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2016年11月12日土曜日

蓮舫氏「トランプ氏に失礼」でまたもブーメラン 本来の立場忘れ、本末転倒の攻撃材料に―【私の論評】TPPは頓挫していない!政治家、マスコミ、官僚も米大統領選のように判断を誤る可能性が(゚д゚)!

蓮舫氏「トランプ氏に失礼」でまたもブーメラン 本来の立場忘れ、本末転倒の攻撃材料に

蓮舫氏
環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)承認案などをめぐり、米大統領選でTPP脱退を明言するトランプ氏が勝利したことを受け、民進党執行部から承認案の即時撤回を求めるような発言が相次いでいる。そもそもTPP交渉参加に向けた協議入りを決断したのは、平成23年の旧民主党・野田佳彦内閣だ。自由貿易体制を重視する本来の立場を忘れ、トランプ氏を安倍晋三政権の攻撃材料にするのは本末転倒でないか。

蓮舫代表「新大統領に対して失礼にあたるのではないかとも思い、懸念している」

野田幹事長「新しい大統領にケンカを売るような話にもなりかねない」

 蓮舫、野田両氏はトランプ氏が勝利した9日、承認案などの衆院採決を急ぐ政府・与党を批判した。

民進党野田幹事長
 民進党は「今回の交渉で農産物重要5項目の聖域が守れなかった」ことなどを理由に承認案に反対しているが、TPPの理念は否定しない立場。7月の参院選で発表した「民進党政策集2016」にも「アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の実現をめざし、その道筋となっているTPPなどの経済連携を推進します」と明記している。

トランプ氏はTPPを「米製造業の致命傷になる」と批判するなど保護主義的な姿勢を示してきた。民進党の考えるべき道は、TPPの理念まで消え去りかねない危機への対応であり、「トランプ氏に失礼」などと肩を持つことではないはずだ。(水内茂幸)

【私の論評】TPPは頓挫していない!政治家、マスコミ、官僚も米大統領選のように判断を誤る可能性が(゚д゚)!

そもそもTPP交渉参加に向けた協議入りを決断したのは、平成23年の旧民主党・野田佳彦内閣であることは間違いありません。その当時の新聞記事のリンクを以下に掲載します。これは朝日新聞のものです。
野田首相、TPP交渉参加の方針表明
2011年11月11日23時11分

 野田佳彦首相は11日、首相官邸で記者会見し、環太平洋経済連携協定(TPP)について「TPP交渉参加に向けて関係国との協議に入る」と述べ、参加国との事前協議から始まる交渉プロセスに参加する方針を表明した。首相は12日からハワイで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で、オバマ米大統領らTPPの関係各国首脳と会談し、交渉参加の方針を伝える。 
 TPP交渉に正式参加するには、すでに交渉入りした米国など9カ国と事前協議を行い、それぞれ承認を得る必要がある。日本が各国と本格交渉を始めるのは、早くても来年春以降とみられる。首相が「交渉参加に向けた協議」と表現し、事前協議を強調したのは、民主党内の反対派に配慮した面もある。 
 首相は会見で、農業や医療などの分野でTPP参加に反対する声が強いことを念頭に「世界に誇る日本の医療制度、日本の伝統文化、美しい農村、そうしたものは断固として守り抜き、分厚い中間層によって支えられる安定した社会の再構築を実現する決意だ」と強調。こうした懸念に配慮する姿勢をみせた。 
 一方で「貿易立国として活力ある社会を発展させていくためには、アジア太平洋地域の成長力を取り入れていかねばならない」と述べ、交渉参加の意義を訴えた。その上で、首相は「関係各国との協議を開始し、さらなる情報収集に努め、十分な国民的な議論を経た上でTPPについての結論を得ていく」と強調した。 
 また、首相は農業対策について、10月に政権がまとめた農林漁業の再生に向けた基本方針・行動計画を踏まえて「規模の集約化や6次産業化などを5年間で集中的に行っていく。それに基づいて必要な予算を措置する」と述べ、交渉参加と農業再生の両立を図る考えを示した。 
 首相は関係国との協議について「国益を最大限実現するプロセスの第一歩だ」と主張。昨年11月に菅前政権が「情報収集のための協議」としたTPP参加国との交流について、首相は「さらに歩みを前に出す」と位置づけた。 
 一方、慎重派の鹿野道彦農林水産相は11日夜、記者団に「総理は『参加表明』とはおっしゃらなかった。交渉参加を前提とするものではないと理解している」と指摘。首相の表明が交渉参加にはつながらないとの認識を示した。
この当時の私は、TPPそのものについては自由貿易を推進するということで反対ではないものの、野田政権というより財務省に簡単に御せられてしまう、交渉力の弱い民主党政権のときにはTPP交渉に入るのは日本の国益を損ねる危険性もあると考えていたので、一応反対はしていました。そのため、ブログには以下の様な野田氏を揶揄するような画像も掲載しました。


この記事は、2011年11月11日のものであり、今から5年前の記事です。野田氏は5年前に、自らTPP交渉参加に向けた協議入りを決断しておきながら、「新しい大統領にケンカを売るような話にもなりかねない」と発言しているわけです。

これは、非常に奇異です。ケンカのきっかけは自分が作ったにもかかわらず、自分にはもう全く関係ないかのような発言です。このような発言をするのなら、まずはきっかけを作った自分が謝罪すべきではないでしょうか。

それに、蓮舫氏の「新大統領に対して失礼にあたる」というのも本当に奇異です。蓮舫氏は、自らの二重国政問題で自らの意見を何度も何度も翻し国民を愚弄したその挙句、今でも二重国籍であるかどうかさえはっきりさせていません。国民に対してあれだけ、失礼なことをしておきながら、それは全く顧みずに、筋違いの政府批判をしています。

これらの発言から読み取れるのは、政治を考える上で、二人ともせいぜい1〜2年期間で物事を考えて発言しているとしか思えないのと、とにかく筋が通ろうが通るまいが、論理的であろうが、なかろうが、現政権を批判することしか頭にないことです。

このような発言は、無責任と断定せざるを得ません。そうは言っても、この二人にはそのようなことは全く気にもかけないでしょう。だからこそ、このような発言ができるのです。

この二人が、民進党の代表と、幹事長というのですから、情けない限りです。

それにしても、トランプ氏が大統領選に勝ってからいろいろなことが明るみに出ました。

まずは、メディアは日米ともに、最後の最後まで、クリントン優勢と報道したことからもわかるように、米国の国民の声や、考えを全く反映していなかったことが明るみに出ました。

まずは、このブログで何度か掲載してきたように、アメリカのメディアはアメリカにおそらく、半分くらいは存在していると考えられる保守派や保守派に親和性のある人々を完全に無視してきたこと、そうして日本のメディアも米国メディアの論調を鵜呑みにして、アメリカの半分の声に対してノータッチであったことが明るみに出ました。

それに、TPPに関しても、「TPPで日本は亡国になる!」と語っていた連中も大勢いましたが、トランプ氏はTPPには反対しています。亡国論者たちはTPPはアメリカの日本支配の巨大な陰謀などと語っていました。しかし、大統領選挙前からアメリカが拒否し、さらにトランプ氏も反対しています。結局、自称「保守系」経済評論家と呼ばれる人たちは、根拠の薄弱な恐怖を煽ったということで無責任であったことがはっきりしてしまいました。


しかし、TPPについては、トランプ氏が反対であることから、頓挫するのではないかというのが、日本のマスコミなどのほとんどの反応ですが、私は今のところは、完璧に頓挫したとは思っていません。

なぜそのように思うかというと、三点ばかり根拠があります。一点目は、過去に大統領選においてFTAやEPAに関して、大統領選のときには反対の意思を表明しておきながら、大統領になったらこれを批准した大統領などいくらでも存在するからです。実際、アメリカの大統領選挙の公約は守られないことが、しばしばありますし。だからといって、大きな問題になったこともありません。

二点目としては、アメリカの政治は二大政党制であり、今回のように政権交代があったとき、前政権と現政権の政治があまりにも異なった場合、とてつもなく混乱することになります。そのような混乱を避けるため、アメリカの政治では継続性の原則が貫かれています。

継続性の原則とは、たとえ政権交代したとしても、現政権は前政権の政策を6割〜7割は引き継ぎ、後の4割から3割で、新政権の色を出すというような政治手法のことをいいます。

今回のTPPに関しては、これを推進しようとしたのは元々アメリカです。これを今から完全廃止するとなると、アメリカ国内だけではなく、日本を含めた他の多くの国々に混乱をもたらします。これがかなりのマイナスとなると判断すれば、政治の継続性の原則から、混乱を招かないために、従来通り現政権もTPPを推進する事になる可能性は十分あります。

三点目としては、TPPには中国は参加しません。その意味で、TPPは中国への経済的な対抗策でもあります。トランプ氏は対中国恐慌派と目されていますから、これを理解すれば、TPPを推進するほうに立ち位置を変える可能性は十分にあります。

日本のメディアは、もうTPPは頓挫したかのように報道しているところが多いです。しかし、もっと趨勢を見極めないと、政治家、マスコミ、官僚もまたアメリカ大統領選挙の時のように、判断をまったく誤ることになるかもしれません。

アメリカの大統領がトランプ氏と決まったことを契機これからも、いろいろなことが明るみに出てくると思います。そのようなことを発見した場合、またこのブログに掲載しようと思います。

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2016年11月7日月曜日

韓国「わずか数年で日本に逆転された」 アベノミクス「うらやましい」安倍首相の指導力を羨望―【私の論評】日本のマスコミ、政治家、経済学者は韓国の経済対策を批判する資格はない(゚д゚)!

韓国「わずか数年で日本に逆転された」 アベノミクス「うらやましい」安倍首相の指導力を羨望

昨年アラブ首長国連邦(UAE)ドバイが仁川黔丹(コムダン)新都市に
36億ドルを投資する意向を伝えた。グローバル企業が入る「企業都市」を
建設する計画だ。しかし、その後何の進展もない、おそらく断念した
と思われる。写真はドバイの夜景

 お隣の韓国が安倍晋三内閣の経済政策「アベノミクス」を称賛し始めた。大胆な経済政策を進める安倍首相の指導力を高く評価する一方、長引く不況から抜け出せない自国の経済政策に批判の矛先を向けている。朴槿恵大統領の友人の女性実業家が国政へ介入した疑惑にみられるように韓国は政治も混迷状態に陥っており、高い支持率を背景に次々と政策を打ち出す安倍首相に熱い視線を向けざるを得ないようだ。

 ■「日本経済は活力を取り戻した」と評価

 韓国内のアベノミクスに対する評価が鮮明に分かるのが、中央日報が10月31日に日本語版でネットでアップしたコラムだ。そのタイトルはズバリ、「安倍首相の経済リーダーシップがうらやましい」。コラムは平成24年12月に再スタートを切った安倍内閣が実施した金融緩和、財政出動、成長戦略の3本の矢による経済政策について、デフレからは抜け出せていないとしながらも、アベノミクスがなければ日本経済の沈滞はさらに深刻だっただろうと推測。「安倍首相の指揮の下、日本経済はあちこちで閉塞感が消え、活力を取り戻している」としている。

 コラムは農業改革、外国人労働者受け入れ策、子育て支援を中心とした少子化対策、インバウンド消費拡大を狙う外国人旅行者受け入れ策の推進などを積極的に評価する一方、ロシアとの北方領土返還交渉にも触れ、日露の経済協力が進めば、日本企業は新たな投資先を開拓できると分析。最後に「安倍首相のリーダーシップをうらやましく感じるしかない理由だ」と記している。

 ■安倍首相の強く一貫した指導力を絶賛

 アベノミクスを前向きにとらえるのは中央日報だけではない。朝鮮日報は11月2日にアップした日本語版の「赤信号の韓国経済、政府は非常対策委を設置せよ」と題した社説で、韓国経済は危機的な状況にあるとした上で、「日本は20年間の長期不況の泥沼を脱し、活力を取り戻した。これも安倍首相の強く一貫したリーダーシップのおかげだ」と指摘した。

 また、朝鮮日報は10月29日にアップした日本語版の「危機の韓国経済、大妥協と日本のようなリーダーシップが必要だ」という社説で、「日本は、アベノミクスという大きな決断で20年の長期不況を脱した。経済と社会の活力は、わずか数年で韓国が日本に逆転された。韓国に最も必要とされているのは、まさにこうしたリーダーシップだ」と評価した。

 ■不況から抜け出せない韓国

 韓国はサムスンやヒュンダイなどこれまで経済を牽引してきた財閥系企業の業績が悪化。輸出は低迷し、景気を下支えしてきた消費と建設投資も不振だ。韓国銀行(中央銀行)は今年10月、来年の経済成長率見通しをこれまでの2・9%から2・8%に引き下げた。韓国銀行の李柱烈総裁はその理由について、韓国経済が抱える構造的な問題に加えて、英国の欧州連合(EU)離脱による不確実性の増大、新興国経済の不調などを挙げた。

 現在、韓国の一人あたりの国内総生産(GDP)は約2万5千ドルだ。一人あたりのGDPが2万ドルを超えると中進国、3万ドルを超えると先進国といわれる。日本やドイツは5年、スウェーデンやニュージーランドは4年と比較的短期間で3万ドルを突破している。しかし、2006年に2万ドルをクリアした韓国は、3万ドルをなかなか突破できない「中進国のジレンマ」に陥っている。

 ■韓国の若者は日本企業への就職を目指す

 このように経済の先行きが見通せないなか、国内での就職が困難なため、日本企業への就職を目指す韓国の若者が増えているという。

 聯合ニュースによると、韓国貿易協会は日本への就職を支援するため、日本の就職情報会社マイナビ、韓国求人サイトのジョブコリアと業務協約を結び、今年7月にはソウルで「日本企業採用博覧会」を開催した。日本国内では少子化などを背景に労働市場は「人手不足」の状態となっており、日本企業は人材確保を急いでいる。こうした中、日本企業は英語力に秀でた韓国人学生に注目。採用した韓国の人材を即戦力として投入するケースが増えているという。

【私の論評】日本のマスコミ、政治家、経済学者は韓国の経済対策を批判する資格はない(゚д゚)!

冒頭の記事に掲載されている、中央日報の記事(日本語版)を以下に全文掲載します。以下の記事は、元々は2つに別れて順次掲載されていたものを一つにまとめたものです。以下、太字はブログ管理人が施したものです。
【コラム】安倍首相の経済リーダーシップがうらやましい=韓国 
安倍晋三首相は韓国人には本当に負担となる。戦争を禁止した平和憲法の改正に拍車を加え、不安感を助長する。旧日本軍慰安婦問題は被害者が生きているにもかかわらず、不可逆的に合意しただけに取り上げるのはやめようという詭弁も弄する。このような安倍首相が好きな韓国人はどこにいるだろうか。しかし安倍首相の経済政策は奇抜だと感じる。

日本は2012年末から始まったアベノミクスを通じて金融緩和・財政拡張・構造改革という3本の矢を4年間放っている。しかし1次目標のデフレからも抜け出せていない。大きく見ると日本経済を楽観する理由はないということだ。

とはいえ失敗したと見るのは誤算だ。キジの代わりに鶏は捕まえたと考えられるからだ。もしアベノミクスがなければ日本経済の沈滞はさらに深刻だったかもしれない。しかし安倍首相の指揮の下、日本経済はあちこちで閉塞感が消え、活力を取り戻している。根拠はいくつもある。韓国では7兆ウォン(約6400億円)分のコメ収穫のために費用3兆ウォンを投じるが、日本はコメへの執着から抜け出し、農業の国際競争力強化に拍車を加えている。安倍首相が推進する外国人労働者「輸入」が端的な事例だ。日本では農業の企業化が急進展し、サラリーマン農夫が一般化している。さらに進んで来年は農業分野に外国人労働者の雇用を認めることにした。現在は3年限度の就職研修生制度であるため、十分に働けるようになる頃には送り出さなければいけない。新しい制度は人手不足を解消し、生産性も高めることができる。

包括的贈与は本当にうらやましい政策だ。安倍首相は就任直後の2013年4月から「教育・結婚・育児資金一括贈与非課税制度」を電撃的に施行した。息子・娘や孫に最大2500万円まで非課税で贈与できる破格的な消費増大案だ。このお金で冠婚葬祭費用や新婚住宅の家賃、出産費用、不妊治療費、育児ヘルパー費用、入学金、授業料、給食費を出すと非課税になる。韓国は企画財政部が国会に建議したが、富裕層に対する特恵という理由で棄却された。少子高齢化対策が緊急だが、政府と国会は何もしない。1億総活躍担当相を新設した日本とは対照的だ。日本の出生率は1.42人と、韓国の1.24人より高いが、格差の拡大が予想される。 「ふるさと納税」もよい。この制度は誰でも3万円を上限に地方自治体に寄付をすれば2000円を除いた全額が還付される。地方経済活性化のために2008年に導入されたが、安倍首相が昨年、寄付上限額を5万9000円に増やした。すると寄付額が3倍に増えた。よい政策は前政権のものでも奨励する。前政権の政策をすべてなくす韓国と比較される。

即時還付型事後免税店は効果が大きい。安倍首相は約4000カ所だったこうした免税店をおよそ2万カ所に増やした。出国時に税金還付を受ける煩わしさを減らすため、購入時に直ちに消費税を免税してくれる。こうした努力で昨年の日本訪問外国人は前年比47%増の1974万人となった。その間、韓国は6.8%減の1327万人となり、2008年以来7年ぶりに外国人観光客誘致戦で屈した。

日露経済協力は韓国を孤独にするかもしれない。クリル列島(北方領土)返還交渉の呼び水として推進しているが、安倍首相の接近は執拗だ。5月にはロシアのソチを訪問して1兆円にのぼる8項目の経済協力案を提示し、12月には自身の故郷である山口県にプーチン大統領を招請して経済協力方案に釘を打つ予定だ。今年16回目の両国首脳会談の結果だ。合意すれば投資先を見つけられずにいる日本企業がロシア全域で開発権を持つ。来年2月に導入される「プレミアムフライデー」も安倍首相が総監督だ。早い時間に退社することでショッピングや外食、旅行を促す制度だ。苦肉の策だが、内需振興のために一度やってみようということだ。このように活力を吹き込むと、就職希望者の青年雇用率は完全雇用に近い97%に上がった。企業は人手不足で常時採用戦争体制だ。安倍首相のリーダーシップをうらやましく感じるしかない理由だ。

キム・ドンホ論説委員
まともな、分析は、太字にした部分のみですが、その分析も十分ではありません。2013年4月より、日銀は異次元の包括的金融緩和に踏みきり、そこから経済は順調に回復しました。GDPも初年度から2%台を計上し、アベノミクス元年の年としては良いスタートでした。

この当時は、雇用に関しては目立って良くなったということもなかったのでほとんど評価されませんでしたが、それにしても、雇用に関する数値は全面的に上向きました。

ところが、平成14年4月より、8%の消費税増税をしてしまったので、せっかくの金融緩和の腰をおるとともに、GDPもマイナスというとんでもない状況を招いてしまいした。消費税増税は明らかな大失敗でした。

そうして、最近では金融緩和は不十分とはいいながら、継続しているので、雇用はかなり改善しました。これは、最近高校や大学の新卒予定者で就職活動をした人たちなら、実際に体感していることです。

だだし、消費税増税の悪影響はまだ続いており、そのせいで経済の伸びは良いとはいえないのですが、雇用に関してさら良くなっているという状況です。

上の中央日報の記事はこのあたりをあまり良く分析していません。そうして、これ以外は、ミクロ的な分析に終始し、何よりも残念なのは、韓国経済が明らかにデフレ状況に陥っていることを分析していません。

韓国経済は明らかにデフレです。デフレは、それ自体が内需低迷の為にもたらされます。しかしもっと怖いのはその低迷を加速化するという点です。物価が落ちると、人々はあえて消費を繰り上げようとする心理を持たなくなります。 電子機器、自動車、家具、衣類、靴などがみな同じです。

このような消費低迷は、企業にとって直撃弾を食らっているようなものです。デフレが進めば当然企業は投資、雇用、給与を減らす誘因が大きくなります。 これはまた、家計の消費余力を悪化させます。そして経済的側面を超えて社会全般の活気にまで落とすことになります。いわゆる「デフレ・スパイラル」です。

長い間、デフレにみまわれ、そこから回復しつつある日本の多くの人々にとって、これは既成の事実です。ただし、特に民進党などの多くの政治家、マスコミ、経済学者の多数などはこのことに気づいていません。

自民党の議員もほとんど気づいておらず、安倍総理自身と安倍総理に近い一部の側近がきづいているだけです。

上の、中央日報の記事では、安倍総理経済面でのリーダーシップを賞賛をしてはいるのですが、何やら的外れです。安倍総理のリーダーシップを賞賛するなら、日銀に金融緩和に踏み切らせたことと、一度は増税で失敗し財務省に負けたものの、その後は財務省と対峙し増税見送りを選挙の公約として選挙に大勝を収めて勝利したことです。

さて、ここで韓国の経済についてふりかえっておきます。今年の6月6日現代経済研究院がが、当時の経済動向'報告書を通じて発売した診断は「準デフレ」であると要約されていました。研究院によると、準デフレは生産者物価など、供給の物価がマイナスを見せ、消費者物価上昇率は0%台を見せているケースです。 韓国経済にぴったり当たる。今年、月別の消費者物価上昇率は0.8%→1.3%→1.0%→1.0%→0.8%の動きを見せてきた。いつでもデフレの影響が起こる恐れがあるという意味です。

報告書を書いた現代経済研究院のチュ・ウォン経済研究室長は、現在の景気は「需要不足」のためという点を明確にしています。朱室長は「需要低迷によって産業生産活動が萎縮して、経済全般に過剰供給が深刻化される長期不況の局面に位置している」と診断しました。

企業の設備投資が倒れたのが代表的な例です。統計庁資料を見ると、今年に入っての設備投資指数の増加率は、毎月、マイナスです。 国内外の市場需要が振るわなかったからです。

国内に加えて海外需要不足も韓国経済を暗くしていました。特に最大市場である中国で輸出低迷が持続する点が痛いです。産業通商資源部などによると、今年に入って対中国輸出は-21.5%→-12.9%→-12.2%→-18.4%→-9.1%などでマイナス行進です。

チュウォン室長は「製造業とサービス業の低迷が深刻化し、経済全般の生産力が下落している」と診断していました。

ただし、直近ではわずかながら、消費者物価は上昇しています(以下グラフ参照)。それにしても、低水準であることには変わりありません。そうして、上記の状況はほとんど改善しておらず、いつ何時また物価が下がるかは定かではありません。それよりも、何よりも、韓国の雇用、特に若年層の雇用は悪化の一途をたどっています。こういう状況に対処するには、やはり金融緩和です。さらに、日銀が金融緩和に踏み切ったのですから、当然のことながら、韓国も金融緩和をしなければ、ウォン高になるのは目に見えています。これを放置しておけば、韓国の基幹産業を支える、日本の精密機器などの部品の輸入価格が高騰します。


韓国の若年層の失業率の推移

以上より韓国経済の復活の処方箋は、まずは何をさておいても、金融緩和策であるはずです。

しかし、同じ中央日報が今年の2月には、以下のような記事を掲載しています。
【コラム】デフレと仲良く生きる=韓国
寝て起きれば上昇する物価のために心配が山積みだった時期があった。わずか数年前までそうだった。ところが最近は物価下落を心配する声がどんどん大きくなっている。いわゆる「D(デフレーション)の恐怖」が韓国にも上陸したのだ。生きていればいろいろなことが起きるという言葉も出てくるものだ。

経済学の教科書に出てくるデフレの破壊力はすさまじい。物価が下がり続ければ人々は消費をできるだけ遅らせることになる。遅く買うほど有利なためだ。製品がよく売れないので企業は生産と投資を減らすことになり、雇用縮小により家計所得も減少する。経済は長期沈滞に陥り、物価がさらに落ちる悪循環の輪が形成される。日本の「失われた20年」が代表的事例だ。

だがこうした疑問を感じる。製品やサービスの価格が下がるのはそれでも良いことではないのか。しかも私たちはすでにデフレに慣れているではないか。薄型テレビや携帯電話など電子製品の価格は下がり続けているが消費を遅らせはしない。むしろ新製品が出てくれば先を争って使う。物価が下がれば自分の実質所得は増える。同じお金でより多くの商品を購入することができる。気分良く消費を増やし企業の売り上げは拡大する。

最近の原油価格下落を見てもそうだ。「原油安の呪い」という言葉がメディアのヘッドラインを飾るほどだ。原油安はそんなに韓国経済に害になることだろうか。1リットル当たり2000ウォンを挟んで上下していたガソリン価格が1200ウォン台に下がった「減税効果」を全国民が享受しているのにだ。中東産油国の王族の金庫は軽くなったが、おかげで私の通帳の残高は増えた。実際に韓国の石油類消費が増え高燃費の自動車もよく売れている。海外建設と造船業界などが打撃を受けているが、全体的には得るものが失うものより多いという分析が出てくる。

デフレをめぐる議論と関連し国際決済銀行(BIS)が興味深い研究結果をこのほど出した。「デフレの費用に対する歴史的眺望(The costs of deflations:historical perspective)」がそれだ。BISはこの140年間に主要38カ国で起きた663回の物価下落期間にどのようなことがあったかを全数調査した。デフレは財貨・サービスなど製品価格の下落と不動産・株式など資産価格の下落を区分し影響を確認した。その結果製品価格の下落と経済成長の間にこれといった相関関係はなかった。製品価格が下がっても経済がうまく回った事例が多かったという話だ。

これに対し不動産など資産価格の下落は経済に悪影響を及ぼすことが確認された。特に民間部門の負債が大きい時は資産デフレにともなう経済沈滞が増幅されることが明らかになった。日本の場合がこれに該当する。負債で買った不動産価格が4分の1に暴落すると消費は失われ物価下落と不況の悪循環が続いた。

いま韓国はどうなのか。住宅市場に不安な部分があるが、資産デフレを引き起こす状況ではない。全般的な低物価は石油類と工業製品価格の下落による部分が大きい。まだ良いデフレと見ても大丈夫だという話だ。韓国は国際原油価格が10%下がると消費が0.68%増え、国内総生産(GDP)も0.27%増加するというのが現代経済研究院の実証分析だ。その上韓国は古びた流通構造と寡占的談合のため世界的に物価が高い国に挙げられる。製品価格のバブルを除き続けなければならない。

もちろん資産価格下落にともなうデフレは警戒しなければならない。住宅価格が急落すれば1200兆ウォンの家計負債の信管を刺激し、日本式の悪性デフレに陥る可能性が大きい。韓国政府が遅まきながら住宅担保貸付の審査を強化し元利金分割償還を誘導したのはよいことだ。それなりの安全装置を備えただけに韓国銀行が身動きできる幅が広がった。韓国銀行は資産デフレの兆しが見えれば基準金利引き下げカードを速やかに切る必要がある。

デフレが無条件で悪いというのは一種の騒音だ。人々の判断を曇らせる。住宅市場が持ちこたえ所得さえ減らないならデフレは祝福だ。原油安の状況などを逆に活用し経済体質を改善して内需を育てる知恵が要求される。

キム・グァンギ経済エディター
驚くべき内容です。デフレなど何一つ良いことはありません。この記事の最後のほうで、「原油安の状況などを逆に活用し経済体質を改善」などとしていますが、経済体質の改善とは結局経済の構造改革のことです。

日本でも、デフレの時期には、「金融緩和をしても、害になるだけだ、結局体質の古い企業を温存することになり将来の経済の発展を阻害することになる」などと言われていました。

しかし、これは、全く逆です。デフレを放置しておくことが、経済の構造改革を阻害するのです。そもそも、デフレで経済が冷え込んでいるときには、多くの企業は設備投資や雇用を控えるようになります。そのようなときに、敢えて大きな投資と人員を必要とする構造改革に踏み切る企業などありません。

そもそも、モノやサービスがあまり売れないのですから、ひたすら現状を維持して、経済が好転するのを待つというのが常識的なやりかたです。こんなときに、構造改革など絶対にしません。実際、日本かデフレスパイラルのどん底にあったときには、そうでした。そうではないとする人は、企業経営そのものを知らないのだとしか言いようがありません。

この中央日報の2つの記事を読む限り、韓国では経済が好転する兆しは全く見えません。実際、韓国では10年程前の日本のように、経済循環的な経済対策である金融緩和や、積極財政などについて語られることはほとんどなく、構造改革ばかりが話されています。

本来の正しいやりかたは、景気循環的な経済対策を行い、その後ある程度経済が回復した後で、構造改革に取り組むべきです。しかし、昔の日本も現在の韓国も逆の順番で経済を回復しようとしています。

これは、絶対に成功しません。韓国の場合は、日本よりもさらに悪いことがあります。グローバル化を国をあげ推進してきたので、内需がおろそかにされてきたため、個人消費がGDPに占める割合は50%台です。これが、日本だとデフレのころも60%台でした。日本を含めた先進国は、だいたいこれくらいです。アメリカの場合はこれが、70%台です。

さらに、韓国はもともと経済が脆弱だったので、日本がデフレの真っ最中だった頃でも、家計はかなりのプラスだったのですが、韓国の場合は経済が今日のように本格的に落ち込む前から、かなりのマイナスでしたし最近はそのマイナスの幅が増えています。

マイナスということは、結局家計が借金をしているということです。このような脆弱な体質ですから、経済がデフレ気味になっても、韓国経済は悪影響を受けるのですが、本科的デフレにでもなれば、とんでもない状況になってしまいます。

韓国経済の状況は日本にとっても、非常に参考になります。現在の韓国の状況は20年ほど前の日本に似たような状況にあります。デフレなのに、金融緩和もせず積極財政もしないで、できもしない構造改革を叫んでいるとどうなるのか、それを現在進行形で韓国経済は良いケーススタデイーを提供しているという見方もできます。

そういった意味では、今後韓国の経済は日本経済にとっても非常に参考になるでしょう。何しろ、先ほども述べたように、日本のマスコミはおろか、政治家も、経済学者、財務省などの官僚ですら、デフレへの処方箋を心得ておらず、経済に対する考え方は、現状の韓国のそれと同じようなものです。

自分たちと同じような考えで、経済対策を行なっている韓国の行末をみれば、自分たちの主張は間違いであることが容易に理解できるはずです。ただし、それでもほとんどわからないかもしれません。

結局、韓国と日本の経済の構造の違いなどのせいにして、韓国経済の悪化は、韓国の経済の構造に問題があるからだとするに違いありません。

本当に情けないといえば、情けないです。こういう人たちに、韓国経済を批判する資格などありません。

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2016年5月18日水曜日

国の借金1000兆円超」に騙されてはいけない 純債務残高は米英より健全 ―【私の論評】嘘を流布する官僚や学者、信じこむ政治家やマスコミは排除すべき時だ(゚д゚)!


マスコミの得意な報道 ミスリーディングも甚だしい

国の借金が1049兆円になったという報道があったが、国の財政の実態については誤解も多い。

ここでいう「国」とは政府のことであるが、マスコミ向けの統計数字はいろいろある。代表的なものとして「国の公債残高」「国と地方の長期債務残高」「国債及び借入金残高」という3つの違う概念があり、それぞれは2016年度末で838兆円、1062兆円、1191兆円と見込まれる-と最新の財務省のパンフレットに書かれている。

「国と地方の長期債務残高」は、国債残高に地方債などを加えたものだし、「国債及び借入金残高」は、地方分を入れないかわりに短期証券等を加えている。

今回発表されたのは「国債及び借入金残高」の15年度末の数字1049兆円だ。ちなみに昨年の財務省パンフレットには、15年度見込みとして1167兆円と書かれていた。

内訳を見ると、見込みと実績のそれぞれで、普通国債で807兆円と805兆円、借入金等で63兆円と64兆円、財投債98兆円と96兆円、政府短期証券199兆円と84兆円となっており、パンフレットに書かれていた見込み額は100兆円以上も過大な数字になっていた。

いずれにしても、債務だけをいろいろな数字で説明しても不十分で、本当の国(政府)の財政状況を示すには、バランスシート(貸借対照表)が不可欠だ。

筆者は大蔵官僚だった1995年、初めて国のバランスシートを作った。2003年度版から正式に公表されている。ところが、マスコミはバランスシートを読めないのか、あまり報道されていない。

今年1月、国の財務書類として公表されたものを見ると、14年度末で、上記の国債を含めた負債総額が1172兆円、資産総額が680兆円だ。つまり、国債を含めた債務残高は、負債から資産を差し引いたネットでみれば、492兆円であることがわかる。

こうした話をすると、「国の金融資産といっても社会保障基金の積立金は取り崩せない」という人が出てくるが、本当にバランスシートを読んでいるのか筆者は怪しいと思っている。

バランスシートをみれば、資産側の社会保障基金積立金は負債側の公的年金預かり金と見合っており、ネットで債務残高を見るときには意味がないからだ。財務省の言いなりになっているのだろう。

さらに重要なのは、政府だけではなく、「関連会社」を含めた連結ベースのバランスシートだ。これも公表されているのだが、重要な組織である日銀が連結対象になっていない。そこで、日銀を含めて連結ベースのバランスシートをみると、ネットの債務残高は170兆円にまで減少してしまう。

これが、本当の債務残高の姿である。国内総生産(GDP)比でみると2割以下であり、米国や英国と比較しても小さい。このような状況だから、現時点では財政破綻の可能性は極めて小さく、国債金利がマイナスになるのも納得できる。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】嘘を流布する官僚や学者、信じこむ政治家やマスコミは排除すべき時だ(゚д゚)!

国(政府)の借金が1049兆円になったという報道の代表的なものをあげておきます。読売新聞の報道です。
「国の借金」、1049兆円…7年ぶり減少
 財務省は10日、国債など「国の借金」が2015年度末時点で1049兆3661億円と、14年度より3兆9911億円減ったと発表した。

国がお金を短期で借りるために発行する政府短期証券が大きく減ったためだ。日本銀行のマイナス金利政策などの影響で、利回りが低下した政府短期証券への需要が少なくなった。 
 残高が前年度より減ったのは08年度以来、7年ぶり。ただ、国民1人当たりの借金は約826万円となる計算で、危機的な財政状況に変わりはない。 
 財務省は3か月ごとに、国債と借入金、政府短期証券それぞれの残高の合計を発表している。国債の残高は910兆円だった。
このような報道と並んで、よく報道されるのが、下のようなグラフです。そうして、おどろおどろしく、国民一人あたりの換算で、826万円の借金などと報道されます。

■国の借金の推移(単位:兆円、2016年3月末)

このような報道をするものですから、多くの人は、「大変だ」「とんでもないことになる」などと思い込んでしまうわけです。

しかし、この捉え方は全くの間違いです。高橋洋一氏の上の記事から、日本(政府)の財務状況をまとめておくと、14年度末で、上記の国債を含めた負債総額が1172兆円、資産総額が680兆円だ。つまり、国債を含めた債務残高は、負債から資産を差し引いたネットでみれば、492兆円です。

要するに財務省が公表し、その公表を鵜呑みにして各メディアが報道する国の借金という概念は非常におかしいです。そもそも、国の借金という言い方自体もおかしいです。本来は、政府の借金とすべきです。

国=政府ではないです。国ということであれば、日本国は借金どころか、対外金融純資産(すなわち、日本国が外国に貸し付けているお金)は、過去20年以上も世界一(毎年5月に発表されます。最新の数字では41兆円です)です。ここからして、日本国が借金をしているという考え方は全くの間違いです。

日本は国としては、借金どころか、世界で一番外国に金を貸し付けている国ということです。だから、断じて、日本国が借金まみれというのは全くの虚構です。

ただし、政府は借金をしています。しかし、日本国には政府の他にも、家計、銀行、民間企業などの経済主体があります。それらも合わせた、日本国全体では日本国は、借金がないどころか、世界一金を貸し付けている国ということになります。

では、政府の借金はどうなのかといえば、高橋洋一氏が上の記事で指摘している通り、まずはグロス(総額)でみれば、確かに14年度末でも、国債を含めた負債総額1172兆円ですが、政府の資産総額は、680兆円ですから、負債から資産を差し引いたネット(正味)でみれば、492兆円なのです。おそらく、15年度末はこれよりも低くなっていると思います。

これは、本当に簡単にたとえることができます。ある人がジーンズの右ポケツトに1000円の借用書が入っていたとして、左ポケットに600円入っていたとして、この人の借金はいくらでしょう。確かにグロスでは1000円ですが、正味では400円です。

右ポケツトと左ポケツト?
普通個人の場合でも、その人の借金総額を見る場合、お金以外のものならそういうわけにはいかないかもしれませんが、お金を持っていれば、その個人の借金はグロスではなく正味で見るのが正しい見方でしょう。

しかし、なぜか政府の借金となると、主管省庁である財務省はグロスで公表し、メディアも財務省が公表したグロスの数値をそのまま報道します。これは、本当に奇異な習慣です。

そうして、さらに、政府の下請けである日本銀行も含めたバランスシートで、政府の借金を計算すると、ネットの債務残高170兆円です。GDPを500兆とすれば、GDP比で34%程度に過ぎません。

同じ見方で、イギリス、米国を計算すると、イギリスGDP比で60%程度、米国は80% (両方とも昨年の値)程度です。これで、日本が財政破綻するとか、国債が暴騰するなどということはあり得ないことがわかります。 実際、国債の金利はほとんどゼロに近いです。この状況を、国の借金1000兆円を信じる人たちは、どのように説明するのでしょうか。

もう、こんなまやかしは続けるべきではありません。この状況なら、消費税をあげる必要などそもそもありません。

一般の人々がこの途方もない嘘を、信じこんでしまうのはある程度は仕方ないと思います。しかし、この嘘を流布する官僚や学者、信じこんでしまう政治家やマスコミなど、もうそろそろ排除すべき時ではないかと思います。こんな連中によってたかって、10%増税など実行されてはたまったものではありません。

このような官僚、学者、政治家、マスコミは日本を悪くするだけです。

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2016年5月2日月曜日

大地震を利用する増税派の悪質な手口を忘れるな 田中秀臣―【私の論評】課税の平準化理論すら理解できない輩には、復興予算の議論をさせるな(゚д゚)!


自民党の全国政調会長会議であいさつする谷垣幹事長。
隣は稲田政調会長=4月18日午後、東京・永田町の党本部
「熊本地震」による深刻な被害が次第に明らかになっている。しかも強い余震がこの原稿を書いている時点でも続いていて、現地の方々の精神的な不安と肉体的な疲労は募るばかりだろう。まだ救援活動も継続している中で、熊本地震に関わる経済的な側面について論説を書くことを早急すぎると思われる方々もいるかもしれない。(総合オピニオンサイト iRONNA)

 東日本大震災の翌々日には、菅直人首相(当時)と自民党の谷垣総裁(当時)との間で、災害対策としての「臨時増税」が議論されている。この協議自体はのちに復興特別税として結実し、またこのときの与野党協議を基礎にして消費増税路線が構築されていった。増税派のやり口は急速で、また時には驚くほど露骨かつ大胆に進められる。

 2011年当時、このような復興目的を利用して増税路線をまい進する政府と財務省、またそれを支援する経済学者・エコノミスト、マスコミに対して、私は経済評論家の上念司氏との共著で『震災恐慌』(宝島社)<後に『「復興増税」亡国論』として再刊>を出版するなどして猛烈な批判を展開した。

 経済学の常識からすれば、大規模災害は、復興目的の国債を発行して、なるべく災害に遭遇している現時点の国民に負担を集中的に課すのではなく、きわめて長時間(場合によれば一世紀でもいい)をかけてゆっくりと負担するのが望ましいとされている。もし災害に直面している国民にも税負担を課してしまうと、経済的な困難がさらに増してしまう。また被災地を救援する多くの国民にも経済的な余裕を失わせてしまうことで、復興事業自体が滞ってしまうだろう。

 だが、過去の阪神・淡路大震災のときもまだ復興の道半ばで、消費税増税が行われ、日本は経済危機に直面してしまった。もちろん経済的に弱まっていた阪神・淡路地域の方々の経済的困難は他に比べても深刻なものになってしまった。この教訓があるにもかかわらず、2011年当時の与野党の増税派は、大地震を口実に消費増税を推し進めたのである。

 2011年から12年にかけて復興税に反対するために、言論の場だけではなく、きわめて少数ではあったが、与野党の議員の中で復興税に反対する勢力が形成され、積極的に反対活動が行われた。その中で、自民党の取りまとめ役として活躍したのが、安倍首相であった。この復興税に反対する議員連盟の中で、いわゆるリフレ派(デフレ不況を金融政策の転換で克服しようとする経済学者・エコノミスト集団)との接点が生まれた。それがのちのアベノミクスに至る大きな道になった、と私は推測している。

 他方で、不幸なことに、復興特別税の法案は通過し、また消費税増税法案も決まってしまった。この消費増税がいまも日本経済の不調の主因であることは、本連載でも繰り返し強調してきたところである。

 では、今回の熊本地震に際しての増税派的な動きはどうだろうか?

 例えば自民党総務会メンバーは、4月19日に会合をもち、報道によれば「財政規律」や「(景気対策のための)財源のための増税」を主張する議員がいたとされている。景気対策のためには財源が必要であるとすることはいかにももっともらしいが、現時点で経済的な困難に直面している国民を救うために、一方では景気対策をし、一方では増税でさらに負担を増やす、という意味が不明の「悪しき財源論」は、日本の経済政策の中でも最もトンデモな議論といっていい。しかも前者の景気対策は短期的に終わってしまうが、後者の増税は恒久化してしまう。まさに国民の不幸につけこんだ非情なやり口である。

 また稲田朋美自民党政調会長は、「固定概念にとらわれることなく議論する必要がある」として消費税のまずは1%の引き上げを志向する発言も伝えられている。もし「固定観念」にとらわれないとしたら、いままでの大災害や景気対策での「財源」としての増税路線を転換することが、まさに「固定観念」を打破するものではないだろうか?

 他方で、与党の中では、景気の悪化や今回の熊本地震を考慮して、消費増税が困難になったという見方も強い。ただ安倍首相自身は、繰り返し消費税増税のスケジュールに変更はないことを今でも強調している。もしこれを額面通りにとれば、もちろん(地震災害と景気悪化の前では)最悪の選択となる。

 ただ消費増税をするか否かの政治的判断はまだ最終的なものではない、というのが大方の見方である。仮に現段階で、首相が消費増税の「先送り」や「凍結」を打ち出してしまうと、野党勢力はいまも公言しているが、このことを安倍政権の「口約違反」や政策のミスとして追及していくだろう。場合によっては内閣不信任案の口実とさえなりかねない。野党は(いろいろな能書きがあるようだが)表向きは消費増税に反対する態度を示しているが、政治的にみれば首相の消費増税凍結を阻止しているともいえる。参議院選挙を控える中で、首相はぎりぎりまで消費税に関する態度決定を回避することになろう。

 また首相が玉虫色な政策決定をする可能性はあるだろう。例えば消費増税と同時に、一時的な給付金や大規模な公共事業を行う政策である。しかしこのような給付金&公共事業の組み合わせは、前回の5%から8%への税率引き上げ時にも行われたが、結局は金額も過小になり、また効果も持続的なものではなかった。その証拠に、今日の景気失速の主因は2014年4月の増税開始からまったく実質消費が回復しないことである。いまは景気対策をする一方で、他方で増税するという「悪しき財源論」や「財政規律」に依存する政策から脱することが必要なのである。後者でいえば、むしろいまこそ「財政規律」を破壊すべきなのだ。国の財政はなんであるのか? それは我々国民の生活を豊かにするためだ。現時点で経済的な困難に直面している国民に対して財政的救済を行わない政府などその存在意義を疑われてしかるべきだろう。それはもちろん被災された方々の苦境を救うために必要な絶対条件ともいえるものだ。

 具体的な政策の大枠は前回のコラム「消費減税には100兆円「余剰資金」を動員するしかない!」 で書いた通りである。消費減税を中心とする財政政策がベストであり、それをサポートする金融緩和政策が必要条件になる。金融政策の決定会合は、今週27日(水)28日(木)に迫っている。例えば、長期国債の買い取りペースを拡大し、政府が震災対策として発行する新規国債を吸収して予算をバックアップするのもいいだろう。また新規発行された「財投債」、既存の地方債や社債、さらに有力候補としては外債の買い取りによって、日本銀行のバランスシートの規模を拡大させ、緩和基調の経済を生み出していく。このような金融緩和政策を前提にして、政府は「悪しき財源論」「財政規律」論を封じこめ、より積極的な財政政策を打ち出すことが、何度も繰り返すが必要であろう。

 われわれ国民ができることは、災害を利用する増税勢力をつねに監視し、警戒を強めていくことである。彼らは甘くはない。

■田中秀臣 上武大学ビジネス情報学部教授、経済学者。1961年生まれ。早稲田大学大学院経済学研究科博士後期課程単位取得退学。専門は日本経済思想史、日本経済論。主な著書に『経済論戦の読み方』(講談社現代新書)『デフレ不況 日本銀行の大罪』(朝日新聞出版)など多数。近著に『ご当地アイドルの経済学』(イースト新書)。

(総合オピニオンサイト iRONNA)

【私の論評】課税の平準化理論すら理解できない輩には、復興予算の議論をさせるな(゚д゚)!

地震などの、大規模自然災害のときに、その復興を増税で賄うなどは、古今東西どの国も実行したことはありません。ただし、これには一つだけ例外があります。それは、上の記事にも掲載されている復興税です。

日本は、失敗することがはっきりしている、政策を実行して、実際に大失敗しました。これは、現代史に残る、大きな大失敗です。そうして、この失敗に懲りることもなくまだ復興が十分とはいえない、平成14年4月からは、8%増税を実施してしまいました。

この増税は、未だデフレの影響からも抜けきっていないし、東日本大震災の復興途上にあった、日本において行われました。これによって、日本は失敗に懲りることもなく、さらに大失敗を繰り返したわけです。

さて、ブログ冒頭の田中秀臣氏の記事、全く正しくこれを特段論評するなどという必要もないです。

大地震を利用する増税派の悪質な手口に関しては、このブログでも、今年だけでも二回掲載しています。

一つ目は、元記事は高橋洋一によるものです。
増税勢力はこうして東日本大震災を「利用」した~あの非情なやり方を忘れてはいけない―【私の論評】財務省、政治家、メディアの総力を結集した悪辣ショック・ドクトリンに幻惑されるな(゚д゚)!
被災地にかがみこむ若い女性
この記事は、今年の3月14日に掲載したものです。その時は、熊本地震など発生しておらず、一月後に熊本であのような大地震がおこるとは予想だにしていませんでした。

この記事も掲載したように、経済学には課税の平準化理論というものがあり、例えば百年の一度の災害であれば、100年債を発行して、毎年100分の一ずつ負担するのが正しい政策です。これは、何も私の思いつきなどで語っているのではなく、標準的なまともなマクロ経済学のテキストには普通に掲載されている理論です。

無論、標準的なテキストに掲載されるのですから、長年にわたって研究され実証された理論です。古今東西において、この理論に関して、否定する人などいません。

否定するような人は、経済の本質がわかっていない人だけです。課税の平準化理論など、とくに経済学の理論として学ばなくても、常識のある人なら誰にでもすぐにりかいできます。大震災などの大規模な災害の復興に、震災の復興を賄うのに、増税などあてれば、震災が起きた時の世代が、震災による停滞に見舞われるなかで、将来世代が使うインフラまで整備しなければならなくなります。

これはとんでもない不公平です。であれば、その災害が100年に一度起きるような災害であれば、100年債で応分に以外に見舞われた世代と、その後将来世代も応分に負担するというのが、当たり前のことです。こんなことは、小学生でも理解できると思います。

これを理解できないお粗末な政治家がいます。さらには、これを本当は理解しているのでしょうが、省益などを優先する財務省などが、経済理論など無視して、災害を利用して、増税キャンペーンを実施したというのが実態でしょう。

この記事では、大震災・大津波・原発事故を利用して、増税を実施する悪辣なこのやり方を「悪辣なショック・ドクトリン」と形容しました。

ショック・ドクトリンを提唱したジャーナリストのナオミ・クライン
ショック・ドクトリンとは、「大惨事につけ込んで実施される過激な市場原理主義改革(The Rise of Disaster Capitalism)」という意味で、カナダのジャーナリスト、ナオミ・クライン(Naomi Klein)氏が昨年著した本のタイトルでもあります。ただし、ナオミ・クラインは、市場原理主義を主張したシカゴ学派 (経済学) のミルトン・フリードマンを批判していますが、実際にはフリードマンの考えは悪辣な政治家などが、自分たちのとんでもない政策を正当化するために、フリードマンの理論を悪用したとみるべぎです。

しかし、震災などの復興につけ込んで、復興税などを導入し、さらにその後にも増税するという二段構えの悪辣な手口は、まさにショック・ドクトリンと形容しても良いというか、悪辣さらにおいてはさらに上手と言っても良いやり口でした。だからこそ、私は復興税を「悪辣なショック・ドクトリン」と形容したのです。

もう一つは、熊本の大地震の後まもなくの、今年の4月22日に掲載したものです。
【お金は知っている】菅直人政権時の無為無策を繰り返してはいけない 増税は論外、公共投資を粛々と―【私の論評】熊本震災復興は復興税ではなく国債発行を!東日本震災復興の過ちを繰り返すな(゚д゚)!
 
この記事の元記事は、産経新聞の田村秀男氏によるもので、上のグラフも掲載されていて、東日本大震災と阪神淡路大震災を比較していました。このグラフをみても、わかるように、阪神淡路大震災のときには、公共投資が速やかに行われ、GDPの回復も速やかであったことがわかります。このときの復興は無論のこと、復興税ではなく、国債によって賄われています。これに比較して、復興税により賄われた、東日本大震災では、公共投資が速やかには行われておらず、GDPも上昇していないことがわかります。

これは、為政者の能力がどうのこうのというより、やはり、復興税が大失敗であったことを物語っています。

そうして、この記事の私の論評は、以下のように締めくくりました。
以上のようなことから、今回の熊本震災による復興は復興税ではなく国債によるべきであり、東日本震災復興の過ちを繰り返すべきではありません。 
今後の政治課題は、10%増税は見送りは当然のこととして、熊本震災復興そうして、未だ停滞している東日本大震災復興にも、国債を用いて十分な財源を確保して、一日も早く復興を成し遂げることです。
この結論、ブログ冒頭の田中秀臣氏の記事を読んで、ますます確信をもてようになりました。

熊本の震災復興に復興税を用いたり、それだけではなくさらに来年4月に10%増税してしまえば、日本経済はまたまた落ち込み、とんでもないことになります。

そんなバカ真似は断じてさせるべきではありません。復興は、国債ではなく、復興税でと考えるような政治家は、そもそも物事の基本的な仕組みがわかっておらず、本来は政治家などになべきではありませんでした。そうはいっても、選挙で候補者から選ばれているわけですから、すぐに政治家をくびにするというわけにもいきません。

しかし、経済に関して、課税の平準化理論すら理解できない政治家には、復興予算の議論をさせるべきではありません。彼らの存在が、足を引っ張り、議論を混乱させ、いたずらに危機を煽るだけになります。

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2016年3月14日月曜日

増税勢力はこうして東日本大震災を「利用」した~あの非情なやり方を忘れてはいけない―【私の論評】財務省、政治家、メディアの総力を結集した悪辣ショック・ドクトリンに幻惑されるな(゚д゚)!

増税勢力はこうして東日本大震災を「利用」した~あの非情なやり方を忘れてはいけない
増税勢力は、震災後すぐ稼働した

東日本大震災から5年がたった。3月11日のテレビではこれまでの5年を振り返った放送が多かった。

大震災の状況は大いに気になったが、その過程で、当時の菅政権が野党の自民党・谷垣禎一総裁と組んで「復興増税を企んでいる」という情報が入ってきた。

これは経済学を学んだ人なら、すぐ間違いとわかる政策だ。課税の平準化理論というものがあり、例えば百年の一度の災害であれば、100年債を発行して、毎年100分の一ずつ負担するのが正しい政策である。その当時、大震災という重大事に何を考えているのかと大いに憤った記憶がある。

そこで大震災直後、2011年3月14日付けの本コラムで「「震災増税」ではなく、「寄付金税額控除」、「復興国債の日銀直接引受」で本当の被災地復興支援を 菅・谷垣『臨時増税』検討に異議あり」(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/2254)を書いた。

このときの増税勢力は勢いがよかった。大震災で、多くの人が被災者を助けたいという「善意」を悪用して、復興増税は結果として行われた。

経済学者も情けなかった。そのとき、経済セオリーを主張する者はほとんどおらず、逆にセオリー無視の復興増税を推進した人たちのリスト http://www3.grips.ac.jp/~t-ito/j_fukkou2011_list.htm)は以下の通りだ。

「震災復興にむけて」
共同提言者・賛同者(2011年6月15日10:00現在)(敬称略)

伊藤 隆敏 (東京大学)
伊藤 元重 (東京大学)
浦田 秀次郎 (早稲田大学)
大竹 文雄 (大阪大学) 
齊藤 誠 (一橋大学)
塩路 悦朗 (一橋大学) コメント土居 丈朗 (慶応義塾大学)
樋口 美雄 (慶応義塾大学)
深尾 光洋 (慶応義塾大学)
八代 尚宏 (国際基督教大学)
吉川 洋 (東京大学)

(★印のついた方は「第3提言の賛成は留保」)
青木 浩介 (東京大学)
青木 玲子 (一橋大学)★ コメント赤林 英夫 (慶應義塾大学)
安藤 光代 (慶應義塾大学)
井伊 雅子 (一橋大学)
飯塚 敏晃 (東京大学)
池尾 和人 (慶應義塾大学)
生藤 昌子 (大阪大学) コメント石川 城太 (一橋大学)
市村 英彦 (東京大学)★ コメント伊藤 恵子 (専修大学)
岩井 克人 (国際基督教大学)
祝迫 得夫 (一橋大学)
岩壷 健太郎 (神戸大学)
宇南山 卓 (神戸大学)
大来 洋一 (政策研究大学院大学) コメント大野 泉 (政策研究大学院大学) コメント大橋 和彦 (一橋大学) コメント大橋 弘 (東京大学) コメント岡崎 哲二 (東京大学) コメント小川 英治 (一橋大学)
小川 一夫 (大阪大学)
小川 直宏 (日本大学)
翁 邦雄 (京都大学)★ コメント翁 百合 (日本総合研究所)
奥平 寛子 (岡山大学)
奥野 正寛 (流通経済大学)
小塩 隆士 (一橋大学)
小幡 績 (慶應義塾大学)
嘉治 佐保子 (慶應義塾大学) コメント勝 悦子 (明治大学) コメント金本 良嗣 (政策研究大学院大学)
川口 大司 (一橋大学) コメント川﨑 健太郎 (東洋大学) コメント川西 諭 (上智大学) コメント北村 行伸 (一橋大学)
木村 福成 (慶應義塾大学)
清田 耕造 (横浜国立大学)
清滝 信宏 (プリンストン大学)
國枝 繁樹 (一橋大学)
久原 正治 (九州大学)
グレーヴァ 香子 (慶應義塾大学) コメント黒崎 卓 (一橋大学)
黒田 祥子 (早稲田大学)
玄田 有史 (東京大学)
鯉渕 賢 (中央大学)
小林 慶一郎 (一橋大学) コメント小峰 隆夫 (法政大学)
近藤 春生 (西南学院大学)
西條 辰義 (大阪大学) コメント櫻川 幸恵 (跡見学園女子大学)
櫻川 昌哉 (慶應義塾大学) コメント佐々木 百合 (明治学院大学) コメント佐藤 清隆 (横浜国立大学)
佐藤 泰裕 (大阪大学)
澤田 康幸 (東京大学)
清水 順子 (専修大学) コメント新海 尚子 (名古屋大学) コメント鈴村 興太郎 (早稲田大学 / ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジ) コメント清家 篤 (慶應義塾大学)
瀬古 美喜 (慶應義塾大学)
高木 信二 (大阪大学)
高山 憲之 (一橋大学)
武田 史子 (東京大学)
田近 栄治 (一橋大学) コメント田渕 隆俊 (東京大学)
田村 晶子 (法政大学)
田谷 禎三 (立教大学)
中条 潮 (慶應義塾大学) コメント筒井 義郎 (大阪大学)
常木 淳 (大阪大学)
釣 雅雄 (岡山大学)
中田 大悟 (経済産業研究所)
中村 洋 (慶應義塾大学) コメント長倉 大輔 (慶應義塾大学)
畠田 敬 神戸大学
林 文夫 (一橋大学)
原田 喜美枝 (中央大学)
深川 由起子 (早稲田大学) コメント福田 慎一 (東京大学)★
藤井 眞理子 (東京大学)
藤田 昌久 (経済産業研究所)
星 岳雄 (UCSD)
細田 衛士 (慶應義塾大学)
細野 薫 (学習院大学) コメント堀 宣昭 (九州大学)
本多 佑三 (関西大学) コメント本間 正義 (東京大学)
前原 康宏 (一橋大学)
松井 彰彦 (東京大学)★
三浦 功 (九州大学)
三重野 文晴 (神戸大学)
三野 和雄 (京都大学)
森棟 公夫 (椙山女学園)★ コメント柳川 範之 (東京大学)
藪 友良 (慶應義塾大学)
山上 秀文 (近畿大学) コメント家森 信善 (名古屋大学)
吉野 直行 (慶應義塾大学)
若杉 隆平 (京都大学)
和田 賢治 (慶應義塾大学)
渡辺 智之 (一橋大学)

以 上
増税派の責任は重い

大震災直後の増税勢力は、1ヶ月後の4月14日、復興会議の五百旗頭真(いおきべまこと)議長の挨拶のなかに「増税」を盛り込ませている(2011年4月18日付け本コラム「あらためていう。「震災増税」で日本は二度死ぬ 本当の国民負担は増税ではない」(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/2463)。

5年たった現在、そのことがどう評価されているのか。今年3月12日に放映されたNHKスペシャル『“26兆円” 復興はどこまで進んだか』は興味深かった(http://www6.nhk.or.jp/special/detail/index.html?aid=20160312)。インタビューに応じた五百旗頭氏が、開口一番「復興増税がよかった」といったのだ。これにはかなり驚いた。

政府としては復興予算を確保すればいいので、その財源を一時的な税にするか国債発行で長期的な税にするかは、財務省が気にする話でしかない。一時的な税で賄おうとすれば、当面の復興予算が少なくなる可能性がある。復興会議は人々の不安をぬぐうような復興予算を確保するのが仕事なのに、財務省の走狗のような増税に荷担した責任は重い。

こうした「常識」は、数少ない識者の間では共有されていた。特に、筆者の近くにいた故・加藤寛先生は明確に意識していた。加藤先生は実は岩手県出身である。その関係で、大震災後、復興構想会議のメンバーになってほしい、という打診があったという。しかし会議の目的が「増税のため」と知った加藤先生は、「復興のための増税など絶対に賛成できない」と断った、と筆者に語ってくれた。

この復興増税は、震災復興をホップとして、次の消費増税をステップ、さらなる消費増税をジャンプとして、大増税を画策していた。これについては、2011年6月20日付け本コラム「「復興」「社会保障」「財政再建」の三段階増税を許すな 新聞が報じない増税反対に集まった 超党派議員211人」(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/9228)を参照してもらいたい。

このとき、この増税に反対した211人の中で、自民党で「増税によらない復興財源を求める会」会長をしていたのが、今の安倍首相である。先の8%から10%への消費増税を見送った背景には、こうした野党時代の活動もあるわけだ。

増税勢力は、今のところホップは成し遂げたが、ステップの途中段階で止まっている。もし民主党政権が続いていたら、今頃ステップ段階に突入し、日本経済は大変なことになっただろう。

復興が進まない理由

先のNHKスペシャル『“26兆円” 復興はどこまで進んだか』を見て、興味深かったのは、いろいろな地域でそれぞれ工夫をして復興を進めているが、そのやり方の差が大きいことだった。例えば、高台移転を進めるにしても、大規模増税で大型予算を組んで進めるよりも、土地利用をうまくやって、安く早くできた地域もあった。

これを見て思ったのが、国が主導するのは資金集めだけで十分であり、その執行は地方任せにした方がいいということだ。

筆者は、2011年3月28日付け本コラムで「財務省主導の「復旧」ではダメ!「復興」は新設する「東北州」に任せ、 福島に国会と霞ヶ関を移転せよ 円高に苦しんだ阪神大震災の過ちを繰り返すな」(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/2330)を書いた。

被災した3県(岩手県、宮城県、福島県)が集まれば、「道州制」ができるという道州特区法(道州制特別区域における広域行政の推進に関する法律)を活用して、復興を進めるというアイディアだ。

残念ながら、民主党政権は地方分権の考え方がなく、代わりに中央集権の象徴といえる復興庁が作られた。中央主導の復興が予定通り進んでいないのは、NHKスペシャルを見てもわかる。

また、復興庁のホームページでも確認できる。復興施策の工程表(2015年7月作成)があり、公共インフラのところをみると、①海岸対策、②河川対策、③水道施設、④下水道対策、⑤交通網(道路、鉄道、空港、港湾)、⑥農地・農業用施設、⑦海岸防災林の再生、⑧漁港・漁場・養殖施設・定置網、⑨復興住宅(災害公営住宅等)、⑩復興まちづくり、⑪土砂災害対策、⑫地盤沈下・液状化対策、⑬災害廃棄物の処理、⑭都市公園の各項目について、現状と今後の予定が書かれている。

その中で、「完了」とされているものは少ない。⑤交通網のうち高速道路、仙台空港、八戸港、久慈港、茨城港、鹿島港、木更津港、千葉港、⑩復興まちづくりのうち、医療施設、公立社会教育施設にみられるだけだ。

ほとんどの項目は、2018年度以降に完了とされている。ほぼすべての項目の完了年度が同じであることはかえって不自然であり、あくまで「目標」であることを示唆している。

『報ステ』にはまたガッカリ

最後に、3月11日の『報道ステーション』はまたやらかした。学者のいう「福島の甲状腺がんの発生は、原発事故前の日本全体に比べて事故後は20~50倍」と報じて、「甲状腺がんと原発事故 専門家で割れる関連性」という見出しを付けながらも、甲状腺がんが原発事故で多発したというイメージを植え付けている。

この問題は、かなりはっきりしている。ごくわずか(おそらく1名)の学者が「原発事故で甲状腺がんの発生が多くなった」といっているだけで、その学者の論文には不適切な統計処理があることも指摘されている。

きちんとした取材をしたマスコミであれば、甲状腺がんが福島で多くなっていることについて、原発事故が影響しているという「被曝影響説」をとっている人はほぼ一人で、残りの学者は過剰診断説である、と分かるはずだ。

過剰診断説とは、他の地域では「何か症状が出ている人」が診察を受けて、その結果ガンの割合がでてくるが、福島県の場合すべての人を対象に診察するため、ガンの割合が高めにでる、ということだ。他の地域で、福島県と同様な方法で調査したら、福島県よりも数値が高かったというデータもある。

マスコミは、二つの意見があるときに公平に扱うべきということを逆手にとって、甲状腺ガンについて「被曝影響説」にバイアスをかけている報道している。何が原因かはっきりしないときであれば、こうした両論を平等に扱うのはかまわないが、5年間のデータが蓄積していると、こうした形式的平等主義は妥当とはいえない。

そういえば、増税については、それが経済を痛めつけることになるのはデータから明らかであるが、この点もマスコミには「増税が必要」とのバイアスが残っているためか、増税礼賛記事が多い。勝手な思い込みでの報道は社会に有害である。


【追記】おかげさまで2月に発売された私の本の重版が決まった。この場を借りて御礼申し上げたい。 高橋洋一

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【私の論評】財務省、政治家、メディアの総力を結集した悪辣ショック・ドクトリンに幻惑されるな(゚д゚)!

大震災の復興を増税で賄うなど、まともな国家では絶対にやらない、禁忌ともいうべき政策です。近代以降、震災や自然災害の復興のため、増税した国など、東日本大震災の復興における日本だけです。復興税制はそれほど異常なことです。通常は建設国債などで賄うものです。

これは、いわゆるショック・ドクトリンとも呼ぶべき、とんでもない蛮行としか言いようがありません。

ショック・ドクトリンとは、カナダのジャーナリスト、ナオミ・クラインが2007年に著した書籍です。マイケル・ウィンターボトムによって2009年にドキュメンタリー映画化されました。

ナオミ・クライン
クラインは、2007年9月に The Shock Doctrine: the Rise of Disaster Capitalism ; Metropolitan Books, 2007, ISBN 0805079831 を出版。同書は三十数か国語に翻訳され、日本語版は2011年9月に刊行されました。

彼女は、ケインズ主義に反対して「真の変革は、危機状況によってのみ可能となる」と述べるなど徹底した市場原理主義を主張したシカゴ学派 (経済学) のミルトン・フリードマンを批判、こうした主張を「ショック・ドクトリン」と呼び、現代の最も危険な思想とみなしている。そして、近年の悪名高い人権侵害は、反民主主義的な体制による残虐行為と見るばかりでなく、民衆を震え上がらせて抵抗力を奪うために綿密に計画され、急進的な市場主義改革を強行するために利用されてきた側面に注目すべきと説く。

「ショック・ドクトリン」の最初の応用例は、1973年の軍事クーデターによるアウグスト・ピノチェト政権下のチリであるとしています。シカゴ学派は投資家の利益を代弁、「大きな政府」や「福祉国家」をさかんに攻撃し、国家の役割は警察と契約強制のみであるべきで、他はすべて民営化し市場の決定に委ねよと説いていましたが、そのような政策は有権者の大多数から拒絶され自国で推進することができず、独裁体制下のチリで実行に移されたと述べています。


チリでは無実の一般市民の逮捕・拷問・処刑が相次ぐばかりでなく、「惨事便乗型資本主義」がはびこって、「小さな政府」主義が金科玉条となり、公共部門の民営化、福祉・医療・教育などの社会的支出の削減が断行され、多くの国民が窮地に追い込まれました。

以後、天安門事件(1989年)、ソ連崩壊(1991年)、アメリカ同時多発テロ事件(2001年)、イラク戦争(2003年)、スマトラ島沖地震 (2004年)による津波被害、ハリケーン・カトリーナ(2005年)といった、政変・戦争・災害などの危機的状態を挙げ、「惨事便乗型資本主義」(「惨事活用資本主義」、「災害資本主義」、「火事場泥棒資本主義」)はこれにつけこんで、人々がショック状態や茫然自失状態から自分を取り戻し社会・生活を復興させる前に、過激なまでの市場原理主義を導入し、経済改革や利益追求に猛進してきた、といいます。

ミルトン・フリードマン
この書籍は、当時一世を風靡して、一時日本でも多くの人々がミルトン・フリードマン氏を悪者のように思っていました。この書籍を読んだり、他の書籍などを読んだ結果、私もなんとなくそのような感想を持っていました。

しかしながら、フリードマン氏の考えを、その後きちんと学ぶ機会にめぐまたことがあり、ナオミ・クライン氏のフリードマン氏に対する見方は、極端にすぎることが理解できました。

フリードマン氏に関する、正当な評価を知りたい方は、是非とも以下の動画を御覧ください。ちなみにこの動画のシリーズ、マクロ経済に関して、てつとり早く知りたいと思っている方々にはうってつけです。平易にわかりやすく説明しています。



しかしながら、政変・戦争・災害などの危機的状態を挙げ、「惨事便乗型資本主義」(「惨事活用資本主義」、「災害資本主義」、「火事場泥棒資本主義」)はこれにつけこんで、人々がショック状態や茫然自失状態から自分を取り戻し社会・生活を復興させる前に、過激なまでの市場原理主義を導入し、経済改革や利益追求に猛進してきたという下りは、まさに、東日本大震災につけこんで、復興税制というとんでもない制度を導入してしまったこととダブります。

いかに、日本の増税派の力が強よかったにしても、復興税制などのとんでもない、制度を導入するには、それこそショック・ドクトリンのように、このような災厄がなければ、とてもできなかったことでしょう。本当にとんでもない連中です。

財務省と、その走狗に成り果てた、ブログ冒頭の記事のリストに掲載されている経済学者の連中が、普段ではとても通用しない理論で、政治家、マスコミをたぶらかして、まるで火事場泥棒のように無理やり復興増税制を導入してしまったのです。以下に当時の復興税の内容をまとめたチャートを掲載しておきます。


上の動画をご覧いただければ、よくご理解いただけると思いますが、フリードマン氏は決して悪人ではないですが、この復興税制を導入を推進した、財務省やその走狗の経済学者どもは、はっきりと悪人と言って良いです。これらに、騙された与野党政治家もまともではないですし、マスコミもはっきりいって愚鈍です。

この時に「増税反対に集まった 超党派議員211人」はまともです。そうして、このとき、この増税に反対した211人の中で、自民党で「増税によらない復興財源を求める会」会長をしていたのが、今の安倍首相ということで、やはり、安倍総理は当時からまともだったということです。

財務省やそれらの走狗となった経済学者どもは、増税の理由を社会保障と税の一体改革とか、財政赤字の解消などとしていますが、それは表向きであり、その本当の理由は財務省の省益のためです。まずは、財務省の税金の配賦の権限を強くするためですが、さらになんのためにそれをするかといえば、財務高級官僚のハッピー・リタイヤメント等のためです。

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こんなもののために、復興税制など導入されてはたまったものではありません。こんなことですから、財務省主導による復興などうまく行くはずがありません。国は金の工面をして、復興は地元に任せるのが一番です。無論、資金の遣い方など、監査するのは国が実施すべきかとは思いますが、政府が直接復興を手掛けるとなると、うまくできるはずもありません。

それに、このようなからくりにも気付かず、古今東西に見ない、摩訶不思議、奇妙奇天烈な復興税制を批判することもしないマスコミも、本当に程度が低いというか、愚鈍極まりないです。

こんな復興税制を無理やり導入した、増税勢力はその後も、勢いを増し、どう考えてもデフレから完全に脱却していなかった、平成14年の4月から、8%増税を導入してしまいました。これには、財務省やブログ冒頭のリストに掲載されている経済学者、新聞なども加担して、日本経済に与える影響は軽微であること、増税しなければとてつもない事態に追い込まれるなどの理由を並べ立て、強力な増税キャンペーンを展開しました。

特に2013年の新聞報道には、ひどいものがありました。2013年の9月には、大手新聞がこぞって、安倍首相は増税を決断したと報じました。報道に間違いがなければ、安倍首相は11日から20日にかけて、少なくとも4度(11日、12日、18日、20日)にわたり「決断」を繰り返したことになります。

しかし、総理は、10月1日の発表の前までは、自らの肉声で「決断」の意思を表示したわけではありません。仮に会見等の場で表明していれば「~を表明した」と報じられるし、一部の関係者に伝達していれば「決断したことを~に伝えた」と報じられるのが普通です。しかし、昨年はどのメディアも「表明」「伝達」いずれの事実も報じておらず、「意向を固めた」「決断した」といった表現で報じていました。

 安倍総理は2013年10月1日に8%増税の決断を公表したが、新聞報道が正しいとすれば、安倍総理は
9月11日から20日かけて少なくとも4度にわたり「増税の決断」を繰り返したことになる


それと、テレビも、ブログ冒頭の記事で高橋洋一氏が、「報ステ」を批判しているようにとんでもない報道を繰り返していました。このような報道ぶり、とんでもないことです。このブログでは、以前福島の高校生たちが、独自の調査をして、福島県内の被ばく量は、「国内外と差はない」と結論づけていました。そうして、このレポートが、英学術誌に論文として掲載される運びになったことを掲載しました。

メディアは報道するならこの高校生たちのように感情ではなく、エビデンス(証拠・根拠、証言、形跡)に基づき行えと言いたいです。

マスコミが、まともな報道をせずに、とんでもない報道を繰り返せば、多くの人々が幻惑され、間違った観念を持ったり、間違った道を選択してしまいます。

これらも、今から考えると、これらは、ことごとくショツクドクトリンのようなものと思います。ジャーナリストのナオミ・クラインは、この状況を「ショック・ドクトリン再び」というような書籍にでもまとめると良いと思います。


これは、ジャーナリストとしては、格好の素晴らしい材料だと思います。今度は、ミルトン・フリードマンを悪者にしたてるというようなことはやめ、日本のような国でも、まともな経済理論のまるで反対の復興税制など導入し、その後も8%増税などという愚かな政策が導入されたことを書籍にまとめるべきです。

日本では、TPPをショック・ドクトリンとみなす人もいますが、そんなことはないと思います。私自身は、ショック・ドクトリンのようなことは実際にこの世の中に存在するとは思いますが、ミルトン・フリードマンらを悪者に仕立てるのは間違いだと思います。フリードマン氏の理論は悪者たちに、悪用されたということです。

誰が、悪者かといえば、それは無論、日本の増税勢力のような連中です。震災などを機に、とんでもない経済政策を導入するような連中こそ悪人です。自分たちの考えを通すために、無理やりに様々な経済理論を逆手に利用するような連中こそ大悪人です。


そうして、その書籍には、最近の中国の南シナ海での、暴虐ぶりにより、現状変更を試みる中国に関しても、ショック・ドクトリンとして取り上げるべきと思います。そのほかにも、災厄や戦争などを背景に現状変更を実行したりしようとする、日本の財務省、経済学者、メディアの仲間は世界中に多く存在すると思います。

このような財務省をはじめとする多くの官僚や、政治家、マスコミによる苛烈なショック・ドクトリンに8%増税では負けてしまった安倍総理も、15年秋の10%増税ではさすがに、その手には乗らず、衆院を解散して、10%増税見送りも公約として総選挙に打って出ました。そうして、選挙に大勝利して、増税は見送られました。

そうして、来年4月からの、10%増税に関しては、安倍総理は周到な準備をして、見送りをするようです。それに関しては、このブログにも以前掲載したことがあります。以下の【関連記事】の項目に加えておきますので、まだご存知のない方はぜひご覧になってください。

今後安倍総理は無論のこと、私達も、悪辣ショック・ドクトリンになど幻惑されないように、物事を正しく理解していくべきものと思います。特に、重要なことに関しては、識者、マスコミ、政治家、官僚の語っていることを鵜呑みにせずに、自分の頭で考えて、結論を出すべきものと思います。特に、不安を煽る連中のほとんどは、裏に魂胆があり、それこそ、ショック・ドクトリンのように、恐怖を与えて、自分の思う方向に操作しようとしているかもしれないと疑うべきです。

【関連記事】

安倍首相のブレーン本田参与、6月スイス赴任に高まる“消費増税先送り”―【私の論評】日本の積極財政の夜明けがはじまり、世界経済を牽引することになる(゚д゚)!



被ばく量「国内外で差はない」 福島高生、英学術誌に論文―【私の論評】発言するならこの高校生たちのように感情ではなく、エビデンス(証拠・根拠、証言、形跡)に基づき行え(゚д゚)!




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2016年2月17日水曜日

GDPマイナス成長は暖冬のせいではない―【私の論評】増税派はどこまでも、8%増税が大失敗だったことを認めたくない(゚д゚)!

GDPマイナス成長は暖冬のせいではない

図表、写真はブログ管理人挿入 以下同じ
2月15日に2015年10-12月期のGDP速報値が内閣府から公表された。結果をみると、実質GDP成長率は前の四半期と比べて0.4%減、年あたりの換算で1.4%減となり、2015年4-6月期以来のマイナス成長に沈んだ。もっとも、7-9月期の実質GDP成長率も昨年11月に公表された段階(一次速報値)ではマイナス成長であったから、日本経済は2015年4-6月期以降、ほぼゼロ近傍に近い成長率で推移していることがわかる。政府は2015年度の実質GDP成長率を1.2%と見込んでいるが、見通し通りの成長率の達成はほぼ絶望的な状況だ。これは安倍政権の政策運営にも少なからず影響を及ぼすだろう。

 さて、今回公表されたGDP速報値について、石原経済再生担当大臣は記録的な暖冬により冬物衣料品などが大きく落ち込んだことで個人消費の減少幅が大きくなったことが主因との見方を示したとのことだ。

 GDPは民間最終消費支出、民間住宅、民間企業設備、民間在庫品増加、政府最終消費支出、公的固定資本形成、公的在庫品増加、財・サービスの輸出と輸入という、9つの項目から構成される。個人消費は民間最終消費支出に含まれるが、年率換算で1.4%減となった実質GDP成長率が、どの項目によって生じているのかを確認すると、民間最終消費支出の落ち込みによる影響が最も大きくなっており、石原大臣の指摘する通り、個人消費を含む民間最終消費支出の落ち込みが主因であることが確認できる。

 しかし、個人消費の落ち込みが記録的な暖冬により冬物衣料品などが大きく落ち込んだことが主因であるとはデータからは確認できない。

石原伸晃経済再生担当相の説明は統計と違う
天候不順は言い訳

 今回公表されたGDP統計では、家計消費の推移が自動車や家電製品といった耐久財、衣料品などの半耐久財、食品などの非耐久財、輸送・通信・介護・教育などを含むサービスといった4つの品目群(GDP統計では形態と言う)別にまとめられている。2015年7-9月期と比較しても、1年前の2014年10-12月期と比較しても、家計消費の落ち込みに最も大きく影響しているのは耐久財消費の落ち込みである。石原大臣の述べるとおり、家計消費の落ち込みの主因が冬物衣料品などが大きく落ち込んだことにあるのならば、その影響は半耐久財消費の大幅減という形で現れるはずだが、統計データを参照する限り、そうはなっていない。

 思い起こせば、天候不順が消費低迷の主因であるという指摘は、2014年4月の消費税増税以降繰り返されてきた。確かに天候不順が消費を落ち込ませる可能性はゼロではない。しかし消費意欲が旺盛であれば、多少の天候不順でも、消費の落ち込みがこれほど長くかつ深刻な形で続くことはないだろう。GDP速報値の結果からは、2015年10-12月期の民間最終消費支出の値は304.5兆円だが、これは、消費税増税直後に大幅な落ち込みとなった2014年4-6月期の305.8兆円をも下回っているのである。これほどの大きな変動が天候不順で生じると考えられるのだろうか?

 やや長い目で民間最終消費支出の推移をみれば、2002年から2012年までの10年間の民間最終消費支出は前期比0.2%程度のペースで緩やかに増加していたことがわかる。2013年に入るとこのペースがやや拡大したが、2014年4-6月期以降になると、民間最終消費は落ち込みが続き、2015年10-12月期の民間最終消費支出は、統計的に見て、前期比0.2%増のトレンドから有意に下ぶれしたと結論できる。つまり、統計的に「消費の底割れ」が生じたというのが今回の結果だということだ。

確かに昨年の暮れは気温が高かったが・・・・・・・
こうした「民間最終消費支出の底割れ」の主因は、大幅な落ち込みが始まったのが2014年4月以降であることから考えても消費税増税の影響と言えるだろう。消費税増税は、駆け込み需要とその反動減、さらに消費税増税に伴う物価上昇率の高まりが実質所得を減らすことの二つを通じて経済に影響を及ぼす。

 「消費税増税の影響は一時的であって、増税から1年以上経っても影響があるとは考えられない」と考える読者の方は、(仮に消費税減税といった政策が行われない限り)消費税率8%の負担が永続的にかかり続けるという事実を忘れているのではないか。加えて、わが国の場合、2017年4月から10%への消費税再増税が予定されている。多少所得が増えたとしても、2017年4月に増税が予定されているのだから、家計の財布の紐が緩まないのは当然とも言えるだろう。

消費税「減税」も検討を

 冒頭で今回のGDP速報値の結果は、安倍政権の政策運営にも少なからず影響を及ぼすのではないかと述べた。石原大臣は今年1月に成立した2015年度補正予算を素早く実施していくことが必要と述べているが、経済効果は実際の執行のタイミングを考慮すると2015年度と16年度に分散され、非常に限定的なものに留まるだろう。もう今は2015年度補正予算の早期実行が課題なのではない。さらなる新たな手立てを早急に考え、実行すべき時なのである。つまり民間最終消費支出の悪化を考慮すれば、2016年度予算の早期成立後に即座に2016年度補正予算を編成すべき局面ということだ。

 1月29日に日本銀行が決定した「マイナス金利付き量的・質的金融緩和策」の影響もあって、長期金利はさらなる低水準にとどめ置かれる可能性が濃厚な状況である。これは政府からみれば新規に国債を発行する際のコスト(金利負担)が低下している事を意味する。総需要が落ち込んでいる現状では、政府が短期的には財政政策により需要を支える必要があるし、大胆な財政政策を行ってもそのためのコストは低い。「今」は大胆な財政政策が必須であるし可能な状況なのである。

 世界経済の変調が濃厚となる中で日本経済が堅調な成長軌道に乗っていくには、国内需要を高めることが必須である。財政政策のメニューは様々なものが考えられるが、例えば、民間最終消費の落ち込みに直接影響を及ぼし、かつ分かりやすい政策をというのであれば、2017年4月から予定している消費税増税を凍結し、さらに年限を絞って消費税減税(例えば消費税率を8%から6%にする)といった方策も考えられるし、軽減税率の仕組みを使って食費の消費税率を8%ではなく5%にするといった方法もありえるのではないか。前例がない政策を全て「異次元」だと片付けていては何も進まない。こうした取り組みがいかに多くできうるのかが、今後の日本経済の帰趨を決めることになるだろう。

片岡剛士

三菱UFJリサーチ&コンサルティング、経済・社会政策部主任研究員

【私の論評】増税派はどこまでも、8%増税が大失敗だったことを認めたくない(゚д゚)!

8%増税が、実体経済に悪影響を及ぼしているのは間違いありません。以下に、10〜12月期のGDPの増減率の内訳を掲載します。


こうしてみると、やはり個人消費、住宅投資の落ち込みが大きいです。そうして、個人消費の落ち込みの要因のうちで一番大きいのは、ブログ冒頭の記事で、片岡氏が掲載しているように、耐久消費財の落ち込みです。

民間消費支出をグラフにしたものを以下に掲載します。


民間支出がいかに打撃を受けているのか、良く理解できます。

さらに、以下のグラフをみると、雇用者報酬が伸びて13年度の水準をほぼ取り戻しているにもかかわらず、個人消費がこれに比例して伸びてはいません。


これは、まさにブログ冒頭の記事で片岡氏の "「消費税増税の影響は一時的であって、増税から1年以上経っても影響があるとは考えられない」と考える読者の方は、(仮に消費税減税といった政策が行われない限り)消費税率8%の負担が永続的にかかり続けるという事実を忘れているのではないか。加えて、わが国の場合、2017年4月から10%への消費税再増税が予定されている。多少所得が増えたとしても、2017年4月に増税が予定されているのだから、家計の財布の紐が緩まないのは当然とも言えるだろう"という主張をまさに裏付けています。

要するに、どう考えても、8%増税は大失敗だったのです。しかし、なぜ石原伸晃経済再生担当相が、これを直視せず、"記録的な暖冬により冬物衣料品などが大きく落ち込んだことが主因"とするのはなぜなのでしょうか。

それは、石原氏が増税賛成派であり、8%増税は無論のこと、10%増税もすべきと腹の底から思っているからです。特に8%増税は、熱烈に支持したため、今更8%増税は失敗であったと口が裂けてもいえないからです。

ここで、時計の針を2011年、11月25日に戻します。そのころ、サイトに掲載された、長谷川 幸洋氏の記事のリンクを以下に掲載します。
小沢一郎、石原伸晃らが動き始め、「来年解散・総選挙」が漂いはじめた永田町

まだ、小沢氏が民主党にいたときのことです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事より一部抜粋します。
 また「政局の季節」がめぐってきたようだ。消費税と環太平洋連携協定(TPP)をめぐって民主、自民両党で内部の意見対立が激しくなっている。永田町では「いずれにせよ来年中の解散・総選挙は間違いない」と緊張感が高まってきた。
火を付けたのは小沢一郎元民主党代表だ。 
 11月19日に出演したニコニコ生放送の番組で田原総一朗の質問に答え、消費税引き上げに反対する姿勢を明確にしたうえ、22日の小沢グループ会合では「消費税増税を強行すれば党運営は厳しくなる」と野田佳彦首相に警告した。
 自民党の石原伸晃幹事長も22日の講演で「首相が『民主党を割ってでも消費税を10%にする』と言えば、自民党も割れ、新しい政治体制ができるかもしれない」と政界再編の可能性に言及した。 
「増税法案さえ可決すれば政権はどうなってもいい」 
 民主、自民の大物たちが機を同じくして、消費税引き上げをきっかけにした政変の可能性に言及したのは、けっして偶然ではない。どちらの党も執行部は増税路線を掲げているが、内部に強い反対勢力を抱えている。党内事情がそっくりなのだ。 
 TPPも同じである。野田首相は交渉参加の意思を決めたが、民主党内には依然として強い反対論が残っている。自民党に至っては、過半数の議員が反対と言われているが賛成意見もあり、党としての方針を決められないありさまだ。
 増税やTPPのような重要課題をめぐって、どちらも党内が一致結束していないので、執行部がどちらかの路線で突っ走ろうとすると、ともに党が割れる可能性に直面してしまう。首尾一貫しているのは「霞が関党」とも呼ぶべき官僚集団とそれに鋭く対立するみんなの党(あと共産党?)くらいである。 
 これから年末の予算編成と税制改正を控えて、この意見対立は激化しこそすれ、和らぐ見通しはない。野田政権は社会保障と税の一体改革大綱で引き上げ幅と時期をはっきり書きこもうとしている。 
 財務省とすれば、上げ幅の数字と時期を明示した増税法案さえ可決成立すれば、後は野田政権がどうなろうとかまわない。野田首相が続投できればそれに越したことはないが、仮に総選挙で敗北し民主党が下野する場合でも、次の政権が増税路線を引き継ぐよう水面下の工作に全力を上げていくだろう。いや、もう着手しているだろう。 
 むしろ東京電力・福島第一原発事故の処理やTPP問題での党内分裂ぶりをみれば、民主党が次の解散・総選挙でも勝利し、野田首相が続投できる可能性は低いとみているはずだ。冷徹な財務省がそれほど楽観的になるとは思えない。財務省は実質的に政権を切り盛りしているのはいつだって自分たちなのだから、表で政権を担うのは民主党だろうが自民党だろうがどっちでもいいと思っている。 
石原発言を歓迎する財務省 
 そんな財務省の視点からみると、先の石原発言は歓迎するシナリオである。自民党が増税派と反増税派に分裂し、民主党も総選挙敗北で増税派と反増税派に分裂するなら、両党の増税派を合体させて「増税新党」をつくればいい。あとは残った両党の反増税派が合体して大きな勢力にならないように工作するだけになる。
何としても、増税をしたい財務省から増税発言を歓迎された石原氏ですから、石原氏の腹なの中は8%増税は当然、そうして10%増税もやり遂げなければならない大正義と思いこんでいることでしょう。

なぜ、このようになるかといえば、彼はマクロ経済オンチだからです。周りの人間が、増税すべきとか、増税すべき理由などを言うと、それが正しいものと単純に思い込んでしまうどころか、大増税は日本を救う大正義であると単純に信じ込んでしまっているのだと思います。

上の記事をみていると、小沢氏は増税に反対しており、当時の野田首相に対して、増税をすれば政権運営が難しくなると当時の野田総理大臣に警告しています。

実際、増税一辺倒で走った野田政権は、2012年の衆院総選挙で、大敗を喫し、政権交代を余儀なくされました。

しかし、小沢氏の上の増税反対の発言や、当時のその他の増税反対の発言を聴いていると、小沢氏は、我が国の実体経済の悪化を心配しているというよりは、選挙対策や内閣支持率の観点からそのような発言をしてるようにしか思えませんでした。

経済がどうのというより、国民の反発を招くことを恐れているような話ぶりで、まともに経済のことをわかつて、あのような発言をしているとは思えず、そのせいですか、あまり説得力がないように思えました。

増税に反対していた、小沢氏ですらこのような状況でした。当時は、民主党や自民党の多数派は、増税推進派で、増税反対派は少数でした。

その状況は今も変わっていません。12年の末に衆院選で大勝利して、安倍自民党内閣が成立したわけですが、ご存知のように13年の秋には、与野党の政治家のほとんどや、マスコミもこぞって、増税に大賛成で、特に新聞は安倍総理が増税の決断をしたと何度も報道しました。これは、驚いたことに、産経新聞も含めた全大手新聞社がそのような報道ぶりでした。

あの状況で、安倍総理が8%増税延期の決断をした場合、政治家、マスコミ、識者らのほとんどが増税賛成派であつたため、政権運営に支障をきたしたかもしれません。そのためでしょうか、安倍総理は14年度からの8%増税を決断せざるをえなくなりました。

さて、2013年の9月の主要メディアの報道ぶりををざっと振り返っておきます。実際には、これ以外も、多くの報道がありましたが、代表的なもののみにとどめます。報道に間違いがなければ、安倍首相は2013年の9月11日から20日にかけて、少なくとも4度(11日、12日、18日、20日)にわたり「決断」を繰り返したことになります。
安倍首相は11日、消費税率を来年4月に現行の5%から8%に予定通り引き上げる意向を固めた。出典:読売新聞9月12日付朝刊1面「消費税 来年4月8% 首相、意向固める 経済対策に5兆円」
安倍晋三首相が、来年4月に消費税率を5%から8%へ予定通り引き上げる方針を固めたことが12日分かった。出典:共同通信9月12日「消費増税 来年4月8%に 首相、10月1日表明へ」
安倍晋三首相は12日、現行5%の消費税率を、消費増税関連法に沿って2014年4月に8%に引き上げる意向を固めた。出典:時事通信9月12日「消費税、来年4月に8%=経済対策5兆円で下支え=安倍首相、来月1日にも表明」
安倍晋三首相は、現行5%の消費税率を、来年4月に8%へ予定通り引き上げる方針を固めた。出典:毎日新聞9月12日付夕刊1面「消費増税 来年4月8% 安倍首相『環境整う』判断 経済対策、5兆円規模検討」
安倍晋三首相は18日、現在5%の消費税率について、来年4月に8%に引き上げることを決断した。出典:産経新聞9月19日付朝刊1面「消費税来春8%、首相決断 法人減税の具体策検討指示」
安倍晋三首相は来年4月に消費税率を8%に引き上げる方針を固めた。(…)複数の政府関係者が19日、明らかにした。出典:日本経済新聞9月19日付夕刊1面「消費税来春8% 首相決断 法人減税が決着、復興税廃止前倒し 来月1日表明」
安倍晋三首相は20日、来年4月に消費税率を現在の5%から8%に予定通り引き上げることを決断した。出典:朝日新聞9月21日付朝刊1面「首相、消費税引き上げを決断 来年4月から8%に」 
安倍首相は10月1日の発表の前までは、自らの肉声で「決断」の意思を表示したわけではありません。仮に会見等の場で表明していれば「~を表明した」と報じられるし、一部の関係者に伝達していれば「決断したことを~に伝えた」と報じられるのが普通です。しかし、昨年はどのメディアも「表明」「伝達」いずれの事実も報じておらず、「意向を固めた」「決断した」といった表現で報じていました。本当に、これらは近年まれに見る大手新聞の異常報道でした。ここまでの規模になると、もう財務省が裏で暗躍していたのは、間違いないです。
安倍総理が増税の決断をしたことを報道する読売新聞
そうして、14年に実際に増税が実施されると、多くの識者が8%増税の影響は軽微としたにもかかわらず、マイナス成長は明らかとなり、12月には、ご存知のように10%増税の延期を公約の一つとして、安倍総理は衆院の解散総選挙を実施し、大勝利して、10%増税の延期が決まりました。

しかし、2011年ころから、自民党も民主党も増税推進派が圧倒的多数派です。これら増税推進派はもとより、新聞も、識者も8%増税を推進したきたため、今更これは間違いでしたとはなかなか言えません。

自民党の大多数は、本当は一昨年の暮れの10%増税の延期を公約とした、衆院解散総選挙にも反対だったと思います。しかし、当時は、安倍自民党は、選挙に何度も勝利して、内閣支持率もかなり高い状況であったため、あからさまに安倍総理に異議を唱えるわけにもいかず、面従腹背をしただけです。

実際、2月15日に2015年10-12月期のGDP速報値の発表があっても、各新聞もその事実は淡々と報道しますが、8%増税が大失敗であったことなど報道しません。

経済学者、特に日本で主流派といわれる経済学者らも、大失敗などとは論評しません。無論政治家もそのようなことはいいません。

しかし、統計数値や、ブログ冒頭の記事などから、8%増税は大失敗であることは明らかですし、10%増税などしてしまえば、実体経済、特に個人消費がとんでもなく落ち込むことは目に見えています。

もし実行してしまえば、平成18年あたりには、時の政権が誰のどの政党のものであれ、増税一辺倒だった2012年の野田政権のように、崩壊するのは目に見えています。

そんなことにならないためにも、安倍政権は今年夏の参院選については、できれば衆院も解散して、衆参同時選挙にして、10%増税延期もしくは恒久的中止、あるいはインフレ傾向がひどくなる前までは、実施しないことを公約に掲げ、大勝利していただきたいものです。

おそらく、増税派が圧倒的多数である、現状を考えると、これが増税阻止の唯一の、隘路であると思われます。安倍政権には、この隘路を何とか突破していただきたいものです。


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