2022年10月31日月曜日

岸田「30兆円」経済対策で、またぞろ「大増税」誘導…財務省のペテンの手口―【私の論評】『骨太の方針』に見る、財務真理教団騙しの手口(゚д゚)!

岸田「30兆円」経済対策で、またぞろ「大増税」誘導…財務省のペテンの手口
Γ規模は結果オーライだが

 10月28日夕刻に閣議決定された総合経済対策は、電気・都市ガス料金の負担軽減など物価高騰への対応が柱で、国費の一般会計歳出が29兆1000億円程度とされる。規模や内容、時期はそれぞれ妥当なものだろうか。

 経済対策は規模と内容で評価できるが、まず規模が十分でないと話にならない。というのは、まずGDPギャップを埋めないことには、半年程度経てば失業が発生してしまうからだ。雇用の確保は政府に課せられた最大の責務であり、GDPギャップを無視している一部の識者は、マクロ経済政策を語る資格がない。


 筆者もよく持ち出すGDPギャップについて、岸田総理が会見で言及していたのはまともだった。GDPギャップは、失業率を最低水準と思われる2%台半ば(いわゆるNAIRU:インフレを加速しない失業率)とするような有効需要で算出したものだ。

 筆者は真のGDPギャップは30兆円程度としている。ところが岸田首相は、内閣府の15兆円程度という数字を援用しており、下振れしてGDPギャップが拡大するおそれを考慮したと発言していた。その意味で筆者とはGDPギャップの見方が厳密には異なり、完全に同じ意見ではないが、30兆円程度の経済対策なので結果オーライだ。

 実際に経済生産を押し上げる効果のある「真水」はどの程度か。詳しくは補正予算書をみないとわからないが、内閣府の経済効果試算でGDPを4.6%押し上げるというのであれば、真水は25兆円程度以上になる。

 報道によれば、当初の財務省案はもっと少なかったが、自民党内の安倍派勢力(萩生田政調会長、世耕弘成参議院幹事長ら)が岸田首相にプレッシャーをかけて規模拡大に貢献したという。それが事実であれば「良い政治主導」だったといえる。

 野党の案は、規模において政府案より少ないもので、情けない。もう少しマクロ経済を勉強してもらいたい。このままでは、財務省の応援団になってしまい、失業を容認するなど国民生活に害悪の存在になってしまう。

 マスコミは、財務省からのレク通りに中身が重要だといい、その中身の積み上げの結果、この規模になったという記事を書いている。

Γ補助金系ばかりなのはどうなのか

一部にはGDPギャップを超えた規模を求める意見もある。しかし有効需要が総供給を超えると、雇用の確保はできるが、超過需要はインフレ率を必要以上に高くするという弊害が出る。筆者は、失業率をNAIRUに設定してGDPギャップを算出しているが、それを埋める以上の規模の経済対策は、インフレを加速するだけで無意味になる。

筆者は「埋蔵金」について50兆円程度と発言してきた。外為特会(外国為替資金特別会計)で30兆円、国債整理基金(債務償還費)などで20兆円がその内訳だ。しかし、GDPギャップを意識しているので、それをすべて経済対策に充てろとはいわない。

経済対策は30兆円で、残り20兆円は防衛基金にして後年度の財政支出とするなど、注意して発言している。財務省は筆者の発言で不適切な点があると、すぐに反応し誹謗中傷を裏で行うからだ。

いずれにしても、規模はまずまずだが、中身はどうか。有効需要の原理から言えば、中身は何であっても効果にそれほどの差があるわけでない。ならば何でも良いかと言えばそうでもない。中身の違いによって、執行率に差がでるかだ。当然のことながら、執行率が悪いと、補正予算を組んでも有効需要が高まらず、GDPギャップが残ったままになってしまう。

経済対策の中身は、物価対策12.2兆円、円安活用4.8兆円、新しい資本主義6.7兆円、安心・安全10.6兆円、予備費4.7兆円などだ。

Γ埋蔵金と「増収」という手がある

時期についていえば、本来であれば参院選前に打ち出しておくべきだった。折り悪く、政府税調で、「未来永劫10%では日本の財政もたない」などの声が委員から出たと報じられている。消費増税の議論をこの時期にすることは妥当なのか。

まず財政危機でもたないというのなら、そのデータを示すべきだ。かつて財務事務次官が「ワニの口」で財政危機を煽ったが、故安倍元総理は「財政の一部しか見ていないお粗末なもの」と喝破した。財務事務次官たる者が会計無知を曝け出したお笑いだった。

故安倍元総理は、民主党政権の「負の遺産」である二度の消費増税をやらざるを得なかった。不本意ながらそれをやった後、「後10年は増税不要」といったが、いなくなってからすぐに増税を言い出す輩は、増税に取り憑かれているのだろう。

小泉政権時も、やはり財務省は消費増税をやりたがった。しかし当時の中川秀直政調会長は、増税の前にやることがあるといった。(1)天下りに伴う行政の無駄カット、(2)埋蔵金の発掘、(3)成長などによる「増収」が、増税より先というわけだ。当時の小泉総理もその順番だと同調した。野党も、野田佳彦氏は(1)を「白アリ退治」と称し、増税前にやることがあると言っていた。

そこで、筆者らは、埋蔵金発掘などを行った。結果として60兆円ほどの財源を捻出できたので、結果として小泉政権では増税をほとんど行う必要がなくなった。

財務省の増税路線を抑えられるのは、政治である。政府は財務省に牛耳られるので、自民党や野党の役割が大きい。ところが、現在は自民党内とりわけ安倍氏を失った清和会は政調会長などキーパーソンを出しているものの、政策論争をしている余裕がないほどガタガタである。さらに、野党からもまともな意見があまり出ていない。財務省もそうした政治情勢を見切って、政府税調を使って増税をぶつけてきているのだ。

埋蔵金は、本コラムなど書いたように、外為特会などで50兆円ほど発掘可能だし、円安による成長で「増収」もある。

さらに、「増収」では、インボイス導入という手もある。インボイス導入については、市民グループや左派政党の反対があるが、消費税導入されている国ではどこでも導入されている普遍的な制度だ。

これまで日本ではインボイス制度がなかったため、消費勢非課税業者が消費税をとりつつ、それを納税しないで自分の利益としてきた。いわゆる「益税」問題だ。インボイスは各取引で消費税を明記するもので、「益税」をなくし税のゴマカシを防ぐものだ。

筆者は、消費税率の引き上げ(増税)は賛同しかねるが、消費税を公平に取ることで、「増収」になるのはいいと思う。インボイスにより、税の公平性が確保され、結果として増収になればなおいい。

政府税調は、財政の包括的分析を行い、その上で増税の前に(1)無駄カット、(2)埋蔵金、(3)増収を議論すべきではないか。より説得的に財政議論ができるはずだ。

執行率の差は、「補助金系」と「減税系」を比較すると、後者のほうがはるかにいい。その観点から見ると、減税系がほとんどないのは懸念材料だ。しかも、補助金系の小玉(小さな予算)ばかりで、減税系の大玉(大きな予算)がないので、執行残が予想され、結果としてGDPアップ効果がなくなるのではないか。予備費4.7兆円を設けること自体は悪くないが、執行残になるとGDP押し上げにならない点は指摘しておきたい。

なお、財源も不透明だ。つなぎ国債で増税となるとまずい。ここは埋蔵金の活用の出番であり、増税の出番はない。

【私の論評】『骨太の方針』に見る、財務真理教団騙しの手口(゚д゚)!

10月28日夕刻に閣議決定された総合経済対策ですが、来年1月に招集される通常国会に提出され、衆参両院(予算委員会・本会議)での審議を経て3月末までに議決されることになります。


因みに、予算案を可決しただけでは予算を執行することはできません。

予算案の議決は金額を決めただけの話で、可決された予算を政府が執行するためには、およそ200件ちかい関連法案も同時に審議のうえ議決されなければなりません。

当たり前ですが、政府は法律に基づいて予算を執行します。

私たち日本国民の国家予算は、毎年このような過程を経て成立しています。

さて、概算要求基準は各府省庁が翌年度の予算要求を財務省に出す際の「上限ルール」ですが、実は2014年以降は歳出全体の上限は設定されていません。

そのかわり、2015年に閣議決定された『骨太の方針』によって「社会保障関係費以外の歳出の増加は3年間で1000億円以内にする」ことが明記されており、その後、毎年の『骨太の方針』でこれが継続的に踏襲されています。

即ち、3年間で1000億円ということは、社会保障費以外の歳出、例えば防衛費や教育費は年間333億円までしか増額できないという枠が嵌められているわけです。

実は財務省が緊縮財政を正当化する法的根拠はここ(骨太の方針2015)にあったのです。

しかも驚いたことに、『骨太の方針2015』の本文中にはこの記述はありません。

注釈として「安倍政権のこれまでの3年間の取り組みでは一般会計の総額の実質的な増加が1.6兆円程度となっていること、経済・物価動向等を踏まえ、その基調を2018年度まで継続させていくこととする」の一言を添え、本文中に「社会保障関係費の増額を3年間で1.5兆円までに抑える」と記載されていることから、差し引きして「社会保障費以外の歳出の増額は3年間で0.1兆円(1000億円)とする」ことが盛り込まれているのです。

仄聞するところによると、当時の安倍総理でさえ、この注釈のことを知らなかったとされています。

2022年「骨太の方針」を巡る財政政策検討本部の議論で、このキャップのことが分かりました。

2022年「骨太の方針」概要 クリックすると拡大します

安倍元総理は次のようなことを話していました。

社会保障費の5,000億以外について議論した記憶が全然ない。もちろん、私は当時、総理大臣であった私の責任ではある。だか全く気付かなかった。当時の官邸官僚や、いろんな人に聞いているんですが、「そんなこと議論していないよね」ということでした。脚注に書いてあることを盾にとって、あまりにも不誠実ではないか。

おそらく、文書とりまとの職員が、財務省から要求されて文章を入れたのでしょう。

財務省は脚注のところの説明をしませんでしたし、審議する人たちも脚注でから重要でないと判断し読まなかったのでしょう。

当時の安倍総理がが知らなかったというより、おそらくは財務省が総理に知られないようにこっそりと注釈で盛り込んだ、と言ったほうが正確だと考えられます。

総理を辞任された後にこのことを知った安倍氏は、我が国の財政運営を積極財政に転じさせるために財務省と闘っていく決意を顕にしていたそうです。


ところが、その矢先に凶弾に倒れてしまいました。

収支均衡至上主義の財務省と真正面から闘うことのできる有力な政治家を、私たちは失ってしまったのです。

確かに、積極財政派にとっては、大きな戦力を失ってしまいましたが、少しでも多くの政治家が、昨日もこのブロクで述べたように萩生田光一政調会長のように財務省と闘う政治家になっていただきたいものです。

国民から見放され、財務真理教団にはカモにされる。岸田総理とて、そんなふうになるために総裁選に出たのではないでしょう。 

ここが勝負の時です。未来永劫「財務省の操り人形」と言われて石を投げられるか、それとも、国難に際して「大型補正予算」で民を救った大宰相となるか。今、岸田総理はその瀬戸際に立たされています。

 ただ、最も実施しやすいはずの「減税」は実施しないことで、閣議決定してしまいました。それでも、今後財源などを巡って攻防があるはずです。これに対して、財務省に押しまくられ、木偶の坊のようになり、増税ラッシュなどで国民をいたぶるような真似だけはやめていただきたいものです。

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2022年10月30日日曜日

経済対策を懸けた仁義なき戦い 萩生田政調会長を激怒させた財務省の“禁じ手” 「責任を取るのはあなたたちじゃない」―【私の論評】萩生田氏のように闘う政治家を一人でも多く増やせ(゚д゚)!

経済対策を懸けた仁義なき戦い 萩生田政調会長を激怒させた財務省の“禁じ手” 「責任を取るのはあなたたちじゃない」

「禁じ手には禁じ手で返した」。
自民党の政策責任者・萩生田光一政調会長は、総合経済対策を巡る財務省との攻防をこう表現した。与党四役の一人を怒らせた、財務省の“禁じ手”とは一体何だったのか。
29兆1000億円の巨額予算を巡る“仁義なき戦い”の舞台裏を追った。

自民党政調全体会議(10月26日午後)

■会議中に入った岸田総理からの電話
10月26日午後、東京・平河町の自民党本部9階の会議室。物価高や円安などに対応するための総合経済対策をテーマにした会議を取り仕切っていた、萩生田政調会長の携帯電話に着信が入る。電話の主は岸田総理だった。

「これで了承しているのか」

岸田総理が電話で確認したものは、総合経済対策の総額だった。その直前、総理官邸を訪れた鈴木財務大臣から「25兆円」との報告を受けていたが、昨年並みの「30兆円規模」を求めてきた萩生田氏らが納得する数字だとは到底思えなかったのだ。 

「今、議論しているところで、了承はしていません」
「そうか、ごめんな」

萩生田氏の返事に、岸田総理は思わず謝った。自民党内での会議が佳境を迎えているタイミングであることを把握していなかったからだ。

決定に進んでいた総合経済対策がこの電話で一気に振り出しに戻った。
「規模は大事」と言い続けていた総理も「これでは足りない」との認識を示したという。

■「責任取るのはあなたたちじゃない」静かな怒りに青ざめる財務官僚
与党の国会議員たちが総合経済対策の検討を重ねている最中に、総理にその全体像の報告を行う財務省の姿は、与党の議論をまるで無視するかのように映る。萩生田氏にとっては、まさに掟破りの“禁じ手”そのものだった。

岸田総理との電話を終え、会議室に戻った萩生田氏は憮然とした表情でマイクを握った。居並ぶ国会議員や官僚らを前に、岸田総理との電話のやり取りを明かしたのだ。

「党で経済対策の中身について議論をしている最中に財務省はマナー違反だ」

抑制的ではあるが、明らかな怒りが込められた言葉に会場は騒然となったという。

安倍政権を官房副長官として支えた経験のある萩生田氏にとって、総理と一対一で行った会話の内容を公表することもまた“禁じ手”であった。あえて、その“禁じ手”を使ったのは、経済対策を巡る財務省との戦いに決して負けないとの決意の表れだった。

「政策の責任をとるのはあなたたちじゃない、国民に選挙で選ばれた我々なんだ。結果の責任は我々が問われるんだ」

参加者によると、会議に出席していた財務官僚はそう指摘されるとみるみる顔色が青ざめていったという。

自民党政務調査会のメンバーからも「財政民主主義を破壊する行為だ」「財務省はおかしいぞ」などと批判の声が上がっていった。

■「もう一度、規模を見直せ」岸田総理が飛ばした指示
「景気の下振れリスクも考慮して、もう一度、規模を見直せ」

自民党内で財務省の動きへの反発が高まったことを受けて、岸田総理は財務省の示した予算額「25兆円」の見直しを指示した。

財政の規律を重視し、そもそもは「15兆円規模」の経済対策を目指していた財務省にとって、大きな後退を意味した。萩生田氏の“禁じ手”返しを受けて、財務省幹部が急きょ、政調会長室に駆けつけ、その日の内に、一気に約4兆円が積み増され、「29兆円規模」に予算額が拡大された。目標とする「30兆円」には及ばなかったが、萩生田氏らによる短時間の巻き返しが際立つ結果となった。

■「積極財政」VS「財政規律」
10月28日に閣議決定された総合経済対策の規模は29兆1000億円。萩生田氏は記者団を前に「物価高克服、経済再生実現のための総合経済対策として、タイトルにふさわしい内容と規模のものになった」と胸を張った。同時に財務省との攻防を振り返り、「中身が決まって初めて規模が決まるので、規模が先に決まったら、そこに中身を押し込まなきゃならないことになる。政府・与党でお互いに反省して、しっかり連携できる体制を作っていきたい」と牽制するのも忘れなかった。

一方で、多額の補正予算の編成を繰り返すことによる財政悪化を懸念する声は財務省以外からも上がっている。

「財政的なことをしっかり考えて予算編成をしておかないと。外国を見ても教訓になるような国もありますから、そういうことにならないということが大事」

自民党四役の一人、森山裕選挙対策委員長は、大型減税など、財源の見えないバラマキ政策がポンドの通貨としての信用を失わせ、トラス前首相の交代の要因となったイギリスを念頭に警鐘を鳴らす。

また、鈴木財務大臣は閣議決定後、今後の連携をこのように強調した。

「与党の議論を無視をして財務省の考えを押し通すとか、そういうことは毛頭考えていない」
「50兆規模が必要という方もいれば30兆が発射台という方もいた」

だが、財務省内には依然として不満が渦巻いている。

これから議論が本格化する来年度予算編成では巨額の増額が予定される防衛費をはじめ、自民党と財務省の財源を巡る綱引きが激化することが確実視される。

次なる、“仁義なき戦い”はどんな結末を迎えるのか。そして、国民に何をもたらすのか。その動きを注視していきたい。

(TBSテレビ報道局政治部・与党担当 守川雄一郎)

【私の論評】萩生田氏のように闘う政治家を一人でも多く増やせ(゚д゚)!

上の記事だけだと理解しずらいところがあります。そもそも、萩生田氏がなぜ30兆円にこだわったのかというところが何も説明されていません。

なぜ30兆円なのかとぃう理由には、日本経済には現在デフレギャップが30兆円以上もあるとの見積もりがあるからです。それを埋めるためには、30兆円以上の経済対策が必要だからです。

上の記事で気になるところがあります。

萩生田政調会長の以下の発言です。

「中身が決まって初めて規模が決まるので、規模が先に決まったら、そこに中身を押し込まなきゃならないことになる。政府・与党でお互いに反省して、しっかり連携できる体制を作っていきたい」

デフレギャップを埋めるためには、まずはそれを埋めるための規模が必要であり、その規模が決まってから、政治家がその時々で重要な政策や、すぐにも効果が上がりそうな経済対策を考えるというのが筋です。これこそ、政治家の腕の見せ所ともいえます。そもそも、デフレギャップを埋めるだけの予算がなければ、まともな経済対策などできません。

極端なことをいえば、現金をヘリコプターで上空からばらまいても良いからとにかく、素早くデフレギャップを埋める対策をすべきなのです。それを知らない小鳥脳のマスコミは、「バラマキ」などと批判しています。「バラマキ」結構。とにかくスピードが必要なのです。

ヘリコプター・マネーは欧米では常識

ヘリコプター・マネーについては、今年ノーベル経済学賞を受賞した元FRB議長のバーナンキ氏は、「日銀はケチャプでもなんでもも買えば良い」としてこれを提唱していました。反対される方がたは、是非ともそれを論文にまとめて発表してください。ノーベル委員会がそれを認めれば、日本初のノーベル経済学賞ということになります。

以上のようなことから、私は萩生田政調会長が、本当にこのような発言をしたか否かについては、はなはだ疑問です。経済に疎い小鳥脳と揶揄される大手新聞の経済記者が萩生田政調会長の発言を聞き違えているのではないかと思ってしまいます。

ただ、日本の政治家は一般にマクロ政策にかなり疎いので、萩牛田氏もそのようなところがあるのかもしれません。その点、マクロ経済政策を理解していた安倍元総理大臣とは違うところなのかもしれません。ただ、やはり私には萩生田氏がこのような発言をしたとはとても噛んがられません。


ただし、「政策の責任をとるのはあなたたちじゃない、国民に選挙で選ばれた我々なんだ。結果の責任は我々が問われるんだ」という発言は、正しいです。というか、これが本来の姿です。

財務省の官僚は、政府の人事によって選ばれるのであり、政治家のように国民から付託を受けているわけではありません。

財務に関する目標は、政府が決め、財務省はその目標を実現するために専門家的立場から、様々な方法の中から選んで実行するというのが本来のあり方です。日銀の独立性も同じことです。金融政策の目標は政府が決めるものであり、日銀の官僚はその目標に従い、専門家的な立場からその実現のために自由に方法を選ぶことができるというのが、世界標準の中央銀行の独立性というものです。

小鳥脳のマスコミが言うように、日銀が政府の金融政策目標まで決めてしまうというのが、中央銀行の独立性というわけではありません。

しかし、それを無視して、財務省が補正予算の額を決めたり、日銀官僚が金融政策の目標を決定することなど本来あってはならないことです。

財務省の官僚がどうしても日本政府の財務目標などを自ら決めたいというのであれば、官僚をやめて選挙に出馬し、政治家になり、さらに政府内で財務に関与できるような地位に上りつめるのが正しいありかたであり、官僚のままそれを実行しようとするのは明らかな間違いです。

官僚としできるのは、政治家に対して助言や、意思決定のための情報を提供するまではできますが、それを超えてしまえば、完璧な越権行為です。

これは、民間会社であれば、取締役でもない社員の財務部長が、会社の財務目標を定めようとするようなものであり、あり得ない行為です。度が過ぎれば、明らかな越権行為であり、商法や、会社法違反になってしまいます。

財政悪化を懸念する声は、おそらく財務省からの説得によるものと考えられます。そもそも、現在の日本では、財政破綻する可能性などありません。円安により、為替特会の含み益は37兆円にもなっており、これを財源にすることも十分に考えられます。

これに対して適当ではないと岸田総理大臣や、鈴木大臣は言いますが、ではなぜ日本以外の国々、特に先進国には、そもそも為替特会がなぜ存在しないのか、合理的に説明をしていただきたいものです。必要ないから、ないのであり、必要ないものを取り崩して、財源とすることに、何ら問題はないはです。

日本だけに特有の特殊事情があったとして、それを論文にまとめれば、これまたノーベル経済学賞は確実です。岸田首相や鈴木財務大臣は、確固たる自信があるというのなら、是非朝鮮スべきです。

上の記事では、以下のよう主張をする人もいます。
自民党四役の一人、森山裕選挙対策委員長は、大型減税など、財源の見えないバラマキ政策がポンドの通貨としての信用を失わせ、トラス前首相の交代の要因となったイギリスを念頭に警鐘を鳴らす。
しかし、日英ではマクロ経済の状況は全く異なるので、この主張も間違いです。それは、以前このブログで掲載した、表を見ていただければ、一目瞭然です。以下にその表を再掲します。

デフレギャップが存在するのに、日本では減税はすべきではないとの主張は、日本経済における特殊な事情があるというなら、これも論文にまとめれば、これまたノーベル経済学賞は確実です。

上の表の説明の詳細は、当該記事をご覧になってください。ここでは、詳細は説明しません。

以前もこのブログで述べたように、財務省で出世するにはできるだけ、多くの緊縮・増税をするかが決め手になります。これこそ、「財務真理教」です。

彼らは国益よりも省益、自分の出世と天下りが大事なのです。財務省入省後に厳しい洗脳が始まります。円安で政府が儲かった分を防衛費に廻すなどのことはせずに、防衛増税をしてその結果日本が再び失われた30年に見舞わて、国民が苦しもうが、全く頓着しないのですから、異様なカルト集団といわざるをえないです。

日本では、統一教会が問題視されていますが、一番問題なのはカルトの財務真理教です。このようなカルトになぜ、大勢の政治家が恭順するのか、理解できません。

萩生田政調会長による今回の「禁じ手」の背景が、政治家や国民の多くが知ることとなり、異様なカルト集団「財務神理教」がまともな本来そうであるべき官庁組織に戻れば良いと思います。

ただ、現在自民党の中にも安倍元総理には及ばないものの、マクロ経済を理解する議員も増えてきています。

日銀が金融政策を間違え、財務省が財政政策を間違え続け、それを政治家や国民が許容しつづけたために、日本は「失われた30年」といわれるように、平成年間のほとんどの期間経済が発展しませんでしたし、賃金も上がりませんでした。

令和年間はそうならないように、今回の萩生田政調会長の発言の背景を拡散すべきですし、選挙においては、マクロ経済音痴の政治家には投票せず、マクロ経済音痴の政治家しか当該選挙区にいない場合は、マクロ経済に理解を深めるように陳情すべきです。

そうして、萩生田氏のように財務真理教団と闘う政治家を一人でも多く増やすべきです。

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2022年10月29日土曜日

焦点:新たな中国軍最高機関、「対台湾」で結束とスピード発揮か―【私の論評】中国が台湾を破壊するのは簡単だが、侵攻するのはかなり難しい(゚д゚)!

焦点:新たな中国軍最高機関、「対台湾」で結束とスピード発揮か

中国の人民革命軍博物館のモニターに映し出された習氏

中国共産党トップの総書記に再任された習近平氏の下で陣容を新たにした軍の最高指導機関のメンバーは、いずれも習氏への忠誠心が選ばれた第一の理由かもしれない。そうした関係性は、台湾侵攻を計画する場合に軍事上の重要な目的の1つをかなえるのに役立つ。一糸乱れぬ結束力と、強い決断力の確保だ。

実際に台湾に侵攻する場合、最終的な決定を下すのは共産党最高指導部の政治局常務委員会だが、戦闘計画の策定と実行は軍最高指導機関の中央軍事委員会に委ねられる、とアジアや西側の中国駐在武官は説明する。

23日に中央軍事委員会に新たな3人のメンバーが選出されたのに先立ち、習氏は共産党大会の政治報告で、台湾に対する「武力行使の放棄は決して約束しない」と発言した。

4人の安全保障専門家と4人の駐在武官は、ロシアがウクライナで「泥沼」に陥っている状況を挙げ、中国が台湾侵攻を計画する場合、台湾軍や国際社会の支援の機先を制するという意味からも、侵攻の準備と実行を迅速化することがいかに大事か証明されたと述べた。

シンガポールを拠点とする戦略アドバイザーのアレクサンダー・ニール氏は「習氏が台湾侵攻の引き金を引こうとするなら、中央軍事委員会からの反対意見を聞いている余裕はない。優位に立ちたければ素早く、電撃的に行動しなければならず、ためらう余地はない。これが台湾について中国側が常に考えていることだ。ウクライナの事態で、補給態勢の構築が遅れて身動きできなくなるのを避ける必要性が確かめられた」と指摘する。

【私の論評】中国が台湾を破壊するのは簡単だが、侵攻するのはかなり難しい(゚д゚)!

何やら、多くの人は中国による台湾侵攻がすぐにもありそうだと考えているようです。極端なと人だと、今年中とから来年早々にもありそうだと考えている人もいるようです。

中国の軍備増強に欧米諸国は警戒を強めているが(2019年の建国70周年式典)

これは、本当でしょうか。戦争をするには準備が必要 です。中国が本格的台湾侵攻を行う場合にも数カ月の準備が必要です。台湾が気に入らないことをしたり、言ったからといって、すぐに明日から攻撃をするというわけにはいきません。

実際、元CIAアナリストのジョン・カルバーは10月3日、中国が将来、台湾を侵攻するとしても、それは「戦略的なサプライズ」にはなりえない、と指摘しました。台湾侵攻を開始するとなれば、それに先立って全国的な動員が行われるため、数カ月から1年前にそれとわかる可能性が高いと、彼は語りました。

ただ、これは従来から軍事上の常識です。まともな軍事アナリストであれば、誰もがこのように考えています。

攻撃計画を立て十分な準備をした上で成功の見込みを得てから攻撃は行われます。現時点で中国が準備を始めた兆候はないです。年内、来年初の侵攻はあり得ないです。

準備に数ヶ月から、1年もかかるのですから、中国による台湾侵攻とは、言葉で言うのはやさしいですが、それを実行するのはただごとではないということです。

中国が台湾を破壊するだけというのなら、さほど困難ではないかもしれません。核ミサイルを打ち込めば、良いだけです。ただ、中国が台湾に侵攻ということになると、そうはいきません。侵攻するためにある程度の破壊はするでしょうが、その破壊の後に人民解放軍を上陸させ、台湾を占拠しなければなりません。

このブログで指摘してきたように、中国軍には多くの兵隊をのせて台湾に運ぶ船舶の数が足りません。一度に数万人しか送れません。台湾を制圧するには、少なくとも十万人以上の人民解放軍を上陸させなければ、なりません。

ところが、台湾海峡というのは狭い所で130キロ、広い所は200キロを超える海岸線の長い海峡です。潮の流れは速いし海底は浅く潜水艦の運用は難しいです。加えて冬場には強風が吹き濃い霧も発生するので、航空機の運用も困難です。

そもそも台湾側の海岸で大部隊の上陸に適した海岸は数カ所しかなく、もちろんそこは台湾軍が守備を固めているでしょう。だから台湾海峡は、上陸侵攻を行う側にとってきわめて厳しい地形・気象であるということができます。

にもかかわらず、一度に数万人しか送れないということになるとどうなるかといえば、その数万の兵隊は台湾軍により撃破させられることになります。たとえ中国が数十万の人民解放軍を台湾に送ることができたにしても、船舶の数に限りがあるので一度に数万人を送り、それを何回も繰り返すという方式で送ったとすれば、一回ずつ数万の人民解放軍が、台湾軍に個別撃破されることになります。

台湾海峡というのは狭い所で130キロ、広い所は200キロを超える海岸線の長い海峡。潮の流れは速いし海底は浅いので潜水艦の運用はなかなか難しい。加えて冬場には強風が吹き濃い霧も発生するので、航空機の運用も困難。だいいち台湾の中央には急峻な山岳地帯であり、台湾側の海岸で大部隊の上陸に適した海岸は西側の数カ所しかなく、もちろんそこには台湾軍が守備を固めています。だから台湾海峡は、上陸侵攻を行う側にとってきわめて厳しい地形・気象であるということができます。

台湾軍はウクライナと比べ、はるかに戦闘能力が高いです。最新兵器を備えていて、中国の空母をたたけるような精度が高く、破壊力も強い対艦ミサイルもあります。空対空ミサイルもあります。防空能力はウクライナなど比較にならないほど強力です。サイバー作戦に関しても、かなり力をつけてきています。

有事になった場合、むしろ台湾側から爆撃機が中国本土に向けて飛び立ったり、内陸の奥深くまでミサイルを飛ばすことも考えられる。台湾には、F16VというF16を基本として、改修を加えた強力な戦闘機があります。中国奥地まで射程に収める長距離ミサイルもあります。

台湾軍の長距離ミサイル「雲峰」

「絶対安全」と思い込んでいた北京の市民が、台湾のミサイル攻撃に驚愕するシーンなどもあり得ます。

一人あたりのGDPが中国を遥かに上回る台湾は米国の最新兵器をいろいろ購入しているだけでなく、米国と武器を共同生産しようという計画もあるくらいです。ロイター通信は19日、米国バイデン政権が台湾と武器を共同開発する計画を報じています。ミサイル技術の提供などが焦点にされているとされています。

さらに、台湾には2018年まで徴兵制度があったので、軍の訓練を受けた人間は166万人も存在するといわれています。正規軍10万人に166万人もプラスとなると、陸上兵力は中国軍とあまり変わらない。ウクライナ軍とは次元の異なる防衛能力です。

これに、日米が加勢するとなると、特に対潜哨戒能力が低い中国海軍は、開戦の初戦で、ほとんどの艦艇を失うことになります。

さらに、これは意外と知られていないのですが、中国大陸の重要企業は、ほとんど台湾系か台湾人が要職に就いているとされています。人によっては、中国の大企業の約7〜8割が台湾人が深く関与しており、経営面でも技術面でも中国企業は台湾なしには事業の継続が難しいです。

そのような中国が台湾を戦争を始めるということになれば、多くの台湾人は中国から出ることになるでしょう。

台湾軍女性兵士

このようなことを考えると、中国が台湾に侵攻するのはかなり難しいといえます。ロシアがウクライナに侵攻するよりはるかに難しいでしょう。

私自身は、いまやGDPが韓国を若干下回る程度のロシアがウクライナに侵略するのはかなり難しいと考えていました。だから、ロシアがウクライナに侵攻するにしても、もっと小規模ものと考えていましたから、本当にかなり大規模に侵攻したときは驚きました。

ただ、予想通りロシアはかなり苦戦しています。私は、中国が台湾に侵攻した場合、ロシアがウクライナで受けた打撃よりもはるかに大きな打撃を中国は受けると思います。

だから、中国が台湾に侵攻することは、あり得ないとは思います。

ただし、習近平がおかしくなってプーチンと同じような過ちをする可能性は否定できないです。さらに、中国が台湾に侵攻しないまでも、中国が台湾をミサイルや核兵器で破壊するということは十分あり得ることと思います。

ウクライナでもロシアは、ウクライナの多くの都市を破壊しました。しかし、破壊しつくされた都市をウクライナに奪還されつつあります。これからも、侵攻と破壊とは異なることが理解できると思います。侵攻は、かなり難しいことなのです。

台湾の独立が維持できたにしても、国民の生命や財産が危険にさらされるというのであれば、それを予防できるような体制を整えるべきです。その意味でも、台湾はさらに軍事力を強化すべきです。特に、中国が台湾を破壊すれば、中国も破壊されるという反撃能力を強化すべきです。

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2022年10月28日金曜日

防衛費増額「国民全体で負担を」 安定財源、増税が軸―財政審―【私の論評】財務真理教問題こそ、日本国内の最重要課題(゚д゚)!

防衛費増額「国民全体で負担を」 安定財源、増税が軸―財政審

財務神理教教団本部
 財政制度等審議会(財務相の諮問機関)は28日の分科会で2023年度の予算編成で最大の焦点となっている防衛力の強化を巡り議論した。委員からは、財源は「国民全体で広く負担するのが基本」として増税を軸に検討する必要があるとの意見が相次いだ。

防衛力、2段階で強化 32年までに先進ミサイル整備―防衛省

 同日は、慶応大の神保謙教授と河野克俊前統合幕僚長から防衛力整備の在り方について意見を聴取した。神保氏は「安全保障環境の変化に応じて優先順位などを不断に再構築する必要がある」と指摘。河野氏からは長期戦に耐える「継戦能力」に重点を置く必要があるとの説明があったという。

財政政策審議会

 委員には継戦能力を確保するためにも借金に依存しない安定財源が必要との意見が多く、防衛費増額の財源確保には増税論議が避けられないとの見方が示された。一方、国民の理解を得るには「民間との連携など最も効率的な(防衛力整備の)形を説明する必要がある」との指摘もあった。
【私の論評】財務真理教問題こそ、日本国内の最重要課題(゚д゚)!

官邸有識者会議といい、財政制度等審議会といい政府内で財務真理教は、やりたい放題です。防衛は、長期便益がありますから、増税ではなく防衛国債で賄うべきです。そうしなけば、財政一般でも、まずは増設の前に①天下り無駄カット、②外為特会などの埋蔵金の活用、③経済を伸ばすことによる増収があります。

官邸有識者会議

いきなり最初から増税というのは、いかにも財務真理教らしいです。ただの馬鹿といって良いです。
もう随分前から、消費税や社会保険料の引き下げや支払い免除や猶予、すなわち減税こそが最善の策なのは、もはや自明のことです。これに、反対する人は、すでに財務真理教の洗脳によって頭がいかれた人と言って良いでしょう。
ところが、岸田政権はまるでその選択肢が見えていないかのように、頑なに俎上に載せようとしません。なぜなら、それは財務神理教が、決して許さないからです。
国の予算を一手に握り、総理大臣よりも強大な権力を握る日本の怪物、それが日本の最強教団・財務真理教です。東大阿呆学部の愚鈍なバカどもが集い、「増税で庶民から徹底的にカネを巻き上げる」という本能だけに従って、マクロ経済の基礎ですら理解できないその悪い頭脳を増税のためには、ずる賢くフル回転させるのです。
彼らの「鉄の教義」は財政の健全化です。つまり「緊縮財政と増税こそが絶対正義」という信仰です。異を唱える者は、どんなに優秀でも出世のレールから外され、排除されます。
財務真理教には主計局次教団長、総括審議教団官、理財教団局長、主計教団局長、そしてトップの教団長が、霞が関で一番強固なレールがあります。最も優秀な信者をそこに乗せて洗脳する一方、それ以外の人間は諦めさせ、脱落させるシステムが完成しているのです。
まさに財務真理教は、幾多の政治家を使い潰し、税率を上げることに血道をあげ、さらにそれを心底から正義と信じてやまない。その異常性は教団の凄まじいカルト性を物語っています。カルトの中のカルトが財務神理教なのです。
なぜなら、旧統一教会や、あのオウム神理教ですら、影響を及ぼせるのは、信者のみですが、財務真理教は信者は無論のこと、全国民に対して影響力を及ぼすことができます。この記事を読んでいる人はもとより、あなたの家族、会社での同僚、上司・部下などすべての人が影響を被るのです。
日本の税収は、'89年には35%を法人税が占め、消費税は6%にすぎませんでした。ところが'20年には法人税が18%に半減、一方で消費税が35%を占めるまでに激増しています。なおこの間、企業の現預金は倍増しました。

大企業の負担は軽くせよ。庶民からは搾り取れるだけ搾り取れ。現在のいびつな社会は、そんな財務真理教の倒錯した狂信が生み出したものなのです。
財務真理教教団長
政権と霞が関を支配し、「増税」という信念に邁進する財務省。その「怪物」と戦い続け、2回も増税を延期し、結果として三党合意を崩せず、意にそぐわない消費税増税を2度も行い、挙句の果てに凶弾に倒れたのが安倍晋三元総理だったのです。
旧統一教会がカルトとしてやり玉にあげられてますが、旧統一教会の信者は数万人程度です。一方、財務真理教は1億2000万人の国民に悪影響を与えるのです。どちらの問題のほうが重要かといえば、あまりにも明らかです。
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2022年10月27日木曜日

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社説:英政権の混乱 他山の石としなければ

スナク新首相

 英国の保守党政権で混乱が続いている。先月首相に就いたばかりのリズ・トラス氏が、経済政策の迷走により英史上最短の50日で辞任し、インド系のリシ・スナク氏に交代した。

 国内政治の安定と経済の再建に手を尽くすとともに、秩序が揺らぐ世界で国連5大国としての役割を果たしてもらいたい。

 ジョンソン政権の外相だったトラス氏は、党首選の決選投票で財務相だったスナク氏を破り、サッチャー氏らに続く史上3人目の女性宰相として注目された。

 だが、看板公約だった年450億ポンド(7兆円超)の大型減税を実施しようとして、市場から強烈な「ノー」を突きつけられた。通貨ポンド、国債、株がそろって急落する「トリプル安」に陥ったのだ。

 裏付けとなる財源を手当てしなかったのが大きい。英中央銀行がインフレ抑制のため利上げを続ける中、物価高を助長する企業や富裕層を含めた大型減税を行う矛盾も、市場の不信を招いた。

 トラス氏は財務相の更迭や減税撤回などで軌道修正を図ろうとしたが、英と「特別な関係」とされる米国のバイデン大統領からも「(政策が)間違いだと思ったのは私だけではないだろう」と批判され、進退が窮まった。

 大盤振る舞いで人気取りに走った末路と、他国も冷笑してはいられないだろう。日本では自民党内で、国債を無制限に発行しても財政は破綻しないと主張する勢力が歳出拡大を求め続けている。

 しかし、英の失政が示す通り、通貨の価値や信認を決めるのは一国の政治ではなく、国際市場であることを忘れてはなるまい。

 他山の石として、特に先進国は将来にわたって持続可能な財政を維持する責任を共有すべきだ。

 無投票で党首に選出され、首相に就いたスナク氏は、英史上最年少の42歳にして初のアジア系である。金融業界出身で財政規律を重視する立場から、先月の党首選ではトラス氏にこき下ろされた。

 膨らんだ政府債務を圧縮しつつ、記録的な物価高騰に疲弊した国民生活を支える難題に挑まねばならない。ウクライナ支援ではロシアへの厳しい姿勢を堅持し、国際協調を主導する必要がある。

 欧州連合(EU)離脱を決めた国民投票があった2016年以降、首相が4人も交代した保守党に対し、支持率を伸ばす野党労働党は総選挙を求めている。政権の方策を示した上で、国民の信を問うのも選択肢ではないか。

【私の論評】英国を他山の石としてはいけない日本のマクロ経済の現状を、岸田首相は理解しているか(゚д゚)!

英国のトラス前首相の後任として与党・保守党の党首に決まったスナク元財務相(42)は10月25日、ロンドンのバッキンガム宮殿で国王チャールズ3世の任命を受け、新首相に就任しました。

バッキンガム宮殿で国王チャールズ3世(左)の任命を受け、新首相に就任したスナク氏

私は、この以前このブログで、今回のイギリスの政変は、経済というよりも英国保守党内の内部政局によるものが多いということ掲載しました。ただ、誤解のないように言っておきますが、トラス前首相の経済政策が正しいとは言っているわけではありません。

マクロ的にいえば、あり得ない政策です。さらに、減税政策もあながち間違いではないとしましたが、それはたとえばコストブッシュ要因として、海外由来のエネルギーや資源価格に対して、減税などすべきとは思いましたが、多くの品目に対して減税するのは明らかに間違いです。

現在の英国経済の状況で減税策を行うことは、マクロ経済政策の解としてあまり考えらません。英国はEUを離脱し大陸からやすい労働力が入らなくなってしまったことと、さらに現在ではロシアとの関係でエネルギー・コストが上がり相対的にコストアップになっています。

英国の現状の経済をマクロ経済的に見ると、「総供給が下がっている」という状況にあります。そんなときに需要刺激策をしてしまえば、さらにインフレになる事になります。だから、減税策は解にはならないのです。

総供給が下がっているときには、総供給をまた戻すような政策が必要です。たとえばEUを離脱したのでTPPに加入して貿易を促進するというような政策にすべきです。このようなときに需要刺激策を実施すると、インフレをさらに亢進することになります。スタグフレーションの時としては間違った、マクロ経済的対応です。

ただし、英国はこの間、財政破綻の確率が高くなっているわけではありません。しかし、データ的に見ればトラス氏が減税策を打ち出しても、財政破綻の確率を示すクレジット・デフォルト・スワップにはあまり大きな変化がありませんでした。

日本でも、このような減税策をするのは財政規律の観点からあり得ないと言う人がいます。上の記事もそのような論調です。

ただし、日本と英国とでは、マクロ経済の状況が全く違います。

日本の場合は総供給が多くて需要が少ないので、総需要刺激策は有効な対策となります。これは、経済状況によって、インフレ・ギャップとデフレ・ギャップがあり、これらへの対応は異なるため、それに応じてマクロ対策を行わなければいけないという格好の事例です。

英国と日本のマクロ経済の状況の違いをまとめると下の図のようになります。

クリックすると拡大します

このマクロ経済の状況から、日英で同じマクロ経済政策をすることは明らかに間違いです。

ただ、一ついえるのは、コストプッシュの要因となる、海外由来のエネルギーや資源に対して、日本ではこれに対して、減税をしたり、補助するのは当然ですが、英国でもこのような分野に限って減税や補助をするということはあり得ることです。

日本では、総合経済対策が近く岸田政権から発表される見込みです。

日本では、総需要を喚起させるような減税をすべきです。そのような政策が出ないと30兆円もあるとされる、需給ギャップを埋めることができないので、日本経済が回復するのは難しくなります。

政府・与党は27日、総合経済対策の全容を固めました。焦点となる規模は財政支出ベースで39.0兆円とし、民間企業の支出も含めた事業規模を71.6兆円とします。

新型コロナウイルス禍を受けた大規模な対策を除けば、消費税引き上げ後の2019年12月に当時の安倍内閣がまとめた経済対策(財政支出13.2兆円、事業規模26.0兆円)、参院選勝利後の2016年8月の対策(財政措置13.5兆円、事業規模28.1兆円)を大幅に超える規模となる。

対策を膨らませることで物価高や円安に対処するほか、世界的な景気減速懸念に備える狙い。複数の関係者によると、岸田文雄首相が鈴木俊一財務相に予算規模を拡大するよう指示する異例の措置を取り、歳出を積み上げました。財政支出は当初案から4兆円上積みしました。

財政支出のうち国・地方の歳出を37.6兆円、財政投融資を1.4兆円とする。国の支出である国費は35.6兆円となる。

国費のうち2022年度2次補正予算は29.6兆円と想定。一般会計で29.1兆円、特別会計で0.5兆円としています。財投追加額は1.0兆円とします。

総合経済対策は、1)物価高騰への対応と賃上げ加速、2)円安を生かした稼ぐ力の強化、3)新しい資本主義の加速、4)国民の安全・安心の確保――を柱とし、28日に閣議決定します。

財政支出ベースでは物価高騰・賃上げ対策に12.2兆円、円安対策に4.8兆円をそれぞれ計上します。岸田首相が看板政策とする新しい資本主義実現に6.7兆円を充て、国土強靭(きょうじん)化などに10.6兆円を支出ます。新たに「今後への備え」との枠を設け、4.7兆円の財政支出を見込みます。

最終案によると、事業規模としては物価対策37.5兆円、円安対策8.9兆円、新しい資本主義実現9.8兆円、国土強靭化10.7兆円などとなるとしています。

財務真理教教団長

ただ、このブログで示したように、財務真理教のトリックなどもありますから、この中にどれくらい去年の繰り越し金が入ってるのか、また新規国債発行はいくらなのか、為替特会の含み益は含まれているか、防衛増税は実施するのかなど、これから出てくる詳細の資料をみてみないと何ともいえません。


余裕資産の炙り出し「外為埋蔵金」は捻出可能だ 国民・玉木代表も国会で指摘 小泉政権で実施経験も―【私の論評】岸田首相は財務省などの「不埒な1% 」の仲間に入らず、まともな補正予算を組め(゚д゚)!

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2022年10月26日水曜日

中国に戦闘機発注 ミャンマー弾圧強化―【私の論評】岸田政権は、まずはミャンマー軍事政権への姿勢を改めよ(゚д゚)!

中国に戦闘機発注 ミャンマー弾圧強化

航空ショーに登場したFTC2000G練習機兼戦闘機(2006年11月1 日、中国・広東省・珠海)

【まとめ】

・ミャンマー空軍は近代化と戦闘能力向上を目的としてFTC2000G練習機兼戦闘機を中国に発注。

・ミャンマーは国土の51%を反軍政勢力が支配下に置いているとの情報があるほど「苦戦」している。

・中国がミャンマー軍の軍備の増強や近代化に深く関わっていることで「内戦状態」は長期化して人権侵害が全土で深刻化。

ミャンマー空軍が中国に対して戦闘機を新たに発注したことが地元の独立系メディアの報道で明らかになった。ミャンマーでは2021年2月の軍によるクーデターでアウン・サン・スー・チーさん率いる民主政権が打倒し、ミン・アウン・フライン国軍司令官をトップとする軍事政権が政権を奪取して治安維持を担っている

しかし民主政権の復活を願う武装市民組織「国民防衛軍(PDF)」や少数民族武装勢力と軍との衝突が激化し、治安は極端に悪化して実質的な「内戦状態」にある。

こうした中、ミャンマー空軍は旧式となってきた中国製F7迎撃機やA5攻撃機などの近代化と戦闘能力向上を目的としてFTC2000G練習機兼戦闘機を中国に発注したという。

反軍政の立場から報道を続ける独立系メディア「イラワジ」は10月18日、情報筋などからの話としてFTC2000G練習機兼戦闘機を中国に発注したと伝えた。

FTC2000は中国の国有航空宇宙国防企業である「中国航空工業公司」の監督下で「貴州航空工業公司」が設計、製造した2量練習機兼戦闘機「JL-9」の輸出型機で1機約850万ドルとされている。「FTC2000」の改良型が「2000G」で2人乗り。2018年に初飛行に成功した軽戦闘攻撃機といわれている。

発注した時期や機数などは明らかではないが2020年に中国とカンボジアのメディアが東南アジアの国に対して中国が戦闘機を売却する計画があり、2020年1月に契約は調印され納入は2021年に開始され2年後には完了することを報じた。

その後のコロナ禍でこの計画が遅延していたものが再始動したとの見方がでているが、明確なことは軍政が秘密主義なため明らかではない。

もしそれが事実とすれば2003年に初飛行、その後量産態勢に入ったとされるFTC2000の発注・契約はスー・チーさんの民主政権時代のもので、遅れていた導入計画を軍政が改めて発注し直し、最新型の「2000G」を導入する計画となった可能性が高いとみられている。「イラワジ」は今年6月空軍パイロット8人、技術者8人、軍の将校2人がミャンマーと国境を接する雲南省昆明経由で中国に渡ったと報じており、空軍機発注との関連を示唆している。

FTC2000G」の導入後は北東部シャン州の空軍基地への配備が検討されているという。

■ 抵抗勢力への空爆、攻撃を激化

軍政はクーデターから1年半以上が経過してもPDFや少数民族武装勢力による抵抗が激しく、一部では国土の51%を反軍政勢力が支配下に置いているとの情報があるほど「苦戦」しているという現状がある

軍は地上部隊が抵抗勢力による待ち伏せ攻撃やドローンによる爆弾投下、爆弾爆発などで兵士の犠牲者が増えていることもあり、空軍の戦闘機などによる爆撃といった空からの攻撃で支配地域拡大を狙っている。

抵抗勢力側は戦闘用の航空戦力を保持していないため空軍の制空権は確保されているという。

10月23日夜8時半ごろ北部カチン州ハパカント近郊のギンシ村で地元少数民族武装勢力「カチン独立機構KIO)」の創立62周年を祝う記念音楽コンサート会場が軍政の空軍機3機による空爆を受けた。この攻撃でコンサートに集まった一般市民やKIOとその武装部門である「カチン独立軍(KIA)」の幹部ら約60人が死亡、約100人が負傷する事件が起きた。

投下された爆弾の1発はコンサートのステージ近くで爆発、近くにいたカチン族の著名歌手らが即死したという。SNS上などには爆撃でばらばらになった木造のステージとみられる建物や観客席の写真がアップされ、死亡した歌手らへの追悼の言葉が並んでいる。

KIOとKIAのスポークスマンであるナウ・ブー大佐は「軍は敵ではなく一般の住民を狙って攻撃した。これは邪悪な行為であり戦争犯罪である。国民の死を悼んでいる」と「イラワジ」に述べて軍の空爆を非難した。

■ 空軍力で戦況打開を企図か

ミャンマー空軍機によるこうした軍事拠点ではない集落などへの空爆は全土で行われており、無抵抗、無実、非武装の住民の犠牲が増えている

軍政は空軍力の近代化、増強で戦況の打開を図り全土での治安回復を狙っているのは間違いないとみられている。

ミャンマー軍政にとってロシアと並んで国際社会で数少ない後ろ盾である中国がミャンマー軍の軍備の増強や近代化に深く関わっていることで「内戦状態」は長期化し、教師などの斬首や女性へのレイプその後の殺害・遺体放棄、逃げ遅れた一般住民らを生きたままで焼殺するなどといった残忍な人権侵害が全土で深刻化している

こうしたミャンマーの現状に対する新体制となった習近平体制の中国による責任は重いと言わざるを得ないだろう。

【私の論評】岸田政権は、まずはミャンマー軍事政権への姿勢を改めよ(゚д゚)!

東南アジア諸国連合(ASEAN)議長国のカンボジアは、ミャンマーでの暴力の激化に警鐘を鳴らし、自制と戦闘の即時停止を呼びかけました。

カンボジアは声明でミャンマー最大の刑務所への爆撃、カレン州での紛争、23日にカチン州で発生し少なくとも50人の死亡が報告されている空爆を例として指摘。

「犠牲者の増加、そしてミャンマーの一般の人々が耐えてきた計り知れない苦しみに深い悲しみを覚える」としました。

さらに、紛争は人道状況を悪化させるだけでなく、昨年ASEANと合意した和平「コンセンサス」実現に向けた努力も台無しにしていると批判しました。

暴力の最大限の自制と即時停止を強く求め、全ての当事者が対話を追求するよう求めました。


ミャンマーでは2021年2月1日のクーデターから現在まで混乱が続いています。ただ、どの程度の混乱なのかについては見定めることが難しいです。一部では破綻国家になる懸念すら示されています。果たしてミャンマーは破綻国家になってしまうのか。

当初は平和的だった国軍への抵抗運動が、弾圧を受けることでいかに「自衛のための戦い」(Self-Defensive War)という武力闘争を容認する運動に発展してしまいました。この抵抗勢力
の動きがミャンマーという国を破綻国家にするのでしょうか。

結論は2つあります。抵抗勢力の武力闘争が激しくなっていることは確かであるものの、国軍の実効支配を崩すことは難しく、紛争によって国家が破綻する可能性は極めて低いです。

もう一つは、国軍の実効支配が続くとしても、この国が政変前の状況に戻ることはなく、不安定な脆弱国家として継続することになりそうであることです。

ただ、政変 前の状態にこの国が戻ることもないです。危機国家の状態に陥る可能性を常に秘めた脆弱国家と して国軍の実効支配が続くことになりそうです。

ミン・アウン・フライン・ミャンマー国軍司令官

 危機に陥るきっかけは、民主化勢力の抵抗だけでなく、経済や外交面 でも生じ得ます。ミャンマーの2021年の経済成長率をマイナス18%であり、なかでも新型コロナウイルスと政情不安で工業とサービス業の落ち込みは20%を超 えています。

外国直接投資はすでに半減しています。ミャンマー・チャットの大幅 な下落や、外貨準備の不足、現金供給の制限など、金融面での不安も大きいです。 

しかし、経済が落ち込んでも国軍は自らの任務と自認する国家安全保障を優先し、その「脅 威」の殲滅を目指すため、国民生活を後回しにするでしょう。

国民生活どころか、紛争を逃れ た避難民(すでに20万人以上発生)に対する人道支援の受け入れすら国軍は消極的である。新 型コロナウイルスの感染対策で国境管理を各国が強化するなか、難民たちも国内にとどまる しかなくなるため、危機はより深刻でみえにくくなりました。 

国際社会の関与が不可欠の情勢ではあるのですが、クーデター以来明らかになったのは、国 際社会の無力です。唯一、わずかながら国軍から譲歩(「5つのコンセンサス」)を引き出せ ているようにみえたASEANの働きかけもいまや手詰まり状態です。

特使の任命 に手間取ったうえに、焦点であった特使とアウンサンスーチーとの面会を国軍が受け入れな かったため、昨年10月末のASEAN首脳会議へのミンアウンフライン将軍の出席を認めないこと が直前のASEAN外相会議で決定されました。

「コンセンサスによる意思決定」と「内政不干渉」 というASEANの基本原則に反する決定だと国軍は反発しています。こうした決定でミャンマ ー軍の行動が変えられないことはASEAN諸国も十分に知っているため、ミャンマー情勢よ りもASEANに対する信頼が低下することを懸念しての決定だとみらます。

こういうことからも再び 国軍との対話を前進させることは相当に困難だと思われます。 欧米の圧力外交には批判的な中国も、現在のミャンマーの情勢を楽観視している わけでありません。国境を接する中国にとっては、国軍を支えることで受ける国際的な非難 とミャンマーでの反中感情の高まりを懸念しつつ、同時に、国軍による実効支配が危機に陥 る事態は避けたいはずです。

日本もまた、自由主義圏の国として国軍の政治介入には批判 的ですが、ここでミャンマーを孤立させてしまえば、自国の国益が脅かされるばかりか、 ミャンマー市民の生活や人権にも深刻な被害が生じ、さらには、東南アジアの地政学的な要 衝であるミャンマーが中国の影響下に入るという地域安全保障上の懸念もあります。

 各国ともに難しいバランスのなかで、ミャンマーという脆弱国家に対処していかねばなら ないです。たとえ万が一であっても、この国が今後、危機から破綻国家状態になるというシナリ オは多くの関係者が望むものではないでしょう。必要とされているのは、現状の手詰まりを打 開する次の一手を構想することです。日本にもできることがあります。

たとえば、日本にとって最大の外交カードは、ミャンマーへのODA=政府開発援助です。支援額を公表していない中国を除いて、日本はミャンマーに対する最大の支援国で、2019年度だけでおよそ1900億円に上っています。

政府は、ODAの新規の供与を当面見送る方針ですが、継続案件も含めた全面的な停止など、より厳しい対応を求める声も出ています。

これに対し、政府は、「事態の推移や関係国の対応を注視しながら、どういった対応が効果的か、よく考えていきたい」としていました。

軍の変化を促すため、ODAカードを効果的に切ることが出来るのか、日本の外交の力が試されているといえます。

経済面での圧力の強化を求める声も強まっています。ミャンマーには、軍と関係する2つの大手複合企業があります。

傘下に不動産や建設、金融など幅広い業種を手掛ける100社以上の企業があり、その収益が軍の資金源になってきたと指摘されています。

米国は昨年この2社に、資産凍結などの制裁を科し、ブリンケン国務長官は、先週、各国の政府や企業に、軍の資金源を断つため、ミャンマーへの投資を見直すよう訴えました。

日本企業も無関係ではありません。大手ビールメーカーの「キリンホールディングス」は、制裁対象の企業と合弁でビール事業を行っています。クーデターのあと、キリンは提携を解消する方針を発表しました。

また、日本のODAで、ヤンゴンに建設されている橋の工事では、元請けの日本企業が制裁対象の企業に橋げたの製造を発注しています。

この元請け企業は、「制裁を受け、今後の対応を検討中だ」と話しています。

さらに、日本の官民ファンドやゼネコンが関わっているヤンゴンの商業施設の開発事業は、事業用地の賃料が国防省に支払われています。

軍の資金源になっているという批判に対し、官民ファンドは、「最終的な受益者は、軍ではなくミャンマー政府だと認識している」と話しています。

軍系企業の活動内容は公表されていない部分が多く、ミャンマーで事業を続ける進出企業は、ビジネスが本当に軍の利益になっていないか、細心の注意を払う必要があります。

経済制裁は、市民の生活にも大きな影響を与えるおそれがあります。それでも、常軌を逸したともいえる軍の弾圧を止めるには、制裁の強化しかないという声は、そのミャンマーの市民の間からも強まっています。

日本を含む国際社会には、こうした声をどう受け止め、どう対応するのか、判断が迫られています。

ただ、岸田政権においては、こういうことを検討する前にすべきことがあります。

日本政府は国際社会と一丸になるどころか、効果のない「独自路線」を取ってきました。成果が全く出ていないのにも関わらず軌道修正を頑なにしません。

また、岸田首相はミャンマーの「軍事政権」を「ミャンマー政府」と表現。こうした答弁自体が国軍にお墨付きを与えることになってしまうのです。

ミャンマー駐日大使 ソー・ハン氏

さらに、安倍元総理の国葬儀にミャンマーの駐日大使を招いたということについて、民主化運動を弾圧するような軍事政権に、お墨付きを与えるに等しいのではないでしょうか。

国会で岸田首相はミャンマー軍事政権の駐日大使を国葬儀に招いた件について、関係を断たないようにために必要だったとの旨の答弁をしました。民主主義をないがしろにして人権侵害をしている国を国葬儀に招かずとも、国交はあるわけですし、事務方レベルで調整できているので、参列者を増やすために手段を選ばなかっただけだと考えられます。

まずは、岸田政権は、ミャンマーの軍事政権に対する姿勢を改めことからはじめるべきです。

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2022年10月25日火曜日

英保守党内の分断深刻 総選挙へ結束課題 スナク新党首―【私の論評】新首相になっても安定しない英国の保守党内政局(゚д゚)!

 英保守党内の分断深刻 総選挙へ結束課題 スナク新党首



 辞任を表明したトラス英首相の後任として与党保守党の新党首に決まったスナク元財務相にとって、最大の使命は遅くとも2年余り先に行われる総選挙での勝利だ。

 そのためには自身の出馬表明でも触れた党の結束が必須だが、党首選の過程で明らかになったのは党内の深刻な分断だった。

 今回の党首選でジョンソン前首相を担ぐ動きがあったのも、カリスマ性があり前回総選挙で党を大勝に導いた「勝てる党首」に期待してのことだ。だが、スキャンダル辞任から間がない再登板の動きに、反ジョンソン派は激しく反発。ジョンソン氏は出馬断念に追い込まれた。

 ジョンソン氏は声明で「党が団結しなければ効果的な統治はできないため、それ(出馬)は正しいことではないとの結論に至った」と出馬断念の理由を説明した。だが、選挙戦を回避しても団結を実現するのは容易でない。

 そもそもジョンソン政権は、スナク氏の財務相辞任を機に一気に崩壊に追い込まれた。スナク氏をジョンソン氏退陣の引き金を引いた「戦犯」と見る議員には、スナク氏に対する反感が依然として根強い。ジョンソン氏が党首選でモーダント氏に連合を持ち掛けたともいわれる。

 トラス氏の辞任は、大型減税を柱とする経済対策が市場の混乱を招いたためだが、重要閣僚の辞任や下院採決での党上層部によるパワハラ疑惑など、党内の混乱が直接のきっかけだった。スナク氏が早期に党内融和を実現できなければ、支持率ではるか前を行く野党労働党の背中は遠のくばかりだ。 

【私の論評】新首相になっても安定しない英国の保守党内政局(゚д゚)!

このブログでは、トラス首相の辞任は、経済政策がどうのこうのということよりも、政治的な動きがトラス氏を追い込んだというのが正しい見方であると主張しました。また、トラス辞任劇の裏側も新首相が決まってから、しばらくすれば表に出てくるであろうことも主張しました。

上の記事は、まさにそれを示していると思います。これからも、英保守党内の内輪話が出てくると思います。8月に保守党の代表選があったとき、最後にトラス氏とリシ・スナク氏の2人が戦っていました。しかし、保守党内ではジョンソン前首相を含めると、誰が最も良いかと問われたら圧倒的にジョンソン氏に人気がありました。

ジョンソン氏は6月に保守党内での信任投票でも信任されましたし、さらには2019年12月の総選挙でも圧勝していました。

ボリス・ジョンソン氏

スナク氏の人気は元々は保守党内では低かったのです。なぜなら、スナク元財務大臣は、ジョンソン政権の下でいち早く閣僚を辞任し、その後の政権崩壊のきっかけをつくった裏切り者という印象が強まったことや、財務相として国民の生活が非常に苦しい状況で数十年ぶりの規模の増税案を提示したからです。

そもそもジョンソン氏を引き摺り下ろす必要がなかったのではないかという不満が強いのです。

一方で、ジョンソン氏は既に完全に信頼は失われていました。それなのに、まだ数ヵ月しか経っていない状況でもう1回ジョンソン氏が出てくるのはおかしいのではないかという意見が国民の間にも保守党の間にもあります。どちらが勝っても、かなりしこりが残る結果になるとみらていました。

保守党所属議員らの多くは恐らく、保守党には経済運営能力がないと判断されて2025年までに実施される総選挙で敗北するのを懸念し、スナク氏を党首に選んだのでしょう。

しかし党内右派はスナク氏の増税路線を好ましく思っていませんし、党内のリベラル寄りの勢力はスナク氏が英国の貿易活動の妨げになった欧州連合(EU)離脱を支持したことで不信感を持っています。

一方英国はEU からの安い労働力を絶たれることにより、生産性低迷という長期的課題と、エネルギー料金高騰に伴う生活費危機という大きな問題に直面しています。そうなるとスナク氏と市場の蜜月関係が一段落してしまえば、同氏は議会と国民の支持を確保し続けるのが難しくなるでしょう。

日本の物価は3%上昇ぐらいですが、英国経済は物価が9%ぐらいまで上がっていて日本よりもはるかに大変な生活苦が国民を襲っています。トラスの減税策は、決して完璧な間違いとまでは言えないと思います。

8月の消費者物価指数世界比較 クリックすると拡大します

スナク氏は財政を思いっきり締めると言われています。国民生活が物価高で疲弊しているなかで財政を締めた場合、国民が生活がどんどん苦しくなるなります。

財政を引き締めたとしても、海外由来のエネルギーや資源価格の高騰を直接抑えることにはつながらず、国民の不満は高まり、2年後の総選挙には勝てないという声が、保守党内で巻き起こり、そうなると、スナク氏も減税策を取らざるを得ない状況に追い込まれる可能性もあります。


英国物価推移 クリックすると拡大します

通貨安であることが、英国経済を助けていることは間違いありません。自国通貨安はしばしば「近隣窮乏化策」とも言われますが、逆にいえば自国経済は良くなることを意味しているからです。スナク氏がこれに気が付き通貨安を活用する方向に舵を切れば、今後英国経済も政局も安定するかもしれません。

しかし、そうはせずに、緊縮財政を続ければ国民生活はますます苦しくなります。すぐに減税策に走れば、スナク氏の経済政策は間違いだったことを認めることになります。いずれに転んでも、保守党内の政局が動けば、トラス氏のように辞任せざるを得ない状況に追い込まれるかもしれません。

日本でも、安倍総理がお亡くなりになってから財務真理教が様々な場面でせり出してきており、防衛増税や年金の支払期間の延長など、緊縮財政を実行しようとしています。日本でも、岸田政権が緊縮に動けば、英国のように党内政局が動き、不安定化の要因になります。

今後英国の政治は不安定化するのは間違いないようです。

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