「アバクロ」銀座店に長蛇の列 ブラピ御用達ファストファッション上陸(この内容、すでにご存知の方は、この項は読み飛ばしてください)
セレブ御用達の米カジュアルウエアブランド「アバクロンビー&フィッチ」の日本1号店が15日、東京・銀座にオープンした。アバクロにとってアジア初の旗艦店で、開店前から500人超が長蛇の列をつくった。銀座では、低価格で最新のファッションを提供する”ファストファッション”と呼ばれる欧米ブランドが次々に上陸し、しのぎを削っている。真打ともいえるアバクロの登場で、日本代表の「ユニクロ」や苦戦が続く高級ブランドを交えたサバイバルが激化しそうだ。
アバクロは、女優のブリトニー・スピアーズ、歌手のマライア・キャリー、男優のブラッド・ピット、サッカーのベッカム夫妻、日本でも歌手の浜崎あゆみや人気アイドルグループ「SMAP」の木村拓哉らが愛用するセレブ御用達の人気カジュアルブランド。これまでセレクトショップや通信販売を通じて国内で流通し、若者を中心に高い人気を誇る。すでに日本に上陸しているスウェーデンの「H&M」やスペインの「ZARA」、米国の「フォーエバー21」などのファストファッションに比べると、やや価格帯は上だ。
消費不況が深刻化するなか、1~2万円で全身を最新ファッションで着飾ることができるファストファッションは絶好調だ。H&Mやフォーエバー21の銀座店の前にはいまでも開店前から行列ができるほどで、日本国内の店舗網を拡大させている。
松坂屋銀座店では、イタリアの高級ブランド「グッチ」が撤退する空スペースにフォーエバー21を誘致するため、交渉中とされる。仏の高級ブランド「ルイ・ヴィトン」が銀座の数寄屋橋に3号店の出店を計画していたが、断念。その予定地には、米カジュアル大手「ギャップ」が2011年2月をめどに出店するなど、高級ブランドのメッカだった銀座を低下価格ブランドが制圧する勢いだ。
迎え撃つユニクロも、10月に銀座店の売り場面積を1.5倍に拡大した。隣接するビルに入居していた米高級ブランド「ブルックス・ブラザーズ」の撤退で開いたスペースにユニクロが入居したもので、”主役交代”が鮮明だ。ユニクロも、機能性下着「ヒートテック」のヒットなどで既存店売上高が11月まで4カ月連続プラスとなるなど、不振にあえぐライバルを尻目に快走を続けている。欧米のファストファッションブランドの相次ぐ上陸にも、「ユニクロはベーシックを中心にしているので、棲み分けができる」(関係者)と余裕の表情だ。
業界関係者は「消費不振で今後も高級ブランドの銀座撤退が続く可能性があり、銀座でも、ファストファッション・デフレが進む」と話している。
レニ・リーフェンシュタールを彷彿とさせる物語性は日本でも定着するか?
デフレスパイラルにも入ったとも言われている、日本に、またまた、海外のファスト・ファションが参入です。参入する側も、十分日本の経済などの状況を調査しての出店です。当然、日本でも売れると見込んでいるのだと思います。
アバクロに限らず、ファスト・ファッションがなぜ売れるか、それは、デザイン性が高い割には、価格帯が低いということにつきると思います。一昔前は、デザイナーズブランドと、実用的な非ブランド品の二系統しかありませんでした。あるには、あったのですが、中途半端だったということです。デザイナーズ・ブランドは、非常に高価ですし、実用的な非ブランド品は、あまりにもデザインがダサかったので、その間を埋めるファストファッションが日本でも受け入れられたという背景があります。
それに、デザイナーズブランドだと、ファッションショーを開催する前からの準備期間や、ファッションショーを開催してから、実際にアパレルを販売するまでにかなりの時間を要します。しかし、ファストファッションはかなり短期間でこれを実施します。そもそも、デザイナーズブランドではデザインが主目的であり、とても普段着ては歩けないような服をファッションショーに出品して、それから、そのデザインを取り入れた実用的なアパレルを出すという具合でした。
しかし、ファストファッションの場合は、ファッションショーには最初からデザイン性を取り入れながらも、普通に着られるアパレルを出品し、場合によっては、iPhoneなどでファッションショーを見ながら、自分の好みの服を注文できたりします。それに、デザイナーズブランドだと、せいぜい、入れ替わりは、1年なのに、ファストファッションでは数ヶ月です。短いところでは、2ヶ月という場合もあります。これだけ、サイクルが短いので、最も新しいデザインを手に入れられるというところが、かなり魅力的なのだと思います。
これは、完全に従来の、デザイナーズブランドと実用的な非ブランド品のアパレルという構造を打ち破ったということだと思います。やはり、消費者の気持ちを大事にしたということだと思います。
それに、特に海外から入ってくるファスト・ファッションは、先日もこのブログで掲載した、いわゆる「物語性」も豊富です。無論アバクロにもあります。
アバクロ。日本では、新しいものという感覚でしょうが、アメリカでは、ずっと前からある老舗中の老舗です。一度でも、海外のアバクロンビー・アンド・フィッチで買い物をしたことがある人は既に体験済みだと思いますが、お店にはモデルばりの若い販売員が揃っています。そのほぼ全員が白人。これも、アバクロのブランド戦略の一つでした。
アバクロは、ブランドを代表する美男美女のモデル販売員を揃えることで、ブランドが持つ魅力を最大限に体現させます。そんな販売員らが最大限に求められるのは、販売能力や接客能力ではなく、ブランドに相応しい外見、ブランドを代表するルックスです。アメリカではこのやり方に対し、猛烈な批判が相次ぎました。
少し前までの、アバクロの典型的な広告画像
これもアバクロのポスター。セピア色なのが、歴史を感じさせる。
アバクロの最近のポスター
「ブランドのイメージにあった美しい白人以外は採用しない、という経営陣の姿勢にも大きな問題はあるが、文化的にマイナス影響を与えながら利益を得る、という企業の姿勢自体に問題があるのでは」、というのが一部の意見です。その一方で、アバクロの(主にビジュアル)マーケティング戦略はサクセス・ストーリーとして語られることもあります。そのブランディングやアピール力は、評価に値すると。
そもそも同ブランドには、二種類のパートタイム職がありました。
一つは上記に述べたように、店頭でモデルとして、前面で接客業に携わる販売員職。もう一つは、店内のプレゼンテーション(演出)に携わり、ブランドの基準を統一させるインパクトチーム。インパクトチームは、商品が途切れることなくお店に並ぶことをケアするのが主な仕事で、接客はしません。当然、彼らはモデルたちに比べ、人前に出る機会が少なくなります。このことからインパクトチームは、「外見や容姿が重視されるモデル販売員には不向きな人に対し、勤務機会を与えるためのポジションなのでは」と考える人もいるようです。どちらも大事な仕事ですが、前面に出るのが白人、マイノリティは裏方、というやり方にはやはり問題を感じます。
この雇用差別問題は深刻で、白人ではないスタッフがブランドの見た目にそぐわないとして解雇され(もしくは採用されなかった)、そのことでA&F社は訴えられたこともあります。
また、たとえマイノリティが採用されたとしても、やはり接客、販売に携わるのではなく、裏での活躍にまわされるケースが事実多いようです。そういったスタッフの多くは、アジア系アメリカ人、フィリピン人、メキシコ人、ラテン系アメリカ人であり、白人ではありません。
具体的な訴訟ケースとして、『Gonzales対A&F社』が挙げられます。白人に、より望ましい仕事を与えることで、マイノリティ従業員を差別したとして、A&F社が提訴されたケースです。同社は、販売店では白人ばかりを雇い、マイノリティ従業員を粗末に扱い、広告から(人種的)多様性を排除したとして、激しく非難されました。
その後、A&F社は、大規模な訴訟にあい、それまでのやり方を改めざるを得なくなりました。現在同社のホームページには、「多様性とインクルージョンはわが社の成功の鍵です」といったメッセージが掲載されています。モデルには、白人以外も使うようにもなりました。ただし、美しさを追求するということには変わりがないようです。
その努力を認めて、今後の変化に期待したいですね。日本では、どのうよな展開をするのでしょうか?日本の店は行ったことがないのでわからないですが、いわゆる美人時計に出てくるような人が、接客をするのでしょうか?行った人、是非教えてください。
何か、私は、このアパレル、レニ・リーフェンシュタールを彷彿とさせるので、好きです。レニも、最初は、時代背景もありますが、ドイツの若い男女を題材としていましたが、晩年には「ヌバ」でアフリカの人々の見事な躍動美を捕らえていました。
かつてヒトラーの愛人とも噂された映像作家のレニ・リーフェンシュタール
ヌバ族に魅せられたレニ・リーフェンシュタールが撮影した見事な写真集『ヌバ』
これもヌバより
ヌバの表紙
無論、アバクロの創立は、100年以上前だったと思いますので、レニ・リーフェンシュタールが若い頃活躍した時代は、その後ですが、このような想起をしてしまうのは、きっと私だけではないでしょう。他の人は、ジェームス・ディーンを想起するかもしれません。また、ある人はブラピを想起するかもしれません。A&F、人々にこうした想起をさせるということで、物語性も十分だと思います。日本でも、新たな物語が生まれるかもしれません。
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