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2020年6月29日月曜日

香港・国家安全法が「中国の没落」と「日本の復活」をもたらす可能性 — 【私の論評】東京・ニューヨークが国際金融センターのトップとなる日が来る!(◎_◎;)

香港・国家安全法が「中国の没落」と「日本の復活」をもたらす可能性 

ついに見えた、中国政府「衣の下の鎧」





 中国の「香港国家安全法案」が月内にも全国人民代表大会で成立する見通しだ。その場合、香港にどのような影響を与えるか。

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 この国家安全法は、国家分裂、政権転覆、テロ活動、外国勢力と結託して国家安全に危害を加える行為を取り締まり、処罰する。香港政府が「国家安全維持委員会」を設立し、関連事務に責任をもつが、中国政府は指導・監督のため香港に「国家安全維持公署」を設置する。国家安全法が香港の他の法律と矛盾する場合、国家安全法を優先するとしている。

  このような、国家転覆を企てる行為を処罰する法制はどこの国にもある。しかし、中国は共産党が憲法の上位に位置する一党独裁国家であり、共産党批判は国家転覆につながるとみなされる。一方、民主的な国では、政権交代のための民主主義プロセスがあり、政権・政党批判は容認される。

 よく香港に関しては一国二制度といわれるが、その矛盾は、今回のような国家安全法制が出てくると、よくわかる。

  欧米の自由・民主主義国では、高度な自治を有する一国二制度ともいえる自治領が歴史的にも存在してきたが、やはり中国では、自由も民主主義の歴史もないので、一国二制度は当初から無理だったのだろう。これまでも中国政府は、一国二制度は「香港固有のものではなく、全て中央政府から与えられたものである」と公言してきたが、今回の香港国家安全法で、ついに衣の下から鎧があらわれてしまった。


 香港から一国二制度を取ったら何が残るというのだろうか。その証拠に、政治的基盤が揺らぎ始めてから、香港経済はガタ落ちだ。

  香港の2019年7-9月期の実質域内総生産(GDP)成長率は、前年同期比でマイナス2.8%。四半期のマイナス成長はリーマン・ショック以来10年ぶりで、民主化デモの深刻化による観光客の減少と、米中貿易摩擦による中国経済の減速のダブルパンチだった。10-12月期も前年同期比でマイナス2.9%と景気後退になった。2020年1-3月期は、コロナでマイナス8.9%とダメ押しになっている。

  香港は、イギリス・スタイルの規制の緩い世界有数の金融センターだった。

  イギリスのシンクタンクZ/Yenグループが2007年3月から、国際金融センターの国際的競争力を示す指標(国際金融センター指数)を公表している。100以上の都市・地域を対象とし、年2回ランキングを出している。

  2020年3月に公表された最新版によれば、香港のランクは3位から6位まで低下してしまった。

  その前まで、ニューヨーク、ロンドンに次ぐ3位をシンガポールと競っていたが、一国二制度が揺らいでいることから、今回は下がってしまったわけだ。

自由な政治がなければ、自由な経済もない




 もちろん、香港の国際金融センターとしての魅力は、自由な金融取引ができなければ維持できない。もはや、金融センターとしての香港の将来はないだろう。

  特に香港ドルについてはドルペッグされており、これが香港の金融インフラを支えている。米国がドル決済で国際金融機関に制限をかければ、香港の金融経済はまったく機能しなくなり、ひとたまりもなく没落する。米国はドルという世界最強通貨をもっているので、その気になれば香港の生殺与奪を握っているともいえる。

  中国にとって、香港を失うのは経済的な打撃である。国際金融センターとして上海が伸びてきているので、香港の代替ができるのではないかという意見もあるが、筆者は否定的だ。

 というのは、そもそも国際金融センターとして不可欠な「自由な資本移動」が、中国では不可能だからだ。

 これをきちんと理解するためには、まず国際金融の知識である「国際金融のトリレンマ」についての理解が必要だ。ざっくりいうと、(1)自由な資本移動、(2)固定相場制、(3)独立した金融政策のすべてを同時に実行することはできず、このうち二つしか選べないというものである。

 このため、先進国の経済は二つのタイプに分かれる。一つは日本や米国のような変動相場制である。(1)の自由な資本移動は必須なので、(2)の固定相場制をとるか(3)の独立した金融政策をとるかの選択になるが、ここで金融政策を選択し、固定相場制を放棄している。

  もう一つはユーロ圏のように、域内は固定相場制、域外に対しては変動相場制を取るというものだ。(1)の自由な資本移動は必要だが、域内では(2)の固定相場制のメリットを生かし、かわりに独立した金融政策を放棄する。もっとも、域外に対しては変動相場制なので、域内を一つの国と思えばやはり変動相場制ともいえる。

  いずれにしても、先進各国は(1)の自由な資本移動を最優先で確保している。逆にいえば、自由な資本移動があって、自由な国際金融センターがないと、先進国の資格がないというわけだ。先進国クラブといわれるOECD(経済協力開発機構)の加盟条件として、資本の自由化が含まれているのはそのためだ。

 中国経済は、そうした先進国タイプになれない。

 中国は、一党独裁社会主義であるので、(1)の自由な資本移動が基本的に採用できない。例えば、土地などの生産手段は国有というのが社会主義の建前だ。中国の社会主義では、外資が中国国内に完全な民間会社を持てない。中国へ出資しても、中国政府の息のかかった中国企業との合弁までで、外資が会社の支配権を持つことはない。

  要するに、中国では自由な資本移動がないために、本格的な国際金融センターを擁することも不可能なのだ。

  なお、先進国はこれまでのところ、基本的に民主主義国家である。これは、自由な政治体制がなければ自由な経済体制も作れず、その結果としての成長もないからだ。このあたりの理論的な説明は、フリードマン『資本主義と自由』に詳しい。

  この理論を進めると、今の中国の一党独裁体制では、経済的な自由の確保ができないので、いずれ行き詰まることが示唆される。

 この議論は、近く中国が崩壊するという悲惨な予測や、中国も経済発展を遂げればいずれ民主化するという楽観論とも一線を画しており、そうした予測をするものではない。

日本は「漁夫の利」を狙える

 いずれにしても、香港の将来は明るいとはいえない。香港の企業、金融機関や人々は、これから中国に従うか、それとも香港から脱出するかの二択を迫られることになるだろう。香港の人口750万人のうち、半数程度は香港に居づらくなるだろう。

  香港は、モノとカネによって中国と世界をつなぐ重要なゲートウェイだったが、もはや今後、その役割を担うことはなくなるだろう。

 それにしても、中国は香港について間違った選択をしている。あと10年くらい「一国二制度」を維持していれば、香港の能力をもっと活用できただろうに、そのチャンスを自ら失ってしまった。香港の自由が、中国の一党独裁という政治的な「不自由」に、よほど脅威だったのだろう。金の卵である香港を切り捨ててでも、一党独裁体制を守りたかったに違いない。

 もっともこの状況は、日本にとっては「漁夫の利」になる可能性がある。国際金融センターとしての東京の復権のためには、大きな援軍となるのだ。折しも実施される東京都知事選で、ここを是非とも争点にしてもらいたいところだが、そうした機運がないのは極めて残念だ。

  イギリスのロンドンもEU離脱により、国際金融センターとしての地位を低下させるだろう。イギリス経済をTPP(環太平洋パートナーシップ)に取り込み、さらに香港の国際金融センターとしての機能も企業とともに取り込んだら、日本の将来にとって大きな資源になるはずだ。

  香港国家安全法案が可決されたら、日本は「遺憾」を表明するだろう。これは、17日の先進7か国(G7)の共同声明での「重大な懸念」より踏み込んだ表現だ。それと同時に、香港から脱出する人に対して受け入れを優遇し、国際金融センター機能の取り込みもしたらいいだろう。

コロナ「第二波」はあるのか



 最後に、話題は変わるが、コロナ感染の第2波について気になっていることを書こう。

 新型コロナウイルスの感染者が、東京都内などで増加傾向にある。海外でも引き続き感染者が増えているが、今後どうなるのか。

  最近、一部週刊誌で、緊急事態宣言や活動自粛措置は意味がなかったとする見解が出ている。吉村大阪府知事は騙されたとするものもある。もっとも吉村知事は「騙されていないし、後出しジャンケンは有害以外の何物でもない」としている。

  筆者は1月下旬から、2日に1回のペースで感染拡大の予測を公表してきた。予測は感染症数理モデルによるもので、一定の前提条件の下で、新規感染者数についてピークの到来時期と落ち着く時期を明示した。

  筆者の予測は、3月下旬に1回だけ見直している。その当時の前提条件(自粛の緩みなど)が現実と乖離していたからだ。もちろん予測は常に外れる可能性があるので、前提条件と現実との乖離を注意深く見ての判断だった。それ以降見直しはせず、4月上旬がピーク、5月下旬に落ち着くとの予測はほぼ当たった。

  これが科学の流儀である。前提条件の違いを考慮し、修正を加えながら予測すべきで、その妥当性は予測が当たるか当たらないかで判断される。一部週刊誌は、こうした予測もできないくせに、難癖をつけたにすぎない。まさに吉村知事が言う通りの後出しじゃんけんだ。

  今の東京での新規感染者数をみると、筆者が予測を見直した3月下旬とはやや違うとの印象もある。クラスターは発生しているが、感染経路が比較的はっきりしており、爆発的な広がりの兆候は少ない。もっとも、第二波といえるかどうかは、もう少しデータが入らないと判断できない。

 今のところ、「第2波」はあっても、第1波ほどにはならない可能性が高いとみるが、今後もデータを注視していきたい。

【私の論評】東京・ニューヨークが国際金融センターのトップとなる日が来る!(◎_◎;)

国際金融都市とは、グローバルな金融機関が拠点を構えたり、株式や為替など世界の金融・資本市場の中心となる取引所が所在する都市のことです。

ニューヨークやロンドンは歴史的に株式・為替取引が多いことからも、その代表格といえます。最近では香港やシンガポールも存在感を高め、国際金融都市の仲間入りをしていました。

国際金融都市は国際金融センターとも呼ばれ、その基準の一つとされているのが、イギリスのシンクタンクが発表する「世界金融センター指数」です。これは世界の100以上の都市・地域を対象に、金融センターとしての国際競争力を測るものです。

2019年9月に発表された最新版では1位がニューヨークで2位がロンドン。3位に香港、4位にシンガポール、5位上海とアジアが続いて、東京はその次の6位となっています。

やはりニューヨーク、ロンドンの2大都市は国際金融都市の不動のツートップ。イメージ通りの実力のようです。

それを追いかけるのがアジア勢で、中でも上海は2018年に東京の順位を追い抜き、上位勢に迫る勢いを見せています。中国のメディアは「国際社会が上海を国際金融センターとして認めるようになった」と分析。胸を張っています。

この中では、東京はツートップの“控え”のようなポジションというイメージでした。

出典:東京都政策企画局2015年「東京国際金融センター推進会議」資料より転載
東京の国際金融都市を目指す動きの前に、他の都市につい少してみておきます。

「国際金融センター指数」ランキングの興味深いところは政治的な国情があまり反映されない点です。昨年のランキングでは、例えば市民デモが続く香港は政治情勢が揺れ動いていたのですが、3位という国際金融センターとしての地位は安泰でした。また、ブレグジットを巡って揺れ続けているイギリスにおいてもロンドンは国際金融センターとして世界第2位の位置を堅持していました。

香港やロンドンを見ると、いったんその地位を築くと簡単には揺らぐものではないといえそうでした。その意味で上海の躍進は特筆すべきところではありました。

日本の場合、国情の安定性という点ではまったく問題はないのに、ランキングでは上海に抜かれて6位ということは、政治以外の環境、特にビジネス面での環境があまり高く評価されていな買ったということがうかがえます。

興味深いのが韓国で、ソウルの「国際金融センター指数」のランキングはなんと36位。これは、韓国がソウルと釜山の両方を金融都市として発展させようとしたために力が分散してしまった結果とみられています。

2017年11月、東京都はアジアナンバーワンの国際金融都市としての地位を取り戻すために、「国際金融都市・東京」構想をまとめました。

ここでは、①魅力的なビジネス面、生活面の環境整備 ②東京市場に参加するプレーヤーの育成 ③金融による社会的課題解決への貢献、という3つの取り組みを中心に進められることが発表されました。

この一環として2019年4月には、官民連携で各種プロモーションを展開する組織「一般社団法人東京国際金融機構」(通称:FinCity.Tokyo)が設立されました。この機構にはメガバンクや大手証券会社、金融関連業界団体のほか、東京都も正会員として参加しています。

東京国際金融機構では、世界に向けて金融都市としての東京の姿を発信すること、国際的な金融機関などが日本に参加しやすいよう支援すること、東京の金融エコシステムをアップグレードすることなどを通じて、国際金融都市を目指して東京を海外にアピールしていきます。

東京がアジアでナンバーワンの金融センターとなり、ニューヨーク、ロンドンと並ぶ国際金融都市となるのは、決して容易なことではありません。しかし、このまま香港、シンガポール、上海に水をあけられっぱなしでいいはずもありません。同機構のこれからに注目したいところです。

以上か昨年までの国際金融センタへに関する一般的な見方でした。しかし、香港の問題や、コロナ禍により、今年に入ってからこの状況はすっかり変わってしまいました。

英国のシンクタンクZ/Yenと深セン市(Shenzhen)の中国総合開発研究所が3月26日に発表した「世界金融センター指数(Global Financial Centres Index)」で、香港に大きな衝撃が起きました。ニューヨーク、ロンドンに次ぐ世界3位から一気に6位に転落。「世界三大金融センター」の座から滑り落ちたのです。昨年から続くデモ活動の影響とみられます。

世界金融センター指数は、金融センターの国際的競争力を示す指標として2007年3月にスタート。「ビジネス環境」「人的資源」「インフラ」「国際金融市場としての成熟度」「都市イメージ」の5項目を基準に、100以上の都市・地域を1000点満点で点数化し、毎年3月と9月に順位を公表しています。

最新の上位10都市は、ニューヨーク(769点)、ロンドン(742点)、東京(741点)、上海(740点)、シンガポール(738点)、香港(737点)、北京(734点)、サンフランシスコ(732点)、ジュネーブ(729点)、ロサンゼルス(723点)。

点数で見ると、上位10都市すべてが前回よりポイントを落としています。これは新型コロナウイルスや世界的貿易摩擦、英国の欧州連合(EU)離脱など全世界共通のマイナス材料による影響ですが、香港は34ポイントマイナスで、10都市の中でも最も下落しました。

国際金融のトリレンマには、さすがに中国もいくら資金を使っても、工作員派遣して、何らかの工作をしようとしても、これを破ることはできないようです。

国際金融センターの条件として、香港問題をきっかけに、国際金融のトリレンマが、クローズアップされ、コロナ禍により、防疫体勢を含めた、安全性が注目されるようになったのでしょう。そのため、世界金融センターとしての東京の地位が上がってきたのでしよう。

ただし、今回は東京が地位をあげたというよりは、他都市が地位を下げたということが言えると思います。

特に、国際金融センターとして東京が活躍するためには、日本の銀行の生産性が低すぎです。生産性を飛躍的に高めないと、せっかくの国際金融センターとしての活躍のチャンスが巡ってきたのに、それを不意にすることになりかねません。

ただ、これもこれからの本格的な人手不足が解消することになるでしょう。生産性を上げるか、淘汰されるしかないわけですがら、これは日本の銀行なども必死になっ生産性を上げることでしょう。

日本の東京はこれにより、国際金融センターとしての地位を向上させていくでしょう。自由のない香港、上海、シンガポールなどは、これからますます地位を下げていくでしょう。

ロンドンは、ブレグジットにより、地位を下げることになります。となると、未だコロナの感染者数が増え続けている米国の状況を見ると、東京・ニューヨークが世界の金融センターの事実上のトップとなる時がきたとしてもおかしくはありません。

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2020年2月22日土曜日

中国人が世界知的所有権機関のトップに?―【私の論評】日米とその同盟国は、火事場泥棒に意図的かつ慎重に圧力をかけよ(゚д゚)!


岡崎研究所

 2020年3月5日~6日、スイスのジュネーブでは、世界知的所有権機関(WIPO)のトップである事務局長を決定する選挙が行われる。


 WIPOは、国連の専門機関の1つで、192か国が加盟する。知的財産権に関する国際的ルールの策定や国際特許の運用・管理、さらに知的財産保護に関する新興国・途上国の支援等を行う国際機関である。任期6年のWIPO事務局長の選出は、加盟国のうち83か国で構成されるWIPO調整委員会における投票で決定される。今回3月に行われるWIPO事務局長の選挙で、日本政府は、WIPO特許協力条約(PCT)法務・国際局上級部長である夏目健一郎氏を次期事務局長候補として擁立したが、中国も候補を擁立していて、それが米国で波紋を呼んでいる。

 米中間では、1月15日、米中貿易戦争の休戦協定ともいえる「第一段階の米中貿易合意」が署名された。この米中間の貿易合意が達成されるまでの交渉では、様々な課題が論議されたが、その中の1つが、知的財産権の保護の問題だった。中国側の産業スパイ、サイバー攻撃等による米国企業の秘密情報の窃取、中国に資本進出する米国企業に対する強制的技術移転等、中国のやり方に米国側は抗議し、中国共産党政府がより強力に米国の知的財産権を保護するよう協力を要請した。報道によると、中国は、知的財産権のより強力な保護を約束し、「第一段階の米中貿易合意」がとりあえず達成されたという。

 このような中、世界の知的財産権を取り扱う国際機関WIPOのトップに中国人が就任するのは如何なものかと疑問を呈する声が米国内では起きている。1月31日付で、米ワシントン・ポスト紙のコラムニストであるロウギンは、WIPO事務局長に中国人が就任することは、銀行強盗が頭取になるようなもので、知的財産権の保護に害をもたらすと論じた。

 また、2019年12月14日付のトランプ大統領宛の書簡で、超党派上下両院4名の議員(アーカーソン州選出のトム・コットン共和党上院議員、ニューヨーク州選出のチャック・シューマー民主党上院議員、カリフォルニア州選出ジミー・パネッタ民主党下院議員及びウィスコンシン州選出マイク・ギャラガー共和党下院議員)が連名で、中国が指導するWIPOは米国の経済安全保障を危険に晒し、知的財産権や世界的標準ルールへの脅威になりかねないと警告した。

 ロウギンは論説の中で、もし中国がWIPOを支配するようになれば、知的財産に関するすべての基本的情報が直接、中国政府の手に行くことになり、国際的特許システムへの基本的な信頼を切り崩すことになる、と警告する。ロウギンによれば、中国は国際機関を世界のためではなく、自国の利益ないし中国の世界制覇のために利用する。過去の具体例を幾つか見れば明らかだとするが、ここでは一つのみ挙げておく。

 例えば、2015年、中国は国際電気通信連合(ITU)のトップの座を射止めた。その後、ITU は中国の「一帯一路」構想を推進し、中国の電気通信の巨人ファーウェイを守るなど、北京との協力を急激に増やした。また、国連の経済社会局の局長は中国の高官だが、この局は「一帯一路」構想を推進して、中国政府と連携して中国内に「ビッグデータ研究所」を作っている。

 中国が国際機関の事務局長を多く取ろうとしていること、そして取った後、そのポストを中国の利益のために利用していることを、日本は理解しなければならない。

 通常、国際公務員は、その所属する国際機関の利益のために働く存在であり、出身国の利益拡大のために努めることは差し控えることが求められる。そういう中立性が必要である。

 中国も自国民で国際公務員になる人にはそう求めるべきであり、自国の利益の増進をするように求めることはやめるべきであろう。中国にそういうことを明確に要求してもよいのではないかと思われる。

 この問題は、米国、欧州諸国、日本が問題を認識し、対応ぶりを協議する良い材料のように思われる。とりあえずは、WIPOについて日米欧が協力を強化し、中国に対抗するのが良いと思われる。日本は夏目氏を擁立しているが、ワシントン・ポスト紙の報道では、米国はシンガポールの候補を推しているようである。日米両国で協力し、どこかで折り合いをなし、上手く中国候補のWIPO事務局長就任を阻止できれば良いのだが。

【私の論評】日米とその同盟国は、中国に意図的かつ慎重に圧力をかけよ(゚д゚)!

中国の王毅外相が昨年11月、王彬穎氏の擁立を発表すると、「中国は欧米企業から知的財産を盗む国として知られている。その国の出身者がWIPO事務局長に就任するなんて、悪い冗談だろう」という声が聞かれたほどです。もっとはっきり言ってしまえば、中国人をWIPOのトップに据えるということは、火事場泥棒に火消しを依頼するようなものです。

王彬穎氏はWIPOに勤務する前は中国国家工商行政管理総局に勤めていましたから、中国共産党の主要メンバーの一人と見てほぼ間違いないです。

王彬穎氏

国連のシステムの内で、中国の影響力が日増しに増大しています。屈冬玉(Qu Dongyu)が昨年8月、国連食糧農業機関(FAO)の事務局長に就任し、国連専門機関のトップを務める中国人が4人に増えました。

国連の専門機関のトップに就いた最初の中国人は、2007年に世界保健機関(WHO)の指揮を執ったマーガレット・チャンでした。 6年後、李勇(Li Yong )が国連産業開発機構(UNIDO)の局長に就任しました。2015年に赵厚麟(Houlin Zhao)が国際電気通信連合(ITU)の事務局長に就任し、柳芳(Fang Liu)が国際民間航空機関(ICAO)の事務局長に就任しました。現在も在職中である最後の3名の就任は、オバマ大統領の政権下のことでした。

李勇

要するに、トランプが大統領に就任する以前から、国連における中国の影響力は高まっていたのです。前の政権下では注目されなかったことが、なぜ今注目されているのかとは別問題として、注目され対処されるべき問題なのである。

中国の影響力が拡大するにつれ、米国の利益と対立する政策を主張する力や、中国が厄介な問題であると見なす国連の動きを鈍化させる力も大きくなっています。

たとえば、中国が拒否権を行使して国連安全保障理事会の決議をブロックしたのは、国連が中華人民共和国を公式に政府として認めた1971年以来、12回です。さらに、これらの拒否権は、ビルマ、シリア、ベネズエラ、ジンバブエの抑圧的な政府を、その政策に対する国連の制裁と非難から保護するために投じられたものです。

ブルッキングス研究所の調査によると、中国は2013年以降、国連人権機関で積極性を増し、「国際的な規範とメカニズムの独自の解釈」を推進しています。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、中国の当局者たちが国連の規則に違反して国連スタッフを脅迫し、中国の政策に批判的な非政府組織に嫌がらせをしていると報告しています。

さらに、国際公務員は中立で独立した立場であるはずですが、中国は国際機関で働く中国人に、中国の利益と政策を有利に進めることを期待しています。 2018年10月、中国は国際刑事警察機構(ICPO)の孟宏偉(Meng Hongwei)総裁を逮捕し、権力の濫用と「党の決定に従う」ことを拒否したとして彼を告発しました。

中国政府の指示に従わないとどのような事態が待ち受けているかを知っている柳芳(Fang Liu)が、台湾が主要な航空交通ハブであるにもかかわらず、ICAO(国際民間航空機関)のトップの地位を利用して台湾のICAO会議への出席を妨げたのも不思議ではありません。

柳芳

中国が経済的および軍事的に強化されると、国連における中国の影響力や存在感も同様に成長します。政治的および財政的現状から、米国はこの流れを完全に覆すことはできません。ただし、中国の優先事項を考えると、米国や我が国も含めた志を同じくする国々は、この流れの影響を無視することはできないです。

それに、中国には「国防動員法」という恐ろしい法律があります。中国にとって危急存亡のときには、国連組織のトップであろうが、誰であろうが、海外に在留する中国人も含めてすべて中国共産党の指示通りに動かすことができます。中国人は善人・悪人にかかわらず、いざというときは、全員中共の手先として動かすことができるのです。

米国は、中国の影響を合理的に抑え、中国のリーダーシップが米国の利益を直接損なうことのない組織の部分に制限して向けられるようにするための、戦略的措置を講じるべきです。

これには、中国の利益と戦術の詳細な評価に基づく広範かつ包括的で長期的な戦略が求められます。米国および主要な国際機関で志を同じくするリーダーシップを促進し、国際機関で米国人等の雇用を促進して、米国の圧力を意図的かつ慎重に行うことが必要です。

米国は昨年の米中貿易交渉で、このブログでも解説したように、7項目の合意に至りました。知的財産権の保護などは、当然のことながら含まれていますが、最後の項目は、はやい話が米国が合意項目六項目を事実上監査するというものです。米国は、中国が知的財産保護から逸脱し続けるなら、ためらうことなく、中国に新たな制裁を課すことなるでしょう。

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2015年5月13日水曜日

若年層の自殺がG7でトップ。日本の若者はなぜ死を選ぶ?―【私の論評】自殺率の高さの原因は、若者の精神的な弱さではない!過去のデフレによる悪影響が未だ残っているせいだ(゚д゚)!


2015.05.12 ニュース

「いのちの電話」など、自殺対策には力を入れている団体も多い
「いのちの電話」など、自殺対策には力を入れている団体も多い 日本の年間自殺者は全体的に減少傾向にある。’98年以降、14年連続で3万人を超えていたその数は、’12年から3年連続で3万人を割り、警察庁によると’14年は2万5218人だ。

しかし、若年層の自殺は深刻な状況にあると言ってよい。15~39歳の死亡原因の第1位は自殺だ(男女別では男性15~44歳、女性15~34歳で1位)。

G7で15~34歳の死因の1位が自殺というのは日本だけ(※グラフ参照)。死亡率はアメリカやフランス、カナダの約2倍、ドイツやイギリスの約3倍、イタリアの約4倍となっている。


この傾向について国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所自殺予防総合対策センターの山内貴史研究員(認知行動科学・疫学)はこう語る。

「日本以外の各国では、若年層の死因はがんなどの病気、交通事故などのほうが自殺よりも多くなっています。ところが、日本では中高年の自殺死亡率は下がったものの、若年層の精神的な弱さが目立っています。他国のように、ストレスの対処法を教育で教わっていないからではないでしょうか。中高年の自殺率は今後も下がっていくと思われますが、若年層は増加傾向にあります。また、この数値(自殺率)には自殺未遂者が含まれていません。自損事故として救急搬送されるケースは女性に多いのですが、若年層は未遂も含めると相当の数になると思われます」(山内研究員)

思いつめる前に、自治体、ボランティアなどの相談できる組織のドアを叩いてほしい。 <取材・文/週刊SPA!編集部>

【私の論評】自殺率の高さの原因は、若者の精神的な弱さではない!過去のデフレによる悪影響が未だ残っているせいだ(゚д゚)!

上の記事、どうしようもないです。日本の若者の自殺者数が多いことの理由を「若者層の精神的な弱さが目立っています」として、その真の原因を全く追求していません。山内研究員は、精神的な弱さを示す統計数値も示すことなく、このような結論を出しています。

日本の若者の自殺が多いのは、本当に「精神的な弱さ」だけが原因なのでしょうか。私は、そうは思いません。これについては、以前もこのブログに掲載したことがあります。その記事のURLを以下に掲載します。

若年者死因トップは自殺 先進7か国で日本のみ―【私の論評】若者の死因の第一位が自殺になったのは、デフレ退治をしなかったことによる大きな罪ということを理解しない人が多いためますます、悲劇が続く?

この記事は昨年のも6月5日のものであり、ちょうど今から1年ほど前のものです。

タイトルからわかるように、この記事では若者の死因のトップが自殺というのは、先進7カ国の中では、日本のみというショッキングな内容でした。

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部分をコピペさせていただきます。
26年版自殺対策白書が3日の閣議で報告された。25年の自殺者は2万7283人。前年の2万6433人より850人増えた。40歳代から60歳代男性が自殺者全体の4割近くを占めたことも家庭の中心的役割を担う年代だけに影響の深刻さがうかがえるものになった。 
また15歳から39歳の各年代の死因のトップをみると、いずれも「自殺」で、白書は「こうした状況は国際的にみても深刻で、15~34歳の若い世代で死因の第1位が自殺となっているのは先進7カ国では日本のみ」とした。また日本では15歳から39歳までの死因トップが自殺になっていた。

さて、 上の山内研究員は、統計資料もなしに若者の自殺者が多いのは、精神的な弱さと決めつけているようですので、私はそのようなことをせず統計資料を以下に提供させていただきます。

まずは、自殺者全体について以下に振り返っておきます。

自殺者数と景気は相関が高いことが知られているが、この二年間の経済状況の改善と、さらに自殺対策にここ数年経費を増加させていく方針を採用していることも大きいです。類似の事例はホームレス対策にもいえ、ホームレス数は景気要因に関わらず対策費の増加に合わせて減少しています。

自殺者数の減少については、マクロ(景気)とミクロ(自殺対策関連予算の増加スタンス)の両方が功を奏していると考えられます。

自殺対策関連予算の推移はまとまったデータがないので拾い集めてみると

平成19年 247億円 平成20年 144億円 平成21年 136億 平成22年 140億 平成23年 150億 平成24年 326億 平成25年 340億 平成26年 361億 となってます。


若年層で死因トップが自殺となっているのは先進7カ国で日本のみで、その死亡率も他国に比べて高いものになっています。その自殺死亡率をグラフにしたものが以下です。





上のグラフは若年失業率と20~29歳の自殺死亡率の推移です。
経済状況の相対的な改善とともに、中年男性の自殺死亡率が低下しつつある一方で、近年、20代以下の若年層の自殺死亡率の上昇が見られる点が注目されます。若年層においては中年層に比較して、『勤務問題』の占める割合が高いことが特徴であり、若年層の自殺死亡率が上昇していることと関係している可能性が考えられます。
若年失業率と20~29歳の自殺死亡率の推移を比較すると、両者は近い動きを示すことがわかります。こうしたことから、若年層における自殺死亡率の上昇は、経済状況の相対的な改善にもかかわらず、派遣社員、契約社員、パート、アルバイト等の非正規雇用の割合の増加など、若年層の雇用情勢が悪化していることも影響している可能性があるものと考えられます。なお、特に20歳代以下の若者の『就職失敗』による自殺者数が平成21年を境に急増していることにも注意が必要です。
「勤務問題による自殺」に関するグラフを以下に掲載します。

少し古いデータではありますが、勤務問題で自殺する若者が近年増えていたのは間違いないです。

「就活自殺」に関すグラフを以下に掲載します。


就職活動がうまくいかない大学生が精神的に追い詰められて死を選ぶ「就活自殺」が、平成25年までの7年間で218人に上ることが、警察庁のまとめで分かっています。それを示したグラフが上のものです。各大学は最悪の事態を防ごうと対策に乗り出していますが、自殺者数は、雇用環境と密接に関係するともいわれており、専門家は「解決には、雇用環境を改善することが先決だ」と指摘しています。

警察庁によると、自殺原因の詳細な分析を始めた19年以降、自殺した大学生は3516人。そのうち遺書などの記述から「就活の失敗」が原因とみられるのは218人でした。雇用環境との関連を証明するように、景気が回復したとされる25年は、前年より17人減少しました。

「勤務問題」も、「就活失敗」も特に若者に顕著です。大学を卒業したばかりの、学生など、企業に入って、すぐに即戦力になるスキルなど持っていません。企業としては、大卒の新人などを雇用しても、まずは訓練しなければならず、雇用すれば当初は経費がかさむことになります。

だから、デフレともなれば、採用を控えるのは当然のことです。企業に採用されなかった若者は、パート・アルバイトになるわけですが、デフレ化では、雇用条件も悪く、スキルも身につきません。

こうした若者が、将来に絶望して、自殺を選ぶということなど容易に想像できます。

今の日本は、厳密ではデフレではありません。しかし、過去20年近くにもわたって、継続したデフレによる、悪影響から抜けきっているわけではありません。

最近は、若干景気が良くなっているようではありますが、それにしても、世界的な視野からみれば、日本は若者の自殺が他の先進国に比較して、突出して多いという大問題がまだ解消されていません。

このような状況で、昨年4月に8%増税をしたのは、全くの間違いでした。そうして、もし10%増税が決定され、導入されたとした、若者の自殺はさらに増えたことが予想されます。

とにかく、現状は増税などの緊縮財政などは避け、一日も早くデフレから脱却するだけではなく、デフレによる負の遺産を一掃して、若者の自殺を撲滅すべきです。

「若者の自殺が多い国」という汚名は、一日でもはやく返上して、若者が希望の持てる国になろう!

「若者の自殺の多い国」という汚名は、一日でもはやく、返上すべきです。いつまでも、若者が、未来に希望が持てなく、自殺してしまうような国であってはならないです。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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2015年5月2日土曜日

習主席に脅威 側近に“黒いカネ”爆弾 「反腐敗運動」トップ自ら汚職疑惑 ―【私の論評】通常の権力闘争か、クーデターから中国分裂まで発展するのか(゚д゚)!


習近平
「一族が巨額資産を保有」と米紙に暴露された中国・習近平国家主席。その権力基盤が揺るぎかねない重大懸念が浮上している。「反腐敗運動」を主導する腹心、王岐山・中国共産党中央政治局常務委員ら政権中枢幹部のスキャンダルが炸裂(さくれつ)しそうなのだ。背後で暗躍するのは「権力ハンター」「闇の帝王」などの異名を持つ謎多き政商と、失脚した大物幹部を兄に持つ実業家。中南海(党・政府所在地)に激震をもたらす爆弾情報とは-。

「スキャンダルが公になれば、『反腐敗運動』は頓挫しかねない。それだけに、われわれの同胞はみな事の成り行きに注目している」

中国共産党の高級幹部の子弟「太子党」関係者はこう声を潜める。

中国人社会の間で注目を集める「スキャンダル」とは、習政権を支える王岐山氏に関するものだ。

習氏が推し進める「反腐敗運動」で、腐敗官僚たちを次々と血祭りに上げている「党中央規律検査委員会」。その書記を務める王氏は、取り締まり側の現場責任者として辣腕(らつわん)をふるってきた。運動を、政敵潰しと国民の人気集めに利用してきた習氏にとって、政権の屋台骨を支えるキーマンともいえる。

王岐山
その王氏に関する不穏な情報が出回っている。

「郭文貴氏という中国人実業家が、亡命先の米国で受けた米国メディアでのインタビューが発端だ。このなかで郭氏が、王氏自身も過去に汚職に関与していた…とほのめかした。事実なら、『反腐敗運動』の取り締まり側のトップが腐敗していたことになり、運動そのもの、ひいては習政権の正当性が問われることになる」(先の太子党関係者)

郭文貴
習政権中枢の大物幹部のスキャンダルを握っているとされるこの郭氏。最近まで謎多き人物として正体が知られていなかった。

複数の中国メディアによると、年齢は48歳で、「謎の実業家」「権力ハンター」などの異名を持ち、155億元(約2976億円)の資産を持つとされる。

習政権にとっての脅威はこれだけではない。

習氏に失脚させられた令計画・人民政治協商会議副主席の弟、令完成氏の存在だ。

令完成
 「2人の動向にピリピリしているのは間違いない。習政権は『反腐敗運動』への国民の支持によって持っているようなもので、その正当性を覆すようなスキャンダルがこのタイミングで出るのはまずい。政権運営に響く、そうした事態だけは避けたいと思っているはずだ」(鳴霞氏)

赤い帝国に衝撃は走るか。

【私の論評】通常の権力闘争か、クーデターから中国分裂まで発展するのか(゚д゚)!

習近平の腐敗撲滅運動に関しては、以前もこのブログに何度か掲載しました。最近のものではクーデターがあり得ることを掲載しました。ブログ冒頭の記事からは、クーデター一歩手前まで言っている様子が見て取れます。

習近平に相対する勢力はまずは王岐山をスキャンダルで失脚させ、彼らから見れば習近平の暴走を止めようという腹です。これが成就すれば、習近平の腐敗撲滅運動は頓挫します。

これでも、頓挫しなければ、いよいよクーデターの実行をするということで、様々な画策や裏取引がなされているはずです。

しかし、ここで今一度私達は、中国という国の内情をもう一度見つめなおしておく必要があります。多くの人々が中国幻想に酔ったり、酔った人々の言論活動に幻惑されたりして、中国という国の本質を見失っています。

中国には、まともな先進国にみられるような、民主化、政治と経済の分離、法治国家化がなされていません。無論、先進国のそれらが、理想的なものかといえば、そんなことはなく全く満足のいくものではありません。しかしながら、すくなくとも形式上は存在します。中国の場合、形式どころか、はなから微塵もありません。

中国のという国は、一応国と名乗っていますが、私達日本人の概念や、まともな他の先進国の概念にはあてはまらない、集団組織です。

中国をまともな国とみなしてはいけない

まずは、多民族国家であり、これは何もチベットや、ウイグル、内モンゴル、満州などに多民族が多く存在するというにおよばず、中国全体が多民族の集合体です。そうして、現中国は、これらの地域を侵略して乗っ取って現在の版図を形成しています。

そのためもあってか、建国以来年平均で毎年平均2万件もの暴動がありましたてが、2010年あたりからは、おそらく毎年平均10万件以上の暴動が発生し、それ以来政府も公表しなくなりました。

そうして、経済的には2008年のリーマン・ショック時に事実上破綻しています。ただし、海外から資金の流入などで、今まで何とか自転車操業でやりくりしてきたものの、2014年に日本が金融緩和に転じたことから、その経済の破綻ぶりが、表に出るようになりました。

また、中国には中央にも、地方にも日本のような先進国にみられるような、選挙制度はありません。建国以来一度も選挙をしたことがありません。だから、言葉の厳密な意味で中国には政治家は存在しません。存在するのは、すべて官僚です。

そうして、この国の官僚は全員が完璧に腐敗しきっています。官僚でトップクラスにのぼるためには、他の官僚を手懐けるために、低位の官僚には直接金を、高位の官僚には利権を与えて、自分で荒稼ぎできるように取り計らいます。こういうやり方で、周りの官僚を手なづけて、自分の側につけることてができる人間が、高位に登ります。

ある官僚がとてつもなく能力があったにしても、直接金やモノをくれたり、さらに利権をくれてやったりしなければ、誰もその官僚につかないので、結局高位につくことはできません。日本の官僚の腐敗は、中国のそれと比較すとまるで天使の戯れ事のように清らかなものです。日本の官僚の腐敗など、中国人からみれば、何が問題であるのか理解が及ばないことでしよう。

これは、建国当時から変わりありません。誰一人例外もありません。習近平も、他の幹部もすべて、自ら巨大利権を獲得して、手下の官僚に金をばらまいたり、利権を分け与えたりしています。それができないものは、中国では幹部になれません。ましてや、どう頑張ってみたところで、絶対に主席になどなれません。

アメリカだって、本質的には大きな利権を手にしたものが、大統領になりやすいし、利権も金もない人間はどうあがいても、大統領にはなれないというのも事実ですが、そんなことなど霞んでしまうほど、中国の場合は、直接的な金やモノのやりとり、利権のやり取りが行われています。選挙制度がないので、このようなことにさらに拍車がかかってしまうのだと思います。

中国の政治風土がそういう土壌なのですから、習近平自身も腐敗しているし、習近平の配下のものも全員腐敗しています。腐敗で失脚させられたものや、させられたものの肉親や縁者など、当然そう思っています。

権力闘争なら、切った張った、殺し殺されという具合で、正々堂々とやれば良いものを腐敗撲滅などという美名のもとに、実行するものですから、犠牲になったほうは、恨み骨髄ということになります。

それと、中国は一般の日本人が考えているように、一枚岩ではありません。こういうと、日本だって一枚岩ではないといわれるかもしれませんが、中国と比較すれば、日本は強固な一枚岩です。

どういうことかといえば、日本では選挙制度というものがあるので、民主党政権のときには、民主党を与党とした政権が政治を担います。ここで、いくら自民党あたりが頑張ってみても、次の選挙で勝たなければ、どうにもならず、民主党政権下での政治が続いたわけです。

しかし、中国は選挙がないということで、そんなことにおかまいなくして、たとえば習近平が失脚すればそれで政権も実質的におしまいです。だから、中国の政治は当然一枚岩どころか、複数の派閥の権力抗争の結果にかなり左右されます。ブログ冒頭の記事にもみられるように、中国には上海閥とか、太子党などの派閥があります。

ここで中国の派閥について概説しておきます。以下の概説少し前のものなので、内容は多少異なっているとろもありますが、基本的には現在も同じです。

■中国八大派閥概説

(1)太子党
説明不要のボンボン派閥。国家主席の習近平を筆頭に、失脚した薄煕来、俞正声など中央政治局から軍(劉源)・国営企業(胡錦濤の息子胡海峰、ムービースタアの息子温雲松など)・金融系(江沢民の息子江綿恒)まで幅広く活躍中。


(2)団派:
これまた説明不要の大勢力・ユース組織たる「共産主義青年団」出身の政治家たち。胡錦濤を筆頭に李克強、李源潮、汪洋など。現在では団派が地方のトップのうち1/3を占めているという見方も。
胡錦濤

(3)江派(上海閥):
前国家主席江沢民の影響を強く受けている利権集団。現在は呉邦国、賈慶林、李長春、賀国強、周永康と中央常務委員でも大多数を占めているものの、18大では大幅に数を減らすことが確実視されている。大ボスがいつまで表舞台に立っていられるかが勝負の分かれ目。
江沢民

(4)地方実力者
地方勤めを歴任しながら出世してきた実力派。次期18大では薄煕来は失脚してしまいましたが、汪洋、俞正声などが常務委員昇格確実な情勢ですが、他にも
郭金龍・北京市長(四川→チベット→安徽→北京)
王岷・遼寧省党書記(江蘇→吉林→遼寧)
栗戦書・貴州省党書記(河北→陝西→黒龍江→貴州)
などがこれに該当。地方を廻っているうちに歳をとるのが問題点。郭金竜なんかあと2~3年早くチベットのトップに立っていれば……。てくらいな人物と聞いていたんですが。
(5)エリート:
トップの習近平(法学博士号)、そして李克強(経済学博士号)がともに博士号を取得しているように、領導たちの高学歴エリート化が顕著に進んでいる。他にも高い専門性をもって国営企業のトップクラスから地方の領導へと転身する人物(例:張春賢・張慶偉・郭声琨など)や海外の大学を卒業した海亀族(楊潔チ外交部長)などが該当。天下の名門・金日成総合大学を卒業された張徳江副総理を海亀派のエリートと判断するかは、みなさんのお好きにしてください。
(6)中央官僚:
党や国務院での各中央弁公室勤めが長く、そこを出世の足がかりとした人々。天安門事件の時に泣きながら趙紫陽総書記に傘をさしていたムービースタアなんかが典型ですな。一昔前の「テクノクラート」と同類の概念ですが、なかでも「秘書派」という秘書経歴のある人物が上司の覚えめでたく出世を駆け上るパターンが多く、国務院の各部門トップは秘書経験者が大半を占めているとのこと。
(7)清華・北大閥:
文字通り、中国の双璧・清華大学と北京大学出身者。胡錦濤・呉邦国・習近平が清華大学出身者で、李克強・薄煕来・李源潮が北京大学出身。ちなみに文系理系の別も面白く、常務委員は理系出身者が多数を占めるのに対し、中央政治局委員になるとほぼ半々、地方のトップになると文系の方が多くなるという逆転現象が発生しています。
(8)職業役人:
元々は三農(農民が貧しく、農村が立ち遅れ、農業が発展しない)問題の対応策の一つとして、95年ごろから大学生卒業生を農村の幹部として派遣してきた制度がきっかけ。企業や役所勤めを経験することなく幹部役人「村官」を経験することから職業役人と呼称されています。現在では約20万人の「村官」がいると言われており、未来の中央政治を担う人材を輩出するだろうと言われています。
現代中国は、主に上記で示した、8つの派閥の権力闘争の均衡の上に成り立っています。これらの派閥が互いにくっついてみたり、離れてみたり、妥協したり反目して、中国の政治の方向が決まります。この均衡を腐敗撲滅運動で破ったのが、習近平です。

習近平の腐敗撲滅運動が、通常の権力闘争で終わるのか、それともさらにクーデターにまで発展し、挙句の果てに中国自体が分裂するのか、ここしばらくは、予断は許されない状況になっています。実際に、最悪の事態になれば、現中国が分裂するということもありえます。

このブログも今後注意深く中国の状況をみまもりながら、中国が分裂して弱小国になることを期待しながら、何か変化があれば、また掲載させていただきます。

それにしても、このおかしげな、まともな国とはいえない、集団組織ははやく分裂して、まともな国家を形成していただきたいものだと思います。それが、現中国の人民のためであるし、アジアの平和と安定には不可欠だと思います。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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2014年10月21日火曜日

【アゴラ】政治 なぜ日本の組織のトップは無能なのか? 大石 哲之―【私の論評】本当に必要なのは、政治システム改革だ、今のまま放置しておけば、これからも団扇問題は発生し続ける!今こそ、戦前から日本にあった民主主義を旨とする政治システム改革が必要だ(゚д゚)!

【アゴラ】政治 なぜ日本の組織のトップは無能なのか? 大石 哲之 

大石哲之氏

松島大臣がうちわ問題で辞任した。

しかし、ほんとうにこの手のくだらないスキャンダルで大臣がやめることが多すぎる。うちわなんてせいぜい十数円のものだとはおもうのだが、くだらない。

低レベルな打ち合いばかりだ。

この低レベルな打ち合いが続くとどうなるか。こういうレベルの打ち合いをすると、ほんとうにバタバタと倒れて、誰もいなくなってしまう。

ちょと目立ったことをしたり、標的になると、過去のちょっとしたスキャンダルを掘り起こされて失脚していく。

こうして、残るのは誰かというと、無能だが、まったくスキャンダルとは無縁で、無垢の白木のような人が残る。

バタバタと打ち合いをした結果、実力者が同士討ちして、最後にのこったのは無能でいままでなにもしてこなかったがゆえに何も経歴に傷がないひとだけがのこるというわけだ。

東條英機が首相に選ばれたのも、このパターンだといわれている。

日本の組織のトップがおしなべて無能なのもこれで説明できる。トップになる50代の半ばくらいまでに、おおきなミスをせず守りをかためてきたひとがトップになる。有能かどうかは関係ない。ミスをして脱落したひとのなかで、ミスをせず生き残ればいいので、有能か無能かはかんけいなく、ミスをしたかしなかったかが問われる。

そういうトップなので、当然トップになっても大きなミスをするようなことはしない。経歴に木津がつかないように、前例を踏襲し、無難に任期を終えて引退する。そしてその後釜も、そういう無難に残った人が着く。これが無限ループで繰り返される。

この記事の詳細はこちらから(゚д゚)!

【私の論評】本当に必要なのは、政治システム改革だ、今のまま放置しておけば、これからも団扇問題は発生し続ける!今こそ、戦前から日本にあった民主主義を旨とする政治システム改革が必要だ(゚д゚)!

今回の二人の閣僚の辞任は、多くの国民の話題になったと思います。小渕さんの、辞任は、脇の甘さあって、いたしかたないという部分もありますが、松島大臣の辞任劇については、大石氏のような感想を持った人も多いのではないかと思います。

大石氏の略歴と、書籍については、以下のリンクをご覧になって下さい。


この団扇に関しては、松島大臣の他にも配布していた人はたくさんいます。

これは、ツイッターなどのSNSを閲覧しているとすぐに目につきます。以下に目についたものの写真を掲載します。



選挙のときに蓮舫陣営は、Tシャツ のぼり 団扇を配った

インターネットのオークションでは、蓮舫団扇が高値で取引

特に、上の写真のうち、蓮舫のものは完璧に松島法相のものよりも、もっと大掛かりで、組織的に配布されていたことをうかがわせます。

蓮舫は、このことは重々承知で、国会で松島法相を団扇で追求したのだと思います。なにしろ、蓮舫は今は、閣僚でも何でもないので、たとえ追求を受けたとしても、軽傷ですみます。松島大臣の場合そうはいきません。

小渕大臣の辞任も同じことです。政治資金に関しては、菅元総理をはじめとして、民主党でも問題のある人は大勢います。また今は民主党をやめた、小沢氏や、鳩山氏にも問題はありました。しかし、現状では閣僚になっている人は皆無であり、たとえ追求されたとしても、軽傷で済むし、政治資金に関する疑いが生じた時点で、いろいろと証拠隠しに奔走したため、今ではなかなか追求できない状況になっていると思われます。


民主党としては、「肉を切らせて骨を断つ」ということで、このようなことを実施させたのでしょうが、それにしても、これは民主党にとっても、上の記事の大石氏のような感想を持つ国民多数存在することから、マイナス・イメージもかなり大きくなったものと思います。

これでは、民主党は万年野党の道を歩むことは必定です。こういうネガティブキャンペーンは、ここぞというときに、とっておくべきものであり、今の状況で使うようなものではないと思います。

しかし、場合によっては、自分にブーメランとして帰ってくるかもしれない、この禁じ手を使わざるを得ない程の民主党の危機状況というのもあるのだと思います。今のままの民主党だと、万年野党の道を突き進むのは必定であり、いずれは社民党のような存在になってしまうことでしょう。

とにかく、今の民主党、国民生活に資する重要なことはそっちのけで、とにかく存在感を増すために、このような挙動に出ているだけです。

これでは、先日もこのブログで、掲載したように、現状の日本の左翼と同じような道を歩むしかありません。その記事のURLを以下に掲載します。
安倍総理が賃金に口を出す「本当の理由」―【私の論評】現在日本で主流の左翼は本当の意味での左翼ではない。もうその社会的使命はすでに終わっている!左翼から転向した人々は新しい視座を持て(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事から、民主党に関わる部分をピックアプして、コピペさせていただきます。
民主党は、政権交代のときに二大政党制を目論んでいたようですが、二大政党制はまず日本のような政治風土ではできません。なぜなら、左翼の自覚があまりにも足りなすぎるからです。
残念ながら、今のままでは、日本ではどの政党も万年野党です。民主党が駄目だからといって、社民党や共産党ではなおさら駄目で、私達は自民党が万年与党になることを認めざるをえない状況にあります。
現状では残念ながら、自分たちの理念や理想を旨とする左翼ではなく、保守や、その時々の政権与党に対する反逆としての思想しか持ちあわせない左翼が主流となっています。理念・理想を持たず、時々の政府に対する反骨精神しかない左翼に、魅力など誰も感じません。
反骨精神というと聴こえが良いですが、これなど、今やただの頑固者と言い換えても差し支えない侮蔑の言葉です。なぜなら、社会は変化していくのがあたり前であり、ただ反対しているだけでは、変わっていく社会に対応できないからです。社会に対応していくためには、どんな組織であれ、自ら変貌を遂げなくてはなりません。
そうして今日本で主流となっている、左翼は時々の与党に対して反対勢力として存在しているどころか、自虐的歴史観の発信源ともなっています。その時々の政権与党などに反対するだけではなく、日本そのものを完全否定、破壊するのが正しいと考える、EUなどの左翼では考えられないような考え方で運営されています。

現在の日本の左翼の主流は反骨精神のみで創造性は失われた
本来「左翼は革新、革新は革新を呼ぶ」という理念の下に運営されるべきものであったはずです。しかしも、左翼の自覚があまりにも足りなすぎるため、左翼=革新、右翼=保守という考え方はなりたたなくなってしまいました。今の左翼の頭中身は、まるで化石のようです。 
本来的には、左翼は新しい左翼を常に追及し、国政の内部システムを監査するという役目もあったはずです。 
本来まともな、左翼政党の存在価値は、考え方は右翼や、保守などとは異なっていたにしても、現代主権国家における国益重視にあるべきなのです。 
その本来の姿を忘れた左翼は、日本の国益に敵対する特ア3国(中国・韓国・北朝鮮)の擁護者になってみたり、朝日新聞をはじめとする日本の大手マスコミなどもそれを擁護し、ともに自虐史観を流布したりするという愚劣な行動を繰り返しています。 
単なる反逆者としての左翼は、本来の左翼としての自覚もなく、誇りも捨て去ったものと見えます。
民主党には、左翼系の人も多いですし、そういう人々が高い地位を占めています。この人達が、現代日本の主流となっている左翼と同じ考えを持っています。だから、反骨精神だけで、創造性がまるでありません。

だからこそ、このような団扇騒ぎで、存在感をアピールするしか仕方ないのかもしません。

それに、この問題は、さらに日本の政治システムの稚拙さが追い打ちをかけています。というより、こちらの問題のほうが、より根本的なものかもしれません。

アメリカでは財務長官就任の際の身体検査は、想像を絶するくらい厳しく、なりたがる人が少なく第一次オバマ政権のときは、半年以上もこのポストが空いたままになっていたと、記憶しています。こういう厳しい身体検査を通り抜けた、財務長官は真っ白木といっても良いほど、チリもホコリもでない人に違いありません。

それでも、日本の歴代の財務大臣よりは有能だと思います。無論、歴代の財務長官の中には、無能のそしりを受けた人もいますが、少なくとも、誰も、デフレの真っ最中に増税しろなどと発言する人はいません。

だから、スキャンダルの有無と、有能さとの間には、特に相関関係や因果関係などないと思います。

ただし、団扇の件については、本当にくだらなさすぎると思います。日本政府のトツプが無能に見えるのは、政治システムの稚拙さに起因していると思います。このような政治システムの中に組み入れられたら、誰もが無能になってしまいます。

これは、政府などに民間の人を導入しても、半年もたてば、既存の政治家と同じようになってしまうことからもうかがい知ることができます。

もう、日本の政治システムは、制度疲労を起こしているのだと思います。抜本的な改革が必要ですが、その前にできることから改革していくべきと思います。まずは、憲政の常道などを復活するなどのことから始めたらいかがでしょうか。

ちなみに、憲政の常道については、倉山満氏が憲政史家という専門家なので、この方の説明を以下に掲載しておきます。

憲政史家 倉山満氏
おさらいー「憲政の常道」とは
「憲政の常道」とは、以下の三つの要素から成立します。 
一、衆議院第一党の総裁が総理大臣になること。 
二、政権交代の前か後には総選挙があり、国民が選択する機会が与えられること。 
三、慣例として認められること。 
 学術的に定義すると、「二大政党による議院内閣制という憲法習律」となります。どうです、難しいでしょう?これ、言うは難しく、やるのはさらに難しいのです。詳しく説明すると、それこそ1000頁ではきかないので要点のみを。(笑) 
 この三つの原則から派生して、色々と難しい話が出るのです。 
 一からは、「病気でもない総裁を次々と変えてはいけない」「総理大臣より強い与党実力者がいてはならない。なぜならばその人は権力をふるうだけで責任をとらないから」「第一党がこぞって他の党の党首に投票してはいけない」「総裁でない人を総理大臣にしようなどという陰謀は許さない」とか。 
 ニからは、「自党の都合で総裁総理を変えたのならば総選挙で国民に信を問わなければならない」「総選挙ができないのなら簡単に総理を変えてはいけない」「政権担当能力をなくして総辞職するなら、第二党に政権を譲らなくてはならない」とか。 
 三からは、「法律の条文に書いてあるかないかだけを言い訳にしてはならない」「結果としても手続としても政治家は民主制を守り国民を納得させなければならない」「政治家には守らねばならない規範がある」とか、ですね。 
 三から派生する話に至っては、「政治家にそんなことできるの?」と疑問に思うかもしれません。でもそれは天に唾する行為です。その政治家を選んでいるのは国民なのですから。「民主主義」などを建前にした以上、政治家どころか官僚のやった失敗まで「主権者である国民の皆様の決めたことですから」と言い逃れされてしまいますから。 
 もうひとつ大事なことを。英国人はそれができているのです。彼らは数百年かけて(色々計算はありますが、私の計算では早めに見積もって約二百年、遅くて七百年)、それを自らの手で勝ち取ったのです。同様に、大日本帝国も、約六十年でそれを自らの手で勝ち取ったのです。しかも本家の英国よりも早く、彼らに負けないだけの立派なものを。 
 どうせ何もできない、何をやっても無駄、勝つ奴と負ける奴は最初から決まっている。そんな子供じみた戯言をしたり顔で吹聴する輩は多い。そういうことを言う人こそ子供である。 
 今の日本、駄目なのは子供だってわかっているのである。それを言う言説に何の価値があるのか。 
 今の日本、真の大人は、こうすればよくなる!を具体的に提示できる人だと思います。私の仕事は、その為の材料を提供することです。大学の授業のように一方的な受身ではなく、皆様の参加をお待ちしています。
今回の、民主党の団扇さわぎは、倉山氏上の文章にもでている、子供のようです。それは、程度の差あれ、自民党や他の党も同じようなところがあります。そうして、なぜ子供じみたようなことになるといえば、先に述べたように、「へたれ左翼」のせいもありますが、日本の政治システムが制度疲労を起こしていることもあります。

戦前は無論のこと、戦中でさえ最初の頃は、日本の独自の民主主義がまさに花ひらかんとしていました。しかし、今の政治システムでは、せっかくのこの素晴らしい日本の民主主義に基づく、政治システムが継承されず、発展もしてきませんでした。

この伝統は、戦後少しの間はまだ保たれていました、あの三木武夫氏ですら、憲政の常道は意識していしまた。

これも、倉山満氏がブログに掲載していますので、そこから引用して以下にまとめます。

三木武夫とマッカーサー
昭和二十三年九月。片山社会党に続き、芦田民主党の連立内閣は崩壊寸前でした。しかし、マッカーサーと側近のケージス大佐は反対党の吉田茂に政権を渡したくない。そこで、三党連立の残る一党である国民協同党党首の三木武夫を呼び出し、政権を担当するよう命令しました。 
マッカーサーは二度に渡り三木を呼び出しましたが総理の座を蹴り、その後26年間も少数派の悲哀を味わうことになります。ここで重要なのは、三木の台詞です。 
アメリカにデモクラシーがあるなら、日本には憲政の常道がある! 
我が国では国民の意思を無視して最高権力者を選ぶことは許されない。権力者が交代するならば、総選挙で国民に審判をあおがねばならない。それが戦前日本人がたどりついた日本流民主制です。 
後年の三木武夫は、倉山氏も、防衛費1%枠から、靖国神社まで、三木武夫の恐怖政治が自民党を壊したと、酷評しているように決して良い政治家とはいえなかっのですが、この当時の三木武夫をはじめとする、日本の政治家には、憲政の常道という考え方が根付いていたのです。

今こそ、日本独自の民主主義を再興させ、それを政治システムに取り込み、維持発展していく時だと思います。そうでないと、いつまでも団扇騒ぎのような馬鹿騒ぎが日本の政治を駄目にしていきます。

ちなみに、倉山満氏はFacebookにおいて、以下のようなコメントをしています。


確かに、首相は、最近増税に関する慎重宣言をしました。それは、このブログでも昨日掲載したばかりです。
安倍首相が消費増税の延期示唆、経済への影響踏まえ判断=FT―【私の論評】安倍総理は、外国の新聞社には増税見送りの示唆をするが、殺人マシーンと化した財務省に諜略された日経・朝日新聞をはじめとする大手新聞にはそのようなことはしない。しかし、本当にそんな事で良いのだろうか(゚д゚)!

この記事では、安倍総理がイギリスのフィナンシャル・タイムズへのインタビューで、消費税増税の延期を示唆したことを掲載しました。

この記事の結論は、表題どおりですが、記事の最後は以下にように締めくくりました。
総理は、今後アメリカの新聞や、政府に対して働きかけをし、日本の増税は、世界経済に悪影響を及ぼすということで、反対の世界的世論を盛り上げてもらうようになるかしれません。 
しかし、そんなことで良いのでしょうか。省益を再優先に追求する財務省は、そんなことは、おかまいなしに、増税に突き進み自殺者を増やし「殺人マシーン」と化してしまうのでしょうか。 
本来は、このような問題は日本の国内で解決すべき問題と思います。外圧によって、増税が延期されるようにでもなったら、本当に情けないことだと思います。 
日本のことは、日本でまともに、常識的にできるようになるべきと思います。この記事では、財務省ばかりに非があるような書き方をしていますが、私はこのようなことになるのは、多くの政治家にも問題があると思います。 
財務省が出鱈目を言ってきたら、その場で論破してやれば、財務官僚も、赤っ恥をかき、ブライドの高い彼らは、二度とそのようなことはしなくなると思います。そうして、これは何もそんなに難しいことではないと思います。マクロ経済を大括りで知っていれば良いだけです。経済の専門家のように、細かいことまで知る必要はないし、何も細かい計算や、シミレーションができなくても、おかしなことは指摘できるはずです。そのくらいのことは、勉強して欲しいです。
倉山満氏のコメントの真偽は、わかりませんが、日本の政治システムがこれだけ、制度疲労を起こしている現状では、官僚などが、容易に政治に口をはさみ、干渉しやすく、裏工作で団扇問題等でで閣僚が辞任しなければならなくなるような状況をやすやすと招いていることは事実だと思います。

財務省の官僚からすれば、今の政治システムは、非常に介入しやすい、穴だらけのシステムであり、少し頭を使えば、自分に有利に事を運ぶことなど簡単だと思います。

今のまま、日本の政治システムをそのまま放置しておけば、様々な勢力から、簡単に日本の政治に干渉できる余地が残されてしまいます。そうして、団扇問題はこれからも発生し続けます。彼らは、いつまでも政治システムを改革しない政治家らを「心の底から愚鈍な馬鹿」と思っているに違いありません。

憲政の常道が息づいていた時代には、マッカーサーですら、三木武夫を自分の意のままに動かすことはできませんでした。これが、本来の日本の民主主義であり、その民主主義に基づいた政治システムが息づいていたということです。

しかし、今では、これもすっかり破壊されたようで、多くの政治家が制度疲労をおこした政治システムに翻弄されています。確かに、政治家の不勉強という側面も否めませんが、いかに、有能な人が政界に入ったとしても、政治システムがまともで無い限り、団扇問題と似たようなことはいつまでも繰り返されます。このままでは、いつまでたっても、モグラたたきのような状況になります。

経営学の大家である、ドラッカー氏は、頻繁に同じような問題が発生する場合は、それは最早人の問題ではなく、システムの問題であり、システムを変更する必要があると語っています。

まさに、日本の政治システムもそうなのです。

日本の政治システムの変更は、日本のデフレからの脱却と並ぶ、現在の日本の最優先課題だと思います。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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