2024年2月16日金曜日

日本の名目GDP世界4位が確定 政財界からは楽観視する声も「一喜一憂する必要はない」―【私の論評】 名目GDPと実質GDPの違いを徹底解説!経済成長率を正しく測るために

 日本の名目GDP世界4位が確定 政財界からは楽観視する声も「一喜一憂する必要はない」

ドイツ国民は物価高で苦しめられている

 2023年の名目GDP(=国内総生産)がドイツに抜かれ世界4位が確定したことについて、政財界からは楽観視する声も出ています。
 
 日本の2023年1年間の名目GDPはドル換算で4兆2106億ドルとなり、ドイツに抜かれて世界4位になりました。新藤経済再生担当大臣は、為替相場で円安が続いている影響が大きいことに加え、ドイツは物価上昇率が高いなどの要因があると説明しました。この上で、国際的な地位は外交や文化など様々な分野で構成されるため、「あまり心配しなくていいのではないか」と述べました。

  一方、日本商工会議所の小林会頭も大幅に円安が進んだことが主因であって、物価の違いや為替レートの影響を除いた購買力平価で考えれば「一喜一憂する必要はない」と指摘しました。

【私の論評】 名目GDPと実質GDPの違いを徹底解説!経済成長率を正しく測るために

まとめ
  • 名目GDPと実質GDPは、どちらも国内総生産(GDP)を表す指標だが、物価変動の影響を受けているかどうかで異なる。
  • 名目GDPは、実際に取引されている価格に基づいて算出され物価上昇の影響を受ける。一方、実質GDPは、ある年の価格水準を基準として物価変動の影響を除いたGDP。
  • 経済成長率を測るには、実質GDPを用いる必要がある。名目GDPは物価上昇の影響を受けているため、経済の実体的な成長率を反映していないからでだ。
  • 名目GDPと実質GDPの違いをよく知らないマスコミなどがドイツとの比較大騒ぎしているが、日本の名目GDPを問題とするなら、過去30年にもわたってこれが上がらなかったことだ。
名目GDPと実質GDPは、どちらも国内総生産(GDP)を表す指標ですが、物価変動の影響を受けているかどうかで異なります。

名目GDPは、実際に取引されている価格に基づいて算出されるGDPです。そのため、物価が上昇すると、名目GDPも上昇します。しかし、実際の生産量やサービス量が変化していない場合でも、物価上昇によって名目GDPは増加してしまうという問題があります。

一方、実質GDPは、ある年の価格水準を基準として物価変動の影響を除いたGDPです。実質GDPは、経済の実体的な成長率を測る指標として用いられます。

例えば、ある年の名目GDPが100万円で、翌年の名目GDPが120万円だった場合、名目GDPは20%増加したことになります。しかし、この間に物価が10%上昇していた場合、実質GDPは10%しか増加していないことになります。

名目GDPは、物価変動の影響を受けているため、経済の実体的な成長率を測る指標としては不適切です。一方、実質GDPは、物価変動の影響を除いているため、経済の実体的な成長率を測る指標として適切です。

名目GDPと実質GDPは、どちらも重要な経済指標ですが、それぞれ異なる役割を持っています。

名目GDPは、経済規模の単純比較やインフレ率計算などに使用されますが、経済の実体的な成長率を測るには実質GDPを用いる必要があります。特にインフレ率の計算のためには必要不可欠です。

それぞれの指標の特徴を理解し、目的に合わせて使い分けることが重要です。

以下にドイツと日本の名目・実質のGDPの伸び率の推移を掲載します。

下はドイツのものです。
名目GDP伸び率実質GDP伸び率
20195.00%0.60%
2020-4.90%-5.30%
20217.70%2.90%
20227.20%3.60%
20236.30%-0.30%
ドイツ経済は、2020年に新型コロナウィルスの影響で大きく落ち込みましたが、2021年と2022年には力強く回復しました。
2023年は、ウクライナ戦争の影響で景気減速が予想されています。
名目GDPは物価上昇の影響を受けているため、実質GDPよりも高い伸び率を示しています。
2023年の実質GDPはマイナス成長となり、2020年以来初めて経済が縮小しました。

下は日本のものです。
名目GDP伸び率実質GDP伸び率
20190.70%0.70%
2020-4.80%-4.80%
20212.10%1.70%
20221.30%2.10%
20233.10%1.90%
日本経済は、2020年に新型コロナウィルスの影響で大きく落ち込みましたが、2021年と2022年には緩やかに回復しました。

2023年も、世界的な景気減速の影響を受けながらも、緩やかな成長が続くと予想されています。

名目GDPは物価上昇の影響を受けているため、実質GDPよりも高い伸び率を示しています。

次に日本とドイツのコアコアCPIの推移を掲載します。

日本ドイツ
2019年0.30%1.40%
2020年0.00%0.50%
2021年0.00%3.10%
2022年0.50%5.30%
2023年1.40%8.70%

コアコアCPIは、季節変動などが激しい生鮮食品とエネルギーを除いた消費者物価指数です。

2023年12月時点で、日本のコアコアCPIは1.4%、ドイツのコアコアCPIは8.7%となっています。

ドイツのコアコアCPIは、日本よりも大幅に高い上昇率を示しています。これは、ウクライナ戦争の影響によるエネルギー価格の高騰がドイツ経済に大きな影響を与えていることを示しています。コアコアCPIには、エネルギー価格等はふくまれませんが、様々な産業活動等にはエネルギーが用いられます。そのため、エネルギー価格が高騰するとコアコアCPIも上昇するのです。

特に原発を全部廃炉にしたことが、大きいです。

日本のコアコアCPIは、2022年11月に0.8%まで上昇した後、2023年12月には1.4%まで上昇しています。これは、日本でも物価上昇が徐々に拡大していることを示してはいるものの、これは日銀が金融緩和策を継続しているからであり、正常な範囲内に収まっており異常なものではありません。

マスコミや一部の識者など、上のように総合的な判断をせず、一つの指標だけで判断して、得意の日本悲観論を語っています。このような論調には煽られないようにしましょう。

私は、名目GDPがドイツに抜かれたなどということは、何の問題もないと思いますが、過去30年間日本の名目GDPが伸びずほぼ同じであったことが問題だと思います。

その要因は、黒田総裁より前の日銀が実体経済におかまいなしに、長きにわたって、金融引き締めを行ってきたことが原因であり、それを批判してこなかったマスコミや識者に大きな問題があると思います。

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