プーチン大統領の「ソ連回帰」が周辺国に警戒されているのか |
ウクライナ侵略をきっかけに、旧ソ連諸国の中で「プーチン離れ」が進んでいる。
ロシア指導部への支持率が急落し、ウクライナやモルドバを含む他の旧構成国でもロシアとの関係に疑問符がつくようになっている。
ロシアのウクライナ侵略に対して批判的な態度を示してきたカザフスタンのトカエフ大統領は、サンクトペテルブルク国際経済フォーラムでの会議を欠席し、ロシアとの一線を画した態度を明確にした。
一方、ウクライナのゼレンスキー大統領はモルドバで開催された首脳会合に出席し、欧州との結束を確認した。
ロシアの支持率の急落は、モルドバ、アルメニア、カザフスタン、アゼルバイジャンなどの旧ソ連諸国で顕著であり、プーチン大統領の「ソ連回帰」の試みに対しては懐疑的な声も上がっている。
中村逸郎名誉教授は、ロシアが埋没していることを嫌い、プーチン大統領が「ロシアの栄光」を復活させようとしていると指摘し、旧構成国間で「反露・反プーチン連合」が形成される可能性もあると述べている。
ロシア指導部への支持率が急落し、ウクライナやモルドバを含む他の旧構成国でもロシアとの関係に疑問符がつくようになっている。
ロシアのウクライナ侵略に対して批判的な態度を示してきたカザフスタンのトカエフ大統領は、サンクトペテルブルク国際経済フォーラムでの会議を欠席し、ロシアとの一線を画した態度を明確にした。
一方、ウクライナのゼレンスキー大統領はモルドバで開催された首脳会合に出席し、欧州との結束を確認した。
ロシアの支持率の急落は、モルドバ、アルメニア、カザフスタン、アゼルバイジャンなどの旧ソ連諸国で顕著であり、プーチン大統領の「ソ連回帰」の試みに対しては懐疑的な声も上がっている。
中村逸郎名誉教授は、ロシアが埋没していることを嫌い、プーチン大統領が「ロシアの栄光」を復活させようとしていると指摘し、旧構成国間で「反露・反プーチン連合」が形成される可能性もあると述べている。
【私の論評】ウクライナ戦争が旧ソ連地域におけるロシアの立場を弱め、その影響力を維持することをより困難にした(゚д゚)!
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、長い間、ソビエト連邦を復活させようとしていると非難されてきました。彼はソビエト時代を懐かしむように語り、ロシアのメディアや経済に対する権力と支配力を強化するための措置をとってきました。また、異論や反対意見を取り締まり、クリミアを併合し、ウクライナ東部の分離独立派を支援してきました。
ソビエト連邦の復活を目論むプーチンだが・・・・・ |
プーチンのウクライナでの行動は、東ヨーロッパにおけるソビエト連邦の勢力圏を再現しようとする試みであると多くの人が見ています。ウクライナはかつてソビエト連邦の一部であり、ロシア語を話す人口も多いです。プーチンは、ウクライナへの侵攻を「非武装化・非ナチス化」のために必要だと主張し、正当化しています。しかし、プーチンの真の狙いは、ウクライナのNATO加盟を阻止し、ロシアの勢力圏に留めることにあるとする見方が多いです。
プーチンの思いとは裏腹に、ウクライナ戦争は、プーチンのソビエト連邦復活の野望を大きく後退させるものになりました。ウクライナ国民は独立のために戦う意思を示し、ロシア軍に多大な犠牲をもたらしましたた。
また、この戦争は、ロシアの経済と世界舞台での評判にダメージを与えました。プーチンがソビエト連邦の復活という目標を達成できる可能性は低いですが、今後も旧ソ連共和国に対する支配力を行使し、東ヨーロッパにおけるロシアの影響圏を拡大しようとしていた可能性は高いです。
プーチンのウクライナでの行動が、ソ連復活の試みとどのように関連しているのか、具体的な例をいくつか挙げます。
クリミアの併合 2014年、ロシアはウクライナからクリミア半島を併合しました。これは明らかな国際法違反であり、プーチンがソビエト連邦の国境を復活させようとしている兆候であると多くの人が見なしました。
ロシアは2014年以降、ウクライナ東部の分離主義者を支援してきました。これらの分離主義者はウクライナ政府と戦っており、多大な死と破壊を引き起こしています。ロシアの分離主義者への支援は、ウクライナを不安定化させ、NATOへの加盟を阻止するための試みであると多くの人が見ています。
さらに、プーチンは2000年に政権に就いて以来、ロシアにおける反対意見を取り締まってきました。野党指導者を投獄し、言論の自由を制限し、メディアを統制してきました。このような反対意見の取り締まりは、ソビエト連邦に似た全体主義国家を作ろうとしていると多くの人が見ています。
ただ、プーチンは、ソビエト連邦を復活させようとしていると明言したことはないことに注意する必要があります。しかし、ウクライナなどにおける彼の行動は、それが彼の目標であることを示唆しています。ウクライナ戦争はプーチンにとって大きな後退だが、プーチンがその野望をあきらめることはないでしょう。
ただ、この考えは、一種妄想に近いともいえると思います。そもそも、ロシアがウクライナに侵攻し、キエフを占領し、ゼレンスキー政権を追放し、傀儡政権を作ることは、最初から不可能だったと考えられます。ウクライナ侵攻直前でさえ、ロシアのGDPは韓国をわずかに下回る程度であり、軍事力もNATOの連合軍ほど強力ではありません。
軍事費も一般に思わているほど大きくはありません。日本が軍事費を倍にすると、ロシアの軍事費をかなり上回ることになります。それでも、なぜロシアが軍事大国と思われてきたかといえば、旧ソ連の核兵器と、軍事技術を継承した国がロシアだからです。
無論、これを侮ることはできませんが、自ずと限界はあります。できることは限られています。ウクライナ侵攻は当初から絶望的に困難なことだったといえます。
IMFデータをもとにした世界の名目GDP国別ランキング |
ロシアのウクライナ侵攻が成功しなかった理由をいくつか挙げてみます。
まず、ウクライナ国民は自国のために戦う意志を持っていることです。ウクライナ国民は国のために戦う意思を示し、ロシア軍に多くの犠牲者を出している。そのため、ロシアは目的を達成することが難しくなりました。
国際社会はロシアに厳しい制裁を課しています。米国とその同盟国は、ロシアがウクライナに侵攻したことを受けて、ロシアに厳しい制裁を課しています。これらの制裁はロシア経済を麻痺させ、ロシアが軍事活動を維持することを困難にしています。
ロシアは多くの戦略的誤りを犯してきたことです。ロシアはウクライナ侵攻において、多くの戦略的誤りを犯しました。ウクライナの抵抗力を過小評価したこと、ウクライナ上空の制空権を確保できなかったこと、目的を迅速に達成できなかったことなどです。
ウクライナ戦争が長期的にどのような結果をもたらすかについては、まだ時期尚早です。しかし、ロシアが大きな後退を喫し、世界におけるロシアの地位が弱体化したことは確かです。また、この戦争は、ウクライナの人々が自国を守る決意を固め、戦わずしてあきらめないということを示しました。
キエフ郊外のアントノフ空港で、ウクライナの女性兵士とともにたたずむオレナ・ゼレンスカ(青色のコートの女性)。 |
ウクライナ侵攻をきっかけに、旧ソ連諸国の間でプーチンからの「離反」が進んでいることは、上の記事に示されていますが、これには、以下のような要因があります。
まず、ウクライナ戦争は、ロシアが信頼できるパートナーでないことを示したことです。ウクライナへの侵攻は明らかな国際法違反であり、多くの死者と破壊をもたらしました。このため、多くの旧ソ連諸国は、ロシアが約束を守ってくれるかどうかを疑問視するようになりました。
ウクライナでの戦争は、ロシアの経済にダメージを与えました。米国とその同盟国が課した制裁は、ロシア経済に大きな影響を与えました。そのため、ロシア国内の生活水準が低下し、旧ソ連諸国への経済支援も難しくなっています。
ウクライナ戦争は、プーチンに対する信頼の失墜を招きました。ウクライナへの侵攻は、プーチンが自分の目的を達成するために軍事力を行使することを厭わないことを示しました。このため、多くの旧ソ連諸国は、プーチンが自分たちの最善の利益のために行動することを信頼できるかどうかに疑問を持つようになりました。
こうした要因の結果、多くの旧ソ連諸国がロシアから距離を置くための措置をとっています。例えば、グルジアとモルドバはNATOへの加盟を申請し、アルメニアは集団安全保障条約機構(CSTO)への加盟を停止しています。これらの国々は欧米との緊密な関係を求めており、安全保障や経済的支援をNATOや欧州連合に求めている。
旧ソ連諸国の間でプーチンからの「離反」が進んでいることは、ロシアにとって大きな後退です。この地域におけるロシアの影響力が衰えていることを示すものであり、プーチンが目指すソビエト連邦の復活への挑戦でもあります。ロシアがこの課題にどう対応するかは不明ですが、ロシアはこの地域での影響力を維持する方法を模索する可能性があります。
たとえば、ロシアはその経済力を利用して、旧ソ連諸国に圧力をかけ、自国に従わせることができます。例えば、貿易や投資を遮断したり、エネルギー輸出の価格を引き上げたりすることが考えられます。
ロシアは、旧ソ連諸国が西側諸国と協調することを阻止するために、軍事力を行使することができます。例えば、旧ソ連諸国との国境付近で軍事演習を行ったり、旧ソ連諸国のうちロシアと同盟を結んでいる国に軍隊を派遣したりすることです。
さらに、ロシアは、偽情報やプロパガンダを用いて、旧ソ連諸国の住民の間に不和や不信感を植え付けることができます。これにより、旧ソ連諸国がロシアに対して団結することをより困難にすることができます。
そうして、ロシアは、旧ソ連諸国において自国の価値や利益を促進するために、文化的影響力を行使することができる。これは、ロシアのメディア、教育、スポーツを利用することで可能です。
重要なのは、ロシアがこれらの方法を一度にすべて使う可能性はないということです。むしろ、国や地域によって、いくつかの方法を組み合わせて使う可能性が高いです。
ロシアが旧ソ連地域で影響力を維持しようとする努力が成功するかどうかは、以下のような多くの要因に左右されます。
①旧ソ連諸国の経済力と軍事力、②欧米との関係強化に対する国民の支持の程度、③欧米の対ロシア制裁の有効性等です。
ウクライナ戦争が旧ソ連地域におけるロシアの影響力に長期的にどのような影響を与えるかについて結論を出すのは時期尚早です。しかし、この戦争がこの地域におけるロシアの立場を弱め、ロシアがその影響力を維持することをより困難にしたことは明らかです。
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