2022年5月10日火曜日

ウクライナへの「武器貸与法」に署名 第2次大戦以来―米大統領―【私の論評】武器貸与法の復活で米国による支援の本気度がこれまで以上に高まる(゚д゚)!

ウクライナへの「武器貸与法」に署名 第2次大戦以来―米大統領

武器貸与法に署名するバイデン大統領

 バイデン米大統領は9日、ウクライナや東欧諸国への兵器貸与を容易にする「ウクライナ民主主義防衛・レンドリース(武器貸与)法案」に署名した。武器貸与法は、第2次世界大戦中に英国などへの支援を促進したことで知られ、連合国が勝利した背景の一つとみられている。

ロ軍の疲弊鮮明 制裁で兵器調達困難に―西側情報筋

 バイデン氏は署名に際し「ウクライナ人は日々、命を懸けて戦っている。そしてロシア人がもたらす残虐行為は常軌を逸しており、だからこそわれわれはこの問題に取り組んでいる」と語った。

 バイデン政権はこれまでに、ウクライナに対して約45億ドル(約5900億円)相当の軍事支援を供与してきた。同法の成立で大統領はさまざまな手続きを免除する権限を付与され、幅広い支援が迅速化される。

【私の論評】武器貸与法の復活で米国による支援の本気度がこれまで以上に高まる(゚д゚)!

武器貸与法とは、第二次世界大戦において、米国が「民主主義の兵器廠(しょう)」になることを希望したF・D・ルーズベルト大統領によって提案され、1941年3月11日米国連邦議会で可決された法律です。

武器貸与法に署名するルーズベルト大統領

同法によって大統領は、国防上必要とみなされる場合、外国政府に対して武器・軍需物資を提供できる権限をもつことになりました。同法の実現によって、米国は事実上中立を放棄し、連合国の一員として戦争に関与していきました。

大戦終結までに総額約500億ドルが開国と英国連邦構成国(これら諸国が総額の6割を占めた)、ソ連、中国など38か国に貸与され、連合国が戦争を遂行するうえで大きな役割を果たしました。
これまでにも米国はウクライナに対して大規模な軍事的支援を実施してきました。しかし、今回のウクライナに対するレンドリース法案では、そうした支援の際に障壁となっていたさまざまな手続きなどが不要となり、従来と比較してより迅速かつ柔軟な支援が可能となります。

また、既存の法律に基づく武器貸与の枠組みでは、貸与した武器が破壊されるなどした場合に受け取り国(ウクライナ)がアメリカに対して金銭による返済を行う義務が課されていたり、あるいは武器の貸与期間が5年間に限定されていたりしていましたが、この法案は、これらの規定の適用を免除するというものです。

レンドリース法はあくまでも「武器を含むさまざまな物資を貸与する」ものであり、当然、戦争が終了すればその返済義務が持ち上がってくることになります。ウクライナの場合、これがどのような形で実現するのかは、今後のアメリカと結ばれることになるであろう返済協定の内容次第になると考えられます。

第2次世界大戦におけるレンドリース法をめぐっては、すでに消費した物資の費用については支払いが免除されたものの、未消費物資などに関しては米国からそれぞれの国へと売却されることになりました。たとえば英国は、1951(昭和26)年から50年間の分割払いによって債務を返済することで米国と合意し、幾度かの返済延長を経て2006(平成18)年に全額返済を完了しました。

また、英国は戦時中に、兵器や補給品などを米国へと逆に供与する「逆レンドリース」を行っており、これにより返済額の一部を相殺することで、その減額に成功しています。このように、ウクライナも何らかの形で返済額の一部を相殺することも可能でしょう。

米国の第2次世界大戦参戦前に成立した前回の武器貸与法は、当時その矛先が向けられていたドイツにとっても当初から無視できない存在となっていました。1941年(昭和16年)12月11日に行われた対米宣戦布告において、ヒトラーは武器貸与法について触れつつ、米国が「武器貸与法によって援助する諸国の支配権を持とうとした」とまで明言しています。

ヒトラー

日本も武器貸与法によって苦しめられました。特に日中戦争においては、米国の物資は援蔣ルート(えんしょうルート)によって中国国内に運ばれていました。

名前の由来は「(中華民国総統の)蔣介石を援助するためのルート」。中華民国の国民政府は、英米ソなどの援助を受けることで劣勢ながらも徹底抗戦を続けたため、日本は日中戦争勃発から第二次世界大戦の終戦までの長期間にわたり、100万以上の兵力を満州国を含む中国大陸に貼り付けて置かねばならず、国力は疲弊しました。

太平洋戦争の開戦は、中華民国の原動力である援助物資の輸送路である援蔣ルートの遮断もその目的の一つであったと見られています。援蒋ルートにはいくつかありますが、現在の日本では、単に「援蔣ルート」と言った場合、そのうちの一つの「ビルマルート」を想定していることが多いです。

ビルマルート

武器貸与法の復活は単にウクライナへの迅速な支援が可能になるというだけではなく、米国による支援の本気度がこれ以上なく高まるということを意味しています。いずれ通常兵器においては、ウクライナ軍はロシア軍を上回ることになるでしょう。

そして、過去の事例が示しているように、これはロシアのプーチン大統領にとっても決して心穏やかなものとはいえないでしょう。かといって、ロシアが核兵器、化学兵器を用いれば、ロシアは破滅することになりかねないです。


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2022年5月9日月曜日

首相、G7結束優先 石油禁輸、慎重姿勢を転換―【私の論評】ロシア制裁は結構だが、岸田首相によって日本のエネルギー政策がさらに狂ってしまうことにも(゚д゚)!

首相、G7結束優先 石油禁輸、慎重姿勢を転換

記者団の取材に応じる岸田文雄首相=9日午前、首相官邸

 岸田文雄首相が9日にロシア産石油の輸入を原則禁止すると表明したのは、先進7カ国(G7)など欧米諸国との結束を優先したためだ。政府はこれまでエネルギー安全保障を重視し、石油などの禁輸には慎重だったが、ロシアへの制裁の実効性を高めるため、踏み込んだ措置を取る。

 「G7の結束を示すことが最も重要だ」

 首相は6日までの東南アジア、欧州訪問中、G7でロシア産石油の輸入禁止に踏み切る案が出ているとの報告を受けると、こう指示を出した。

 欧州連合(EU)ではフォンデアライエン欧州委員長が4日、石油の禁輸を提案したが、その時点で加盟国の調整は済んでいなかった。首相周辺は「G7としてもある種の見切り発車だったが、首相が大局的に判断した」と解説する。

 政府は4月にロシア産石炭の輸入禁止を決めたが、石油や天然ガスの禁輸には消極的だった。日本は米国などと異なり資源輸入国で、エネルギー安保の面でも調達先を中東依存から多様化することが欠かせない。一方、ロシア以外からの調達により価格が上昇すれば、国民生活や経済活動にも影響するためだ。

 もっとも今回のG7の決定は石油の禁輸時期までは明示せず、首相も「時間をかけ、フェーズアウトのステップを取っていく」とした。「各国が輸入を禁止するより、石油の市場価格が下がる方がロシアには痛手になる」(政府関係者)との声もあり、日本としてもより効果的な制裁を科していく必要がある。

【私の論評】ロシア制裁は結構だが、岸田首相によって日本のエネルギー政策がさらに狂ってしまうことにも(゚д゚)!

以前このブログでも掲載したように、石油のロシアからの禁輸措置はかなりロシアにとって痛手です。以下にそれを引用します。
ロシアのプーチン大統領の経済問題担当首席顧問を以前務めたアンドレイ・イラリオノフ氏は17日までに、西側諸国がロシア産原油の全面的な禁輸に踏み込んだ場合、ウクライナでの戦闘を即座に終結させ得るとの見解を明らかにしました。
同氏は英BBC放送の最近の取材に、「本当の意味での禁輸」を仕掛ければ、ウクライナでの軍事作戦は恐らく、「1、2カ月」で止まるだろうとも述べていました。

イラリオノフ氏はCNNのの取材に、全面的な禁輸発動について「クレムリンの政策決定過程に影響力をもたらす、非軍事面で極めて重要な対応策」と強調しました。

その理由は非常に単純とし、「現段階でロシアが原油や天然ガスの輸出で稼ぐ収益はロシアの全ての歳入の約4割を占めるとみなされる」と指摘。「連邦予算の編成では多分、全ての歳入源の6割近くまで達する」と指摘しました。

同氏は、これら歳入がロシアのエネルギー輸出に対する全面的な禁輸で相当な規模で減らされたとしても、「中国に加えほかの小規模な輸入国が一部おり、我々は全面的な禁輸ではあり得ないと考えるだろう」とも説明しました。それでも、ロシア産のエネルギー源の大手の輸入国の大半に影響を与えることにはなるとしました。

また、ロシアが経済制裁を受けて金融市場を利用出来ず、ロシア中央銀行の外貨準備高が凍結されている現状を踏まえ、プーチン政権は財政支出を賄う財源を持っていないとも説明。「全ての支出額が40~50%削られ、この圧縮幅は1990年代にも見られなかった水準になる」としました。

同氏はこれらの考察を踏まえ、プーチン政権は軍事作戦を止め、ウクライナとの間で何らかの停戦の枠組みや交渉を模索する局面に追い込まれるだろうとも予測しました。

これだけ効き目があるのですから、 G7が禁輸しようとするのも当然といえば、当然です。G7はそれぞれインテリジェンスを持っていますら、これがいかに効き目があるのか、理解しているのでしょう。

岸田首相もようやっと重い腰をあげたようですが、次の段階ではためらわず、動かせる原発を稼働させるべきでしょう。

間違っても太陽光発電などを増やすべきではありません。下のグラフを御覧ください。


太陽光発電用パネルの世界シェアをご存知でしょうか。2006年までは日本の独壇場でシャープ、京セラ、パナソニック、三菱電機などが名を連ねていましたが現在は違います。日本が国を挙げて大規模太陽光発電事業をやればやるほど、中国を利する流れになっています。

そうして、現在のようになぜ中国の独壇場になっているかといえば、新疆ウイグル自治区においてウィグル族の強制労働によってつくられ低価格を実現しているからです。

さらに悪いことに、太陽光パネルは、現行の技術では処分できません。太陽光パネルには、カドニウム、鉛、ヒ素、ポリシリコンなど様々な猛毒性の物質が使われています。最終処分が困難で、再利用もできず産業廃棄物になるだけです。こんなものに再エネ賦課金が使われているのです。これは、即刻廃止すべきです。

エネルギー価格をおさえるためには、まずは原発を稼働させるべきですが、岸田首相は、脱炭素に150兆円投資で資産所得倍増計画を発表しています。『脱炭素』は日本の基幹産業である内燃機関を持つ自動車産業を捨てることを意味します。その代わり、世界シェア80%のサプライチェーンを持つ中国製の太陽光パネルやEV電池に頼る未来を描くことになります。

産経新聞は、日本の洋上風力発電事業への中国侵略を報道しました。再生可能エネルギーブームの中、今度は中国大手・明陽智能が富山県入善町で風車3基受注。発電業者は設置海域の風力や海流などデータ収集可能になります。安全保障上の重要情報が筒抜けになります。太陽光発電に続き、陸も海も丸裸です。あり得ないです。

秋田港湾に建設が進む洋上風力発電=秋田市

まさに岸田首相「亡国首相」と言っても良いくらいです。おそらくエネルギーについて何も分かっていないのでしょう。経済については、岸田首相の無理解ぶりをこのブログでは何度か掲載してきましたが、エネルギー政策でもまるで無理解です。

ロシアを制裁されて、弱体化したとしても、それは自業自得ですが、その制裁によって、日本のエネルギー政策がますます狂ってしまえば、日本にとっては無意味です。日本が弱体化してしまえば、ロシアを利することになり、日本の制裁は無意味となります。やはり岸田政権は短期で終わらせるべきです。

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2022年5月8日日曜日

プーチン氏「がん手術」で権力一時移譲か 米英メディア指摘 「宮廷クーデター」に発展の恐れも 「今回の情報は信憑性が高い」と識者―【私の論評】プーチン後のロシアがどうなるか、またはどうなるべきか、実はそれを知る者は誰もいない(゚д゚)!

プーチン氏「がん手術」で権力一時移譲か 米英メディア指摘 「宮廷クーデター」に発展の恐れも 「今回の情報は信憑性が高い」と識者


 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、がんなどの病気を抱え、手術を控えている可能性があるとした米英メディアの報道が波紋を広げている。手術中には短期的に側近に権力移譲するとの見方もある。9日には対独戦勝記念日を迎えるロシアだが、ウクライナ侵攻は泥沼化し、内政にも混乱の兆しがみえる。トップシークレットとされる最高権力者の体調問題が命運を分けるのか。

 プーチン氏の病状については、ロシアのSNS「テレグラム・チャンネル」で明らかにされた。英大衆紙デーリー・メール(電子版)によると、クレムリン(大統領府)の有力者が情報源だという。

 報道では、プーチン氏は1年半前から腹部のがんとパーキンソン病に罹患(りかん)していると報告されたほか、幻覚や躁(そう)病、統合失調症の症状を伴う障害もあると伝えた。医師が4月下旬にがんの手術を受けるように勧めていたが延期されたという。今月9日の「独ソ戦・戦勝記念日」まで手術を避けたとの見方もある。

 「今回の情報は信憑(しんぴょう)性が高い」と語るのは、ロシア政治に詳しい筑波学院大の中村逸郎教授。

 プーチン氏について「かつては民衆と家庭料理を楽しむ様子などもよく伝えられたが、最近は水や紅茶、食事をとる様子も見られなくなり、食事制限を受けているとの見方もできる。2019年のG20(20カ国・地域)大阪サミットでも各国首脳が赤ワインを飲む中でマイボトルを持参したことがさまざまな憶測を呼んだ」と語る。

 今年2月にベラルーシのルカシェンコ大統領と会談した際、プーチン氏がつま先を激しく動かす動画が一時流れた。4月21日にショイグ国防相と会談した際には、机の端を強くつかんでいた。「表情は消え、ユーモアを交える発言も近年は見えない」と中村氏は分析する。

 露独立系メディア「プロエクト」は4月、高齢となったプーチン氏が医師の巨大なチームを有しているとするリポートを公表した。腫瘍外科医が4年間で35回、計166日間もプーチン氏と過ごしたとされている。

 前出のデーリー・メール紙や米紙ニューヨーク・ポストは、プーチン氏が手術を受けた場合、側近の1人、ニコライ・パトルシェフ安全保障会議書記が短期的にウクライナ侵攻の主導権を握る可能性があると報じた。

 パトルシェフ氏は、プーチン氏と同様、ソ連国家保安委員会(KGB)出身で、ロシア連邦保安局(FSB)長官もプーチン氏の後継として1999年から2008年まで務めた。BBC(日本語電子版)の人物評では、「大統領に対してパトルシェフ氏ほどの影響力を持つ人はわずかだ」としている。

 プーチン氏の本当の体調については分からない部分も多い。ただ、中村氏は「病状の事実関係とは別に、こうした情報が表面化すること自体がクレムリン内部の様子を示しているといえる。戦況が泥沼化するにつれて、侵攻支持派にも反発が増えているのではないか」と語る。

 3日付の英紙ザ・サン(電子版)は「ウラジーミル最後の日」と題した記事で、「ロシア軍と保安機関の幹部が、脆弱(ぜいじゃく)で病弱な専制君主の致命的な戦争への対応にますます不満を募らせている」という元米軍将官の発言を紹介した。

 また、ロシア軍が首都キーウ(キエフ)を撤退し、東部ドンバスなどに転じた作戦について、シロビキ(軍・治安機関出身者の派閥)が「重大な誤り」だと非難したとし、2年以内に取り巻きによる「宮廷クーデター」でプーチン氏が失脚する可能性もあるとする情報分析を伝えた。

 国内の混乱はウクライナ侵攻にどのような影響を与えるのか。前出の中村氏は「プーチン氏は自身の『北大西洋条約機構(NATO)を崩壊させる』という野望の達成に向けて、精神的に追い詰められている可能性がある。さらに戦況が悪化すれば、権力闘争の中で巻き返しを図ろうとする強硬派の発言力が増し、プーチン氏が権力の座から退場せざるをえない状況が生まれてくるのではないか。自身が始めた侵攻で自爆する形だ」との見解を示した。

【私の論評】プーチン後のロシアがどうなるか、またはどうなるべきか、実はそれを知る者は誰もいない(゚д゚)!

上の記事にも出てくる中村氏は別のメディアで以下のように語っています。

「最近の演説を聞くと、言葉がうまく出てこなかったり、文法を間違えてロシア語として成立しない言葉を発するなど、以前はなかった場面が見受けられる。こうしたことから、パーキンソン病に認知症を併発したとの推測も出ています」

プーチン氏は現在69歳。ロシア人男性の平均寿命は68歳で、すでにそれを超えています。平均寿命81歳の日本人男性の基準からすると、年齢以上に老化現象が進んでいてもおかしくはないです。


ロシアの平均寿命は、ソ連崩壊後に60歳を切り57.6歳になったこともあります。これは、このブログでも以前紹介したことがあります。その原因は当時の政府の経済政策の悪さも起因しています。

平均寿命の男女差が世界一大きいロシアですが、男性の短命な理由としては、ソ連崩壊からの環境の悪化やアルコール中毒での短命、自殺・インフラの老朽化による犯罪の増加と社会問題が大きく影響を及ぼしています。そのため、従来は介護の必要がそこまで大きな問題にならなかったのです。

以前このブログでも紹介したように、不況下で危険な「緊縮政策」を選択した影響で増加する死亡数は、まさに驚くべきものです。最も悲惨なのは、ソ連崩壊後のロシアで、1990年代に経済政策の失敗により数百万人の男性が死んだ(主に自殺とアルコール関連の死亡)と考えられるといいます。

しかし現在では、アルコール過剰摂取により病気や犯罪が増えないよう、大規模な「反飲酒キャンペーン」を行い、アルコール消費量が大幅に下がり、死亡率も減少しました。それにより、寿命が延び高齢者が増えたため、介護問題が視野に入ってきました。

ロシア人はウォッカを飲むせいで早死にしている!?

経済的に恵まれたプーチンはこれとは関係ないようにもみえますが、大国ロシアの独裁者として20年以上を過ごしたことが、プーチン氏の健康状態に少なからぬ影響を与えた可能性があるでしょう。

圧倒的な権力を掌握している独裁者は、いつ側近に謀反を起こされるか、いつ反対派に暗殺されるかとの不安から、孤独感や強迫観念に駆られ、緊張を強いられる生活が続きます。それを20年も続ければ、尋常ならざるストレスが溜まって強迫性神経症になるなど、精神面や身体面に不調をきたしても不思議ではなです。

一般的に70歳前後になると認知症になる人も少なくないため、判断力が鈍くなる時期に重なると言えるかもしれません。 

NATOに対する個人的な怨念と「栄光の“ソ連帝国”の復活」を夢想するプーチン氏が強行した今回の全面侵攻作戦の失敗に対し、政権内部からも「大統領の暴走が国家を危険に晒した」「我々の資産が散逸した」との不平不満が巻き起こり、やがてプーチン政権が崩壊するというシナリオは、ありそうですし、それにプーチン氏の健康不安が重なれば、ますます可能性は高そうです。

すでに「作戦失敗の張本人」とプーチン氏から追及されていると言われるFSBや、無謀な作戦で一説には将軍クラスが10人近く戦死という不名誉を受け続けている軍部、さらには欧米から貿易停止や資産凍結の制裁により深刻な経済的ダメージを受けているオリガリヒ(新興財閥)の一部などが反旗を翻すことも容易に想像できます。

ただし、これらが数カ月以内に起こるとは考えにくいです。プーチン氏の政権基盤は盤石で、しかも彼自身が旧KGB(国家保安委員会)出身でいわば元スパイ。諜報活動や裏工作、監視活動は得意中の得意で、政権内部どころか国民全体に密告制度も張りめぐらせており、個々人が疑心暗鬼の状況下で政権転覆や軍部クーデターなどは至難の業です。

それでもウクライナでの戦闘が長期化し、将兵の死者が数万人に達したり(すでに戦死者2万人以上との説も)、欧米の制裁で国民の生活がさらに困窮したりすれば「プーチン失脚」は現実のものになるかもしれないです。

いずれもにせよ、ウクライナとの戦闘が終結するか否かはプーチン氏次第ですが、当初はモスクワの赤の広場で第2次大戦の対ドイツ戦戦勝記念日を祝して毎年華々しく軍事パレードを挙行する5月9日までに、「ウクライナに対する“特別軍事作戦”大勝利」とアピールできる戦利品、つまりは“落としどころ”をプーチン氏が探しているのでは、と見られていましたが、最近では「戦勝記念日にはとらわれない」という、戦争長期化を覚悟したような意見をプーチン政権は表明するなど、ますます混迷を深めています。

そうして、なぜかメディアはポスト・プーチンを報道しません。プーチン氏の体調不調説が報道されるなら、最悪死去ということも考えられますが、その可能性について語るメディアはなぜかありません。これはどうしてなのでしょうか。

プーチン氏はかつて、エリツィン氏に代わる若く現代的な指導者のように見えました。西欧では、民主的なロシアへの期待も高まりました。しかし実際には、プーチンは、その後の20年間でロシアを中世に引き戻しました。国家と教会を1つの迫害機構の中に統合し、国民を「伝統的価値」に押し込めただけでなく、国家権力という何世紀も前の概念を復活させました。

プーチン(左)とエリツィン(右)

プーチンは昔の専制君主のように、自身は不滅だと信じているようです。ロシアに後継者育成計画や緊急時対応計画、もしくは現実には何の計画もないのはこのためです。メディアが「プーチン後」について口を閉ざす理由もここにあります。

ロシアがこれと似たような状況にあったのは、100年も昔のことではありません。スターリンが死去した後には、ロシアのニュースはしばらく途絶えました。米国の識者たちは当時、スターリンには自ら選んだ後継者がいるのか考えを巡らせていました。

しかし、スターリンの没後数年のうちに、後継者育成の計画や手続きがなかったことは明白になりました。ロシアには混乱が生じ、権力闘争が繰り返し繰り返し行われました。この限られた観点で言えば、歴史は悪くない教科書でしょう。プーチン後のロシアがどうなるか、またはどうなるべきか、それを知る者は誰もいないと考えて差し支えないでしょう。

パトルシェフ氏が一時権力を移譲されるからといって、彼がポストプーチンを担うと考えるのは、早計です。やはり、激しい権力闘争が行われるでしょう。映画『スターリンの葬送狂騒曲のような状況になることでしょう。

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2022年5月7日土曜日

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ニュースの核心
習主席(左)とプーチン大統領の盟友関係は続くのか

 ウクライナでロシアの苦戦が続いている。来週9日には戦勝記念日を迎えるが、それまでに事態を大きく打開するのは難しい。

 それどころか、私は全体情勢がいまのままなら「ロシアの敗北は決定的」とみる。なぜなら、強力な経済制裁に締め上げられたロシアの継戦能力は改善する見通しがない一方、ウクライナの戦闘能力は西側諸国の支援で、逆に高まっていくからだ。

 ロシアはジリ貧状態で、敗北していくのか。最大の不確定要素は中国である。

 結論を先に言えば、中国はギリギリの局面でロシア支援に動く可能性が高い。

 習近平総書記(国家主席)にとって最大の同志は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領だ。近い将来、台湾をめぐって米国との対決が不可避とすれば、そのとき、ロシアが加勢するかどうかは、習氏の運命をも左右する。習氏は、ここで「プーチンのロシア」を失うわけにはいかないのだ。

 振り返れば、開戦直前の2月4日、習氏とプーチン氏は北京冬季五輪の開幕に合わせて北京で会談し、盟約を結んだ。それは、「米国による世界の一極支配を打破し、中国とロシアが加わった多極化体制を目指す」という誓いだった。これこそが、両氏の戦略目標にほかならない。

 ロシア軍がこれほど苦戦するとは、習氏にも意外だったにせよ、自分自身の目標達成を困難にするような選択はあり得ない。最悪でも、プーチン氏が失脚しないように背後から支えるはずだ。「いまはまだ、動く局面ではない」と見ているにすぎない。

 では、どんな対露支援が考えられるか。

 ロシアの決定的敗北を避けるためには、「継戦能力の維持」が目的になる。経済支援はもとより、西側諸国に見えない形での軍事支援だ。例えば、中露双方に近いカザフスタンのような国を経由して、武器を供給する可能性があるのではないか。

 中国にとっての不確定要素もある。最大の懸念材料は、プーチン氏が戦術核に手を伸ばした場合だ。

 中国は「敵に核攻撃されない限り、自分からは核を使わない」という、核の先制不使用ドクトリンを一応、掲げている。だが、ロシアは違う。

 プーチン氏は2020年6月、「通常兵器であっても、国の存続が脅かされれば、核で反撃する権利を留保する」という大統領令に署名した。これは「脱エスカレーションのためのエスカレーション」と呼ばれている。「戦術核を一発落とせば、敵は一挙に崩壊し、戦いは終わる」という考え方だ。

 プーチン氏は一発逆転を狙って、核の命令書にサインするかもしれない。そのとき、中国はどう動くか。

 それでも、ロシアを支援するなら「自らのドクトリンに反してでも、米国と対決する」という話になる。そうなれば、いよいよ、「米国を中心とする西側諸国と、中露の本格対決」は避けられない。

 米国は、そんな展開を避けるために、「ジワジワと真綿を締めるように」ロシア軍の戦闘能力を奪っていくだろう。当然、戦争の長期化は必至だ。最終的には、プーチン体制の崩壊を目指す。

 それが、ロイド・オースティン米国防長官が言った「ロシアの弱体化」である。

■長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ) ジャーナリスト。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革会議委員などの公職も務めた。著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア―本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。ユーチューブで「長谷川幸洋と高橋洋一のNEWSチャンネル」配信中。

【私の論評】プーチンはケミカル・アリと同じような運命をたどるかもしれない(゚д゚)!

昨日は、揚陸艦「サラトフ」、黒海艦隊旗艦ミサイル巡洋艦「モスクワ」の撃沈に続き、フリゲート艦「アドミラル・マカロフ」が攻撃されたとのニュースがありました。これは、まだはっきりとはしていませんが、ウクライナ側は撃沈したとしています。



ウクライナには海軍はあるものの、潜水艦はなく、ロシア海軍から比較すれば、かなり規模は小さなものです。にもかかわらず、ロシアはこれだけ艦船にダメージを受けています。無論、これは、ウクライナ海軍による成果ではなく、陸上から発射されたミサイルによるものであるようです。

この他にも、ウクライナ軍はドローン使いロシア巡視艇2隻を破壊したことも伝えられて舞います。いずれにせよ、これだけロシア海軍の黒海艦隊はダメージを受けているということです。

様々な情報を総合すれば、東部地域でのロシアの作戦は、それほど成果を上げていないようです。戦勝記念日である5月9日までにマリウポリ全体を制圧することもできないでしょう。しかも、ウクライナには次々と西側の武器が入ってきています。このままでは、戦況を好転させることは無理でしょう。

ただ、ロシアの国内事情からいっもてもプーチンはなんらかの形で勝利宣言をしなければいけないです。そうすると、いくつかオプションが考えられます。例えば、東部にはロシアが独立国として認めた2つの人民共和国である、ドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国がありまず、その独立をさらに拡大したものとして承認するか、もしくはロシアに併合してしまうというオプションもあり得るでしょう。

もう1つのオプションとしては、ロシアがウクライナ宣戦布告をするという説もあります。 飯田)ありますね。 ただ、ロシアが兵員の総動員すると言っても、大した兵力は残っていません。

さらに、もしロシアがウクライナに宣戦布告をした場合には、ウクライナが主権国家であるということを認めることにもなります。そうなるとロシアは「NATOと戦争するのか」ということになります。

そうなればNATO条約の第5条、集団的自衛権の発動になりますから。これは、必ずしもロシアにとって得策だとは思えません。何をするにしても、ウクライナは二つの共和国の独立や併合は認められませんから、長期戦になります。

停戦は、負けそうだと思った側が考えるものです。いまは両方とも勝利を確信しているわけですから、当分は停戦はないです。

ではロシアはウクライナの南部を獲るのではないかと言う説もあります。しかし、先にあげたフリゲート艦「アドミラル・マカロフ」が撃沈されたかもしないことも含め、様々な情報を見ていると、とてもいまのロシア軍にオデッサを獲る力はないというのが、正しい見方ではないかと思います。


ロシアは、西部の方にミサイル攻撃をしているということですが、ミサイルを1~2発撃ったくらいで戦局が変わることはありません。ウクライナ軍が東部に集中させないためにやったのだと思います。

そういう意味では、ロシアは本当はアゾフスタリ製鉄所のウクライナ部隊を全滅させたいのでしょうが、 マリゥポリの3日間の停戦発表しています。攻防はこれからもずっと続くのです。

マリウポリのアゾフスタリ製鉄所にはまだ民間人がいて、あれだけ国連が動いています。これで総攻撃を行って大量に死者でも出したら、ますます状況が悪くなるため、民間人の退避のためと人道的なふりをしているのです。

しかし、心の底では、ロシアもウクライナを信用していません。ですから、停戦の間の時間は、軍事的に重要な意味を持つ場合があり得るわけですから、お互いに3日間どころか1日の停戦中だって相手が何をするかわからないと思っています。

もう少し民間人を脱出させたところで、ロシアが徹底的に攻撃するということも十分あり得ます。更に、それがうまくいかず、結果は出さなければいけなくなると、例えば大量破壊兵器を使って、戦局を少しでも有利にしようとするかも知れません。


しかし、そのときに核を使うかと言えば、流石に簡単には使わないと思います。 核兵器も搭載できるミサイル演習を実施したということですが、それは威嚇でしょう。やるのであれば、痕跡の残らない化学兵器の方が可能性があるのではないでしょうか。

いずれにしても、この苦境からロシアがどのように脱出するのか。プーチンは相当厳しい状態にあるといえるでしょう。

ただ、ロシア軍がバルト海沿岸の飛び地カリーニングラードで、「イスカンデル」というミサイルシステムの模擬発射を行ったということが報じられました。 戦術核兵器の使用について、昔よりも敷居が低くなっていることは事実です。

5月5日のニュースで、アメリカの戦略コマンド(核兵器担当のコマンド)の司令官が「ロシアの戦術核兵器の問題は、極めて抑止が難しくなっている」と言っています。ですから、まったく排除することはできません。ですが、核兵器よりも先に化学兵器を使う可能性のほうが高いと思います。

米国は戦争目的を明確化しています。目的は2つです。1つ目はウクライナの勝利。2つ目はロシアの弱体化。ロシアが今回と同じようなことはできないほど弱体化させるというのは、先日、米国のブリンケン国務長官とオースティン国防長官ががウクライナに行ったあと、ポーランドで明言していました。

現在ではもう、「弱体化」という言葉だけでなく非公式には「無力化」という言葉も使っています。ロシアを「無力化」することは無理だと思いますが、米国はそのような形で腹をくくっている部分があると思います。

米国は一度冷戦でソ連を崩壊させ、冷戦に勝利しているわけですから、その後のロシアに対する寛容な措置が今回の危機を招いてしまったわけですから、その二の舞いは舞いたくないのでしょう。今回は、ロシアを無力化に近づけるつもりなのでしょう。

これからいろいろな国際会議が続くでしょうが、米国はさらに制裁を強めていくでしょう。 ヨーロッパは、既にエネルギー分野での制裁、特に石油のロシアからの輸入をしない方向で制裁しています。石油を年内を目処に徐々に輸入を減らしていくことにするようです。すぐに効果があるわけではないですが、ロシアにとってはますます厳しい状況になるでしょう。


ロシア対して、一部、援助をしているのではないかと言われている中国ですが。 中国も困っているでしょう。オリンピック直前にロシアを支持するようなことを言ってしまいましたが、ロシアが勝つかと思いきや、現状のようになってしまい、世界中の批判がロシアに集中して、そこでロシアを支援したら中国も大変な目に遭います。現在は沈黙しています。

中国としては米国を敵に回すわけにもいかないし、ロシアを失うわけにもいかないです。しかし、中国がいまいちばん困っているのはコロナ対策です。ウクライナどころではないかもしれません。

北京全域でロックダウンということになれば、大変です。なぜなら、10月に党大会があります。 そこで習近平氏は「3期目」の国家主席の就任を 華々しく挙行するはずでしたか、ゼロコロナ政策が「失敗」したということになれば、さすがの習近平も持たないでしょう。

実際「ゼロコロナ」の綻びがいろいろなところに出ています。 ただ、これは徐々に緩和していくとは思います。あのよう状態をいつまでも維持できるわけがないです。北京で本格的なロックダウンをしたら大混乱になるでしょうから、緩和はしていくでしょう。

ただし、それには時間が掛かかるでしょう。10月までに完全撤廃というわけにはいかないでしょう。

10月までは、中国は国内に専念して、ロシアに対して援助はあまりしないという方針で臨むからもしれません。というより、国内問題のほうが大変でそうせざるをえなくなるでしょう。そうなると、ロシアの敗北は決定的になります。

ウクライナ大統領府のオレクシイ・アレストビッチ顧問は5日、戦況に関する報告で、「米欧から提供される武器がそろう6月中旬以降」にロシア軍への反転攻勢に乗り出すとの考えを示した。

アレストビッチ氏は「ウクライナ軍の前進が可能になる」と述べ、東部地域などで露軍の撃退を目指す考えを示唆しました。米欧の軍事支援を受けるウクライナは強気の姿勢に転じています。

ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は3日、ロシアが2014年に併合した南部クリミアの奪還を目指す方針を明らかにしました。

ゼレンスキー政権は3月29日のトルコ・イスタンブールでの停戦協議では、早期停戦を優先し、ロシア軍にクリミアや東部の親露派武装集団が実効支配する地域からの撤退を求めませんでした。

ロシアは侵攻後に制圧した南部ヘルソン州などでの実効支配を強化し、ウクライナの領土分断を図る構えを鮮明にしています。ただ、ここの支配もできなくなる可能性が大きいです。

ロシアの弱体化を目指す米国はそこまで支援するでしょう。ウクライナがクリミアを奪還したときには、プーチンは負けを認めざるを得なくなり失脚することになるかもしれません。

それに、もし戦況を好転させるために化学兵器を用いれば、いずれプーチンは、イラクの故サダム・フセイン(Saddam Hussein)大統領のいとこで側近だった「ケミカル・アリChemical Ali)」ことアリ・ハッサン・マジドと同じように「ケミカル・プーチン」と呼ばれ、同じような運命をたどることになるかもしれません。

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2022年5月6日金曜日

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【速報】ロシア太平洋艦隊が日本海で最新の対潜水艦ミサイル発射演習 水中の目標命中と発表


ロシア国防省は日本海で最新の対潜水艦ミサイルの発射演習を行ったと発表し、映像を公開しました。

これがロシア国防省が公開した最新の対潜水艦ミサイル「オトベット」の発射演習の映像です。ミサイルは水中の目標に命中したとしていて、演習の間、太平洋艦隊の艦船15隻が周辺海域を一時封鎖したということです。

インタファクス通信によりますと、ミサイル「オトベット」の最高速度はマッハ2.5で、最大で水深800メートルの対象を攻撃可能だとしています。演習は対ロシア制裁を科す日米などをけん制する狙いもあるとみられます。

【私の論評】日本人は、ロシアの経済力、軍事力を「等身大」で捉えるべき(゚д゚)!

このようなミサイル発射演習を日本の報道機関が報道する背後には、ロシアの脅威があることは間違いないです。ただ、なぜロシアがこのような演習をするのかということはよく考える必要があると思います。

それは、無論日米に対する牽制でしょう。しかし、これはロシア側からみれば、もともとあまり多くはない極東の兵員や武器などをウクライナに送っているため、極東の軍事力か手薄になっており、より日米のロシアに対する脅威が増していることを意味するものと思われます。

極東ロシア地上軍は崩壊前では、40数個師団あったものが、現在では、半数以下の12個旅団(師団の半分から2/3の規模)と2個師団合計8万人です。

これは、4分の1以下になったということになります。軍の地位も下がり、予算も多く削減され、兵員の士気は下がっています。そこからさらに、ウクライナに兵員や武器を送ったとなれば、いかに手薄な状態になったかわかります。

極東ロシアは人口が650万人程度で、ロシアにとっての最重要部分ではありません。産業は育っておらず、隣接する中国の東北部に比べたら人口は20分の1でGDPの格差はそれ以上だ。陸軍の兵力でも、瀋陽方面の中国陸軍に比べてロシア極東部の陸軍は弱体です。

そもそも、このブログで以前も述べたように、ロシアのGDPは韓国を若干下回る程度で東京都と同じくらいです。ロシアの一人あたりのGDPと中国のそれは、10000ドル(100万円)程度であり、人口は1億4千万人、中国の人口はロシアの10倍の14億人です。そのため、国全体では中国のGDPはロシアの10倍程度です。

日本と比べても、極東ロシアは経済面だけでなく、軍事的にも貧弱です。たとえ日本を攻めても、ロシア軍の揚陸作戦能力が乏しいことは、今回ウクライナの黒海岸にほとんど上陸できず、揚陸艦「サラトフ」も撃沈されてしまったことから明らかです。

撃沈された揚陸艦「サラトフ」

ロシアのASWは貧弱ではないと語る人もいますが、ではどうしてミサイル巡洋艦「モスクワ」は撃沈されたのでしょうか。ロシアにまともな哨戒能力があれば、あのようなことはなかったはすです。「モスクワ」の脆弱性が暴かれた今、ロシアの対潜哨戒能力だけが高いなどの議論は成り立たないと思います。

ロシア海軍はカムチャツカ半島に基地を置く原子力潜水艦が何隻も戦略核ミサイルを抱えてオホーツク海に潜っていますが、これは米国向けのものです。海上艦のほうはお粗末で、駆逐艦クラス以上の軍艦は7隻程度しかなく、海上自衛隊の陣容の10分の1程度です。日本海岸には海上自衛隊の主要な潜水艦基地があり、数と質でロシア海軍の潜水艦を圧倒しています。

さらに、日本の海自は対潜哨戒能力に優れているため、ロシアのASW(対潜水艦戦闘)能力ではるかにまさっています。そうして、日本の潜水艦は静寂性(ステルス性)でロシアの潜水艦をはるかに上回っており、ロシアは日本の潜水艦をなかなか発見できない一方、日本はロシアの潜水艦を発見するのは困難です。

そもそも、ロシアが最新の対潜水艦ミサイル「オトベット」を持っているとはいっても、発見できない相手には、ミサイルを発射してこれを破壊できるとは思えません。

ロシアの対潜水艦ミサイル「オトペット」

一方米国の潜水艦はすべて原潜であり、これは構造上どうしてもある程度の騒音は出ます。だから、ロシアにも発見できる可能性はあります。ただ、米国もロシアよりは対潜哨戒能力が格段に上ですし、攻撃力もかなりのものですから、先に「オトペット」を搭載している艦艇が撃沈される可能性が高いです。

仮に日露が有事になったとするとロシアの艦船は、日本の潜水艦が潜む宗谷海峡と津軽海峡は危なくて通れなくなるので、太平洋方面での作戦やウラジオストクから補給を受けるカムチャツカの基地の維持も難しくなります。

海戦では、日本はロシアを圧倒することになるでしょう。、実際もし第二次日露戦争が勃発したら「日本が海戦を制する」とロシアメディアが断言しています。

それでも、台湾有事などで中国の艦隊と連携行動を取られると、ロシア海軍も日米にとって煩わしい存在になるのだが、それも大したものにはならないでしょう。

中国は2014年のロシアのクリミア「併合」をまだ認めてもおらず、今回のウクライナ戦争でも様子見に徹している中国が台湾を併合すると言っても、ロシアはおいそれとは助けないでしょう。たとえロシア海軍が台湾周辺まで繰り出しても、日米潜水艦の格好の標的になるだけです。

ウクライナ戦争で、ロシアは西側諸国との関係を大きく悪化させています。孤立したロシアは、中国にとっては米国に対抗するための同盟相手というよりも、米国との不要な対立に中国を引き込みかねないお荷物的な存在になっています。

習近平国家主席はロシアを共産主義の先輩として尊敬の念を持って接しています。しかし彼が去るときやロシアに愛想をつかすときロシアが清朝から奪った沿海地方を含む日本の4倍の面積を持つ領土を突然返せと言い出さないとも限らないです。

ロシアのウクライナ侵攻は、戦後の国連体制をぶち壊すものです。その落とし前はロシアにつけさせなければならないです。他方、極東でのロシアは日本にとって、敵一辺倒な存在でもなありません。ロシアは「等身大」見ることが必要です。

ただ、「等身大」に見るにしても、最初から無理なウクライナ侵攻をしてしまったロシアです。日本に対して勘違いして攻撃を仕掛けてくるかもしれません。そうなっても、ロシアが本格的に北海道に侵攻することは不可能ですが、それにしても日本に損害がでることは確かです。

防衛大臣と海軍長官を率いるプーチン露大統領

さらに、以前もこのブログで指摘したように、ロシアの一人あたりのGDPは100万円前後にすぎす、日本のそれはロシアの数倍ですから、ロシア人からすれば日本人の暮らし向きは豊かです。

そうなると、ロシアの狼藉ものが、北海道のいずれかの町に上陸して、武力を用いて、日本人を脅し、金品を巻き上げたりすることもあり得ます。実際、数年前に北朝鮮の狼藉者が北海道の松前小島に上陸して、あらして、物品を強奪したという事件がありました。ロシアの狼藉者がそのようなことを未来永劫しないという保証はありません。

いずれにしても、今後ロシアが日本に対して攻撃を仕掛ければ、自分たちの被害が甚大なものになることを知らしめるためにも、特に海戦の優位性はこれからも保ち続けるべきですし、ロシアの狼藉者が侵入した場合どうするのか、その対処法も定めておき、国民が無用な被害を被ることがないよう、政府はこれからも安全保障に力をいれていくべきでしょう。

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2022年5月5日木曜日

防衛産業、基盤強化に本腰 相次ぐ撤退に危機感 政府―【私の論評】防衛費は安倍・菅両政権がコロナ対策で行った財務省の抜きの政府日銀連合軍で調達せよ(゚д゚)!

防衛産業、基盤強化に本腰 相次ぐ撤退に危機感 政府

 自衛隊の装備品を生産する防衛産業から企業の撤退が相次いでいる。

 背景には、低い利益率や調達数の減少があるが、これらの企業は有事に際しても装備品の維持・整備を担うため、撤退は日本の防衛力低下に直結する。政府は防衛産業を「防衛力の一部」と位置付け、対策に本腰を入れ始めた。


 この数年だけでも、防衛省から直接受注する主要企業の撤退が目立つ。2021年には三井E&S造船が艦艇建造をやめたほか、住友重機械工業は新型の機関銃事業から手を引いた。20年にもダイセルが航空機パイロットの緊急脱出装置の生産停止を決めた。

 撤退の理由の一つは、利益率の低さにある。現在、防衛省が発注する装備品は原価に7%程度の利益が上乗せされているが、10%を超えるとされる欧米諸国と比べると低い。納品後の利益率では、材料費の高騰や為替の影響により利益率が2~3%まで目減りしているケースもあるという。

 また、装備品の高度化・複雑化により調達単価が上がった一方、F35戦闘機などの高性能な米国製装備品の輸入が増え、国内からの調達数は減少。この結果、受注間隔が空く「お久しぶり生産」が増え、安定的な事業維持が難しくなっている。

 装備品を輸出できれば事業維持や価格抑制などの効果が期待できるが、高価で自衛隊のニーズに応じた装備品を買う国は少ない。これまでに完成装備品の輸出契約が実現したのは、フィリピンへのレーダー4基のみだ。

 こうした状況を打破すべく、防衛装備庁は企業の支援に乗り出している。防衛省は装備品の製造工程に3Dプリンターや人工知能(AI)などの先進技術を導入するための経費6億円や、中小企業のサイバーセキュリティーの脆弱(ぜいじゃく)性調査・設備導入などの費用8億円を22年度予算に盛り込んだ。

 さらに、鈴木敦夫装備庁長官の下に、装備品の利益率見直しや輸出に関するワーキンググループを設置し、具体策の検討を進めている。防衛省幹部は「以前は利益率が低くても『お国のため』と応じてくれたが、今では通用しなくなった」として、実効性のある対策が急務との認識を示した。 

【私の論評】防衛費は安倍・菅両政権がコロナ対策で行った財務省の抜きの政府日銀連合軍で調達せよ(゚д゚)!

財務省は先月20日、財政制度等審議会(財務相の諮問機関)の分科会を開き、政府が検討を進める安全保障政策の長期指針「国家安全保障戦略」などの改定に向けた課題を議論しました。経済や財政の構造強化は防衛力を充実させる観点からも重要だとの見解で一致。自民党内で広がる予算増額論を牽制しました。

財務省は「国民の生活や経済、金融の安定があってこそ防衛力が発揮できる」とし、指針などの見直しの議論では有事に備えた経済、財政の在り方も点検する必要があると主張しました。

しかし、考えてみて下さい、ロシアがウクライナに侵攻し、北朝鮮がミサイルを発射し、拉致引き会社問題は未だ解決せず、中国が台湾をいずれ併合しようとしているのは明らかであり、特に中国は毎年かなり防衛費を増額しつつある現在、今後安全保障関係の予算は増えてしかるべきであり、予算増額を牽制するというのは筋違いだと思います。

安倍元総理も、この財務省の牽制に呼応するかのように、防衛予算の拡張を訴えています。
自民党の安倍晋三元首相は21日、都内で開かれた日本戦略研究フォーラム主催のシンポジウムで講演しました。防衛予算を国内総生産(GDP)比2%まで増額すべきだとの考えを示したうえで、令和5年度については「当初予算で少なくとも6兆1700億円から上積みしていく方向性にしなければならない」と述べ、今年度当初予算に補正予算を加えた6兆1700億円以上の額を計上すべきだとの考えを示しました。

日本戦略研究フォーラム主催のシンポジウムで講演する安倍元総理

GDP比2%目標については「(アジア太平洋)地域の平和と安定へ世界各国の協力が必要だと言っている日本が予算を増やさないとなったら笑いものになる。ぜひ国家意思を示してほしい」と強調。党内にも「数字ありきでなく、必要額の積み上げでないといけない」との意見があることに触れて「政治家の発言とは思えない。財務省主計(局)の補佐みたいな発言だ」と批判しました。

「敵基地攻撃能力」の保有についても「(対象を)基地に限定する必要はない。北朝鮮を念頭に置いたとしても、TEL(移動式発射台)を全部つぶすことはできない。中枢地帯を狙っていく(べきだ)」との考えを示しました。

自民党は、ウクライナ事変を「天佑」と思うなら、今ほど国防力充実を行う好機はないといえることを自覚すべきです。これは裏を返せば、「攻勢限界点」でもあるということです。


「攻勢限界点」とは、紛争において、敵に対して優位に立った側(攻勢側)が優位を維持できる限界。 一般に、争いにあって優位を維持するためには継続的に攻撃を行わなければならない。 敵を攻撃すれば敵戦力の撃滅、士気への影響、領土の奪取などの戦果が得られ、その戦果によってさらなる優位を得られる。

ドイツはそれを理解しているからこそ、「来年から毎年、防衛費をGDP2%」、「足りない分は国債を刷って基金で対応」、「世界3位の軍事大国になる」と宣言したのです。

今以上にできるタイミングはないからです。

それに対して、自民党は、「5年以内に防衛費をGDP2%に」、「その他、戦後防衛政策を転換」としています。これを、全部実現したら100点といえるのでしょうか。この提言の内、何割が実現するのでしょうか。

極めて現実的な話をすると、財務省を説得できるのでしょうか。おそらく、財務省はこれに対して必死で、反撃に出るでしょう。そうして、説得は無理筋にされるかもしれません。


しかし、ここで発想を転換すべきです。安全保証は、国民の命・財産を守るために必要です。そもそも財務省のように「国民の生活や経済、金融の安定があってこそ防衛力が発揮できる」などと能天気なことを語っている連中には、もともな国防予算など考えられません。


ウクライナ事変が発生してからそのような呑気なことはいっておられないはずです。現に目の前で、ロシアがウクライナに侵攻したという事実があるわけで、日本よりは経済規模は小さいながらも、それなりに国民の生活や経済、金融が安定していたウクライナが、侵攻によってそれが破壊されているではありませんか。しかも、ロシアは我が国の隣国でもあるのです。

であれば、能天気な財務省を除外してでも、防衛費を工面すべきです。そうして、それにはすでに前例があります。

それは、安倍元総理が総理時代に語っていた「日銀政府連合軍」です。これは、政府が大量の国債発行によって財源調達を行うのですが、その一方で、日銀がその国債の買い入れを行う方式です。これによって政府が巨額の軍事費を創出でき、それを外国からの武器輸入ではなく、国内の防衛産業に発注するのです、これによって不況の下支えをすることもできます。まさに大恐慌スタイルの経済政策ともなります。

これと似たようなことはコロナ対策でもすでに行われています。麻生太郎財務相(当時)と日銀の黒田東彦総裁は2020年5月22日午後、新型コロナウイルスへの対応を巡り面談しその後「事態収束のためにあらゆる手段を講じ、収束後に日本経済を再び確かな成長軌道に回復させるため、一体となって取り組んでいく」との共同談話を出しました。両者が共同談話を出したのは、英国の欧州連合(EU)離脱を巡って市場が混乱した2016年6月以来3年11カ月ぶりです。政府日銀連合軍が出来上がったのはこの時のようです。下の写真は、この共同談話発表の時のものです。


このやり方をとっていましたので、当時の第二次補正予算は、税金を用いていませんでした。マスコミや似非識者の中には、何かと言えば「血税」とか「バラマキ」などという人もいますが、これは大嘘です。緊縮病で頭が狂った財務省が言うのならわかりますが、バカもいい加減にしろと言いたいです。

この政策のリスクは、インフレ率が高まることです。しかし、日本はもともとコロナショック以前から、物価目標する達成しておらず、さらにコロナ・ショックは基本的に需要蒸発した需要ショックなので、当面はインフレというよりデフレを心配すべきときでした。

コロナ感染症が発生してからの、安倍政権と菅政権では主に「政府日銀連合軍」によってコロナ対策の資金を調達しました。両政権のコロナ感染が発生してから、菅政権が終わるまで、合計100兆円の補正予算を組みました。

これは、高橋洋一氏が語っていた、日本の需給ギャップに相当する額でした。そうして、これは大成功でした。菅政権は、コロナ対策においては、病床の確保に関しては、日本固有の鉄の三角形のなかでも、医療村の妨害にあってうまくはいきませんでしたが、脅威的にワクチン接種の速度を高め、結局医療崩壊も起こすことなく、なんとか収束する方向にもっていきました。

ちなみに、経済対策で最も重要な指標は失業率ですが、今年の3月の失業率は2.6%でした。これは、実は菅政権の成果です。


失業率は典型的な遅行指標です。景気に対し遅れて動く経済指数のことです。 内閣府が毎月作成している景気動向指数は、景気に先行して動く先行指数、ほぼ一致して動く一致指数と遅行指数の3本の指数があります。 景気の現状把握には一致指数、景気の動きを予測するには先行指数、事後的な確認には遅行指数が用いられます。

株価などは典型的な先行指標です。失業率は典型的な遅行指標であり、およそ半年前の景気の状況を表しているとされています。

3月の半年前というと、昨年の9月であり、岸田政権が成立したのは10月ですから、これは菅政権の成果によるものです。

上の表をみると、安倍政権、菅政権を通じて、コロナに見舞われてもあまり失業率が上昇していないことがわかります。これは、日本には米国等にはない雇用調整助成金があることと、安倍・菅両政権が政府日銀連合軍で巨額の補正予算を組み対策を行ったためです。

コロナ対策に関しては、国民の生命に直接関わることなので、財務省もこうした政府日銀連合軍の動きに対して真っ向か批判することもできなかったのでしょう。

こうした実例もあるわけですから、防衛費の増額に関しても、コロナ対策と同じどころか、場合によっては、コロナ対策よりも国民の生命や財産を守るために重要なわけですし、ウクライナの問題もあることから、政府日銀連合で、資金を調達すれば、これに対して財務省も真っ向からは否定できないでしょう。

夢々、財務省を説得するなどということはすべきではありません。ただ、安倍・菅両政権ではそれも可能だったかもしれませんが、財務省管理内閣岸田政権は無理かもしれません。それは、岸田政権の補正予算か2.5兆円に過ぎないことでもわかります。

それでも、まだま支持率が高い岸田内閣です。マスコミに守られています。しかし、そのようなものまるで信じられないです。なぜなら、マスコミは持ち上げて落とすのが大好きだからです。

国会でおとなしくしてさえいれば政権は維持できるし、参議院選挙に勝てばやりたい放題だし。岸田政権中枢はそう考えているのでしょうが、それを望まない勢力も動き始めています。

公明党が選挙協力に難色を示している件もありますし、それに、支持率が下がったタイミングで安倍、菅という2人の元首相が『岸田じゃダメだな』と握手したら、その瞬間に長期政権など夢で終わることになるでしょう。その「タイミング」は意外に遠くないのかもしれないです。

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2022年5月4日水曜日

ロシア、9日に「戦争宣言」か 大規模動員の可能性も―【私の論評】ロシアの宣戦布告でまたプーチンの誤算が始まる(゚д゚)!

ロシア、9日に「戦争宣言」か 大規模動員の可能性も

プーチン大統領

 米CNNテレビは3日までに、米欧の政府関係者の見方として、ロシアが早ければ今月9日にもウクライナに「宣戦布告」する可能性があると報じた。同日はロシアにとって第二次大戦の対ナチス・ドイツ戦勝記念日にあたる。これまで「特別軍事作戦」と称してきたウクライナでの軍事行動を「戦争」に格上げし、予備兵投入などの総動員をかける恐れがあるという。

 報道によると、ロシアのプーチン大統領が正式にウクライナ侵攻を戦争と宣言することのより、国内で予備兵を投入したり徴兵したりし、総力戦に乗り出すことが可能になるという。

 2月下旬の侵攻開始から露軍では人員や軍備に甚大な損失が出ており、兵力などの動員強化が「是が非でも必要」になっていると米欧関係者は分析している。

 これまで米欧の軍事・情報筋では、ロシアが5月9日の節目に何らかの「勝利」を示そうとしているとの分析があった。緒戦でウクライナの首都キーウ(キエフ)の攻略に失敗した露軍は、東部や南部に軍事行動の軸足を移している。

 ただCNNは、プーチン政権が9日に、東部ドネツク、ルガンスク両州の占領地域の併合や、東部の激戦地マリウポリの完全掌握を宣言する選択肢も残されているとしている。

ロシアの戦勝記念日をめぐっては、英国のウォレス国防相が先週、英ラジオ局の番組で、宣戦布告して総動員をかける可能性があるとの見方を示した。

【私の論評】ロシアの宣戦布告でまたプーチンの誤算が始まる(゚д゚)!

ロシアの相次ぐ方針転換は、対ウクライナ戦争が計画通り進んでいないことの裏返しといえます。早期にウクライナのゼレンスキー政権を屈服させることはできず、首都キエフを陥落させることもできず、南部からの大規模な部隊上陸もできず、ドンバス地方での戦車部隊による大規模攻勢も計画通りには進んでいません。


ウクライナに対する米欧からの重火器を含む武器支援と情報提供、ウクライナ軍の士気の高さが背景にあるのでしょう。しかし、プーチン大統領が「負け」を認めることはできません。国内で政治的求心力が低下し、独裁権力を維持できなくなる恐れがあるためです。5月9日に「戦争宣言」をして総動員をかける場合、背水の陣を敷くつもりでしょう。
国際社会で使われている戦争の始まりは宣戦布告。戦争の終わりは講和条約です。

 宣戦布告:戦争の開始
      戦争=戦闘+占領
 講和条約:戦争の終了

戦争は宣戦布告で正式に戦争が開始されます。戦争の中身は戦闘だけではなく占領も含まれています。

宣戦布告に関して、倉山満氏は現在ではそれが禁止されているがために、紛争と戦争の区別がつきにくくなったことを説明しています。そのた「戦争」は根絶されたとも言えるそうです。その代わり、すべて事変になったのですが、事変は現代ではほとんど使われず、「紛争」と言い換えられているそうです。これについては以下のリンクをご覧になってください。
宣戦布告がないのに、軍事衝突はある。これは紛争か、戦争か/倉山満
倉山氏は、’45年国連憲章で、宣戦布告は違法とされたので、以後は現在まで宣戦布告を行った国は存在しないとしています。「戦争」は根絶されたとも言えるとも語っています。その代わり、すべて事変になったが、ただし、事変は現代ではほとんど使われず、「紛争」と言い換えられているとしています。

また、"外交戦で及び腰なのがドイツとフランスだ。経済制裁にも、仏独は米英と比べ慎重だった。だからゼレンスキーは米英には満腔の感謝を示し、仏独では嫌みを交えつつ激烈な要求を繰り返した。日本でのオンライン演説は中間よりも米英寄りで、ご丁寧に「アジアのリーダーとしてロシアを制裁してくれてありがとう」とまで言って感謝してくれた。  

さて、これをプーチンが聞いたら、どう思う? 日本は、形式上は中立だが、既にウクライナの味方をしているのだ。覚悟すべし"とも語っています。まったくそのとおりだと思います。

確かに、先進国などは戦後宣戦布告をして戦争はしていないようですが、第二次世界大戦後に宣戦布告による戦争している国はあります。

ロシアは、南オセチア紛争 (2008年)において、 2008年8月9日 宣戦布告(戦争状態を宣言) を ジョージア に対してしています。ロシアが宣戦布告して、戦争したのは戦後これだけです。

ただ、先進国等はしていないことや、ロシアが現在も国連常任理事国であることから、この宣戦布告は対外向けという寄りは、ロシア国内向けという性格が大きいのではないかと思います。

ロシアがウクライナに宣戦布告をするということにより、国内を戦争体制に持っていけば、ロシア国内での予備役の動員が可能になり、軍事への優先的な物資の振り分けも可能になります。あるいは、もう既にやっていますが、情報統制なども含めて本格的に戦時体制に持っていくことが大きな目的としてあると考えられます。。

現状のロシアは、ウクライナで戦争をするための物資や人員が全く足りていません。 ウクライナと国境を接する旧来からのロシア領の方にも攻撃が始まっているという状況もあり、本格的に兵員を大量増員しないと押し返される可能性も出てきています。

そうでなくても西側諸国から、ウクライナに対して攻撃型の兵器が大量に提供されるような状況になり、ロシアとしても本腰を入れなければならなくなってきました。

ドイツがウクライナに対して、対空戦車「ゲパルト」という、自走高射機関砲の引き渡しを発表しました。またポーランドも200両ほどの戦車を提供するそうです。 

ゲバルト対空自走砲

これまではどちらかというと防御型の兵器で、向こうが攻めてきたときに撃破するための対空砲などが主体だったのですが、戦線を押し返すような武器が提供されるようになってきたのです。

開戦当初は「3日で落ちる」と言われていたキーウですが、結局落とすことができず、その兵力を東部戦線に送ったとされいますが、この東部戦線も膠着状態になる可能性が高かくなってきました。それに加えて、これまで中立的な立場を取ってきたスイスが、ロシアに対する経済制裁に向けて動いたということ、スウェーデンやフィンランドなども、NATO加盟を具体的に検討しているということで、ロシアにとっては誤算続きなのだろうと思います。

怖いのは、ロシアが、戦争状態を宣言することで、場合によってはウクライナ以外の国々への侵攻も可能になるということです。特別軍事作戦であれば、「ドンバス地方のロシア系住民の保護」という名目だったのですが、ウクライナ一国を対象にするという状況になります。 これに与する国も攻撃できるという理屈になります。

ウクライナ以外の国という意味で言うと、既にウクライナ西側のルーマニアとの間にあるモルドバ、特にウクライナとの国境にある「沿ドニエストル共和国」の辺りに向かって進軍し、「モルドバも獲る」というような話も出てきています。

当面のポイントになるのが、重要な港であるオデッサに対する攻略戦だと思います。すぐ北側はモルドバですので、そこを攻略するためには、モルドバも含めて攻撃することになると思います。 

黒海を大きく開いた口として、口蓋垂の部分をクリミア半島として見ると、その左奥にオデッサがあります。その先にモルドバがあるので、クリミア半島辺りから西に攻めていくと、全部獲ることができます。 そうするとウクライナの海岸線が全部ふさがってしまいますから、船舶による物資の供給ができなくなります。ウクライナに対しての供給を遮断することにもなります。

ウクライナはもともと穀物の輸出が盛んなところでした。輸出経路として、南側にある港から黒海を通り、ボスポラス海峡を渡って地中海に出て、そこから全世界に輸出しています。この交易ルートも遮断しようというのです。これは、「経済的な打撃を与える」ということも大きな狙いとしてあると思います。 

アゾフ海をロシアの配下にすれば、黒海がロシアの影響力下に置かれることになります。 そうすると黒海艦隊も含めて安泰になります。 加えて不凍港の確保にもなります。 これはロシア帝国の時代からのロシアの悲願でもあります。

ただ、プーチンは今までも多くの誤算をしています。この目論見どおり事が運ぶかどうかは未知数です。ロシアがウクライナに宣戦布告すると、これはロシア対ウクライナの戦争になります。

そうするとどうなるかといえば、今までウクライナはあくまで、ウクライナ国内でロシア軍と戦闘をしていたのですが、今度はウクライナがロシアに対して攻撃できるということになります。

かといって、ウクライナが戦線を拡大して、モスクワまで侵攻するということはないでしょうが、ウクライナがロシア国内の物資貯蔵所などを攻撃することは十分に考えられるわけで、現在のウクライナ軍は、NATO諸国の情報を活用できる状況にあり、そうした場所をピンポイントで正確に攻撃できます。

さらに悪いことには、ロシアには制裁により、様々な兵器の部品が入手できにくい状況になっています。なにしろ、ロシアは半導体はもとより、ボールベアリングですら精巧なものは自前で製造できません。工作機械は日本、ドイツが独壇場です。戦車や戦闘機の製造はおろか修理も、徐々にできにくい状況になりつつあります。

RPG-7(奥) とAK47(手前)

これが、またプーチンの誤算になりかねません。そうなると、いくら戦時体制で多くの人員をウクライナに派遣できるようになっても、ロシア軍の大部分は、カラシニコフ自動小銃(AK-47)と手榴弾と、せいぜいRPGミサイルで戦わざるを得ないことになるかもしれません。これでは、中東の民兵と同程度での戦力であり、とても戦争に勝てません。

それに現代の戦争は、様々な知識を必要とします。現在の戦争は、一昔前のスコップで汗まみれで塹壕をほって、小銃を構えるというのとは随分異なります。ロシアが国内で戦時体制を構築して、多くの人を戦争に参加させたにしても、その多くはあまり訓練も受けていない予備役か、素人です。あまり意味はありません。かえって、足手まといになるどころか、徒に大きな犠牲をだすことになりかねません。

ただ、そうなると戦術核や、化学兵器も使うかもしれません。その時は、ブーチンもロシアの現体制も崩壊することになるでしょう。

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2022年5月3日火曜日

財務省資料「防衛」を読んでみた:コスパだけで防衛を語る愚かしさ―【私の論評】財政の専門家集団ではなく、省益を追求する政治集団に成り果てたポンコツ財務省(゚д゚)!

財務省資料「防衛」を読んでみた:コスパだけで防衛を語る愚かしさ


財務省の配布資料「防衛」(「歳出改革部会(令和4年4月20日開催)資料3」)が防衛関係者の反発を招いている。ちなみに、上記部会の委員名簿には、著名なエコノミストの名前が並ぶものの、防衛の専門家は一人も見当たらない。

資料は冒頭、
政府として、新たな国家安全保障戦略、防衛⼤綱、中期防衛⼒整備計画の「三⽂書」を策定しているところ。新たな「三⽂書」は、防衛・外交等に関するものであるが、この中で5か年間の防衛費の総額を⽰し、これに基づき各年度の予算を精査・計上することになるため、「予算」の⾯からも極めて重要な位置付け
と宣言。素人集団ながら、「新たな国家安全保障戦略」に物申しつつ、こう宣う。
防衛⼒は、国⺠⽣活・経済・⾦融などの安定が必須であり、財政の在り⽅も重要な要素。特に、三⽂書の⾒直しは、(中略)我が国財政(予算)全体への影響も⾮常に⼤きい。それゆえ、国⺠の「合意」と「納得」を得られるよう、議論を進めければならない。(中略)このような前提に⽴った上で、(中略)根本的な論点について、正⾯から議論をしていくべきではないか
防衛関係費について国⺠の合意と納得を得られるよう、真正面から議論すべきことに異論はない。だが、あまりに身勝手な「前提」ではないだろうか。なるほど「防衛⼒は、国⺠⽣活・経済・⾦融などの安定が必須であり、財政の在り⽅も重要な要素」ではあろう。

だが、こうも言えよう。国⺠⽣活はもとより、経済・⾦融、財政いずれの分野においても、平和と安定が必須である。平和を守り、安定を維持するための防衛力こそ必要不可欠であると。万が一、わが国が外国に侵略されれば、どうなるのか。ウクライナの現状を見るまでもあるまい。経済や⾦融、財政などを名目に、防衛分野の歳出を「改革」するなど本末転倒ではないのか。

資料は「我が国のような海洋に⾯した国においては、相⼿国軍の上陸・占領の阻⽌を重視した防衛態勢を構築することが重要」と謳ったうえで、「イギリスの防衛戦略」として「近年陸軍を削減しており、更なる削減⽅針を公表=⾃国の採る戦略・戦術に即した防衛態勢の⾃⼰改⾰を実施」とも書く。要は、陸上自衛隊の削減と防衛省の自己改革を促したに等しい。

「防衛装備の必要性に関する説明責任」と題した次のページも問題だ。

「⼀部の防衛装備に関して、環境変化への対応や費⽤対効果の⾯をはじめとして様々な課題を指摘する声もある。こうした課題を抱える装備品に引き続き依存することが最適と⾔えるのか、また⼤きなコストを投下しなければならないのか、防衛⼒を強化していく上で、その必要性について改めて国⺠に説明を尽くす必要があるのではないか」とのリード文を掲げ、「イージス・アショアの洋上化等(迎撃ミサイル)」と「陸上戦⾞・機動戦闘⾞(地上戦闘)」を取り上げている。

前者のアショア洋上化について【説明を求める声】を、①能力、②運用、③コストのそれぞれの面から並べ立てたうえで、「コスト面から見た非対称性」と題して、「弾道ミサイル防衛に係る経費」約2兆7,829億円注1)に加えて「アショア及び洋上化に係る経費」1,842億円以上注2)を明示したうえで、「弾道ミサイル(北朝鮮)3億円~10億円程度/1発(短距離~中距離)」と比較している。

要するに、弾道ミサイル防衛はコスパが悪いと言いたいわけだ。素人の皮算用にも程がある。北朝鮮の核ミサイルを迎撃するための装備品なのだ。コスパを語るほうが、どうかしている。そもそも経済合理性で軍事を語ること自体おかしい。しかも後者の北ミサイルは「(出所)報道情報による(注)⾦額は推定」ときた。バカも休みやすみ言え。

後者の「陸上戦⾞・機動戦闘⾞(地上戦闘)」も同様である。

「物量で勝るロシア軍に対し、ウクライナは⽶国製の携帯型対戦⾞ミサイル「ジャベリン」等を使⽤して激しく応戦。多くの戦⾞・装甲⾞の破壊に成功。戦⾞や機動戦闘⾞と⽐較して、ジャベリンは安価な装備品であり、コスト⾯において、両者はコスト⾮対称。物量で勝る敵⽅に対抗するために、対戦⾞ミサイル等を活⽤することはコストパフォーマンスを⾼める可能性」と明記。ここでも「コスト⾯から⾒た⾮対称性」と題し、陸上自衛隊の「戦⾞・機動戦闘⾞(R4予算)10式戦⾞:約14億円 / 1両」、「16式機動戦闘⾞:約7億円 / 1両」を、「ジャベリン(⽶国製)」の「ミサイル:2300万円程度 / 1発」「発射ユニット:2億7000万円程度 / 1機」と比較している。

要するに、陸自の戦車はコスパが悪いと言いたいわけだ。百歩譲って、そうだとしても、かつて「51大綱」で約1200両(定数)だった陸自の戦車が現大綱で300両まで減っている。上記はさらに減らすべき理由になっているだろうか。さらに言えば、各国がウクライナに戦車を提供している現状が、エコノミストらの眼には入らないようである。

続く「新たな装備品・運⽤法導⼊に当たって」と題したページでも、「特に、⻑期間に渡って、多額の開発・運⽤コストが⽣じかねない」として「次期戦闘機」と「敵基地攻撃能⼒」を指弾し、「被我のコスト負担のバランスはどうあるべきなのかといった点を含めて多⾯的に検証し(中略)説明責任を果たすべきではないか」と訴えている。

わが国は核保有国に囲まれている。すでに四桁の核ミサイルの射程下にある。軍事・防衛は国家の主権と、軍人(自衛官)を含む国民の生命にかかわるプライスレスな世界だ。なんでもかんでも「被我のコスト負担のバランス」で測れると思ったら、大間違いである。



注1)(直近3年度の予算(※))※ミサイル取得費⽤に加え、防衛に必要となる整備費⽤や訓練経費等を含む。弾道ミサイル関係の予算は、H16〜R4の総額で約2兆7,829億円

注2)「イージス・アショアの契約額:1,784億円」。「レーダーの洋上化経費:58億円(R4年度予算) -艦船建造や発射試験等のため今後も多額の費⽤が⽣じる可能性」

【私の論評】財政の専門家集団ではなく、省益を追求する政治集団に成り果てたポンコツ財務省(゚д゚)!

この資料「防衛」はネット上で公開された直後はマスコミも含めて見向きもされていなかったのですが、突然脚光を浴びました。そのきっかけは、ヤフーニュースで軍事解説をしているライターのJSF氏による1日未明のツイッター投稿で拡散されたことでした。JSF氏のその後のツイートによると、別の人物が提起した内容を拡散したものだそうです。

ただ、JSF氏がツイートしなければ、これほど拡散はされなかったかもしれません。

 ネット上に公開している資料を引き合いにして「日本の財務省は防衛費を抑制しようと、当のウクライナが「戦車を寄越せ」と要求していることを意図的に無視して、自衛隊も対戦車ミサイルで戦えと言い出した」と投稿しました。

この投稿は1日でリツイート数が1万件を超えるなどの反響を呼び、瞬く間にネット上で拡散しました。

一連の騒ぎには、昨今のウクライナ情勢で活躍中の専門家らも反応しました。日米の安全保障が専門の小谷哲男・明海大教授は「戦車は高いのでジャベリンの方が費用対効果が高いとか、北朝鮮の弾道ミサイルの迎撃は核搭載の可能性は無視して費用対効果が低いとか、論点満載」とツイートしました。

防衛副大臣を経験している自民党の長島昭久衆院議員は小谷氏の投稿に反応し、「この財務省文書を完膚なきまでに論破する必要がある」と怒り心頭のツイートをしています。

自民党の細野豪志衆院議員は「財務省の資料のジャベリンが話題になっているが、彼らの仕事は予算を枠内に収めること。国家的な危機における判断基準は全く次元が異なり、その判断こそが政治家の仕事だ。ここで政治が財務省に負けるようでは話にならない」と、政治判断の重要性を指摘しました。

ウクライナ戦争で有名になったジャベリンン


財務省は「一定の知識を持つ専門家集団」というイメージがありますが、それがまるで政治集団のようになってきています。

上記の「防衛」に関することもそのようですが、財政再建にしても、そのような傾向が目立ちます。

財務省は従来から、「緊縮財政」や「消費増税」の必要性を訴えていますが、具体的になぜ必要なのか理路整然とした説明をしていません。「しない」というより「出来ない」と言った方が正確なのかもしれないです。

数量政策学者でもある、高橋洋一氏が財務省で働いていた頃、財政がどのように大変なのかをきちんと説明しようと独力でバランスシートを作ったそうです。

当初、それは上層部の圧力により外部には出せなかったのですが、内部資料として小泉総理大臣(当時)にそれを見せたところ「そういうのがあるのならば出せばいい。」という一言を頂いたそうです。

そしてそのバランス・シートは現在でも財務省内で毎年使われています。そもそも財務諸表がなくて財政が語れる訳がないのです。

日本銀行も入れて政府と日銀の連結(統合政府)ベースでは、高橋洋一氏が独自に作ったバランスシートを見れば債務超過などないことは明らかであり、財政の危機や国債の暴落などあり得ません。

高橋洋一氏は30年前から財務省の中でバランスシートの重要性を語っていたのですが、「確かにそうかもしれないが、そんなこと言える訳ないだろう」ということばで終わったそうです。

都合の良いことも悪いことも財務諸表規則に基づいて開示するということが基本であるにもかかわらず、財務省にはそういう考えがないのです。現在の財政状況を具体的に言うと、日銀と政府の連結で、資産1500兆円、負債は国債1500兆円と銀行券500兆円です。

銀行券が無利子無徴税権が簿外資産にカウントされているという事と、無利子無償還の日銀券を負債とし、国債を資産とする日本銀行のバランスシートを組み込むと、500兆円の資産超過になります。実際にマーケットもそれを反映していて、いくら財務省が財政危機と煽っても金利は上がらないし、円の大暴落もしないのです。

矢野財務次官

にもかかわらず、財務省は財政危機を煽り、機会さえあれば消費税増税を煽るわけです。合理的説明なしにこれを言うのですから、これは専門家的立場から言っているのではなく、政治的言動であるとしか受け取りようががありません。では、何のために政治的な発言をするかといえば、それは省益のためでしょう。

しかし、財務省は本来政府の下部機関にすぎないわけですから、このような政治的発言はできないはずです。政治的発言ができるのは、本来政治家であるはずです。なぜなら、政治家は選挙で国民から選ばれていますが、財務官僚はそうではありません。

さらに、政府が国家安全保障戦略、防衛⼤綱、中期防衛⼒整備計画の「三⽂書」を作成しているわけですから、財務省とししてはこの三文書をもとに専門家的立場から、防衛予算をりつあんするのが仕事です。

無論、政府に対して助言などはできますが、財務省の配布資料「防衛」を作成し、しかもそれをサイトで一般公開したり、その資料を持参して各方面で説明をして歩くというような政治活動をするということは、本来ならば越権行為ともいえるでしょう。

なぜなら、財務省は政府の財務方針に従い、専門家的立場からどのような財務的手段を選ぶのかに責任を負うのであって、防衛に関しては全く責任を負う立場にはないからです。

特に、財務省が財政に関してさえも、越権行為をしているのに、防衛分野にまでこのようなことを許せば日本はとんでもないことになります。これが批判されずに放置されれば、エネルギー・食糧・その他の重要な分野に踏み入って政治的発言をすることを許すことになりますが、それはもう実はすでに行われていることです。

矢野康治事務次官と、国会で談笑する麻生太郎財務相(当時)。(2021年2月)

多くの国民があまり知らないだけで、それはすでに行われています。今回、防衛分野でそれがたまたま表にでてきたというだけです。

ただ、こういうことは外国でもある程度はありますし、日本の他の省庁でもそのようなことはありますが、日本の財務省はその度合がきつすぎるといえます。

この問題を自分の働く会社などの組織にあてはめて考えてみてください。財務部や経理部が会社全体ではなく、コストの観点からだけものを考えて会社の様々なことに口を出したらどうなるでしょうか。

会社には社長をはじめ、取締役もいますが、それらの人々を差し置いて、財務部長等が権力を持ち、社内のあらゆる部分に影響力を行使した場合、それもコストの面からのみ行使した場合、会社はどうなるでしょうか。おそらく崩壊します。なぜなら、コストだけを考えたら、新人採用も、設備投資もしないほうがよいことになるからです。

ただ、政府の場合は、各省庁の職員の給料など税収などで賄われているので、倒産しないだけです。しかし、この状況はいずれ是正されなければなりません。

そのためにも、財務省のこのような政治的な振る舞いに関しては、私達も絶対に許さないという構えで世論を形成していく必要があると思います。

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2022年5月2日月曜日

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ウクライナの教訓


自衛官は、日本と国民を守るために日々任務と訓練を続ける

 ロシアによるウクライナ侵攻の教訓として、多くの論者が「自分の国は自分で守る」重要性を語る。しかし、不安が募る。この国は大丈夫なのかと。

 NHKはじめ地上波には、ウクライナの応戦を批判する大学教授や弁護士コメンテーターが連日出演する。BS放送も例外でない。

 東大先端科学技術研究センター専任講師の小泉悠氏が、男性司会者に次のように問うた。「自国が侵略されたときに、国民が抵抗するのが、そんなに不思議ですか」(3月16日放送)。後は推して知るべし。

 問題はメディアだけではない。当初、在日ウクライナ大使館がツイッター上で、「自衛隊など専門的な訓練の経験を持つ人」を対象に「義勇兵」を募ったが、日本政府は「ウクライナ全土に退避勧告を発しており、目的のいかんを問わず渡航を止めていただきたい」と冷や水を浴びせた。

 ならば、現地で取材を続ける日本人特派員らはどうなのか。なぜ、NHKにも「渡航を止めていただきたい」と言わないのか。

 あるいは、ウクライナが組織した「ITアーミー」への〝リモート義勇兵〟なら許されるのか。それとも、日本政府はサイバー空間での〝参戦〟すら止めるのか。あるいは平和憲法がそれを許さないのか。

 日本には、米電気自動車大手テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)らと交渉した、ウクライナのミハイロ・フェドロフ副首相(兼デジタル担当)のような政治家もいない。それどころか、パソコンも使えない高齢者が平然とIT担当相に就く。

 最大の問題は、命と平和の大切さだけが語られる日本の現状だ。

 例えば、「人間は避けることのできない死を避けようとして、避けることのできる罪を犯す」(アウグスティヌス)とは、決して考えない。

 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は英議会での演説で『ハムレット』を引き、「生きるべきか、死ぬべきか」と問うた。だが、後に続く以下のセリフを、多くの日本人は知らない。

 「どちらが男らしい生きかたか、じっと身を伏せ、不法な運命の矢弾を耐え忍ぶのと、それとも剣をとって、押しよせる苦難に立ち向い、とどめを刺すまであとには引かぬのと、一体どちらが」(シェークスピア『ハムレット』新潮文庫)

―いまは「男らしい」ではなく、「高貴な」と訳した方がよいかもしれない。

 いずれにせよ、英国エリザベス朝時代を代表する作家と、(国際法上許された自衛権行使すら批判する)令和日本の学者やコメンテーターとの乖離(かいり)は本質的である。

 「戦争反対」しか言えない連中は男らしくない。いや、高貴でない。つまり卑しい。

 「自分は守るが他人は助けない」。命が助かれば、それでよし…。何とも卑しい。少なくとも私は剣を取り、後には引かぬ。 =おわり


■潮匡人(うしお・まさと) 評論家・軍事ジャーナリスト。1960年、青森県生まれ。早大法学部卒業後、航空自衛隊に入隊。第304飛行隊、航空総隊司令部、長官官房勤務などを経て3等空佐で退官。拓殖大学客員教授など歴任し、国家基本問題研究所客員研究員。著書・共著に『安全保障は感情で動く』(文春新書)、『誰も知らない憲法9条』(新潮新書)、『尖閣諸島が本当に危ない!』(宝島社)など。

【私の論評】ねじ曲がった憲法解釈から生まれた「すべての戦争に反対」という考えは根底から間違えている(゚д゚)!

日本でのウクライナ戦争への反応で目立つのは「戦争反対」の声です。村上春樹氏のような著名な作家までもが「ウクライナでの戦争に反対!」と主張する活動を展開しています。

日本での「戦争反対」の源流をたどれば、日本国憲法の異様な解釈にぶつかるでしょう。憲法9条は日本に対して戦争を禁じ、交戦権を否定し、戦力の保持をも禁止していると思い込む人が多いからです。

しかし、この考えは、昨日も指摘したように、根本的に間違いです。

国連憲章にも明示され、パリ不戦条約にまで遡る「国際紛争を解決する手段としての戦争の放棄」を憲法典に盛り込んでいる国は、日本以外にも多数あり、それらの国々は軍隊を持ち、無論自衛権を放棄していません。日本だけが特異なねじ曲がった憲法解釈をしているだけです。これはもうやめるべきです。

なぜそのこのようなことがほとんど気づかれないで、日本は自衛権を放棄しているとか、自衛隊は違憲であるなどという間違った憲法会社が日本には横行しているのでしょうか。

それは、無論昨日も掲載したように、日本の根性がひねまがり、頭がいかれた憲法学者らの責任も大きいことでしよう。

しかし、それだけではないです。日本の主流といわれる憲法学者らの、憲法解釈が、異常であることなど、少し他国の憲法をみてみたり、国連憲章やパリ不戦条約をしらべてみれば、誰もが容易に理解できることです。

しかし、多くの人、特に上の記事にもある、「戦争反対」しか言えない卑しい連中は、憲法学者のねじ曲った憲法解釈を鵜呑みにして、何ひとつ疑うこともなく「国民として、とにかく戦うことは一切、禁止というのが日本国憲法の真髄である」と思い込み、「戦争反対」と叫ぶための根拠としているのです。


この「戦争反対」の概念には「平和」という言葉が一体となって、からんでいるようです。平和のために戦争を止める、その平和こそ人類、あるいは人間にとって最高至上のあり方なのだ、というわけです。現在の日本で作家の村上春樹氏のような人たちはそのような日本の基準をウクライナにも当てはめ、「戦争反対」を叫んでいるのでしょう。

しかし、ウクライナに対して、「戦争反対」、つまり戦うことを止めろと、号令をかければ、自国の防衛に命を賭けるウクライナの国民、あるいは軍人に対して、ロシアへの抵抗をもう止めろ、と命じることに等しいです。

現在多くの国々の人々が、ウクライナ情勢に関して反対しているのは戦争自体に反対ではなく、ロシアの侵略です。ロシアによるウクライナへの侵攻です。侵攻とは、挑発もされないのに、先制武力攻撃を行うことです。プーチンは色々と言い訳をして「ウクライナが先に挑発してきた」と言っているが、国際社会の圧倒的多数は「それは挑発と認められない」と評価しています。まず起こるべき声は「侵攻」のはずです。

この侵攻に対して、日本流に「戦争はよくないから」と非戦を実行すれば、戦争をためらわないロシアの意図どおりになってしまうだけです。

ウクライナが戦いを止めれば、ウクライナという国家が失わてしまいます。国民の自由や独立、自主性、主体性、そして国家としての主権もなくしてしまうのです。戦争さえなければ、それでもよいのでしょうか。無抵抗、そして全面降伏となる戦いの停止を求めることは、当事者からすればあまりに無責任です。

ウクライナの国家も国民もロシアの侵略に直面して、戦ってその侵略を防ぐという道を選んだことは明白です。にもかかわらず、遠い日本にいて、戦いを止めろ、と声をかけるのは、あまりに無責任な言動だといえます。浴びせるべきはロシアであり、プーチンであり、それも「戦争反対」ではなく「侵攻反対」であるべきです。

ウクライナ軍 女性兵士

日本は、戦後の「戦争反対論」や「平和主義」を再考し、「戦争反対」などの言動は破棄すべきです。なぜなら日本の「戦争反対」や「平和を」という主張はすべての戦いを否定するという立場に立脚しているからです。

しかし国家であろうとも、人間の集団や個人にしても、生存していくうえで、その生存自体への危機や脅威とも戦ってはいけないとなれば、それは命を脅かすものに対して格好の理屈、理由を与えるるだけ、あとは死を待つのみです。

人間が自分を守るために戦う。これは国ならば個別の自衛権の発動です。人間が愛する他者を守るために戦う。これは国ならば集団的自衛権の発動となります。人間はさらに正義を守るためにも戦う。これが同盟の考え方であり、国連の平和維持活動の実践でしょう。

しかし日本の憲法9条は、ねじり曲がった憲法学者の解釈により、上記のいずれの戦いも禁じているように解釈しています。これは無理もないかもしれません。日本国憲法の異常な解釈は、その目的のために作られたからです。そうして、米国はそのことを知りながらも、日本を弱体化するという立場から、それを許容し放置してきたのだと思います。

しかし、このような認識は空想に過ぎず、世界の現実には戦って守るしかないという状況がいくらでもあることは、あまりに明白です。

しかし、いまやウクライナに「戦わなければ滅亡する」という現実の状況が出現し、日本はそれでもなお「戦うな」と叫ぶべきなのでしょうか。そんな馬鹿な話があるはずはありません。それを認めれば、中国やロシア、北朝鮮も大喜びでしょう。

憲法解釈を変更すれば、そもそもこのような要件など必要ない

特に、今の日本では左翼だけではなく、いわゆる保守層の中にも日本国憲法は「すべての戦争」を禁じていると解釈しているのか、解釈しているようにみせている人たちも大勢います。

そのように解釈している人たちは、結局こと戦争においては、左翼の人とあまり変わりないと思います。

そのように解釈しているようにみせかけている人たちは、何らかの意図があるのでしょう。それは、おそらく実質的米国が作成した「日本国憲法」が気に入らないのでしょう。その気持は良くわかります。そうして「日本国憲法」が自衛まで禁じているということにして、憲法を根本的につくり変えたいのでしょう。

もし憲法改正ではなく、憲法解釈の変更によって自衛権の正当化、自衛隊の合憲化が実現してしまえば、日本国憲法改正の論議が止まってしまい、日本人の手による「日本国憲法」が成立する可能性がなくなってしまうと危惧しているのかもしれません。

ただ、それは心配しすぎかもしれません。現行の日本国憲法は、実質的に米国によって作成されたこと、憲法9条は、日本独自のものではなく、これは国連憲章にも明示され、パリ不戦条約にまで遡る「国際紛争を解決する手段としての戦争の放棄」を憲法典に盛り込んでいるだけであり、これは他の国でも憲法典に盛り込んでいることを訴えれば、多くの人の思い込み、思い違いを是正でき、意外とそのほうが憲法改正の早道になるかもしれません。

それよりも何よりも、憲法解釈を国際法を根拠とした、国連憲章にそったものにしなければ、日本国憲法は「すべての戦争に反対」しているという思い込みは、これからもはびこり、日本国の存立自体を危うくし、憲法論議どころではなくなるかもしれません。

それに新憲法に、まかり間違えて「すべての戦争に反対」的なものが明確に盛り込まれてしまえば、日本は確実に滅びます。



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