ロシアによるウクライナ侵略などの影響を受け、ガソリン価格などの高騰が続いています。岸田首相は3日の会見で、「エネルギー価格高騰による我が国経済への悪影響を少しでも減らすべく、これまで以上の省エネに取り組み、石油やガスの使用を少しでも減らす努力をしていただくことが大切だ」として、国民に対しこれまで以上に省エネに取り組むよう呼びかけました。
これに関連し、松野官房長官は4日、政府で率先して行う取り組みについて公用車の電動車への置き換え、庁舎におけるLED照明の導入、再生可能エネルギー電力の調達などを積極的に進めていく考えを示しました。
連邦政府の予測によると、米国はバイデン政権下で2022年に原油の純輸入国に戻ろうとしています。米国は石炭と天然ガス両方の取引を考慮すると、2019年に全エネルギーの純輸出国となり、2020年には石油の純輸出国となりました。
「原油価格が100ドルに迫り、ロシアが政府予算―軍とウクライナ侵攻も含まれる―の資金獲得のためにエネルギー販売に依存する中、ロシアのエネルギー輸出が西側に及ぼす影響力に今世界は注目している」と、米国商工会議所世界エネルギー研究所のマーチン・ダービン所長は1日のブログ投稿で述べました。
「この現実から、こうした依存の一因となっているエネルギー政策を至急見直さざるを得なくなっている」とダービンは続けました。
1日に下院民主党は、連邦政府がエネルギー市場におけるロシアの支配を埋め合わせるために、米国の石油・天然ガス生産を「解放」するよう義務付けることを提案する共和党の米国エネルギーのロシアからの独立法案の検討を阻止しました。
「プーチンとロシア経済は、支配的なエネルギー生産と他国への輸出に依存している」と、法案起草者であるエネルギー商業委員会幹部メンバーのキャシー・マクモリス・ロジャースと、天然資源委員会幹部メンバーのブルース・ウェスターマンは2月28日の共同声明で述べました。
「(プーチンは)そうすることで権力を得ており、彼の軍隊と攻撃的な行動の資金源となっている。プーチンに対抗するために、我々の法案は米国のエネルギー雇用、生産、輸出の推進にスイッチを入れるものだ」と彼らは続けました。
このように米国がエネルギー生産の観点から大幅に弱体化したため、ロシアに対抗する力が大きく失われることになりました。
いま世界中でエネルギー価格が高騰しています。欧米がロシアに経済制裁をすれば、ロシアからのガスの供給が滞ることになります。欧州はガス価格の高騰のみならず、物理的な不足に直面します。暖房もできなくなり、工場の操業も止まることになります。そして、すでに進行中のインフレが悪化すれば、どの国の政権も安定ではいられないです。
大統領就任の初日に、バイデンは環境問題を理由に、建設が進んでいたキーストーンXL事業を阻止する命令を出しました。こキーストーンパイプラインがあれば、ヨーロッパへのエネルギー輸出を拡大することで、ロシアに対抗する能力をアメリカに与えていたはずです。
工事中のキーストンパイプライン |
いまEUは世界から天然ガスを買い漁っています。とくに米国からの液化天然ガス(LNG)の輸入が急激に増えています。トランプ政権時代に増産していたおかげで、何とかまだ急場を凌(しの)いでいるという状態ですが、いつまで持つのでしょうか。こんな不安要素を抱えて、本当に経済制裁をして本当に大丈夫なのでしょうか。
バイデン政権は非常用の石油備蓄補充のための計画をまだ立てていません。日本も同じことです。
米国内では、バイデン政権のエネルギー政策がロシアのウクライナ侵攻を招いたとして、野党の共和党議員から猛烈な非難が浴びせられています。脱炭素政策の大幅な見直しは避けられないでしょう。
一般教書演説でロシアを非難するバイデン大統領 |
日米ともに、小型原発の開発をすすめてはいますが、それはまだ先の話です。ロシアがウクライナに侵攻した現在、ここ当面どうするかについては、はっきりとした政策は打ち出していません。それは、結局ロシアを利することになります。
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