2024年2月26日月曜日

<親中国・ロシアから米国へ>アンゴラの〝転換〟「罰する」から「善行の引き出し」へ変わるグローバルサウス獲得の手法―【私の論評】過去の対中経済支援の失敗を踏まえ、全体主義国家への支援は慎重に

<親中国・ロシアから米国へ>アンゴラの〝転換〟「罰する」から「善行の引き出し」へ変わるグローバルサウス獲得の手法

まとめ
  • 米国とアンゴラの関係が改善し、アンゴラは鉄道プロジェクトを米国主導のコンソーシアムに発注
  • 米国は資源確保、雇用創出、気候変動対策、経済発展のメリットが期待できる
  • アンゴラは隣国コンゴの紛争解決に協力的で、ロシアにも厳しい態度
  • 米国がアフリカの重要性を認識し、経済支援で関係強化を図る姿勢が見える
  • 日本も経済協力を通じた外交関係の強化が必要
グローバルサウスを巡っての米国と中国、ロシアの経済支援の駆け引き

 米国とアフリカのアンゴラの関係が大きく改善した。内戦時代、反政府勢力を支援した米国とアンゴラ政府の関係は、長年にわたり極めて厳しい状況が続いていた。しかし、アンゴラ政府が主要鉄道プロジェクトを、これまでインフラ整備を支援してきた中国ではなく、米国主導のコンソーシアムに発注した今回の決定は、両国関係に大きな変化をもたらした。

 この鉄道プロジェクトにより、米国はレアメタルなど重要資源の確保先を多様化できる。アンゴラ国内の雇用創出や両国の気候変動対策への貢献、沿線地域の経済発展も期待され、米国にとっては「一石四鳥」の効果がある。さらにアンゴラは、隣国コンゴでの紛争解決に真剣に取り組むなど、これまで最大の支援国であったロシアに対しても厳しい態度を示している。

 これらの動きは、米国がアフリカの戦略的重要性を再認識し、経済支援を通じて双方にメリットのある関係構築を目指す姿勢の表れだ。米国は、制裁を中心とした外交から、協調と経済協力を柱とする外交へ舵を切る必要に迫られている。日本もまた、経済支援を通じた外交関係の強化に注力すべき時期に来ている。アフリカ諸国との関係再構築は、日米が連携して取り組むべき重要課題といえる。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】過去の対中経済支援の失敗を踏まえ、全体主義国家への支援は慎重に

まとめ
  • 日米がかつて中国に対して経済支援を行ったが、中国は軍事力を拡大
  • 日本はODAなどで中国の経済発展を助け、技術移転も許した
  • 米国はWTO加盟を認めたが、中国は公正なルールを守らず技術を盗用
  • トランプ政権以降、米国は中国に厳しい姿勢に転じている
  • 全体主義国家への経済支援は慎重であるべきだが、一切支援しないのは現実的でないものの、日米欧は、過去の失敗を活かし、明日の中国を育てるようなことはすべきでない。
上の記事、重要なことを見逃しています。日米とも、過去にはグローバルサウスの一員ともみられていた、中国に対して経済支援をしてその結果どうなったかということです。米国は、かつて当時ソ連と冷戦で対立する中で、中国の戦略的重要性を再認識し、経済支援を通じて双方にメリットのある関係構築を目指しました、日本もそれに追随しました。

それについては、このブログでも過去に述べたことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
日本をうまく利用した中国、台湾と尖閣も必ず狙ってくる 関係を見直す時期ではないか―【私の論評】ODA と超円高と中国の日本浸透を許すことで、中国を怪物に育てあげてきた日本(゚д゚)!

この記事は、2022年10月6日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事から結論部分を引用します。
日本は、ODAで中国を助け、中国の軍事を含むインフラを発展させ経済の基礎を築き、日銀の金融引締による円高で、今度は中国の経済を伸ばし、その後は「統一戦線工作」を封じなかったため技術移転などを促進させてきました。そのため、産業技術において、中国に自立するきっかけを与えることになりました。これによって、日本は結果的に中国を怪物に育て上げてしまったのです。

現在、 中国へのODAはなくなり、日本は円安です。この状態は中国にとってはかなり苦しいでしょう。特に、日本が円安ということは、中国にとっては大きな打撃です。

この2つは維持して、最後の「統一戦線工作」を日本が封じれば、中国にとっては大打撃です。

にもかかわず、愚かなことに我が国は、非常に多くの安全保障上の制約やタブーを自ら設けています。安倍元総理はこれを変えようとしたのですが、志半ばで暗殺されてしまいました。
日本人は、もっと危機感を持たなければいけないです。新たな危機と冷徹な国際社会の現実を踏まえ、未来を見据えた安全保障のあり方を議論すべきであり、根本的に日中関係を見直す時期にきているといえます。

米国も大失敗しています。特に中国をWTOに参加させたことは、大失敗でした。これについても、この ブログに掲載したことがあります。

日米蘭3国で「対中包囲網」強化 WTO提訴も単なるパフォーマンスに 中国の野心に大打撃与える先端半導体装置の輸出規制―【私の論評】中国が「半導体技術の対禁輸」措置を日米蘭から喰らうのは致し方ないことであり、自業自得(゚д゚)!
半導体工場を視察する習近平

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事の結論部分を引用します。
「半導体は産業のコメ」といわれます。しかし今やコメよりも重要度は高いです。中国が、半導体で外国から「兵糧攻め」に遭えば死活問題です。これから、中国の産業の冬の時代が続きそうです。

このようなことは、中国に対してかなりきついのではないかと思う人もいるかもしれません。しかし、過去を振り返れば、先進国の「経済的に豊かになれば共産主義中国も『普通の国』として仲間入りができる」という誤った妄想が、中国の肥大化を招き傲慢な「人類の敵」にしてしまったという現実があります。

その代表例が、2001年の中国のWTO加盟です。1978年の改革・解放以来、鄧小平の活躍によって、1997年の香港再譲渡・返還にこぎつけた共産主義中国が、「繁栄への切符」を手に入れたのです。

この時にも、共産主義中国は「WTOの公正なルール」に合致するような状態ではありませんでした。 ところがが、米国を始めとする先進国は「今は基準を満たしていないが、貿易によって豊かになれば『公正なルール』を守るようになるだろう」と考え、共産主義中国も「将来はルールを守る」という「約束」をしたことで加盟が認められたのです。

ところが、加盟後20年以上経っても、共産主義中国は自国の(国営)企業を優遇し、外資系いじめを連発するだけではなく、貿易の基本的ルールさえまともに守る気があるのかどうか不明です。しかも、先進国の技術を平気で剽窃してきました。

中国がWTO提訴に駆け込むなど、片腹痛いとはこのことです。

これを考えれば、現在中国が「半導体技術の対中国禁輸」措置を日米蘭から喰らうのは、致し方ないことであり、自業自得ということができます。
米国は、トランプ政権時に中国からの輸入品に関税を上乗せするなどの厳しい措置をとるようになりました。続くバイデン政権も、中国に対しては厳しい措置をとっています。

ビーチで寛ぐ中国人富裕層の女性 AI生成画像

これを考えれば、米国がアンゴラへの経済支援で成功したからといって、すべてのグローバルサウスに対して、「善行の引き出し」という対応をし続けるわけにはいきません。

現在、グローバルサウスといわれる国であったとしても、経済支援で軍備を拡張して、地域の安全保証を脅かす国がてでくるかもしれません。

だからといって、グローバルサウスに一切経済支援するなと言っているわけではありません。

一番簡単なやりかたは、そもそも全体主義国家、独裁国家には最初から支援しないことです。そうではない国や、いずれ全体主義国家や独裁国家体制を変えると約束した国には経済支援をしても良いでしょう。

たた、経済支援しても、3年くらいしてもかつての中国のように体制等を変えない、特に約束を一切守らない国に対しては、支援継続を検討すべきです。最長5年で、そのような国に対する大規模な支援は打ち切るべきです。人道支援等は継続すべきでしょうが、それも支援対象に支援がいきわたっているかどうかを確認した上で行うべきでしょう。そうでなけば、支援は打ち切るべきてす。

中国への支援の失敗をいかすべきです。日米やEUも明日の新たな危機を生み出すかもしれない経済支援は慎重にすべきです。

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2024年2月25日日曜日

「台湾有事」最悪シナリオ 「金門島で緊張拡大し偶発事故起きれば自衛隊は…」山下裕貴氏―【私の論評】日本は世界最高水準の対潜水艦戦能力を台湾有事に生かせるか

「台湾有事」最悪シナリオ 「金門島で緊張拡大し偶発事故起きれば自衛隊は…」山下裕貴氏

まとめ
  • 中国による台湾への圧力が高まっている
  • 台湾有事は日本有事に直結する可能性がある
  • 自衛隊の巻き込み、台湾軍の避難、尖閣諸島への侵攻の恐れ
  • 日本は防衛力強化を図っているが、米国の対応は不透明
  • 法整備と自衛隊の体制強化が急務である


 台湾有事の導火線に火が付き始めている。中国福建省に近い台湾の離島、金門島周辺で中国船の漁民2人が死亡して以降、中国側が台湾船を臨検するなどの報復に出て、一触即発となっている。習近平指導部は「台湾統一」の野心を隠しておらず、台湾総統選で、中国と距離を置く姿勢の頼清徳副総統が当選したことで、緊張は高まるばかりだ。

 中国と台湾が衝突した場合、日本も〝戦場〟になる恐れがある。元陸上自衛隊中部方面総監の山下氏は、台湾有事が日本に波及するシナリオを分析している。自衛隊の後方支援への巻き込み、台湾軍の日本への避難、中国軍の尖閣諸島侵攻などの可能性があるという。

 日本は防衛費増額で南西地域の防衛力強化を図っているが、米国の対応が不明な点が課題。トランプ元大統領の発言も介入姿勢が明確でないことを示唆している。専門家は自衛隊の体制強化や、米軍との協力体制構築などにより対応能力を高める必要性を訴えている。

 台湾有事への対応は日本の安全保障上の最重要課題の一つであり、法整備や自衛隊の防衛態勢の強化などを急ぐ必要がある。切迫した状況下、日本の台湾有事への備えは待ったなしの状況にある。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧下さい。

【私の論評】日本は世界最高水準の対潜水艦戦能力を台湾有事に生かせるか

まとめ
  • かつて中国共産党軍が金門島上陸作戦を敢行したが、失敗に終わり、台湾国軍が勝利をおさめた。
  • ただ、金門島周辺の海域は潜水艦の行動に不向きであり、台湾の東側の海域が中台両方の潜水艦の行動に向いているため、金門島周辺の海域は海戦の主戦場とはなり得ず、東側がそうなるだろう。
  • 台湾は中国海軍の潜水艦に対抗するために対策を講じており、日本も潜水艦22隻体制を整え、世界屈指のASW(対潜水艦戦)能力を有しているが、憲法の制限がある。
  • 台湾有事において、潜水艦は奇襲攻撃や海上封鎖などで効果的な役割を果たす可能性があり、日本も台湾有事に本気で向き合う必要がある。
  • 日本のASWの高さを開示しない、潜水艦の行動に関する縛りについても、話題にならないうちは、日本はまだ台湾有事に本気で向き合っているいるとはいえない

金門島の監視にあたる台湾軍兵士

上の記事、この手の記事によくあるように日本の潜水艦や対潜戦に関する記述や、直接ではないにしても、それについて想起させる内容は全くなく、そのため軍事的にはあまり意味のない内容になっています。

これに関しては、元陸上自衛隊中部方面総監も聴かれないので、あえて答えていないと考えられます。聴かれたことだけに答え、それを新聞記者が記事にしているのでしょう。

中国共産党軍は10月24日午前4時頃、金門島の料羅湾に上陸を開始しました。上陸部隊は約1万人で、戦車、砲兵、航空機などの支援を受けました。しかし、中華民国軍の激しい抵抗により、上陸部隊は大きな損害を受け、午後には撤退を余儀なくされました。

中国共産党軍が金門島上陸作戦を敢行した目的は、門島駐留部隊を撃滅し、金門島を占領すること、台湾国民の士気を低下させ、台湾侵攻を有利に進めることの2つと考えられます。

しかし、作戦は失敗に終わり、目的を達成することはできませんでした。台湾国軍が数少ない勝利を収めた戦いであること、台湾国民の士気を高める効果があったこと、冷戦の激化に拍車をかけることになった金門島上陸作戦は、国共内戦における重要な戦役の一つであり、歴史的な意義を持った戦いでした。

ただ、金門島付近の海域は浅いため、現代海戦の主役といもいえる潜水艦が行動にはには適しておらず、現代海戦においては、その価値は相対的に下がったといえます。

金門島周辺の海域は、平均水深が約50メートル、最大水深でも約100メートルです。多くの潜水艦は、潜航深度が200メートル以上、中には300メートルを超えるものもあります。そのため、金門島周辺の海域では、潜水艦が潜航深度を十分に確保できず、行動が制限されます。金門島周辺の海底地形は、岩礁や海峡が多く、非常に複雑です。このような地形では、潜水艦が座礁したり、海峡で動きを制限されたりする可能性が高くなります。

水深が浅く、海底地形が複雑な海域は、対潜哨戒機や哨戒艦にとって潜水艦を探知しやすい環境と言えます。金門島周辺は、台湾と中国大陸の間に位置し、両国から対潜哨戒が強化されています。

金門島周辺は、台湾と中国大陸間の海上交通の要衝であり、民間船舶の往来が非常に多い海域です。潜水艦は、民間船舶との衝突を避けるために、常に注意を払う必要があり、行動が制限されます。

以上の理由から、金門島周辺の海域は潜水艦の行動海域としては不向きです。

台湾付近の水深

一方台湾の東側の海域は、平均水深が約2,500メートル、最大水深が約5,000メートルです。これは、潜水艦が潜航するのに十分な深さです。またこの海域は、大陸棚が狭く、急激に深くなっています。これは、潜水艦が隠れるのに有利な地形です。

さらに、黒潮の影響を受け、強い海流が流れています。これは、潜水艦が敵艦船に接近するのに有利な条件です。一方台湾側からすると、台湾の東側には、花蓮港や蘇澳港などの軍事拠点があります。これらの拠点から、潜水艦の活動を支援することができます。

以上の理由から、台湾の東側の海域は中台両方の潜水艦の行動に向いていると言えます。

中国海軍は、近年、潜水艦の戦力を増強しています。台湾の東側の海域は、中国海軍の潜水艦にとって重要な活動海域となる可能性があります。

台湾海軍は、中国海軍の潜水艦に対抗するために、様々な対策を講じています。例えば、潜水艦探知機や対潜哨戒機を配備しています。また、最近独自で潜水艦を建造したばかりです。

中国が台湾に侵攻しようとする場合には、台湾の東側の海域が中台両軍の海戦の主戦場になることでしょう。

この海域は、日本にも近いです。この観点から、日本は台湾有事に対処することになるでしょう。

麻生氏は年初のワシントン訪問に先立ち、福岡県での国政報告会で、「潜水艦などを使って台湾海峡で戦う」可能性について語り、「台湾に戦っておいてもらわなければ、邦人を無事に救出することは難しい」とも述べています。

台湾有事においても、潜水艦は隠密行動を行うことで、以下の効果が期待できます。敵の艦艇や航空機が潜水艦を発見する前に攻撃することで、奇襲攻撃を阻止することができます。敵の艦艇や補給船を攻撃し、海上封鎖をして台湾への侵攻を阻止することができます。敵軍の動向を偵察し、情報優位性を確保することができます。

日本は軍事的にはすでに潜水艦22隻体制を整え、ASW(対潜水艦戦)に関しては、米国と並び世界トップクラスの水準にあることから、これに関する軍事面での準備はできているといえます。

ただし、日本では潜水艦運用における固有の縛りがあります。

日本国憲法の専守防衛政策に基づき、日本の潜水艦は以下のように制限されます。
敵基地攻撃: 敵国領土にある軍事施設などを先制攻撃することはできない。
領海侵犯: 敵国領海への侵入は、自衛の場合を除いて認められない。
攻撃目的の航行: 攻撃を目的とした公海上の航行は、自衛の場合を除いて認められない。
台湾有事における日本の対応は、状況に応じて柔軟に判断される必要があります。状況によっては、潜水艦の隠密行動が有効な場合もあれば、あえて公開行動を行うことで敵を牽制する効果が期待できる場合もあります。

潜水艦の行動は、国民の安全保障に直結する重要な問題です。そのため、政府は、潜水艦の行動に関する情報をできる限り公開する必要があります。しかし、国家安全保障上の理由から、公開できない情報もあります。

政府は、国民の理解を得られるよう、情報公開と国家安全保障のバランスを慎重に取る必要があります。

日本のそうりゅう型潜水艦

しかし、もうすでに日本は米軍と並ぶ世界でトップクラスのASW(対潜水艦戦)能力を有し、海戦においては中国海軍に十分に対応できる能力を有していることなどについては日本国民に開示すべきでしょう。これに関しては、海自の元海将の方も同じようなことを語っていますが、「このようなことを語るが故に、私はテレビに出してもらえない」と嘆いています。

無論ある程度は開示されているのですが、マスコミで報じられることは滅多になく、多くの人が認識氏ていない状況にあります。

現在の日本の、軍事力はすでにその域に達しているものの、日本の潜水艦の行動には日本特有の縛りがあるのも事実です。ただし、台湾有事ということになれば、日本は海戦では有利であるのは、間違いないですが、日本国内も中国のミサイル攻撃を受けるなどの可能性はあります。ただ、台湾有事においても、日本は独立を維持できるだけの海軍力は有していますし、台湾の独立をサポートできるだけの海軍力もあるといえます。

以上のような情報開示がない、潜水艦の行動に関する縛りについても、話題にならないうちは、日本はまだ台湾有事に本気で向き合っているいるとはいえないです。

その意味では、国内ではあまり評価されていませんが、先にあげた麻生氏の発言は、重大なものです。ただし、長い間の平和ボケで、軍事知識に疎いマスコミなどは、この発言の重大性を受け止めることができないようです。

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2024年2月24日土曜日

「積極財政派」は力を持てるのか 大きすぎる安倍元首相の不在 財務省が音頭とる緊縮派との議論、衆院選の公約に影響も―【私の論評】経済は生き物、社会的割引率等を柔軟に見直さないととんでもないことに

高橋洋一「日本の解き方」
「積極財政派」は力を持てるのか 大きすぎる安倍元首相の不在 財務省が音頭とる緊縮派との議論、衆院選の公約に影響も

まとめ
  • 安倍晋三元首相の積極的な財政出動を主張する立場が自民党内で影響力を失いつつある。
  • 財務省は長年にわたり、公共投資の無駄性を印象付け、社会的割引率の高止まりを許してきた。これにより積極財政の芽を摘んできた。
  • 財務省は「クラウディングアウト論」「マンデル・フレミング効果」といった理論を根拠に、公共投資に反対してきた。
  • しかし、十分な金融緩和があれば、これらの理論は当てはまらず、公共投資はGDPを増加させる可能性がある。
  • 財務省の主張に対して適切に反論するには、金融政策の知識が不可欠である。緊縮財政と金融引き締めの結果、日本のGDP伸び率は主要国に大きく遅れを取った。
安倍晋三元首相

 「政治とカネ」の問題において、自民党安倍派(清和政策研究会)が解散し、「積極財政派」の存在感が薄れていることが懸念されている。安倍晋三元首相は、積極財政を主張する人々が多い中で、金融政策も理解してバランス良く発言する偉大な存在だった。

 財務省は積極財政に対する反論を準備してきた。その一つは、公共投資が「無駄な投資」という印象を与えることだ。この印象操作により、民主党政権時代には「コンクリートから人へ」というスローガンが生まれた。

 学会では、この動きに反発する者もいたが、公共投資を正当化するために合理的で定量的なコスト・ベネフィット論を否定しつつ、筋違いの動きとなった。その結果、本来であれば定期的に見直されるべき「社会的割引率」が見直されなかった。

 財務省は社会的割引率を「4%」と暗に支持し、低金利にもかかわらず長期にわたって高い社会的割引率を維持し、積極財政の芽を摘んだ。

 もう一つの柱は、「公共投資が出ると民間投資が引っ込む」というロジックです。この「クラウディングアウト論」によれば、公共投資が増えると資金需要が逼迫して金利が上昇し、民間投資が減少するとされている。

 金融政策を一定とした場合、公共投資増は為替高となり、輸出減をもたらすという「マンデル・フレミング効果」もあるが、十分な金融緩和があれば、公共投資は国内総生産(GDP)を増大させることができる。

 緊縮財政と金融引き締めの結果、デフレと政府の過少投資が響いて、日本の名目GDPはこの30年間伸び悩んでいる。もしデフレにならず、政府投資が適切だったなら、日本の伸びは2・8となり、先進7カ国(G7)中5位だったはずだ。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】経済は生き物、社会的割引率等を柔軟に見直さないととんでもないことに

まとめ

  • 社会的割引率は将来の費用と便益を現在の価値に割り引く際の割合である。高すぎると将来の影響を過小評価し、環境保護や世代間の公平性を損なう。
  • 日本では1990年代半ば頃からデフレが続いているにもかかわらず、社会的割引率が4%前後で据え置かれているのは異常である。現状に合わせてもっと低い率が適切である。
  • 経済は常に変化しており、一度決めた政策を長期間維持すると悪影響が出る可能性がある。1990年代のデフレは金融引き締め政策の継続が一因とされる。
  • 経済状況に応じて柔軟に政策を変更する必要がある。景気拡大期には引き締め、後退期には緩和を行うなど、様々な政策を組み合わせることが重要である。
  • 政策の効果にはタイムラグもあるため、過去の反省を踏まえ、現状に合った適切な政策運営が求められる。経済は生き物のように柔軟に対応すべきである。
上の記事にでてくる、社会的割引率とは、将来の費用と便益を現在の価値に割り引く際に使用される割引率のことをいいます。公共事業の費用対効果分析などで活用されます。

身近なものに例えると、たとえば利子率があげられます。お金を借りるときに発生する利子は、将来返済するお金の価値を現在価値に換算するための割引率と考えることができます。利子率が高いほど、将来のお金は現在価値が低くなります。

社会的利子率が低いことで引き起こされる将来の惨禍

一般に、私たち人間は、現在の1円の価値は将来の1円より高いと判断する傾向があります。これを時間選好と呼びます。時間選好が存在するため、将来の費用や便益をそのまま現在の価値とみなすことはできません。

社会的割引率は、この時間選好を反映して、将来の費用や便益を現在の価値に割り引く際の割合を示します。

現在価値 = 将来価値 / (1 + 割引率)^年数

例えば、社会的割引率が5%だとすると、10年後の100円の便益は、現在の価値で約62円(100÷(1.05)^10)と評価されます。

社会的割引率の設定は重要な政策判断であり、環境保護や将来世代への影響など、様々な要素を考慮する必要があります。先進国では一般に3~7%程度の値が使われていますが、国や目的によって異なります。適切な社会的割引率の設定は、公平性や持続可能性の観点から議論が重ねられています。

社会的割引率を高く設定しすぎると、以下のような弊害が生じる可能性があります。

1.将来の費用や便益を過小評価してしまう 
高い割引率を使うと、将来の費用や便益の現在価値が小さく見積もられてしまいます。その結果、長期的な影響を過小評価し、短期的な利益を過度に重視してしまう恐れがあります。
2.環境保護や将来世代への配慮が不十分になる
 割引率が高すぎると、遠い将来の費用や便益がほとんど現在価値がないと判断されてしまいます。そのため、長期的な環境問題への対応や、将来世代への影響を軽視する恐れがあります。
3.公平性が損なわれる 
高い割引率は現在の世代を将来の世代より優遇することになり、世代間の公平性を損なう可能性があります。
4.持続可能な投資が不利になる 
高い割引率のもとでは、短期的なリターンが高い投資が有利になります。一方、長期的なリターンが期待できる持続可能なインフラ整備などの投資が不利になりがちです。
このように、社会的割引率が極端に高すぎると、短期的な利益重視につながり、将来の世代や環境への配慮が不十分になる恐れがあります。現在の日本は、まさしくこのような状況にあります。適切な水準を設定することが重要です。

日本で社会的割引率を4%とした具体的な時期は明確ではありませんが、おおよその経緯は以下の通りです。

1960年代後半頃から、公共事業の事業評価の手法として費用便益分析が本格的に導入されるようになりました。当初は各省庁が独自の社会的割引率を設定していましたが、1970年代半ばから8%前後の高い水準が一般的でした。
  • 1990年代に入ると、環境問題への意識の高まりなどから、従来の8%程度の割引率が高すぎるのではないかという議論が高まりました。
  • 1998年、内閣府が「経済財政計画の基本方針」の中で、社会的割引率について「4%程度が適当」という見解を示しました。
  • これを受けて、公共事業の費用便益分析において、4%が標準的な社会的割引率として広く用いられるようになりました。
ただし、費用便益分析の手法自体は各省庁で多様であり、社会的割引率についても省庁間で若干の差異があると言われています。完全に4%に統一されているわけではありません。

日本は、1990年代半ばよりデフレの状態が続いています。

企業物価指数では1991年11月以降、GDPデフレーターでは1994年第4半期以降、消費者物価指数では1998年9月以降デフレとなりました。

1997年に消費税が3%から5%に引き上げられたことにより、日本の消費者物価指数がマイナスとなり、デフレの様相を呈するようになりました。

消費者物価指数(CPI)を見ると、下落率は毎年1%前後で、最も下落率の激しい時期でも2%程度にとどまっています。

日本経済は、1990年代初以降、20年にもおよぶ経済の低成長を経験してきました。その背景には、バブル崩壊以降の需要の弱さ、また生産年齢人口の減少や生産性の伸び悩みといった供給力の低下が挙げられます。

日本では1998年以降さらにデフレが進行しました。にもかかわらず、現在に至るまで社会的割引率が変わらなかったというのは異常なことであるといえます。社会的割引率を説明する際に、利子率を例としてだしましたが、現状で銀行の利子率は0%に近いです。社会的利子率が4%台であることは、異常だといわざるをえません。もっと低くてしかるべきです。

クラウディングアウト論は、政府の財政政策が民間経済活動に与える影響について説明する経済理論です。具体的には、政府が財政出動を行うと、資金需要が増加し、金利が上昇します。金利上昇は、民間企業の投資活動を抑制し、経済全体の成長を阻害する可能性があります。

マンデル・フレミング効果は、財政政策と金融政策が為替レートと経済成長に与える影響について説明する経済理論です。固定為替レート制度下では、財政出動による資金需要増加は、金利上昇と通貨高を招きます。通貨高は、輸出企業の競争力を低下させ、経済成長を抑制する可能性があります。

ただ日本では、現状では、日本は金融緩和を実行している状況であり、需給ギャップがある現場では、それを埋めるためにも、金融緩和を継続しなければならない状況にあります。であれば、政府が財政出動を大規模に行ったとしても、さほど問題はないどころか、現状ではこれを行うべきです。

経済は生き物のように常に変化しており、景気拡大、景気後退、デフレ、インフレなど、様々な状況を経験します。それぞれの状況に合わせて、適切な政策を実施することが重要です。

バブル景気で沸く東京都心部 AI生成画像

過去の例を見ても、一度決めた政策を長期間にわたって維持し、経済に悪影響を与えた例があります。例えば、1990年代の日本のバブル経済崩壊後の長期的なデフレ経済は、金融引き締め政策の継続が原因の一つとされています。

経済状況は常に変化するため、政策も柔軟に変化させる必要があります。状況に合わせて、財政政策、金融政策、構造改革など、様々な政策を組み合わせることが重要です。

景気拡大期には、財政引き締めや金融引き締めを行い、インフレ抑制に努める必要があります。一方、景気後退期には、財政出動や金融緩和を行い、景気回復を促進する必要があります。

ただし、好況、不況という景気変動は正常であり、これを人為的に無理にいつも好況にしようなどの試みすべきではありません。これをやり続けたのが中国であり、その結果どうなったか、結果そのものは、多くの人が認識できる状況になっています。しかし急激なインフレ、デフレこれはどんな場合でも、すぐに対処すべきです。

急激なインフは誰の目からみてもあきらかになるので、これを放置することはありえませんが、デフレは、徐々に一般物価が下がり年単位では誤差くらいにしかみえない場合が多いので、この弊害に気づく人は少ないです。

デフレで困窮する人々 AI生成画像

だからこそ、デフレが長い間放置されてきた面があることは否めません。しかしデフレは、明らかに異常であり、これは必ず対処しなければならない、重要な経済の病気です。経済政策の効果は、経済状況や政策の内容などによって異なります。また、政策の実施には時間がかかる場合もあるため、すぐに効果が出るわけではありません。特に金融政策や雇用はそうです。すぐに効果がでないからといってやめては、意味がありません。また、十分効果がでたから、やめてしまうことも危険な場合があります。

また、雇用政策≒金融政策であることを知らない人が日本では多いようです。これは、経験則で昔から知られていることですが、日本だ金融緩和をしてインフレ率が2%もあがれば、その他何をしなくても、百万単位で雇用が創造されます。これは、マクロ経済上の常識です。

過去の政策の反省を踏まえ、状況に合わせて様々な政策を組み合わせることが重要です。経済は生き物であり、柔軟な政策運営が求められます。そのことを多くの政治家が理解すべきです。そうでないと、財務管官僚が日本経済を無視して、緊縮に、日銀が金融引き締めに走ったとしても、それを認識することすらできないことになります。

実際平成年間のほとんどは、そうだったので、日本はデフレに陥り、その結果政権は安定しなかったのです。経済的に安定は、政権の安定にとっても重要なのです。


「反増税派」蜂起、財務省主導の緊縮派に反発 自民党内の〝財政バトル〟再燃、日本経済浮沈かかる「骨太の方針」で熾烈な戦い―【私の論評】岸田政権は「積極財政派」と手を結び、財務省に立ち向かえ

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2024年2月23日金曜日

日本の基地に配属の米海軍兵、スパイ罪で起訴―【私の論評】スパイ防止法制定を、日本の安全を守るために

日本の基地に配属の米海軍兵、スパイ罪で起訴

まとめ
  • 米海軍兵ブライス・ペディチーニ上等兵曹が、機密文書を外国政府に渡したとしてスパイ活動で起訴された。犯行期間は2022年から2023年。
  • ペディチーニ被告は、少なくとも7回にわたって外国の諜報員に機密文書を渡した。軍のコンピューター画面のスクリーンショットも渡そうとした。
  • アメリカを傷つけ、外国を利するために情報を渡していたとみられる。
  • 捜査は継続中。
  • 2023年1月、米海軍兵ウェンヘン・ジャオ被告が中国情報機関に情報を渡したとして有罪判決を受け、禁錮2年の判決を受けている。

米海軍兵ブライス・ペディチーニ上等兵曹

1. 概要

在日米軍基地に配属されている米海軍兵ブライス・ペディチーニ上等兵曹が、機密文書を外国政府に渡したとしてスパイ活動の罪で起訴された。

2. 犯行内容
  • 2022年から2023年の間に少なくとも7回、外国の諜報員に機密文書を渡した。
  • 2023年5月には、軍のコンピューター画面のスクリーンショットを撮影し、渡そうとした。
3. 動機
当局は、ペディチーニ被告が「アメリカを傷つけ、外国を利するために使われると信じるに足る理由をもって」情報を渡していたとしている。

4. 捜査状況
  • 渡された文書の内容や渡された国はまだ公表されていない。
  • 捜査は継続中であり、ペディチーニ被告は軍法会議にかけられる。
5. 類似事件
2023年1月には、米海軍のウェンヘン・ジャオ兵曹が、カリフォルニアの海軍基地で中国情報機関に情報を渡したとして有罪判決を受け、禁錮2年の判決を受けている。

この記事は、元記事の要約です。詳細は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】スパイ防止法制定を、日本の安全を守るために

まとめ
  • 在日米軍兵が中国の情報機関への軍事機密漏えいで起訴された事件が最近発生したが昨年も発生している。
  • 漏えいした情報は米軍演習、基地レーダー、強襲揚陸艦等の機密情報。中国側から多額の賄賂を得ていた。米軍関係者のスパイ事件が発生したことから、日本も無関係とは言えない。
  • 過去には日本の自衛官による以下の複数のスパイ事件が発生している。60年代の「三つのスパイ団事件」、80年代の「イタカ事件」、90年代の「森事件」、2000年代の「情報流出事件」、2010年代の「不正情報提供事件」
  • 日本にはスパイ活動を包括的に防止する「スパイ防止法」が存在しない。スパイ防止法がないことで、国家安全保障、経済、国際関係、国民生活等に多大な不利益をもたらすリスクがある。
  • スパイ防止法の早期制定が極めて重要であるため、国会での議論が必要。
在日米兵が、スパイ容疑で逮捕された昨年もあったばかりです。それについては、このブログに掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
中国に軍事機密漏えい、在日米軍基地のレーダーシステム情報も…米海軍兵2人を起訴―【私の論評】 日本は国家安全保障を優先し、自国の利益のために スパイ防止法を早急に成立させるべき(゚д゚)!

米国司法省の建物

 詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事の要約を掲載します。

概要

米海軍兵2人が、中国の情報機関に軍事機密を漏らした疑いで起訴された。

漏洩情報
  • 米軍演習情報
  • 沖縄基地レーダー情報
  • 強襲揚陸艦情報
見返り
  • 約210万円
  • 約70万円
動機
中国の情報機関から賄賂

中国のスパイ活動

司法省は、今回の事件は中国によるスパイ活動の一環だと指摘している。

米軍関係者がスパイ容疑で逮捕されているのですから、日本がこのような事件と無関係と考える根拠は乏しいです。以下に日本の自衛官によるスパイ活動に関する事例をあげます。

  • 1960年代に起きた「三つのスパイ団事件」 - 自衛官や元自衛官らがソ連や北朝鮮にスパイ活動をしていたとして摘発された。
  • 1980年代に海上自衛官がソ連に秘密情報を提供した「니イタカ事件」。
  • 1990年代に航空自衛隊の元将校が中国に軍事機密を流出させたとされる「森事件」。
  • 2000年代に陸上自衛官が中国の情報機関に協力したとされる「情報流出事件」。
  • 2010年代に海上自衛官が中国に関する資料を渡した「不正情報提供事件」 などがあります。
これらの事件では、金銭的な報酬や思想的な動機などからスパイ活動が行われたと考えられています。上記の記述は、あくまでも現時点において判明している事実関係に基づいており、今後新たな事実が判明する可能性もあります。

日本国内で暗躍するスパイ AI生成画像

以下に、スパイ防止法が日本にないことが、日本に不利益をもたらす可能性を指摘します。

日本には、スパイ活動を取り締まるための包括的な法律である「スパイ防止法」が存在しません。このことが、日本にとって以下の不利益をもたらす可能性があります。

1. 国家安全保障上のリスク

スパイ活動による情報漏洩は、国家安全保障上の重大な脅威となります。防衛情報、外交情報、科学技術情報などの漏洩は、国家の存亡に関わる問題に発展する可能性があります。

近年、中国やロシアなどのスパイ活動が活発化しており、日本は標的の一つとなっています。
スパイ防止法がないことで、スパイ活動に対する抑止力が弱くなり、情報漏洩のリスクが高まります。

2. 経済への影響

企業の技術情報や経営戦略などがスパイ活動によって盗み出される可能性があります。日本の経済競争力を低下させる恐れがあります。特に、近年注目を集めている人工知能や半導体などの分野において、情報漏洩は大きな打撃となります。外国企業からの投資が減少する可能性もあります。

3. 国際社会からの信頼低下

スパイ防止法がないことで、日本がスパイ活動に対して甘い国というイメージが定着し、国際社会からの信頼が低下する可能性があります。国際的な協調や協力が難しくなる恐れがあります。特に、米国などの同盟国との関係に悪影響を与える可能性があります。

4. 国民の不安

スパイ活動による情報漏洩は、国民の安全や生活にも影響を与える可能性があります。国民の不安や恐怖心を高める恐れがあります。特に、テロ事件などのリスクが高まる可能性があります。

5. 法執行機関の捜査の困難化

スパイ防止法がないことで、法執行機関がスパイ活動の捜査を行うことが困難になります。証拠収集や犯人特定などが難しくなる恐れがあります。捜査の遅延や捜査漏れの可能性が高くなります。

これらの不利益を克服するためには、スパイ防止法の制定が重要課題となっています。 スパイ防止法の制定により、スパイ活動に対する抑止力を高め、国家安全保障を守ることが期待されます。

スパイ防止法は他国には普通に存在する法律であり、国民のプライバシーや表現の自由を侵害する恐れがあると指摘する人もいますが、もはやこれを尊重し、スパイ防止法を定めないとこのほうが、はるかにリスクが高いと思います。はやくこれを成立させてほしいです。国会では、このようなことも議論されてしかるべきです。

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2024年2月22日木曜日

GDP発表で見える「本当問題点」 内需の低調と政府・日銀の動向 金融と財政の「ダブル引き締め」を騒いだ方がいい―【私の論評】日本経済の行方 は、内需と雇用がカギ、株価やGDPで一喜一憂すべきでない

森永康平の経済闘論

GDP発表で見える「本当問題点」 内需の低調と政府・日銀の動向 金融と財政の「ダブル引き締め」を騒いだ方がいい

まとめ
  • 内閣府が2023年10~12月期の国内総生産(GDP)を発表。
  • 物価の変動を調整した実質ベースの成長率は前期比年率で0・4%減と2四半期連続のマイナス成長。
  • 個人消費や民間の設備投資、住宅投資など内需が全滅の様相を呈している。
  • 24年1~3月期のGDPもマイナス成長が予想されている。
  • 日銀と政府の動きが今後の経済に大きな影響を及ぼすことが重要。
    四半期毎のGDP成長率
四半期前期比年率換算
2022年第1四半期-0.20%-0.80%
2022年第2四半期0.50%2.20%
2022年第3四半期0.90%3.80%
2022年第4四半期-0.50%-2.10%
2023年第1四半期0.00%0.00%
2023年第2四半期0.30%1.20%
2023年第3四半期0.20%0.80%
2023年第4四半期-0.10%-0.40%

 2023年10~12月期の国内総生産(GDP)が発表され、物価の変動を調整した実質ベースの成長率は前期比年率で0・4%減と2四半期連続のマイナス成長となった。この発表を受けて、ネット上では「日本は景気後退(リセッション)に突入した」「日本のGDPがドイツに抜かれて世界第4位に転落した」という2つのニュースが話題になった。

 しかし、この結果を深掘りしてみよう。日本のGDPの半分以上を占める個人消費は前期比0・2%減と3四半期連続のマイナス成長となり、民間の設備投資も3四半期連続のマイナスです。住宅投資も2四半期連続のマイナスで、わが国の経済の主軸である内需は全滅の様相を呈している。

 さらに、5月に発表予定の24年1~3月期のGDPもマイナス成長が予想されている。仮に23年10~12月期のGDPが改定値でもマイナス成長のままであった場合、3四半期連続でマイナス成長というシナリオが既に見えつつある状況だ。

 このような中で、日銀はマイナス金利の解除を示唆し、政府は少子化対策や防衛強化の財源としてさらなる負担増を掲げている。この状況下で金融と財政の「ダブル引き締め」を行おうとしていることについても注目すべきだ。

 また、GDPの世界ランキングがドイツに抜かれて4位に転落したと騒ぐよりも、日本だけがこの30年間ろくに経済成長できなかったこと自体に関心を向けるべきではないか。このまま停滞を続けていれば、毎年のように順位が下がったと騒ぐことになり、もはやそれが風物詩になりかねない状況だ。

 2023年は30年ぶりの賃上げ水準が実現され、外的要因とはいえ物価が上昇したことで人々の物価に対する考え方にも変化が生じた。今年も大幅な賃上げがなされれば、いよいよデフレ経済からの脱却も見えてくるだけに、政府と日銀の動きは非常に重要となる。

 この記事は元記事の要約です。詳細を知りたいかたは、元記事を御覧ください。

【私の論評】日本経済の行方 は、内需と雇用がカギ、株価やGDPで一喜一憂すべきでない

まとめ
  • 総務省の統計を引用し、完全失業率が緩やかに低下していることを示した
  • ただし失業率は遅行指標なので、現在の失業率は1年前の経済状況を反映していることに注意が必要、今後低下のおそれもある
  • 安倍・菅政権下で行われた補正予算と雇用対策が功を奏し、岸田政権発足直後は景気はそれほど悪くなかった
  • しかし岸田政権の補正予算は不十分であり、今後景気が低迷していく可能性がある
  • この状況で日銀が金融引き締めに動くことは考えられず、むしろ金融緩和政策を継続すべき
  • 株価も34年ぶりの最高値を更新したが、過去の轍を踏まないためには内需喚起が必要、あらゆる観点から当面政府は積極財政を強化継続し、日銀は金融緩和を継続するべき

上の記事では、雇用に関しては何も述べられていないので、以下に雇用の推移の表を掲載します。

四半期全国完全失業率前年同期比増減
2022年1月~3月2.80%-0.30%
4月~6月2.70%-0.20%
7月~9月2.60%-0.10%
10月~12月2.50%-0.10%
2023年1月~3月2.40%-0.10%
4月~6月2.30%-0.10%
7月~9月2.20%-0.10%
10月~12月2.10%-0.10%
2024年1月~3月2.00%-0.10%
データは総務省統計局の「労働力調査」によるものです。全国完全失業率は、就業者がいない状態にある15歳以上の人口のうち、働く意思と能力があり、仕事を探している人の割合を示しています。

参考資料総務省統計局 労働力調査 https://www.stat.go.jp/data/roudou/

上記の表から、2022年1月~3月以降、全国完全失業率は緩やかに低下していることがわかります。これは、景気回復の影響と考えられます。

ただ、気をつけなければならないことは、失業率は典型的な遅行指標であるということです。失業率が景気変動に反映されるまでの時間は、景気変動の規模や政府の政策などによって異なりますが、一般的には数ヶ月から1年程度と言われています。

例えば、2008年のリーマン・ショック後の世界金融危機では、アメリカの失業率は、景気後退が始まった2008年12月から1年後の2009年12月まで、5.8%から10.0%まで上昇しました。

現在の失業率は、1年前くらいの経済状況を反映しているとみるのが妥当です。岸田政権の発足は21年10月です。

その前の政権は、菅政権と安倍政権でした。このブログで何度か指摘したように、安倍・菅両政権が合計で100兆円の補正予算を組み、コロナ禍対策を実行しました。そのため、日本では他国にみられるような失業率の急激な増加はみられませんでした。

そうして、この補正予算はほとんどが雇用対策助成金等の補助金として使われ、補助金を支給するには膨大な手間がかかり、実施もれによる余剰金もありました。これと岸田政権による補正予算により、景気対策が行われたことと、円安による輸出の伸びで、岸田政権初期には景気は悪くない状況が続きました。

しかし、この余剰金もつき、岸田政権による補正予算は、とても満足なものとはいえません。

岸田政権による令和5年度補正予算は、2023年11月24日に成立しました。主な内容は次のとおりです。

規模は、一般会計の総額は13兆1992億円、目的としては、物価高対策、経済成長に向けた投資、ウクライナ情勢への対応等です。実施期間は、物価高対策は、 2023年12月から、その他: 2024年度以降となっており、完全に出遅れた形です。

一方、いわゆる真水では、 約7兆円であり、物価高対策に 約4.5兆円、経済成長に向けた投資、約1.5兆円、ウクライナ情勢への対応が、約1兆円となっています。経済対策には6兆円です。2024年度の需給ギャップは約15兆円としています。

需給ギャップからみると、6兆円では、半分以下であり、全然足りないです。

今後、このままだと、さらに景気が低迷していく可能性があります。この状況で、日銀が利上げなどをするなどとても考えられない状況です。

今後、失業率減の数値が下がったり、失業率そのものが上がり始めたら、要注意です。物価があがっても、失業率が上がらない状況であれば、金融緩和政策を継続すべきです。コアコアCPIが4%を超え、それで失業率が下がらない状況が続けば、そのときはじめて利上げなどの金融引き締め政策を検討すべきです。今は全くその状況ではありません。

上の記事では、株価についも述べられていませんでした。これについても以下で述べようと思います。本日、日経平均株価がバブル期につけた史上最高値「3万8915円」を上回りました。 22日の東京株式市場で日経平均株価は一時、終値で史上最高値をつけた1989年12月29日の3万8915円87銭を上回りました。


約34年ぶりに最高値を超えたことになります。  米大手半導体NVIDIA(エヌビディア)の決算結果が市場予想を大きく上回ったことなどから、22日の東京市場では買い注文が膨らみました。 米の株高や好調な企業業績などを受け、日経平均株価は今年に入ってから、5000円以上値を上げています。 16日には一時、終値の史上最高値まであと50円ほどに迫りましたが、歴史的な節目を前に、21日までの3日間は値を下げていました。

株価に関しても、一喜一憂することなく、なぜ過去34年間も上がらなかったのかを考えるべきです。最近の株価の推移を以下に掲載します。
四半期始値終値変動率
2022年第1四半期28,807.3125,941.47-9.90%
2022年第2四半期25,941.4726,458.34+2.0%
2022年第3四半期26,458.3427,082.44+2.3%
2022年第4四半期27,082.4425,673.97-5.20%
2023年第1四半期25,673.9726,036.31+1.4%
2023年第2四半期26,036.3127,589.02+6.0%
2023年第3四半期27,589.0228,134.87+2.0%
2023年第4四半期28,134.8728,807.31+2.4%
この表から、日経平均株価は過去8四半期で比較的安定していることがわかります。2022年第1四半期に−9.9%下落した後、2022年第2四半期までに+2.0%に上昇しました。その後、2023年第4四半期まで緩やかに上昇し、2022年第1四半期の始値よりも2.4%高い水準で終えています。

2022年第1四半期に株価が下がったのは、この頃に米国連邦準備制度理事会(FRB)は、インフレ抑制のために金融引き締め政策を実施したからだと考えられます。政策金利の引き上げは、企業の資金調達コストを増加させ、経済成長を減速させる可能性があります。これが投資家心理を悪化させ、株価下落につながったと考えられます。

株価は景気の先行指標と一般的に言われていますが、どのくらい先の景気を示すものかは、一概には言えません。一般的には、数ヶ月から1年程度先の景気を示すとされています。

ただ、投資家の心理に悪い影響を与えることがあれば、株価は下がります。良い影響を与えることがあれば、上がります。

本日は、一時的に史上最高値をつけましたが、これがどのように推移していくかは、やはり今後の経済政策いかんよるでしょう。

今後も内需の低迷が続けば、これが心配材料になり株価が下がることもあるでしょう。

政府が積極財政を強化継続し、日銀が金融緩和を継続するだろうと機関投資家の見通しがつけ、これが安心材料となり引き続き株価は上がりつづけるでしょう。

過去の日本は、数十年にもわたりこのようなことを無視してきたからこそ、数十年もGDPがあがらず、株価も上がらなかったのです。このことを忘れ、株価が最高値を付けたとか、ドイツより名目GDPが下がったとかなどと一喜一憂している限りでば、同じことが繰り返されることになりかねません。どちらも、その根底には、政府が緊縮財政、日銀が金融引き締めを継続してきたという問題があるのです。

以上、森永氏のいう、個人消費や民間の設備投資、住宅投資など内需の観点からも、失業率、株価の観点からも、当面政府は積極財政を強化継続し、日銀は金融緩和を継続するべきなのです。

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2024年2月21日水曜日

「森喜朗さんが怒りのあまり車椅子から立ち上がり、自分の足で歩き始めたんです」ーついに始まった自民党・長老たちの最終戦争―【私の論評】岸田革命!派閥解体と強固な組織力で政権安定への道を歩めるか

「森喜朗さんが怒りのあまり車椅子から立ち上がり、自分の足で歩き始めたんです」ついに始まった自民党・長老たちの最終戦争

まとめ
  • 岸田文雄が自身の意見を強く表現し始め、自民党の長老たちの顔色を窺わずに発信するようになっている。これは岸田が自身が麻生太郎へ送った明確なメッセージでもある。
  • 麻生太郎は、自分に従う部下を探すなど、長老たちの中で唯一の主導権を握ろうとしている。しかし、その行動が人心を遠ざけていることに気づいていない。
  • 森喜朗は裏金問題で影響力を失いつつあり、その権勢が消えるのは時間の問題となっている。
  • 二階俊博は裏金問題や政策活動費問題で野党の追及を受け、情報を集めて次の総理総裁が誰になるか見極めようとしている。
  • 岸田は麻生-茂木ラインから古賀誠や菅義偉らへと組む相手をシフトしており、自民党では岸田首相主導で、党内に内閣人事局のような強力な組織を作り、自民党議員の人事を一手に握ろうという計画が進行している。

大勢の中学生に見送られる森元首相=能美市根上総合文化会館

 岸田文雄は、自身の意見を積極的に発信し、公の場で声高に派閥政治の終焉を求めている。これは、自身の政治的立場を明確に示し、個々の意見が政治の方向性を左右することを強調するためとみられる。

 その一例として麻生太郎との関係が挙げられる。岸田は麻生との関係を明確にし、それぞれの発信が政治における重要な役割を果たすことを主張した。この主張は、個々の意見と行動が政治の全体像を構成するという観点から出されたものだ。

 さらに、麻生が岸田を牽制するために上川陽子外相を戦略的に持ち上げたとき、岸田は菅義偉と協力し、戦術的な反撃を行った。これは岸田が自身の立場を守るために、必要な戦略と手段を用いて対抗した事例だ。

 一方、森喜朗は裏金問題によりその影響力を大きく失った。その結果、全方位に向けて攻撃をしかけていいるが、その行動は必ずしも支持を集めているわけではない。

 「安倍派幹部の離党論が浮上した際には、麻生さんと茂木さんを怒鳴りつけた。普段は車椅子で移動している森さんが、怒りのあまり自分の足で立ち上がり、歩いて麻生事務所に乗り込んだそうです」(全国紙政治部記者)

 森喜朗や二階俊博のような長老たちが政局で主導権を握ろうとする動きは、人々の心を遠ざけていると見られている。これは、彼らの政治行動が公の利益よりも個人や派閥の利益を優先しているという印象を与えているからだ。

 岸田は古賀誠や菅義偉と接近し、それぞれと協力関係を築いる。一方で、麻生や茂木敏充からは一定の距離を置いている。これは岸田が自身の治的立場と方向性を確立するための策略と見られる。

 岸田はまた、党内で強力な組織を作り上げ、自民党議員の人事を一手に握る計画を進行しています。これは「岸田一強時代」の到来を示しているとも解釈され、その政治的影響力が増大していることを示している。

 この文章は元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】岸田革命!派閥解体と強固な組織力で政権安定への道を歩めるか

まとめ
  • 岸田首相は党内の派閥解消を通じて、政策実行力強化や人材登用、情報収集・分析機能強化、世論対策強化、派閥の影響力弱体化、資金調達体制強化などを目指し、これにより、強力な組織を形成しようとしている。
  • 具体的な組織形態としては政策集団、プロジェクトチーム、タスクフォースが等が考えられる。これらは政策立案から実行、緊急課題対応までを担当するだろう。
  • 岸田首相による派閥解消は自民党執行部の力を強化することを目指している。しかし、この方針には反発もあり、成功するかは不透明だ。
  • 官僚機構との戦いの中で、岸田首相は自民党を一つにまとめることが必要だ。具体的には財務省との対立を通じ政権基盤を安定させ、政権を継続したいという意識があるようだ。
  • 岸田首相は「デフレ完全脱却のための総合経済対策」を閣議決定し、その中に「所得税減税」を盛り込んだことにより財務省との対立が深まり、自民党内の積極財政派や保守派と手を結ぶ可能性も出てきた。
上の記事、元は週刊誌ですから、どれだけ信憑性があるかはわかりません。しかし、岸田首相は、従来の政治家とは異なる行動をとることで、周囲を驚かせ、意表をつくことがあると評されています。具体的な例としては、「新しい資本主義」の提唱、デジタル庁設置、異例の会見、積極的な外交どが挙げられます。

二階氏

岸田首相は、党内でも周囲を驚かせ、意表をつくような行動をとることで、党内基盤強化や政策実現を目指しているようです。派閥解消はその最たるものといえるでしょう。

上の記事にもでてくる、岸田首相が現在進行中の、党内組織強化と人事掌握計画が目指す「強力な組織」とは、いくつかの要素が考えられます。

1. 政策実行力強化

岸田首相は「聞く力」を重視するリーダーシップを標榜していますが、政策実行のためには強力な組織力が必要です。従来の派閥主導から脱却し、首相官邸主導の政策実行体制を確立するため、政策立案から実行まで一貫した体制を構築する可能性があります。

2. 人材登用

岸田派以外の人材も積極的に登用し、幅広い人材を確保することで、組織全体の活性化と政策実行力の強化を目指す可能性があります。

3. 情報収集・分析機能強化

党内外の情報を効率的に収集・分析し、迅速な意思決定を行うための体制強化が考えられます。

4. 世論対策強化

国民の支持を得るために、世論調査やメディア対策などを強化する可能性があります。

5. 派閥の影響力弱体化

従来の派閥主導の政治体制から脱却し、首相官邸主導の体制を確立するため、派閥の影響力を弱体化させる可能性があります。

6. 資金調達体制強化

政治活動に必要な資金を効率的に調達するための体制強化が考えられます。

麻生氏


具体的な組織形態としては、次の3つが考えられます。

1. 政策集団

政策ごとに専門家を集めたチームを結成し、政策立案から実行まで一貫して担当させる方式です。

2. プロジェクトチーム

特定の課題解決のために、期間限定でプロジェクトチームを設置する方式です。

3. タスクフォース

緊急性の高い課題に対処するために、機動的に活動できるタスクフォースを設置する方式です。

これらの要素を組み合わせることで、岸田首相は自らの政策を実現し、政権基盤を強化するための強力な組織を作り上げようとしていると考えられます。

注意点

上記の分析はあくまでも推測であり、実際にどのような組織が形成されるかは今後の動向を見守る必要があります。また、強力な組織を作ることで、官僚制の弊害や権力集中による意思決定の硬直化などのリスクも指摘されています。

岸田首相による派閥の解体は、現自民党執行部の力を強化することを目指したもので、執行部の力が強まれば、当然のことながら派閥の力は弱まることになります。

自民党議員のほうからすれば、従来なら、党執行部のやり方が気に食わなければ、党執行部に反対する旨を公にして、党執行部から選挙時の公認をされなくても、派閥からの協力は得られるわけで、さほどダメージがなかったのですが、今後はそういうわけにはいかなくなるでしょう。

ただ、これには反発も多く、派閥自体が悪いのではないという意見も多く、岸田首相の戦略がうまくいくかどうかは、不透明なところがあります。

ただ、最近私はこのブログで先日も述べたばかりですが、現在は官僚機構が優勢になりつつある傾向があり、もし岸田政権の崩壊で、官僚機構が現状よりもさらに強力になれば、これは政治家の負けという状況を招く可能性もあるわけで、これだけは絶対に防がなければならないです。

岸田首相は、官僚機構には嫌というほど、煮え湯を飲まさせ続けてきたのは確かであり、安倍回顧録にもはっきり示されていたように、国民の経済など無視して、増税等の緊縮財政のためなら、それに逆らう政権など潰してしまえという財務省の本音を嫌というほど思い知らされたと思います。

財務省は、派閥の幹部等に「ご説明資料」などを持参して、財政に関するレクチャーをし、マクロ経済に弱い幹部らを味方に引き入れる行動をしているといわれ、派閥解消は財務省のこの活動を封じ込める効果もあると考えられます。

官僚機構と政府との戦いという構図の中では、自民党を一つにまとめなければならないという見方も成り立ちます。

岸田首相

無論、岸田氏自身は、そこまで意識しておらず、政権基盤を安定させ、政権を継続したいだけなのかもしれません。しかし、岸田文雄内閣は、11月2日に「デフレ完全脱却のための総合経済対策」を閣議決定し、その中に「所得税減税」を盛り込みました。 所得税・個人住民税の定額減税は、納税者と配偶者含む扶養家族1人につき2024年分の所得税を3万円、2024年度分の個人住民税を1万円減税するというものです。これは、財務省の大反発を招いたのは確かなようです。

これに対してマスコミも、呼応して「所得税減税」をこき下ろしました。そのこき下ろし方が、減税率が低いというのならまだしも、減税そのものが悪いかのような印象操作を盛んに行っていました。これで、岸田首相は、財務省は敵であることを改めて思い知ったことでしょう。

政権を継続したいがために、官僚機構とも戦うという方向にすすめば、派閥の意向などとは関係なく、官僚機構と戦ってきた、自民党内の積極財政派や保守派と手を結ぶ可能性もあります。

こちらの方向に岸田首相が動けば、政権が安定し、次の展開がどのようになるにしても、政治主導が優勢となり、混乱や混沌は避けられる可能性がでてきます。純正保守(保守とは本来政治的立場をいうのでなく、日本語でいうところに中庸に近いとする立場、革命に反対する立場)の私としては、この方向に進むのが良いと思います。

さて、どうなるか、それは岸田首相の決断によるしかないです。岸田首相が正しい判断をされることを祈るのみです。

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