2022年10月9日日曜日

北朝鮮の弾道ミサイルについて 岸田首相「今後の挑発行動を注視」―【私の論評】日本が抑止力を高める決断をすれば、その過程でいくつもの外交カードを手にすることができる(゚д゚)!

北朝鮮の弾道ミサイルについて 岸田首相「今後の挑発行動を注視」

 北朝鮮が、SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)の可能性があるミサイルを発射したことについて、岸田首相は、「今後の挑発行動について、注視していかなければならない」と警戒感を示した。

 岸田首相「引き続き、今後の北朝鮮の挑発行動については、注視していかなければならないと思う」

 北朝鮮は9日未明、弾道ミサイル2発を日本海に向けて発射していて、SLBMだった可能性があるとみられている。

 岸田首相は、訪問先の三重・鈴鹿市で記者団に対し、「弾種については、まだ確認中」と述べ、「確認でき次第、防衛相などから報告することになるだろう」との見通しを示した。

 また、2週間で7回という異例の頻度の発射に言及したうえで、「日米・日韓・日米韓といった関係国との関係も、密にしていかなければならない」とあらためて強調した。

【私の論評】日本が抑止力を高める決断をすれば、その過程でいくつもの外交カードを手にすることができる(゚д゚)!

SLBM が発射される懸念については、北が弾道ミサイルを発射した4日のこのブログですでに公表していました。その記事のリンクを掲載します。
北朝鮮、SLBM発射兆候も確認“核実験へ向け軍事的挑発の段階高める”との見方も―【私の論評】これから発射されるかもしれない北朝鮮のSLBMのほうが、日本にとってはるかに現実的な脅威に(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただものとして、この記事より北朝鮮のSLBMの現実的驚異に触れた部分をこの記事より下に引用します。

SLBMの脅威は潜水艦の航続距離次第でどんどん高まります。北朝鮮が保有する「ロメオ級」は約7000キロの航続距離を持つとみられ、片道ならハワイ近くまで到達できます。
 2014年金正恩第1書記が、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)のロメオ級潜水艦を視察
このロメオ級は、北朝鮮では最大の潜水艦ではありますが、旧ソ連で作られその後中国でも100隻建造された主力潜水艦ですがいまではすべて退役している代物です。北朝鮮では、1973年に2隻を中国から取得し、1995年までに24隻を国内で建造したとされます。

ロメオ級のエンジンはディーゼル式で非常に音が大きいので、探知されやすいです。特に日米は旧ソ連の潜水艦に数十年も対処してきたという経験があり、対潜哨戒能力ではトップクラスにあることから、北朝鮮の潜水艦を探知するのはさほど難しいことではありません。

ただし、日米の哨戒機や、哨戒船が存在しない海域に予め水中に潜み、そこから急に、ミサイルを発射ということになれば、防ぐのは難しいです。さらに、エンジンをとめた状態で、潮流に乗って移動されると発見は難しいです。

ただ、どちらの場合も一度ミサイルを発射して、そこから離脱行動をとれば、かなり発見しやすくなります。

ただ、いずれの場合も、食料・水・燃料も片道分だけで、潜水艦の乗組員が自滅覚悟ということになれば、防ぐ手立てはありません。特に、すぐ近くから発射されれば、防御手段はありません。ロメオ級は、たしかにボロ船ですが、一度に数発核ミサイルを発射して、それで沈んでも本望と考えるなら、金正恩の野望を叶えることができるかもしれません。

こうした北朝鮮の脅威に対して、 岸田首相は、「今後の挑発行動について、注視していかなければならない」と警戒感を示しだけというのですから、驚きです。

岸田首相は9日午後、鈴鹿サーキット(鈴鹿市)で開催される自動車F1シリーズ日本グランプリのスタートセレモニーに参加のため、訪問していた三重・鈴鹿市で記者団の取材に応じ、北朝鮮の弾道ミサイル発射について「9月末からの短期間だけ考えても今回で7回目」と述べ、「私からは、情報収集、情報提供、安全確認を徹底するように指示した」と強調しました。

その上で、「引き続き、今後の北朝鮮の挑発行動については注視していかなければならない」と警戒感を示しました。

また、「日米、日韓、日米韓といった関係国との関係も密にしていかなければならない」と語りました。

一方、今回のミサイルは、SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)の可能性があると見られていますが、岸田首相は「弾種はまだ確認中だと報告を受けている」と述べるにとどめ、「確認でき次第、防衛大臣等から報告することになるだろう」との見通しを示したそうです。

注視するだけなら、誰でもできます。岸田総理にはもっと具体的な対策案を語っていただきたいです。

今回の弾道ミサイルがSLBMなのか否かは、まだわかっていないようですが、SLBM である可能性も視野に入れて、具体的な対応策を語っていただきたかったです。

9月下旬から弾道ミサイル発射を繰り返す北朝鮮への対応で、日本政府の手詰まりが鮮明になっているという報道があります。

岸田文雄首相は6日の衆院本会議で「国際社会とも協力して関連する安保理決議の完全な履行を進め、北朝鮮の非核化を目指す」と強調していました。

北朝鮮は4日、5年ぶりに日本上空を通過する弾道ミサイルを発射。首相は同日にはバイデン米大統領、6日は韓国の尹錫悦大統領と抑止力強化を確認したが、政府関係者は「北朝鮮は対話に応じる気配がない」と指摘していました。 

首相が目指す国際社会の連携も揺らいでいます。安保理では5月、大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射を受けた制裁強化案が、中ロの拒否権行使で否決されました。両国は4日の弾道ミサイル発射後も、安保理で非難声明を目指す動きに同調しませんでした。 

ロシアのウクライナ侵攻で繰り広げられた安保理内の対立が北朝鮮対応でも再現された形で、林芳正外相は7日の記者会見で、「一部の国々の消極的な姿勢により、行動できていないことは遺憾だ」と批判しました。政府関係者も「北朝鮮は国際社会の分断の隙を狙って、好き勝手にやっている」と指摘、打開策は見当たらないそうです。 安保理は2016~17年にかけて、北朝鮮によるICBM発射や核実験に対し、制裁決議を計6回採択したのですが、現状は様変わりしています。北朝鮮が7回目の核実験に踏み切るとの見方が強まっているのですが、政府関係者からは「安保理が、核実験は駄目だと言ってくれればいいが」との悲観論も出ているそうです。

これは、まさに私がこのブログで予想したとおりになりました。この予想を掲載した記事のリンクを以下に掲載します。
バイデン政権をかき乱す文在寅の北朝鮮交渉―【私の論評】文在寅5年間の対北融和政策の失敗等で、北・韓国が派手に外交の表舞台にでてくることはなくなる(゚д゚)!
2018年に開催された〝太陽節〟金日成主席の生誕祭

これは、2月1日の記事です。この記事より一部を引用します。
文在寅や金正恩は、結局何も変えられませんでした。何一つ世界に貢献することはありませてでした。プーチンもそうです。結局、韓国・北朝鮮、ロシアは米中対立を複雑にしただけです。

今後、韓国や北朝鮮が、外交の表舞台に出てくることはなくなるのではないでしょか。あるとすれば、北や韓国が直接ということではなく、北は中国やロシアが仲介することになるでしょう。韓国の場合は米韓の首脳級の会談などあまりなくなり、事務方の話し合いが中心になるのでないでしょうか。日本も韓国に力添えすることもないでしょう。

そもそも、北や韓国が派手に外交の表舞台に立っていたことこそが、異常だったのかもしれません。今後はそのようなことはなくなるかもしれません。

文在寅と金正恩は、結託して様々な工作をして、北朝鮮米国首脳会談などを実現させましたが、結局北は交渉のための材料となるようなものも提示せず、結局この会談はほとんど意味がありませんでした。その後も何の進展もありませんでした。

金正恩は、しばらくの間は制裁逃れなどのために文在寅を利用しましたが、結局その役にもほとんど役にたたなかったので、最終的には文在寅を見捨てました。文在寅は、結局金正恩にのせられて、金正恩の手のひらでピエロのように弄ばれただけでした。

このようなことはわかりきっているので、金正恩などまともに相手にしても、何も変わらないことを悟った米国を含む多くの国々が北や韓国などもまともに相手にしなくなったのです。

米国としては、たしかに北のミサイルは危険ですが、それにしても、ICBMは米国に到達するまでに撃墜できる可能性は高いですし、SLBMにしても、現段階では米国にある程度近づかなければ、発射しても届かない考えらます。

仮に近づこうとしたとすれば、ある程度長い期間航行しなければならず、そうなると通常型潜水艦であることから何度も浮上しなければならないことになり、米国はこれを容易に発見することができます。となると、これを阻止するのも容易です。

要するに米国にとって北のSLBMは日本にとっての危機ほど深刻ではないのです。

この記事では、「北は中国やロシアが (外交を)仲介することになるでしょう」としましたが、この当時はまだウクライナ戦争が始まっていなかったので、ロシアをあげましたが、現在ではロシアはウクライナ戦争でそれどころではなくなったので、北朝鮮の外交は中国を通じてしか行えなくなったとみても良いでしょう。

そうして、これは北にとっては、かなり都合の悪いことになりました。北は中国の干渉をかなり嫌っています。これについては、以前のブログでも述べたことがありますが、朝鮮半島に北朝鮮とその核があることが、結果として朝鮮半島全体が中国に浸透されるのを防ぐことになっています。そのためもあって、北の核廃絶がすぐに出来るとは米も考えていないでしょう。

北は、中国より金正男を金正恩が暗殺したことでもわかるように、中国の浸透を嫌っています。現在の北は、その大嫌いな中国を介してしか他国と外交をするしかない状態に追い込まれたともいえます。

今回の一連のミサイル発射はこの状況を打開するという目的もあったと考えらます。しかし、先にもあげたように、安保理は2016~17年にかけて、北朝鮮によるICBM発射や核実験に対し、制裁決議を計6回採択したのですが、現在ではそのような動きはありません。もはや、多くの国々がそのようなことをしても無駄だと悟ったからだと考えられます。

 日本の独自制裁について、政府関係者は「弾がほとんど残っていない」と語り、圧力には限界があるとの認識を示しているそうです。一方では、別の政府関係者は「当面は抑止力強化を進めるしかない」と漏らしたとされています。

        北朝鮮が日本上空を通過する弾道ミサイルを発射したことを受け、報道陣の取材に
        応じる岸田文雄首相(右端)=4日午後、首相公邸


確かに「当面は抑止力を進める」しかないのです。であれば、先日も主張した通り、日本の潜水艦もSLBMを搭載できるようにし、長距離ミサイルなども掲載できるようにすること、さらに、核シェアリングも検討すべきです。

さらに、原子力潜水艦の開発や、核開発を進めても良いです。これらのことをすべて一度にするということではなく、少しずつ検討して、検討する旨を公表し、北の態度が変わらなければ、検討から実行に移すという具合にすれば、日本はいくつもの外交カードを持つことになりなす。

従来とは変わり、世界の多くの国々が、そもそも北とまともに交渉したり、外交をしたりできると考えていないのですから、日本も変わらなければなりません。交渉したり外交したりできない国に対しては、日本の抑止力を高めるしかないですし、高める過程でいくつもの外交カードを手にすることができるのです。

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2022年10月8日土曜日

クリミアと露本土結ぶ橋で火災 トラック爆発か―【私の論評】ウクライナもしくは、ロシアの反対勢力が、貨物自動車を爆発させたのだとすれば、ロシア軍は奈良県警なみの大失態(゚д゚)!

クリミアと露本土結ぶ橋で火災 トラック爆発か

破壊されたするクリミア大橋

 2014年にロシアが併合を宣言したウクライナ南部クリミア半島とロシア本土を結ぶ自動車・鉄道橋「クリミア大橋」で8日、火災が発生した。ウクライナメディアが伝えた。交流サイト(SNS)上には、列車から火が上がる動画が投稿されている。

 露経済紙RBKは、国家反テロ委員会の見解としてトラックが橋の上で爆発し、近くを走っていた燃料輸送列車に引火したとと伝えた。

 一方、タス通信は、8日早朝に橋の線路上で「計器の誤作動」があり、燃料輸送列車が燃えたと報道。ペスコフ露大統領報道官は同日、プーチン大統領が政府委員会の設置を指示したと発表した。火災の詳細を調査するためとみられる。

 タス通信によると、火災で橋の一部が崩落。ロシアは橋を封鎖し、クリミアに物資を輸送するためのフェリーの準備を始めた。

 一方、ウクライナのポドリャク大統領府長官顧問は8日、「橋は始まりだ。非合法なものは全て破壊され、盗まれたものは全てウクライナに返還されなければならない」などとツイッターに書き込み、ウクライナ側の関与を否定も肯定もしなかった。

 クリミア大橋は、ロシア軍がウクライナ南部のヘルソン州などの前線に装備や物資を輸送するために活用しており、ウクライナ軍が以前から「攻撃する」と表明している。

【私の論評】ウクライナもしくは、ロシアの反対勢力が、貨物自動車を爆発させたのだとすれば、ロシア軍は奈良県警なみの大失態(゚д゚)!

ロシア軍にとってはこのクリミア大橋が使えないことは、大きな痛手です。特に、道路より鉄道の線路が破壊されたことは痛手です。なぜなら、ロシア軍は物資輸送のほんどを鉄道に頼っているからです。これについては、以前もこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
東部要衝リマン奪還 併合宣言直後、露に打撃―【私の論評】ロシア軍、ウクライナ軍ともに鉄道の要衝がなぜ軍事上の要衝になるのか(゚д゚)!


詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事の結論部分のみ掲載します。
リマンは、ロシア軍がドネツク州北部への軍事作戦や物流の拠点としていました。ウクライナ軍報道官は1日、リマンの解放は、ロシアが大部分を支配する東部ルガンスク州への進軍を可能とし、「心理的にもとても重要だ」と述べました。

ウクライナ軍は9月上旬に北東部ハリコフ州の広域でロシア軍を撤収させることに成功しました。更に隣接するドネツク州でも要衝リマンを奪還し、東部で反転攻勢を続けている形になりました。

以上のような状況を考えれば、ロシア軍にとってもウクライナ軍にとっても、いかにリマンが鉄道の要衝、すなわち軍事上の要衝であるのか理解できます。

今後ロシア軍はクリミアへの物資補給が困難になるのは明らかです。

クリミアは2014年からロシアが不法に占拠していて、その北側に位置するヘルソン、ザポリージャといった地域は今年の侵攻でロシアが新たに占領しました。クリミア大橋はそんなヘルソンの戦闘を支援するのに欠かせない、重要な兵站線です。足元ではこの地域でウクライナの大規模な反撃が目立っていて、ロシア側は苦戦中。クリミア大橋経由の補給ができなくなると、痛手は計り知れないでしょう。

タス通信では、クリミア大橋で燃料輸送列車が燃えたなどと報道していますが、この被害状況はその程度ものではなく、遥かに大きなものです。以下の動画をご覧になってください。


これは、明らかな爆破です。鉄道の線路や橋脚がどの程度破壊されているのかはわかりませんが、修理するにしてもある程度の時間を要するでしょう。

プーチンは7日、70歳の誕生日を迎えました。アルメニアのパシニャン首相ら旧ソ連諸国の首脳と同日開いた非公式会合では、お祝いの言葉を贈られたとみられます。

ただ、7カ月半に及ぶウクライナへの軍事侵攻でロシア軍の後退が伝えられ、「古希」のお祝いにも心中は穏やかではなさそうですし、しかも、これを狙ったかように次の日にクリミア大橋が破壊されたというのですから、これはかなりの衝撃をもたらしたと考えられます。

旧ソ連諸国首脳の非公式会合が7日、プーチン氏の故郷サンクトペテルブルクで開かれました。ロシアの国際的孤立が深まるなか、パシニャン氏のほかにベラルーシのルカシェンコ大統領やタジキスタンのラフモン大統領ら、ロシアに近い国々のトップが出席しました。

ペスコフ大統領報道官は6日、プーチン氏の誕生日の予定について「仕事の予定が詰まっている」と述べました。7日の非公式会合では、14日に予定される旧ソ連諸国の独立国家共同体(CIS)首脳会議に向けた準備を急ぐ見通しだったようです。長年の交流がある首脳から「誕生日のお祝いの言葉はあるだろう」と語りました。

クリミア大橋破壊によって、旧ソ連諸国のCIS首脳会議に暗い影を落とすのは間違いないようです。

ウクライナ内務省のビクトル・アンドルーソフ次官は今年5月8日、クリミアとロシア領クラスノダール地方と結ぶクリミア大橋について「この橋の運命は決まっている、絶対に破壊する」と明かして注目を集めていました。

ウクライナ国防安保委員会のオレクシー・ダニロフ氏は4月末にクリミアとロシア領クラスノダール地方と結ぶクリミア大橋について「準備が整い次第(HIMARSかM270から発射可能な弾道ミサイルATACMSが手に入り次第)破壊する」と明かしましたが、内務省のビクトル・アンドルーソフ次官も現地メディアの番組に出演して「まだ橋を攻撃できる武器をもっていない」と語りました。

クリミア大橋をいつ破壊するのか尋ねられたアンドルーソフ次官は「まだそのための武器がないんだ。正確に言えば橋に届く武器もあるが、もっともアゾフ海の海岸線に近づく必要がある。今約束できるのはクリミア大橋が間違いなく破壊されるという点だけで、唯一の問題はいつ橋が破壊されるのかだ」と述べており、この発言は直ぐにロシア側に伝わりペスコフ大統領報道官は「到底容認できない」と反発していました。

つまり戦勝記念日(5月9日)の前日に「唯一の問題はいつ橋が破壊されるのかだ」という発言が飛び出したことで「戦勝記念日の当日にクリミア大橋が破壊されて、プーチンが何らかの宣言を行うと予想されている式典を台無しにされるのではないか」とロシアは危惧していました。

ロシアによるウクライナ侵攻が始まってからは、この橋はクリミアを経由し、へルソンといったウクライナ南部の戦闘地域に物資を輸送する供給ラインであり、兵站上、非常に重要な交通の要衝となっています。それはつまり、この橋を破壊すれば、ウクライナ南部での戦闘において、ロシア軍の兵站は停滞することになり、ウクライナ側に有利に働くということです。

これをもちろんウクライナ側が黙って見ている訳がなく、西側から高機動ロケットシステムのHIMARSやハープーン対艦ミサイルといった長射程の精密攻撃兵器を受け取ったことで、橋の破壊を計画。「絶対に破壊する」と息まいていました。

これにロシアは橋が破壊されるのではと戦々恐々しており、最近、ミサイル攻撃を防ぐために橋に新たな装備の配備や演習を行っています。その一つがレーダーに探知されやすいように複数の反射板を設置した船舶を橋の近くに配置、ミサイルが誤認して舟を狙うことを狙っていました。

そして、もう一つが煙幕で橋を覆うことです。これらはミサイル誘導に使用されるレーザーを妨害するためです。しかし、総長18kmに及ぶ橋全体を守りきることは物理的に不可能であり、このように妨害策がもれていることからも、ウクライナ側も攻撃前にどこに防御装置が配備されているかは衛星などを使い、事前に情報を収集することは簡単であり、つまり、防ぐ術はないということでした。

全長10kmにも及ぶクリミア大橋

ロシア側も防ぎきれないことは分かっており、そこで最強の防護策をうってきました。ウクライナ側が橋の爆破を表明した際、ロシア側は「橋が爆撃されれば核兵器の使用は除外されない」と核の脅しを行ったのです。

ウクライナが橋を攻撃する上でも難点があります。その当時は、へルソン、メリトポリといった南部を抑えられていたウクライナが橋を攻撃するには射程300kmの兵器が必要でした。これができるのはHIMARSの短距離弾道ミサイルATACMS、またはハープーンのSLAM(Standoff Land Attack Missile)だけです。ATACMSはアメリカは提供しないといっており、そうするとSLAMだけになります。ハープーンに関しては、タイプについての言及はありません。

ロシアに属する地元当局は「ウクライナの破壊者」が引き起こしたもので、橋を通過する貨物列車の燃料タンクが爆発したと説明しています。

橋梁への損傷はなく、ケルチ湾内の船の航行にも影響はないとしています。

また、ロシアの「テロ対策委員会」は「自動車道で貨物自動車が爆発し、並走する鉄道の燃料輸送車両に引火した」と発表しています。

SNS上には上にもあげたように、橋の道路が崩落した映像なども投稿されていて、現地の当局が状況をさらに調べています。

ペスコフ露大統領報道官は同日、プーチン大統領が政府委員会の設置を指示したと発表しました。火災の詳細を調査するためとみられます。

もし、ロシアが核兵器を使うつもりがあるのなら、この橋を攻撃したことを理由にして、今頃核を使う準備をしているはずだとも思うですが、いまのところはその様子はみられていません。

ジャンピエール米大統領報道官は7日、ウクライナ侵攻を続けるロシアのプーチン大統領が核兵器使用の可能性を示唆していることについて「ロシアが核兵器を使う準備をしている兆候は見られない」と話し、米国の核体制を見直す理由は見当たらないと明らかにしています。

バイデン大統領が6日に「このままではキューバ危機以来、初めて核の脅威に直面する」と述べたことに関しては、警戒を強める具体的な情報があるわけではなく、プーチン氏の言動に対する懸念を示したものだと説明しました。その後も、ロシアが核を使うという兆候は見られていません。

ウクライナもしくは、ロシアの反対勢力が、貨物自動車を爆発させたのだとすれば、これはロシア軍の大失態ということになります。仮にその方法がどのようなものであったにせよ、ロシア軍は最重要拠点の警備ができなかったわけですから、日本でいえば、安倍元総理の暗殺を防げなかった奈良県警の失態と同程度以上の大失態です。

現状では、NHKの報道やSNSやYouTubeなどを見ている限りでは、クリミア大橋が被害を受けて、補修などしない限り、道路も鉄道も物資輸送などできない状況になっているのは間違いないようです。

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2022年10月7日金曜日

ロシア、トルコに冬服注文断られる 「クレムリン現政権の失敗」―【私の論評】当初の戦争目的を果たせないプーチンは海外に逃避し、ガールフレンドと平穏な余生を送るべき(゚д゚)!

ロシア、トルコに冬服注文断られる 「クレムリン現政権の失敗」

ザポリージャ原子力発電所周辺をパトロールするロシア兵

 インタファクス・ウクライナ通信は6日、ウクライナのレズニコウ国防相の話として、ロシアが第三国を通じて防弾チョッキ20万着と冬服50万着を調達しようとしたが、トルコに注文を断られたと報じた。レズニコウ氏は、ロシアがこうした物品の入手に困っているとの認識を示したという。

 同通信によると、レズニコウ氏はロシアの侵攻について「クレムリンの現政権の失敗だ」と断言。「誰かが責められるだろう。最も(非難される)可能性が高いのは、ロシアの軍人たちだ」と述べた。

 レズニコウ氏はまた、侵攻がうまくいかないことからロシアで今後、政権交代が起こるとも予測。「この瞬間に我々は反攻作戦を行うと共に、ウクライナの安全保障の枠組みについてロシアの新政権と協議する準備をする」とし、こうした道筋が戦争の終結やウクライナの領土回復につながるとの考えを示した。

【私の論評】当初の戦争目的を果たせないプーチンは海外に逃避し、ガールフレンドと平穏な余生を送るべき(゚д゚)!

ロシアは、弱り目にたたり目の状況にあるようです。つい先日には、招集兵に用意していた軍服150万人分が消えたとう怪事件も起こっています。

モスクワ・タイムズ(電子版3日付)によると、ロシア下院議員で元陸軍中将のアンドレイ・グルコフ氏が自身のSNSに、〈戦闘員の受け入れのために備蓄していた150万人分の軍服がどこへ消えたのか分からない。なぜこんな問題が起こるのか。誰も説明しようとしないのだ!〉と投稿。怒りをあらわにしたというのです。

一体、誰が何の目的で軍服150万人分を「消した」というのでしょうか。

筑波大名誉教授の中村逸郎氏(ロシア政治)が以下のように語っています。

「一般市民はもちろん、末端の兵士に持ち出せるとも到底考えられず、ロシア軍高官の工作だと考えられます。ある程度の組織でなければ、大量の軍服は動かせないでしょう。では、動機は何か。

事実上、ロシア軍は崩壊しており、新たな動員もままならない状況です。地上での作戦遂行が難しいとなると、プーチン大統領が取る選択肢は、戦術核を含む強力な兵器の使用に狭まってきているといえます。

ロシア軍からすれば、核兵器が使われる恐れのある死地へ仲間を動員させたくないわけです。しかも、ドネツク・ルガンスク2州を解放して『特別軍事作戦』は終わるのかと思いきや、4州を併合しても終わりは見えない。プーチン大統領への反発、反感が高まっていると考えれば、消えた軍服事件はロシア軍によるクーデターの予兆とも捉えられます」

記事によれば、部分動員令の発令後、当局は戦闘員に必要物資を供給すると確約。ところが、実際は当局から〈防寒着、冬用の迷彩服、ベレー帽、毛布などを各自で調達するように通達を受けた〉という。動員をかけたにもかかわらず、必要最低限の装備すら用意できず、「各自でどうにかしろ」と呼び掛けているのです。

自前の場合、安価な装備でも1人7万6000ルーブル(約19万円)かかるというから、酷な話です。

「戦線のロシア兵士は、無線機で怒鳴り合いのケンカが絶えないといいます。不十分な装備での戦闘を余儀なくされ、規律も取れず、もはや軍としての体をなしていないのでしょう」(中村逸郎氏)

“怪事件”の首謀者は誰なのか。ロシア国内はプーチン氏への不満がとぐろを巻いているようです。

この話しで思い出したのが、ベトナム戦争時の負けた側の南ベトナム政府軍です。南ベトナム政府軍でも制服は自前で調達させられていたと記憶しています。確かに、防弾チョッキも自前だったと記憶しています。

下の写真は、南ベトナム軍による暴動鎮圧の様子です。兵士の足元にある竹細工のようなものにご注目ください。


これ、何だと思いますか。これ実は、デモ鎮圧時に使うライオットシールド(暴動鎮圧用の盾)なのですが、正規のものがないので、竹籠を代用しているようです。これでも用は足りるのでしょうが、火をつけらたらどうするのかと思ってしまいます。また、鋭い刃物などこれでは防ぎきれないのではないかと思ってしまいます。

それと、兵士の着ている制服ですが、自前とあって、やはり長期間着ているのでしょうか、なにやらくたびれているように見えます。

それにしても、軍服など自前で調達しなければならないような軍隊は、とてもまともとはいえず、南ベトナムが負けたのも当然なのかもしれません。

それでも、ベトナムは気候は亜熱帯ですから、年中同じ軍服でも何とかなるでしょうが、ウクライナの冬は寒いです。そこで、防寒着もままならないロシア兵が寒さに凍えながら、戦闘するということになれば、勝ち目はないです。

ロシアでは2024年、大統領選挙があります。西側の制裁で、その時ロシアのインフレ率は、数十%になり、輸入に依存していた消費財は店から消えてなくなっているでしょう。プーチンは当選できません。


彼を支えるシロビキ(主として旧KGB=ソ連国家保安委員会。ソ連共産党亡き今、全国津々浦々に要員を置く唯一の組織)は、自分たちの権力と利権を守るため、かつぐ神輿をすげ代えようとするでしょう。

プーチンは核兵器や、化学兵器で最後の賭けにでるかもしれません。ただ、このブログでは何度も述べているように、破壊と戦争目的に遂行は全く別物です。

プーチンの元々の目的は、ウクライナのゼレンスキー政権を崩壊させ、ウクライナに傀儡政権を樹立して、事実上ウクライナをロシアに従属させることだったと考えられます。

この目的は、たとえ戦術核を用いて、ウクライナのいくつかの都市を破壊したとしても、成就しません。このようなことをすれば、西側諸国はさらにロシアへの制裁はさらに厳しい制裁を課すでしょう。これまでは、NATOは直接軍隊をウクライナに派遣することはありませんでしたが、本格的に送り込むことになるかもしれません。

そうなると、当初のプーチンの戦争目的はさらに遠のくことになります。 もうすでに、プーチンは戦争目的を果たすことは全く無理なのです。

現時点では、プーチンは2024年に失脚するのは間違いないと考えられます。核戦争などするなどの愚かな真似はやめて、かなりの財産を国外にドルベースなどで逃避させてあるでしょあうから、海外に逃亡して、ガールフレンドと平穏な余生を送るべきだと思います。

ブーチン(左)とその恋人とされるアリーナ・カバエワ

まかり間違って、クーデターや、革命などが起こってしまえば、悲惨な死を迎えるだけになってしまいます。どちらが良いかの計算くらいは、現在のプーチンにもできるはずです。

スリリングな逃避行を自叙伝で公表していただければ、是非読んでみたいです。そうして、その自叙伝には、ウクライナ侵攻に至る経緯や、戦争目的などについても是非とも記していいただきたいものです。

南ベトナムの、大統領だったグエン・バン・チューは、サイゴン陥落後はアメリカ軍の手を借りて台湾(台北士林)へ亡命し、その後イギリスのサリーにわたり、最終的にアメリカ合衆国マサチューセッツ州に移り住んで同地で病死しています。

現状だと、中国がプーチンの亡命の手助けができるかもしれません。ただ、プーチンが核兵器や化学兵器を使ったりすれば、中国としても国際世論を恐れて、プーチンを助けることをためらうようになることでしょう。

ただ、グエン・バン・チューは米国の傀儡に過ぎなかったわけですが、プーチンは違います。戦争を始めた張本人です。それを考えると、平穏な余生は夢のまた夢なのかもしれません。

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2022年10月6日木曜日

日本をうまく利用した中国、台湾と尖閣も必ず狙ってくる 関係を見直す時期ではないか―【私の論評】ODA と超円高と中国の日本浸透を許すことで、中国を怪物に育てあげてきた日本(゚д゚)!

日本の解き方


 日中国交正常化から50年が経過したが、この間に日中関係はどのように変化したのか。これから日本は中国とどう向き合うべきなのか。

 筆者と中国の関係は、約30年前の1990年代初めに天安門事件直後の日本政府職員としての訪中、約20年前の2000年代初めに米政府の研究者としての訪中、約10年前の10年代初めの日本の研究者としての訪中に分けられる。

 最初の訪中の時には、あまりの歓待ぶりに驚いた。政府開発援助(ODA)関連の政府高官の秘書的な役割で訪中したが、北京空港に着陸するや、通関なしで空港からパトカーに先導され、北京に向かった。人民大会堂で当時の副主席とも会談に立ち会った。

 その10年後に訪中したときには、かなり変化があった。北京空港は大規模改修後だった。それでも当時の中国の国内総生産(GDP)は日本の3分の1程度だったので、まだ日本に対して下手に出ていた。

 さらに10年後に訪中したときには、中国は北京五輪を終え、GDPが日本を追い越した後だったので、もはや日本は眼中にない感じだった。その当時は民主党政権だったことも関係しているだろう。

 30年前の訪中時に、政治体制の違う国がどのように経済発展するかに興味を持ったので、その後コツコツと自分なりの研究をし、たどり着いたのが、ある一定以上の民主主義がないと1人当たりGDPは長期的には1万ドルを超えにくい、という結論だ。今の中国をみると、そろそろその限界になりつつある。

 習近平体制の下で、民主化は期待できないばかりか、香港の一国二制度を拒否したので、専制主義を宣言したようなものだ。筆者の仮説が正しいとすると、今後、長期的には中国の経済成長を期待できない。

 それと、30年前の訪中後、中国に「核心的利益」という国家目標があることを知った。それは、ウイグル、南シナ海、香港、台湾と日本の尖閣諸島であるが、台湾、尖閣以外はこれまで着実に実行してきた。

 核心的利益は、言い換えると中国の海洋進出である。手始めに、内陸のチベットを固めて、やりやすい順に南シナ海、香港ときた。ここで台湾、尖閣をやらずに中国が海洋国家になることは不可能なので、必ず目標をやり遂げようとするはずだ。

 こうした観点から、日中関係をみると、日本は中国の国家目標にうまく利用されてきた歴史ともみえる。改革開放という言葉で、日本の経済界は夢を見たが、専制主義体制の下では改革開放は資本取引の自由までは進まず、自由主義国とは似ても似つかぬものであった。

 中国は相変わらず専制主義である。それが改まる気配はない。過去の歴史をみると、専制主義が多くなると、世界の安全保障は危うくなる。今のロシアによるウクライナ侵攻が好例だ。中国も台湾統一という言葉で、似たような野心がある。「台湾有事は日本有事」という安倍晋三元首相の至言を考えて、日中関係を見直す時期にきている。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】ODA 、超円高、中国の日本浸透を許すことで、中国を怪物に育てあげてきた日本(゚д゚)!

中国は、日本をうまく利用したと上の記事で高橋洋一氏は述べていますが、私はそれ以上だったのではないかと思います。日本は、中国の良いカモであり続けていると思います。それに一度反旗を翻したのが、安倍総理ですが、その後の岸田政権は、元に戻そうとしているようです。

中国の日本カモ化の第一は、日本は中国に対して莫大な援助をしてきたことでしょう。その最たるものは、途上国援助(ODA)です。

これは、何と40年以上にわたって継続されてきましたが、今年の3月末に終了しました。ODAは中国の発展を支えて日中の結びつきを強めた半面、援助を続ける必要性や、中国側の情報公開などをめぐって批判も受けてきました。

日本の対中ODAは1979年に始まりました。中国が戦後賠償を放棄した見返り、との性質もあったとされます。

国際協力機構(JICA)によると、ODAのうち、無償でお金を提供する「無償資金協力」は約1600億円、お金を貸す「円借款」は約3兆3千億円、「技術支援」の約1900億円で、計3兆6千億円余りを支援してきました。

援助の内容は、初期は港湾や発電施設などインフラ支援が主で、その後は地下鉄建設や内陸部貧困解消、環境対策など、時代が進むにつれて変わっていきました。

しかし、中国が急速な経済発展を遂げ、国防費も多額になっていきました。さらに日本から援助を受けている中国が、他の途上国に戦略的な支援を行うようになりました。

このODAは日本側が当初、目標に掲げた日中友好の促進にはつながりませんでした。中国政府が日本からの援助を国民に知らせなかったのです。中国側の民主主義の促進にも寄与しませんでした。共産党の一党独裁政権の鉄のような支配はこの半世紀、変わらず、むしろ強化されました。

こうした状況から、日本政府はODAが「役割を終えた」と判断。無償資金協力は06年、円借款は07年の時点でそれぞれ新規供与を終えています。そして、技術支援で継続していた事業も、3月末で完全に終了しました。

日本のODA資金が中国政府に軍事費増加への余裕を与えてしまいました。中国政府が非軍事の経済開発に不可欠とみなす資金が多ければ、軍事費には制約が出てきます。しかし、その経済開発に日本からの援助をあてることにより、中国は軍事に回せる資金は増やすことができました。

さらに、日本のODAで築かれたインフラ施設は、中国軍の軍事能力の強化に間接に寄与しました。日本の対中援助で建設された鉄道、高速道路、空港、港湾、通信網などのインフラ施設平和目的だけではなく、軍事的な効用を発揮することになりました。

そうして、日本のODAで築かれたインフラ施設が中国軍の軍事能力の強化に寄与しました。

たとえば、日本のODA30億円で蘭州からチベットのラサまで建設された3000キロの光ファイバーケーブルの敷設は、すべて人民解放軍部隊によって実施され、その後の利用も軍優先でした。

中国西南部の軍事産業の重要地域として有名な貴州省には、ODA資金約700億円が供与されました。鉄道、道路、電話網など、ほとんどがインフラ建設でした。貴州省には戦闘機製造工場はじめ軍用電子機器工場群や兵器資材を生産するアルミニウム工場や製鉄所がありました。その軍事産業インフラへの日本の資金投入は、中国側からすれば全部が軍事目的といって良いものでした。

日本政府は1993年に福建省の鉄道建設に67億円の援助を出していました。この鉄道は、福建省の鉄道網強化やミサイルへ兵隊の運搬を円滑にして、台湾への攻撃能力を高めることになりました。

当時も現在も中国軍は台湾に近い福建省内に部隊とミサイル群を集中的に配備しています。明らかにいざという際の台湾攻撃のための大規模な配備です。そうした軍事態勢では兵器や軍隊を敏速に動かす鉄道は不可欠であり、軍事態勢の一部だといえます。

1992年6月、日本政府は「ODA大綱」を制定しました。これは、ODAに関する基本方針です。日本のODAは米国とともに世界有数の規模となり、援助大国といわていましたが、一方であまりにも経済偏重で理念なき援助ともいわれてきました。

こうした批判にこたえたのがこのODA大綱でした。ここではODAの基本理念として、人道的考慮、国際社会の相互依存性の認識,環境保全、自助努力の支援をまず挙げています。大綱の4原則としては、(1)環境と開発の両立,(2)軍事的用途への不使用、(3)被援助国の軍事支出と武器輸出入の動向に注意、(4)途上国の民主化,基本的人権の促進,市場指向型経済の導入への注意、などを掲げました。

日本政府はこの「ODA大綱」に従えば、中国に対する軍事支援につながるODAは出すべきではありませんでした。対中ODAは大綱の規定にすべて違反していました。

その中国がいまや国際規範に背を向けて覇権を広げ、日本の領土をも脅かす異形の怪物になってしまいました。そうして、この怪物を育て上げたのは他ならぬ日本なのです。

中国により日本カモ化の第二は、日銀の金融政策の間違いによる強烈な円高です。
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岡三証券グローバル・リサーチ・センター理事長の高田創氏

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、日本が中国の鴨にされた部分を以下に引用します。

過去のデフレの真っ最中には、実は円が異様に高くなり日本で原材料を組み立てて、輸出するよりも、中国や韓国で組み立てて、そこから輸出したほうがコストがかからないという異常事態が発生しました。当然のことながら、日本から原材料を輸入しそれを組み立てて、輸出する中国や韓国のほうがさらに安いという状況でした。これでは、日本の国際競争力が落ちるのも必然でした。

このような状況では、国内で様々な製品を製造するよりも、国外で製造した方が安いということになり、日本国内の産業の空洞化がすすみ、中国や韓国の多数の富裕層を生み出すことになりました。

中国富裕層
特に韓国では、原材料を製造する技術も高くないし、そういうことをしようとする地道な技術者や経営者を馬鹿にし卑しみ、組み立てる人間が一番偉いという文化があり、日本のデフレはまさにこうした韓国にとっては、うってつけであり、日本がデフレの底に沈んでいるときには、優れた部品や素材を開発する日本を卑しみ、我が世の春を謳歌していたといっても過言ではありません。

挙げ句のはてに、日本では中国の富裕層をインバウンドともてはやし、これに頼るしかなくなる事業者も生まれでる始末でした。何これ?日本人あまりに惨めじゃないですか?なんで金持ちにしてやって、さらに奉仕までしなくてはないのですか?中韓が得ていた莫大な利益は、本来は日本企業や日本国民が得るものだったのではないですか?日銀がまともな金融政策さえしていれば、このようなことは起こらなかったはずです。
日本は、日金の金融政策の間違いで、強烈な円高を招き、この円高でも日本は、中国にカモにされていたのです。

現在、円安なので、金利を上げろなどと主張する人もいますが、そういう人たちは、日本を円高にして、また中国に有利にせよと主張していることに気づいてるのでしょうか。こういうと、通貨戦争を思い浮かべる人もいるかもしれませんが、通貨戦争は幻想に過ぎません。

通貨戦争のつもりで、自国の通貨を安くし続ければ、何がおこるかといえば、いずれインフレに悩まされることになります。だから、自ずと限界があるのです。そんなことよりも、日本は日本国内の都合で独自の金融政策をやれば良いと言っているだけです。中国に配慮して、わざわざ円高にする必要はないと言っているだけです。

中国による日本カモ化は、まだあります。カモ化の第三は中国の日本浸透による日本の技術等の剽窃です。

中国の覇権国家戦略の要である「統一戦線工作」により、中国は日本の政界から経済界、産業界、芸能界などあらゆる分野に浸透しています。これによる、日本の損失は、技術等だけに及ばするあらゆる方面に及んでいます。

外国資本が、自衛隊や海上保安庁の基地周辺の不動産や、北海道などの広大な土地を買いあさり、日本の団地に中国人が大勢住むようになり、その団地が彼らに占領されかねない状況になっていることなど、工作の例は枚挙にいとまがないです。

日本には、日本人学生16人に対して167人の中国人留学生が学ぶ高校がある(2018年当時)。NHKの『おはよう日本』が2018年に紹介した、宮崎県の日章学園九州国際高等学校です。

北海道東川町は、人口減少対策として町が自ら留学生集めに乗り出し、人口を増やすことに成功しています。街が授業料を半分負担し、寮の家賃を補助し、毎月8,000円分の買い物カードを付与し、全国で初めて町自らが日本語学校を開設したといいます。

町がここまで力を入れるのは、財政上のメリットがあるからだ。人口に応じて国から配分される地方交付税が魅力的で、東川町では約200人の留学生が住んでいるため、4,000万円を確保できるといいます。一方で、留学生のほとんどが、卒業後、町を離れてしまうそうです。

短期間しかいない留学生を呼びこむことで人口を増やし、地方交付税を増やすという取り組みは問題である。トロイの木馬のように、統一戦線工作の一環として日本に送りこんだ(日本の学校や町が招き入れた)中国人が、日本を着実に内部から侵略する事態になる可能性は十分ありえます。

中国は、統一戦線工作の国家であり「超限思考」の国家でもあります。『超限戦』(喬良、王湘穂著/劉琦訳/角川新書)は、原書が1999年に出版され、全世界に衝撃を与えた書です。

『超限戦』の本質は「目的のためには手段を選ばない。制限を加えず、あらゆる可能な手段を採用して目的を達成する」ことを徹底的に主張していることです。

民主主義諸国の基本的な価値観(生命の重視などの倫理、法律、自由、基本的人権など)の制限を超え、あらゆる境界(作戦空間、軍事と非軍事、正規と非正規、国際法)を超越する戦いを公然と主張しています。

超限戦の主張は、突き詰めれば、国家もマフィアやテロリストたちと同じ論理で行動せよということです。超限思考を信じる中国にとって、日本はまさに「カモ」以外の何物でもありません。

愚かなことに我が国は、非常に多くの安全保障上の制約やタブーを自ら設けています。日本人は、もっと危機感を持たなければいけないです。新たな危機と冷徹な国際社会の現実を踏まえ、未来を見据えた安全保障のあり方を議論すべきときが来ています。

日本は、ODAで中国を助け、中国の軍事を含むインフラを発展させ経済の基礎を築き、日銀の金融引締による円高で、今度は中国の経済を伸ばし、その後は「統一戦線工作」を封じなかったため技術移転などを促進させてきました。そのため、産業技術において、中国に自立するきっかけを与えることになりました。これによって、日本は結果的に中国を怪物に育て上げてしまったのです。

現在、 中国へのODAはなくなり、日本は円安です。この状態は中国にとってはかなり苦しいでしょう。特に、日本が円安ということは、中国にとっては大きな打撃です。

この2つは維持して、最後の「統一戦線工作」を日本が封じれば、中国にとっては大打撃です。

にもかかわず、愚かなことに我が国は、非常に多くの安全保障上の制約やタブーを自ら設けています。安倍元総理はこれを変えようとしたのですが、志半ばで暗殺されてしまいました。


日本人は、もっと危機感を持たなければいけないです。新たな危機と冷徹な国際社会の現実を踏まえ、未来を見据えた安全保障のあり方を議論すべきであり、根本的に日中関係を見直す時期にきているといえます。

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2022年10月5日水曜日

臨時国会は2次補正予算案が焦点 特定宗教の主体に限定した審議はテロリストの思う壺になる―【私の論評】今のままだと、岸田首相は来年5月の広島G7サミットを花道に勇退か(゚д゚)!

日本の解き方


 臨時国会が10月3日に召集された。会期は12月10日までの69日間の予定だ。

 この臨時国会では総合経済対策と補正予算の策定が見込まれるが、野党は旧統一教会問題で追及を強めるとみられる。会期中には20カ国・地域(G20)サミットなど外交日程もあるが、岸田文雄政権の課題は何か。

 岸田首相の所信表明演説では、(1)物価高・円安対応(2)構造的な賃上げ(3)成長のための投資と改革―の3つの重点目標を掲げた。(1)の物価高・円安対応では海外要因のコストプッシュをどうするかが問題だ。そのために、2次補正予算案が臨時国会に出される。

 岸田政権は、電気代の負担軽減に取り組むとしている。企業・世帯への現金給付案や電力会社への補助金で価格上昇を抑える案などで対応するのだろう。

 これはミクロ的には悪くないが、マクロの視点が欠けている。最終消費者への所得補助を行って有効需要を作り、価格転嫁を行いやすくして最終消費者も実質負担がないようにするのがベストな政策だ。

 そのためには、現在あるGDPギャップ(総需要と総供給の差)を埋めるような規模の経済対策がまず必要だ。GDPギャップが残ったままだと、余分な失業が残り、人手不足にならないので賃金の上昇も期待できなくなる。その結果、(2)の構造的な賃上げもできなくなる。

 最終消費者における負担軽減という観点からいえば、消費税減税や社会保険料減免が事務的に容易であり、効果が大きい。債務償還費のカットや外国為替資金特別会計(外為特会)における円安含み益の吐き出しなどでGDPギャップを埋めるほどの財源があるのだから、大型の補正予算案に手をこまねくこともないはずだ。

 しかし、財務省主導の岸田政権では、こうしたマクロ経済の理解が心もとない。この経済分野で野党は攻め所がいっぱいなので、ぜひ有意義な国会論戦を期待したい。

 今国会で提出される法案は多くない。次の感染症危機に向け個人や病院に対する行政権限を高める感染症法改正案や、1票の格差是正策として衆院小選挙区を「10増10減」する公職選挙法改正案など18本だ。その他原発再稼働や防衛費増額なども議論になるだろう。

 一方、野党からカルト被害防止法・救済法案を提出する動きがある。これは、安倍晋三元首相を暗殺したテロリストの〝思う壺〟だ。宗教法人の主体に着目する規制は邪道である。せめて現行の消費者契約法の改正など、行為に着目し、宗教法人に限定しない規制とすべきだ。

 筆者としては、特定宗教に限定した国会審議は避けてほしいと思っている。

 ニュージーランドのアーダーン首相は2019年3月のモスク襲撃事件後、議会で「(テロリストの)男には何も与えない。名前もだ」と述べた。今国会では、その意味でも暗殺者についての議論をしてほしくない。そんな話題はテレビのワイドショーにまかせておけばよく、国会にふさわしくない。国会は、国家の基本たる安全保障や経済を議論する場だ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】今のままだと、岸田首相は来年5月の広島G7サミットを花道に勇退か(゚д゚)!

このブロクでは、すでに掲載していますが、岸田政権の支持率は下がっています。理由無くして支持が減り、不支持が増えることはありません。最大の理由は、何をしようとしているのかが、まったく見えないことでしょう。

原発問題もその1つです。国民の間で原発の再稼働や新たな建設に強い懸念を示す声は多いです。岸田首相も先の通常国会では、「再稼働はしっかり進める」としつつ、新増設や建て替えは「現時点で想定していない」と明言していました。

ところが「この冬で言えば、最大9基の稼働を進め、日本全体の電力消費量の約1割に相当する分を確保する」。7月14日の会見での岸田総理の“原発9基稼働”発言と、その報道をめぐって論争が起きていました。


現在日本には、検査中も含めた稼働予定の原発と廃炉予定の原発を除いて、残りの16基の原発があり、トータル33基動かせる可能性がある原発があります。

岸田首相は、この残り16基の原発には触れずじまいで、新たな原発の建造等について語りました。現状では新原発建造にはかなりの年月を要します。既存の原発はすべて数十年を費やしています。

電気料金もそうです。9月29日、岸田首相は唐突に今後見込まれる電気料金の値上げに備え、激変緩和を目的とした新たな制度をつくると表明しました。首相によれば、来春以降2割から3割の値上げになる可能性があるといいます。

現在の国内の電力販売額(2021年度)は約14兆円です。2割なら2.8兆円、3割なら4.2兆円の値上げになります。1割を国が負担すれば1.4兆円の財政負担になります。

さらに、意味不明な「新しい資本主義」などとほざく前に、上の高橋洋一氏の記事にもあるように、GDPギャップをどのように埋めていくのか、その展望を語ることこそ首相の責任ではないでしょうか。

高橋洋一氏の試算によれば、現在の日本経済には30兆円超のGDPギャップがあるそうです。内閣府の試算はそれよりも低めで20兆円超のGDPギャップがあるとされています。内閣府がこのような試算をしているのであれば、岸田内閣は少なくとも真水で20兆円超の補正予算を組むべきです。

それでも、来春にまた、需給ギャップ相当分の10兆円程度の予算を組めば、日本はデフレから完璧に脱却できるかもしれません。

しかし、岸田政権が、今回の第二次補正で真水で10兆円以下の補正予算を組めば、 今後需給ギャップを解消できず、デフレ傾向は続き、せっかくコロナ禍にありながらも、安倍・菅政権で合計で100兆円の補正予算で、維持してきた雇用や経済を毀損してしまいかねません。

そうして、財源は外為特会などをあてることも考えれば、潤沢に存在します。今更、財務省期限の国の借金一人あたり1000万円説などを言ったとしても、自民党内積極財政派を納得させることはできません。

すべてがこの調子で、行き当たりばったりで整合性もありません。説明も十分に首相自身ができないです。これでは不信がつのって当然です。

10月から多くの生活必需品の値上がりが始まりました。円安やロシアのウクライナ侵攻によって輸入商品が大きく値上がりしているからです。一方国内に目を転じてみれば、コアコアCPI前年同月比は1.6%の上昇にすぎず、日本経済にはGDPギャップが存在していることは明らかで、日本銀行が現行では、金融緩和を続けていくべきは明らかです。そうなると、しばらくは、円安は続いて行くことになります。

円安により、輸出企業は空前の好景気にわいており、これはGDPを押し上げることになりますが、円安の影響で輸入物価が高騰し、家計は、物価は上がるが、賃金は上がらず生活が苦しくなっています。企業も原価の高騰を販売価格に転嫁しにくい状況です。特に中小企業はそうです。

この状況を解決するためにも、政府は是が非でも、需給ギャップを埋める対策を実行すべきなのです。まずは、比較的中小企業の多い輸入企業に対する大型対策や、物価対策などを行い輸入価格高騰の軽減策を行うべきです。さらに、減勢や給付金などの大型対策を打つべきです。

アベノミクスのもとで続いてきた金融緩和を継続しつつ、いかにGDPギャップを埋めていくか、岸田首相の本気度が問われています。


岸田首相は、旧統一教会問題も意識してというか、それを利用して、安倍派排除のための内閣改造・党人事を前倒しで行いました。ところが、改造後の内閣の閣僚にも、統一教会との関係者がでる始末で、大ブーメランを受ける結果となってしまいました。

特定の宗教を排除することは憲法違反になるのは明らかであり、実施するなら、統一教会が重大犯罪をおかしているなら、この訴訟をすすめ、さらに多額の献金などが問題であれば、法の整備をすすめるべきでした。そのようなことをせず、いきなり統一教会の排除を進めてしまいました。

さらに、内閣改造中に、中国が日本のEEZ内にミサイルを発射したのですが、内閣改造で頭がパンパンだったとみえる岸田総理は国家安全保証会議(NSC)を開催しませんでした。北朝鮮のミサイル発射時には、すぐにこれを開催していました。中国のミサイルは安全で、と北のミサイルは安全だとでもいうのでしょうか。全く矛盾しています。

国葬儀に関しても、岸田首相は煮えきらない態度をとっています。国葬儀の根拠については、内閣設置法によるもので、これは明白すぎるくらい明白であるにもかかわらず、それを押し通そうとはせず、反対の声に迎合するような態度をとってしまいました。

統一教会でも、国葬儀でも、岸田総理は野党やマスコミの土俵の上に自ら乗った形となり、とんでもないことになってしまいました。

かつての中選挙区制時代の自民党なら、自民党内で侃々諤々の議論が巻き起こったはずです。自民党は派閥の集合体のようなもので、派閥が違えば同じ選挙区で激突していました。

「物言えば唇寒し」などということはありませんでした。これこそが自民党の活力の源泉でした。それが小選挙区制の導入によって、党の公認さえもらえれば地道な選挙活動を行わずとも当選できる仕組みになってしまいました。党執行部の顔色ばかり見ている議員が増えてしまったようです。小選挙区制の害悪にあらためて目を向ける必要がありそうです。

いまの岸田内閣の現状を見れば、本来なら野党は様々な問題で自民党を追求できるはずです。以前もこのブロクで「青木率」(青木幹雄、元官房長官・参院議員)を紹介したことがあります。

これは内閣支持率と与党第一党の支持率を合わせて50%を切ると内閣は倒れるというものです。毎日新聞と社会調査研究センターが9月17日と18日に行った調査結果では、内閣支持率はわずか29%、与党第一党の自民党の支持率は23%でした。合わせて52%なので、50%切りにひたすら近づいているということです。

しかしいまの野党の現状では、この「青木率」も残念ながら通用しないです。これもまた異常事態です。

先に紹介した朝日新聞の世論調査では、「成長と分配の好循環を目指す『新しい資本主義』を掲げている」岸田首相の経済政策に期待できるかを尋ねると「期待できる」は25%、「期待できない」は69%となっています。

物価対策では「評価しない」が71%にもなっています。ところが、野党への評価も厳しいです。野党に期待できるかという問いには、「期待できない」が81%にもなっているのです。

平成30年「桜を見る会」で演説する安倍首相

本当は野党に奮起してもらいたいところですが、それも無理なようです。結局過去の「もり・かけ・桜」の延長線上で、今度は「統一教会・国葬」等、元々問題でないものを問題として、エネルギーを費やし、与党もそれでエネルギーをとられることになるものの、野党はさらに大きなエネルギーを使いさらに党勢を衰えさせることになるでしょう。

このままの状態が続けば、岸田首相は、来年5月に広島市で開催する先進7カ国首脳会議(G7サミット)を花道として勇退することになるかもしれません。そうして、この動きには野党はまったく関与できないでしょう。ただ、統一教会、国葬で退陣に追い込んだと思い込み、悦に入るかもしれません。そうではないことが、その後の選挙で明白になると思います。

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2022年10月4日火曜日

北朝鮮、SLBM発射兆候も確認“核実験へ向け軍事的挑発の段階高める”との見方も―【私の論評】これから発射されるかもしれない北朝鮮のSLBMのほうが、日本にとってはるかに現実的な脅威に(゚д゚)!

北朝鮮、SLBM発射兆候も確認“核実験へ向け軍事的挑発の段階高める”との見方も


韓国軍は北朝鮮が発射したのは中距離弾道ミサイル1発で日本上空を通過し、約4500キロ飛行したとの分析を示しました。

尹錫悦大統領は北朝鮮の核・ミサイルに対応するため、日米韓の安保協力の水準を高める協議を行うよう指示しました。

韓国軍によりますと、北朝鮮は4日午前7時23分ごろ、北部の舞坪里一帯から東の方向に向け、中距離弾道ミサイル1発を発射し、日本上空を通過したと発表しました。高度は970キロ程度で、飛距離は約4500キロと分析しています。

北朝鮮のミサイルが日本の上空を通過したのは、2017年9月に発射された中距離弾道ミサイル「火星12」以来で、韓国の専門家は今回も「火星12」の可能性が高いとの見方を示しています。北朝鮮によるミサイル発射は、この10日間で5回目と異例の頻度です。

先週、日本海で行われた米韓、日米韓による合同訓練への反発とみられますが、さらに、SLBM(=潜水艦発射弾道ミサイル)の発射兆候も確認されています。北朝鮮が7回目の核実験に向けて軍事的な挑発の段階を高めているとの見方もあります。

また、韓国政府は南北通信連絡線での4日朝の連絡に北朝鮮側が応じていないと明らかにしました。

【私の論評】これから発射されるかもしれないSLBMのほうが、日本にとってはるかに現実的な脅威に(゚д゚)!

韓国国防部は4日、国会国防委員会による国政監査に対し、北朝鮮が核実験を実施できる状態を維持しており、液体燃料の新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)と潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射実験も準備していると報告しました。北朝鮮はこの日午前、中距離弾道ミサイル(IRBM)を発射しています。

国防部は「北は寧辺原子炉など主要な核施設の正常稼働と核実験が可能な状態の維持、核能力の高度化に向けた努力を続けている」と報告しました。

李鐘燮(イ・ジョンソプ)同部長官は国防委員会所属の野党議員から北朝鮮が核実験準備を完了した時期を問われ、「今年5月ごろ」と答えた。核実験の実施時期については予断を許さないとしました。

北朝鮮が核実験を実施すれば7回目となる。李氏は「(実際に)使用するための小型(核兵器)かもしれないし、(6回目核実験の時より)もっと威力が大きいかもしれない」との見解を示しました。

国防部は核の先制攻撃をちらつかせる北朝鮮を抑止する対策として、圧倒的なミサイル・特殊戦能力の向上をはじめとする韓国型3軸体系の強化計画を挙げました。3軸体系は、北朝鮮のミサイル発射の兆候を探知して先制攻撃するキルチェーン、発射されたミサイルを迎撃する韓国型ミサイル防衛体系(KAMD)、北朝鮮から攻撃された場合に指導部などに報復攻撃を行う大量反撃報復(KMPR)からなります。


日本も、韓国と同等以上の備えをすべきです。

北朝鮮は5月7日午後、SLBM=潜水艦発射弾道ミサイルと推定される短距離弾道ミサイル1発を発射したと発表しました。3日後に、米国との同盟関係の強化を掲げる韓国のユン・ソギョル(尹錫悦)政権が発足するのを前に、米韓をけん制するねらいがあるとみられました。

今回も、SLBM(submarine-launched ballistic missile=潜水艦発射弾道ミサイル)の発射兆候も確認されており、近日中に発射される可能性は高いです。

SLBMは敵から核先制攻撃を浴びた場合、自らもSLBM反撃で2次報復が出来る相互確証破壊(MAD)の戦略兵器です。冷戦時代から核戦争を防止する抑止力として「恐怖の均衡」を維持してきました。

簡単に言うと、仮に北朝鮮が核やその他の攻撃で壊滅的な打撃を被っても、潜水艦は生き残り、核弾頭を搭載したSLBMによる反撃ができるというものです。

北朝鮮というと、すぐに「ロフテッド軌道」の脅威がいわれますが、これに対しては、日米が新型の「SM-3ブロック2A」を共同開発しています。推進部のロケットモーターの径を増やして推進速度と到達高度を高め、キネティック弾頭の命中精度も向上させました。

ロケットモーター部分の開発は日本が担当しました。防衛省は、17(平成29)年度の概算要求で147億円分の取得経費を計上していました。複数の核弾頭にも対応済みです。

2015年3月、ヘイニ米戦略司令官(海軍大将)は“北朝鮮は核小型化に成功してSLBMを開発中だ”と指摘しました。北朝鮮はすべてが旧式ではあるものの、73隻の潜水艦・艇を保有して保有数だけは世界一です。
 
すでに、SLBMテスト発射を繰り返してSLBM搭載潜水艦を配備する見通しです。

1988年「イラン・イラク戦争」の時、イランがイラク首都バグダドに発射した88発のスカットミサイルは北朝鮮製でした。北は91~96年シリアにスカットミサイル150基を輸出して99年にはリビアに5基、2001~2002年はイェメンに45基を輸出しました。
 
1987~2009年、世界の弾道ミサイル輸出は1200基の内510基(40%)が北朝鮮製で1位でした(ロシア製2位:400基、中国製3位:270基)。輸入国はエジプト、シリア、イラン、リビア、イェメン、UAE、パキスタンでした(米モントレー大学国際問題研究所、2011年3月)。
 
因みに、国際平和研究所(SIPRI)集計によれば国際武器市場でスカット-Cミサイルはベストセラー武器になっているようです。更に「北朝鮮は2014年現在16個の核兵器を保有しており20年まで100個保有能力がある」と米ジョンス・ホプキンス大学、米韓研究所は指摘していました(16年2月)。
 
北は食糧難で貧しい片田舎国というイメージですが先端分野の「核開発」「弾道ミサイル技術」「サイバー戦」「特殊戦戦力」「潜水艦・艇戦力」は先進国に近いレベルである事が分かります。特に、米、中など強大国を振り回す瀬戸際外交戦略は国際政治学界の話題になって久しいです。彼らを過小評価すべきではありません。

SLBMの脅威は潜水艦の航続距離次第でどんどん高まります。北朝鮮が保有する「ロメオ級」は約7000キロの航続距離を持つとみられ、片道ならハワイ近くまで到達できます。

 2014年金正恩第1書記が、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)のロメオ級潜水艦を視察

このロメオ級は、北朝鮮では最大の潜水艦ではありますが、旧ソ連で作られその後中国でも100隻建造された主力潜水艦ですがいまではすべて退役している代物です。北朝鮮では、1973年に2隻を中国から取得し、1995年までに24隻を国内で建造したとされます。

ロメオ級のエンジンはディーゼル式で非常に音が大きいので、探知されやすいです。特に日米は旧ソ連の潜水艦に数十年も対処してきたという経験があり、対潜哨戒能力ではトップクラスにあることから、北朝鮮の潜水艦を探知するのはさほど難しいことではありません。

ただし、日米の哨戒機や、哨戒船が存在しない海域に予め水中に潜み、そこから急に、ミサイルを発射ということになれば、防ぐのは難しいです。さらに、エンジンをとめた状態で、潮流に乗って移動されると発見は難しいです。

ただ、どちらの場合も一度ミサイルを発射して、そこから離脱行動をとれば、かなり発見しやすくなります。

ただ、いずれの場合も、食料・水・燃料も片道分だけで、潜水艦の乗組員が自滅覚悟ということになれば、防ぐ手立てはありません。特に、すぐ近くから発射されれば、防御手段はありません。ロメオ級は、たしかにボロ船ですが、一度に数発核ミサイルを発射して、それで沈んでも本望と考えるなら、金正恩の野望を叶えることができるかもしれません。

このようなことは、先進国では考えられませんが、北朝鮮のような全体主義国家では十分可能です。このような作戦を敢行して、自滅した潜水艦の乗組員らは、英雄として称えられることになります。

北朝鮮がSLBMを完成させ、さらに実戦配備まですれば、世界の軍事バランスが崩れる可能性もあります。日本にとっては、これこそが大きな脅威になる可能性が高いです。ただ、この軍事バランスにおいては、認識しておかなければならないことがあります。

北朝鮮の核はSLBMも含めて、北京など中国も標的にしているということです。北朝鮮に核が存在することと、北朝鮮が朝鮮半島に存在するということ自体が、中国が朝鮮半島に浸透することを防いできたという面は否めません。金王朝は明らかに、朝鮮半島が中国に浸透されることを嫌がってきました。中国に近かった金正男氏の暗殺は如実にそれを示しています。

北朝鮮が存在しなければ、中国はずっと以前に、朝鮮半島を中国に併合し、中国の朝鮮省か、自治区にしたことでしょう。少なくとも半島全体に深く浸透していたことでしょう。朝鮮半島に中国傀儡政権が誕生していたかもしれません。

中国は常に北朝鮮の核を「暗黙の了解」で庇ってきました。しかし、庇ってきた背景には、北の核に対する脅威もあったものと考えられます。米国は北核放棄の条件付で韓国、日本、台湾の「核容認外交カード」を対中国外交カードとして交渉するのが望ましい選択肢ではないでしょうか。中国にとって一番怖いのは日本の核武装だからです。

ただ、北朝鮮は核を有し、中国の浸透を嫌うが故に、中国の思い通りにはならない可能性もあります。

日米は、北朝鮮を仲間にひきいれるということも考えられなくもないですが、それをすれば、日米は全体主義国家を仲間として認めることになります。それは、第二次世界大戦時に、米国が当時のソ連を仲間にひきいれたのと同じ失敗を繰り返すことになりかねません。

そもそも、米国はソ連と対峙していた日本をソ連と手を組むことによって、攻撃することにより、結果としてソ連の台頭をまねき、今日北の核ミサイルの脅威に脅かされることになってしまったのです。それどころか、中露が国連常任理事国であるという、信じがたい状況を招いてしまいました。ウクライナ戦争で、常軌を逸したプーチンは、再度米国を核ミサイルで恫喝するかもれしません。

日本としては、「核容認外交カード」を用いるにしても、中国と北朝鮮と同時に交渉を行うようにし、中国と北朝鮮を互いに競い合わせたり、中国と北が互いに離反する形にもっていくべきです。

さらに、核武装の前に、以前もこのブログに掲載したように、日本も潜水艦にSLBM を搭載できるようにすべきです。日本がこれを潜水艦に搭載できれば、かなり命中精度の高いものを搭載できるはずです。たとえ、核兵器を持たないにしても、敵基地は無論のこと、中国の三峡ダム、北朝鮮の豊水ダムを飽和攻撃で確実に破壊することができます。



中国の三峡ダムを破壊すると、中国全土の4割が洪水に見舞われることになるといわれています。北朝鮮の豊水ダムを破壊すれば、ただでさえ電力不足の北朝鮮の電力逼迫の状況をさらに、深刻にすることができます。

中国や、北朝鮮にはこのようなウィークポイントがいくつもあります。これらを攻撃できる体制を整えれば、日本にとってかなりの抑止力となることは確かです。ただ、核はあったほうが、心理的にも、実用的にも安全保障の面で、日本が有利になるのはいうまでもありません。

もし、日本が核武装すれば、中露北はパニックに陥ることでしょう。日本が核武装するということは、単に日本が核兵器を配備するにとどまらず、日本が他の先進国と同じく、軍事国家になることを意味するからです。

軍事国家という言葉は、日本では忌み嫌われるようですが、いかなる国でも、軍事国家的な側面がなければ、その国は消滅するか、真の独立を維持することはできません。まさに、今の日本がその状態です。そうして、今振り返ると2014年のウクライナがその状態でした。日本は、そろそろ目覚めるべきです。

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2022年10月3日月曜日

長期化するウクライナ戦争 露わになるプーチンの誤算―【私の論評】2024年プーチンが失脚しても、ロシアは時代遅れの帝国主義、経済を直さないと、ウクライナのような問題を何回も起こす(゚д゚)!

プーチンの傲慢さは、日露戦争の「悲惨なロシア」と酷似している

1904年2月、日本軍が満州でロシア艦隊を攻撃する様子

ウクライナ侵攻で苦戦するプーチンは、もはや後に引けなくなっている。その裏には、彼の過剰な自信と油断がうかがえる。かつて日露戦争で小国ニッポンを過小評価して敗北したニコライ二世のように、プーチンも同じ道を辿るのだろうか──。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、自らを歴代のロシア皇帝になぞらえ、過去の輝かしい戦勝の記憶を国民に思い出させようとしている。6月、プーチンは18世紀の大北方戦争でバルト海沿岸地域の領土を「奪還し、強化した」ピョートル大帝(ピョートル一世)を讃えた。

しかし、ロシアによるウクライナ侵攻が長引くなか、歴史家からはプーチンを初代ロシア皇帝よりも、むしろ日露戦争(1904~05年)で莫大な被害を出したニコライ二世に重ねる声が上がりはじめている。

この2つの戦争に共通点があることは否定できない。ニコライ二世が日本を過小評価していたように、プーチンもウクライナはすぐに降伏すると思い込んでいた。

ニコライ二世がロシア海軍の敗北によって面目を失ったように、プーチンも想定外の苦戦を強いられている。特にロシア軍の黒海艦隊の旗艦がウクライナの攻撃を受けて沈没したことは象徴的な敗北となった。それだけではない。日露戦争でロシア軍が繰り広げた残虐行為がニコライ二世の統治に影を落とし、ロシアの国際的地位を傷つけたように、ウクライナでの戦争はロシアとプーチンの評判に深刻な打撃を与えている。

「日本に勇気があるはずがない」という思い込み

もちろん、この2つの戦争には違いもある。最大の違いは、日露戦争はロシアではなく日本が仕掛けた戦争だったことだ。

また、ニコライ二世の傲慢さの背景には、人種差別的な側面があった。「大国ロシアにとってアジアの国など恐れるに足らず、日本にロシアの軍隊を攻撃する勇気などあるはずがない」という考えだ。しかし1904年2月4日の夜、この思い込みは粉々に打ち砕かれた。日本の駆逐艦隊が満州の旅順港に停泊していたロシア艦隊に奇襲をかけたのだ。

日露戦争の背景には、満州の支配権をめぐるロシアと日本の思惑があった。第一次世界大戦に先立つ日露戦争は「第ゼロ次世界大戦」とも呼ばれる。日露戦争の開戦前に行われた交渉で、日本は満州をロシアの勢力圏と認める代わりに、大韓帝国を日本の軍事・政治的勢力圏と認めるようロシアに提案した。

ニコライ二世は日本の提案に応じず、ロシアと韓国の間に中立的な緩衝地帯を設けることを要求した。この頑なな態度の背景には、盟友であるドイツのヴィルヘルム二世の存在があった。ヴィルヘルム二世はニコライ二世に対し、君は「白色人種の救世主」であり、日本人を恐れる理由などないと言い聞かせた。

日本軍の旅順攻撃は、この妄想を見事なまでに打ち砕いた。旅順攻撃は物的な被害こそ小さかったが、ロシア人のプライドに与えたダメージは計り知れない。ロシア海軍が旅順港で停泊している間に日本の攻撃を受け、主導権を握られたという事実がロシア国民に与えた衝撃は大きい。

日本軍は旅順港を包囲するために高地の要所を占拠し、長距離砲を使ってロシアの封鎖艦隊の艦船を砲撃した。これはウクライナ侵攻の初期にロシア軍がキーウを断続的に攻撃した際に、ウクライナ人がロシアの不運な戦車を破壊するために用いた戦法でもある。

結局、ニコライ二世が派遣した6隻の艦船はすべて沈没、ロシア兵は凍てつく旅順港に取り残された。補給線を断たれ、戦う大義もないまま包囲された兵士たちの士気は急速に低下した。

初の大規模な陸上戦となった鴨緑江の戦いでは、日本軍がロシア軍の東部兵団を突破した。この段階でようやくロシア、そして世界は日本の軍事力を真剣に捉えるようになる。

ロシアにとって衝撃的な敗北ではあったが、日本側の被害も大きく、ロシア軍は皇帝の信頼に恥じない働きをしたと見なされた。しかし、その名誉もロシア兵が満州の中国人を強姦し、殺害していることが報じられると失われた。この点もウクライナでの戦争と重なる。

ロシア艦隊は自らの愚行と、不運と、日本軍の巧みな操船術に翻弄され、敗走を重ねた。世界海戦史上、最も長距離で行われた砲撃戦と言われる1904年8月の黄海海戦でも、日本の連合艦隊はロシア艦隊に勝利した。

約5000人のロシア兵を失う

それでもなお勝利を確信していたニコライ二世は、ロシアが誇る強大なバルチック艦隊をヨーロッパからはるばる極東へと向かわせた。しかし、この援護作戦は大失敗に終わる。バルチック艦隊は途中、北海で数隻の英国の民間漁船を日本軍の襲撃船と誤認して砲撃するという失態を犯し、ニコライ二世の海軍は世界中から嘲笑を浴びた。

7ヵ月後の1905年5月、バルチック艦隊は長い航海の果てにようやく極東に到着するが、疲労の色は濃く、ものの数時間で壊滅した。ロシアは戦艦8隻をすべて失い、約5000人のロシア兵が命を落とした。

その後、日本の陸海軍の連合作戦によって樺太が占領されると、ニコライ二世は講和を進めざるを得なくなった。日本とロシアは、セオドア・ルーズベルト米大統領の仲介の申し出を受け入れ、米ニューハンプシャー州ポーツマスで講話交渉の席に着いた。

ロシアは韓国が日本の勢力圏であることを認め、満州から撤兵することに同意した。ニコライ二世は戦争賠償金の要求を退けることには成功したが、失墜したロシアの威信を取り戻すことはできなかった。ロシア国民の怒りはロシア革命へと発展し、ニコライ二世は退位を余儀なくされ、後に処刑された。

プーチン率いるロシアは、世界ののけ者に

あくまで、ウクライナでの戦争は日露戦争と酷似しているわけではない。しかしプーチンがウクライナ人を著しく過小評価していたことと、侵攻がもたらす戦略的影響を軽視していたことは間違いない。

かくしてフィンランドとスウェーデンは北大西洋条約機構(NATO)への加盟を申請し、プーチン率いるロシアは世界ののけ者となった。この戦いがどのような結末を迎え、プーチン政権にどのような影響を与えるのかはまだわからない。

米国のシンクタンク、ブルッキングス研究所の軍事専門家で、まもなく『Military History for the Modern Strategist(現代の戦略家のための軍事史)』を上梓するマイケル・オハンロンは「交戦国の顔ぶれ、戦闘の性質、地理、帝国主義的な野心、戦闘の随所に見られた人種差別的な側面など、細部を見れば日露戦争とウクライナでの戦争には相違点も多い」と語る。しかし、こう続ける。

「ロシアの大規模な軍事行動に散見される過剰な自信と油断──この点に注目すれば、この2つの戦いにぞっとするような類似性が認められることは確かです」

【私の論評】2024年プーチンが失脚しても、ロシアは時代遅れの帝国主義、経済を直さないと、ウクライナのような問題を何回も起こす(゚д゚)!

フィナンシャル・タイムズ紙は、「プーチンの諸々の誤算(Vladimir Putin’s catalogue of miscalculations)」と題する社説を9月17日付で掲載している。社説の主要点は次の通りです。

・ハルキウ地方でのロシア軍の敗走は、ロシアの大きさと軍事力が、より小さなウクライナを簡単に制圧でき、ウクライナ人はロシアを「解放者」として歓迎するとのクレムリンの間違った期待を再度際立たせた。

・同地方での敗走は、それまで投入した兵力をキーウ周辺と北部から同地に振り向ければ、総動員なしでも東部ウクライナ全域を占拠、保持できると考えたモスクワの過ちを明らかにした。

・西側諸国が彼ら自身の経済をも傷つける対ロシア制裁に対し意欲を欠き、西側の団結は早く壊れ、キーウに戦争をやめるように圧力をかけるという前提も誤りだった。プーチンは欧州への天然ガス供給を急激に減らしたが、欧州連合(EU)各国間に相違は残るものの、共同の準備と衝撃緩和のための大きな前進が見られた。

・西側の協調した反対姿勢は、非西側諸国、特に中国が米国中心の国際秩序に挑戦するという共通の利益のために味方になるとの、プーチンのもう一つの前提についても、後退を余儀なくさせた。

・上海協力機構会議で、習近平はウクライナ戦争への「疑問や懸念」をロシアに伝えるとともに、カザフスタンに対し「いかなる勢力の干渉」(注:ロシアの干渉が最もあり得る)に対してもカザフスタンの主権と一体性を守ると述べた。

・同じくインドのモディ首相は、今は「戦争の時期ではない」と述べ、公にウクライナ侵攻を批判した。

・プーチンの誤算は西側民主主義国には朗報であり懸念材料でもある。これまでの多くの誤算は、プーチンがウクライナでより広い敗走に直面した場合、今後の彼の決定も賢明であるとは信頼できないことを示すからだ。

プーチン大統領がウクライナ4州のロシアへの編入を強行し、この地方の奪回を「ロシアに対する攻撃」と核兵器で反撃する口実を与えることになったが、米国を含む北大西洋条約機構(NATO)諸国は、その場合ロシアの黒海艦隊の殲滅など壊滅的な打撃を与えると警告しているようだ。

米国を訪問していたポーランドのズビグニェフ・ラウ外相は27日NBCテレビの報道番組「ミートザプレス」に出演し、ロシアのプーチン大統領が核兵器使用も辞さないという態度を示していることについて次のように語りました。

ポーランドのズビグニェフ・ラウ外相

「我々の知る限りプーチンは戦術核兵器をウクライナ国内で使用すると脅しており、NATOを攻撃するとは言っていないのでNATO諸国は通常兵器で反撃することになるだろう」

ラウ外相はこうも続けました。

「しかしその反撃は壊滅的なものでなければならない。そして、これはNATOの明確なメッセージとしてロシアに伝達している」

これに先立ち、ホワイトハウスのジェイク・サリバン国家安全保障問題担当補佐官は25日の「ミートザプレス」に出演し、ロシアが核兵器を使用した場合は「ロシアに破滅的な結果を与える」と言い、これはロシアの当局者との個人的なやりとりを通じてロシア側にはっきりと伝えてあると言明しました。

その「壊滅的反撃」や「破滅的な結果」をもたらすものが具体的にどんな作戦なのかは不明ですが、それを示唆するような記事が英紙「デイリー・メイル」電子版21日にありました。

「独自取材:プーチンがウクライナで核兵器使用に踏み切った場合、米国はロシアの黒海艦隊やクリミア半島の艦隊司令部に対して壊滅的な報復をするだろう、元米陸軍欧州司令官が警告」

2018年まで米陸軍欧州司令官をしていて、今はシンクタンク欧州政策分析センターの戦略研究の責任者をしているベン・ホッジス退役中将がその人で、「デイリー・メイル」紙のインタビューに次のように語っています。

「プーチンがウクライナで核攻撃を命令する可能性は非常に低いと思う。しかし、もし戦術的な大量破壊兵器が使われたならば、ジョー・バイデン大統領の素早く激しい反撃に見舞われることになるだろう」

その具体的な作戦についてホッジス中将は以下のように語りました。

「米国の反撃は核兵器ではないかもしれない。しかしそうであっても極めて破壊的な攻撃になるだろう。例えばロシアの黒海艦隊を殲滅させるとか、クリミア半島のロシアの基地を破壊するようなことだ。だからプーチンや彼の取り巻きたちは米国をこの紛争に巻き込むようなことは避けたいと思うはずだ」

ホッジス中将が米国の作戦を承知していたとは思わないが、米軍の元司令官と現在の作戦立案者が考えることはそうは違わないはずです。ロシア国内に被害を及ぼさない限りでロシア軍に壊滅的な打撃を与えるためには黒海艦隊を攻撃することは効果的です。

それを米国がロシア側に警告したかどうかも定かではないですが、英国防省は20日のウクライナの戦況報告で、ロシア黒海艦隊が複数の潜水艦を、同国が併合したウクライナ南部クリミア半島のセバストポリから、ロシア本土の黒海沿岸にあるノボロシスクに移動させたとの分析を示しました。ウクライナ軍の長距離砲撃能力の向上を受け、警戒のための措置とみられるといいます。

移動したのは「キロ級潜水艦」で、黒海での船舶の安全な航行の妨げとなってきました。英国防省は、セバストポリにある黒海艦隊の司令部などが過去2カ月の間に、攻撃を受けていたと指摘しました。黒海艦隊の「虎の子」をまず逃したようにも見えます。

ソヴィエト/ロシア海軍の通常動力型潜水艦である「キロ級潜水艦}

プーチン大統領「これはハッタリではない」と豪語していましたが、米国やNATOの警告は核兵器使用に二の足を踏ませることができるでしょうか。

このブログでは、ロシア海軍の海戦能力は、日米英などに比較して、かなり低いことを掲載してきました。

特に、中露は日米に対して対潜哨戒能力(潜水艦を発見する能力)がかなり劣っているため、ロシアには日本のステル性(静寂性)に優れた潜水艦を発見することは難しいです。一方日本の対潜初回能力は米軍と並び世界トップクラスであるため、ロシアの潜水艦を日本が探知するのは比較的容易です。しかも、太平洋等ではなく黒海という限られた海域に潜む、ロシアの潜水艦を発見するのは、さほど難しいことではありません。

ASW(Anti Submarine Warfare:対潜水艦戦闘力)に劣ったロシア海軍は、海戦においては日米の敵ではありません。現在のロシア海軍は単独で日本の海自と戦っても、勝つことはできません。一方的に敗北するだけです。

こういうと、ロシアが核原潜を持っていることを根拠に、ロシアが負けるはずがないと主張する人もいるでしょうが、破壊と海戦は別物です。海戦には目的があり、その目的を成就したほうが、勝利となります。

ロシアはいざとなれば、核ミサイルを発射して、日本の水上艦隊を壊滅させるかもしれませんが、それでも潜水艦隊を壊滅させることはできません。潜水艦隊の大部分は生き残り、反撃のチャンスをうかがい、実行することになります。

ロシアはミサイルで、ウクライナの都市を攻撃して、破壊しましたが、それでもウクライナ軍を打ち負かすことはできませんでした。それと同じことです。

海戦能力が日本よりも高い米海軍が、黒海艦隊を殲滅するのはさほど難しいことではありません。米国としては、日露戦争に破れたロシアのことは当然歴史的事実として知っていて、黒海艦隊殲滅はかなり有効な打撃であると見ているのは間違いないでしょう。

ロシアでは2024年、大統領選挙があります。西側の制裁で、その時ロシアのインフレ率は、数十%になり、輸入に依存していた消費財は店から消えてなくなっているでしょう。プーチンは当選できません。


彼を支えるシロビキ(主として旧KGB=ソ連国家保安委員会。ソ連共産党亡き今、全国津々浦々に要員を置く唯一の組織)は、自分たちの権力と利権を守るため、かつぐ神輿をすげ代えようとするでしょう。

ロシア国内では様々な思惑は入り乱れることになるでしょう。その中で国内の暴力勢力を引き込んで、ライバルを暗殺しようとする動きも出てくるでしょう。そうしてモスクワの中央権力が空洞化すると、91年ソ連崩壊の直前起きた、地方が中央に税収を送らない、勝手なことを始めるという、「主権のオン・パレード」が始まるでしょう。ロシアの中の少数民族だけでなく、主だった州も分離傾向を強めることになります。

今は21世紀なので、そんなことが起こるはずがない、と考えるのは間違いかもしれません。わずか30年前、超大国ソ連はそうやって自壊しましたし、今回は起きるはずのない文明国への武力侵略をロシアは実行してしまったのです。しかも、上で述べたように、日露戦争のときのように、愚かな方法で実行したのです。

プーチンは「ウクライナの右派過激勢力(ロシアは「ナチ」と呼んでいる)がロシアに歯向かうからいけないのだ」と言うかもしれません。しかし、そういう勢力を台頭させたのは、ロシアが14年クリミア、東ウクライナを制圧したからです。

そうて今回は武力で侵入したものですから、今やウクライナ人はほぼ全員、ロシアを憎んでいるでしょう。ロシアはロシア系の人々を守るのだ、とも言っているのですが、他ならぬロシア系ウクライナ人も、ロシア軍をこわがってポーランドに避難しています。

2024年にはプーチンは失脚するかもしれません。しかし、それでもロシアは、時代遅れの帝国主義、そして近代化に乗り遅れた経済を直さないと、ウクライナのような問題を、これから何回も起こすことになるでしょう。



同盟国のカザフスタン元首相がプーチン政権を批判―【私の論評】米中露の中央アジアでの覇権争いを理解しなければ、中央アジアの動きや、ウクライナとの関連を理解できない(゚д゚)!

2022年10月2日日曜日

東部要衝リマン奪還 併合宣言直後、露に打撃―【私の論評】ロシア軍、ウクライナ軍ともに鉄道の要衝がなぜ軍事上の要衝になるのか(゚д゚)!

東部要衝リマン奪還 併合宣言直後、露に打撃


 ウクライナメディアは1日、ロシア軍が陣取ってきた東部ドネツク州の要衝リマンをウクライナ軍が奪還したと伝えた。ロシア国防省も1日、包囲を逃れるためリマンから部隊が撤退したと発表。前日にドネツク州を含む東南部4州の併合を一方的に宣言したばかりのロシアにとって、打撃となる。

 リマンはドネツク州北部の交通の拠点。リマン攻略で、東部ルガンスク州西部の人口約9万人のリシチャンスクを奪還できる可能性が高まった。

 ウクライナのティモシェンコ大統領府副長官は1日、軍兵士がリマン中心部で奪還を宣言する動画を通信アプリに投稿。動画で兵士らはロシア国旗を行政庁舎の屋上から投げ捨て、ウクライナ国旗を掲げた。

 ウクライナのゼレンスキー大統領は1日の動画声明で、ドネツク、ルガンスク両州で構成する東部ドンバス地域に、ウクライナ国旗を「1週間のうちに」さらに立てると述べ、攻勢を続ける考えを示した。

【私の論評】ロシア軍、ウクライナ軍ともに鉄道の要衝がなぜ軍事上の要衝になるのか(゚д゚)!

報道では、東部要衝リマンとされていますが、なせリマンが要衝なのかはほとんど語られていません。

なぜ、リマンが要衝なのかを理解するには、まずはロシア、ウクライナともに輸送のかなり大きな部分を鉄道に頼っていることを理解しなければならないです。

以下のグラフは、ロシア・ウクライナの輸送モード別貨物輸送量の推移です。比較対象として、ポーランドおよび英独仏伊の合計も掲載してあります。

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上のグラフでは、ロシア、ウクライナの輸送モード別のトンキロ・ベース輸送量の推移を掲げ、ソ連解体と各国独立国化の後に、どう変化してきたのかを示しました。同時にポーランドや西欧の動きとも比較しました。

ロシア、ウクライナともに、1991年のソ連解体とその後の経済瓦解、社会の大混乱によって、物流量は大きく落ち込んだことがデータから明らかです。

1990年代のボトム輸送量は、ロシアの場合、ソ連時代のピークと比較して、鉄道、道路では約4割、パイプラインでは5割弱にまでに落ち込んでいます。今以上に鉄道輸送への依存度が高かったウクライナでは鉄道貨物の輸送量が対1990年対比で3割近くにまで落ち込んでいます。

これは、かなり激しい経済の崩壊状態に見舞われたことを示しています。

しかし最悪の状態はそう長くは続かなかった。その後、だんだんとロシアの物流量は回復し、2009年のリーマンショック後の世界的な経済低迷の時期の一時的な落ち込みを経て、現在は、少なくとも鉄道とパイプラインに関しては、ソ連時代のピークにまで回復して来ています。

ところが道路に関しては、なおピーク時の86%に止まっています。つまり、鉄道とパイプラインに過度に依存し、道路輸送のシェアが極端に低いという物流構造の特徴がさらに強まっているのです。

ウクライナでは、パイプラインが減り、道路による輸送は、若干増えていますが、鉄道輸送はピークのときと比較すると回復しておらず、現状でも経済的に厳しい状況に置かれていたことがわかります。ウクライナの場合も、まだ道路輸送のシェアが極端に低くと鉄道に頼る物流構造であることがわかります。

同時期に西欧(英独仏伊の計)やポーランドでは鉄道は横ばいか低下傾向をたどっているのに対して、道路輸送が大きく伸長しており、ロシア、ウクライナの動きをそれ以外の地域の動きと比較すると余りに対照的です。ちなみに、日本も西欧と同様、鉄道は低下傾向をたどっています。

ロシア経済は回復してきているとはいえ、石油や天然ガスといった資源の輸出への依存体質からの脱却が難しいことがこうした状況を生んでいると言えます。

ロシアもウクライナも物資郵送は、未だに鉄道にかなりを依存しているのです。

そのうえで、以下にリマンを含むウクライナの地図を掲載します。


この地図から、イジュームからリマン、シヴェリスクまで鉄道が伸びていて、スラビャンスクとも接続できることがわかります。リマン奪還により、ポーランドからキーウ経由でクピャンスク、リマンまで鉄道の補給線がつながり、東部でウクライナは圧倒的に有利になったと思います。 逆にロシアは補給線を3/4失いました。

ロシア鉄道のゲージ(線路幅)はいわゆる標準軌(1435mm)よりも幅の広い広軌(1520mmまたは1524mm)で、ヨーロッパではウクライナを含む旧ソビエト連邦内とフィンランドでしか使われていません。スペインも広軌ですが、ゲージのサイズがロシアとは違います。

このゲージの違いが、ロシア軍の作戦行動に大きく影響します。バルト三国、ウクライナを含む旧ソビエト連邦内なら広軌で統一されており、鉄道でスムーズな兵站線が引けます。一方ポーランドには、ロシアからウクライナのキエフを経由して南部のスワフクフまで、1本だけ広軌の鉄道が通っていますが、ほかは国境のごく一部を除き標準軌であり兵站線を連続できません。

ゲージが違えば鉄道を使った兵站線はそのまま連続することができず、積み替えかゲージの変更(いわゆる改軌)工事を行わなければなりません。台車交換や軌間を変更できるフリーゲージ方式もありますが、しかし結節点には設備が必要でスムーズな物流を妨げますし、ロシアの貨物列車はほとんど対応していません。

積替えすれば良いという話しなるかもしれませんが、莫大な物資を全部積み替えるのはとてつもない労力を必要とします。トラックを使えば良いという話しにもなるかもしれませんか、ロシア、ウクライナとももともと鉄道に頼っているということから、道路網も西側諸国などから比較すれば、発達しておらず、トラックも十分とはいえません。

原油パイプラインについては、欧州向けパイプラインはウクライナ東部を通らず、ベラルーシからウクライナ西部を抜けて、スロヴァキア及びハンガリーにぬけるものがメインとなっています。ロシア側としては、パイプラインを軍事転用することもできません。やはり物資、燃料ともに鉄道に頼るしかないのです。

この兵站線の特徴からロシア軍は、ウクライナ等の旧ソビエト連邦領域内で「積極的作戦」は行えますが、領域外で持続的な作戦行動を行う能力は限定的です。鉄道による兵站線が引けるかどうかのゲージの違いが、ポーランドとウクライナの安全保障上のリスクに違いを生んでいるといえます。しかしロシアがウクライナを抑えればまた状況は変わります。キエフ経由の広軌が利用でき、ポーランドのリスクは格段に高まります。 

国境付近に集結した兵力を数えるだけではなく、軍用列車を観察することでロシア軍がどう動くつもりなのか占うことができます。SNSに投稿される鉄道で運ばれる戦車の動画は「ミリ鉄」「撮り鉄」趣味どころではありません。中欧の人たちにとっては死活問題なのです。

ロシアも、ウクライナも兵站を鉄道に頼っているせいでしょうか、鉄道を破壊するようなことはほとんどしていません。例外的に、ロシア軍は5月4日に首都キーウや西部リビウなど8地域に向けて発射し、ウクライナが迎撃できなかった一部は着弾し、駅舎や電力施設が被害を受け、輸送インフラの破壊を狙った攻撃とみらました。

ただ、キーウなどは、すでにロシアは侵攻をあきらめていると考えられます。リビウには、当初から侵攻するつもりなどなかったでしょう。そうして、これ以降はロシアによる目立った大規模な鉄道の要衝に対する攻撃はみられません。

東部・南部の鉄道はロシア軍も使っているでしょうから、これを破壊することはしないでしょうが、民間人を巻き込むような都市部へのミサイル攻撃ではなく、今後ロシアが使う見込みのない西部等では鉄道網を徹底的に破壊する物流を阻害する効果的なミサイル攻撃をするべきだったと思うのですが、ロシアはそうしませんでした。

一方は、ウクライナは今回鉄道の要衝である、リマンを奪還しました。この奪還は、リマン市がロシア連邦に所属したとされてから、24時間以下で行われました。これは、史上最短の「併合」かもしれません。ギネスブックに登録されるかもしれません。

リマン駅は、鉄道の要所ということで、駅付近の路線図。さすがに複雑で、駅の前後にループ線が2か所あります。(下地図)


リマンは、ロシア軍がドネツク州北部への軍事作戦や物流の拠点としていました。ウクライナ軍報道官は1日、リマンの解放は、ロシアが大部分を支配する東部ルガンスク州への進軍を可能とし、「心理的にもとても重要だ」と述べました。

ウクライナ軍は9月上旬に北東部ハリコフ州の広域でロシア軍を撤収させることに成功しました。更に隣接するドネツク州でも要衝リマンを奪還し、東部で反転攻勢を続けている形になりました。

以上のような状況を考えれば、ロシア軍にとってもウクライナ軍にとっても、いかにリマンが鉄道の要衝、すなわち軍事上の要衝であるのか理解できます。

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2022年10月1日土曜日

中国海軍 新型潜水艦の訓練映像公開―【私の論評】我が国は、今年も昨年と同様に核で日本を恫喝し続ける中国への対抗手段を持つべき(゚д゚)!

中国海軍 新型潜水艦の訓練映像公開



 来月16日に開幕を控える中国共産党の重要会議を前に、中国海軍が新型潜水艦の訓練の映像を公開しました。

  中国海軍は29日、去年就役したばかりの新型潜水艦「長征18号」が南シナ海で訓練を行う様子を公開しました。

  中国メディアによりますと、「長征18号」は機動性だけでなく、レーダーなどから探知されにくくする「ステルス」性能が大きく向上し、長距離の核弾道ミサイルを搭載することができるとしています。 

 映像を公開した背景には台湾問題などで米中関係が悪化するなか、10月の共産党大会を前に、習近平政権が海軍の強化をアピールする狙いがあります。

【私の論評】我が国は、今年も昨年と同様に核で日本を恫喝し続ける中国への対抗手段を持つべき(゚д゚)!

以上のような記事だと、一体何を意味しているのか、理解できない人も多いのではないかと思います。

まずは、「長征18号」は、094型原潜(SSBN)の7番艦です。094型原潜(SSBN)は以下の表でもわかるように、現在までに7隻建造されています。


中国人民解放軍海軍が運用する原子力弾道ミサイル潜水艦。NATOコードネームは晋王朝に因んで晋級(Jin Class)です。

ワシントンの民間の有力研究機関「戦略国際問題研究所(CSIS)」は昨年8月4日、中国南部の海南島の人民解放軍海軍の楡林基地に094型原潜(SSBN)1隻が帰投する光景を人工衛星の偵察で映した映像(下写真)を公表しました。


CSISの発表によると、この帰投の映像は7月8日の撮影で、さらに7月15日にはこの原潜が同型のもう1隻の094型とともに楡林基地の埠頭に停泊している光景が撮影されました。

同基地には4つの埠頭があり、094型がそれぞれ1つの埠頭に、さらに他の二つの埠頭には093型(SSN中国名称・商級)攻撃型原潜が1隻ずつ停泊していたといいます。

CSISでは中国海軍のこの094型原潜について米国側ではとくに警戒の必要があるとして、国防総省の情報などを基礎に以下の諸点を強調していました。
  • 094型原潜は現在は中国人民解放軍でも海洋からの核ミサイル発射が可能の唯一の艦艇であり、中国側は今後その増強を図ろうとしている。
  • 中国の核戦力はこれまで陸海空からのそれぞれ発射可能なアメリカやロシアとは異なり、地上発射だけに依存してきたが、今後は海洋発射をも目指している。
  • 中国海軍は2000年ごろから合計094型4隻、改造された094A型2隻を建造してきた。最新の094型推進式は2021年4月で、習近平主席もその式に出席した。
  • 094型はそれぞれ核ミサイル発射基JL2(巨浪Ⅱ)12を装備し、核弾頭を最大射程9000キロまで発射できる。
  • 南シナ海からだと巨浪ミサイルはアメリカ本土に届かないが、グアム島やハワイやアラスカは射程に入る。
  • 中国軍は094型に次ぐ096型潜水艦をいま開発中で、数年後に完成すれば、核ミサイルの射程は1万キロを越え、アメリカ本土を直撃できる。
  • ただし現在の094型はアメリカの原潜にくらべれば、潜水での航行時のエンジン音などがずっと大きく、容易に探知されるという弱点がある。
上の記事で、ステルス性能が向上としていますが、このステルス性が何を意味しているのか、よくわかりません。

潜行中の潜水艦はレーダーには映りません。ですので、この意味ではステルスと言っても良いと思います。

アクティブソーナーに対しては音響吸収用のゴムタイルが、パッシブソーナーに対しては船体を気泡で包み込んで船体から音を漏らさないための「プレーリーマスカー」と呼ばれる装置があります。MAD(磁気探知機)対策としては、船体をコイルでくるんで磁気の乱れを打ち消す対策などが取られています。

ただ、これらによっても、大きな騒音を消すことはできません。日本の通常型潜水艦の最新型は、無音に近いので、水中でのステルス性は高いです。一方、原潜の場合は構造上どうしても騒音がでることは避けられないですから、何かを根本的に変えないと、水中でのステルス性を得ることはできません。

上に挙げたように、対潜戦闘用のセンサを欺瞞する為の装備は、すでに数世代前の潜水艦から実用化されていますので、潜水艦はステルス性を持っていると言ってよいでしょう。ただ、上でも示したように、現在の094型はアメリカの原潜にくらべれば、潜水での巡航時のエンジン音などがずっと大きく、容易に探知されるという弱点があるとされています。

よって、上の記事でいうところのステルス性とは何を示しているのかよくわかりません。おそらく、中国なりに創意工夫して、従来よりは、ある程度騒音を低減することに成功したということかもれしません。

バイデン政権の国務省報道官は昨年7月の定例記者会見で「米国政府は中国の急速な核戦力の増強に懸念を抱いており、中国政府が不安定な軍拡競争のリスクを減らすために実利的な交渉にのぞむことを期待する」と語ったばかりでした。

また米国の民間では前述のCSISが昨年6月に「2021年の中国の戦略と軍事部隊」という研究報告書を発表して、中国軍の核戦力全般に及ぶ増強への警告を出していました。

そのうえに同年7月中旬には中国の軍事評論集団が日本への核攻撃を描く動画を公表し、米国の専門家筋でも話題を集め、非難をも浴びました。この約6分の動画は明らかに中国政府の黙認を得て作成、公表されたものとみられます。

その内容は日本がもし中国軍の台湾武力攻撃による台湾有事が起きて、参戦した場合には中国側は即時に日本の核攻撃を加えるという趣旨でした。

この動画は米側での反応が広がり始めると中国当局が一般向けのサイトからは削除したですが、戦略核ミサイル部隊が駐屯する陝西省の共産党委員会のサイトにはそのまま掲載されました。これは、事実上中国政府の日本への核攻撃の恫喝でした。

この動きに対して、米側では中国当局が長年、掲げてきた「核先制不使用」政策(核兵器は戦争でも相手が使った場合にしか使用せず、非核国にも使用しないという政策)への不信感が表明されるようにもなりました。

そんな状況での中国の潜水艦による核ミサイル発射能力を誇示するような動きに米側の警鐘が改めて鳴らされたことには、それなりの理由があったといえます。

日本では今年も、8月上旬は広島、長崎への原爆被害を記念する式典が催され、核兵器自体への反対が繰り返し表明されます。この世界からすべての核兵器をなくせ、という声があがります。こうした反核の声はまず日本への敵意を示す中国や北朝鮮の核兵器に対してこそ向けられるべきです。

さらに、今年は、日中国交正常化50年直前ののタイミングで「長征18号」が南シナ海で訓練を行う様子を動画で公開しました。このような核の恫喝に日本は、どのように対抗すべきでしょうか。

日本も、潜水艦に長距離ミサイルを搭載して、発射できるようにして、核は用いないものの、要所、要所に正確にピンポイントで攻撃できる体制を整えるべきです。

核でなくても、いざとなれば、三峡ダムなど中国の弱い部分を攻撃できるようにしておくべきです。ちなみに、三峡ダムが破壊されれば、中国の国土の40%は洪水に見舞われるとされています。台湾は、すでに長距離ミサイルを配備し、いざとなれば三峡ダムを破壊できる体制を整えたとされています。

それ以外にも、レーダー基地、監視衛星の地上施設、ミサイル発射基地、原子力発電所、データセンターなどにも攻撃ができます。

ただ、台湾は、新型のミサイルを発射できる潜水艦は、現在は持っておらず、現在開発中です。日本が長距離ミサイルを持ち潜水艦から発射できるようにすれば、これは中国にとってもかなりの脅威になります。

このブログでは、以前から日本の潜水艦22隻配備体制によって、日本の専守防衛力はかなり高まった旨を掲載しています。

なぜ、そういうことになるかといえば、中国の対潜水艦戦闘力(Anti Submarine Warfare)は、日本と比較すると劣っているからです。特に、対潜哨戒能力に劣っているからです。

そうなると、中国の艦船が、尖閣諸島に近づけば、日本はこれを簡単に撃沈することができるからです。そのため、尖閣などに上陸したとしても、日本側が潜水艦でこれを包囲すれば、中国がはこれを発見するのが難しいため、尖閣諸島に輸送船を派遣すれば、撃沈されることを覚悟しなくてはならなくなるからです。

そうなると、尖閣諸島への補給はできなくなり、上陸した兵もお手上げになってしまいます。これは、尖閣だけではなく、日本の他の領土でも同じことです。だから、日本は専守防衛はできるでしょう。

しかし、中国はこうした膠着状況を打開するため、あるいは国内世論に配慮して、日本にミサイルを発射することは十分に考えられます。それでも、日本の潜水艦は、中国の潜水艦や艦艇を撃沈し続けるでしょうから、日本の独立は保たれるとは思います。

しかし、中国がミサイルを発射すれば、日本の国土は破壊され、国民の命や財産も危険にさらされることになります。日本は、これに対抗する手段をもたなければなりません。そのためには、潜水艦に長距離ミサイルを搭載できるようにすべきです。

そうなると、これは中国に対するかなりの抑止力になります。岸田政権は、あまり中国を刺激しないようにと配慮しているようですが、刺激しているのは中国のほうです、昨年は7月中旬には中国の軍事評論集団が日本への核攻撃を描く動画を公表し、今年は南シナ海で核ミサイル搭載原子力潜水艦が訓練を行う様子を公開したわけですから、日本がこれに対抗するため何らかの手段を講じるのは当然であり、そうしたとしても、世界中のほとんどの国はこれを非難することはありません。

避難するのは、中国、ロシア、北朝鮮等の極少数の国だけでしょう。


政府は、昨年から海上自衛隊の潜水艦に、地上の目標も攻撃可能な国産の長射程巡航ミサイルを搭載する方向で検討に入ったとされています。ミサイルは海中発射型とし、自衛目的で敵のミサイル発射基地などを破壊する「敵基地攻撃能力」を具体化する装備に位置づけられる見込みだとされていました。

是非これを実現して欲しいものです。中国に対して、もし日本を攻撃すれば、自分たちも大きな傷みを伴う、報復を受けることを周知徹底すべきです。

それ以前に、日本は潜水艦22隻体制によって、専守防衛体制が整っていることも周知徹底すべきです。このブロクでは、台湾有事となるとなぜか日米のシミレーションでは潜水艦が一隻も登場せず、不利な戦いを強いられるシナリオになります。

米国には強力な攻撃型原潜があり、それを3 隻くらいも台湾近海に配置すれば、対潜水艦戦闘力に劣る中国海軍は太刀打ちできないのは明らかであるにもかかわらず、米国のシミレーションでは潜水艦は登場しません。

これは、おそらく、米海軍などが、海軍に対して耳目をひきつけ、予算獲得などを有利にしようとしている節があることを、このブログでは掲載してきました。それが、本音ではないかと思います。

日本もそうではないかとは思ったのですが、どうもそうではないような気がしてきました。中国は、昨年も今年も核で日本を恫喝し続けているのに、ひたすら日本の潜水艦隊の実力を隠し続けるのは、一重にいわゆる「中国配慮」なのではないかと思えてきました。

もう、そんなことをしている場合ではないと思います。日本は、尖閣諸島で潜水艦で尖閣諸島を潜水艦で包囲して、尖閣に近づく艦船を撃沈する訓練をしても良いと思います。それも、中国の監視船の鼻先で実施して、恐怖心を煽るようなこともありだと思います。

その後に間髪をいれず、潜水艦に、地上の目標も攻撃可能な国産の長射程巡航ミサイルを搭載する旨を公表すべきです。そうすれば、中国はパニックに陥り、烈火のごとく怒り、日本を批判するでしょうが、それは中国が自ら日本を核で恫喝したことの帰結がこうしたことを招いたのだとしっかりと認識させるべきでしょう。

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