ラベル 判断 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 判断 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2017年3月29日水曜日

不法入国者が女子学生をレイプ、学校の言い分は?「反トランプ」メディアは事件を黙殺―【私の論評】専門家より米国の実体を知り判断できる素人のほうが、米国の全体像を把握できる(゚д゚)!


ホワイトハウスで定例記者会見を行うショーン・スパイサー大統領報道官。ロックビル市の
公立高校で起きたレイプ事件について言及し、全米の注目を集めた(2017年3月21日撮影)
米国の首都ワシントン近郊の公立学校で、不法入国のまま通学していた17歳と18歳の中米出身の男子生徒が、同じクラスの14歳の米国人女子生徒をレイプした容疑で逮捕された。

 地元では、不法滞在の外国人がなぜ年下の米国人生徒と同じ学年で同じクラスに入っているのかと非難する声と、不法入国者をかばう声とがぶつかり、トランプ政権の政策の是非論にまで発展している。

 また、トランプ政権の厳しい入国制限政策に反対するメディアの一部はこの事件をまったく報道しなかったため、批判を浴びた。

   なぜ下の学年のクラスに編入されたのか

 米国メリーランド州・ロックビル市の公立ハイスクールで3月16日、グアテマラ出身のヘンリー・サンチェス(18)とエルサルバドル出身のホセ・モンタノ(17)という2人の生徒が、強姦の容疑で警察に逮捕された。

 警察の発表によると、2人の容疑者は16日午前、同校の米国人女性生徒(14)を校内の男子トイレに連れ込んで交互に乱暴したという。警察は、両容疑者が昨年メキシコ領内から米国へ密入国してきた不法入国者であることも明らかにした。

 ロックビル市では同校の父兄らが中心となり、不法入国者がなぜ公立学校への入学をすぐに認められ、しかも年齢が3~4歳下の一般クラスに編入されているのかなどについて学校当局に詰問し抗議した。

 学校側は、「不法入国でも未成年の居住者は公立学校への入学が認められる」という1980年代の米国最高裁の判決や、オバマ政権時代に慣行化した「英語能力の不十分な不法滞在者は公立学校で低学年クラスに編入する」という方針を示して、現状に問題はなかったと答弁した。

 学校側の言い分を支持する声もある。メリーランド州議会の民主党議員たちは、学校当局の措置を非難する父兄たちに対して、「不法入国者でも米国当局の保護を受ける権利がある」と反論した。

 さらに民主党議員たちは、この機に乗じるように、メリーランド州全体を、不法居住を取り締まらない「サンクチュアル・シティー(聖域都市)」に指定する法案を州議会に提出する動きも見せ始めた。だが、メリーランド州のラリー・ホーガン知事(共和党)がこの案に反対し、たとえ州議会が可決しても拒否権を使うと宣言した。同州議会で多数を占める民主党議員たちは当然反発し、不法入国者の扱いをめぐる議論はさらにヒートアップしている。

   3大テレビネットワークは事件を無

 なお、メリーランド州の地元メディアはこの事件を詳しく報道したが、全米レベルではFOXニュース・テレビ以外はほとんど扱わなかった。

 共和党保守派に近いFOXは、この事件の根本的な原因はオバマ政権の移民政策にあるとして、連日のように報道した。

 一方、民主党寄りのCBS、ABC、NBCといった3大テレビ局は事件をまったく報じなかった。FOX側はその報道姿勢について、「3大テレビネットワークは、これまでの移民政策や不法入国者対策が破綻していることを認めたくないために、この事件を故意に無視しているのだ」と繰り返し批判している。

 公立ハイスクールでのレイプ事件は、不法移民対策をめぐる米国の分断を浮かび上がらせることになった。

【私の論評】専門家より米国の実体を知った上で判断する素人のほうが、米国の全体像を把握できる(゚д゚)!

トランプ政権の厳しい入国制限政策については、日本ではほとんど報道されないものの、米国ではかなり支持されていることが明らかになっていました。

それについては、このブログでも掲載したことがあります。その記事のリンク以下に掲載します。
日本メディアのトランプ報道はもはや「誤報」レベル―【私の論評】日本の大赤恥かきメディアは未だ全く反省していない(゚д゚)!
米カリフォルニア州ロサンゼルスで、ドナルド・トランプ大統領の移民政策に抗議する運動「移民の
いない日」に呼応して休業したアイスクリーム店の前で反トランプデモを行う人々(2017年2月16日撮影)
この記事は、今年の2月18日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事より米国でトランプ政権による入国制限が支持されていたという部分のみを以下に引用します。
ところで、肝心の米国民はトランプ政権のこの措置にどんな反応を示したのでしょうか。

最初に世論調査の結果を報じたのはロイター通信でした。調査では、米国民の49%がトランプ大統領の措置に賛成、41%が反対という結果が出ました。米国の一般国民の約半数は大統領の措置に賛意を表明しており、反対する人より多いという事実が明らかとなったのです。

私も、この結果についてはいち早くネット上の情報から知ることができました。しかし、私の記憶ではこの情報に関しては、日本のメデイアはことごとく無視していました。

ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポスト、CNNテレビなど、反トランプ色が強く、民主党を支持するリベラル・左派系メディアは、その結果をごく簡単に報じただけでした。

しかし、その直後の2月初め、今度は米国の大手世論調査機関ラスムセン社が世論調査の結果を公表しました。それによると、7カ国からの入国を一時禁止する措置への賛成が57%、反対が33%であり、賛成派が大差で多かったのです。
ラスムセン社の世論調査の結果を報道するテレビの画面
ラスムセン社は、大統領選キャンペーン中もトランプ氏の支持率を他の世論調査機関よりも正確に伝えてきた実績があります。ところが、ラスムセン社が発表した「57対33」という数字は、日本の主要メディアの間ではまったく報道しませんでした。

さらに世論調査機関「モーニング・コンサルト」が政治雑誌の「ポリティコ」と合同で実施した世論調査でも、同じような結果が出ています。2月6日に報道された調査結果によると、トランプ政権の入国一時禁止措置を支持する米国民は全体の55%、不支持は38%でした。
さらにこの合同世論調査で注目すべきなのは、トランプ大統領が矢継ぎ早に打ち出した11の大統領令のうち、入国一時禁止措置は一般米国民から最も高い支持を得ていることです。

例えば、TPP(環太平洋パートナーシップ)からの離脱は支持が47%(不支持が33%)、メキシコとの国境での壁建設は支持が47%(不支持が42%)でした。これらよりも入国一時禁止措置は支持されています。トランプ大統領が出した11の大統領令はすべて賛成が反対を上回っている点も注視に値します。

一見、過激に映り、日本のメディアなどが、根拠のないただの暴走のように報道し続けるトランプ大統領の措置は、多くの米国民から支持されていたのです。民主党系の反対派は「人道主義に反している」「憲法に違反している」と非難しているのですが、実は民意に沿っていないということなのです。

何のことはない、トランプ大統領は民意に沿った行動をしているというだけなのです。米国の大統領が米国の国民の多数の民意を汲んだ行動をすることは当たり前といえば、当たり前です。
多数派の国民の民意は、トランプ大統領の、厳しい入国制限政策に賛成であり、無論不法移民にも反対であると考えられます。 民主党寄りというか、リベラル・左派のCBS、ABC、NBCといった3大テレビ局は今回のレイプ事件をまったく報じなかったというのですから、さらに多くの国民から不信感を持たれたことでしょう。

しかし、まさにこのような状況は米国では日常茶飯事で繰り返されてきたのです、なぜそのようなことになるかといえば、このブログでも過去に何度か掲載してきたように、米国のメディアの90%がリベラル・左派であるということが大き原因です。

米国の新聞は、一部の弱小な新聞社を除けば、ほとんどすべて、特に大手はすべてがリベラル・左派です。日本にたとえれば、産経新聞が存在せず、すべてが朝日新聞などのリベラル・左派に占められているような、とんでもない状況なのです。テレビ局もそれと同じような状況です。唯一の例外がFOXtvであり、ここだけが保守です。

だから、ブログ冒頭の記事にもあるように、"民主党寄りのCBS、ABC、NBCといった3大テレビ局は事件をまったく報じなかった。FOX側はその報道姿勢について、「3大テレビネットワークは、これまでの移民政策や不法入国者対策が破綻していることを認めたくないために、この事件を故意に無視しているのだ」と繰り返し批判している"というような状況に至ったのです。

米国にも人口比からいえば、国民の50%は保守層であると考えられるのですが、保守派メディアは10%程度に過ぎないので、保守メディアの声はほとんどかき消されてきたというのが実情です。かき消されたというのは、生ぬるい表現かもしれません。元々、保守の声など存在しないかのごとく扱われてきたのです。

これは、メデイアだけに及ばず、米国のリベラル・左派は、事実上民主党や教育機関、映画などの大衆娯楽を乗っ取ったために、大統領選挙でトランプ氏が勝利する前までには、完璧に無視され、米国民の世論イコール、リベラル・左派の世論というような風潮が形成されていたのです。

昨年亡くなった米国の保守層の精神的柱であった、フィリス・シュラフリー女子。
彼女の遺言は、トランプ大統領を実現させることだった・・・・・・・・・・・・。
ブログ冒頭の記事では、"公立ハイスクールでのレイプ事件は、不法移民対策をめぐる米国の分断を浮かび上がらせることになった"としていますが、これは明らかな間違いです。もともと、米国は大きくいうと、リベラル・左派と保守派に分断されていたのですが、公には保守層は存在しないかのごとくに扱われてきただけなのです。

だから、日本のメディアで良く言われているようにトランプ大統領が誕生した途端に、米国が分断したのではなく、もともと分断していたものが、トランプ大統領が誕生の過程で、それが多くの人々に認識されるようになったのです。

その前までは、米国の世論イコール「リベラル・左派の世論」とされてきて、多く保守派の人々が、自分たちはマイノリティーであると思い、自分たちの考えを公にすれば、主流はのリベラル・左派の人々に変質者や変態であるなどと批判されることを嫌って、自分たちの考えなどを公にすることを控えたのです。

それに反発した、実際には米国の人口比で5割程度は存在するとみられる保守層が、一斉にトランプ支持に回ったので、トランプ大統領が誕生したのです。これについては、日本ではほとんど報道されません。

リベラル・左派は幼稚園のころから「資本主義の邪悪さ」と「社会主義への同情」を刷り込まれ洗脳されています。だから、彼らにとっては、自分たちは絶対善であり、悪の自由主義や資本主義の象徴であるトランプ氏は「叩きのめすべき敵」以外の何者でもないのです。

だからこそ、今回のレイプ事件に関連して、メリーランド州全体を、不法居住を取り締まらない「サンクチュアル・シティー(聖域都市)」に指定する法案を州議会に提出する動きも見せ始めたという、とんでもないことが起こりそうになったのです。

しかし、リベラル・左派が、トランプ氏を政治的に貶めようとすればするほど、それが逆効果になっています。米国民の多く、特に保守層は「リベラル・左派の抗議団=米国を3等国に転落させたい連中」とみています。選挙期間中には、テロリストを支持する集会リベラル・左派によってが開催されたことが、トランプ氏への得票につながったことも、保守派は知っています。

今回のレイプ事件に関して、リベラル・左派が報道しなかったことや、オバマ政権時代に慣行化した不法移民に対する扱いなどの不当性については、今後ますます保守派がこのようなことを許すことはしなくなるでしょう。

そうして、リベラル・左派が今回のような動きをみせるたびに、保守派の結束は強くなり、トランプ大統領への支持は益々高まっていくことになります。

いままで、日本でも、米国のリベラル・左派の世論しか注目してきませんでした。そうして、米国の半分である保守層の世論を無視してきました。

そうして、米国のリベラル・左派の世論にどっぷりとつかり、米国を判断してきた専門家には、米国の全体像を捉えることはできません。これからは、上記のような米国の実情を知った上で、判断する素人のほうが、全体像を捉えられるかもしれません。そうして、そうした素人の中から、次世代の専門家が誕生することになることでしょう。

【関連記事】

トランプ氏に困惑の国内左派 TPP反対でも批判する矛盾 雇用政策でも国際常識が欠如―【私の論評】米大統領選で日米のリベラル・左派とメディアの左下ぶりも暴露された(゚д゚)!

【WSJ社説】アジア外交で勝利するトランプ氏―【私の論評】日本のリベラル・左派、左翼の本来の使命は「政権・権力と戦うこと」とではない(゚д゚)!

「正直者」トランプが約束していた100日間の行動―【私の論評】これを読めない、読もうとしない日本のメディア関係者は機能的非識字者?


トランプ旋風でわかった“インテリの苦悩” ハーバードの学生がトランプ支持を表明できない事情―【私の論評】従来の私たちは、実は半分のアメリカにはノータッチだったことを認識すべき(゚д゚)!


2016年11月12日土曜日

蓮舫氏「トランプ氏に失礼」でまたもブーメラン 本来の立場忘れ、本末転倒の攻撃材料に―【私の論評】TPPは頓挫していない!政治家、マスコミ、官僚も米大統領選のように判断を誤る可能性が(゚д゚)!

蓮舫氏「トランプ氏に失礼」でまたもブーメラン 本来の立場忘れ、本末転倒の攻撃材料に

蓮舫氏
環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)承認案などをめぐり、米大統領選でTPP脱退を明言するトランプ氏が勝利したことを受け、民進党執行部から承認案の即時撤回を求めるような発言が相次いでいる。そもそもTPP交渉参加に向けた協議入りを決断したのは、平成23年の旧民主党・野田佳彦内閣だ。自由貿易体制を重視する本来の立場を忘れ、トランプ氏を安倍晋三政権の攻撃材料にするのは本末転倒でないか。

蓮舫代表「新大統領に対して失礼にあたるのではないかとも思い、懸念している」

野田幹事長「新しい大統領にケンカを売るような話にもなりかねない」

 蓮舫、野田両氏はトランプ氏が勝利した9日、承認案などの衆院採決を急ぐ政府・与党を批判した。

民進党野田幹事長
 民進党は「今回の交渉で農産物重要5項目の聖域が守れなかった」ことなどを理由に承認案に反対しているが、TPPの理念は否定しない立場。7月の参院選で発表した「民進党政策集2016」にも「アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の実現をめざし、その道筋となっているTPPなどの経済連携を推進します」と明記している。

トランプ氏はTPPを「米製造業の致命傷になる」と批判するなど保護主義的な姿勢を示してきた。民進党の考えるべき道は、TPPの理念まで消え去りかねない危機への対応であり、「トランプ氏に失礼」などと肩を持つことではないはずだ。(水内茂幸)

【私の論評】TPPは頓挫していない!政治家、マスコミ、官僚も米大統領選のように判断を誤る可能性が(゚д゚)!

そもそもTPP交渉参加に向けた協議入りを決断したのは、平成23年の旧民主党・野田佳彦内閣であることは間違いありません。その当時の新聞記事のリンクを以下に掲載します。これは朝日新聞のものです。
野田首相、TPP交渉参加の方針表明
2011年11月11日23時11分

 野田佳彦首相は11日、首相官邸で記者会見し、環太平洋経済連携協定(TPP)について「TPP交渉参加に向けて関係国との協議に入る」と述べ、参加国との事前協議から始まる交渉プロセスに参加する方針を表明した。首相は12日からハワイで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で、オバマ米大統領らTPPの関係各国首脳と会談し、交渉参加の方針を伝える。 
 TPP交渉に正式参加するには、すでに交渉入りした米国など9カ国と事前協議を行い、それぞれ承認を得る必要がある。日本が各国と本格交渉を始めるのは、早くても来年春以降とみられる。首相が「交渉参加に向けた協議」と表現し、事前協議を強調したのは、民主党内の反対派に配慮した面もある。 
 首相は会見で、農業や医療などの分野でTPP参加に反対する声が強いことを念頭に「世界に誇る日本の医療制度、日本の伝統文化、美しい農村、そうしたものは断固として守り抜き、分厚い中間層によって支えられる安定した社会の再構築を実現する決意だ」と強調。こうした懸念に配慮する姿勢をみせた。 
 一方で「貿易立国として活力ある社会を発展させていくためには、アジア太平洋地域の成長力を取り入れていかねばならない」と述べ、交渉参加の意義を訴えた。その上で、首相は「関係各国との協議を開始し、さらなる情報収集に努め、十分な国民的な議論を経た上でTPPについての結論を得ていく」と強調した。 
 また、首相は農業対策について、10月に政権がまとめた農林漁業の再生に向けた基本方針・行動計画を踏まえて「規模の集約化や6次産業化などを5年間で集中的に行っていく。それに基づいて必要な予算を措置する」と述べ、交渉参加と農業再生の両立を図る考えを示した。 
 首相は関係国との協議について「国益を最大限実現するプロセスの第一歩だ」と主張。昨年11月に菅前政権が「情報収集のための協議」としたTPP参加国との交流について、首相は「さらに歩みを前に出す」と位置づけた。 
 一方、慎重派の鹿野道彦農林水産相は11日夜、記者団に「総理は『参加表明』とはおっしゃらなかった。交渉参加を前提とするものではないと理解している」と指摘。首相の表明が交渉参加にはつながらないとの認識を示した。
この当時の私は、TPPそのものについては自由貿易を推進するということで反対ではないものの、野田政権というより財務省に簡単に御せられてしまう、交渉力の弱い民主党政権のときにはTPP交渉に入るのは日本の国益を損ねる危険性もあると考えていたので、一応反対はしていました。そのため、ブログには以下の様な野田氏を揶揄するような画像も掲載しました。


この記事は、2011年11月11日のものであり、今から5年前の記事です。野田氏は5年前に、自らTPP交渉参加に向けた協議入りを決断しておきながら、「新しい大統領にケンカを売るような話にもなりかねない」と発言しているわけです。

これは、非常に奇異です。ケンカのきっかけは自分が作ったにもかかわらず、自分にはもう全く関係ないかのような発言です。このような発言をするのなら、まずはきっかけを作った自分が謝罪すべきではないでしょうか。

それに、蓮舫氏の「新大統領に対して失礼にあたる」というのも本当に奇異です。蓮舫氏は、自らの二重国政問題で自らの意見を何度も何度も翻し国民を愚弄したその挙句、今でも二重国籍であるかどうかさえはっきりさせていません。国民に対してあれだけ、失礼なことをしておきながら、それは全く顧みずに、筋違いの政府批判をしています。

これらの発言から読み取れるのは、政治を考える上で、二人ともせいぜい1〜2年期間で物事を考えて発言しているとしか思えないのと、とにかく筋が通ろうが通るまいが、論理的であろうが、なかろうが、現政権を批判することしか頭にないことです。

このような発言は、無責任と断定せざるを得ません。そうは言っても、この二人にはそのようなことは全く気にもかけないでしょう。だからこそ、このような発言ができるのです。

この二人が、民進党の代表と、幹事長というのですから、情けない限りです。

それにしても、トランプ氏が大統領選に勝ってからいろいろなことが明るみに出ました。

まずは、メディアは日米ともに、最後の最後まで、クリントン優勢と報道したことからもわかるように、米国の国民の声や、考えを全く反映していなかったことが明るみに出ました。

まずは、このブログで何度か掲載してきたように、アメリカのメディアはアメリカにおそらく、半分くらいは存在していると考えられる保守派や保守派に親和性のある人々を完全に無視してきたこと、そうして日本のメディアも米国メディアの論調を鵜呑みにして、アメリカの半分の声に対してノータッチであったことが明るみに出ました。

それに、TPPに関しても、「TPPで日本は亡国になる!」と語っていた連中も大勢いましたが、トランプ氏はTPPには反対しています。亡国論者たちはTPPはアメリカの日本支配の巨大な陰謀などと語っていました。しかし、大統領選挙前からアメリカが拒否し、さらにトランプ氏も反対しています。結局、自称「保守系」経済評論家と呼ばれる人たちは、根拠の薄弱な恐怖を煽ったということで無責任であったことがはっきりしてしまいました。


しかし、TPPについては、トランプ氏が反対であることから、頓挫するのではないかというのが、日本のマスコミなどのほとんどの反応ですが、私は今のところは、完璧に頓挫したとは思っていません。

なぜそのように思うかというと、三点ばかり根拠があります。一点目は、過去に大統領選においてFTAやEPAに関して、大統領選のときには反対の意思を表明しておきながら、大統領になったらこれを批准した大統領などいくらでも存在するからです。実際、アメリカの大統領選挙の公約は守られないことが、しばしばありますし。だからといって、大きな問題になったこともありません。

二点目としては、アメリカの政治は二大政党制であり、今回のように政権交代があったとき、前政権と現政権の政治があまりにも異なった場合、とてつもなく混乱することになります。そのような混乱を避けるため、アメリカの政治では継続性の原則が貫かれています。

継続性の原則とは、たとえ政権交代したとしても、現政権は前政権の政策を6割〜7割は引き継ぎ、後の4割から3割で、新政権の色を出すというような政治手法のことをいいます。

今回のTPPに関しては、これを推進しようとしたのは元々アメリカです。これを今から完全廃止するとなると、アメリカ国内だけではなく、日本を含めた他の多くの国々に混乱をもたらします。これがかなりのマイナスとなると判断すれば、政治の継続性の原則から、混乱を招かないために、従来通り現政権もTPPを推進する事になる可能性は十分あります。

三点目としては、TPPには中国は参加しません。その意味で、TPPは中国への経済的な対抗策でもあります。トランプ氏は対中国恐慌派と目されていますから、これを理解すれば、TPPを推進するほうに立ち位置を変える可能性は十分にあります。

日本のメディアは、もうTPPは頓挫したかのように報道しているところが多いです。しかし、もっと趨勢を見極めないと、政治家、マスコミ、官僚もまたアメリカ大統領選挙の時のように、判断をまったく誤ることになるかもしれません。

アメリカの大統領がトランプ氏と決まったことを契機これからも、いろいろなことが明るみに出てくると思います。そのようなことを発見した場合、またこのブログに掲載しようと思います。

【関連記事】



2016年10月2日日曜日

日銀への大きな不満?為替介入を嫌がる財務省、その判断は間違いです―【私の論評】増税キャンペーンして、為替介入をしない財務省は国民の敵(゚д゚)!

日銀への大きな不満?為替介入を嫌がる財務省、その判断は間違いです 突然「外債購入論」が浮上したワケ

ドクターZ

日銀の外債購入については正しく報道されることは滅多にない。写真はブログ管理人挿入。
以下、写真、図表ともにブログ管理人挿入。

  そもそも外債購入は可能か?

今年9月に入り、日銀の「外債購入論」が浮上してきている。日銀による現行の金融緩和政策の限界を打破する「秘策」と期待されているというが、実際にはどのような意味を持つのか。

日銀が外債を購入することによって、まず市場へ円資金を供給することができる。加えて、外債を買う過程で円を下落させる効果がある。前者で現行の日銀の金融緩和政策にプラスに働き、後者で財務省が行う「為替介入」と同様の効果もある。

この為替介入であるが、財務省の権限ということになっているため、外債購入は「法律的に難しい」といわれることがある。しかし、あまり報道されていないことであるが、外債購入自体は日銀法上では「可能」ではある。日銀法40条1項では〈日銀は自ら、または国の代理人として、外貨債権の売買ができる〉となっている。

さらに、同条2項では〈為替相場の安定を目的とするものについては国の代理人として行う〉とある。つまり、日銀法上、日銀は自ら外貨債権の売買を行うことは可能だが、為替介入目的の場合は国(財務省)の代理人として行う必要がある。

そもそも為替介入が十分な効果を生むには、財務省と日銀の連携が重要になってくるというのが経済界の「常識」。'04年の急激な円高危機の際に行われた大規模な為替介入が一例だ。

このとき、財務省はドル買いの原資となる証券を発行、日銀がそれを購入する形で進められた。これは、財務省の権限である為替介入と日銀の国債購入という「合わせ技」で、学問的には「非不胎化介入」と呼ばれるものだ。財務省は1日1兆円規模の円売りドル買いの為替介入、日銀は国債買いオペを行った結果、円安と金融緩和の効果をもたらした。

   「国益」を損ないかねない

では、いまなぜ外債購入論が急浮上しているかというと、現在の財務省が為替介入にまったくもって消極的であるからだ。

今年6月に英国のEU離脱が決定したとき、ドル円相場は1日で7円(約7%)もの変動があった。過去のデータを見ると、2週間で7%程度の為替変動が20年に一度の出来事。今回は1日で7%だったから、まさに未曽有の事態であった。それでも動かなかった財務省に、日銀は不満を持っている。

もちろん、為替介入にも注意すべき点はある。それは、円安のときも円高のときも、特定の為替水準の維持を意図してはいけないということだ。あくまで急激な変動に対してブレーキをかけるのが為替介入の目的である。

財務省が為替介入に消極的な理由はまったく不透明だが、下手するとこの姿勢は「国益」を損ないかねない。というのも、為替介入はヘッジファンドにとって絶好の「攻め時」となる。日本は小泉政権時代にその攻防をしのぎ切った経験があるが、今の財務省は当時のような対策が取れないように見える。これでは海外からなめられても仕方ない。

以上のことを踏まえると、外債購入論が浮上するのも当然のこと。ただし、今後も財務省が為替介入しないことに固執するなら、「財務省の為替介入権限を日銀に移管する」という過激な議論も出てくる。これには法改正が必要だが、その際には財務省の外為利権のはく奪を目論む政治家が躍起になるだろう。

『週刊現代』2016年10月8日号より

【私の論評】増税キャンペーンして、為替介入をしない財務省は国民の敵(゚д゚)!


日銀の外債購入については、高橋洋一氏が過去に興味深い記事をZAKZAKに掲載しています。

その記事のタイトルを以下に掲載します。
【日本の解き方】葬り去られた外債購入構想…日銀の実像 - 政治・社会 - ZAKZAK 
この記事は、2012年2月5日のものです。この記事残念ながら、すでにZAKZAKからは消去されています。ただし、私自身が別途その内容を保存しておきましたので、そこから下に引用させていただきます。
1月31日に公表された2001年下期の日銀金融政策委員会議事録に興味深いことが書かれている。中原伸之審議委員が同年11月16日、日銀による外債購入を提案していたことは知られていたが、それ以前の10月、須田美矢子審議委員、植田和男審議委員、中原真審議委員らが賛同していたことが明らかにされた。 
当時、アメリカの同時多発テロなどで景気が悪化していたので、竹中平蔵経済財政担当相は「一歩踏み込んだ金融政策に私たちは大変、期待している」と述べていた。 
そうした中、同年3月からの量的緩和について日銀は半信半疑だった。もともと00年8月のゼロ金利解除が間違いだったにもかかわらず、量的緩和に追い込まれたという被害者意識が日銀にあったのだ。 
議事録でも、01年10月12日の会合で、速水優日銀総裁は「皆が価格が下がるのはデフレで大変だと大騒ぎされるのはどうかと思う」と、いわゆる「よいデフレ論」を展開し、山口泰副総裁や三木利夫審議委員は同調していた。 
本来良いデフレなど存在しない。デフレは経済にとってすべからく悪である。
中原伸之審議委員は、(個別の商品などの価格である)「相対価格」と(いろいろな物やサービスの値段を平均した)「一般物価」の混同であると正論を示しているが、当時の日銀執行部はデフレの認識が甘かった。そのため、量的緩和政策を自己否定するかのように、量の拡大には消極的だった。 
そこで「緩和の姿勢をアピールすることが大事だ」ということで、外債購入が検討されたようだ。はじめに取り上げたのは、8月会合で財政規律を重要視して長期国債の買いオペに否定的な須田審議委員だ。外債なら問題ないからだ。 
しかし、日銀による外債購入構想は、あっけなく財務省の前に敗れた。為替の所管は財務省であるので、日銀による外債購入は財務省の権限を侵すという論理だ。 
11月16日の会合で表明された藤井秀人財務省総括審議官による日銀法の解釈に対して、政策委員会メンバーは無力だった。実際、日銀は外貨債を保有しているが、財務省の為替権限を侵さないように外貨で購入したものであって、円で購入したものはなかった。 
しかし、この構想は後の04年の大規模介入(いわゆる「テーラー・溝口介入」)につながっている。財務省が為券(政府短期証券)を発行して外債を購入し、ゼロ金利を維持するために日銀は財務省が発行した為券を購入する。 
その結果、外債購入という需給関係(一時効果)から、また日銀が為券購入によってマネタリーベースが拡大すること(永続効果)から、円安になる。実際に円安になったのは、介入の効果ではなく量的緩和の効果である。 
他に、注目すべきは、9月18日の会合で竹中大臣が中央銀行の独立性には「目標」と「手段」の2つあると問題提起したが、日銀に無視されたことだった。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
金融政策決定会合の議事録は、各金融政策決定会合から10年を経過した後に、半年分(1月から6月分、7月から12月分)ごとにとりまとめて、年2回公表しています。個々の公表予定日は、事前に公表しています。誰でも閲覧できます。

さて、為替介入というと、財務省管轄の特別会計である、外国為替資金特別会計を思い出します。これは、政府が行う外国為替等の売買に関し、その円滑かつ機動的な運営を確保するため外国為替資金が設置されるとともに、その運営に伴って生じる外国為替等の売買、運用収入等の状況を区分し経理するために設置された特別会計です。

外為資金として127.9兆円(2013.3末)。このうち外貨債権は103兆円(証券は99.5兆円、貸付3.5兆円)です。ちなみに、外貨証券の満期は1年以下1割、1年超5年以下6割、5年超3割)となっています。一方、外貨負債はありません。ということは、円安は資産を膨らませるだけであり、政府財政にとっては確実にプラスです。ざっくりみると、2014年度外為資金での円安による評価益は20兆円程度あったものと推定されます。

その他にも、多くの特別会計があります。その代表的なものを以下に掲載します。

まずは、国債整理基金特別会計。一般会計又は特別会計からの繰入資金等を財源として公債、借入金等の償還及び利子等の支払いを行う経理を一般会計と区分するために設置された特別会計です。定率繰入れ等の形で一般会計から資金を繰り入れ、普通国債等の将来の償還財源として備える「減債基金」の役割もあります。

この「減債基金」は、先進国で日本しかありません。他の先進国では昔はありましたが、公債市場が大きくなって整備されると償還財源はその都度借換債で調達するので、「減債基金」はなくなったのです。そういえば、民間会社で社債の「減債基金」もありません。将来の借金償還のために、さらに借金をする必要などないのです。

この観点から見ると、2015年度予算の11.6兆円の定率繰入は過大な計上であり、不要である。また、利払費が9.7兆円ある。しかし、この積算金利は1.8%と過大だ。おそらく2兆円くらいは過大計上だったでしょう。

次に労働保険特別会計。労災保険と雇用保険を経理するために設置された特別会計です。労災保険は、業務上の事由等による労働者の負傷等に対して迅速かつ公正な保護をするための保険給付及び被災労働者の社会復帰の促進等を図るための社会復帰促進等事業を行うもの、雇用保険は、労働者の失業中の生活の安定、再就職の促進等を図るための失業等給付及び雇用機会の増大等を図るための雇用保険二事業を行うものです。

2013年度の労働保険特別会計財務書類をみると、雇用勘定のバランスシートで7.1兆円の資産負債差額があります。いわゆる埋蔵金です。これは、高めの雇用保険料にもかかわらず失業保険給付が少ないために生じたものです。本来国民に還元すべきでした。

税収の2/3が特別会計という、この官僚のやりたい放題の構図。
このような国は他にない。この状況は今でも変わっていない。
かつて、「母屋(一般会計)ではおかゆで、離れ(特別会計)ではすきやき」といわれたことがあります。これは今でも妥当しています。

財務省は、これらの特別会計を積んでいるだけで、有効利用はしません。特にブログ冒頭の記事でも指摘されている、財務省の為替介入をして円安になったにしても、円安は資産を膨らませるだけであり、政府財政にとっては確実にプラスです。そうして、ざっくりみると、2014年度外為資金での円安による評価益は20兆円程度あったものと推定できます。

この頃は円安傾向ですから、為替介入など全く必要ではなく、本来ならここから、20兆円ほど他に融通したとしても良かったはずです。

2014年度といえば、8%増税をした年度です。財務省としては、8%増税をして景気が冷え込むことは、予め予想出来たはずですから、最初から増税しなようにするか、少なくともこの20兆円を景気対策に使うことはできたはずです。しかし、現実にはこれには程遠いものとなり、実際増税後景気は落ち込み未だに回復していません。

政府による為替介入を実行するためにこそ、外国為替資金特別会計が存在する

さらに、2016年に入ってから、円高気味の傾向が続いていますが、財務省は為替加入を行なうこともなく、そのため外国為替資金特別会計を使うこともなく溜め込んでいるだけです。

こんなことが許されて良いものなのでしょうか。許されて良いはずがありません。だからこそ、ブログ冒頭の記事のように、日銀による外債購入論が浮上するのも当然のことです。

そうして、今後も財務省が為替介入しないことに固執するなら、「財務省の為替介入権限を日銀に移管する」という過激な議論も出てくるのも当然のことです。そうして、その際に財務省の外為利権のはく奪を目論む政治家が躍起になるのは目に見えています。

まさに、増税キャンペーンは熱心にして、為替介入はしない財務省は国民の敵と言っても差し支えないと思います。

【関連記事】


2016年7月12日火曜日

【緊迫・南シナ海】中国の南シナ海支配を否定 仲裁裁判所「歴史的権利なし」と判断―【私の論評】南シナ海の本当の危機は、中国の核戦略による聖域化だ(゚д゚)!



南シナ海をめぐる中国の主張や行動は国連海洋法条約違反などとしてフィリピンが申し立てた仲裁手続きで、オランダ・ハーグの仲裁裁判所は12日、中国が「歴史的権利」として主張する「九段線」について国際法上の根拠は認められないとの裁定を公表した。南シナ海のほぼ全域の主権を主張して強引に進出する中国に対し、初めて国際法に基づく判断が下された。

裁定は、南シナ海で実効支配の拡大を目指す中国側の主張を退ける内容。中国は一貫して裁定を無視する姿勢だ。罰則など強制的に裁定に従わせる手段はないが、国際社会が司法判断の尊重を求める圧力を高めるのは必至。中国の立場は苦しくなる一方、南シナ海情勢は一段と緊迫化する可能性がある。

中国が「歴史的権利」として南シナ海のほぼ全域を取り囲む形で主張する「九段線」については、仲裁裁判所は管轄権を留保していたが、今回の裁定で中国の主張を退けた。

今回の仲裁は2013年1月、フィリピンの申し立てを受けて開始。中国は参加を拒否したが、仲裁裁判所は昨年10月、15項目の訴えのうち7項目で管轄を認め、同11月に中国抜きで口頭弁論を開いていた。

仲裁は海洋法条約で海洋紛争を解決する手段の一つとして指定されており、全当事者が受け入れなくても手続きを進めることができる。裁定は最終的な判断のため、上訴はできない。

【私の論評】南シナ海の本当の危機は、中国の核戦略による聖域化だ(゚д゚)!

この裁定、先ほど出たばかりなので、いろいろな報道が乱れ飛んでいます。その典型的なものを以下に掲載します。
 仲裁裁判所は12日、南シナ海をめぐる裁定で、「中国は、スプラトリー(中国名・南沙)諸島の珊瑚礁の生態系に恒久的かつ取り返しの付かない害を与えた」と指摘した。ロイター通信が伝えた。
この裁定は当然といえば、当然です。中国はこの海域の珊瑚礁を徹底的に破壊しつくしました。こんな傍若無人なことが許されて良いはずがあります。

それにしても、このような自然破壊に対しては、シーシェパードもグリーンピースもなぜか反対運動をしません。日本の捕鯨に対して行う妨害活動まではしなくても、少なくとも抗議声明くらい出すべきだと思うのですが、一切そのようなことはしていません。

これに対して、金にならないからやっていないと言う人がいます。しかし、私はそうではないと思います。シーシェパードや、グリーンピースなどは、おそらく中国から金をもらっているのだと思います。だから、抗議活動など一切しないのだと思います。

環礁を埋め立てるには、まずはダイナマイトで大量のサンゴ礁を破壊するという、想像するだけでも恐ろしい、信じられないようなことが行われていました。しかし、グリーンピース・ジャパンのHPで「南シナ海」と検索しても、何もヒットしません。シーシェパードも同じです。特にグリーンピースは、辺野古で自然破壊だと大騒ぎしている同じ人たちとは思えません。

米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に反対を訴えるため、那覇新港に
到着した環境保護団体グリーンピースの帆船=昨年11月2日
所詮、ダブルスタンダード・二枚舌の偽善者団体と思われて仕方ないと思います。
そうして、日本の環境保護団体なども右へならえで、金か何らかの便益を供与されているとしか思えません。もし、私のこの推理が外れているのだとすれば、シーシェパードやグリンピース、それに日本の環境保護団体も、中国に対して抗議声明くらいは発表すべきです。
南シナ海の南沙諸島で警備する中国人民解放軍の海軍兵士=1月
 ロイター通信は12日、南シナ海をめぐる仲裁裁判所の裁定について、中国国営新華社通信が「事実に基づかない決定だ」と報じたと伝えた。
2月、南シナ海のスプラトリー(中国名・南沙)諸島を巡回する中国軍の兵士。
手前の柱には「南沙は我が国土。神聖にして侵すべからず」と書かれている

さらに、中国国営新華社は以下のように伝えています。
 南シナ海をめぐる仲裁裁判所の裁定について、中国外務省は12日、「この裁定は無効で、拘束力がない。中国は受け入れないし、承認しない」とする声明を発表した。 
 声明は、「中国は南シナ海の領土主権と海洋権益はいかなる状況においても仲裁裁の裁定の影響を受けない」と強調。「中国は、この裁定に基づくいかなる主張や行動にも反対し、受け入れない」と裁定を無視する姿勢を示した。(新華社)
中国が今回の仲裁裁判所の裁定を無視することは、前々から公表していました。そのため、今回の中国の態度には、驚きも何もしませんが、それにしても、この裁定がくだされた後でも、中国はこれを無視するのですから、国際社会からの風当たりはますます強くなるばかりです。

それにしても、中国がなぜここまで、南シナ海にこだわるかということについては、未だ日本のマスコミなどでは納得のいく報道がなされていません。

日本のマスコミなどが報道するのは、南シナ海がエネルギーの生命線であるということと、この地域の海洋資源についてのみです。

エネルギーの生命線であるとは、南シナ海は原油や天然ガスの海上輸送路(シーレーン)であるということです。

米エネルギー情報局(EIA)によると、2011年時点で南シナ海とタイランド湾を通る原油は1日平均約1400万バレル。世界の原油輸送量の約3分の1を占めます。このうち90%以上がアフリカや湾岸諸国からアジア市場への最短コースであるマラッカ海峡を経由しています。まさに南シナ海は原油輸送の戦略的に重要となる海上水路(チョークポイント)なのです。
出典:米エネルギー情報局
日本へは日量320万バレル、韓国への同240万バレル、台湾や香港へは540万バレルとなっています。日本は原油の99.7%を輸入しており、その約83%を中東に依存しています。南シナ海で有事が発生した場合、マラッカ海峡を迂回してインドネシア中部のロンボク海峡を抜けなければならなくなります。


液化天然ガス(LNG)は11年に、世界のLNG輸送量の半分以上に相当する6兆立法フィートが南シナ海を通過しました。このうち56%が日本へ、24%が韓国へ、19%が中国や台湾に運ばれました。東日本大震災の福島第1原発事故で日本のLNG輸入量が増え、12年上半期には世界のLNG輸送量の58%が南シナ海を通過しました。

日本にとって南シナ海はまさに生命線になっているのです。

次に、南シナ海の海洋資源というと、南シナ海の原油埋蔵量は推定で112億バレル、天然ガスの埋蔵量は推定で190兆立法フィートです。中国は「九段線」で囲った南シナ海ほぼ全域の島嶼部や人工島の領有権、その周囲の「排他的権利」を主張、南シナ海の海底資源を独占する野望を隠していません。


日本のマスコミが報道する中国の南シナ海進出の理由は以上の二つくらいです。

しかし、中国にとって南シナ海に進出する理由は他にあります。そうして、この二つよりもはるかに、重大理由です。

それについては、以前このブログにも詳細を掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
中国の膨張路線は止まらないが国際社会から強い逆風 南シナ海のハーグ裁定―【私の論評】通常戦力で勝ち目のない中国は、南シナ海に戦術核を配備する(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、結局のところ、中国による南シナ海での人工島造成の狙いは、南シナ海から米軍を追い払うことです。

南シナ海の平均深度は1200メートル以上。海盆の平均水深は3500メートル、最深部は約5600メートルに及びます。中国は戦略ミサイル原潜を4隻配備し、潜水艦発弾道ミサイル(SLBM)を核抑止力の重要な柱にしています。

中国の戦略型原潜については、以下の動画をご覧下さい。



台湾南部から南沙へ掛けての広大な南シナ海の海域は、深さ3000メートル級の、戦略原潜が潜むには絶好の海域です。戦略ミサイル原潜の整備を急ぐ中国は、実はそれを隠す深い海を自国周辺に持っていません。

黄海は、それこそ潜航すら危険ほど浅すぎ、東シナ海も浅い大陸棚のため、ミサイル原潜が潜むには適しません。巨大なミサイル原潜が浅い海を航行すると、様々な痕跡を水面に残し、それは軍事衛星から丸見えになります。南シナ海の広大で深い海は、アメリカ本土を狙うミサイル原潜を潜ませるために、中国がどうしても内海化したい場所なのです。その遠大な計画の第一歩として、中国は長年、南シナ海に突き出た海南島の海軍基地を整備してきました。


南シナ海から米軍を追い払えば、冷戦時にソ連が戦略ミサイル原潜をオホーツク海に潜ませてソ連のSLBMの聖域にしたのと同じように、中国は南シナ海に戦略ミサイル原潜を自由に展開し、南シナ海を戦略型原潜の聖域にすることができます。海南島を出発した最新型の戦略型原子力潜水艦が深く潜航し、台湾とフィリピンの間のバシー海峡を通って西太平洋に抜けることが可能になります。

中国のSLBMは現状では、南シナ海からは米国全土を射程に収めることはできません。しかし、南シナ海から西太平洋に抜け、アメリカ本土に近づけば、アメリカ全土を射程に収めることができます。

それから、いうまでもないことですが、日本は現状でも射程距離内に入っています。

日本のマスコミが報じる資源問題等は、こうした中国の核戦略の隠れミノに過ぎません。この戦略を成就するためには、中国は今回の仲裁裁判所の裁定に従うはずもありません。

そうなると、中国と米国、南シナ海周辺諸国との対立が激しくなるのは当然のことです。対立が激しくなれば、中国は通常兵力、特に海軍力では日本よりも低いといわているくらいですから、到底米軍には勝てません。

日米印豪などの連合軍には、到底勝つどころか、守備することもままなりません。しかし、これらの国々の軍隊が南シナ海を自由往来されると、中国は、南シナ海を戦略型原潜の聖域にはできなくなります。

それでは、中国の核戦略は成就できません。そうなると、通常戦力の劣勢を補うために、いずれこの海域に戦術核を装備することも考えられます。埋め立てた島に、戦術核ミサイルを配備するとか、南シナ海に戦略型原潜の他に、戦術核を装備した攻撃型原潜を配備するようになるかもしれません。

なぜ中国がそこまでするかといえば、中国は本気で冷戦時代のソ連のようになろうとしているからです。この世界を米中二つの国で覇権の及ぶ範囲を分け合おうとしているのです。まさに、身の程知らずとはこのことです。

このような危機があるからこそ、米国は、「航行の自由作戦」を展開し、この海域に艦艇を派遣したりしているのです。艦艇を派遣して、必要なときにこの海域にいつでも自由に米軍の艦艇等派遣する用意があることを中国に見せつけているのです。

その目的は、中国の戦略型原潜がこの海域を自由に航行することを阻止することです。中国がそれでも、戦略型原潜をこの海域で航行させるというなら、米国もいずれは武力を行使することもあり得ます。

この事態が進行すれば、いますぐどうこうのということはないにしても、いずれPoint of No Return (帰還不能点、もはや後に引けない段階)は、いずれ必ずやってきます。これについては、日本も関係ないなどとはいえません。それなりの覚悟を決めておく必要があります。

このような、事実を政府も公表しません。そうして、マスコミも報道しません。くだらないスキャンダルなど報道するくらいなら、このような南シナ海での本当の危機について報道すべきです。政府もこれを国民に直截に知らせるべきです。すべての国民には、「知る権利」があるはずです。

【関連記事】

中国の膨張路線は止まらないが国際社会から強い逆風 南シナ海のハーグ裁定―【私の論評】通常戦力で勝ち目のない中国は、南シナ海に戦術核を配備する(゚д゚)!


【緊迫・南シナ海】中国が「海上原発」建設を計画 人工島に電力を安定供給―【私の論評】核戦争瀬戸際までいったキューバ危機の再来になる可能性も十分にあり(゚д゚)!



【関連記事】


中国4.0 暴発する中華帝国 (文春新書)
エドワード ルトワック
文藝春秋
売り上げランキング: 1,905

カエルの楽園
カエルの楽園
posted with amazlet at 16.06.28
百田尚樹
新潮社
売り上げランキング: 15

中国バブル崩壊の全内幕
中国バブル崩壊の全内幕
posted with amazlet at 16.06.28
宮崎 正弘 石 平 福島 香織
宝島社
売り上げランキング: 1,541


2016年5月28日土曜日

【ニッポンの新常識】日本人が金慶珠氏に一定の敬意を払うべき理由 民主主義の根本は「是々非々」―【私の論評】真の保守は中庸を旨とする!敵をつくるより味方を増やそう(゚д゚)!

【ニッポンの新常識】日本人が金慶珠氏に一定の敬意を払うべき理由 民主主義の根本は「是々非々」

金慶珠(キム・キョンジュ)東海大学教授 写真はブログ管理人挿入 以下同じ
東京・有楽町のよみうりホールで19日、「南シナ海情勢フォーラム」(主催・産経新聞社 月刊「正論」)が開かれた。第1部は、軍事ジャーナリストの井上和彦氏の基調講演。第2部は、井上氏と、東海大学の山田吉彦教授、同大の金慶珠(キム・キョンジュ)教授、私の4人で、パネルディスカッションを行った。7月1日発売の月刊「正論」で詳報される。

金氏とは報道番組などで何度か共演したが、祖国を愛する韓国人なので、日本と韓国の主張が対立する場面では、原則として韓国側に立つ。日本側の立場で見れば、乱暴で腹が立つ主張も行う。結果、彼女は「反日」と思われているが、かなりの誤解がある。

金氏と私は、長期滞在の在日外国人であり、祖国の政治家や官僚以上に日本の歴史や国民感情に精通している共通点がある。当然、2人とも日本と祖国との良好な関係を常に願っている。

他方、金氏と私には決定的に違う点が1つある。私の祖国・米国は「言論の自由」を重視する国だが、韓国は違うという点である。

韓国人評論家の金完燮(キム・ワンソプ)氏は、日韓併合を肯定的に書いた『親日派のための弁明』(草思社)を出版したが、韓国では「青少年有害図書」に指定され、逮捕された。刑事・民事両方の名誉毀損(きそん)で何度も訴えられ、罰金刑や損害賠償の判決を受けた。韓国政府はパスポートの更新に応じないので、事実上の出国禁止状態にある。

済州(チェジュ)島出身で、日本に帰化した拓殖大学の呉善花(オソンファ)教授は2013年7月、韓国への入国を完全拒否された。

『韓国人による恥韓論』(扶桑社新書)など、韓国批判の一連の著作が累計40万部に及ぶシンシアリー氏は韓国在住の歯科医だそうだが、素性を明かせば平穏な生活は二度と戻らない。

これほど厳しい言論環境の下でも、前出の金慶珠氏は、李明博(イ・ミョンバク)前大統領が島根県・竹島(韓国名・独島)に上陸したり、天皇陛下への侮辱発言を行った一件を真正面から批判した。日本人は一定の敬意を払うべきだと思う。

自分と意見が違う人物を深く考察せず、全否定して排除しようとする傾向が、「自称・保守派」の一部に見られる。二元論的に「敵か味方か」と決め付けるのは、子供か全体主義者の思考回路である。民主主義の根本理念は「是々非々」なのだ。「昨日の敵は今日の友」になる場合もある。

少し考えてから行動しないと、安倍晋三政権の政策に、脊髄反射で反対する勢力と大差ない。

■ケント・ギルバート

【私の論評】真の保守は中庸を旨とする!敵をつくるより味方を増やそう(゚д゚)!

ケント・ギルバート氏の上の主張もっともだと思います。このブログでも、誰が正しい、誰が間違いなどという考えはすべきではなく、何が正しくて、何が間違いであるべきかを議論すべきことを何度か掲載しました。本当に、誰が正しくて、誰が間違いという議論の仕方ほど不毛で、危険なことはないと思います。

どんなに優秀な人だって、間違うこともあれば、どんなに愚かな人だって、正しいことを言っている場合もあります。

危険であるとは言い過ぎという人もいるかもしれませんが、考えてみてください、全体主義の国家では、トップが絶対に正しいということにするということを思い出すべきです。

パルチザンに射殺され逆さ吊りにされたムッソリーニらの遺体
かつてのソ連では、スターリンは何が何でも全部正しく、ナチス・ドイツではヒトラーが何が何でも正しく、現在の北朝鮮では、金正恩が何が何でも、全部正しいのです。

ムッソリーニは独裁者でしたが、敗戦後パルチザンにつかまり、裁判もなしで射殺され逆さ吊りにされました。パルチザンからすれば、ムッソリーニは悪いやつなので、殺すのは当然だったのかもしれません。しかし、本来ならば、ムッソリーニの行った何が悪かったのか、それを裁判などで明らかにすべきでした。「誰が悪い」という主張は極端になるとここまでいってしまうのです。

上の記事で、ケント・ギルバート氏が語っているように、誰の言っていることは間違い、誰の言っていることは正しいという論法を好んでする人は、全体主義に走りやすい性向を持つ人だと思います。

呉善花氏や、朴裕河氏はとりあげたことがあるのですが、金慶珠(キム・キョンジュ)氏に関しては、このブログでははじめてとりあげました。この方、時々テレビに出るのを見たことがあります。今月はじめ頃の「そこまで言って委員会NP」に出演されていました。

この番組でも司会の辛坊氏に指摘されていたのですが、とにかくよく喋る方です。番組内でそれを辛坊氏に指摘されると、金慶珠氏は「私は考えながら喋る」と語っていました。実際この方がテレビに出ている時には、かなり喋るので、焦点がぼやけてしまって、結局何が言いたかったのか記憶に残っていないというのが正直な感想です。

ただし、一つだけ記憶に残っていることがあります。それは、上の記事でも指摘されていたように、李明博(イ・ミョンバク)前大統領が島根県・竹島(韓国名・独島)に上陸したり、天皇陛下への侮辱発言を行った一件を真正面から批判したことです。これには、正直驚きました。だからこそ、記憶に残っているのだと思います。



この一点をもっても、ケント・ギルバート氏は金慶珠氏を日本人は一定の敬意を払うべきとしています。これは、正しい指摘だと思います。私達日本人はテレビなどの日本語の流暢な外国人の発言を、彼らの背景をあまり考えずに、日本人などと同じレベルで考えてしまいます。

しかし、同じ外国人の発言であっても、米国やEU内等の人の発言であれば、日本人と同じく自由に発言できるのですが、韓国や中国、ましてや北朝鮮などともなれば、なかなか自由には話すことはできません。場合によっては、危険をおかしてまでも話していることを忘れるべきではありません。

それと、これは外国人ではないですが、私は常々このブログの中で旧民主党や現民進党を批判しますが、その民主党の中でも尊敬する議員がいらっしゃいます。それは、金子洋一先生です。先生がかねてから主張しておられる、経済政策は本当に正しいです。民進党の幹部も金子先生の主張する経済政策に耳を傾けるべきです。そのことについてはこのブログに以前も掲載したことがあります。

金子洋一参議院議員
さらに、私はマルクス主義経済学を信奉するものではありませんが、松尾匡・立命館大教授の左派の立場こそ本来、金融緩和を重視するべきだとの主張には大賛成です。これに関しては、朝日新聞でもその主張が掲載されているので、是非ごになってください。

立命館大経済学部の松尾匡教授
私は、どうして左派やリベラルの人たちが、上の二人の主張を無視するのか全く理解に苦しみます。これは、左派やリベラルの人たちの多くが、ケント・ギルバート氏がいうように是々非々でものごとを考えないからです。安倍総理の提唱する経済政策である金融政策には絶対にくみしないということです。

このようなことは、保守派にもみられることで、ケント・ギルバート氏は、以前にもブログ冒頭の記事と似たようなことを語っていたことがあります。それもこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【ニッポンの新常識】SEALDsだからおかしい、との主張に私は与しない―【私の論評】誰が正しい間違いという考え方は、そもそも大間違い!成功は対立の中にある。自分と違う意見の人を見つけて、あえて議論せよ(゚д゚)!
ケント・ギルバート氏
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事でケント・ギルバート氏は以下の2つを主張していました。
「誰の主張か?」ではなく、「主張内容は合理的か?」を検証すべきだ。

学習や変化、進歩を拒むのは個人の自由だが、私はさび付いた常識に基づいて生きるつもりはない。
この主張も正しいです。特にこの2番目の主張は、「昔のケントはあんなことは言わなかった」と批判する人に向けてのものですが、これも正しいものと思います。世の中は変わっていきます。昔のままと何もかわらぬ主張をしていれば、一部の人は「ぶれない」などと評価するかもしれませんが、それでは何の進歩もありません。かといって、いつも革新・改革というのも考えものです。

だからこそ、保守的な考えが必要になってくるわけです。ケント・ギルバート氏は保守を自認していますが、まさしく、保守とは上の記事などでケント・ギルバート氏の主張していることを実践する人や考え方のことをいうのだと思います。

保守派というと、自民党が保守で野党は革新などという人もいますが、ご存知のように、このような分類は今や無意味になりました。さらに、人によっては、このような主張をする人が保守で、あのような主張をする人が革新やリベラルなどという人もいます。

しかし、このような考えは根本的に間違いだと思います。主義主張そのものは、保守であるかないかを明確に区分するものではありません。

それよりも、世の中の仕組みをどうするかというときに、「ステップを踏むなんてもどかしい」と「ウルトラCに賭ける」のが急進派、革命派であり、「ウルトラCなんかない」から「ステップを踏んでいくしかない」と考えるのが(反動ではない正しい意味での)保守派であり、中庸派であるということです。

コマネチ、オリンピックで10点満点。機械のように、
正確に技をこなすところはある意味怖いくらいだった。

そうして、民主主義の根本理念はケント・ギルバート氏が語るように「是々非々」であることを忘れるべきではないのです。世の中の仕組みを変えるときに、極端に走らず「是々非々」の民主主義というステップを踏む中庸主義が、保守主義と言えるでしょう。

そういうステップを踏まずに、「誰の主張か」で物事を判断して、事を進めようとする人はそもそも保守ではないのです。

それは、結局のところ真の保守ではないのです。世の中には、本当は保守はではないにもかかわらず、あたかも保守であるように振る舞う偽装保守などといわれる人々もいますし、そうではないまでも、主義主張がいわゆる保守派といわれる人々に似ているので、自分を保守とする自称保守という人もいます。

偽装保守、自称保守の見分け方は簡単です。一見保守のように振る舞いながらも、「誰の主張か」にもとづき物事を考え、変化や進歩に対応するのに、ステップを踏まずに一挙に「変革」を求めるようなことをする人です。特に、この変革に際しては、社会や現実をよく確かめもせずに「制度設計」等で性急に対応しようとします。

私たちは、このようなことにならないように、頭を使うべきです。そうでないと、「安倍死ね」と語る人々と大差がなくなってしまいます。

あるいは、単純な陰謀論者になってしまいます。SEALDsと日本会議が、日本を裏で動かす勢力であると考える陰謀脳の皆さんたちにはつきあいきれません。

このような考え方をする人たちは、結局多数の敵を作ることはできますが、味方を作ることはできません。

このような人たちは、断じて保守ではありません。真の保守とは、たとえ立場が違った人とも、一致できるところは一致し、妥協できるところは妥協し、敵よりも味方を多く作ろうとする人々のことです。それによって、順次世の中の仕組みを変えたり、良い方向に持っていこうとする人々のことです。

ソロモン王の裁き 半分のパンは役にたつが半分の赤ん坊は遺体に過ぎない
そうして、妥協と言った場合、無論半分の赤ん坊ではなく、半分のパンの妥協であるべきというソロモン王の裁きの故事を忘れるべきではありません。世の中には、妥協の仕方がわからず、いつまでも妥協できずに何も変えられないとか、半分のパンを得ることもかなわず、結局半分の赤ん坊を得てしまう事ばかりで失敗する人も多いですが、無論そのような妥協をする人も真の保守とはいえません。

妥協には正しい妥協というものがあります。というより、保守を自認する人は正しい妥協を厭いません。そもそも、民主主義とは妥協の連続です。何もかも、スパっと自分の思い通りにできるのは、全体主義のトップだけです。ただし、それも束の間の事にすぎません。

最後に、ケント・ギルバート氏は、ご自分のブログも公開されています。これは、日本語と英語で書かれています。ブログ冒頭の記事も英語と日本語で書かれています。これは、本当に英語の勉強になります。特に保守的な考えかたをされている人には、格好の英語の教材になると思います。以下にリンクを掲載しておきます。是非こちらもご覧になってください。
http://ameblo.jp/workingkent/
【関連記事】


【日本の解き方】経済予測をことごとく外してきた面々は合理的な推測をしているのか―【私の論評】奴らは論評をしているのではない!論病に過ぎない(゚д゚)!


韓国社会 親日派は裏切り者としてあらゆる手段で社会的制裁―【私の論評】韓国は、日本に対する“恨”の感情に拘泥され続けている!こんな国は、捨て置け、関わるな(゚д゚)!




【関連図書】
歪みの国・韓国(祥伝社新書320)
金 慶珠
祥伝社
売り上げランキング: 329,500

侮日論 「韓国人」はなぜ日本を憎むのか
文藝春秋 (2014-03-28)
売り上げランキング: 6,072

帝国の慰安婦 植民地支配と記憶の闘い
朴 裕河
朝日新聞出版
売り上げランキング: 179


2014年10月30日木曜日

消費再増税、アベノミクス成功のため冷静に判断=安倍首相―【私の論評】安倍総理は、長期政権樹立のため増税パスの政治的な賭けを実行する可能性が高まってきた!しかし、日本のマスコミはこれをスクープできないだろう(・・;)


国会答弁する安倍総理 昨日

[東京 30日 ロイター] - 安倍晋三首相は30日午前の衆議院予算委員会で、消費税率10%への引き上げ判断について、7─9月に成長軌道に戻ることができるかだと指摘。消費税率の引き上げがデフレ脱却に与える影響も含め、「アベノミクスを完全に成功させるために、冷静に判断していきたい」と語った。

河村建夫委員(自民)の質問に答えた。

安倍首相は消費税率引き上げについて「社会保障制度の水準を次の世代に引き渡す責任があるなかで、3党合意で決定したものだ」とする一方、「消費税を上げた結果、経済が腰折れすれば税収は減る。元も子もなくなるのは当然のことだ。財政健全化にもつながらない」との認識を示した。

そのうえで「4月から消費税を上げた(ことによる)マイナスがあった。(4─6月に)マイナス7.1%という反動減があった」とし、「7月、8月、9月に成長軌道に戻ることができるかということだ。消費税は消費者の購買力を減少させる効果があるのも事実だ。デフレ脱却に影響を与えるかを含めてみていきたい」と語った。

安倍内閣の2閣僚の辞任という事態に対しては「申し訳ない思いだ」とし、「任命者である私の責任だ」と語った。さらに「わが国の前には問題が山積している。デフレ脱却は道半ばで、アジアの安全保障環境は厳しさを増している。山積する課題にしっかり立ち向かい、解決のために全力を尽くす。政治に遅滞があってはならない」と述べた。

(石田仁志 編集:山川薫)

【私の論評】安倍総理は、長期政権樹立のため増税パスの政治的な賭けを実行する可能性が高まってきた!しかし、日本のマスコミはこれをスクープできないだろう(・・;)

上の記事、非常に重要な内容だと思うのですが、日本のマスコミはほとんど報道しません。ちなみに、「消費税 安倍総理」というキーワードで、24時間以内のものググってみました。その結果が、以下です。


何と、この内容を伝えていたのは、ロイターとニューズウィークのみでした。ニューズウィークは、ロイターのものを転載していました。そのほかは、ロイターの報道していた内容とは異なる、森永卓郎氏のエッセイだけでした。

一体日本の報道機関はどうしたというのでしょうか。毎日新聞もこれに近いことは掲載していましたが、これでは、安倍総理の真意は全く伝わっていません。

その記事を以下に引用します。
みんな:首相に消費税増税凍結求める 
毎日新聞 2014年10月29日 20時14分 
 安倍晋三首相は29日、みんなの党の浅尾慶一郎代表と首相官邸で面会した。浅尾氏は消費税率の10%への引き上げの凍結を求め、海外の有識者から意見を聞くよう要請。首相は「今年4月の消費増税後の景気状況について注意深く見ていきたい」と述べるにとどめた。会談には米国の資産運用会社会長が同席した。
これでは、全く安倍総理の真意は伝わりません。まるで、 浅尾慶一郎氏が、増税凍結を求めたのに、安倍総理は、あまり乗り気でないように受け取ることのできるような内容です。

これでは、全く報道の意味がありません。

このような報道姿勢では、安倍総理も日本のマスコミなどには、あまり話をしたくなくなるのが当然ともいえます。

これについては、以前もこのブログに掲載しましたので、その記事のURLを以下に掲載します。
焦点:首相周辺で消費増税延期が優勢、景気腰折れ懸念―【私の論評】恥ずかしくはないかい!日本のマスコミ、政治家、官僚、左翼、似非識者諸君!安倍総理に愛想づかしをされ、本音で話すのは外国のメディアのみになってしまったことを(゚д゚)!
この記事では、増税一色で凝り固まっている、日本のマスコミ、政治家、官僚、左翼、似非識者などに安倍総理が愛想をつかし、こと増税に関しては、海外メディアを使うようになった背景を掲載しまた。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事の締めくくりの部分のみ以下に掲載させていただきます。
そうです。安倍総理は、再増税一色に固まっている、日本のマスコミ、政治家、官僚、左翼、似非識者たちには、何を話しても無駄であると判断したのです。平たくいえば、彼らに愛想をつかしたのです。
愛想をつかされた、彼らにこういいたいです。「一国の総理大臣から、完璧に愛想をつかされて、恥ずかしくないのかい!そのうち、全国民からも愛想をつかされることになるよ」と・・・・・・・・・。
確かに、安倍総理は、増税に関しては、ファイナンシャル・タイムズなどのインだピューは、受けても、日本のメディアなどのインタビューは受けていません。

それに、今回の安倍総理の国会での増税に関する考えの表明に関しては、ロイターのみがまともに報道している事実を考え合わせると、日本のメディアは最早まともな報道ができないと考えても差し支えないと思います。

とにかく、メディアは、増税推進派に与して、昨年のように大増税キャンペーンを繰り返し、増税を押し切ろうとう腹です。

しかし、これで、本当にまともな報道ができるのでしょうか。

先に、あげた森永卓郎氏は、興味深いエッセイをサイトに掲載していました。その記事の一部を以下に引用します。
森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 消費税再増税凍結?
森永卓郎氏
安倍総理が来年10月からの消費税再増税に踏み切るのかどうかを判断する期限が、あと1カ月あまりに近づいてきた。
賛成の人は、一体経済のどこをみているのだろうか。8月の家計調査で、実質消費は前年比マイナス4.7%、勤労者世帯の実質収入はマイナス5.4%だ。消費税引き上げ前の駆け込み需要の反動で消費が落ちたのではなく、所得減で消費が落ちているのだ。
そのことは、景気動向にも明確に表れている。景気動向指数(一致指数)は、一昨年11月の101.6から今年3月の114.6まで急上昇したが、そこをピークに、今年8月は108.5へと急落している。日本経済は、消費税引き上げをきっかけに、まさに「逆V字失速」をしているのだ。 
これだけひどい状況でも、多数の有識者が消費税を再引き上げすべきと言っているのだから、普通に考えたら安倍総理は再引き上げの判断をせざるを得ないだろう。
ただ、私の頭からは、どうしても安倍総理が消費税引き上げ凍結を断行するシナリオが消えない。安倍総理が経済の専門家だからではない。政治家だからだ。
圧倒的支持率を誇ってきた安倍総理も、ここのところの景気失速で人気にかげりが出てきた。さらに、今後は支持率を落とす要因が目白押しだ。自民党候補の苦戦が予想される沖縄県知事選、川内原発の再稼働、TPP交渉での大幅譲歩、拉致被害者の帰国難航など、難題続出なのだ。当然内閣支持率はずるずると落ちていくだろう。
そうした中で、年末に安倍総理が突然「消費税引き上げを凍結します」と宣言する。支持率は急上昇するだろう。しかも、この作戦には大きな副産物がある。それは、盟友の麻生財務大臣斬りだ。
実は、安倍総理の座を狙う男が2人いた。石破茂氏と麻生太郎氏だ。石破氏は、地方創生担当大臣として座敷牢に入れた。あとは、麻生氏の息の根を止めれば、安倍総理の長期政権がみえてくる。政治家はそれくらいのことをするものだ。
森永氏の論評など、マクロ経済は知らないようだし、かなり頓珍漢なこともあり、私自身は読む価値などないと思うのですが、こと増税パスに関する森永氏の読みだけは意外と正しいかもしれません。最近、年末衆院解散という話も持ち上がっています。安倍総理は、年末解散総選挙で、支持率を高め、安倍長期政権の樹立を狙っている可能性は十分あります。

現状では、4月の増税でも消費がかなり落ち込み、とんでもない状況に陥っています。しかし、これは、たとえば増税分に相当するか、あるいは増税分を上回るような所得税減税や、給付金を実施すれば、十分に挽回可能です。公共工事は、現状では人手不足などの、公共工事の供給制約があるので、すぐに効果的な経済対策とはなりません。

しかし、来年の10%増税をしてしまえば、このような方策をとってもなかなか挽回できない可能性も高いです。所得税減税や、給付金対策を行ったにしても、かなり大規模にしなければならないし、効果が出るまで時間がかかる可能性が高いです。その間に安倍政権の支持率が急落するのは間違いないです。

上の記事には、書いてはありませんでしたが、女性2閣僚の辞任もかなり影響して、最近では内閣支持率を上げるような要素はありません。

このようなことをいろいろ見ていくと、 昨年は確かに、安倍総理が増税見送りをすると、政治的にかなり危険であり、諸事情を考えると政治的賭けに打って出る事はできませんでしたが、今年は違います。

いくら増税派が騒いでみたからといって、増税の最終判断は安倍総理が実施します。

このような状況の中での、ブログ冒頭の記事の内容のような安倍総理の発言です。しかし、日本のメディアはほとんどこれを報道しません。

こういうことから考えると、増税一色に固まっている日本のメディアは、安倍総理の真理を読みとることができず、増税キャンペーンばかり繰り返し、安倍総理の増税見送りのサインを見逃し、ロイターあたりにスクープされて、梯子を外されてしまうかもしれません。

その可能性は、高まりつつあります。

それにしても、増税を見送りして、新たな経済対策をして、経済が良くなれば、安倍政権の支持率はかなり高まることでしょう。

そうなったら、増税派をこてんこてんに批判しまくって、梯子を外して、奈落の底に落としてやろうではありませんか。

私は、そう思います。皆さんは、どう思いますか(*_*)

【関連記事】

 焦点:首相周辺で消費増税延期が優勢、景気腰折れ懸念―【私の論評】恥ずかしくはないかい!日本のマスコミ、政治家、官僚、左翼、似非識者諸君!安倍総理に愛想づかしをされ、本音で話すのは外国のメディアのみになってしまったことを(゚д゚)!

消費増税 米もダメ出し 財務長官が「失望」表明―【私の論評】日本のマスコミが伝えない真実!ルー米財務長官吠える!日本の増税DQNどもをそのまま放置するな(゚д゚)!

安倍首相が消費増税の延期示唆、経済への影響踏まえ判断=FT―【私の論評】安倍総理は、外国の新聞社には増税見送りの示唆をするが、殺人マシーンと化した財務省に諜略された日経・朝日新聞をはじめとする大手新聞にはそのようなことはしない。しかし、本当にそんな事で良いのだろうか(゚д゚)!



【関連図書】

増税と政局・暗闘50年史 (イースト新書)
倉山満
イースト・プレス
売り上げランキング: 84,967

財務省の逆襲: 誰のための消費税増税だったのか
高橋 洋一
東洋経済新報社
売り上げランキング: 104,998

消費増税の黒いシナリオ デフレ脱却はなぜ挫折するのか (幻冬舎ルネッサンス新書 た-8-1)
田村 秀男
幻冬舎ルネッサンス
売り上げランキング: 200,078


伊藤 裕香子
プレジデント社
売り上げランキング: 373,006

比、中国との合意否定 「大統領承認せず無効」―【私の論評】国家間の密約 - 歴史的事例と外交上の難しさ

比、中国との合意否定 「大統領承認せず無効」 まとめ フィリピンと中国の間で、南シナ海のアユンギン礁をめぐる密約の存在をめぐって対立が深まっている。 中国側は密約の存在を主張、フィリピン側は否定。真相は不明確で、両国の関係悪化が懸念されてる フイリピン マルコス大統領  フィリピ...