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2020年3月1日日曜日

コロナウイルスの情報洪水に飲み込まれないために―【私の論評】過度に神経質にならず楽観的にもならず、政府や自治体の規制などに従いつつ状況を見守ることがベスト(゚д゚)!

コロナウイルスの情報洪水に飲み込まれないために

大野智氏(島根大学医学部附属病院臨床研究センター教授)

大野智氏
ヘルス・リテラシーという言葉を聞いたことがあるだろうか。

 リテラシーはメディアリテラシーのような形で使われ、通常は「読み解く力」と訳されることが多い。ヘルス・リテラシーは、「人間の健康や安全、人命に関わる情報を読み解く力」とでも訳せばいいだろうか。どんな分野でもメディアや誤情報に乗せられないためにリテラシーを鍛えることは大事だが、とりわけヘルス・リテラシーはこれが低いと容易にパニックが起きたり、誤った治療法や薬によって健康を害したりするなど影響が命に関わる場合が多いので、リテラシーの中でも最重要なものとなる。

 マル激では9年前の原発事故で科学の市民化と市民の科学化の両方が不足していることを痛感し、その視点から諸問題にアプローチしてきた。そして、巷がコロナウイルス情報で溢れかえる今、われわれはあらためて市民の科学化が問われる局面を迎えているのではないだろうか。

 つい3日前までは大規模な集会などは避けるように言われていた程度だったところが、27日になって突如として首相が全国の小中学校、高校の休校を要請するにいたり、コロナウイルス問題が未曾有のパンデミックにでもなったかのような空気が漂い始めている。

 たしかに既存の季節性インフルエンザ並の強い感染力を持ち、罹患した高齢者や糖尿病や高血圧など既往症のある患者には一定の死亡者が出るなど、恐ろしい感染症ではある。しかし、ここまでわかっているだけでも、新型コロナウイルス(COVID-19)は感染力、致死性ともに、既存のインフルエンザと大差はない。

 実際、日本でコロナウイルスの感染が始まった昨年12月末から2月までの約2ヶ月の間、既存の季節性インフルエンザの罹患者は1,000人を優に超えている。昨年1月のインフルエンザの罹患者は約90万人で、死亡者も1,600人を超えていた。コロナウイルスによる日本での感染者は今のところ234人(2月28日現在)、死亡者はダイヤモンド・プリンセス号の乗船者を除くと5人(同上)だ。今年はうがいや手洗いの徹底などのおかげで季節性インフルエンザの罹患者数が例年の半分程度に抑えられているが、それでもその間、80万人あまり(12月~2月末)が季節性インフルエンザに罹患し、最終的な死亡者数は約1,000人は超えるだろう。繰り返すが同時期の罹患者が80万人あまりと200人あまり、死亡者数が1,000人と5人(それぞれクルーズ船乗船者を除く)だ。

 無論、新型コロナウイルスにはまだ未知の部分もあり、単純に季節性インフルエンザと比較はできない。しかしながら、既に日本でも罹患後回復している人が33人もいるし、罹患者の大半はほとんど症状が出ないことも指摘されている。今のところ死亡者は高齢者と既往症のある患者に限られる。

 その一方で、これが世界的に広がれば、既存のインフルエンザと同様、多くの人の命を脅かす危険性はある。特に発展途上国のような医療体制が完備されていない地域では、インフルエンザが直ちに命の危険につながる。だからこそWHOなどではこの問題を非常に深刻に受け止めているのであり、日本のような医療の行き届いた先進国でこれが直ちに生命に関わるほどの深刻な問題になるとは考えられていない。

 ところがここ数日の日本の反応はどうだろう。

 島根大学医学部附属病院の教授でヘルス・リテラシーに詳しい大野智氏は、一般の市民にとって、今回は「新型コロナウイルス」という呼称が恐怖を助長した面があったと指摘する。なんといっても「新型」なので未知の部分が多く、またコロナウイルスという名前も、必ずしもわれわれの多くにとって馴染みがあるものではなかった。実際、一般的な風邪の1.5~2割程度はコロナウイルスが原因だし(4種類)、過去のSARSとMERSもそれぞれ別のコロナウイルスによるものだった。現在猛威を奮っているコロナウイルス(COVID-19)が、人類にとっては7つ目のコロナウイルスということになる。

 未知の物に対しては、誰も怖れを持つのは当然だ。しかし、とは言え今回のコロナウイルスは感染力としては既存の季節性インフルエンザ並かそれ以下であり、致死性ではSARSやMERSを遙かに下回ることが既にわかっている。また、各都道府県の医師会などがガイドラインを出しているが、手洗いやうがいなど既存のインフルエンザ対策が有効であることもわかっている。咳やくしゃみが出る人は、コロナであろうが何であろうがマスクをすべきだし、熱が出たり具合が悪い人は仕事や学校に行かずに家で安静にしているべきだ。インフルエンザが流行っている時期はあまり人混みには行かない方がいいだろうし、風邪気味だったり、糖尿などの既往症がある人、妊婦、高齢者もその時期は人が多く集まるところは避けた方がいい。

 何だかあまりにも当たり前のことを列挙してしまったが、結局、コロナであろうが季節性インフルであろうが、あるいは通常風邪であろうが(かぜの2割前後はコロナウイルスが原因だが)、こういう常識的なことをやっていればある程度の蔓延は防げる。逆に言えば、どんなに沢山の情報を集めても、市民一人ひとりができることは、その程度のことしかないのだ。

 一方で、政治や政府には、また別の心配事がある。今回PCR検査が進まないことで、日本が感染症に対する備えを怠ってきた実態が露呈してしまったが、もし大量感染が起こり、感染者、とりわけ重篤な症状を呈する患者が現在の日本の医療のキャパシティを超えてしまえば、いわゆる医療崩壊が起きる。その「崩壊レベル」が思った以上に低ければ、医療体制の整備を怠ってきた政治の不作為が露呈することになり、その責任が問われることになる。

 そこで政府は大量感染を起こさない、あるいは起きたとしても、発現のタイミングをできるだけ遅らせることで、医療体制の拡充を進め、「崩壊レベル」をあげることに時間を稼ぐ必要が出てきた。

 また、IOCの理事の一人が、5月末までに収束しなければ東京五輪は中止もあり得ると発言したことも、明らかに政府を焦らせ、今回のやや唐突とも思える措置の遠因となっているように見える。万が一五輪が中止になどなろうものなら、政府の責任が問われることは必至だからだ。

 このように政治は政治で、いろいろ心配しなければならない問題がある。しかし、それはわれわれ市民の問題ではない。そうした政治的な動きや、それに乗っかり、悪戯に危機を煽ることで数字を稼ごうとするメディアによる情報洪水に巻き込まれると、実際は国産シェアが97%もあり品不足になる理由がまったくないはずのトイレットペーパーが品薄になるような、いつもの馬鹿げたパニックが起きてしまう。

 今まさに市民のヘルス・リテラシーが問われている。情報洪水の中から、自分にとって意味のある情報だけを拾い上げる作業は骨の折れる作業かもしれないが、それをせずに真偽不明の怪しい情報に踊らされることのコストの方が実際には遙かに大きいはずだ。今こそリテラシーを発揮して、これまで何度も政府やメディアに踊らされてきた苦い経験を活かそうではないか。

 今週のマル激では大野智・島根大学教授と、情報洪水の中で誤情報に踊らされパニックしないための方策をジャーナリスト神保哲生、社会学者宮台真司が議論した。

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大野 智(おおの さとし)
島根大学医学部附属病院臨床研究センター教授
1971年静岡県生まれ。98年島根医科大学(現・島根大学医学部)卒業。博士(医学)。同年同大学第二外科(消化器外科)入局。2018年より現職。共著に『「がんに効く」民間療法のホント・ウソ―補完代替医療を検証する』など。
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【私の論評】過度に神経質にならずに楽観的にもならず、政府や自治体の規制などに従いつつ状況を見守ることがベスト(゚д゚)!

昨日の記事にも書きましたが、私自身はここ20年ほどは風邪やインフルエンザになったことはありません。無論、鼻水が出たとか、咳が出る程度のことはありますが、熱が出るとか、体調不良などの症状は出たことはありません。ましてや、風邪、インフルで会社を休んだなどのこともありません。

このような話をすると、「なぜ」と多くの人に聞かれるのですが、冬季間はいつもマスクをしていること、手洗い、うがいを励行したくらいのことしかありません。もう一つは、加湿機能付き空気清浄機を特に冬季間には使っているということもあるかもしれません。

マスクに関しては、以前から特に冬は寒いので、寒さ対策のためにマスクをしていました。実際、マスクを着用しただけで、一枚余分に衣服をつけたような感覚で、特に風邪、インフル防止という意識はありません。

マスクでは感染症を防ぐことはできないという専門家もいますが、多くの専門家はきっぱりと否定しているわけではありません。

「Face touching: a frequent habit that has implications for hand hygiene.」(PMID: 25637115)によれば、平均して一時間に23回も、人は自分の顔に触れていることがわかりました。

ウイルスの多くが病気を引き起こす経路は飛沫感染であり、接触感染です。この論文の結果から、マスクをすればウイルスが手指についても口や鼻の粘膜からの感染を防げる可能性があるといえます。


ただし、マスクがないからといって、パニックになって街中を探し歩いたりすれば、感染する率は高くなります。マスクがないならその分、手洗いやうがいの頻度を増すなどのことで充分対応できると思います。それに専門家の中には、マスクはどちらかというと、感染舌人が他にうつさないためのものと捉えている人もいます。

湿度に関しては、私は比較的敏感なほうで、40%以下になれば、必ず加湿します。加湿機能付空気清浄機は、自宅では2台使っています。それに、もう一つ、あまり湿度の下がらない部屋には、空気清浄機を一台設置しています。これも、あまりインフルエンザや風邪を意識して用いているわけではありません。

これ以外には、特に食べ物に気をつけたとか、サプリなどを意識して飲んだということもありません。運動もとくに他の人よりも多くしているなどということもありません。また、人混みを避けることにに関しては、普通の人と同程度だと思います。

こうしてみると、冒頭の記事にもあるとおり「結局、コロナであろうが季節性インフルであろうが、あるいは通常風邪であろうが(かぜの2割前後はコロナウイルスが原因だが)、こういう常識的なことをやっていればある程度の蔓延は防げる。逆に言えば、どんなに沢山の情報を集めても、市民一人ひとりができることは、その程度のことしかないのだ」ということなのだと思います。

そうして、上にはそれを裏付けるような事実を列挙されていますが、さらにわかり易い事例もあります。新型ウイルス対処により、日本では通常インフルエンザ感染者が昨年よりも400万人も減少しているという事実があるのです。以下にこの記事のリンクを掲載します。
インフルエンザ昨年比400万人減 新型ウイルス対策と暖冬の効果か

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、なぜインフルエンザが400万人もへったかといえば、

新型コロナウイルス騒ぎで以下のことをする人が増えたからです

・まともに手洗いする人
・咳エチケットが浸透

過去には、インフルエンザ対策はまるで放置だった人たちがまともに手洗い、マスクなどで咳エチケットをするようになったからでしょう。

もし新型ウイルス騒動がなければ暖冬とはいえ何十万人〜何百万人もの人たちがインフルエンザにかかって高熱だしたりしていたはずです。

新型コロナウイルスの騒ぎは行き過ぎの感もありますが、それに伴い400万人もインフルエンザ感染者が減ったということはすごいことです。通常のインフルエンザは今シーズンは400万人も減ったとはいえ、695万人が感染しているのです。

例年であれば、1000万人程度が感染しインフルエンザによる直接間接が原因で年間1万人が死亡しているのです。
出所:厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/02.html

1000万人が感染し1万人が死んでいる通常のインフルエンザが毎年起きていても2週間も全国一斉休校にならないしイベントも中止にならないですし、時差通勤も在宅勤務もないしライブが中止になることはないです。

一方現時点で新型コロナウイルスは国内感染者230名で死亡は5名。
*河野太郎氏がツイッターで詳細を逐次報告
https://twitter.com/konotarogomame/status/1233727963666894848


検査体制が十分とはいえないところもあるので、感染者はさらにいるのかもしれませんが、それにしても230名です。通常のインフルエンザは695万人です。通常は、インフルエンザで毎年1万人がなくなっているのに現時点で新型コロナウイルスでは5名です。

もちろんこの先新型ウイルスが猛威をふるい多くの感染者や死者数がこれから出るかもしれないですが通常のインフルエンザ感染者1000万人で死亡1万人にまでなったとしても通常のインフルエンザ程度ということです。

通常のインフルエンザで1000万人もの感染者がいて1万人もの人が死んでも何の自粛もされず国民の多くは無関心で、手洗いもろくにしてこなかったということです。

ただし、過度に楽観的になるべきでもないと思います。通常のインフルエンザは素性がわかっているし、治療法も確立しています。それでも亡くなる人はいるわけですが、それにしても未知のウイルスへの対処法は慎重にしなければなりません。

ウイルスなどによる感染症は常に新たなタイプが出現します。今後どのような新たなタイプが出現するのかは定かではありません。現状では、新型コロナウイルスが過去に生じた新型ウイルスと比べてどの程度危険かも分かっていません。

重要なのは、一つの事実からでも異なる判断を引き出せる点を自覚することでしょう。今後、感染が増えていくのはほぼ確実です。その中で、専門家は厚生労働省や世界保健機関(WHO)などの信頼できる情報を収集し、できることを見極めていくべきです。一般の人もできること、するべきことを考えると、現状では手洗いなどが重要であり、ある意味それで充分ともいえます。というより、一般の人は、それ以外にできません。

現状は過度に神経質にならずに、過度に楽観的にもならず、政府や自治体の規制などに従いつつ状況を見守ることがベストであると考えます。ただし、この当たり前のことが、結構難しかったり、難しいときもあります。

【関連記事】

2019年1月2日水曜日

米国議会で広まる中国国営メディア規制の動き―【私の論評】もはや中国を利することは米国から制裁されかねない危険行為であると認識せよ(゚д゚)!


超党派の14議員が米AP通信と新華社の業務提携拡大に懸念を表明
米国ニューヨークにあるAP通信本社ビル

(古森 義久:ジャーナリスト、産経新聞ワシントン駐在客員特派員)


 米国の民間通信社、AP通信が、中国の国営通信社である新華社との業務提携を強化した。しかし米国では、この提携強化は中国政府のプロパガンダ工作に利用される恐れがあるとの懸念が出ている。

 米国連邦議会上下両院の超党派14議員は、AP通信と新華社の業務提携に対する懸念を連名で表明し、AP通信に提携の内容を公表するよう求める書簡を送った。この異例の動きは、米国政府の新華社への警戒の強まりを反映している。最近、米国政府は新華社を中国共産党政権の対外宣伝工作機関であると断じ、米国での活動内容を司法省に届け出させる新たな措置をとった。

米国政府は「新華社は報道機関ではない」

 2018年12月19日、米国議会の下院のマイク・ギャラガー(共和党)、ブラッド・シャーマン(民主党)、上院のマルコ・ルビオ(共和党)、マーク・ウォーナー(民主党)ら超党派の合計14人の議員は、AP通信のゲイリー・プルイット社長あてに書簡を送り、同社が11月に発表した新華社との業務提携・協力の拡大合意の内容を明らかにすることを求めた。

下院のマイク・ギャラガー議員(共和党)

 ギャラガー議員らの発表によると、同書簡の趣旨は以下の通りだという。

・AP通信は独立した民間のジャーナリズム機関である。だが、それとはまったく対照的に、新華社の使命の核心は、中国内外で中国共産党の正当性と行動への理解を広めることにある。

・新華社は米国内でも中国共産党のプロパガンダ機関として機能している。さらには、米側の情報を集める諜報機関としての機能も果たしている。その任務には、外国の報道機関への宣伝の浸透と影響力の行使も含まれる。

・米国政府は新華社のそうした機能や任務を重く見て、最近、米国における「外国代理人」に認定した。その結果、新華社は報道機関ではなく中国政府の政治活動団体とみなされるようになった。

・AP通信は、中国政府機関である新華社との提携を強化することによって、中国側からの宣伝が浸透し、影響を受ける可能性が高くなる。この可能性は米国の国家安全保障にも関わるため、AP通信は新華社との提携内容を公表すべきである。

 以上の趣旨の書簡の意義について、共和党のギャラガー議員は「中国政府の政治宣伝機関である新華社は、事実に基づく報道をする他の諸国の一般ニュースメディアとは根本から異なる。新華社と米国の報道機関との提携は、米国の国益や、共産党の弾圧に苦しむ中国国民の利益に反するおそれがあるため、その内容の透明性が欠かせない」と述べた。

 民主党リベラル派として知られるシャーマン議員は、「新華社が米国内の支局や通信員を使って、米側の秘密情報を集める諜報活動に関与してきたことは立証されている。新華社がAP通信からどれほどの協力を得るかについて公表は必要だ」と語った。

中国政府の言論統制は既知の事実

 新華社側の見解としては、AP通信との提携強化を発表した11月に、蔡名照社長が「新メディア、AI(人口知能)、経済情報などの領域に新たに重点を置いて、提携を拡大していく」と語っている。

 AP通信側は「今回の合意は、長年の提携内容からとくに変わったことはなく、APの報道の独立性が侵されることはない」と述べており、提携強化の内容を公表するかどうかは言明していない。

 だが、米国では民間からも懸念の声があがっている。人権擁護団体の「全米民主主義財団」のクリス・ウォーカー代表は、「中国政府が言論の自由を制限していることは周知の事実であり、その中国政府のプロパガンダ組織と提携する民主主義国のメディアは自己検閲や中国の政治宣伝の拡散に陥る危険を冒すことになる」と述べた。

 今回の米国議会の動きは、最近の米国の中国に対する新たな対決姿勢の一環とも言える。特に、トランプ政権に反対する民主党議員たちまでが共和党議員と歩調を完全に合わせて、中国の国営通信社への不信や警戒を示している点が注目に値する。なお日本では、共同通信社が新華社通信と長年、提携・協力の関係を保っている。

【私の論評】もはや中国を利することは米国から制裁されかねない危険行為であると認識せよ(゚д゚)!

冒頭の記事では、「なお日本では、共同通信社が新華社通信と長年、提携・協力の関係を保っている」と締めくくっていますが、日本のマスコミと新華社の関係はどうなのでしょうか。

中国国営新華社通信は昨年1月31日、都内で説明会を開き、日本向けに日本語でのニュース配信サービスを2月1日から始めると発表しました。これまで同社は中国語以外では、英語、フランス語、ロシア語、スペイン語、アラビア語、ポルトガル語でニュースを配信してきたが、日本語が7言語目になるという。

新華社によると、中国関連ニュースを中心に1日約80本の記事や、写真や映像も配信しています。中国の経済などに関するニュースを中心とし、それ以外に国際関係や日本に関する報道についても配信しています。

日本での配信サービスでは、共同通信グループの共同通信デジタルと共同通信イメージズが販売面で協力しています。

新華社の蔡名照社長は説明会で「日本でのサービスが中日関係の発展に寄与し、両国人民の友好促進の新たな力になることを願っている」と述べました。

説明会には福田康夫元首相や中国の程永華駐日大使らも出席。福田氏は「日中平和友好条約締結40周年など記念すべき年にこの事業が開始されるのは大変意味のあることだ」と語りました。



それにしても、米国とは大きな違いです。本当に日本は呑気といえば、呑気です。

日本のメディアの中国に対する協力姿勢は以前から顕著です。それは、2015年のAIIBに「反対」世論と乖離するメディアの論調をみても明らかです。

当時、中国が設立を主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加の是非をめぐって、多くのメディアの論調と世論とが、大きな違いをみせていました。

軍事・安全保障面につづき、金融面でも既存の世界秩序に挑戦する中国の姿勢の表れとみられているAIIB構想。北京で設立覚書きが調印された2014年11月の時点では、僅か21カ国にとどまっていたAIIBの参加表明国は、2015年3月11日にイギリスが参加を表明すると、雪崩を打ったように増え、4月16日の中国の発表によると、57カ国にのぼりました。

日本政府に「バスに乗り遅れるな」といった参加を促す掛け声が国内財界などで急速に高まったのも、この頃でした。中国も、創設メンバーとなるための申請期限(3月末)後も、日本や米国の参加を歓迎する意向を繰り返し示してきまし。

しかし日本政府は、AIIBについて、債務の持続性や(融資対象とする開発プロジェクトが)環境・社会に与える影響への配慮、加盟国を代表する理事会のガバナンス(統治)、日本が歴代総裁を出すアジア開発銀行(ADB)とのすみ分け--などが不透明で懸念されるとして、米国とともに参加に慎重な姿勢で一貫してきた。

一方、国内の多くのメディアは、政府の慎重姿勢の転換を求めていました。日本経済新聞、朝日新聞、毎日新聞、東京新聞が日本政府の姿勢を批判、疑問視する社説や論評記事を掲載していました。

NHKも、「AIIB創設からみえてきたもの」と題した5月8日(午前0時)放送の「時論公論」で、加藤青延解説委員が「世界銀行やアジア開発銀行ADBは、最近、AIIBとは競うのではなく協力しあってゆく方針を示しました。もし日本が加わることで、その中身に深くかかわることができるのであれば、日本はアジアにおいて、ADBとAIIBという二枚のカードを手にすることになります」と参加の“利点”を説いていました。

民放でも、「報道ステーション」(テレビ朝日系)などが、政府の姿勢に批判的なコメンテーターの発言を伝えていました。

ところが、です。読売新聞社が5月8~10日に行った全国世論調査では、≪AIIBに日本政府が米国と共に参加を見送っていること≫を「適切だ」とする肯定的評価がなんと73%に上ったのです。≪そうは思わない≫はわずか12%に過ぎませんでした(5月11日付朝刊)。

3月28~29日に産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が実施した合同世論調査では、AIIB参加への反対は53.5%、賛成は20,1%でした。調査の実施主体は異なりますが、メディアの多くが「参加すべき」と説いたにもかかわらず、AIIBへの参加に反対する国民は明らかに増えていたのです。

日本政府がAIIBに示してきた懸念は、すでに現実化しつつありました。2015年5月22日までシンガポールで行われた創設メンバー国による第5回首席交渉官会合では、代表である理事が、AIIBの本部が置かれる北京に常駐しないことで一致しました。

理事が本部に常駐する世界銀行やADBの体制と比べ、運用上の公平性の担保が難しいことは明らかでした。同会合では中国が重要案件に拒否権を持つことでも合意しました。これでは、中国の専制は止められないと見るのが当然でした。

「平和的台頭」をうたいながら急速な軍備拡張を続け、日本をふくむ周辺国と軍事的摩擦を相次いで引き起こしていた中国の横暴な覇権主義、歴史問題での反日姿勢に対して、国民の不信感は極度に高まっていました。

たとえ金融の分野であっても、中国の覇権主義的な動きには警戒を要することを見抜いている国民にとって、AIIBを評価する国内メディアは、もはや「中国の代弁者」に過ぎない存在に思えていたのではないでしょうか。先に挙げたメディアのいずれもが、過去に「親中」的な報道が目立っただけになおさらでした。

安倍晋三首相は2015年5月21日、東京都内で講演し、公的資金によるアジア向けのインフラ投資を今後5年間で約3割増やすと表明しました。AIIBに対抗する狙いは明らかでした。引っ張らないよう願いたい。

この当時は、米国の大統領はまだオバマでした。そのオバマですら、拒否したAIIBに対して、世論を無視してまでマスコミは日本も参入すべきと報道したのです。

これは、日本のマスコミは中国を利するためにあると思われても仕方ないです。特に、米国からそう思われしまうと、とんでもないことになりかねません。

これについては、似たような懸念を日本の先端産業に抱いていることを以前このブログで表明したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
米国の技術を盗用して開発された中国のステルス戦闘機J-20

この記事では、中国の技術窃取に悩まされ続ける米国の対抗措置を掲載しました。このように米国が対策に苦慮している一方。日本には、「スパイ防止法」もなく「スパイ天国」の様相を呈しています。

そのことに関する懸念をこのブロクでは表明しました。以下のその部分のみを引用します。
世界一ともいえる「産業スパイ天国」を終わらせることが、中国の「技術略奪」の時代を終わらせることに直結します。と同時に、「世界秩序の破壊者」トランプ氏が目指す「米中冷戦」の勝利を一気に引き寄せることになるでしょう。
これをいつまでもグズグズ実行しなければ、日本の先端的な企業は中国への技術移転を防ぐために、米国から制裁をくらうことにもなりかねません。そのことを理解している経営者や研究機関はまだ少ないのではないかと危惧しています。
日本の先端産業は、中国のスパイに対してあまりも無防備です。米国が必死で、米国内で気密漏洩をしても、どこからか情報が漏れていることに気づき、よく調査してみたら、それは「日本のスパイ天国」から漏れていたことが明らかになった場合など、米国は日本の先端産業に何らかの制裁を課してくる可能性は十分にあります。

さらに、米国の技術が「日本のスパイ天国」から漏れなくなったにしても、日本が中国に対して、日本の先端産業を漏洩して、その結果として中国は米国から技術の窃盗をしなくても、日本からの窃盗で十分やっていけるような状況になったとすれば、この場合も日本の先端産業は米国から制裁される可能性は十分あります。

最近の米国は中国に対する攻勢を、強めています。こんな最中に中国に利することが、正しいことなどという考えはすでに時代遅れであり、そのような考えを捨てることができなければ、自滅するおそれもあるということです。

これには、何も先端産業に限ったことではないです。マスコミも同じことです。中国を利するような報道ばかりしていて、それが米国にも伝わって、中国のプロパガンダが米国に悪影響を及ぼしていると考えれば、米国は日本のマスコミ業界にさえ制裁を加えかねないです。

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