2019年8月29日木曜日

豚肉を食べさせろ! パニック状態になる中国庶民―【私の論評】貿易戦争、豚コレラ、害虫発生、中国はこの三重苦を乗り越えられるか?

高騰が続く食品物価、庶民の不満はいつ爆発するのか

中華料理の定番豚肉料理「トンポーロー」

 中国で豚肉を中心とした食品物価の高騰が著しく、一部では“豚肉パニック”といった様相になっているらしい。

「中国では今、豚肉を買うのに身分証明書がいる」「豚肉制限令が出て、1日2キロまでしか豚肉を売ってもらえない」・・台湾の報道バラエティ番組が、中国の“豚肉パニック”をこんな風に報じていた。さすがにこれは、誇張のし過ぎだ、でたらめだ、と中国のネットユーザーが一斉に反論していたが、一部で豚肉購入制限が出ているのは事実で、豚肉不足と高騰が各地で確かに深刻だ。

購入量制限で庶民はパニックに

 今年(2019年)4月以降、湖北、安徽、四川、福建などの29省の一部地域で豚肉価格補填制度が導入されており、その中には、買い占め防止のために豚肉購入量の制限と身分証明書の提示が決められている地域もある。

 福建省三明、莆田の両県では豚肉の品不足と高騰があまりにもひどいことから、中秋節、国慶節にむけて、豚肉に対する補助金制度や購入制限措置を導入すると発表した。

 三明市の明渓県では、8月17日から10月7日までの週末と中秋節、国慶節には豚肉価格を平時価格に戻して発売するという。また莆田県荔城区では9月6日から豚肉4種(リブ肉、赤身肉、もも肉、ヒレ)に関してキロ当たり4元の補填金をつけるという。ただし両地では豚肉補助をつける代わりに、購入量を1人2キロまでに制限。この補助と制限を受けるためには、購入時に身分証明書が必要、という。補填最高額は1人当たり月額31元を限度とした。

 この措置が発表されたとたん、地元の庶民はパニックに陥り、スーパーにつめかけたり、電話が殺到したりしているらしい。このあたりを、台湾のバラエティ番組が面白おかしく報じたら、中国ネット民たちが激怒した、というわけだ。

庶民の不安はかなり深刻

 福建省の一部地域の対応に話を戻すと、明渓県は物価調整資金として県の4社のスーパーに対して20万元の豚肉用補助金を捻出したという。

 明渓県ではどのスーパーも1日の豚肉4種の販売量を計600キロ(ヒレ、もも肉それぞれ200キロ、リブ肉、赤身それぞれ100キロ)に制限している。消費者は1日の購入量を1人あたり2種類の肉をそれぞれ1キロまでに制限される。

 肉の販売の身分証提示や購入量制限については、安くなった肉の買い占め防止になるとして肯定的に受け入れられており、現地紙は「この政策に感謝している」という庶民の声を報道している。でも、豚肉を自由に買えないこの政策を「豚肉配給制か」と思う人もいるだろう。まあ、日本のスーパーの、お買い得品を「1人2個まで」に制限するキャンペーンと同じと言えば同じかもしれないが。

 浙江省、江西省、江蘇省、広東省はまた違う政策を立てており、養豚家への補助金などを打ち出している。浙江省は7月1日から12月31日までの期限をきって、養豚農家に対して豚1頭あたり500元を支払うという。

 また先日の国務院常務委員会では、アフリカ豚コレラ問題が完全に収束していない中で各省に養豚ノルマを課す形の養豚業強化政策を打ち出した。こうした政府側の対応をみても、中国の豚肉をめぐる庶民の不安がかなり深刻であるということは間違いない。

完全に制圧できていないアフリカ豚コレラ

 背景には、アフリカ豚コレラ、米中貿易戦争、中国のもともとの畜産と食肉流通システムの矛盾などの複合的要因がある。

 アフリカ豚コレラは昨年8月に発生して以降、あっという間に中国で広範囲に蔓延し、今も完全には制圧できていない状況だ。中国の報道ベースでいえば、昨年8月初めから2019年7月3日までに、中国でのアフリカ豚コレラの発生は143カ所で、116万頭以上が殺処分された。

 国家統計局のデータでは、2019年1~6月、全国の生きた豚の出荷数は3億1346万頭、前年同期比で6.2%下降した。養豚場にいる生きた豚の数は3億4761万頭で、前年同期比で15%減少。ちなみに中国市場の年間の豚肉生産量は5340万トン規模、輸入量が120万トン(2017年)だ。中国の豚肉消費の全体規模が大きすぎてピンとこないかもしれないが、国際貿易における豚肉取引量が年800万トンというから、たとえば中国で豚肉生産量が15%減った場合、中国人が豚肉を食べ続けようと思うと、国際市場に流通する全豚肉を中国が買い占めてもその不足分を補えない、という話になる。

 末端の豚肉価格でいえば、中国農業部が公表したところによると、8月16~22日の豚肉卸値はキロ当たり平均29.94元で、その1週間前と比べると11%上昇、前年同期比より52.3%上昇した。4、5、6、7月の上昇率は前年同期比で、それぞれ18.2%、14.4%、21.1%、27%という。去年20元だったトンカツ弁当が今年は30元以上するような感じだ。

 しかもアフリカ豚コレラが完全には制圧できていないのであれば、いつぶり返してもおかしくない。中国当局は、アフリカ豚コレラのワクチン開発が実験段階に入っている、としているが、しかし実用化までには8~10年かかるとしている。今は、アフリカ豚コレラ罹患豚を見つけたら、ただ安全に処分し完全に流通を封鎖するしかない。

 2018年のアフリカ豚コレラの影響は、単に養豚数や出荷数が減少するだけでなく、養豚家・養豚企業の激減を引き起こしており、中国の養豚産業全体を揺さぶっている。

 今年3月までに供給量が減ったため、生きた豚肉価格が急上昇した。だが4月に入ると、アフリカ豚コレラの感染地域が気温の上昇にともない北上してきたため、北部の養豚企業が、感染域が来る前に手持ちの豚を売り切ってしまおうと投げ売りを始めた。同時に、その地域の消費者は、コレラにかかった豚肉は食べたくないという心理から豚肉を敬遠するようになり、豚の需要が下落、今度は生きた豚の価格が暴落した。6月に入って、生きた豚の繁殖率の低下とともに出荷量が減少し、全国でまたまた豚肉価格が高騰。8月、豚肉の値段はピークを迎えた。

 養豚の繁殖と出荷は少なくとも半年前後の周期があり、短期間で供給量の不足を緩和するのはかなり難しい。豚コレラを恐れるあまり、母豚から子豚まで投げ売りして、養豚を廃業する企業や農家も続出した。豚肉価格は9月さらに上昇し、高止まりの状態でしばらく継続するとみられている。

 こうした豚肉価格の激しい変動によって、弱小な養豚農家は淘汰されていく。一方、いわゆる「養豚株」と呼ばれる畜産・農業企業の株は、政府がテコ入れするとの期待もあって2019年から高騰を続けている。ただ、かつて「第一豚肉株」と呼ばれた雛鷹農牧は2018年に不正会計問題が発覚し、さらにアフリカ豚コレラが重なり、30億元以上の赤字のために豚の飼料が買えずに大量の豚を餓死させたとも報じられ、上場廃止が決まっている。

 豚肉高騰のもう1つの要因として、当然、米中の貿易戦争がある。英BBCが報じているのだが、米国農業省によれば中国は8月2日から1週間の間、米国産豚肉1万トンを購入。これで中国は8週連続で米国から豚肉を大量購入したということになる。米国は8月1日に、1カ月後に3000億ドルの中国製品に10%の追加関税を1カ月後に実施するとアナウンスした。中国側はその対抗措置として、豚肉を含む米国の農産品に10%の追加関税をかけると発表している。追加関税がかかる前の駆け込み豚肉購入、というわけだ。

中国庶民の不満はどんな形で弾けるのか

 こうした状況に 中国国内メディアは「養猪喫鶏」(養豚しながら鶏肉食べよう)などという意見で、今年上半期の鶏の出荷が前年同期比15.8%増の42億羽、鶏肉生産量に換算すると6637万トン(同13.5%増)となったことなどを報じている。
 「豚肉が高いのなら鶏肉をたべれば?」という、まるでマリー・アントワネットが「パンがないならケーキをたべれば?」と言ったみたいな話なのだが、そうは簡単にいかない。もしもそのとおりに豚肉から鶏肉に切り替える人が増え続ければ、鶏肉と卵も値上がり続ける。養鶏企業、養鶏農家にとっては儲けのチャンスということで「養鶏株」も値上がりしているが、養鶏には養鶏で、鳥インフルエンザリスクの流行という極めて高いリスクもある。2018年1~8月は全国で鳥インフルエンザが流行し、鶏肉価格が暴落したことがあった。

 豚肉上昇を揶揄するような、こんな小話が中国の微博で流れているそうだ。

「早朝に油条(揚げパン)を買いに行くと1本2.5元という。昨日2元だったじゃないか?というと、おばさんは、豚肉が高騰したからね、と言った。豚肉の高騰と油条の値上げとどんな関係があるの? というと、おばさんは、私が豚肉を食べたいからだよ、という」

 豚肉高騰は豚肉だけの高騰ではなく、生活物価全体を引き上げる。中国統計局によれば、豚肉価格の上昇が他の食品価格を吊り上げる効果によって、7月の消費者価格指数(CPI)は前年同期比2.8%上昇。このうち豚肉価格が27%上昇したことがCPI全体を0.59ポイント分引き上げたという。

 ここに人民元の急落が重なっていけば、中国で急激なインフレがおきるという予測もある。経済官僚たち恐れているものの1つは、言うまでもなく中国のハイパーインフレだ。

 ちょうど30年前の1989年、学生の民主化運動が大規模化したことの背景には、1986年から89年にかけてのハイパーインフレによる庶民の生活苦や不満があった。ひどいインフレは、デモやときには暴動を引き起こす。

 しかも、今の中国のインフレは食品領域に限定されていて、その他の分野はむしろデフレ。つまり給与が上がらないのに食品代がかさむという、庶民にとっては最も苦しいスタグフレーションに陥りかけている。

 目下の中国当局サイドの反応を見るに、米中貿易戦争が今後うまくいく見込みはほとんどない。中国国内でデモや暴動の公式報道はほとんどないが、香港では反送中デモが日に日に激しくなり、これが中国にどのような影響を与えるのか、世界は固唾をのんで見守っている。香港議会では、親中派議員が香港法令にのっとった「緊急情況規例條例」(緊急法)を制定してデモを制圧すべきだという主張まででてきた。これは事実上の「戒厳令」と同じという批判が出ている。

 いたるところで緊張が極限まで張りつめている中で、中国庶民の生活物価高に対する不満がどういう形で弾けるのか、弾けないのか。チャイナウォッチャーとしては目が離せないのである。

【私の論評】貿易戦争、豚コレラ、害虫発生、中国はこの三重苦を乗り越えられるか?

豚コレラは人には感染しないが、豚が感染した場合致死率は100%

中国は激化している貿易戦争よりも、遥かに多くの政治的安定と経済への損害をもたらしかねない農業への脅威に直面しています。昨年8月、最初に発見された時以来、ここ数カ月、世界最大の豚生産国の豚頭数を脅かすアフリカ豚コレラ(ASF)問題により、中国は豚頭数を徹底的に削減せざるを得ない状況に追い込まれました。

さらに、最近、中国の穀物生産者はトウモロコシや米や他の穀物農作物に壊滅的打撃を与える「ツマジロクサヨトウ」と呼ばれる危険な害虫の大発生と呼ばれるものに出くわしています。指導部はエスカレートする米国との大きな貿易戦争のさなかにあり、中国に打撃を与えるこの組み合わせは、ほとんど想像できない形で、世界の地政学地図に影響を与えかねないです。

中国政府は、公式に、致命的なアフリカ豚コレラ(ASF)発生を根絶するのに必要な措置をとることでしょう。北京当局は、今日までに百万頭以上の豚が屠殺したといます。しかしながら、豚汚染が中国の全ての州、更に国外にさえ広がるのを阻止できませんでした。

現在、中国の食事では、豚肉はタンパク源てす。中国は世界最大の数、5億、あるいは約7億頭の豚がいます。問題はアフリカ豚コレラは豚にとってほぼ100%致命的であることです。この病気は伝染性が強く治療法もないので、群れを丸ごと即座に屠殺しなければならないのです。やっかいなことに、ウイルスは何日も何週間も行きている豚はもとより、死んだ豚の体の表面や肉で生存可能です。

米国農務省は4月の報告書で、中国はアメリカ豚の総生産高と等しい1億3400万頭の豚を殺さなければならないだろうと予想しました。米国農務省が1970年代半ばに監視を始めて以来、それは記録上、最悪の屠殺数になるはずです。

2019年4月の世界の主要農業金融機関、オランダのラボバンクによる研究報告は、中国の、実際のアフリカ豚コレラのための屠殺は、報告された百万頭よりずっと多いと推定しています。彼らは、2018年8月の最初の発生以来、致命的なアフリカ豚コレラは公式の数より約100倍酷く、中国豚の1.5億から2億頭の範囲が感染し、中国本土の全ての省に広がったと推測しています。

報告書は「2019年、アフリカ豚コレラのために、25%から35%の中国の豚肉生産損失を予想している。(50%以上の)極端な損失に関する報告は限られた地域に限定されている。」 報告書は「これらの損失は他のタンパク質(トリ、カモ、魚、牛肉や羊肉)によっては容易に代替できず、同様に大規模輸入でも完全には損失を相殺できず、これは2019年の全動物性タンパク質供給で、ほぼ1000万トンの需給ギャップをもたらすだろう」と補足しています。

それは公式データが示唆するより遥かに大きく、もし本当なら、豚の価格のみならず、損失から生き残れない何百万という中国の小農民に壊滅的打撃を与えかねないです。中国の豚生産は、健康管理対策がより緩く、接触感染がより多い、小規模農家に独占されているため、正確なデータが不足しています。

不幸にも、状態を静めるための明らかな取り組みとして、24の省で病気が蔓延していたにもかかわらず、一月に中国農業省は「アフリカ豚コレラ流行」はなく、この状況を収拾するため政府が適切な措置をとっているという声明を発表しました。

この声明が出されたタイミングは、中国旧正月の祝日の春節、一年で最大の豚消費時期の二週間前でした。皮肉にも今年は中国では豚年です。ちなみに、韓国、香港、台湾も豚年です。猪年は日本だけです。

豚の致命的な病気は隣接する主要豚生産国のベトナムにも広がり、ラボバンクは、少なくとも、この国の豚の10%が死亡しました。これはさらに、カンボジアに広がると予想されています。香港や台湾やモンゴルにも広がっています。問題は再感染のリスクが大きく、中国が豚を元通りに再生産できるようにするには何年も要すると専門家が推定しています。

雲南省で外来昆虫「ツマジロクサヨトウ」食害 被害面積93万ムー(621平方キロ)

 中国の豚生産が、数十年で最もひどい状況に陥っているこの時に、穀物も、同じく困難な状況に直面しています。なんと、穀物にとっは害虫である、蛾Spodoptera frugiperda種幼虫である
ツマジロクサヨトウの大発生に直面したのです。

米国農務省(USDA)の最近の報告によれば、この壊滅的な害虫はミャンマーから入って、1月29日、最初に雲南省で発見され、既に雲南、広西、広東、貴州、湖南や海南島を含む広範囲の南中国の省に広がった可能性があります。

米国農務省は、一晩で100キロも移動可能であるという、驚異的な移動能力をもつツマジロクサヨトウは、今後数カ月で中国の穀物生産地域の全てに広がると推定しています。典型的なツマジロクサヨトウ蛾は、1頭で1,000から1,500の卵を産み、生存期間中に500キロもの距離を移動するといわれています。卵は数日で、幼虫にふ化します。

「中国農業輸出」は、予想よりずっと速く虫が広がったと報じています。この害虫は絶滅させることが極めて難しいとされています。米国農務省は「ツマジロクサヨトウは中国に天敵がおらず、その存在により、換金作物の中でも、トウモロコシ、米、小麦、ソルガム、サトウキビ、綿、大豆やピーナッツの生産が減少し、品質が低下するかもしれない」と指摘しています。

報告書は「中国の大半の農民に、ツマジロクサヨトウに効果的に対処するのに必要な財源がなく、訓練をもけていない。たとえ緩和対策が実施されたとしても、高価な駆除対策(主に薬剤散布)は、被害を受ける大半の作物をつくる農民の生産者利益を赤字にさせるだろう」と補足しています。

米国農務省によれば、中国は2018-19年で2億5700万トンのトウモロコシを生産すると予測され、米国に続き、世界で二番目に大きいトウモロコシ生産国です。これまでの3年で、北米固有だったツマジロクサヨトウは、アフリカや南アジアや東南アジア全体で大規模経済損害を引き起こしました。イギリスに本拠をおくCentre for Agriculture and Biosciences International(CABI)によれば、ツマジロクサヨトウは、わずか2年で、アフリカの4分の3に定着したとされています。

一方トランプ政権に課された米国貿易関税に応えて、北京は米国の大豆の購入を制限し、国内大豆や他の穀物農作物をますます中国農業にとって重要なものにしました。悪天候の干ばつと異常に寒い天気が、中国の大豆とトウモロコシ生産に悪影響を与えています。

中国の経済全般が際立って停滞兆しをみせている中、アフリカ豚コレラとツマジロクサヨトウによる二重の打撃と、中国からの輸入品に対するアメリカ関税の最近のエスカレーションと組み合わさって、何十万という中国の小規模農家がおそらく経済的に破綻する可能性があり、冒頭の記事にもあるように、中国の国内食品価格インフレーションが急激に進む危険な状況を生み出しかねないです。

今や中国は世界最大の食糧輸入国であり、従来はその多くを米国から輸入していたのですが、米中貿易戦争によりその買い入れ先の変更を余儀なくされています。

米国は世界最大の食料輸出国であり、中国は世界最大の食料輸入国である

米国に対中国冷戦を挑まれた上、アフリカ豚コレラに苦しんでいるところにツマジロクサヨトウが加わって、中国は厳しい試練に晒されています。

こうした状況を日本語では「泣き面に蜂」あるいは「弱り目に祟り目」と言いますが、このような災難が重なることを中国語では“雪上加霜(雪の上に霜が降りる)”と言います。果たして中国政府はこの“雪上加霜”の試練を乗り越えることができるのでしょうか。

米国は世界最大の食料輸出国であり、中国は世界最大の食料輸入国であることを考えると、米中冷戦は中国が圧倒的に不利であるといえます。

【関連記事】

2019年8月28日水曜日

サミットにロシア復帰?領土問題抱える日本は賛否どうする―【私の論評】ロシアに対処するには、4つのロシアのうち「第一のロシア」を見極めなければならない(゚д゚)!

サミットにロシア復帰?領土問題抱える日本は賛否どうする

樫山幸夫 (元産經新聞論説委員長)

ロシアのG7サミット(主要国首脳会議)への復帰がまたぞろ取りざたされはじめた。先週末、フランス・ビアリッツで開かれた首脳会合で、この問題が協議された。トランプ大統領が積極姿勢を見せたのに対し、欧州各国首脳が「時期尚早」として反対、議長のマクロン仏大統領は決定を見送った。

 ロシアがサミットを追放されたのは、ウクライナ・クリミア共和国を武力を背景に併合したことだった。「力」によって北方領土をロシアに奪われた日本も、ウクライナと同様の状況に置かれているだけに、原則論ではロシア復帰に容易に賛成できない。

 ロシア自身は自らの復帰に否定的な見解を表明しているが、安倍首相が、賛成、反対いずれを決断するにしても、プーチン、トランプ両大統領との良好な係を維持したい思惑の一方、欧州各国の反対という板挟みにあって、苦しい判断を迫られそうだ。

Russian Flag Bikini

「時期尚早」が大勢

 議長をつとめたマクロン仏大統領はサミット終了後の26日、この問題について、「新しいメンバーの出席は参加国が決めることで、全会一致でなければならない」と述べ、「クリミア問題が解決されれば復帰が実現する」と強調した。

 ロシアの復帰問題は、サミット初日、8月24日の夕食会で議論された。議論の具体的な内容は明らかにされておらず、安倍首相の対応も明らかではない。

 ブルームバーグ通信など海外メディによると、各首脳とも、ロシアとの関係再構築は重要としながらも、復帰は「時期尚早」という意見が大勢だったという。

 再招請に積極姿勢をみせているトランプ米大統領は夕食会翌日の25日、安倍首相、ジョンソン英首相らとの個別会談の冒頭、「ロシアの復帰を望む人はかなりいる。望まない人もいる」、「(自らが議長で来年、米国で開かれるサミットに)招待する可能性は十分にある」などと述べた。

 欧州連合(EU)のトゥスク大統領はサミット前、「ロシアの復帰はどんなことがあっても認めない。各国一致している。追放の理由はなお有効だ」と述べ、あくまでクリミア問題の解決が復帰の前提と強調。やはりサミットに先立って8月21日にベルリンで会談したジョンソン英首相とメルケル独首相も、時期尚早との認識で一致している。

 一方、ロシアのラブロフ外相は、こうした動きを受けて8月26日、「われわれは誰かに何かを頼んだりしたことはない。いかなる呼びかけもしておらず、今後もするつもりはない」と述べ、復帰に表向き冷ややかな反応をみせた。ただ、ぺスコフ大統領報道官は「招請があった時点で考慮する」と述べており、本音は明らかではない。

 ロシア復帰が議論されたのは、トランプ大統領が直前の8月20日、「ロシアを加えたG8の枠組みが、G7よりよほど適切だ。誰かが提案するなら好意的に考えたい」と述べたことがきっかけだった。トランプ氏は2018年6月、カナダ・シャルルボアでのサミットの際にも同様の主張を展開した経緯がある。

クリミア併合は主権・領土の一体性侵害

 ロシア排除のきっかけとなったクリミア併合は、ロシアが帝政時代、ソ連時代からの領土的野心をなお抱いていることをはっきりと示した事件だった。

 2014年春、ウクライナの親ロシア政権が崩壊、親欧米派政権が登場したことで、クリミアの一部住民が抗議。ロシア軍が進攻するなかで、クリミア共和国に親ロシア政府が樹立され、ロシアへの編入が決定された。その是非を問う住民投票は不明朗な形で行われたが、ロシアは3月、ウクライナの反発を押し切っての編入を宣言した。  

 西側諸国や国連、欧州などは、ウクライナなどの主権・領土一体性を保障した1994年のブダペスト覚書(署名、米英ロ)違反ーとして激しく非難。関与したロシア企業、個人の資産凍結、取引停止などの制裁を科した。

 この年のG8サミットは6月、ロシアのソチでプーチン大統領を議長に開かれる予定だったが、各国はこれをボイコット、6月にブリュッセルで7カ国による会合を開いた。当時、ロシアのラブロフ外相は、「G8は非公式な組織で会員証を出しているわけではない。それがなくなればどうなるか、1、2年みてみるのもいい」と皮肉交じりで強弁した。

 一方、日本にとっての北方領土問題の経緯はいまさら繰り返す必要はなかろう。

 第2次大戦の末期、旧ソ連は日ソ中立条約を一方的に破棄して旧満州に攻め込み、8月15日の終戦後、どさくさに紛れて、日本固有の領土である北方4島に武力で侵攻。以来不法占拠を続けている。第2次大戦の終結に当たって、戦勝国による領土拡張の意図を否定したカイロ宣言に明確に違反する。

日本、ウクライナは不法行為の被害者

 ロシアの不法行為によって国益が踏みにじられていることでは、ウクライナ、日本とも共通していることが理解できよう。

 ウクライナのハルチェンコ駐日大使は今年3月、東京・日本記者クラブで会見した際、ロシアの行動を非難したうえで、北方領土問題について、「日本は熱心に外交交渉している。グッドラック」とエールを送った。

 さて、日本はどうする。

 ロシア復帰に反対すれば、トランプ、プーチン両大統領と安倍首相の個人的な友好関係にひびが入り、北方領土交渉に悪影響が出るかもしれないと懸念する向きもあるだろう。

 賛成すれば、こうした事態は避けられるが、欧州各国からは、クリミア問題軽視という非難を浴び、ひいては北方領土問題への対応を疑問視されかねない。長期的な視点に立てば、領土問題解決に向けてプラスにはならないだろう。

安倍首相の本音は賛成か

 首相は昨年のシャルルボアでのサミット終了時の記者会見で、「経済、安全保障、世界が直面する課題に処方箋を示すにはロシアの建設的関与が必要だ」と述べ、賛成する意向を示唆している。

 首相は2016年5月、伊勢志摩サミットが開かれた際、これに先だって議長国として欧州各国を歴訪、首脳と事前の調整を行ったが、その帰途、ロシアに立ち寄り、プーチン大統領と会談した。サミットの事前打ち合わせのため各国を歴訪、その足で追放されたプーチン氏を訪ねることが各国首脳にどう映ったかはわからないが、少なくとも、首相がクリミア問題については、欧州各国とは異なった見方をしていることを示したといっていい。

 クリミア併合に当たって、日本がとった制裁をみても、ビザ自由化交渉の停止、投資、宇宙、軍事協力に関する交渉の凍結など各国に比べるとほとんど実害を与えない内容だった。

 首相は北方領土問題について最近、国後、択捉断念、歯舞、色丹の2島返還-へと方針を変更したが、この方針転換と相まって、サミットへのロシア復帰に賛成すれば、首相の北方領土問題への取り組み、対ロ政策全体の是非をめぐって議論を呼ぶことになろう。

くすぶり続けてきた復帰論

 サミットは1975年の第1回(フランス・ランブイエ)以来、毎年各国持ち回りで開かれている。ロシアの出席は歴史が浅く、1991年のロンドン・サミットで、正式会議終了後に、各国首脳とソ連のゴルバチョフ大統領(当時)とによる非公式会合がもたれたのが最初だった。94年のナポリ・サミット(イタリア)から、ロシア首脳は政治討議だけ、2003年のエビアン・サミット(フランス)から全討議に参加し、正式メンバーとなった。

 クリミアの併合によって追放された後も、毎年、サミット開催時にその復帰論が出ては消え、消えては出るの繰り返しだった。

 日本が賛否を明確にしなければならない時がいつ来るのか明らかではないが、何らかの意思表示は求められるだろう。首脳間の個人的な信頼関係も重要だが、国益第一の冷静な判断が求められよう。

【私の論評】ロシアに対処するには、4つのロシアのうち「第一のロシア」を見極めなければならない(゚д゚)!

トランプ大統領は、ロシアを中国牽制のためにG7に迎え入れようとしているようです。しかし、これは昨日のブログでも時期尚早であると述べました。それは主に以下に述べる3つのロシアの特殊事情によるものです。詳細は、昨日の記事をご覧になってください。

1.中国に経済でとてつもないほどの大きな溝を開けられたロシア

2.中国と長く国境を接している ロシア

3.中国との人口差があまりに大きすぎるロシア 

以上のようなことから、プーチン氏は現状では、中国と本気で事を構えるようなことはしたくないはずです。

ただし、昨日の述べたように中国が米国から対中国冷戦を挑まれ、経済的にかなり疲弊した場合には、 状況は違ってきます。昨日も述べたように、ロシアは中国の「一対一路」で、あまり利益を得ることもできないため、このあたりからも中国に対する不膜は高まっています。

だから、中国の経済力が弱まったときは、ロシアを中国牽制のためにG7に迎え入れるなどのことは十分に意味のあることと考えられます。

ただし、本当にロシアがそのときに、G7に入ったり、中国牽制に役に立つのかは、疑問です。

レバダ・センターというロシアの調査機関は、毎月実施している世論調査で、国民が最高指導者のプーチン氏を信認しているか、いないかを長期的に跡付けています。その結果をまとめたのが、下に見る図です。これを見ると、プーチン氏は常に、6割を超える国民の信認を集めています。普通の国であれば、盤石の支持率ということになるでしょう。


しかし、国民のプーチン氏に対する信認は、2000年代の末から低下に転じました。特に、憲法の三選禁止規定を回避するため、一時期首相職に就いていたプーチン氏が、再び大統領に復帰する方針を示した2011年秋以降、プーチン氏の数字は目に見えて悪化しました。

プーチン氏とメドベージェフ氏が、大統領職と首相職をまるで私物のようにやり取りする様子に、少なからぬ国民が愛想をつかしました。

折しも、2011年12月4日に実施された議会選挙で、体制側による不正が指摘されたことから、モスクワ中心部で大規模な抗議デモが繰り返し開催される事態となりました。結局、2012年3月4日に投票が行われた選挙に勝利し、プーチン氏は大統領に返り咲いたものの、むしろプーチン体制が揺らいでいるという印象を強く残しました。

図に見るとおり、2012年5月に第3期プーチン政権がスタートして以降も、国民の大統領に対する信認はじりじりと低下を続けたのです。

事態を一変させたのが、2014年2月のウクライナ政変と、それに続くロシアによるクリミア併合でした。それから数年間、国民のプーチン氏に対する支持率は、いわばドーピングを施されているような状態でした。



しかし、これはプーチン大統領の支持率が本来の実力以上に下駄を履かされた状態ですので、それほど長続きするはずはありません。図に見るとおり、国民のプーチン信認率は、2018年半ば頃から下落します。その引き金を引いたのは、年金改革と増税ともいわれています。

しかし、それは一つのきっかけにすぎず、むしろ、クリミア併合から一定の時間が経って、そのカンフル剤としての効果が、必然的に剥落してきたというのが真相でしょう。要するにプーチン体制は、2011~2012年頃に直面していた本来の厳しい状況に戻ったのです。

さて、上に述べたようなことは、「4つのロシア」論に当てはめると、より理解しやすくなると思います。「4つのロシア」論というのは、ナターリヤ・ズバレビチという学者(社会政策独立研究所地域プログラム部長)が、2011年12月にロシア紙に寄稿して知られるようになった分析視点です。

ズバレビチ女史によれば、ロシアはまったく異なる4つの構成要素から成り、それらはまるで別の国のように異なると言います。具体的には、①大都市、②中規模な工業都市、③農村および小都市、④北カフカスおよびシベリア南部の民族共和国、という4つの要素です。以下、ズバレビチの議論を要約してみましょう。

「第1のロシア」:大都市

「第1のロシア」は、大都市です。ロシアには12の百万都市があり、さらにそれに近い人口の都市も2つあって、ロシアの人口の21%がここに住んでいます(注:2011年時点の数字、以下同様)。過去20年間でこれらの大都市は工業都市でなくなくなりました。

大都市では、雇用構造の変化(ホワイトカラーの増大)、中小企業への就労の増加が見られ、公務員ですらより高い職能を備えるようになっています。ミドルクラスが集中しているのも、まさにこれらの大都市です。移住者が向かう行先も大都市で、ロシア全体の人口に占めるその割合が高まっています。

「第1のロシア」には、人口50万人以上の都市も加えることが可能です。そうすれば、総人口に占める比率は30%まで高まります。最も定義を緩めれば、人口25万人以上の都市を含めることができ、そうなれば全人口の36%ということになります。

ロシアのインターネット・ユーザーや、変革を欲しているようなミドルクラスが集中しているのは、まさにこれらの大都市です。彼らが政治的行動を起こしているのは、プーチンの下で停滞がずっと続くという見通しに危機感を抱いているからです。また、腐敗した国で投資が進まず、自分たちの就きたいような新しいタイプの職が不足していることにもよります。

「第2のロシア」:中規模な工業都市

「第2のロシア」は、人口2万~3万から、25万くらいまでの、中規模な工業都市や企業城下町です。ただ、時には人口が30万~50万に及ぶこともあり、最大の自動車メーカーAvtoVAZが所在するトリヤッチのように70万という例もあります。

すべての中都市がソ連時代の産業の専門を保持しているわけではないですが、その精神や、ソ連的な生活様式は根強いです。こうした都市では、ブルーカラーの比率が多い上に、公務員も多く、しかも職能の低い公務員が主流です。

需要が低かったり、制度的な壁があったりで、中小企業は圧迫されています。「第2のロシア」には、国民の約25%が住んでいます。そのうち、社会的緊張がとりわけ尖鋭な企業城下町には、約10%が住みます。

もし今後、経済危機の新たな波が生じたら、最も打撃を受けるのは、「第2のロシア」です。鉱工業が大きな落ち込みに見舞われる中で、住民の適応能力は高くないです。今後、これらの地方を支える財源が見付からないと、住民が職と賃金を求め政権に抗議する急先鋒となり、政権が大衆迎合的な決定を下す圧力が強まります。

ただ、政権は「第2のロシア」をいかに懐柔するかを、心得ています。ミドルクラスにとっては死活的な諸問題(民主主義、ネットの自由など)も、職と賃金を求める「第2のロシア」にとっては、どうでもいいことです。

「第3のロシア」:農村および小都市

「第3のロシア」は、広大なエリアから成る辺境で、農村および小都市です。ロシアの人口の38%を占めます。彼らは土地に生きており、農業の歳時記は政権交代とは関係ないので、政治には無関心す。たとえ危機で年金や賃金が遅配になったとしても、彼らの抗議エネルギーはほとんどありません。

「第4のロシア」:北カフカス、シベリア南部の民族共和国

「第4のロシア」は、北カフカスおよびシベリア南部の民族共和国で、ここにはロシアの人口の6%弱が住んでいるにすぎません。そこには大都市も中小都市もありますが、工業都市は存在しません。都市のミドルクラスは今のところほとんど未形成で、他の地域に流出してしまって育ちません。農村人口は増加し年齢構成も若いですが、若者は都市に出てしまいます。

これらの地域では現地の閥が権力、資源、民族、宗教などの闘争を繰り広げ、彼らにとっての関心事は連邦からの資金を取り付けることだけです。連邦からしてみれば、これらの地域への支援はそれほどの規模でもないから、経済危機が再燃しても対処でき、これら地域の状況は大きく変わりません。

帰ってきた「4つのロシア」

以上が、2011年にズバレビチが発表した「4つのロシア」論の骨子でした。

プーチン氏が常に6割を超える国民の高い信認を得ていると言っても、それは主に、受動的で何かと中央に依存しようとする「第2~4のロシア」からのものです。活力溢れる「第1のロシア」に住む意識の高い市民は、2011~2012年の時点で、プーチン政権を見限りつつありました。

繰り返しになりますが、これを一変させたのが、2014年以降のウクライナ危機でした。ウクライナを巡りロシアが欧米と対立し、その中でプーチン政権がクリミアの「奪還」に成功。このことが、あまりにもロシア国民の愛国主義的な琴線に触れたため、元々はプーチン政権に批判的だった「第1のロシア」の市民すらも、「今は国民が一致団結してプーチン政権を盛り立てねば」という考えに傾いたわけです。

言い換えれば、2014年から2018年半ばくらいにかけての時期は、「第1のロシア」が、「その他のロシア」に、一時的・例外的に歩み寄っていた時代だったと言えそうです。当時は、提唱者のズバレビチも、「『4つのロシア』は一時的に棚上げになっている」と認めていました。

しかし、ウクライナ危機発生から4年、5年と経ち、欧米との対立がロシア経済の沈滞に繋がっていることが明確になるにつれ、「第1のロシア」、特に若者世代が、再びプーチン体制への不満を募らせるようになりました。その表れが、現在首都モスクワで起きている反政府デモです。

プーチン政権は、ロシアのイノベーション的発展、経済のデジタル化、中小企業やスタートアップの支援といったスローガンを掲げています。そうした新しい経済の担い手となるのは、基本的に「第1のロシア」のはずです。しかし、現実には、プーチン政権は体制の安定に汲々とするあまり、市民の権利を制限するようなことばかりしていて、「第1のロシア」を敵に回してしまっています。

こんなことを続けていたら、大都市の有能な若者たちは、国を捨てて出て行ってしまうかもしれません。それでは、これまで以上に、エネルギー・資源輸出で稼いだお金で、「第2~4のロシア」を扶養するだけの国に堕してしまいます。目先の政治的安定は図れるかもしれませんが、国としての斜陽化は必至です。

まさに、プーチン政権は「第一のロシア」を納得させ、満足させることができなければ、ロシアは浮かび上がることはできないのです。

ウラジーミル・プーチン

プーチン氏の、ロシアのイノベーション的発展、経済のデジタル化、中小企業やスタートアップの支援といったスローガンが本当に実現できれば、上にも述べたように、中国が疲弊したときに、ロシアを中国牽制のためにG7に迎え入れようという試みはうまくいくかもしれません。

しかし、それが成功しなければ、ロシアはさらに斜陽化することになります。その時こそが、日本がロシアと北方領土交渉ができる状況になっているでしょう。

いずれにしても、日本としては、ロシアの中でも特に「第一のロシア」に注目しつつ、ロシアに対処していくべきでしょう。

「第一のロシア」はロシア全体の中間層の形成に大きく関与しているとみるべきです。この層が、自由に社会経済活動ができるように、ロシアも民主化、政治と経済の分離、法治国家化を進めなければならないのです。

ロシアの現状は、中国よりはましとはいいながら、まだまだこのあたりが遅れています。これを改善するか、できないかが将来のロシアの運命を握っているのです。

【関連記事】

米国に対峙する中ロ提携強化は本物か?―【私の論評】米国が、ロシアを引き込んで対中牽制しようとするのは時期尚早(゚д゚)!




2019年8月27日火曜日

米国に対峙する中ロ提携強化は本物か?―【私の論評】米国が、ロシアを引き込んで対中牽制しようとするのは時期尚早(゚д゚)!


岡崎研究所

 7月23日、中国とロシアは日本海と東シナ海で空軍共同軍事演習を行い、韓国と日本の防空体制を試した。この際、韓国空軍が、同国が不法占拠している竹島(韓国名:独島)の領空をロシア軍機が侵犯したとして300発以上の警告射撃を行ったことで、日本でも大きなニュースとなった。


 この中ロ空軍共同演習を契機に、中ロの提携強化に注目が集まった。米国の論壇では、米国防省の掲げる「米国の主敵は中国とロシア」というラインに沿ったものが多く見られた。例えば、米バード大学のWalter Russell Mead教授が7月29日付でウォール・ストリート・ジャーナル紙に寄稿した論説‘Why Russia and China Are Joining Forces’は、今回の共同演習について「この数年強化されてきた中ロ間の提携の一例に過ぎない」と指摘するとともに、「世界の秩序を乱しているのはトランプよりも、中ロの2大国が力を増し、IT技術の進歩を悪用しつつ、自らの影響力を世界中で拡大しようとしていることにある」と言っている。

 現実の米ロ関係はどうか。7月2日の中距離核戦力全廃条約(INF条約)失効にもかかわらず、現在、トランプ大統領はロシアへの宥和的姿勢を徐々に強化しつつあるように見える。これまで「トランプはロシアと"ぐる"になって、大統領選で勝利した」ことを証明しようとしてきた民主党の作戦が、モラー特別捜査官の議会証言で最終的に破綻したことも一因であろう。

 ベネズエラでの米ロ対立がすっかり影を潜めた一方、米国はなぜか「ロシア産原油」の輸入を急増させている。米国がマドゥーロ政権制裁のために、ベネズエラ原油の輸入を停止したこととの関連が疑われる。更に、米国はイランに対するロシアの影響力を活用しようとしており、6月24日にはエルサレムでボルトン大統領安全保障問題特別補佐官とパトルシェフ・ロシア国家安全保障会議書記が、ネタニヤフ・イスラエル首相及び同首相の安全保障問題担当補佐官を含めて三者会談している。

 プーチンの側も、対米関係の好転を願っているものと思われる。西側の制裁はロシアに直接の大きな作用を及ぼしているわけではないが、長期的には先端技術及び資金の流入縮小を通じて、ロシアの経済に深刻なダメージを与える。制裁で沈んだ経済成長率は2018年上昇傾向を示したが(2.3%)、本年の第1四半期には1.2%に沈む等、再び停滞傾向を強めている。対米関係を何とかしない限り、ロシアはお先真っ暗である。従って、米ロ関係には、改善に向かう潜在的要因が存在していると見られる。

 中ロ関係については、必ずしも連携が強化する一方というわけではなく、関係が進んでいる面もあれば、競り合っている面もある。進んでいると見せかけて、実際には中身がないものも多い。中身があるのは、ロシアの中国への原油と天然ガスの輸出である。他方、「両国間貿易の決済ではドルではなく、双方の通貨を使おう」ということは長年叫ばれ、6月5日には協定も署名されたが、実効は上がっていないものと見られる。

 中ロの競合は、第一に中央アジアに見られる。例えばタジキスタンで中国が共同軍事演習を繰り返しているような例である。経済力を欠くロシアにとっては、防衛面での支援は対中央アジア外交の重要な手段であるのに(タジキスタンにはロシア軍1個師団が常駐)、中国がこれを侵食しつつある。

 東アジアでも中ロが必ずしも足並みをそろえていない例がある。ロシアは、中国とは微妙な関係にあるベトナムに潜水艦を売却したし、南シナ海を睥睨するカムラン湾の基地には軍艦を時々寄港させている。ロシア海軍が日本の海上自衛隊と合同訓練をすることもあるし、米国主宰のRIMPAC演習に参加したこともある(2012年)。つまり、ロシアは、中国を絶対的な提携相手としているわけはない。そして極東におけるロシアの戦力は、原子力潜水艦を除けば大したものではない。従って、「中ロ連携強化」には、こちらが過剰反応する必要はない。

 中ロ関係強化は自己目的ではなく、ロシアと中国が対米関係で用いる脅し道具という側面が強い。中ロのいずれかが対米関係改善に成功すると、しばらくお蔵入りになるものである。今後、米ロ関係が好転するようなことがあれば、ロシアにとって中国の重要性は低下する。ただし、極東部の脆弱性をよく心得ているロシアは、中国と敵対することは避けようとするだろう。ロシアを引き込んで対中牽制に使う、という論もあるが、なかなか成り立ちがたいと思われる。

【私の論評】米国が、ロシアを引き込んで対中牽制しようとするのは時期尚早(゚д゚)!

2017年5月14~15日に、中国が推進している現代版シルクロード経済圏構想である「一帯一路」の国際会議が中国の首都・北京で開催されました。同会議には、全世界の計130カ国の1500人、そして29カ国の首脳が参加しました。
「一帯一路」は中国が長い年月をかけて推進してきたものですが、このような会議が行われるのはこの時が初めてであり、中国は大国の威信をかけてこの会議に臨みました。この会議は、中国の当時の外交政策の成否のメルクマールとなり、また今後の「一帯一路」の発展を展望するうえでも重要な一歩とみなされていたのです。
そのため、中国の同会議に対する思い入れは極めて強く、参加国との連帯を強めていくために手を尽くし、そして、自由貿易の重要性を盛り込んだ首脳会合の共同声明も採択されました。
そして、同会議ではやはり中露関係の緊密さが顕著に見られました。米国でロシアによるサイバー攻撃とそれによる影響やドナルド・トランプ政権関係者とロシアの関係が米国政治の焦点となっていた中で、米露関係が冷戦後最低レベルに落ち込んだとすら言われる中、米国への対抗軸で共通の利害関係を持つ中国とロシアが関係を緊密にするのは自然な流れでした。
また、中露は、中国が推進する「一帯一路」構想とロシアが主導し、旧ソ連の5カ国が参加する「ユーラシア経済連合」の連携協定を2015年に結び、「一帯一路」の成功が中露両国にとって有益であると国民にも訴えつつ関係深化を進めてきました。
会議においても、ロシアのウラディーミル・プーチン大統領は一番の賓客として扱われ、スピーチの機会も習近平国家主席の次に設けられました。プーチンはその場を利用し、ロシアが主導している「ユーラシア経済同盟(EEU)」と「一帯一路」の類似点を強調し、中露の計画は相互補完関係にあるとした上で、これらのメガプロジェクトに代表されるユーラシア統合を「未来に向けた文明的プロジェクト」だと述べました。
ユーラシア経済同盟の加盟国

そして、ロシアは「一帯一路」との連携をさらに進め、ポジティブな成果を出す必要に迫られていました。特に、2014年後半からの原油安やウクライナ危機によって欧米が発動している対露経済制裁によって、ロシアのみならず、ロシアと深い経済関係を持つ旧ソ連諸国の多くが経済的ダメージを受けていることも重要な背景でした。
たとえば、ユーラシア経済連合の域内貿易額が、昨年には2014年と比して30%も減少したことは、その一例でした。旧ソ連諸国の経済パフォーマンスに当面期待できず、ユーラシア経済同盟加盟国の間でも失望感が広がっている状況では、数年前と比べれば随分勢いは衰えたとはいえ、まだまだ力がある中国経済による好影響を期待するほかなく、また巨大経済圏構想の可能性を見せつけることで、大国としての存在感も示すことができたのです。
そして、会議の期間中、中露間の大型プロジェクトが多数成立しました。

まず、中露両国がロシア極東及び中国北東部の開発支援のために、総額100億人民元(約145億ドル)の共同地域開発協力投資ファンドを設立するという計画が発表されました。

加えて、ロシア石油最大手ロスネフチと中国石油天然ガス集団(CNPC)は両者間の協力の効率化向上を目指すための合同調整委員会の設立に関する取り決めに調印したことが発表されました。

また、ロシア天然ガス最大手ガスプロムのミレル社長とCNPCの王会長は、地下ガス貯蔵、電気産業、道路インフラなどの分野での協力深化に関する文書に調印しました。

このように、中露関係のプロジェクトは、地域発展を目指すものやエネルギー関連の協力強化が主軸となっており、経済規模も大きいものでした。

その一方で、両国のメガプロジェクトの連携に関し、ロシアの期待が裏切られているのもまた事実でした。

前述の通り、プーチンは度々中露のメガプロジェクトの連携が有益であると国内外に訴え続けてきましたが、実際のところ、プーチンが本気でそう思っているとは考えづらいです。

プーチンの連携を高く評価する発言の背景には、むしろ、連携からの恩恵が少ない現実への批判を避けるためだとも考えられます。実は、ロシア側が「一帯一路」との連携に期待していたものと実態はかけ離れており、プーチンをはじめとした当局やオリガルヒ(財閥)の懐疑心は強まっていると言われていました。

そのような疑念を高めているのが、「一帯一路」と「ユーラシア経済連合」の連携を象徴するプロジェクトとして発足したモスクワ・カザン高速鉄道計画におけるロシアの失望でした。



この鉄道計画は、いずれモスクワと北京が鉄道で結ばれるとされる高速鉄道の基礎となるとされ、最初の了解覚書では、同鉄道はシベリア地域を通るとされていました。しかし、のちに同鉄道の線路はロシアのほとんどの地域を通過せず、カザフスタンの首都アスタナから新疆を通過して、所要時間が3分の2になるように変えられたのです。中露協力のモデル計画とされていたプロジェクトの結果がこのような惨憺たるものであることは、ロシアにとって大きな痛手でした。

しかも、これのみならず、中国と欧州を結ぶインフラの多くはロシアを全く通らず、中央アジアと南コーカサス地域を通過しており、ロシアは陸運の利益を得られないのです。さらに、そもそも陸路よりも海路での運輸の方が50%以上安価になるため、所要時間は陸路の方が早くなるとはいえ、経済合理性の観点から、中国・欧州間の貨物輸送で陸路経由が占める割合は1%以下となっています。このことから、ロシアが陸の現代版「シルクロード」計画から得られる利益はほとんど想定できないのです。

このような状況に鑑み、ロシアの研究者の中には、「一帯一路」構想は達成指標がないが故に、中国が軽微なものも含むあらゆる結果を「一帯一路」の成果として喧伝していることから、「一帯一路」そのものの意味に疑問を呈するものもいます。「一帯一路」がそもそも大した成果が上がっていないものなら、「ユーラシア経済連合」との連携で良い成果が出ないのは当たり前だという議論です。

確かに、「一帯一路」の経済パフォーマンスは決して良いとはいえないです。たとえば、中国の投資家は融資するプロジェクトをかなり選り好みして決めるため、実際の融資額は期待を下回っており、2017年には中国の「一帯一路」」関係の投資額は、3年ぶりに減少しました。

そして、中国の投資家からすると、ロシアが提案するプロジェクトはあまり魅力的に感じられず、結果、対露投資のパフォーマンスは悪くなるのです。そのため、ロシアの専門家の中には、ロシアが主導する「ユーラシア経済連合」は素晴らしいが、中国が自国の経済利益のみを考慮する利己的な行動をとるが故に、連携においてはロシアの実入りが小さいのだという議論を提示するものもいます。

さらにロシアの重要な「勢力圏」であり、中国が経済的に台頭してくるまではロシアが政治・経済の影響力を独占的に維持してきた中央アジア諸国が、ロシアよりむしろ中国との関係を深めていることもまたロシアにとっては許容しがたい問題です。

「一帯一路」の国際会議でも、中国と中央アジアの関係強化は顕著に見られました。習主席はカザフスタン、キルギスタン、ウズベキスタンの各国首脳と会談し、中央アジア諸国との関係強化を強調しました。

これら会談の中で、例えば、カザフスタンのヌルスルタン・ナザルバエフ大統領は、カザフスタン鉄道がカザフスタンと中国の国境にあるコルゴスの輸送拠点の49%を譲り受けるという合意に調印しました。

これはカザフスタンが重要物流拠点として高い戦略性を持つと見なされるようになったことの証左です。また、ウズベキスタンのミルジヨエフ大統領も中国との経済関係の強化を強く求めており、当時の会談では最大200億ドルの協力協定も締結しました。

中国は、ウズベキスタン東部のフェルガナ盆地と、残りのウズベキスタンを結ぶ最初の唯一の鉄道に対する共同出資をすることを約束しました。この連携は中国製品を中央アジアに輸出するために極めて重要です。

その鉄道が完成した現在、中国は戦略的に1億7500万ドル相当の高速道路プロジェクトにも取り組んでいます。

このように中国とロシアの「一帯一路」と「ユーラシア経済連合」の連携への期待は高いとはいえ、実際にはあまり良い結果が出ておらず、また、地域覇権を維持したいロシアにとっては中国の勢力拡張は決して望ましくない状況です。

米国への対抗軸という揺るがない共通利益を持っていることを背景に、中露関係が緊密であることは間違いないとはいえ、両国のメガプロジェクトにおける連携は、ロシアの期待とそれに応えていない中国という図式、ロシアの「勢力圏」に迫る中国の影響力など、両国関係の判断も単純ではありません。

プーチンと習近平

ただし、旧ソ連の核兵器と、軍事技術を継承しているということで決して侮ることはできないのですが、経済力が落ちているロシア(GDPは、東京都や韓国と同程度)は中国に対して強気に出られないというのが実情です。

このままだと、ロシアの中国に対する不満は高まるばかりです。現在、米国の対中国冷戦により、中国は経済的に弱りつつあります。

現状では、経済的にかなり中国に差をつけられたことと、ロシアは極東で中国と国境を接していること、しかもかなり長距離わたって接していることと、ロシアよりも中国のほうが圧倒的に人口が多く、特にロシア極東の中国との国境ではそれが顕著です。そうして、中ロ国境を多くの中国人が越境しているという特殊事情があるので、米国やEUから制裁を受けている現状で、中国と対立するのは得策ではないと考えているようですが、中国経済がかなり疲弊したときには、確実に中国と対立することになるでしょう。

米国が、ロシアを引き込んで対中牽制しようとするのはまだ早すぎます。ただし、中国が経済的に疲弊した場合は、その限りではありません。その時、ロシアは対中国という観点から米国の有力なパートナーとなるかもしれません。

先日はこのブログで、長期的にはロシアの憤怒のマグマが蓄積して、いずれそのマグマはは中国に向かって吹き出すという趣旨の内容を掲載しました。「ユーラシア経済連合」のからみで、ロシアは中国に憤りを感じていることから、やはり短期的にも、中露提携強化ということはないとみておいたほうが良いと思います。これは、みせかけだけのものでしょう。ただし、いまのところは、まだロシアは中国と本格的に、対立するつもりはないとみておくべきです。

【関連記事】

2019年8月26日月曜日

中国が輸入しない米のトウモロコシ 日本が買います―【私の論評】日本は世界最大のトウモロコシ輸入国。今回の日米の取引はWin-Winの状況(゚д゚)!

中国が輸入しない米のトウモロコシ 日本が買います

NHK NEWS WEB


今回の日米首脳会談を受け、日本がアメリカ産のトウモロコシを追加で輸入することになりました。国内で害虫の被害が確認されたため、日本企業が輸入を前倒しするということです。

これは安倍総理大臣とトランプ大統領が共同の記者発表で明らかにしたものです。

政府関係者によりますと、追加で輸入するのは飼料用のトウモロコシおよそ250万トンで、年間の輸入量の3か月分にあたる規模だということです。

国内で新たな害虫が確認され、今後供給に不安が生じることも懸念されるため、トウモロコシの輸入の90%以上を占めるアメリカから、日本の企業が9月から輸入を前倒しすることになるとしています。

記者会見でトランプ大統領は米中の貿易摩擦の影響でアメリカから農作物の輸出が減少していることを踏まえ、「中国は約束したことを実行しないため、アメリカのいろんな地域でトウモロコシが余っている。安倍総理が購入してくれるのはとても大きな取り引きだ」と述べました。

トウモロコシの追加輸入は来月の署名を目指す日米の貿易交渉とは別の扱いで、日本政府としては害虫対策のための民間の措置だとしていますが、トランプ大統領が重視するアメリカの農家対策にもつながる側面があると判断したものと見られます。

【私の論評】日本は世界最大のトウモロコシ輸入国。今回の日米の取引はWin-Winの状況(゚д゚)!

中国との貿易摩擦によって、トウモロコシの輸出が滞っていた分を日本が買い取るという取引が成立しました。その額は数億ドルに上るとされています。

さっそくですが、「日本はATMだ」などと言った論評が観測されています。では、日本にとってメリットはあるのでしょうか?
Trump Says U.S. and Japan Have Reached Trade Deal in Principle - WSJThe prime minister said Japan’s private sector would buy U.S. corn because 
ウォールストリートジャーナルの記事を見ると、安倍総理は害虫問題のためにアメリカのトウモロコシを買うのだと言っています。日本では、8月に入ってからトウモロコシに被害が出る害虫が発生しています。
世界蔓延の厄介害虫が茨城へ到達、全国拡散か(団藤保晴) - 個人 - Yahoo!ニュース国内で最初に見つかった鹿児島での発生状況調査によると、トウモロコシ、水稲、サツマイモ、サトウキビなど306ほ場を調べてツマジロクサヨトウを見つけたのは飼料用トウモロコシとスイートコーンの53ほ場でした。その後の各県の発生状況でもトウモロコシだけが狙われているのが不幸中の幸いです。
日本では、ツマジロクサヨトウという害虫によってトウモロコシだけが被害を受けている最中です。
そのため酪農家としては代替飼料の購入をする動機があるのですが、既に補助が出ることが決まっています。
日本農業新聞 - ツマジロクサヨトウ 代替飼料購入を支援 農水省が追加対策 1トン当たり5000円補助農水省は9日、鹿児島などで発生が初確認された飼料作物などの害虫、ツマジロクサヨトウの被害まん延防止の追加対策を明らかにした。生産者集団やJAなどに対し、防除によって不足する飼料の代替分を共同購入する場合、1トン当たり5000円を補助する。
参考:ツマジロクサヨトウに関する情報:農林水産省
おそらくから追加購入するトウモロコシはこの補助の対象になるでしょう。ところで、日本はトウモロコシの大部分をアメリカから輸入してきました。

わが国の年間トウモロコシ使用量は約1630万トン(2007~10年度平均)。その大部分を米国からの輸入によっています。1630万トンのうち、飼料用が1170万トン、でん粉用途を中心とする飼料用以外が460万トンです。

トウモロコシの用途は飼料用が65%ですが、実は工業用にも使われていて、工業用接着剤、製紙、医療用輸液などの原料として使われるコーンスターチにになります。

日本は米国からの輸入が80%を超えています。
今回の日本の追加輸入措置により、中国はトウモロコシ輸入国としての存在感は減退することになります。

https://www.mlit.go.jp/common/000220291.pdf
輸入トウモロコシに依存する日本
もう1つ注目しておきたいのが中国だ。05年には米国に次ぐ4.7%のシェアがあったが漸減し、14年にはついにゼロとなった。中国国内での経済発展による食肉需要増、それに伴う家畜の増加でトウモロコシ需要が増加したことが第一の理由だ。輸出どころか今後は輸入国に転じ、20年には日本の輸入量を超えるとも言われている。 
中国産の輸入減少にはもう1つ理由がある。10年に発生した宮崎県の口蹄疫も起因しているのだ。この口蹄疫では約30万頭の牛、豚などが発症・予防のために殺処分された。国の疫学調査でも結局原因は特定されなかったが、牛の敷き料として利用されていた中国産稲ワラが原因と噂され、畜産業界では中国産の稲ワラ、飼料原料などの輸入を一切やめた。
さて、今回、日本が米国からトウモロコシを追加輸入するのは中国向けのトウモロコシが余剰になったという事情もありました。
これを日本が輸入することは、中国がトウモロコシの大量生産国であり、米国産の輸入国でもあるということから中国に対して影響を与えるでしょう。
かつての中国はトウモロコシを大量生産した分を輸出していたのですが、今は自国での消費にあてるだけでは足りず米国等から輸入するようになっていました。
「トウモロコシの争奪戦」が起こっている様子が分かります。現状では、余剰であるものの、今回のディールにより、また需要が高まったときには、日本はさらに米国から輸入しやすくなったはずです。
今回の追加輸入は、対中国としても効果がある安倍トランプのディールということができそうです。以下にそれを箇条書きでまとめます。
  1. 米国は中国向けトウモロコシが貿易摩擦で余剰になっている
  2. 日本は害虫問題でトウモロコシの代替飼料が必要
  3. 日本は元々米国からの輸入が大半
  4. 日本が世界のトウモロコシ輸入の中でプレゼンスを更に増すことで、トウモロコシを大量に必要とする中国との関係で有利になる
実際に日本の産業界がどれほど米国のトウモロコシを輸入する需要があるのかは分かりませんが、中国が輸入するはずだったが余剰になってしまった分は、日本のこれまでの輸入分に比べれば随分と小さなものです。
このような国際関係を見ると、今回の日米のディールは日米双方にとって、Win-Winの状況だと思います。
さらに、今回の追加輸入は、日米貿易協定とは無関係であり、購入が既成事実となり、毎年日本が同等の追加輸入をしなければならないというわけではありません。
中国が輸入しない米のトウモロコシ 日本が買います | NHKニューストウモロコシの追加輸入は来月の署名を目指す日米の貿易交渉とは別の扱いで、日本政府としては害虫対策のための民間の措置だとしていますが、トランプ大統領が重視するアメリカの農家対策にもつながる側面があると判断したものと見られます。
日米首脳、通商交渉で原則合意 9月下旬に署名へ - ロイター魚拓トランプ氏によると、日本は、余剰になっている米国産トウモロコシを購入することに同意したという。安倍首相はトウモロコシ購入の「可能性」に言及し、民間セクターが対応すると述べた。 
一方の安倍首相は、トウモロコシの購入が既成事実と受け止められないようにしたい姿勢をうかがわせつつも、害虫によって国内の一部農産品が影響を受けており、特定の農産品を購入する必要性が生じていると指摘。民間セクターによる米国産トウモロコシの早期購入を支援する緊急措置を講じる必要があるとの認識を示した。
日本政府ー米国政府でのトウモロコシ売買の合意をしたというよりは、日本側において米国のトウモロコシを追加輸入することが促進されるような措置を講ずる約束をした、というところでしょうか。

いずれにしても日本政府が民間に対して購入を強要するということではありません。

今回の日米のトウモロコシに関する取引は、日米にとってWin-Winであり、中国のトウモロコシ輸入国としての、存在感を弱め、もしかすると、日米の蜜月ぶりをアピールし、最近GSOMIAを破棄した韓国に対する、牽制ともなったかもしれません。そもそも人口が4千万人の韓国がいくら頑張っても日本のようにトウモロコシを輸入することはできません。
さらに今回の日米首脳会談で、日米貿易交渉で農産物の輸入関税の引き下げを中心とした合意に達したことは、トランプ大統領にとって「地獄に仏」ではないがとりあえずピンチを脱する助けになったことでしょう。

その証拠に大統領は、予定になかった日米共同記者会見を行い、農産物の輸入関税の問題だけでなく日本がトウモロコシを大量に購入することを約束したと嬉しそうに語ったのです。

文大統領にしてみれば、最近の日本への反日攻勢で、かつては日本が今回米国を助けたように、韓国も助けていたのですが、もうそのようなことはないであろうことを感じたかもしれません。いや・・・・。無理か?

このようなことでもないと、実は日本がトウモロコシの最大の輸入国であることなど、なかなかアビールすることなどできません。米国も今回のことで、改めて日本がかなり輸入していることを実感したでしょう。
【関連記事】

G7、日米首脳が“断韓”会談実施!? 識者「朝鮮半島“赤化”対応協議か」―【私の論評】日本は朝鮮半島最悪のシナリオを想定し、防衛論議を高めよ(゚д゚)!


2019年8月25日日曜日

大陸客の個人旅行禁止から2週間強、それでもあわてぬ台湾―【私の論評】反日の韓国より、台湾に行く日本人が増えている(゚д゚)!

大陸客の個人旅行禁止から2週間強、それでもあわてぬ台湾

蔡英文台湾総統

中国政府が8月1日に中国大陸から台湾への個人旅行を停止してから半月あまりが経過した。台湾メディアによれば、足元では、中国個人客が1日単位で貸し切ることの多い観光タクシーの利用に落ち込みが目立っているとのことだが、ホテルや飲食店などへの影響はなお未知数のようだ。

今回の中国政府の動きには2020年1月に実施予定の台湾総統選が背景にあると考えられている。「一つの中国」原則を認めない蔡英文政権に圧力をかけることで、彼女の再選を阻止しようとする狙いがあると言われている。また7月に蔡総統がカリブ海諸国への外遊の途中、米ニューヨークに長期滞在したり、米国から武器を購入したりと、米トランプ政権と親密な関係をアピールする動きも、中国の強硬姿勢につながった。

加えて、多くの台湾メディアが、香港の民主派市民のデモとの関係を報じている。中国大陸から台湾に渡航すると、本土では流れていない香港デモの情報に接する機会が多くなる。情報統制の観点から自由な渡航を制限しようとする意図があるとの見方だ。

もっとも、台湾側は今回の中国大陸の個人観光客の渡航禁止を冷静に受け止めている。08年に当時の馬英九総統が中国大陸の観光客の台湾訪問を認めて以降、中国大陸からの旅行者数は増加の一途をたどってきた。12年には200万人を突破し、15年には343万7000人まで増加した。

しかし、16年に蔡英文政権が発足すると、16年284万人、17年209万人、18年205万人と減少した。旅行者数の減少は、中国政府が台湾へのけん制を目的に、意図的にビザの発給を抑制した結果ではないかとも言われている。それでも台湾を訪れる旅行者数は中国大陸からがナンバーワン。台湾交通部観光局の統計によると2位の日本(144万人)を大きく引き離している。

16年に中国大陸からの客足が遠のいた際、台湾の観光産業は大きなダメージを受けた。台湾では中国大陸からの観光客を「陸客」と呼ぶが、「陸客専門」をうたうホテルやレストランの中には倒産したところもあった。当時の反省を踏まえ、台湾では韓国や東南アジアからの旅行客を中心にビジネスを展開する動きが加速した。

台湾の当局も、中国大陸に依存しない経済成長を目指すスローガン「新南向政策」を掲げ、こうした動きを後押ししている。対象となる東南アジア、南アジア、ニュージーランド、オーストラリアの計18カ国に対し、観光分野のプロモーションを強化。現在、東南アジア諸国から台湾を訪れる旅行客に対してビザ申請手続きを簡素化したり、免除したりする動きを加速させている。

大陸からの旅行客の落ち込みを東南アジアで補う構図は、訪台旅行者数の推移からも見て取れる。16年に1000万人を突破して以降、その勢いは衰えず、17年1072万人、18年は1106万人と大陸からの旅行者数の減少にもかかわらず、全体の訪台旅行者は増えている。

中国当局による今回の措置がいつまで続き、どの程度影響が出るのかは、まだ分からない。一つだけ言えるのは、台湾の観光業は中国大陸に依存しない構造へと転換しつつあるということだ。

【私の論評】反日の韓国より、台湾に行く日本人が増えている(゚д゚)!

最近は、日本では韓国の観光客は減りましたが、外国人観光客全体の数は増えています。台湾でも、中国人観光客が来なくなっても、外国人観光客は増えているそうで、結局日本と同じようなことが起こっているようです。

各国の統計機関によるデータにもとづき、2018年1年間の日本人出国者数を韓国・台湾・香港の3市場でみると、韓国は27.6%増の294万8500万人、台湾は3.7%増の196万9200人、香港は4.7%増の128万7800人。韓国は2年ぶりに約3割増の大きな伸びを記録。台湾と香港は1ケタ台の伸びにとどまる結果となりました。

2018年までの10年間推移は以下のとおりです。なお、中国については2016年3月以降の数字が未発表のため、本グラフの更新対象から除外しています。


なお、2018年12月単月では、韓国が33.5%増の25万8500人、台湾が6.7%増の20万人、香港が15.2%増の12万6200人。韓国は2018年3月以降連続して前年を超える伸びを記録し、10月には同年最高となる6割増に達しました。香港と台湾は3月以降、ほぼ前年並みで推移しています。

2018年の12カ月推移は以下のとおりです。


 昨年年末には、日韓関係が悪化しつつあったので韓国への出国者は減って、香港への出国者が若干増えています。台湾もほんの少し増えているようですが、ほんの少しです。

ただし、台湾観光協会によると、2018年(1〜12月)に日本から台湾を訪れた訪台日本人旅行者数は、前年比3.7%増の196万9151人と、過去最高に達したことがわかっています。

目標の200万人にはわずかに届かなかったのですが、西日本豪雨や台風21号による西日本エリアからの出国者減少という逆風もあった中で秋以降は回復し、力強さを見せました。

台湾観光協会の鄭憶萍東京事務所所長は、「関係者の協力のおかげで、2018年は過去最高の約197万人を達成できた。今年は200万人という目標に、3回目の再チャレンジをする」と述べ、新規航空路線の就航や増便も追い風に、日台交流をさらに拡大していきたいと意欲を示しました。

最近では、香港ではデモが発生したので、おそらく香港への出国者は減っていると思います。日韓関係は昨年よりは、確実に悪化しているので、かなり減っていることと思います。

実際韓国で、日本人向けの商売をしている人たちの、日本人の客が減ったとの嘆きの声が、テレビなどで報道されています。

こうなると、おそらく台湾への出国者が増えていると考えられます。2019年は、台湾を訪れる日本人が200万人を上回りそうです。それについては、また新しい統計がでたときに、掲載させていただきます。

台湾の有名ビーチ「墾丁・白沙灣 (White Sand Bay)」

これは当然の流れだと思います。日韓関係が悪くなり、香港でデモということになると、日本の近隣で行きやすいところとなると、一番は台湾です。

それに、台湾は元々日本人が行きやすくなる環境が整っています。まずは、韓国とは違い親日国ということがあります。東日本大震災のときに、世界で一番多額の義援金を送ってくれたのは、台湾でした。無論台湾にも大陸中国に親和的で反日的な人々もいないわけではありません。しかし、現政権そのものは至って親日的です。

であれば、日本人としては台湾に行きたくなるし、私も韓国にいくくらいだったら台湾に行くべきと思います。

私としては、海外旅行初心者にまずはお勧めできるのが台湾だと思います。日本からの飛行時間は3~4時間、時差もマイナス1時間ですので、気軽に行くことができます。

親日的としても知られていますので、親切に対応してくれる方も多いと思います。台湾はグルメにショッピング、夜市が楽しい「台北」、赤い提灯が美しい「九フン」、願い事を書いて空に放つ"天燈上げ"が楽しい「十分」など、見どころがいっぱいです。格安ツアーから豪華ホテルに泊まるツアーまで、たくさんのプランが用意されています。

皆さんも一度訪れてみては?

【関連記事】

「台湾は中国からの武力行使にどう対処するか」古くて常に新しい問題―【私の論評】日本には、中、露、韓は放置し、台湾を支援すべき時がやってきた(゚д゚)!

2019年8月24日土曜日

G7、日米首脳が“断韓”会談実施!? 識者「朝鮮半島“赤化”対応協議か」―【私の論評】日本は朝鮮半島最悪のシナリオを想定し、防衛論議を高めよ(゚д゚)!


G7サミット出席のため、フランス・ボルドーに到着した安倍首相と昭恵夫人=23日

 安倍晋三首相は、フランス南西部ビアリッツで24~26日に開かれるG7(先進7カ国)首脳会議に合わせて、ドナルド・トランプ米大統領との日米首脳会談に臨む。韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権が、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を決定したことを受け、自由主義陣営から離脱しかねない韓国への対応策を協議することになりそうだ。

 「日本は、北東アジアの安全保障環境に照らし、『日米韓の協力に影響を与えてはならない』との観点で、地域の平和と安定を確保したい」「韓国には国と国の約束を守ってもらいたい」

 安倍首相はG7に出発直前の23日、韓国の協定破棄について記者団にこう語った。その表情は、あきれかえっていた。

 米国防総省も、警告を無視した文政権への不快感をあらわにし、「GSOMIAの破棄は、文政権の大いなる思い違いなのだと知らしめることになると繰り返し言ってきた」と異例の声明を発表した。

 日米両国は、北朝鮮の「核・ミサイル」といった地域の脅威に対し、日米韓3カ国の協力体制で対応してきた。だが、文政権の裏切りで、北朝鮮や中国、ロシアが漁夫の利を得て、北東アジア情勢が不安定になるのは避けられそうにない。

 文大統領の狙いは何か。注目の日米首脳会談はどうなりそうか。

 国際政治学者の藤井厳喜氏は「文大統領は、日本の輸出管理強化への不満を『米国に泣きつけば日本が妥協し、撤回する』と思ったが、動かなかったため、米国に不信感を持った。GSOMIA破棄をきっかけに意図的に距離を置き、韓国世論を反米に誘導し、『米韓同盟を米国側から破棄させよう』と狡猾(こうかつ)に動いているのではないか」と指摘する。

 やはり、文氏は、北朝鮮との「赤化統一」を狙っているのか。韓国国民は地獄を見るのではないか。藤井氏は続けた。

 「日米首脳会談ではまず、同盟体制の強化を確認する。さらに、朝鮮半島全体がいずれ『反日・反米』一色で赤化し、安全保障の最前線が38度線から対馬海峡まで下がった場合の対応も協議するはずだ。メモリチップの生産工場を、韓国や中国からベトナムに移すなど、ハイテク産業のサプライチェーンを再構築する策も練り上げるだろう」

 日米両首脳が、「断韓」を確認する会談になるかもしれない。

【私の論評】日本は朝鮮半島最悪のシナリオを想定し、防衛論議を高めよ(゚д゚)!

現代の戦争が、色々な面で「情報戦」であることは間違いないです。ファーウェイをはじめとするIT・通信分野でのサイバー戦争もそうですが、敵の軍隊の動向を各国で共有することも極めて重要な戦略です。

むしろ、ハイテク装置、情報収集能力において日米に格段に劣っている韓国にとってこそGSOMIAは防衛に不可欠な条約です。だから、それを自ら廃止するなど自殺行為です。

韓国政府のGSOMIA破棄決定を伝える韓国のニュース番組

ここまでくると、米国や野次馬たちもドン引きします。

韓国は米国に見放されるだけでは無く、「悪の帝国とその仲間たち」以外から相手にもされなくなるでしょう。

その「悪の帝国」の中には、北朝鮮は入っていない可能性もかなり高いです。このブログでもたびたび掲載しているように、そもそも、金正恩は南北統一など望んでいません。

なぜなら、南北統一をすれば、チュチェ思想などとは無縁で、金王朝等尊敬もしない韓国人が大量に現在の北朝鮮にも入り込んでくることになります。そのようなことは、金正恩は望んでません。

北朝鮮のチュチェ思想塔

金正恩は、何とか制裁を廃止もしくは緩めてもらいたいと切実に思っていたからこそ、最初は文在寅に良い顔して、いかにも南北統一したいように装い、文在寅をもちあげていただけです。要するに、金は文を制裁破りに利用しようとしただけです。

しかし、それに文は我を忘れて有頂天になってしまったのです。

朝鮮半島の分断は、ドイツ、ベトナムと同様に、東西冷戦の産物です。

ドイツは、ベルリンの壁崩壊という東西冷戦の終結を、ヘルムート・コール首相が最大限に使って実現させた。ドイツ統一のケースは、ソ連邦の敗北がもたらしたものです。

ベトナム統一は、逆に北ベトナムが南ベトナムと米国に勝利したことにより実現したものです。米国がベトナム戦争に疲れ切り、国内の厭戦気分もあって、ベトナムから手を引いたからです。

朝鮮半島は、このいずれのケースとも異なっています。韓国の同盟国、米国は強力であり、また北朝鮮を支援する中国やロシアも厳しい制裁により弱体化しつつはあるものの、かつてのソ連のように疲弊しきっているわけではありません。

中国は、GDPで世界第二の大国となり、いまや世界の覇権をアメリカと競っています。ロシアは、ソ連邦の崩壊から立ち直り、プーチンの指導の下、クリミア併合に見られるように過去の大国を復興させる道を歩もうとしています。

しかも、この三つの国のいずれも、現状では朝鮮半島の統一を望んではいません。米国は韓国による統一、中露は北朝鮮による統一を望んでおり、その両者の妥協が困難である以上、現状維持というのがベストなのである。それに先に述べたように、北朝鮮も南北統一など望んでいません。

さらに、金正恩は中国の干渉を嫌っています。自分の叔父や、血のつながった兄を暗殺した背景には彼らが中国と近い関係にあったことがあります。

結果として、北朝鮮とその核が、中国の朝鮮半島への浸透を防いでいます。北朝鮮のミサイルは、日米だけではなく、中国やロシアにとっても脅威なのです。

韓国は、米国に守られながら、中国にも接近し中国に従属しようとの姿勢を顕にしています。文在寅からすれば、これからの世界は、米国と中国の2大国支配する世界(G2)となるので、韓国としていちはやくこれに対応し、中国と接近し、両国の間でうまくバランスをとって、韓国の発展する道を拓こうとしたつもりなのでしょうが、これは裏目に出たようです。

これは、結局中国からも裏切りものとみられ、米国からもそのようにみられるという最悪の結果を招いたようです。

結局、朝鮮半島およびその近隣の国々は、韓国を除いていずれの国も南北統一を望んではいないのです。

最近「断韓」という言葉がよく使われますが、ストーカーのような韓国に対しての唯一とも言える対抗策は「接触を持たない」ことです。どのような話し合いをしても、ストーカーの都合の良いように解釈されるだけなので意味がありません。だから「断韓」政策は世界中に支持されるでしょう。

漫画家の黒鉄ヒロシ氏(73)がテレビ朝日系の情報番組で
         「断韓」の2文字を掲げたことが話題を呼んだ

北朝鮮は勝手に米国との交渉期限を定めましたが、それは金正恩政権がせいぜい年末くらいまでしか持たないことを自覚しているからです。

最近北朝鮮のミサイル発射が続いていますが、日韓関係が悪化している中で、さらに日韓関係にくさびを打ち込もうという目的は確かにあるでしょう。しかしそれ以上に、トランプ政権に対しての「早く餌をくれないと飢え死にしちまうぜ」というメッセージなのです。

だから、トランプ氏の反応も「わかった、わかった、もう少し待ったらちゃんと餌をやるから」というものなのです。そうして、先程述べたように、北朝鮮が結果として朝鮮半島への中国の浸透を防いでいるという面もあるので、トランプ大統領は北の短距離ミサイルの発射をあまり批判的ではないのです。

北朝鮮は年末までもたないようですが、年末といえば、あと5カ月も無いです。さらにそ北朝鮮以上に緊迫しているのが韓国です。

日米・中露・北朝鮮が南北統一を望んでいないにもかかわらず、文在寅だけが、南北統一をしようとしているのですから、それこそ、文在寅の一人芝居であり、他国からみれば、ストーカーのようなものです。

現時点で、考えられる韓国にとって最悪の事態は、北朝鮮が結果として、中国の朝鮮半島への浸透を防いでいることも考え合わせると、米国が韓国を安全保証上の単なる空き地とみなすか否かです。

安全保証上の空き地とは、在韓米軍が撤退したとしても、北朝鮮が中国の朝鮮半島への浸透を防いでいるし、さらには、金が南北統一を望んでいないことから、韓国が中国に急接近しようにもできない状態になり、結果として安全保証上においては、日米にとって有害にも無害にもならないという意味です。

ただし、これには一つ条件があります。それは、在韓米軍が撤退する前に、主に米日が、韓国を経済焦土化をするというものです。

現在のままの韓国経済を残して、在韓米軍が引き上げれば、韓国の経済力に北や中国が食指を伸ばさないはずがありません。これでは、敵に塩を送るようなものです。

その前に日米は、韓国から資産をひきあげたり、様々な手口で金融的に韓国経済を破壊することになるでしょう。

そうなると、韓国経済は疲弊し、経済的には無意味な存在になります。そんな韓国には、北朝鮮も中国も興味を失うことになります。

日米はG7においては、以上のようなことに関連した会談を実施することになるでしょう。まさに、ブログ冒頭に掲載されているような"断韓"会談が実施されるのです。

経済焦土化されて、韓国経済が疲弊すれば、経済難民が北朝鮮や日本に大量に押し寄せるようになります。

これに対して、金正恩は、韓国難民を入国させないように、38度線の守備を強化させるでしょう。

行き場を失った韓国難民は、日本、中国、ロシアに大量に押し寄せることになるかもしれません。中には武装難民も紛れているかもしれません。経済的に崩壊した韓国ですが、残存兵力を用いて破れかぶれてで何かをしでかすかもしれません。

以上は最悪のシナリオなので、韓国が何らかの形で踏みとどまってくれれば良いのですが、文在寅の行動や発言を見ている限りでは、その兆候はありません。今回のG7における日米首脳会談では、無論こうした最悪シナリオも想定しつつ様々な話し合いが行われることでしょう。

朝鮮半島情勢をみると、日本の防衛力強化は火を見るより明らかなのですが、日本で防衛論議が高まらないことに私は日々危機感をつのらせています。韓国がどうのこうのと言う前に、日本は日本の安全保障について早急に議論をすべきです。

【関連記事】

2019年8月23日金曜日

韓国GSOMIA破棄でクーデターの可能性も!? 日韓防衛OBにも衝撃「現役将官のほぼ全員が“失望”している」―【私の論評】日韓関係は現在正常化しつつある。過去が異常だったのだ(゚д゚)!

韓国GSOMIA破棄でクーデターの可能性も!? 日韓防衛OBにも衝撃「現役将官のほぼ全員が“失望”している」

文大統領(左から2人目)は会合でGSOMIAに関する報告を受けた

韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権が日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を決定したことを、自衛隊OBや韓国の退役軍人は衝撃をもって受け止めた。文大統領に対する懸念や失望以上に、怒りが広がる。専門家は韓国内で近いうちに「文降ろしが始まる可能性がある」と指摘する。

 ■伊藤俊幸氏「あまりに合理性に欠けた反日カード」

 金沢工業大学虎ノ門大学院教授の伊藤俊幸元海将は「文氏が通商から安全保障まで反日カードを切ったのは、あまりに合理性に欠ける。これまでも、文氏は北朝鮮のスパイを摘発する部局をつぶすなど、『従北』のむちゃくちゃな対応を見せてきた。日米韓3カ国の安全保障の基盤が揺らぐのを危惧する現役の軍人らの生の声も届いていないようだ」と解説する。

 続けて、「韓国軍にとり、北朝鮮のミサイル発射時には、特に着弾情報は自衛隊頼み。文氏の判断は、情報担当部局には大迷惑な話なのだ。情報は『収集→分析→評価→配布』の流れをとるが、今後は米軍が日韓両国に相互に情報を渡す『配布』の場面で機密情報を一部、加工し、渡す作業が煩雑になるなど、3カ国の連携に支障が出るだろう」とした。

 日本政府はどう対応すべきか。伊藤氏は「日本は韓国の出方を静観すればよい。議論するだけムダだ。激変する国際情勢に備え、こういうときだからこそ、憲法を改正し、自衛隊の存在を明確に憲法に位置付けるべきだ」と強調した。

 ■高永チョル氏「支持率低下を挽回したい思惑」

 かつて朝鮮人民軍と対峙(たいじ)してきた元韓国国防省北韓分析官で、拓殖大学主任研究員の高永チョル(コ・ヨンチョル)氏は「文氏は想定外の行動に出た。政権への支持率低下を、反日をあおり、挽回したいとの思惑があるようだ」と分析する。

 韓国軍は文氏の判断をどうみているのか。高氏は「現役の将官らは100%近くが、『まさか』と失望しているはずだ。軍人は敵(=北朝鮮)と戦い、勝利するのを目的にしているが、『このまま北朝鮮に韓国が飲み込まれるくらいならば』と、正義感の強い一部の軍人たちが、政権の指導者に政変(クーデター)を仕掛ける公算がより大きくなった」とみる。

 その上で「退役軍人団体らも文氏に猛抗議し、弾劾を訴えるデモが今後、激しさを増すのは確実だ。韓国に在韓米軍を置く米国側からの圧力もかかり、協定破棄を見直すべきだとの韓国世論が喚起され、『文降ろし』につながる可能性が出てきた」と語った。

【私の論評】日韓関係は現在正常化しつつある。過去が異常だったのだ(゚д゚)!

韓国は日本の隣国ですが、それだけの理由で親密な関係になる必要はないです。国際関係においては、隣国でも友人にならないこともあるし、離れていても気の合う国と友人になるべきで日本はインドやトルコのような親日国と親しくすべきです。さらに日本ではなぜか、韓国のニュースがかなり多く流れているというのも問題だと思います。

一方的に日本を敵視する国と、隣国であるという理由だけで、仲良くする必要など全くありません。

何やらテレビ等では、現在の韓国と日本の関係が異常であるかのように報道していますが、そうではありません。今が普通であり、過度に韓国に気を使いすぎた過去が間違いなのです。

韓国は、日本が貿易管理を強化したり、ホワイト国から除外したことに対して大騒ぎしていまずが、それ自体がおかしなことです。日本が現在、貿易管理の対象としたり、ホワイト国扱いをしていない国などいくらであります。たとえば、中国、台湾や、インドだってそうです。

さらに、日本だけではなく米国も韓国対して管理を強化したり、それ以上の措置をとっています。それに関しては、このブログにも掲載したことがあります。

それに関してはこのブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【コラム】文大統領専用機はなぜ米国で給油できなかったのか―【私の論評】文在寅は、米国による北朝鮮制裁の韓国への厳格な適用の事実を隠蔽しようとした?
コリアン・エアーの文大統領の「コードワン」と同型機

詳細はこの記事をご覧いただくものとして、一昨年9月に北朝鮮の平壌に行った民間航空機・文大統領の「コードワン」はそれから6カ月間、米国に入国できない「制裁」に引っかかっていたようなのです。

文大統領専用機、つまり民間機「コードワン」が当初発表の米ロサンゼルスで給油せずにチェコで給油したのは、対北朝鮮制裁違反で米国に入国できなかったためではないのかと、韓国内では報道されていました。

私は、この報道は正しいと思います。考えてみますと、この頃から米韓関係は良くありませんでした。

米国の北朝鮮に対する独自制裁について調べてみました。米国版のWikipediaを調べると、以下の記事がありました。

Sanctions against North Koreaこの記事の中に以下のような文書がありました。

Also any aircraft or ship upon entering North Korea is banned for 180 days from entering the United States.これを訳すと、「北朝鮮に入ったいかなる航空機も船舶も、180日間米国に入国できない」です。これによれば、民間であろうが、軍用機であろうが、北朝鮮に入った航空機は、180日間米国に入国できないことになります。

確かに、このような制裁が存在するのです。米国はこの制裁を厳格に適用したのでしょう。

さらに、次のような制裁もあります。
【暴走する韓国】数々の裏切り行為や侮辱発言…日本人の堪忍袋の緒は切れた―【私の論評】韓国にとって重要な国、日本を粗末に扱った文在寅の代償はかなり大きなものになる(゚д゚)!
 

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
韓国の銀行は既に米国で送金できなくなっています。米ニューヨークに進出した韓国系銀行の支店と現地法人が昨年11月から送金中継や貸付などの核心業務を相次ぎ中断しています。米金融当局のコンプライアンス強化の要求に対応できないためです。グローバル金融の中心地ニューヨークで韓国系銀行は連絡事務所に転落しています。 
これは、北朝鮮に対する制裁破りをしている韓国に対する米国の事実上の制裁と考えるべきでしょう。 これは、韓国内ではソフトに報道されていますし、米国もはっきりと制裁とは言ってはいません。
ここでいう、「米金融当局のコンプライアンス強化の要求」とは実際には、コンプライアンスを遵守するため、新たなシステム(コンピュータ・システムも含む)を導入しなければならないようです。ただし、詳細はほとんど報道されていません。

なぜ米国がこのようなことをしたかといえば、韓国銀行による不正な送金があったか、ありそうであった、ということです。だからこそ、コンプライアンスを重視するシステムの導入を韓国銀行に迫ったのでしょう。

このような米国による韓国に対する制裁もしくは、制裁に近いような内容はあまり詳しく報道されないので、詳細を把握することは難しいです。

しかし、このようなことは時々行われているのでしょう。しかし、考えてみてください、もし日本が米国と同じことを実行したら、韓国はどうのような反応をしたでしょうか。

たとえば、文大統領の「コードワン」を日本国内に入国させないようにしてみたり、韓国銀行に対して何らかの制裁をしたとしたら、どうなるでしょう。

たとえば、現在日本のメガバンクが韓国の銀行が発行する信用状に保証を付けなければ、貿易決済さえまともにできないのが実態です。日本が、この保証に制限を設けたりしたらどうなるでしょうか。

またまた、韓国は大騒ぎして、様々な対抗措置を出すかもしれません。それにしても、米国が韓国に対して厳しい措置をしても、韓国はほとんど対抗策らしい対抗策をとったり、韓国内でもほとんど報道さませんが、なぜ日本が同じようなことをすると激しく反応したり、対抗措置を出したりするのでしょうか。

それは、おそらく、米国は韓国が騒いだり、対抗措置をだしたとしても微動だにせず、場合によっては制裁をさらにきつくするのかもしれません。だから、韓国も米国に対してそのようなことをしても無駄だし、そんなことをすれば、「コードワン」の場合は、文大統領の恥をさらすようなものであり、韓国銀行による措置に関しては、さらに制裁などが課されるだけなのでしょう。

米国だって、このような措置をするには、それなりに十分考えて根拠も明確にして実行しているので、韓国が騒ごうが喚こうが、放置し、場合によっては新たに制裁を課すということなのでしょう。ちなみに、日本のメガバングが保証をつけなれば、韓国は貿易決済ができなくなり、完璧に経済が破綻します。

過去の日本は、過度に韓国に気を使いすぎ、韓国が騒いだり喚いたりすれば、それに反応したり、実際に措置を緩和するなどのことをしてきました。それが長い間続いたので、韓国に一種の日本に対する甘えができたのでしょう。

普通の国同士ではありえないことです。たとえば、ロシアに対しても日本は厳しい措置をとることもあります。2019年の初めから日本はロシア産石油の買入量を一気に40.5%削減しました。また液化天然ガス(LNG)の輸入も前年同時期比で7.6%減少しました。一方で米国の炭化水素の輸入は急増。石油は328%、LNGは36.1%増加しています。

これは、一方ではアジアのエネルギー市場でのシェア拡大を望む米国と、もう一方にはロシアの領土問題への不変の姿勢に否定的に反応し、交渉姿勢を強めようとする日本の試みがあると考えられます。
日本は昨年も1月から9月にかけての時期にロシア産石油の輸入量を減らしていました。ところが両国間での平和条約の議論が始まるやいなや状況は変化しはじめ、11月には日本はロシアの石油の購入を急増させました。そして現在は、交渉の行方が不透明になりはじめたことから、ロシア産エネルギーの日本の輸入量は再び減少し始めているのです。
このような措置を韓国に対してとった場合、韓国は大騒ぎすると思います。しかし、ロシアは同じようなことをされても、何も騒ぎもしないし、当然のこととみなしているでしょう。ロシアは日本に対して甘えがないからです。普通の国同士ではこれが当たり前です。
だから、このようなことなど当たり前すぎることなので、日露両国ともテレビや新聞等のマスコミも特段報道もしないので、両国の国民とも知らない人がほとんどでしょう。しかし、日韓は違います。日本が韓国に対して、安全保障上の理由から、貿易管理を強化しただけで、日韓双方のメディアは大騒ぎです。異常です。
相手が友好的になれば、こちらも友好的になるし、相手が敵対的になれば、こちらも敵対的になる。これが国際社会の常識です。

しかし、過去においては、日韓関係はそうではありませんでした。今日の日韓関係がまともなのであり、過去の日韓関係は歪だったのです。

韓国がGSOMIAの破棄しても、日米の安全保障に何ら影響は与えません。孤立して困るのは韓国のほうです。これは、文在寅(ムン・ジェイン)政権による反日政策の延長線上にあり、驚くにあたらないです。

そもそも、人工衛星や情報収集能力に関しては、日米が格段に上です。対潜哨戒能力は日本は世界のトップクラスです。先日の北朝鮮による短距離ミサイルに関しても、韓国は690メートル飛行したとしましたが、日本側の分析では600キロメートルであり、後で韓国は600メートルと訂正しました。

日本の哨戒能力は強力で、レーダー照射のときもかなりの情報をつかんでいるとみられる

韓国がGSOMIAを破棄すれば、韓国には日本からの正確な情報が入ってこなくなるだけの話です。韓国側は破棄の理由として、日本が安全保障上の輸出管理で優遇措置の対象国から韓国を外す対応を取ったことを挙げています。

これらは、本来全く別な話であって、一緒くたにするのは異常です。やはり、韓国には日本に対する甘えが通じると今だに思っているようです。

このような状況はしばらくは続くかもしれませんが、日本が態度を変えないどころか、韓国が今のまま態度をかえなければ、さらに対応を厳しくし、さらに制裁などを加えるというような正しい対応をすれば、韓国も少しずつ変わっていくことでしょう。少なくとも、日本に対する甘えを捨てることになるでしょう。

【関連記事】

【コラム】文大統領専用機はなぜ米国で給油できなかったのか―【私の論評】文在寅は、米国による北朝鮮制裁の韓国への厳格な適用の事実を隠蔽しようとした?



日銀追加利上げのハードルさらに上昇か、世界的な金融緩和強化の流れ―【私の論評】日銀の独立性と過去の失敗:石破政権が目指すべき金融政策の方向性

日銀追加利上げのハードルさらに上昇か、世界的な金融緩和強化の流れ まとめ 英中銀とECB、一段と積極的な緩和の道筋が予想されている 他国・地域の利下げペース加速時の日銀利上げは一段と困難との見方 日銀は、金融政策決定会合で、政策金利を0.25%程度に引き上げる追加の利上げを決定 ...