2010年10月5日火曜日

小沢氏起訴議決に衝撃=国会運営、補選へ影響懸念-民主―【私の論評】最早、有罪無罪は問題ではない?

小沢氏起訴議決に衝撃=国会運営、補選へ影響懸念-民主


小沢一郎民主党元幹事長の資金管理団体の政治資金規正法違反事件で、東京第5検察審査会が「起訴議決」としたことに、同党内で4日、衝撃が走った。小沢氏に対しては離党勧告などの処分を求める意見があるが、小沢系議員を中心に擁護論も強い。今国会での2010年度補正予算案審議への影響も必至とみられ、執行部は苦しい判断を迫られそうだ。

【私の論評】最早、有罪無罪は関係ない?
仙谷由人官房長官は4日午後の記者会見で、小沢一郎元幹事長を強制起訴すべきだとの検察審査会議決について「刑事訴訟手続きの一つのプロセスだから、私の立場ではコメントを差し控えたい」と述べました。さらに一般論として「起訴されても有罪判決が確定するまでは被告人は推定無罪の立場だ。その原則だけは考えなければならない」と述べました。

仙石さんの発言、いかにも弁護士らしいと思います。推定無罪に関しては、一般の人は知っているようで知らない部分もあると思われるので、簡単にまとめておきます。

推定無罪(広義)……「何人も有罪と宣告されるまでは無罪と推定される」という近代法の基本原則。有罪判決が確定するまでは、何人も犯罪者として取り扱われない権利を有すること。無罪の推定、仮定無罪の原則とも。マスコミなどの影響で推定無罪と呼ばれるようになったが、本来の趣旨に忠実な表現は、無罪の推定。

推定無罪(狭義)……刑事裁判における立証責任の所在を示す原則。「検察官が被告人の有罪を証明しない限り、被告人に無罪判決が下される(=被告人は自らの無実を証明する責任を負担しない)」。刑事訴訟における当事者側からの表現です。

この推定無罪という言葉、小沢さんの事件に関してぴったりと当てはまると思います。小沢氏自身や、小沢さん擁護派の人たちは、小沢さんは推定無罪であり、結局は無罪であると主張しているのだと思います。

しかし、全部とはいいませかんが、多くのマスコミや一般の人々の感覚はこれと異なります。マスコミや一般国民の感覚において実際には被疑者・被告人の無罪推定は有名無実化しており、逮捕・起訴されたものは有罪、すなわち「逮捕(すること)=有罪(にすること)」「容疑者(被告)=犯罪者」であるとの誤認識が定着しています。それどころか、法的には罪に当たらない行為や、軽微な罰則のみに留まるような事例においても、国民感情や憶測・推測だけで犯人(悪者)扱いするケースが後を絶ちません。

被疑者としての実名が世間に報道されれば、大手企業が動向を監視し、就職させないようにすることがあります。たとえ、無罪が確定しても、一度解雇したり内定していた元・被疑者を復職させたり入社させることは義務づけられていないため、特に、大手企業や中堅企業やホワイトカラーへの就職・就業はほぼ不可能となります。

マスコミにおいては、一般名詞の「容疑者」を積極的に「犯人」の意味で使用する場合すらあります。

マスコミはこれらの表現の使い方が本当に酷いようで、容疑者を犯罪者のような意味で使うだけでなく、マスコミにとって犯罪者と思われることが都合が悪い場合は別の呼び方を使うなど、かなり意識して差別しているようです。

このように書くと、私は小沢さん擁護派だと思われるかもしれません。しかし、私は決してそうではありません。かといって、この推定無罪という考え方に反対しているわけではありません。

さて、少し長くなってしまいましたので、結論をいうと、やはり、ここいらで政治システムを根本的に見直すぺきだと思います。このブログでも、よく掲載するドラッカー氏によれば、「頻々として繰り返しておこる同じような問題は最早人の問題ではない、システムの問題であり、すみやかにシステムを構築しなおすべきである」と語っています。

現在の政治システムも、まさに同じような状況にあります。小沢氏に限らす、田中氏いや、そのもっと前から、政治資金の問題は繰り返し繰り返し発生しています。小沢氏の問題どのように決着がつくのか、わかりませんが、いずれの形で決着したとしても、また、このような問題は頻々として起こる可能性が大です。しばらくは、なりをひそめたとしても、現在の政治システムを変更しなければ、きっとまた似たような問題が発生し続けると思います。こうなると、もう、確かに小沢氏が悪いのでもなく、検察が悪いのでもなく、マスコミが悪いわけでもなく、国民の問題でもありません。まさに、システムの問題です。

では、どのように直せばよいかといえば、実際に実行する実現することはなかなか難しい面もあるかもしれませんが、考え方は、簡単すぎるほど簡単です。まずは、選挙にお金があまりかからないですむようにするべきです。これは、諸外国でも事例は沢山あります。これを事例としつつも、日本の風土に適したものを導入すべきでしょう。

それから、ザル法といわれている「政治資金規正法」を改定することです。この法律、何度も改正されてきたのですが、いまでも、抜け道がたくさんあり、ザル法であることにはかわりありません。この抜け道を断つような法律に改定すべきです。

しかし、これだけでも、十分ではありません。やはり、一国の閣僚や、総理大臣、あるいは与党の幹事長なる可能性のある人については、徹底的に出自や、犯罪歴その他を洗い出すシステムを構築すべきです。

これは、アメリカでは徹底されていることを以前のこのブログにも掲載しました。オバマ政権においては、政権が発足してから何と1年経過した時点で、オバマ政権の財務関係主要ポスト七つのうち、五つまでが空席であったという事実があります。それは、なぜかといえば、特に財務の主要ポストともなると、その候補者に対して、徹底した調査が入るので、それをいやがり、なかなか成り手がいなかったというのが真相です。この調査、徹底していて、最低三代先までの出自は無論のこと、犯罪あるいはそれに類する行為の有無、はては浮気の有無(倫理的な意味あいからではなく、浮気相手がスパイであるかないかなど)などかなり突っ込んで調査します。

プライベートなこともかなり詳細に調査されます。財務ポストを例に出しましたが、他のポストでも、かなり綿密に調査をします。大統領ともなれば、それに輪をかけて厳しい調査が行われます。アメリカでは、政治の中枢につくような人は、例外なく徹底的に調査をされます。こういう人たちに限っていえば、アメリカではプライベートなどないといっても過言ではないかもしれません。

だから、アメリカでは、財界の大物など、政治に関与しようとすれば、自分でやるというより、他の人にやらせようとします。そのため、人間関係の調査もかなり厳しいです。

アメリカでは、アイビーリーグのような大学や大学院の入試のときにも、受験生の入念な調査を行うような国です。これらの大学・院に入るような人は、将来リーダー的地位につくことが多いのと、やはり、大学・院の信用問題にも関わるからだと思います。


とにかく、これらの大学・院に受験生が応募すると、受験生の居住地に調査官を派遣して、学校は無論のこと、受験生の自宅のそばや、顔をだすところなど調査します。素行の調査はもとより、人間関係、社会貢献の度合いなどを調査します。この調査で不可とされる人は、いくら、入試の点数が良くても、入学を許可されることはありません。これに対して、日本では、推薦入学などをのぞけば、どんな有名大学でも成績だけて決められてしまいます。


こんなことを書くと、私のことを左翼の方々は、米帝礼賛者などと思われるかもしれません(笑)。確かに、アメリカにも悪徳政治家などゴマンといます。それも、日本に比較するとスケールが飛びぬけて大きくて、驚愕させられることもありました。


しかし、考えてみてください。少なくとも、アメリカでは大統領が日本の総理大臣のように頻々と変わるということはないです。さらに、閣僚級の人で、金銭に関するスキャンダルが頻々と発生するなどはなく、日本に比べれば格段に少ないです。こうしたことから、アメリカの政治システムが特に優れているとはいいませんが、相対的に日本よりはましだということはできると思います。

それに、比較すると日本は、まったくこのへんがなっていません。閣僚の中でも、とんでもない経歴を持った人がいるというのが実情です。

この問題を解決しない限り、日本でもまともな政治風土は育たないと思います。現状では、小沢氏の動き、検察や、検察審査会、マスコミの動きばかりクローズアップされ、こうした問題について言及する人は少ないです。

国会議員の方々、もう、その時々の政局など無駄なことにエネルギーを費やすようなことはやめて、政治システム改革に取り組むときではないですか?それに、差し迫った経済の問題、安全保障の問題などもあります。小沢氏の問題については、もう、最早、有罪無罪は問題ではないと思います。新しい、政治システムをつくりあげ、そのシステムの上では、小沢さんはどこがどう間違っているのか徹底的に調べ上げ、それを公表し、あとは本人の意思にまかせるべきと思います。


小沢さんを擁護するつもりはないですが、今回、検察が調査しても、おそらく、推定無罪になる確率がかなり高いのではないかと思います。要するに、白とはっきりはせずに、かといって、黒である十分な証拠もないという状況です。しかし、そのままでは、わだかまりが残り続けるままだと思います。このままでは、モグラたたき状況が頻々と続くことになります。そのわだかまりをなくすには、政治システム改革以外には道はないと思います。



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