2022年9月14日水曜日

トラス英首相の積極財政路線 日本との経済面では緊密関係 安全保障でも対中包囲網の強化を―【私の論評】本格的な「地政学的戦争」の先駆者英国と日本は、これからも協力関係を深めていくべき(゚д゚)!

日本の解き方


リズ・トラスト英首相

 英国でリズ・トラス首相が誕生したが、中国やロシア、欧州連合(EU)などとの関係は変わるのか。日本はどのように連携すべきか。

 就任したばかりのトラス氏は、早速1500億ポンド(約25兆円)規模のエネルギー費対策を発表した。

 トラス氏は保守党の党首争いで、リシ・スナク前財務相と争ったが、スナク氏が財務相経験者らしく緊縮路線だったので、党首争いの流れのまま、積極財政路線を貫いたのだろう。

 具体的には、家計のエネルギー料金の上限を2年間、年2500ポンド(約42万円)程度に抑える計画を発表した。

 家計の年間エネルギー代の平均は4月に54%値上がりして1971ポンド(約33万円)となり、10月には80%上昇して3549ポンド(約59万円)に達する見通しだった。今回の措置は4月よりは高いが、当初予定より引き下げる形になっている。

 英国では、インフレがひどい状況になっている。インフレ率は7月時点で10・1%と1982年2月以来の高水準だ。ロシアによるウクライナ侵攻が主原因であるが、英国がEUを離脱したため、安価な労働力が利用できなくなって、供給サイドの拡大もままならないことも背景にある。

 イングランド銀行(英中央銀行)は10月のインフレ率が13%を超えると予想している。政府は今回の措置がインフレ率を最大5ポイント押し下げると期待する。

 大規模財政出動を懸念する声もあるが、家計や企業が直面している問題の解決には財政出動は大きくないといけない。トラス氏は正しい方向の経済政策を実行しようとしている。

 経済面でいえば、EU離脱後の英国が各国との経済連携を模索する中、日本と経済連携協定(EPA)を締結した。当時の担当大臣はトラス氏だった。このため、経済関係では日本にとってなじみが深い。

 さらに、英国は日本主導の環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)にも参加の意向を示している。これらの英国の取り組みは、日英にとって好ましいもので、経済関係ではかなり緊密になっているといえるだろう。

 筆者は、日英関係を経済だけに限らず、安全保障まで広げたらいいと思っている。

 もともと経済圏と安全保障圏は、EUと北大西洋条約機構(NATO)との関係を見ればわかるように、かなりオーバーラップしている。経済関係と安全保障関係は互いに補完的であるので当然のことだ。

 であれば、日英が安全保障関係でも連携するのは自然だ。日米安保の関係は揺るぎないが、日本としては英国との関係があってもいい。かつて、日英同盟があり、当時の日本は輝いていた。いま第2の日英同盟があれば、対中包囲網がより強化されるだろう。これをオーストラリアやニュージーランド、さらにはインドまで広げると、対中戦略はかなり万全になるはずだ。

 日本の周辺には、中国、ロシア、北朝鮮と3つも専制国家があり、世界の危険地帯だ。日本の安全保障のためには、民主主義の同盟国が多いほどいい。そのカギを英国は持っている。 (元内閣参事官・嘉悦大教授 高橋洋一)

【私の論評】本格的な「地政学的戦争」の先駆者英国と日本は、これからも協力関係を深めていくべき(゚д゚)!

実は、日英には大きな共通点があります。それについては、あまり語られることもないのですが、本当に重要な共通点があります。それについては、以前このブログでも述べたこがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
米空母カールビンソン、ベトナム・ダナンに寄港 戦争終結後初 BBC―【私の論評】新たな日米英同盟が、中国の覇権主義を阻む(゚д゚)!
この記事は、2018年のものです。詳細は、この記事ご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
日本と英国といえば、昨年は事実上の日英同盟の復活がありました。2017年8月30日、英国のテリーザ・メイ首相が日本を訪問しました。アジア諸国の歴訪でもなく、メイ首相はただ日本の安倍晋三首相らと会談するためにだけに、日本にまで出向いて来たのです。その目的は、英国と日本の安全保障協力を新たな段階に押し上げることにありました。
日本を訪問した英メイ首相と安倍首相
英国は1968年、英軍のスエズ運河以東からの撤退を表明しました。以来、英国はグローバルパワー(世界国家)の座から退き、欧州の安全保障にだけ注力してきました。ところが、その英国は今、EUからの離脱を決め、かつてのようなグローバルパワーへの返り咲きを目指しています。

そして、そのために欠かせないのが、アジアのパートナー、日本の存在です。日本と英国は第二次世界大戦前後の不幸な時期を除いて、日本の明治維新から現代に至るまで最も親しい関係を続けてきました。

日本の安倍首相とメイ首相は「安全保障協力に関する日英共同宣言」を発表し、その中で、「日英間の安全保障協力の包括的な強化を通じ、われわれのグローバルな安全保障上のパートナーシップを次の段階へと引き上げる……」と述べ、日英関係をパートナーの段階から同盟の関係に発展させることを宣言しました。

そして、「日本の国際協調主義に基づく『積極的平和主義』の政策と英国の『グローバルな英国』というビジョンにより」と述べ、英国がグローバルパワーとして、日本との同盟関係を活用して、インド太平洋地域の安定に関与していく方針を明確にしました。

この突然ともいえる、日英同盟の復活ですが、これにはそれなりの背景があります。日英はユーラシア大陸の両端に位置しているシーパワーであり、その安全のためにユーラシアのランドパワーを牽制(けんせい)する宿命を負っているといえます。
ユーラシア大陸の両端に位置する海洋国家、英国と日本
日本は中国の海洋進出を警戒しているし、英国はロシアの覇権を抑え込んできました。英国はロシア、日本は中国と別々の脅威に対峙しているようにも見えますが、日本と英国は、ユーラシアというひとかたまりのランドパワーを相手にしているのであって、本質的には同じ脅威に対峙しているのです。

そうして日英同盟は結局、日英米の三国による同盟関係の追求に発展することでしょう。それは覇権の三国同盟ではなく、新しい安全保障の枠組みとしての「平和と安定の正三角形」になることでしょう。そうして、それこそ、新日英同盟の本当の意味があり、それが実現すれば、日本の国際的地位と外交力は飛躍的に向上することになるでしょう。

昨日は、このブログでユーラシア大陸の中国とロシアについて述べました。 これも以下に引用します。

NATOには、ベルギーに欧州連合軍最高司令部という司令部があります。しかし、両国にはこれに相当するような両国統一の司令部がないですから、一緒に戦えるとは考えられませんし、戦おうともしていないと考えられます。
欧州連合軍最高司令部
 
両国による合同軍事演習や訓練は、政治的なデモンストレーションに過ぎないと考えられます。もちろん政治的な意味はありますし、それを無視するべきでもありませんが。しかし、彼らの動きは極めて戦術的で便宜的な部分が多いと考えられます。ただ、これからロシアや中国を追い込めば追い込むほど、お互いの絆は強まることにはなるでしょう。

しかし、仮にロシアが米国との関係を改善できるのなら、中国そっちのけで米国に専念することになるでしょう。中国も同じでしょう。現在は、米国と対立しているから互いに相手を利用しようとしているだけです。

9月15日からウズベキスタンで習主席とプーチン大統領の会談が行われることになっていますが、これは、どちらから声を掛けたかはわかりませんが、習近平がプーチンに会いたくて会いに行くというわけではないでしょう。

むしろ中国としては、ここまで来てしまった以上、ロシアをある程度は支援せざるを得ないのですが、米国との関係もあり、ロシアを支援しすぎると米国との関係がこじれるので、それ以上リスクを取ってまでロシアにのめり込むことはしないでしょう。

ただ、習近平は、北京オリンピックの直前に、北京でプーチンと首脳会談をし、そうして共同声明を出し、「中国とロシアの友情にリミットはない」と発言してしまいました。

当初はもっと早くロシアのウクライナ侵攻はは、終わると考えていたのでしょう。しかし、これだけ戦争が長続きしてロシアに対する反発が高まれば、当然、ロシアに関与しているとみられる中国に対する批判が激しくなることになります。

中国はそのことにやっと気が付いたようで、ずいぶん軌道修正をしました。それ以来、中国はロシアに対して必ずしも完全に支持しているわけではありません。急に状況が変わったとは考えられず、ロシアとはつかず離れずになると思います。

ただ、ロシアを完璧に切るわけにはいかないでしょう。そうすれば、米国が中国に強く出る可能性もあるので、ロシアに頑張ってもらわないといけないです。でも、中国がロシアを最後まで支持して運命を共にすることはないでしょう。

何しろ、中露はかつて中ソ国境紛争で戦った仲です。現状では、戦術的には結びついてはいますが、元々はユーラシア大陸で覇権を争う、隣国同士です。現状では、人口でも経済でも、中国がロシアを圧倒しているということと、米国との関係が、両国とも悪くなっているので、今は結びついていますが、いずれかが米国との関係さえ良くなれば、米国側に近づくことが戦術ということになります。

今は、影を潜めていますが、根の部分では敵対していると見るのが、正しい見方であると考えられます。両国とも米国との関係が改善されなくても、中国の経済がかなり悪くなれば、その根の部分が表に出てきて、両国関係は悪化することになるでしょう。
中国とロシアは、根底ではユーラシア大陸の覇権をめぐり互いに争う、覇権国家ですが、現在では、ロシアのGDPは韓国より若干下回る程度です。中露ともに一人あたりのGDPは1万度を若干上回る程度に過ぎませんが、ロシアの人口は1億4千万人であり、中国の人口は14億人であり、経済では中国が、ちょうどロシアの十倍程度の規模です。

この状態では、中露が現状で対峙することは得策ではないことが明らかであり、そのため中露は戦術的に結びついています。

そうして、中露はいずれもランドパワーの国であり、中露ともに海軍を有していますが、その実力はやはり未だランドパワーの国の海軍であり、いまでも日英におよばないです。

特に、日英には強力な潜水艦隊が存在しています。日本は、通常動力のステルス性に優れた22隻の潜水艦艦隊を持ち、これは対潜哨戒能力が未だ低い、中露を脅かしています。英国はアスチュート級を7隻建造する計画で、2007(平成19)年6月に1番艦「アスチュート」が進水、2010(平成22)年8月に就役して以降、これまでに4番艦「オーディシャス」までが同海軍に引き渡されていました。

さらに、今年就役した「アンソン」は2011(平成23)年10月13日に起工。約10年後工期を経て2021年に進水し、今年8月31日に就役し海上公試に入りました。

水中排水量は約7700トン、全長97m、全幅11.3m。乗員数は約100名(最大109名)で、ロールス・ロイス製の加圧水型原子炉「PWR2」を1基搭載し、速力は30ノット(約55.6km/h)。533mm魚雷発射管を6門備え、国産の「スピアフィッシュ」魚雷のほか、アメリカ製の「トマホーク」巡航ミサイルなどを装備しています。

これらは、攻撃型原潜であり、現在の攻撃型原潜として最新型であるとともに、かなりの攻撃力があります。米国にも攻撃型原潜が多数あるのですが、旧式化しつつあるため、今後の製造計画から、一時的に攻撃型原潜の数が減るこどか予想され、まさにそれを補うのが英国の攻撃型原潜であるといえます。

英国はいわゆる「グローバル・ブリテン」を標榜していますが、現在では空母「クイーン・エリザベス」による空母打撃群だけでは、役不足であり、この裏付けとなるのが、まさにアスチュート型攻撃型原潜であるといえます。

日英は、対潜哨戒能力でも中露を大幅に上回る能力を有しており、そのため対潜戦闘力はかなり強いです。実際に日英・中露が海戦ということになれば、中露はかなり不利です。中国は艦艇数は多いですが、対潜哨戒力が劣っており、実際に海戦ということになれば、かなり苦しい戦いを余儀なくされることになります。ロシアも同じです。

これに、シーパワーの雄である、米国が加わり、日米英で、中露と対峙ということになれば、中露としては絶望的です。中国海軍のロードマップによれば、2020年には第二列島線を確保することになっていましたが、それどころか、2022年の今年になってすら、台湾や尖閣諸島を含む第一列島線すら確保できていないという現実が、それを如実に示しています。

ランドバワー国が、シーパワー国になるのは、そう簡単なことではないのです。ランドパワー国が、多数の艦艇を建造して、海洋に乗り出したからと言ってそれで、すぐにシーパワー国になれるわけではありません。そうして、ランドパワーの国と、シーパワーの国が海で戦えば、ランドパワー国にはほとんど勝ち目はないのです。

現在の中国は鄧小平が劉華清(中国海軍の父)を登用し、海洋進出を目指した時から両生国家の道を歩み始めました。そして今、それは習近平に引き継がれ、陸海併せ持つ一帯一路戦略として提示されるに至っています。しかしこれは、マハンの「両生国家は成り立たない」とするテーゼに抵触し、失敗に終わるでしょう。

劉華清(中国海軍の父)

事実、両生国家が成功裏に終わった例はありません。海洋国家たる大日本帝国は、大陸に侵攻し両生国家になったため滅亡しました。大陸国家たるドイツも海洋進出を目指したため2度にわたる世界大戦で滅亡しました(ドイツ第2、第3帝国の崩壊)。ソビエト帝国の場合も同じです。よもや、中国のみがそれを免れることはないでしょう。一帯一路を進めれば進めるほど、地政学的ジレンマに陥り、崩壊への道を早めてゆくことになります。

そうして、もう一つ忘れてはならないことがあります。英国は、地政学的戦いの先駆者であるという事実です。

地経学的な戦いとは、兵士によって他国を侵略する代わりに、投資を通じて相手国の産業を征服するというものです。経済を武器として使用するやり方は、過去においてもしばしば行われてきました。

米中の争いも、軍事的なもので本格的に対峙すれば、互いに核保有国であり、最終的には核ミサイルの打ち合いになりかねません。そのため、軍拡競争的なことはするでしょうが、互いに真正面から軍事衝突することはしないとみられます。そうなると、米中の本格的な争いの領域は「地政学的」なものにならざるをえません。

ところが中国が特殊なのはそれを公式に宣言していることです。その典型が「中国製造2025」です。これは単なる産業育成ではなく、たとえばAIの分野に国家が莫大な投資を行うことで、他国の企業を打倒すること、そして、それによって中国政府の影響力を強めることが真の狙いなのです。

その意味で、中国は国営企業、民間企業を問わず、「地経学的戦争における国家の尖兵(せんぺい)」なのです。これは、かつての英国がアジアを侵略する際の東インド会社のような存在なのです。

中国企業がスパイ行為などにより技術の窃盗を繰り返したり、貿易のルールを平然と破ったりするのは、それがビジネスであると同時に、国家による戦争だからです。

トランプ政権になって、米国がそうした行為を厳しく咎(とが)め、制裁を行うようになったのも、それを正しく「地経学的戦争」だと認識したからであり、だからこそ政権が交代しても、対中政策は変わらなかったのです。

そうして、英国は本格的な「地政学的戦争」における、先駆者であるのです。香港を中国に蹂躙された英国としては、その憤りをいずれ何らかの形で晴らそうとするのは当然であり、その意味でも日英は手を携えるべきです。

日本にとっては、これから中国と対峙していく上で、英国は強力な助っ人となるのは確かであり、EUを脱退した英国としてもTPP加入は、念願であり、日英の協力関係は、今後ますます強めていくべきです。

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2022年9月13日火曜日

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日本の解き方


 ロシアに北朝鮮が砲弾などを提供すると報じられた。その背景や、日本への影響を考えてみたい。

 米国防総省のライダー報道官は6日の記者会見で、ウクライナへの侵攻を続けるロシアが、北朝鮮から武器を購入せざるを得なくなっているとの見方を示した。「ロシアが侵攻の維持や後方支援で困難を抱えていることを示している」と指摘した。西側諸国の制裁により、ロシアの軍用品などの供給能力が低下しているためだと別の政府高官は明らかにしている。

 ウクライナとロシアの紛争は長期化している。2週間で侵攻完了というロシアの当初のもくろみはかなり外れて、武器供給までも行き詰まってきているのだろう。それとともに、経済制裁の効果がじわりじわりと出てきている。

 ロシアは欧米など先進国との交易が経済制裁の対象となっているものが多いため、経済制裁を実施していない新興国との貿易を拡大させている。原油などの輸出だけでなく、家電や機械、食品といった輸入も増やしている。ロシアの石油は本来禁輸されているはずの欧州にも「裏」輸出されているという指摘もある。これも、ロシア経済が苦しいという傍証である。

 原油価格の指標であるWTI原油先物は、2月のロシア侵攻時に1バレル=90ドル程度だったのが、130ドル程度まで急騰した。その後は100~120ドルあたりで推移していたが、7月以降、100ドルを割り込み、今では侵攻時の水準より低い80ドル程度だ。

 エネルギー価格の低下は、西側の経済制裁とともにロシア経済を苦境に陥らせている。ある意味で、ロシア経済は抜け道の多い経済制裁よりも直接的に交易収入減となるエネルギー価格の下落のほうが効果が大きい。

 一方、経済制裁をしている西側諸国の経済にとってはメリットが大きい。さらに言えば、西側諸国からのウクライナ支援も継続できるチャンスでもある。

 エネルギー価格の低下は、エネルギーの大半を海外に依存している日本経済にもプラスである。しかし、安全保障面でみると、ロシアですら弾不足になるという現実は、日本の防衛を考えると、空恐ろしいともいえる。

 日本の自衛隊では、自嘲ともいえるジョークがあるという。「タマに使うタマがないのがタマに傷」というものだ。ただし、笑っている場合ではない。

 これまではこのような深刻な話が外に出にくかったが、さすがに防衛省としても切羽詰まってきているのだろう。来年度予算について財務省への概算要求が8月末に行われたが、その中で、「共食い」と言われる実態が要求資料の中にある。ある装備の備品が足らなくなると、新規に調達するのではなく、他の装備から部品を取ってくるというのだ。

 当然のことながら、部品を取られた装備は使用できない。なお、この概算要求の資料は防衛省のウェブサイトにあるので、興味のある方は参照していただきたい。まともに防衛力強化を考える時期だ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授 高橋洋一)

【私の論評】中国がロシアを最後まで支持して運命を共にすることはない(゚д゚)!

ロシアが北朝鮮に頼ることはロシアの窮地を表す象徴的に表しています。ロシアが窮地に追い込まれているのは間違いありません。

ただ、ロシアが最も頼りにしたいのは、ロシアの極東地域で実施した大規模軍事演習「ボストーク2022」にも参加した軍事大国・中国のはずです。国防費を毎年上げ続け、世界屈指の陸軍力を誇っています。

ただ、中国外務省は侵攻が始まった当日に「武器の提供はない」と明言していました。

中国外務省・華春瑩報道局長「我々は、アメリカがウクライナに軍事物資を提供したように、相手国(ロシア)に武器を提供することはない。ロシアも実力ある大国として、中国や他の国からの武器支援は必要ないでしょう」

中国外務省・華春瑩報道局長

ロシアがウクライナへの侵攻を開始した2月24日、中国外務省は定例の記者会見でロシア支援の可能性について問われた際、「武器の提供はない」と明言していました。

ロシアは大国で支援は必要ないとの認識も示しています。

ただ、ロシアが中国に支援を要請したと欧米メディアが報じた3月13日以降は、「偽の情報だ」と反発はするものの、前回のように支援を否定する発言はしていません。

中露ともに、当初は、ロシアのウクライナ侵攻は、数週間で何らかの形で決着がつくものと考えていたのでしょうが、その予想は完璧に外れた形になっています。

中国共産党機関紙、人民日報(海外版)は12日付で、中国共産党序列3位で、習氏の最側近として知られる栗戦書・全人代常務委員長が7~10日、ロシアを訪問してプーチン氏と会談したと伝えました。栗氏からウクライナに関する直接的な言及はなかったようで、習政権の慎重な姿勢は継続されているようです。

栗戦書(左)とプーチン

習氏は、プーチン氏から支援要請があった場合、動くのでしょうかか。

ただ、欧米などの監視もあり、中国が直接の支援に動く可能性は低いです。一方、中国やロシアと並び「新・悪の枢軸」という枠組みで語られるイランや北朝鮮は、戦闘用の無人機(ドローン)や弾薬の販売に積極的です。

中国がロシアに武器を供与するとすれば、イランや北朝鮮を経由することになるでしょう。中国としては、ロシアから石油や天然ガスを安く購入できる利益もある。現在の両国関係は、中国が完全に優位なかたちに傾いているようです。

習近平は、そもそも米国の制裁自体が一般人を苦しめ、制裁が拡大すれば世界経済が大混乱に陥るとして、制裁自体に反対しています。しかし、中国・ロシア関係に世界の注目が集まっている状況において、ロシアを支援すれば中国は国際社会からロシアの戦争犯罪の共犯者と批判されることを覚悟しなければならないでしょう。

中国が本気でロシアと同盟を組み、米国と対峙しようとしているとは到底思えません。 ロシアにとっても中国にとっても、米国との関係こそが戦略的に重要で、逆に言うと、米国との関係が悪いときには、お互いが必要なのです。ロシアと中国の関係自体は「戦略的同盟関係」というより、「戦術的なパートナー」でしかありません。

ロシア軍と中国軍の艦艇が日本列島を周回したり、中国ボストーク22の軍事演習に参加したのも戦術的なものです。 NATOには、ベルギーに欧州連合軍最高司令部という司令部があります。しかし、両国にはこれに相当するような両国統一の司令部がないですから、一緒に戦えるとは考えられませんし、戦おうともしていないと考えられます。

欧州連合軍最高司令部

両国による合同軍事演習や訓練は、政治的なデモンストレーションに過ぎないと考えられます。もちろん政治的な意味はありますし、それを無視するべきでもありませんが。しかし、彼らの動きは極めて戦術的で便宜的な部分が多いと考えられます。ただ、これからロシアや中国を追い込めば追い込むほど、お互いの絆は強まることにはなるでしょう。

しかし、仮にロシアが米国との関係を改善できるのなら、中国そっちのけで米国に専念することになるでしょう。中国も同じでしょう。現在は、米国と対立しているから互いに相手を利用しようとしているだけです。

9月15日からウズベキスタンで習主席とプーチン大統領の会談が行われることになっていますが、これは、どちらから声を掛けたかはわかりませんが、習近平がプーチンに会いたくて会いに行くというわけではないでしょう。

むしろ中国としては、ここまで来てしまった以上、ロシアをある程度は支援せざるを得ないのですが、米国との関係もあり、ロシアを支援しすぎると米国との関係がこじれるので、それ以上リスクを取ってまでロシアにのめり込むことはしないでしょう。

ただ、習近平は、北京オリンピックの直前に、北京でプーチンと首脳会談をし、そうして共同声明を出し、「中国とロシアの友情にリミットはない」と発言してしまいました。

当初はもっと早くロシアのウクライナ侵攻はは、終わると考えていたのでしょう。しかし、これだけ戦争が長続きしてロシアに対する反発が高まれば、当然、ロシアに関与しているとみられる中国に対する批判が激しくなることになります。

中国はそのことにやっと気が付いたようで、ずいぶん軌道修正をしました。それ以来、中国はロシアに対して必ずしも完全に支持しているわけではありません。急に状況が変わったとは考えられず、ロシアとはつかず離れずになると思います。

ただ、ロシアを完璧に切るわけにはいかないでしょう。そうすれば、米国が中国に強く出る可能性もあるので、ロシアに頑張ってもらわないといけないです。でも、中国がロシアを最後まで支持して運命を共にすることはないでしょう。

何しろ、中露はかつて中ソ国境紛争で戦った仲です。現状では、戦術的には結びついてはいますが、元々はユーラシア大陸で覇権を争う、隣国同士です。現状では、人口でも経済でも、中国がロシアを圧倒しているということと、米国との関係が、両国とも悪くなっているので、今は結びついていますが、いずれかが米国との関係さえ良くなれば、米国側に近づくことが戦術ということになります。

今は、影を潜めていますが、根の部分では敵対していると見るのが、正しい見方であると考えられます。両国とも米国との関係が改善されなくても、中国の経済がかなり悪くなれば、その根の部分が表に出てきて、両国関係は悪化することになるでしょう。

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2022年9月12日月曜日

中国「北部戦区」で内戦勃発か?―【私の論評】中国は、易姓革命前夜か(゚д゚)!

中国「北部戦区」で内戦勃発か?

【まとめ】

・一部報道によると、9月8日、「北部戦区」の遼寧省瀋陽市于洪軍用飛行場で、激しい銃声、爆発音、戦闘機の音が聞こえたという。

・習主席は、数年前から軍改革を進め、軍事委主席の責任体制を強化している。

・習主席が計画的に登用してきた部下の中には、“習近平に対する個人的な忠誠心”と組織としての“党中央軍事委員会への忠誠心”の間で葛藤している人も。


目下、中国共産党は、10月16日開催の第20回党大会を控え、デリケートな時期を迎えている。

習近平主席のカザフスタン訪問(9月14日)直前、中国国内では、不穏な事件が起きた。9月8日午前2時頃、「北部戦区」の遼寧省瀋陽市于洪軍用飛行場で、激しい銃声、爆発音、戦闘機の音が聞こえた(a)という。

当日、習近平主席は、突然、王強を上将へ昇進させ、新「北部戦区」司令官に任命している。他方、李橋銘・前「北部戦区」司令官は、行方不明だという。この唐突な人事は、8月2日のペロシ訪台直前、「東部戦区」で王仲才が同戦区の新海軍司令官に就任した(b)話を想起させる。

8月17日、北戴河会議直後、習主席は、まず、遼寧省錦州市の遼瀋戦役記念館を視察した。次に、「北部戦区」駐屯地の瀋陽市へ移動し、瀋陽軍の大佐以上の将校と接見している。だが、その際、李橋銘は「改革・開放」を支持し、主席の3選には賛同しなかった(c)という。

公開資料(a)によると、王強は1963年四川栄県出身で、2018年7月に「西部戦区」副司令官に昇進し、2020年4月には「西部戦区」空軍司令官を兼任した。

一方、李橋銘・前「北部戦区」司令官は1961年4月生まれ、河南省出身である。2016年1月、「北部戦区」副司令官兼「北部戦区」陸軍司令官となった。そして、2017年8月、「北方戦区」司令官に昇進した。現在、李橋銘は61歳なので、65歳定年にはまだ早い。したがって、李橋銘は“失脚”したのではないかと噂される。

▲写真 中国で新たに設置された五大戦区 出典:防衛研究所


実際、習主席は2012年秋の総書記就任以降、軍の腐敗撲滅に取り組み、当時の軍事委員会元副主席から軍事委員会委員まで、腐敗した大量の「反習派」の首を切った。

更に、数年前から軍改革を進め、軍事委主席の責任体制を強化している。習主席は、2012年11月から軍を指揮して以来、68人を上将に昇進させた。この数は、前任者の2人(江沢民元主席と胡錦濤前主席)よりも多い。

今年1月21日、習主席は「北方戦区」政治委員である劉青松を含む7人を上将に昇進させ、全員の新役職を明らかにした。

ただし、短期間のうちに「西部戦区」で3回、「中部戦区」で2回の司令官交代が行われるなど、奇妙な事が起きている。

例えば、2020年12月、張旭東が上将に昇進し、「西部戦区」司令官に就任した。しかし、2021年10月、張旭東は58歳で病死している。そこで、2021年7月、前「西部戦区」陸軍司令官の徐起零が上将に昇格し、張旭東に代わり、「西部戦区」司令官になった。

その後、徐起零は癌に冒されていると報道された。そして、わずか2ヶ月で「西部戦区」司令官を辞し、中央軍事委員会統合参謀部副参謀長として北京へ戻って来た。徐起零のあと、新疆戦区司令官だった汪海江・上将が「西部戦区」司令官を継承している。

米国へ亡命した蔡霞(元中央党校・党建教研部教授)は『フォーリン・アフェアーズ』(2022年9月6日)で、次のように指摘(d)した。

習近平は長年にわたって自分の部下を計画的に登用してきた。だが、軍将官の言葉を見ると、彼らは“習近平に対する個人的な忠誠心”と組織としての“党中央軍事委員会への忠誠心”の間で葛藤している。

実は、昨年12月、習政権のウイグル政策を批判して習主席に批判された劉亜洲将軍が、同じ将軍の弟と同時に家宅捜索を受けて、行方不明になっているという。

他方、オーストラリアの法学者、袁紅冰の党内情報によれば、劉亜洲が内部統制下にあるのは、太子党を代表して公然と「反習」を掲げ、主席の3選を阻もうとしたからだ(e)という。報の通り、今年5月7日、浙江省舟州市夜空が真っ赤に染まった。翌8日午後1時過ぎ、浙江省杭州市で原因不明の大きな音が2回続けて鳴り響いている。

2日後の10日朝、首都・北京市大興区楡垡橋で戦車が走っているのが目撃された。更に、翌11日、今度は福建省福州市で夜空が真っ赤に染まっている。

以上のように、5月前半に続き、第20回党大会が開催直前に再び内戦が勃発した。これは、習主席が完全には軍権を掌握していない証しではないか。仮に、軍をしっかり握っていれば、そもそも瀋陽軍区へ行って、3選支持を訴える必要はなかったのではないだろうか。

〔注〕

(a)『中国瞭望』「突然!習近平が北部戦区司令官を代える、瀋陽で銃声が聞こえる」(2022年9月8日付)

https://news.creaders.net/china/2022/09/08/2523453.html

(b)『東方網』「東シナ海にまた新たな将軍が現れた:東部戦区海軍司令官に王忠才中将が任命される」(2022年8月4日付)

https://j.eastday.com/p/1659622895037304

(c)《万維読報》「軍に変化? 習近平、李首相の軍事的“盟友”を素早く排除」(2022年9月10日付)

(https://video.creaders.net/2022/09/11/2524347.html)

(d)「習近平の弱点―傲慢と偏屈 パラノイアが脅かす中国の未来―」

(https://www.foreignaffairs.com/china/xi-jinping-china-weakness-hubris-paranoia-threaten-future)。

(e)『中国新聞中心』「劉亜洲、第20回党大会での総書記交代を推進…習近平の内部統制で? 習近平の3選に対し、鄧樸方ら太子党が劉亜洲支持に動き出す」(2021年12月30日付)

https://chinanewscenter.com/archives/28906


【私の論評】中国は、易姓革命前夜か(゚д゚)!


中国公式メディアの報道によると、中国共産党中央軍事委員会の上将昇進式は8日、北京の「八一大楼」で行われました。八一大楼は8月1日の建軍節にちなんで命名されたもので、中国共産党の最高軍事機関である「党中央軍事委員会」の執務ビルです。

習近平中央軍事委員会主席は、上将に昇進した王強氏に、北方戦区司令官の任命書を授与しました。しかし、これまで、王強氏が北部戦区司令官に昇進したことも、前任の李橋銘北部戦区司令官が更迭されたことも、公式には報道されませんでした。そのため、今回の北部戦区司令官の人事異動は異例といえます。李橋銘氏は、通常の解任手続きを経ずに定年を迎える前に突然更迭され、現在は行方不明です。

8日、王強北部戦区司令員(右)と記念撮影する習近平氏

これまで、中国共産党の5つの戦区司令官はいずれも陸軍上将です。王強氏は空軍上将であり、戦区司令官の中で唯一陸軍出身ではない司令官となっています。

情報筋によると、習近平氏が今年8月17日、瀋陽市を視察した際、北部戦区司令部を訪問したといいます。習近平氏は瀋陽市を視察する時に、すでに北部戦区司令官の更迭を決めていた可能性があり、そうでなければ、瀋陽市にも北部戦区にも訪問しかなっただろうという分析がありました。

中国語ウィキペディアの「中国人民解放軍北部戦区」によると、李橋銘氏の任期は今年8月までで、王強氏は今年8月から北部戦区司令官に就任していることが分かります。これは情報筋が明らかにした情報と一致しています。

ところが、9月7日以降、瀋陽市では異常な事件が相次いでいます。

ネット上の動画では、7日午前2時から瀋陽市於洪区の軍用空港の方角で、戦闘機が飛行する様子が映っています。銃砲の音と複数の大きな爆発音が聞こえ、閃光も伴っていることが分かります。

遼寧省瀋陽市鉄西区で8日未明も、爆発音が聞こえ、上空には戦闘機が通過する轟音(ごうおん)が絶えませんでした。ネットユーザーが投稿した動画によると、8日午前2時ごろ、遼寧省瀋陽市鉄西区上空を通過する戦闘機の轟音と、遠くで大きな爆発音が聞こえ、それに伴って爆発の閃光が確認できたといいます。

瀋陽市の街頭に9日午前4時すぎから、高速道路から降りてきた警察の白バイに護衛される軍用車の長い車列が現れました。各軍用車両は幌(ほろ)で厳密に覆われ、その両側には白バイに乗った警察官が付き添っています。しかし、中国の公式メディアは、このことについて一切報道しませんでした。


中国のネットユーザーによると、死刑囚の護送や軍人の遺体搬送の際に、このような光景がよく見られるといいます。白バイクが軍用車を護送していることを考えると、逮捕されたクーデター軍人や軍人の遺体ではないかと疑われます。

中国では以前もきな臭い動きがありました。

5月初旬、38軍2個機動師団が上京し、27軍9師団が上海に進入し、5月4日、習近平主席は政治局常務委員拡大会議で条件付きながら、退位に同意したという噂がありました。

同月7日夜、浙江省舟山市で夜空が赤く染まっていたとされています。ただ、異常気象等で夜空が赤くなることも考えられるでしょう。

5月7日夜、夜空が真っ赤に染まった浙江省舟山市

翌8日午後1時過ぎ、浙江省杭州市で原因不明の大きな音が2回続けて鳴り響いたとされています。なお、同市では、今年3月にも同様な大音響に包まれています。

さらに、5月10日朝、北京市大興区楡垡橋で戦車が走っていました。さすがに、北京市民もこれには驚いたに違いないです。

さらに、翌11日夜、福建省福州市でも夜空が真っ赤に染まった。確かに、夜、漁船が沖に出て一斉に赤色灯をつければ、かかる状況となるかもしれないです。だが、福州市ではこれが初めてではないそうです。

習政権下では「改革・開放」路線(資本主義)をやめて、社会主義へ回帰しました。そのため、「国進民退」(効率の悪い国有セクターが伸長し、効率の良い民間セクターが縮小)が起きています。この状況の中で、成長は難しいでしょう。

個人崇拝を是とする習主席は「第2文革」を発動し、国内への締め付けを厳しく行っています。成長するには自由な発想が不可欠です。そのため、発展は困難でしょう。

「反習派」が完全に(軍権を含む)実権を掌握していれば、今後静かに物事が運ばれる可能性もあります。その際、「習派」と「反習派」との間で、多少の軍事衝突はあるかもしれないです。しかし、規定の如く、今秋の第20回党大会で、習近平主席が退位し、李克強首相が総書記(共産党トップ)に就任するという政権移譲が行われることになるかもしれません。

そうはならなかったにしても、今後も「戦狼外交」(対外強硬路線)を継続すれば、中国は世界からますます孤立します。すると、他国との友好的な関係による経済的恩恵を期待できないでしょう。

したがって、将来、中国は経済破綻する公算が大きいです。その際には、同国特有の「易姓革命」(王朝名を変える革命)が起こるかもしれないです。

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2022年9月11日日曜日

宗教法人の「解散命令」は可能だ 実際に発動するか決めるには被害状況の実態考慮すべき 消費者契約法など対応できるか合わせて検討を―【私の論評】安倍路線を引き継ぐべきと考えている勢力が自民党内で台頭し、安倍元総理のように、岸田政権に睨みを利かすべき(゚д゚)!

日本の解き方

高橋洋一 

河野太郎消費者相

 河野太郎消費者相がテレビ番組で、霊感商法の被害対策をめぐる消費者庁の有識者検討会について「解散命令まで消費者庁が関わったり、解散命令まで踏み込めと文部科学省に働きかけたりすることになるかもしれない」と話した。

 宗教法人法は、宗教団体が礼拝の施設その他の財産を所有し、これを維持運用し、その他その目的達成のための業務および事業を運営することに資するため、宗教団体に法律上の能力を与えることを目的(1条)として1951年に制定された。

 同法は、宗教法人制度が信教の自由と政教分離の原則に密接にかかわるものであり国による関与が最小限にとどめられるべきなので、所轄庁の権限が民法の法人の主務官庁に比べて限られている。なお、宗教法人に対しては、法人税、地方税などについて優遇措置がある。

 宗教法人に対する解散命令の事例は、旧オウム真理教に対するものだ。東京地検と東京都は、95年6月30日それぞれ東京地方裁判所に対し、オウムに対する宗教法人の解散命令を申し立てた。申し立ての理由は、教団によるサリン事件が「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと」(同法81条1項1号)および「宗教団体の目的を著しく逸脱した行為をしたこと」(同法2条)だ。

 東京地裁は、95年10月30日、申し立てを理由があるものと認め、教団を解散する旨の決定を下した。同年12月19日、これに対する教団の東京高等裁判所への抗告が棄却され、続く最高裁判所への特別抗告も棄却された(96年1月30日)。これまで休眠状態の宗教法人に対して解散を命じた事例はあるが、法令違反・目的逸脱行為を理由に解散を命じたのは初めだった。

 オウム事件を契機として、宗教法人法が改正され、95年12月15日に公布された。改正の主な点は、①2以上の都道府県で宗教活動を行う宗教法人の所轄庁を文部大臣とする②信者その他の利害関係人は、宗教法人の備え付け書類、帳簿について閲覧を求めることができる③宗教法人は収支計算書等作成、備え付け義務のある書類のうち一定のものを定期的に所轄庁に提出しなければならない④収益事業の停止命令、認証の取り消し、解散命令の請求のために所轄庁に報告を求め質問をする権限を付与したことなどである。

 以上のとおり、解散命令は法的に可能だ。実際に発動するかどうかは、被害状況の実態との関係で決めたらいい。その際、宗教法人法の他の条項、消費者契約法その他の法律や新たな立法で対応できるかどうかも合わせて検討するのは当然である。

 オウムの例はあってもハードルは相当高く、抜けない宝刀の面もある。違法行為が一定程度なされている場合には対処できるよう基準を明確化すべきだ。解散命令の前段階で改善指事や活動停止命令を出し、その後、解散命令といった制度もいい。 (元内閣参事官・嘉悦大教授 高橋洋一)

【私の論評】安倍路線を引き継ぐべきと考えている勢力が自民党内で台頭し、安倍元総理のように、岸田政権に睨みを利かすべき(゚д゚)!

高橋洋一氏が、宗教法人の「解散命令」は可能という発言を現在なぜするのでしょうか。

高橋洋一氏は、以下のようなツイートをしていました。

《魔女狩り。旧統一教会の行為は違法行為であれば法律で対処するのは当然だが、関係を絶つというのは魔女狩り。ワイドショーのいうことを聞く必要なし》

内閣改造について、高橋洋一氏は「こんな馬鹿馬鹿しい内閣改造があるか?岸田氏が断行した「脱安倍」昭和人事で防衛も経済も危ない」という酷評していましたが、安倍元首相の影響力をそぐという点で岸前防衛相を外すのが主眼の改造だったといえます。実際、統一教会に関係している人は新内閣に選ばないといっていました。


岸田総理および岸田総理に近い人達は、財務省にも近く、反財務省の政策を主張する安倍元主張は煙たい存在だったのでしょう。そこで、内閣改造では反安倍・脱安倍人事を仕掛けたかったのではないでしょうか。

ところが、実際に蓋を開けてみると、「関係」というあいまいなところで線を引こうとしたことに無理があり、新閣僚にも統一教会との「関係」がある人が出てしまったのです。

このあたりから、マスコミの統一教会バッシングが制御不能となって、岸田政権にも「ブーメラン」となって返ってくるようになってしまったのです。

しかも、旧統一教会「接点」議員に関して、「接点」だけ取り上げても意味はないものの、安倍派は人数で最多ですが、派閥別割合では3番目という調査結果もでています。

 森山派42・9% 、麻生派41・2%、 安倍派38・1%、 二階派37・2%、 岸田派34・9%、 茂木派25・9%、 無派閥17・9% であり、旧統一教会、自民派閥横断的に接点があり、安倍派が特に突出していないことが明らかになっています。

こうなると、安倍派が特に旧統一教会の接点が多いということはなく、そもそも安倍派排除の根拠が薄弱になってしまいました。

そうして、統一教会と自民党の関係を絶つと発言した、岸田政権には大きな逆風が吹くという結果になってしまいました。


しかも、「統一教会バッシングと国葬反対論が、なぜつながってしまう傾向が見られるようにもなりました。

安倍元首相の暗殺で、テレビが安倍元首相と統一教会の繋がりを繰り返し報じた後で、テレビで統一教会をケシカランものだと報じると、安倍元首相の国葬に反対する流れが出てきたのです。

そうして、安倍元首相は統一教会を嫌っていたとの意見に対して、国葬反対派から猛烈な反論が出てくるようになりました。安倍元首相は統一教会と関係が深いからビデオメッセージを送ったのだと。しかし、現実にはトランプ大統領が送ったから、トランプ大統領と同調しただけであることが知られています。

実際、統一教会にとって不都合な法改正(2013年消費者裁判手続特例法や2018年改正消費者契約法)が安倍政権によって行われています。そうして、霊感商法被害が近年少なっています。

そうなると、安倍元首相と統一教会の繋がり否定した途端に国葬反対派がしゃかりきになって反論する理由が解せないです。おそらく、統一教会バッシングを梃子にして国葬反対までもっていきたい勢力があるのでしょう。


国葬反対派は、国葬には三権の了承必要という論法で批判していますが、それが当てはまるのは法律根拠が曖昧だった吉田元首相の時の話で、その後、1999年立法解決し内閣府設置法となったのです。法律制定は立法府の了承になるし、行政府の権限の範囲内です。そのときに国葬は内閣府設置法の儀式と整理されました。それを今になって難癖を垂れるのは嫌がらせ以外の何ものでもありません。

現在、様々な地域の地裁で、安倍元首相の国葬、国費支出差し止め求めた申し立てが却下されています。これは、他の地裁でも同じ判断をすることでしょう。 

現状では、岸田首相が魔女狩りをするということを言ってしまったことにより、自民党自体が逆風を受ける結果となっています。この発言さえなければ、日テレのがワイドショーで統一教会批判をやりつつも、文書回答では相手の思想信条を問わないとしたこともあり、事態の収拾の目処もたったと思いますが、岸田首相の発言でとんでもないことになってしまいました。

こういうことが災いして、沖縄知事選で、玉城デニー氏が当選しました。岸田首相の魔女狩り発言に関しては、高橋洋一氏は株式会社読売新聞グループ本社代表取締役主筆渡邉恒雄氏の影響があったのではないかと推論をしていますが、私自身は渡邉恒雄氏もあり得るとは思いますが、岸田首相のまわりには財務省に近い人も大勢いますから、渡邉恒雄氏もそうですが、複数の人が岸田首相に影響力を行使した可能性があるとみています。

だからこそ、岸田氏が魔女狩り発言をしても、自民党内から表立ってこれを批判する人がいなかったのだと思います。

しかし、これは、安倍派排除だけではすまなくなり、自民党そのものが大きく毀損される可能性がでてきました。魔女狩りによって不利益を受けた、統一教会関係者、政治家、その他の人が政府を相手どって訴訟などすれば、勝ち目はありません。

高橋洋一氏は、現状を打破しなければ、岸田政権だけではなく、自民党そのものが大きく毀損される懸念もも生じてきたため、宗教法人の「解散命令」は可能という発言をしたものと考えられます。

そうして、上の記事で以下のように述べています。
実際に発動するかどうかは、被害状況の実態との関係で決めたらいい。その際、宗教法人法の他の条項、消費者契約法その他の法律や新たな立法で対応できるかどうかも合わせて検討するのは当然である。
オウムの例はあってもハードルは相当高く、抜けない宝刀の面もある。違法行為が一定程度なされている場合には対処できるよう基準を明確化すべきだ。解散命令の前段階で改善指事や活動停止命令を出し、その後、解散命令といった制度もいい。
こうしたことによって、現在の旧統一教会問題の不毛な論議を終わらせ、一日もはやくまともな政権運営、国会運営ができるようにすべきであると考えているのでしょう。

そうすれば、自民党自体はあまり毀損されることはなく、岸田首相や岸田派の勢力は相対的に弱まり、また、安倍派や安倍路線を踏襲しようとする勢力が相対的に台頭し、まともな政権運営、まともな国会運営ができる可能性が高まると考えているのでしょう。

これは、私もそう思います。とにかく、今のままでは、自民党への逆風が強まるばかりです。岸田首相は、魔女狩り発言中に中国のミサイルが日本のEEZ 内に着弾してもすぐに国家安全保証会議(NSC)を開催しないなど、危機管理能力がないことがはっきりしました。

ミサイル着弾のときには、岸田首相は内閣改造で頭がいっぱいだったのでしょう。本当に情けないです。このあたりの状況は、現状の政局がおちついて、統一教会などの問題が、党内でほとんど派閥争い等に関係なくなったときに、明らかにされるのではないかと思います。

ただ、この問題はしばらく自民党に影響を与え続けるでしょうから、明らかにされるのは10年後以降になるかもしれません。それまでは、当て推量をしてもあまり意味がないと思います。

安倍派であるないは別にして、とにかく今しばらく、安倍路線を引き継ぐべきと考えている勢力が自民党内で再び台頭し、安倍元総理のように、岸田政権に睨みを利かし、自民党を毀損しかねない岸田政権を短期政権で終わらせて欲しいものです。

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2022年9月10日土曜日

ウクライナ軍の北部進軍、ロシア軍の兵たん脅かす-既に補給路遮断か―【私の論評】今すぐ戦況を判断するのは、プロパガンダに踊らされるだけ、それは今の日本の政局も同じ(゚д゚)!

ウクライナ軍の北部進軍、ロシア軍の兵たん脅かす-既に補給路遮断か

南部ヘルソンの反攻は犠牲多く停滞か、WP紙やロシア側が伝える
北部では親ロシア派軍事ブロガーも驚く速度でウクライナ軍が進軍


  ロシア軍に対するウクライナ軍の反転攻勢は北部で進展している様子だが、より注目度の高い南部ヘルソン州ではロシア軍の配備立て直しもあり、苦戦を余儀なくされている。

  ウクライナ軍の北部での進撃は予想外のスピードだと、同国当局者だけでなくロシアの軍事ブロガーも8日、声を合わせて認めた。ウクライナ軍がロシアの防衛線を戦術的な越境にとどまらず本格的に突破したのは、戦争開始以来で初めてだ。

  ロシアのプーチン大統領が欧州のエネルギー市場への圧力を強めているさなかで、ウクライナとしては同盟国に戦争に勝利する能力があると緊急に示す必要もあった。

  ウクライナ軍報道官のオレクシー・フロモフ氏によると、北部の反攻は同国第2の都市ハルキウの南東約90キロに位置するバラクリヤでの戦いで開始。数日後にはロシア軍の占領地域内50キロの地点まで進軍し、20の集落を奪還したという。

  「敵の士気は一部で落ちているが、抗戦を続けている」と同報道官は8日の記者会見で語った。

  ゼレンスキー大統領は同日夜のオンライン演説で、9月に入ってからウクライナ軍が合計1000平方キロの被占領地を解放したと主張。親ロシア派の軍事ブロガー、アレクサンドル・コッツ氏によると、一部のウクライナ軍部隊は砲撃支援のレンジから外れるほど進撃速度が速い。

  ソーシャルメディアのテレグラムで50万人を超える視聴者を抱えるコッツ氏は、ドンバス地方のロシア軍にとって重要な兵たん拠点であるクピャンスクとの補給路をウクライナ軍が既に遮断したと懸念。ウクライナ軍はロシア国境に向かう道路を遮断するためクピャンスクの北方に進路を変えたようだと指摘し、「状況は厳しい」とテレグラムのチャンネルで述べた。

  ただ、南部のヘルソン戦線に関しては、ウクライナ軍の戦況がはるかに厳しい様子を一部の親ロシア派ブロガーらは伝えており、死傷者が多く、進軍が停滞しているという。こうした内容は、米紙ワシントン・ポスト(WP)がインタビューしたウクライナ軍負傷兵の話と符合する。

  ウクライナやロシアのブロガーの主張を独立して検証することはできていないが、両者の情報はいつになく一致している。

【私の論評】今すぐ戦況を判断するのは、プロパガンダに踊らされるだけ、それは今の安倍元総理を恐れる日本の政局も同じ(゚д゚)!

ロシアが占拠するウクライナ南部ヘルソン州で、ウクライナ軍が占領地奪還を目指し大規模な反攻に出ているもようだとされています。ウクライナ軍は29日、フェイスブックで「ロシア軍の防衛線を突破した」と主張。英国防省は30日、「ウクライナ軍が南部の最前線で砲撃を強化している」との見方を示しました。

ウクライナ軍は、ロシア軍が使用する大型の橋のほぼ全てを破壊したと説明。ロシアは一方的に併合したクリミア半島からの補給路を断たれたと述べ、「領土を取り戻す大きなチャンスだ」と強調しました。

ウクライナ南部ヘルソン周辺の前線で砲撃の準備をするウクライナ兵(7月)

これは、ウクライナ軍が南部で苦戦している、上の記事とは矛盾する内容です。ただし、冒頭の記事が信じられるかといえば、そうともいえないところがあります。

昔から軍隊でいわれていることがあります。

それは、「後でどんなに圧倒的な勝利を収めたとされた戦闘においても、戦闘時に現場に問い合わせると、悲観的な報告ばかりである。現場の報告のみを信じてすぐに撤退させれば、戦闘にまけてしまう。かといって現場の報告を一切信用しないで、そのままにしておけば、軍が壊滅することにもなりかねない。だからこそ、優秀な指揮官は5つ程度の判断基準をもたなければならない」というものです。

軍人ではない、米紙ワシントン・ポスト(WP)の記者が負傷兵から聴いたとしても、そもそも現場の意見は悲観的になりがちであり、しかも負傷兵に聴いたというのですから、それが正しい戦況を示しているかどうかなどわかりません。

そのため、南部でウクライナ軍が苦戦しているか、善戦しているのかなど、今の段階ではわからいないと判断すべきだと思います。

現状では、ウクライナ側、ロシア側の双方のプロパガンダが入っているとみるべきです。それこそ、ウクライナ側からすれば、南部侵攻をするようにみせかけて、北部での戦闘を有利に導くためにプロパガンダを流している可能性もあります。

ロシア側も何らかのブロパガンダを発しているのは間違いないでしょう。

このようなプロパガンダに左右されて、ウクライナが優勢とか、ロシアが優勢などとその時々で判断すべきではありません。そうすれば、期せずして、ロシアやウクライナのいずれかを応援することになりかねません。ウクライナ擁護になれば良いですが、そうではない場合もあり得ます。ただ、一月もすれば現状を後から追認できます。それに、戦争はいつかは終焉を迎えます。

その時に様々な情報を集めていずれの時点で戦況が変わって、戦争が終わることになったのか、より正確な分析ができると思います。軍事専門家は、そのようなことを丁寧にするので、戦況を正しく判断することができるのです。そうして、そのような分析は将来何らかの形で役に立つことになります。

ただ、多くの人は自分の仕事もありますし、自分自身が分析をするのは難しいです。であれば、軍事専門家の出す情報を検討するというのも一つの手です。最初は、複数の専門家の出す情報を検討すれば、誰が正しい情報を出し続けるのかを判断できるようになります。そうなれば、正しい情報を出す専門家の情報を信じるなどのことができるようになります。

このようなことをしない人は、ロシアやウクライナのプロパガンダに騙され続けることになります。

このようなこと、ウクライナ戦争だけではありません。政局などもそうです。「もり・かけ・桜」などのマスコミ報道を鵜呑みにする人たちは、これらの出来事を後から検証するとか、後から専門家などが検証した情報を吟味するなどということはしていないと思います。

こうしたことに関する報道もブロパガンダではないという保証はありません。後になって検証してみたり、検証した専門家の情報を吟味する、習慣のない人は、プロパガンダに煽り続けられることになりかねません。

最近の「国葬」「統一教会」問題とされる事柄についても、後から検証すべきです。その渦中にあるときのマスコミ報道や野党の言説などを単純に信じ込んでしまえば、ウクライナ戦争と同じく期せずして、ロシアのプロパガンダに載せられて、ロシアを擁護するこようなことと同じようなことになりかねません。

ウクライナ戦争自体は、日本に間接的な影響は及ぼしますが、「もり・かけ・桜」「国葬」「旧統一教会」に関しては、日本に間接的に影響を及ぼしかねません。

ただ、過去にも同じようなことが何度もありながら、安倍元首相の首相在職日数は憲政史上最長を記録しました。国政選挙も過去最多の6連勝でした。


この要因に関して、安倍政権勝利の秘訣は支持固めの手法と野党分断のタイミングを狙った解散にあり「戦略、政局観、タイミングの読み方が完璧」と評価するむきもありますが、それだけでしょうか。

無論そうした側面もないとはいいませんが、これだけが安倍政権勝利の秘訣だといわれると、そうとは言い切れないと思います。

やはり、有権者の多くの支持があったからこそ、長期政権になったのだと思います。有権者の支持の中には、積極的な支持の他にも「野党には任せれば大変なことになるから」という消極的な支持もあるでしょうが、それにしても支持がなければ、選挙に連戦し、憲政史上最長の政権になりえるはずはありません。

基本的には、そういう支持があった上に、「戦略、政局観、タイミングの読み方が完璧」だったからこそ、最長政権になり得たのです。

ということは、国民はさほどプロパガンダにのせられていないということを示しているのかもしれません。

マスコミや野党は、「安倍がー、安倍がー」と、何かといえば安倍元総理大臣を貶め政治利用しようと躍起になっているようですが、これは「安倍氏」を恐れているようにしかみえません。しかし、これは間違いです。

安倍政権が選挙で6連勝し、憲政史上最長になったのは有権者の支持があったからこそであり、マスコミや野党が恐れるべきは本当は多く「有権者」なのです。

こういうと、マスコミや野党は「ポピュリズム」に走れば良いと考えるかもしれません。しかし、安倍政権はそれで長期政権になれたわけではありません。

時によっては、支持率を下げてでも、やるべきことは実施しました。たとえば、2015 年の安保法制の改定で、集団的自衛権の部分的な行使をできるようにしました。このときは、「もり・かけ・桜」どころではなく、新聞テレビは毎日批判を繰り返し、多数の人が国会前の反対デモに押しかけました。


それでも、安倍政権はこれを断行しました。そうして、今になって振り振り返ってみると、あのときにあのような安保法改正を行わなければ、世界情勢が激変した現在とんでもないことになっていましたし、現在のように他国と連携しつつ、中露などに対峙することなどできなかったはずです。

これを保守派は評価したのでしょうし、保守派でない人でも当時から評価した人や、当時は反対しても後になってから賛成した人もいたでしょう。結局、国会前に集まった多数のデモ隊も、ノイジー・マイノリティーにすぎないことがはっきりしました。このような姿勢を多くの人が評価したからこそ、安倍政権は、長期政権になりえたのです。

ちなみに、現在の岸田政権が単純に「ポピュリズム」に走り、「戦略、政局観、タイミングの読み方が完璧」だったとして、それだけで安倍政権と同程度がそれ以上に長期政権になるなどということはとても考えられないと思います。

日本の多く国民は、執拗なマスコミや野党のプロパガンダには一時煽られても、ある程度の期間をおけば、そのようなものには振り回されることがなくなるのです。

だから、マスコミや野党は、安倍元総理を恐れるのでしょうが、恐れる相手が間違っています。恐れるべきは国民なのです。

その本質を一番良く知っていたのは、安倍元総理その人だったのではないかと思います。そうして、マスコミ、野党は未だに多くの国民を恐れることなく、安倍元総理が亡くなってしまった現在でも安倍元総理を恐れているのでしょう。この誤りを是正しない限り、マスコミ、野党はもとより、岸田政権も衰退することになるでしょう。

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2022年9月9日金曜日

マネタリーベースが減少傾向、日本経済を良くするためは コロナ対応がなくなっても国債購入増で金融緩和維持を―【私の論評】政府は国債を大量発行し、防衛費増額、需給ギャップを埋める政策を速やかに実行し国民の不安を解消せよ(゚д゚)!

日本の解き方





 日銀が発表した8月のマネタリーベース(日銀が供給するお金の量)残高が前年同月比2・5%減と10年5カ月ぶりに前年同月の水準を下回った。

 マネタリーベースには、月中平均残高と月末残高があり、8月の平残は前年同月比0・4%増の659兆7138億円、末残は同2・5%減の644兆9826億円だった。末残の前年同月比がマイナスだったのは2012年3月以来だ。

 黒田東彦(はるひこ)氏が日銀総裁に就任した13年3月以降、1年ごとに、マネタリーベース平残の前年同月比の推移を見てみよう。13年が40・8%増、14年が41・3%増、15年が32・8%増、16年が24・0%増、17年が15・2%増、18年が6・5%増、19年が3・3%増、20年が11・7%増、21年が14・3%増、22年が4・4%増となっている。

 伸びが鈍ったのは、16年9月からイールドカーブ・コントロール(長短金利操作)を行って以降だ。その後、20年5月から安倍晋三元首相のいう「政府と日銀の連合軍」で、政府が国債発行、日銀は市場でそれを購入するとともに、コロナ対応の日銀貸出により盛り返したが、最近また伸びを欠いている。末残は今年4月の683兆4030億円をピークとして、それ以降は減少している。

 マネタリーベースは日銀のバランスシート(貸借対照表)の負債であり、資産の国債と貸付金にほぼ対応している。日銀が金融機関から国債を購入すれば、金融機関の日銀当座預金増となる。また、日銀が金融機関に貸出をすれば、それも日銀当座預金増になるからだ。

 20年のコロナ禍以前には、マネタリーベース増は日銀の国債購入増にほぼ対応していた。しかし、コロナ禍以降、日銀貸出が増加し、マネタリーベース増は国債購入増と貸出増に対応している。ちなみに、日銀貸出残高は、20年3月末に54兆3286億円だったが、22年3月末に151兆5328億円まで増加した。その後は、コロナ禍が収まりつつあるので、8月末で102兆4236億円まで急減している。

 日銀の国債残高は、20年3月末に485兆9181億円、22年3月末に526兆1736億円、同8月末で547兆6088億円だ。マネタリーベースは20年3月末に509兆8069億円、22年3月末に688兆327億円、同8月末で644兆9826億円となっている。

 要するに、最近におけるマネタリーベースの減少は、コロナ禍での日銀貸出がコロナの落ち着きとともに減少したためだ。

 コロナが経済に与える影響が少なくなっているのは朗報であるが、コロナ対応のための金融緩和要因はなくなりつつある。

 ウクライナへのロシア侵攻により世界では物価高になっているが、日銀はその日本への波及を恐れて、金融緩和に積極的でないようにみえる。コロナ対応がなくなっても、国債購入増で金融緩和を維持したほうが、日本経済にとってはいいだろう。日銀も、長期国債買入オペについて入札回数を増やすなど微修正して買入増を狙っているが、それでも力不足である。 (元内閣参事官・嘉悦大教授 高橋洋一)

【私の論評】政府は国債を大量発行し、防衛費増額、需給ギャップを埋める政策を速やかに実行し国民の不安を解消せよ(゚д゚)!

マネタリーベースとは、日本銀行が供給する資金量を示す指標です。「資金供給量」ともいい、紙幣と貨幣の発行高(現金)と、金融機関が決済などのために日銀に預けている当座預金残高の合計です。

マネタリーベース

国・金融機関以外の企業や家計など民間部門が保有する通貨の総量を示すマネーストック(旧マネーサプライ=通貨供給量)とは異なります。日銀は新たな量的緩和策で、金融政策の操作目標を従来の無担保コール翌日物の金利から、マネタリーベースに改めました。

日銀は不景気のときは金融機関が持つ国債を買い上げ、マネタリーベースを増やして経済を刺激しようとする。一方、景気が過熱しているときは、日銀が持つ国債を金融機関に売り払って資金を吸い上げる。マネタリーベースを減らすことで過度のインフレやバブルの発生を防ぎ、安定的な経済成長に誘導する。

日銀は国債の売り買いによって当座預金残高を直接動かせるので、マネタリーベースは金融政策の姿勢を示す一つの指標になります。2013 年3月のマネタリーベース(月中平均)は前年同月比19.8%増の134兆円で過去最高を記録しました。うち現金は87兆円で、当座預金は47兆円。従来の金融緩和でも既に大量の資金が供給されたことを示すものでした。

マネタリーベースを増やす背景には、利子が低い日銀の当座預金が積み上がれば、金融機関がもっと金利水準の高い企業への貸し出しや、収益率の高い株式や不動産投資信託(REIT)などに資金を回すようになり、経済が活性化するという考え方がありました。

さて今年8月のマネタリーベースの内訳は日銀当預が0.1%減の534兆4467億円、紙幣は3.0%増の120兆3622億円。貨幣は2.6%減の4兆9049億円と、現金両替時の手数料徴収が広がる中、上の記事にもあるように、過去最大の減少率が続いています。

8月末のマネタリーベース残高は644兆9826億円で、前月の665兆9614億円を大幅に下回りました。前年比2.5%減で12年3月以来のマイナス転換。日銀当座預金は519兆6523億円。

8月はコロナオペによる新規貸し出し1兆1713億円に対して、期落ちは約20兆5000億円に上りました。今後も期落ちが続き、マネタリーベースの平残は9月にも前年比マイナスに転じるとみられています。

日銀はマネタリーベースについて、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する「オーバーシュート型コミットメント」を掲げています。

その下でマネタリーベースは増加基調をたどり、コロナオペ導入後は、金融機関の積極的な利用で増加ペースが高まり、2020年8月から21年9月まで伸び率は10%を超えました。

コロナオペの制度縮小でマネタリーベースが減少しても、日銀はオーバーシュート型コミットメントには矛盾しないとの立場です。黒田東彦総裁は今年1月の記者会見で、オーバーシュート型コミットメントは「あくまでも(マネタリーベースの)拡大方針」と述べ、「短期的には振れたり一時的にマイナスになったりすることがあったとしても、基本的にマネタリーベースの拡大方針を続けることのコミットメントの意味は大きい」としました。

日銀黒田総裁

この言葉通りに、マネタリーベースの拡大を続けていただきたいものです。これを実行するために、政府は補正予算を組んで、防衛費増額やこのブログにも何度か掲載してきたように、需給ギャップ30兆円の解消などにあてるべきです。

そうして、財源は政府が国債を大量に発行して、日銀は国債購入増で金融緩和を維持すべきです。日本経済にとっては良いに決まっています。

ただ、そのような気配が全くみえず、「国葬」や「旧統一教会」などの問題といえるかも良くわからない問題に拘泥している政局に多くの人が不安を感じているようです。

これは、企業経営者は無論のこと、一般の人にも及んでいるようです。たとえば、結婚する意思があるかどうかを、独身の男女(18~34歳)に聞いたところ「一生結婚するつもりはない」と答えた男性は17・3%、女性は14・6%で、ともに過去最高だったことが2021年の「出生動向基本調査」で明らかになりました。国立社会保障・人口問題研究所が9日発表しました。男女とも、少子化の要因になっている未婚化・非婚化志向が一層加速していることをうかがわせました。


このことが、現在の政局の反映であるのかは、わかりませんが、それにしても現状のように、テレビをつければ、政府や野党は「国葬」、「旧統一教会」一色で、それに中露北の危険性についても煽られ、これでは不安を感じるなと言う方が無理だと思います。

政府は、国民の不安を払拭するためにも、エネルギー問題の解消、防衛費の増額、経済対策の実行などで、国民を安心させる政策を実行すべきです。これを実現するには、お金は必要不可欠であり、それを得るために、国債を大量に発行して、日銀は国債購入増で金融緩和を維持すべきです。

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2022年9月8日木曜日

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日本の解き方


財務省 国税庁

 財務省が発表した2021年度の法人企業統計で、全産業の経常利益が前年度比33・5%増の83兆9247億円と過去最大だった。企業の「内部留保」に当たる利益剰余金は6・6%増の516兆4750億円と初めて500兆円を超え、10年連続で最大を更新したという。

 統計をさらにみると、全産業の営業利益は30・2%増の54兆2156億円、設備投資は9・3%増の45兆6613億円。なお、設備投資は、有形固定資産(土地を除く)増減額、ソフトウエア増減額、減価償却費、特別減価償却費の合計である。

 利益剰余金の増加額は34兆3343億円なので、基本的には利益以上に他の金融資産を取り崩して設備投資したので、まずまずの数字である。

 金融緩和効果が出てきたものと思われる。それとともに、最近の「円安是正のために利上げ」というマスコミ論調がおかしいことを示している。

 国内総生産(GDP)統計を見ても、民間設備投資はまずまずだが、政府公共投資はさっぱりだ。政府が出てくれば、呼び水効果でさらに民間投資を伸ばすチャンスなのに残念で仕方ない。公共事業を評価する際に使われる社会的割引率は現在4%という法外な水準であり、その見直しなど政府がやるべきことは少なくなく、せっかくの民間投資が好調な状況を生かしていない。

 法人企業統計では、21年度のほか、22年4~6月の分も公表されている。全産業の営業利益は前年同期比13・1%増の17兆6716億円、経常利益は17・6%増の28兆3181億円。経常利益は製造業、非製造業のそれぞれでも過去最高である。

 営業利益が伸びているのは、コロナ禍からの経済・社会活動の正常化で業績回復が進んだからだ。

 また、経常利益が営業利益よりも伸びているのは、非営業利益の投資収益が伸びているからだ。受取利息等は7兆3573億円で過去最高だった。

 その主因は円安による海外投資収益の増加である。円安効果は輸出拡大という形でも現れるが、過去の海外投資収益という形でも表れる。

 一般に現地生産に移行していると輸出増にならないので、円安効果は限定的だといわれるが、現地生産なら海外投資を既に実施しているはずで、その場合には輸出増でなく海外投資収益増に替わっているはずだ。今回の法人企業統計では、その効果が強く表れている。

 設備投資は4・6%増の10兆6108億円だった。5期連続で前年比プラスで、民間設備投資の基調はいい。脱炭素やデジタル化への投資意欲は相変わらず堅調だ。

 円安でも企業収益は良くなったわけで、本コラムで筆者が円安ならGDPは伸びると主張していたことと整合的だ。

 企業収益増は法人税増になるので、その増収分を円安で困っているところ、例えば中小企業などに使うといい。いずれにしても、円安はGDP増になるので、その果実を有効に活用すればよく、角を矯めて牛を殺すような、円安是正という間違った対応をしてはいけない。 (元内閣参事官・嘉悦大教授 高橋洋一)

【私の論評】小鳥脳のマスコミと識者は、円高で日本が酷い目にあったことを、もう忘れたか(゚д゚)!

マスコミやいわゆる識者といわれる人々は、円高の時代はどうだったのかということをすっかり忘れているようです。高橋洋一氏が良くこれを揶揄して「小鳥脳」というのですが、本当に困ったものです。

民主党政権に政権交代があってからしばらくの間、日本は円高に悩まされたことなど、すっかり忘れたようです。本日は、このあたりのことを振り返っておきたいです。

2009年8月の衆院解散総選挙で自民党は歴史的大敗を喫し、民主党への政権交代が起こりました。民主党鳩山内閣の誕生しました。7月に亡くなられた、鳩山内閣の財務大臣の藤井裕久氏は円高原理主義者であると同時に、財政再建原理主義者でした。

藤井裕久氏

藤井氏が財務大臣ということで、民主党政権誕生の時点で円高は放置しつつ、国民生活よりも財政規律を優先するという極めて愚かな路線が確定してしまいました。

この超円高によって、製造業の海外移転がさらに進み、国内産業は衰退していきました。円高によって海外からの輸入品の競争力が相対的に強くなり、国内産業も大打撃を受けました。

この頃には、あまりの円高のため日本で部品を組み立てて、海外に輸出するより、中国や韓国で、日本から部品を購入して組み立てたほうがはるかにコストがかからないという状況になりました。

そのため、製造業の海外移転がすすみましたし、比較的日本に近い中国や韓国は、輸送費もあまりかからず、日本から部品や素材を輸入でき、それを前提として様々な製品開発ができたため、日本の製造業より圧倒的に有利となりました。

そのため、日本の製造業は衰退していきました。良く、日本企業は創造性が少ないとか、生産性が低いがために、衰退したなどといわれていましたが、それは日本の製造業の衰退の真の要因ではありません。行き過ぎた円高こそが日本の製造業を衰退させた最大の要因です。

さらに、リーマンショック後のさらなる超円高によって、日本の産業は衰退してしまいました。これを民主党政権は放置しまし、日銀に金融緩和を促すようなことは一切しませんでした。日銀も、マネタリーベースを増やすことはほとんどしませんでした。まさに、悪夢でした。

ドル円相場は東日本大震災の直前の2011年2月には1ドル81円46銭という記録的水準に達しました。

2022年8月30日現在で1ドルは約138円です。当時と約60円も違ったのです。とんでもない違いです。

鳩山内閣は円高放置政策のみではなく、郵政民営化の見直しと称した逆回転政策を実行しました。完全民営化予定だった郵政三事業を半官半民の中途半端な状態に戻す法律も可決させました。

2010年6月に鳩山内閣が退陣し、菅直人氏を首班とする菅内閣が成立しました。菅首相は迷走するばかりで民主党が当初掲げたマニフェストは何一つ実現しませんでした。無論円高も放置です。

2011年3月、菅首相は外国人からの献金問題の発覚で追い詰められ、退陣までのカウントダウンが始まりました。これで民主党政権が終わるのでは、と思われたその時の3月11日に東北地方を中心とするマグニチュード8.1の大地震が起こってしまったのです。献金問題は、大震災でうやむやになってしまったのです。何と日本人にとって不幸なことだったことでしょう。


東日本大震災発生から2日しか経っていない3月13日、自民党の谷垣禎一総裁は菅首相に復興支援の財源を確保する目的で臨時増税することを提案します。なんという愚かなことをしたのでしょう。地震は天災、原発事故は天災と人災の組み合わせでしたが、この復興増税だけは完全な人災でした。

もちろん反対意見もありました。野党の自民党の中川秀直元幹事長は「はじめに増税ありきで、どうして国民が奮い立つようなビジョンを作ることができるのか」と述べていますし、連立与党の国民新党の亀井静香代表は「谷垣は気が狂っている」と痛烈に批判しています。ところが、彼らは少数派でした。

マスコミは、当時大増税キャンペーンをはり、日本中が増税一色に染まり、国民の側からも反対の声は上がらなくなりました。増税に反対する人はまるで「被災地を見捨てる非国民」であるかのような雰囲気さえありました。

そうして、復興増税法案はあっという間に国会を通ってしまったのです。これは今から考えると、日本人の優しさにつけ込んだ経済犯罪ともいえる暴挙です。復興財源として増税が適切でない理由は簡単です。国債と異なり、増税では財源の手当が遅すぎますし、あまりに少なすぎですし、世代間の応分な負担を図れないからです。

また、税率を上げても税収がその金額に達するかどうか確約することもできません。1998年に消費増税の影響で税収全体が落ち込んだ過去もあります。

阪神淡路大震災後は増税ではなく国債で復興しました。いや、それどころか自然災害などの復興を増税で賄ったのは、古今東西を問わずこのときの日本だけです。

震災対応で醜態をさらした菅首相の支持率は急落しました。憲政の常道に従うなら、ここで民主党は解散総選挙をすべきでしたが、もちろん彼らはそのような日本の伝統に従うわけがありません。

政権はたらい回しにされ、野田佳彦氏を首班とする野田内閣が成立しました。この野田内閣こそが後々禍根を残す最悪の決断をしてしまいました。かの「社会保障と税の一体改革」、いわゆる三党合意です。

いわゆるリフレ派といわれる人々の、「デフレ下での増税で税収は減る」「名目GDPの上昇なくして財政再建無し」「デフレは日銀が招いた人災」「金利が上がって財政破綻はウソ」というし主張はかき消され、消費税増税はもはや既定路線でした。

財務省が消費税増税の必要性として挙げる理由は、過去の少なくとも3回変っています。
  1. 消費税導入時の平成元年の時点→直間比率の見直し
  2. 橋本内閣の消費税増税から野田内閣以前まで→財政危機、財政再建
  3. 野田内閣以降→社会保障の安定財源
昭和の頃、日本の所得税の最高税率は住民税も含めて88%でした。消費税が導入された平成元年には、並行して所得税の大幅な減税も行われました。当時から、所得税の最高税率は住民税も含めて55%となっています。直間比率の見直しは既に終了していたと結論づけて良いでしょう。さすがに財務省も現在では直間比率などということは言わなくなりました。

財政危機説ですが、残念ながらこの説には根拠がありません。政府債務は完済する必要が無く、債務総額よりも債務の維持可能性が重要だからです。政府は永遠に生きると仮定されており、ある条件さえ満たせば永遠に借り換え続けることも可能です。また特別会計まで含めた政府のバランスシートからも、日本が財政危機ではないことが導き出せます。

政府が日銀に売却した国債は、買い戻す必要などありません。なぜなら金利は国庫納付金として政府に環流し、元本も同額の国債を渡すことで事実上永久に借り換えることが可能だからです。

さらに、このブログの読者であれぱ、おわかりのように、日銀と政府の連結である、統合政府ベースでは、そもそも日本の財政はそもそもそれほど不健全な内容ではありませんでした。私自身も、このブログで資産したように、統合政府レベルでは2018年あたりには、日本の順債務はゼロという結果になりました。

実際に2018年IMF財政モニターにおいて、日本の純債務はゼロだと認定されています。このことを繰り返しリフレ派などに、突かれて返答に窮した財務省は再び論点を変え、今度は社会保障の充実のために財源が必要だと言い始めたのです。

消費税の社会保障目的税化というのは、先進国では実例がありません。なぜなら、どの先進国においても社会保障財源は基本的に社会保険料だからです。

社会保障が保険で賄われる限り、それを負担する人と給付を受ける人は同一人物です。デタラメな給付はいずれ自分のクビを絞めるため、歳出に抑制が効きます。ところが、消費税を財源とした場合、負担する人が必ずしも恩恵を受けるわけでもなく、給付を受ける人も誰が負担しているか分かりません。こうなると歳出に抑制が効かず、給付が無制限に拡大する可能性があります。

直間比率の見直しもとっくに終わっていましたし、財政危機もウソ、社会保障財源というのもデタラメ。つまり、消費税を増税する正当な根拠は存在していないのです。ではなぜ消費税を増税するのでしょうか。それは財務省の権限が大きくなるからです。

2012年12月に誕生した安倍内閣はアベノミクス3本の矢を経済政策としました。第一の矢が金融緩和、第二の矢が大胆な財政出動、第三の矢が成長戦略です。変動相場制の国において最も重要なのは金融政策です。

2012年12月に誕生した第二次安倍内閣

安倍政権の期間には、残念ながら安倍総理をもってしてもさすがに三党合意を崩せず、結局2回の消費税増税をしてしまいましたが、金融緩和は今でも継続して行われています。そのせいもあってか、安倍政権の期間中には、雇用が劇的に改善しました。

経済が良くなる時というのは、徐々に良くなることが多いので、それを実感することはなかなかできないのですが、この劇的改善は、私自身ははっきり認識することができました。それは、民主党政権時代に会社で人事を担当したからだと思います。私の人生の中で、経済政策の効果をはっきり認識できたのはこの時が初めてです。

以上、財政の話も交えて、円高の過去の弊害を述べました。円高には、製造業の衰退と、雇用の悪化という大きな弊害があります。これを私達国民は、民主党政権の間に嫌というほど味わったはずです。しかし、「小鳥脳」のマスコミや識者はこれをすっかり忘れたようです。

「悪い円安」  と語る人々は、そもそも統計資料を参照していないようです。

以下に、総務省統計局のHPから2020年基準、消費者物価指数のポイント7月分(2022年8月19日公表)を掲載しておきます。
(1)  総合指数は2020年を100として102.3
    前年同月比は2.6%の上昇  
(2)  生鮮食品を除く総合指数は102.2
    前年同月比は2.4%の上昇   
(3)  生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は100.6
    前年同月比は1.2%の上昇  

日本の物価高を推進しているのは、エネルギー価格であり、エネルギー価格の高騰が生鮮食品などの物価高の原因になっているのです。コアコアCPIでは、2020年基準では1.2%しか上がっていないのです。 こちらの数字のほうが、日本の実体経済を現しています。

この場合、金融引締をしたらどうなるでしょうか。 まだ、コアコアCPIが2%にも達していないのに、そうすれば、また日本はデフレに逆戻りです。

そのようなことをすれば、また民主党時代のような悪夢の再現になるかもしれません。そのようなことをするくらいなら、高橋洋一氏が主張するように、円安はそのままにして、法人税増税分を中小企業の救済にあてるなどの措置をすべきです。

さらに、できれば、消費税減税、ガソリン税減勢などの減勢をすべきです。それとともに、それ以上金融緩和を継続しても雇用が良くならない状況に至るまでは、緩和を継続すべきです。

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2022年9月7日水曜日

中国軍がロシア軍事演習に参加 必要な日米欧の怒り―【私の論評】満面の笑みを浮かべてオホーツク海で、大演習をしたほうがよほど効果的(゚д゚)!

中国軍がロシア軍事演習に参加 必要な日米欧の怒り

岡崎研究所

 トム・ローガン(Washington Examiner 記者)が、8月22日付のウォールストリート・ジャーナル紙(WSJ)に、「中国は欧州連合(EU)の軸を失う危険を冒している。ロシアの軍事演習への人民解放軍(PLA)参加は欧州での怒りに火をつけるべきである」との記事を書いている。


 中国の国防省は、先週、PLAがロシアのVostok(東)軍事演習に参加すると述べた。ロシア軍によるウクライナ攻撃が続く中、欧州はこの演習への中国の参加にどう対応するのか。

 中国は、欧州企業の中国市場へのアクセスを制限したり、ウイグル人へのジェノサイド、香港民主主義の破壊を行ったり、台湾を威嚇したりしている。これらの行為は、中国の外交的傲慢さもあり、欧州を怒らせている。駐仏中国大使は、PLAが台湾に上陸した時には、台湾人は再教育されなければならないと述べた。

 人権侵害に不満を示した欧州議会議員に制裁を課すとの中国の決定に対して、欧州議会は怒った。中国は、昨年リトアニアが「台湾」代表処をヴィルニスに開設するのを許した後、リトアニアに圧力をかけた。

 PLAのVostok参加は単なる軍事パレードではない。これは戦争で指揮官が効果的に戦闘するための指揮・参謀演習である。

 Vostok2020に参加し、中国は、ウクライナで戦争しているロシア軍に支持を与えている。この戦争は国家主権の尊重を脅威にさらし、欧州の安定を脅かしている。

 欧州は共産中国は友人ではないことを認識しなければならない。欧州の指導者は中国のVostok冒険主義に怒るべきであり、中国との深い協力を拒否すべきである。

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 この論説は、欧中関係が悪化していることを描写した記事であり、珍しいので取り上げた。中国が、ウクライナ戦争の最中に、今年もロシアのVostok演習に参加することについて、欧州に強い反発があることを示している。

 中国のウクライナ戦争に対する立場には欧米や日本と相当異なる側面がある。ロシアのウクライナ侵攻後の3月2日のロシア非難国連総会決議に中国は棄権をしたし、西側がロシアに課している経済制裁を「一方的制裁」と非難し、そのうえ、経済制裁の効果を掘り崩すロシアからの石油、ガスの輸入を増やしている。

欧州はどこまで踏み込めるのか

 対露武器供与はしていないようであるが、日本の周辺海域や空域での中露共同演習を行っている。このVostok演習も日本に近い東部ロシアで行われる。日本がこういう演習に今の状況で不快感を抱くのは当然であるが、ウクライナ戦争の関係で欧州諸国にもこういう中国のやり方に強い不満があることは想像に難くない。

 この論説の筆者は、欧州は怒るべきであるとか、共産中国は友人ではないと認識しなければならないとか言っている。しかし、事実として欧州が怒っているのか、共産中国は友人ではないと考えられているのかについては、事実を指摘したうえでの議論を残念ながら十分にしていない。

 欧中関係が今後どう推移するかは世界情勢に大きな影響があるが、日米欧は結束してウクライナ戦争への中国の対応への不満を示していくのが正解であると思われる。中国がロシアを支持し続けることについては、それなりの代償を日米欧は課していくべきであろう。


【私の論評】満面の笑みを浮かべてオホーツク海で、大演習をしたほうがよほど効果的(゚д゚)!

ロシアは極東での大規模な軍事演習「ボストーク」を予定より2日間、遅らせて実施することを決めました。ウクライナ侵攻の長期化が影響しているとみられ、規模も大幅に縮小します。

ロシアの国防省は29日、極東での大規模軍事演習「ボストーク2022」について、当初の開始予定の30日から2日間ずらして9月1日から7日まで実施すると発表しました。

ボストーク22に参加するためロシアに到着した人民解放軍

前回、2018年の演習はおよそ30万人が参加したとされていますが、今回は5万人以上に縮小しました。

こうした日程変更や規模の縮小は、ウクライナ侵攻の長期化が影響しているとみられます。

演習には中国をはじめ、アルジェリア、インド、ラオス、モンゴル、ニカラグア、シリアのほか、旧ソ連のアルメニア、アゼルバイジャン、ベラルーシ、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン等少なくとも13カ国が参加し、北方領土の択捉島なども使用されるとみられます。

国防省によると、今回の演習には140機の軍用機と5000以上の軍事兵器を投入。4年前の演習には軍用機1000機のほか、3万6000台の戦車や装甲車などが投入されていました。

ロチャン軍事コンサルタントのディレクター、コンラッド・ムジカ氏 本人のツイッターより

ポーランドに拠点を置くロチャン軍事コンサルタントのディレクター、コンラッド・ムジカ氏は「地上部隊の全戦力がウクライナでの作戦に従事しているため、今回の演習の規模はここ数年で最小になる」と指摘しました。

ロシア極東の東部軍管区の部隊の70─80%がウクライナに配備されているため、今回の演習に5万人を投入することも「不可能」とし、1万─1万5000人が妥当な規模になるとの見方を示しました。

規模が縮小されるとはいえ、今回の演習はロシアと中国の軍事的な動きを見極めるため、日本や韓国などが緊密に注視しています。

中国政府は2019年7月24日、4年ぶりに「新時代における中国国防」(国防白書)を発表し、対外軍事交流のトップに挙げたのが中ロ軍事交流でした。ロシア軍との協力は「世界の安定に重要な意義がある」と明記し、軍事訓練や装備、技術面での連携を深めるとうたっていました。

中国国防省報道官も白書の背景説明で「中ロは互いの核心的利益を支持し、実戦を想定した訓練で協力を深める」と強調しました。

白書は「中ロ両軍関係は高いレベルのオペレーションを引き続き保持し、両国の新時代における全面的戦略協力パートナーシップを不断に充実させるため、グローバルな戦略的安定にとって重要な意義を持つ」と位置付けています。

具体的には①2012年以来、中ロ両軍は計7次にわたって戦略協議を実施②18年8、9月、中国軍がロシア軍の求めに応じ初めて「ボストーク」(東方)戦略演習に参加しました。③中国軍は19年9月16~21日、ロシア軍の軍事演習「ツェントル2019」に参加―を挙げました。

「ボストーク」演習は元来、仮想敵の中国および日米の両面を想定した演習でした。中国軍の初参加で、中国は「仮想敵」ではなく「友軍」として扱われるようになったことになります。

「ツェントル」演習は「ロシア南部に侵入したイスラム系テロ組織が独立国家を樹立した」との想定に基づく対テロ合同作戦。人民解放軍の兵員1600人、航空機・ヘリ30機が参加しました。

中ロ軍事協力は、尖閣(中国名 釣魚島)周辺でも行われていまし。16年6月9日、中国フリゲート艦とロシア駆逐艦3隻が、約3時間の間に久場島と大正島の接続水域を航行したのも一例。この時中国側は「接続水域に入った自衛艦を追尾した」と説明しました。

一方、中国中央テレビは「日本は中ロ軍艦による『共同行動』を認めようとせず、政府発表でも中ロ軍艦が『同じ時間帯』に同じ海域に出現したとしか述べていない」と指摘。その理由として、安倍政権がプーチンと平和条約交渉を進めたいため「中ロ共同行動」を認めたくないからだ」と解説してみせました。

海上演習も、2014年に「海上連携2014」が東シナ海で実施され、15年には中国艦隊が黒海のロシア海軍基地を訪問しました。16年の「海上連携2016」は南シナ海で実施され、北極版の「氷上シルクロード」注4計画でも、ロシアとの協力を鮮明にしています。

「中ロ同盟」の仮想敵である米国はどう見ているでしょう。「新アメリカ安全保障センター」のアンドレア・ケンドール=テイラーは、「中ロパートナーシップは米国益の脅威か? 手遅れになる前に行動を」で「中ロパートナーシップをどう見るべきか、欧米専門家の間でコンセンサスがないため、ワシントンの政策決定者は中ロ関係の有害な作用を阻止できなくなるまで議論し続けるリスクを冒している」との問題意識から、幾つかの警告を発している。そのポイントを箇条書きにします。
1、 中ロはあらゆる領域で協力関係を強化している。軍事、投資、交通、宇宙航行、軍事転用可能な敏感な技術開発分野での連携・協力強化は、将来にわたって継続。
2、 両国の政治体制と、指導者に権力を集中する権威主義も共通
3、 中国の「一帯一路」とロシアの「ユーラシア経済連合」は連結。
4、 冷戦期とは異なり、中国が同盟のシニアパートナーになる
5、 両国が、南シナ海とウクライナで同時に連携行動をとったり、サイバー攻撃や情報戦で協力したりすれば、アメリカは効果的に対応できない―などを挙げている。
このため論文は「どちらかの行動が、もう一方の行動を増幅させる」と、危機感を募らせ「中ロを離間させる戦略が必要」と説いています。

「新アメリカ安全保障センター」のアンドレア・ケンドール=テイラー

露国防省の発表によると、ボストーク22の一環として、1日にはハバロフスク地方などで、複数の戦闘機による迎撃訓練を実施した。今後、日本海とオホーツク海で露軍太平洋艦隊などの艦艇50隻以上が参加し、対空・対艦を想定した砲撃、潜水艦の探索などの演習を実施するとしていました。

日本海では、中国海軍と共同でシーレーン(海上交通路)と経済水域の防衛訓練を行うとも強調しました。演習場には国後、択捉島も含まれており、日本政府は北方4島を除外するよう申し入れていました。

本来、中国に対して最も大きな怒りをぶつけるべきは、日本のはずです。

このような最中、安倍元総理大臣は、暗殺され、現在の日本の政局は、安倍元総理の国葬を巡る論戦と、旧統一教会の問題一色です。このようなことで良いのでしょうか。国葬に関しては、中露の行動を牽制する場ともなりえます。それを、何よりも安倍元総理は望んでいると思います。

本来であれば、日本が主導して、オホーツク海で、日米英豪などの大演習を行い、それもできれば、北海道の一部を北方領土にみたたて、日米英豪などで、北方領土奪還上陸作戦大演習など行うべきです。日米英も潜水艦隊を派遣して、中露の艦艇に見立てた艦艇を潜水艦で撃沈するなどすべきです。

特に、日米英は、ASW(対潜水艦戦争)では中露に対して格段に勝っていますから、日米英と中露が海戦になった場合、中露には全く勝ち目がないことを誇示すべきでしょう。

さらに、北方領土に近いところで、潜水艦による島嶼封鎖演習を実施し、中露が台湾や、北方領土に軍隊を送り、そこを占拠しようにも、潜水艦で包囲されてしまえば、補給が絶たれ、お手上げになることを実証してみせるなどのこともすべきです。日本が得意の機雷敷設も併用すれば、かなり実践的な演習になります。

中露の心胆を寒からしめる訓練をすべきと思います。それだけに及ばず、それぞれの国の国民にこうした演習の意味合いを周知すべきと思います。

中国に対する対抗策として、ロシアに対して融和的な行動をしていた安倍総理ですが、 ロシアがウクライナに侵攻した直後には以下のようなツイートをしていました。
安倍元総理の遺志を継ぐという意味でも、日本は中露のボストーク22に対抗する大演習の音頭をとり実行すべきです。

日米欧の怒りを表明しても、ほんど意味がありません。そんなことより、にっこり笑って大演習をしたほうがよほど効果的です。無論、怒りの表明が、大演習やさらに厳しい制裁であれば、怒るのも良いと思います。しかし、怒っているだけで、何も行動しないければ、かえって中露北をつけあがらせるだけになります。

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