マクロン大統領の〝台湾発言〟や米軍の機密情報の流出…自由主義陣営に乱れ 島田洋一氏「日本は『経済』でリーダーシップを」
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マクロン大統領(左)と習国家主席の接近には批判が渦巻く |
欧米を中心にする自由主義陣営の「結束」に乱れが生じている。フランスのエマニュエル・マクロン大統領が中国訪問時(5~7日)に、台湾情勢について、「われわれ(欧州)のものではない危機」と発言したことに対し、欧州の対中強硬派から批判が相次いでいる。米軍などの機密文書がSNS(交流サイト)に流出した問題では、国防総省が機密情報が文書に含まれていることを認めた。流出文書によって、米国が韓国高官の会話を傍受していた疑惑が持ち上がるなど、同盟国や友好国との関係にも影響が出つつある。覇権拡大を図る中国やロシアに対峙(たいじ)するため、団結が求められる自由主義陣営は大丈夫なのか。
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欧州で波紋を広げているマクロン氏のインタビューは、仏紙「レゼコー」(電子版)などが9日掲載した。
マクロン氏はインタビューで、EU(欧州連合)は米中対立と距離を置き、「第三極」を目指すべきだと主張し、次のように語った。
「台湾での(緊張の)高まりに、われわれの利害はあるか。答えはノンだ。最悪なのは、米国のペースや中国の過剰反応に追随せねばならないと考えること」「われわれのものではない危機にとらわれれば、罠に陥る」
共産党一党独裁の中国を前に、「自由」「民主」「人権」「法の支配」という共通の価値観を持つ自由主義陣営の結束を危うくする発言である。
ドイツでは早速、連立与党内から批判が飛び出した。
社会民主党(SPD)で外交問題を担当する下院議員はドイツ紙で、「中国に対し、西側が分裂するのは誤り」と強調し、ロシアのウクライナ侵攻を教訓として、「強権国家におもねるべきではない」と自由主義陣営の連携を訴えた。
欧州を含む各国の議員で作る「対中政策に関する列国議会連盟」(IPAC)は声明を出し、マクロン氏の発言を「台湾海峡の平和を維持するための国際社会の努力を損なった」と批判した。
声明には、英国やフランス、ドイツのほか、スウェーデン、オランダなどの国会議員が名前を連ねている。
フランスのメディアも「失策」(フィガロ紙)と酷評した。
米機密文書流出問題も深刻だ。
米国防総省のクリス・メアー国防長官補佐官(広報担当)は10日、流布している文書には機密情報が記されたものが含まれていることを認めた。メアー氏は「深刻に受け止めている」「(文書の)一部が改変されているとみられる」として、情報戦に利用されている可能性を示唆した。
ウクライナ政府は、流出文書の内容について「偽情報」とし、ロシア軍に対する作戦とは「無関係」と強調している。同国ではロシアに対する反攻が近く始まるとされる重要時期を迎えており、米CNNテレビは、ゼレンスキー氏に近い筋の話として、「流出のために、すでに軍の計画の一部を変更させた」とも報じた。
バイデン政権は、中国やロシアへに対抗するため、同盟・友好国との連携強化を目指しているが、流出文書では、同盟国が米国の通信傍受対象となっていた疑惑も持ち上がった。
ある文書には、米国の要請でウクライナに砲弾を供与することを懸念する韓国高官2人のやりとりが記載されていた。イスラエルの諜報機関「モサド」が、国内の反政府デモを後押ししているとの情報を記した文書もあったとされている。
尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の国賓訪米を今月下旬に控えている韓国では、政府が11日、「相当部分」が偽造されたとする公式見解を表明した。一方で、「事実なら深刻な主権侵害」(朝鮮日報社説)などと反発が広がっている。
一連の事態をどうみるべきか。
福井県立大学の島田洋一名誉教授は「中国やロシアの脅威に対処しなければならないタイミングで、西側諸国の間で足並みがそろわないのは憂慮すべき事態だ。フランスなど『中国との経済関係』を重視している国があるため、今回のように自由主義陣営が切り崩される恐れは今後もある。来月、広島で行われるG7(先進7カ国)首脳会議で、日本は議長国を務める。結束再確認のため、日本は自由主義陣営による経済圏構築など、経済分野でリーダーシップを発揮すべきではないか」と話した。
【私の論評】日本が破竹の経済発展を遂げ、G7諸国の経済を牽引することが安保につながる(゚д゚)!
上の記事で、島田洋一氏が、日本は自由主義陣営による経済健康そうなど、経済分野でリーダーシップを発揮すべきと主張していますが、その通りです。
中国は、マクロンの台湾関連の発言を最大限に利用し、G7の結束を弱め、さらには分断しようと虎視眈々と狙っているでしょう。
経済分野というと、中国経済は停滞し、中国がG7などに直接的に経済分野で対抗しようとしても、かなり無理があります。何しろ、中国はコロナ禍前から、国際金融のトリレンマに囚われ、結果として独立した金融政策ができない状態になっています。だからこそ、失業問題もなかなか解消できないでいます。
しかし、その中国も経済分野で、できることはやろうとしています。その一つとして、中国政府は、ハイテク製品に使われる高性能レアアース(希土類)磁石の製造に関する技術の輸出禁止に向けて検討作業を進めていることが明らかになりました。中国政府の輸出禁止・輸出制限技術リストで、レアアースの精錬や加工などの技術の輸出制限を盛り込む予定です。
レアアースといえば、2010年に沖縄・尖閣諸島をめぐり日中が対立すると、中国側が対日輸出を一時停止したことがあります。
これに対して、日本政府と企業は、中国以外での調達先確保、国内での再利用推進、省資源や代替原料の技術開発などの対策を行いました。その結果、中国からのレアアース輸入量は半減、輸入の中国依存度も8割から5割に低下しました。レアアース価格は暴落し中国では生産停止に追い込まれる企業も出ました。
さらに、安倍晋三・菅義偉政権の時、中国以外の海外で行っていた精錬加工を日本国内でできるような対策もしており、相当の準備もできています。岸田首相は、昨年10月にオーストラリアを訪問しましたが、その時に日豪両政府は22日、レアアース(希土類)といった重要鉱物のサプライチェーン(供給網)を構築するため、投資や研究開発の促進など連携を強化することを申し合わせた文書を交わしました。
米国は自国での鉱山開発にレアアース生産に占める中国依存度は9割から7割まで下がった。しかし、自国で生産したレアアースの多くを中国に輸出して、現地で精錬してから輸入しています。
日本はレアアースを使う高性能磁石の生産を得意としており、原材料のレアアースの確保は中国以外からの調達や再利用である程度のめどがたっています。米国は高性能磁石を搭載するハイテク製品が得意ですが、中国にレアアース精錬を依存している弱点があります。
今回の措置は、中国が米国に対抗するのが目的です。レアアースに対する準備をしてきた日本が米国等の弱みを補える可能性がある。
レアアースが注目されるのは、電気自動車(EV)などでは強力な磁力を有する駆動モーターが必要ですが、それにレアアースが欠かせないかです。日本では、すでにレアアースなしでハイブリッド(HV)車用の駆動モーターを開発しています。
中国がEVでの覇権争いのためにレアアース禁輸等を仕掛けるのであれば、世界のEV戦略を一部HVに変更するという手もあります。
日米でEV戦略を見直し、欧州連合(EU)が合成燃料「
e―fuel(イーフューエル)」を使うエンジン車の販売を例外としたように、対中対策でレアアースなしのHVを認めることも検討すべきです。中国によるレアアース生産と精錬は著しい環境破壊を招いており、日本によるレアアースなしのハイブリッドは環境に貢献することになります。
もともとHVからEV主導になったのは、欧米の自動車会社の戦略でした。
それに中国も乗ったのですが、ここに来て日米欧州とも経済安全保障が重要になってきたので、その観点からEV戦略を見直すべきです。
昨日このブログでは、来月、広島で行われるG7(先進7カ国)首脳会議で、日本は議長国を務めることから、
岸田首相は、安倍氏がインド太平洋戦略を構想し、米国にこれを採用させるとともに、インド太平洋地域の国々を巻き込んだときのような役割を担って、G7広島サミットでフランスが、インド太平洋戦略で貢献するように促していただきたいものです。それが、ドイツや他のEU諸国に対しても、これを巻き込むことにつながるとししました。
ただ、岸田首相がリップサービスだけで、これを行えば、フランスやドイツなどのG7の国々は、表面上はそれを受け入れたように見せても、中国との関係をなかなか断てない可能性があります。それに対して、上記で述べたような、中国のレアアースに頼らなくて、良い仕組みを提唱し、それを主導していけば、G7の国々も納得し、中国に対する牽制で一致協力できる可能性が高まります。
経済分野でいうと、日本は他のG7諸国と比較すれば、経済は堅調です。なぜかといえば、安倍・菅政権において、合わせて100兆円ものコロナ対策補正予算を組み、それで経済対策を行ったからです。
100兆円を調達するには、政府日銀連合軍(政府が発行した大量の国債を日銀が買い取る方式)使ったので増税の必要はありませんでした。増税なしを政治決断した安倍菅さんは素晴らしいです。
国内にはなぜか、アベノミクスを否定する論調も少なくないですが、アベノミクスはマクロ経済学の基本である財政政策と金融政策、ミクロ政策の基本である成長戦略を組み合わせたもので、ベン・バーナンキ氏やミルトン・フリードマン氏らノーベル賞を受賞した経済学者の理論にも沿ったものです。
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ベン・バーナンキ氏 |
アベノミクスを否定する方々は、ノーベル賞級の経済学者の理論を否定しているのです。彼らが正しいのなら、それを論文にまとめて、世界水準の経済誌に発表すべきです。ただ、それをやれば「馬鹿」といわれておしまいで、掲載されることもないでしょう。
今後岸田政権は、増税することなく、金融緩和の継続と積極財政を実施し、日本経済を発展させ、世界経済の牽引役を担うべきです。現在は、米国をはじめとするG7の国々は利上げの影響で、今後急速に経済が伸びることはありません。
中国も、先に述べたように独立した金融政策すらできない状況なので、今後急速に発展することもありえません。
今その可能性を秘めているのは、長い間デフレだった日本だけです。日本では、物価高がいわれていますが、他国と比較すれば、さほどでないことがわかります。中国は物価が下がり気味ですが、これは金融緩和がしたくてもできないことの裏返しであり、良いことではありません。日本が他国と比較して、破格の経済発展をすれば、輸入も増え、G7の国々も中国に期待することはなくなります。
日本の経済発展により、日本国内はもとより、中国の意図を挫き世界が救われることになります。特に、日本の賃金は中長期的に上昇することになるでしょう。岸田首相はこの機会を逃すべきではありません。
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