2022年1月25日火曜日

バイデン政権がウクライナ危機を失地挽回に利用?保守派の論客は「不干渉」訴え―【私の論評】 日米とその同盟国は、悪の3枢軸こそ本当の敵であることを片時も忘れるな(゚д゚)!

バイデン政権がウクライナ危機を失地挽回に利用?保守派の論客は「不干渉」訴え 


米国はウクライナ問題に関わるべきではないという意見が、保守派の間から上がり始めた。 

【画像】輸送機に積み込まれるウクライナへの物資(カリフォルニア州・トラビス空軍基地)

ウクライナへの「不干渉」訴える声

FOXニュースの看板キャスターで、保守派の論客として知られるタッカー・カールソン氏は、18日に放送された自身の番組の中でこう言った。
 今回のウクライナ危機の原因を考えてみましょう。なぜロシアが腹を立て、衝突の危機が迫っているのでしょうか?その理由はこうです。米国政府は長年にわたってウクライナをNATO(北大西洋条約機構)に加盟させるよう推し進めてきました。もしメキシコが中国に軍事的に支配されたらと考えてみてください。我々は当然、それを疑いもない脅威と受け取るでしょう。ロシアもNATOによるウクライナの支配をそう見ているのですが、間違っているでしょうか。それに引き換え我々は、ウクライナをNATOに押し込んでもなんら得なことはないのです。 
(FOXニュース「タッカー・カールソン・トゥナイト」1月18日放送)
 この発言は大きな反響を呼び保守・革新双方から批判の声があがったが、カールソン氏は屈せず、21日には自身の番組で“ウクライナ不干渉説”を説いた。
 昨日はロシアとウクライナの戦いという暗い話題について話しました。ワシントンでは超党派のネオコンの同盟が、この衝突を発火させるべく仕掛けてきました。米国の外交問題の当事者たちは数億ドルもの兵器を世界でもっとも不安定なこの地に送り込み、爆発が起きるのを期待して待っているのです。 その期待が叶う日が近いようです。爆発は起きそうですし、それは米国をいとも簡単に紛争の中心に吸い込むことになるでしょう。私は昨夜そう言ったわけです。しかし正直言って、信じられないことです。我々は本当に戦略的に意味のない地域の腐敗した国のために戦わなければならないのでしょうか。我々の国で他にもいろいろな問題を抱えている時にです。正常な人間ならばそんなことをするわけがないでしょう。それなのになぜそうなるのでしょうか。 
(FOXニュース「タッカー・カールソン・トゥナイト」1月21日放送)
カールソン氏は「ネオコン(新保守主義者)」に対抗する「ペイリオコン(伝統的保守主義者)」で、外交的には「孤立主義」の立場をとり、かつてトランプ前大統領にアフガニスタン撤退を助言したと言われる。

バイデン政権の「ワグ・ザ・ドッグ」作戦?

ウクライナ問題に対しては、別の視点から疑問を挟む声もある。
 この(バイデン)行政府は、ウクライナ問題を「ワグ・ザ・ドッグ」に利用しようとしています。
 保守派のコメンテーターのジャック・ポソビエック氏は、19日に公開したポッドキャストでこう言及した。 

「ワグ・ザ・ドッグ」とは、直訳すれば「(尾が)犬を振る」で「本末転倒」を意味するが、かつて同名の映画(邦題『ウワサの真相/ワグ・ザ・ドッグ』)が、大統領のスキャンダルを隠すために米国が架空の戦争を始めるという筋書きでヒットした。

 現実でも、ビル・クリントン元大統領が1998年8月にアフガニスタンとスーダンに爆撃を命じたが、それは同じ日に大陪審で行われたインターンの女性との不倫問題の聴聞から世間の関心を逸らすための「ワグ・ザ・ドッグ」だったと言われている。

 ポソビエック氏は、ホワイトハウスのスタッフから得た情報として、行政府はその失地挽回と国民の関心を逸らすためにウクライナとロシアの間の緊張激化を利用していると、そのポッドキャストで語った。 
彼ら(バイデン政権)は武装衝突を利用して米国の若者たち、あなたの息子や娘たちを戦地に送り込もうとしているのです。政権の国内的、対外的な信頼感を取り戻すために。
 そして同氏はポッドキャストでこう警告した。
 これは「ワグ・ザ・ドッグ」に他なりません。そしてウクライナで米国人が殺されるのです。ちょうど(アフガニスタンの)カブールで起きたのと同じように。私の言葉を信じなさい。
 こうした中、バイデン政権の新たな支持率が47%という世論調査の結果が23日伝えられた。 最近の平均支持率より5ポイントほど上昇している。それも、バイデン政権には厳しいFOXニュースの行った調査なので説得力がある。「ワグ・ザ・ドッグ」作戦が功を奏しているのかもしれない。

【私の論評】日米とその同盟国は、悪の3枢軸こそ本当の敵であることを片時も忘れるな(゚д゚)!

バイデンが失地回復を狙っていることについては、すでにこのブログにも掲載しています。昨日も掲載したばかりです。その部分を以下に引用します。
中国への強硬姿勢に対しての米国内での支持は大きいです。「中国に厳しく」という世論はますます強く、対中国政策で弱気な対応を見せれば、それはバイデン氏の民主党政権にとって国民の支持を失いかねない局面に直結することになります。

秋には中間選挙があります。2021年11月の2つの州知事選挙、バージニア州ではバイデン大統領が応援に入ったにもかかわらず民主党候補が破れ、ニュージャージー州でも民主党の現職知事が大苦戦して辛くも逃げ切りました。中間選挙の結果、そして次期大統領選の結果によっては超大国の指導者がまた変わるかもしれません。

2022年の世界も“世界唯一の超大国”と言われる米国を中心に動くでしょう。2月の北京冬季五輪パラリンピックを見据えた外交戦術、さらにロシア軍が国境に展開して緊張が続くウクライナ情勢など外交の課題は山積です。その一方、苦戦している国内での支持率。バイデン政権2年目は、秋の中間選挙に向けて、国内外の多くの緊張と共に歩んでいくことになる。

移民政策でも、アフガン撤退でも明らかに失敗したバイデン、今年の中間選挙のことを考えると、中露に対して弱い姿勢は見せられません。何らかの形で、失地を回復する必要があります。

米国のウクライナ情勢に対する対応のすべてがバイデンの失地回復のためということはないでしょうが、そういう要素があるのは間違いないです。

21日にジュネーブで行われた米露外相会談で、バイデン米政権は、外交による事態打開に道を残しました。ロシアの要求に対して「文書での回答」を約束したことで、プーチン露政権に言質を与えて交渉の幅をせばめるリスクも負ったといえます。ただ、どのような回答をするかによって、失地回復のための交渉なのか、そうでないのかも、ある程度判断できると思います。

一方ウクライナ国内の現状はどうなのか述べておきます。

「ウクライナの子どもは悪い環境で生まれて悪い選択だけを強要される。そしてその人生は良くならない。政治家は権力さえ手にすれば同じ失敗を繰り返すからだ」。 2015年10月に初放送されたウクライナの国民ドラマ『国民のしもべ(Servant of the People)』の第1話に登場するセリフです。

ドラマの中で小市民であり高校の歴史教師である主人公は、国民の生活よりも自分の利益を真っ先に考える政治家に怒り激しい批判を浴びせ、偶然撮影されたこの様子がSNSを通じて人気を呼び、結局大統領になります。

 その役を演じたウォロディミル・ゼレンスキーは4年後、実際にウクライナの大統領になりました。清廉潔白な政治新人であることを前面に出し、決選投票で73.2%という高い得票率を記録しました。

ウクライナ国民は17歳でロシアのコメディテレビショーに出演して知名度を上げてきたコメディアンに希望をかけるほど、前職大統領の腐敗と無能に身震いしていたのでしょう。

しかし12万7000人を要するロシア軍が侵攻の準備を完了した危機の中で、ゼレンスキー大統領はウクライナ国民の期待とは異なる姿を見せています。

19日(現地時間)この日、ウクライナ裁判所が国家反逆容疑を受けているペトロ・ポロシェンコ前大統領に対して検察が請求した拘束令状を棄却して内紛はさらに泥沼化しています。令状実質審査が行われた裁判所の周囲にはポロシェンコ氏の支持者が集まり、警察と小競り合いが起きました。

ポロシェンコ氏の支持者は大統領宮に向かって行進しながらゼレンスキー大統領に対して抗議デモを行いました。 ポロシェンコ氏は2019年大統領選挙でゼレンスキー氏に敗北して再選に失敗した政治的ライバルです。

彼は在任時代だった2014~2015年、ウクライナ東部ドンバス地域の親ロシア分離主義勢力の資金調達を助ける大量石炭販売に関与したという容疑で調査を受けている間、先月ポーランドに出国しましたが17日にウクライナに復帰しました。

キエフのスタジアムで2019年4月19日、ウクライナ大統領選の決選投票を前に
討論するウクライナのポロシェンコ大統領(左)とゼレンスキー氏

帰国当時の第一声は「危機に瀕している祖国を助けるために帰ってきた。ゼレンスキー氏は全く関係がない容疑を私にかけて粛清を行おうとした。彼はロシアの攻撃に対して何をするべきかも分かっていない」でした。

 国が風前の灯火の状態だというのに、前・現職指導者が団結どころか政治的な争いを繰り広げているのです。17日、米国ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は「ウクライナと西側間の会談で疎外されたゼレンスキー大統領が国内問題に重点を置いている」と指摘しました。

19日、ウクライナ首都キエフでゼレンスキー大統領に会ったトニー・ブリンケン米国務長官も「ロシアに対抗するウクライナのリーダーたちが団結した戦線を形成しなければならない」と強調しました。

ウクライナが本当に危機に瀕していれば、前・現大統領とも利害を超えて、協力すると思うのですが、そうではありません。ウクライナ危機はさほど深刻ではないのか、あるいは前・現大統領とも愚かなのかどちらかです。

一方ウクライナと中国の関係をみてみます。中国とウクライナは2013年末、友好協力条約を締結。両国は中国の100億ドル以上の投資計画で合意し、ウクライナ側も「一帯一路」を全面支援しました。

2014年のロシアによるクリミア併合以降、中国がロシアに代わってウクライナ最大の貿易相手国となり、特にウクライナ製兵器の輸出先は中国向けが圧倒的に多いです。

人民解放軍系企業が穀倉地帯のウクライナ東部で、200万ヘクタールの農地を50年間租借し、中国最大規模の海外農場を建設する計画を進めているとの報道もありました。

友好協力条約には、ウクライナが核の脅威に直面した場合、中国が相応の安全保障を提供するとの一節があります。ウクライナを脅かす国はロシアだけであり、ロシアのウクライナ攻撃では中国がウクライナを擁護するとも読めます。

1月初めには、習主席とゼレンスキー大統領が国交樹立30周年の祝電を送り合い、「戦略的パートナー関係の発展」を誓ったばかりでした。中国はロシアのクリミア併合を承認していません。

そうしたウクライナですが、ウクライナ政府は、同国の航空エンジン製造大手「モトール・シーチ」の中国企業による買収を阻止することを決めています。ゼレンスキー大統領は、昨年3月23日、関連する大統領令に署名しました。中国への軍事技術流出を警戒する米国が買収に懸念を示していました。

阻止の背景には、ロシアとの対立で米国の支援を得たいゼレンスキー政権の思惑があります。ウクライナの国家安全保障・国防会議が11日に開かれ、ダニロフ書記が「近い将来、モトール社はウクライナ国民と国家に戻されることが決まった」と説明していました。

1907年設立のモトール社はソ連の軍用ヘリコプターや輸送機のエンジンを製造し、ソ連崩壊後もロシアが大口顧客でした。しかし、2014年のロシアによるウクライナ南部クリミア半島併合で両国関係が悪化。ロシアとの取引を停止した結果、経営難に陥っていました。

こうした中、モトール社買収を狙ったのが中国企業「北京天驕航空産業投資」(スカイリゾン)で、19年末までに株式の過半数を取得したとされます。しかし、米国はウクライナに買収を認めないよう要請。20年8月に行われたゼレンスキー氏との電話会談で、ポンペオ米国務長官(当時)は「モトール社の買収を目指していることを含め、ウクライナにおける中国の悪意ある投資への懸念」を表明していました。

米商務省は昨年1月、スカイリゾンが「外国の軍事技術の獲得を進めていることは米国の安全保障と外交利益に対する重大な脅威」として、米国製品の輸出を制限する軍事企業のリストに加えました。スカイリゾンが中国人民解放軍と深い関係を持つとも指摘しました。

このような状況をみていると、ウクライナが米中露の間で揺れ動いていることがよくわかります。ただ、モトールシーチへの中国の悪意ある投資を阻止したことで、やはり米国寄りであることが見て取れます。

プーチン氏(左) とライシ氏(右)

こうした最中イランの反米・保守強硬派のライシ大統領は19日、去年8月に就任して以降初めてロシアを訪れ、プーチン大統領と会談しました。

冒頭でプーチン大統領は、国際社会の課題に対してイランと緊密に協力していると強調したうえで「核合意をめぐりイランの立場を知ることは、非常に重要だ」と述べました。

これに対し、ライシ大統領は「両国関係は戦略的で永続的なものになるだろう。アメリカの一方的なやり方に、ロシアとともに対抗していく」と述べ、アメリカの制裁に対抗するため経済面などで両国の連携を強化する考えを強調しました。

イランの核合意をめぐる協議では、アメリカが解除する制裁の範囲などをめぐって意見の隔たりが大きく、妥結のめどは立っていません。

ライシ政権としては、伝統的に友好関係にあるロシアとの関係強化を図ることで、核合意の立て直しに向けた協議でアメリカに譲歩を迫るねらいもあるものとみられます。

ライシ師は20日にはロシア下院で演説、「北大西洋条約機構(NATO)がさまざまな口実を使って独立国家に侵入を図っている」と米欧を非難し、ウクライナ侵攻も辞さないとするプーチン氏を援護射撃しました。外国の首脳が下院で演説するのは極めて異例。プーチン氏がライシ大統領を歓迎し、厚遇した証と受け取られています。

イランは核協議が不首尾に終わった場合、不倶戴天の敵であるイスラエルが核施設などに軍事攻撃を仕掛けてくると警戒しており、SU35、S400ともイスラエルに対する強力な抑止力になると見られています。イスラエルはロシアと良好な関係を維持しており、今後、イランへの兵器売却を思いとどまるようロシア側に働きかけることになるでしょう。

首脳会談での具体的な合意については公式的には発表されていないですが、今年で期限切れとなる「経済・安全保障協力協定」の枠組みを更新することで一致したといいます。特に安全保障面では、ロシアがイランに対し100億ドルに上る兵器売却で合意したとされ、イランが強く求めていた最新鋭戦闘機SU35や地対空ミサイルS400も含まれている模様です。

新協定のモデルになったのはイランが昨年3月に中国と締結した戦略協定です。

中国がイランのエネルギー、通信、交通などの分野に総額4000億ドル(約44兆円)を投資するのと引き換えに、イラン原油を安価で安定調達するというのが骨子。制裁で苦しむイランにとっては国益にかなう協定です。イランはロシアからの兵器購入費約100億ドルの支払いについては、中国からの石油代金の未回収分でまかなうのではないかと観測されています。

イランとロシアによる関係強化により、世界の対立軸はこの2カ国に中国を加えた「反米枢軸」と「米国連合」という図式に収れんしつつあります。とりわけ、米国の制裁に対抗しようとするイランの動きが目立ちます。イランは昨年9月、ライシ師がタジキスタンで開催された「上海協力機構(SCO)」首脳会議に出席、機構への正式加盟が承認されたのですが、これもそうした動きの一環です。

SCOは中国とロシアが主導し、8カ国で構成。オブザーバーで参加してきたイランは9番目の加盟国となります。プーチン氏にとってもイランとの関係強化を世界に見せつけることはプラスです。

中露とイランは3カ国枢軸を誇示するようにこのほど、ペルシャ湾の外側のオマーン湾付近で海軍の合同演習を実施しました。

ウクライナ危機も、「3カ国枢軸」と「米国連合」という図式の中で見ていく必要があります。ただ、その中で一番の強敵はやはり中国です。ただ、この悪の3枢軸は互いに協力しあうでしょう。

たとえば、ロシアによるクリミア併合以降、中国がロシアに代わってウクライナ最大の貿易相手となったり、友好協力条約を結びウクライナが核の脅威に直面した場合、中国が相応の安全保障を提供するとしてロシアのウクライナ攻撃では中国がウクライナを擁護するような素振りをみせましたが、今後もこのような行動をとるでしょう。

このようなことが、今後ウクライナ以外でも行われるでしょう。この三者は互いに連携しており、現実には「3カ国枢軸」にとって最も良いように動くことになるでしょう。ロシアは、中国やイランに軍事技術の提供をある程度強化するかもしれません。

バイデンを含む民主党も、無論共和党にとっても選挙、特にこの秋の中間選挙は重要でしょう。ただ、バイデンは「ワグ・ザ・ドッグ」だけで動くのではなく三国枢軸こそが、本当の敵であると見極めるべきです。共和党もそうです。両者とも選挙に勝つために、悪の3枢軸を利することがあってはならないです。


バイデン政権が同盟国との関係を強化しているのはいかに超大国とはいえども米単独で「反米枢軸」と対峙していくのは財政的にも軍事的にも耐え切れなくなり、応分の負担を要求せざるを得ない、というのが実情でしょう。特に日本は対中、対ロシアの最前線に位置し、同政権にとっての日本の存在価値は格段に上がりました。今後も日本が米戦略にさらに組み込まれていくでしょう。

しかし、昨日も述べたように、これは同時に日本の存在感を高めるチャンスでもあるのです。

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2022年1月24日月曜日

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日米、沖縄南方で異例の大規模共同訓練の狙いとは 中国や北朝鮮の軍事的覇権拡大の姿勢に警戒か 識者「演習が有事のテストになる」

海上自衛隊が米海軍と実施した共同戦術訓練。右端は米原子力空母、エーブラハム・リンカーン

 海上自衛隊は23日、米海軍と沖縄南方で17~22日に共同戦術訓練を実施したと発表した。欧米諸国がロシアのウクライナ侵攻に警戒心を募らせるなか、北朝鮮は今年に入って極超音速ミサイルや弾道ミサイルの発射を繰り返している。中国が台湾への軍事的圧力を強める可能性も指摘される。日米共同訓練の狙いに迫った。


 注目の共同訓練には、米海軍の原子力空母「カール・ビンソン」と、同「エーブラハム・リンカーン」、強襲揚陸艦「アメリカ」と、同「エセックス」、ドック型揚陸艦1隻、巡洋艦2隻、駆逐艦3隻が参加。海自からはヘリコプター搭載型護衛艦「ひゅうが」が参加した。

 これに対し、中国や北朝鮮は軍事的覇権拡大の姿勢を崩さない。

 台湾国防部は23日、中国軍機が相次いで台湾南西の防空識別圏(ADIZ)に進入したと発表した。進入したのは、戦闘機「殲16」24機と、戦闘機「殲10」10機、爆撃機「轟6」1機、対潜哨戒機「運8」2機、通信対抗機「運9」2機の合わせて39機とみられる。日米共同訓練が始まった17日から4日連続で台湾のADIZに侵入している。

 北朝鮮は今年に入り極超音速兵器などを4回、計6発発射している。

 日米、中国の動きをどうみるか。

 軍事ジャーナリストの世良光弘氏は「年明けから動きをみせる北朝鮮を含め、日米は中国に警戒心を強めている。空母と揚陸艦を合わせて5隻が参加する訓練は異例の規模だ。特に米国は、北京冬季五輪終了後、ロシアのウクライナ侵攻に乗じて、中国が東アジアで動き出すとみており、演習が有事へのテストになる」と指摘した。

【私の論評】米・中露対立は日本にとって大きな懸念事項だが、存在感を高める機会ともなり得る(゚д゚)!

上の記事にもあるように、中国軍機が相次いで台湾南西の防空識別圏(ADIZ)に進入した意図は、日米の訓練実施を受けて中国の兵力、火力を見せつける意図があった可能性があります。

台湾のシンクタンク、国家政策研究基金会の掲仲副研究員は、進入した機数が過去最多レベルではなく、進入した空域も台湾の南西に集中しており日米が訓練を行った範囲からは離れていることから、弱腰になっていないという態度を示すと同時に、意図しない事態の発生を避ける狙いがあったとの見方を示しいます。

米海軍の異例の行動は、これだけではありません。香港(CNN)によれば、 米海軍のオハイオ級弾道ミサイル原子力潜水艦「ネバダ」が最近米領グアムに寄港しました。アナリストからはこれについて、インド太平洋地域の緊張が高まる中で同盟国と敵の双方にメッセージを送る動きだとの指摘が出ています。

トライデント弾道ミサイル20基と核弾頭数十発を搭載するネバダは15日、グアムにある海軍基地に入港しました。弾道ミサイル原潜がグアムに寄港するのは2016年以来で、寄港が発表されるのは1980年代以降でわずか2度目です。

米海軍のオハイオ級弾道ミサイル原子力潜水艦「ネバダ」が先週末、米領グアムに寄港した

米海軍の声明では今回の寄港について「米国と地域の同盟国の協力を強化し、米国の能力や柔軟性、即応態勢、インド太平洋地域の安全と安定に対する継続的な関与を示すものだ」としています。

通常、米海軍が保有する弾道ミサイル原潜14隻の動きは極秘にされています。これらの潜水艦は原子力を動力とするため一度に数カ月連続で潜航することが可能で、航続時間を制約する要素は150人を超える乗組員の生活維持に必要な物資のみとなる。

海軍によると、オハイオ級潜水艦は平均77日間にわたって海にとどまり、その後はメンテナンスや補給のために約1カ月港に滞在します。

ワシントン州バンゴーやジョージア州キングズベイにある母港の外では艦影が撮影されることさえまれです。徹底した秘密主義の結果、弾道ミサイル原潜は「核の3本柱の中で最も生残性の高い部分」となっています。核の3本柱にはこれ以外にも、米本土のサイロに格納される弾道ミサイルや、B2やB52のような核兵器を搭載可能な爆撃機があります。

ただアナリストによると、台湾の地位を巡る米中間の緊張がくすぶり、北朝鮮がミサイル実験を強化する中、米国は弾道ミサイル原潜を展開することで中国や北朝鮮には不可能なメッセージを発することができるといいます。北朝鮮は潜水艦プログラムを開発中ですが、まだ実戦配備レベルに達していません。

米海軍の元潜水艦長で、現在は新アメリカ安全保障センターでアナリストを務めるトーマス・シュガート氏は「意図的かどうかはともかく、弾道ミサイル原潜はメッセージを送っている。米国は100発あまりの核弾頭を相手の玄関先に配置することができるが、相手はそれを知ることすらないか、あるいは大した対応が取れない、というメッセージだ。これが逆の立場になることはありえず、そうした状況はしばらく続く」と述べました。

北朝鮮による弾道ミサイル原潜の開発計画はまだ始まって間もないです。中国は推定6隻の弾道ミサイル原潜を保有しますが、米海軍の保有数には見劣りしますし、米海軍の戦力とは比較にならないという分析が多いです。

また戦略国際問題研究所の専門家による2021年の分析によると、中国の弾道ミサイル原潜は米国のものほどの能力はありません。中国の094型弾道ミサイル潜水艦は水中作戦時米潜水艦の倍の騒音を発するため探知されやすいほか、ミサイルや弾頭の搭載量でも劣るというのが、米戦略国際問題研究所(CSIS)の分析です。

他にも異例な動きはあります。米国防総省は24日、原子力空母2隻の打撃群が訓練のため南シナ海に入ったと明らかにしました。軍幹部は、同盟国を安心させ、「有害な影響に対抗」する決意を示すのが目的と述べました。

国防総省によると、「カール・ビンソン」と「エイブラハム・リンカーン」の原子力空母打撃群が23日に南シナ海に展開し始めました。

上の記事にもあるように、「カール・ビンソン」と「エイブラハム・リンカーン」は沖縄南方で17~22日に日本と共同訓練を行っていますから、この共同訓練が終わってから、すぐに南シナ海に展開したということになります。

この展開力も米軍の強みです。巡航速度がはるかに遅い中国の空母にはできない離れ業です。

米原子力空母「エイブラハム・リンカーン」クリックすると拡大します

両打撃群は、対潜水艦、空や海上の戦いを想定した訓練を実施します。

米海軍は23日、両打撃群が台湾の東岸沖のフィリピン海で海上自衛隊と訓練を実施していると明らかにしました。

一方北大西洋条約機構(NATO)は24日、ロシアによるウクライナ侵攻に備え、東欧に臨時の部隊を待機させ、艦隊や戦闘機を増派すると発表しました。ウクライナのNATO加盟を警戒するロシアは、NATO不拡大を確約するよう米欧に要求しています。バイデン政権は今週、ロシアの提案に文書で回答しますが、確約は拒絶する方針です。

ロシアはウクライナ国境周辺に軍部隊を展開しています。米国務省は23日、在ウクライナ米大使館職員の家族に国外退避を命じました。英国も同様の措置を取りました。

22日、ウクライナの首都キエフで、訓練を受ける同国兵士ら

バイデン米大統領は19日、就任から20日で1年となるのを控え、ホワイトハウスで記者会見した。緊迫するウクライナ情勢について「ロシアはウクライナに侵攻するだろう」との「推測」を示したうえで、その場合、「深刻な代償を支払うことになる」と大規模な経済制裁を発動する意向を強調し、ロシアをけん制しました。

 バイデン氏は会見で、ロシアのプーチン大統領が外交による緊張緩和か軍事侵攻かの「選択」を求められていると説明。侵攻を選んだ場合の制裁として、「ロシアの銀行はドル取引ができなくなる」と述べた。世界の主要金融機関が参加する国際銀行間通信協会(SWIFT)からの排除を念頭に置いた発言とみられます。

これについては、米国家安全保障会議(NSC)は、西側諸国が「国際銀行間通信協会」(SWIFT・本部ベルギー)システムからロシアを遮断する可能性を排除したとする報道を否定しました。

中国への強硬姿勢に対しての米国内での支持は大きいです。「中国に厳しく」という世論はますます強く、対中国政策で弱気な対応を見せれば、それはバイデン氏の民主党政権にとって国民の支持を失いかねない局面に直結することになります。

秋には中間選挙があります。2021年11月の2つの州知事選挙、バージニア州ではバイデン大統領が応援に入ったにもかかわらず民主党候補が破れ、ニュージャージー州でも民主党の現職知事が大苦戦して辛くも逃げ切りました。中間選挙の結果、そして次期大統領選の結果によっては超大国の指導者がまた変わるかもしれません。

2022年の世界も“世界唯一の超大国”と言われる米国を中心に動くでしょう。2月の北京冬季五輪パラリンピックを見据えた外交戦術、さらにロシア軍が国境に展開して緊張が続くウクライナ情勢など外交の課題は山積です。その一方、苦戦している国内での支持率。バイデン政権2年目は、秋の中間選挙に向けて、国内外の多くの緊張と共に歩んでいくことになる。

移民政策でも、アフガン撤退でも明らかに失敗したバイデン、今年の中間選挙のことを考えると、中露に対して弱い姿勢は見せられません。何らかの形で、失地を回復する必要があります。

プーチン大統領がウクライナ国境に軍を展開して、武力で威嚇して圧力をかけているのは、おそらく、バイデン大統領の国内の弱い支持基盤を見越して、ウクライナのNATO加盟を阻止し、欧州でのNATOの中距離ミサイル配備をけん制することで、自国の安全保障をより確実にすることが狙いでしょう。

しかし、それが達成されなくとも、欧州の同盟国との連帯をトランプ前政権の違いとして打ち出していきたいバイデンの指導力が低下して、2024年の大統領選挙で、ロシアに「優しい」トランプ大統領が再選されることなど、米国の弱体化と米欧の連帯の弱体化を期待する複合的な狙いがあると考えられます。

中国にとっても、このような米国の同盟国との紐帯を弱める方向性は、自らの利益に沿うものであり、逆に日本にとっては懸念すべき要素です。

かつての日本にとって日米同盟とは、自国を守るための最強のツールとしての意味しかありませんでした。ところが、今や、日米同盟を機能させることは、米国の窮地を救い、長期的な国際秩序の方向性を決める重い課題となっています。その意味で日本の責任は重いと同時に、日本にとっては存在を高める大きな機会でもあります。

その意味でも、日米の沖縄南方で異例の大規模共同訓練は大きな意義のあるものであったと思います。

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ウクライナで政権転覆画策か ロシアで動き、英が「異例発表」―【私の論評】米国が「ウクライナ反浸透法」を成立させ、露の現状変更を許さなければウクライナ問題は解決する(゚д゚)!

ウクライナで政権転覆画策か ロシアで動き、英が「異例発表」

18日、ロシアが実効支配するウクライナ南部クリミア半島を移動するロシア軍の装甲車両の列

 英外務省は22日、ロシアでウクライナに親ロシア指導者を就任させようとの動きがあると発表した。親ロシアのヤヌコビッチ元政権下で最高会議議員だったムラエフ氏が最有力視されているという。トラス外相は「ウクライナの政権転覆を狙うロシアの活動が明るみに出た」との声明を出した。機密情報の発表は異例だ。

トラス外相

 ロシアはウクライナ国境周辺に推定10万人の軍隊を展開。21日に米ロ外相が直接会談したが、緊張緩和への具体的合意はなかった。ロシアの軍事侵攻の可能性に危機感を抱く英国は阻止へ外交努力を続け、情報収集を強化している。ロシア外務省は「偽情報」だと非難した。

【私の論評】米国が「ウクライナ反浸透法」を成立させ、露の現状変更を許さなければウクライナ問題は解決する(゚д゚)!

ロシアのウクライナ侵攻については、昨年暮にどうなるか予想しました。その結論は以下のようなものです。

一人あたりGDPでは、韓国を大幅に下回る現在のロシアでは、そもそもウクライナ全土を併合するような大戦争はできません。それに、ロシア軍の兵站は鉄道に頼っているため、鉄道網が破壊されると、補給ができなくなるという致命的な欠陥があります。

それに、現在のロシアは、インフレの加速したため、中銀は金融引き締めの度合いを強めているほか、感染再拡大による影響も顕在化するなど、足下では幅広く企業マインドが下押しされるなど景気の悪化が懸念されています。

中略

ロシアによるウクライナ侵攻もかなり確率が低いと思います。ただ、状況が悪化した場合、来年はドネツク州への侵攻はあるかもしれませんが、年明けすぐということはないでしょう。ただ、確率は低いです。
そうして、現在のロシアが、ウクライナを屈服させて従わせるのは至難の業であることも、この以前このブログに掲載しました。

これを裏付ける情報もあります。ロシア国防省は昨年4月23日、ロシアが実効支配するウクライナ南部クリミア半島に演習を名目に増派していた部隊が撤退を始めたと明らかにしています。ロシアのショイグ国防相が同年同月22日、部隊に帰還命令を出していました。ショイグ氏は、ロシア南部のウクライナ国境付近に集結している部隊にも帰還を命じていました。

ウクライナのクリミア半島で上陸訓練をするロシア軍兵士ら

さらに、ロシアはカザフスタンに派遣していた小規模な空挺部隊を早々と引き上げました。その理由は、ロシアはカザフスタンとウクライナでの両作戦を実施するだけの力はないからです。

そうして、中露両国が恐れているのは、以前もこのブログで指摘したように、以下のようなものだと推測できます。

中露としては、大統領がトカエフだろうが、誰だろうが、とにかく安定していて欲しいというのが本音でしょう。トカエフ政権が崩壊するようなことでもあれば、力の真空が生まれます。そこに乗じて米国が暗躍し、中露の両方に国境を接するカザフスタンに親米政権でも樹立されNATO軍が進駐することにでもなれば、それこそ中露にとって最大の悪夢です。

米国にとっては、アフガニスタンでの失地を大きく回復することになります。失地回復どころか、アフガニスタンは現状では、中国とは一部国境を接していますが、ロシアは国境を接しているわけではないのですが、カザフスタンは両国と長い国境線をはさんで隣接しています。

中露にとっては、かつての米国にとってのキューバ危機のように、裏庭に米軍基地ができあがることになります。それ以上かもしれません。冷戦中にカナダやメキシコに、親中露政権が樹立され、中露軍基地ができるような感じだと思います。そこに長距離ミサイル等を多数配備されることになれば、中露は戦略を根底から見直さなければならなくなります。ロシアはウクライナどころではなくなります。中国は海洋進出どころでなくなるかもしれません。

結局ロシアが、ウクライナに拘るのは、ウクライナがNATOに加わることを是が非でも阻止したいということに尽きると考えられます。

ウクライナがNATOに加われば、ロシアはNATOと直接国境を接することになり、これはロシアにとっては大きな脅威です。それに、現在のロシアでは、米国抜きのNATOと戦っても勝てる見込みはありません。

無論ロシアには、核もあり、旧ソ連から継承した軍事技術もあり、侮れる相手ではありませんが、それにしても通常兵器による戦いでは、初戦では軍事技術に優れたロシアが勝利をおさめるかもしれませんが、本格的な戦争になれば、そのための兵站を維持できるだけの経済力はありません。

プーチンとしては、ウクライナを親露的にできれば、軍事的にウクライナに侵攻しなくても、NATOの脅威を取り除くことができます。ロシアでウクライナに親ロシア指導者を就任させようとの動きはプーチンの立場にたてば、当然といえば当然です。

これは、台湾と中国との関係にも似たところがあります。中国も台湾に武力で侵攻するのは難しいことをこのブログに掲載したことがあります。それは、中国軍の海上輸送力が脆弱であり台湾に一度に十分な兵力を送ることができず、小出しにするしかないからであるとしました。

そうすると、小出しにした人民解放軍は、その都度台湾軍に個別撃破されることになります。これでは、中国は海上輸送力を劇的に改善するまでは、台湾に侵攻できないのははっきりしています。

しかし、それでも中国にできる方法があります。それは、人民解放軍をこっそりと目立たないように民間人のようにみせかけて、少しずつ台湾に送り込むことです。あるいは、台湾人でも中国に親和的な人々を取り込んで、こっそりと軍事訓練をして、人民解放軍に組み込むことです。

中国は、かつて南シナ海でサラミ戦術で成功しています。台湾併合もサラミ戦術ですこしずつ台湾内に人民解放軍を増やしていけば成功することもしれません。

両者合わせて30万人も超えれば、クーデターなどのみせかけて、台湾を絡め取ることができます。直接軍事力を用いなくても、このような方法なら長い年月をかけて、台湾を併合することができるかもしれません。

そうして、これに米国が対抗するためには、私は米国が「台湾反浸透法」を成立させて、台湾への中国の不当な浸透があった場合には、制裁を課すなどの措置をすべきと思います。さらに、中国が台湾に人民解放軍を合法的にみせかけて送り込む等の挙に出た場合は、一定数以上の米軍を台湾に派遣する等の旨をはっきりさせるべきでしょう。

このようなやり方を、ウクライナにも適用すべきと思います。米国が「ウクライナ反浸透法」を成立させて、ウクライナへのロシアの不当な浸透があった場合には、制裁を課すなどの措置をすべきと思います。無論、ロシア産ガスを取引材料にした場合もそのような制裁を課すべきと思います。

ただ、それ以前に、EUはロシア産ガス以外のエネルギー源の多様化も進めるべきでしょう。これも、ロシアに対抗する措置となり得ます。

さらに、ロシアがウクライナに非合法な手段で親ロシア指導者を就任させようとの動きをした場合、さらにロシアがウクライナにいかなる理由であれ、軍を派遣すれば一定数以上の米軍もしくはNATO軍をウクライナに派遣する等の旨をはっきりさせるべきでしょう。無論、これはウクライナの了承も得る必要があります。

無論、これはバイデン大統領が主張するように、ロシアによる現状変更を一切許さないという前提で行うべきでしょう。これを裏返せば、米国も現状変更をしないことを意味します。

バイデン米大統領とプーチン露大統領

このような条件のもとで、バイデン氏がプーチン氏と交渉すれば、ウクライナを巡る緊張がとける可能性は十分あると思います。

バイデン政権も現状では中国対応が最優先課題であり、ロシアが現状変更しないと確約し、それを遵守すれば、ことさら事を荒立てたくはないでしょう。

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2022年1月22日土曜日

台湾の非対称戦力構築を後押しする法案 米議員が提出―【私の論評】米国は「台湾反浸透法」を成立させ、中国の不当な浸透があった場合には制裁を課せ(゚д゚)!

台湾の非対称戦力構築を後押しする法案 米議員が提出


マイク・ギャラガー米下院議員(共和党)は21日、台湾の非対称戦力構築の加速化などを促す「武装台湾法案」を提出した。

法案では、米国防長官に対し「台湾安全支援イニシアチブ」を策定することや、イニシアチブの遂行に向け2023~27会計年度に毎年30億米ドル(約3410億円)を拠出することを求める。台湾の非対称戦力の構築を加速させるとともに、中国の台湾侵攻を遅らせたり阻止したりする目的で、台湾への武器供与や訓練などに使われる。

ギャラガー氏は、同日付のリリースで、「アフガニスタンやウクライナ、イランで露呈したバイデン政権の弱腰ぶりを見て中国は侵略的になる一方だ」と指摘。その上で「議会は、手遅れになる前に抑止力を取り戻すための行動を起こす必要がある」と訴えた。

上院では昨年11月、同じく共和党のジョシュ・ホーリー議員も同様の法案を提出していた。

【私の論評】米国は「台湾反浸透法」を成立させ、中国の不当な浸透があった場合には制裁を課せ(゚д゚)!

台湾海峡の軍事バランスは急速に悪化しています。その結果、中国が2020年代後半までに台湾に侵攻し、その支配権を握ることができる、あるいは実際にできると結論づける懸念が高まっています。

わたし自身は、この説に与するものではありません。このブログでは、現在すぐに中国が台湾を武力侵攻する可能性は低いことを、根拠を指し示してこのブログで何度か掲載しています。

その根拠とは、中国軍の海上輸送力が貧弱であり、台湾を制圧するだけの兵力を一度で台湾に上陸させることができないということです。それでも、無理に台湾を併合しようとして、兵員を送り込めばどういうことなるかといえば、何回かにわけて兵力を送り込むことになり、一度に送り出せる兵力には限りがあり、それは台湾軍に個別撃破されることになってしまいます。

こうした「戦力の逐次投入」で日本もかつて大東亜戦争で失敗しています。現在の中国が台湾に武力で侵攻しようとした場合、こうした失敗を繰り返すことになります。

それに、中国が台湾に本当に武力侵攻した場合、米国は黙っていないでしょう。中国軍は米軍の応援にも対処しなければならなくなります。

中国の海上輸送力が向上するまでは、中国は台湾に武力侵攻できないという結論になります。これは、単純な計算で導き出すことができます。

ただ、このブログでは、それでも台湾が中国に併合される可能性があることを指摘しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
使命を終えた米国の台湾に対する戦略的曖昧政策―【私の論評】中国は台湾に軍事侵攻できる能力がないからこそ、日米は戦略的曖昧政策を捨て去るべきなのだ(゚д゚)!


 詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事より一部を引用します。
蔡英文総統の民主進歩党が政権の座についてから、台湾では中国の影響力はかなり低下しました。ただ、中国は台湾に対して浸透工作をこれからも強めるでしょう。それだけではなく、さらに中国は台湾を国際的に孤立させたり威信を低下させる挙にでるでしょう。経済的に不利益を被るように仕掛けるでしょう。

この浸透工作、台湾の国際的地位低下工作によって、台湾に親中政権ができたとしたら、どうなるでしょうか。しかも、その親中政権が中国の傀儡政権に近いものだった場合どうなるでしょう。

中国はある程度時間をかけて、少しずつ中国に人民解放軍を上陸させるでしょう。場合によっては、目立たないように、民間人を装って入国させるかもしれません。仮に30万人以上も上陸させてしまったとしたら、時すでに遅しです。台湾は事実上、中国領になってしまいます。それも、合法的にそうなるのです。

そうして、いずれ台湾は正式に中国の省になるか、あるいは対岸の福建省に取り込まれてしまうでしょう。

これを取り戻すには、米軍にとっても大変なことです。傀儡政権が出来上ってから、米国がこれに対応すれば、ベトナム戦争のように泥沼化する可能性もあります。

そうなる前に、対処すべきです。そのためには、今から「戦略的曖昧政策」を捨て去り、米国は戦略的明快さに転換すべきです。
現在台湾の蔡英文総統の率いる民主進歩党は、親中的でないですから、中国に与するようなことはしませんが、台湾政府が未来永劫、親中的にならないとはいえないです。さらには、政府が親中的ではないにしても、軍隊や産業界等が中国の工作にあって、親中的になる可能性は十分にあります。

そうなれば、上で示したように、中国が台湾にこっそりと、軍隊を送り込むということはありえます。そうなると、一度に軍隊を送る必要はなく、何度にも分けるとか、方法も空路、海路をもちいて複数の方法でできます。

あるいは、台湾に在住する中国出身者や、中国に親和性を持つ台湾人を中国側に導いた上で、密かに軍事訓練などをするという方法で、目立たない形で、台湾内に人民解放軍を組織するということもできるでしょう。

しかも、中国が得意なサラミ戦術で、毎年すこしずつ、何十年もかけてこのようなことをすれば、南シナ海で成功したように、台湾でも成功するかもしれません。

そうなれば、台湾は内部から崩壊して、中国の配下に収まるしかなくなります。こうした可能性は十分にあります。

こういうことをなくすためにも、米国は「戦略的曖昧政策」を捨て去り、米国は戦略的明快さに転換すべきと私は主張しているわけです。

中国問題グローバル研究所所長の遠藤誉氏も、習近平がすぐにも台湾に侵攻することはないと主張しています。その記事のリンクを以下に掲載します。

中国が崩壊するとすれば「戦争」、だから台湾武力攻撃はしない

遠藤氏は、"習近平は台湾の「武力統一」はしないつもりで、2035年まで待って台湾経済界を絡め取って「平和統一」に持って行くつもりだ"としています。

さらに、"2030年頃には、中国のGDPがアメリカを凌駕していて、2035年頃には少なくとも東アジア地域における米軍の軍事力は中国に勝てなくなっているだろう。だから2035年まで待つ。これが習近平の長期戦略だ"ともしています。

そうして、最後に以下のように締めくくっています。

"以上より、「中国は勝てない戦争は絶対にしない」と言うことができ、もし逆に中国共産党の一党支配体制を崩壊させたいのなら、「アメリカや台湾の方から中国に戦争を今すぐにでも仕掛けるといい」という、何とも皮肉な現実が厳然と横たわっている。

習近平にとって、何よりも重要なのは中国共産党による一党支配体制の維持なので、中国自らが率先して台湾を武力攻撃することはない。

これを勘違いすると、日本は「政冷経熱」を正当化して、経済における日中交流、日中友好ならば「安全だ」と勘違いし、その結果、習近平の思う壺にはまっていくという危険性を孕んでいる。"


私自身としては、現状の不動産バブル崩壊の深刻さやこのブログでも述べているように中国が中進国の罠にかかる可能性からみると、2030年頃に中国のGDPが米国を凌駕することはないとみていますし、2035年まで待って台湾経済界を絡め取って「平和統一」に持ってくことも難しいのではないかと思います。

ただ、"日本は「政冷経熱」を正当化して、経済における日中交流、日中友好ならば「安全だ」と勘違いし、その結果、習近平の思う壺にはまっていくという危険性を孕んでいる"というところは、私も同感です。

特に、経済界は、台湾政府が親中的になっても、大陸中国の国内産業の締め付けなどをみていれば、全部が親中的にはならないというか、なれないのではないかと思います。

そうすると、やはり上で述べたような、人民解放軍および武器を逐次台湾に上陸させるか、台湾人の親中国的な人々を人民解放軍に引き入れて、30万人以上も兵力を確保できる目処がたったときに、クーデター等にみせかけて、一気に制圧し、台湾を絡めとるのではないかと思います。

こういうことを考えると、台湾の非対称戦力構築の加速化も必要ですが、それ以外にも何らかの措置を講じておく必要があると思います。

そもそも、中国が台湾に対して何か非合法な動きすれば、それを封じる仕組みなどの構築が必要だと思います。

台湾の議会は2019年12月31日、中国から政治的影響が及ぶことを阻止するための「反浸透法案」を可決しました。

台北市内の立法院で、「反浸透法案」に反対し、本会議場で座り込む国民党の立法委員ら

国民党は、他国による浸透から台湾を守る対策は後押しするものの、民進党が支持率拡大のために法案可決を急いでおり、民主制度を脅かしていると非難。国民党の議員数人は採決中に抗議として議長壇の前で座り込みました。議会の外で抗議活動する親中派政党の支持者もいました。

法案は、中国による工作に対抗する数年来の努力の一環によるものです。台湾では、中国が政治家への不法献金やメディア、その他の不正手段で、台湾の政治や民主制度に影響を及ぼそうとしているとの見方が多いです。

反浸透法は、中国によるロビー活動や選挙運動などを含む資金提供を法的に防止する手段となります。違反した場合は最大7年間の服役が科されます。


米国はウイグル人権法の他、ウイグル輸入禁止法も成立させています。中国はこれを内政干渉として批判しています。このような法律を成立させたのですから、米国でも、「台湾反浸透法」を成立させて、台湾への中国の不当な浸透があった場合には、制裁を課すなどの措置をすべきでしょう。中国が台湾に人民解放軍を合法的にみせかけて送り込む等の挙に出た場合は、一定数以上の米軍を台湾に派遣する等の旨をはっきりさせるべきでしょう。

無論、これはバイデン大統領が主張するように、中国による現状変更を一切許さないという前提で行うべきでしょう。

そうして、ほかならぬ日本は台湾を見習い「反浸透法」を成立させるべきです。日本こそ、そのような法律が必要と思います。岸田政権には逆立ちしても、無理でしょうから、次の政権に期待したいところです。

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2022年1月21日金曜日

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仏下院「対中非難」採択…「ウイグル弾圧はジェノサイドに相当する」と明記 情けない日本の決議案


フランス下院(定数577)は20日、中国が新疆ウイグル自治区でジェノサイド(民族大量虐殺)を犯していると非難する決議を採択した。北京冬季五輪の開幕を前に、決議は少数民族ウイグル族に対するジェノサイドを政府が公式に認定し、非難するよう求めた。

決議は、新疆ウイグル自治区では強制労働が行われ、拷問、性的虐待についても証言があると指摘した。強制不妊政策でウイグル族の人口が抑制され、子供の連れ去りも横行していると批判。中国には「ウイグル族全体、またはその一部を抹殺しようとする意図がある」とし、ジェノサイドに相当すると明記した。

日本も2月1日に国会決議を採択する方向で調整しているが、決議案は自公間での修正協議で「人権侵害」が「人権状況」に変わり、「非難決議案」から「非難」の文字が削除され、「中国」という国名もない情けないものになっている。

【私の論評】「日米中正三角形」にさらに「楕円の理論」で磨きをかけようとする林外相は、ただ口が軽いだけ?(゚д゚)!

昨日もこのブログで述べたとおり、欧州の中国に対する見方は近年厳しくなる一方です。

昨日のブログでも述べたように、フランスのルドリアン外相とインドネシアのルトノ外相は昨年11月24日、インドネシアの首都ジャカルタで会談し、両国の防衛協力の強化に向け22年に外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)を始めることで合意しました。フランスは22年上半期にEU議長国として「インド太平洋地域との関係強化が優先事項になる」(ルドリアン氏)との立場も表明しました。フランス下院は昨年11月29日、世界保健機関(WHO)など国際機関への台湾の参加を支持する決議を採択しました。

フランスのルドリアン外相

そうして、上の記事にもあるように、20日仏下院「対中非難」を採択したのです。

フランスだけをみていても、このように中国に対してはどんどん厳しくなっています。他の国々も例外ではありません。

欧州というと、わずか数年前では、現在の日本の岸田政権のように中国に配慮する国が多かったと記憶しています。

特に2020年欧州における対中認識、姿勢の変化は、中国の行動に起因しています。トランプ政権が、EU自体を含む欧州の重視する国際枠組みに軒並み対決姿勢を示したことは、中国にとっては欧州・中国関係を改善する絶好の機会だったはずですが、中国それを完全に棒に振りました。

米欧対立の深まる4年間を経て、より多くの欧州人が中国を「体制上のライバル」とみなすようになったことは、衝撃的です。しかもそれは、トランプ政権による説得の結果ではありません。

香港における法の支配への挑戦をはじめとする中国自身の強硬な行動や不器用な外交の結果です。新疆ウイグル自治区における少数民族に対する迫害への関心も欧州で上昇しています。また、新型コロナウイルス感染症の発祥地などに関する強硬な「戦狼外交」やディスインフォメーション(偽情報の意図的な流布)は、完全に逆効果に終わりました。

欧州連合(EU)の欧州議会は20日、香港での人権状況の悪化を理由に、EUや加盟国に対し、北京冬季五輪へ外交団を派遣しないよう求める決議を採択しました。欧州議会は昨年7月にも、新疆ウイグル自治区などでの人権侵害を理由に、北京五輪の外交ボイコットを求める決議を採択しています。

欧州議会は決議で、中国政府が選挙制度を変更し、民主派勢力の排除を進めたことや、メディア関係者など反体制派の逮捕が相次いでいる点を指摘し、「表現や報道の自由の厳しい制限など、香港での人権の悪化を最も強い言葉で非難する」としました。EUや加盟国による北京五輪の「外交的ボイコット」や、人権侵害に関わる中国・香港の当局者、関係企業に対する制裁措置を求めました。決議に拘束力はありません。

同時に欧州議会は、香港の人権状況を非難し、政府トップの林鄭月娥行政長官を含む複数の高官に対して、渡航制限や資金凍結などの制裁を科すよう加盟国などに求める決議を賛成多数で採択しました。決議に法的拘束力はなく、実現の見通しも不透明ですが、EUと中国の関係はさらに悪化しそうです。

結局香港に対する中国の振る舞いほど、欧州人を激怒させたものはないようです。香港問題がなければ、まだ中国に配慮する欧州人もいたかもしれません。しかし、これが決定的に欧州人の中国に対する見方をかえさせたようです。

香港

習近平国家主席が、中国は多国間協力におけるパートナーだと売り込んでも、香港問題以降信じる欧州人はほとんどいません。EUのボレル外相(外交安全保障上級代表)は、中国の姿勢は「自らの好きな部分だけの選択的多国間主義であり、それは国際秩序に関する異なる理解に依拠している」と述べています。

60年までのカーボンニュートラルの目標や、新型コロナのワクチンを共同購入する国際的枠組みであるCOVAX(コバックス)への参加は、外交上も得点を稼ぐものですが、欧州における中国に対する懐疑的見方は根強いです。

他方で、米新政権の下、欧州での対米イメージは大きく改善するでしょう。バイデン氏は、対中政策に関しても欧州と協力するとみられます。世界貿易機関(WTO)の活用や、気候変動に関するパリ協定や世界保健機関(WHO)への復帰も含まれます。そうした中で、気候変動に関する中国の目標達成やワクチンを外交ツールとして使わないことを監視できます。

ドイツも欧州も、米国の進める中国との「デカップリング(分断)」には反対してきました。それでも、ドイツでは、経済関係を多角化することで、中国への依存度を軽減し、リバランスをはかる必要があるとの意識が広がっています。

20年9月にドイツ政府が発表した「インド太平洋指針」の背景にも、効果的な中国政策を展開するには、中国以外の諸国との協力が不可欠だとの認識が存在しています。価値を共有する諸国と経済・政治関係を強化することも、その一環です。

1997年、香港がイギリスから中国に返還されて以来、一つの国に二つの政治制度、しかも資本主義と一党独裁社会主義が並立するという世界史初の壮大な実験は、2021年に失敗に終わりました。

2021年3月11日、中国人民代表大会(全人代)が香港の民主化に歯止めをかける選挙制度改変を決めました。賛成2895票、反対0、棄権1という、習近平体制の一枚岩を誇示する採決結果でした。

その後、全人代常務委員会などで詳細が詰められ、香港の議会にあたる立法会で条例が改められることになったのです。

改変の目的は、国家安全維持法などで一度でも罪に問われた人は「愛国者ではない」と新設の委員会から認定され、香港議会に立候補すらできないという仕組みの確立でした。香港の自治や北京中央政府に対する「異論」はすべて封じられることになりました。

これは、契約や国際法なども重んじる欧州人からみれば、法の支配へのあからさまな挑戦であり、挑戦言語道断の措置であり、欧州人のほとんどは、中国は全く信用ならないという観念を植え付け、固定化させたといえます。そうして、それは、当然のことながら、議会の立法や政府の政策にも反映されます。

だから、欧州が中国に対して厳しくなるのは当然なのです。

同じことをみても、なお中国に配慮しようとする愚かな人たちがいます。それが岸田政権です。無論政権のなかには、岸防衛大臣含め、そうではない人もいるのですが、首相、外務大臣、幹事長がそういう人たちなのですから、目もあてられません。

林芳正外相は13日、日本記者クラブで会見した。外交方針について、所属する派閥・宏池会(岸田派)の先輩、大平正芳・元首相が唱えた「楕円(だえん)の理論」を引き合いに、「なんとかひとつの楕円にする努力をやらなければならない」と語っています。米中による覇権争いのなか、日本としてバランスをとる重要性を強調しました。

大平元首相は、調和を探る「楕円の理論」を説きました。林氏は「外交はほとんどの場合、相矛盾するような課題が出てくる」と述べた上で、「大平総理は、両立の難しいことを二つの円にたとえ、一つの楕円にする努力というものをやらなければならない、と。好きな言葉だが、外務省に来て、言葉の重みをかみしめている」と語りました。

大平元首相

一昨日は、このブログで、「日米中正三角形」論について述べましたが、「楕円の理論」でさらに、日中友好に磨きをかけたようです。これを、現状に当てはめれば、2つの円が「米国と中国」を指すのは明らかです。楕円にするとは「米国と中国の対立をなんとか丸く収める」という意味でしょう。そのために、林氏は暗に「日本が仲介努力をする」と語ったともいえます。

この林外務大臣は13日の日本記者クラブ主催の記者会見で「秋の中国共産党大会で、おそらく習近平総書記の3期目の続投が決まる」と述べています。昨年11月には中国共産党第19期中央委員会第6回総会が習氏の功績を称(たた)える決議を採択して習氏の3期目突入が確実となっており、こうした情勢を踏まえた発言とみられます。

ただ、外務大臣という立場で、このような発言をするのは、他国の内政に干渉することになります。まだ習近平総書記長の続投が決まっていないわけで、これでは口が軽すぎると言わざるを得ません。これは、辞任に発展してもおかしくない案件だと思います。

林外大臣は、着任そうそうテレビ番組の中で、「中国から招待を受けた」旨を公表しています。これは、外交儀礼上あり得ない行為です。

林外務大臣は口が軽すぎです。この有様では、今後日本は外交上で大きな不利益を被ることになりかねません。岸田首相とバイデン米大統領は日本時間21日夜、初めてオンライン形式で会談することになっていますが、オンラインでの会談は異例ですし、それに会談の予定が決まるまでにかなりの時間を要しました。これには、林外務大臣の口が災いしている可能性が大きいです。

林外務大臣はこれからも、軽口を叩く可能性が大きいです。もう一度重大案件で軽口を叩けば、岸田首相は林外務大臣を辞任させるべきでしょう。

そうして、それを皮切りに、安倍・菅政権の路線を継承し、両政権でなしえなかった懸案事項などを成し遂げ、その後に岸田カラーを出しても遅くはないです。このくらいの大きな転換をしないと、岸田政権は短命で終わると思います。しかし、現状の岸田内閣をみていると、岸田暫定内閣で終わった方が、岸田氏にとっても自民党にとっても有権者にとっても良いようも思います。

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2022年1月20日木曜日

欧州議会の議員41名がEUに中国の脅迫に抵抗するリトアニア支持呼びかけ、外交部が感謝―【私の論評】米国、欧州の現状を把握できない、頭が30年前のままの岸田政権につける薬はない(゚д゚)!

欧州議会の議員41名がEUに中国の脅迫に抵抗するリトアニア支持呼びかけ、外交部が感謝 


フォーカス台湾 日本語版

「対中政策に関する列国議会連盟(Inter-Parliamentary Alliance on China, IPAC)」のMiriam Lexmann共同代表による発起で、欧州議会の議員41名が17日、欧州理事会のシャルル・ミシェル(Charles Michel)議長、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン(Ursula von der Leyen)委員長、ジョセップ・ボレル(Josep Borrell)副委員長兼外務・安全保障政策上級代表、ヴァルディス・ドムブロフスキス(Valdis Dombrovskis)執行副委員長兼通商担当、ティエリー・ブルトン(Thierry Breton)委員(域内市場担当)に連名書簡を送り、中華人民共和国のリトアニアに対する政治・経済面での脅迫を非難、欧州連合(EU)の指導者がリトアニアを明確に支持し、全ての必要なサポートを提供することを求めた。

中華民国外交部(日本の外務省に相当)はこれを受けて19日にプレスリリースを発表した。以下、内容の要約。

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欧州議会の議員たちが再び党派を超えて、中国の圧力に抵抗するリトアニアにエールを送ったことに対し、中華民国外交部は心からの謝意を表明する。欧州議会の議員たちは昨年9月3日にもリトアニア政府上層部に宛てた連名書簡でリトアニア支持と中国の「脅迫外交」への反対を表明している。

この連名書簡で議員たちは、中国の政府関係者がリトアニア製及びリトアニアの原材料を含む製品に対して実際の制裁行動をとったことは極めて悪辣であり、これは世界貿易機関(WTO)のルールと国際貿易秩序に違反するのみならず、EUを単一の市場とする根本的な原則に直接背くものだと指摘している。書簡ではまた、中国のEU加盟国に対する脅迫行為は初めてのことではなく、チェコのミロシュ・ビストルチル(Miloš Vystrčil)上院議長が台湾を訪問したことで大きな圧力を受けたことやその他多くの事例が中国の不当な圧力を証明していると説明した。連署した議員たちは、EU加盟国は国家利益ならびに共有する民主・人権の価値に基づき台湾との関係発展を決定しているのであり、それによって他国から脅迫されるべきではないと主張。議員たちはまた、リトアニアと台湾が先ごろ代表処の相互設置を決めたことは「一つの中国」政策に挑戦するものではなく、それは欧州議会が昨年10月21日に可決した「EUと台湾の政治関係と協力(EU-Taiwan Political Relations and Cooperation)」のレポートで確認済みのことだと指摘した。

この連名書簡が欧州議会における五大主流会派、18の加盟国の大物議員の賛同を得ていることは、中国の横暴な圧力への抵抗はヨーロッパにおいて国籍や党派を超えたコンセンサスになっていることを示す。台湾はリトアニアと理念で結び付く友好的なパートナーとして、引き続き双方の実質的な連携を深めていく。我が国はEUをはじめとする理念の近い世界のパートナーたちに対し、具体的な行動でリトアニアを支持し、サプライチェーンの安全と自由で民主的な市場経済メカニズムを守り、一丸となって全世界の民主主義陣営の守る核心的な価値をより強固にしていくよう呼びかける。

【私の論評】米国、欧州の現状を把握できない、頭が30年前のままの岸田政権につける薬はない(゚д゚)!

リトアニアは昨年5月、中国と中・東欧17カ国間の首脳会議「17+1」を離脱。これを機に中国との関係が緊迫し始めました。その後、台湾への代表機関設置を発表。台湾も同7月20日、リトアニアへの代表機関設置を発表し、中国の反発を招きました。

中国は同8月、駐リトアニア大使の召還を決め、同11月に台湾の代表機関「駐リトアニア台湾代表処」がリトアニアの首都ビリニュスに設置されると、リトアニアの外交関係を「代理大使級」に格下げしました。

また、リトアニア製の商品が中国の通関で足止めするなど、経済的圧力を強めています。たとえばリトアニアのビールメーカー、ヴォルファスエンゲルマンは昨年秋、中国からの注文を全てキャンセルされました。

リトアニアのビールメーカー、ヴォルファスエンゲルマンのCEO、Marius Horbačauskas氏

一方で、昨年の台湾市場の販売量は前年比23倍に達し、急成長を遂げました。同社の責任者は中央社の取材に対し、「愛は相互的でなければならない」と話し、台湾からの愛がより多いのであれば「そこになぜ注力しないのか」と台湾市場に力を入れる姿勢を示しました。

このブログにも掲載したように、台湾煙酒は3日、中国の港で足止めされて行き場を失っていたリトアニア産のラム酒約2万400本を買い取ったと発表し、台湾の消費者に対し、リトアニアへの応援を呼び掛けるという出来事がありました。

これ以前にも、オーストラリア産ワインに不当廉売があったとして難癖をつけ、2021年から懲罰的な関税の上乗せを行っています。

何というか、中国はこのような姑息な真似をしていますが、このような行為はますます世界から反発を招いているようです。

米国は以前から、議会が超党派で中国に対しては厳しい態度をとるようになり、それに引っ張られる形でバイデン政権も厳しい態度をとっていることは昨日もこのブログで述べたばかりです。

欧州でも似たような動きがあります。昨年11月25~26日にオンライン形式で開いたアジア欧州会議(ASEM)首脳会議で、EU首脳は自由や人権など基本的な価値を共有する民主主義の国と協力を深める方針を表明しました。一部の国は台湾との関係強化に動いており、中国も敏感になっています。

「多くのアジアのパートナーが我々の見方を共有しているのを知っている」。EUのミシェル大統領は同月25日、オンラインでの演説で普遍的な民主的権利や基本的な自由に基づいて協力を深めようと呼びかけました。インフラ支援での「透明性」やルールに基づく国際秩序の重視を訴え、名指しはしなかったものの、強権的な対応や従来のルールを軽視した動きが目立つ中国をけん制しました。

経済関係を柱に密接な関係を築いてきた中国と欧州の関係が揺らぎ始めたのは、中国の強権的な対応が目立ち始めてからです。香港では自治や表現の自由などが強く制限され、中国・新疆ウイグル自治区での人権問題が浮かび上がりました。

昨年3月には少数民族ウイグル族の不当な扱いが人権侵害に当たるとして約30年ぶりの対中制裁に踏み切りました。最早中国の振る舞いに目をそらして経済的な利益を追い求めるわけにはいかないのでしょう。

EUの欧州委員会が11月23日公表した報告書によりますと、2020年の中国によるEU企業のM&A(合併・買収)件数は前年に比べ63%落ち込みました。欧州委は新型コロナウイルス禍に加え、EUと加盟国が買収規制を強化したためとみています。


EU加盟国は東南アジア諸国連合(ASEAN)やインドなどとの関係を深める方向に傾いています。フランスのルドリアン外相とインドネシアのルトノ外相は24日、インドネシアの首都ジャカルタで会談し、両国の防衛協力の強化に向け22年に外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)を始めることで合意しました。フランスは22年上半期にEU議長国として「インド太平洋地域との関係強化が優先事項になる」(ルドリアン氏)との立場も表明しました。

EUはインドとの自由貿易協定(FTA)交渉を年内にも再開したい一方、大筋合意した中国との投資協定案の批准手続きを事実上棚上げしました。加えて安全保障・経済両面から台湾との関係強化に動いています。ロイター通信によると、台湾高官は11月25日、チェコなど東欧3カ国と半導体での協力を検討していると明らかにしました。フランス下院は11月29日、世界保健機関(WHO)など国際機関への台湾の参加を支持する決議を採択しました。

欧州議会の議員41名がEUに中国の脅迫に抵抗するリトアニア支持呼びかけは、上記のような背景のもとに行われたものです。

今後、人権や自由を基調とし、自由に伴う責任を重視する欧州では、最早中国の振る舞いに目をそらして経済的な利益を追い求めることが許されることはないでしょう。中国共産党の無責任な自由を許容しないでしょう。

台湾は中国から一方的に攻撃を受けているわけではありません。半導体の分野では、反撃に転じつつあります。世界のファウンドリー(実際に半導体チップを生産する工場)業界では、TSMCが54%、韓国のサムスン電子が17%程度のシェアを持っています。

バイデン政権は、台湾当局や半導体ファウンドリー(受託製造企業)最大手であるTSMC(台湾積体電路製造)との関係強化に動き始めました。また、同政権は半導体製造機械と、半導体素材てはトップシェアである、わが国の半導体産業へも秋波を送っているといわれています。

半導体の確保に向けてバイデン政権が、ファウンドリー事業の強化に取り組む韓国のサムスン電子を無視して、台湾のTSMCを重視する背景には、北朝鮮などに関する文氏の政策への不安や中国との関係に疑念を抱いているからでしょう。

半導体設計に優れた米国が、半導体製造機械、半導体素材、半導体ファンドリーを押さえてしまえば、中国が現在の最高品質の半導体や次世代の半導体を使えなくすることができます。米国は、中国が人権侵害を継続たり、台湾や香港に対する態度を変えなかったり、WTO規約を今後も無視し続ける場合、中国に対する半導体禁輸に踏み切るでしょう。

現在では、ありとあらゆる機器、機械、車両などに半導体が用いられています。新しい半導体を内製できない中国が新しい、性能の良い半導体を手に入れることができなければ、中国の産業競争力は地に落ちることになります。岸田政権がそのときにも中国に配慮をみせるようなことをすれば、バイデンは日本を制裁対象にするかもしれません。

そうして、基軸通貨であるドルを自国通貨とし、米国は、実質的に世界金融を牛耳っています。軍事力でも、金融と半導体でも負ける中国は、どう考えても新冷戦に勝つことはできません。

そもそも、中国が米国に新冷戦に向かわせるように結果として仕向けたことが間違いです。仮に現在の中共の立場にたったとしても、中国にとって都合の良い世界秩序を樹立しようとするなら、現体制は維持しつつも後20年くらいは大人しくして日米や欧州に歩調をあわせるようにして、産業力、軍事力をつけ国力を増し、その後に世界秩序の改変に臨むべきでした。そうすれば、チャンスがあったかもしれません。しかし、現状ではもう手遅れです。

世界中が中国のその魂胆を見透かし、それにブレーキをかけようとしています。特に、中国のような暗黒社会になることを嫌がる西欧諸国や他の台湾を含めた民主国はそうです。

このような状況のなか、中国当局による新疆ウイグル自治区などでの人権侵害行為を非難する国会決議について、自民党は2月1日にも採択する方向で各党と調整に入りました。決議は昨年、複数の超党派国会議員連盟が各党に働きかけたのですが、自民、公明両党が難色を示し、2度も採択が見送られました。北京冬季五輪(2月4日開幕)前に、意思表示できるのかどうかさえ疑わしいです。

自民幹部は19日、国会内で立憲民主党、日本維新の会の幹部らと面会し、決議案文を示したうえで採択の日程などについても協議しました。早期決議を求める声は与野党にあり、今国会の焦点の1つとなっています。

決議案は昨年末の自公間での修正協議で、当初案にあった「人権侵害」が「人権状況」に変わり、「非難決議案」から「非難」の2文字が削除されました。「中国」という国名もなく、対中非難としては不十分です。
このような状況の中、中国との関係を配慮する姿勢を見せ続ける岸田政権につける薬はないかもしれません。岸田首相や、主な閣僚、とりまきたちの頭の中は30年前のままなのでしょう。


30年前から変わっていないのは、日本人の賃金だけです。30年前の頭と同じ岸田政権が、そのことに気づけば良いですが、そのことには気づいていないようです。それ以外は、世界情勢も何もかも随分変わっています。それに気づけない政権が長続きしてはいけないです。

岸田暫定政権として、安倍・菅両政権の政策をそのまま継続し、短期でそのまま大人しく終えてくれれば、それで良いです。何か岸田カラーを出そうとすれば、日本だけではなく自民党を毀損することになると思います。

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2022年1月19日水曜日

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日本の解き方


岸田首相

 岸田文雄政権は、新型コロナウイルスの感染者の濃厚接触者について、待機期間を短縮するなど「柔軟な対応」を強調している。一方でワクチンの3回目接種は進まず、米軍基地の感染でも米国との交渉は遅きに失したとの見方もある。政府のオミクロン株対策は十分なのだろうか。

 新型コロナの感染症法上の分類を「2類相当」から「5類」に引き下げることについて、岸田首相は、「感染急拡大している状況で変更するのは現実的ではない。2類から5類にいったん変更し、その後、変異が生じた場合、大きな問題を引き起こす」と消極的だ。

 このような変更の決定は、新型コロナの感染者数が極めて少なかった昨年10~11月にやっておくべきだった。ワクチンの3回目接種も在庫があったにもかかわらず、やらなかった。そのため、沖縄県では医療従事者が感染し医療にも支障が出ているという。分類変更もそれとも同じで、波が静かなときに何も準備しなかったことが問題だ。今さら手遅れで、手順が前後していると言わざるを得ない。

 今後変異があるから変更すると大問題を起こすので対応できないというロジックもおかしい。これは、やらないことを正当化する「官僚答弁」である。

 一般論であるが、ウイルスは変異するたびに感染力は強くなるが弱毒化していく傾向がある。当てはまらない場合も少ない確率であり得るが、そのときには再び分類を変更すればいい。「柔軟に対応」と岸田首相は言うが、こうした柔軟性をもってもいいだろう。変異があるからこそ迅速に対応すべきだ。

 こうしてみると、岸田政権と菅義偉政権の差が著しい。菅前首相は昨年、厚生労働省に任せていたらワクチン接種は11月までかかるといわれたので、河野太郎氏をワクチン担当相に任命し、実務主体を厚労省だけではなく総務省を加えて地方自治体が動きやすいように工夫したという。その結果、驚異的なスピードでワクチン接種が可能になった。

 ワクチンの調達でも、菅前首相は、バイデン米大統領と西側諸国で初の対面での首脳会談を行った。合わせてファイザー社のCEOとも会談し、日本にとって有利なワクチン調達に成功した。

 岸田政権では、堀内詔子ワクチン担当相の存在感が小さく、実務対応力はかなり貧弱になっている。岸田首相はいまだに対面での日米首脳会談が開催できない異常事態だ。ファイザー社を含めてワクチン調達では対面のトップ会談が行えていないので、スムーズな関係とはとても言えない。現場の医療関係者からも、菅政権のときのほうがやりやすかったという声もある。

 岸田政権は、先手、先手と口では言うが、先を読まずに、場当たり対応しているだけのようにみえる。しかも、本コラムで書いたように、官僚を後ろから撃つようなこともしているので、ますます官僚の初動が鈍くなっている。国民に対して仕事するという観点からみれば、岸田政権は菅政権と比較して仕事をしていない。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】岸田政権は「日米中の正三角形政策」を捨て去り、「日米中二等辺三角形政策」を志向すべき(゚д゚)!

上の高橋洋一氏の記事では、岸田首相のオミクロンへの対応の貧弱さを語っていますし、それについては上の記事で十分に語り尽くされているので、以下では主に岸田政権の外交の貧弱さについて述べようと思います。

岸田首相は12月6日召集予定の臨時国会前に訪米し、バイデン大統領との首脳会談を調整していました。しかし、訪米は先送りになりました。米国内の事情があるにせよ、対中外交での歩調が日米間で合わなかったことが不安視されたことも仕切り直しの理由と言われています。

林外相は「米中両方とも話ができるのが日本の強み」と語っていましたが、この発想は鳩山政権時代の「日米中正三角形」論を思い出させるものです。


日米中が「正三角形」に近づいていくということは、日米同盟の距離を広げ、日中関係の距離を縮めるということです。

産経新聞は「日米中正三角形論は、中国の覇権主義戦略であり「日米分断の論理」だと論じています(2006年7月5日)。

正三角形論の歴史は古いです。1982年に中国の趙紫陽首相(当時)が打ち出した新外交路線に端を発するものです。当時は中ソ関係が 悪化しており、趙氏は「中米日の3国は互いに親密な三角形であるべきだ」と述べ、ソ連を牽制したのです。

この論は、冷戦が崩壊した90年代初めに脚光を浴び、その後、影を潜めたものの、その後左翼・リベラル系学者や評論家にもてはやされるようになった時期がありました。

しかし、正三角形論は、中国の一貫した外交方針であり、日米分断の論理に過ぎません。そして、このような虚構の論理を説く政治家は、党利党略に目がくらみ国家的立場を見失ったか、
北京と特殊の関係ができたか、と勘ぐらざるを得ないです。

そもそも、これまでの「日米中二等辺三角形論」は、
(1)自由主義陣営vs共産主義陣営という政治体制の違い、
(2)中国の覇権主義(急激な軍拡)に対して、日米軍事同盟によって防波堤を築く、
(3)全体主義国家、一党独裁国家、周辺国への侵略と弾圧・虐殺、人権蹂躙国家に対する牽制という意味合いがありました。
この三つの意味合いは、現在でも全く変わっていません。

自民党政権の対米関係を批判した鳩山政権はアジア外交強化を唱え、民主党の小沢一郎幹事長や山岡賢次国対委員長らが日米中3カ国を等距離とするスタンスをとったことがあります。小沢氏率いる総勢約500人の大訪中団は中国で厚遇されましたが、鳩山首相の対米外交はギクシャクし、米軍普天間飛行場移設問題で迷走の末に辞任を余儀なくされました。

当時「正三角形論」を説いた小沢幹事長は、「党利党略に目がくらみ国家的立場を見失ったか、北京と特殊の関係ができたか」という両者が的中していると言わざるを得ません。その小沢氏はどうなったかといえば、昨年の衆院選において岩手3区で、無敗を誇ってきた立憲民主党の大ベテランであるにもかかわらず落選しました。

岩手政に絶大な影響力を持ち、「小沢王国」に君臨してきた「帝王」の選挙区敗北は、最早小沢氏は過去の人になったという象徴でもあると思います。

鳩山政権の外交を岸田首相や林外相も批判していたはずですが、 岸田、林両氏は自民党内のリベラル派、ハト派(穏健派)を代表する宏池会に所属しています。そもそも「日米中正三角形」論は宏池会の先輩も語っていたことであり、その考えは骨の髄まで2人に染みついているのでしょう。

岸田氏の近著『岸田ビジョン 分断から協調へ』には、宮澤喜一元首相ともう一人、宏池会(現・岸田派)の会長を務めた人物が取り上げられています。それは加藤紘一元幹事長であり、彼こそが「日米中正三角形」論を元々主張していました。

岸田氏の近著『岸田ビジョン』

岸田氏は9月の記者会見で「権威主義的・独裁主義的体制が拡大している」と中国を批判し、「言うべきことは言う」とも強調してきました。自民党総裁選で掲げた公約通り、人権問題を担当する首相補佐官を新設し、人権問題をめぐり制裁を科せるようにする「日本版マグニツキ―法」(人権侵害制裁法)などの必要性を訴えてきた中谷元衆院議員を起用しました。

ところが、その中谷氏は11月24日のBS番組で「制裁を伴ってどういうことが起こるか、しっかりと検証しないといけない」などと慎重な姿勢に変わり、岸田政権は同法制定を見送る方針とも報じられました。

近著で「外交・安全保障の分野では、私以上に経験豊かな政治家はあまり見当たらないと自負しています」とつづっている岸田首相のスタンスが中谷氏を抑えているのは明らかでしょう。

米国や英国は来年2月の北京冬季五輪への政府高官派遣を行わない「外交ボイコット」を早々ときめましたが、岸田首相は「それぞれの国において、それぞれの立場があり、考えがあると思う。日本は日本の立場で物事を考えていきたい」と曖昧な言葉に終始していました。

それでも岸田文雄首相は先月24日、来年2月の北京冬季五輪・パラリンピックに、閣僚や政府高官ら政府関係者を派遣しない方針を正式に表明しました。日本オリンピック委員会の山下泰裕会長と参院議員で東京大会組織委員会の橋本聖子会長は、現地で開かれる国際オリンピック委員会の総会に合わせて出席するとしました。

ただ岸田首相をはしめ岸田政権の閣僚ぱ、「外交的ボイコット」と名言していません。それに、現職議員でもある橋本聖子JOC会長の出席を認めています。マスコミなどは、「実質的な外交的ボイコット」などと報道しています。

今年迎える日中国交正常化50周年を前に日中間で摩擦が生じることは避けたいとの思惑も透けて見えました。欧米と足並みをそろえられずに孤立していくとの不安は消えないです。

それでも、米ホワイトハウスは16日、岸田文雄首相とバイデン大統領が今月21日にオンライン形式で協議すると発表しました。16日の声明で、日米同盟を強化する方針を確認し「自由で開かれたインド太平洋という共通のビジョンを推進する」と記しました。中国の脅威を念頭に抑止力を高める安全保障協力も話し合う見通しです。

岸田政権も総選挙で勝利したものの、これから新型コロナウイルスの感染拡大が再び始まれば、オミクロン株への対応、外交、経済なとでお粗末な対応をこれからも継続していけば、支持率が徐々に削られていくことになるでしょう。

自民党総裁選の決選投票では支持してくれたとはいえ、安倍晋三元首相がどこまで岸田首相を支えるのかも定かではありません。今年夏には参院選も控えています。自民党は16年夏の参院選で大勝しており、来夏の参院選での議席維持のハードルは高いです。

参院選で敗北すれば、政権が一気に傾く可能性もあります。こうした不安が一層、貧弱ぶりに拍車をかけているのかもしれません。「何とか、経済でも、コロナ対策でも、外交でも強い岸田政権をアピールしなければ」という焦りにが、岸田政権の貧弱ぶりに繋がっているのかもしれません。

こういうときには、菅前首相のように、腹をくくって安倍政権を継承したように、岸田政権も安倍・菅路線を継承し、その上で両政権の懸案事項でありながら、できなかったことを実施し、その後に岸田カラーを打ち出すのが政権を安定させるためには、最も良い行き方ではないかと思います。

特に中国政策ではそうです。岸田氏と比較するとバイデン米大統領は、対照的です。中国に対して、厳しいという点では、バイデン大統領は、トランプ政権を継承しています。

これは、もちろんすでに米国議会が超党派で、中国に対して厳しいからでしょう。バイデン政権が、中国に厳しい議会に引っ張られていく流れは続くでしょう。特に今年は議会の中間選挙があります。議会の誰もが、中国に甘いと思われたくないでしょう。そうしてバイデン政権が議会を怒らせるリスクを冒すとは思えません。

中国に対して厳しい姿勢を堅持するバイデン米大統領

トランプ大統領やポンペオ国務長官らが次々と厳しい姿勢を打ち出していった前政権と比べるとバイデン政権の「顔」は見えにくいところがあります。しかしバイデン政権の米国はワシントン全体の空気を反映しながら、徐々に中国への圧力を強めています。いまのところこの流れを変える要素は出てきていません。

にもかかわらず中国に配慮をみせる岸田首相に、バイデン大統領が距離を置くのは当然です。せっかく厳しい対中政策を打ち出しているのに、岸田氏と親しい関係を構築すれば、議会やマスコミなどからも批判される隙を与え、中間選挙に悪影響を与えかねません。

米国のピューリサーチセンターの調査では、日米とも中国に対して負の感情を持っている人が圧倒的に多いことが指摘されています。

岸田政権は「日米中の正三角形」を捨て去り、「日米中二等辺三角形」を志向すべきでしょう。そうしなければ、岸田政権は国内保守派からも、バイデン政権や米議会からも、国民からも見放され、鳩山政権のように徐々に弱体化していくだけになるでしょう。

そうして、民主党が政権交代をしたときには、こぞって民主党を応援したマスコミやリベラル左派も、さすがに末期の鳩山政権は批判したように、いまのところ表立って岸田政権を批判しないマスコミも、いずれ批判攻勢に転じることになるでしょう。

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2022年1月18日火曜日

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使命を終えた米国の台湾に対する戦略的曖昧政策

岡崎研究所

 リチャード・ハース米外交問題評議会会長及びデイヴィッド・サックス同研究フェローが連名で、2021年12月13日付のフォーリン・アフェアーズ誌に、台湾に対する米国の戦略的曖昧さはその使命を終えたとして戦略的明快さに転換すべきことを論じている。


 この長文の論文を読むと論点は言い尽くされている。このまま戦略的曖昧政策を継続することは中国の計算違いを招く可能性があるという意味で危険であり、米国は戦略的明快さに転換すべきものと思う。

 その政策は台湾に対する直接的な侵略およびその他海上封鎖のような間接的な侵略に対して米国が台湾を防衛するとの意思を明確にすることを必要とする。もとより、張子の虎であることは許されず、台湾防衛を最重要課題と位置付ける米国の軍事力強化が必要であることは論を俟たない。

 問題は、戦略的明快さの政策自体の問題と言うよりは、むしろ政策転換のプロセスの管理の問題にあるのではないかと思われる。即ち、この政策転換が中国に対して挑発的と映ることは出来る限り避けるべきことである。挑発的と映れば、台湾とその周辺の情勢の不安定性を増幅する恐れがあるであろう。

 1947年3月、トルーマン大統領が議会で演説して、ギリシャとトルコを共産主義の脅威から守るために両国の経済と軍に対する支援を表明したが、台湾を巡る情勢が現在よりも更に切迫し一刻の猶予も許さない状況となれば、このトルーマン・ドクトリン演説の例に倣うことも考えられようが、そういう事態ではない――ということは戦略的明快さへの最適の転換時期如何という別の論点を提起するかも知れないが。従って、何等かの工夫が必要ではないかと思われる。

 挑発的であることを避けるという意味では、この論文にも言及があるが、中国に一定の保証を与えることは考慮の必要があろう。しかし、「台湾の独立を支持しない」という言い方には疑問がある――いわゆる「一つの中国」政策を誓約した米中の共同コミュニケの文言を繰り返し「両岸問題の平和的解決を促す」(4月16日の日米首脳共同声明)ことにとどめるべきものと思われる。

日本は米国の軍事オプションへの留意を

 工夫としてどういうことがあり得るか分からないが、例えば、議会で大統領に台湾有事の際の軍事力行使の権限を与える超党派の法案を成立せしめ、その機会を捉え、大統領が戦略的明快さを内容とする声明を発出することも検討に値しよう。

 この政策転換の反対論として説得的な議論を目にしないが、台湾の政策・行動がどうであれ無条件に安全保障のコミットメントを提供することを疑問視する見解がある。しかし、それは戦略的明快さの内容次第であり、一切の政策判断を排除する必要はないように思われる。

 バイデン政権が戦略的明快さを追求すると否とにかかわらず、台湾侵略に対し、米国がこれに対抗することに失敗すれば、この地域の秩序は修復不能なまでに損なわれるであろう。この論文はその末段で、米国の軍事オプションを可能とする前提条件は地域の諸国に米国と共に中国の侵略に抵抗する用意があることにあると指摘しているが、それが厳然たる実態であり、そのことに日本は留意せねばならない。

【私の論評】中国には台湾に軍事侵攻できる能力がないからこそ、日米は戦略的曖昧政策を捨て去るべきなのだ(゚д゚)!

昨年4月15-18日当時の菅総理訪米の際に、4月16日に発せられた日米首脳共同声明には、「日米両国は、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す」と、台湾という語が明記されました。


これは、日米首脳の共同声明としては、1969年の佐藤・ニクソン会談以来のことであり、日本国内では大きく報じられました。この他にもバイデン政権は、4月9日に国務省が、米台当局者の接触についてのガイドラインを改定し、台湾との接触の制限を緩和することを明らかにするなど、トランプ政権の路線を変えず台湾支援を強化しています。

「戦略的曖昧さ」とは、台湾が中国に武力攻撃を受けた際に、米国がこれにどう対応するか明言しないでおくという政策です。中国を挑発せず、他方で、台湾が独立を宣言し、中国の台湾進攻につながることを避けることを意図しています。

3月9日には、インド太平洋軍のデイビッドソン司令官(当時)が、上院軍事委員会の公聴会で、今後6年以内に中国が台湾を侵攻する可能性があると指摘したうえで、「戦略的曖昧さ」を見直すよう明言した。

一方米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長は3日、中国が台湾を侵攻する可能性は当面は低いとの考えを改めて示しました。米シンクタンク、アスペン研究所のフォーラムで「中国は近い将来、台湾へ行動を起こそうと準備しているか」と問われ「私の分析によれば半年や1、2年という近い将来に起こり得るとは思わない」と否定しました。

このブログでも、中国による台湾侵攻は、海上輸送力の脆弱さによる不可能であることを何度か掲載しています。それに中国が台湾に侵攻するとすれば、台湾を併合するためであり、台湾を破壊することが目的ではありません。併合するのは、実はかなり難しいです。

台湾を破壊することだけが目的であれば、台湾に核ミサイルを数発発射するだけでよいですが、武力で侵攻して併合するとなると、そのような単純なことではすみません。攻撃して撃破して、捕虜を捉えて、拘禁し、さらに大兵力を進駐させて、台湾を統治しなくてはならなくなります。

昔から知られている軍事法則の中に、攻撃三倍の法則があります。戦闘において有効な攻撃を行うためには相手の三倍の兵力が必要となる、とする考え方です。攻者が勝利すると言われる攻者と防者の兵力比率が三対一であるために、三対一の法則とも言われます。

ただ、この考えは、現在は当てはまらない場合も多いとはされていますが、それにしても台湾は島嶼であり、西側に平野が広がり、東側は山岳地帯です。上陸の主力部隊は西側から上陸するでしょう。台湾は東側にはあまり力を割くこと無く西側に集中できます。

台湾地図

それに、台湾は攻撃力の高い、対艦ミサイルも装備しています。無論、対空ミサイルも、中長距離ミサイルも装備しています。これらにより、中国の艦艇、航空機等が破壊されるでしょうし、場合によっては本土も攻撃にさらされることになります。これらを考慮に入れると、やはり三対一の法則に近いことになりそうです。

台湾陸軍は10万人ですから、中国軍が確実に勝利するためには、陸上兵力を30万人は送り込まなければならないことになります。しかし、中国人民解放軍がいくら精強な着上陸部隊を整備しても、上陸地点まで輸送する手段がなければ意味がありません。中国海軍の近代化の過程で、揚陸艦は最優先の整備対象ではなく、輸送能力は現在のところ台湾本土への侵攻には不十分とされています。

中国研究誌「中共研究」の14年5月の論文は、中国の揚陸艦艇を約230隻と推計し、約2万6000人と戦闘車両1530両が輸送可能としています。現在は、さらに増強されたと仮定して、2倍の輸送力になっていたとしても、これでは30万人は到底不可能です。この状況では、中国による台湾武力侵攻はないとみるのが、普通だと思います。

このようなことを述べると、空挺部隊やフェリーなども使えば良いではないかという人もいるかもしれません。しかし、中国の空挺部隊に所属するのは30,000人です。フェリーなどは、補助的に使えるかもしれませんが、軍事作戦には向きません。

そうなると、中国による台湾武力侵攻はあり得ないので、これでめでたしということで、戦略的曖昧政策で良いということになるでしょうか。

私は、そうは思いません。中国による台湾による武力侵攻がないからこそ、「戦略的曖昧政策」を捨て去り、米国は戦略的明快さに転換すべきなのです。

私が懸念するのは、中国による台湾への武力侵攻ではありません。中国による台湾への武力以外による浸透です。

最近報道されたように、中国共産党による、英国内での工作活動の一端が明らかになっています。英メディアによると、外国スパイの摘発や、国家機密の漏洩(ろうえい)阻止などの防諜活動を行う情報機関「情報局保安部(MI5)」は、中国共産党の女性工作員が、英議員らに献金を通じて「政治的な介入」を行っていると、議会に異例の警告を発したといいます。専門家は、日本国内でも同様の工作活動が広がっている危険性を指摘しました。

MI5によると、クリスティン・チン・クイ・リーという名の女性が中国共産党のために、現職の英下院議員と下院議員を目指す人との「つながりを確立」していたという。

蔡英文総統の民主進歩党が政権の座についてから、台湾では中国の影響力はかなり低下しました。ただ、中国は台湾に対して浸透工作をこれからも強めるでしょう。それだけではなく、さらに中国は台湾を国際的に孤立させたり威信を低下させる挙にでるでしょう。経済的に不利益を被るように仕掛けるでしょう。

この浸透工作、台湾の国際的地位低下工作によって、台湾に親中政権ができたとしたら、どうなるでしょうか。しかも、その親中政権が中国の傀儡政権に近いものだった場合どうなるでしょう。

中国はある程度時間をかけて、少しずつ中国に人民解放軍を上陸させるでしょう。場合によっては、目立たないように、民間人を装って入国させるかもしれません。仮に30万人以上も上陸させてしまったとしたら、時すでに遅しです。台湾は事実上、中国領になってしまいます。それも、合法的にそうなるのです。

そうして、いずれ台湾は正式に中国の省になるか、あるいは対岸の福建省に取り込まれてしまうでしょう。

これを取り戻すには、米軍にとっても大変なことです。傀儡政権が出来上ってから、米国がこれに対応すれば、ベトナム戦争のように泥沼化する可能性もあります。

そうなる前に、対処すべきです。そのためには、今から「戦略的曖昧政策」を捨て去り、米国は戦略的明快さに転換すべきです。

そうして、中国が非合法なやりかたで、台湾の政治などに介入した場合は、制裁を加えるべきでしょう。さらに、非合法な手段で傀儡政権を樹立して、軍隊を派遣しようとしたときには、これを阻止する構えをみせるべきでしょう。

日本も、昨年4月16日に発せられた日米首脳共同声明には、「日米両国は、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す」とあるのですから、積極的な役割を果たすべきです。

日本は冷戦期にソ連SSBN(弾道ミサイル搭載原子力潜水艦)封じ込めに極めて重要な役割を果たしていました。特に対潜哨戒により、結果としてソ連原潜の行動を封じ込めたことで、多大な成果をあげました。この日本の貢献は、西側全体にとっても対ソ戦略上極めて重要な価値を有していました。

特に、日本が対潜哨戒機を多数導入して、オホーツク海において大々的な対潜哨戒活動に踏み切ったことは特筆に値します。これには、軍事費を膨大に投じる必要もありましたし、要員の訓練に時間を要します。これを最初に提案した米国の官僚は後に「まさか、日本がこの要求を飲むとは思わなかった」と述懐しています。

オホーツク海上を哨戒飛行するP3C

このときの、経験がもとになり、日本の対潜哨戒能力は世界のトップクラスになりました。日本は、冷戦期において米国をはじめとする西側諸国に対して、大きな貢献をしたのです。

その後冷戦は、西側諸国が勝利して、日本は冷戦勝利国になりました。日本ではあまり意識されていませんが、日本は冷戦戦勝国であり、しかも巷でいわれているように、基地を米国に提供しただけではなく、積極的にソ連の原潜の行動を把握し、その情報を米国などの西側諸国と共有することによって、結果としてソ連原潜の封じ込めに成功し、大きな貢献をしたのです。

だからこそ、安倍元総理大臣が、「インド太平洋戦略」や「QUAD」を提案して、米国などの西側諸国等に受け入れられたのです。

今回との中国との新冷戦でも、日本は冷戦時と同じような貢献ができるはずです。日本には、現在でも世界トップクラスの対潜哨戒能力を有しており、さらにステルス性の高い通常型潜水艦を有しています。そうして、潜水艦22隻体制がまもなく達成できます。(本当はできていたが、昨年の事故で1隻が就航不能になっています)

これを有効に用いて、新冷戦でも冷戦時と同等もしくはそれ以上の貢献ができます。昨年7月中国が台湾に侵攻した場合の対応について、麻生副総理兼財務大臣は、安全保障関連法で集団的自衛権を行使できる要件の「存立危機事態」にあたる可能性があるという認識を示しました。

これをさらに一歩すすめて、中国が台湾に軍隊を送る場合は、戦争であろうとなかろうと「存立危機事態」とみなすと台湾とともに宣言すれば良いのです。日本も曖昧なことをいうのをやめて、戦略的明快さに転換すべきなのです。

それとともに、冷戦時のように東シナ海、台湾海峡においても無論台湾の許可を得た形で、哨戒活動にあたり、結果としてしてかつて日本が、ソ連の潜水艦を封じ込めたように、中国海軍を封じ込めれば良いのです。

岸田政権には、このようなことは考えも及びつかないようです。そもそも、日本は冷戦戦勝国であり、中露北朝鮮は敗戦国だという認識もないようです。米国にはこれを見透かされ、日米首脳会談すらまだ開催されていません。これは異例中の異例です。

日本の安全保障に関しては、岸防衛大臣が頑張っています。しかし、それにも限界があるでしょう。自民党は岸田政権は短期で終わらせて、新たな総裁がのもとで、安全保障を見直すべきです。軍事侵攻ではなくても、台湾が中国の手のうちにおちれば、日本は根底から戦略を見直さなければならなくなります。

人材がいないというのであれば、短期的でも良いので、安倍元総理大臣に返り咲いていただき、道筋をつけてもらうというのもありだと思います。

日本が新冷戦に勝利した暁には、国外では日本の貢献は冷戦時から十分認識されていますから、国内で国民に対して広くこの意味合いを啓蒙すべきでしょう。そうして、今度こそ安倍元総理が語っていたように「戦後レジームからの脱却」を果たすべきです。

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