GDP発表で見える「本当問題点」 内需の低調と政府・日銀の動向 金融と財政の「ダブル引き締め」を騒いだ方がいい
まとめ
- 内閣府が2023年10~12月期の国内総生産(GDP)を発表。
- 物価の変動を調整した実質ベースの成長率は前期比年率で0・4%減と2四半期連続のマイナス成長。
- 個人消費や民間の設備投資、住宅投資など内需が全滅の様相を呈している。
- 24年1~3月期のGDPもマイナス成長が予想されている。
- 日銀と政府の動きが今後の経済に大きな影響を及ぼすことが重要。
四半期毎のGDP成長率
2023年10~12月期の国内総生産(GDP)が発表され、物価の変動を調整した実質ベースの成長率は前期比年率で0・4%減と2四半期連続のマイナス成長となった。この発表を受けて、ネット上では「日本は景気後退(リセッション)に突入した」「日本のGDPがドイツに抜かれて世界第4位に転落した」という2つのニュースが話題になった。
しかし、この結果を深掘りしてみよう。日本のGDPの半分以上を占める個人消費は前期比0・2%減と3四半期連続のマイナス成長となり、民間の設備投資も3四半期連続のマイナスです。住宅投資も2四半期連続のマイナスで、わが国の経済の主軸である内需は全滅の様相を呈している。
さらに、5月に発表予定の24年1~3月期のGDPもマイナス成長が予想されている。仮に23年10~12月期のGDPが改定値でもマイナス成長のままであった場合、3四半期連続でマイナス成長というシナリオが既に見えつつある状況だ。
このような中で、日銀はマイナス金利の解除を示唆し、政府は少子化対策や防衛強化の財源としてさらなる負担増を掲げている。この状況下で金融と財政の「ダブル引き締め」を行おうとしていることについても注目すべきだ。
また、GDPの世界ランキングがドイツに抜かれて4位に転落したと騒ぐよりも、日本だけがこの30年間ろくに経済成長できなかったこと自体に関心を向けるべきではないか。このまま停滞を続けていれば、毎年のように順位が下がったと騒ぐことになり、もはやそれが風物詩になりかねない状況だ。
2023年は30年ぶりの賃上げ水準が実現され、外的要因とはいえ物価が上昇したことで人々の物価に対する考え方にも変化が生じた。今年も大幅な賃上げがなされれば、いよいよデフレ経済からの脱却も見えてくるだけに、政府と日銀の動きは非常に重要となる。
しかし、この結果を深掘りしてみよう。日本のGDPの半分以上を占める個人消費は前期比0・2%減と3四半期連続のマイナス成長となり、民間の設備投資も3四半期連続のマイナスです。住宅投資も2四半期連続のマイナスで、わが国の経済の主軸である内需は全滅の様相を呈している。
さらに、5月に発表予定の24年1~3月期のGDPもマイナス成長が予想されている。仮に23年10~12月期のGDPが改定値でもマイナス成長のままであった場合、3四半期連続でマイナス成長というシナリオが既に見えつつある状況だ。
このような中で、日銀はマイナス金利の解除を示唆し、政府は少子化対策や防衛強化の財源としてさらなる負担増を掲げている。この状況下で金融と財政の「ダブル引き締め」を行おうとしていることについても注目すべきだ。
また、GDPの世界ランキングがドイツに抜かれて4位に転落したと騒ぐよりも、日本だけがこの30年間ろくに経済成長できなかったこと自体に関心を向けるべきではないか。このまま停滞を続けていれば、毎年のように順位が下がったと騒ぐことになり、もはやそれが風物詩になりかねない状況だ。
2023年は30年ぶりの賃上げ水準が実現され、外的要因とはいえ物価が上昇したことで人々の物価に対する考え方にも変化が生じた。今年も大幅な賃上げがなされれば、いよいよデフレ経済からの脱却も見えてくるだけに、政府と日銀の動きは非常に重要となる。
この記事は元記事の要約です。詳細を知りたいかたは、元記事を御覧ください。
参考資料総務省統計局 労働力調査 https://www.stat.go.jp/data/roudou/
上記の表から、2022年1月~3月以降、全国完全失業率は緩やかに低下していることがわかります。これは、景気回復の影響と考えられます。
ただ、気をつけなければならないことは、失業率は典型的な遅行指標であるということです。失業率が景気変動に反映されるまでの時間は、景気変動の規模や政府の政策などによって異なりますが、一般的には数ヶ月から1年程度と言われています。
例えば、2008年のリーマン・ショック後の世界金融危機では、アメリカの失業率は、景気後退が始まった2008年12月から1年後の2009年12月まで、5.8%から10.0%まで上昇しました。
現在の失業率は、1年前くらいの経済状況を反映しているとみるのが妥当です。岸田政権の発足は21年10月です。
その前の政権は、菅政権と安倍政権でした。このブログで何度か指摘したように、安倍・菅両政権が合計で100兆円の補正予算を組み、コロナ禍対策を実行しました。そのため、日本では他国にみられるような失業率の急激な増加はみられませんでした。
そうして、この補正予算はほとんどが雇用対策助成金等の補助金として使われ、補助金を支給するには膨大な手間がかかり、実施もれによる余剰金もありました。これと岸田政権による補正予算により、景気対策が行われたことと、円安による輸出の伸びで、岸田政権初期には景気は悪くない状況が続きました。
しかし、この余剰金もつき、岸田政権による補正予算は、とても満足なものとはいえません。
岸田政権による令和5年度補正予算は、2023年11月24日に成立しました。主な内容は次のとおりです。
規模は、一般会計の総額は13兆1992億円、目的としては、物価高対策、経済成長に向けた投資、ウクライナ情勢への対応等です。実施期間は、物価高対策は、 2023年12月から、その他: 2024年度以降となっており、完全に出遅れた形です。
一方、いわゆる真水では、 約7兆円であり、物価高対策に 約4.5兆円、経済成長に向けた投資、約1.5兆円、ウクライナ情勢への対応が、約1兆円となっています。経済対策には6兆円です。2024年度の需給ギャップは約15兆円としています。
今後、このままだと、さらに景気が低迷していく可能性があります。この状況で、日銀が利上げなどをするなどとても考えられない状況です。
【私の論評】日本経済の行方 は、内需と雇用がカギ、株価やGDPで一喜一憂すべきでない
まとめ
- 総務省の統計を引用し、完全失業率が緩やかに低下していることを示した
- ただし失業率は遅行指標なので、現在の失業率は1年前の経済状況を反映していることに注意が必要、今後低下のおそれもある
- 安倍・菅政権下で行われた補正予算と雇用対策が功を奏し、岸田政権発足直後は景気はそれほど悪くなかった
- しかし岸田政権の補正予算は不十分であり、今後景気が低迷していく可能性がある
- この状況で日銀が金融引き締めに動くことは考えられず、むしろ金融緩和政策を継続すべき
- 株価も34年ぶりの最高値を更新したが、過去の轍を踏まないためには内需喚起が必要、あらゆる観点から当面政府は積極財政を強化継続し、日銀は金融緩和を継続するべき
上の記事では、雇用に関しては何も述べられていないので、以下に雇用の推移の表を掲載します。
データは総務省統計局の「労働力調査」によるものです。全国完全失業率は、就業者がいない状態にある15歳以上の人口のうち、働く意思と能力があり、仕事を探している人の割合を示しています。
参考資料総務省統計局 労働力調査 https://www.stat.go.jp/data/roudou/
上記の表から、2022年1月~3月以降、全国完全失業率は緩やかに低下していることがわかります。これは、景気回復の影響と考えられます。
ただ、気をつけなければならないことは、失業率は典型的な遅行指標であるということです。失業率が景気変動に反映されるまでの時間は、景気変動の規模や政府の政策などによって異なりますが、一般的には数ヶ月から1年程度と言われています。
例えば、2008年のリーマン・ショック後の世界金融危機では、アメリカの失業率は、景気後退が始まった2008年12月から1年後の2009年12月まで、5.8%から10.0%まで上昇しました。
現在の失業率は、1年前くらいの経済状況を反映しているとみるのが妥当です。岸田政権の発足は21年10月です。
その前の政権は、菅政権と安倍政権でした。このブログで何度か指摘したように、安倍・菅両政権が合計で100兆円の補正予算を組み、コロナ禍対策を実行しました。そのため、日本では他国にみられるような失業率の急激な増加はみられませんでした。
そうして、この補正予算はほとんどが雇用対策助成金等の補助金として使われ、補助金を支給するには膨大な手間がかかり、実施もれによる余剰金もありました。これと岸田政権による補正予算により、景気対策が行われたことと、円安による輸出の伸びで、岸田政権初期には景気は悪くない状況が続きました。
しかし、この余剰金もつき、岸田政権による補正予算は、とても満足なものとはいえません。
岸田政権による令和5年度補正予算は、2023年11月24日に成立しました。主な内容は次のとおりです。
規模は、一般会計の総額は13兆1992億円、目的としては、物価高対策、経済成長に向けた投資、ウクライナ情勢への対応等です。実施期間は、物価高対策は、 2023年12月から、その他: 2024年度以降となっており、完全に出遅れた形です。
一方、いわゆる真水では、 約7兆円であり、物価高対策に 約4.5兆円、経済成長に向けた投資、約1.5兆円、ウクライナ情勢への対応が、約1兆円となっています。経済対策には6兆円です。2024年度の需給ギャップは約15兆円としています。
需給ギャップからみると、6兆円では、半分以下であり、全然足りないです。
今後、このままだと、さらに景気が低迷していく可能性があります。この状況で、日銀が利上げなどをするなどとても考えられない状況です。
今後、失業率減の数値が下がったり、失業率そのものが上がり始めたら、要注意です。物価があがっても、失業率が上がらない状況であれば、金融緩和政策を継続すべきです。コアコアCPIが4%を超え、それで失業率が下がらない状況が続けば、そのときはじめて利上げなどの金融引き締め政策を検討すべきです。今は全くその状況ではありません。
約34年ぶりに最高値を超えたことになります。 米大手半導体NVIDIA(エヌビディア)の決算結果が市場予想を大きく上回ったことなどから、22日の東京市場では買い注文が膨らみました。 米の株高や好調な企業業績などを受け、日経平均株価は今年に入ってから、5000円以上値を上げています。 16日には一時、終値の史上最高値まであと50円ほどに迫りましたが、歴史的な節目を前に、21日までの3日間は値を下げていました。
株価に関しても、一喜一憂することなく、なぜ過去34年間も上がらなかったのかを考えるべきです。最近の株価の推移を以下に掲載します。
この表から、日経平均株価は過去8四半期で比較的安定していることがわかります。2022年第1四半期に−9.9%下落した後、2022年第2四半期までに+2.0%に上昇しました。その後、2023年第4四半期まで緩やかに上昇し、2022年第1四半期の始値よりも2.4%高い水準で終えています。
2022年第1四半期に株価が下がったのは、この頃に米国連邦準備制度理事会(FRB)は、インフレ抑制のために金融引き締め政策を実施したからだと考えられます。政策金利の引き上げは、企業の資金調達コストを増加させ、経済成長を減速させる可能性があります。これが投資家心理を悪化させ、株価下落につながったと考えられます。
ただ、投資家の心理に悪い影響を与えることがあれば、株価は下がります。良い影響を与えることがあれば、上がります。
本日は、一時的に史上最高値をつけましたが、これがどのように推移していくかは、やはり今後の経済政策いかんよるでしょう。
今後も内需の低迷が続けば、これが心配材料になり株価が下がることもあるでしょう。
政府が積極財政を強化継続し、日銀が金融緩和を継続するだろうと機関投資家の見通しがつけ、これが安心材料となり引き続き株価は上がりつづけるでしょう。
過去の日本は、数十年にもわたりこのようなことを無視してきたからこそ、数十年もGDPがあがらず、株価も上がらなかったのです。このことを忘れ、株価が最高値を付けたとか、ドイツより名目GDPが下がったとかなどと一喜一憂している限りでば、同じことが繰り返されることになりかねません。どちらも、その根底には、政府が緊縮財政、日銀が金融引き締めを継続してきたという問題があるのです。
以上、森永氏のいう、個人消費や民間の設備投資、住宅投資など内需の観点からも、失業率、株価の観点からも、当面政府は積極財政を強化継続し、日銀は金融緩和を継続するべきなのです。
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