2024年2月27日火曜日

岸田内閣「不支持率8割」でよみがえる、小池百合子「大敗北」の記憶―【私の論評】次の選挙に対する自民党内の楽観論が示す「ワイドショー政治」の終焉

岸田内閣「不支持率8割」でよみがえる、小池百合子「大敗北」の記憶





まとめ
  • 岸田内閣の支持率は14%であり、不支持率が82%に達しており、これが自民党支持率も急落させ、立憲民主党の支持率も16%に達し、両党の支持率差が縮小。この急落は、2012年12月以来の自公政権復帰後で初めて。
  • 自民党内では次の選挙で自民党が政権を維持できるとの楽観論が広がっているが、野党の外交政策に一致がないことが大きな障害となっており、日米安全保障において一致がなければ、政権は適切に機能できないため、この問題は深刻。
  • ヨーロッパ諸国がアメリカに頼らず自主防衛が可能なのは、経済的な大きさやNATOの加盟国数などが影響している。一方で、日本が直面する中国、ロシア、北朝鮮といった国々は核を有し、GDPも日本の4倍以上あり、自主防衛は困難な状況。
  • 左派政党が日本の安全保障政策に難色を示す中、ドイツのSPDが1959年にゴーデスベルク綱領を制定し、中道左派へと転換する過程を挙げ、これが政権担当能力を向上させた。
  • 一方で、日本の左派政党がこのような変革を遂げておらず、小池百合子氏が示した「排除の論理」が、希望の党の人気を失速させ、政権選択肢を失った。



 自民党および岸田内閣の支持率が急落し、野党の立憲民主党との支持率差が縮まった中で、自民党内で楽観論が広がっている。支持率は過去最低であり、次期選挙でも政権維持が困難と予測される中、楽観論は外交政策の一致がない野党による政権交代の難しさに起因している。

 日本は、世界でも稀な国であり、政権選択の余地が極めて狭い。これは不幸な状況である。現政権の支持率が8割を超えているにもかかわらず、次期総選挙で野党が政権を握るという予測が出てこないのは、野党同士の外交政策の一致が難しいためだ。

 支持率急落の背景には、自民党の支持率が16%にまで落ち込み、野党第1党の立憲民主党が同じく16%の支持率を記録したことが挙げられる。これにより、これまで大きく開いていた両党の支持率差はなくなり、政権交代の可能性が高まった。自民党支持率が1割台に落ち込むのは、2012年12月の自公政権復帰後で初めてのことであり、これに対する楽観論は特筆すべきものだ。

 一方で、ヨーロッパ諸国がアメリカに頼らず防衛できる理由には、経済力やNATOへの加盟が挙げられる。2023年時点で、ロシアのGDPは1.9兆ドル、人口は1.4億人だが、これに対してドイツ、イギリス、フランス、イタリアの合計のGDPは13.0兆ドル、人口は2.8億人である。さらに、ポーランド、リトアニア、ラトビア、エストニア、フィンランドは、経済的には小国ではあるが、ロシアに侵攻され支配された経験があり、国民の戦う士気が高い。

 これに対し、日本が対峙する中国、ロシア、北朝鮮は核を有し、中国のGDPは日本の4倍以上である。このような差異が、日本が自主防衛を困難にしている要因とされている。

 また、ヨーロッパ諸国がアメリカに頼らず自主防衛できる理由には、NATOの加盟国が多数存在することも挙げられる。これにより、安全保障上の連帯が形成され、相互の協力が期待できる。トランプ氏が「アメリカに頼らず自分で守れ」と主張する理屈には、一定の説得力があるとされている。

 日本の左派が日米同盟への支持を難しく考える一方で、ドイツの社会民主主義政党(SPD)は歴史的な変遷を経て中道左派として機能している。SPDはかつて親ソの労働者階級のための政党であったが、1959年にゴーデスベルク綱領を制定してマルクス主義の階級闘争から絶縁し、中道左派の国民政党へと変貌した。

 その後、SPDはキリスト教民主同盟/キリスト教社会同盟との大連立を組んで政権に参加し、安定した中道政権を形成してきた。これに対し、日本の左派政党は長らく日米安保に反対してきたが、その結果として政権担当能力の不足が指摘されている。

 日本の政治において、「排除の論理」が浮上し、憲法改正や安全保障関連法への態度が選挙候補者の選別基準とされたことは、政権維持の難しさを増大させた。2017年に小池百合子東京都知事が率いる新党「希望の党」が、憲法改正や安全保障関連法への態度で候補者を選別する方針を明らかにした際、「排除の論理」が強く反発を招き、党の人気は失速した。

 このような政策に対する厳格な姿勢が、選挙結果に直結することが示唆された。財政問題と安全保障問題では議論の進み方や妥協の余地が異なり、安全保障政策においては「排除の論理」が一般的に受け入れられにくい現実が浮き彫りになった。

 もし、「排除の論理」で新党ができていれば、今が政権交代のチャンスだったと私は思う。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】次の選挙に対する自民党内の楽観論が示す「ワイドショー政治」の終焉

まとめ
  • トランプ氏が「アメリカに頼らず自分で守れ」と主張する理屈には、GDPを論拠にした原田氏の発言があり、軍事費の観点からもそれが裏付けられている。
  • 世界各国の軍事費を比較すると、米国が依然として世界最大であり、EUは1%台にとどまっている。日本は中国の脅威を受けて防衛費を増額し、ロシアを上回る方針を掲げている。
  • ロシアはウクライナ侵攻に莫大な費用を投入しており、今後の軍事費の動向が注目されるが、GDPの制約がある。中国は急速に軍事費を増加させ、日本が倍増しても凌駕できない状況となっている。
  • トランプ氏の発言は軍事費の面からも裏付けられており、EUは軍事力を増強し、ロシアとの対峙を強化すべきである。
  • 野党の大勝が難しい背景には、日本の野党が日米安保などで一致せず、重要な政策領域で統一された立場を持てないからであり、次の選挙での自民党の勝利が予想さるが、これにより既存野党が変化するか、自民党が変化する可能性もあり、それが今後の唯一の希望といえる
上の記事で、トランプ氏が「アメリカに頼らず自分で守れ」と主張する理屈には、一定の説得力があるという原田氏の発言は、主にGDPを論拠にしていますが、軍事費でもその裏付けがとれます。

以下に世界各国の軍事費を比較した表を掲載します。
国名2022年軍事費 (USD)2021年比増減率2021年GDP比
米国8010億-0.40%3.20%
EU2140億6.20%1.40%
日本541億7.30%1.00%
ロシア617億28.90%4.30%
中国2520億7.10%1.70%
インド766億7.90%2.90%
為替レートは、2023年12月20日時点のものを使用。

参考資料:ストックホルム国際平和研究所 (SIPRI) - 世界軍事費データベース: https://www.sipri.org/databases/milex

米国は依然として世界最大の軍事費を誇り、世界の軍事費の約38%を占めています。EUは、ロシアのウクライナ侵攻を受けて軍事費を増加させるといいながらも、1%台です。

日本は、近年、中国の軍事的脅威の高まりを受けて防衛費を増額している。特に岸田政権は、軍事費を倍増することを宣言しており、そうなるとロシアのそれを上回ることになります。

ロシアは、ウクライナ侵攻に莫大な費用を投入しており、今後、軍事費がどのように推移するかが注目されます。ただし、元々GDPは低く、限界があります。ロシアはソ連の核と軍事技術の継承国であり、その点侮ることはできないものの、従来のように世界第二位の軍事大国であるという見方ではなく、等身大にみていく必要がありそうです。

中国は、近年、軍事費を急速に増加させており、米国に次ぐ軍事大国となっています。日本が、軍事費を倍増しても、これを凌駕することできず、日米同盟がますます重要になりつつあります。

インドは、近年、中国との対抗上、経済成長とともに軍事費を増加させており、今後の軍事力の増強が期待されています。

トランプ氏の発言は、軍事費の面からも、裏付けられているといえます。EUはさらに、軍事力を増すべきであり、ロシアとの対峙を強化すべきです。

そうして、中国の軍事費をみれば、日米同盟は強化すべきですし、憲法改正や安保の強化は、当然の帰結であると見えます。

2017年に小池百合子東京都知事が率いる新党「希望の党」が、憲法改正や安全保障関連法への態度で候補者を選別する方針を明らかにした際、「排除の論理」が強く反発を招いたことは本当に残念なことでした。

これについては、このブログにもいくつか掲載したことがあります。その代表的なもののURLを以下にあげておきます。
【メディア政争】「ワイドショー政治」の罪作りな実態 小池百合子氏が2度の選挙に勝ったワケ―【私の論評】小池氏はなぜワイドーショー政治を選んだのか(゚д゚)!

この記事は、2018年2月2日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事の【私の論評】から一部を以下に引用します。

選挙戦スタートこそ大いに盛り上がりを見せた「小池ワイドショー政治」でしたが、公示日前に小池代表が放った(民進党出身議員の一部を)「排除いたします」という一言から、流れは大きく変わってしまいました。

私自身は、この「排除いたします」という発言そのものが、小池氏の勢いをそいだのではないと思っています。その本質は、「排除いたします」という象徴的な発言などにより、マスメディアが希望の党、特に小池氏の本質は「改憲勢力」である点に焦点をあてはじめたということです。

元々、護憲派的立場のマスメディアが今のまま、小池氏をワイドショー政治のヒロインにまつりあげ続け、小池氏の希望の党が大勝利してしまえば、国会での護憲勢力はますます小さくなることに危機感を感じて、今度は小池氏を徹底的にワイドショーなどで叩き始めたのです。

まさに、今度は「ワイドショー政治」が小池氏に対して、逆機能を果たしたのです。「ワイドショー政治」で大勝利を得た小池氏は今度は「ワイドショー政治」により大敗北を喫することになったのです。

もしこのときに、「排除」宣言をしても、大きな反発を受けずに、「希望の党」が国政政党になっていたとしたら、たしかに 今は政権交代のチャンスだったかもしれません。

ネット上では、こうしたことを予見したのか、「希望の党」を叩くなという趣旨の発言もみられたことを記憶しています。

ただ、マスコミ主導によるワイドショー政治には問題があり、仮に当時「希望の党」が躍進したにしても、いずれマスコミは「希望の党」を徹底的に叩きはじめたのは間違いないでしょう。

ただ「希望の党」が躍進していれば、様々な動きがでてきて、「希望の党」がそのまま与党になるかどうかは別にして、いまごろ政権交代の芽が生えていた可能性はあったと思います。

ただ、政局の動きは変わりつつあるようにも見えます。それは「ワイドショー政治」が従来よりは、効き目がなくなりつつあることです。

「ワイドショー政治」に効き目があれば、今頃小池百合子氏は選挙で自民党候補者を応援するだけではなく、もっと具体的で派手な動きを見せていた可能性があります。

たとえば、東京15区(江東区)補選で小池百合子氏自身が出馬、もしくは息のかかった人物を候補者に立てるなどのことが考えられますが、そのような動きはありません。無論、まだ様子見をしていだけなのかもしれません。

しかし、もし「ワイドショー政治」に効き目があれば、これだけ自民党支持率が低下していれば、小池氏以外にも、従来なら何らかの派手な動きがあったはずです。

ただ、「ワイドショー政治」の動きも、安倍政権においては「もりかけ桜」、菅政権においてもありましたが、当時はさも大問題のように報道していましたが、もはやそれがなんであったのかあまり思い出せないくらいです。岸田政権下では、政治資金問題について、ついに大物は逮捕されず、小物だけが例外的に逮捕されただけにとどまり、あっけない幕引きとなりました。

この状況をみて、私を含めて一部の評論家などは、リクルート事件などと比較すれば、明らかに悪質性は低く、かといってもちろん悪質性を全く否定するなどということではありませんが、それにしても最初から大物議員を立件できない状況になるのはわかりきっていたのに、東京地検が捜査に踏み切ったのは、政治介入ではなかったのかという疑念の声もあがっています。

テレビ主導のワイドショー政治に踊る人々 AI生成画像

無論「ワイドショー政治」は岸田政権や自民党への支持率を低下させているのは間違いないです。にもかかわらず、上の記事の冒頭にもあるように、自民党および岸田内閣の支持率が急落し、野党の立憲民主党との支持率差が縮まった中で、自民党内で楽観論が広がっているというのです。

なぜ野党の大勝が予想されないのかという点については、やはり上の記事にあるように、日本では野党に日米安全保障などの重要な政策領域で野党の意見が一致しないため、政権交代が難しい状況となっているからだといえるでしょう。

「ワイドショー政治」等を超えて、中国などの脅威ははるかに多くの有権者に認識、共有されているようです。

次の選挙で、岸田政権が大勝利とまでいかなくても、勝利を収めれば、この状況は更に強まるかもしれません。もはや「ワイドショー政治」は実質的に効力を失い、安全保障などの重要政策領域でブレるような政党にはチャンスがないことがはっきりするでしょう。

そこに、日本保守党などや他の野党の保守派、自民内の保守派などが躍進できる隙がでてくることになるでしょう。実際に、そのようなことが世界中でおこっています。

そうなれば、政権交代もありという状況になるかもしれません。無論、結党の精神を再度見直し、自民党が安倍政権の政策を引き継ぎ発展させるという道もあります。そうなれば、自民党政権の運営も安定することでしょう。これらが、現在の数少ない政治への希望かもしれません。

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