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2017年12月13日水曜日

税制改正、「官邸vs自民税調・財務省連合」の政治力学 細かな増税重ね緊縮路線へ―【私の論評】警戒せよ、緊縮で日本経済はまた停滞する(゚д゚)!


内部留保の活用をした企業への減税措置を言い出した麻生太郎財務相
 2018年度の税制改正は、年収850万円超の会社員や高収入の年金受給者の控除見直しなどが柱となっている。今回の税制改正で官邸と自民党、財務省の間でどのような力関係がうかがえるのか。

 今の自民党税調は、その主要メンバーは財務省OBなので、ほぼ財務省の意向と同じ方向で行動しているとみていい。ということは、「官邸」対「自民党税調・財務省連合」の政治力学である。


 今回は予算編成の真っ最中に衆院解散・総選挙があった。最大の争点は、トランプ米大統領の訪日・アジア歴訪を控えて、北朝鮮問題への対応で、安倍晋三政権に日本を託すかどうかであった。

 その際、19年の消費増税は予定通りとした。同時に財政再建は棚上げにした。官邸は財務省と交渉して、消費増税はのむが財政再建はのまなかったのだ。

 「増税するがそれを使う」というのは、経済学の立場から見れば、あまり賢いやり方とはいえない。本来は増税なしで歳入をそのままとし、歳出の中身を入れ替えるべきだからだ。

 ところが、政治の世界では、歳出の中身の変更は、カットされる個別分野の利益代表が反対するので難しい。それよりも、増税への反対の方が少ないと判断される場合には、「増税で歳出増」が選択される。今回の場合、経済界が消費増税に賛成なので、「消費増税で財政再建棚上げ」となったのだ。

 財務省は経済界に消費増税を賛成してもらったので、その見返りもあって法人税、租税特別措置には手をつけられない。特に、経団連企業は、租税特別措置で大きな利益を得ているので、この見直しは政治的には不可能に近かった。

 いくら企業の内部留保が大きすぎると指摘されても、それへの課税(実質的には法人税増税)は検討されることはなかった。麻生太郎財務相は、逆に内部留保の活用をした企業への減税措置を言い出す始末だった。

 こうして、消費税も法人税も何も手をつけられないとなれば、消去法として、所得税しか残らない。その結果として、今回の税制改正で所得税に手が付けられたのだ。

 といっても、本格的な所得税改正ではない。税率変更の場合、所得再分配をどうするかという大きな政治問題にもなるが、控除額の増減という「技術論」にとどまっているという印象だ。この段階で、官邸としては自民党税調と財務省におまかせとなる。

 税制中立であればまだ理解できる。だが、最終的な税制改正案が明らかにならないと分からないものの、現段階での筆者の直感では、ネットで結局増税になるのではないかとみている。

 税率変更がないので大改正でないといい、控除額の変更で所得再分配をしたといって、細かな増税の積み重ねで、税収の確保はちゃっかり実行するというのは、いかにも財務省のやりそうな税制改正だ。

 実際、細かな増税策が積み重なると、結局は、財政再建という名の緊縮路線となる恐れもある。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】警戒せよ、緊縮で日本経済はまた停滞する(゚д゚)!
国の借金は1000兆円超え、国民一人当たりに換算すると830万円もの借金を持っている計算になる。子や孫につけ回してはいけない。このままでは財政破綻するので、消費増税やむなし。
このような財務省による理論は、大新聞やテレビのニュースなどでさんざん流されたので、それを鵜呑みにして「増税やむなし」と受け入れている人も多いのではないでしょうか。このブログでは、以前からこの理論がデタラメであることを主張してきました。

これは、すべて財務省の大嘘です。デタラメなレトリックに騙されるべきではありません。本日はブログ冒頭の記事のような動きもあることから、再度この理論が全くのデタラメであることを掲載します。

日本は財政破綻などしてないことは、中央銀行(日本銀行)保有の国債について政府が返済や利払いをする必要がないことを理解すれば、誰にも理解できるはずです。

国の借金を煽る愚かなグラフ
日銀は政府が55%の株式を握る子会社だからです。現在、日本政府のバランスシートを見てみると、確かに負債の部には1100兆円を超える負債はあります。ところが資産の部には672兆円もあります。しかし、そのことを絶対に財務省は公表しようとはしません。負債の部にある「公債」「政府短期証券」のうち、500兆円は日銀保有です。これは、政府と日銀を連結決算すれば、相殺されてしまうのです。

それでも、政府の負債残高が気になるならば、償還期限が来た日銀保有国債について、新たに発行する「無期限無利子国債」と交換してしまえば良いのです。無期限・無利子国債は、事実上の貨幣です。

政府は日銀が保有する国債と貨幣を交換したことになり、返済負債が名目的にも消えてしまいます。ギリシャの場合はEUに加盟し、ユーロを自国で発行する権限を持っていません。だから破綻しました。

しかし、日本の場合はまったく違います。日本政府の自国通貨建て国債など、その程度の話です。おかしいのは現在、日銀の黒田東彦総裁が財務省の財務官時代に日本の格付けを途上国以下にした外国の格付け会社に対し、「日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない」と抗議している、その一方で、日本国民にたいしては財政破綻をの可能性を匂わすのですから、全く矛盾しているのです。

日銀黒田総裁
それに、政府が「プライマリーバランス(以下PB)黒字化目標」という無意味な目標を掲げていることも大問題です。

とにかく、PB黒字化目標が『骨太の方針』において閣議決定されている以上、すべての政策がPB黒字化前提になってしまいます。すなわち、「支出は前年比で削減する。増える場合は他の支出を削るか、若しくは増税する」という前提で予算が組まざるを得ない状況になっているのです。

しかし、デフレから完璧に脱却できていない現状で、増税やら緊縮財政をすることは常識的に考えて全く以上です。本来ならば、減税、積極財政を実施すべきです。

一番良いのは、金融緩和を続けながら政府が財政支出、あるいは減税をすることです。そうすれば、需要が増えて金利が上がります。通常は、公共投資増による公債発行増大に伴う利子率上昇が民間投資を阻害する「クラウディング・アウト」効果が出てしまうのですが、同時に金融緩和も継続すれば、金利上昇を抑えられます。金融緩和で財政政策の効果を強化できるのです。

現在のようにデフレから完璧に脱却していない時期には、本来は日銀が金融緩和を実施し、政府は、「政府最終消費支出(医療費、介護費、教育費、防衛費など)、及び「公的固定資本形」(公共投資から用地費等を除いたもの)を拡大し、デフレキャップを埋める積極財政を実施すべきなのです。

これが過去に効果が確認された唯一の政府のデフレ対策です。ところが、2014年4月に5%から8%に消費増税してしまったばかりに、民間最終消費支出は2013年度から2014年度にかけて、8兆円も減りました。

物価上昇に給料の伸びが追いつかず、実質賃金も下落し、結果的にデフレへと逆戻りしてしまいました。それどころか2015年には介護報酬を2.27%、診療報酬を1.03%カットしてしまいました。現状では、衆院選挙が終わったと共にさらなるカットをほのめかしている状況です。

財務省は、どこまでも緊縮財政路線です。この路線になかなか抗えないのか現在の安倍政権です。かといって、野党もこの路線に抗うことはできないようです。

それどころか、立憲民主党の枝野代表は、財務省を喜ばせるようなことをロイターのインタビューで、語っています。その記事のリンクを以下に掲載します。
インタビュー:政権交代目指す責任、法人増税が必要=枝野・立民代表
立憲民主党代表の枝野氏
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、このンタビューで、枝野代表は立憲民主党には政権交代目指す責任があることと、法人増税が必要であることを述べています。

枝野氏によれば、法人税増税で企業を叩けば再分配で経済が成長するそうです。これでは、これでは、従来も枝野氏が、利上げをすると経済成長すると述べていたのと同じように、経済に関しては完璧に見当外れと言わざるを得ません。

これでは、国民経済のためには全くなりません。上のブログにるように、増税・緊縮路線をめぐる「官邸」対「自民党税調・財務省連合」という争いには、反官邸という立場に立っているのと同じことです。

国民のことを考えるならば、あるいは野党という立場上、労働者のことを考えるならば、本来は「官邸」側に立つか、あるいはそれができないというのならば、独自の減税・積極財政路線、金融緩和路線をとなえ、「自民党税調・財務省連合」と対峙し、さらには経済政策に関しては官邸や政府よりも良いものを打ち出し、政権交代につないでいくべきです。

しかし、枝野氏にはそれはできそうもありません。そうして、これは他の野党もにたりよったりです。目の前に、大きなチャンスが転がっているのに、それを活用したのは、安倍総理だけです。それも、不十分な金融緩和策を実行したに過ぎません。今はまだまだ、日本経済を回復できる政策は十分に実行されていないという状況です。まだまだ金融政策は、出口政策など程遠い状況です。財政政策は出口すら見えない状況です。そのことに野党は気づくべきです。

今の状況では、確かにブログ冒頭の記事で高橋洋一氏が指摘しているように、「細かな増税策が積み重なると、結局は、財政再建という名の緊縮路線となる恐れ」 が濃厚です。そうして、緊縮財政により日本経済はまた停滞するおそれが濃厚です。

この状況を変えるためには、全国の各地域で、地元選出の議員の先生に、経済を本当に理解してもらうようにすることが必要不可欠だと思います。私はそうするつもりです。皆さんもそのように努力していただきたいです。

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2017年10月21日土曜日

立憲民主党が信念を貫いたら何が起きるか 日本経済はガタガタ、日米間の信頼喪失…もう忘れたか―【私の論評】明日は流行に流されず、印象操作に惑わされず地頭で考えて投票しよう(゚д゚)!

立憲民主党が信念を貫いたら何が起きるか 日本経済はガタガタ、日米間の信頼喪失…もう忘れたか

選挙遊説中にインタビューに応える枝野市
 今回の衆院選(22日投開票)に関する各社の世論調査によると、小池百合子代表(都知事)が立ち上げた希望の党の勢いは完全に失速し、過半数の233議席を狙うどころか、公示前の57議席を割り込むかもしれないという。

   民進党との合流の際、政策が一致しない候補者を「排除」すると小池氏が発言したことが失速原因の1つである。だが、「改革保守」で「改憲政党」を目指すうえで、極端な左派や護憲派を排除することは、代表の当然の義務だ。

  「排除」という強い言葉が、太古の昔から「和をもって尊しとなす」という日本人の感性に反したのだろう。

   カタカナ言葉をちりばめた小池氏の演説は、英語には自信がある私にも意味がよく分からない。具体的な政策論をわざと語らず、けむに巻こうとする不誠実な印象だけが残る。助言できる優秀な側近はいないのか。

   小池氏から「排除」された人々は、枝野幸男元官房長官を代表として立憲民主党を設立した。50議席以上を獲得して野党第一党になる可能性があるという。

    いつも反体制に肩入れする左派メディアは、枝野氏と立憲民主党を「筋を通したリベラル」などと持ち上げている。都知事選や都議選では、小池氏と都民ファーストの会を持ち上げたが、今回は見事に手のひらを返した。

大阪で街頭演説する立憲民主党の枝野幸男代表=7日午後3時19分、大阪市都島区
 手元にある立憲民主党の某候補のビラには「信念を貫く。」と書かれているが、民進党の希望の党への合流は満場一致で決定した。その場で反対しなかったのだから、喜んで合流するつもりが排除されたということだ。この事実を逆手に取り、日本人の「判官びいき」の情緒に訴える作戦へと利用したのか。

   政治は情緒ではなく、事実で判断すべきだ。

   立憲民主党の主要メンバーを見ると、菅直人元首相や枝野氏、辻元清美元首相補佐官、福山哲郎元官房副長官、長妻昭元厚労相など、あの民主党政権、菅政権の中枢だった面々である。

    彼らは「信念を貫いて」民主党政権の政策を作成した。それを3年3カ月にわたって実行した結果、日本経済はガタガタになり、日米間の信頼も地に落ちた。5年前の日本は、彼らが「信念」を貫くほどに国益が毀損(きそん)した。立憲民主党の支持者はもう忘れたのか。それとも彼らが望む「信念」は、日本の国益を害することなのか。

   政治家、言論人、一般人を問わず、二言目には「安倍退陣」を主張する人々は見苦しい自分の姿を鏡で見るべきだ。

   命がけで自分を守る存在に感謝や尊敬せず、文句ばかりいいながら代わりを務める能力も覚悟もない。中二病は中学時代に、左翼への憧憬は30代に完治させないと恥ずかしい。

■ケント・ギルバート 米カリフォルニア州弁護士、タレント。1952年、米アイダホ州生まれ。71年に初来日。著書に『儒教に支配された中国人・韓国人の悲劇』(講談社+α新書)、『トランプ大統領が嗤う日本人の傾向と対策』(産経新聞出版)、『日本覚醒』(宝島社)など。

【私の論評】明日は流行に流されず、印象操作に惑わされず地頭で考えて投票しよう(゚д゚)!

最新の状況については、以下に山村明義氏の動画を掲載します。


詳細はこの動画をご覧いただくものとして、立憲民主党が野党第一党になる可能性がでてきました。50〜60議席をとりそうな勢いです。さらに、改憲勢力は2/3を切る可能性もでてきました。山村市は、東京都民、埼玉県民は流行に流されて、立憲民主党に票を入れる人も多い可能性があるとしています。東京のメディアの偏りについても語っています。

ただし、自民と希望の党の保守派・良識派、維新の党議員を加えると、自公よりも多い337議席くらいになります。これらが協調すれば、憲法や経済などに関して現実的・具体的議論ができる可能性があることも語っています。

上念氏も立憲民主党の脅威について語っています。以下に、それを語る上念氏の動画を掲載します。



上念氏は、立憲民主党は民主党菅内閣とほぼ同じです。また、あの時代にまいもどるようなことがあってはあってはならないです。特に、憲法論議や安全保障に関しては、反対するばかりで何の代案も示すことはないです。北朝鮮の危機が現実のもの隣りつつ現在、これは、許されるものではありません。

自民党は数字で見る安倍政権の成果というチラシを作成し、この五年間の成果をこうまとめています。

「名目GDPが493兆円から、543兆円へ、約50兆円増」「株価が8,664円から、2万397円へ、二倍以上に」「有効求人倍率が0.83倍から、1.52倍へ」。

要するに、経済規模が確実に拡大してきたため、会社の業績が上向き、株価が上がり、会社の資産が増えたため、新規雇用を含む設備投資に踏み切る会社が増えました。設備投資を拡大すれば仕事も増え、有効求人倍率も改善し、仕事をしたい人が働くことができるようになっています。

その恩恵は、全国にも及ぶようになってきており、有効求人倍率は全ての都道府県で初めて一倍を超えました。高卒・大卒就職内定率も過去最高水準となっています。これは、このブログで過去に何度か指摘しました。これこそが、自民党を支持する若者が急増しているのも理由でもあります。

いくら頑張っても就職の内定をとれないと、「ああ、社会は自分を必要としてくれないのだ」と、自分を全否定されたような気分に追い込まれます。その辛さは、高度経済成長時代に就職した50歳以上の人にはなかなか理解できないでしょう。しかし、当の若者や、学校で就職関係の役職についていた教員の方々、企業の人事関係の方々なら、これについては良く知っていると思います。

最近の雇用情勢の大幅な改善について、実感できない方々は、これらの人の話を直接聴くことをおすすめします。様々な生々しい体験・経験を聴くことができるはずです。私自身は、過去には採用にも関わっていたので、その時の経験から良くわかります。

特に、採用した新人から聴いた話はあまりに衝撃的だったので、今でも生々しく記憶に残っています。彼らの学生時代は50歳以上の人たちには、信じられないほど過酷なものでした。それについては、このブログにも掲載したことがあります。採用側としては、良い学生を雇いやすくはあっのですが、会社の業績も良くはありませんでした。

どっちを選ぶかといえば、採用は難しくなっても、景気の良い時代が良いと思います。あの時代にまた、戻ってもらいたくはありません。

第3次安倍改造内閣
若者の雇用環境を劇的に改善することができたのは、第二次安倍政権が掲げた新しい経済政策、アベノミクスによるものです。

2014年に増税という手痛いミスをしてしまったため、GDPはあまり伸びていませんが、それにしても、過去20年間では間違いなく、経済的に最も良い成果をあげたのは、現在の政権です。民主党政権時代の日本経済は、円高・デフレスパイラルのどん底に沈み酷い有様でした。

あのリーマンショックに対する、当時の自民党政権の対応は酷いものでした。結局何もできませんでした。本来、リーマンショックの震源地は、米国であり米国以外で最も大きく影響を受けたのはEUでした。

当時の日本は、株価も低く証券会社の業績も悪く、サブプライムローンなどに大量に投資できるような状況ではありませんでした。そのため、本来はリーマンショックの影響は、日本にとっては軽微なはずでした。

ところが、その後米国やEUが不況から立ち直るため、大規模な金融緩和を始めたにもかかわらず、日銀だけがしなかったので、さらなる円高とデフレの深化を招いてしまいました。(ここでは、詳細は説明しませんが、他国が金融緩和をしているにもかかわらず、ある国だけがそれをしなければ、その国はデフレになり通貨高になります)その結果、日本の経済の立ち直りは米国やEUよりも5年も遅れてしまいました。

その後、政権交代で自民党が下野して、民主党が与党となったのですが、自民党の経済政策を見直すどころか、大枠では踏襲したため、経済は低迷したままでした。そうして、三党合意で増税法案が定められました。

そこに、2012年選挙で自民党が再び与党に返り咲き、2013年4月から金融緩和と積極財政に転じました。2014年には8%増税をするという手痛いミスをしましたが、それでも金融緩和策は継続したため、雇用がかなり改善されました。その他経済指標も上向きつつあります。10%ぞ増税は2019年10月に延期されました。

一方、立憲民進党の製剤政策はといえば、金融引き締め・緊縮・脱成長戦略、と自民党とはまったく異なるいわば財政タカ派政策です。

要は、経済成長をあてにせず金融引き締めと緊縮政策により、国の出費を減らしプライマリーバランス黒字化を目指し、少子高齢化で増大する社会保障費の財源を、経済成長による税収増加では無く増税(消費税・法人税・金融資産税)で賄おうというものです。

社会保障の将来不安が消費を控える原因で、それらが解消されれば個人消費は伸びるという目論見です。しかし、この目論見は全く外れたことが、他でもなく、民主党政権下で見事に実証されました。立憲民主党の経済政策は、リーマンショック時の旧民主党の経済政策と何も変わりありません。にもかかわらず、立憲民進党はこのような経済政策をとろうというのですから、全く反省も何もありません。

一方、消費税については、2019年10月に10%に増税する事は三党合意による消費税増税法案で既に決まっています。これを廃案にしない限り、消費税増税は実施されます。

安倍総理は、リーマンショック級の景気変動が無い限り予定どうりの増税を言明しました。そして増税分の税収5兆円の内、2兆円分を教育子育て支援に充てると発表しました。
そのため、2020年までのプライマリーバランス黒字化断念も同時に表明しました。

立憲民主党枝野代表は、今の経済状況では予定どうりに消費税増税は困難として消費税増税は凍結すると公約に明記しましたが、具体的な数字やタイミングに関しては明言していません。

しかし、2年も先の消費税増税に付いて、このタイミングでの増税の有無や公約になんら信憑性はないでしょう。

この2年の間には、自民党総裁選、参議院選挙、そしておそらくもう一度衆議院が解散され総選挙が行われる可能性も高いと思います。

これまで2度の増税先送りの際にも選挙(参議院選、衆議院選)で国民の信を問い先送りされた経緯があり消費税増税はまだ流動的です。元々私は、消費税増税に関しては、今回の衆院選の争点にはならないとみていましたが、実際そのような動きになっています。

そもそも、現在消費税をあげるあげないと公約で示しても、全く意味がないです。それが意味を持つのは、国会で消費税増税法案をどうするかで決まる筋合いのものであり、現状での公約は単なる口約束、空手形にすぎません。

明日は、投票日です。多くの皆さんが、流行などに流されず、マスコミなどの印象操作などにまどわされず、自らの地頭で考え抜いた上で、投票していただきたいと思います。

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2017年8月17日木曜日

日本経済は今、デフレ脱却まで「もうひと押し」のところにいる―【私の論評】恥知らずの債券村住人の利己主義は排除せよ(゚д゚)!

日本経済は今、デフレ脱却まで「もうひと押し」のところにいる

安達 誠司

   出来すぎのGDP速報値

8月14日に発表された2017年4-6月期のGDP速報値では、実質GDPの季節調整済前期比(年率換算)が+4.0%と、大きく上振れた。7月10日のESPフォーキャスト調査でのコンセンサスが同1.9%だったので、エコノミストの予想をはるかに上回る結果であった。

この「4%成長」の内訳を「寄与度」が高い順にみると、1)民間消費が+2%(伸び率は+3.7%)、2)民間設備投資が+1.5%(伸び率は+9.9%)、3)政府部門(公的資本形成(公共投資)と政府消費の合計)が+1.3%(両方の合計値の伸び率は+5%、公的資本形成だけでは+21.9%)、4)住宅投資と民間在庫変動がともに+0.2%(住宅投資の伸び率は+6.0%)であった。

最近の日本経済は輸出主導で回復しているという印象が強かったが、純輸出の寄与度は-1.1%で、輸出の寄与度が-0.3%(伸び率は-1.9%)、輸入の寄与度が-0.8%(伸び率は+5.6%)であった。

数字上は、輸入の増加は成長率の足を引っ張る方向に作用したことになる(GDP統計上はマイナス項目となる)が、これは、内需が堅調に推移していることの裏返しであるので、むしろ良いことかもしれない。

また、輸出は、2017年1-3月期までは3四半期連続で極めて高い成長を実現していたので、一時的な反動減は仕方ないと思われる(2016年7-9月期、同10-12月期、2017年1-3月期の前期比年率換算の伸び率はそれぞれ、8.8%、13.2%、8.0%)。

このように、今回(4-6月期)は、純輸出を除けば、ほぼ全ての項目で成長が加速するという「出来すぎ」に近い結果であった。

この「前期比年率換算」の数字は、「ヘッドライン」といわれ、メディア等がこぞってニュースとして流すものだが、あくまでも「瞬間風速」という意味合いが強い。そこで、以下、GDPの数字をもう少し長い視点からみてみよう。

   デフレ脱却への「再チャレンジ」

ところで、今回のGDP統計で、非常に「ポジティブ」であったのは、民間設備投資の増加であったと考える。

設備投資動向の見方は色々あるが、設備投資サイクルを見る場合に用いる「投資率(GDP全体に占める民間設備投資のシェア)」をみると(図表1)、実質ベースでは16.0%、名目ベースでは15.9%で、1994年以降のピークにほぼ近い数字となった。


この投資率は、2016年半ば以降、急上昇しているが、設備投資自体の伸び率も勘案すると、今年に入ってから加速していると思われる。2017年4-6月期の内訳はまだ不明だが、1-3月期では、製造業よりもむしろ、サービス業を中心とした非製造業の設備投資拡大が顕著であった。

世間的には、企業による賃上げがデフレ脱却の鍵だと考えるむきがある。実際の安倍政権も企業や業界団体に賃上げを強く求めている。その効果もあり、賃金も上昇傾向にあるのは事実だが、資本主義社会の中で、民間企業が、自社の収益環境を無視してまで賃上げを行うとは考えにくい。そして、現局面で、政府が賃上げを民間企業に強制するのは、逆に企業を雇用を削減する方向に誘導しかねないので、経済政策としても自殺行為に近い。

また、かつては、景気回復局面において、雇用と設備投資は同時並行的に改善してきたが、最近は、雇用環境だけが一方的に加速度的に改善していた。企業にとっては、雇用も設備投資も同じ投資であると思われるが、ここまでの日本経済の現状(極めて緩やかな回復)を考えると、賃上げでさらなる人員確保に走るよりも、そろそろ、出遅れていた設備投資に目を向ける局面に入ってきたのではないかと考える。

図表1をみると、この4-6月期の投資率はちょうど2000年、及び2006年頃の水準に近いことがわかる。この過去のピークの局面では、いずれも、まだデフレ脱却が道半ば(当時は、「かなりいいところ」までは来ていたと思われるが)金融政策が引き締め方向に転換し、せっかく始まっていたデフレ脱却への歩みを頓挫させた。

その意味では、現局面は、過去、何度か失敗したデフレ脱却に向けて、ようやく「再チャレンジ」の入り口に立ったという認識を持つべきではなかろうか。
消費税率引き上げの前に

次に、問題の個人消費の状況である。1994年以降の個人消費(ここでは家計最終消費支出)は、4つの局面に分類できる(図表2)。

すなわち、①1997年4月の消費税率引き上げ前まで、②1997年4月の消費税率引き上げからリーマンショック直前(2008年4-6月期)まで、③リーマンショック直後から2014年4月の消費税率引き上げ前まで、④2014年4月の消費税率引き上げ以降、の4つの局面である。


ここで注目すべきは、③のリーマンショックの影響を除く3つの局面をみると、消費税率の引き上げをきっかけに個人消費のトレンドが鈍化している点である。

ここでの個人消費のトレンドは、その期間における消費の平均的な伸び率を示しているので、1994年以降のデフレ環境の下では、消費税率引き上げは、個人消費を一時的ではなく、中長期的に減速させてきたことがわかる。

今回の個人消費の拡大は2014年4月以降の消費のトレンドから若干上振れてはいるものの、トレンド自体を上方シフトさせるか否かはまだ定かではない。また、消費の内訳をみると、「非耐久消費財」だけがこの4-6月期に急に上振れたことが消費拡大につながっており、一時的である可能性がある。

経済政策面では、2019年10月の消費税率引き上げの是非が重要な論点になっているが、今回の消費拡大をもって、消費税率引き上げの条件が整いつつあると判断するのはあまりにも拙速過ぎるのではなかろうか。

デフレ脱却の道半ばでの消費税率引き上げは、さらに消費のトレンドを下方屈折させるリスクがある。もし、どうしても次の消費税率引き上げを実行したいのであれば、この2年でデフレから完全脱却させるような強力なリフレ政策をとるべきであろう。

   賃金は着実に上昇している

さらにもう一つの重要な論点は、賃金動向である。

GDP統計では、「雇用者報酬」という統計が発表されている。他の賃金データ、例えば、厚生労働省が毎月発表している「毎月勤労統計」や総務省が発表している「家計調査」の所得データは、労働者1人当り、及び1世帯当りの数字だが、「雇用者報酬」は、国内全体で支払われた賃金の合計を示すものといえる。

この「雇用者報酬」の推移を示したのが図表3である。

「雇用者報酬」でみると、日本全体の賃金はメディアが作り上げたイメージに反して、意外と上昇している。「アベノミクスでは賃金の上昇が不十分」という話が日々のニュース等ではまことしやかに流れているが、「雇用者報酬」は、名目ベースでも、2006年の水準を超えているし、実質ベースでも着実に伸びている。

さらにいえば、雇用拡大のペースが加速している点、1人当りの賃金の上昇率が緩やかである点、を鑑みれば、「雇用者報酬」の拡大は、ある一定階層の賃金だけが伸びている訳ではなく、雇用確保(もしくはパートタイマーの正社員化の動きなど)を通じて幅広い階層で所得が伸びていることを意味するのではなかろうか。

以上より、現状の日本経済は、デフレ克服へ「再チャレンジ」する素地が整ってきた段階であると考える。

この先、安倍政権がやるべきことは、ここまでのデフレ解消プロセス(特に雇用回復による一般国民の生活レベルの改善)を内心苦々しく思っているデフレ局面で既得権益を享受してきた階層に妥協することではなく、デフレの完全克服に向けて、財政金融両面でリフレーション政策を再加速することではないかと考えるが、支持率低下に苦慮している政権はどう出るのだろうか。

【私の論評】恥知らずの債券村住人の利己主義は排除せよ(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事の最後のほうで、「デフレ局面で既得権益を享受してきた階層」のうちその最たるものは何かといえば、それは俗に言う「債券村」の人々です。債券村とは、証券会社などの金融機関で債券を扱う人々の集まりです。そうして、これらの人たちは金融機関の中でも少数派なので「債券村」と言われているのです。

債券は、国、地方公共団体、企業、または外国の政府や企業などが一時的に、広く一般の投資家からまとまった資金を調達することを目的として発行するものです。資金調達するために発行するという点では、株式と目的は同じですが、あらかじめ利率や満期日などが決められて発行される点がちがいます。

債券を購入すると、定期的に利率分の利子を受け取ることができます。そして、満期日を迎えると、額面金額である償還金を受け取ることができます。


このように債券は、満期日に額面金額が返金されることが約束されていますので、安全性の高い金融商品です。よって利子収入を目的に資産運用をすることができます。

また2年~10年といったようにあらかじめ決めれた満期日までまつことなく、マーケットで売買することも可能です。マーケットにおける債券の価格は、日々変動しています。途中売却することにより、利子収入以外に、購入価格と償還金との差額金を得ることができることもあります。

債券には、さまざまな種類があります。国が発行する国債、地方自治体が発行する地方債、企業が発行する社債、社債を株式に転換できる権利がついているCB、外国の自治体もしくは、外国の通貨、海外の市場のいずれかで発行する外国債券などがあります。債券は、証券会社を通じて購入することができます。

金融機関では、かなり長引いたデフレで本業の貸出が思うように伸びない中、債券部門が金利低下を背景に収益を支えてきました。債券関係者はデフレ下では自分たちの存在価値があったのですが、デフレを脱却すれば本業の貸出部門が盛り返してくることになります。

債券関係者は、その焦りが出て、乱高下や先行き不安を唱えるますが、それはまさしく経済が良い方向に向かっている証しでもあるのです。

デフレでは債券部門が優勢であったのですが、脱デフレでは主役交代になり、金融機関全体としてみれば収益は上がります。しかも、経済全体でみればいい方向なので、国民全体にとっては良いことです。

現状の債券村の人の意見は本当にずれています。ブログ冒頭の記事のように日本はデフレ脱却まで「もうひと押し」のところまで来ているのは事実です、しかしインフレ目標2%もまだなのに、出口戦略がどうのこうのというようなことを口にします。これでは、デフレから脱却しきっていないうちに、金融引締めをせよといっているようなものです。

全く呆れてしまいます。債券村は、デフレで深刻だった時代に稼ぎ頭だった夢が捨てられないのです。債券村ははっきりいえば、ブラック部門なのです。彼らは、デフレでしか生息できない哀れな人達なのです。

にもかかわらず、マスコミは債券村を擁護するかのように、国債の金利を日銀が抑え込んでいることで、「長期金利が経済の体温計としての指標性を失った」などと報じています。

債券村の住人が扱う債券
しかし、これは典型的な「債券村」の内部の事情に関する話です。つまり、金融機関の債券部門の声をマスコミは拾っているだけなのです。

「債券村」の意見は、日本経済を代表するものではありません。「失われた20年」といわれるデフレ期間に、日本は世界でほぼ唯一、名目経済が伸びず、失業率が高止まりしてきました

この間、日本経済は最悪の状態でしたが、金融機関の債券部門は、金利が傾向的に低下する局面で労せずして債券売却益を享受してきました。このため、金融機関内で稼ぎ頭となって発言力を増し、社内ポジションは向上しました。「債券村」にとってはデフレ期こそ「黄金期」だったのです。

ところが、名目金利はほぼゼロになってしまいました。日銀は国債を購入することで量的緩和を行い、名目金利はゼロのままであるのですが、インフレ予測を高めることで実質金利をマイナスにしています。

デフレが継続していれば、名目金利はゼロのままで、いわゆる「流動性の罠」状態となります。日銀の量的緩和は、実質金利をマイナスにすることに意味があるのですが、「債券村」の住民は名目金利にしか注目せず、ゼロ金利になっているのは日銀のせいだと思っているようです。

確かに、日銀の国債購入で名目金利が抑えられたのですが、日銀が国債購入をしなくても流動性の罠状態では名目金利はゼロのままです。ところが、市場に流通する債券の「玉」が少なく、商売あがったりの「債券村」は日銀に八つ当たりするのです。

債券村の人は債券市場が崩壊した等と言いますが、それは彼らが投資で利益を得られなくなったというだけであり、国民生活には良い影響が出ていることを指摘させてもらいたいです。

債券村の住人はデフレを維持することで債権市場から利益を得続けることができるわけですが、経済政策は国民生活のためにあるものであり、一部の業界の利権を維持するためにあるのではありません。これを覆い隠すためにトンデモ論として有名な「デフレ人口減説」まで持ち出してくるとはまったく恥を知るべきでしょう。利己的であるにも程があります。

デフレからの本格的な脱却は生半可な努力ではできません。その意味で、名目ゼロ金利は当分の間、継続するでしょう。世間が失業率の低下により、新卒者を中心として雇用環境が改善されているにもかかわらず、その間、「債券村」の住民は文句を言い続けるのでしょう。

デフレの失われた20年間、世間とは逆に利益を得てきたのですから、ここ数年彼らは日本経済のために我慢すべきではないでしょうか。ましてや、債券村の住人の理不尽な主張に屈して、デフレ脱却を断念するようなことがあってはならないです。

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2017年4月30日日曜日

民進党が没落すればするほど、日本経済が「命拾い」する理由―【私の論評】自民党は人の振り見て我が振り直せ(゚д゚)!


「シロアリ演説」を覚えていますか?

 ひとり、ふたりと辞めていく

民進党代表である蓮舫氏の求心力の低下が止まらない。

4月10日に長島昭久元防衛副大臣が離党届を出したのに続き、13日には細野豪志氏が代表代行を辞任する決意を固めた。

蓮舫氏は7月に控える都議選に向けて、共産党と共闘する姿勢を崩さないが、これに対して長島氏と細野氏は強い反感を抱いたのだ。

民進党の支持率は今年に入ってひとケタ台で低迷していて、「自民一強」体制はますます色濃くなってきている。

振り返れば、民主党時代の'12年も消費増税をめぐって党内がバラバラになり、勢力を落とした。今回もまるで同じ様相を呈しているが、民進党は仮にも野党第一党だ。民進党の「没落」は、今後の政局および日本経済にどれほどの影響を与えるのだろうか。

民主党時代の消費増税騒動のとき、当時の首相は野田佳彦氏であった。

その野田氏は政権交代選挙となる'09年8月の衆院選の街頭応援演説において、有名な「シロアリ演説」をしている。

天下り官僚をシロアリにたとえて、「シロアリを退治しないで増税はおかしい」と宣言した。さらにこの演説では、「マニフェストは命がけで実行する。書いてないことはやらない」とも言った。

野田佳彦氏の有名な「シロアリ演説」 写真はブログ管理人挿入以下同じ
ところが政権交代後、野田氏はすっかり変わってしまった。

鳩山由紀夫政権で藤井裕久財務相の下で副大臣になったのだが、実はこのとき、財務省OBである藤井氏が後輩の財務省官僚に対して野田氏を「財務省色に染めろ」と指示。結果、野田氏は完全に財務省の操り人形になり、「シロアリ演説」での意気込みはどこかへ飛んで行ってしまったのだ。

かくして党内の意見がバラバラになった民主党は政権を手放すことになるが、その「戦犯」の一人は野田氏であり、その野田氏がいま民進党の幹事長を務めていることからも低迷の理由は推して知るべし、である。

 日本経済は命拾い

もともと民主党が仕込んだ消費増税は、自民党に政権交代したあとに実施された。

'14年4月、税率は5%から8%になったが、10%への再増税はすんでのところで止まっている状態だ。'14年の増税は、日本経済にとっては爆弾が爆発したようなもので、アベノミクスで上げ調子の兆しがあった景気が一気に停滞した。

もし再増税という「2発目の爆弾」が立て続けに爆発していたら、日本経済はとっくに沈没していたかもしれない。

民進党は依然として、財源の確保に増税は不可避であるとの方針を持っているが、いまの蓮舫代表・野田幹事長の体制で民進党が勢いを取り戻したら、2発目の爆弾が炸裂するのは秒読みとなる。

逆にいえば、民進党の分裂が進むだけ再増税の可能性が減り、日本経済は「命拾い」することになる。

今後の政局を見るうえで気にかかるのはマスコミの動向である。

新聞を中心とするマスコミのなかには、消費増税に関して賛成の立場を取るものもある。というのも、増税が達成されれば、新聞への軽減税率が適用されることになるからだ。

だからマスコミは「野党分裂」の現状よりも「自民一強」を強調することで、消費増税の議論を読者の目につかないようにしているふしがある。マスコミがやたらと野党を持ち上げているような報道が出たときは、一歩引いて見たほうがいい。

【私の論評】自民党は人の振り見て我が振り直せ(゚д゚)!

野田佳彦氏の有名な「シロアリ演説」の動画を以下に掲載します。



この演説素晴らしいです。現在聴いても素晴らしいです。この演説の通りの政策を実行したら、今頃民主党は未だ政権の座についていたかもしれません。そもそも、一部のパヨクを除く多くの一般国民はまずは経済がまともであれば、政府に対してさほど不満はいだきません。多少悪かったにしても、さほどではないならば、許容します。しかし、経済が悪ければ他がどのように良くても、許容しません。

さらに、野田氏は当時の民進党の中では、保守派とみられた人です。2012年、10月14日に海上自衛隊の観艦式に出席した当時の野田総理大臣は、自衛官に向けた訓示の中で、「一層奮励努力」等の旧日本海軍が第二次世界大戦前に使用した用語を用いていました。観艦式は神奈川県沖の相模湾で行われ、護衛艦「くらま」に乗艦した首相らが、艦艇の洋上パレードや潜水艦の潜航浮上などを観閲しました。

これは、当時の中国に対しては、かなりの脅威でした。何しろ、この観艦式には実質空母と言っても良いような、「ひゅうが」が参加していました。

これは、ヘリコプター搭載護衛艦(DDH)と呼ばれる艦です。最大積載機数は11機です。これは、当時というか現在でもまともな「空母」を作ることができない中国にとっては、かなりの脅威でしたし、さらには旧海軍の用語も用いた当時の野田総理の旧帝国海軍の用語を用いた訓示は、中国にとっては日本海軍の復活を想起させ、かなりのプレッシャーを感じていたはずです。

まさに、この動画の通りの政策をしていたら、野田政権は長期政権になった可能性すらあります。

しかし、そうはなりませんでした。それは、野田氏がすっかり財務省色に染まり、その結果、野田氏は完全に財務省の操り人形になり、「シロアリ演説」での意気込みがどこかに飛んでしまったからに他なりません。

デフレの最中に、消費税増税は経済政策として、悪手中の悪手であることは言うまでもありません。これについては、ここでは詳細は説明しません。これについては、以下の記事をご覧になって下さい。
1000兆円の国債って実はウソ!? スティグリッツ教授の重大提言―【私の論評】野党とメディアは、安保や経済など二の次で安倍内閣打倒しか眼中にない(゚д゚)!
ノーベル経済学賞受賞のスティグリッツ教授
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事ではスティグリッツ氏が「国の借金が1000兆円ある」という主張を鵜呑みにしてはいけないと警告していることを掲載しました。

この記事には、他の記事のリンクも含んでいます。これらの記事も読んでいただければ、日本政府の借金は、政府の資産を考慮に入れ、さらに日銀をも含む連結決算でみれば、今年からは、借金どころか黒字になり財政再建は終了するであろうことが理解できます。

この状況では全く増税する必要はないばかりか、8%増税を実施した2014年度にもその必要性はなかったことがご理解いただけるものと思います。

野田氏の財務省色への染まり具合は相当酷いものがあります。その実体を示すような内容もこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
臨時国会も安倍政権VS財務省 民進党の本音は消費増税優先か―【私の論評】元々財務省の使い捨て政党民進党にはその自覚がない(゚д゚)!
参院本会議で、民進党の蓮舫代表の代表質問を
聞く安倍晋三首相(左奥右)=昨年9月28日午前
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、いかに野田佳彦氏が財務省色への染まったているかを示す部分のみ以下に引用します。

"
民進党と財務省といえば、民進党が民主党だったときの民主党政権の最後の、2012年の野田総理による衆院解散に関して、当時みんなの党の代表であった渡辺喜美氏が会見で興味深い話をしていました。その動画を以下に掲載します。



この動画の7:30あたりのところから、渡辺氏が記者になぜこのタイミングでの解散になったのか、問われて以下のように話しています。
「これは、財務省の路線そのものなのであって、とにかく新製権で、予算編成をしたいと・・・。旧政権でつくった予算をグタグタにされるのは困るという財務省の路線が、そっくりそのまま、野田総理を動かしたというだけのことですね。 
党首会談をやったときに、もう自分は財務省に見放されているということを、はっきりと言っていました。その見放された総理が、最後まで財務省路線に乗っからざるをえないと、まあー、非常に情けない内閣ですね」。
民主党政権時代には事業仕分けなど実は民主党時代のかなりの政策が、財務省によって計画され実行されたものです。民主党政権時代には、財務省がすすめたものは、何とか前進することができましたが、その他の政策はほとんどが頓挫したため、民主党政権は3年3ヶ月漂流していたようなものだと批判する人も大勢います。

現在の民進党も、民主党時代のように財務省におんぶに抱っこという姿勢はあまり変わっていないようです。それは、蓮舫代表をはじめとして、党幹部の全員が10%増税に賛成なことでも十分にうかがえます。

上の高橋洋一氏の記事では、「民進党は依然として、財源の確保に増税は不可避であるとの方針を持っているが、いまの蓮舫代表・野田幹事長の体制で民進党が勢いを取り戻したら、2発目の爆弾が炸裂するのは秒読みとなる」としています。

現在の民進党でまともな経済観を持っているのは、馬渕議員だけです。実は、もう一人金子洋一氏もまともな経済観をもつているのですが、残念ながら直近の参議院選挙で落選してしまいました。

自民党ですら、安倍総理と一部の側近とその他のほんの一部の議員だけが、まともな経済観を持っているのですが、その他は民進党の議員とさほど変わりません。だから、こそ安倍総理大臣自信は8%増税には反対だったにもかかわらず、財務省をはじめ与野党の議員のほとんどが8%増税推進派であったばかりか、マスコミから識者まで諸手を挙げて推進しました。

しかも、彼らは8%増税しても日本経済への影響は軽微であるとしたため、安倍総理は8%増税を決断せざるを得なくなり、実施した結果が大失敗でした。


2014年4月に行われた8%増税の影響で、日本経済が大打撃を受けてました。1997年の増税時と比較してみると、倍以上も消費が落ち込んだのです。これはかつて無いほどの事態で、リーマンショックや東日本大震災というような外的要因を除けば、戦後史上最悪の値となりました。その後も、個人消費は十分に回復せず、GDPの低迷は続いています。

これに不信感を抱いた安倍総理は以降、10%増税は絶対にしないという方針で臨んでいます。

しかし、以上にあげたように現在の自民党の状況は、安倍総理とその側近と一部の議員だけが増税に反対であり、その他の議員は、民進党の愚鈍な議員と同じく増税推進派です。無論、安倍総理が増税反対なので、内心は増税賛成なのですが、安倍総理に従っているだけです。

このままでは、ポスト安倍とはいっても適切な人材が存在しません。自民党の議員らも、現在の民進党の危機的状況はどうして発生したのか真摯に受け止め、勉強し、まとも経済観を持つか、それができないまでも、こと経済に関しては、予測が当たっていない財務省や官僚の言うことなどは無視して、とにかく過去の経済予測があたっている人の意見を尊重するようにすべきです。

そうでないと、いつ自民党も民進党と同じく衰退するかわかりません。実際、自民党は民主党に政権交代されているではありませんか。第一次安倍政権の時にも、経済を重視しなかったために、安倍政権は崩壊しました。

その時のことを真摯に反省した安倍政権は、第二次安倍政権では経済を最優先させています。

今のまま、安倍総理が辞任したとしてら、たちまち自民党も衰弱します。おそらく、また短期政権が何度か続き、政権交代前の民主党のように、10%増税はしない、官僚を退治することを主張する政党に負け再び下野することになります。

まさに、今の自民党は人の振り見て我が振り直せという格言を思い出すべきなのです。

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2016年7月22日金曜日

日本経済に打撃を与えた日銀「ダメな会議」 首相は10年前に“目撃“していた―【私の論評】政策決定会合に馬鹿な会議をやらせないために、日銀法を改正せよ(゚д゚)!

日本経済に打撃を与えた日銀「ダメな会議」 首相は10年前に“目撃“していた

量的緩和政策を解除した金融政策決定会合後、記者会見する福井俊彦・日銀総裁 (2006年3月9日)
 日銀は2006年3月8、9日の金融政策決定会合で量的緩和政策を解除した。性急にマネタリーベース(日銀が供給する通貨)を減少させた結果、リーマン・ショックを迎える前の段階で、日本経済は伸びなくなっていた。

 この失敗は、海外の中央銀行ではよく研究されている。06年1~6月の決定会合の全発言を記録した議事録が公表されたことで、その失敗がどのように決定されたがわかる。

 量的緩和を解除するかどうかの大きな判断材料となったのが、総務省が所掌する消費者物価統計(全国、除く生鮮食品)だが、06年1月の数字は3月の政策決定会合の前に公表され、前年同月比0・5%だった。問題はこれを、解除の条件となる「安定的にゼロ%以上」とみるかどうかだった。

 筆者は当時、総務大臣補佐官を務めていた。消費者物価統計は5年ごとに改定されるが、その年の夏には改訂作業を行う予定だった。この改訂作業は、各品目のウエートを消費家計調査などから見直すというものだ。

 その夏に行う作業の大半は3月時点で分かっているので、改訂の結果、1月の0・5%がどのように見直されるかは予測ができた。筆者の見立ては、改訂によって0・4~0・5%程度下がるというものだった。

 これがいわゆる物価の「上方バイアス」である。価格の高いモノは消費が抑制されるが、物価統計では過去の高いウエートで計算されるので、見かけの物価が高く算出される。

 筆者は、1月に0・5%といっても安定的にゼロ以上とはいえないと当時の竹中平蔵総務相に訴えた。竹中氏は量的緩和解除に反対し、中川秀直自民党幹事長も反対だった。当時の小泉純一郎政権内では、与謝野馨経済財政相が賛成だった。

 結果として、日銀は量的緩和を解除した。その様子を見ていたのが、当時の安倍晋三官房長官だった。後日、安倍氏は「高橋さんたちが正しかったね」と話していた。

 ちなみに、消費者物価は、その夏に改定され、1月の数字はプラス0・5%からマイナス0・1%になった。

 筆者は、06年3月の政策決定会合の様子について、政府内にいたので知っていたが、正式な議事録が公表されていなかったので言及できなかった。今回、議事録が公表されたので、はっきり言うことができる。当時の決定会合では、消費者物価の1月の数字について、誰も疑問を呈していなかったのだ。これは「ダメな会議」の典型である。

 筆者は当時、1月の数字がプラスとはいえないことを竹中総務相を通じるなど、あらゆるチャンネルで政府内はもちろん日銀にも伝えた。消費者物価統計を所管する立場であれば当然のことだ。しかし、はじめに結論ありきだったのだろうか、ことごとく無視されていたことが、議事録で確認できる。

 議事録では、早川英男調査統計局長が「しばらく前に私どもは今回基準改定の影響は0・1%~0・2%であろうと申し上げた」とあるが、結果として的外れだった。

 この失敗は日本経済に打撃を与えたが、安倍首相が何が正しかったのかを知るよい教訓となったことが救いだった。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】政策決定会合に馬鹿な会議をやらせないために、日銀法を改正せよ(゚д゚)!

上の記事で、2006年当時の状況ならびに、馬鹿な会議と高橋洋一氏が呼んでいるその内容議事録を掲載します。
日銀は2016年7月15日、2006年1月から6月に開かれた金融政策決定会合の議事録を公表しました。当時は物価がマイナス圏からプラスに浮上し、株価も上昇、2001年に始めた量的緩和政策をいつやめるかが焦点でした。 
米国経済の減速懸念などもあるなか、政府からは当時の安倍晋三官房長官を中心に早期終了を強くけん制する声が出ていましたが、福井俊彦総裁らが早期終了にまい進する姿が浮き彫りになりました。 
当時の日銀は現在と同様、金利ではなく日銀のバランスシートを増減する量的緩和政策を行っていました。現在と異なり満期の短い金融資産の買い入れが主体だったのですが、政府の為替介入と平そくを合わせたことで円安・株高を演出する効果が評価されていました。 
もっとも、2004年の追加緩和で目標額を30兆─35兆円に引き上げた後は、追加緩和の限界も意識され、政策の方向転換が時間の問題となっていました。 
当時も政策運営の目安であった消費者物価指数(生鮮食品を除く、コアCPI)は2005年2月に前年比0.4%のマイナスまで落ち込んでいたのですが、05年10月以降ゼロ%近辺で安定し始めていました。物価のプラス転換も量的緩和解除の議論を勢いづかせていました。 
<海外からの円安けん制、福井総裁が指摘> 
1月の会合で福井俊彦総裁が「国際会議に出ていて感じることは、円の為替相場が安くなり過ぎると、これを単純にエンジョイするのかというような感覚は、そこはかとなく共通の認識となっている」と発言していました。 
量的緩和は円安誘導策との批判が海外で出ていることを暗に伝えているような発言がありました。円安を背景としたキャリートレードに関し、高金利国から「迷惑がかっている」と言われていたことも指摘しています。 
もっとも株式市場では1月、証券取引法違反容疑で、東京地検特捜部がライブドア本社などに強制捜査に入ったことを受けて株価が暴落。政府側は拙速な量的緩和終了をけん制していました。 
量的緩和終了に踏み切った3月の会合で、政府側出席者の赤羽一嘉・財務副大臣は「デフレに逆戻りすることがないよう責任を持って、金融面から経済を支えていただきたい」とクギを刺しています。 
ただ、日銀の福井総裁は「株がおかしくなりそうだから、量の調節を手加減するという概念はないのではないか」と強気の姿勢を示しました。 
もっとも政策委員の中でも「日銀は元々余裕を持って対応すると言ってきたのに、なぜそんなにここにきて急ぐのかという声があるのは事実。市場との対話が必ずしも円滑に進められてきたとは言い難い」(中原真委員)と、緩和解除は時期尚早との異論も出ました。 
<解除で非難浴びる覚悟必要━福井総裁> 
日銀が苦慮したのが、市場との対話でした。市場が4月末会合での量的緩和解除を織り込む中、福井総裁らは2月会合で、3月終了を織り込ませようと苦慮していました。「市場の期待形成に気になる点がある」「少なくとも4月まで解除はないと取られるような発言は、慎むべきである」(須田美矢子委員)との声が出ていました。 
福井総裁は「マーケットで予断をもって臨んだ人が損をした結果、我々に非難を浴びせるが、そのコストは我々が被るという覚悟は、ある程度必要でないだろうか」(2月会合)と述べ、リスクを伴う決断に踏み切る姿勢をにじませていました。 
<インフレ目標導入圧力に苦慮> 
日銀は3月会合で量的緩和解除と同時に、その後の政策運営の指針として望ましい物価の水準を「中長期的な物価安定の理解」として公表しました。
現在の黒田日銀が掲げる物価安定目標の遠い祖先です。当時の日銀関係者の多くは一度掲げると政策運営を自動的に縛るとして警戒。妥協策として「理解」が誕生する様子が浮かび上がります。 
委員らの間では、量的緩和終了後の金利形成に指針を与えるために「望ましいインフレ率について、事実上ある種のコンセンサスが必要」(中原真委員)との意見が増えました。 
しかし、須田委員は、物価目標を掲げても金融政策は最終的に総合判断が必要と強くけん制。「増税や歳出削減が難しいとなると、政治的なそれをインフレタックスに求めがちである。そうすると政治サイドから出てくる物価目標は、自ずと高いものになりがち」(2月会合)と、物価目標の提示と政治サイドからの「情報発信」による複雑な現象を分析するような発言もありました。 
<妥協の産物『物価安定の理解』に異論百出> 
委員らの間で望ましい物価水準が異なることも、議論を複雑にしました。西村清彦委員は0.8%プラスマイナス0.5、岩田一政副総裁が1─2%、水野温氏委員が0.5%ぐらい、中原真委員が1─2%ただし当面スタートとしては0.5─1%ぐらいを挙げました。須田美矢子委員は「中長期的に見て物価が安定していると理解する物価上昇率の中心値はゼロに近いプラス」としていました。 
福井総裁も「数値というのはなかなか皆さん幅があって、一文では表しがたいところがある。ゼロ─2%ということであれば、各委員のご理解の範囲と非常に大きく離れているということはない」としたうえで「わたしはやはりゼロ─2%。少し絞れば0.5%─1.5%。中心値は1%以下である」。武藤敏郎副総裁は「私自身はゼロ─2%といっても、ゼロと2%を含まないイメージ」「1%前後で分散しているぐらいは言わないと、せっかくやるにしてはあまりに透明性が低過ぎないか」と総括しました。 
「物価安定の理解」との表現をめぐっても、異論が百出しました。福井総裁は「これはターゲットではないし、ルール・ベースのマネタリー・ポリシーをやる訳でもなく、新しいものだということを伝えなければならない」と力説しました。 
だが、「理解という名前、少しわかりにくい。できれば『望ましい物価上昇率』という言葉が使えればよい」(春英彦委員)、「『理解』という言葉の意味が、そうでなくとも分かりにくい。せっかく公表したものの、持つ意味がかえって市場等に混乱をもたらしてしまうのを避けなければならない」(須田美矢子委員)など異論が飛びかいました。 
<きっとうまくやれる─福井総裁> 
量的緩和解除で警戒された金融市場の大きな混乱は回避されたものの、その後の市場の関心は、ゼロ金利解除のタイミングと利上げペースに集中しました。景気が日銀の見通しに沿って回復を続ける中、日銀が「極めて低い金利水準による緩和的な金融環境を当面維持できる」と強調しているにもかかわらず、市場の思惑は広がっていきました。 
早くも06年度内に複数回の利上げを織り込むなど、中期ゾーンまでの金利が不安定化し、長期金利も上昇。量的緩和解除後で初めてとなった4月10、11日の会合では「やや過剰な織り込みだ。今後の市場との対話によって、場合によっては修正する、あるいはそもそも対話の姿勢を極めて慎重なものとする必要がある」(中原委員)など市場とのコミュニケーションに苦慮する委員の様子がうかがえました。 
こうした議論を踏まえ福井総裁は「きっとわれわれは、うまくやっていける」と述べました。 
その後は、日銀による慎重な情報発信の徹底が奏功し、市場の過度な織り込みは沈静化に向かいました。 
一方で景気回復が続き、当座預金の超過準備の縮減が順調に進む中、ゼロ金利解除を意識した発言も出始めました。 
5月18、19日の会合で、須田委員は「展望レポートのシナリオから下振れているということでなければ、その時にはすぐにゼロ金利を解除するのが望ましい」と言及。 
次の6月14、15日の会合で、水野委員は「経済のファンダメンタルズからみれば、7月を待たずに今回の決定会合でゼロ金利を直ちに解除できる要件は整っているように思う」と発言。0.25%の利上げに踏み切る7月会合に向けて、環境が整備されていきました。
結局のところ、ブログ冒頭の高橋洋一の記事にもあるように、 物価の「上方バイアス」を無視した結果、当時の日銀政策決定会合では、消費者物価の1月の数字について、誰も疑問を呈していなかったのです。これは本当に「ダメな会議」の典型です。

そうして、以上からわかるように、福井総裁は量的緩和解除に邁進していたことが良くわかります。

そうして、日銀は日本経済がまだ、完璧にデフレから脱却していないにもかかわらず、デフレから脱却したものと判断して、金融緩和を打ち切りとんでもないことになりました。

福井総裁の後は、ご存知のように白川氏が、日銀総裁となりましたが、白川も福井総裁とかわらずどころか、量的緩和解除どころか、何が何でも、金融引き締めをするという方針を貫き通しました。

そのおかげて、日本経済はせっかく2006年当初には、景気が良くなりかけていたにもかかわらず、デフレスパイラルの泥沼に陥り、国内でモノは売れず、国外では超円高で、輸出企業が大変目にあいました。

そうして、2008年にはあのリーマン・ショックを迎えることになります。リーマン・ブラザーズの破綻により、アメリカやEUなどは景気が停滞しました。しかし、これらの国々では、中央銀行がこれに対処するため、徹底した金融緩和策を実行しました。

そのため、米国はリーマン・ブラザーズの破綻による影響を直接蒙り、EUも米国のサブプライムローンなどかなり取引をしていたので、かなりの悪影響を受けにもかかわらず、徹底した金融緩和のおかげて、比較的早く立ち直ることができました。


しかし、他国が量的緩和をするなか、日銀は量的緩和解除の姿勢を変えることなく、何もしなかったため、さらにデフレ・円高が進行し、日本経済はとんでもない状況に陥り、他国にはない和製英語であるリーマン・ショックという言葉が用いられることになりしまた。世界の中で、このショックから一番遅く立ち直ったのは、日本という有様でした。

日本では、当時証券会社などで、サブプライムローンなど扱うような余裕もないくらいだったので、本当は一番影響が少ないはずでした。にもかかわらず、リーマン・ショックという和製英語がつくられくらい、その悪影響をもろに被りとんでもないことになりました。

もし、リーマン・ブラザーズが破綻した直後に、他の国々が金融緩和に走る中、日銀も大規模な金融緩和を実行していれば、多少経済が停滞したにしても、リーマン・ショックと呼ばれる程の痛手を被らなくてもすんだと思います。

そのため、私はリーマン・ショックという言葉を用いるのは適当ではないと考えたため、このブログでは、リーマン・ショックではなく日銀ショックと呼ぶことにしています。このことについては、以前のこのブログに掲載したことがあります。

2008年リーマン・ブラザーズ破綻 取り外された看板
私自身は、確かに2006年当時の日銀金融政策決定会議は、ブログ冒頭の記事で高橋洋一氏が述べているように馬鹿な会議だと思います。

とはいいながら、人間とは間違うこともあるものです。しかし、2006年で判断ミスをしたとしても、2008年にサブプライムローンの破綻によるリーマン・ブラザースの破綻の直後他国が気合を入れて、金融緩和に走った後まで、大規模な金融緩和に踏み切らなかったことは本当に愚かだと思います。

そうして、そのような決定をさせなかったのは、無論当時の日銀政策決定会議の結論です。これこそ、本当に大馬鹿会議です。

このようなことは二度と繰り返すべきではありせん。そもそも、日本では、日銀法が改悪され、日本の金融政策の目標が大馬鹿会議であった日銀政策決定委員会という会議で決定されるというのが異常です。

どんな時でも、金融引き締めの姿勢を崩さなかった白川前日銀総裁
これは、あくまで政府が決定するべきです。実際、他国では中央銀行や中央銀行の委員会で自国の金融政策の目標を定めることはありません。目標を定めるのは、あくまで政府であり、中央銀行はその目標を実現するため、専門家の立場から、方法を自由選べるというのが、標準です。

そうして、他国では、中央銀行が専門家的立場から、政府が決定した金融政策の目標を実現するために、自由に方法を選ぶことができるというのを、中央銀行の独立性としています。

しかし、日本では、なぜか日銀が日本国の金融政策の目標を定めることになっています。これは、異常です。

今後、これを改め、日本国の金融政策の目標は、あくまで国民によって選ばれた、議員による政府が定めるようにすべきです。

そうでなければ、馬鹿な会議をした過去の政策決会合のように、また馬鹿な会議をして、愚かな決定をすることもあり得ます。

それだけは、絶対に避けるべきです。そのために、日銀法を一日も早く改正すべきです。

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2016年5月6日金曜日

日本経済は後半に回復する 増税スキップ&大型景気対策で中国・EUの不安払拭―【私の論評】殺人政策である10%増税見送りは当然!まともな経済対策で日本は再度成長軌道に乗る(゚д゚)!


8%増税は実施直後から大失敗であったことが明白になっていた
昨年末の本コラムの特別号で、今年の経済見通しについて、「年前半は経済の調子が悪いが、7月の参院選の前に消費増税はスキップして大型景気対策を実施するだろうから、年後半には回復する」と書いた。

筆者のメーンシナリオに変更はない。4月の熊本地震という想定外の事態によって、衆参ダブル選挙の可能性は遠のいた。ダブル選なら7月10日しか実施可能日はないが、さすがに熊本地震から3カ月もたたずに実施するのは被災者感情や選挙の事務作業から考えても難しい。

ダブル選でなければ、7月24日に参院選を行えばよく、それなら実施可能な日程ではないか。

いずれにせよ、参院選で、消費増税スキップと大型景気対策について国民の信を問うことに変わりはない。むしろ、熊本地震の補正予算を今国会中に仕上げて、伊勢志摩サミット後に国会を閉じ、参院選を7月24日に行うというスケジュールがより具体的になってきたといえるだろう。

熊本地震に加えて、世界経済の不透明感もあるので、消費増税スキップについては、もはや誰も疑わない既定路線と化しつつある。

中国は相変わらず国内総生産(GDP)統計を粉飾しているようで、もう誰も7%成長していないことを知っている。

英国では6月に欧州連合(EU)離脱の是非を問う国民投票が行われる。もし離脱すると、貿易自由化や資本取引自由化の恩恵を受けられなくなり、金融業界をはじめとする産業競争力を落として雇用が激減、経済は壊滅的になる-という意識が人々に広がっている。このため英国のEU離脱の可能性は高くはないが、EU残留を主張するキャメロン首相がパナマ文書問題で政治的にイメージダウンしているので予断を許さない。

年後半には米国の利上げが待ったなしだ。米連邦準備制度理事会(FRB)は世界経済の状況を見て、利上げを急がないスタンスであるが、米国の国内雇用情勢はほぼ完全雇用状態になりつつあるので、いずれ利上げせざるを得なくなる。

米大統領選は、民主党のヒラリー・クリントン氏と共和党のドナルド・トランプ氏の戦いになる可能性があるが、予備選と本選で両者の主張が変化するかどうかがポイントである。特に、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)については両者ともに否定的なスタンスであり、本選でも続くと、TPP交渉がご破算になる恐れもある。そうなると、日本にとってはもったいない話だ。

米国でTPPに否定的な意見が多いのは、逆にいえば日本がうまく交渉してメリットが大きいと考えたほうがいい。

こうした海外の不確定要因に左右されないためには、内需拡大が必要だ。日銀の追加金融緩和と伊勢志摩サミット後の消費増税スキップ、大型景気対策がそろえば、年後半の景気は持ち直すだろう。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】殺人政策である10%増税見送りは当然!まともな経済対策で日本は再度成長軌道に(゚д゚)!

上の高橋洋一氏の記事、まったくこの通りです。10%増税見送りは、当然のことです。これを逃せば、8%増税などはるかに上回る、経済の停滞を招くことはあまりにも明らかです。これは、高橋洋一氏が主張するように、最早規定路線です。

もしそれでも実行した場合には、日本経済は破綻し、安倍政権は崩壊します。そうして、10%増税したままでそのまま放置すれば、自民党政権崩壊で、自民党は再び下野することになります。その後は、自民党も弱小政党に成り下がり、当面多数の少数制等が乱立することになり、どの党が政権をとったにしても、長続きせず短命政権に終わることでしょう。

日本は、経済的に停滞するだけはなく、政治的にも、文化的にも大きく停滞し、その破壊力はとどまるところを知らず、日本をかなり弱体化させてしまうことになります。これは、決して脅しでもなんでもなく、10%増税を来春に実行すれば、そうなります。

だからこそ、高橋洋一氏も10%増税見送りもしくは凍結は、「もはや誰も疑わない既定路線と化しつつある」と主張しているのです。こんなときに、増税をすべきという政治家、アナリスト、学者、マスコミなどは、一言でいえば「愚鈍」と言われても、やむを得ないです。事実、愚鈍です。いや、もっとはっきり言わせていただければ「人殺し」です。なぜなら、10%増税などすれば、経済苦を理由に自殺する人が増えます。経済政策の如何によっては、人は死ぬのです。

これについては、以前このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【正論】「欲ない、夢ない、やる気ない」……現代日本の最大の危機そのはこの「3Y」にある 作家・堺屋太一―【私の論評】団塊の世代以上の世代には想像もつかない現代の若者の窮状(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、『経済政策で人は死ぬか』という書籍を紹介させていただきました。その部分のみ以下に引用します。

"
さて、ここで、一冊の書籍を紹介させて頂きたいと思います。
経済政策で人は死ぬか?: 公衆衛生学から見た不況対策

この書籍には、経済政策と死者数と間の相関を調べた内容が記載されています。

さて、日本では、現在アベノミクスの是非が話題になっています。世界中どこでも、不況に陥ると経済政策をどのようにするべきか、議論されます。しかし、結局のところ、どのような政策がいいのでしょう。そして、その決断を、イデオロギーや経済理論だけを頼りに行って、本当に良いのでしょうか。

世界規模の不況に陥ったとき、国ごとに経済政策は異なり、それによって国民の運命も異なる方向に動かされてきました。公衆衛生学者と疫学者である本書の著者は、そのことを利用して政策の優劣を比較しました。つまり、過去の各国の政策選択とその結果のデータを、世界恐慌からソ連崩壊後の不況、アジア通貨危機、そしてサブプライム危機後の大不況まで調査し、比較したのです。

比較の指標は、国民の生死です。政策の違いによって、国の死者数は増えたのか減ったのか、健康状態や平均寿命などがどう変化したかを比較しました。経済政策は、国の借金返済や構造改革、景気刺激など、さまざまな目的で行われますが、そもそも国民に死を強いるようでは元も子もありません。結果はどうだったのでしょうか。

著者らの研究によれば、不況下で危険な「緊縮政策」を選択した影響で増加する死亡数は、まさに驚くべきものです。最も悲惨なのは、ソ連崩壊後のロシアで、1990年代に経済政策の失敗により数百万人の男性が死んだ(主に自殺とアルコール関連の死亡)と考えられるといいます。


アジア通貨危機後にIMFに緊縮財政を強いられたタイでは、感染症対策支出を削らされたせいで、感染症による死亡率が大幅に上昇しました。現在、緊縮財政をとっているギリシャでは、これも対策費の削減によりHIV感染が拡大しているほか、医療費カットで医療制度が崩壊し国民の健康状態はひどく悪化しています。

著者たちは次のように述べています。
民主的な選択は、裏づけのある政策とそうでない政策を見分けることから始まる。特に国民の生死にかかわるようなリスクの高い政策選択においては、判断をイデオロギーや信念に委ねてはいけない。…正しくかつわかりやすいデータや証拠が国民に示されていないなら、予算編成にしても経済政策にしても、国民は政治家に判断を委ねることができない。その意味で、わたしたちはこの本が民主化への第一歩となることを願っている。
私は、本書をきっかけに、政策論争がイデオロギーを離れ、経済理論だけではなく、現実のデータに基づいたものになることを願っています。
"
経済政策がまずければ、死ななくても良い人まで死ぬのです。だからこそ、10%増税は絶対に見送らなければならないのです。

だから、10%増税は当たり前として、その上何をするかというのが次の政策課題になるのです。

そうして、その政策課題はどのようなものにすべきかは、このブログでも何度か掲載してきました。そうして、それは私が思うだけではなく、多くのまともな経済通が当然のこととする政策でもあります。以下にそれを再び掲載します。そうして、これを掲載したときとは、状況が少し異なるので、さらに追加の説明を行います。

1.追加緩和

2%の物価目標も達成がなかなかできていないのですから、追加金融緩和を行い。これを達成する速度をはやめるべきです。イギリスの事例をみてもわかるように物価目標をいっとき4%程度にしても、ハイパーインフレになる可能性はありません。2%などと悠長なこと言っていないで、言っとき4%にするべきと思います。

2.増税延期or凍結 

これは、上記で述べたように絶対に増税などすべきではありません。増税は、緊縮財政の手法であり、本来景気が加熱して、ハイパーインフレなどになりそうなときに行う手段であり、デフレから脱却するときに行う政策ではありません。デフレからの完全脱却を目指すなら、減税や給付金などの積極財政を行うべぎてす

3.20兆円ぐらいの大型補正予算 

日本には、未だ、10兆円のデフレギャプがあります。これを埋めるためには、補正予算3兆円など、焼け石に水です。最低でも10兆円、できれは20兆円の補正予算を組むべぎです。日本にはその能力があります。実際、特別会計には、為替特別会計など、円安の現状では必要のないお金が天文学的に積み上げせられています。これで、20兆円など簡単に捻出できます。ただし、政治決断が必要。

1.の追加緩和については、最近ではいろいろと考慮しなければならないことがでてきました。

特に、現在米財務省は日本を為替の「監視対象」に指定、連休中に一時1ドル=105円台まで円高が進みました。日銀は、4月に追加緩和を見送り、市場を失望させましたが、専門家は今月の伊勢志摩サミット(主要国首脳会議)に合わせて政府と共同で逆襲する可能性を指摘しています。実際そうなるのではないかと思います。

トランプ氏は「円安によって、(米国企業の)キャタピラーは日本のコマツとの競争が難しくなっている」と強調するなど、日本の為替政策を敵視しています。

しかし、トランプ氏の「日本が為替操作している」という見解は全くの事実誤認です。米財務省の為替に関する議会向け報告書でも、日本を監視対象とした一方でこの4年間、日本が為替介入を行っていないと明記しています。


さらに、報告書では、今後の介入を牽制(けんせい)したものの、米国自身が3度にわたる量的緩和を実施しただけに、金融緩和については否定していません。

そもそも、トランプ氏の語るようないわゆ「通貨戦争」のごときは、単なる妄想に過ぎません。いかなる国でも、どこまでも通貨安にもっていこうとすれば、何がおこるかといえば、当然のことながら、インフレに見舞われることになります。だから、どこまでも、通貨安にするなどということは、いずれハイパーインフレを招いていしまうことになりますから、これをいつまでも続けるということはできません。

しかし、日本でこのようなことにならずとも、まだまだ金融緩和ができる余地がかなりあります。米財務省の報告書はあくまで選挙イヤーによくある米国内向けに過ぎないものです。緩和のために買い取る資産も、新規国債の発行はもちろん、外債、地方債、ETF(上場投資信託)などいくらでも、まだまだあります。

2.の増税延期or凍結に関しては、上記で述べたように、これはすでに当然のこととして良いと思います。私は、それどころか、8%増税で大失敗したのですから、当面5%に戻すべきであると思っています。失敗した政策は、そのまま放置しておくのではなく、それに対する手当をすべきです。

3.の20兆円くらいの、大型補正予算も当然のことながら、8%増税の失敗だけではなく、熊本の震災まで発生したことですから、実行すべきです。もっと大きな予算でも良いと思いますが、最低この規模の補正予算を組むべきです。

また、財源としてしては、この時は円安傾向でしたので為替特会をあげました。現在は円高傾向です。しかし、追加金融緩和をすれば、再び円安傾向になります。さらに、現在円高傾向なのに為替介入を行っていません、であればこれは無駄詰みです。一部を使うのなら何も問題はないはずです。

さらに、為替特会でなくても、最近は雇用情勢が良くなっているので、労働特会を当てても良いです。いずれにせよ、財務省そうみせかけたり、やマクロ経済音痴の政治家などが思っているように、日本の財政は逼迫していません。財源は潤沢です。

さて、1の追加緩和と3の大型補正予算すなわち、財政支出の両方を組み合わせた政策を同時に行えば、これはマクロ経済学では周知の事実である、ヘリコプターから現金をばらまくように政府や中央銀行から国民にお金を直接支給する「ヘリコプターマネー」と同様の効果があります。これにより、日本経済はかなりの勢いと、素早さで回復します。

ヘリコプター・マネーのイメージ
さて、8%増税と、最近では日銀が4月に緩和を見送ったのは明らかに失敗でしたた。この教訓を生かして次に上記で示したような、政策をとらないとアベノミクスは終わってしまいます。

私としては、伊勢志摩サミットあたりで、まずは日本がこれからも追加金融緩和を行うこと、10%増税の見送りは無論のこと積極財政に転じることを、公表し、それに先行き不安の他の国々が大賛同し、上記の政策をやりやすい状況にもっていくと思います。

選挙直前にこれを公約として、参院に挑み与党が勝利を収め、秋から上記のような政策を実行し、年末にかけて日本経済は徐々回復し、 年明けから年度末にかけて、回復の勢いを増すことになると思います。

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