2020年12月11日金曜日

【米大統領選】米ミズーリなど17州が大統領選めぐる提訴に合流―【私の論評】米民主党、マスメディア、SNSへの痛撃というトランプ大統領の目論見が、結局実現する(゚д゚)!

 【米大統領選】米ミズーリなど17州が大統領選めぐる提訴に合流

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米中西部ミズーリなど17州の共和党当局者は9日、大統領選をめぐり南部テキサス州の司法長官が8日に南部ジョージア、中西部ミシガンとウィスコンシン、東部ペンシルベニアの計4州の選挙結果の無効を求めて連邦最高裁に提訴したことに関し、訴訟に合流したと発表した。トランプ大統領も訴訟に参加するとしている。


 訴訟は、4州が新型コロナウイルス危機を受けて郵便投票を大幅に導入したのは違法だと主張し、最高裁に対して4州で大統領選挙人の選任を即時に差し止めるよう求めている。

 ただ、各州の選挙結果の確定期限となる8日が過ぎたことから訴えが通る可能性は非常に低いとみられ、トランプ氏の法廷闘争は「幕切れを迎えた」(米紙ウォールストリート・ジャーナル)との見方が支配的となっている。

 一方、米動画サイトのユーチューブは9日、米大統領選の一般投票の結果が8日に確定したのを受け、「選挙に大規模な不正があったせいで選挙結果が逆転した」などと主張する動画を削除する方針を発表した。

 削除されるのは9日以降にアップロードされた動画で、例えば「特定の大統領候補が広範囲にわたるソフトウエアの不具合や集計の間違いで勝利した」といった、事実と異なる主張が含まれる場合に削除対象になるとしている。

 ユーチューブは、集計結果が確定するまでは、民主党のバイデン前副大統領が当選を確実にしたことに疑義を呈する動画の投稿を容認してきたが、今後は「米選挙の完全性」を支持する立場から虚偽情報や誤解を引き起こす情報を排除していくとした。

【私の論評】米民主党、マスメディア、SNSへの痛撃というトランプ大統領の目論見が、結局成就する(゚д゚)!

アメリカ大統領選挙をめぐっては、上の記事にもあるように、大統領に近いテキサス州の司法長官が今週、連邦最高裁判所に訴えを起こしています。

このなかでは、激戦となった東部ペンシルベニア州や中西部ミシガン州など4つの州について、選挙制度が法に反して変更されたと主張し、選挙結果に基づいた選挙人による投票をさせないよう求めています。

この裁判をめぐって10日、共和党の下院議員106人が文書に署名して支持を表明しました。

米国大統領選挙は来週14日に全米50州と首都ワシントンに割りふられた選挙人による投票が行われ、この結果を受けてバイデン次期大統領の勝利が確定することになりますが、裁判はこの投票を遅らせるねらいがあると見られています。

トランプ大統領は、この裁判への参加を裁判所に求めていて、「これは大きなことだ」とツイッターに投稿するなど、法廷闘争での巻き返しにつなげたい考えですが、米国のメディアは訴えが認められる可能性は低いと伝えているものの、前代未聞の訴えですから、誰もこうした裁判について熟知するものは存在しません。

さらに、トランプ大統領の反撃が他にもある可能性があり、トランプの再選は今の段階で完璧に否定できるる状態ではないと思います。それとごろか、以前もこのブログに掲載したように、トランプもバイデンも大統領にはならないというシナリオすらあり得ます。

他のトランプ大統領の反撃としては、元陸軍中将でトランプ政権の元国家安全保障顧問のマイケル・フリン将軍の陳情書の内容を進め、トランプ大統領が臨時戒厳令を宣言し、2020年の大統領選の全国再選挙を軍に監督させるよう呼びかけています。

マイケル・フリン氏

この請願書は、オハイオ州に拠点を置く非営利団体「We The People Convention」が12月1日(火)に発表したものでした。請願書の中で、議員、裁判所、国会が憲法を守らない場合、戒厳法を発布して、新たな選挙を行い、私たちの票を守ることで、内戦の勃発を防ぐよう大統領に呼掛けたものです。

請願書には、歴史的にエイブラハム・リンカーン大統領は、南北戦争の間、米国を救うために非凡な行政行動を取ったことがあり、国会と裁判所が憲法第12条修正案を遵守できるかどうか、選挙を守れるかどうかの疑惑から、「私たちは、トランプ大統領がリンカーン氏のように特別な権限を行使し、限定的な戒厳令による憲法の一時停止を宣言することを呼掛ける。軍事統制により、国民の本当の意志を反映した全国投票を行う。投票は連邦候補者のみに限定されるものとする。選挙は紙の投票用紙を採用し、コンピュータを使用せず、両党が直接投票を見て、登録された有権者のみが投票し、投票者に対して有権者の身分検査を行うものとする」と書かれています。

「神様の前以外では、自由は決して膝を曲げることはない」とフリン将軍はツイートで書いている。

ただ、この内容自体は、実際には実行されないような気がしていますが、このような誰もが思いつかなかったような手段が講じられることもあり得ると思います。

ドナルド・トランプ米大統領の顧問弁護士のルディ・ジュリアーニ氏は、1994年1月1日から2001年12月31日まで107代目ニューヨーク市長を務め、マフィア等の脅しに屈することなく、凶悪犯罪の撲滅及び市の治安改善に大きな成果を挙げました。

ルディー・ジュリアーニ氏

このような人物がさしたる証拠もなく、「不正選挙」の裁判に加勢するとは考えにくいです。

シドニー・パウエル弁護士は今回の大統領選挙で大規模な不正があったとして、訴訟の準備を進めた人物です。また、先日軍事弁護士として登録をしたことで、被告を国家反逆罪で訴えることが可能になったとの情報もある。 同弁護士は不正に関わった人物は民主党、共和党にかかわらず処罰するという姿勢でその言動が注目されていますが、彼女は「私の真意は共和党であれ民主党であれ全ての不正行為を暴露する事。偉大な米国が内外の共産主義者に盗まれるのは許さない」と語っています。

シドニー・パウエル氏

これら両弁護士は、いくつかの隠し玉を持っている可能性は大きいです。これらが、表に出れは、当然のことながら、また一波乱、二波乱が起きそうです。

ただ現時点ではっきりしていることがあります。それは、バイデンが仮に大統領になったとしても、当初からほとんど死に体でスタートすることになることです。

トランプ陣営の「不正の疑いが濃厚なのに、きちんと調査をせずに選挙結果を承認すると罪に問われる」という戦術も有効です。それに、1000件におよぶ宣誓供述調書を、司法や州議会は無視できないはずです。

「(バイデン氏の息子である)ハンター氏の疑惑を知っていればバイデン氏に投票しなかった」という民主党党員支持派もかなり存在します。法廷、州議会戦術の可否に関わらず、民主党幹部は党員や支持者に対する「説明責任」を果たさなければならないです。これをおろそかにすれば、民主党は内部分裂の憂き目をみるかもしれません。

トランプ氏の法廷闘争は、民主党がこれまでスルーしてきた疑惑を明らかにしていくという意味合いもあるのです。こままだと、大統領選挙に仮に敗北しても、民主党、マスメディア、SNS痛撃という結果となりトランプ大統領の目論見が、結局実現する可能性はかなり高いと思います。

バイデン大統領の登場が濃厚になった一時米民主党、マスメディア、SNSはぬか喜びしたかもしれませんが、これが彼らの凋落が始まる一歩となるでしょう。

このドランプ氏の戦いは、きっと後世の歴史にも残ると思います。そうして、このときが米国史の転換点であったことが知られるようになることと思います。米国では、マスコミ等で報道されることはないでしょうが、多くの人が認識していることでしょう。それは、共和党員やその支持者だけではなく、民主党員やその支持者の中にも大勢存在するでしょう。

日本では、残念ながら、現状でこれを認識する人はほんの一握りであり、この出来事が終わってから20年、30年たって、一部の人が認識するにとどまるでしよう。

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2020年12月10日木曜日

こんなに危うい中国の前のめり「ワクチン外交」―【私の論評】対コロナの国家戦略の中で、ワクチンの価値を見定めなければ、備えの欠如に右往左往する愚が繰りされる(゚д゚)!

 こんなに危うい中国の前のめり「ワクチン外交」

衛生領域のシルクロードで新たな世界秩序構築を目論む中国


写真はイメージです


(福島 香織:ジャーナリスト)

 新型コロナウイルスワクチンの接種が英国でいよいよ始まった。米ファイザーと独ビオンテックの開発したワクチンで、最初の接種者は90歳の女性だった。アメリカでも年内に接種が開始される見通しだという。ロシアでも「スプートニクV」の大規模接種が始まっており、中国シノバック・バイオテック製ワクチンもインドネシアでの大規模接種にむけて第1便の120万回分が到着したことが報じられている。

 ワクチン接種が始まったことは、コロナ禍にあえぐ各国にとってとりあえず朗報ではあるが、やはり気になるのは、世界のコロナワクチン市場をどこの国が制するか、ということだろう。なぜならコロナをワクチンによって制した国が、ポストコロナの国際社会のルールメーカーになる可能性があるとみられているからだ。

 気になるのは、やはり中国だ。中国のシノファーム傘下のシノバック・バイオテックなどが開発する不活化ワクチンは、マイナス70度以下という厳しい温度管理が必要なファイザー製などと違い、2〜8度の温度での輸送が可能なため通常のコールドサプライチェーンを利用でき、途上国でも取り扱いやすい。しかも年内に6億回分のワクチンを承認する予定であり、その流通性と量産で世界の途上国市場を圧倒しそうな勢いだ。

 だが世界は、本当に中国製ワクチンに依存してよいのだろうか。

年内に6億回分のワクチンを市場に供給

 中国の王毅外相は、習近平国家主席の名代として出席した12月3日の新型コロナ対応の特別国連総会の場で、「中国が新型コロナワクチンを積極的に途上国に提供し、主要な大国としての影響力を発揮する」と強調した。中国は年内に6億回分の新型コロナワクチンを市場に供給することを12月4日に当局者が明らかにしている。要は、中国のワクチン外交宣言である。

 中国の孫春蘭副首相は12月2日に北京の新型コロナウイルスワクチン研究開発生準備工作の会合の場で、今年(2020年)中に空港や港湾の職員および第一線の監督管理人員などハイリスクに分類される職業から緊急使用を認めていく、としている。軍や医療関係者にはすでに投与が始まっている。

 中国工程院の王軍志院士によれば「中国の不活化ワクチンの主な特性は天然ウイルスの構造と最も近く、注射後の人体の免疫反応が比較的強く、安全性もコントロール可能」という。ファイザーやモデルナのワクチンはマイナス70度やマイナス20度といった非常に低温での厳密な温度管理が必要だが、中国の不活化ワクチンは2〜8度での輸送が可能で、通常のクール便で問題ないほど手軽だ、と主張していた。

 米ニューズウィーク誌サイト(12月4日付)によれば、トルコは12月後半から中国製ワクチンの接種を開始する予定である。一部南米国家でも数カ月内に中国製ワクチンの接種を開始するという。また、モロッコでは年内に国内8割の成人に中国製ワクチンを投与する準備を進めている。

 さらにアラブ首長国連邦も12月9日に、正式にシノバックの不活化ワクチンを導入することを表明。同国ではシノバック・ワクチンの第3期治験を実施していたが、その結果として86%の有効性が確認されたという。明らかな副作用もなく安全性も保障された、とした。すでに閣僚たちはこのワクチンの接種を受けている。

中国製ワクチンの効果に疑問符も

 一方で、中国製ワクチンに対して、中国人自身が根深い不信感を抱いていることも確かだ。たとえばウガンダの中国大使館によれば、現地のインド企業が請け負っている建設プロジェクトに従事している中国従業員47人が新型コロナ肺炎検査で陽性を示していた。このうち一部の患者は発熱、咳、倦怠感、下痢などの症状が出ている。台湾紙自由時報によれば、この47人はすでに中国製ワクチンを接種していたはずだという。だとするとワクチンの効果はなかった、ということになる。

 中国の公式報道によれば、シノバックのワクチンは、海外に出国した中国人労働者に6月から優先的に投与されていた。特に中央機関直属の労務従事者およそ5.6万人には接種済みと発表されている。ウガンダのプロジェクトの従業員も当然接種済のはずだという。中国側はこの点について正式に確認はしていない。

 また10月にブラジルで行われていたシノバック製ワクチンの治験が、治験者の深刻な不良反応を引き起こし死亡したという理由で一時中断されたこともあった。中国側は、この不良反応とワクチンの安全性は無関係であると主張しており、ブラジルの治験中断は多分に政治的判断である、としている。

 医学誌「ランセット」に寄稿された治験結果によれば、シノバックのワクチンは1回目の接種から28日以内に新型コロナウイルスへの抗体を作り出したが、その抗体レベルは新型コロナに感染したことがある人より低い、とあり、レベルが不十分ではないか、という見方もある。

ワクチンメーカー康泰生物のスキャンダル

 中国のワクチンに対するネガティブなイメージは、中国の製薬業界の伝統的な不透明さのせいもある。たとえば深センの大手ワクチンメーカー、康泰生物の会長、杜偉民にまつわるスキャンダルである。

 ニューヨーク・タイムズ(12月7日付)が改めて特集していた。康泰生物は自社独自で新型コロナワクチン開発を行うと同時に、英アストラゼネカ開発の新型コロナワクチン2億回分の中国国内製造を請け負うことになっている。

 だが、康泰生物と杜偉民はかねてからワクチン利権の中心としてスキャンダルにまみれ、2013年に、康泰製のB型肝炎ワクチン接種後に17人の乳幼児が死んだ事件も引き起こしている。ワクチンと乳幼児の死の因果関係は科学的に証明されていないが、それは父母ら批判的言論を行う人々に当局が圧力をかけて世論をコントロールしたからだとみられており、中国社会における杜偉民とワクチンメーカーに対する不信感はずっとくすぶり続けている。

 ちなみに杜偉民が関わったワクチンによる健康被害事件は2010年にも起きている。狂犬病ワクチン18万人分について効果がないことが監督管理機関の調べで分かり、大きく告知されたのだが、このワクチンを生産した当時の製薬企業は杜偉民の所有企業だった。杜偉民はこのスキャンダルから逃げるために、問題の製薬企業株を別の製薬企業に譲渡した、という。

 また同じ年に、康泰製のB型肝炎ワクチンを接種した広東省の小学生数十人が嘔吐、頭痛などを訴える事件もあった。当局はこれを「集団性心因反応」とし、ワクチンの品質が原因だとはしなかった。だがその3年後に康泰製B型肝炎ワクチンを接種した乳幼児の集団死亡事件があり、庶民の心象としてはワクチンの品質が怪しい、とみている。だが、当局も報道も、ワクチンに問題があったとはせず、ワクチンに問題があるとして訴え続けた保護者や記者、学者らは、「挑発罪」「秩序擾乱罪」などの容疑で逮捕されたりデマ拡散や名誉棄損などで逆に訴えられたりして、沈黙させられた。

 杜偉民は2016年に自社のワクチンの承認を早期に得るために関連部門の官僚に賄賂を贈り、その官僚は収賄罪で有罪判決を受けた。しかし、杜偉民自身は起訴されていない。ニューヨーク・タイムズもその真の理由については触れていないが、杜偉民が特別な背景を持つ人物であるとみられている。ちなみに出身は江西省の貧農の出で、苦学して衛生専門学校で学び、地元衛生官僚になったあと、改革開放の波に乗って「下海(官僚をやめて起業)」し、中国ワクチン業界のドンとなっていたことは、メディアなどでも報じられている。

 これだけスキャンダルにまみれているにもかかわらず、康泰生物は、ビル・ゲイツ財団の元中国担当責任者の葉雷氏から「中国最先端のワクチン企業の1つ」と絶賛され、新型コロナワクチンでも不活化ワクチンを開発、9月には臨床に入っている。同時に、英アストラゼネカ製ワクチンの生産も請け負うことになり、深セン市政府から2万平方メートルの土地を譲渡され、新型コロナワクチン用の新しい生産工場を建設している。

中国のワクチン外交に対抗せよ

 こうした問題を、中国の製薬会社の地元政府との癒着体質、という一言で受け流していいのだろうか。中国製ワクチンが中国国内で使われるだけであれば、それは中国の内政問題だが、新型コロナワクチンは世界中で使用される。しかも、世界のワクチン市場をどこの国のワクチンが制するかによって、国際社会の枠組みも影響を受けることになる。

 南ドイツ新聞は「中国のワクチン外交」というタイトルで次のような論評を掲載している。

 「中国は各国にマスク外交を展開し、ウイルスの起源(が中国だという)議論を封じ込めようとした。現在はワクチン外交を展開中で、その目的は単なる象徴的な勝利を獲得することだけではない。今後、何カ月後かに、中国が将来的にどのような世界を想像しているかはっきりと見えてくるだろう。南米とカリブ海諸国はすでに北京から十数億ドルの借金をして中国のワクチンを購入することにしている。メキシコも3500回分のワクチン代金を支払い、ブラジル衛生相はあちこちに頭を下げまわって中国のワクチンに対する不信を打ち消そうとしている。すでに多くのアジア諸国が北京からワクチンを購入したいという意向を伝え、少なくとも16カ国が中国ワクチンの臨床試験計画に参加している。ワクチン戦略は中国指導者に言わせれば衛生領域の“シルクロード”だ」

 つまり、中国が目論んでいるのは衛生版シルクロード構想、ワクチン一帯一路戦略である。中国に従順な国には優先的にワクチンを供与し、中国がゲームのルールを作る。WHOが中国に従順になってしまったように、中国からワクチンを与えらえた国々が皆、中国に従順になってしまう、という予測があると南ドイツ新聞は論じる。

 民主主義国が、こうした中国のワクチン外交に対抗するために、合理的な価格で途上国でも扱いやすいワクチンを開発できなければ、結局世界の大半は中国ワクチンの生産量に高度に依存する羽目になってしまう。こうして中国は新たな政治秩序を打ち立てようと考えているのだ、という。

 こんな状況を考えると、ワクチン実用化をただ、ただ喜ぶわけにはいかないだろう。日本は来年の東京五輪を実現するためになんとしてもワクチンを確保したいと考えているところだろうが、ここで中国製ワクチンに頼ろうとすることだけは避けてほしいと思う。

 それよりも、日本は少し遅れてでも、やはり自前のワクチン開発を成功させなければならない。それは自国民の健康と安全のためだけでなく、ポストコロナの世界秩序にも影響するのだという意識も必要だ。

【私の論評】対コロナの国家戦略の中で、ワクチンの価値を見定めなければ、備えの欠如に右往左往する愚が繰りされる(゚д゚)!

フィリピンのドゥテルテ大統領は12月3日、米ニューヨークで開催された国連の新型コロナウイルス対策を協議する首脳級特別会合で、各国代表に対して「新型コロナウイルスのワクチンは国際社会が平等にそのアクセスを保証されるべきである」と主張して、途上国や貧困国などがそれを理由にワクチンへのアクセスで不利になるようなことがあってはならないと訴えました。

ドゥテルテ大統領がこうした姿勢を示した背景には、中国が積極的に進める「ワクチン外交」を表向きは歓迎しつつも、2つの理由で中国に対する警戒心が内面には存在すると指摘されています。 

ドゥテルテ フィリピン大統領

まず、インドネシアなどでも同様ですが、中国製ワクチンの安全性に関する警戒感です。欧米の製薬会社と競うようにして早期開発、早期投与を目指す中国の製薬会社によるワクチンですが、フィリピン国民の間では、その安全性についての懸念が依然として強いのです。 

もう一つは、ワクチン外交の展開に関連して、医療保険分野以外での中国の攻勢が今後強まることへの猜疑心です。 

フィリピンは中国との間で南シナ海の領有権争いを抱えているほか、米軍がフィリピンで軍事演習をする際の「訪問米軍に関する地位協定(VFA)」の破棄問題、フィリピン南部を中心にした「テロとの戦い」、さらにフランス製が有力とされるフィリピン初の潜水艦導入問題などを抱え、安全保障の面で大きな転換期を迎えています。

その一方で中国からの多額の経済支援への依存という現実もあり、あらゆる問題で中国による影響を考慮せざるをえない状況にあります。

世界で突出してワクチンの生産能力を拡大している中国ですが、その需要は生産能力をはるかに上回る規模に膨らんでいます。世界経済フォーラムが8月下旬に行った全世界27カ国の成人約2万人を対象にしたアンケート調査の結果によれば、74%が「新型コロナウイルスのワクチンができれば接種する意向がある」と回答しましたが、中では97%と最も高くなりました。

さらに中国は多くの国にワクチンを優先提供するとしており、その数を概算してみると、20億人分に達します(8月27日付中央日報)。これに中国の人口14億人を加えると34億人となり、世界の人口77億人の約半分に中国がワクチンを提供する計算になります。

最近では、新型コロナワクチンは2回の接種が必要であることがわかってきたことも頭が痛い(8月31日付CNN)。34億人が2回接種することになれば68億回分が必要となりますが、中国の開発企業の供給量(6億回分)はその10分の1に過ぎません。

量的な制約に加えて、質的な問題を抱えていることも懸念されます。

中国の開発企業のうち、カンシノ・バイオロジクスのワクチン候補「Ad5-nCOV」は、ベクター(遺伝子の運び手)に遺伝子組み換え操作で無害化したアデノウイルス5型(Ad5)を利用しています。

アデノウイルスは風邪を引き起こすウイルスの一種です。新型コロナウイルスが持つ遺伝子をAd5に乗せて体内に運び込み、実際にコロナウイルスに攻撃されたときに免疫反応を起こさせることができるようにしておくとう仕組みです。カンシノ・バイオロジクスは、エボラ出血熱用のAd5由来のワクチンを開発した経験を新型コロナワクチンの開発に応用しています。

ところが多くの人が既に抗体を持つ風邪のウイルスを利用して開発されているため、その効果を不安視する声が高まっています。専門家によれば、中国や米国では約40%の人々が既にAd5の抗体を持っており、アフリカでは80%に上ると言われています(9月1日付ロイター)。

Ad5に対する抗体があると、免疫システムは新型コロナウイルスではなく、ベクター(Ad5)を攻撃する恐れがあり、ワクチンの効果が低下します。

一部の科学者は、Ad5由来のワクチンがヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染リスクを高めることにも警戒感を示しています。米メルクが2004年に行ったHIV向けのAd5由来のワクチンの臨床試験では、Ad5の抗体を持つ人のHIVの感染率が高まることがわかっているからです(8月31日付ロイター)。

ジョンズ・ホプキンズ大学のワクチンの研究員は「Ad5基盤のワクチンは、多くの人々が免疫力をもっているため憂慮される。効果が70%どころか40%程度かもしれない。これは、受けないよりはましだということになるが、これでは彼らの戦略が何のためのものなのかわからない」と語りました。 Ad5基盤のワクチン開発に参加したカナダのマックマスター大学の博士は「Ad5基盤のワクチンは、高熱を誘発する可能性がある」と指摘しました。

中国メデイアは9月1日、中国製のワクチンは使用後に重症化の可能性があると報じました。その原因はADE(抗体依存性感染増強現象)です。ADEとは本来ウイルスから体を守るはずの抗体が逆に細胞への感染を促進する現象のことです。中国では2万人以上が臨床試験に参加しましたが、多くの人が接種後に深刻な副作用に苦しみ、北京の病院で治療を受けているとの情報があります。


ADEの詳細なメカニズムについては明らかになっていないことも多いです。ただこれまでに、複数のウイルス感染症でADEに関連する報告が上がっています。例えば、コロナウイルスが原因となる重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)に対するワクチンの研究では、フェレットなどの哺乳類にワクチンを投与した後、ウイルスに感染させると症状が重症化したとの報告があり、ADEが原因と考えられています。

いずれにせよ、ワクチン製造の中国企業が全てのデータを公開し、競合各社の評価を受けることが一段と重要になっています。世界が中国製ワクチンを信頼するようになるとすれば、情報には透明性がなければならないはずです。しかし、それはワクチン外交で勝利を収めようともそのような情報が公開されない限り、我が国では使用すべきではありません。

このように、安全性・有効性などに問題を抱えたまま「ワクチン外交」を強引に展開すれば、中国は世界から猛反発を受け、ますます孤立してしまうのではないでしょうか。

日本がワクチン開発で出遅れた理由についてこの20年間を振り返れば、新型コロナを含め繰り返し新興・再興感染症が起きているのに警戒感は維持されなかったことです。「日本はなんとかなるだろう」と考えていたからです。しかし、今回の反省があって変わらなかったら、よほど鈍感ということになるかもしれません。

鈍感だったのは誰なのでしょうか。09年に新型インフルエンザが流行した際、麻生太郎政権は海外から大量のワクチン輸入を進めました。後に余ると、同年8月の総選挙で野党に転じていた自民党議員がこれを批判しました。

翌年6月、専門家による新型インフルエンザ対策総括会議は「ワクチン製造業者を支援し(略)生産体制を強化すべき」と結論付けました。インフルエンザワクチンの集団接種がなくなった80年代以降、接種率が低下し、国内の生産力は衰えていたからです。

縮小市場に対し、政府の資金的支援が必要だってにもかかわらず、実際に行われたことは逆でした。日本にも国立研究機関における基礎研究と民間企業の開発研究を資金的に橋渡しする厚生労働省外郭の財団はありました。しかし民主党政権の事業仕分けでやり玉に挙がってしまったのです。米国のような研究開発のサポートの仕組みはその後も不十分です。

この事業仕分けは、背後で財務省が民主党を操っていたといわれています。再政権交代後自民党政権になってもこの姿勢は変わらず、財務省は緊縮財政の名のもとで、ワクチンのような戦略物資への投資も緊縮してしまったのです。

備えへの投資については、自民党も民主党も真剣さを欠いていました。将来を見据えるどころか、その場しのぎのパフォーマンスをしていたのです。

こうした財務省に反発した安倍首相は二度にわたって、消費税増税を二度にわたって延期しましたが、財務省の力は強く、結局安倍総理は2度にわたって増税をしてしまいました。

それにしても、09年にも20年にも、同盟国が戦略物資として融通してくれる、という甘えはなかったでしょうか。平時ならともかく、有事に自国優先主義が跋扈するのは当然ですし、それどころか、中国は自らの覇権を強化するために、ワクチンを使おうとしています。

こんな姿勢で、さらなる有事が発生したときに本当に国民を守れるのでしょうか。

幸い、安倍政権の末期の第二次補正予算作成時には、政府と日銀の連合軍で、政府が国債を発行し、日銀がそれを買い取るという仕組みで、政府が大量の資金を調達しました。そのため、コロナ対策としては、十分な対策ができるはずでした。

ところが、第二次補正予算の予備費は10兆円あったにもかかわらず、未だ7兆円が手つかずになっているという有様です。この7兆円は、医療従事者への手当や、コロナ専門病院設立のためにも使われるはずでした。しかし、現実にはそうではなかったので、今日「医療崩壊」の危機が囁かれているのです。私は、これには当然のことながら、財務省から厚生省などへの圧力があったものと睨んでいます。

太田充 財務事務次官

本来、平時と有事は分けて考えられるべきです。有事には、有事対応ができるように、憲法に緊急事態条項を加えるべきであり、法体系も有事があったときの対応を含むものにすべきです。さらに、平時から有事に備えることも含めるべきです。そうでないと同じことが繰り返されることになります。

ただし、国産ワクチンも遅いと言われてきましたが、早ければ年内には臨床試験に入ります。確率された技術を使った開発のため、従来でいえばワープ・スピードに近い速さで、安全なワクチンができることになりそうです。

国産ワクチンで先行するのは、大阪大発の創薬ベンチャー、アンジェスです。ウイルスのDNAの一部を複製したワクチンの治験を6月に開始し、11月に第2段階に進みました。当初は来年春の承認を目指していたのですが、数万人規模の治験を検討する必要があり、時期はまだ見通せない状況です。 

塩野義製薬は、抗原たんぱく質を遺伝子組み換え技術で作ったワクチンを開発。年内の治験開始を目指しており、来年には国内外で大規模治験を実施する予定です。生産設備への投資も進め、年間3000万本を供給できる体制をつくります。

明治ホールディングス傘下のKMバイオロジクス(熊本市)と第一三共の2社は来年3月に、医薬品開発支援のアイロムグループ子会社のIDファーマ(東京)は3~5月に治験に入る予定です。 

海外では「安全保障の観点から平時でもワクチン技術の蓄積が進んでいた」(製薬大手)ことから、開発が国内勢に大きく先行している。ただ、継続的な接種には国産ワクチンが欠かせない。「技術を蓄積しておけば、次のコロナのときにすぐにワクチンを作れる」(KMバイオ)面もあり、国内開発に期待が寄せられています。

このような体制をつくるためにも、菅政権には安倍政権に引き続き、財務省と対峙し勝利していただきたいものです。これに勝利すれば、日本はワクチンだけではなく、様々な面で大変革され、経済も発展します。

ワクチンを避ける人も出るなかで、ウイルスの根絶は不可能です。それでも対コロナの国家戦略の中で、ワクチンという物資の価値を見定めなければ、備えの欠如に右往左往する愚が繰り返されることになります。

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2020年12月9日水曜日

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 コロナ予算まだ足りない!! 「菅カラー」の経済対策で大規模支出も国民が直接潤う施策必要

菅首相は新たな経済対策を打ち出したが・・・・・

 菅義偉政権初となる事業規模総額73兆6000億円の追加経済対策を決定した。国が低金利で貸し出す財政投融資などを含めた財政支出は合計で40兆円程度で、国の歳出「真水」は20兆円弱とみられる。当初の見通しよりは大規模な支出規模となったが、コロナ対策を含めてもっと上積みが必要だ。

 財政支出の内訳は、新型コロナ感染防止に5兆9000億円。病床確保支援のため「緊急包括支援交付金」を増額するほか、営業時間短縮に応じた飲食店などに支払う協力金の原資となる総額3兆円の自治体向け臨時交付金を1兆5000億円上積みする。全国知事会が要望していた1兆2000億円を上回る規模となった。

 産業の支援が急務のなか、「Go To トラベル」事業は制度を段階的に見直しつつ来年6月末をめどに延長。休業手当の一部を国が補填(ほてん)する雇用調整助成金の特例措置は、現行水準のまま来年2月まで延ばす。

 防災や減災など国土強靱(きょうじん)化にも5兆6000億円が支出されるが、デジタル化の推進や脱炭素化といった「菅カラー」の施策が大きな規模を占めているのも特徴だ。

 当初は「真水」が10兆円未満にとどまるとの見方だったのに比べると規模は大きくなったが、コロナ禍で給料が減り、個人の消費も冷え込むなか、追加の定額給付金や消費税の減税など、国民の懐を直接潤う財政措置が必要だとの声は根強い。

 4月と5月にそれぞれ事業規模約117兆円の経済対策を決定したのに続く今回の第3弾。11月の景気ウオッチャー調査で、街角の景気実感を示す現状判断指数(季節調整値)が前月比8・9ポイント下落の45・6と、7カ月ぶりに悪化している。これで打ち止めであってはならない。

【私の論評】平時ではない現在、予備費ケチるな、医療関係者に慰労金を何度も支給せよ、減税も実行せよ(゚д゚)!

上の記事にもあるように、政府は12月8日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた追加の経済対策を閣議決定しました。財政支出は40兆円、事業規模は73兆6000億円となっています。

これに対して、見出しを73兆とするか、40兆とするか、国の歳出30兆とするかで、大手各紙の一面が分かれています。

朝日新聞電子版の見出し

これに関しては、当然のことながら、財政支出の数字を見るべきです。なぜかといえば、これが経済に直接効く部分だからです。それと、予備費を見れば、具体的にどの程度の規模なのかを推定できます。事業費はマスコミ向けの大きな数字の見出しと言っても良いでしょう。

財務省としては、少な過ぎて「どうしようもない」と言われたら困るでしょうが、大きいと言われる分には、「何が悪い」ということにできます。そうして、大きな数字を出しておいたうえば、財財政規律がどうこうと言い出すというのがいつものパターンです。

実際、大手新聞でも財政規律の記事が出ていました。財務省の人が「歯止めが効かなくなる」ということばかり言いますが、現状では何の問題もありません。政府が財源にするために日本銀行が現状ではマイナスかかなり低金利の国債を買うのですから、財政負担はないのです。財務省が財源の大半が国債であることを心配していますが、何を心配しているのか全く理解に苦しみます。

戦後最大の危機でもある現在、政府がかつてない程の大型の追加経済対策を行うのは当然です。今やらないで、いつやるというのでしょうか。現状で、これをやらなければ、未来に禍根を残し、それこそ将来世代に大きなつけ回しをすることになります。

そもそも現状では日本銀行が政府が発効した国債をすべて購入するので利払い負担がありません。しかも、これに対しては最近では多くの政治家も理解したようで、これに対する反論等は、さすがにありません。

こういうときこそ第き歩な財政支出したいのだけれど、「財政規律や将来負担がと言われたらどうしよう」と考える政治家も多いようです。しかし、いまの段階でインフレ目標は達成していないですから、何の問題もありません。どんどんお金を使えば良いのです。

もともと日本はデフレ気味なのですから、インフレ目標を達成するまでは、積極財政や金融緩和をどんどん実行すべきです。

ただ物価がインフレ目標を超えたら控える必要がありますが、デフレ気味の現在、さらにはコロナ禍による経済の落ち込みによりしばらくは、インフレ率が下がります。インフレ目標を達成するまでの間にはこれからまだまだかなりの余裕があり、当面全く問題ないのです。

新型コロナウイルスの感染拡大防止策で6兆円となっています。これについては、全体から考えるとどうなのかという意見もあります。自治体に地方創生臨時交付金1兆5000億円とかもどうなのかという意見もあります。

ただ、実際には地方にコロナ対策実施してもらうのですから、国で考えるより地方に渡した方が良いです。地方財政が来年(2021年)は悪くなるのははっきりしています。地方は中央銀行がないですから「国債を発行して中央銀行に買わせて利払い負担をなくす」という手が使えません。これは、政府が国債発行を実施して、その利益は地方に渡すべきです。

新聞などの報道では、時間短縮や休業要請したときの補償金として充てるとしています。そうして、この交付金1兆5000億円は第二次補正予算の予備費がまだ7兆円あるので増やせます。この予備費は、看護師さんや現場の人たちの待遇を改善するためのものでもありました。しかし、現実にはなぜかもこういうところに使われていないようです。ただし、慰労金として、一時金は1回だけ出たようですが、これでは不十分です。

医療関係者に慰労金は出たが1回だけ・・・・・


現状では、看護師が足りないといわれています。誠意を見せられるのは、「手当てを上げる」ということしかできません。これは、一回だけで終わらせるのではなく何回も実施すべきです。

いろいろなところで目詰まりが起こっているようです。「予備費が大き過ぎる」という批判があって官僚が委縮しているところもあり、何かに使えば、批判されるのではないかということから、そのまま積んでおこうとなったのかもしれません。

それに財務省の方も「予備費が大き過ぎる」という認識があるようです。現状では、予備費をわざわざ閣議で決定して出すなど、手続きが過剰です。予算なのですから、後で会計検査院がチェックをスべきだと思います。事前のチェックは必要ないです。

今は平時ではなく有事ということは、誰もが認識していると思います。今後は、予備費を使うべきところにどんどん使っていくべきでしょう。

それと、経済対策で良くいわれることには、減税すべきということもありますが、これは税制改正ということになりますから、総選挙があるとやりやすいのですが、それ以外は難しいです。

経済対策でも与党大綱で減税を検討と書いてあり、各種の細かい減税措置はありますが、大きいものはなかなかできませんでした。これは、総選挙などの政治プロセスがないと残念ながらなかなかできません。ただし、経済対策としては、真っ先にやるべき筋のものです。これは、おかしな屁理屈を言う人もいますが、給付金のように給付事務も必要なく、積極的に何かをするということもなく、すぐにできる優れた経済対策です。

これが遠のいてしまったのは、総選挙そのものが来年9月くらいになるのではないかということからです。もし、1月あたりに総選挙を実施ということであれば、減税に向けての大きな動きなった可能性があります。

現状では、1月には解散しにくくなっています。従来は12月23日が天皇誕生日でしたが、今後は2月23日が天皇誕生日なったので、これに跨ぐことができません1月18日が召集日になるとすれば、冒頭解散としても、そこに公式の行事等々もありますから、かなり難しいです。

ただ、財務省は無論のこと、多くの政治家が、現状の戦争ではないものの、明らかに平時とは異なる有事であるということを念頭においていなさすぎだと思います。

今生天皇陛下

有事などというと、すぐに強制的なロックダウンを思い浮かべる人もいますが、そんなことをせずとも、昨日も述べたようにヒト、モノなどでもできることが多くあります。規制を緩和したり、平時にはできないことをどんどん実施すべきです。たとえば、総選挙を1月に実行したとしても、国民にとって良いことをするというのなら、今生天皇陛下がお怒りになるということもなくむしろお喜びになると思います。

平時と同じような考えで、何とかしようとしても、限界があります。政治家も国民も現在は戦後最大の有事であると自覚すべきです。これを機会に、憲法に緊急事態条項を含めることも検討すべきでしょう。

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2020年12月8日火曜日

吉村府知事vsヒゲの隊長 “自衛隊便利屋”に反論―【私の論評】「自衛隊は便利屋ではない」発言は、平時というぬるま湯に長年浸かってきた日本人への警告でもある(゚д゚)!

吉村府知事vsヒゲの隊長 “自衛隊便利屋”に反論

府庁で取材に応じる大阪府の吉村洋文知事

大阪府の吉村洋文知事(45)が8日、府庁で取材に応じた。陸上自衛隊出身で、「ヒゲの隊長」で知られる自民党の佐藤正久参院議員(60)が自身のツイッターで「自衛隊は便利屋ではない」との投稿に対し、吉村知事は自身のツイッターで反論したことについて説明した。

新型コロナウイルス感染者の治療に当たる医療従事者を確保するため、吉村知事が7日、自衛隊看護師の派遣を「岸信夫防衛相に要請した」と明かしたことに、佐藤氏は同日午後、「自衛隊は便利屋ではない。それを理解した上で緊急対応の必要性から要請内容を具体化して要請するのが基本。何人でもいいからではなく、この病院に看護師約何人とか、施設消毒等具体的なものが必要。自衛隊OBが府庁にもいるはず」と投稿した。

 この発言に対し、吉村知事は「便利屋と思ったことは一切ありません」と反論。要請までの経緯として「かなり防衛省と水面下で協議調整した上で要請致しました。自衛隊担当の職員も府庁内にいます。便利屋と思ったことは一切ありません。今回の派遣数や内容も確定してます。僕がメディアにむかって言ってないだけです。本日、別件で呉地方総監海将ともお会いしました。自衛隊の皆様に感謝してます」とツイートした。

 この日、吉村知事は「僕が自衛隊を便利屋のように思っているツイートだったので、それは違いますよと申し上げただけです」と反論の理由を説明した。

 「佐藤議員ではなく、僕らは自衛隊にお願いしている側なので、どういう思いで要請しているのか、誤解があってはいけない。きっちり、考え方をお伝えしたほうがいいと思い、ツイートしました」と述べた。

 医療体制が逼迫(ひっぱく)する中、吉村知事への風当たりも強まっている。「いま、いろんな批判があるが、僕は当然、受けます。ネット上の1つ1つの意見に個別の反応することはないが、(便利屋との)意見についてはきっちり伝えたほうがいいと思った」と強調した。

【私の論評】「自衛隊は便利屋ではない」発言は、平時というぬるま湯に長年浸かってきた日本人への警告でもある(゚д゚)!

吉村知事と、佐藤正久参院議員のツイートがどのようなものであったか以下に掲載します。


確かに、佐藤氏は具体的な要請にすべきと語っていて、吉村知事は佐藤氏が意図した具体的な要請をしたようではあります。そうして、その後のツイッターの内容を見ていると、佐藤氏はそれを理解したようではあります。ただし、「便利屋」という言葉には、それだけではない意味を含ませていると、私には思えてなりません。

佐藤正久参院議員

コロナ以前より、近年、日本列島では台風や地震や大雪などさまざまな災害が起こっています。台風19号は各地で記録的な豪雨を降らせ、多くの人が不自由な避難生活を余儀なくされました。  

災害規模が大きくなればなるほど、「自治体」「警察」「消防」「自衛隊」「ボランティア」等、さまざまな人たちが被災地に召集されます。  

東日本大震災の大規模な自衛隊の災害派遣で、自衛隊への評価はガラリと変わりました。自衛隊は国を守る「防衛」を担う組織です。しかし、平和な時代が長かった日本人は「国を守る」ことの重要さを認識している人は少なく、自衛隊は災害派遣や人命救助をやっていればいいという人さえいます。 

確かに、東日本大震災のような原発事故も含む広大な範囲の災害に対しては自衛隊を投入するしかなかったと思います。しかし、自治体だけでも対処できそうな「口蹄疫」や「鳥インフルエンザ」など家畜の疫病対策にも“便利”に自衛隊が使われています。

最近でも、鳥インフルエンザの感染が確認された香川県三豊市の養鶏場で今月3日、作業にあたっていた自衛隊員がフォークリフトから落下し、足の骨が折れるけがをしました。

香川県三豊市養鶏場で今月3日、作業にあたっていた自衛隊員ら

都道府県には警察や消防があり、地元の業者もたくさんいます。自衛隊を投入する以外にほかに方法がない事例でなくとも、安く迅速に動いてくれる自衛隊を“便利屋”のように使っているのではないか危惧してしまいました。

土砂災害の現場では倒壊した家屋や川から流れ込んだ土砂など「災害ゴミ」が発生します。通常では考えられない量のゴミと土砂ですから、各自治体では特別なごみの収集を行っているはずです。 

自衛隊の本来の任務は「機能回復までの応急的な復旧」で、活動範囲は「幹線道路や公共施設のみ」と定められています。でも、お年寄りが家から運び出せない粗大ごみを、規定通りに出せと言われて途方に暮れています。優しい自衛官がそれを見過ごせるわけがありません。見るに見かねたある自衛官は、そんな困っているお年寄りに代わって、災害ゴミを分別し集積場まで運んでいるそうです。

自治体によっては、分別してないと絶対に受け取らないところもあります。一方、明らかに災害ゴミではない廃棄物を「これ幸い」と捨てに来る輩もいるようです。やっと大量のゴミを分別して片付けたら、見知らぬゴミが軽トラでドサッと置かれることもあるそうで、これには屈強な自衛官でも心が折れてしまうそうです。

自衛隊は、基本的には食料も野営も用具一式、お風呂まで持っている自己完結型の組織です。だから、派遣要請した自衛隊のためには何も用意は必要ないと自治体は考えています。たしかに、時間が経てば自衛隊独自の輸送方法を使って野営のための物品は運ばれてくるのですが、輸送用車両に隊員用の寝袋が積み込めず、最初の数日は下の写真の状態の派遣になる場合もあるそうです。


写真をご覧ください。特定されないように、背景の色彩や自衛官の顔などは目隠しを入れていますが、現実の災害派遣で疲れ切った自衛官が「寒い夜にひと時の休息をとっている」時の画像です。暖房もない冷たい体育館の床に雑魚寝です。  

自衛隊員が震えながら雑魚寝をしている様子を見るに見かねて、毛布や貸布団などを先に用意する担当者もいるようですが、このケースのように全く気にかけることなく放置する場合もあるのです。それどころか、被災者には温かい食べ物を提供して、自らは冷たい缶詰を食べている自衛隊員もいるとの噂もあります。

防衛省および自衛隊関係者に聴いてみたところ、「状況や現場の指揮官の判断によるので一概には言えない」と前置きしつつも、「基本的に被災された方々にお渡ししているものと自衛隊員が食べるものは一緒」との回答。炊き出しを振る舞っている場合は隊員も同じものを食べる場合が多いとのことでした。

とはいえ「被災者の方々が第一なので、配給が行き渡っていない場合はレーションを食べる場合もあります」とも。また「被災者の方々よりも豪華なものを食べるということはありえません」とのことでした。

自衛隊に対する酷い扱いは、たとえば何と公務であっても、高速道路の料金を支払わないと通れないというわけのわからないものもあります。予算が少なくて、トイレットペーパーを節約とか、小銃発射訓練も節約で、日本の陸自隊員は、米国の軍楽隊と同程度の訓練しかできないなどという笑えないような話まであります。

缶詰を食べる自衛隊員

このようなことが、コロナ対策の医療現場でも繰り返されるのではないかと、佐藤氏は危惧しておられるのではないでしょうか。私もそのような危惧を感じます。

大阪や旭川のような要請が、全国至るところで起こるようになってしまった場合、自衛隊の看護師のほとんどがコロナ対策の便利屋になってしまう可能性も危惧しているのではないでしょうか。それどころか、今後似たようなケースが発生した場合、自衛隊の看護師が恒常的に便利屋のように使われるような事態を招きかねないです。

土砂災害に備えた「ダムや堤防」は効果的でした。転ばぬ先の杖です。この事例のように、感染症対策においても、自衛隊をなるべく呼ばなくても良いようにすべきです。自衛隊は便利屋ではないですし、すべての現場ですべての患者さんを救助できるわけでもありません。自衛隊の看護師にも任務や訓練があって、そのために自衛隊に所属しているのです。

コロナから「命を守る」のはまずは「自助」です。私たち一人ひとりが自分でできることはするのです。つまるところ、民度とか国力というのは国民のそういう姿勢から始まる問題ではないかと思うのです。

ただし、自助だけでは防ぎきれないこともあることは事実です。最近は、コロナ感染者が拡大していると連日マスコミが大騒ぎです。医療崩壊寸前だというのです。しかし少なくとも日本の10倍以上もの感染者や死亡者がいる欧米諸国で医療崩壊が起きているという話は聞いたことがありません。我が国とは何かが違っているのでしょうか。我が国の対応は何か間違っていることはないのでしょうか

日本には海外の経験やデータから学ぶ余裕も、考えて準備する時間もありました。しかし、緊急事態宣言後から宣言解除に至るまでの「甘い」「緩い」対策には海外からも驚きの声が多いです。

そこで提案です。自衛隊員は50代前半で定年を迎えます。その後、僅かな若年給付金だけでは定年まで生活ができませんから再就職します。その再就職先に自治体に退職自衛官をあてるということもできるのではないでしょうか。災害対応、感染症対応など様々な対応が考えられます。

それと海外の軍隊では、予備役の制度があります。無論自衛隊にもあります。予備役 とは、軍隊における役種の一種です。一般社会で生活している軍隊在籍者や、軍隊に就役していた艦艇・航空機のことを指し、有事の際や訓練の時のみ軍隊に戻ります。在郷軍人とも呼ばれます。ほとんどすべての軍隊に存在し、自衛隊の場合は予備自衛官と称されています。これを活用する手もあります。

日本でも、河野太郎前防衛相は今年2月13日、新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大に対応するため、普段は企業などで働く「予備自衛官」の招集命令を出しました。予備自衛官のうち医師や看護師の資格を持つ約50人を集めるというものでした。中国湖北省武漢市から帰国した邦人やクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客で陽性反応が出た人の健康管理にあたりました。

   クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の感染対策に携わった
   自衛隊員。一人の感染者もでなかった

招集は同年同月13日の持ち回り閣議で決めました。自衛官OBらで構成する「即応予備自衛官」の招集も承認しました予備自衛官と即応予備自衛官は2019年秋の台風19号に伴う被災地対応でも招集しました。予備自衛官の招集は8年ぶりでした。

予備自衛官と即応予備自衛官はともに非常勤の特別職国家公務員で、災害などの緊急時に招集されます。即応予備自衛官は自衛官OBが原則で、現役自衛官と同様の任務に就きます。予備自衛官は自衛官らの後方支援が任務の中心で、自衛官の経験のない人も登録できます。

これは、自衛隊内部の対応ですが、これを地方自治体のレベルでも行うのです。ただし、予備役制度は現在の危機にはすぐには役立たないかもしれません。では、どうすれば良いのかということになりますが、これは海外の事例も役立つでしょう。

日本の場合は現在「ヒト」が足りないことが問題になっていますが、イタリアでは今年、医師試験を免除して医学生を招集し、約1万人を現場に投入しました。スペインでも、1万4000人の引退した医師や看護師を含む5万2000人の医療従事者を集めました。このようなことは、今の日本では平時を想定した規制に阻まれなかなかできないようです。

しかし日本でも、感染爆発を想定した人材確保を真剣に考えなくてはならないです。不要不急の診療や処置などが減ったことで、時間の余裕ができた医療従事者もいると聞きます。そのような人々が支援に参画できるメカニズムも検討すべきです。

ただ、新型コロナの集中治療、人工呼吸器やECMOの操作などができる医療従事者は限られています。しかも通常、日本では重症者2人を看護師1人で見ていますが、新型コロナの重症者の管理には個人防護具が必要で、さまざまな制約が伴うため、重症者1人に看護師2人が必要になるといいます。感染爆発を想定して、できる限りの人材確保と適正配置を考えるべきです。

医療に関わる「モノ」づくりでも、工夫をすべきです。通常のモノづくりの範疇で物事を考えるのではなく、例えば、3Dプリンターによるモノ作りをすべきです。PCR検査用の綿棒状の検体採取キット、フェイスシールド、マスク、人工呼吸器用の部品など、3Dプリンターで製造可能なものは多く、しかも速いです。ある会社は700以上の医療用部品などをわずか1週間でイタリアの医療施設に提供し、なかには要請を受けてから病院への納入まで8時間で完了したケースもあるといいます。

さらに、医療崩壊を防ぐために「データ」の重要です。特に、自治体ごとの新型コロナの重症者数、使用可能なICU病床数、人工呼吸器・ECMO数などの重要な情報は可視化して公開し、リアルタイムにモニタリングする必要があります。

現状は、コロナ対策のために戦時のような対応をすべきなのです。それは、何も強制的な隔離などを意味するものではありません。ヒトの確保でも、モノの生産においても、現在を平時と考えず、戦時と考えて行動するのです。それは、無論、私達だけではなく、地方自治体も政府も、緊縮財政一点張りの財務省もそのように考えて行動すべきなのです。

それには、コロナ対策に邪魔になるような規制を時限的でも良いから撤廃等をすることです。そうして、何よりも今の日本に欠けているのは、あまりにも長い間国内の平時に慣れてきた私達の多くが、危機に立ち向かうという気概を失ってしまったことではないかと思います。

ここで、敢えて「平和」ではなく、「平時」という言葉を使います。日本は、拉致問題をみてもわかるように、戦後から現在まで「平和」であったわけではありません。あくまで、「平時体制」というか、戦時体制をとらなくても何とかなってきたというだけです。本当は、中国・北朝鮮から軍事的挑発も受けて、とても「平和」といえるような状況ではありません。

「自衛隊は便利屋ではない」発言は、平時に長年浸かってきた日本人への警告だともいえます。

ただし、この危機はさほど続かないという見解もあります。しかし、最悪の事態には備えるべきでしょう。その備えをした実績が、次に似たようなことが起きたときに、役にたつはずです。今回日本人が考えを変えられなければ、次はないでしょう。


2020年12月7日月曜日

はやぶさ2、カプセルからガス回収 試料採取は成功か―【私の論評】海洋だけではなく、「はやぶさ2」軍事転用で宇宙でも劣勢となる中国(゚д゚)!

はやぶさ2、カプセルからガス回収 試料採取は成功か


光跡を引っ張りながら地球に帰還する「はやぶさ2」の試料カプセル=6日未明

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は7日、探査機「はやぶさ2」がオーストラリア南部の砂漠に着陸させた小惑星リュウグウの試料が入ったとみられるカプセルから、ガスを回収したと発表した。岩石の破片などの試料から生じた可能性があり、リュウグウでの試料採取が成功した公算が大きくなった。 

 JAXAの現地チームが日本時間7日午前、カプセルに針状の装置を刺して回収した。簡易分析を行ったが、ガスの量や成分は明らかにしていない。岩石の破片などが入っているかどうかも公表していない。

  リュウグウは約46億年前に太陽系が誕生した頃、惑星に成長できなかった小天体の残骸で、生命をつくる材料である有機物や水を多く含むとみられる。有機物はガスを発生させるため、生命の成り立ちの解明につながる有機物が採取できた可能性も高まった。

  カプセルは7日夜、チャーター機でオーストラリアを出発、8日に相模原市のJAXA宇宙科学研究所に到着する。その後は地球の大気に触れない厳重な密閉装置内で開封し、試料の有無を確認。入っていれば現地で採取したガスとともに詳細な分析を行う。

【私の論評】海洋だけではなく、「はやぶさ2」軍事転用で宇宙でも劣勢となる中国(゚д゚)!

昨日は、海上自衛隊は南シナ海からインド洋にかけての海域で行っている訓練に、潜水艦を追加で参加させると発表したのは、なぜかということを掲載しましたが、結論からいえば、海洋戦術・戦略においては、中国は日米に到底及ばないことを誇示するためというものでした。

この記事の案内をtwitterに掲載したところ、西村幸祐氏にも引用され、多くの人に反響があったようです。そのせいでしょうか、普段よりも倍以上の方々にこの記事を読んでいたたげたようです。中国に対する日米の優勢に関しては、ほとんど一般には報道されていないので、日米はすぐにも中国に負けてとんてもないことになると悲観する方も多いのではないでしょうか。

そんなことはありません。海洋でも宇宙でも、日米は犠牲を出さずに中国を阻止することができます。

さて、本日は「はやぶさ2」について書きますが、これについては他のサイトでも様々な解説がされているので、「はやぶさ2」そのものについてはそちらをあたっていただきたいです。このブログは「はやぶさ2」に用いられている技術のうち軍事転用できるものについて解説します。

「はやぶさ2」はミッションンを遂行する上で、以下の7つの世界初を成し遂げています。



これらの世界初はどれも素晴らしく、何らかの形で軍事転用できるものと思います。この中で特に私が着目したのは、「4.人口クレーターづくりとその詳細観測」です。

これは、直径10メートルの人工クレーターを開けて地下の物質をさらけ出して星のかけらを採取したことです。

「はやぶさ2」は2019年4月、小惑星「リュウグウ」に衝突装置「インパクタ」から発射した金属の塊を衝突させて、世界初となる人工クレーターをつくることに成功しました。

以下に「はやぶさ2」衝突装置「インパクタ」を発射下際の爆点の様子の動画を掲載します。


そうして、上空から撮影した画像を詳しく分析した結果、クレーターの大きさは直径は10メートル余り、深さは2メートルから3メートル程度あることが分かったと、5月9日に発表しました。

クレーターから少し離れた場所には、衝突装置の破片が飛び散ってできたと見られる直径1メートル前後の小さなクレーターも10個程度見つかったということです。

衝突体の詳細のスペックがJAXAから公示されています。それを以下に掲載します。


こで、注目は炸薬や薬莢などの付属部ではなく、目標に衝突して破壊力を生む弾頭部に相当する衝突体の重量は2kgとなっています。

弾頭2kgは105mm戦車砲の徹甲弾の一つ、105mm離脱装弾筒付翼安定徹甲弾M735の弾芯重量2.18kgに匹敵します。大きく注目すべきは、2km/s(2000m/s)という弾速です。

機関砲、戦車砲、艦砲は弾速は1000m/sくらいで頭打ちになっています。これは、火薬の性能、砲身や砲弾の強度、摩擦や空気抵抗など物理的制約を受けます。特に高性能とされている戦車砲のラインメタル 120 mm L44で、弾速は1700m/s。はやぶさ2の2000m/sは火薬を使った砲では最高レベルの夢のスペックだと言えるでしょう。(自衛隊の最新の10式戦車の弾速は2000m/sに達しているという噂もあります)

2kgの弾頭は74式戦車や開発中の機動戦闘車の主砲の105mm砲の水準で、西側諸国の主力戦車の多くに採用されているラインメタル 120 mm L44の砲弾に比べると小さいものですが、実体弾が持つエネルギー(破壊力)は重量には正比例、速度には二乗に比例する事から、最新の戦車並みの威力だと言えるでしょうか。

装甲を貫く砲弾と、岩石を砕く衝突体の威力を単純比較するのは難しいですが、西側諸国の主力戦車の戦車砲をしのぎ、世界最高の10式戦車の砲に相当する弾速を、惑星間探査機に搭載するのは驚異的技術です。これは、国際宇宙ステーションをも一撃で粉砕できます。小さな衛星も一撃できます。

10式戦車

「はやぶさ2」は兵器ではなく、科学探査機です。しかし、非常に強力な砲を正確に撃ちだす機能を持ち、軍事衛星や弾道弾の破壊といった軍事転用への可能性は否定できません。

事実国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)が幕張メッセで昨秋開かれた「防衛・セキュリティ総合展示会 DEFENCE & SECURITY EQUIPMENT INTERNATIONAL (DSEI) JAPAN 2019」の協賛団体となり、会場に陸域観測技術衛星「だいち2号」を展示しました。JAXAは昨年6月に同じく幕張メッセで開催された「防衛装備技術国際会議/展示会 MAST Asia 2019」にも出展しています。

「はやぶさ」が成功させた、再突入カプセルの目標への正確な着陸とサンプルの回収は、弾道ミサイルの弾頭設計と誘導技術そのものであり、同様に潜在的な軍事技術です。

さらに米国をはじめ世界中の国々が喉から手が出るほど欲しがっている「はやぶさ」の潜在的軍事技術もあります。それは、イオンエンジンです。

はやぶさの長距離長時間の航行を実現した基幹技術です。推力はロケットエンジンに比べると非常に小さいですが、長距離長時間の航行を実現したように、燃料の消費量が非常に小さく長期間の運転が可能になります。

小推力を長時間維持するイオンエンジンは、上層大気の空気抵抗を受ける低高度のスパイ衛星の軌道高度と速度の維持に最適であり、現在は非常に短い衛星の寿命を飛躍的に向上する事が可能になります。

高度な技術の擦り合わせと、品質と性能の極限の追求、少量生産や受注生産が前提となる、宇宙航空、軍事技術は日本の製造業の躍進の余地が大きな分野です。

現実にも、国産の対潜哨戒機(P-2)と輸送機(C-2)、H2Bロケット、イプシロンロケット、HTV(こうのとり)、10式戦車など、比較的低予算での開発と実用化が成功しています。
基幹技術であるロケットエンジンの米国への供給も検討されています。

停滞している日本の製造業は、実は世界最強となる潜在力を持っています。そうして、その製造業を有する日本は、軍事的にも大きな潜在能力を持っていることは明らかです。

民生技術を軍事に転用することを悪いようにいう、左巻きの人たちもいますが、世界で中国共産党が傍若無人に振る舞っている現状では、当然のことと思います。民生技術でも、何でも、中国共産党の宇宙空間での野望を阻止するためには、何で使うべきです。

そうして、中国はさらに宇宙でも劣勢になることが予想されます。昨日は、このブログで海洋戦術・戦略においては、陸上国中国は海上国日米に到底及ばないことを解説しました。

海洋国にもなりきれていない中国が、宇宙に軍事的な進出をしたとしても、うまくはいかないようです。それにしても、膨大な投資が必要です。いまのままだと、中国はかつてのソ連のように、軍拡・宇宙開発競争で疲弊し米国に負けて疲弊し崩壊したように、崩壊への道を真っ直ぐに進むことになるでしょう。

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2020年12月6日日曜日

海上自衛隊 訓練に潜水艦の追加派遣 事前公表は異例の対応―【私の論評】事前公表の本当の目的は、海洋戦術・戦略においては、中国は日米に到底及ばないことを誇示するため(゚д゚)!

海上自衛隊 訓練に潜水艦の追加派遣 事前公表は異例の対応

海自の「そうりゅう型」潜水艦

海上自衛隊は南シナ海からインド洋にかけての海域で行っている訓練に、潜水艦を追加で参加させると発表しました。中国が海洋進出を強めるこの海域への潜水艦の派遣を事前に公表するのは異例の対応で、専門家は中国海軍の出方を伺うねらいがあると指摘しています。

海上自衛隊は今月7日から1か月余りの日程で、最大の護衛艦「かが」などを南シナ海からインド洋にかけての海域に派遣し、各国の海軍などと共同訓練を行うことにしています。

海上自衛隊は15日、この訓練に潜水艦1隻を追加で参加させると発表しました。

訓練の詳しい内容は明らかにされていませんが、防衛省関係者によりますと、海中に潜って航行する潜水艦を相手に見立てて追尾する、「対潜水艦」の訓練などを南シナ海で行う予定だということです。

潜水艦は相手に居場所を知られず警戒監視を行うのが任務で、中国が海洋進出を強めるこの海域への派遣を、事前に公表するのは異例の対応です。

軍事専門家「中国海軍の出方をうかがうねらい」

海上自衛隊の元海将で潜水艦の艦長も務めた、金沢工業大学虎ノ門大学院の伊藤俊幸教授は、今回、潜水艦の派遣を事前に公表したねらいについて「アメリカや日本と比べると、海中を探索する技術のレベルがまだ低い中国にとって、近くにいても見つけることができない潜水艦は、最もいやな存在だ。訓練への参加を事前に公表することで、中国海軍がこれまでとは異なる動きをして戦術の一部が見える可能性があり、海上自衛隊としてはどんな出方をするのかをうかがうねらいがあると思う」と話しています。

そのうえで「南シナ海では軍事拠点化を進める中国に対し、日本やアメリカだけでなく、イギリスやフランスなども軍艦を派遣し、互いにけん制しあうことで、力の均衡が保たれて平和が維持されている。ただ、こうした状態が続けば、南シナ海の平和を保つための海上自衛隊の負担は、今後も増えるのではないか」と指摘しています。

【私の論評】事前公表の本当の目的は、海洋戦術・戦略においては、中国は日米に到底及ばないことを誇示するため(゚д゚)!

海上自衛隊の各国の海軍との共同訓練において、潜水艦を追加派遣したことは今回がはじめてということではなく、以前もありました。

海上幕僚監部は今年9月15日、当時実施中の「2020(令和2)年度インド太平洋方面派遣訓練」に、潜水艦1隻を追加派遣すると発表しました。

20年度インド太平洋方面派遣訓練は、第2護衛隊群司令の今野泰樹海将補を指揮官として、護衛艦「かが」、「いかづち」、搭載航空機3機の編成で9月7日から10月17日まで実施することになっていたましたが、参加人員は潜水艦1隻の参加により、当初より約70名増えた約580名となりました。


令和2年度インド太平洋方面派遣訓練に参加した護衛艦「かか」と「いかづち」


海幕広報室は、「かが」と「いかづち」が出発した後に潜水艦の追加派遣を発表したことについては、「部隊運用の都合上」とし、インド太平洋方面派遣訓練への潜水艦の参加は、2年前の「ISEAD2018」において参加実績があると回答していました。


また、潜水艦1隻が加わることで訓練計画に変更が生じるかについては、「寄港予定国についてはスリランカのほかは現在調整中であり、訓練については各種戦術訓練に加えて対潜戦訓練を行う予定」と述べていました。


この時の潜水艦1隻の訓練への追加の公表も異例中の異例でした。海上自衛隊の元海将で潜水艦の艦長も務めた伊藤俊幸教授は、上の記事で、「アメリカや日本と比べると、海中を探索する技術のレベルがまだ低い中国にとって、近くにいても見つけることができない潜水艦は、最もいやな存在だ。訓練への参加を事前に公表することで、中国海軍がこれまでとは異なる動きをして戦術の一部が見える可能性があり、海上自衛隊としてはどんな出方をするのかをうかがうねらいがあると思う」と話しています。


このことについては、このブログでは過去に何度か述べています。繰り返しになりますが、日米の対潜哨戒能力はともに世界トップ水準ですが、これに比較すると、中国の対艦哨戒能力がかなり劣っています。元々この能力はロシアから輸入したものですが、そもそもロシアの哨戒能力が現在でも相当劣っているので、中国の能力も劣っているのです。


中国軍の哨戒能力かかなり劣るY8哨戒機


一方、日本の潜水艦は静寂性においては、「無音」と言っても良いくらい水準です。これを中国海軍が探知することはできません。


米国の原潜というか、一般に原子力潜水艦は、長期間に渡って潜航し続けることができるのですが、難点があります。それは騒音です。原子炉で発生させた蒸気を使ってタービンを回し、その力でプロペラ軸を回しますが、この時に使う減速歯車が騒音の原因といわれています。

タービン自体は高速で回転させるほうが効率も良いのですが、そのまま海中でプロペラを回転させるとさらなる騒音を発生させるために、減速歯車を使ってプロペラ軸に伝わる回転数を落とす必要があります。

ほかにも、炉心冷却材を循環させるためのポンプも大きな騒音を発生さるといいます。このポンプは静かな物を採用することによって、かつてに比べ騒音レベルは下がってきているといいますが、頻繁に原子炉の停止・再稼動をさせることが難しい原子力潜水艦においては、基本的にこのポンプの動きを止めることはできません。

ただし、米国の原潜は、中国の原潜よりは、静寂性が優れているので、対潜哨戒能力に劣る中国にはなかなか発見できませんが、全く発見できないということではありません。

対する通常動力潜水艦は、原子力潜水艦が不得意とする静粛性に優れています。なぜならば、ディーゼル機関を止めてバッテリー駆動に切り替えることによって、艦内で発生させる音をほぼ皆無にすることができるからです。そうして、日本の潜水艦は世界でもっとも静寂性に優れています。

この場合、唯一の音の発生源は乗員の発する音なので、例えば海上自衛隊の潜水艦の艦内には多くの場所に絨毯が敷かれ、艦内を歩く隊員の足音すら発生させないような工夫が施されています。

さらに、今年3月に進水した「たいげい」は初のリチウムバッテリーで駆動する潜水艦であり、
その静寂性は無音と言っても良いくらいです。これは、中国が探知するのは不能です。

そうして、米国の原潜にも長所があります。それは、一般に巨大で、ミサイルや魚雷などの装備も豊富で量も多く搭載しており、単純比較はできませんが、その破壊力は空母に匹敵するほどです。

これは、日米にとっては軍事秘密なので、未だ公表はされていないのでしょうが、この日米の潜水艦の利点を活用すると次のようなことが可能になります。

たとえば、南シナ海で、米中が中国海軍の基地を包囲します。米国の原潜は、食料水を除いて、エネルギーは原子力なので、補給の必要はありません。米原潜は要所要所に長時間潜み、近づく中国の補給船や補給の航空機を威嚇するか破壊して、中国軍基地に近づけないようにします。

日本の潜水艦は、中国海軍に発見されないため、中国軍の基地の周りを自由に航行して、情報を収集しそれを米原潜に伝えます。米原潜は近づく中国の潜水艦等を威嚇するか破壊して、任務を継続します。最初に潜んでいた場所が中国軍に知られた場合には、日本の潜水艦の情報にもとづき発見されないような位置に移動して、任務を継続します。

以上のようなことが考えられます。これに対して、中国海軍はなす術がありません。たとえ、超音速対艦ミサイルがあっても、探知できない敵に対してこれを用いることはできません。空母や、艦艇も意味をなさなくなります。中国のすべての艦艇は自らを防御できないばかりか、空母を護衛することもできません。

わかりやすくいうと、日米の潜水艦が南シナ海の中国軍基地を包囲した場合、中国は中国軍基地に対して補給ができず、お手上げになるということです。それでも、中国が無理やり基地に補給を強硬した場合、米国の原潜により、ことごとく破壊されてしまいます。

私は、今回の南シナ海からインド洋にかけての海域に、わざわざ日本が潜水艦を追加派遣することを公表したのには、「中国海軍がこれまでとは異なる動きをして戦術の一部が見える可能性」があるというだけではなく、中国海軍に対して、日本の潜水艦が中国側が探知できず自由に航行できること、米軍の原潜の強大な破壊力を示して、海洋戦術・戦略においては、日米に対して中国には到底勝つことはできないことを誇示するためにも公表したのだと思います。

このブログではすでに何度か掲載していますが、実は米軍も原潜の行動を公表していました。これは異例中の異例です。これも何度かこのブログに掲載しています。

米軍はすでに5月下旬に潜水艦の行動に関して公表しています。潜水艦の行動は、通常どの国も公表しないのでこれは異例ともいえます。

この潜水艦群の動きは太平洋艦隊司令部のあるハワイ州ホノルルの新聞が同司令部からの非公式な通告を受けて今年5月下旬にマスコミで報道されました。太平洋艦隊所属の潜水艦の少なくとも7隻が西太平洋に出動中であることが同司令部から明らかにされました。

太平洋艦隊所属でグアム島基地を拠点とする攻撃型潜水艦(SSN)4隻をはじめ、サンディエゴ基地、ハワイ基地を拠点とする戦略ミサイル原子力潜水艦(SSBN)など少なくとも合計7隻の潜水艦が5月下旬の時点で西太平洋に展開して、臨戦態勢の航海や訓練を実施しているといいます。

米バージニア級原潜

その任務は「自由で開かれたインド太平洋」構想に沿っての「有事対応作戦」とされています。この構想の主眼は中国のインド太平洋での軍事膨張を抑えることだとされるため、今回の潜水艦出動も中国が覇権を目指す南シナ海や東シナ海での展開が主目的とみられます。

無論、当時空母でコロナが発生したという事情もからんでいるでしょう。空母打撃群が水兵のコロナ罹患で出動できない間隙をぬって中国が不穏な動きを見せないように牽制したものと思います。逆に、米軍は空母打撃群でなくても潜水艦隊があれば、中国の動きを牽制できると考えているともいえます。

このように考えると尖閣防衛はこのブログでもすでに述べているように、意外と簡単です。何隻かの潜水艦で、尖閣諸島を包囲して、補給を絶てば良いだけです。中国側は日本の潜水艦を探知できないので、犠牲も殆ど出ないでしょう。犠牲が出ないということで、米軍も加勢しやすいでしょう。米軍もこの海域に原潜を派遣すれば良いということになります。というより、本当はもう日米とも派遣していると思います。軍事気密なので、公表しないだけでしょう。

台湾も同じことです。米国の原潜で台湾を包囲して、上陸する中国軍を攻撃し、それでも上陸した場合には、補給を絶てば良いのです。そうして、日本の潜水艦は、中国側に探知されないので、台湾の周辺を自由に航行して、米国に情報を提供することで貢献できます。

台湾や尖閣では、中国軍はこれら島嶼に兵を上陸させて、確保しその状況を維持しなければなりませんが、日米はそこまでせずとも、補給を絶つだけで、中国軍を阻止できるので、犠牲はほとんど出ません。中国人民解放軍もしくは民兵は、降伏するか餓死するかのいずれの選択肢しかありません。

私自身は、このブログで何度か同じことを主張してきましたが、今日すでに島嶼を奪われたときに、空母打撃群や艦艇や海兵隊等を派遣するという考えは、時代遅れです。それはいたずらに犠牲者を増やすだけです。そんなことをせずとも、犠牲をほとんど出さず中国軍を排除することは十分可能です。

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2020年12月5日土曜日

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【日本の解き方】コロナショックによる物価下落の要因を見極める 30兆円の需要不足に対応を 経済運営の手腕が問われる

旅行会社の店頭に掲げられた「Go To トラベル」キャンペーン予約開始の案内(10月18日、東京都千代田区)


 総務省が発表した10月の消費者物価指数(CPI、2015=100)は、生鮮食品を除く総合指数が101・3と、前年同月比0・7%下落し、下げ幅は9年7カ月ぶりの大きさとなった。「Go To トラベル」の影響で宿泊代が下がった影響とされている。

 一般論を考えよう。各種の経済ショックで国内総生産(GDP)が落ち込むが、それが「供給ショック」なのか「需要ショック」なのかを見極めるのは、経済政策のイロハのイである。

 言い換えるとマクロ経済分析での総供給曲線のシフトなのか、総需要曲線のシフトなのかだ。しかし、実際にはどちらのタイプであるかを判断するのは簡単ではない。ほとんどの場合、総供給も総需要も共にシフトするからだ。

 そこで、どちらのシフトがより大きいのかを見極めることが重要になる。これによって処方箋としての経済対策も全く異なってくる。

 供給ショックの場合、財政出動や金融緩和を使うと、インフレが高まり、スタグフレーション(不況下のインフレ)になってしまう。この場合、基本的には供給曲線を元に戻すような施策が必要であり、総需要管理政策として増税や金融引き締めも必要になってくる。

 これに対し、需要ショックの場合には、財政出動や金融緩和によって有効需要を増やす政策になる。

 歴史を振り返ると、1970年代の石油ショックは供給ショックだったし、2008年のリーマン・ショックは需要ショックだった。11年の東日本大震災の際、日本の主流経済学者の多くが復興増税を主張したが、その背景として供給ショックという見立てがあった。サプライチェーン(流通網)の寸断があったので、供給ショックと見たのだが、それは誤りだった。
 今回の世界的なコロナショックでも、オリヴィエ・ブランシャール氏など一流経済学者の中にも供給ショックと見る向きもあったが、間違いだと言わざるを得ない。

 筆者は早くから財政政策と金融政策の同時発動を主張していたが、これは、コロナショックがロックダウン(都市封鎖)などで旅行、飲食などの需要が蒸発するような需要ショックであると見ていたためだ。

 どちらのショックなのかは、その後の物価の動きでわかる。コロナショックの当初、マスクなどの個別価格の上昇があり、それが供給ショックの見立てにもつながったが、問題なのは個別物価ではなく、全体の一般物価の動きだ。

 その後の消費者物価指数などの一般物価の動きをみると、やはり今回のコロナショックは需要ショックだった。つまり、需要ショックで、需給ギャップが拡大し、それとともに物価が下落したのだ。これはその後、失業率の増加という筆者の予測とも関連している。

 これらは需要不足に起因するものなので、第3次補正予算などで30兆円以上もあるGDPギャップを埋めないと、物価の下落と失業の増加は避けられなくなる、マクロ経済運営の手腕が問われている。 (内閣官房参与・嘉悦大教授、高橋洋一)

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