2024年2月11日日曜日

「巨悪に挑む正義のヒーロー」と思ってはいけない…日本の特捜検察が冤罪を生んでしまうワケ―【私の論評】汚職事件との違いが際立つ自民党派閥パーティー券事件の本質

「巨悪に挑む正義のヒーロー」と思ってはいけない…日本の特捜検察が冤罪を生んでしまうワケ

まとめ
  • 政治資金パーティー券事件で、検察による大物政治家の立件が見送られたが、検察の政治介入の疑惑が浮上している。
  • 事件自体がそれほど悪質ではなく、立件も難しかったことから、検察の意図が問われている。
  • 日本の司法制度・運用には深刻な問題があり、国際的にも評判が悪化している。人質司法などが代表例。
  • 検察の介入で新しいビジネスが萎縮し、推定無罪の原則もないなど法治国家として異常な状況。
  • 巨悪への対処は立法を優先し、情報公開で犯罪防止を。抜本的な司法改革が喫緊の課題。
東京地方検察庁特別捜査部が設置されている 九段合同庁舎

 自民党派閥の政治資金パーティー券事件で、東京地検特捜部が派閥幹部らの立件を見送ったことについて、評論家の八幡和郎氏は辛辣だが的確な指摘を展開している。

 まず八幡氏は、事件自体が過去の大規模汚職事件ほど悪質ではなく、立件自体が困難だったことを指摘。その上で、検察が大物逮捕を示唆する情報を流し、事実上の政治介入を行った可能性を問題視する。

 加えて、検察が本丸の森喜朗元首相には手出しできず、側近の池田議員を逮捕したことから、政権との対立が意趣返しの意図につながったのではないかと疑問を呈する。

 さらに日本司法の抱える根深い問題にも言及。国際的に評判の悪いゴーン元会長への扱いや、逮捕が刑罰以上のダメージを与える「人質司法」がその象徴であると批判する。

 検察による新ビジネスへの介入が成長を阻害している点や、推定無罪の原則がないことの異常さも指摘。日本司法の前近代性を痛烈に批判している。

 その上で、巨悪への対処は立法を優先し、情報公開で犯罪を未然に防ぐことが先決であると主張。今回の検察のやり方は到底容認できず、抜本的な司法改革が必要不可欠だと訴える。

 共同親権制度の不存在や子の連れ去り問題など、国際常識から乖離した法制度の改正も喫緊の課題であるが、法務省の妨害が指摘されているという。

八幡 和郎(やわた・かずお) 
徳島文理大学教授、評論家

 この記事は、元記事の要約です。詳細は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】汚職事件との違いが際立つ自民党派閥パーティー券事件の本質

まとめ
  • 八幡氏が指摘する「大規模汚職事件」には、ロッキード事件、リクルート事件、東京佐川急便事件が含まれる
  • これらの事件は、政治家への大規模な金銭授受が明らかになった汚職事件
  • 一方、今回のパーティー券事件は会費名目での政治資金不正に留まり、金銭授受自体は違法とはいえない
  • 検察による大物逮捕示唆のリークなど、逮捕前の「犯人扱い」が問題
  • 事件の影響力が一様ではなく、事態の鎮静化もあり得る。慎重な見極めが必要

八幡氏が指摘している「過去の大規模汚職事件」とは、具体的にはロッキード事件やリクルート事件、東京佐川急便事件を指していると考えられます。

ロッキード事件を伝える当時の新聞

その根本的な違いは次の通りです。
  • ロッキード事件は、航空機購入の代金の一部を賄賂として政治家に渡した巨大汚職事件。
  • リクルート事件は、リクルートコスモスが自社の未公開株を政治家に割り当て、影響力の見返りを得た事件。
  • 東京佐川急便事件とは、佐川急便グループが政治家秘書らに対して現金を渡していたという汚職事件です。見返りとして佐川急便の利益につながるよう国会質問の内容調整などをしていた。政治家秘書らに対し、数千万円から1億円規模の現金を渡していた 。
これらの事件は、企業から政治家への大規模な金銭のやり取りが明らかになった汚職事件でした。

一方で今回の自民党派閥のパーティー券事件は、政治資金パーティーの会費名目で政治資金を集める際に、収支報告書への虚偽記載があったというもの。金銭の受領自体は違法ではないという点で性格が異なります。

したがって、今回の事件ほど企業と政治家の癒着という観点では重大性が低く、立件も難しいというのが八幡氏の指摘するところです。

ちなみに、ロッキード事件とリクルート事件における金銭の総額は以下の通りとされています。
  • ロッキード事件 総額:約6億2,000万円 内訳:田中角栄元首相への賄賂が約4億2,000万円など
  • リクルート事件 総額:約57億円 内訳:未公開株計130万株が政治家などに割り当てられ、1株当たり最高で約44万円のプレミアムがついたとされる
  • 佐川急便事件では、朝日新聞の調べでは、少なくとも1億2千万円以上 、日本維新の会の馬場伸幸前代表(事件当時は秘書)への授受だけで約1億円 、自民党の衆議院議員秘書に対する授受が複数あったとされ、政治家秘書らへの総額は少なく見積もっても数億円規模に上ると考えられる。
このように、ロッキード事件で数億円規模、リクルート事件では50億円、佐川急便事件では数億円を超える莫大な金額が動いていたと言われています。

リクルート事件を伝える当時の新聞

一方、今回の自民党派閥のパーティー券事件では、総額こそ明らかになっていませんが、会費名目で1人数万円程度を徴収していたとされており、規模の違いは歴然としているといえます。

八幡氏は元記事で、「逮捕される前からの犯人扱い」にしていることが問題だとも指摘しています。該当する事例として、以下のような検察による情報リークが考えられます。
  • 今回の自民党派閥パーティー券事件で、検察が大物政治家の逮捕を示唆するようなリークを行い、マスコミで大々的に報じられた
  • 東京佐川急便事件でも、大物議員秘書の逮捕直前に氏名が報道されるなど、検察からの情報リークが指摘された
  • 別の汚職事件でも、逮捕前からマスコミが「汚職議員」などと報じるケースがしばしば見受けられた
こうした報道が出回ることで、世間からの批判を受けるなど、事実上の「犯人扱い」となることが問題視されているといえます。憶測報道を避けるべきである、との八幡氏の主張は妥当なものです。

検察による捜査情報のリークは法律に違反する可能性が高い行為です。

具体的には、刑事訴訟法の「捜査の秘密」(第100条)に違反するおそれがあります。

この条文では、捜査に関与する検察官、司法警察員等に対し、職務上知り得た捜査の秘密を漏らしてはならない、と定められています。

今回のパーティー券事件での大物政治家逮捕の示唆などは、まさにこの「捜査の秘密」に関わる情報のリークに該当すると考えられます。

仮に捜査情報をリークした検察官が特定されれば、刑事訴訟法違反で処罰の対象となり得るでしょう。

したがって、八幡氏の指摘するように、検察による逮捕前の情報リークは法律上も問題がある行為だと言えます。

今回の事件が過去の「政治とカネ」の問題に端を発した政界再編の動きに似ている面はあります。

ただし、過去の事例から見ても、事件の影響力は必ずしも一様ではなく、収束していく可能性も必ずしも否定できません。

理由としては、まず今回の事件そのものが過去ほどの重大性がないことがあげられます。金額や事実関係の調査の粗っぽさから、世論の怒りを買い続けづらい側面があります。今後野党やマスコミも批判を続けるでしょうが、かといってそれによって何かが変わる可能性は低いです。そうなると、一般の関心は薄れていくことでしょう。

また、捜査当局である検察の偏向ぶりが明らかになれば、むしろ世論の反発を招きやすいところでしょう。過剰なマスコミ報道も視聴者からの反発が生じています。

自民党内でも、今回の事態が過熱することへの牽制が働くと考えられ、一定の歯止めとなり得るでしょう。

こうした動向次第では、徐々に事態が鎮静化し、大きな政界再編には至らない線も十分に描けるでしょう。今後の動向に注意が必要ですが、決して悲観的なシナリオしかないわけではないです。

私は、今回の検察のリークに端を発した事件により、大きな政界再編成がおこってしまえば、検察やマスコミを一層奢り高ぶらせ、また政治に介入してくる端緒を与えかねないと懸念しています。このような懸念を自民党幹部が抱く可能性は高いです。

岸田首相

その意味では、私自身は、岸田政権には不満であるものの、岸田政権には少なくともう一期くらいは、続けさせ政治を安定化させ、マスコミや検察などの倒閣運動など通用しないことをはっきりさせた上で、次の展開を考えたほうが良いと思います。それは、自民党に野党にもいえることだと思います。

そうでないと政局はとんでもない方向に動いていき、せっかく安倍政権・菅政権で築きつつあった、官僚主導でない政治主導の政治が根底から覆され、それこそ官僚主導、その中でも最強の官庁である財務省主導の政治がより一層色濃く展開されることになりかねません。

今のままだと、岸田政権は打倒したものの、その後継政権は岸田政権以下という事になりかねません。しかも、官僚たちが一斉に蠢き出し、財務省は緊縮財政に走り、日銀は金融引き締めに走り、経済は落ち込み、中国や韓国は、これによって一息つき、さらに日本への干渉を強めるでしょう。

LGBT理解促進法案が促進され、巷で大混乱になり、移民が大勢日本にやってきたり、ポリティカル・コレクトネスがより一層日本でも促進され、混乱の極みになる可能性は否定しきれません。混乱するだけならまだ良いのですが、多くの国民が実際にその実害を被るという事態になりかねません。

無論岸田政権であっても、これは懸念されるのですが、政権が不安定になれば、一層これを進めやすくなります。岸田政権が崩壊したということになれば、官僚やマスコミ、反日勢力などが大きく勢いづくことになります。それを防止するためにも、岸田首相には、国民にもっと寄り添い、官僚機構と闘う政治家に変身していただきたいのです。

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