一因ともされています。

最近では、子宮頸がんワクチンの事例があります。一部の大手新聞が、ワクチンの副作用を強調する報道を行ったことをきっかけに、ワクチンが危険という風潮が広がり、結果として、厚労省はワクチン接種の方針転換を余儀なくされました。こうした方針転換の理由は他国では見られないことから、ただちに世界保健機関(WHO)からも非難されました。

日本では、おそらく、こうした一部マスコミの煽り記事により、ワクチンを打っておけば助かったであろう人が結果として大勢亡くなっていると考えられます。

ただし、煽ったマスコミでは成功体験のように受け止められているのかもしれません。そもそも、マスコミは自分たちの存在意義を政府を批判するものだと決めつけているようで、特に過去のマスコミによる民主党旋風で、民主党政権が成立したという成功体験を忘れられないのでしょう。マスコミはそもそもが「大変だ、大変だ」といい、視聴率や購読率をあげたい人たちです。そのため、ワクチンではメリットよりデメリットを強調することになります。

ワクチン接種は、新型コロナ対策の要です。情報戦になりうる可能性もあるため、政府にはバランスのとれた情報発信を望みたいです。河野太郎氏がワクチン大臣に任命されたのは、マスコミの報道にうんざりした政府が情報戦を制するための人事と読むべきです。河野氏であれば、情報発信力もありますし、明らかに間違った報道などには、ためらわず鉄槌をくだすでしょう。

さらに、東京オリンピックに関しても、とにかくその危険性を一方的に煽るなどして、政府批判を煽るのに利用するでしょう。

このあたりのワクチン、オリンピック等についても、若い人達は、様々な情報源にあたり、正しい認識を持つのでしょう。そうして、東京オリンピックについても開催の可能性もあると信じることでしょう。

そうして、コロナ収束後の世界に思いを馳せていることでしょう。

一方、新聞・テレビが情報源の中高年層は、コロナで相当精神が痛めつけられ、悲惨な老後、悲惨な死しかイメージできなくなっているに違いありません。

しかし、情報源を新聞・テレビ以外にも求めたり、見方を少し変えれば、将来への見通しが変わってくると思います。そもそも、運動能力では及ばないかもしれませんが、考え方や行動が若者のようにしなやかになるでしょう。マスコミ等に操られ惨めな余生を送るのか、充実した余生を送るかは、考え方と行動により随分変わるのだと思います。

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2021年1月24日日曜日

メディア業界の救世主として期待のニュースレター「Substack」の威力―【私の論評】既存メディアは崩壊し、SNSは単なる連絡簿になる世界がくるかもしれない(゚д゚)!

メディア業界の救世主として期待のニュースレター「Substack」の威力

Falon Fatemi |CONTRIBUTOR


メディア業界は、パンデミックの影響を最も強く受けた業界の一つだ。米国のメディア業界では2020年に3万人以上の雇用が失われており、2019年の水準から200%以上の増加となった。

そんな中、ニュースレターという、新たなトレンドに関心が高まっている。ニュースレターを収益化するプラットフォームの「Substack(サブスタック)」は、2017年のローンチ以来、着実に成長を遂げている。

Yコンビネータの卒業生が開設し、2019年のシリーズAでアンドリーセン・ホロウィッツの主導で1530万ドル(約16億円)を調達したSubstackは、現在25万人以上の有料購読者を抱えている。

かつてはメールマガジンと呼ばれた古びたシステムに、最新のアルゴリズムを導入したSubstackに対しては、懐疑的な見方もあるが、メディアの新時代を切り開くツールとして期待されている。長年、ページビュー指標に縛られてきたライターや編集者たちは、クリエイティブの自由と経済的自由を与えてくれるSubstackに群がっている。

Substackに参加する著者の一人、Judd Legumは、「Substack では、グーグルやフェイスブックのアルゴリズムに縛られず、人の心をつかむ説得力のあるコンテンツを書くことが重要だ」と話す。

Substackで、ジャーナリストは経済的自由も手に入れられる。Substackは売上の10%を受け取り、決済会社のStripeがさらに3%を受け取る一方で、ライターは残りの金額を自分の懐に入れられる。Substackはさらに、3000ドルから10万ドルまでの様々な助成金を、書き手に与えている。

そして、万が一、法的トラブルに直面した時のために、Substack Defender と呼ばれるプログラムが用意され、一流の弁護士に助けを求めることも可能だ。Substackは、最高100万ドルの弁護士費用を負担することを約束している。

Substackのアピールは、パンデミック後にさらに高まっている。元Buzzfeed記者で、「Big Technology」という名のニュースレターを発行するAlex Kantrowitzは、「多くのジャーナリストたちが、困難な状況に直面する中で、自身でビジネスを立ち上げている」と話す。

メディアへの信頼を取り戻す


Substackによると、読者数と作家数は、パンデミック後の3カ月間で2倍に伸びたという。一方で、マスコミへの信頼度は長年にわたって低下している。2019年のある推計によると、マスコミに大きな信頼を寄せている人の割合はわずか6%に過ぎない。

「ニュースレターは、いかにして読者との間に信頼関係を再構築するかという問いに、確かな答えを提供してくれる」と、SubstackのプロデューサーであるValerio Bassanは話す。読者の受信箱に直接届くニュースレターは、人々と1対1の会話が出来るという。

Substackを用いれば、ロイヤルな読者を獲得し、書き手は自分をブランディングできると、Heatedという気候問題に焦点を当てたニュースレターを発行するEmily Atkinは話す。彼女は以前はThe New RepublicやThinkProgressに所属していたが、現在はSubstackで、会社員時代よりも高い知名度と収入を得ている。

かつては、読者が個人のジャーナリストをフォローすることはほとんどなかったが、状況は変わりつつある。読者は大手メディアよりも、個々の書き手に対する信頼度を高めている。

Substackのミッション・ステートメントには次のような記述がある。「前世紀のジャーナリズムは死にかけている。コンテンツの大量生産やクリックベイト、リスティクル(まとめ記事)、バイラルで拡散されるフェイクニュースなどがこの状況を招いている」

Substackはこの現状を打破し、メディアへの信頼を回復させようとしている。

【私の論評】既存メディアは崩壊し、SNSは単なる連絡簿になる世界がくるかもしれない(゚д゚)!

米国の既存メディアは、大手新聞はすべてリベラル、大手テレビ局はFoxTVを除いて他はすべてリベラル系であることを、このブログには何度か掲載してきました。この状況では、米国の人口の半分は存在するであろう、保守系の人々の声はかき消されてしまいます。

従来はそうだったのですが、そこにSNSが風穴をあけ、保守系の人々の声も無視できなくなりました。これもトランプ大統領を生み出した一つの大きな要因ともなったと思います。

ところが、昨年の米大統領選挙では、ご存知のようにSNSがトランプ大統領の発言を封じたり、挙げ句の果に、アカウントを凍結してしまいました。

これは、明らかにやりすぎです。これで、多くの既存メディアに失望した人々がSNSにも失望したことでしょう。

しかし、Substackはこの現状を打破し、メディアへの信頼を回復させるかもしれません。


このようなことは、GAFAなどにはできないのでしょう。たとえば、GoogleはSNSとしては、Google Waveのサービスをはじめましたが、これはうまくいかずサービスを中止しました。

その後新たなSNSとして、Google+のサービスを開始しましたが、これもうまくいかず、2019年4月でサービスが停止されました。

両方とも使っていた私は、本当にがっかりしました。特にGoogle+は期待していただけに本当に残念でした。結局、検索サービスと広告の企業が、新たなSNSを創造することは思いの外難しかったということでしょう。

ちなみに、Google Photoも今年の5月でサービスが中止になります。このサービスも使っていたのですが、結局写真をユーザーが保存するのがメインのもので、他の用途としては、写真を他のユーザーとシェアできるというものくらいでした。

便利なので、使用はしていましたが、それにしても何か付加価値をつけることはしないのかと、思っていましたが、それてもできずに、サービス終了です。終了してもFacebookやAmazon Photosもあるので、特に困ることもありません。

GAFAなども現在実施しているサービス以外のサービスに挑戦することは思いの外難しいことなのかもしれません。

そのようなGAFAがSubstackのようなサービスを手掛けてもうまくはいかないような気がします。結局、ジャーナリズムのあり方を突き詰めたのがSubstackなのでしょう。


Substack関連の報道では、米国では昨年9月著名と思われる2人のtech系のジャーナリストが所属組織を相次いで退職するというニュースを見かけました。

1人はThe Vergeのシリコンバレー担当兼上席編集長のCasey Newton氏。9月末で辞職すると表明したのはDigidayの社長兼編集主幹のBrian Morrisy氏

米国メディアの世界ではより良いポストを求めて転職するのは珍しくも何でもない印象がありますが、2人の行き先が、興味深かったのです。

それは、別のメディア企業ではありませんでした。有料ニューズレター(メルマガ)の発行を様々な形でサポートするプラットフォームSubstackの参加者の一員として独立するということなのです。

経営不安のなさそうな二つの有力tech系メディアの幹部の座を捨てさせるほどの誘引力を持つSubstackの魅力は何だつたのでしょう。それについては、NYタイムズAXIOSDigidayなどが報道していました。

Substackの充実したホームページも含め、それらを総合すると、主としてtech系ニュースの編集部を離れて、独自ブランドのメルマガを発行して成功した例は全く珍しくないようなのです。

例えば、Emily Atkinさん。New Republic誌などの記者を経て独立し、気候変動の危機を訴えるメルマガHEATEDを昨年9月から連日配信していますが、大学を出てまだ9年ですから30歳そこそこです。

その彼女はSubstackに招かれて講演し、こう言いました。「大学時代から、私の夢は自分の文章で生計を立てることだった。Substackはその夢を叶えてくれた。私は今、どんなサラリーマンジャーナリストより稼いでいる」

その額は正確には言いませんでしたが「6ケタ」と示唆しました。10万ドル以上ということでした。彼女のメルマガ読者は2万人超、うち有料読者は2千人超とのことでした。有料料金は年間75ドル、月8ドルです。単純計算ですが75ドルに2千を掛ければ確かに15万ドルになる計算です。

Substackは、無料メルマガからは手数料などは一切取りませんが、有料分については10%を差し引きます。それでも、楽に10万ドルオーバー。大卒9年目としては大したものです。

またNYタイムズの記事で紹介しているのはAnne Helen Petersenさん。博士号を持ち、一時、母校の教員でしたが、その後、Buzzfeedに移り、シニアカルチャーライターの傍ら、メルマガを4年前から書き始め、この夏、メルマガに専念するために独立したそうです。多分、40歳前後。

そのメルマガ「Culture Study」の購読料は年50ドル、月5ドル。無料読者2.3万人で有料読者が2千人超だとのことですから、彼女も計算上は6ケタ・ドル組でしょうが、実際にはもらった金額の前払金を受け取ったので、1年間は売り上げからの差引き額は15%になるそうです。独立組にはこういう面倒もSubstackは見るのです。

このほかにもThink Progressの創業者Judd Legum氏、NewYork MagazineのコラムニストでNew Republicの編集長も勤めたAndrew Sullivan氏、Rolling Stoneの寄稿者だったMatt Taibbi氏など、メディア界出身者の”専業者”が少なくないのです。

そしてSubstackのホームページにはトップ25のリストがあるのですが、そこで優良作品ナンバーワンに挙げられているThe Dispatchの場合は3人組で、TheWeekly Standardの元編集長、National Reviewの元編集長とシンクタンクAmerican Enterprise Instituteの元幹部という組み合わせで昨年スタートしたばかりですが、従業員12人を抱え、読者は10万人近くで、うち有料読者は1.8万人に達しているそうです。

料金は年100ドル、月10ドルなので、「初年度から収益は200万ドル近くになりそう」とNYタイムズは伝えています。

インターネットの”最も古い”ツールであるメールによるビジネスが、これだけ人気を呼んでいるのはにわかには信じられない思いです。

第一には、有能な書き手が集まっていることでしょう。なぜ集まるか?その一つにAXIOSは法的プログラムであるSubstack Defenderの存在を挙げています。「困難なストーリーを追求する自信を作者に与えるように設計されている」とのことです。

組織に属するジャーナリストは記事を巡ってトラブルが生じた場合、組織が守ってくれますが、独立してしまうとその保護がありません。しかし、このDefenderだと、Substackの弁護士がトラブルに対処し、裁判などになったら最大100万ドルの援助もするそうです。これはフリーのライターには魅力です。

またPetersonさんの件で触れましたが、前払金制度は、有料読者が増えるまで持ち堪えるのに役立つことでしょう。

さらに、参加したライターには無償でウェブページが作られ、有料読者向けの記事アーカイブも準備されます。そしてお金の勘定も気にしなくて良いのです。ライターは記事作成に専念できるわけです。

さらに、ウェブにない利点として、メールにはノイズがないことをNYタイムズが挙げています。ウェブに記事を出せば、称賛する人もいれば貶す人も必ずいる。しかし、メールの読者は自分のファンなので貶されることは滅多にありません。

この点について、NYマガジン時代、とかく”逆張り”的な視点でのエッセイでリベラルな読者や編集者との軋轢があったというAndrew Sullivan氏は「あなたのファンには説明責任があるが、それはとてもピュアな関係で快適だ」と語ったそうです。

さらに加えれば、SNSのように、「いいね」がたくさん欲しくて書くということもないのも快適なのかもしれません。メールの読者は全員、自分のファンなのですから。


その延長線上で、先の人気 NO.1のDispatchのウェブページにはPitch usとして「あなたに記事のアイディアがあれば、取材して欲しい特定の観点を知らせて欲しい。返答は保証できないが、担当編集者に提案を転送する」とあったり、Petersenさんも、「読者のアイディアでストーリーを書くのも好き。だからアイディアを送って」と呼びかけるなど、筆者と読者がメールならではのつながりがあることも強みなのでしょう。

SubstackのA better future for newsーなぜ我々はSubstackを構築しているかーにはこんな自信満々な宣言もありました。

「広告に支えられた新聞の時代は終わった。我々の使命の中核は独立したビジネスを構築するために必要なツールを民主化することでニュースの市場全体が劇的に成長する時代にライターが成功することを助けるという信念だ」

「購入ベースのニュース業界が成熟すれば、サンフランシスコの配車サービス業界がLYFTやUber以前のタクシー業界より大きくなったように、新聞業界より遥かに大きくなる可能性がある。私たちはニュースビジネスの新たな革命の頂点にいるのだ」

新聞・テレビなどの既存メディアの報道に関しては、世界中でその信頼性に疑問符がついています。SNSにも大統領選で多くの疑問符がついてしまいました。

そのため、私自身はGABなどにも登録してみましたが、ほとんど使っていません。結局SNSそのものに疑問を感じてしまったので、あまり心に響かないのだと思います。

今は、Substucksの使用も検討していこうと思っています。Substackのようなサービスが、これからいくつか出てきてほしいものです。

TwitterやFacebookなどは、創業当初は素晴らしいと思いましたが、今から考えるといくつもあった他のSNSc(My Space、日本ではMIXiなど)がほとんど使われなくなり、TwitterやFacebookに集約されてしまったことが、SNSの全体主義的傾向に拍車をかけてしまったようです。

5大SNS動向と新機能まとめより

Substackが市場を独占してしまえば、また思いもよらない形で、弊害がでてくると思います。そのようなことを避けるためにも、独占だけは許さないようにすべきです。

それにしても、Substackのようなサービスが興隆していけば、既存メディアは崩壊し、SNSは連絡簿のようになり、様々なコミュニティーなど内部用の便利で機能が豊富な連絡に用いられるだけになるかもしれません。

そもそも、SNSの役割とは、それが主なものであり、その範疇をこえて政治的な検閲までするようになったのですが、それが没落の原因になるかもしれません。

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2021年1月23日土曜日

【日本の解き方】医療崩壊これから止めるには「札束のムチ」しかない 2月下旬からのワクチン接種も万全の準備を―【私の論評】コロナも過去のインフルエンザのように、近いうちに必ず収束する(゚д゚)!

 【日本の解き方】医療崩壊これから止めるには「札束のムチ」しかない 2月下旬からのワクチン接種も万全の準備を


     新型コロナウイルス感染症患者の対応に当たる医療スタッフら
     =さいたま市大宮区の自治医科大附属さいたま医療センター

 新型コロナウイルス感染症患者の増加に伴う病床の逼迫(ひっぱく)については、昨年夏の時点で予備費を使うなどの対策を取らなかった問題を以前の本コラムで指摘した。医療関係者からは、日本は民間の中小病院が多いことや、カネを出しても医師が増えるわけではないといった意見もあるが、医療崩壊を阻止する手は打てるのか。

 経済学のイロハとして、「需要」と「供給」がある。需要は短期間で増減したりするが、供給は短期的に増減しにくく、特に生産設備が毀損(きそん)して短期に減少することはあっても、増加させるのは難しい。だから、あらかじめ昨年5月に10兆円の予備費を組んで中期的な供給対応を図ったのだ。

 カネの力で中期的な供給アップを図ることができるのは、医療でも同じだ。専用病床など医療設備の増強、手当を拡充させた上で退役医師・看護師の確保や医療体制の人員シフトなどについて、中期的な対応ができるからだ。

 しかし、多額の予備費に対する一部野党やマスコミの批判があり、関係者が萎縮してしまった。夏頃にコロナがひと段落していたこともあり、現場の医師会、知事からの具体的な要請もなく、厚生労働省の積極的な予算消化もないまま、無為な時間を過ごしてしまった。

 今の段階でできることは、病床に余力のある民間病院のコロナ専用病床への転用について補助金を出すことで、これは既に行われている。さらに、医師・看護師への手当アップもやるべきことだ。こうなったら、カネの力に頼るしかない。

 政府の要請に従わない医療関係者に、罰則などのムチを打つのは、いうまでもなく適切ではない。ムチではなく、札束でたたくのなら、いいだろう。

 海外のような戒厳令に近い非常事態法制について、平時に議論さえ行われず、存在しない日本では、個人の私権制限や罰則は無理で、現実策として、言葉は悪いが「札束のムチ」しかできない。

 準備しておくべきことは、病床・医師看護師の確保だけでない。2月下旬からのワクチン接種もある。この予算手当も、昨年5月の第2次補正予算で1300億円計上されている。

 このワクチン接種は、予防接種法に基づくものなので、実務についてこれまで厚労省中心で都道府県、市町村で検討されてきた。昨年12月には実務マニュアルも作られ、自治体向けに説明会も行われている。ワクチン接種に伴う冷凍施設や配給体制も整備されているが、ほとんど報道されていない。もちろん、全てが予定通りに行かないかもしれないが、国民も含めて万全の準備をしなければいけない。

 こう考えると、今回、河野太郎規制改革担当相がワクチン担当相になったのは、同氏の発信力を生かす意味で時宜を得たものだ。

 マスコミはコロナ報道であおりたいだけになりがちだ。ワクチンについても副作用を過度に強調して、子宮頸がんワクチンの愚を繰り返しそうなので、筆者は心配している。河野大臣の発信力に期待したい。(内閣官房参与・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】コロナも過去のインフルエンザのように、近いうちに必ず収束する(゚д゚)!

このブログでも過去に掲載したように、医療崩壊は本来防ぐことができます。実際、2016年の2月には、1週間で200万人のインフルエンザ感染者が出たのですが、医療崩壊も起きず、インフルエンザ由来の経済の落ち込みもありませんでした。

インフルエンザとコロナは違うという方もいらっしゃるとは思いますが、ウイルス由来による病ということでは同じです。それにインフルエンザを軽く見るべきではありません。コロナは高齢層にとって特に危険なのですが、インフルエンザはすべての年齢層に感染して深刻な事態が生じていました。

コロナでは10歳以下の重症化はありません(1例あったが後に間違いってあったことが判明)が、インフルエンザは、子供でも重症化する例も多く、当時はインフルエンザ脳炎でなくなる子供もいて深刻な状況でした。


医療崩壊が起きなかった最大の要因は、インフルエンザが日本伝染病の分類では5類だったのに対し、コロナは2類であり、一部は1類扱いされているところだと思います。

無論、コロナの正体が見えなかった、昨年の初期の段階では2類扱いにするのは妥当だったと思いますが、現状でもまだ2類扱いしているのは、過剰だと考えられます。

これには、エビデンスもあります。

厚生労働省の人口動態統計によると2019年の我が国の死亡者は総数は138万人、死因は①がん37万7千人②心疾患20万8千人③老衰12万2千人④脳血管疾患10万7千人⑤肺炎9万5千人⑥誤嚥性肺炎4万人 という順です。昨年のコロナの死亡者4千人でした。結核で亡くなる人と同じくらいです。

2019年にインフルエンザが直接的に死因の人は3575人。インフルエンザによる慢性疾患悪化による死亡者を含めて毎年約1万人だといいます。昨年のコロナ死亡者は3800人ほどです。コロナが直接死因の人とコロナによる慢性疾患悪化の死亡者が含まれています。

それに、コロナ死亡者の平均年齢は、平均寿命より4歳くらい若いだけであり。その大半が持病など基礎疾患があることを考えればコロナが直接の原因で死亡したと言えるのかと言う問題もあります。

コロナを5類扱いにしていれば、医療崩壊の危機に見舞われることなどあり得なかったと思います。


ただ、そうは言っても、未だ2類扱いしているわけですし、ワクチンもまだ接種が開始されていないわけですから、これに対する解消法は、やはり高橋洋一氏が主張するように、病床に余力のある民間病院のコロナ専用病床への転用について補助金をさらに出すことと、医師・看護師への手当アップもやるべきことです。

しかし、これは当然といえば、当然のことだと思います。民間病院はまずは利益を出すことが至上命題です。これは、なにやら悪い事のように考える人もいますが、そんなことはありません。

経営学の大家であるドラッカー氏も語っていますが、利益とは単なる儲けではなく、未来への投資でもあるのです。そもそも、利益がなければ、どんな民間組織でも継続は不可能です。


このようなことは、利益などとは関係のない官僚や、日刊新聞法や放送法などの法律で手厚く保護されているマスコミ関係者などの行動や発言などをみていれば良くわかるでしょう。利益を考えなくても良い人たちは、ともすると物事がまともに考えられず、時に馬鹿というか幼稚な行動や発言をします。

利益を前提とするまともな民間企業や組織では、若い頃は空虚な理想論を語っても、それを続ける人はいません。どんなに素晴らしい理想論を語ってみても、すぐに現実に打ちのめされるからです。だから、民間企業で働く人達は、官僚やマスコミ関係者からみれば、まともにみえます。

政治家も問題行動、発言をする人もいますが、選挙という縛りがあります。選挙に落ちてしまえばただの人です。官僚やマスコミは違います。

だから、コロナのような危急存亡の時にこそ、民間病院や働く人達を手厚く補助するのは当然のことです。これらの組織やそこで働く人たちは、これは一時的なものであることを十分に理解していて、官僚やマスコミの一部(多く?)の人にみられる、馬鹿で幼稚な行動や発言をすることはないからです。

それと、コロナの最前線で働く、医師・看護師は当然のこととして、その他の看護助手や消毒などをする事業者を含めたコロナ患者に直接関わり、リスクのある医療従事者にも資金面で手厚い保護をすべきでしょう。

これでしのいでおきながら、後はワクチン接種が始まった頃から、コロナウィルスの2類から5類への分類のし直しをするべきでしょう。

結局、日本のやり方は全部平常時の対応ということにつきると思います。そのため、コロナ対応でも、5類から2類への転換とか、民間病院や医療従事者への手厚い保護など、喫緊の課題であったはずなのに、昨年の夏の段階で何もできなかったのでしょう。

コロナ対策においても、官僚主導の問題とは何かというと、平時の安定した環境で、少しずつ改善していけばいいというようなときには官僚主導はうまく機能するのですが、緊急事態が起きて前例なき決断や大転換をしないといけないときには対応ができないということです。

このようなときこそ、政治家が活躍すべきだと思うのですが、エリートの“お坊ちゃま”官僚たちや二世議員たちで占められている日本の統治機構に「戦時の対応」など、ハナからできるはずはなかったのです。コロナで日本が示した体たらくは、むしろ当然であって、不思議でも何でもなかったのです。

そうして、マスコミはあろうことか、倒閣のために政府のコロナ対応を利用しようとしているようです。テレビでは朝から晩までコロナの話だけで疲れてしまいます。感染者爆発とかで脅かしています。

その中で最近の最大の極めつけは、新型コロナウイルス変異種の死亡率の高さです。この変異種は英国では従来型よりも最大70%感染力が強いとされ、諮問グループが分析結果を政府に報告。

ジョンソン首相の記者会見に同席したバランス首席科学顧問によると、60代の感染者1000人あたりの死者は従来型の場合は約10人だが、変異種は13~14人に増えると推計されたそうです。他の年齢層でも同様の傾向がみられたというのです。 

計算上は従来型よりも死亡率が約3割増えるが、同氏は「(死亡率が高まる)確かな証拠はまだないといいます。(分析データの)数値には不確かな点も多く、さらなる作業が必要だ」と強調。英国で接種が進む英製薬大手アストラゼネカ製と米製薬大手ファイザー製のワクチンは有効と説明しました。

これも良く考えてみてください。感染者が日本よりはるかに多い英国では、以上が事実なら確かに重大問題ですが、もともと感染者数が少ない日本では、少ない感染者が3割増えたところで、英国よりは深刻な問題にならないはずです。これよりも、2016年インフルエンザのほうがはるかに深刻でした。

コロナが終息したあかつきには、これら政治の問題や、マスコミの問題も白日のもとにさらし、あるべき姿にもっていく努力をすべきです。

多くの国民の皆様には、2016年のインフルエンザも収束したように、コロナも必ず収束すると信じていただきたいものです。特に収束は意外に近いかもしれません。少なくとも半年しないうちに訪れるでしょう。オリンピック開催も夢ではなくなるかもしれません。少なくとも、完全な形ではなくても、ある程度限定した形ならできる可能性は十分にあると思います。

私達としては、将来に希望を持って、日々目の前のすべきことをやって、終息後に備えていこうではありませんか。

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