2010年10月2日土曜日

アダルトメディアは女性差別か? 思想を押しつける横浜市の男女共同参画事業―【私の論評】なぜこういう計画に限って、世界の他の地域の情報や、過去の歴史を調べないのか?

アダルトメディアは女性差別か? 思想を押しつける横浜市の男女共同参画事業(月刊サイゾー)
アダルトDVDの広告、確かにありとあらゆる種類があり誰でも簡単に手に入る
「市民の半数がアダルトビデオに怒りを覚える街づくり」が横浜市で進んでいる。

事の発端は、横浜市が発表した「第3次横浜市男女共同参画行動計画(素案)」だ。これは、横浜市が行っている事業の一環で、DVやセクハラを防止する施策。保育や子育て支援をよりよい形にすることを、目指すものだ。

そこで、なぜかアダルトビデオやゲームなど「女性の性の商品化」を非難するカテゴリーが盛り込まれているのである。

具体的には「取り扱い目標」の中の、「性に関する理解と生涯を通じた健康の支援」という部分。ここで「市民が、互いの性を尊重し合うとともに、心身の健康について正しい知識を身につけ」ている社会を目指すとして「アダルト向けのDVD・ビデオやゲーム等で、女性の性が商品化され、人権が侵害されていると思う人の割合」を増加させることが目論まれているのである。さらに意味不明なのは、ここに「目標値」なるものが設定されていること。現状値を38.9%とし目標値は50%。すなわち、市民の半数が「アダルト向けメディアは人権侵害」であると考えるようになることが目指されているのだ。

果たして、アダルトメディアが女性の人権を侵害することになるのだろうか。筆者は、これまでも、この問題を取材し拙著『マンガ論争勃発』(永山薫氏との共著)などで扱ってきた。

この問題は大きく「フェミニズム」という思想で一括りにされるが、その中でアダルトメディアに対するスタンスは大きく異なる。その中でアダルトメディアが女性への人権侵害だと考える人々は、次のような論理を立てる。

「たとえば、アメリカ社会において日本人に対する暴力を描く映画、写真集、ビデオ、ゲームなどが娯楽作品として大規模に流通しており、大多数のアメリカ人が日常的にそれを購入して楽しんでいる状況で自分が暮らすことを想像してみるといい」

つまり、この立場に立つ人々(この思想は「ラジカルフェミニズム」と呼ばれる)はアダルトメディアにおける女性の扱いを、民族や人種差別と同じベクトルで考えるのだ。こうした思想が流行したのは1980年代のことで、現在では「フェミニズム」に携わる人々の大半は、この考え方に意義を唱える。それは、この思想が時として言論や表現を抑圧する側に回ることになってきたからだ。

それにも関わらず、横浜市が思想の偏りを否めない内容を取り入れたのはなぜだろうか。さらに、今年5月に横浜市男女共同参画審議会からの「答申」では女性の性の商品化に関する文章は見られないのに「素案」になって突然出現した理由もよくわからない。

「(素案は)答申を作成する時に、委員から出されてた意見を取りまとめる形で作成しました」

と話すのは、男女共同参画推進課長の宮口郁子氏。宮口氏は「素案」はあくまで、答申作成の際に出た意見を含めてまとめただけだと強調する。そして、あくまで「素案」であり、これから、市民の意見などを取り入れて修正を施すのだとも説明する。

だとすれば、現状値とか目標値とか、裏付けの不明瞭な数字が出てきたのは、なぜか。これを聞いてみたところ、宮口氏は「だいたい、このくらいかな......と思って設定した数字です」と言葉を濁した。つまり、設定した数字自体はまったく根拠のないものというわけだ。いくら「素案」とは言え、裏付けのないままに施策を提案するのは問題ではなかろうか。なにより「アダルトメディアは女性差別」という、一面的な意見を行政組織が取り上げることには問題はないのか? この点も質問してみたところ

「あの、やっぱり女性への人権侵害というか、商品化されちゃうのは問題だと思うんですよね......」

井口氏は決して「意見が偏っている」とは認めない。それ以前に、これが、どのように問題なのか、はっきりと認識していないようだ。これが横浜市全体の共通認識だとすれば大きな問題である。

もちろん、アダルトメディアであっても表現物を世に送り出す以上は「何をやっても自由」というわけではない。ゆえに「表現の自由」とそれにともなう議論は表現活動がある限り永続的に続いていく。その中で、公権力の介入は、またひとつ議論が分かれるところだ。もしも、公権力が「こうあるべき」という姿を規定し、人々を誘導するならば、そこに自由は存在しない。

12月までに確定するとされる「第3次横浜市男女共同参画行動計画」が、どのようなものになるのか。今後とも注視していく必要があるだろう。
(取材・文=昼間たかし)

横浜市「第3次横浜市男女共同参画行動計画(素案)」は、下のURLからPDFファイルでご覧になることができます。
取組目標4 性に関する理解と生涯を通じた健康の支援 (PDF 616KB) 

【私の論評】なぜこういう計画に限って、世界の他の地域の情報や、過去の歴史を調べないのか?
さて、先日は、このブログで、「地域別休暇分散」実現への動きが本格化し「休暇改革国民会議」が開催されることを掲載しました。そのブログの中で、この会議の欺瞞性を暴露しました。この会議では、結局は、休暇分散といいながら、何の議論もないまま祝日の分散化導入をはかろうとしていて、これは、日本国解体に呼応するものであることを論破しました。


要するに、この会議では、休暇分散を装っていながら、実は海外では全く行われていない、祝日分散を行なおうとしているのです。祝日分散など、世界のどこの国でも行われていません。中国でも行われていません。フランス、ドイツでもバカンスのため休暇を分散して取得することは行われていますが、祝日は分散化などしていません。全国一律で取得します。しかし、このことは表に出さず、休暇の分散取得という形で、国民の大半が反対であるにもかかわらず、これを推進しようとしているのです。これは、日本国解体に端緒を開くものにほかなりません。

これに関しては、世界中の他の国民国家の祝日に関しては、調べてみれば明らかにわかることで、おおよそ、現代の形の国民国家ができあがってから現在まで、世界中の国民国家において、祝日の分散取得はありません。これからも、ないでしょう。

このように、何かしようとするときに、似た様なことを世界の他の地域で、現在あるいは過去をたどって似た様なことはしていないのかを調べれば、そのような例は必ずといっていいほどあると思います。まさに、温故知新というところだと思います。

しかし、先の休暇国民会議でも、この「第3次横浜市男女共同参画行動計画(素案)」においても、このようなことを調べた形跡は全くありません。なぜでしょうか?

「市民の半数がアダルトビデオに怒りを覚える街づくり」という考え方は、別にそれだけでは悪くはないと思います。しかし、これを強力に推し進めた場合どうなるのかという考えが全くないようです。あるいは、意図的に考えない、意図的に議題や話題としていないのかもしれません。

そうして、私自身は、直接にこれに関わることは詳しく調査したことはありませんが、おそらく、世界中に似た様なことが山ほどあると思います。失敗例、成功例などもかなりあると思います。私自身は、アダルトDVDではありませんが、似た様なことで、有名な事例は知っています。

それは、禁酒法です。禁酒法は皆さんご存じでしょうか?今となっては、最悪の悪法中の悪法ということで、悪法の見本ともなっている法律です。

禁酒法は、確かに、アル中を予防するという意味では非常に良いよいに感じられます。特に、酔っ払いでひどい目にあったとか、アル中で身を持ち崩したという人が沢山いたので、酒さえなくなれば、このようなことはなくなり、良いことのようにも思われます。

しかしながら、禁酒法は結局、その当時のギャングを肥え太られるだけで終わってしまいました。当初の目的を達成するどころか、不良密造酒によって体を壊す人や、それどころか、死んでしまった人も多数いました。それに、アル中や、それによる弊害なども減るどころかかえって増えてしまいました。ギャングが高くアルコールを販売したため、身を持ち崩す人もかえって増えたくらいです。

禁酒法が施行されたときに、違法な樽酒を下水に捨てているシーン

詳しくは、wikipediaのもとの記事を読んでもらうことにして、下には、そこから、引用します。
1920年まではマフィアの主な活動はギャンブルと窃盗に限られていたが、禁酒法時代には酒を無許可で製造販売することで繁栄した[金になるアルコールのブラック・マーケットは栄えたが、しばしば暴力沙汰にもなった。強大なギャングは法執行機関を腐敗にまみれさせた。そして最終的には恐喝にいたった。ギャングは酒の密輸で利益を上げ、より強い酒の人気が急騰した。
禁酒法を実施するためのコストは高くついた。本来アルコールの課税から得られるはずだった毎年5億ドルの税収の不足は、政府財源に悪影響を及ぼした。
禁酒法が1933年に廃止された時、組織犯罪は安価なアルコールとの販売競争に敗れ大部分の州でその闇市場のアルコールによる利益のほとんどを失った。
禁酒法は、アメリカのアルコール醸造業に顕著な影響を及ぼした。禁酒法が廃止された後、かつて存在していた醸造所の半分だけが営業を再開した。禁酒法以後は今日バドワイザーやクアーズなどに見られるような米国で主流となっているアメリカンラガースタイルのビールが導入された。ワイン歴史家は禁酒法がアメリカが未熟なワイン産業を破壊したことを書き留めている。生産性の高いワイン品質のブドウの木は、より輸送に適した皮の厚い低級品質のものと取り替えられた。禁酒法時代の間に醸造者が他国に移住したか、全くビジネスをやめたので、業界の知識の多くも失われた。(=ロストテクノロジー)
禁酒法の終わりに、一部の支持者は率直にその失敗を認めた。富豪にして実業家のジョン・ロックフェラー2世によって書かれた手紙の引用には、こうある:
"禁酒法が提出された時、私はそれが大衆の意見によって広く支持される日が来ることを望みました。そして、アルコールの凶悪な影響が認められる日がすぐに来るだろうと思いました。しかしこれが私の望んだ結果ではないと、不本意ながらも信じるに至りました。飲酒はむしろ増加しました。不法酒場がサロンに取って代わりました。犯罪者の巨大な群れが現れました。我々の最高の市民の多くでさえ、禁酒法を公然と無視しました。法律の遵守は大いに軽んじられました。そして、犯罪はかつては決して見えない水準にまで増加しました。"
禁酒法が再び成立するという可能性を減らす方法として、アルコール産業が禁酒法廃止の数十年後により強力なアルコール規制を受け入れた、と一部の歴史家は述べている。
要するに、禁酒法を施行したことにより、かえってそれ以前よりもはるかに悪い社会なってどうしようもなくなってしまったので、もとにもどしたということです。とはいっても、アメリカではその名残がいまでもあり、未成年に対する酒類販売は厳しく禁じられています。販売した場合には、罰金などが適用されます。だから、成人未満の人が酒店に入って酒を買おうとすると、たいてい身分証明書の提示を求められ、成人未満だと販売はしてもらえません。未成年に飲酒を進めた場合も、日本よりは厳しい罰則があるのも事実です。

人類の歴史には、禁酒法以外にもいろいろ失敗しています。たとえば、共産主義はその最たるものです。これは、ある意味人類の壮大な実験であり、壮大な失敗であったといえます。今では、日本以外の国では、共産主義、社会主義を表だって主張する人など誰もいなくなりました。あの中国でさえ、今は、共産主義国ではなく、実質上の国家資本主義体制に変質しました。日本だけがそうではないということは、非常に残念なことです。現在の民主党政権も、いずれ、終焉してやっぱり駄目だったということになることでしょう。政権を担っている間に禁酒法のようなおびただしい害悪を拡散しないように祈るばかりです。民主党に票を入れた方々は、禁酒法が導入されたときに、良かれと思って賛同した人たちと同様な心理状態だったのだと思います。

さて、先程のアダルトビデオもあまり厳しく取り締まれば似た様なことになると思います。おそらく、闇ビデオのようなものが沢山流通するようになり、ヤミ業者が儲かるだけになると思います。以前、この業界にかかわる人、全部とはいいませんが、日本に在住する朝鮮人、韓国人、中国人などが多いという話を聴いたことがあります。

しかし、先の休暇取得といい、この問題も根元のほうでは、日本国解体につながっているのかもしれません。たとえば、もし横浜市で、アダルトDVDの販売に強い規制をかけたとします。そうすると、禁酒法のようにかえって、性道徳などが乱れて、社会が混乱します。そうして、闇ビデオを販売するほうは、儲かるというわけです。横浜で導入に成功したら、今度は他の都市にも広めて、同じようにしてしまい、結果として外国人は大儲けして、日本社会は混乱するとか?このように考えるのは、私だけでしょうか?上記の月刊サイゾーのツッコミ甘すぎると思います。このブログでは、今後もこの問題について、追跡していきます。もし何か新しい動きがあれば、ブログに掲載していきます。

しかし、誤解のないように言っておきますが、私は、アダルトDVDの流通をすべて全く規制がないままに放置しておけと言っているわけではありません。確かに、中にはどうしようもない程有害としか思えないものもあるようです。過度の規制はかえっ害になると言っているだけで、禁酒法の施行が廃止されたアメリカでも、未成年の飲酒には一定の厳しい規制を設けているように、きちんと世界中の事例、過去の事例も調べた上で妥当な規制であれば規制すべきところは規制するべきと思います。また、一度かけた規制でも、金科玉条のように守ることなく、不都合があれば、すぐにも変えるなど柔軟な姿勢で導入すべきものと思います。


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