2023年1月9日月曜日

岸田首相は「賃上げ要請」で馬脚を顕わした…増税・利上げをやりながらの経済音痴ぶりに絶句―【私の論評】岸田首相は今のままだと、雇用を激減させた韓国の愚かな文在寅元大統領のようになる(゚д゚)!

岸田首相は「賃上げ要請」で馬脚を顕わした…増税・利上げをやりながらの経済音痴ぶりに絶句

「トリクルダウン」という俗説

 岸田首相は1月4日の年頭会見で、「この30年間、企業収益が伸びても期待されたほどに賃金は伸びず、想定されたトリクルダウンは起きなかった」として、「賃金が毎年伸びる構造をつくる」「物価上昇率を超える賃上げの実現をお願いしたい」と述べた。

 こうした認識は妥当なのか、物価上昇と賃上げの好循環は実現できるのだろうか。新年早々でキツい言葉であるが、岸田首相は何もわかっていないと残念な気持ちになった。

 岸田首相の挨拶の中、「トリクルダウン」という気になる言葉を使った。これは、富める者が富めば、貧しい者にも自然に富がこぼれ落ち、経済全体が良くなることを意味している。だがこうした経済理論は存在せず、俗説に過ぎない。実証分析でも、トリクルダウンはほとんど検証されていない。


 経済政策を変更したとき、それと同時に波及するが効果が出るには時間差がある。たとえばアベノミクスでは、金融政策の変更により予想インフレ率の上昇があり、その結果実質金利が下がる。これが設備投資や雇用に好影響をもたらすとともに、為替が円安に変化して純輸出を増加させる。

 下図は、10年ほど前、2013年7月8日の本コラム「自民党の公約のボロも攻めきれず!? アベノミクス批判で二極化する各党の経済政策を検証する」で書いたものだ。

岩田規久男編「デフレをとめよ」(日本経済新聞社2003 02)だい6章 IS-LM分析で記述

 こうした様々な波及経路で経済を刺激するが、株価上昇や為替の円安が先行する。経済全体の波及が見えない人は、株価上昇から富裕層の所得が上がり、それが貧困層に回ってくると勝手に思ってしまう。

 アベノミクス批判をする人は、この誤解そのままで、アベノミクスはトリクルダウンに依拠していると批判する。一方、経済理論がわかっている人はそもそもトリクルダウンなんて俗説はありえないと知っているから、こうした批判を相手にしない。

 筆者の身の周りのクルーグマン、バーナンキ、スティグリッツといった経済学者たちはアベノミクスの基本的枠組を評価していることからわかるように、トリクルダウンなど歯牙にも掛けない。しかし、経済理論に疎いマスコミや一部の論者は、アベノミクスがトリクルダウンと言い張ってきた。

 今回の岸田首相の年頭会見で岸田首相がトリクルダウンに言及したということは、岸田首相の経済観も、アベノミクス批判をしてきたマスコミや一部論者と、マクロ経済の理解の点では五十歩百歩ということだ。
 
 どうすれば賃上げは可能か

 物価上昇率を超える賃上げを実現するには、どうすればいいのか。上の図をさらにわかりやすく説明してみよう。

 これは、大学学部レベルのマクロ経済学の基本になるが、それを復習しておこう。

 以下に述べる話は、実をいえば筆者が故・安倍晋三元総理にしばしば説明していたことだ。本コラムでも再三繰り返してきたのは本コラムの読者であればご存じだろう。

 まず教科書的な説明から始めよう。大前提として失業率とインフレ率の間には逆相関関係があるという、いわゆるフィリップス曲線がある。つまり、インフレ率がマイナスのとき失業率は高く、その後インフレ率が高くなるにつれて失業率が低下するが、失業率には下限があり、インフレ率はいくら高くなっても失業率が低下しなくなる。


 この図も、2020年9月7日の本コラム「「菅義偉総裁」誕生に対する、「大きな期待」と「小さな不安」」に出ている。

 この概念図は便利であり、フィリップス曲線上のポジションとしては、失業率が最低かつインフレ率が最低という黒丸の状態が最適だ。

 安倍政権時のデータでは、それは失業率2.5%程度、インフレ率2%程度だ。この下限となる失業率は、経済理論では、NAIRU(non-increasing inflation rate of unemployment。インフレ率を上昇させない失業率)として知られており、筆者の推計では日本では2%半ば程度だ。図中で便宜的に2.5%としている。これで分かるように、インフレ目標2%目指すという理論的な根拠にもなっている。

 アベノミクスの根幹になっている異次元の金融緩和は、2%・2倍・2年。すなわちインフレ目標を2%とし、そのためにマネタリーベースを2年間で2倍にするとされていた。

 インフレ目標2%さえ決まれば、そのために必要な金融緩和を算出するのは難しくない。前日銀副総裁の岩田氏によれば、筆者と後の日銀審議委員になった片岡氏はそれぞれ別の方法により2年間2倍という同じ結論を導き出していたという。

 いずれにしても、失業率についてNAIRU程度をキープしていれば、企業は賃金を上げないと人手の確保ができなくなる。その場合、経済が上手く回っているので、賃金上昇は企業にとって負担でない。

 どの程度の賃金上昇になるかといえば、インフレ率プラスその国の実力──今の日本だと、インフレ率プラス1~2%──で賃金上昇率は決まるが、プラスのアルファ部分は、資本・労働生産性や技術進歩などによる。

 現時点の経済状況は、失業率NAIRUを達成出来ずに、その黒丸より現時点では左にあると筆者は思っている。消費者物価指数で測ったインフレ率では右側だと言いたい人もいるが、マクロ経済ではインフル率はGDPデフレーターで見るほうが自然だ。

 昨年7-9月期でGDPデフレーターの前年同期比はマイナス0.3%であり、2%にはなっていない。
 
 まったく方向の違う増税と利上げ

 こうして経済状況に呼応するが、GDPギャップがまだ相当額存在している。

 現存するGDPギャップを前提とすれば、追加財政政策と金融緩和政策を行い、GDPギャップを解消させた上で、若干の需要超過状態を維持することだ。それを半年程度継続すると、失業率が下限となり賃金が上昇し始める。

 こういうと、いまインフレ率が4%近いのでさらにインフレを加速して危険という意見が出てくる。しかし。今のインフレは基本的には海外要因であり、本来参照すべきGDPデフレーターはまだマイナスであることに留意すべきだ。

 筆者の言うことは、失業率についてインフレを加速させない程度の下限に維持するとのマクロ経済原則を言っているにすぎない。しかしそれに至らずに、望ましい追加財政政策と金融緩和政策とはまったく方向の違う増税と利上げをする岸田政権は、まさに経済音痴だ。これでは期待出来ない。

 この場合、増税不可かつ利上げ不可の状況なのに、岸田政権では増税しようとしてるし、利上げも既に実施した。これは経済を最適点の黒丸からどんどん遠ざかる方向に作用する経済政策だ。

 そうなると、一定期間後に、失業率がちょっとずつ上がってくる。失業率が上がるとどうなるか。企業経営者からみれば、余ってる労働力を使えば良いわけだ、賃上げをしなくて済む。

 以上のように、マクロ経済の原理原則を理解していれば、岸田首相の「お願い」はとんだ的外れだ。失業率をNAIRU程度、つまり経済を黒丸状態にするのは、政府の責務であり、そうした環境整備が出来てこそ、インフレ率を超える賃金上昇が実現できる。そうした政府の責務をやらずして、無理難題を民間経営者に「お願い」してどうなるのか。

 こういうと、安倍政権の時にも、「お願い」していたではないかという反論もあるかもしれない。しかし、アベノミクスでは、マクロ経済運営は、失業率をNAIRU程度、つまり黒丸を目指し行っており、増税や利上げは行っていない。

 しかも、安倍政権での「お願い」の季節になると、安倍元首相から筆者のところに、電話があり、「高橋さん、今度はどの程度賃金を上げられますか?」と聞かれたものだ。

 経営者にとって無理のない賃上げがどの程度できるかは、前年の失業率などに依存するので、筆者はその都度経営者にとっても無理のない数字を安倍元首相に申し上げた。

 NAIRU状況を作らずに、それとは真逆の方向の利上げ、増税をやりながらの岸田政権は、安倍政権とはまったく違う方向だ。

 昨年末の12月26日付け本コラム「岸田首相の失策で、アベノミクスは潰えた…ついに「失われた20年」が再来する予感」で、岸田政権の経済運営は反アベノミクスであると指摘したが、早速年頭会見で馬脚を顕した。

 岸田首相は、経済の好循環というが、初手で増税と利上げでは「悪循環」になってしまう。

髙橋 洋一(経済学者)

【私の論評】岸田首相は今のままだと、雇用を激減させた韓国の愚かな文在寅前大統領のようになる(゚д゚)!

機械的な賃上げは、雇用を破壊します。増税や利上げをしながら、一方で、賃上げをすれば、そうなります。それは、何も思いつきで言っているのではなく、韓国の在文寅政権のときに、金融緩和もせずに機械的に賃上げをして、雇用が激減して大失敗したという実例があります。

これについては、以前このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
お先真っ暗…韓国「雇用政策」大失態、貿易戦争も直撃、対中輸出3兆円減の試算も―【私の論評】金融政策=雇用政策と考えられない政治は、韓国や日本はもとより世界中で敗退する(゚д゚)!
この記事は、2018年7月17日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事より一部を引用します。
文在寅政権は「韓国経済のパラダイム見直し」との考え方に基づき、「所得主導」と「革新」という2つの軸で成長政策を推し進めようとしています。所得主導は需要の側、革新は供給の側を刺激することで成長動力を引き出そうとする構想です。
所得主導成長の逆説、韓国低所得層の所得が大幅減
しかしこの2つの軸は現政権発足からわずか1年で大きな危機に直面しています。最低賃金を16.4ポイントも大幅に引き上げたものの、低所得層では1年前に比べて所得が逆に8ポイントものマイナスを記録しました。年間30万以上増加していた雇用も7万と大幅にブレーキがかかりました。現政権は自分たちを「雇用政府」と自負していますが、実際は正反対の結果を招いているのです。

革新成長にいたっては成果が全くありません。文大統領は革新成長のコントロールタワーとしてキム・ドンヨン経済副首相を指名しはっぱをかけているようですが、実質的にさほど大きな権限のない経済副首相がやれるような仕事ではありません。
革新成長は何一つうまくいっていない
過去10年続いた保守政権は「グリーン成長」「創造経済」などの旗印で供給側に重点を置いた成長政策を推し進めたのですが失敗しました。営利を前面に出した病院や遠隔医療は医師団体から反対され、カーシェアリングはタクシー業界、スマートファームは農民団体の反対によって挫折しました。またネットバンクは銀行と企業の分離、フィンテック(ファイナンス・テクノロジー)は個人情報保護などの規制に阻まれ全く進んでいません。

このような状況では、雇用を経済を良くするために、まずは何をさておいても、金融緩和をすべきです。それ抜きに、単純に最低賃金をあげたり、構造改革をしても、過去の日本がそれで失敗して、失われた20年に突入したように、何も得るものはありません。

そうして、金融政策の大きな転換の意識は文政権にはありません。むしろ民間部門を刺激する政策として、財閥改革などの構造改革を主眼に考えているようです。しかし、このような構造改革はデフレ経済に入りかけている韓国経済の浮揚には結びつかないです。

韓国の歴代政権が、金融緩和政策に慎重な理由として、ウォン安による海外への資金流出(キャピタルフライト)を懸念する声がしばしばきかれます。しかし金融緩和政策は、実体経済の改善を目指すものです。特に、雇用状況を変えるものです。

金融緩和とはいっても、無制限ではなく、インフレ目標値を設定しての緩和を実施すれば良いのです。そうすれば、実際にキャピタルフライトしたアイスランドのように、政府は黒字だったものの、民間が外国から膨大な借金を抱え込んでいるようなことでもなければ、滅多なことで、キャピタルフライトが起こるようなことはありません。

日本でも日銀が2013年から金融緩和に転じる前には、「金融緩和するとハイパーインフレになる」「キャピタルフライトする」等といわれてきましたが、そうはなりませんでした。
文在寅は、金融緩和をすることなく、機械的に賃上げをしたために、大失敗しました。やはり、雇用状況を改善するというなら、上の記事で高橋洋一氏が語っているように、マクロ政策・フィリップス曲線を睨みながら、NAIRUに注目しながら、金融緩和をするとう言うのが王道です。

これは、西欧諸国では、現在では極スタンダードな政策であり、このような政策をすれば、雇用が改善されますが、それ以外の方法では成功し試しなどありません。

文在寅はこのようなマクロ政策の常道を理解していなかったようです。この状況は219年になっても改善されずますます悪化しました。それについては、以下の記事を御覧ください。
韓国で「恐怖のスタグフレーション」進行中か 消費者物価上昇率が8カ月連続0%台、新「漢江の奇跡」に疑問―【私の論評】韓国経済の悪化の根本原因は、誤った金融政策にあり(゚д゚)!

この記事は、詳細は、この記事をご覧いただくものとして、2019年9月12日のものです。この頃から、若者雇用は激減しており、この状況を韓国の若者は「ヘル朝鮮」と呼んでいました。

若者雇用の激減はいまでも続いています。20代の雇用が冷え込んでいます。昨年は雇用好調により他の年齢帯では失業者が減ったのですが、20代の失業者はむしろ増えました。専門職や大企業に行くことができなかった青年が失業者として残り、これまで好況を享受してきたプラットフォーム雇用まで鈍化しました。

今年は景気鈍化による雇用の悪化が予告されただけに就職市場で青年層の厳しさが加重されるだろうという見通しが出ている。 統計庁国家統計ポータルの分析の結果、昨年11月の全失業者数は66万6000人で、前年同月より6万8000人減りました。

しかし同じ期間に20代の失業者は1万7000人(7.6%)増え23万5000人に達しました。全失業者の3分の1以上が20代です。20代の失業者増加傾向は昨年9月から3カ月連続です。同月の就業者数も1年前より62万6000人増加したが、20代は4000人減った。企画財政部は「青年就業者数の増減が21カ月ぶりに減少に転じた」と評価しました。昨年雇用市場に吹いたという「薫風」は20代を避けた格好です。

日本では、安倍・菅両政権においては、増税せずに両政権合計でコロナ対策として、合計100兆円の補正予算を組み、雇用調整助成金なども活用したため、失業率はコロナ禍の期間も、雇用が悪化することはありませんでした。若者雇用も順調でした。

しかし、現状でも日本では、GDPギャップが30兆円依然として存在しており、このギャップを埋めないことには、賃金の上昇は望めません。それについて、詳細は以下の記事をご覧になってください。
本格的な賃金上昇が進むのは…GDPのギャップ解消から半年後 30兆円分埋める政策が必要だ!―【私の論評】現在の物価高に見合って賃金を上昇させるにはGDPギャップを埋めるしかないことを共通認識とすべき(゚д゚)!

この記事は、昨年6月のものですが、状況は現在もあまり変わっていません

日本では、日銀が金融緩和を継続すれば、雇用も維持され、賃金も上がってくるでしょう。過去30年間も日本の賃金が上がらなかったのは、日銀が長い間金融引締を継続したからです。

それについては、このブログでも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【日本の解き方】日本の賃金はなぜ上がらない? 原因は「生産性」や「非正規」でなく、ここ30年のマネーの伸び率だ!!―【私の論評】日本人の賃金が低いのはすべて日銀だけのせい、他は関係ない(゚д゚)!

2021年10月27日の記事です。日本の賃金が30年間も伸びなかったのは、日銀が金融緩和すべきなのに、長い間引締めを繰り返してきたことを掲載しました。詳細は、この記事を御覧ください。1990年までは日本のマネーの伸び率は先進国の中でも平均的だったが、バブル潰しのために90年に入ってから日銀は引き締めた。その引き締めをその後30年近く、基本的に継続しているのです。その結果が、日本の賃金の低さです。

上の記事では、GDPギャップを埋めないと、賃金が上がらないといい、下の記事では、日本人の賃金があがらないのは日銀のせいと述べているので、矛盾を感じる人もいるかもしれませんが、金融緩和をしなければ、そもそも賃金は絶対に上がらないです。

ただ、現状では、GDPギャップが30兆円が存在しており、これを埋めなければ、金融緩和をしても、いずれは賃金は上がってくるかもしれませんが、かなり時間がかかることが予想されます。それは、元記事の、金融効果の波及効果をご覧いただければ、ご理解いただけると思います。

よって、現在岸田首相が、実行すべきは、積極財政と金融緩和です。増税、利上げなどとんでもありません。

経済対策として、文在寅も在任中には、賃上げをするのではなく、まずは金融緩和と積極財政をすべきでした。その後に様子を見ながら、慎重に賃上げをすべきでした。それをせずに機械的に賃金をあげたから、雇用が激減したのです。これでは、本末転倒です。

経済は、様々な要素がからみあっています。一つの指標を良くしようとすれば、他が悪くなり、壊滅的な悪影響を与えることもあるのです。日本のマスコミは、実質賃金が下がると、他の要素は全く見ずに、ただただ「実質賃金がー」と叫び、円高になると、これも他の要素は見ずに「円高がー」と叫んだかと思えば、そのようなことはすっかり忘れて、円安になればなったで、他の要素は見ずに「円安がー」と叫びます。

さらに、赤字であること自体がまるで悪い事のように、「財政赤字がー」「経常収支赤字がー」と叫び、醜態を晒しています。マクロ経済音痴の、岸田首相もこれを理解できないようです。

以前にも、このブログに掲載しました。岸田政権の経済政策が、減税がほとんどなく、ほぼすべてが補助金というのも気になります。減税だとすぐに実行できますが、補助金が多いと、予算の執行漏れがでてくるのは必然です。


文在寅は、マクロ経済を理解しない愚かな大統領ですが、岸田首相も今のままであれば、日本の愚かな文在寅になりかねないです。そうなっても、自業自得なのかもしれませんが、岸田首相が在任中にそうなれば、雇用が悪化するのは目に見えています。

文在寅は経済政策だけでなく、安保でも無能でした。その点岸田首相は安保に関してはまともではありますが、ただ、これも大部分が安倍元首相の路線を引き継いでいるだけです。経済政策でもそうすれば良いのですが、これはなぜか、そうはしません。こちらも引き継いでいれば、岸田政権は今頃かなり安定していたと思います。

今後、経済が悪化するにつれて、岸田政権は不安定化し、それでも岸田路線を堅持し続ければ、いずれ岸田政権だけではなく、自民党自体が不安定化することになります。

そのようなことを経験した上で、安倍元総理は、いわゆる経済においてアベノミクスと呼ばれるような、安倍路線を作り上げたのです。残念ながら、消費税に関しては、三党合意があったので、2度消費税の引き上げを延期しましたが、結局在任中に2度消費税増税ををセざるをませんでした。しかし、金融緩和は継続していたので、雇用は劇的に改善しました。そのことを、岸田首相に理解していただきたいものです。

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2023年1月8日日曜日

インド空軍スホーイ戦闘機いよいよ来日 東南アジア2か国を経由し茨城・百里基地へ―【私の論評】今年躍進するインド!安倍元首相の悲願でもあった日印関係を増々強化すべき(゚д゚)!

インド空軍スホーイ戦闘機いよいよ来日 東南アジア2か国を経由し茨城・百里基地へ

来日するためにタイとフィリピンを経由

 インド空軍は、航空自衛隊と実施する初の合同演習「ヴィーア ガーディアン 2023」に参加する部隊が2023年1月8日(日)、国内の基地を出発すると発表しました。

インド空軍のSu-30MKI戦闘機とパイロットたち(画像:インド空軍)。女性パイロットの姿も・・・

 参加勢力はSu-30MKI戦闘機4機、C-17「グローブマスターIII」輸送機2機、およびIL-78空中給油機1機で、途中タイやフィリピンに立ち寄りながら目的地である茨城県の百里基地を目指すそう。

 なお、航空自衛隊では本演習について「ヴィーア ガーディアン23」と呼称しており、2023年1月16日(月)から1月27日(金)までの約2週間にわたって行うとしています。日本側からは百里基地に所在する第7航空団のF-2戦闘機4機と、小松基地に所在する飛行教導群のF-15戦闘機4機、地上で要撃管制などを行う中部航空警戒管制団などが参加する予定です。

【私の論評】今年躍進するインド!安倍元首相の悲願でもあった日印関係を増々強化すべき(゚д゚)!

インドが今回、日本に持ち込む戦闘機はスホーイ30戦闘機です。一部電子機器などをフランス製にするなど改造されてはいるこれはもともとはロシア製の戦闘機です。実は、中国が保有している戦闘機も、スホーイ30とその派生型が多いのです。だから、日本の戦闘機にとっては、インドの戦闘機と戦う訓練は、中国やロシアの戦闘機と戦う訓練にもなるのです。

これは日本の戦闘機パイロットにとって貴重な経験になります。日本としては、もっと広範に、頻繁に実施し、多くのパイロットを鍛えるべきです。

インドには、すでに米国、豪州とも、戦闘機の訓練を実施したことがあります。米国製の戦闘機との訓練は経験済です。しかし、日本と訓練することで、今後、日米豪印の「クアッド(QUAD)」4カ国全体で訓練する際の方法について、具体的に検討することができるようになります。その意味でも今回の訓練は意義深いです。

この演習は、日印の防衛協力上で重要です。日印では、すでに物品や機密情報を共有する協定が結ばれ、共同演習も、海上自衛隊の「マラバール」と「ジメックス」、陸上自衛隊の「ダルマ・ガーディアン」、航空自衛隊の輸送機の共同演習「シンユウ・マイトゥリ」が、継続して行われています。また、軍事用無人車両の共同開発が進んでいます。

その一方で、最近は、日印間の防衛協力が円滑に進まない事例が次々起きました。まず、日印の防衛協力を強く推進してきた安倍晋三元首相が暗殺されてしまいました。安倍元首相のように、インドのことをあれほど愛して、インドからも愛され、しかも権力や実行力を持った指導者は、世界でも他に見当たらないです。

抱擁する安倍首相(当時)とモディ首相とそれを見守る昭恵夫人

22年は、日印国交樹立70周年だったにもかかわらず、関係者の多大な努力にもかかわらず、あまり目立たなくなってしまったのも、そのためです。日印関係は、急に指導者不在の状態を迎えてしまったのです。それに加え、ロシアのウクライナ侵攻以降、ロシアをめぐる日印間の立場の違いが目立つようになってしまいました。

日本は、ロシアの武器は用いていませんが、インドはロシア製の武器を用い、多数を輸入しているため、ロシアに一定の配慮をせざるを得ない立場にあります。

特に、ウクライナ難民支援のための国連の物資を運ぶために、航空自衛隊の輸送機をインドに着陸させようとした時は、インドが着陸を拒否しました。これは、防衛省・自衛隊全体で、インドとの協力関係を進めることに消極的な雰囲気をつくってしまいました。

インド海軍へ売り込みをはかっていた日本のUS-2飛行艇の話も頓挫してしまいました。インドへの武器輸出に対するやる気も削がれていったのです。

現状の日印間はこのような状況にあるからこそ、日印が戦闘機の共同訓練を実施し、成果を具体的に提示することは、悪い流れを変えることになります。

昨年9月6日、井筒空幕長 は ピッチブラック22 に参加中の印空軍部隊を訪問し、今後計画されている 印空軍 との戦闘機共同訓練のためのSu-30MKI戦闘機訪日への歓迎を伝えていました。(写真下、サングラスをかけた人物が、井筒空幕長)


日印空軍が連携していれば、対中国にもメリットがあるのは明らかです。中国からみれば、台湾や日本を攻撃する場合、戦闘機を台湾や日本の正面に集中したいでしょうが、日印が連携していれぱ、中国は、インドが攻撃してくる場合に備えて、一定の数の戦闘機を中印国境、に一定数配備しておかなければならなくなります。

中印国境に配備した中国戦闘機は、台湾や日本を攻撃するためには使えなくなります。実際、今回来日するインドの戦闘機スホーイ30には、射程の長い、新しい超音速巡航ミサイルが搭載される予定であり、中国の内陸部を攻撃できるようになりますから、中国にとっては脅威です。

中国がインドを攻撃する場合も、中国は、今度は日本のことが気になるでしょう。日本も、これから射程の長い巡航ミサイルを配備することになっています。日印の反撃能力は、双方にとって国益になります。

今回の「ヴィーア ガーデン23」に限らず、日印関係はなるべく緊密にすべきです。それが、安倍元首相の願いでもあります。

なぜ、そういえるかといえば、このブログも掲載したように、今年中にインドの人口は、中国を抜き世界第一位になるという事実があります。それについては、このブログにも掲載したあことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
インド、今年人口世界一に 14億人超、中国抜く―【私の論評】今更中国幻想に浸っていては、世界の構造変化から取り残される(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事の結論部分を引用します。
27年までの5年間では、インドのように人口が増えるベトナムやバングラデシュなどで年平均6%以上の成長となるほか、エジプトやインドネシアなどは5%以上の成長が見込まれます。ナイジェリアやバングラデシュ、ベトナムは27年、アルゼンチンなどに代わってGDPの上位30位にも顔を出すとみられます。その中でも、民主化が進んでいる国においては、中進国の罠を突破して成長し続ける国もでてくるでしょう。世界の構造変化の大きなうねりは、従来から予想されていたように、目前まで押し寄せています。

最早中国の経済の停滞は一時的なものであり、また中国の経済発展が始まるなどの中国幻想に浸っている時ではありません。考えを変えていない人や組織は、世界の構造変化から取り残されることになります。

インドは独裁者習近平が率いる全体主義国家中国とは異なり、民主主義国です。インドはすでに民主主義国では、面積も人口も最大の国になっています。

インドには様々な、古い習慣などが残っていたり、西欧諸国に比較すると、小規模企業が圧倒的に多いなどのことがあり、経済は中国に比べて現状では出遅れた感は否めませんが、これは別の側面からみると、伸びしろがまだまだあるということです。

現在インドは、G20の議長国になっています。インドの議長国の任期は、12月1日から1年間です。会議は今年9月9~10日に首都ニューデリーで開催される首脳会議だけでなく、財務大臣・中央銀行総裁会合、外務、貿易・経済,エネルギー・環境等の大臣会合や関連イベントがインド各地で200以上開催されます。

世界主要国や国際機関から要人が集まり成果が世界に発信されるため、インドの存在感が増し国際的な影響力や発言力を高められる大きな機会にもなるでしょう。政府は世界情勢が厳しい時期であるものの、昨年はGDPが英国を抜き世界第5位になり、また先に述べたように、今年は人口が中国を抜き世界最大となる時期にG20議長国となる機会を重視しています。

インドは12月に入り西部ラジャスターン州のウダイプールで早速G20シェルパ会合を開催、また州政府や全政党に呼び掛け会議の意義を訴え準備に入りました。議長国として直面する世界経済の課題や地政学的リスクに加え、グローバル・サウス(発展途上国)の声を届け先進国と途上国の橋渡し役を務めると国民に訴えています。

地政学的リスクでは野党からも海外覇権拡大を続ける中国への対応を問われており、日印米豪4カ国で推進する「自由で開かれたインド太平洋構想」(FOIP)が重要な議題になるでしょう。本構想はアジア太平洋に加えインド洋圏のアフリカ・中東地域での協力を推進するもので、議長国インドの采配が期待されています。

FOIPの推進では、「特別な戦略的グローバル・パートナーシップ」関係に高まった日印両国が大きな役割を果たしています。今年はインドのG20議長国に加え日本がG7の議長国で5月に広島市で首脳会議を開催予定であり、共通する課題の解決に向けて両国の連携や協調にも期待したいです。

日印関係のさらなる強化は、故安倍晋三氏の悲願でもありました。これから、様々な分野で、日印関係をますます、強化していくべきです。

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2023年1月7日土曜日

立法院、台湾版CHIPS法案可決 半導体などの先端産業の法人税を6年間優遇―【私の論評】日本でも、腐敗の温床となる補助金制度を少なくし台湾のように産業支援は減税を多用すべき(゚д゚)!

 立法院、台湾版CHIPS法案可決 半導体などの先端産業の法人税を6年間優遇


立法院院会(国会本会議)は7日、「台湾版CHIPS法」と呼ばれる先端産業を支援する関連法の改正案を可決した。半導体や高速通信規格(5G)、電気自動車(EV)などの次世代産業の法人税が優遇される。施行期間は今月1日から2029年12月31日までの6年間。

可決されたのは産業創新条例第10条の2と第72条の改正案。法案は産業を問わず、国内で技術革新を進め、かつ国際サプライチェーン(供給網)において重要な地位を占める企業が対象。その研究開発費や有効税率が一定の規模・割合に達することなどを条件に、先端技術研究開発費の25%と、先進プロセスに用いる自社用の新規機器や設備の支出額の5%に相当する金額を当該年度の営利事業所得税(法人税)から控除できると明記されている。控除総額の合計が当該年度に納めるべき法人税の50%を超えてはならないことも規定された。

同法案を巡り5日、立法院で与野党協議が開かれた。出席した王美花(おうびか)経済部長(経済相)は、先端産業が台湾の国防と経済の安全保障における強力な後ろ盾になればとその効果に期待を寄せた。

【私の論評】日本でも、腐敗の温床となる補助金制度を少なくし、台湾のように産業支援は減税を多用すべき(゚д゚)!

台湾版CHIPS法というくらいですから、他に手本があります、それは米国のCHIPS法です。

米国のCHIPS法とは、米国内の半導体産業に関する政策で、米国商務省の標準技術局や国防省の元、米国の半導体エコシステムを再構築しつつ、国内に高給職を創出し、国家安全の強化を目指す政策です。

米国内の半導体に対して500億ドル(約7兆2,500億円(1ドル145円換算、以降同様)の補助金を投じるというものです。 さらに米国時間2022年9月6日、米国商務省は同省やその他の政府機関がどのようにこの補助金を半導体関連企業に割り振るか、概要を示しました。より詳しい内容については2023年上旬に公開される見通しです。

おおよその内訳としては、500億ドルのうち約3分の2にあたる280億ドル(約4兆円(1ドル145円換算、以下同様))はIntelなどの最先端のロジックチップや、メモリチップを製造する企業の支援に使用。100億米ドル(約1兆4,000億円)は既存チップの新たな製造能力、炭化ケイ素、カーボンナノチューブ材料関連の投資に用いられます。また残りの110億米ドル(約1兆5,000億円)は、製造機関創設などに割り当てられる予定です。

米国でCHIPS法が導入されたのは、半導体をめぐる深刻な問題が背景にあります。そもそも半導体は1959年に米国人によって発明され、1990年には米国製が37%と大きなシェアを占めていました。

ところが現在では、日本や韓国、台湾といったアジア勢が、米国の生産量を大きく上回るようになっています。

そうしたなか、新型コロナウイルス禍からの経済が急速に回復し、自動車を筆頭に多くの業種で半導体の供給不足が生じるようになりました。新型コロナウイルス後の供給制約を経験し、米国では半導体製造を海外依存していることの危険性が高まりつつあります。

CHIPS法は2022年8月9日にバイデン大統領の署名をもって成立し、8月25日にはCHIPS法の実施を加速させる大統領令に署名をするなど、アメリカ政府急ピッチで進めている政策であることがうかがえます。

実は、CHIPS法のような政策は、前身であるSEMATECH(セマテック)の時期から実は議論が始まっていました。なぜCHIPS法成立を急いだのでしょうか。

それは、米国同様に半導体投資に巨額の投資をしている中国の存在です。中国の習近平国家主席は、後10年で1兆米ドルの投資を行なうと宣言するなど、半導体事業に強い取り組み姿勢を見せていました。

CHIPS法では、半導体企業が国から支援を受けるためには、向こう10年間中国国内で最先端半導体の増産や、生産能力の増強を行なわないなどの条件があります。これは実質対象企業に、中国から手を引くように求めている意図もあり、明らかに中国に対抗するための政策を言えるでしょう。CHIPS法は、世界でも最も重要な産業とも言える半導体産業を米国に取り戻すための法案というだけではなく、中国権威主義との戦いという側面もあります。

米国では、CHIPS法案成立の後、さらにダメ押しをするような政策も実行しています。それについては、以前このブログに掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
この記事では、米商務省が10月7日、米国の技術が含まれている半導体や製造装置の新たな対中輸出規制強化策を発表したことを掲載しました。最先端半導体を扱う中国企業の工場への製造装置販売を原則禁止し、スーパーコンピューターなどに使われる関連製品の輸出も制限しました。

これがどのくらい厳しい措置なのか、ピンと来ない人もいるかもしれないので、この記事から一部を引用します。
バイデンの新しい制裁はおそらく中国半導体産業の終焉を意味していると考えられます。

多くの人は7日に何が起きたか本当には、理解していないかもしれません。

簡単にいえばバイデンは中国で働く全ての米国人(半導体産業)に即刻ビジネスを止めるか、米国籍を失うかという選択を迫ったのです。

すると中国にある全ての半導体製造企業の米国人幹部やエンジニアはほぼ全員辞職し、中国の半導体製造は一夜にして麻痺状態になったのです。

バイデンの今回の制裁は、トランプ4年間の12回の制裁を合わせたよりも致命的です。

トランプ時代の制裁では半導体供給にはライセンス申請が必要だったものの申請すれば1か月以内に通過していました。

一方バイデンは米国の全てのIPプロバイダー、部品サプライヤー、サービスプロバイダーをほぼ一晩で全て撤退させ、あらゆるサービスを断ち切りました。

大惨事とはまさにこのことです。中国の半導体産業の半分が価値ゼロになって完全に崩壊します。

米国は国内半導体産業を支援するとともに、中国に対しては厳しい措置をとったのです。 

米国の中国に対する制裁はこれだけに収まりません。日本、オランダを巻き込み、さらに厳しい措置を実施しています。

これについても、このブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。

日米蘭3国で「対中包囲網」強化 WTO提訴も単なるパフォーマンスに 中国の野心に大打撃与える先端半導体装置の輸出規制―【私の論評】中国が「半導体技術の対禁輸」措置を日米蘭から喰らうのは致し方ないことであり、自業自得(゚д゚)!


詳細は、この記事をご覧いただくものとして、世界の半導体装置のシェアは、ほとんど日米蘭によって占められています。台湾の半導体大手も無論日米蘭の製造装置を用いて製造しています。

日米蘭が半導体製造装置を売らないというのなら、今後中国の最先端の半導体製造はできなくなります。ただ、一世代前の半導体であれば、購入できますから、民生用ではそれを使うことになるでしょう。ただ、軍事用の最先端のものは入手困難となり、中国の軍事技術は一世代遅れたものになります。

台湾では、上の記事にあげたように、半導体産業支援のために「台湾版CHIPS法」と呼ばれる先端産業を支援する関連法の改正案を可決し、減税措置を講じます。

日本も「日本版CHIPS法」と呼ばれる法律は制定はしませんが、半導体産業に支援をします。

政府は、2022年度第2次補正予算案に半導体支援策を計上しました。

日米が連携する次世代研究拠点の整備に約3500億円、先端品の生産拠点の支援に約4500億円を盛る。製造に欠かせない部素材の確保にも3700億円を充て、計1.3兆円を投じる。政府は、半導体や蓄電池、医薬品などを「特定重要物資」に指定して、海外に拠点を置く工場などの「脱・中国依存」を進めたい考えとしています。

経済産業省が半導体支援を拡充するのは経済安保上の重要性からだけでなく、歴史的な円安が投資を呼び込む好機とみていまい。大規模投資をきっかけに地域の雇用、賃金増加といった経済の好循環を生み出す狙いがあります。

第2次補正予算案は蓄電池、永久磁石、レアアースなどの供給網の多様化にも1兆円規模を計上する。いずれも経済安全保障推進法上の「特定重要物資」に指定する見通しだ。岸田文雄首相は半導体を含む次世代分野に3兆円を投資すると表明。電池やロボットにも1兆円弱を投じる見通しです。

詳細は、以下のサイトを御覧ください。
EXPACT
ここで、問題なのは日本の産業支援策は、台湾では減税でも行われるにもかかわらず、ほとんどが補助金によるものということです。

しかし、米国でも補助金で実行するではないかと、言われるかたもいると思います。確かにそうですが、日本では、経済対策や産業支援政策のほとんどが、補助金で行われています。

米国でも、経済対策の大部分は減税政策で行われています。ただ、半導体産業支援事業に関しては、特別に補助金で行うという形です。減税ではできない手厚い支援を考えているからこそ、補助金にするのでしょう。

日本のように経済対策や、産業支援策の大部分を補助金で行うとどのような弊害があるかは、昨日のブログで述べたばかりです。この記事のリンクを以下に掲載します。
ネットで大騒ぎ「Colabo問題」めぐる税金の不適切な使われ方 国は〝弱者ビジネス〟助長させる「困難女性支援法」を見直せ―【私の論評】Colabo問題の本質は、日本の経済・支援政策のほとんどが減税ではなく、補助金で実行されること(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして。この記事より補助金等の弊害を示す部分を引用します。
結局、日本の経済政策や支援政策などの多くが、減税ではなく、補助金等で実行されることが、Colabo問題のような数々の問題を助長しているのです。

補助金等にばかり頼っていれば、補助金等のための審査は際限なく増え必然的に甘くなるというか、事実上できなくなり、Colabo問題のような問題を生み出し、さらに執行漏れが多数出るのは最初から判りきったことで、余った大量の補助金等は財務省が特別会計等として溜め込み、「死に金」となるのです。

このような不合理なことは、一刻もはやくやめて、日本でも減税を多用すべきです。減税であれば、補助金等と異なり、税金をとらないだけですから、簡単に実施できますし、それに不正の温床となることもあまりありません。それでいて、確実にしかも素早く効果があります。
さて、日本の経済・支援政策補助金・助成金がほとんどであり、減税が用いられないことの弊害はまだあります。特に補助金は問題となります。

補助金と助成金の違いは、補助金は予算が決まっていて最大何件という決まりがあります。 そのため、公募方法によっては抽選や早い者勝ちになるなど、申請してももらえない可能性もあります。 一方助成金は受けとるための要件が決まっているので、それを満たしていればほぼ支給されます。

こうした補助金の性質から、腐敗を生みやすいのです。それは、補助金等を受ける企業と、官僚との癒着です。補助金を受けるためには、審査書類などがパスする必要がありますが、これについては、官僚の対応の裁量により、スムーズにもできますし、そうではなくなることもありえます。

スムーズにできなけば、補助金を受けられない場合もあります。官僚が補助金の申請をする特定の企業に対してスムーズな対応をすれば、企業としてこれに恩義を感じるわけで、これは不正の温床になります。

官僚が特定の企業に対してスムーズな対応をすれば、退官後その企業に対して、スムーズに天下りできるということもあり得ます。さらに、天下りしたあとは、出身官庁とパイプを築き、補助金などの情報や、手続きの迅速化などで貢献することもできるでしょう。

こうしたこと等が積み重ねられた結果、日本には他国にはあまり見られない、鉄のトライアングルと呼ばれるものが出来上がっています。

日本には得体の知れない様々なルールや規制があります。それに守られ、いわゆる“既得権益”を受けている人たちがいます。農業の分野で言えば、日本は零細農家を守るため、株式会社は農地を持つことができません。

当初は意味のある制度だったのでしょうが、農業が国際化されてきた今日日本は世界的にみても良い作物を作れるのですから、株式会社に農業にも参入してもらい、生産性を上げ、輸出もしたほうが良いはずです。

ところが“入ってはいけない”という人たち、そこに結びついた政治家たち=族議員、そして業界の既得権益を持った人をつなぐ役割を担っている官僚がいます。この三角形がスクラムを組み、新しいことをやろうとするときに妨害するのです。こうした三角形はどこの国にもありますが、日本の場合はそれを取り持つ官僚組織がかなり強い状態で維持されています。


それは、様々な産業界にも、厳然として存在します。企業団体、族議員、経産官僚による三角形(産業ムラ)は厳然として存在してるいるのです。これは、ある意味「加計問題」と本質は同じです。

これについては、農協の事例や、債権ムラ原子力ムラ、コロナ禍でワクチン接種はスムーズに進めることができたにも関わらず、医療ムラの抵抗にあってコロナ病床の確保に失敗した菅政権などの状況をみてもおわかりいただけると思います。日本には、あらゆる産業にこうしたムラの人にしか通じない、理屈や思想を持った村社会が存在するのです。

ただし、この村社会は公式なものではなく、病院でいえば医局のような存在であり、その実像ははっきりしていませんし、それぞれの病院によってかなり機能が異なります。

colabo問題においては、今後の調査を待つ必要がありますが、官僚の中にはたとえば、元文部次官の前川喜平氏のように、左翼リベラル的思想に親和性を持つものもいますから、補助金を受けさせるために、審査書類などのパスを恣意的にスムーズにしているということも考えられます。

昨日も指摘したように、男女参画事業などで、かなりの補助金が投入されています。すでに、リベラル左翼の鉄のトライアングルは出来上っているのかもしれません。

右左とか、上下など問わずこのようなことは、補助金行政が続く限りなくならないでしょう。

昨日も指摘したように、補助金制度の多用は、弊害を生み出すのは目に見えています。日本でも、台湾のように産業支援策に減税政策を用いるようにすべきです。ただ、このようなことを主張する人は、かなり官僚や産業団体、族議員から攻撃を受けることでしょう。

そのためか、この問題を掘り下げる人は少ないですが、いずれ日本でも取り組まなければならない重要な課題だと思います。

岸田政権の経済対策はほとんどが、補助金方式です。さらには、増税も打ち出しました。これでは、財務省をはじめとする各省庁や族議員、業界団体は大喜びでしょう。彼らにとっては、今年の正月はまさに幸先の良いスタートと感じられたでしよう。

これでは、彼らは勇んで、鉄のトライアングルをますます強化し、自分たちに不利益が被りそうなれば、鉄のトライアングルでこれをさらに強力に全力で排除するでしょう。補助金制度の間隙をついて、新たな利権を生み出す打ち出の小槌である新たなな「鉄のトライアングル」づくりに励む、官僚、業界団体、新たな族議員も出てくるかもしれません。

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2023年1月6日金曜日

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有本香の以読制毒


 新年早々、納税者にとって実に不快な話題を取り上げる。昨年末から、ネット上では大騒ぎとなっていた「Colabo(コラボ)問題」である。

 ご存じない方のために概略を説明しよう。

 Colaboとは、虐待や性被害などを受けた少女たちの支援を行っている一般社団法人である。その代表理事を、ネット上ではつとに有名な〝フェミニスト〟である仁藤夢乃さんという人が、務めている。仁藤さんは33歳ながら、昨年11月には、政府が開催した「第1回 困難な問題を抱える女性への支援に係る基本方針等に関する有識者会議」の構成員にも選ばれている。

 同じ昨年11月、この仁藤さん率いるColaboが「不当な会計をしていた」として、ツイッター上で「暇空茜」と名乗る男性が、東京都が2021年度に支出した委託料2600万円について住民監査請求を行い、都監査委員が調査していた。

 一方、仁藤さん側は「デマや誹謗(ひぼう)中傷を行っている」として暇空さんを提訴した。


 年末12月28日、住民監査請求の結果が出され、4日に東京都から公式発表された。

 果たして、Colaboの会計報告について、都監査委は、不正を指摘する監査請求の主張について、車両のガソリン代など、多くが「妥当ではない」と退ける一方、領収書がない経費が計上され、領収書があっても疑義があるケースが確認されるなど、「本件精算には不当な点が認められ、本件請求には理由がある」として、都に対し、2月28日までに再調査などを指示した。

 暇空さんの指摘の一部が認められたともいえる。

 結果が公表された4日には、「Colabo問題」はツイッターでトレンド入りした。昨年末から、多くのユーチューバーが競ってこの経緯を動画に上げ、ネット上は一種の「祭り状態」にあったのだが、ここへ来てようやく、大手メディアでも報道され始めた。

 Colaboに対するネット上の疑惑は、「女性などの〝弱者救済〟を理由に、税金が不適切な使われ方をしているのではないか」ということに集約される。都監査委が経費の再調査を求めた以上、こう非難されるのも致し方あるまい。

 仁藤さんとColabo側は真摯(しんし)に対応し、状況を改善すべきである。

 同時に、私が指摘したいのは国の対応だ。

 昨年5月、「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」(略称『困難女性支援法』)が成立した。DVや性虐待など家族からの暴力、性暴力、性的搾取、離婚、貧困、心身の疾患や障害、居場所の喪失、社会的孤立、予期しない妊娠・中絶・出産、孤立した子育てなど、さまざまな困難を抱える女性を支援するという法の趣旨は結構だ。

 しかし、この法律を、いわゆる「弱者ビジネス」を助長させる仕組みにしては断じてならない。その一歩として、前述の「有識者会議」の建て付けを全面的に見直し、メンバーも入れ替えて、「困難女性支援法」の乱用を防ぐ会議としてはいかがか。

有本香(ありもと・かおり) ジャーナリスト。1962年、奈良市生まれ。東京外国語大学卒業。旅行雑誌の編集長や企業広報を経て独立。国際関係や、日本の政治をテーマに取材・執筆活動を行う。著書・共著に『中国の「日本買収」計画』(ワック)、『「小池劇場」の真実』(幻冬舎文庫)、『「日本国紀」の副読本 学校が教えない日本史』『「日本国紀」の天皇論』(ともに産経新聞出版)など多数。

【私の論評】Colabo問題の本質は、日本の経済・支援政策のほとんどが減税ではなく、補助金で実行されること(゚д゚)!

東京都では2016年以降、住民監査請求された111件のうち、認められたのは前知事の公用車の利用法についての1件だけです。そうした中で請求が新たに認められたとなれば重大事のはずですが、大手メディアの報道が全くないどころか、昨年の時点では、事実確認で動いている形跡すらほとんど感じられませんでした。

沖縄で基地反対活動する仁藤夢乃さん

大手メデイアは無論のこと、野党もいわゆる党派性の病理に蝕まれ、与党が関与することなら、信者が数万しかいないような、統一教会問題など大騒ぎしても、リベラル・左翼の関わる問題解決に関してはほぼ無視を決め込むという、平成から繰り返されてきた悪しき態度や行動には、本当に気が滅入る人も多いのではないかと思います。

この問題の本質は、あまり語られていませんが、日本では、政府や自治体が行う支援が、減税ではなく補助金や助成金によって行われることが多いことが根底にあるのではないかと思います。

このブログでは、日本では、政府の経済政策が他国に比較すると、主に補助金で行われ、減税はほとんど行われていないことを指摘してきました、最近も再度指摘したばかりです。その記事のリンクを以下に掲載します。
政府、1人当たり2万6000円支給へ 税収上振れ分「人々に還元」/台湾―【私の論評】日本政府の財政の最大の欠陥は「死に金」が溜まっていく構造になっていること(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事から一部を引用します。

財政支出には補助金系と減税系の2つがあって、減税系は執行率がほぼ100%になります。税金を取らないだけだから簡単なのです。しかし、補助金系は支出するにおいては、様々な書類と手続きが必要となります。そのため、補助金系の支出は執行がスムーズにいかないときがあます。 
通常、国際的にはOECDなどの資料を調べると、景気対策は「減税系」7で「補助金系」が3ですが、日本ではこれが逆どころか補助金のほうが圧倒的に多くなっています。景気対策は、減税で実行するのが一般的なのです。 
日本だけが、補助金系が8で減税系が2です。そうして、今回の岸田政権では、ほとんど減税系がありません。要するに補助金系が10という感じで「かなり執行残がありそうだ」と最初から認識できました。 
予算を積んでも執行できなければ意味がありません。岸田政権は、このような予算を意図的につくっているのかと疑ってしまいたくなるほどです。普通は、補助金系は増やさず、減税系を増やして素早く執行すべきなのです。 
このような予算の策定方式の背景には「減税などすべきでない」などの前提があるのでしょう。だから、不自然なことになってしまうのです。まず入り口にそれがあるのでしょう。もう1つは、補助金系の方が官僚や政治家は喜ぶのです。減税よりも、補助金のほうが、いかにも仕事をしたという達成感があるのかもしれません。
岸田政権の予算は、「減税系が嫌だ」という財務省と、補助金系が好きな他省庁と政治家をうまく組み合わせたような感じです。 
そうなると、限られたところにしかお金が流れず、世の中全体の経済の浮揚にはつながりにくくなります。

このColabo騒動は、日本の行政における予算執行の杜撰さを明るみにしたことで重要な意義を持っていると思われます。

今回東京都のチェックの甘さが浮き彫りになりました、行政を良く知っている専門家によれば、行政とはそういうもの、ということのようです。考えてみればそうでしょう。自分が苦労して稼いだお金でもなく、失敗したからと言って責任を取らされるわけでもないからです。

しかも、政府による経済対策における補助金・助成金に関しては、実際には政府が行うわけではなく、東京都や他の市町村が実務を行います。補助金等をもらったことのある人なら、補助金等のお知らせなど、最寄りの市町村から通知されることをご存知だと思います。

そうなると、地方自治体の事務量は、半端なものではなくなります。通常の事務を行いつつ、さらに政府の経済対策に関わる事務を実施しつつ、場合によっては、都道府県や国の経済政策の事務もこなさなくてはならなくなります。

無論、地方自治体だけで、事務が回せなければ、外部の民間企業などの力を借りることになりますが、これは無論のこと、税金が投入されるのです。この外部機関がいい加減だったりして、大量の名簿が入ったUSBメモリを紛失したなどのこのとは時々報道されたりします。

東京都も同じく、そのような状況になってるはずで、これではチェックが十分でなかったといっても、それにはそれなりの理由があるのかもしれません。今後、十分に調査をすべきです。

現状の役所は予算の議会承認を受けて、予算項目ごとに支出し、決算で支出結果をまとめるだけの機関です。特に政府はそうです。

市町村のような地方自治体も、事業内容の妥当性を判断する機関としては事実上機能しておらず、予算書や決算書を作るための収支報告の辻褄を合わせるのが精一杯ともいえます。これは、最近ではコロナ感染対策における、各地の保健所の状況を振り返っていただければ、理解できます。

経済政策の実施手法として、日本でも、補助金等の多用ではなく減税を多様すべきであると主張する人は多いです。これを実現するうえでcolabo事件、非常に重要な転機になるのではないかと思います。というより、そうしなければならないと思います。そうして、これには財務省は大反対するでしょう。その理由は後で述べます。

colabo が話題になっていますが、それは氷山の一角にすぎないです。政府全体の支出の4割程度を占める中央政府でも似たような補助金等のバラマキ案件は沢山あります。これは、以下のサイトで確認できます。


試しに男女共同参画と入力してみてください。沢山の補助金、助成金によるバラマキ先が出てきます。これだけあれば、一つひとつの事業の妥当性を審査するのは難しくなるのは当然です。やはり、減税政策をもっと多用すべきです。

支援政策も減税を多用すれば、補助金、助成金への審査の時間を増やすこともできます。このままでは、税金が無駄に使われるだけではなく、本当に支援すべき事業や、困っている人たちの支援が滞ることになりかねません。

結局、日本の経済政策や支援政策などの多くが、減税ではなく、補助金等で実行されることが、Colabo問題のような数々の問題を助長しているのです。

補助金等にばかり頼っていれば、補助金等のための審査は際限なく増え必然的に甘くなるというか、事実上できなくなり、Colabo問題のような問題を生み出し、さらに執行漏れが多数出るのは最初から判りきったことで、余った大量の補助金等は財務省が特別会計等として溜め込み、「死に金」となるのです。

このような不合理なことは、一刻もはやくやめて、日本でも減税を多用すべ
きです。減税であれば、補助金等と異なり、税金をとらないだけですから、簡単に実施できますし、それに不正の温床となることもあまりありません。それでいて、確実にしかも素早く効果があります。

このような、政策転換をしない限り、Colaboのような問題は防ぐことは難しいでしょう。

今後、野党やマスコミがColabo問題を追求するなら、この方向性でも批判していただきたいものです。政府や役人を責めたてるのは結構だとは思いますが、それだけでは、この問題は永遠に解決しないと思います。しかし、おそらく野党・マスコミはこのようなことはしないでしょう。

このようなことは、調べてみれば、皆さんの身の回りでも、結構あると思います。私は、現在北海道札幌市に住んでいますが、北海道にはいわゆる「アイヌ利権問題」があります。ここでは、詳しくは述べませんが、怪しいアイヌ文化に多額の税金が使われていたりします。皆さんの地域においても、詳細に調べてみれば、なぜこんなことに、補助金や助成金が使われているのか理解に苦しむような事業が展開されている可能性も十分にあると思います。

それに関しては「暇空茜氏」のように声をあげる人がいなければ、いつまでも放置されることになります。やはり、特に地域の問題に関しては、地域の人たちが声を上げるべきです。

Colabo騒動を調べれば調べるほど、Colabo側の問題はもとより、構造的な問題が次から次へと出てきており、枚挙にいとまがありません。今後このブログでも順次指摘していこうと思います。

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2023年1月5日木曜日

世界10大リスク 「危険なならず者」ロシアが首位―【私の論評】台湾侵攻は「リスクもどき」、中国最大の危機は習近平(゚д゚)!

世界10大リスク 「危険なならず者」ロシアが首位


 国際政治経済のリスク分析を行う米調査会社ユーラシア・グループは3日、2023年の10大リスクを選定した報告書を公表した。ウクライナへの侵略を続けるロシアを米欧やそれ以外の地域に「安全保障上の深刻な脅威」を突きつけていると指摘し世界最大のリスクに挙げた。また、昨年10月の中国共産党大会で掌握した習近平総書記(国家主席)の長期的な権力を第2のリスクに選んだ。

 報告書はロシアについて「勝利のための良い軍事選択肢は残されていない」としつつ「引き下がらない」と予測。制裁で孤立を深めながらも「最も危険なならず者国家」となると指摘した。

 その上でイランとの軍事的な連携や核兵器による威嚇の強化を予測。核使用の可能性は低いとしつつ、事故や判断ミスで核戦争に発展する危険は1962年のキューバ危機以来最も高まると予想した。ゼレンスキー大統領暗殺を含むウクライナ指導層の排除に一段と懸命になるとも指摘した。

 2番目のリスクとした中国の習国家主席について、「あらゆる中国の政策は全権を有するひとりの指導者から流れ出る」と指摘。新型コロナウイルス対策を巡る混乱を挙げつつ、不透明な意思決定や政策の軌道修正の難しさなど権力集中の弊害が世界に及ぼす悪影響に警鐘を鳴らした。

 3番目には人工知能(AI)など米国発の技術発展を挙げ、世界の強権指導者に偽情報拡散などの能力を提供し、民主主義を弱体化させる危険を指摘した。

【私の論評】台湾侵攻は「リスクもどき」、中国最大の危機は習近平(゚д゚)!

ユーラシア・グループの地政学的リスクに関しては、昨年も当ブログに掲載しました。昨年の予測では、中国のゼロコロナ政策の失敗が最大のリスクとなっていましたが、これは時期をずらしたものの、予測は的中した形になりました。今後、春にかけて感染は拡大し、世界経済などに大きな影響を及ぼすことになるでしょう。

中国のリスクはここ数年必ず掲載されるようになりましたが、昨年より前の時点では、中国の外国に対する干渉や脅威がリスクとされ、昨年は「ゼロコロナ政策の失敗」という中国の国内事情が最大のリスクとなり、今年は習近平のリスクというように、リスクの範囲が狭まってきています。

今年の、予測も妥当なものと思います。やはり、なんと言っても、ロシアの危機が最大のものと考えられます。

戦闘長期化に伴って余裕を失うロシアが、核兵器使用の威嚇を含め国際社会への揺さぶりを強化する可能性を指摘しました。報告書はロシアが「世界で最も危険なならず者国家になる」と予想しました。

第2のリスクの習氏については、昨年10月の中国共産党大会で長期支配を確立し権力の一極集中が進んだことで政策の不安定さや不透明さが増すと分析しました。

今年は、習近平が最大の地政学的リスクに

それと、中国による台湾侵攻リスクに関しては、昨年も今年も掲載されていません。報告書では、米国はインフレ、中国は経済成長鈍化などそれぞれの国内経済問題を挙げた上で、実際に軍事衝突が起きれば相互に耐え難いリスクとなると指摘しました。

貿易などを通じ米中経済は深く絡み合っており、軍事衝突は両国の経済を破壊すると分析。また中国は半導体受託生産の世界最大手である台湾積体電路製造(TSMC)へのアクセスを失うリスクを負うことも強調しました。

その上で、中国は力のバランスが決定的に自国に有利になるか、台湾を擁護しない米大統領が就任するまで台湾への軍事介入を延期するだろうと予測。いずれも23年中には起こり得ないとしました。

米ニューヨークに本拠を置くユーラシア・グループは毎年、その年の十大リスクを発表している。その他の「リスクもどき」はウクライナ支援を巡る課題などを挙げました。台湾有事は昨年も「リスクもどき」とされていました。

中国の台湾侵攻が「リスクもどき」という指摘はもっともだと思います。何しろ、現在中共はゼロコロナ政策をやめて、感染拡大を放置して、なるべく早い時期に、国民が集団免疫を得ることを狙っていとみられます。中共としては、23年3月5日開幕の人民大会開催の直前までには、そうなることを目指しているとみられます。

これにより、集団免疫が得られたにしても、相当数の死者がでたり、コロナ感染から回復したにしても、後遺症に悩まされる人が大勢出たりして、23年中にはその対策に追われることになるでしょう。

さらに、このブログでも解説したように、中国が台湾を破壊することは簡単ですが、侵攻して占拠して統治するということになれば、これは全く別の次元の企てであり、かなり難しいです。

そもそも、兵員の海上輸送能力が足りず、一回に数万の兵士しか台湾に送り込めず、そうなると、武力的にウクライナよりはるかに現代化されていて、強力な地対地ミサイル、対艦ミサイル、対空ミサイルならびに長距離ミサイルを多数自前で開発し配備する台湾軍に個別撃破され、艦艇は撃沈され、航空機は撃墜され、中国本土も脅威にさらされます。

また、台湾は島嶼であるにもかかわらず、最高峰の玉山は、4000m近くもあり、富士山よりも高いです。東海岸は、急峻であり、とても大部隊が上陸できるような地形ではありません。西海岸は地図上では平地が広がっていますが、それでも上陸できる地点は限られているため、台湾軍が待ち構えているところに上陸して密集した陣形をとらざるをえず、高地に陣取る台湾軍から撃破されやすいです。

台湾の地形をみれば、中国の台湾侵攻は難しい

さらに、これに日米などが加勢して、特に米軍がこの地域に大型の攻撃型原潜を派遣すれば、中国軍は太刀打ちできません。中国海軍は、台湾侵攻どころか、崩壊の危機に瀕することになります。

この点に関しては、このブログの過去記事でまとめています。下の【関連記事】のところに掲載しておきますので、関心のある方は是非ご覧になってください。

3位に関しては、すでに言葉をいくつか入力することによって、AIが写真を合成するというものも存在しており、これは確かに脅威になり得ると思います。

様々なものがありますが、たとえば、英Stability AIが発表した画像生成AI「Stable Diffusion」が、にわかに注目を集めています。基本的にローカルに実行環境を整え、インストールして使用するツールだが、デモサイトで手軽に試すことも可能です。

以下に、Putin(プーチン),rogue(ならず者),demon(悪魔)とキーワードを入力して得られた画像を以下に示しておきます。


このような合成写真が短時間にできてしまうのですから、これによって、ショッキングなものや人々の憎悪を掻き立てるような画像も簡単にできてしまいますから、確かにかなり危険です。

4位以下も十分にありそうです。本ブログでは、こうした危機が顕在化しそうになれば、昨年同様レポートしていきます。皆さん、今年もよろくお願い申し上げます。

【関連記事】



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2023年1月4日水曜日

政府、1人当たり2万6000円支給へ 税収上振れ分「人々に還元」/台湾―【私の論評】日本政府の財政の最大の欠陥は「死に金」が溜まっていく構造になっていること(゚д゚)!

政府、1人当たり2万6000円支給へ 税収上振れ分「人々に還元」/台湾


蘇貞昌(そていしょう)行政院長(首相)は4日、国民全員に1人当たり6000台湾元(約2万6000円)を現金で支給する方針を明らかにした。時期は春節(旧正月)明けとなる見通し。

2022年度の税収は当初見込んだ額より4500億台湾元(約1兆9000億円)上振れし、国民に還元されるかが注目されていた。蔡英文(さいえいぶん)総統は3日、政府が運用可能な分について、一部を緊急時に備えて積み立てる以外は人々に現金で分配する考えを示した。

視察先の南部・嘉義県で取材に応じた蘇氏は、運用可能な1800億元(約7700億円)のうち400億元(約1700億円)を緊急時の資金とし、1400億元(約5700億円)を市民に分配する方針を発表。給付方法など詳細を詰めている段階だと話した。行政院院会(閣議)で決定され次第、立法院(国会)に送られるという。

対象に外国人が含まれるかどうかについて、行政院(内閣)は中央社の記者に対し「検討中」と回答した。

また、地方政府にも一部を回し、低所得層に一定額を毎月支給する。

残りの2000億元(約8500億円)について、蔡総統は労働保険や健康保険の基金、電気代の抑制に充てる他、従来型産業、農漁業、観光業などの支援に投入する方針だと説明した。

【私の論評】日本の財政の最大の欠陥は「死に金」が大量に溜まっていく構造になっていること(゚д゚)!

税収が想定より多かったので目に見えるはっきりした形で、国民に還元してくれる国、台湾です。日本とは随分異なるようです。

日本では、2022年度の一般会計税収が68兆3500億円余りと、過去最高だった21年度実績を上回る見通しであることが4日、分かりました。複数の政府関係者が明らかにしました。政府が近く閣議決定する22年度2次補正予算案で、昨年末の見積りを増額修正します。

主要税目のうち所得、法人税収などが堅調に推移していることを反映しています。当初は22年度税収を65兆2350億円と想定していました。新たに3.1兆円上振れすると見込み、政府が先月28日に決定した総合経済対策の財源に充てるとしています。

国の税収はコロナ禍でも伸び続け、20年度にそれまで最大だった18年度の60兆3563億円を抜き、一般会計税収が60兆8216億円となった。21年度は67兆0378億円と、再び過去最高を更新していた。想定通りに推移すれば3年連続で過去最高を更新することになります。

これについては、昨年もこのブログで解説したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
防衛費のGDP比2%以上に〝増税不要〟 この10年で税収は25兆円増に 税収増で増額分を確保、アベノミクス継承すべき―【私の論評】2018年に一般会計税収がバブル期を超え、2021年に過去最高となった日本で最早増税は必要なし(゚д゚)!

この記事は、昨年11月19日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事より二つのグラフを引用します。


財務省が昨年7月5日発表した2021年度の一般会計決算概要によると、国の税収は67兆378億8500万円と過去最高だった20年度の税収(60兆8216億400万円)を更新しました。更新は2年連続です。新型コロナウイルス禍からの世界的な景気回復や円安による企業収益の増加で法人税収が伸びました。賃上げなどによる所得環境の改善で所得税収も堅調でした。

21年度税収は当初予算段階で57兆4480億円を想定。景気回復の動向を踏まえ、昨年12月成立の補正予算では63兆8800億円に上方修正していたのですが、さらに上振れる結果となりました。



このグラフに関しては、上の記事から引用します。

2018年の段階で、もうすでに、税収はバブル期を超えていたのです。2018年というと、このブログでも以前掲載したように、統合政府ベース(政府+日銀)の財政再建は2018年には確実にプラスに転じていました。それについては、以前このブログにも掲載したことがあります。

このグラフをみれば、良く判りますが、1990年代に入ってから、消費税増税が繰り返されましたが、最初は、消費税をあげても税収は下がっていたのですが、一時あがった時期もありましたが、リーマンショックあたりで、かなり落ちてしまいましたが、その後はまた上がりはじめ、14年あたりから、しっかりあがりはじめ、18年にはバブル期の水準を上回りました。

そこからは、バブル期の水準を下回ることなく、上の方のグラフをみてもわかる通り、19年は一時下がりましたが、20、21年と上がっています。

どうしてこうなったかといえば、消費税をあげたばかりのころは、政府は緊縮財政を繰り返し、日銀は金融引締を繰り返していたので、04年頃からは、税率があがったこともあり、税収が増えたのですが、2008年にリーマン・ショックがあったにもかかわらず、震源地の米英をはじめ、他国がかなり思い切った金融緩和をして、立ち直りが早かったにもかかわらず、日銀が金融引締の姿勢を変えなかったため、2009年にはかなり落ち込みました。

2013年には日銀が異次元の包括的金融緩和を始め、2014年には消費税率が8%になったこともあり、税収が増えました。 16年には、若干へりましたが、17年はまた上がり、18年にはとうとうバブル期の水準を超えました。

それ以降は、19年には一度税収が前年より若干落ちましたが、20年、21年そうして、先にあげたように、22年も前年を上回るのです。
 
2次補正では、税収の上振れ分に加えて税外収入なども歳入に計上します。足りない分は新規国債を22兆8500億円余り追加発行することで補います。歳出総額は28.9兆で、世界的な景気減速に備えて創設する「ウクライナ情勢経済緊急対応予備費」には1兆円を計上します。

補正予算案は8日の概算閣議決定を想定していますす。20カ国・地域(G20)首脳会議などに出席する岸田文雄首相の帰国後に国会に提出し、年内の早期成立を目指します。
補正予算すらまだ本決まりしていないのですから、岸田政権は仕事があまりに遅すぎです。これは、夏休みの宿題をやり残し、年明けになって提出するようなものであり、あまりに酷すぎです。

台湾政府としては、すでに昨年の夏辺りから準備をして秋頃には決まって、どの程度の上ブレが出るかを待ったいたという状況なのだと思います。だから、このようなことができのるだと思います。新年早々ということで、タイミングも良いです。

一方岸田政権は、補正予算を決めるにも時間がかかっているだけではなくその組み方にも問題が山積です。

政府は11月8日、2022年度第2次補正予算案を閣議決定しました。高騰する電気やガス料金の抑制策などを盛り込んだ総合経済対策を中心に、一般会計の歳出総額で28兆9222億円を計上。財源には、当初の計画を上回った税収などもあますが、歳出の約8割にあたる22兆8520億円は新たに赤字国債を追加発行して賄います。

ただ、国債を大規模に発行しなくても予算は組めるはずです。同時期に「過去の経済対策でどのくらい使い残しがあったか」という会計検査院の報告がありましたが、それが20兆円くらいでした。それを繰り越すなり、不用なものを組み込めば減らせるはずですが、繰り越しているのですから、どこかに必ず財源、いわゆる埋蔵金はあるはずです。

それを集めれば、簡単に補正予算となどできるはずです。埋蔵金を残しつつ、多くの国債を出して、見かけ上での財政の大変さを演出したのではないかと考えられます。それが、財務省のやり口です。

22兆円が赤字国債だということで、財政規律上望ましくないという意見もありました。独立行政法人であれば、埋蔵金もありますが、それは数百億円や1000億円~2000億円のレベルになってしまいますので、理解しにくいですが、外為特会では40兆円もあり、これは理解しやすいです。

埋蔵金問題の本質は、繰り越しの使途をあいまいにしておき蓋をして、まるでこれらが存在しないかのよう装い「財政危機」などといいたていることです。これは、本当に異様です。

さらに、コロナ対策なども含めて相当、財政出動したはずなのに、それが実需になっていないという問題もあります。これは、結局のところ予算が執行されていないのです。

財政支出には補助金系と減税系の2つがあって、減税系は執行率がほぼ100%になります。税金を取らないだけだから簡単なのです。しかし、補助金系は支出するにおいては、様々な書類と手続きが必要となります。そのため、補助金系の支出は執行がスムーズにいかないときがあます。

通常、国際的にはOECDなどの資料を調べると、景気対策は「減税系」7で「補助金系」が3ですが、日本ではこれが逆どころか補助金のほうが圧倒的に多くなっています。景気対策は、減税で実行するのが一般的なのです。

日本だけが、補助金系が8で減税系が2です。そうして、今回の岸田政権では、ほとんど減税系がありません。要するに補助金系が10という感じで「かなり執行残がありそうだ」と最初から認識できました。

予算を積んでも執行できなければ意味がありません。岸田政権は、このような予算を意図的につくっているのかと疑ってしまいたくなるほどです。普通は、補助金系は増やさず、減税系を増やして素早く執行すべきなのです。

このような予算の策定方式の背景には「減税などすべきでない」などの前提があるのでしょう。だから、不自然なことになってしまうのです。まず入り口にそれがあるのでしょう。もう1つは、補助金系の方が官僚や政治家は喜ぶのです。減税よりも、補助金のほうが、いかにも仕事をしたという達成感があるのかもしれません。

岸田政権の予算は、「減税系が嫌だ」という財務省と、補助金系が好きな他省庁と政治家をうまく組み合わせたような感じです。

そうなると、限られたところにしかお金が流れず、世の中全体の経済の浮揚にはつながりにくくなります。

ガソリン税に関しても暫定税率を廃止すべきでしたが、結局それも補助金で屋上屋を架しましたし、今回のガスや電気も結局そうです。

このような予算は、はっきりいうと一般国民が割を食うことになってしまいます。執行がスムーズにできない予算は良い予算ではありません。よくバラマキと批判されますが、これは完璧な間違いであり、経済対策では、特に減税系でばら撒く方が景気対策としてはるかに優れています。どうせ予算をつくるのであれば、バラマキ100%で素早く執行すべきと思います。

岸田政権の予算は何かといえば、補助金ばかりです。官僚達は大喜びでしょうが、執行という観点からみれば、景気対策で100%の効果は出しにくいのです。

効果が出せなくて、残った分が、それがそのまま埋蔵金になっていくのです。一方、上の台湾の例のように、税収が上ブレすれば、国民に目にはっきり見える形で還元するというのが台湾政府のやり方であり、そこには埋蔵金を溜め込むという考えはさらさらないようです。

それに、減税系の対策を行いつつも、時にはこういう目立った形で、補助金を直接国民に配布するというやり方で、上手に経済対策をアピールしているといえます。これは、岸田政権も見習うべきです。

台湾政府は減税政策を日本よりはかなり多用しています。たとえば、昨年11月17日には、台湾の行政院(内閣)、半導体などの先端技術の研究開発や投資を促すため、関連企業への減税措置を拡大する案を閣議決定しました。

台湾半導体製造大手のtsmc

法人税額から、研究開発費の25%(従来は15%)、設備投資の5%(同0%)をそれぞれ乗じた額を控除できるようにします。今年1月1日から施行されました。半導体などで一段の優位性を確保するのが狙いです。

一方日本では、減税措置はなく、補助金100%で埋蔵金がなるべく出るようにして予算を組み、それを財務省が特別会計等としてせっせと溜め込むというのですから、本当に困ったものだと思います。蓄えるばかりで、活用されない金のことを「死に金」といいますが、日本の財政の欠点は、いわゆる「死に金」が溜まっていく構造になっていることだともいえます。

以前このブログにも掲載したことがありますが、統合政府ベースでみれば、実は2018年あたりで、財政赤字は解消されています。そこから先は黒字に転じています。しかし、この黒字を家計と同じように良いことと、考えるのは間違いです。

「死に金」が積み上がる財政黒字よりも、「死に金」が積み上がらない財政赤字のほうが、はるかに健全です。経常収支赤字は悪で、黒字は善と決めつける人もいますが、それは間違いであって、赤字、黒字の原因により、良いこともあれば、悪いこともあります。たとえば、好景気であれば、輸入が増えて経常収支が赤になりがちですが、景気が良いことを悪いこととはいえないので、これは悪いことだとはいえません。

それと同じく、財政も赤字だから悪、黒字だから善とは言い切れません。財政が黒字ということは、政府が国民のために仕事をせずに、せっせと「死に金」を溜め込んでいることを意味するかもしれないからです。財政が赤字であっても、予想したより支出が増えたというだけであり、何も問題もないこともあれば、外国からの借金がかさんでいるというということもあります。赤字、黒字だけでは、財政が良い、悪いなどとは言い切れません。

財政赤字はそもそも駄目ではないと考える人は、それこそ家計と財政をごちゃまぜにして考えているのです。家計では、お金が外にでてなくなり、さらにお金も借りることができなければ、それでおしまいで破綻しますが、政府の場合は、徴税権があって税金を徴収できますし、国債も発行できますし、政府は、貨幣を発行することができますから、家計とは根本的に異なるのです。

財政も、経常収支も、不健全な赤字とともに、不健全な黒字もあるのです。

現状の日本を考えれば、財政は黒字より赤字くらいのほうが、「死に金」は溜まらず、財政は健全だといえます。何が何でも、黒字にもっていくことだけが、善であり正しいことだという考えは完璧な間違いです。

不健全な財政黒字のお先棒を担ぐのが、岸田政権ということもできると思います。岸田首相は財務省のいいなりで、国民のことは何も考えていないようです。ふざけるなと言いたいです。

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2023年1月3日火曜日

インド、今年人口世界一に 14億人超、中国抜く―【私の論評】今更中国幻想に浸っていては、世界の構造変化から取り残される(゚д゚)!

インド、今年人口世界一に 14億人超、中国抜く

インド西部ムンバイの海岸で、2022年最後の日没を見る人たち=22年12月31日

 14億人超の人口を抱えるインドは今年、人口で中国を抜き、世界一になる見通しだ。国連のデータが残る1950年代以降続いた「中国が人口世界一」の時代は終わる。米国と中国の競争が激化する中、独自外交路線を堅持するインドは今年の20カ国・地域(G20)議長国。政治・経済両面でさらに存在感を増すことになるが、格差や女性の社会進出の遅れなど課題も多い。

 国連によると、2022年の人口は中国が14億2600万人、インドが14億1200万人で、23年中にインドが追い抜くと予測される。50年にはインドが16億人を超える一方、中国は13億人強に減る見込み。中国は長年の一人っ子政策の影響もあって少子化が進み、23年にも人口減少に転じるとみられている。

【私の論評】今更中国幻想に浸っていては、世界の構造変化から取り残される(゚д゚)!


昨年、国連からインドの人口が来年4月中旬に、中国を抜いて世界最多になるという予測がだされていました。

中国とインドは人口大国で、過去70年にわたり、その人口の総和が世界人口の3分の1を占めてきました。

インドの人口が中国を超えるのは、主に、両国の出生率の差が理由です。

報道によると、20世紀後半、インドの人口は急増の一途をたどり、増加率は年間平均2%に達しました。1947年の独立後、インドの人口は10億人を超え、この先40年間にわたっても増加し続けると予測されています。

一方、中国を見ると、第7回国勢調査では、人口は14億1178万人だった。2010年の第6回国勢調査と比べると、5.38%増で、増加率は年間平均0.53%にとどまっています。

インドの人口は2060年代に17億人近くまで増える一方、中国は早ければ23年から人口減少が始まります。長く中国が人口世界一だった常識が大きく変わることになります。

国際通貨基金(IMF)の世界経済見通し(22年10月下表)によれば、インド経済は23~27年、5年間平均で6.5%の成長が見込まれ、一定の経済規模を持つ国では最も高い部類に入ります。その結果、21年のGDPで世界5位のインドは、25年には4位のドイツ、27年には3位の日本を抜く見込みです。対照的に、中国は27年までの5年間平均で4.6%成長へと減速が予測されています。
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新型コロナウイルス禍前の19年まで、10年間平均で6.9%の成長を続けていたインド。成長をけん引した産業の一つがITです。GAFAなどにもインド人の人材が多く活躍しています。

インドはなぜIT分野に強いのかといえば、インド古来の階級制度カーストの影響から逃れられたことが要因の一つと考えられます。カースト制度では「ジャーティ」と呼ばれる細かな社会集団に分類され、職業が各集団に付随して維持されてきました。しかし、「ITは新しい産業だからカーストの制約はない。将来のビジネスになる」と気付いた優秀な人たちがIT業界に一斉に集まってきたのです。

もう一つの要因としては、インドの公用語でもあるヒンディー語(母語とするのは4億人)は、もともと抽象的概念を扱いやすい言語であり、たとえば「お使いに行く」という日本語の表現を「使者性を帯びて赴く」というような表現をします。子供の頃からこのような抽象的な概念を表現できる言葉を用いている人は、システム設計などの概念も受け入れやすいようです。

インドは1991年、それまでの社会主義的政策から経済自由化政策に切り替え、発展の基礎を築きました。そして今、モディ現政権が注力する領域が製造業、特に半導体分野です。コロナ禍によって中国などに依存していた電子部品やハイテク製品が供給制約に直面。また、20年5月には中印国境で中国との戦闘も発生し、中国依存は危ないと考え、「インドの自立」を唱え始めたのです。

インド政府は今後、半導体産業育成に5年間で7600億ルピー(約1.4兆円)の補助金を拠出するといいます。すでに、電子機器受託製造世界最大手の台湾・鴻海精密工業がインドの資源関連複合企業ヴェダンタと組んで、グジャラート州に半導体の新工場の建設をインド政府に申請しています。総投資額は1.54兆ルピー(約2兆6000億円)にものぼる見込みです。
 
 また、ベルギーの世界最先端の半導体研究機関imec(アイメック)は22年10月、インド政府とインドにおける技術支援を行うことで合意しました。imecが供与する微細加工技術のレベルは、回路線幅28ナノメートル(ナノは10億分の1)かそれ以下と、最先端の半導体製品とは開きがあります。しかし、インドで半導体を国産化するうえで、産業のエコシステム(経済的な生態系)を作る基礎固めとみられます。

インドは今後、消費市場としても大きな注目を集めそうです。インドの1人当たりGDPは現在、2000ドル台ですが、25年には家電製品や家具など耐久消費財の売れ行きが加速するとされる3000ドルを超すと見込まれます。今後特に、生活の質を改善するための需要が期待でき、電力、道路、鉄道、通信、上下水道などインフラ整備も引き続き必要になるでしょう。

安倍日本首相(当時)とモディインド首相

一方の中国は、そもそも民主主義国家ではなく全体主義国家です。このブログでも何度か解説したように、開発経済におては「中進国の罠」という用語があり、民主化が進んでいない国では、政府か掛け声をかけて多大な資金を投入すれば、最初は経済発展するのですが、一人あたりのGDPが1万ドル前後あたりから、伸びなくなるというものです。

中国GDPはすでに1万ドルを若干超えています。今後伸びない可能性が高いです。インドは、現在はかなり低いですが、それは逆に言えば、伸びしろがあるということであり、さらにインドの場合は、1万ドルの壁も突破できる可能性があります。

中国では、2015年に「一人っ子政策」の廃止を決定し、21年には3人目の出産も認めたのですが、教育費の高さなどから少子化に歯止めがかかりません。すでに生産年齢人口(15~64歳)は13年、約10億600万人とピークに達し、今後も減少が見込まれます。やはり、一人っ子政策が2世代(約40年)と長期にわたったことが大きく影響しているようです。

中国とインドといえば、最大の違いは、先に述べたように、中国は全体主義国家であり、インドは未だ古い風習などが色濃く残る社会ではあるものの、民主主義的な体裁を整えた国であり、世界最大の民主主義国家です。

インドでは、不十分なところもありながら、民主主義化、政治と経済の分離、法治国家化がなされています。これが中国との大きな違いです。

中国政府が出す経済統計資料を用いて、インドとの比較をする評論家も多いですが、それには無理があります。中国のGDP統計が疑わしいということは、以前から多くの人に指摘されてきました。日本より国土が広く、人口も10倍の規模である中国が、締め日からたった20日でGDPの確報値をまとめあげてしまうのです。これについては、李克強氏も認めていました。

日本の場合は、速報値はもっと早いにしても、確報値を発表するのに1年近い時間を費やします。そのうえ、GDPの統計は内閣府、失業率は総務省統計局、貿易統計は財務省というように、集計の担当が分かれており、それぞれのチェック作用が働きます。もちろん、これらの政府機関は、統計の対象となる業界との間に利害関係はありません。

他方、中国では各地の地方政府と国家統計局が統計の集計を担っており、これらの機関は所轄地域のGDPと密接な利害関係を持っています。なぜなら中国では、経済成長の目標とは達成しなくてはならないノルマだからです。

水増し粉飾分を取り除くと、実際の中国のGDP規模は未だに日本を超えていないといわれています。そうして、現代の中国は、過大な投資による過剰な生産能力が、企業業績の悪化を引き起こし、経済低迷の原因となっています。

中国が経済発展を続けるには、すでに国内では一巡して目ぼしい案件がない現在、投資主導の経済から消費主導の経済への転換が欠かせないです。しかし、中国国民の貯蓄性向は高く、転換はうまく進んでいません。その最大の要因は、民主化がされていないことと、セーフティー・ネットが整備されていないことです。

中共は、過去の成功体験が忘れられず、海外投資で巻き返しを図ろうとして、一帯一路をはじめたのですが、海外投資の経験に乏しい中共は、投資の基本を理解しておらず、法治国家におけるビジネスの進め方も熟知しておらず、結局投資先を混乱に陥れるだけに終わりそうです。非法治国家においては、成功するかもしれませんが、そのような国は貧乏国が多く、債務の罠にはまるだけになりそうです。

27年までの5年間では、インドのように人口が増えるベトナムやバングラデシュなどで年平均6%以上の成長となるほか、エジプトやインドネシアなどは5%以上の成長が見込まれます。ナイジェリアやバングラデシュ、ベトナムは27年、アルゼンチンなどに代わってGDPの上位30位にも顔を出すとみられます。その中でも、民主化が進んでいる国においては、中進国の罠を突破して成長し続ける国もでてくるでしょう。世界の構造変化の大きなうねりは、従来から予想されていたように、目前まで押し寄せています。

最早中国の経済の停滞は一時的なものであり、また中国の経済発展が始まるなどの中国幻想に浸っている時ではありません。考えを変えていない人や組織は、世界の構造変化から取り残されることになります。

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2023年1月2日月曜日

岸田首相「所得倍増」の掛け声はどこへ? 大増税&社会保険料負担増で「これじゃ所得倍減」の指摘―【私の論評】今年のキーワードは「倍増」? 所得が倍なら納得!そうでなければ(゚д゚)!

岸田首相「所得倍増」の掛け声はどこへ? 大増税&社会保険料負担増で「これじゃ所得倍減」の指摘


 岸田内閣の支持率が急落している。一部メディアでは20%台の危険水域に突入した。その主たる要因は、防衛費増額のうちの1兆円分の財源を岸田文雄・首相が「増税」によって賄うと打ち出した点にあるだろう。国民が物価高に苦しむなかで負担増につながる施策が相次ぎ、“話が違う”という声があがっている。

 2021年秋の自民党総裁選に立候補した岸田氏はもともと、「所得倍増」を掲げていた。「中間層の拡大に向けて分配機能を強化し、所得を広げる。令和版の所得倍増を目指す」とぶち上げ、自身が領袖を務める派閥「宏池会」を立ち上げた池田勇人首相の所得倍増計画に重ねるようにしてアピールしたのは岸田氏自身であった。

 しかし、昨年末の与党税制改正大綱では防衛費増額の財源を確保するために、所得税やたばこ税、法人税の増税の方針が打ち出された。自民党内からの反発があって増税の時期こそ明記されなかったものの、なし崩し的に増税の方針が既定路線となった。さらには相続・贈与税の課税強化の方針も盛り込まれ、ウクライナ戦争や米国の利上げなどによる急激な物価高に苦しむ国民にとっては、負担増の話ばかりが聞こえてくる状況だ。

 経済ジャーナリスト・荻原博子氏は「まさに大増税時代の到来ですが、負担が増すのは税金ばかりではありません」と指摘する。

 「社会保険料の引き上げも続いています。2022年10月から雇用保険料が上がりました。新型コロナによる影響で失業した人たちの失業保険の利用が増えたこともあり、保険料が引き上げられた。これについてはさらに上がるかもしれないという声が出ている。国民年金も、現在は20歳から60歳まで40年間保険料を払えばよかったのが、65歳までへと5年延びることが議論されている。月1万6590円の保険料を5年払うとなれば、100万円の負担が増えます。介護保険も保険料が上がるという話が出てきて、お先真っ暗という感じですよね」(荻原氏)


 岸田氏は首相就任に先立って高度経済成長期になぞらえるような景気のいい「所得倍増」を唱えていたが、現実には賃金上昇を上回るスピードで物価上昇が続いている状況で、実質賃金は下がっている。そのうえ、給料から天引きされる税金や社会保険料がどんどんが上がっては手取りが減っていくばかりだ。たとえば、雇用保険の料率を見ると、2022年10月から一般事業の場合、0.3%が0.5%(労働者負担分)になっており、天引きなどの負担額が“倍近くに増える”のだ。荻原氏が続ける。

 「これでは所得倍増どころか税金や保険料の天引きばかり増えて『所得倍減』です。はっきりいって人災ですよ」

 所得が増えるどころか、減る分が倍になっていく──。これは「所得倍減」と言ったほうがしっくりくるようだ。総裁選や所信表明演説で使われた「令和版所得倍増計画」は、いつの間にか「資産所得倍増計画」へと変わり、NISA(少額投資非課税制度)の拡充などが打ち出されたが、“話が違う”と感じている人は、決して少なくないのではないか。(了)

【私の論評】今年のキーワードは「倍増」?
所得が倍なら納得!そうでなければ(゚д゚)!



上の記事は、マネーポストWEBから引用したものです、このWEB、他の大手新聞メディアと同じくマクロ経済など良く理解しない記者が書いているようなので、ほとんど読んだことはありません。

上の記事にでてくる、経済ジャーナリスト・荻原博子氏も普段話している内容などから、マクロ経済など理解していないようで、この方の発言も、あまり聴いたことはありません。

ただ、こういうメディアや経済ジャーナリスですら、今回の岸田首相の唐突な増税路線には、困惑しているようです。さすがに、防衛のためには、仕方ないというような論調にはならないようです。

マクロ経済への理解など抜きにしても、やはり岸田首相の増税路線は、唐突で異常と映るようです。

岸田総理はもう一度「所得倍増」を掲げるべきです。 結論からいうと、インフレ率を4%に引き上げれば「倍増」は不可能な目標ではありません。

所得を倍増させることは、実はそれほど難しい話ではありません。実質経済成長率は大体2%ぐらいありますから、インフレ率を4%ぐらいに引き上げれば、名目経済成長率が6%ぐらいになります。

名目経済成長率を7%は難しいですが、6%ぐらいなら手が届く範囲です。一人あたりの名目GDPは個人あたりの所得と近似できます。名目経済成長率が6%になると12~13年で倍になるので、個人あたりの所得も倍増ということになります。

これは、不可能な目標ではありません。これは、良いやり方だと思ったのですが、突然やめてしまいました。今年は、もう1回「所得倍増」と言ってもらえばよろしいと思います。

岸田首相は最近は、「資産所得倍増プラン」と言っています。所得倍増をやめて、前に「資産」と付けて「資産所得倍増」にしたのは、ずるいと思います。やはり、「所得倍増」でいくべきです。

多くの人は、「資産所得倍増」と言われても、そもそも手元にある程度資産がなければ倍増などできないと思ったでしょう。

ただ昨年は、ウクライナ情勢や安倍さんの事件の影響で国防意識が強くなり、防衛費を国内総生産(GDP)比1%から2%に増やそうとしています。こちらも倍増といえます。

しかし、また財務省が48兆円のところを43兆円ぐらいにしましたし防衛費の定義を膨らませたりもしましたから、本当に2%に届くのかなとは思います。

しかし、これは実質的に倍増させるべきです。さらに言うと、日本の周りには中露北と非民主国家が3つあります。「仮想敵国1つでGDP比1%」がいままでの相場だったので、3倍増にしてもいいのではないかと思います。

防衛3文書のなかに「反撃能力」という言葉がありました。反撃能力を持つとは簡単に言うと「抑止力」を持つということです。抑止力が何で成り立っているかと言うと、「倍返し」です。「やられたら倍返しするぞ」と言うと相手は攻撃してこなくなります。

防衛3文書に「倍返し」という意味で「反撃能力」と書いてあるのならば良いです。ただ反撃能力とすると、いろいろな制約があるらしく、「倍返し」などとは言えない部分があるらしいです。

しかし、直截にいえば「倍返し」で反撃能力は成り立っているのです。



倍というと、最近、日銀の金融政策決定会合があり、長期金利の許容変動幅を現状の±0.25%程度から±0.5%程度に拡大すると発表しました。これは、実質利上げであり、長期金利倍増で変動金利で住宅ローンを借りている人は、支払い金利が倍になります。

金利は上に張り付くのが普通ですから、現状0.25%これを±0.5%に上げて倍増です。固定金利で借りている人は、関係ありませんが、変動金利の人は、住宅ローンの支払い金利が今年から倍になるかも知れないです。

消費税は現在10%ですが、防衛費増額の財源 として、復興特別所得税の徴収 20年程度延長案検討をきっかけに15%まで上げて、最終的に20%にする可能性もあります。これも倍です。

岸田政権は、これを狙っているのです。嫌な話しです。負担を倍にするのであれば、「所得も倍にしてくれ」と考えるのが普通だと思います。その方がすっきりするはずです。所得が倍になれば、防衛費も簡単に倍にできます。

やはり、岸田首相は「所得倍増計画」の旗印をまた上げるべきです。岸田文雄・首相が率いる「宏池会」(岸田派)は、人数では 第4派閥に過ぎないですが、自民党の保守本流と呼ばれます。それを創設したのが、日本を「経済大国」へと押し上げた池田勇人・元総理大臣です。

池田勇人総理大臣(当時)

こうしたこともあり、宏池会では「所得倍増計画」を掲げていました。岸田首相は一昨年秋の自民党総裁選で、「中間層の拡大に向けて分配機能を強化し、所得を広げる。令和版の所得倍増をめざす」とぶち上げていました。

岸田総理は、出身派閥があげた「所得倍増計画」を取り下げてしまったのです。

今年は「倍増」がキーワードになりそうです。防衛費を倍増するのは無論のこと、岸田総理には「所得倍増計画」を再度掲げていただきたいのです。消費税倍増などで、所得倍減になるようなことは、多くの国民は納得しないでしょう。

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