2022年3月24日木曜日

ロシア軍の揚陸艦を破壊とウクライナ国防省 南東部ベルジャンシクの港で―【私の論評】またしても恥ずかしい敗北を喫した、プーチンの苦悩する軍隊(゚д゚)!

ロシア軍の揚陸艦を破壊とウクライナ国防省 南東部ベルジャンシクの港で

 ウクライナの国防省は、南東部のベルジャンシクの港で、ウクライナ海軍がロシア軍の揚陸艦を破壊したと明らかにした。CNNは映像を見る限り、二次的な爆発が起き、大きな火災が発生しているように見えると報じている。

 ベルジャンシクはマリウポリの西側に位置し、ロシア軍が侵攻し、制圧したとされている。(ANNニュース)

【私の論評】またしても恥ずかしい敗北を喫した、プーチンの苦悩する軍隊(゚д゚)!

ザポリージャ州の港湾都市ベルジャーンシクはロシア軍の占領下にあり、ここ何らかの手段で攻撃したウクライナ軍はロシア海軍の大型揚陸艦(プロジェクト1171/西側でいうところの戦車揚陸艦)オルスクを破壊したと24日に発表して注目を集めています。

オルクス攻撃による爆発炎上の画面 twitterより

この攻撃で同港に停泊していた他の艦艇2隻も損傷、さらに3,000トンの燃料タンクや弾薬庫にも引火したと報じられているが、ウクライナ軍参謀本部の発表は今のところ「オルスク」の破壊のみで攻撃方法やロシア軍に与えた損害の詳細を明かしていません。

ツイッターの情報では、アリゲーター級戦車揚陸艦オルスクの他にサラトフが大破。ロプーチャ級戦車揚陸艦ツェサール・クニコフ、ノヴォチェルカスクは損傷したとされといます。

アリゲーター級は艦暦は古いですが戦車20両、兵員450名を運べる大型揚陸艦です。 ロプーチャ級は最大10両の戦車、340人の兵員を運べます。 黒海に展開しているロシア揚陸艦隊は13隻なので一度に4隻の損傷はかなり痛いはずです。

これが事実とし、この攻撃が揚陸中だったとすれば、黒海艦隊第197揚陸艦旅団はかなりのダメージを受けたことになります。

ただ、これで思い出すのは、16日にロシアの大型揚陸艦が津軽海峡を抜けたことです。

防衛省は16日、ロシア海軍の戦車揚陸艦が津軽海峡を日本海に向けて通過したと発表していす。

防衛省によると、15日午後8時頃、青森県の下北半島・尻屋崎の東北東約70キロで、戦車揚陸艦2隻を確認。そのうちの1隻は、アリゲーター型でした(写真上)。

さらに16日午前7時頃、尻屋崎の東北東220キロの海域でも、別の戦車揚陸艦2隻を確認した。その後、これらの艦艇が津軽海峡を日本海に向けて航行したことを確認しました。

まさか、この揚陸艦がそのまま、ベルジャーンシクに行ったということはないとは思います。津軽海峡を抜けていくと最短距離でまさにウラジオストクに着きます。ここから鉄道でウクライナまで戦車や燃料・弾薬となどを運んだと思われます。

極東ロシア地上軍(東部軍管区)はソ連邦崩壊前では、40数個師団あったものが、現在では、半数以下の12個旅団(師団の半分から2/3の規模)と2個師団であり合計8万人です。これは、4分の1以下になったということになります。軍の地位も下がり、予算も多く削減され、兵員の士気は下がっています。

この極東からも、戦車揚陸艦で戦車や弾薬、もしかすると人員等を運ぶというのですから、以下にウクライナに侵攻したロシア軍が物資不足や人員不足に悩まされているのかがうかがえます。

その揚陸艦を破壊されたのですから、ロシアにとってはまさに泣き面に蜂というところです。ロシア国営メディアは3日前、港で装甲車を下すオルスク号の様子を映していました(写真下)。これが、今回の攻撃を招いたとすれば、随分間抜けな話です。


英ミラー紙は24に(現地時間)、アリゲーター級船舶は、ウクライナ軍がこれまでに攻撃した最大のロシア船であり、「ウラジーミル・プーチンの苦悩する軍隊にとって、またしても恥ずかしい敗北を意味するものである」と伝えています。

ただ、現地時間の正午に発表された最新の戦況報告でもオルスクの破壊のみにしか言及しておらず、米CNNも攻撃手段は不明と報じていますが、ウクライナ軍参謀本部、陸軍、海軍の公式Facebookには短距離弾道ミサイル「トーチカU」に関連した動画(オルスク攻撃を行う内容ではない)が一斉に投稿されているためオルスクの破壊=トーチカUを匂わせるものと受け取ることも可能ですが、オルスクから煙が上がり火柱が上がるまで時間がかかっているため「弾薬取り扱いの不手際での事故」を主張する専門家もいます。

ウクライナ軍のトーチカU

これが、本当だとすれば、おそらく弾道ミサイルによる世界初の対艦攻撃の戦果かもしれません。

ロシア海軍が損失を被ったことに違いはないので攻撃手段に余りこだわる必要がないかもしれないですが、ウクライナ軍はヘルソン地域に配備されたトーチカUを使用して敵水陸両用艦艇が配備される地点への攻撃演習を2021年4月に実施しており、何らかの方法でトーチカUの平均誤差半径(CEP)を向上させる準備をしていたのかもしれないです。

昨日は、このブログで、以下のようなことを述べました。
数十年前から言われてきたことですが、艦船には二種類しかありません。水上艦艇と水中の潜水艦の2つです。現在では、空母やイージス艦などの水上艦艇は、魚雷やミサイルの標的に過ぎません。これらは、海戦においては、いずれ撃沈されてしまいます。

もう一つの艦艇である潜水艦は、水中に深く潜み、簡単には撃沈されません。こうしたことから、現在の海戦における本当の戦力は潜水艦なのです。
トーチカUを用いたかどうかは、未だわかりませんが、それにしても何らかの誘導弾を使用したのは明らかだと思います。まさに、現在の水上艦船は、魚雷やミサイルの標的にしか過ぎないのです。潜水艦こそが、現代海戦の真の戦力であり、主役なのです。今回の出来事は、これを雄弁に語っていると思います。

ウクライナ軍は残念ながら、現在は潜水艦を所有していません。同国海軍が保有する唯一の潜水艦「ザポリージャ」2014年にロシア軍に接収されています。

ウクライナ軍が潜水艦を持っていれば、今回もかなり活躍したと思います。ただ、大型揚陸艦を破壊するなど、様々な相違工夫をしながら戦っている姿には感服させられます。ただ、こうして勝利を収めるウクライナ軍に手を焼くプーチンは、化学兵器や核兵器を使用するかもしれません。本当に、恐ろしいです。そんなことをまかり間違ってすれば、ロシアは世界から完全に遮断され、経済や生活水準が帝政ロシアの頃に戻ってしまうと思います。

一方日本は、ウクライナ軍から比較すれば、自衛隊は22隻の高性能潜水艦隊などをはじめ、かなりの軍事力を持っていますが、それを有効に使える術を自ら放棄しています。さらには、軍事費もロシア、中国、北朝鮮などの脅威にさらされているにも関わらず、GDP1%なる根拠のない枠に縛られて増やそうとしません。

ロシアのウクライナ侵攻という、現代では考えられないようの蛮行が行われるということが実施されてしまった現在、日本も安全保証を見直すべきです。

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21日、FOXビジネスの番組に電話で出演したトランプ前大統領は、在任中だったらウクライナにMIG戦闘機の提供などの支援をしたかと聞かれると、「それ以上のことをしただろう」と話した

この中でトランプ氏は、「プーチンが何度も”Nワード”を使うのを耳にしている。彼はこれを使い続けている」と、核(Nuclear)に言及。続けて「でもわれわれの方が、より強力な核兵器を保有している。世界でも最も素晴らしい原子力潜水艦だ。私の下で作られたのだが、かつて建造された中で最も強力なマシーンだ」と主張した。

さらに「またその言葉を口にしたら、われわれは原子力潜水艦核を送って、沿岸を上下左右に航行させるぞと言うべきだ」と強気の姿勢を見せ、「この悲劇を見過ごす訳にはいかない。何千もの人間をただ死なせる訳にはいかない」と語った。

なお海軍の発表によると、米艦隊は、ブーマーと呼ばれる弾道ミサイル潜水艦を14隻保有している。一方のロシアについて、英紙ミラーは、核ミサイルが発射可能な潜水艦が11隻あるとみられていると伝えている。

ただし、バイデン大統領はウクライナの支援をする一方で、ロシア軍とNATOの直接衝突を避け、第三次世界大戦に発展する危険を阻止することを最需要事項とし、ウクライナ側の求める飛行禁止区域の設定にも応じない姿勢を明確にしている。

トランプ氏の物騒な発言に、保守派の政治コメンテーター、チャーリー・サイクス氏は「無謀にエスカレートさせるもので、本当に不必要だ。脅威を与えるためにロシアの”沿岸”に潜水艦は必要ない」と非難。「この男は、大統領候補だった頃、核の3本柱を知らず、核をハリケーンに使おうと示唆して、核兵器使用の可能性を側近に相談したとまで報じられた人物で、そのことを覚えておいて、損はない」と加えた。

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上の記事で、チャーリー・サイクス氏は、トランプを批判していますが、私自身は、原子力潜水艦を使うというトランプ氏の考えには一理あると思っています。

トランプ氏の考えでは、弾道ミサイル搭載原潜を、脅しに使うというものですが、これは確かにロシアに対してはかなりの脅威になると思います。私自身は、それだけではなく攻撃型原潜も効果的に使うべきと思います。

米国の原潜はなんといっても、弾道ミサイル原潜も攻撃型原潜も、かなりの攻撃力があります。かつてトランプは北朝鮮が弾道ミサイルを連発したときに、北朝鮮の海域に攻撃型原潜を派遣して、米国の攻撃型原潜は、海中に潜む空母だ、空母と同等の攻撃力があると、豪語してみせました。

これは、決して誇張ではありません。弾道ミサイル搭載原潜の核による攻撃力もさることながら、攻撃型原潜の攻撃力も凄まじいものがあります。

たとえば、攻撃型原潜オハイオは比較的大型の艦体や動力ゆえに、トマホーク巡航ミサイルを154基も搭載できる。これは米誘導ミサイル駆逐艦の1.5倍以上、米海軍の最新鋭攻撃型潜水艦の4倍近いです。

トマホークミサイルが2018年の試験で米海軍の潜水艦から発射される様子

現在、世界規模で潜水艦を展開するアメリカやロシアは、核戦争に備えて中・長距離の垂直発射型弾道ミサイルを核戦力の軸にしています。

一方、潜水艦搭載の巡航ミサイルは核弾頭だけでなく通常弾頭も使えるため、地上基地や水上艦の攻撃用として核兵器を使わない通常戦闘にも投入することができます。また巡航ミサイルに準ずるものとして対艦ミサイルがありますが、これも現代の潜水艦では魚雷発射管などから撃つことができるようになっています。

現在潜水艦の武装はかなりバラエティに富んでいます。かつては魚雷と大砲を使い、また短時間しか潜ることができなかったため、海軍戦力のなかでは脇役的存在でしたが、今日の潜水艦は、万能兵器になり、海戦の主役になりました。

数十年前から言われてきたことですが、艦船には二種類しかありません。水上艦艇と水中の潜水艦の2つです。現在では、空母やイージス艦などの水上艦艇は、魚雷やミサイルの標的に過ぎません。これらは、海戦においては、いずれ撃沈されてしまいます。

もう一つの艦艇である潜水艦は、水中に深く潜み、簡単には撃沈されません。こうしたことから、現在の海戦における本当の戦力は潜水艦なのです。

そうして、中露と日米を比較すると、ASW(対潜水艦戦闘)の能力では、日米が中露を大幅に上回っているのです。

中露はASWでかなり劣っているため、海戦では日米と互角に戦うことはできません。ASWで、劣る中露は、特に中国は、多数の艦艇を有していたとしても、海戦では日米には勝てません。
日本の通常型潜水艦は、米国のような強大な攻撃力はありませんが、ステルス性(静寂性)に優れているるため、中露はこれを発見することはできません。

米国の攻撃型原潜は、日本の通常型潜水艦と比較すれば、ステル性には劣りますが、それにしても日米は対潜哨戒能力においては、中露をはるかに凌駕するので、米軍の攻撃型原潜は強大な攻撃力を生かして、圧倒的な強みを発揮することができます。

仮に米国がロシアの近海やウクライナの近海等に攻撃型潜水艦をいくつか配置すれば、ロシアにとってはかなりの脅威となります。ましてや、弾道ミサイル搭載原潜はかなりの脅威になります。こういうことを考えると、トランプの考えはあながち荒唐無稽であるともいえないと思います。

トランプがもし大統領であれば、バイデンのようにウクライナに米軍派遣はないとはっきりと何度も公言することもなかったでしょう。私はこれは、明らかにバイデンの失策だったと思います。

確かに、米軍を派遣すれば、戦争がエスカレートして、核戦争にもなりかねないです。ただ、現状みられるように戦争においては、深刻な人道に反した戦争犯罪など生じがちです。バイデンとしては人道に配慮した米軍を派遣する可能性についてまで完全否定すべきではなかったと思います。それは、ロシアに対して一定の抑止力になったと思います。

さて日本にとってもウクライナ戦争は対岸の火事といえない状況になって来たと思います。とくに島嶼国家(海洋国家)である日本は海が主戦場になることは間違いありません。だからこそ、潜水艦は国防上、重要な役割を担う装備となっているのです。

3月9日には、日本の最新型の「たいげい」が就役しました。これで、潜水艦事故により日本の潜水艦隊は21隻体制だったのですが、22隻体制に戻りました。島嶼国の日本にとっては、この22隻の潜水艦隊か国防の要です。

日本が22隻の高性能潜水艦隊を有しており、対潜哨戒能力も世界トップレベルであるということが、中露が日本に対する領土的野心を抱くことをためらわさせているのは間違いないです。中国が、尖閣で示威行動を繰り返し続けても、結局領有にまで至らないのは、日本に強力な潜水艦隊があるからです。

ウクライナは核を放棄したため、現在ロシアの核の脅威にさらされています。日本は非核三原則などを未だに堅持し、ある意味ウクライナのようでもありますが、大きな違いは、日本には米軍が駐留していること、そうして強力な潜水艦隊が存在しています。

残念ながら、ウクライナには日本の潜水艦隊に相当するものもなく、米軍も駐留はしていません。だからこそ、ロシアの侵攻を招いてしまったという面は否めません。

このブログには、何度か掲載してきたように、潜水艦の行動は世界のいずれの国でも秘匿するのが普通で、日本もその例外ではありません。そのため、日本を含めてほんどの国が潜水艦の行動など公表せず、米国では米軍のトップですら、核ミサイル原潜が世界のどこにいるのか知らされていないといいます。

日本でも、それは滅多には知らされません。だから、日本の潜水艦隊がどこで何をしているかなど、多くの国民はしりません。しかし、多くの潜水艦乗りたちが、様々な海域の最前線で、任務についています。そうして、これは日本の安全保障に直接貢献しているのは間違いありません。

にもかかわらず、中国やロシアが攻め込んできたら、すぐに日本が手も足も出ずに、すぐ負けてしまうというような論調も目立ちます。最近では以下のような記事が目立ちました。
「侵略してくる部隊を自衛隊単独で撃退することはほぼ不可能」元陸上自衛隊・中部方面総監が語る日本の“防衛戦略” 徴兵ではなく予想される“緊急募集”とは?
   山下裕貴氏。1956年、宮崎県生まれ。1979年、陸上自衛隊入隊。現在、
   千葉科学大学客員教授。著書に「オペレーション雷撃」(文藝春秋)

 この方は、どのような前提で、このようなことを語っているのか非常に疑問です。日本には陸自だけではなく、海自もあり、空自もあります。

敵が海路侵入してくるというのに、空自もまして海自は何もしないというのでしょうか。中露は海上輸送能力に劣るところがあって、大量の兵員や武器弾薬を一度に送るのは不可能です。冷戦時代にはソ連の北海道侵攻をマスコミが煽りましたが、当時ですらソ連軍は海上輸送力が十分ではなく、北海道侵攻はできないだろうとされていました。

中国も海上輸送力は十分ではありません。だから、台湾侵攻もおびただしい損失がでることが予想され、現実にはかなり難しいです。これは、以前もこのブログに掲載しました。とはいいながら、ロシアも無謀と思われるウクライナ侵攻をを現実に実行したのですから、いくつか条件が重なれば、台湾侵攻もあり得ると考えるべきでしょう。

ただ、この方が主張しているのは、仮に中露が大部隊を日本に送り込んできた場合は、「侵略してくる部隊を自衛隊単独で撃退することはほぼ不可能」と主張しているのだと思います。

スリム化が進んだ自衛隊の現状を憂いているし、日本政府に迅速な判断が可能かどうかについて心配しているのでしょう。これについては、多いにうなずけるところがあります。

ただ、この記事には、仮に中国などが部隊を送り込んできたとして、それが日本の潜水艦などに撃沈されて、かなり減衰することについては全く触れていませんでした。これでは誤解を招きやすいです。

私自身は、ロシアのウクライナ全面侵攻はかなり難しく、ロシアがウクライナの侵攻する確率は低いとみていましたが、ウクライナ侵攻は現実のものとなりました。GDPが韓国を若干下回り、兵站が脆弱なロシア軍にとっては、ウクライナ侵攻は困難を極めることが予想され、その通りにロシア軍は苦戦しています。これは最初から予想されたことであり、かなり苦戦することになるだろうから全面侵攻する確率は低いだろうと踏んだのです。

多くの軍事専門家等もそのように考えていたようです。軍事的な考察はこのように、予想をくつがえされることもあるのです。どのような可能性も除去しないで考えるべきなのでしょう。

そういう意味では、トランプの主張を荒唐無稽とか無謀として排除すべきものではないと思います。一つの選択肢として、どういう場合にそうするべきかなども考えておくのも悪いことではないと思います。それも現実的に考えるべきと思います。

そうして、無論山下裕貴氏の主張にも耳を傾け、参考になるところは取り入れるべきとも思います。

安全保障については、あらゆる可能性を排除せず、議論すべきと思います。岸田政権も、防衛費倍増や憲法改正なども、ただ議論をするだけでなく、現実の脅威に対処できるように、できるところから実施すべきです。特に、何の根拠もない防衛費GDP1%の枠は、すぐに撤廃すべきです。

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2022年3月22日火曜日

首都圏〝ブラックアウト危機〟いつまで? 初の電力需給逼迫警報 「政治決断がなければ数年間は大規模停電のリスク続く」と専門家警告―【私の論評】電気だけではない、岸田総理が壊してしまいそうな日本の経済、安保、エネルギー政策(゚д゚)!

首都圏〝ブラックアウト危機〟いつまで? 初の電力需給逼迫警報 「政治決断がなければ数年間は大規模停電のリスク続く」と専門家警告

17日未明、東京都心ではブラックアウトを防ぐための停電が発生した


 福島県沖で発生した地震による一部の火力発電所停止や関東地方の気温低下で、東京電力管内の電力需給が危機的状況だ。経済産業省と東京電力ホールディングスは22日、節電を呼び掛けたが、電力供給は綱渡りが続く。専門家は「政治決断がなければ今後数年間は大規模停電のリスクは続く」と警告する。


 電力の供給力に対する需要の割合を示す「電力使用率」は午前8時時点で95%だった。

 経産省は初の電力需給逼迫(ひっぱく)警報を発令。22日午前8時から午後11時の時間帯で、元の需要想定に対して10%程度の節電が必要とした。管内の1都8県で家庭や職場で不要な照明を消したり、暖房の設定温度を20度にするなどの節電を求めた。

 16日夜の地震で東電管内に電力を送る福島県広野町の広野火力発電所6号機など計6基が停止していることに加え、天候の影響で太陽光発電の出力が下がり、供給力が低下する見通し。一方、気温低下で暖房の需要が伸びる見込みで、経産省と東電は、節電がなければ他の電力会社からの電力融通を受けても需要が供給を上回るとみている。

 エネルギー事情に詳しいジャーナリストの石井孝明氏は「明らかに電力が不足している。東電側としては、福島第1原発事故の賠償問題などで締め付けが強く設備投資が進まないことや、電力自由化による市場競争に巻き込まれた問題がある」と指摘する。

 需要と供給のバランスが崩れると電気の周波数が乱れ、ブラックアウト(全域停電)など広域で大規模な停電が起きる恐れもある。経産省は22日の電力需給について、東電管内として短期的には2011年の東日本大震災後に実施した計画停電のとき以来の厳しい水準との見方を示す。

 構造的な要因として石井氏は「原発を自由に再稼働できないことや、『脱炭素』の風潮を受けた火力発電への不信や再生可能エネルギーへの過剰な設備投資も背景にあるのではないか」との見方を示す。

 電力不足は国民生活や国内産業に重大な影響を与える。

 石井氏は「今後数年間は、日常的な供給不足や大規模停電のリスクが続くとみられる。電力不足を回避するには原発の再稼働や再エネ政策の見直しを含めた政治決断が求められる」と強調した。

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17日の地震の発生後、東北地方を中心に火力発電所12基、水力発電所24か所が安全確認などのため緊急停止した。約630万キロ・ワットの供給力が失われました。

電気を安定供給するには、需要(使用量)と供給(発電量)が同じ量になっている必要があります。需給のバランスが急に崩れると、最悪の場合、発電所の安全装置が作動してブラックアウトを引き起こすのです。しかも東電と東北電は送配電網がつながっており、一体で需給を調整することが求められています。

今回は、東電の安全システムが、東北を含む送配電網全体での供給力不足を検知して自動的に作動し、一部地域を意図的に停電させました。


東電によると、停電させる地域はシステムが機械的に判断するそうです。今回のように深夜であれば、電力需要が多い歓楽街や少ないオフィス街などを瞬時に組み合わせ、需給を調整します。近接する地域でも停電の有無が分かれました。
 
予備電源を稼働させ、東電管内の停電は地震から約3時間後の17日午前2時52分には復旧しました。一方、配電線の切断などがあった東北電管内では最大で約16万戸が停電しましたが、午後9時41分に全面復旧しました。

送電調整が間に合わなかった2018年の北海道胆振東部地震では、北海道全域約290万戸が停電するブラックアウトに陥り、復旧に2日かかりました。

萩生田経済産業大臣は緊急の記者会見を開き、東京電力の管内では目標としている節電量に達しておらず、このままの状況が続けば停電が起きる可能性があるとして企業や家庭に対して午後3時から午後8時までもう一段の節電を強く要請しました。

しかし国民への節電のお願いの前に政治がすべきことがあるはずです。安全が確認された原発の再稼働を政府に強力に働きかけ、一方で、この約10年の現実離れしたエネルギー政策を根本的に見直すべきです。

原発の再稼働には、強力な政府のリーダーシップが必要不可欠です。にもかかわらず、単純明快なトリガー条項凍結解除にすら、時間がかかって 検討や相談ばかりして時間を浪費し、官僚の顔色ばかりみてる岸田総理にできるのか本当に疑問です。

このブログでも過去に述べてきたように、経済対策、ワクチン接種、そして今回の電力不足問題に関しても、そうですが、ここまで仕事ができない岸田文雄総理とその内閣に存在価値があるのでしょうか。

私自身は、安倍内閣も菅内閣もよほどのことがない限り存続すべきであると考え、このブログにもそのように主張してきました。その理由は単純です。コロナなどの感染症が蔓延しており、それによつて経済がダメージを受けている時にわざわざ政権交代をするのは危険だからです。

それに両政権とも、外交でも安全保障でも、コロナ対策においても、まともに対処していました。安倍内閣も菅内閣も病床の確保には失敗しましたが、それでも驚異のコロナワクチン接種の拡大により、医療崩壊を起こすことはなく、大局的にはコロナ対策には成功したといえます。それは、数字などを客観的にみれば、誰にも理解できると思います。

仕事師内閣といわれた菅内閣だったが・・・・

仕事師内閣とも呼ばれた、菅内閣のなし得た成果はそれだけにとどまりません。以下に少しあげておきます。
  • 不妊治療の保険適用 
  • 若い世代の為の医療費窓口負担見直し 
  • バブル崩壊後の株価最高水準 
  • ワクチン接種率世界トップクラスの水準へ 
など他多数

しかし、マスコミの印象操作などにより、菅内閣はコロナ対策に失敗したとか、コミュニケーションに問題ありなどと考えた有権者も多かったようで、このままでは衆院選は戦えないという声が自民党内で高まり、結局菅政権は崩壊し、岸田政権が誕生しました。

この期に及んで原発の再稼働一つも決断できない岸田政権に、有事の構えを期待することはできないです。世界で非核三原則を堅持しているのは日本とウクライナだけです。この二カ国は共に侵略国家であるロシアの隣の国です。しかもロシアは核先制使用をチラつかせ核恫喝まで始めています。この状況で非核三原則を議論すらさせようとしない立憲民主と岸田政権は思考停止も甚だしいです。

参議院選挙まで100日を切ったいま、エネルギーについて従来の馬鹿げた前提を廃し、国民の生活と国内産業を救うための新たな選択肢を提供できる政党会派はないのでしょうか。

いまのままだと、減税などの積極財政も期待できず、日銀は控えめの金融緩和を繰り返すばかり、電気料などエネルギー価格の上昇の三重苦により、以前にもこのブログで主張したように、制裁中のロシアのように景気が落ち込みかねません

ドイツの国防費倍増を目の当たりにしても、岸田政権の反応は薄いです。仮想敵国からいつ核ミサイルを撃ち込まれてもおかしくない現実を前にしても、財務省の緊縮政策を継続して、金融引締に回帰しかねない日銀人事を行い、原発稼働の意思もなく、岸田総理は一体何を守る気なのでしょうか。

何を守ろうとしているのか?岸田総理

岸田政権は、運悪く甘利氏が幹事長にならなかったという番狂わせもありましたが、それにしても正直言ってここまで、仕事ができないとは思っていませんでした。

国民の生命や財産を守ることなく、大きな資産を有したままいずれかの国の属国に転落するか、破滅するかの道を選ぶのつもりなのでしょうか。全く理解に苦しみます。このような、体たらくの岸田内閣なのに、政権支持率は直近でも65%で低下していません。

日本においては、政府が重要な意思決定を先延ばしにして国益を損ねたほうが、重要な意思決定をすばやくするよりも、政権の支持率を維持できるということなのでしょうか。

今のままでは、多くの国民が気づいたときには手遅れで、日本は経済面でも安全保証面でも、大きく毀損されてしまいかねません。

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2022年3月21日月曜日

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東京電力 あす22日の節電呼びかけ 電力需給非常に厳しい見通し

今月16日の地震の影響で運転が止まった発電所の復旧が進まない中、22日は気温が下がり電力の需要が増える見通しです。

経済産業省と東京電力は電力の需給が非常に厳しくなるとして22日、東京電力の管内で朝早くから不要な照明を消し、暖房の設定温度を20度にするなど節電に協力するよう呼びかけました。


今月16日に宮城県と福島県で震度6強の揺れを観測した地震の影響で、東京電力管内に電力を送る福島県広野町の広野火力発電所6号機などは、いまも運転停止の状態が続いています。

こうした中、関東地方では22日、低気圧と寒気の影響で気温が下がり、雪や雨が降る見込みで、暖房需要が増える可能性があります。

午前6時から7時にかけての供給力に対する電力使用の割合は97%に達する見通しで、経済産業省と東京電力は電力の需給が非常に厳しくなるとして、22日に東京電力の管内で節電に協力するよう呼びかけました。

具体的には、22日の朝早くから家庭や職場などで不要な電気や暖房を消すこと、暖房の設定温度を20度にすること、テレビを見る際には画面の明るさの設定を変えること、などとしています。

東京電力は22日に火力発電所の出力を最大限引き上げるほか、企業などに対しも工場の稼働時間をずらすなどの対策を呼びかけています。ただ、想定される電力需要に対して供給力が十分確保できない見通しだとして「停電を回避するために節電へのご協力をお願いしたい」としています。

【私の論評】原発稼働し、余った石油・ガスをEUにまわせば、ロシアに対する制裁、EUの窮地を救い、国内のエネルギー問題の解消となり一石三鳥(゚д゚)!

今後、電力を含むエネルギー価格が高騰するのは目に見えています。ある程度高騰したにしても、確実に手に入れば良いですが、地震、寒波、ウクライナ戦争、その他様々な条件が重なれば、価格はさらに高騰し、さらに上の記事のように電力供給が逼迫することも十分考えられます。


東日本大震災の発生前、日本には54基の原発があり、日本で使う電力の30%前後を原子力で賄っていました。しかし、東京電力の福島第1原子力発電所の事故により、原発に対する不信感や不安感が強まり、原発の位置づけは大きく変わってしまいました。

事故から10年が経過した2021年3月時点で地元の同意を得て再稼働した原発は大飯(関西電力)、高浜(関西電力)、玄海(九州電力)、川内(九州電力)、伊方(四国電力)の5発電所の9基のみです。西日本エリアに集中しており、いずれも事故を起こした「沸騰水型」の福島第1原発とはタイプが異なる「加圧水型」です。一方、東日本大震災以降に廃炉が決定した原発は21基に上る。

2020年11月、宮城県の村井嘉浩知事が女川原発2号機(東北電力)の再稼働への同意を表明しました。女川原発は、震災で屋外重油タンクが倒壊、冷却系が浸水するなどの被害があり、さらに、福島第1原発と同じ沸騰水型軽水炉であるため、地元住民からは慎重な意見も根強いです。一方で、発電所の稼働は地元に雇用を創出し、自治体に核燃料税、固定資産税などの収入増も期待されることから、「最後まで悩んだ」上での受け入れ表明でした。

一方、柏崎刈羽原発(東京電力)では、2020年3月以降、外部からの侵入を検知できない状態が続いていました。原子力規制委員会は21年3月16日、「核物質防護上、重大な事態になり得る状況にあった」として、4段階評価のうち最も深刻なレベルと判断しました。同原発では、20年9月に、他人のIDカードで中央制御室に入室する事案が発生するなど不祥事が相次いでいます。東電は、収益改善の柱として柏崎刈羽に再稼働を目指してきたが、度重なる不祥事で、地元同意は遠のきました。


「今停止している原子力発電所の運転を再開することに、賛成ですか。反対ですか」。東京電力福島第一原発事故から11年になるのを前に、朝日新聞社は2月19、20日、全国世論調査で原発再稼働への賛否を質問しました。

賛成は38%(21年2月調査は32%)、反対は47%(同53%)でした。16年7月から調査方法を変更しており、単純には比べられませんが、同じ質問をしてきた13年6月の調査以降、初めて反対が半数を割り込みました。最近の5回の調査を中心に、どのような変化があったのか詳しく見てみます。

再稼働に反対と答えた人の割合が最も多かったのは18年2月の調査で、61%です。

この調査から今回までの全体結果をみると、反対は18年が61%で、19年、20年は共に56%、21年は53%でした。徐々に反対の割合は減っています。ちなみに17年以前の調査では、反対が53~59%の間を行ったり来たりしていました。

次に、賛成です。18年は27%で、19年は32%となりますが、翌20年は29%に下がり、21年は32%に戻っていました。17年以前の調査では、賛成が25%まで落ちることもありましたが、基本的に3割前後でした。

このように、全体としては反対が賛成を上回るものの、18年以降は賛否の差が縮まる傾向にあります。


●再稼働賛否の差狭まる:右下向き矢印:
再稼働の賛否。全体結果は・・・
賛成=27%(18年)/ 32%(19年)/ 29%(20年)/ 32%(21年)/ 38%(22年)
反対=61%(18年)/ 56%(19年)/ 56%(20年)/ 53%(21年)/ 47%(22年)

次に、男女別の変化を見てみます。

再稼働に対しては、女性の方が常に男性より厳しい目を向けています。同じ質問をしたすべての調査で、再稼働に反対する割合は、女性が男性を上回っていました。逆に、賛成は毎回、男性が女性を上回ります。

男性は、20年2月の調査は賛成38%、反対52%で、同じ質問をした13年6月の調査からこの年までは、毎回、反対が賛成を上回っていました。しかし、21年は賛成45%、反対44%でほぼ並び、今回は賛成が48%で、反対の42%を上回りました。

女性は、今回までのすべての調査で反対が賛成を上回っています。ですが、18年の調査から今回まで5回の調査を見てみると、賛成は18年の17%から今回は28%に増え、反対は18年の70%から今回は52%に減っています。


●男性は再稼働賛成が5割近くに
男性
賛成=38%(18年)/ 44%(19年)/ 38%(20年)/ 45%(21年)/ 48%(22年)
反対=52%(18年)/ 48%(19年)/ 52%(20年)/ 44%(21年)/ 42%(22年)
女性
賛成=17%(18年)/ 20%(19年)/ 20%(20年)/ 20%(21年)/ 28%(22年)
反対=70%(18年)/ 63%(19年)/ 60%(20年)/ 61%(21年)/ 52%(22年)

年代別では、2011年の福島第一原発事故のほか、1986年のチェルノブイリ原発事故が起きた時のことを覚えている人も多いと思われる、50代と60代の変化が目を引きます。

どちらの世代も、再稼働に反対の人の割合が賛成を上回っていますが、18年と今回の調査を比べると、50代は反対が63%から46%に減り、賛成は27%から41%に増えました。60代は反対が68%から50%に、賛成は20%から38%になりました。

賛成が反対を上回った世代もあります。

18~29歳は、18年は賛成34%、反対60%でしたが、19年には賛成51%、反対41%になりました。20年は賛成、反対とも44%で並び、その後は賛成が反対を上回っています。

30代も、20年までは反対が賛成を上回っていましたが、21年には賛成と反対が43%で並び、今回の調査では賛成44%、反対40%になりました。


●30代以下は賛成が反対上回る
18~29歳
賛成=34%(18年)/ 51%(19年)/ 44%(20年)/ 45%(21年)/ 46%(22年)
反対=60%(18年)/ 41%(19年)/ 44%(20年)/ 41%(21年)/ 37%(22年)
30代
賛成=35%(18年)/ 41%(19年)/ 35%(20年)/ 43%(21年)/ 44%(22年)
反対=47%(18年)/ 47%(19年)/ 53%(20年)/ 43%(21年)/ 40%(22年)
40代
賛成=31%(18年)/ 38%(19年)/ 33%(20年)/ 33%(21年)/ 40%(22年)
反対=58%(18年)/ 49%(19年)/ 54%(20年)/ 51%(21年)/ 48%(22年)
50代
賛成=27%(18年)/ 31%(19年)/ 29%(20年)/ 29%(21年)/ 41%(22年)
反対=63%(18年)/ 59%(19年)/ 56%(20年)/ 60%(21年)/ 46%(22年)
60代
賛成=20%(18年)/ 22%(19年)/ 25%(20年)/ 28%(21年)/ 38%(22年)
反対=68%(18年)/ 66%(19年)/ 60%(20年)/ 61%(21年)/ 50%(22年)
70歳以上
賛成=18%(18年)/ 19%(19年)/ 16%(20年)/ 23%(21年)/ 28%(22年)
反対=68%(18年)/ 65%(19年)/ 64%(20年)/ 58%(21年)/ 55%(22年)


今回の調査では、食料品や光熱費などの値段が上がったことで、生活への負担を感じるかどうかも質問しました。

この質問への回答と再稼働の賛否の回答を重ね合わせると、負担を「感じる」層で再稼働に反対と答えた人は49%で、賛成の37%を上回りました。

光熱費の値上げによる負担を感じる人の間でも、原発の再稼働に反対する人は賛成する人より多いと言えます。生活への負担感について「それほどでもない」と答えた層でも、再稼働賛成は41%、反対44%です。

ただ、全体として再稼働の賛否の差は狭まる傾向にあるほか、ロシアのウクライナ侵攻の影響も加わって原油価格の高騰が長引けば、再稼働の意識に影響を与える可能性もあります。

原発の建設から廃炉までのコストや使用済み核燃料の保管、福島第一原発のような事故発生のリスクと、目の前の様々な値上げを見比べた時、原子力発電所の再稼働はトータルとして高くつくと考えるのか、安いと感じるのでしょうか。

ロシア軍が制圧したウクライナのチェルノブイリ原子力発電所。通信の途絶や電力供給の停止といったトラブルが相次いで報じられ、世界がその動静を、固唾をのんで見守っています。

国際原子力機関(IAEA)は20日、ウクライナ側からの報告として、ロシア軍が2月24日のウクライナ侵攻直後に制圧した北部チェルノブイリ原発で勤務を続けてきた職員の約半数が4日ぶりに交代し帰宅できたと発表しました。

同原発では、ロシア軍の制圧後もウクライナ人の職員が作業を継続していたという。ウクライナ規制当局は他のウクライナ人職員との交代を確認したが、どのようにして交代が行われたのかなど詳細は不明です。

ただ、一ついえるのは、確かに原発は危険ではありますが、稼働してようが、していまいが危険であることには変わりはないということです。

日本の原発の多くが稼働を停止していますが、仮にこれらが、攻撃にさらされた場合、稼働が停止されていても、核燃料があれば、同程度に期限であることには変わりありません。

であれば、稼働させたほうが良いという判断も成り立ちます。

原発には、発電所を建てること以外にも、万が一の事故にそなえて費用を用意しておくこと、発電後に残る「核のゴミ」とも呼ばれる高レベル放射性廃棄物の処分にかかる費用、安全対策費用など、さまざまなコストがかかることは事実です。

海外では、当初予定していた建設費用が超過してしまったケースもあります。ただ、海外のこのようなケースでは、建設された実績があまり存在しない新型の原子炉であることや、長期間にわたって建設がされていない国で、ノウハウが失われていることなどが大きな要因で、これが日本にそのまま当てはまるものではありません。

東日本大震災発生後の2015年におこなったコスト計算では、そうしたさまざまなコストをすべて盛り込んだ上で、キロワットアワー当たり10.1円以上という数値を出しています。そうしたさまざまなコストを見込んでも、原発は、他の電源よりもなお安いという結果になっています。この時のコスト計算では、石炭火力発電はキロワットアワー当たり12.3円、太陽光発電(メガ)はキロワットアワー当たり24.2円という計算になりました。エネルギー価格が上昇しつつある現在はさらに、割安感がでてくるでしょう。

原発は危険であることは確かですが、「エネルギーが安定的に供給されない」という状況もまた、人の命や暮らしを守る上で無視できないリスクをはらんでいます。

もし、ある日突然、電気が止まってしまったらどうなるでしょう。電気で動く医療機器によって命を支えている人、信号のある交差点で横断歩道を渡ろうとしている子どもたち、雪の降る寒い夜に暖房をつけているおじいさんやおばあさん…。電気が止まってしまうことによって起こりかねない命のリスクは、ちょっと想像してみるだけでも、私たちの日常の中にいくつも存在しています。

そうしたことを考えあわせれば、「滅多に起こらないことだから」と、電気が止まってしまうリスクを許容するのは、なかなか難しいことだと感じられます。

私は、札幌に住んでいますから、平成30年の北海道胆振東部地震に伴う 大規模停電を経験しています。近くのコンビニで入店制限をされながら、買い物をしたり、大手スーパーが営業を停止したりしていたのをはっきり覚えています。札幌のわたしが居住している地域2日くらい復旧したのですが、「エレベータの停止」「断水」「真っ暗闇でのランタン生活」など、いろいろありましたが、改めて仮に真冬に停電が続いたらどうなるかと考え、停電時の防寒についても考えさせられました。

停電で真っ暗闇となったすすきの

また、電気をまったく使わないということは、日々の普通の暮らしをいとなむ上ではとても難しいことです。電気料金が上昇した時、よほど所得の高い方でない限り生活への影響は無視していられませんし、特に所得の低い方にとっては大きな影響となります。企業の競争力の低下は、企業で働くたくさんの人の暮らしにも影響をおよぼします。

さらに、将来にわたって持続的な社会をいとなむためには、気候変動の問題を無視するわけにはいきません。CO2を多く排出するままでは、将来の世代が気候変動による悪い影響を受けることになります。私たちの子どもや孫、もっと将来の世代まで、安心できる豊かな暮らしを守っていくためには、気候変動対策にもしっかり取り組まなくてはなりません。

命や暮らしを大切に思えばこそ、「安定的に」「安いコストで」「環境に負荷をかけず」「安全に」電力を供給するという、「3E+S」を追求することが重要になります。その一環で、子力規制委員会によって安全性が確認された原発にかぎり、再稼働していくことに私は賛成です。

先日もこのブログに掲載したように、現在稼働を中止している全原発を稼働させるようにすれば、日本のエネルギー問題はすぐに解決します。

そうして、日本て余った石油やガスをヨーロッパにまわすようにすれば、日本の世界での存在感は高まります。それに、ロシアに対する制裁にもなります。まさに、一石三鳥ともいえる政策だと思います。すみやかに実行していただきたいものです。

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2022年3月20日日曜日

値上げラッシュに『消費税の軽減税率』を! 高橋洋一さん提言 「小麦粉など重要な原料を0%に」―【私の論評】現状日本経済を安定させるための最大の手立ては、消費減税(゚д゚)!



政府・与党はロシアのウクライナ侵攻による原油価格の高騰対策として、ガソリン税を一時的に下げる「トリガー条項」の発動に向けた調整に入りました。岸田首相は2022年度予算案の成立後、トリガー条項の発動を含めたエネルギー対策などを柱とする大型の追加経済対策の策定を指示する見通しです。

自民、公明両党に国民民主党を加えた3党の幹事長は16日に会談し、トリガー条項発動のための新たな制度の設計など、具体的な課題を協議します。
値上げラッシュに『消費税の軽減税率』を! 高橋洋一さん提言 「小麦粉など重要な原料を0%に」


 新型コロナの「さざ波」発言でも知られる元内閣官房参与で嘉悦大学教授の高橋洋一さん(66)が19日、朝日放送のニュース情報番組「正義のミカタ」(関西、東海地方ローカル)に生出演。ロシアによるウクライナへの国際情勢悪化などでエネルギーや小麦粉など食料が高騰する値上げラッシュの解決方法に「消費税の軽減税率」を使い減税することを提案した。

  軽減税率は、2019年10月に消費税を10%へ増税する際に酒類や外食を除く飲食料品や一部の新聞については8%に据え置いた制度。高橋さんは「小麦粉など重要な原料の軽減税率を8%から0%に」と提案し、「軽減税率という制度は何かにターゲットを与えてそれに対する税金を安くすることができる。これが重要だと言うのなら、そこをターゲットにすればいい」と説明。 

 MCの東野幸治(54)から「ゼロにすると大丈夫ですなんか?」と問われると「それは大丈夫ですけどね。(ガソリンの小売価格を抑制するため議論が続く)トリガー条項は、はっきり言えばガソリン税の減税。(政府が)抵抗しているのは、こういうふうに(消費減税などへ)波及するから。同じ減税なら消費税もやればいい。みんなが重要だって言うなら、すべて軽減税率ゼロにしてもいいでしょ。結構簡単にできる。レジで品目変えるだけでできちゃう」などと持論を展開した。

【私の論評】現状日本経済を安定させるための最大の手立ては、消費減税(゚д゚)!

トリガー条項は、指標となるガソリン価格の平均が3か月続けて1リットルあたり160円を超えたのを引き金(トリガー)として、税率上乗せ分(約25円)を減税する措置。東日本大震災の復興財源確保で現在凍結されており、発動には税制関連法を改正する必要があります。

首相官邸

政府は既にガソリン価格を全国平均で172円程度に抑えるため、石油元売り会社への補助金を3月までの時限措置として支給しています。ただ、原油価格の高騰は長期化するとみられ、補助金を4月以降も継続するとともに、更なる価格抑制策が必要だと判断しました。

自民の茂木幹事長は15日の記者会見でトリガー条項の発動に関し、灯油や重油の価格を新たに対象にするかどうかも含め、「総合的に検討したい」と述べました。


ガソリン価格が上がってガソリン税を減税するなら、他の物品価格が上がって消費税減税するのは当たり前の政策です。

ただ、そうなるのが当たり前という前提となるのが、経済安定化です。物価の安定や雇用をはじめとする国民生活に重要な経済の安定化を重視するなら、柔軟に財政政策を繰り出すのが当然という考え方になるのが普通です。

日本は米欧諸国の動向を横目で見ながら、それに追随して経済制裁措置などの対応を行っているように見えます。経済対策についても、野党などから3月8日になって大規模な対策に関する提案がようやくなされ始めました。

日本は、高インフレに直面する米欧とは異なり、物価目標2%には未だに実現されていない状況にあり、財政金融政策によって経済成長を高める対応を行う余地が十分あります。そうして、現行の金融政策の枠組みだと、経済成長を支えるツールが財政政策になるが、これに適切に対応できるかが重要になるはずです。

しかし現実には、ガソリン高への対応に時間が使われる一方で、日本企業がロシアに持つ経済権益を、安全保障や外交政策とのバランスを考慮してどうするか、という難題に直面して、岸田政権の対応は精一杯になっているようです。そこから、ガソリン税を減税するなら、他の物品価格が上がって消費税減税するのは当たり前という発想は出て来ない可能性があります。

岸田政権としては、日本企業がロシアに持つ経済権益と、物価が上がって日本経済が受ける悪影響を比較すれば、後者のほうがはるかに大きいことを認識すべきです。日本企業の権益はかなり大きいかもしれませんが、それでも日本のGDPに占める個人消費の割合は、60%を超えます。それを考えれば、どちらのほうが重要なのかは、はっきりしすぎるくらはっきりしています。

さらに、ロシアがウクライナに侵攻してしまった現在においては、良くも悪くも安全保障や外交政策とのバランスなど考える余地はなく、欧米に追随するかその先手を打つしかないことも認識すべきでしょう。

もし、ここで日本だけが逆をすれば、国際社会の中で日本だけが孤立することになりかねません。どこまでも、ロシアに追随すれば、日本も厳しい制裁を受けて、ロシアとともに沈むことになりかねません。はっきり言って選択の余地はありません。そもそも、多くの日本人にとっては、プーチンの価値観は絶対に受け入れられません。


日銀の今の枠組み、特にイールド・カーブコントロールによる控えめな金融緩和政策は、岸田政権の最近の日銀人事により、容易に変わることはないとみられます。であれは、現状経済を安定させるための最大の手立ては、高橋洋一氏の主張するように消費減税しかありません。

ここは、安倍元総理や高市政調会長などに頑張っていただきたいところです。

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2022年3月19日土曜日

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有本香の以読制毒

フジテレビ系「めざまし8」に生出演しロシア軍に侵攻されたウクライナ人に、国外退避を強く勧めた橋下氏。

  14日発行の夕刊フジで、ロシアの隣国、ジョージア出身の学者、ダヴィド・ゴギナシュヴィリ氏が、日本のテレビコメンテーターらのウクライナに対する「降伏しろ」発言に異を唱えた。名指しを避けたが、元大阪市長で弁護士の橋下徹氏らの発言を指すと拝察する。


 本コラムではあえて実名を挙げて書き、橋下氏らの一連の発言の罪深さを改めて論じたい。 先月24日のロシア軍の侵攻開始から3週間、祖国防衛のため必死に戦うウクライナに対し、多くの日本国民は深い同情と敬意を寄せている。だが、橋下氏はじめとする日本の一部著名人はなぜか、在日ウクライナ人に執拗(しつよう)に、「降伏」や「妥協」を迫るような発言をしている。

  発言の一端を紹介すると、まず3月3日、フジテレビ系の情報番組「めざまし8(エイト)」で、橋下氏はウクライナ出身の政治学者、グレンコ・アンドリー氏に向かい、次のように言っている。

  「今、ウクライナは18歳から60歳まで男性を国外退避させないっていうのは、これは違うと思いますよ」「アンドリーさん、日本で生活してていいでしょう。未来が見えるじゃないですか。あと10年、20年、頑張りましょうよ。もう一回、そこからウクライナを立て直してもいいじゃないですか。(ロシアのウラジーミル・)プーチン(大統領)だっていつか死ぬんですから」

  このときグレンコ氏は、ウクライナの現状を懸命に説明していた。その発言に割って入ってまで、橋下氏は「ウクライナ人は国外へ逃げろ(=つまり、国土をロシアに明け渡せ)」と言ったのである。

  案の定、この橋下発言は大炎上した。後日、橋下氏は別の番組で、「全面降伏しろとは言っていない」と説明に努めたが、多くの視聴者が「降伏」の強要のように受け取って、違和感を覚えたことは間違いない。

  橋下氏は翌週も、グレンコ氏に同じ理屈で食い下がり、6日にはやはりフジテレビ系「日曜報道 THE PRIME」で、自民党の高市早苗政調会長にも迫った。

  このときは、「中国を取り込まないと(対露)制裁の効きが弱いともいわれている」と指摘し、「中国に頭を下げてでも、こっちに付いてもらう必要があるのでは」と問いかけ、高市氏はあきれ顔となっていた。

  筆者が考える、一連の橋下発言の問題点の第1は、事実・史実に基づいていないことだ。

  まず、ウクライナ人が、帝政ロシアとソ連の支配のもとで、どれほどの辛酸を嘗めてきたかを橋下氏はおそらく知らなかっただろう。歴史の一例を挙げると、世界的な穀倉地帯であるウクライナは、1930年代、スターリンの圧政のもとで起こされた人為的飢餓により、年間400万から1000万人超が餓死させられた。こうした歴史を知っていたら、ウクライナ人に向かって安易にロシアの軍門に下れと言えるはずがない。

  さらに、「プーチンが死ぬまで待てば、ウクライナを再興させられる」という、何の根拠もない、無責任な〝提案〟はさらにあり得ない。

  事実に基づかない発信はまだある。 橋下氏は15日、自身のツイッターを更新し、次のように述べている。

  「今の中国は欧米の制裁に負けたというのを最も嫌がる。アヘン戦争の敗北の歴史からの脱却が原動力なんやから。中国をこっちに引き寄せるには、お願いかお土産が先やろ。制裁をちらつかせるのは最後の手段。こんな建前政治は、解決能力なし。ほんまアカン。」(2022年3月15日)

  「お土産」とまで書いて中国に「頭を下げろ」という橋下氏は、もう一つご存じないことがあるとみえる。

  米国がプーチン氏のウクライナ侵攻を阻止するため、12回にわたって中国に働きかけていたことは、米紙ニューヨーク・タイムズが報じている。インテリジェンス情報を中国側に提供してまで、ロシアの軍事侵攻を警告し説得したが徒労に終わったのだ。

  橋下発言に煽られたのか、ニッポン放送のラジオ番組では、テレビプロデューサーのテリー伊藤氏が、在日ウクライナ女性に対して、「ウクライナ勝てませんよ」「無駄死にしてほしくない」と説き、女性は「降参するっていうことですね」といい、口論の様相を呈した。

  いま自身の故郷が爆撃にさらされ、家族や友人の命が危ないという人たちに対する、惻隠の情というものが、橋下氏や伊藤氏、テレビ、ラジオの制作者にはないのだろうか。一連の〝降伏発言〟の最大の問題点は、このいたわりに欠ける姿勢にある。

【私の論評】自由と独立のために戦うウクライナ人など馬鹿げていると指摘するのは、無礼と無知の極み(゚д゚)!

ウクライナの歴史を少しでも知っていれば、確かに橋下氏のような安易な批判はできないです。以下に外務省のサイトからウクライナの略史を以下に掲載します。


上の記事で、有本氏が「スターリンの圧政のもとで起こされた人為的飢餓により、年間400万から1000万人超が餓死させられた」という記述は、上の表の1932年の大飢饉(ホロドモール)のことです。

特に、1917年〜1921年以降のソ連によるウクライナへの虐待は凄まじいものがあります。

詳しくは、グレンコ・アンドリー氏の以下の記事を下のリンクからご覧になって下さい。
在ウクライナ日本大使館のサイトも参考になります。
ウクライナ概観 (2011年10月現在)
さて、ここではホロドモールについてさらに詳しく述べていこうと思います。

当時限られた農作物や食料も徴収された人々は、鳥や家畜、ペット、道端の雑草を食べて飢えをしのいでいました。それでも耐えられなくなり、遂には病死した馬や人の死体を掘り起こして食べ、チフスなどの疫病が蔓延したとされています。

ウクライナの飢餓を伝える当時の米国の新聞

極限状態が続き、時には、自分たちが食事にありつくため、そして子どもを飢えと悲惨な現状から救うために、我が子を殺して食べることもあったと言います。おそるべきディストピアです。

通りには力尽きて道に倒れた死体が放置され、町には死臭が漂っているという有様でした。当時は、飢饉や飢えという言葉を使うことも禁じられていたそうです。

飢饉によってウクライナでは人口の20%(国民の5人に1人)が餓死し、正確な犠牲者数は記録されてないものの、400万から1450万人以上が亡くなったと言われています。

また、600万人以上の出生が抑制されました。被害にあった領域はウクライナに限らず、カフカスやカザフスタン、ベラルーシ、シベリア西部、ヨーロッパ・ロシアのいくつかの地域にまで及んでいます。

ソ連では長きにわたってホロドモールの事実が隠蔽され、語られることはありませんでした。結局、ソ連政府がこの大飢饉を認めたのは1980年代になってからです。

この飢餓の主な原因は、凶作が生じていたにもかかわらず、ソ連政府が工業化推進に必要な外貨を獲得するために、農産物を飢餓輸出したことにあります。

このことからウクライナでは、ホロドモールはソ連による人為的かつ計画的な飢餓であり、ウクライナ人へのジェノサイド(大虐殺)とみなされています。

しかし、ソ連は飢饉の存在自体は認めたものの、被害を被ったのはウクライナ人だけではないとして、虐殺については否定しました。

ホロドモールの被害者

1991年のソ連崩壊によって、統治下にあったウクライナは独立を果たしました。しかし、ソ連の財産継承をめぐる両国間の問題は未解決であり、ユーロマイダン革命やロシアによるクリミア編入など、現在のウクライナ危機へとつながっています。

ホロドモールに関しては、現在になってウクライナ国内でも意見が割れています。ヴィクトル・ユシチェンコが大統領を務めていた2006年、ウクライナ最高会議はホロドモールをウクライナ人へのジェノサイドと認定する決定を採択。

しかし2010年、ユシチェンコの後継であるヴィクトル・ヤヌコーヴィチ大統領は、「ホロドモールはウクライナ人に対するジェノサイドと見なすことはできず、ソ連国内の諸民族の悲劇」と強調し、見解を修正しました。

一方の現代ロシアでは、歴史家を中心に飢饉の事実認識には同調しますが、被害はロシア人やカザフ人にもおよんだと指摘し、ウクライナ人に対する民族的なジェノサイドであることを否定する声が挙がっており、見解の相違は埋まっていません。ただ、ウクライナ人の犠牲が最大であったことは否めないです。

多くの人が命を落とすこととなったホロドモール。しかし、ソ連による歪められた情報工作が影響してか、日本では現在も認知が高くないのが現状です。在日ウクライナ大使館では、ホロドモール被害者追悼の日にあたる11月第4土曜日に、追悼祈祷式と礼拝が行われています。

ソ連によって引き起こされた人為的な大飢饉であるホロドモール。そこにあるのは、単なる国家間の争いが招いた、被害者と加害者という構図のみではありません。繰り返されてきた戦争や人種問題も影響しています。私たちは、血塗られた歴史に目を背けず受け入れなくてはならないですし、この惨劇を忘れてもならないです。

多くの人が人為的に餓死されられたという事実は、ウクライナでは様々な形で語り継がれてきたことでしょう。

現在人口4400万人のウクライナで過去に1/5の人が亡くなったのですから、多くのウクライナ人の家族や親戚の誰か、あるいは周りの人の関係者の誰かは亡くなっているでしょう。そうした歴史的記憶を持つウクライナ人が、ロシアの侵攻に徹底抗戦しようという気持ちになるのは当然といえば当然です。

ロシアよる占領では、多くの人々が粛清されることになるでしょう。命を守る、といっても、降伏さえすれば全員が生き残れるという保証などありません。逃亡すれば良いといわれても、逃亡中に命を落としているウクライナ人も多数出ています。それに、誰もが安心にたる逃亡先が提供されるとは限りません。

降伏後も逃亡後も、抑圧・困窮は必至で、命がけの生活になるでしょう。ロシア支配下では、ウクライナという国の実質的あるいは形式的な存続も危ういです。

ロシアのウクライナ侵攻を成功裏に終わらせることは絶対に避けなければならないです。プーチンの核の恫喝に妥協し融和的解決を模索することは、将来の国際秩序に大きな禍根を残すことになります。まさにウクライナ侵攻をプーチンの誤算まま終わらせる努力と覚悟が国際社会に求められているといえます。ウクライナは国際社会の秩序の維持のためにも戦っているともいえます。

多くの人は安易に「生命よりも大事なものはない」といいます。ところが「生命を守る」というのは、簡単なことではありません。ただ降伏したり逃亡したりすれば、万人の生命が長期にわたり保障される、などというのは幻想にすぎません。

特にロシアに関してはそうです。特に日本人なら、違法な日本人将兵のシベリア抑留や、北方領土の違法占拠などの記憶があるはずです。第2次世界大戦後に、日本がソ連に占領されていたら、とてつもないことになっていたことは容易に想像がつきます。

ガニ大統領が国外逃亡した後に残されたアフガニスタン人の多くは、現在のタリバン支配の状況下で、苛烈な状況に置かれています。旧政府の治安関係部門で働いていたとわかれば、確実に粛清対象です。

現在のアフガニスタンでは公開処刑されている者も多数いますし、失踪した人も多数存在します。女性の権利のために運動しているだけで、深夜に自宅のドアをぶち破られ、連れ去られて行方不明にされてしまうのです。なんといっても多くの若者の夢や人生設計が大幅に狂わされました。特に、女性のそれは絶望的です。彼女たちの将来は、タリバン支配が続く限り閉ざされたままになります。

国外逃亡したアフガニスタンの前ガニ大統領は、外国メディア関係者に向かって「私はアフガニスタン人の生命を救った」などと寝惚けた主張をしていますが、実際には、ただ自分の生命救っただけです。

たとえ日本のテレビ番組であったとしても、日本のお茶の間の視聴者向けであったとしても、自由と独立のために戦うウクライナ人など馬鹿げている、降参すべきだ、逃げるべきだなどと指摘するのは無礼の極みです。

こんな馬鹿げた主張をしても、それに気がつなかない、そのような主張を聴いても、おかしいと思わない人は、相当頭の中がお花畑になっていることを自覚すべきです。

無論、ホロドモールの原因をつくりだしたスターリンは過去の人物であり、プーチンではないと考える人も多いでしょう。しかし、このブログでも以前指摘した通り、元KGBである彼の故郷はロシアではなくソ連邦なのです。プーチンにとっては、ウクライナはあくまで自分たちの持ち物なのです。このような考えには、ロシア人でさえ賛同できないでしょう。

ウクライナ人からすれば、ブーチンがいつスターリンのような政策をとるかもしれないと疑心暗鬼になるのは無理もありません。ましてや今回現実にプーチンはウクライナに本格的に侵攻をはじめその疑心暗鬼は現実のものとなりました。そのウクライナ人がプーチンの目論見を実現させないように立ち上がるのは当然です。それをただ犠牲がでるからといって、降伏しろ、逃げろというのはあまりに理不尽です。

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2022年3月18日金曜日

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ニュースの核心

習主席(右)は、プーチン大統領とともに「世界の敵」になるのか

 ジョー・バイデン大統領は18日、中国の習近平国家主席と電話会談する。ロシアによる国際法違反の暴挙であるウクライナ侵攻などについて話し合う。欧米メディアは、ロシアが中国に対し、地対空ミサイルやドローン(無人機)、装甲車両などの供与を要請したと報じている。バイデン氏は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領を「戦争犯罪人」「人殺しの独裁者」などと糾弾しており、電話会談では「中国がロシアを支援すれば高い代償を払う」と警告することになりそうだ。ロシア軍の残虐非道な無差別攻撃が続くなか、習氏はプーチン氏と手を組むのか。ジャーナリストの長谷川幸洋氏が、中国の動向に迫った。


 ロシアのウクライナ侵攻で、中国はどう動くのか。私は「ロシアを応援したいのはやまやまだろうが、当面は時間稼ぎで様子見」とみる。それで、中国は最終的に「漁夫の利」を得るのか。ご心配なく。そうはならない。

 中国は開戦前、ロシアとの連帯を声高に唱えていた。北京冬季五輪の開幕に合わせて開いた2月4日の中露首脳会談では、ロシアが訴えてきた米国とNATO(北大西洋条約機構)の脅威に理解を示し、「無制限の友好関係」を強調したほどだ。

 ところが、いざ戦争が始まり、ウクライナの目を見張るような抵抗で、戦況が膠着(こうちゃく)状態に陥ると、微妙にスタンスを修正し始めた。

 国連の安全保障理事会と総会では、ロシア非難と即時停戦を求める決議に反対せず、棄権した。王毅国務委員兼外相は3月1日、ウクライナのドミトロ・クレバ外相との電話会談で、現状に「深い悲しみ」と、民間人の被害に「強い懸念」を表明し、7日には「必要なら、仲介に向けて国際社会と協力する用意がある」とまで表明した。

 なぜ、中国は態度を変えてきたのか。理由は明白だ。「ロシアの敗色」が濃厚になる一方、厳しい西側の経済制裁がロシアに予想以上の大打撃を与えているからだ。

 ロシアは当初もくろんだ電撃戦による短期決戦で勝利を得られず、開戦から3週間を過ぎたいまも、首都キエフを陥落させられずにいる。国内では、外資企業が続々と事業を停止し、ボーイングやエアバスの民間航空機も運行できなくなった。メンテナンス部品が手に入らないからだ。猛烈なインフレに襲われるのも、時間の問題である。

 そんななか、ロシアは中国に対し、地対空ミサイルやドローンなど軍事物資の提供と経済支援を求めた。中国は否定しているが、米国はメディアにロシアの支援要請をリークするとともに、NATOとアジアの同盟国に外交公電で情報を通知した。

 支援要請自体が、ロシアの苦境を物語っている。戦争の行方を世界に示唆するとともに、中国も牽制(けんせい)する「一石二鳥」の作戦だ。

 中国は、そんなロシアに手を差し伸べるのだろうか。

 もし、ロシアの要請に応じれば、これまで激しく対立してきた米国に加えて、欧州も完全に敵に回してしまう。欧州こそが、ロシアの脅威を肌身で感じているからだ。中国自身が経済制裁を受けるのも避けられなくなる。

 それだけではない。

 ロシアのタス通信によれば、セルゲイ・ラブロフ外相が16日、RBCテレビ(独立系)で、「ウクライナの中立化問題が安全の確約とともに、真剣に議論されている。私の見立てでは、合意に近づいている」と語り、停戦合意の可能性に言及した。ロシアが停戦に合意すれば、中国ははしごを外されてしまうのだ。

 かといって、いまさらロシアのプーチン大統領を切るのも簡単ではない。中国の習主席は同じ独裁者同士として、個人的にもプーチン氏に入れ込んできた。両国にとって「米国は共通の敵」という戦略構造は、ウクライナ戦争後も変わらない。

 結局、中国は身動きがとれないまま、当面は様子見するしかないだろう。だからといって、戦後に「漁夫の利」は得られない。戦争に負けたロシアを抱えていくのは重荷でしかなく、中国の下心と本音は、冒頭に紹介した首脳会談で明白であるからだ。

 追い詰められているのは、ロシアだけではない。いまや中国も同じである。

【私の論評】ウクライナと結びつきが深い中国には、ロシアにだけに一方的に肩入れできない事情が(゚д゚)!

中国には、ウクライナをないがしろにできない理由があります。なぜなら、米国を脅かすほどの軍事強国に成長した中国。その軍事力を作り上げるうえで「第一功臣」であると中国で呼ばれてきたのがウクライナなのです。

中国はソ連崩壊によるウクライナ独立後の1992年に世界で最も早く国交をウクライナと結んだ国の一つです。

ウクライナはソ連の「兵器庫」と呼ばれるほど軍需産業が集中したところで、冷戦後の独立後もソ連の35%の軍事産業を引きつぎました。ところが、ウクライナ軍単体に需要があるわけではなく、ウクライナ政府に軍需産業をとことん守る力もありませんでし。

問題は軍事関係の技術者や専門家と最新の技術でした。当然、ウクライナは世界の草刈り場となりました。経済力のある米国、イスラエル、ドイツ、シンガポールなども動きましたが、中国にはほかの国にはない優位性がありました。

ソ連時代からの社会主義国同士の交流で積み上げた人的ネットワークでした。中国はソ連との間で科学技術や工業技術の交流があり、中国の研究者とウクライナの研究者との間で分厚い個人的関係がありました。そうした人脈が、中国政府の要望でフルに動員され、ウクライナの人材獲得競争に乗り出したのです。

キーパーソンは当時の首相李鵬でした。天安門事件で悪名を響かせたが、李鵬はエネルギーや軍事に強い政治家で、「10年かけても育成できない優秀な人材を確保できることはわが国にとって千載一遇のチャンスである。決して逃してはならない」と号令しました。

立ち上がったのが「双引工程」と呼ばれるプロジェクトです。

ウクライナを中心に、旧ソ連圏の人材と技術という「双子の遺産」を引き込むことを目指しました。狙いはウクライナに向けられました。李鵬は、中国・ウクライナ関係において最大の功労者であると中国で今日広く認められています。

ウクライナの科学技術は、ロケット、宇宙航空産業、軍用艦船産業、燃料動力など、当時の中国が立ち遅れていた部門をことごとくカバーしていました。1994年にウクライナが国際圧力で核放棄を受け入れると、さらに核技術関連の人材が行き場を失いました。多くの軍事企業が倒産し、失業した技術者たちを中国は厚遇しました。

ウクライナの国営企業ユージュマシュは、安定した実績を誇ってきた

 2020年時点の中国メディアの報道では、この「双引工程」で合計2000項目の協力が行われ、その中で最も成功したものはウクライナ関係であり、ウクライナの専門家が招聘された人数は2000人に及んだといいます。
 
 中国がウクライナから手に入れた軍事技術でよく知られているのが、中国初の空母である遼寧です。ソ連がウクライナ(当時は連邦の一部)の企業に発注し、完成間際にソ連解体となって宙に浮いた船体を、マカオでカジノ船にするという口実で解放軍系のカバー企業が間に入って中国は手に入れました。

それをもとに中国は空母研究を続け、ワリャークは練習船を兼ねて遼寧号として就航し、さらに自主空母を作り上げるまでになっています。

遼寧

中国がウクライナから軍事技術を得たのは1990年代から2010年ごろまでです。以後は中国の技術が進歩し、ウクライナから学ぶものは少なくなりました。ところが、それ以後も友好関係は続いている。次のターゲットは交通と食糧でした。

12年に政権についた習近平が打ち出した「一帯一路」で、ウクライナを重要なパートナーとして位置付けたのです。13年には友好条約を締結しました。

ウクライナでは、親欧州連合(EU)と親ロシアの指導者による政権交代が相次ぎ、14年のマイダン革命やロシアのクリミア併合など、政治的に不安定になったが、中国は「我関せず」でウクライナとの関係を固め続けました。

その象徴は、中欧列班(トランス=ユーラシア・ロジスティックス)と呼ばれる中国・欧州を結ぶ貨物列車です。20年7月には中国・湖北省武漢市からウクライナの首都キエフが結ばれ、「シルクロード経済ベルト」のための重要拠点となっていました。地理的にウクライナはアジアと欧州を結ぶ位置にあります。鉄道網もソ連時代の遺産でしっかり整備されています。

「世界の食糧庫」と呼ばれる農業大国であるウクライナからは、飼料用のトウモロコシや小麦・大麦などを中国は買い付けており、中欧列班の中国への復路便に満載されていました。中国税関の資料によれば、ウクライナから輸入したトウモロコシは820万トンで、中国の全トウモロコシ輸入の3割を占めています。飼料は食糧生産に不可欠です。中国14億人の胃袋を満たすうえで、ウクライナは大切な飼料の供給源となったのです。

国交樹立30周年にあたる現在、強化されているのは経済関係で、ウクライナにとって中国は19年からロシアを抜き去り、輸出入とも最大の貿易相手国となりました。中国企業はウクライナの港湾、キエフの地下鉄、風力発電などに協力しています。ファーウェイ(華為技術)もウクライナで4Gのネットワーク施設に参加しています。

また、在ウクライナの中国人留学生数も常時5000人ほどいると言われ、欧州のなかで「最貧国」と言われるだけあって物価は安いですが、国民全体の知的水準や科学技術のレベルも高いウクライナは、中国人にとって人気の留学先でした。

甘粛省蘭州市の中川国際空港に着いた、ウクライナから退避した中国人留学生(2022年3月9日)

中国はロシアを戦略パートナーと位置づけ、侵略前にプーチン大統領と習近平国家主席が「無制限」の協力をうたったが、東欧という地政学的にも重要な地域への楔となるウクライナとの関係も中国にとって高い価値を有していました。

仮にロシアとウクライナの仲介を中国が果たすことができれば外交的に大きな得点となり、新しい超大国として国際社会に大きな存在感を示すことになります。

中国もその機をうかがっているでしょうが、現段階では火中の栗を拾うことになり、容易ではありません。ウクライナの破壊を惜しみながら、国際社会で悪者になる一方のロシアにあまりにも近づきすぎないよう配慮もしなくてはならないでしょう。

中国がロシアに味方すれば、欧州は厳しい目で見るでしょう。ウクライナ情勢の悪化を受けて、今後中国は確実に「一帯一路」を含めた欧州戦略の練り直しが求められるはずです。ロシアに与すれば、その代償の大きさはとてつもないことになるでしょう。

ロシアとウクライナの停戦協議について、フィナンシャル・タイムズ(FT)は16日、ウクライナの中立宣言を条件に、ロシア軍が撤退し、停戦する内容を含んだ15項目の暫定的平和協定に向けて「大きな進展があった」と報じました。

タス通信によれば、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は16日、独立系のRBCテレビで「安全の確約とともに、ウクライナの中立化を真剣に議論している。これはまさに、ウラジーミル・プーチン大統領が2月に言った内容だ。私の見立てでは、合意に近づいている。具体的な文言もある」と語りました。 

英スカイニュースによれば、プーチン氏も「我々は協議の用意がある」と語った、といいます。詳しい協議の中身は明らかになっていませんが、FTによれば「オーストリアやスウェーデンのように、中立化を条件に、ウクライナに一定の武装化を認め、米英トルコなどが安全を保障する」といった内容のようです。 

これまでの「中立化+非武装化要求」と比べれば、ロシアはあきらかに譲歩してきました。なぜかと言えば「戦場での戦いが行き詰まっているから」でしょう。

ノーベル賞を受賞した経済学者のポール・クルーグマン氏(ニューヨーク市立大学教授)は、3月7日付ニューヨーク・タイムズのコラムで「中国はロシアを救えない」と書きました。「中国はロシアが求める高性能半導体や航空機部品などを提供できない」「中国は制裁を恐れている」「両国は地理的に遠い」「ロシアは中国の従属国に成り下がってしまう。プーチンはそれを認めない」という4つの理由からです。

ポール・クルーグマン氏

 中国がロシアに味方するなら、今度は中国の「戦略的失敗」ということになるでしょう。結局、ロシアは必ず敗北するからです。たとえ、これからキーフなどの都市部に侵攻したとしても、人口288万の都市を一部でも制圧するのは、総勢20万程度のロシア軍には到底不可能です。

キーフを破壊して瓦礫の山としても、そこに立てこもるウクライナ軍を根絶やしにすることはできません。市街戦ということになれば、ロシア軍も大被害を被ることになります。

負けたロシアを抱きかかえていくのは、中国にとって大変な重荷になるに違いないです。

ここは、中国にウクライナ支持を鮮明に打ち出してほしいところです。

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2022年3月17日木曜日

中国の新型コロナ『武漢で感染拡大したおととしに匹敵』 封鎖ラッシュの上海は“ゼロコロナ”強化も―【私の記事】中国でいつ致死率の高いコロナ感染症が爆発してもおかしくない理由。警戒を強めよ(゚д゚)!

中国の新型コロナ『武漢で感染拡大したおととしに匹敵』 封鎖ラッシュの上海は“ゼロコロナ”強化も


中国では武漢で感染拡大したおととしに匹敵する規模で新型コロナウイルスの感染が広がり、上海では建物の封鎖が相次ぎ、市民生活を圧迫しています。

中国全土では今週月曜の新規感染者数が5000人を超えました。感染が広がる中国最大の経済都市・上海はおとといの市中感染者が200人以上。市民の生活に大きな影響が出ています。

寺島記者
「こちらのマンションは感染者や濃厚接触者が出たわけではないのですが、きのうから48時間の封鎖となっています」

中国では感染者や濃厚接触者が滞在した場所は最大で14日間封鎖されます。

こうした中、上海市政府は新たに感染者や濃厚接触者が確認されていない場所でも48時間封鎖し、2回のPCR検査を行う「重点区域」を定め“ゼロコロナ政策”を強化しました。

封鎖ラッシュの上海。オフィスはもちろん、小学校が封鎖され一夜を明かす児童らや、ジムで運動中に閉じ込められた人も。

そして上海のシンボルともいえる建物も・・・

寺島記者
「中国で最も高い超高層ビルでも黄色い規制線が張られ、現在封鎖されています」

高さ600メートル以上、127階建ての「上海タワー」も一時封鎖されました。

相次ぐ封鎖で圧迫される市民の生活。しかし中国政府は“ゼロコロナ政策”の成功を強調してきただけに方針の転換はそう簡単ではなさそうです。

【私の記事】中国でいつ致死率の高いコロナ感染症が爆発してもおかしくない理由。警戒を強めよ(゚д゚)!

中国の「ゼロコロナ政策」については、間違いだと指摘する識者は多いです。私自身も、このブログでそのように指摘してきました。しかし、富坂聰はそうではないことを主張しています。以下にその記事のリンクを掲載します。
中国のゼロコロナ政策はリスクではなく世界の防波堤
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事より結論部分を以下に引用させていただきます。
もし中国が早期の消火に失敗すれば、瞬く間に医療崩壊が全国へと広がり、一定の期間放置される地域が出てくることは容易に想像される。そして新型コロナウイルスの特徴を考慮すれば、この次に浮上する悪夢のシナリオは、中国国内で多種多様な変異株が次々に誕生してくるという展開だ。

 これが世界にとってどれほどの脅威となるだろうか。

 かつて中国は、結核治療においてこのシナリオと近似した状況に陥った。農村によって病院が近くになかったり、あっても治療費が高くて負担できないといった理由から、結核にかかった患者が途中で治療を放棄してしまうケースが続出したのである。

 結核は完治するまで薬を飲み続けなければ新たな耐性を備えた菌へと進化してしまう病気である。結果、治療を中断した患者の体内で強力となり、最終的には多剤耐性を備え、薬の効かない恐ろしい結核菌を作り出してしまったのである。

 結核と新型コロナを簡単に比較すべきではないかもしれない。だが医療の手が届かない空白地帯は、いまも中国には多く、そして厳然と存在し続けている。だからもし、中国に医療崩壊が起き、全土で次々と変異株が生れるような状態に陥れば、日本の危機感は現在のレベルで済むはずはなかっただろう。

 つまり中国のゼロコロナは、単に自国のための感染対策という枠を超えて、世界にとっての防波堤の機能を果たしているといったのはこうした理由からである。

 独裁色の強い隣国が感染対策の成功を誇っているのを面白くないと思う心理は理解できる。それが読者にアピールすると考えることも分かる。しかし、一定の節度はあってしかるべきだろう。

一定の節度が必要かどうかは、別にして武漢で最初にコロナウイルスがを李医師が発見したのを握りつぶして隠蔽したことは絶対に許せません。それに、コロナウイルスは武漢研究所で人工的に変造されたものかもしれないという疑惑は、未だに晴れていません。

ただ、こういう事実とは別に確かに、中国は伝染病の温床というのは事実です。それについては、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。

コロナだけじゃない、中国で次々に発生する感染症に世界は耐えられるか―【私の論評】中国は伝染病の温床!その理由と対処法はこれだ(゚д゚)!
2020年3月12日、武漢市に所在する病院の集中治療室を消毒する医療従事者

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。

現在、世界を震撼(しんかん)させている新型コロナウイルスのような新興感染症が、中国を起点に多数登場しているのはなぜでょうか。背景には、20世紀末から急速に経済成長した中国が、人類が1万年かけて経験した開発や都市化をわずか30年ほどの間で経験したことがあるとみるむきもあります。

ただ、この30年説は正しくはないかもしれません。それは、冒頭の記事で示されている日本軍の雲南省でどんな感染症が発生しているかを示した地図の存在からも明らかです。この地図は、1935年あたりに作成されたものです。

この頃は中国はまだ完全に発展途上国といって良い状況でした。となると、中国発の伝染病が多発する原因は、都市化以前に農業のために森林を切り開き、野生動物を家畜化するといった生態系への働きかけ(開発)によって流行したことが考えられます。そうして、今でもそのようなことが繰り返されている可能性があります。

ただし、今回のコロナに関しては、「世界の工場」となった中国が、国際貿易や人の移動の面でその存在感を高めていることも、新型コロナ感染症をグローバルに拡大させる要因となりました。

流行の中心地となった中国の武漢市や湖北省などでは、大規模なロックダウン(都市封鎖)が行われ、人々の活動を制限して感染症の抑え込みを行いました。流行の中心が欧州や米国に移ると、多くの国で外出制限や学校の休校措置がとられ、世界はなかば鎖国のような状態となりました。

ほぼ同時にこれほど大規模な活動の制限が求められたことは、感染症の歴史においても、経済社会の歩みの中でも初めてのことです。

「疫病史観」を紐解けば、私たちが想像している以上に、感染症が人類の歴史に大きな影響を及ぼしてきたことが理解できます。考えてみると、農業化や工業化、さらに都市化という人類史の基本的なトレンドは、人々が集まって大きく生産や消費を行うことを前提としてきました。

しかし、今回の新興感染症は、私たちがそうした行動をとることを許しません。経済社会を成り立たせている基本的な活動が、感染症流行の要因になっているのです。現在、起きていることは、経済社会のあり方が根本から変わる転換点と後に位置づけられるのかもしれないです。

ただ、現在の先進国の都市では、伝染病の発信源になることはほとんどありません。それだけ、先進国は、上下水道を整えたり、防疫・医療体制を強化してきたのです。

それよりも、同じ一つの国で、奥地では農業のために森林を切り開き、野生動物を家畜化する等といった生態系への働きかけ(開発)によって元々伝染病が流行しやすくなった中国が、20世紀末から急速に経済成長し、沿岸部では人類が1万年かけて経験した開発や都市化をわずか30年ほど成し遂げたことが流行に拍車をかけたといえるでしょう。

まさに、中国は、伝染病の「ゆりかご」と言っても良い状況なのです。

この状況を解決するために、この記事ではいかのような解決策をあげさせていただきました。

これに輪をかけて、さらに中共政府が初期の段階で感染症の隠蔽をはかったことが、後にパンデミックの大きな要因となったことを考え合わせると、一つ浮かび上がってくる解決法があります。

それは、少しでも中国内で、新たな感染症の兆候があった場合、中国政府などの情報やWHOの情報などあてにせず、各々の国は自国民の命と財産と、自国経済を守るために、すぐに中国からの渡航制限をすることです。

そのためには、各国で協力のうえで、中国には公表せずに、中国内の感染症情報を得る体制を整えるべきでしょう。そうした体制を整えておき、少しでも兆候があれば、問答無用で中国からの渡航を禁じるのです。

 ただ、これによって完璧に中国発の感染症を防げるかどうか、今となると疑問です。確かに短期的にはこれですむかもしれませんが、長期的にはそうはできません。なぜなら、最近北京で五輪とパラリンビックが開催されたことをみても、現在では中国と完璧に人的交流を遮断することは不可能に近いからです。

仮にそうしたとしても、中国と隣接国との間では、国境溶解という現象が続いています。特にロシアとの間ではそうです。

ソ連の崩壊によってシベリアのロシア人社会は、直ちに危機に陥いりました。 政府は給与を支払うことができず、多くの労働者が引き上げていきました。 シベリアに市場はなく、シベリア鉄道もいたるところで寸断されようとしていました。 

だから、中国からの輸入が不可欠のものとなりましたが、一方で中国に売り渡すものを シベリアのロシア人社会は何も持っていませんでした。その結果、 中国人がシベリアに入り込んできて、役に立つものを探し出し、作り出してゆくしかなくなりました。こうして、国境溶解が進んていきました。

中国とロシア以外の他国との国境溶解もロシア・中国との国境のように規模は大きくはありませんが、進んでいるということもあります。

この国境溶解により、シベリアでは物資の不足などに悩むことはなくなりましたが、それにしても、伝染病などの伝播は避けられなくなったともいえます。

やはり、中国は伝染病関連の情報は包み隠さず、先進国に伝えるべきです。迅速な情報伝達があれば、はやめの対処もできます。

中国の現在のコロナ感染では、統計上では死者はほとんどありません。ただ、中国の過去の隠蔽体質を考えると、これが本当なのかどうかは定かではありません。


中国で新たな殺傷力の強い変異株が生まれており、それを中国が隠蔽していないとも限りません。もしそうなら、人類は再度コロナ感染症の脅威にさらされることになりかねません。

3月15日に中国政府が行った発表によると、この前日に新規確認された中国本土の市中感染者数は、無症状を含めて5154人。データをたどることが可能な2020年3月以降、最多を記録、3月13日の発表で記録更新したばかりだった3122人を大幅に塗り替えた。首都北京や上海でも感染者が日々報告されいる他、南部の大都市として日本人にとってもお馴染みの深圳では、今のところ3月20日までの期間限定ですが、事実上のロックダウンが実施されています。

なかでも特に感染拡大が深刻なのは、東北部にある吉林省です。最も感染者が多い吉林市の当局は3月9日、感染拡大中のウイルスについてオミクロン株の「BA・2」と発表。いわゆる「ステルスオミクロン」として日本でも問題になっている変異株です。

現地では3月15日午前から、今回の感染拡大後、実に9度目となる全市民対象のPCR検査を実施。市内にある2つの医療機関を新型コロナ患者の専用病院に指定、3つの臨時病院を開設して患者対応にあたる一方で、3月12日の未明には吉林省が市長の解任を発表して、感染拡大の責任を問う姿勢が鮮明に打ち出されました。

実はこの人事が発表される2日前にも吉林省はある人物の解任を発表しており、その背景が注目されています。

解任されたのは市内にある農業科学技術学院の院長で、日本でいう地元の大学のトップです。

中国メディアによると、この学院では3月6日に学生寮で陽性者が判明するなど、感染者が相次いで確認されていました。このため、学内の全面消毒と感染拡大を防ぐ目的で、3月10日午後になって全学生6500人あまりを大型バスに分乗させ、市内の隔離先などに移す大規模移送が実施されました。

大規模移送完了後の3月11日に香港メディア「香港01」は、感染対策の不備や物資の不足に加えて、学院側が感染情報を隠ぺいした疑いを報じました。

一方上海では、ある病院で医療スタッフが病院側に詰め寄る様子をとらえた動画が上位にあがっていました。スタッフの家族とみられる人物の投稿によると、病院内で感染者が出たにも関わらず、病院側がこれを隠した上、有効な措置が取られず院内感染に発展したといいます。

感染科の医師だけでは人手も物資も足りなくなり専門外の看護師までも動員され、中には防護服なしで対応させられたケースもあったことから、スタッフが病院側に詰め寄ったものです。病院側はこの動画が伝える騒動が、実際にあったこと自体は公式に認めていますが、詳しい経緯などは調査中としています。

中国随一の国際経済都市とされる上海は、コロナの感染対策においても“優等生”と言われてきたのですが、その上海でさえも混乱は確実に起き始めているのです。

吉林省で行わたPCR検査

この隠蔽体質は以前このブログでも述べたように、一言で言えば中国共産党中央政府が「ゼロコロナ政策」を掲げているため、下部組織はコロナ感染症が発生しても、上に報告しづらい状況になってるため起こっているのでしょう。

この状況は非常に危険です。もしコロナ感染症が深刻な状況になっても、上に報告されない可能性があります。このように中国ではいつ、感染症の爆発、それも多数の死傷者を含む爆発が起こってもおかしくはないのです。

このブログでは、国際政治学者イアン・ブレマーが社長を務める米調査会社ユーラシア・グループが1月3日に公表した2022年の「世界の10大地政学的リスク」を掲載しました。

これは日本でも大きく報じられましたが、目を引いたのは一位に予測されたのが中国だったからでした。しかも習近平政権が誇る「ゼロコロナ政策の失敗」が世界経済に深刻な打撃を与えるとい予測でした。

ユーラシアグループはロシアのウクライナ侵攻も予測していましたが、それは中国のゼロコロナ政策の失敗よりも下位に位置づけられていました。

現在日本ではウクライナ問題や、昨日起きた地震のことが多く報道され、中国のこの地政学的リスクについては、ほとんど報道されませんが、政府としてはこちらのほうにも気を配るべきです。日本国内のコロナ感染より、こちらのほうがよほど恐ろしいです。

そうしていくつの対策のシナリオを考えておくべきです。岸田政権は意思決定が遅い傾向がありますが、中国がゼロコロナ対策に失敗したり、死亡率の高いコロナウイルスの感染爆発が起こった場合に、意思決定が遅れれば日本は、ウクライナ危機どころではなく直接甚大な悪影響を被ることもあり得ます。

警戒を強めるべきです。無論これが、杞憂に終わればそれに越したことはないのですが・・・・・。

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2022年3月16日水曜日

「ウクライナを見捨てない」 東欧3首脳、キエフ訪問で連帯―【私の論評】第二次世界大戦の戦後の完璧な終わりを告げる3首脳の電撃ウクライナ訪問(゚д゚)!

「ウクライナを見捨てない」 東欧3首脳、キエフ訪問で連帯
  
  15日、ウクライナの首都キエフで、ゼレンスキー大統領(手前右)と握手する
  ポーランドのモラウィエツキ首相(左から4人目)ら東欧3カ国の首相

 ポーランド、チェコ、スロベニアの東欧3カ国の首相が15日、ロシア軍の包囲作戦と攻撃にさらされるウクライナの首都キエフを訪問し、ゼレンスキー大統領と会談した。3首脳は「ウクライナは自分たちの自由と独立のためだけでなく、われわれのためにも戦っている」とたたえ、連帯とさらなる支援を約束した。

 2月24日のロシア軍の侵攻開始後、外国首脳がキエフを訪れたのは初めて。3人は15日午前に列車でウクライナ入りし、数時間の長旅を経てキエフ入りした。ロシア側にも訪問を事前通告していたという。3首脳は16日午前(日本時間同日午後)、ポーランドへ無事戻った。

 ゼレンスキー氏らと並んで記者会見したポーランドのモラウィエツキ首相は「ウクライナを
見捨てない」と強調し、ウクライナの欧州連合(EU)加盟への支持も明言した。チェコのフィアラ首相は「勇気ある戦いを称賛する。一段の支援を続けていく」と述べ、スロベニアのヤンシャ首相も「ウクライナが陸海空を守るため、防衛的・攻撃的な兵器を含むすべての武器供与が重要だ」と訴えた。

 首脳らは、ウクライナ語で「ウクライナに栄光を」と勝利を誓った。ゼレンスキー氏は「キエフが侵略者の標的になっている時に、何も怖がらず、われわれの運命を危惧して来てくれた」と謝意を表明。報道によると、会談では戦後を見据えたウクライナの復興支援や、ロシアの責任追及なども協議した。

【私の論評】第二次世界大戦の戦後の完璧な終わりを告げる3首脳の命を賭した電撃ウクライナ訪問(゚д゚)!

本日世界を駆け巡った超ド級の驚くべきニュースです。今日3月15日、ポーランド、チェコ、スロベニアの首相がウクライナを訪問しました。しかも列車で。爆撃が激しくなるウクライナの首都キエフでゼレンスキー大統領と会見するために。EU欧州委員会理事会の承認の下、彼らはキエフに到着しゼレンスキー大統領に会ったのです。


キエフで3首相を迎えたゼレンスキー氏は、メッセージアプリのテレグラムに投稿した動画で「あなた方がウクライナにとって困難な時期にキエフを訪問したことは支持の強い現れであり、心から感謝している」と述べました。

訪問したうちの一人、ポーランドのモラウィエツキ首相は会談の模様の写真をTwitterにアップした上で「ウクライナを失ったら、もはやヨーロッパではない」と欧州全体でウクライナをサポートすべきと投稿しました。

「ウクライナを失ったら、もはやヨーロッパではない」とウクライナで述べたモラウィエツキ氏

「もしヨーロッパがウクライナを失うことになれば、ヨーロッパは完全に別物になることは間違いありません。それは、もはやヨーロッパではありません。敗北して屈辱的で哀れなものになるでしょう。私は強くて毅然としたヨーロッパを望みます」

会談に同席したウクライナのシュミハリ首相によると、ウクライナ再建支援と、ロシアに破壊した全ての物を賠償させるための国際協力が議題になったといいます。 シュミハリ首相は「3人の首相がキエフにいることは、すべてのウクライナ人に対する限りない支援の証拠です。EUの評議会を代表する3人の首相の訪問は歴史教科書に記録されます」とツイートしました。

この会談が今後どのような影響を及ぼすか未知数のところがありますが、それにしても確実に新たな歴史の一歩飾る象徴的な出来事であることは間違いないです。

その新たな歴史とは何か、それは戦後体制の完璧な終了です。

ロシアは、第2次世界大戦で、旧ソ連が2000万人を超すおびただしい犠牲者を出すことによって得られた国連安全保障理事会常任理事国のステータスを失うことになるでしょう。今回の侵攻で、ロシアは権利を自ら放棄したとも言えます。それは『戦後の終わり』を迎えるという意味でもあります。

   左からスロベニアのヤンシャ首相、ポーランドのモラビエツキ首相、カチンスキ副首相、
   チェコのフィアラ首相。非公開の場所に集い地図を見る=15日


国連の常任理事国の拒否権は、今回のロシア・ウクライナ戦争のように、常任理事国が戦争に関わっていれば戦争を止めることができない異常な制度です。ウクライナもロシアも多くの死者を出しています。この戦争がどのような決着をむかえるのか、まだ未知数のところがありますが、平和のための新たな仕組み作りに向けた機運が高まることでしょう。

そうして、今回のポーランド、チェコ、スロベニアの東欧3カ国の現時点におけるウクライナ訪問は、それを促す象徴的な出来事として、歴史に残ることになるでしょう。

日本も将来を見越しながら行動するべきであり、安全保障をはじめ食糧、エネルギーなどあらゆる問題を率直に議論していかなければならないです。そうして、これは安倍元総理が語っていた「戦後レジームからの脱却」でもあります。

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