2018年6月30日土曜日

JR東労組が「敗北宣言」 スト計画の顛末…3万人脱退、立て直し前途多難―【私の論評】変遷した社会についていけなくなった労組は何をすべきか(゚д゚)!

JR東労組が「敗北宣言」 スト計画の顛末…3万人脱退、立て直し前途多難

JR東労組が組合員にストライキへの参加を呼びかけたとみられる資料

 今年の春闘でストライキ権行使を一時予告したJR東日本の最大労働組合「東日本旅客鉄道労働組合(JR東労組)」では、組織の3分の2にあたる組合員約3万2千人が脱退する事態を招いた。これを受け、JR東労組は6月の定期大会で事実上の敗北とする宣言を採択したもようで、トップの制裁と指導体制の刷新をも行った。それでも会社側との関係修復は困難とみられ、組織立て直しに向けての前途は多難だ。

(※6月18日にアップされた記事を再掲載しています)

スト予告で大量離反

 「3カ月という短期間で組織の3分の2が脱退する事態を生み出してしまった…(中略)…18春闘は『敗北』であると総括した」

 6月13日、さいたま市文化センター。JR東労組は定期大会で、こんな大会宣言を採択したもようだ。ストを計画した結果、組合員の大量離反を招いた事態を受けての“敗北宣言”だった。

 JR東労組は今年の春闘で、組合員の基本給について、一律定額でのベースアップ(ベア)実施などを要求。会社側が難色を示したため、2月19日、自己啓発活動を行わないなどとする「非協力闘争」を東京周辺で先行実施することを会社側へ通知した。3月15日から参加者を限定しての「指名スト」の実施を東京地方本部(地本)の運輸系職場を中心に行う計画だったとされる。

 会社側はスト中止を申し入れるとともに、「社員の皆さんへ」と題した社長名の文書を複数回、配布するなど、社員に向けて会社の姿勢への理解を求めた。

 5日後にはスト予告を解除したJR東労組だったが、会社側は「(信頼の)基盤が失われた」として、労使協調を掲げた「労使共同宣言」の失効を通知。この流れの中で、組合員大量脱退の動きが決定的となった。

 会社側によると、5月1日時点の推定組合員数は約1万5千人で、スト予告前の約4万7千人(2月1日時点)から約7割も減少した。関係者によると、推定加入率でみても、昨年10月時点での約80%が、5月1日時点で約25%まで低下した計算になるという。

組織分裂まで招いた

 スト戦術が招いたのは、組合員の大量脱退だけではなかった。各地の地本がスト戦術積極派と消極派に割れ、路線の違いが鮮明になった。スト実施に積極的だった「強硬派」が東京、八王子、水戸の3地本。消極的だった「穏健派」が盛岡、秋田、仙台、大宮、千葉、横浜の6地本だ。

 穏健派6地本はスト中止後、労組の態勢立て直しを図るべく臨時大会の開催を要求。4月12日に開かれた臨時大会で、「組織内に混乱を作り出した」として執行委員長ら幹部2人に加え、臨時大会開催に強硬に反対して執行委員会を途中退場したなどとして、強硬派3地本の執行委員12人についても制裁を決議した。

 そして迎えた6月13日の定期大会。選出された新執行委員の顔ぶれは、会計監査員以外の役職23人に3地本出身者が皆無という結果になった。

 「ずっと中心的だった3地本出身者がここまで排除されるのは異例」(JR労組関係者)。JR東労組が追い込まれたのは、スト戦術に対する“トラウマ”が多くの組合員にあったからだ。分割民営化(昭和62年)以前の国鉄時代、経営陣の合理化に反発した各労組が事実上のストやサボタージュを繰り返し、国民の信頼を失った過去がある。

 中でも激しい労使交渉で「鬼の動労」と恐れられた「国鉄動力車労働組合(動労)」の系譜は、離合集散を経てJR東労組などに受け継がれた。会社側は労使協調路線を続けていたが、平成22年に同労組の「絶対的指導者」(JR関係者)だった松崎明元委員長が死去して以降、関係は変化し始めていたという。

18春闘で動労千葉は千葉検査派出要員削減反対のストに立ち、
3月30日にDC会館でスト貫徹総決起集会を開いた

 50代のベテラン社員は「ストの先に何があるのか。30年かけて築いた信頼が崩れ、経営が傾く状況さえあり得る」とストを“復活”させようとした戦術に憤りを隠さない。

 今回のスト騒動を受けて、会社側の姿勢は硬化した。業務効率化策への協力などをJR東労組との関係回復の条件としているが、「条件が守られても信頼関係は『マイナス』から『ゼロ』になるだけ。実践の中で慎重に見ていかないといけない」(会社関係者)との考えだ。

不審事案に「内部犯行説」?

 そんな中、JR東日本の管内では、線路上に障害物が置かれるなど妨害とみられる不審事案が多発し、3月以降の3カ月間で計約410件にのぼっている。

 踏切内に植木が置かれていた▽乗務員室扉の内側が損傷した▽発車ベルが持ち去られた-といった被害のほか、JR郡山駅(福島県郡山市)構内では4月、無人車両の車輪止めが外れ、別の車両に衝突した。

 JR東日本は、この車両衝突とともに、他の地域で発生した車内トイレ火災、線路上での自転車と列車の衝突事故の計3件について、威力業務妨害罪などに当たる可能性があるとして警察へ被害届を提出した。さらに、同社は防犯カメラを増設するなどして警備を強化している。

 それぞれの事案の関係性は不明だが、JR東労組は6月13日の大会宣言の中で「現在、JR東日本管内で列車妨害が多発している」としたうえで「一部マスコミでは…(中略)…内部犯行説も流布している。JR東労組を社会的に抹殺していく狙いをも警戒し、鉄道マンとして、乗客や乗務員の命を脅かす列車妨害を跳ね返さなければならない」との見解を示したようだ。

 JR東労組の担当者は「組織固めのため、内部での議論を優先したい。今は外部に対して答えられることはない」と話した。

【私の論評】変遷した社会についていけなくなった労組は何をすべきか(゚д゚)!

JR東日本の敗北宣言は、その労組というか、自治労を含めた日本の労組の将来を示す大きな分岐点になったと思います。7割がたが辞めたというのですから、ただごとではありません。

おそらく、日本の多くの組合は、滅亡するか、あるいは大企業にみられる企業内組合のような存在になっていくことでしょう。

では、企業内組合とはどのようなものか、以下にまとめておきます。

結論から言うと、日本の企業内労組の実態は、人事や経理といった部署と同じく、社内の一部門に過ぎません。その会社の正社員だけで構成されるのだから当然です。人事が経営層や管理職と話をしながら仕事をするのに対し、従業員と話をしながら仕事をするというだけのことです。

そして、実は誰よりも経営目線を持っている組織でもあります。たとえば株主は株売ったらそれっきりですし、経営陣もたいてい数年で卒業しますけど、労組だけは20年30年そこで飯を食っていく前提で考え、行動するからです。結果、日本企業の労組には以下のような特徴がみられます。

長時間残業も厭わない

仕事が増えた場合、普通の国の労組ならこういうはずです。

「忙しい?だったら新しく人を雇えばいいだろう。自分たち労働者には関係ない話だ」

一方、日本企業の労組ならこういう感じです。

「また仕事ですか!いいですねぇ!がんがんこっちにまわしてください。新規採用ですか?人増やしちゃうと暇になった時に誰かがクビになるから残業でなんとかしますよ、三六協定結んで月150時間くらい残業出来るようにして対応しましょう」

同じ理由で全国転勤にも労組は協力的ですね。

ストライキなんて絶対しない

労働基本権の一つであるストライキは憲法でも認められたものですが、わが国ではもう長いこと行われていません。当たり前ですね。ああいうのは業界全体で組織された産別労組みたいなものでやるか、流動的な労働市場の下でやるから意味があるんです。

「会社が傾いてもぜんぜん構わない。いつでも転職できるから」と言える環境でないと出来ないわけです。終身雇用でその後も長く飯を食うであろう会社でストやって売上げ減らしても、自分で自分のクビ締めるようなものですね。

賃上げにこだわらない

他国の労組は賃上げにとても積極的で、経営側がどんなに先行投資や内部留保の重要性を説いても「我々には関係ない、今すぐこれだけ払ってくれ」と主張するものですが、この点でも日本の労組はとても協力的です。経営を安定させ、20年30年先も雇用を守るという視点を労使で共有しているからです。

ここ数年、春闘で政府が賃上げをせっつく一方で連合の要求が控えめなことが話題となっていますが、無理やり賃金水準を上げ過ぎると後から経営を圧迫しかねないと連合は遠慮しているわけです。

まとめると、労働市場の流動性が低く社内労組中心の日本では、労組が率先して残業や転勤に協力し、賃上げには抑制的でストもうたないということです。それを“御用労組”と言えばそうでしょうが、終身雇用の下ではそれがもっとも合理的な選択です。

ちなみに、こうした良好な労使関係を維持するため、多くの大企業ではユニオンショップ協定というものを労使間で結んでいます。これは、その労働組合への加入を従業員に義務付け、脱退した人間を解雇するという労使間での取り決めです。

これにより労組は何にもしなくても正社員を自動的に組合員に出来ますし、組合費も天引きしてもらえます。会社は共産党とか新左翼系の「しゃれですまない労組」の組織内への浸透を抑えられるという強力なメリットがあります。まさに労使一体の象徴のような協定です。

日本の企業内労組は労使協調路線によって戦後の高度成長を支える原動力となりましたが、同時に長時間残業の蔓延や賃金抑制といった副作用も併せ持つという点は留意すべきでしょう。

なぜ労組は弱体化したか

JR東日本は今や一民間企業です。ただし、かつては国鉄だった名残として、強硬な労組の体質が残りましたが、それも年とともに薄れていき、現在に至っているわけです。

さて、労働組合の本来の目的は、労働者の雇用環境の向上や諸条件の維持改善にあります。しかし、近年は著しくその存在感が薄れてきており、全労働者に占める組合員の比率も、戦後は半数を超えていたのですが、現在では20%に満たない状態で、今なお低下し続けています。



では、何が労組の弱体化を招いているのでしょうか。

まずは、過去20年間において、非正規雇用者の割合の推移を見ると、男性が8%だったのが20%近くに、女性では38%だったのが、今では半数以上に急増しています。

しかし、企業内労組も含め労働組合の多くは中高年の正規雇用者で構成されており、積極的な非正規雇用者の保護は、自らの首を絞めることになると考えてしまうため、肥大するそれらの労働者を守ることができずにここまで来てしまったようです。

以前に比べ、従業員を大切にする経営者も増え、一見労働組合は不要に見えるかも知れないですが、検討すべき課題は従来とは異なる場所で発生しています。その辺りについて建設的に意見を交わせる労働組合は組織全体にとってもメリットが大きいでしょう。

改めて労働組合の使命は何か、顧客は誰か、顧客にとっての価値は、といった問いについて整理する必要があります。

特に、過去の20年くらいは日本はデフレ・円高不況に見舞われ、非正規労働が増えていたので、労組の弱体化の要因として、これが最も大きなものだったと考えられます。しかし、これに関しては、日銀の金融緩和政策により、雇用情勢が良くなり、徐々に解消されつつあります。

労組の弱体化要因は、このような流れのほかに、大きな社会の変化があります。それは、2000年あたりを境にして、日本社会が知識社会に突入したということです。


知識社会とは、富の源泉が従来のように、ヒト・モノ・カネという時代から、知識に移行した社会です。

確かに、今でもヒト・モノ・カネが重要ですし、社会の大きな部分が知識社会に移行したとしても、全部が一気に知識社会に移るというわけではなく、まだら模様のように移行していきますから、国民の全部が知識社会に移行したとは言い切れない面もありますが、社会的に最もインパクトがったのは、やはり知識社会への移行です。

知識社会に移行した組織やコミュニティーにおいては、新たな知識を想像したり、知識を仕事に適用しなければ、富や利益を創造することはできません。

通称、ファーストと呼ばれるたリーバイス506XX。1920年頃から1953年(または1952年)
までのかなり長い期間製作された肉体労働者用のデニム・ジャケット。
現在では純粋な肉体労働者は少数派になった。

そうして、知識社会の担い手が、知識労働者やテクノロジストといわれる人々です。現代社会においては、肉体労働のみを行う人はほんの一握りで、きわめて多くの労働者が知識労働と肉体労働の両方を行います。そのような人たちをテクノロジストと呼びます。今やテクノロジストこそ、先進国にとって唯一の競争力要因です。

そうして、経営学の大家ドラッカーは知識労働者は組織を通じてでなければ、成果をあげなければならないとしています。これは、知識労働と肉体労働の両方を行うテクノロジストにもあてはまることです。

ドラッカーは以下のように述べています。
今日では、知識を基盤とする組織が社会の中心である。知識や理論を使うよう学校で教育を受けた人たちのますます多くが組織で働いている。彼らは組織に貢献して初めて成果をあげることができる。(ドラッカー名著集『経営者の条件』)
ドラッカーは、成果をあげることは、新入社員であろうと中堅社員、経営幹部であろうと、彼ら自身の自己実現のための前提だといいます。しかし知識労働者たる者は、組織において、自らをマネジメントしなければならないのです。
動機づけも、組織を通じて成果をあげることにかかっています。組織において成果をあげられなければ、仕事に対する意欲は減退し、九時から五時まで体を動かすだけとなるとしています。
しかも、知識労働者が生み出すものは、知識、アイディア、情報です。彼らのアウトプットは、それだけでは役に立ちません。膨大な知識を得ても、それだけでは意味をなさないのです。
知識労働者には肉体労働者には必要のないことが必要になります。すなわち、自らのアウトプットを他の者に供給することです。他の者のアウトプットと結合させなければ、成果とはなりえないのです。
しかし、組織に働く者は、成果をあげることを要求されながら、それが至って困難であるという状況にあります。時間は他人に取られます。雑用に追われ続けます。
成果をあげるよう意識して努力しないかぎり、まわりを取り巻く現実が彼ら知識労働者を無価値とする。(『経営者の条件』)
このように、知識労働は、そもそも組織を通じて行わなければならず、組織と敵対していては、知識労働者やテクノロジストは成果をあげられないのです。だからこそ、彼らにとっては、会社組織に敵対する旧来の労組には、もともと親和的ではないのです。

だからこそ、日本では上記で述べたような、企業内労組が主流になったのだと思います。ただし、 企業内労組も知識労働者やテクノロジストにとって、労働者の雇用環境の向上や諸条件の維持改善に寄与していないという面があります。

そもそも、肉体労働については、良い仕事に対する良い賃金だけで良かったのです。しかし、知識労働に関しては、そのように単純なものではありません。知識労働については、卓越した仕事に対する卓越した報酬でなければならないのです。知識労働者が求めるものは、肉体労働者よりもはるかに大きいく、異質でさえあるのです。

知識労働者は生計の資だけの仕事では満足できません。彼らの意欲と自負は、知識人としての専門家のものなのです。知識労働者には知識をもって何事かを成し遂げることを欲するのです。したがって、知識労働者には挑戦の機会を与えなければならないのです。

知識労働者に成果をあげさせるべくマネジメントすることは、社会や経済にとってだけではなく、彼ら本人のために不可欠なのです。

知識労働者は、自らがなすべきことは上司ではなく知識によって、人によってではなく目的によって規定されることを要求します。知識には上下も左右もないのです。自らに、関係のある知識とない知識があるだけなのです。したがって知識労働はチームとして組織されます。

仕事の倫理が、仕事の中身、担当する者、期間を決めます。有能なだけの仕事と卓越した仕事の差は大きいです。そこには職人と親方以上のものがあります。知識労働ではこれが顕著に現れるのです。

知識労働は一流を目指さなければならなりません。無難では役に立たないのです。このことがマネジメント上重大な意味をもつとともに、知識労働者自身にとっても重大な意味を持つのです。

そうして、テクノロジストも仕事に知識を適用するということでは、肉体労働を伴うとはいえ、仕事に知識を適用するという点で、やはり卓越した仕事ができる環境を整える必要があるのです。

テクノロジストの典型は外科医。彼らは、手術室で手術という
肉体労働を行が、彼らの仕事は高度な医学知識に基づいている

テクノロジストにも知識労働の比重が非常に高い労働者もいれば、低い労働者もいます。最も知識労働の比重の高いのは、たとえば脳外科医などでしょう。彼らの現場は、手術室であり、彼らは手術室で手術という肉体労働をしますが、その手術は知識に基づいてじっこうされます。

彼らは、狭い空間で糸をすばやく縫う練習をしますが、糸がいくら速く正確に縫えたからといって、脳外科医になれるわけではありません。

そうして、現在の仕事では、ほとんどの仕事が知識を必要とします。ファイルを整理するにも、アルファベットの知識が必要です。

現状では、こうした知識労働者やテクノロジストの要求に、企業組織がようやっと応え始めた段階であり、企業内労組さえまだ応えているとは言えない状況です。

今後、労組も知識社会に対応できなければ、消え行くのみになることでしょう。労組の幹部らは、JR東労組の敗北を他山の石として、改めて労働組合の使命は何か、顧客(肉体労働者から知識労働者とテクノロジストに変化)は誰か、顧客にとっての価値(組織を必要とする、挑戦の機会を必要とする等)は、といった問いに真摯に応える必要があります。

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2018年6月29日金曜日

「中国を自由市場から排除する」米国の伝家の宝刀、タイムリミット7月6日を過ぎればもう後戻り不可能に―【私の論評】米国は中国の市場開放を迫るつもりが、中国を自由市場から放逐することに(゚д゚)!

「中国を自由市場から排除する」米国の伝家の宝刀、タイムリミット7月6日を過ぎればもう後戻り不可能に


大統領専用ヘリコプターに乗り込む直前のトランプ大統領

連日、米国トランプ政権及び米国議会は、中国への制裁強化を打ち出し、中国との対立姿勢を明確化させている。そして、米国の伝家の宝刀ともいえる2つの法律を中国に対して適用すると世界に向けて発信した。

 一つ目は「米国通商法301条」(貿易相手国の不公正な取引慣行に対して当該国と協議することを義務づけ、問題が解決しない場合の制裁について定めた条項)であり、これを根拠に中国からの輸入品500億ドル(約5兆5300億円)相当に、25%の関税をかけるとしたわけだ。

 当然、これに対して、中国は強く反発し、米国からの輸入品に同額の関税をかけるとしたのであった。対して、トランプ大統領は、中国が報復関税をかけるならば、さらに2000億ドルの産品にも関税をかけるとし、また中国が報復するならば、同額の2000億ドルを積み増すと発表した。これは中国から米国への輸入額とほぼ同額であり、要は全部に関税をかけると脅したのである。

 また米国と中国との間の最大の懸念事項である「中国通信大手ZTE問題」にも大きな進展があった。米国はZTEに対して、米国の制裁を破ったとして、7年間の米国内販売禁止と米国企業からの技術移転禁止を命じた。これにより、ZTEは操業停止に追い込まれ、次世代規格である5Gでの展開も危ぶまれることになったのであった。

 しかし、これは中国側の必死に説得により、10億ドルの罰金と4億ドルの供託金で回避される見込みとなった。だが、これに議会が反発、米国上院は、この合意を白紙化し、中国通信最大手であるファーウェイにも制裁を課す法案を絶対的多数で可決したのである。この法案は来年度の軍事予算などを含む国防権限法に盛り込まれているため、大統領権限でも簡単に解除できない仕組みになっているのである。これにより、ZTE及びファーウェイの株価は暴落、将来の展開が見込めない状況に追い込まれ始めている。

 二つ目は「IEEPA法」(国際緊急経済権限法)の採用である。安全保障・外交政策・経済に対する異例かつ重大な脅威に対し、非常事態宣言後、金融制裁にて、その脅威に対処するという法律であり、議会の承認なしで、脅威となる対象の米国内での経済活動や金融取引を制限又は禁止できるという法律である。そして、金融取引の対象には資産の凍結や没収まで含まれているのである。

 つまり、大統領が宣言し大統領令を出すだけで、相手を徹底的に潰すことができるのである。米国のISやイランなどへの金融制裁はこれを根拠に行っているわけだ。米国は中国からの先端企業への投資に対して、これを適用しようとしているわけだ。

これに先立ち米国下院は、外国投資を審査する対米外国投資委員会(CFIUS)の権限を拡大する法律を絶対的多数で可決しており、これは上院も通過する予定になっているのである。

 通商法301条は、7月6日から発動される予定であり、これが予定通り実施されれば、米中の貿易戦争は後戻りのできない状況になるのだろう。そして、これは始まりに過ぎないといってよいのだろう。米国は「中国の自由市場からの排除」を始めたのである。

【私の論評】米国は中国の市場開放を迫るつもりが、中国を自由市場から放逐することに(゚д゚)!

上の記事では、米国は「中国の自由市場からの排除」を始めたとありますが、現実には米国は中国へ市場開放を迫っているとの見方が正しいでしょう。市場を開放しなければ、「中国を自由市場からの排除」も辞さないという決意を中国に側にみせつけているのです。だから、ブログ冒頭の記事が間違いというわけでもありません。

今年3月に米トランプ政権が一連の貿易制裁の方針を発表した後、中国は米国からの輸入品に対して制裁関税を課す報復措置を発表するなど、強硬に反発する姿勢をみせました。

ボアオ・アジアフォーラム開幕式で習主席は開放拡大進める一連の措置発表 したが・・・

の一方、翌4月に中国南部の海南島で開催されたボアオ・アジア・フォーラムにおいて、習近平国家主席は証券や保険をはじめとする金融業界のほか、自動車産業を対象に外資による出資制限の緩和を発表。さらに、自動車に対する関税引き下げを通じて輸入拡大を図る方針を発表しました。

習氏による発表直後、金融業界への外資の過半出資が可能となる時期については「年内」と説明されたものの、その後6月末へ半年ほど前倒しされるなど、市場開放のスピードは急速に早まる動きがみられます。

さらに、上海と香港の株式市場間で行われている相互取引(ストック・コネクト)も、5月から取引額が2倍に引き上げられるなど、予想外に早いタイミングで金融市場の開放が進められています。金融市場の開放は、米国が中国に強く要望してきた内容だけに、米トランプ政権による圧力が効いていると捉えられます。

また、先月に米中双方で開催された通商協議後には、具体的な数値目標は示されなかったものの、米国の対中貿易赤字の削減を図るべく、中国が米国製品やサービスの輸入を大幅に拡大することで合意されました。中国は、米国産の農産品やエネルギーの輸入拡大を図るほか、知的財産権の保護を強化することが盛り込まれ、米トランプ政権の中国に対する懸念に対応することで合意されました

ただし、この際の米中両国の合意では詳細については詰まっておらず、「高いレベルでの協議を継続して、経済および貿易面での懸念解消を図る」とする内容が示されたことは、そのことを物語っています。

中国政府はその後も、自動車および自動車部品に対する関税引き下げを7月1日から開始することを発表。さらに同日から加工食品やスポーツ衣料、洗濯機、冷蔵庫など幅広い日用品を対象に輸入関税を引き下げるなど、一段の市場開放に動く方針も示しました。加えて複雑かつ煩雑とされてきた外資系企業による現地法人設立に関する手続きも、6月末からインターネットの利用により簡素化する方針を表明するなど閉鎖的とされた市場を外資に開放する姿勢が示されています。

このように予想外に早いタイミングで中国政府が市場開放に動いている背景には、米トランプ政権が投げる「高い球」と、その後の強硬姿勢が影響したのは間違いないです。

一方、米国による圧力が中国にとってのリスクの増幅につながる動きも出ています。米国は中国の対米黒字の縮小に向けて、中国に対して内需拡大を求める姿勢を強めています。

2013年の数値をベースにすると、各国のGDPに占める個人消費の割合は、米国が約70%、日本が約60%、中国が37~38%となっています。直近の中国における消費の伸びを勘案すると、現在は40%程度の割合は個人消費が占めていると考えられます。中国で個人消費のウェイトが低いのは、公共投資など総資本形成の割合が非常に高いためです。

仮に、中国の個人消費のGDP構成ウェイトが日本並みであった場合(他のGDP構成要素の割合が日本並みに低く抑えられた場合)、2015年の中国GDPは実際の59兆2100億元に対して、40兆元を僅かに下回る水準(約39兆5000億元)となります。これは実際の中国の2010年の水準も下回るものであり、2015年の日本のGDPの1.16倍程度の水準にとどまることになります。仮に、個人消費のウェイトを米国並みにした場合、2015年の中国GDPは526兆円となり、2015年の日本と同水準になります。

この試算は、中国当局による直接的なGDP偽装とはいいきることはできないものの、過剰投資の結果、実態以上にGDPを押し上げる状況となっているのは明らかであることを示すものであり、本質的なGDP水準を試算したものとなります。


結局のところ、中国のGDPの多くは、過剰投資の結果であり、実体をともないわないものであるといえます。実体をともなったものにするのであれば、やはり個人消費の拡大は必須といえます。少なくとも、日本をはじめとする先進国と同レベルのGDP 占める割合を60%くらいにはもっていく必要があります。

しかし、これを実行するためには、今までのように富裕層による社会経済活動だけでは、そこまでの水準には伸ばすことはできません。やはり、多くの中間層が活発な社会経済活動ができるように保証しなければなりません。

そのためには、ある程度の民主化、政治と経済の分離、法治国家化を進めなければなります。しかし、これを進めれば、中国の共産党の体制、現在では習近平体制を崩さなければならないです。これは習近平にとっては不可能でしょう。

さらに、中国をめぐってはここ数年、過剰債務の解消が課題になっており、金融機関のデレバレッジ(レバレッジ取引の解消)を進める姿勢をみせてきました。中国当局は昨年末に金融機関によるシャドーバンキング規制案を発表しましたが、最終的には業界の反発を受けて実施時期が大きく後ろ倒しされ、規制強化に伴う激変緩和措置が盛り込まれるなど、事実上規制が緩められています。


直近の統計では、理財商品を含む信託商品残高の伸びは加速しているほか、インターネット(P2P)金融の残高も拡大の勢いは収まらないです。こうしたなかでの事実上の規制緩和は、問題処理を一段と難しくさせるリスクがあります。短期的には景気下支えにつながり、政府が掲げる今年の経済成長率目標(6.5%前後)の実現を容易にさせる半面、過剰債務の動向にこれまで以上に目配せをする必要に迫られことになるでしょう。

「一帯一路」構想については、私は当初から失敗するであろうと考え、このブログにも掲載してきましたが、現在案の定窮地に立たされています。

この巨大ブロジェクトは、昨年1年間で、パキスタンやネパール、ミャンマーで中国関与のインフラ建設案件が相次いで中止や延期に追い込まれました。先月にはマレーシアが、中国が「一帯一路」の主要事業として受注攻勢をかけていたマレー半島高速鉄道計画の廃止を表明しました。

当初は「一帯一路」への協力に積極的だった西側諸国も、この“壮大なる構想”の危うさに気がついたようです。

やはり先月には、欧州連合(EU)加盟国28カ国のうち27カ国の駐中国大使が、「中国に利するように設計されている」とし、「一帯一路」を厳しく批判する報告書をまとめています。

「一対一路」は、このブログでも掲載したように、過去の中国の国内のインフラ整備による経済発展の延長線上にあるものです。国内ではインフラ整備が一巡してしまったため、インフラ整備を中国主体で外国で行おうとするものです。

それによって、中国が利益をあげて、過去のようにさらなる経済発展をすることを目指すものです。しかし、中国のインフラ整備の能力は高くはありません。国内では、政府による政府の都合によるインフラ整備で良いのですが、外国が絡んでくれば、そういうわけにもいきません。

中国国境に近いラオスの経済特区の中国語の看板。「一帯一路」の文字が見える=今年1月

中国の未来へ向けたブロジェクトは、結局のところこの「一帯一路」しかありません。それがうまくいきそうもないのです。

このような状況で、過剰債務の問題が解決されないまま、個人消費をあげることもままらないという状況で、米国による市場開放のための圧力がさらに大きくなれば、米国は「中国を自由市場から排除する」ことになってしまう可能性が大きくなってきました。

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2018年6月28日木曜日

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財政緊縮派とデフレ派の存在が、デフレ脱却の大きな障害に 国債発行と金融緩和が近道だ

消費者物価指数の推移

 5月の消費者物価指数が17カ月連続でプラスとなったが、デフレ脱却に進んでいるのか。

 デフレについて、学問上の定義は単純で、「一般物価水準の継続的下落」である。国際通貨基金(IMF)などの国際機関では、一般物価水準は「GDPデフレーター」(消費者物価と企業物価を併せ持つ性格)、持続的下落は「2年以上」を使っている。

 そこで、GDPデフレーターの対前年増減率の推移をみると、1995年以降マイナス傾向になっていて、デフレになったのがわかる。正確に言えば、97年は若干のプラスであるが、その年を除き、2013年までマイナスだった。14年から、1・7、2・1、0・3と3年連続のプラスだったが、17年には▲0・2と再びマイナスに転じてしまった。


 この国際機関の定義に従えば、安倍晋三政権になってから、一時デフレを脱却しかかったが、18年のGDPデフレーター対前年増減率がプラスとしても、デフレ脱却したといえるのは19年以降ということになろう。

 もっとも、金融政策(マクロ経済政策)の目標は雇用を作ることであって、その場合に物価が上がりすぎないようにするためにもインフレ目標がある。

 この基本はマスコミなどでは理解されずに、単にインフレ目標が達成できていないから、リフレ政策は失敗だったとかの半可通な論調がいまだにあるのは残念だ。

 このインフレ目標の基本的な理解の観点からみれば、失業率が下限になって賃金が上がり出せば、その時のインフレ率が低いのはたいした問題ではない。賃金が上がり出せば、その後からインフレ率は上がるからだ。

 このように考えると、これまでの金融政策は方向性としては正しいがその効果はまだ弱く、いずれにしてもデフレ脱却まではあと一歩だ。

 雇用を確保した後、賃金が上がるのがマクロ経済政策の目標である。そのために、金融政策と財政政策によって総需要管理を行う。

 ただし、現実の金融政策では、オペ対象の国債の品不足が深刻になりつつある。そのために金融緩和がやりにくくなっている。これは、これまで本コラムで指摘したことだ。

 そうであれば、財政政策で国債発行して、国債市場での品不足を解消し、同時に財政出動を行えばいい。金融政策でこの国債オペを行い、金融緩和すれば、財政政策と金融政策の同時発動となって、すぐにデフレ脱却できるだろう。

 財務省による財政再建キャンペーンが行き届き、世間では国債発行は悪いものであるとの思い込みが強すぎる。どうしてこんな簡単な政策ができないのか。マスコミを含めてみんな財政緊縮病に罹(かか)っているのではないか。

 と同時に、この政策に対し、財政ファイナンスと批判する「デフレ派」がいる。彼らはハイパーインフレになると煽ってきたが間違っていた。

 財政緊縮派とデフレ派の存在が、デフレ脱却への大きな障害である。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】10%増税等の緊縮財政は、将来世代のための子育て、教育、生活などの基盤を毀損することに(゚д゚)!

私達は子どもの頃から「自分のお財布の中にある以上のお金を使ってはならない」と教えられてきました。そうして、家庭を持つようになれば、家計についても、同じように言われてきました。だからそれが政府にも当てはまるのだと霞ヶ関の官僚が言えばすんなりと受け入れてしまいそうになります。しかし、現実はそうではありません。

政府には貨幣(おカネ)を発行することができますが、われわれの一般家庭にはそのような権限はありません。ここが政府と家計の大きな違いです。

そして貨幣をどの程度、あるいはどうやって発行するかというテクニック、つまり金融政策の目標を定めることが国においては重要な事柄です。

支出を切り詰めることが万能薬だと主張する人々、つまり緊縮財政を奉ずる人々(官僚や国会議員、マスコミのほとんどの人々)は、例えば財政赤字を削減すれば金利が下がっていいことが起きると主張しています。しかし、これは歴史的な事実では全く裏付けられていません。

彼らの議論は、国の赤字を削減すれば、消費者は安心し、企業は投資を増やし、「国の国際競争力」を増すというものです。特にお笑いは「非ケインズ効果」です。これは、政府による財政支出の削減や増税が、国の景気やGDPにプラスの影響を与えるという現象のことをいいます。

 人は将来の予測に基づいて行動することから、国の財政赤字が深刻な場合には、財政支出や減税が将来の増税を意識させ、消費を手控えさせる結果を招くとされます。 不況時は財政支出や減税により有効需要を補うべきと主張したケインズの理論と逆の効果です。この「非ケインズ効果」は、古今東西で確かめられたことはありません。

もし仮にこの「非ケインズ効果」が、たとえどのような条件がついたにしても、あるいは理論的にだけでも正しく証明されれば、証明した人は「ノーベル経済学賞」を受賞できることでしょう。それだけ「非ケインズ効果」はありえないことなのです。科学技術にたとえれば、永久機関のようなものかもしれません。

イギリスの経済学者ケインズ

緊縮財政で景気が悪くなり、それでも国民、資産がないただのサラリーマンが喜んで支出を増やすはずだという非ケインズ効果が日本でも生じるという人々は国民がおろかで合理性のかけらもないと考えているに違いありません。

昨年、世界の政治に新風を吹き込んだ英国のコービン労働党党首の主張、カナダのトルドー首相、米国民主党のサンダース氏らの主張はともに緊縮財政をやめようというものでした。

コービン労働党党首

コービン労働党党首といえば、当然のことながら、左派系なのですが、日本の左派系とはかなり異なります。日本の左派系といえば、どの政党もすべて財政緊縮派です。では自民党の議員が全員が反緊縮派であるかといえば、そうではありません。自民党でも、安倍総理とその一部の側近を除けばほとんどが財政緊縮派です。

しかし、先程あげたコービン労働党党首、カナダのトルドー首相、米国民主党のサンダース氏等はもとより、米国をはじめ多くの国々の政治家が緊縮財政に反対しています。また、ノーベル経済学賞を受賞したようなまともな経済学者の中では、景気が悪いとき、デフレのときに緊縮財政をせよと主張する学者など存在しません。

それはなぜでしょうか。景気が悪くなるということもさることながら、もっと大切なことは自国の将来世代の未来が失われてしまうからです。財政削減をすれば、将来の世代に対する子育て、教育、生活の基盤となるインフラ、こうした大切なものが真っ先に切り捨てられ、損なわれてしまうからです。

ギリシャは、EU統合に悪乗りして、借りるべきでないカネを低利で借りて浪費してしまいました。日本は、使うべきお金を政府の政策の失敗で使わずに、まだ返す必要もない借金の返済に充てて不況に陥りました。まったく原因が違います。原因が違えば処方箋ももちろん別でなければなりません。

そもそも、低所得者に重い負担が生じる逆進性がある消費税を増税して社会保障の財源をまかなうという発想自体おかしいのです。2009年の麻生内閣下での税制改正で「3年以内に消費増税法を作ること」が法定されました。

そこで法定されたことが大義名分となって、2012年に民進党、当時野党の自民党、公明党が増税法を可決しました。そうして、この増税法には、景気が悪ければ増税しないという「景気条項」があったにもかかわらず、これも無視され、2014年4月には最終的に増税が行われました。

そうして、増税推進派は「日本経済への影響は軽微」としていましたが、ブログ冒頭の記事にもあるように、2014年4月からの消費税の8%への増税は、個人消費の低迷を招き、日本経済に甚大な悪影響を及ぼしました。そのせいもあり、日本は今でもデフレから完璧に脱却していません。

現状の日本は、ブログ冒頭にもあったように、国債を大量を発行し、金融政策でこの国債オペを行い、金融緩和すれば、財政政策と金融政策の同時発動となって、すぐにデフレ脱却できます。

日本の政治家、官僚、マスコミ、識者のほとんどが財政緊縮派とデフレ派です。しかし、私達は、我が国の将来世代の未来のために、これら多数派を退ける世論を形成し、積極財政が行われるにし、将来の世代に対する子育て、教育、生活の基盤となるインフラを守っていかなけければならないのです。

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2018年6月27日水曜日

中国で元軍人デモが拡大 数千人集結、強制排除でけが人―【私の論評】退役軍人への権利や尊厳が守れない状況では、強軍化の夢どころか体制の根底を揺るがしかねない(゚д゚)!


中国江蘇省鎮江市で目撃者が撮影した、集会の最中に座り込む退役軍人ら(月22日撮影、25日公開)

 中国各地で元軍人らが待遇改善を求めるデモが拡大している。江蘇省鎮江市では数千人規模のデモが発生し、治安当局による強制排除でけが人が出たもようだ。人民解放軍が介入の準備を進めているとの報道もある。

江蘇省(地図の赤い部分) 図表写真はブログ管理に挿入 以下同じ

 鎮江でのデモは今月19日に市政府周辺で始まった。中国南部在住で、デモを支援する元軍関係者の男性(60)は産経新聞の取材に対し、現地に集まった元軍人の数を「4千人程度」と推測。22日から23日にかけて行われたとみられる強制排除でデモ参加者にけが人が出たことも認めた。排除にあたったのが人民武装警察部隊(武警)か、現地の警察部隊かは不明という。

 強制排除を受けて全国各地の元軍人が鎮江へ応援に向かったが、24日以降は当局が元軍人らの移動を厳しく取り締まっている。四川省を出発した数百人が河南省・鄭州の鉄道駅で拘束されたほか、鎮江周辺の高速道路では検問が行われ、元軍人らの市内への移動を阻止しているという。


 インターネット上では鎮江で起きたデモ関連の書き込みや画像などが次々と削除されている。ただ、元軍人らが国旗や共産党旗などを掲げて警察官らに抵抗しながら行進したり、地元住民が水や食料を差し入れる様子を映した動画も拡散している。

香港紙・星島日報は、デモ参加者が近くの校舎に30時間近く拘束されたり、入院先の病院で2日間食事が与えられなかったケースがあったと報道した。また軍が介入する可能性も伝えている。

 米政府系メディア、ボイス・オブ・アメリカ(VOA)が現地住民の話として伝えたところでは、市政府の周辺道路と、強制排除で負傷した元軍人を収容している病院には警察や私服警官が多数配置されているという。

 中国では6月上旬、河南省●(=さんずいに累)河市でも元軍人による数千人規模のデモが発生。中旬にも四川省中江県で、中越戦争で障害を負った元軍人が自宅で警察官に暴行され、それに抗議する数百人規模のデモが行われた。

 中国の退役軍人の数は約5700万人に達するとされ、その待遇をめぐって不満の声が高まっている。中国社会の不安定化につながりかねない問題であり、習近平指導部は退役軍人への保障強化を掲げて4月、国務院(政府)に「退役軍人事務部」を発足させた。

 ただ元軍人らへの保障の多くは財政が逼迫する地方政府に任されており、問題解決の糸口は見えていない状態だ。

【私の論評】退役軍人への権利や尊厳が守れない状況では、強軍化どころか体制の根底を揺るがしかねない(゚д゚)!

中国では、ついこの間、全国のあちこちでトラック運転手の大規模ストライキが起きたばかりです。これについては、このブログでもお伝えしました。

今度は、元軍人たちのデモが起きました。29年前の学生運動とは違って、労働者や元軍人たちが連帯的な反抗活動を始めたことは、「天下大乱の兆し」と見ることができるでしょう。

この軍人の大規模デモは、何も最近ふってわいたわけではなく、2016年にもありました。これについては、このブログにも掲載して解説しています。当時は、あのような大規模なデモは初めてだったので、習近平の権力掌握がうまくいっていないのではと、囁かれました。

さらに、ごく最近でも今年の2月の時点ですでに発生していました。大紀元は、この出来事のついて以下のように伝えています。
中国退役軍人が待遇改善で再抗議、「両会まで続く」=元軍人
 中国の20以上の省から上京した退役軍人は2月22日から24日まで、当局に対して待遇改善政策の実施を訴え大規模なデモを行った。一人の退役軍人は大紀元に対して、3月の全国人民代表大会と全国人民政治協商会議(両会)が開催されるまで、各地の元軍人は今後数回分けて、主要政府機関前でデモを続けていくと話した。 
 米自由アジアオ放送(RFA)によると、現地時間22日に約1万人の退役軍人は、北京市の中国共産党中央紀律検査委員会(中紀委)ビル前で集まり迷彩服を着用し整列しながら、当局が約束した待遇改善政策を着実に実施するようと陳情した。23日早朝に北京警察当局に鎮圧された。その後、退役軍人らが交流サイト(SNS)を通じて、全国各地の元軍人に応援を呼び掛け、24日に各地から駆け付けた一部の元軍人は天安門広場で再びデモを行ったが、また鎮圧された。
今年2月の北京での元軍人によるデモ
 湖北省襄陽市出身の退役軍人の王さんは大紀元に対して、「今回3日間は2万人以上の退役軍人が陳情に参加した。彼たちは2つのグループに分けて北京に入った。両会が開催するまで、第3グループ、第4グループ、第5グループと次々と北京に入るだろう」と話した。 
 中国当局は、退役軍人は社会安定を脅かす者とし、取り締まりの対象と見なしているため、各地の警察当局は地元の退役軍人に対して監視などを強化している。 
 このため、王さんの地元の襄陽市では約50人の退役軍人が24日の応援のために北京に入ろうとしたが、北京に向かう途中で地元の警察当局に阻まれて、北京に入られたのは10人だけだったという。王さん自身も途中で、王さんを尾行した4人の私服警察らに止められた。 
 それでも、王さんは「必ず北京に行く。第3グループに間に合わなかったら、第4グループに参加する。われわれの待遇が改善されない限り、北京でデモを続けていく」と述べた。 
 RFAの報道によると、22日から24日のデモに参加した退役軍人の大多数はすでに地元に強制送還された。また一部は北京市にある地方からの陳情者を拘留する施設に送られた。当局が鎮圧する際、元軍人らを殴打し暴行を加えた。また、当局は北京火車駅で、地方から上京した迷彩服を着る人に対して身分証検査を強化した。
ブログ冒頭の記事にもあった、退役軍人事務部の設置は習近平の肝入りであり、一般の傾向としては、こうした退役軍人問題の責任は習近平の手中にある、という形で、今回の事件の矛先は習近平政権批判に向かいつつあります。


1989年の天安門事件で失脚し、2005年に死去趙紫陽の元秘書、鮑彤は「警察力によって、(退役軍人の)正当な権利を粉砕すれば、(習近平)新時代の社会矛盾が消滅したり緩和したりするとでもいうのか? これが(習近平のスローガンである)治国理政の新理念新方向なのか?」と習近平政権批判につなげています。

鮑彤氏

さて、この事件の背景はまだ謎です。ですが、香港の民主化雑誌「北京の春」の編集長・陳維健がやはりツイッターで興味深いコメントをしていました。
"今回のデモの現場の鎮江は江沢民の故郷の揚州のすぐ隣の地方都市だ。デモと江沢民が関係あるかはわからないが、鎮江政府は(軍による鎮圧という)軽率な対応をしてはならなかった。…退役軍人問題は習近平自身の手中にあり、官僚たちは自分に責任の火の粉がかかるのを恐れて、行動したがらない。この問題を解決するには必要予算があまりにも大きく、鎮圧するにはリスクが高すぎる"
これはには、習近平の宿敵ともいえる江沢民が何らかの形でかかわっているのかもしれません。

また、一部SNS上では、国家安全部二局(国際情報局)がこの事件の背景を調査するために現地入りしたというまことしやかな噂も流れています。中国当局は海外の情報機関の工作を疑っているのでしょうか。

いままでのところ、中国政府からこの事件に対する詳報はなく、多くのがネット上のSNS発情報を引用したものであり、何が事実で、何がデマなのかはまだわからない状況です。

しかし、退役軍人デモが頻発していることは事実です。日本では2016年10月に北京で行われた数千人規模の退役軍人デモのみが大きく報道されましたが、それ以前もありましたし、それ以降も増え続けているのです。2017年も相当規模のものが少なくとも4件はありました。

習近平政権としては退役軍人デモには、他のデモとは違う「話し合い姿勢」を見せており、今回のような武力鎮圧事件に発展したことは意外感があります。習近平の判断というよりは、偶発的な事件をきっかけにした鎮江市の対応の誤りが引き起こした騒動といえそうですが、今後の中央の対応次第では、本当に1989年の六四天安門事件再来の可能性も否定できないと思います。

トランプ米大統領は3月28日、自身のツイッターで退役軍人省のシュルキン長官を解任することを発表し後任には大統領の主治医ロニー・ジャクソン氏を指名しました。退役軍人省は事務手続きが煩雑であることや期間が長すぎということで、退役軍人にはかなり評判が悪い官庁でした。

これを、トランプ大統領は根本的に変えようとしました。はやい話が仕事をしなけば、役人をすぐクビにできるようにしたのです。さらに、効率を良くするために民営化することも検討しているといいます。

とにかく軍人に対して、手厚い支援を積極的にしようという姿勢が見られます。なぜそうなのかといえば、やはり大統領選挙のときに米軍票がかなり大きな役割を果たしたからです。とくに、軍のある程度上のランクの軍人はヒラリー・クリントンを蛇蝎如く嫌っており、軍人誌には、「ヒラリー・クリントンは中国のスパイである」という記事が掲載されたくらいです。

だからこそ、トランプ大統領は、軍人に対する手厚い支援を心がけるのです。これに対して、習近平はどうなのかといえば、元軍人がここ数年は、毎年大規模なデモをするというのですから、トランプ大統領ほどには軍人を大事にはしていないのでしょう。

さらには、中国ならではの特殊事情もあります。そもそも、上記では元軍人という言葉を掲載しましたが、中国には米国のような軍隊は存在しません。

確かに、人民解放軍は核武装までしている軍事組織であることには違いないです。しかし、これは国民を守るための軍隊ではありません。憲法上の定めも、そうはなっていません。あくまで、共産党の下に配置されています。はやい話が、人民解放軍の中国の軍隊ではなく、中国共産党の私兵といっても良い存在なのです。

人民解放軍の使命は、まず第一に共産党を守ることです。そうして、他国に侵略したり、他の公安警察(日本の警察にあたる)などの公権力では力不足で対処できない人民の暴動などを鎮圧・弾圧することです。

さらに、驚くことにこの組織は、大規模な武装をしていながら、独自で様々な事業を営んでいるという不思議な組織です。日本でたとえると、商社のように様々な事業を営んでいます。

人民解放軍の実体は、軍隊ではなく、共産党の私兵であり商社でもある

日本でいえば、商社が武装したような組織が、人民解放軍なのです。そうして、この武装商社は、様々な事業を営んでおり、人民解放軍の幹部は様々な利権を我が物にし、部下もその利権によって様々な面倒をみていました。面倒をみてもらった軍人は、幹部に忠誠を誓っていたのです。

さらには、軍隊内でもさまざまな汚職や、おかしな慣行がはびこっていました。たとえば、ある程度上まで昇進・昇格するには、幹部に対する賄賂が欠かせないという信じがたい慣行もあったりしました。

しかし、習近平は、軍隊のこのような腐敗を撲滅しようとして、かなり多くの幹部らを粛清しました。たしかに、腐敗を撲滅するというのは良いことのようですが、先にも掲載したように、腐れきった組織を是正するには、それなりの準備をして、ある程度の時間をかける必要があったのですが、米国の退役軍人賞にあたる、退役軍人事務部の設置は今年の3月です。

本来なら、もっと早く設置して、具体的に退役軍人に対してどのような支援をしていくのか、明確にすべきでだったでしょう。しかし、民主化も、政治と経済の分離も、法治国家もされていない中国では、このように後手後手にまわってしまったのです。

習近平政権は今世紀半ばまでに、戦争に勝利でき党に従う一流の近代軍隊を作るという強軍化の夢を掲げて軍制改革に踏み出しました。しかし、退役軍人への権利や尊厳が守れない状況で、誰が命をかけて党に忠誠を尽くそうというのでしょうか。このままでは、強軍化の夢どころか、体制の根底を揺るがしかねないです。

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2018年6月26日火曜日

早くも中国征伐へ舵を切った米国 日本には中国、北朝鮮、反日化する韓国と対峙する覚悟が必要に―【私の論評】米国が北朝鮮に軍事攻撃をする可能は未だ捨てきれない(゚д゚)!

早くも中国征伐へ舵を切った米国 日本には中国、北朝鮮、反日化する韓国と対峙する覚悟が必要に




1 史上初の米朝会談

 6月12日にシンガポールで開催された米朝首脳会談は、敵視する国同士のトップが直接会談するという歴史上稀なものであった。

6月12日に開催された中朝首脳会談 写真・図表はブログ管理人挿入 以下同じ

 日本や米国をはじめ大半の評価は、中国・北朝鮮が勝って高笑いする一方、ドナルド・トランプ大統領は詰めを欠いた政治ショーを演じ、曖昧な決着で終わってしまい、将来に禍根を残したというものであろう。

 筆者も4月号の雑誌「Voice(ボイス)」において、北朝鮮が核を放棄するはずはなく、直接会談でトランプ大統領はこれを見極め、いずれちゃぶ台返しをするだろうと予想した。

 しかしトランプ大統領が苦しい記者会見をやっている姿とスカスカの合意文書を見せられた。

 一方、金正恩が北朝鮮に到着するや否や、「段階的に見返りを受けながら朝鮮半島の核を廃絶していく」ことを共通認識とし「体制の安全の保障を得た」と言うに至って、トランプ大統領は完敗したと感じた。

 また、筆者は昨年6月に中国を訪問し安全保障に関する議論をしてきたが、その時中国側の要人は朝鮮半島問題については「米朝が直接話し合い、北朝鮮は核とミサイル発射を凍結し、米国は米韓合同演習を凍結する、ダブルフリーズが必要」と述べていた。

 まさにその通りになってしまったと感じ、中朝のクリンチ作戦で、トランプ大統領の退場を待つ策略が功を奏したと失望せざるを得なかった。

 米朝会談前に筆者は、昨年暮れに北朝鮮を米国が殲滅することは「金の斧」、次に会談を破談にし、北朝鮮を殲滅することが「銀の斧」、米国ペースで会談が進めば「銅の斧」、そして北朝鮮ペースで進めば「鉄くずの斧」であると指摘していた。

 この前提は、北朝鮮対処は「前哨戦」であり「本丸は中国」だということで、いかに早く対中国シフトができるかが評価要素であった。前述の評価からすれば、結果は最悪の「鉄くずの斧」になってしまったということだ。

 一方、もしこれらの評価が正しく、朝鮮半島が平和に向かっていると感じているなら、それは大きな間違いであろう。

 平和に向かっていると言うのは中国の見解だ。よりによって韓国はこの時期に、米韓合同軍事演習(以下、「米韓演習」)は中止しても竹島防衛訓練は実施し、また、慰安婦問題を蒸し返している。

韓国軍は18日から2日間竹島防衛訓練を実施

 文在寅大統領に代表されるように大多数が親北・左翼になってしまった韓国は、いずれ反日、反米、親中勢力として中国にのみ込まれていくだろう。

 10年先を見れば、しぼむトランプ大統領と米国を後目に、核を放棄しない北朝鮮といよいよ軍事的覇権を拡大する中国が合体して、否応なく日本は最前線に立たされることになる。

 このまま行けば、より厳しい状況が、早く出現するということだ。

 それへの備えと覚悟を訴える論調は日本にはほとんどない。核をも装備した自主防衛議論が出てきてもおかしくないのに皆無である。日本にとって安全保障とは他人事で、米国の責任だと思っているのだろう。

2 合点がいかない会談後の流れ

 さて前置きが長くなったが、このたびの米朝首脳会談の流れは実に不可解である。

 まず会談の開催をトランプ大統領がキャンセルした時の金正恩の驚きと、面子を重んじる北朝鮮が醜態をさらして会談を懇願したことは実に不可解だ。金正恩にはこの時期トランプ大統領に話さなければならない何か重大なことがあったのだろう。

 また、あの厳しい米国の訴訟社会で生き残り、不動産王と言われたトランプ大統領が、あんなスカスカの文章を容認するだろうか。記者会見を独りで実施したが、何を言われても平気で金正恩を持ち上げた。

 そして、金正恩は帰国後すぐさま勝利宣言だ。トランプ大統領にとっては、ICBM(大陸間弾道ミサイル)によって自国の安全が脅威に晒される北朝鮮問題は喫緊の課題である。

 とても米韓演習を中止するなどあり得ないし、中国を相手に貿易戦争などできるはずもない。なぜなら米国と北朝鮮は水と油ほど考え方が違うことから、いずれ米朝は決裂し軍事行動へと発展することは間違いないだろうと考えるのが普通だ。

 しかし、トランプ大統領は、米韓演習の中止を命じ、韓国に駐留する米軍も本国に戻したいと本音を漏らしてしまった。さらに、その後の主要スタッフの発言は、にわかに信じられないものがある。

 まず、韓国大使に任命された対中・対北朝鮮強硬派のハリー・ハリス前太平洋軍司令官は、米朝首脳会談で状況が劇的に変化したとして「北朝鮮が交渉に真剣かを見極めるため、米韓演習を『一時』中止すべきだ」「多くの米軍幹部が朝鮮半島より深刻な脅威となる中国への対処に資源を振り向けるべきだと考え始めている」と述べている。

 さらにジェームス・マティス国防長官は米海軍大学の講演で「中国は他国に属国になるよう求め、自国の権威主義体制を国際舞台に広げようとしている」「既存の国際秩序の変更が中国の宿願であり、他国を借金漬けにする侵略的経済活動を続け(一帯一路)南シナ海を軍事化している」「我々が中国に関与し、中国がどう選ぶかが大切」と述べている。

 また、マイク・ポンペオ国務長官は中国を訪問して、南シナ海での軍事拠点化に言及し「他国の主権を脅かし、地域の安定を損ねている」と指摘し、マティス国防長官と同じように、眼前の脅威だとしていた北朝鮮問題には一切触れていない。

 中国は北朝鮮の後ろ盾として影響力を行使することと引き換えに、貿易摩擦の緩和を狙ったが、米朝首脳会談の3日後には米国は中国への制裁関税を発表し、さらに追加制裁にも発展している。

 この裏には対中強硬派のピーター・ナバロ通商製造業政策局長の発言力の復活がある。

 これら一連の動きは、今年1月に発表された米国防戦略が指摘した「中国は地球規模で米国の主導的地位にとって代わろうとしている」「米国が最も重点を置くべきはテロではなく大国間競争だ」とし、中国を「主敵」としたその戦略の発動であり、いよいよ「本丸」への攻撃をまず経済から始めたということだ。

 しかし、そのような大転換をするには、北朝鮮が本当に安全保障上の脅威にならないという確信がなければできないであろう。

 それならば、北朝鮮に対する押さえは何か。その1つは、ハリー・ハリス氏の駐韓国大使への配置である。

 恐らくトランプ大統領は、ハリス氏を最も信頼できる右腕として、韓国、北朝鮮、中国北部戦区の目付役とし、情勢判断を委ねたのだろう。彼が危ないと判断したら、トランプ大統領はすぐさま北朝鮮壊滅の準備にかかるだろう。

 一般的に自衛隊・米軍とも人事異動は2~3年なので、1年あるいは1年半で主要な幹部の半分は変わる。そのため米韓演習の中止期間は1年が限界であろう。特に今は太平洋正面の米軍の主要指揮官が交代しているので、動く時ではない。

 トランプ大統領も、「対話が中断すればすぐに演習を開始できる」と警告している。ポンペオ国務長官は、2年半以内に完全な非核化ができると言っているが、それでは次の大統領選挙には間に合わないし、軍事行動の再起動には問題がある。

 トランプ大統領がABCテレビのインタビューに答えて、「1年後に私は間違っていたかもしれないと言うかもしれない」と発言した意味は、軍事行動を起こすかどうかの見極めは、1年以内だということであろう。

 もう1つのカギは、近々ポンペオ国務長官と死神と恐れられるジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が北朝鮮に入り、米朝間の非核化に向けた詳細な協議を行うことだ。

 「死神」を受け入れる北朝鮮には並々ならぬ決意があるのだろう。

 ポンペオ国務長官は中国の動きも念頭に「北朝鮮の完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」を要求すると述べ、北朝鮮との協議の場では核計画の全容を数週間以内に申告するよう求め、検証のため米国以外の関係国からも専門家を呼ぶとしている。

 そして非核化の中に核だけではなく、生物・化学兵器やミサイルなどを含めたと説明している。

 もし北朝鮮が公約通り、非核化に向けて目に見える形で具体的行動をとらなければ、1年以内、早ければ今年の暮れには北朝鮮に対する見切りをつけるだろう。そういう意味で、米国の軍事的選択肢はなくなってはいない。

 このように経緯をたどると、米国は北朝鮮問題は解決済みとし、すでに対中国へとシフトしたと見るしかない。なぜなのか。よほどの確信がなければそんな行動に出ることは無謀であり、ここまでの説明でもまだ不十分だろう。

 結局、米朝首脳会談では、文書化されていない重要な約束事があるのではないかという疑念が湧く。

 事実、ポンペオ国務長官は6月23日の米MSNBCテレビのインタビューの答え、金正恩は「完全な非核化をする用意がある」と発言した。

 12日の米朝共同声明に明記されなかった米朝間の取り決めに関し、詳細を明らかにしなかったものの、「合意した多数の原則があり、双方がレッドラインを認識している」とも述べている。

 そもそもトランプ大統領は従来の大統領と異なり、言ったことはやる男だ。

 もし、米国が北朝鮮の後ろ盾になってやると言い、金正恩一族の「体制の安全を保証」するから核を廃棄し、民主化でなくとも開国し、少しでも繁栄する国家に近づく気はないかと囁かれたらどうだろうか。

 危険だがトランプ大統領にとっては独裁者たる金正恩が生きている方が、はるかに体制変換は容易である。

 一方、金正恩にとっては、昨年来の米国による北朝鮮殲滅の意思と能力をいやと言うほど見せつけられた。本当に核兵器まで使うかもしれないという米国大統領を金正恩のみならず、我々も目にしていることを忘れてはいけない。

 中国の習近平国家主席が米国を訪問中にシリアをミサイル攻撃したことは、中国のみならず、北朝鮮にとっても大きな恐怖であったはずだ。

 抑止とは、実際に敵に勝てる意思と能力、すなわち、勝てる戦略と切り札となる装備と予算の裏づけがあって初めて有効になるものだ。従って、米国が北朝鮮を殲滅する意思と能力を見せつけた「金の斧」は無駄ではなかった。

 金正恩は戦わずして負けを認めたのだろう。どうせ負ける戦争で殺されるより、シンガポールで見た繁栄の一端を実現することに生き残りを賭けることは悪くないと思ったのかもしれない。

 金正恩は、一応核保有国になったことにより米国大統領を会談に引きずり出したことで、その時が来たと考えたとしてもおかしくはない。

 いずれにしても、北朝鮮は少し時間をもらい、体面を保ちながら核や化学・生物兵器を滞りなく廃絶に持っていく賭けに出たのかもしれない。

3 北朝鮮の後ろ盾は中国か、米国か

 このような見立てをしている論調はほとんどないが、何人かの論者が筆者と似た意見を持っているようだ。

 それぞれアプローチと観点は違うかもしれないが、この見方であれば合点がいく。平たく言えば、「米朝は握った」のである。

 その時に問題となるのが、中国の逆襲と北朝鮮内部の反乱である。

 まず、そんな北朝鮮の動きを中国は容認するのだろうか。答えはイエスである。

(1)そのような謀反の兆候を見て、中国は北朝鮮に対して軍事行動を起こさないだろうか。起こせないだろう。

 なぜなら、米国を悪者にしようと平和勢力のように振る舞ってきた中国にとって、米国に先駆けて軍事行動を起こすデメリットは計り知れない。そのうえ、米国の経済制裁のもう1つの意味は、中国に軍事行動を起こさせない匕首(ブログ管理人注:ひしゅ、あいくちのこと)だからである。

(2)そもそも中国は北朝鮮を憎悪している。昨年の筆者の中国訪問における要人との対話では、「北朝鮮との同盟は変質した」と述べた。

 さらに、北朝鮮の核兵器は中国にも向けられているのではないかとの問いには「平壌を壊滅しなければならない」と吐き捨てるように語っていた。

 中国にとって核兵器などがない北朝鮮の方がむしろ望ましい姿なのである。核の廃棄を進めながら、米国の朝鮮半島からの撤退に結びつけばもっと有難い。

(3)たとえ北朝鮮が米国の経済支援などを受けても、地続きの中国の方が改革・開放の名の下に経済的な浸透が容易である。

 北朝鮮も改革・開放を隠れ蓑にする可能性がある。まして左傾化し反日・反米になりつつある韓国は御しやすく、習主席の方がトランプ大統領よりも長く政権に居続けられることから、いずれ朝鮮半島は中国の傘下に入るだろう、とほくそ笑んでいることだろう。

 もう1つは北朝鮮の内部の問題である。

 これは、体制変換を感じ取った親中派の軍部などが金一族を抹殺することや、自由を得てきた国民がルーマニアやリビアのように独裁者を抹殺することであり、この2つの可能性は大きいかもしれない。

 一挙に昔の北朝鮮に戻る危険性は否定できない。従って、軍事行動の準備は続けなければならない。まさに激動の朝鮮半島である。

4 対中に舵を切った米国、日本はどうする

 このような激動の中で、日本の政治は国内の些細な問題に囚われ、また、とても自由主義国家とは言えない経済政策の推進で、米国や世界の信用を失いつつあることに気づいていない。

 特に中国の「一帯一路」への協力は、トランプ大統領やインド・アジア地域の国々にとって裏切り行為でしかない。

 米国が台湾にも近づき、本気で中国征伐に乗り出したのに、中国の支援に回るとは利敵行為もはなはだしいとトランプ大統領は怒っているだろう。

 日本は中国の離間の計、すなわち日米の分断に自ら協力している。

 その怒りは、韓国と日本が核廃絶のお金を払うだろうという言葉に表れているし、日本に対する制裁関税の解除が遅れているのも、一緒に中国に立ち向かうこともなく、自らを守り切る防衛費も負担しないで笑って済ませようとする日本に対する皮肉であろう。

 米国の中国に対する制裁関税は、知的所有権への侵害に対するものである以上、日本も制裁に参加すべきではないだろうか。また、韓国からの米軍の撤退の希望は本心だろうし、止められない流れとなるであろう。

 米国は、中国に立ち向かうときには、日本は対馬が最前線になることを自覚し、少なくとも自らを守り切り、米国とともに中国に勝てる戦略の下に一緒に戦う覚悟を固め、行動することを期待しているはずだ。

 そうでなければ、やがて日本からも撤収するかもしれない。米軍が、未来永劫駐留すると考えるのではなく、日本を守るために米軍を引き止め、戦わせることを考えることがこれからは必要である。

 北朝鮮のミサイルにすら太刀打ちできない自らを恥じることなく、平和の配当を求め防衛費を削減しようとすることがあるならば自殺行為である。

 いずれにしても、朝鮮半島情勢は一気に流動化し、北朝鮮が米国と中国のどちらに振れようと、中・長期的視点からは日本にとって安全保障上、最も厳しい情勢になることは間違いない。日本は正念場に立たされたのである。

 そして、今年策定される新防衛大綱が手抜きであれば、日本の将来はないだろう。

 日本に求められることは、

(1)本気の対中作戦を考えた「脅威対抗の防衛力」への転換である。

 すなわち、防衛の必要性から、勝てる戦略(共著「日本と中国、もし戦わば」SB新書、中国の潜水艦を含む艦艇を沈め、国土・国民を真に守り切れる装備、態勢、米国を含むインド・アジア・太平洋戦略を提言)と切り札となり、ゲームチェンジャーとなる装備の開発・装備化、そして裏づけとなる十分な予算の配当が必要である。

(2)軍事は最悪に備えることが必要である。このため、アチソンラインが復活することを前提に、南西諸島防衛を手本として五島列島、対馬、隠岐、佐渡島、北海道へ至る防衛線を再構築する必要がある。

1950年1月12日、アメリカのトルーマン政権のディーン・アチソン国務長官が、「アメリカは、
フィリピン・沖縄・日本・アリューシャン列島のラインの軍事防衛に責任を持つ。それ以外の地域は
責任を持たない」と発言しました。これをアチソンラインといいます。

 トランプ大統領の、力による平和、力を背景とした外交の効果を理解し、また、日本の力のない外交では北朝鮮すら動かすことができない惨めさを理解したうえで、日本は自らの責任と自覚の下に、敢然と中国に立ち向かう日米同盟へと転換させることが喫緊の課題である。

【私の論評】米国が北朝鮮に軍事攻撃をする可能は未だ捨てきれない(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事については、賛同できるところもあるのですが、そうではない部分もあります。特に、日本の外交に関して、安倍総理の外交努力を完璧に無視しているところには、全く賛同しかねます。

米国は以前から、アジア太平洋方面では二つの大きな脅威に直面していました。短期的には北朝鮮。長期的には中国です。これは、このブログにも何度か掲載してきましたし、現在の米国を考える上では、前提としなければならないことです。

そうして北朝鮮と異なり、中国は圧倒的な経済力を持っていて、いくら脅威であっても中国と直接紛争することはなかなかできないというのが米国の認識のようです。中国はすでに数百発のミサイルを日本列島に向けて発射できるよう準備を済ませており、そのミサイルに核爆弾も搭載可能です。

米国からすれば、本命は中国であり、北朝鮮問題などその前哨戦に過ぎないのです。このブログでも何度か掲載してきたように、トランプ大統領は、金正恩が米国の対中国戦略の駒として動く限りは、北の存続を許すでしょうが、そうでなければ、さらに制裁を強化したり、場合によっては軍事オプションも用いて、北を崩壊させることでしょう。その決断は、ブログ冒頭の記事のように、1年以内になることでしょう。

トランプ政権は発足当初は、中国の軍事的経済的台頭を抑えるため、ロシアと組もうとしたようですが、結局ロシアとの関係改善は進まず、次善の策としてASEAN諸国やインドと組もうとしました。ところが、中国側に先を越されてしまいました。

中国は2014年11月から、一帯一路構想により「シルクロード経済ベルト」と、「二十一世紀海上シルクロード」を構築すべく、アジア諸国に対して徹底的な経済支援を実施しています。

この「買収」工作のため、ASEAN諸国の多くはなかなか「中国批判」を口にしないようになってきていました。ただし、最近ではマレーシアにマハティール政権が登場し、一帯一路の事業から撤退することを表明するなど、中国への警戒心が高まっています。

もともとASEAN諸国は、米国のヘッジファンドなどの投資家によって振り回されてきた過去があるため、米国に悪いイメージがありました。インドも独立以来、非同盟といって米国ともソ連とも同盟を結ばずに独自の道を歩んできたため、米国とは関係が良いわけでもありませんでした。

そうして、昨年1月に発足したトランプ大統領は、国務省幹部と仲が悪いです。そのため国務省の主要人事でさえなかなか決まらず、アメリカ外交は余り機能しない状況が続きました。

そもそもトランプ大統領自身が国際政治の分野で友達が少なく、途方に暮れていたトランプ政権の対アジア戦略を支えてきたのが、なんと安倍首相なのです。

安倍首相は選挙勝利し、民主党から自民党ぺの政権交代が決まった2012年の暮に、「セキュリティ(安全保障)・ダイアモンド構想」を発表しています。これは、中国の脅威を念頭に、日米同盟を広げて東南アジアやオーストラリア、インドに至るまでの連携網を構築しようというものです。



この構想に基づいて安倍首相はこの6年近く「地球儀を俯瞰する外交」と称して世界中を奔走してきました。特にASEAN諸国やインドとの外交を押し進め経済のみならず、安全保障面での関係強化を図ってきました。

この安倍首相の活躍のおかげで、トランプ政権とASEAN諸国、インドとの関係改善も進んでいるといっても過言ではありません。トランプ政権単独ではなかなかできないことてした。

インド太平洋地域で果たすべきアメリカの役割が不明確になっているなかで、代って日本がこの地域でより大きな役割を果たすようになってきています。特にアメリカは昔からインドとの関係は複雑で微妙な面がありますが、安倍外交がインドと米国との関係を強化することに貢献したのは間違いありません。

ブログ冒頭の記事では、「一帯一路」への協力は米国への裏切りなどとしていますが、安倍総理は「個別案件に対応したい」と言っただけであり、「一帯一路に協力する」と言ったわけではありません。

おそらくリップサービスの域を超えていないと思います。そうして、安倍総理は、このリップサービスにより、「一帯一路」に関する情報を中国から仕入れようとしたのでしょう。中国としては、喉から口が出るほど日本の協力を欲しがっているので、これに関しては、静観しているようです。

そもそも、「セキュリティ・ダイヤモンド構想」を発表したその本人が、本気で「一対一路」に協力するなどということは考えにくいです。そうして、その後安倍総理の口からは、「一帯一路」に関する具体的発言は出ていません。


それどころか、特に南シナ海問題が起こってから、日本は経済協力を通じてフィリピンやベトナムへの関与を強め、巡視船の供与などによって法の支配を広げていこうとしてきました。こうした状況をを米国側からみれば、今や日本はアジア太平洋の安全保障の要となっていると認識しているといっても過言ではないのです。

インド太平洋地域の安定と平和を守るために現在のような戦略的な安倍外交がなくてはならないと、米国その中でも軍関係者は認識しているのです。

日本は過去には「アメリカの言いなり」「対米従属だ」と批判されてきたのですが、今や安倍首相の対アジア外交にアメリカが便乗してきているのです。

そうはいっても課題もあります。それは、ブログ冒頭の記事でも、指摘されているように、日本の防衛体制の不備、特に防衛費の不足です。

米国は仮に北朝鮮が東京にミサイル攻撃を行えば、必ず激しい対応を行うことでしょう。中国の侵略部隊が九州に上陸するようなことがあっても同じように対応することでしょう。。

しかし、北朝鮮のミサイルが五十マイルの沖合に落下した場合や、日本の田舎の住民のいない場所に落ちた場合はどうでしょうか。あるいは、中国の漁民が尖閣に上陸して退去を拒否し、中国海軍がすぐ近くで日本に干渉するなと警告するようなことがあったとしたら、どうなるでしょう。このようなぎりぎりの問題でも、日本は米国に武力の行使を含めて徹底的な支援を期待できるでしょうか。

こうした微妙な問題について日米首脳はしっかりと詰めておかないと、中国にしてやられることもあり得ます。

それでなくともアメリカの政治家の大半は、極東の「島」のために米中が戦争をすることなどあり得ないと考えていることでしょう。日本の領土は、米軍などに頼らず、日本がしっかりと守るべきだと考えていることでしょう。

防衛に対する本気度は予算でわかります。なぜなら、予算は国家の意思だからです。いくら政府が何をやります、あれをやりますといっても、肝心要の予算がつけられなければ、何もできません。


トランプ政権は北朝鮮有事を念頭に昨年は、18年度予算を前年比で約7兆円増の68兆円に増やす防衛予算を国会に提出、昨年7月27日、可決しました。防衛予算を大幅に増額することで「このまま核開発を進めるならば北朝鮮を全面攻撃するぞ」と、その本気度を示しましたのです。

ところが日本は昨年、政府が閣議決定した2018年度予算案の防衛関係費は、米軍再編経費を含む総額で過去最大とはいいなが、前年比で数千億円増やしただけの5兆1911億円に過ぎませんでした。


ミサイル防衛体制も尖閣防衛体制もさほど強化していません。このため、「日本は本気で自国を守るつもりがあるのか」と不信感を抱く米軍幹部も存在するくらいです。

日本は防衛費をもっと増やすことで米国の完全な支援の見込みを増やし、米国と日本のすべての軍隊の間で協力関係を向上することができるはずです。

日米同盟こそがアジアの平和を守る最大の公共財なのです。その公共財を守るためには、憲法改正だけでなく、防衛費をせめて先進国並みのGDP比2%、つまり10兆円規模に増やすことが必要ではないでしょうか。

私は、北朝鮮が中国側について米国に反旗を翻すということもあり得ると思っています。あるいは、米国と中国を手玉にとって、二股外交をするという可能性もあります。いずれにしても、米国が中国に対して、現状の貿易戦争などから、金融制裁などへと制裁を強化しても習近平が翻意しなけば、米国は中国に対する見せしめのために、北朝鮮に対して無慈悲な軍事攻撃加えることもあり得ると思っています。

私は、トランプ大統領やその取り巻きのドラゴンスレイヤー(対中国強硬派)たちは、本気で全く価値観が異なり、なおかつその価値観を寸分たりとも変えるつもりのない現中国の体制を崩し、米国への脅威を取り除こうと考えていると思います。

ブログ冒頭の記事には、賛同できない部分もありましたが、日本には中国、北朝鮮、反日化する韓国と対峙する覚悟が必要になることだけは、確かです。

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2018年6月25日月曜日

内閣支持率上昇で「安倍3選」に現実味 石破氏抑え、国会議員票は過半数の勢い―【私の論評】現在の世界情勢や経済情勢を省みれば、日本にとって安倍総理が続投するのが一番(゚д゚)!

内閣支持率上昇で「安倍3選」に現実味 石破氏抑え、国会議員票は過半数の勢い

日経新聞・テレビ東京の調査による内閣支持率の推移

 報道各社の世論調査で、安倍晋三内閣の支持率が上昇し、9月の自民党総裁選での「安倍3選」が現実味を帯びつつある。拉致問題解決を含めた北朝鮮外交などへの期待が背景にあるとみられる。共同通信の調査では、安倍首相は、石破茂元幹事長ら「ポスト安倍」候補を抑え、国会議員票の過半数を得る勢いという。

 注目の支持率は、日経新聞・テレビ東京の調査で、特に驚異的な伸びを示し、2月(56%)の水準に回復した。支持理由として、「国際感覚がある」(37%)、「安定感がある」(36%)が上位を占め、日朝首脳会談を「早く開くべきだ」と答えた人は60%に上った。

内閣支持率の上昇を追い風に、安倍首相は自民党総裁「3選」を果たすのか

 こうした傾向は、自民党総裁選の情勢にも影響しているようだ。

 日経新聞・テレビ東京の調査で、次の総裁候補として、安倍首相は30%。小泉進次郎筆頭副幹事長(26%)や石破氏(20%)を上回り、2カ月ぶりに首位に立った。毎日新聞の調査も、同様の結果だった。

 共同通信の24日までの調査では、同党の派閥に属さない国会議員73人のうち、約4割に当たる31人が「安倍3選」を支持する意向だと分かった。外交や、経済政策「アベノミクス」の継続の必要性などを理由に挙げた。

 安倍首相を推す方針の細田、麻生、二階の3派(計197人)を加えると、計228人となり、党所属議員405人の半数を超える。

 ただ、無派閥議員の半数が「態度未定・無回答」なうえ、議員票と同数となった党員・党友の地方票の行方が見通せないため、情勢は変わる可能性がある。

【私の論評】現在の世界情勢や経済情勢を省みれば、日本にとって安倍総理続投が一番(゚д゚)!

米国の「インサイド情報紙」がすでに、4月の段階で、安倍総裁の3選は間違いないと結論を出していました。それについては、以前もこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
米国インサイド情報紙が「安倍3選は確実」と分析した理由―【私の論評】東京新聞ですら安倍氏3選確実と予想する自民総裁選の行方(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくもとして、この記事から米国のニューズレター「OBSERVATORY VIEW」(4月26日号)の内容を和訳したものを引用します。

同紙は月3~4回、場合によっては週2回発行される。4月26日号はA4版13頁、その内容は「欧州中央銀行(ECB)の会合ポストビュー」と「日本政治―更なる疑惑の影響は?」でした。そのうち「日本政治」から以下に引用します。

まずは、リード部分の引用は以下です。
安倍総理を引き摺り下ろすことを望む勢力が大声で騒ぎたてているにも拘わらず、最新の世論調査によると、安倍内閣の支持率は30%台前中半でそれなりのフロアを形成しているようだ。この水準だと、9月の総裁選でチャレンジャーが安倍総理に勝利するシナリオを描くのは難しい。我々の使う支持率は11の主要メディアの毎月の世論調査結果の平均値である。NHK、大手新聞5社(朝日、産経、日経、毎日、読売)、大手通信社2社(共同、時事)、民放3社(日本テレビ、TBS、テレビ朝日)の11社だ。
そのリードに続いて、分析のポイントが3点記述され、補足のファクトが3点記されている。ポイント(1)は、以下のようなものです。
安倍内閣の支持率は4月、(財務省文書改竄問題発覚後の)3月中旬対比でみると、僅かだが上昇している。3月全体で見た支持率平均は39.2%だが、文書改竄問題後に実施された世論調査を平均すると、34.6%に下落している。これまで我々は改竄問題への有権者の反応を把握するため、34.6%の数字を使ってきたが、4月になると、支持率は35.3%に僅かに回復している。
その上でポイント(3)は次のように続いています。
より興味深いのは、福田財務次官のセクハラ疑惑発覚後、麻生大臣の辞任を要求する声が激しさを増していないことだ。実際、メディアの連日の報道にも拘わらず、そうした意見は(誤差の範囲だが)弱まっている。
4月末の外遊中も満面の笑みを見せた麻生財務大臣

さらに、結論は以下のようなものです。
麻生攻撃を経由した安倍批判はヒステリックなレベルに達し、過去の例で言えば政権が近未来に瓦解してもおかしくない状況になるかと思いきや、一般有権者、特に若い世代の有権者がそうした風に乗る気はない。
 この米国のニュースレターは、かなり権威のあるものであり、購読料もかなり高いそうです。このニューズレターが、5月の内閣支持率が30%台のときにこのような予測をしているわけです。現在は、支持率が50%台になり、安倍総理の次期総裁選挙での勝利はいよいよ確かなものになってきました。

既にモリカケは多くの国民から飽きられており、海外から見れば何が問題なのかすら、理解できなんいという状況です。そもそも、政治家は国民の陳情を受けて行政に働きかけるのが仕事であり、それをしたら総理の首が飛ぶというのは理解に苦しむことです。

決定的な賄賂などの証拠があれば別ですが、モリカケ問題は総理の関与があったかなかったかで一年間も国会がかかりっきりになっているのは異常です。それで国民もさすがに呆れ始めているようですが、朝日新聞が毎回一面トップでモリカケを書き立てているので、野党もそれに飛びついて追求しているのでしょうが、賄賂などの明らかな違法行為がなければ辞任には追い込むことなどできません。

朝日新聞が書き立てている内容のほとんどは官僚などリークであり、検察や財務省が安倍内閣の足を引っ張っているのは明らかです。財務省や文科省等もメモなどの文書をリークして朝日新聞などに提供して記事を書かせているようですが、もはや新聞やテレビでは総理の首は取れないです。

しかし以前にはそれが出来ました。第一次安倍内閣でも官僚からのリークで大臣などの首が飛んで安倍総理は辞任に追い込まれました。脇が甘かったからかもしれません。検察などは政治家のスキャンダルリストを作って官僚がそれをマスコミにリークする。まさに官僚とマスコミが政治を動かしている構図が出来ていました。

しかし最近ではマスコミの政治への影響力が低下したので、マスコミは一年間にわたってモリカケ問題を書き立てても安倍内閣は政権を保っています。野党もマスコミも堕落しきってしまって、マスコミは調査報道もできなくなり記事を書ける記者がいなくなってしまったのでしょう。だからマスコミはもっぱら官僚にニュースネタを求めるようになります。

典型的な新聞の経済記事 財務官僚の発表をそのまま垂れ流し

さらに、野党はまともな政策論争もできないばかりか、政局もまともに見れないようです。だから、頓珍漢なことばかりしていて、国民からも呆れ果てられています。特に若い世代はそうです。

新聞はもはや通信社の記事を配信しているだけであり、独自の取材力は無いに等しいです。専門的な知識もないから独自の切り込みもできず、経済記事も財務省官僚や日銀官僚の受け売りばかりです。政治の記事も政局ばかりが報道されて、政策提言力もありません。だから能力の低い記者は、ネットを見ながら記事を書くようになりました。このようなことがあってか、最近ではSNSなどが政治にある程度影響力を行使するようになってきました。

朝日新聞などの大手新聞がいくら安倍批判をしても影響力がそれだけ落ちてきているのです。政治の流れが分からなくなった時などは、ネットでまともな情報を発進している人たちを探し出し、それらの人たちの情報に接しているほうが、新聞やテレビを見ているよりはるかにわかりやすいです。

そのようにして情報をつかんでいれば、そもそも現在の世界情勢や、経済や雇用のことを考えれば、日本の大多数の国民にとって、安倍総理が続投するのが一番良いことなどすぐに理解できるはずです。それについては、ここで詳細は説明しません。以下の【関連記事】のとこに、それに関連する記事を掲載します。それが理解できない程に、能力が低下したのが、現状の新聞であり、テレビということです。

このブログは、もう10年にわたって記事を書き続けていますが、なぜこんなことを続けるかといえば、マスコミの書く記事があまりにもくだらないからです。新聞も、テレビも、結局官僚のリークする情報を鵜呑みにして、その真の意図を読みとることも垂れ流すことにより、私達は不利益を被ってきました。そのことを10年前にはっきり認識したからこそ、これに対してなんとか抗うことはできないかと考え、ブログをはじめました。

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2018年6月24日日曜日

沖縄の米軍、朝鮮半島のためだけではない 在韓米軍撤退すれば在日米軍拡充も―【私の論評】安保に無頓着な翁長知事には、沖縄を任せられない(゚д゚)!

沖縄の米軍、朝鮮半島のためだけではない 在韓米軍撤退すれば在日米軍拡充も

沖縄県宜野湾市の米軍普天間飛行場
写真はブログ管理人挿入 以下同じ

 朝鮮半島が緊張緩和すれば、辺野古移設は必要なくなる-。沖縄県の翁長(おなが)雄志(たけし)知事は23日の沖縄全戦没者追悼式で、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設に反対する理由として「東アジアをめぐる安全保障環境の変化」を挙げた。だが、沖縄に駐留する米海兵隊は朝鮮半島有事のためだけに存在するのではない。朝鮮半島情勢の変化に基づく在沖米軍の縮小論は十分な根拠に裏付けられているとはいえない。

 翁長氏はこれまで、辺野古移設が「沖縄の基地負担軽減に逆行している」と訴えてきた。しかし、住宅密集地に位置する普天間飛行場が移設できれば、周辺住民の負担軽減につながる面は否定できない。

23日の沖縄全戦没者追悼式にて

 そこで、辺野古移設に反対する新たな理由として加えたのが朝鮮半島情勢の変化だ。米政府は12日の米朝首脳会談を受け米韓合同軍事演習の一部を中止しており、これにからめた議論は耳目を集めやすい。

 23日の式典でも、翁長氏が朝鮮半島情勢を引き合いに辺野古移設を批判すると、大きな拍手を浴びた。翁長氏は20日の県議会でも米朝首脳会談に関連し「10年以上かかるような基地を着々と造る状況は、東アジアの安全保障という面からも心配だ」と述べていた。

 しかし、朝鮮半島の緊張緩和が即座に在日米軍の削減にはつながらない。防衛省幹部は「在日米軍の駐留根拠は朝鮮半島だけではない」と語る。在沖米海兵隊は、日本の防衛支援や台湾、南シナ海有事への対応など広範な任務も有する。

 小野寺五典防衛相は23日、翁長氏の発言について「在日米軍基地は北朝鮮のみならず、この地域の安全保障上の重要な役割を果たしている」と反論した。

 韓国に駐留する陸軍主体の米軍約2万8千人も、朝鮮半島有事への対応だけが任務ではない。昨年6月の米韓首脳会談で署名した共同声明には「米韓はアジア太平洋地域でルールに基づく秩序を維持するため協働する」と明記しており、マティス米国防長官も今年5月に在韓米軍がアジア太平洋全体の安定に貢献していると説明した。

 仮に在韓米軍が撤退しても、どこかで穴埋めをしなければならない。日米外交筋は「在沖米海兵隊の重要性が高まりこそすれ、必要なくなるということはあり得ない」と断言する。

 韓国陸軍とも交流がある元陸上自衛隊東部方面総監の渡部悦和氏は「在韓米軍が撤退するなら在日米軍を増やさなければならない」と指摘する。翁長氏の発言は「結論ありき。辺野古移設が嫌だから朝鮮半島の緊張緩和が米軍縮小につながると思い込んでしまう」と述べた上で、こう続けた。

 「安全保障で一番危険なのはウィッシュフル・シンキング(希望的観測)だ」

 沖縄県では11月に知事選が予定されている。朝鮮半島の緊張緩和で米軍が不要になるという認識が浸透すれば、辺野古移設に反対する候補に有利に働くことは間違いない。選挙目当ての希望的観測で安全保障を損なうことがあれば事態は深刻だ。(杉本康士)

【私の論評】安保に無頓着な翁長知事には、沖縄を任せられない(゚д゚)!

朝鮮半島が緊張緩和すれば、辺野古移設は必要なくなるなどと、翁長知事は語っていますが、本当にそうなるかどうかなど全く予測がつきません。特に在韓米軍の撤退もあり得る現在、沖縄の米軍基地の存在意義はますます高まりつつあります。

北朝鮮が核兵器を廃棄するにしても、体制存続の保証と在韓米軍撤退という結果を勝ち取れば、北の「外交上の大勝利」と位置付けられることになります。これはスポンサー的立場にある中国やロシアにとっても、歓迎すべき米国側の譲歩といえます。

特に中国としては、朝鮮戦争以来の頭痛の種が1つ取り去られることになります。

この前提となるのが、韓国がいまや、米国にとって「信頼できる同盟国」ではなく、「厄介なお荷物」に過ぎなくなっているという現実です。

米軍の高高度防衛ミサイル(THAAD)の配備では、保守と呼ばれた朴槿恵(パク・クネ)政権ですら反対しました。

左派の文在寅(ムン・ジェイン)政権は昨年10月、(1)米国のミサイル防衛システムには加入しない(2)日米韓の安全保障協力は軍事同盟に発展しない(3)THAADミサイルを追加配備しない-という3条件をチャイナに確約してしまいました。米国にとっては「同盟国への裏切り」としか言いようのない従中外交です。

文在寅

文氏は昨年8月、「朝鮮半島で米国に軍事行動をさせない」と明言しました。トランプ氏は同11月に訪韓しましたが、韓国の大統領補佐官は直後の記者会見で、米韓共同声明を否定する発言をしました。

文氏は、北朝鮮を攻撃しようとする米国を止めるのが使命だと信じています。こうした事実を冷徹に認識し、トランプ氏が「北朝鮮の非核化」の代償として、「在韓米軍の撤退」を決断する可能性は十分にあります。文政権も歓迎することでしょう。

そうなれば、日本の国防最前線は、38度線から対馬海峡に南下することになります。日本は国家存続のため「自主防衛の強化」と「日米安保の充実」で臨むしかありません。そうなれば、当然のことながら、沖縄の米軍基地の存在はさらに大きなものになります。

日本の国防最前線は、38度線から対馬海峡に南下することに?

さらに、将来北朝鮮と韓国が連邦化されたり、場合によっては統一される可能性も捨てきれません。そうなれば、ますます沖縄の米軍基地は、存在価値を増すことになります。

さらに、最近では米中の貿易戦争が話題となっていますが、その他にも、このブログで指摘してきたように、北の問題がある程度収束すれば、今度は台湾をめぐる米中の争いがあらわになるのは目にみえています。

その原因をつくったのは、南シナ海の環礁を実効支配するだけでなく、埋め立てをし、自らの軍事基地にした中国です。その中国は尖閣列島付近でも、日本に対する示威行動を続けていて、収まる気配もありません。

今や、中国は米中にとって仮想敵国です。日米は、否が応でも、中国に対峙するように、中国に仕向けられているといっても過言ではありません。

このようなときに、沖縄から米軍が基地がなくなるようなことでもあれば、中国が沖縄に進出するのがたやすくなり、それこそ中国が尖閣どころか沖縄に侵攻し、沖縄は日本本土攻略のための、中国の最前線基地になるかもしれません。

このような危険が迫っている可能性も捨てきれないにも関わらず、翁長知事は、23日の追悼式典で、選挙目当ての希望的観測で安全保障を損なうような発言をしているのです。これでは、安保に無頓着と謗られても致し方がないです。

翁長知事は、日本の安全保障のことはもとより、沖縄県民の安全保障なども全く考えていません。そんなことより、選挙のことで頭がいっぱいのようです。このような人物は沖縄県知事とふさわしくはありません。冒頭の記事にもあるように、沖縄県では11月に知事選が予定されています。沖縄県民の賢明な判断を期待したいです。

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