2016年12月19日月曜日

中国「海賊行為」で米中衝突危機 専門家「『なめられたことをやられては困る』と軍事衝突もあり得る」―【私の論評】衝突すれば日本にも大きな火の粉がふりかかる(゚д゚)!

中国「海賊行為」で米中衝突危機 専門家「『なめられたことをやられては困る』と軍事衝突もあり得る」

中国軍艦が奪った無人水中探査機の同型機(米国防総省提供・共同)
 ドナルド・トランプ次期米大統領への報復か-。中国海軍が15日にフィリピンの公海上で、米海軍の無人水中探査機1機を強奪した。米政府は国際法違反として返還を求めているが、中国は無視している。中国の「海賊行為」が対中攻勢を強めるトランプ氏を刺激することは間違いなく、米中の緊張関係が高まり、専門家は「軍事衝突もあり得る」と警戒している。

 事件はフィリピン北部ルソン島にあるスービック湾の北西約90キロの海域で発生した。米海軍の測量艦が2機の水中探査機を回収しようとしていたところ、中国海軍の潜水救難艦が約450メートルのところまで近づき、小型ボートを出して1機を奪った。測量艦は無線で返還を求めたが、潜水救難艦は要求を無視し、現場から離れた。

 米国防総省のジェフ・デービス報道官は中国の行動を「国際法違反だ」と批判した。報道官によると、水中探査機は海水温度や塩分濃度などを収拾していたという。

 米メディアでは、中国の狙いはトランプ氏に対するメッセージと報じられている。

 FOXニュースは「中国が南シナ海で米軍のドローンを米国人の目の前で盗んだ」という見出しで、今月2日に台湾の蔡英文総統と電話協議をしたトランプ氏に対する不満が、中国の行動の背景にあるとした。

 トランプ政権の発足を来年1月に控え、共和党からは現オバマ政権批判も上がっている。米上院軍事委員会委員長のジョン・マケイン上院議員(共和党)はワシントン・ポストの取材に対し、「こうした行動は米国が強烈で断固とした対応をしない限り続くだろう。これはオバマ政権ではできなかったことだ」と述べた。

ジョン・マケイン上院議員
 台湾の蔡総統との電話会談に加え、中国を台湾の一部とする「一つの中国」原則に疑義を呈したトランプ氏に対し、中国は反発。米シンクタンクは13日付の報告書で、南シナ海のスプラトリー(中国名・南沙)諸島の人工島にミサイルや航空機を迎撃する「近接防空システム」を配備したとみられると指摘している。

 米中関係を危機に陥れるような行動に出た中国の狙いは何なのか。

 国際政治学者の藤井厳喜氏は「軍の一部がやったのか、国家の意思としてやったのかは分からないが、完全な違法行為だ」と指摘。中国が国家として行っていた場合、「米国がどこまで耐えられるか一歩一歩試しているのだろう。オバマ政権のうちに、できるだけ既成事実を作っておこうということではないか」と話す。

 トランプ次期政権の対応について、藤井氏は「トランプ政権は中国に対する警戒感が非常に高まる中でスタートすることになる。アメリカとしても『なめられたことをやられては困る』ということになるから、南シナ海で軍事衝突のようなことが起きるかもしれない」と解説した。

 まさに一触即発の事態だ。

【私の論評】衝突すれば日本にも大きな火の粉がふりかかる(゚д゚)!

中国が、米国の無人水中探査機1機を強奪したことは、一昨日のこのブログにも掲載しました。その記事のリンクを掲載します。
【緊迫・南シナ海】中国海軍艦船が米海軍の無人潜水機奪う 米政府は「国際法違反」と非難―【私の論評】南シナ海を中国戦略原潜の聖域にする試みは最初から頓挫か?
イージス艦、潜水艦、空中ドローン、シーグライダーの連携作戦の模式図
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、無人水中探査機がどのような機能を持ったものなのかを説明するとともに、中国がこの無人水中探査機を強奪した理由に関しても掲載しました。この理由に関しては、私の憶測にすぎないのですが、それを以下に再掲載します。
このシーグライダー(無人水中探査機)は、当然中国の戦略原潜の動向もキャッチできるものと思われます。今回中国に強奪されたものはどのようなものかはわかりませんが、中国としては、このシーグライダーにかなりの脅威を感じているようではあります。

中国がせっかく、長年努力を傾注して、南シナ海を中国原潜の聖域にしようとしても、米国側に南シナ海にシーグライダーを多数設置し、中国原潜の動向を探っていたとしたら、そもそも聖域になりません。

米軍が、このシーグライダーを南シナ海の各所に多数配置して、有人潜水艦や、無人潜水艦、空中ドローン、イージス艦など多数配置して、これらを連動させるようにすれば、中国戦略原潜が不穏な動きをみせれば、すぐに撃沈できるようになります。

実際、今回中国側に捕獲されたシーグライダーがどの程度の能力のものかはわかりませんが、シーグライダーを戦術的に活用しようとするなら、今はそこまではいっていなくても、将来はそのようにするのは当然のことです。

そうして、中国では未だシーグライダーの技術は進んでいないと思われます。今回の強奪は、米軍のシーグライダーがどの程度の能力を持っているか確かめるためと、中国もシーグライダーを開発するため、技術を盗むという目的もあるものと思います。

もし、今回強奪さた米軍のシーグライダーの技術水準が高ければ、すでに中国による、南シナ海の原潜の聖域化は頓挫してしまっているかもしれません。
さて、中国がなぜこのような強奪をしたかについてブログ冒頭の記事の、「今月2日に台湾の蔡英文総統と電話協議をしたトランプ氏に対する不満が、中国の行動の背景にある」としていますが、私はそれだけではないと思います。

やはり、南シナ海を中国戦略原潜の聖域にするという試みが頓挫しそうなので、かなりの脅威をいだき、何が何でも南シナ海を聖域にするという決意を示したものと思います。そうして、この無人水中探査機の性能を調べることと、その技術をコピーすることも理由だったと思います。

このような、無人水中探査機は、ほとんど音を出さないので、中国海軍には探知不可能なのだと思います。ほとんど無音に近く中国海軍が全く探知できない潜水艦を開発する日本がこれを開発した場合、ほとんど無音で、中国側は全く探知できず、自由自在に南シナ海の海域の中国軍の動きを丸裸にできるようになります。米国ももちろん、これを開発し、将来は軍事用に多数の無人水中探査機を世界中の海に放つつもりでしょう。

米国と中国の間には戦争勃発の可能性があり、起きた場合、その展開は日本の動向に大きく左右される。米国の大手安全保障研究機関、ランド研究所がこんな衝撃的な予測を今年の夏に打ち出していました。その要旨を以下に掲載します。

ランド研究所
同研究所は、米陸軍当局からの委託で米中戦争に関する調査や研究を進め、その結果を今年7月末、約120ページの「中国との戦争」という報告書にまとめた。予測期間は2025年までとされています。 

同報告書は、米中戦争が勃発するきっかけとして以下のような事態を想定していた。
・東シナ海の尖閣諸島などをめぐる日中両国の軍事摩擦
・南シナ海での中国のフィリピンやベトナムへの軍事威圧
・北朝鮮の政権崩壊に伴う米中双方の朝鮮半島への軍事介入
・中国の台湾に対する軍事的な攻撃あるいは威嚇
・排他的経済水域(EEZ)や、その上空での艦艇、航空機の事故
以上のような小規模な軍事的摩擦や衝突が米中両国の戦争へとエスカレートしうるとしています。さらに同報告書は、米中戦争の規模などは以下のようになるだろうと予測していました。
・米中戦争は非核の通常戦力による戦闘となる。
・戦闘では主に水上艦艇、潜水艦、航空機、ミサイルが用いられる。宇宙とサイバー空間も戦いの場となる。
・戦闘は東アジアで始まり東アジアで続くが、西太平洋の広大な地域も戦場となる。
・通常兵器での戦闘が激しくなっても、核兵器は使われないだろう。
・中国は米国本土への攻撃は行わないだろう。
・米国は逆に中国本土へ激しい攻撃を加えるだろう。
・地上戦闘はほとんど起きない。
同報告書は以上のように米中戦争の特徴を予測し、さらにその戦闘の形態について、(1)短期で激烈、(2)長期で激烈、(3)短期で軽微、(4)長期で軽微――の4つのパターンを挙げていました。

その上で、それぞれのパターンついて、経済や政治など非軍事面での両国の損失を推定し、戦争の帰趨までを予測していました。 

その予測によると、数日から数週間の「短期」の場合、そして今から近い将来に戦争が起きた場合には、米国が圧倒的に有利だとしています。

一方、2025年に近い時期に米中戦争が起きた場合は、中国軍が「A2/AD」(接近阻止・領域否定)戦略の戦闘能力を着実に強化しているので、勝敗の決まらない膠着状態となる可能性が高いとしていました。 

同報告書で特に注目されるのは、米中戦争の勃発と展開に日本が非常に重要な役割を果たすと強調している点です。具体的には、日本は次のような形で関与する可能性があるとしています。
・中国は尖閣諸島周辺における日本との対立で、米国の日米安保条約の誓約を過少評価し、尖閣で日中間の戦闘が起きても米軍は介入しないとみて軍事行動に出る可能性がある。

・中国は米国との戦争になれば、日本の米軍基地や自衛隊基地を攻撃する確率が高い。その場合、日本はほぼ自動的に米国と共に戦うことなる。

・北朝鮮が中国の「同盟国」として米軍や在日米軍基地にミサイル攻撃を加える可能性がある。その場合も、日本は米国の味方としての立場を明確にするだろう。
このように同報告書は、米中戦争では日本が最初から米国の同盟国として戦う見通しが強いことを強調しています。日本が集団的自衛権の一部行使を容認したことで、その展望はさらに現実的なものとなったとしています。

同報告書は、米中戦争の勝敗の帰趨についても日本の動向が決定的な要因になり得るとして、以下のような点を強調していました。
・米中戦争において、米国の同盟国、友好国の動きはきわめて重要である。中でも日本の役割は決定的となる。 
特に2025年近くの米中戦争では、日本の潜水艦、水上艦艇、戦闘機、ミサイル、情報・監視・偵察(ISR)などの能力は米側にとって不可欠な基本戦力となる。

・米中戦争が長引けば長引くほど、日本の軍事的な対米協力の効果が大きくなる。日本の支援のおかげで、米軍は他の地域の米軍部隊を中国との戦争に転用する必要が減るだろう。中国軍にとって、日米連合の部隊と戦うことは困難になる。

・中国軍は2025年頃までには、年来の対米軍戦略の基本である「A2/AD」戦略の能力を大幅に高め、対米戦を勝敗のつかない長期戦に持ち込むことができるようになる。しかし、日本が米軍を全面支援することで均衡は変えられ、米軍は有利になる。 
以上の日本に関する数々の指摘の中で、「米中戦争が、尖閣諸島をめぐる日中の対立から勃発し得る」という点は、現在の日本にとってきわめて深刻な意味を持つと言えます。

同時に、米中関係が表面的に経済交流などで協調的、友好的にみえても、水面下では最悪の状態にあり、米中戦争の発生も想定しているという米国の現実的な姿勢も、日本はしっかり認識しておくべきです。

さて、上の予測では、米国の大手安全保障研究機関、ランド研究所の分析であるため、軍事に関する分析が中心となっていますが、アメリカにはもう一つ大きな安全保障策があります。

それについては、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
超大国といわれるアメリカの一番の強さは、軍事力でもなく、イノベーション力でもありません。それは、米国による世界の金融支配にあります。現在の世界の金融体制は、ブレトン・ウッズ体制に端を発しています。これは、第二次世界大戦末期の1944年にアメリカのブレトン・ウッズで連合国通貨金融会議が開かれ、国際通貨基金(IMF)や国際復興開発銀行(IBRD)の設立が決定されたものです。 
当時、世界の金の80%近くがアメリカに集中しており、アメリカは膨大な金保有国でした。その金と交換できるドルを基軸通貨とし、他国の通貨価値をドルと連動させるという仕組みで、金・ドル本位制ともいわれます。
世界各国、特に先進国の中で、食料や資源を100%自給できている国は少ないです。中国の食料自給率は85%以下といわれており、アメリカから穀物を買えない事態になれば、13億の人民は飢餓に苦しむことになります。

これに関しては、一昔前にある中国の高官が穀物の需要が増えたり、減ったりする中国の状況を「中国人の胃はゴムボールのようである」と語っていたことがあります。要するに、穀物需要がかなり減ったり、増えたりしても、中国は何とかなることを強調したかったのでしょう。

現実には、そんな馬鹿な話があるはずもなく、貧困層は穀物が手に入らず飢え死にしていたというのが実情でしょう。しかし、それは今から数十年も前のことで、今ではそのようなことはあり得ないでしょう。現状では、中国の貧困層でも何とか食欲を満たす穀物は手に入れられる状態になっていることでしょう。

実際最近では中国が突如、近年世界の穀物輸入国上位に躍り出てきました。2013年~14年期、中国の穀物輸入量は2,200万トンという膨大な量になりました。2006年の時点では、ま中国では穀物が余り、1,000万トンが輸出されていたというのに、何がこの激変をもたらしたのでしょうか?

2006年以来、中国の穀物消費量は年間1,700万トンの勢いで増大し続けている年間1,700万トンというと、大局的に見れば、オーストラリアの小麦年間収穫量2,400万トンに匹敵します。
人口増加は鈍化しているにもかかわらず、穀物の消費量がこれほど増加しているのは、主に、膨大な数の中国人の食生活レベルが向上し、より多くの穀物が飼料として必要な肉や牛乳、卵を消費しているからです。

2013年、世界全体で推定1億700万トンの豚肉が消費されました。そのうちの半分を消費したのが中国でした。人口14億人の中国は現在、米国全体で消費される豚肉の6倍を消費しています。 
とはいえ、中国で近年、豚肉消費量が急増しているものの、中国人一人当たりの食肉全体の消費量は年間合計54キロ程度で、米国の約107キロの半分にすぎません。しかしながら、中国人も世界中の多くの人々と同じように、米国人のようなライフスタイルに憧れています。

中国人が米国人と同量の肉を消費するには、食肉の供給量を年間約8,000万トンから1億6,000万トンへとほぼ倍増させる必要があります。1キロの豚肉を作るにはその3倍から4倍の穀物が必要なので、豚肉をさらに8,000万トン供給するとなると、少なくとも2億4,000万トンの飼料用穀物が必要になります。 
それだけの穀物がどこから来るのでしょうか。中国では、帯水層が枯渇するにつれて、農業用の灌漑用水が失われつつあります。たとえば、中国の小麦生産量の半分とトウモロコシ生産量の1/3を産出する華北平原では、地下水の水位が急激に低下しており、年間約3メートル低下する地域もあるほどです。 
その一方で水は農業以外の目的に利用されるようになり、農耕地は減少して住宅用地や工業用地に姿を変えています。穀物生産高はすでに世界有数レベルに達しており、中国が国内生産高をこれ以上増やす潜在能力は限られています。
2013年に中国のコングロマリットが世界最大の養豚・豚肉加工企業、米国のスミスフィールド・フーズ社を買収したのは、まさに豚肉を確保する手段の一つでした。 
また、中国政府がトウモロコシと引き換えに30億ドル(約3,090億円)の融資契約をウクライナ政府と結んだのも、ウクライナ企業と土地利用の交渉を行ったのも、その一環です。こうした中国の動きは、私たち人類すべてに影響を与える食糧不足がもたらした新たな地政学を実証したものです。 
このようなときに、米国に金融制裁を実施されたら、食料事情は逼迫するでしょうし、食料以外にも様々な物資の供給に支障をきたすことになります。
このように米国による対中国金融制裁が発動された場合、中国はとんでもないことになります。もともと、中国が経済発展できたのは、米ドルを多く蓄えていたからです。それが、信用を創造し、さらに外貨を獲得して、インフラ投資をすることによって発展できたのです。

しかし、金融制裁などされれば、中国の国家戦略は根底から覆されることになります。軍事的にも、経済的にも中国にはほとんど勝ち目はありません。

このようなことを掲載すると、あたかも私は、米中軍事衝突はないと考えていると思われるかもしれません。しかし、そうではありません。

考えてみてください、中国の現体制は、統治の正当性がかなり低いです。日本には、天皇陛下という国民統合の象徴が存在します。米国では、民主的な手続き経て選ばれた大統領が統治します。しかし、中国ではそのようなものは存在しません。

中国では、建国以来毎年平均2万件もの暴動が発生していました。そうして、2010年あたりからは、毎年平均10万件ほどの暴動が発生しているとされています。

中国共産党は、自分たちの統治の正当性を強化するため、日本を悪魔化し、人民の憤怒のマグマを日本に向けさせることで何とか自分たちの保身をはかってきました。また、大規模な治安組織である、城管、公安警察、人民解放軍を駆使して、人民を弾圧することによつても、統治の正当性を強調してきました。しかし、これには限界があります。

中国は日本を悪魔化しないと、統治の正当性を強調できない
この統治の正当性が崩れかけた場合、中国共産党は自分たちの保身のために何をするかわかりません。最近では、韓国で朴槿恵の統治の正当性が崩れて大変なことになっています。しかし、中国において共産党が統治の正当性を失った場合、共産党幹部は、朴槿恵の弾劾裁判どころの話ではなくなります。

人民法廷が開かれ、一族郎党が死罪や流刑や、とんでもない運命をたどることになりかねません。それを防ぐために、どう考えてみても無謀な対日米開戦を実行して、自分たちの保身をはかるということは十分に考えられます。

そうなった場合、米国による金融制裁や、軍事的な攻撃により、現在の中国の体制は完璧に崩壊することでしょう。

しかし、崩壊する過程において、日本にも当然のことながら、大きな火の粉がふりかかることは間違いありません。かかった火の粉は、無論自分で振り払わなければなりません。

ランド研究所の「米中戦争が、尖閣諸島をめぐる日中の対立から勃発し得る」という点は、現在の日本にとってきわめて深刻な意味を持つと言えます。

同時に、米中関係が表面的に経済交流などで協調的、友好的にみえたとしても、水面下では最悪の状態にあり、米中戦争の発生も想定しているという米国の現実的な姿勢も、日本はしっかり認識しておくべきです。

【私の論評】



2016年12月18日日曜日

【悲報】池上彰さんの番組のグラフが「印象操作」だとネットでは批判殺到―【私の論評】裏付けに乏しく、また実感にも乏しい印象操作が支持されるわけがない(゚д゚)!



池上彰の番組が波紋を呼んでいる。問題の番組はフジテレビの「池上彰緊急スペシャル 格差はなぜ世界からなくならないのか」というもので、世界の格差と日本を比べるというものだ。番組では日本の格差が徐々に広がっている点を問題提起していたわけですが、そのグラフが明らかに印象操作していたということだ。


問題となっているグラフは日本の平均所得の推移と、米国の平均所得の推移。一見、米国の赤い色(下位90%)推移のほうはあまり変わっておらず日本はとんでもなく変化しているように見えますが、実はこれ目盛りの値が全く違い、日本のほうは0.8~1.4、対して米国は0.5~3.0と全く異なる。

従ってこれを比べると、日本がものすごい格差が広がっているようにみえるのですが、同じ目盛りの表にしてみると・・・。



(左:番組の表・右:当サイトで同じ目盛りにしたもの)

こんな感じになるはずです。確かに格差は広がっているので間違いではないのですが、左に比べるとインパクトは薄い。

テレビ側としては誤ったグラフを使用しているわけではないが、あえて目盛りを変えたこの表現にネットでは印象操作だ!と批判が殺到している。


ーネットの反応
・ 分かりやすく説明を心がけながらウソをつく奴は社会にとって害悪過ぎるな
・ 池上彰さんがグラフの縦軸スケール弄りとかいう データを騙して見せる初歩的な印象操作してて幻滅しました
・  私もあまり見ないですが最近酷くなりました。
・ これには池上彰にガッカリしました。
・ 池上彰さんの公式謝罪まだかぁ
・ 縦軸を入れるから気づかれるんだよ。
・ 新聞も馬鹿のための読み物なんだろう。
・ テレビで絶対にやってはいけないこと
・ これちょっとひどくね
・ 自分も見てたけど、これはひどいと思った。
・ 池上彰でもこういう事かましてくるので、メディアリテラシーが求められますね
・ 真実はどうでもよくて言いたい事だけいえればいい、と思っているのは分かるけど。
・ そのへん色々解説してくれる池上彰みたいな彼氏欲しい
・ あっ!ホントだ! 放送見てる時には気が付かなかった。
・ 池上彰のグラフ比較のは推移の比較だから縦軸違ってもあれでええんやで

【私の論評】裏付けに乏しく、また実感にも乏しい印象操作が支持されるわけがない(゚д゚)! 

この種の印象操作、テレビで絶対にやってはいけないことのはずです。しかし、現在では、マスコミの人はデータを自分で扱えない人ばかりなので、この手の子供だましにも騙されるようです。これは、マスコミの体質を示す出来事だと思います。

マスコミで消費増税賛成、金融引き締め賛成の人は、財務省や日銀当局の資料・データを鵜呑みにする輩がかなり存在します。というか、資料・データを一回食わされて、それをTVで御開陳。その後も御当局資料・データ依存症になって、結果当局のいいなりコースになるという人は結構多いです。池上氏も紛れも無くその一人です。

池上氏の上のグラフは、1980年〜2010年までのものです。このように、一部を切り取るのも大きな印象操作です。日本では、2012年までは明らかに、酷いデフレでしたから、下位90%の賃金も下がるのは当然ですし、上位10%の賃金も下がっています。しかし、下位90%の賃金がより下がっているので、格差が広がっているのですが、それにしてもその本質はデフレによるものです。

米国は、かつて一度も日本のように深刻なデフレに至ったことはありません。にもかかわらず、格差が広がっています。これは、社会構造による格差です。

もともと、日本は西欧に比較すると格差は少ないほうです。池上彰は、アベノミクスが格差拡大や貧困を加速したということを言いたいのでしょうが、現在もその代表的なデータは事実上存在しません。

つまりこれは、池上彰の勝手な思い込みにすぎないのです。例えば、貧困率は2012年までしか利用できず、ジニ係数の推移はつい最近まで2010年までしか利用できません。だからこそ、池上彰のグラフも2010年までとなっているのです。しかし、2010年といえば、民主党政権下にありました。この古い資料をもって、安倍政権を批判することはできまん。安倍政権は、2013年からスタートしています。


経済格差は高齢化とともに拡大する傾向にありますが、現段階の雇用状況の大幅改善、雇用者報酬の増加、さらには最近の実質賃金の増加傾向も含めると、安倍政権の政策の結果で貧困や格差が増加してはいません。

もちろんさらに経済状況を改善する余地があるとか、または現状の消費低迷からくる経済低迷を改善するという主張なら賛成です。しかし池上彰はまずアベノミクス全否定ありきなのようです。このような事実に反した印象操作、また多くの人々の実感にも乏しい主張が支持されるわけがないでしょう。

だからこそ、ネット上で、池上彰の番組が波紋を呼んでいるのでしょう。

さらに、日本が比較的格差が欧米に比較して少ないことは、以下のグラフからも明らかです。


明らかに、日本の所得上位1%シェアは、英米より低いです。そうして、欧米と根本的に異なるのは、日本では、トップ1%は、所得1300万円以上なのです。これは、無意識に多くの人々から、3000万円とか、もしかすると5000万以上と思われているふしがあります。

トップ1%が年収1300万円を、正確に言います。このグラフの出処である、World Top Incomes DatabaseのJapanのところをみれば簡単に数字は出てきます。トップ1%の年収は1280万円。ついでに、トップ10%、トップ0.1%、トップ0.01%の年収はそれぞれ576万円、3261万円、8057万円だ(いずれも2010年)。

厚労省による所得再配分調査は、世帯の所得分布と等価所得という個人ベースの所得分布について所得再分配前後のデータがあります。以下の図は、等価所得の所得再配分前の所得分布です。


国税庁の民間給与実態統計調査は、毎年出されている統計でしばしば利用されますが、これは給与をもらっている人しか調べていません。(下図)



これによれば、トップ1%は年収1500万円、トップ4%で年収1000万円です。いずれの統計でも、マスコミやそこに出演する多くの人はトップ1%に無論、池上彰自身も入っていることでしょう。

格差問題について、マスコミで議論すると、池上氏のようにほぼ格差を是正すべきという論調になります。もちろん、所得再分配をある程度は行うべきとは、私も思います。ただし、それはあくまで海外と比較しながらにすべきです。日本の格差は、米英のアングロサクソン国に比べれば、たいしたことなく、高齢化でも説明出来る程度に過ぎません。

このような実体があるにもかかわらず、グラフを操作するなどして、テレビで日本の格差が酷すぎるように印象操作をしたとしても、エビデンスに乏しく、実感にも乏しい主張がが支持されるわけがないでしょう。だからこそ、この番組のグラフは、twitterなどのSNSで批判され続けているのです。

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2016年12月17日土曜日

【緊迫・南シナ海】中国海軍艦船が米海軍の無人潜水機奪う 米政府は「国際法違反」と非難―【私の論評】南シナ海を中国戦略原潜の聖域にする試みは最初から頓挫か?


中国軍艦が奪った無人水中探査機の同型機
米国防総省のジェフ・デービス報道官は16日、南シナ海で米海軍の無人潜水機が、中国海軍の潜水艦救難艦に奪われたと明らかにした。米政府は国際法違反と非難し、中国政府に即時返還を要求している。

 事件があったのは15日、フィリピン北部ルソン島にあるスービック湾の北西約93キロの海域。米海軍の測量艦「バウディッチ」が、2機の無人潜水機を回収しようとしていたところ、潜水艦救難艦が約450メートルのところまで近づき、小型ボートを出して1機を奪った。

米海軍の測量艦「バウディッチ」
 バウディッチは無線で返還を求めたが、潜水艦救難艦は応答せず要求を無視した。デービス報道官は中国の行動を「国際法違反」と批判した。

 報道官によると、無人潜水機は海水の温度や塩分濃度、透明度といった「非機密扱いの情報」を収拾していた。ただ、無人潜水機によって収集された海底の地形などを含む情報は通常、潜水艦の航行や対潜水艦作戦に活用されている。

 米海軍艦船はスービック湾を使用し、その沖には中国とフィリピンが係争するスカボロー礁もあり、今回の事件の周辺海域は“前線”の一つとなっている。

【私の論評】南シナ海を中国戦略原潜の聖域にする試みは最初から頓挫か?

さて、今回の中国艦船による、無人水中探査機の強奪については、どのメディアもあまり詳しく解説してはいないものの、これは軍事的にはかなり大きな意味を持つかもしれません。

この無人潜水艦に関しては、冒頭の記事を読んでいるだけでは、どのようなものなのかあまりわからないと思います。実は、これについては以前このブログに掲載したことがあります。

女子生徒が航空機内から撮影した北朝鮮ミサイルの可能性がある
被写体。右側に飛行機雲のような筋が見える=8月24日午前。
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、無人水中探査機に関する部分のみ以下にコピペします。
さて、空中のドローンに関しては、まだ、想像の域を超えていないのですが、それに良く似たものである、水中ドローンに関しては、すでに日本は開発を終えています。

それは、シーグライダーと呼ばれています。その外観はロケットに似ています。その小さな翼で水中を進み、毎時1キロメートル未満で非常にゆっくり移動します。電力消費量は極めて少ないです。

分解したシーグライダー ワシントン大学応用物理研究室が、
地球温暖化による氷河の変化を観察するため開発したもの
 結果として、それは一度に何ヶ月も海中にとどまることができます。2009年には、一挺のシーグライダーが、一回のバッテリー充電のみで大西洋を横断しました。横断には7ヶ月かかりました。
シーグライダーのおかけで、科学者たちは、以前には不可能だった多くの事ができるようになっています。シーグライダーは、海底火山を観察することができます。氷山の大きさを測ることができます。魚の群れを追うことができます。

上で掲載したシーグライダーを水中に投下するところ
さまざまな深度で水中の汚染の影響を監視することができます。科学者たちは、シーグライダーを利用して海底の地図を作成することまでも始めています。

シーグライダーはすでに、数ヶ月も継続する任務を遂行することが可能になっています。ところが、日本の研究者は現在、SORAと呼ばれる太陽光発電を使ったグライダーを開発中で、この船は再充電のために2、3日間海面に出れば、その後作業を続けられます。結果として、必要な何年も海に留まることができます。
理論的には数年間探査が続けられるソーラーパネルを装備したシーグライダー
 現在、シーグライダーを製造するにはおよそ15万ドル費用がかかるとされていますが、それがなし得ることを考えれば、その費用は非常に小さいです。シーグライダーを使えば、企業は石油とガスの探索のために海底調査ができますし、政府は軍事情報を収集できます。
シーグライダーは敵に見つかることなく海面にいる船舶や、近くを通り過ぎる有人潜水艦を特定できます。日本では、軍事転用はまだのようですが、日本の技術をもってすれば、容易にできることです。
この内容は、たまたま私が用いている英語学習教材の『毎日の英速読』というテキストから、日本語訳の部分を引用して加筆したものです。このシーグライダーもしくは、それに似たものが、今回中国の艦船に強奪されたものだと推定できます。

さて、南シナ海というと、中国がなぜ南シナ海にあれほどまでにこだわっているのか、それに関してこのブログに以前掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
中国の膨張路線は止まらないが国際社会から強い逆風 南シナ海のハーグ裁定―【私の論評】通常戦力で勝ち目のない中国は、南シナ海に戦術核を配備する(゚д゚)!
オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所(PCA) 
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、結局中国がなぜあれほどまでに、南シナ海に執着するかといえば、中国近海や、東シナ海などは海が浅いため、そこを中国の戦略原潜(SLBM搭載)が航行した場合、日米によりいとも簡単にその行動を逐一発見されてしまうのですが、南シナ海は深いので、その深いところを航行するとなかなか発見しずらいので、ここを中国の戦略原潜の聖域にしようとしているからです。

南シナ海の平均深度は1200メートル以上です。海盆の平均水深は3500メートル、最深部は約5600メートルにも及びます。中国は戦略ミサイル原潜を4隻配備し、潜水艦発弾道ミサイルを核抑止力の重要な柱にしています。

南シナ海から米軍を追い払えば、冷戦時にソ連が戦略原潜(SLBM搭載)をオホーツク海に潜ませたのと同じように、中国は南シナ海に戦略原潜(SLBM搭載)を自由に展開できます。海南島を出発した最新型の潜水艦が深く潜航し、台湾とフィリピンの間のバシー海峡を通って西太平洋に抜けることが可能になるのです。

従来は深海から発射される核弾頭(SLBM)はなかなか発見できなかった
これにより、中国のSLBMは米国本土全域を標的にすることができるのです。ところがです、軍事目的のシーグライダーが南シナ海に配備されているとなると、中国のこの目論見は完全に外れてしまうことになります。

このシーグライダーは、当然中国の戦略原潜の動向もキャッチできるものと思われます。今回中国に強奪されたものはどのようなものかはわかりませんが、中国としては、このシーグライダーにかなりの脅威を感じているようではあります。

中国がせっかく、長年努力を傾注して、南シナ海を中国原潜の聖域にしようとしても、米国側に南シナ海にシーグライダーを多数設置し、中国原潜の動向を探っていたとしたら、そもそも聖域になりません。

米軍が、このシーグライダーを南シナ海の各所に多数配置して、有人潜水艦や、無人潜水艦、空中ドローン、イージス艦など多数配置して、これらを連動させるようにすれば、中国戦略原潜が不穏な動きをみせれば、すぐに撃沈できるようになります。

イージス艦、潜水艦、空中ドローン、シーグライダーの連携作戦の模式図
実際、今回中国側に捕獲されたシーグライダーがどの程度の能力のものかはわかりませんが、シーグライダーを戦術的に活用しようとするなら、今はそこまではいっていなくても、将来はそのようにするのは当然のことです。

そうして、中国では未だシーグライダーの技術は進んでいないと思われます。今回の強奪は、米軍のシーグライダーがどの程度の能力を持っているか確かめるためと、中国もシーグライダーを開発するため、技術を盗むという目的もあるものと思います。

もし、今回強奪さた米軍のシーグライダーの技術水準が高ければ、すでに中国による、南シナ海の原潜の聖域化は頓挫してしまっているかもしれません。

日本も、シーグライダーの軍事転用はすでに実行しているのかもしれません。実行していようがいまいが、日本も当然のことながら、軍事転用をして、中国原潜の動向を詳細に探索できるようにし、中国海軍を丸裸にして、日本の安全保障を確かなものにすべきです。

日米の数百ものシーグライダーが、南シナ海での中国原潜の動向を逐一探索できるようにすれば、中国の南シナ海の領有化は全く無意味なことになる可能性が大です。

それどころか、このシーグライダーのさらなる開発により、SLBMを所有する核保有国は、核戦略の見直しを迫られることになるかもしれません。

「はやぶさ」などで遠隔操作に実績のある日本が、本気で軍事シーグライダーや、軍事ドローンなどを開発したら、世界のトップレベルのものができます。そうなると、比較的低予算で、満足のいく安全保障策が実行できるようになります。

私の勝手な妄想ですが、海中では、無数のシーグライダーと自動運転魚雷が待機していて、敵が不穏な動きを見せたら、シーグライダーがそれを探知し、必要があれば、自動運転魚雷が即座に敵の艦艇などを撃沈するなどのシステムができたら良いと思います。

空中でも、少なくとも数週間から、数ヶ月くらい飛ぶこのできる軍事探査ステルス・ドローンが常時複数日本の領空・領海上を24時間飛び回り全域を哨戒し、敵が不穏な動きを見せれば、ドローンより、探査情報がこれも多数配備された日本のミサイル基地に連絡がいき、即座に敵のICBMや、SLBM、航空機などを破壊できる仕組みができたら良いと思います。このような仕組みができれば、そもそもスクランブルなど必要がなくなります。

それにしても、ここにきて、軍事技術の急展開がありそうです。そうなれば、ロシアなどの軍事技術も時代遅れになるかもしれません。そうして、日本が世界のトップクラスに躍り出るかもしれません。

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2016年12月16日金曜日

【日露首脳会談】中国、日露連携を警戒「包囲網」強化に対抗―【私の論評】会談のもう一つの目的は、ロシアを安全保障のダイヤモンドの一角に据えること(゚д゚)!

【日露首脳会談】中国、日露連携を警戒「包囲網」強化に対抗

日露による「対中包囲網」を警戒する習近平
中国の習近平指導部は、日本がロシアと連携を深める動きを「対中包囲網」の強化と見なし、強く警戒。ロシアとは経済、軍事協力を通じて「歴史上最良」(中国メディア)の関係を維持し、日本に対抗する構えだ。中国は安全保障面で「厳しい状況」(北京の外交筋)が続いている。

米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の配備を決めた韓国とは関係が悪化。トランプ次期米大統領は台湾に接近する姿勢を見せ、南シナ海の軍事拠点化にも批判的だ。日本とも東シナ海を巡る緊張が解けていない。

こうした状況の中でも、ロシアとは良好な関係を保っており「日米韓をけん制する重要なカード」(中国人研究者)。それだけに日ロ首脳会談の行方には神経をとがらせており、国営通信、新華社は「ロシアを引き込み、中国を包囲しようとの考えは希望的観測に基づく妄想だ」と批判した。

【私の論評】会談のもう一つの目的は、ロシアを安全保障のダイヤモンドの一角に据えること(゚д゚)!

今回の日露首脳会談に関しては、日本のメデイアは北方四島の返還ばかりがクローズアップしており、いささか謝狭窄にすぎてあまりにも話にならないので、以下に「対中包囲網」の準備としてのこの会談の意義について以下に掲載します。

日本のメディアなどは、中露というと、無条件で同盟国であるくらいの認識しかないと思います。しかし、これは無論表面上はそのように装っていますが、どちらも互いに相手を信頼のおける同盟国などとは見ていません。

それに関しては、このブログでも何度も掲載してきました。それに関する記事のリンクを以下に掲載します。
【西村幸祐氏FB】ルトワックはウクライナ危機でシナとロシアの接近は氷の微笑だと分析する。―【私の論評】東・南シナ海が騒がしくなったのは、ソ連が崩壊したから! 安全保障は統合的な問題であり、能天気な平和主義は支那に一方的に利用されるだけ(゚д゚)!
エドワード・ルトワック氏
この記事は、2014年5月27日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この頃米の著名な戦略研究家、地政学者でもあるルトワックが来日中だったが、安倍首相と会っていました。ルトワックは当時ウクライナ危機でシナとロシアの接近がみられたものの、内実は氷の微笑だと分析していました。

この記事には、西村幸祐氏のFBを掲載しましたが、それにルトワック氏の支那とロシアの関係を分析した内容の日経新聞の記事が掲載されていました。それを以下に引用します。
接近する中ロ、氷の微笑が消えるとき

2014/5/25 3:30
 ウクライナ危機をきっかけに中ロはさらに接近し、日米へのけん制を強める……。世界ではこんな見方が多いが、ルトワック氏の予想はちがった。

ロシアは、中国とは仲良くならない。シベリアなどに侵食してくる中国を脅威だとみているからだ。むしろ、ロシアは中国をにらみ、本当は日米と協力を広げたいはずだ――。ルトワック氏はこんな趣旨の予測を披露したという。 
 中ロの表面的な動きをみるかぎり、この分析は必ずしも当たっていない。まさに同じ20日、中ロはこれでもかと言わんばかりの仲良し劇を演じたからだ。 
 訪中したプーチン大統領は、習近平国家主席と懸案だった天然ガスの輸出交渉を決着。対ロ制裁への反対をかかげ、来年に対日・独戦勝70周年式典を共催することも決めた。 
 だが、会談では結局、日米の安保当局者がいちばん注目していた商談が署名にいたらなかった。ロシアの最新鋭戦闘機スホイ35(24機)と地対空ミサイルS400を、中国が買うための契約だ。 
 売却の条件で折り合わなかったとされるが、理由はそれだけではさそうだ。モスクワからは、ルトワック氏の読みを裏づけるような本音が聞こえてくる。 
 「プーチン氏は中国に相当、いら立っている」。クレムリンの内情を知るロシアの安保専門家らは、こう明かす。プーチン氏はかねて中国の台頭に懸念を抱いていたが、昨年12月、不信感を一気に強めるできごとが起きたのだという。 
 それは、習主席とヤヌコビッチ・ウクライナ大統領(当時)が北京で署名した友好協力条約だった。「ウクライナが核で脅されたら、中国が必要な安全を保障する」。条約にはこんな趣旨の合意が入った。 
 中国は「核の傘」を使い、ロシアの縄張りであるウクライナにまで手を突っ込むつもりか。プーチン氏はこう反発したようだ。 
 中国の国内総生産(GDP)はロシアの4倍を超える。中国はその分、ウクライナを含めた周辺国に影響力を広げるのは自然なこと、と考えているのだろう。 
 歴史的にも、長い国境を接する中ロの相性は良いとはいえない。新中国建国の直後、毛沢東、スターリンの両首脳はモスクワで会い、同盟の契りを交わした。それもつかの間、やがて路線対立が始まり、蜜月は10年と続かなかった。 
 「いまの中国は共産党体制だったときのソ連と同じだ。何を考えているのか、外からは分からない。しばしば、唐突な行動にも出る」。公式な場では決して中国を批判しないロシアの政府関係者からも、こんなささやきが聞かれる。 
 では、日本はどうすればよいのか。中ロの結束が弱まれば、日本の選択肢は広がる。それでもロシアが対中外交で協力したり、領土交渉で譲ったりすると期待するのは禁物だ。 
 米政府当局者は「ロシアに過剰な期待を抱かないほうがいい。日本には戦中の経験もある」と語る。第2次大戦末期、日本の降伏が確実とみるや、ソ連は日ソ中立条約を一方的に破棄し、攻め込んできた。 
 ユーラシアの両雄はどこに向かうのか。日本は歴史の教訓をひもときながら、冷徹に次の一手を練るときである。(編集委員 秋田浩之)
http://www.nikkei.com/article/DGXNZO71758060V20C14A5SHA000/?dg=1
習近平とプーチン
この日経の記事にもあるように、「中ロの結束が弱まれば、日本の選択肢は広がる。それでもロシアが対中外交で協力したり、領土交渉で譲ったりすると期待するのは禁物です」。

ルトワック氏は、「ロシアは、中国とは仲良くならない。シベリアなどに侵食してくる中国を脅威だとみているからだ。むしろ、ロシアは中国をにらみ、本当は日米と協力を広げたいはずだ――」ど分析しているそうですが、それを裏付けるような情報はいくつもあります。

このブログ記事には、いくつか引用記事があります。それをご覧いただければ、これはすぐにご理解いただけるものと思います。その記事のリンクを以下に掲載します。
米海軍幹部、自衛隊にNATO加盟国並みの役割期待― 【私の論評】自滅する現中国の現実を見つめよ!現中国は、モンゴル帝国の末裔であり漢民族の中国は唐の時代に滅んでいることを(゚д゚)!
上念司「中国包囲網の決定打はモンゴル・トルコのランドパワー強化に在り!」―【私の論評】ソ連崩壊後、小国ロシアになってから国境溶解が顕著になり中国にとって軍事的脅威はなくなった!日本は経済援助を通じて中国と国境を接する国々のランドパワーを強化すべき(゚д゚)!
 詳細は、この記事をご覧いただくものとして、要旨とそれに簡単に説明をつけて以下に簡単にまとめておきます。

ロシアというと、日本では未だに強国というイメージがあるものの、それはイメージに過ぎず現在のロシアは人口は、日本と同程度(日本1億2千万人、ロシア1億4千万人)、GDPは日本の1/5に過ぎません。

そのロシアは、世界で最も長い国境線を中国と接しています。そうして、この国境線付近では、多数の中国人が国境を越境して、ロシア側で、様々な事業を営んでいます。今では、従来のように国境ははっきりしなくなってしまい、この現象を国境溶解と呼びます。

国境溶解が急速に進む中ロ国境
国境溶解の勢いは衰えることなく、さらに加速され、ますます多くの中国人がロシア領内に自由に入り込んだり、中国領内に戻って大量の物資をロシア領内に持ち込むようなことが、日常茶飯事で繰り返されています。

そうして、このような状況により、中国はかつてのようにソ連との国境線上に軍隊を配置するなど、ソ連の脅威に備える必要はなくなったこともあり、今日海洋新進出が実行しやすくなっているという点は否めません。

これに対処する策として、経済評論家上念氏は、中国と国境を接する国々が経済成長をして、ランドパワーを強化することが有効であることを主張していました。

強面ロシアは、ウクライナではかなり強気にでているようにもみえますが、ロシア側の立場たてば、ウクライナが完璧に西側に落ちてしまえば、西側でも国境溶解がはじまりとんでもないことになるとの脅威からあのような行動にでたものと思います。



そうして、NATO諸国などが本気で、ウクライナに対して軍事援助をした場合、ロシアの脅威は頂点に達します。今のロシアは、米国と戦争する力などまったくありません。おそらく、米軍抜きのNATOとも戦えば負けるし、そもそもそれだけの戦争を遂行する力(経済力および軍事力)はありません。

このように分析すると、ロシアの外国に対する脅威は半端なものではないことが十分に理解できます。

そうして、中国を封じ込めたいということで、まさにロシアと日本の利害は一致しているわけです。

中国を封じ込めたいということでは、ロシアと日本の利害は一致している
さて、首脳会談に対する日本側の関心は「北方領土が返ってくるか否か」に集中しています。歯舞、色丹の2島返還が実現するとの期待が高まっていた事情もあって「2島返還は当然。国後、択捉にも道筋が付かなければ失敗」という厳しい見方もあるほどです。

4島の帰属問題と対ロ経済協力が今回の会談のテーマなのですから、日本側で北方領土の行方に関心が集中するのは当然ではあります。そもそも4島は先の戦争終結後のどさくさに紛れて旧ソ連が奪ったのだから、返してもらうのは当然でもあるとは思います。

しかし、日本とロシアが友好関係が深まれば、今度は中国にとって脅威になります。中国とロシアは地中海や日本海で合同軍事演習をしたり、たびたび首脳会談を開いて蜜月ぶりをアピールしてきましたし、軍事技術においてはまだまだ中国はロシアに頼りっきりです。

現在に中国で日本や米国とまともに渡りええる戦闘機は、ロシアから輸入した最新式のスホーイ戦闘機のみといっても良いくらいです。

そんなロシアが日本と北方領土問題の解決で一致したり、日本が本格的な対ロ経済協力に乗り出せば、中国は脅威に感じるはずです。現在中国を1番の潜在的脅威と認識している日本にとって日ロ友好は、中国を牽制する上でこの上ない良い機会となります。

日本がいくら「日本はこうありたい」と理想論を語ったとしても、自分だけではどうにもなりません。

いくら「平和な日本でありたい」と願ったとしても、他国が侵略してきたら日本の平和は維持できません。そんな時に、憲法9条があっても、何の役にも立ちません。実際に北朝鮮は今年日本海に21発のミサイルを発射しています。中国は軍艦を動員して尖閣諸島を脅かしています。韓国は、未だに竹島を実力で占拠しているます。

日本の平和と安定はアジアの平和と安定抜きには考えられない
こういう現実の中では、日本はできるだけ多くの国と友好関係を深めて、中国や北朝鮮が暴発しないように抑止していくことが日本の安全保障にとってより良いことになります。無論、中国や北朝鮮などと直接友好関係を結ぼうにも、結べるものではありません。

こんなときに、日本がロシアとの友好関係を深めれば、ロシアは中国になど軍事技術を供与しなくても良いと考えるかもしれません。もし、そう考えなかったにしても、中国側はそのように受け取るかもしれません。

安全保障のダイヤモンドを構想し、それを全方位外交を通じて実行してきた安倍総理は、当然の腹の中で、このように考えており、何とか、中国封じ込めの一角にロシアを加えたいと当然考えていることでしょう。そうして、これは、今回の日露首脳会談の目的の一つであることは間違いありません。

ロシアのプーチンは、以前にもこのブログに掲載したように、政敵は暗殺するなどして容赦なく潰すのが常であり、腹の中では何を考えているかは見えないところがあります。だから、本当に信頼できるかどうかはわかりません。

しかし、私たちは、中国やロシアのやり方で学ぶべきところがあります。それは、腹の中では互いに相手を信頼していないにもかかわらず、中ロはウクライナ危機をきっかけに中さらに接近したように首脳会談などを実施して見せつけて、日米へのけん制を強めるように中ロは動くと、世界中に思わせたという実績があります。

これは、ルトワック氏には見ぬかれてしまいましたが、成功していれば、ロシア・中国連合は、日本はもとより、世界中の国々にとって、かなりの脅威となったことでしょう。ロシアの軍事技術と、中国の経済力が結びつけば、これは大変なことです。しかし、現実はそうではありませんでした。

日本も彼らのこのやり方を参考にして、中国に脅威を与えるべきです。実際にその効果はブログ冒頭の記事にある、新華社の「ロシアを引き込み、中国を包囲しようとの考えは希望的観測に基づく妄想だ」という言葉にもあるように、中国は日露首脳会談に警戒感を抱いています。

安倍総理としては、ロシアをうまく操って中国の脅威を少しでも除去できるように努力して頂きたいです。

日露首脳会談そのものについては、いずれ日を改めて、掲載したいと思います。それにしても、日本のメディアや知識人など、このような見方は全くできないようで、単なる領土交渉とそのための経済協力の話くらいにしか思っていないようです。だから、本日は日露首脳会談がらみのテレビ番組など見ていません。あまりにくだらなく幼稚です。

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2016年12月15日木曜日

衆院解散 1月見送り 安倍晋三首相決断、来秋以降―【私の論評】蓮舫・民進党の体たらくと財務省の弱体化で安倍首相は政局運営がやりやすい(゚д゚)!

衆院解散 1月見送り 安倍晋三首相決断、来秋以降

最近の安倍首相
 安倍晋三首相(自民党総裁)は、来年1月の衆院解散を見送る方針を固めた。各種情勢調査の結果を分析した結果、現状で衆院選を実施すれば、自民、公明両党で3分の2超を有する現有議席を割り込む公算が大きく、衆院任期2年弱を残して勝負を打つメリットはないと判断した。来夏は東京都議選が予定されているため、次期衆院選は来秋以降にずれ込む見通し。

 首相は、年末か来年1月の衆院解散を選択肢の一つとして、自民党の古屋圭司選対委員長に所属議員の集票力などを調査・分析するよう内々に指示していた。若手議員の一部差し替えも検討したが、民進、共産両党などが共闘して各選挙区の候補者を一本化した場合、自民党の現有議席(292議席)を割り込み、与党の議席数が3分の2を下回る可能性が大きいことが分かった。

 加えて、衆院任期を2年近く残して厳冬期に衆院選に踏み切れば「党利党略で国民を振り回すな」という批判が強まりかねない。首相はこのような情勢を総合的に勘案し、1月解散を見送った。首相は周囲に「1月の解散はない。メリットはない」と語った。

 来年の通常国会では、平成29年度予算案などに加え、天皇陛下の譲位に関する法整備など重要案件を抱えている。米英伊比など各国で首脳交代が相次いでいることもあり、首相は今後、外交・安全保障や内政などの政治課題に全力を傾注する構え。

 首相の悲願である憲法改正に関する審議は来秋の臨時国会以降に持ち越されることになる。このため、憲法改正の本格審議を前に、首相が来秋に衆院解散するかどうかが政局の焦点となる。合わせて日本維新の会など第三極勢力の動きが活発化する可能性がある。

 ただ、民進党の支持率は低迷を続けている上、蓮舫代表が「二重国籍」問題を抱えていることもあり、与党内では早期解散を望む声は少なくない。来年の通常国会冒頭で28年度第3次補正予算案を成立させ、速やかに解散すべきだという意見もくすぶっている。

【私の論評】蓮舫・民進党の体たらくと財務省の弱体化で安倍首相は政局運営がやりやすい(゚д゚)!

首相の来年早々の衆院解散については、このブログでも何度か掲載し、昨日の記事にもその話題に触れました。昨日の私の結論は来年早々の解散はないであろうとのものでした。昨日この話を掲載した途端に本日産経のこの報道が本日の夕方5時にあったので、本日はこの記事を掲載し、解説を加えることとしました。

なお、この首相の来年1月の衆院解散見送りの報道は、いまのところは新聞では、産経新聞だけのよううです。テレビなどでもほとんど報道されていません。

昨日のこのブログの記事のリンクを以下に掲載します。
GDP下方修正を読み解く 再びデフレ突入の瀬戸際も「600兆円」は達成可能―【私の論評】来年こそは安倍首相が財務省無視で、積極財政を推し進める(゚д゚)!
 
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、昨日の記事では、以下で述べる背景から、来年早々の衆院解散はないであろうと結論づけました。
①次の選挙戦で野党共闘が実施されれば、与党は議席をかなり多く失う可能性がある。
➁蓮舫民進党の体たらくと、強力だった政治集団財務省の弱体化により、安倍総理として政局を含めてかなりいろいろなことがやりやすくなった。
以上の二点から、来年早々の衆院解散はないであろうと結論を下しました。ただし、今から考えると、世界情勢の変化なども大きく影響を与えたと思います。ブログ冒頭の記事には掲載されていませんが、米国の大統領かトランプ氏に決まったこと、そうしてお隣韓国で朴槿恵政権が死に体になっていることも影響したと思います。

ところで、注目を集めた党首討論で安倍総理にこてんぱんにやられ、論理的に言い返せなくなった蓮舫氏はヒステリックに安倍総理を「嘘つき」「逃げる」「答えない」などとブーメランな言葉を吐きまくりました。

そのときの様子が風刺画になって、現在ネット上で実に的確であると話題になっています。その風刺画を以下に掲載します。




ブーメランを投げるどころか間髪入れずに自分の頭にぶち込む蓮舫氏の様子はまさに現実であった討論の様子そのもののようです。対する安倍総理は唖然としており、理解できない言行を繰り返す蓮舫氏に驚いています。

この風刺画をつくったのは絵を描くのが趣味というTwitterユーザーの「ヒカル@zwSZkh6wB2p5F9J」さん。投稿はあっという間に話題になり、即日3,000リツイートを超えて拡散されました。

党首討論など、普通はあまり話題にならないのですが、蓮舫氏の党首討論での振る舞い、発言があまりに上記を逸していたので、ネット上でもかなり話題になっています。

蓮舫氏は未だに二重国籍問題に関しては、はっきりさせず、未だに不明瞭です。そのためか、以下のようなピコ蓮舫の風刺画もネット上に人気を博しています。残念ながらこれを作成した方は誰なのか不明です。


このような時期には、選挙をするというより、安定的な政局運営をすべきと首相は判断したのだと考えられます。蓮舫氏は安倍政権の強力なチアリーダーをやってくれているのですから、確かにこれを利用しない手はないと思います。

そうして、上の記事に掲載してあるように、首相の悲願である憲法改正に関する審議は来秋の臨時国会以降に持ち越されることになりそうです。

そうなると、憲法改正に関する審議をするために、安倍政権が何をすべきかが、見えてきます。

それは、憲法改正審議の直前までに、なるべく内閣支持率を上げることです。そのためにできることのうち、最もやりやすくてかつ、効果のあるものは、やはり経済対策です。



これに関しては、この記事でも掲載したように、金融政策においてはさらなる量的緩和の拡大で、失業率を2.7%くらいまでにすることです。そうして、金融政策の効き目にはある程度のタイムラグがあり、来年秋ころまでにすぐに効果は出ない可能性もあるので、やはり、強力な積極財政政策を打ち出すことが考えられます。

過去を振り返ってみると、安倍政権における経済対策は、金融緩和はうまくいき、雇用状況はかなり良くなっていますが、残念ながら、財政政策においては、8%増税を実施してしまったため、その悪影響が未だに続いており、GDPの伸びは低迷していて、デフレに逆戻りしそうな状況にあります。

残念ながら、安倍政権が成立してからも、なぜか大規模な積極財政策は見送られるどころか、増税して、その悪影響を避けるために、補正予算を組むなどという、なんともちぐはぐな経済対策が行われるという有様でした。

この状況は何が何でも変えなければなりません。変えなければ、健忘改正までに経済を上向かせるようなことは到底無理です。大規模な28年度第3次補正予算案を打ち出すのは当然のこととして、消費税増税の悪影響の克服関しては、減税などの積極財政を打ち出すべきです。

安倍首相が、財務省の意向など完全無視して、選挙で民意を問うこともなく、安倍政権の裁量でこれを実行することができれば、経済はかなり上向き、憲法改正審議もうまくことが期待できます。

来年、安倍総理がまさに、財務省とは関係なく、政治主導でどの程度の積極財政ができるかによって、憲法改正への道が開かれる開かれないかの分水嶺になります。

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GDP下方修正を読み解く 再びデフレ突入の瀬戸際も「600兆円」は達成可能―【私の論評】来年こそは安倍首相が財務省無視で、積極財政を推し進める(゚д゚)!



2016年12月14日水曜日

GDP下方修正を読み解く 再びデフレ突入の瀬戸際も「600兆円」は達成可能―【私の論評】来年こそは安倍首相が財務省無視で、積極財政を推し進める(゚д゚)!

GDP下方修正を読み解く 再びデフレ突入の瀬戸際も「600兆円」は達成可能

GDPの推移、28年7-9は速報値

 8日に発表された7~9月期国内総生産(GDP)の改定値は実質値が下方修正された。1次速報と今回の改定値の違いは、法人企業統計など最新の統計が加わった点である。

 実質GDPの前期比でみると0・5%増から0・3%増、年率換算で2・2%増から1・3%増へそれぞれ下方修正された。

 内訳は、各項目の寄与度でみよう。1次速報と改定値では、民間消費が0・0%から0・2%、民間住宅が0・1%から0・1%、民間企業投資が0・0%からマイナス0・1%、民間在庫がマイナス0・1%からマイナス0・3%、公的需要が0・0%から0・1%、純輸出が0・5%から0・3%と修正された。

 いずれも誤差の範囲であろうが、本コラムで書いたように、マイナス金利による住宅投資増以外はぱっとしない内容である。

 さらに、気になるのがGDPデフレーターの動きだ。GDPデフレーターとは名目GDPから実質GDPを算出するために用いられる物価指数であるが、消費者物価と卸売物価の両方を合わせたようなもので、その推移でデフレ脱却かどうかの判断基準になるとされている。

2016年第3四半期(7-9月)の名目GDPは、前期から0.1%増加して537.3兆円。同様に、
実質GDPは0.3%増加して523兆円(2005年連鎖価格)、GDPデフレーターは0.3%低下して102.7。

 1次速報では、GDPデフレーターは前年同期比でマイナス0・1%と、2013年10~12月期以来、11期ぶりにマイナスになった。改定値でもGDPデフレーターは前年同期比でマイナス0・2%であり、一時、デフレから脱却したかに見えたが、再びデフレに突入の瀬戸際になっているという本コラムで書いた筆者の結論は変わっていない。原油価格の下落は言い訳にならない。原油価格の下落は輸入デフレーター低下になって、逆にGDPデフレーターの上昇要因になるからだ。

 GDPを見る際、今回からちょっとややこしくなった。というのは、国際基準の変更に伴って計算方法を見直したからだ。

 わかりやすいところでいえば、15年度の名目GDPは532・2兆円と、計算変更前に比べて31・6兆円上乗せされている。ただし、今回の改定値での影響は、ほとんど統計誤差の範囲であり、筆者はあまりないとみている。

 今回の計算方法の見直し結果をみて、政府の名目GDP600兆円という目標を揶揄(やゆ)する向きもあるが、国際基準の変更は政府目標のかなり前に決まっていた話なので、政府目標600兆円という話が出た段階で、この上乗せはプロであれば想定内である。

 これを揶揄する識者は、もともと目標達成などできるはずないという立場で批判していた人であるが、それができそうだというわけで、ケチをつけているのだろう。

 この計算方法の見直しがなくても、適切な財政出動を行えば、600兆円は達成可能な数字なのに、ケチをつけたい人は、日本経済の低成長や緊縮財政、日本の財政危機を前提として、増税路線をとる財務省の走狗(そうく)が多いようだ。

 いずれにしてもGDP統計がちょっとさえないので、第3次補正予算の話題も出てくるのではないか。それは、衆院解散と連動したきな臭い話である。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】来年こそは安倍首相が財務省無視で、積極財政を推し進める(゚д゚)!

冒頭の記事で、「いずれも誤差の範囲であろうが、本コラムで書いたように、マイナス金利による住宅投資増以外はぱっとしない内容である」と記していますが、高橋氏本コラムに該当する記事も以前このブログに掲載しています。その記事のリンクを以下に掲載します。
日本の景気は良くなったのか 消費弱くデフレ突入の瀬戸際 財政と金融の再稼働が必要だ―【私の論評】何としてでも、個人消費を改善しなければ、景気は良くならない(゚д゚)!

今回の12月8日の7~9月期国内総生産(GDP)の改定値は、速報値と比較しても誤差の範囲内の相違に過ぎないと高橋洋一は語っています。結局、この時の見立てと何も変わっていないということです。

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事で、高橋洋一氏は「2014年4月からの消費増税の影響はかなりなくなってきているが、消費の力強さがないために、景気回復はまだしっかりしていない。そうなってくると、設備投資にも慎重になるのはやむをえず、横ばいにとどまった」としています。

この記事では、それを実証する、消費支出のグラフも掲載しています。そのグラフを以下に再掲します。


以下にこのグラフ説明をこの記事から引用します。
増税から一年半以上たっても消費税引き上げ直後の“反動減”の時期に当たる4月95.5、5月92.5とほとんど変わらない数字です。特に2015年11月は91.8と増税後最悪を更新しました。
増税前後のグラフを見ていただければ、L字型となっていて、数値が底ばい状態であることが判ります。これは反動減などではなく、構造的な減少です。現時点でも、2015年の平均を100とした指数で90台の後半をさまよい続けています。データでみれば一向に個人の消費が上向く兆しはありません。
この構造的な個人消費の低下は、当然のことながら平成14年4月からの消費税増税によるのです。
これは、どうみても、2014年4月からの8%消費増税が悪影響を及ぼしていることは間違いありません。

これだけ原因がはっきりしすぎるくらいはっきりしているわけですから、 高橋洋一氏上の記事でも主張しているように、大型の第3次補正予算は必須です。

そうして、この記事における、私の結論を以下に掲載します。
日本のGDPに占める個人消費の割合は、60%でありこれが最大です。これを上昇させないかぎり、GDPは上昇しません。政府、日銀とも、これを伸ばすための政策を実行すべきです。特に、積極財政の緊急度は高いです。何をさておいても、なるべくはやく、大型の積極財政策を打つべきです。
そうして、量的金融緩和を拡大しつつ、大型の積極財政を実施すれば、 無論デフレから完全脱却するだけにおよばず、政府の名目GDP600兆円も達成可能です。

そうして、高橋洋一氏は、上の記事で「いずれにしてもGDP統計がちょっとさえないので、第3次補正予算の話題も出てくるのではないか。それは、衆院解散と連動したきな臭い話である」としていますが、これは来年そうそう、衆院の解散総選挙があることを暗示していると思います。

しかし、私は昨日もこのブログで掲載したように、来年そうそうの衆院解散はないとみています。昨日の記事のリンクを以下に掲載します。
蓮舫・民進党の「体たらく」が、首相の解散判断に影響を与える可能性―【私の論評】嘘吐き蓮舫砲が轟きつづける限り、安倍政権は安泰(゚д゚)!
最近とみにブーメランに見舞われる民進党代表蓮舫氏

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、まずはもし次の衆院選において、野党共闘が実行されれば、自民党はかなり議席数を減らす可能性があることを掲載しました。その上で、蓮舫代表の民進党の動きが最近、あまりにも酷く連日のごとくブーメラン減少を起こしている事実を掲載しました。

そうして、結論は以下のようなものでした。
この状況が続く限り、民進党には政権与党に返り咲く資格など全くないと思います。返り咲けば、雇用も経済もぶち壊しになり、日本はまた酷いデフレスパイラルのどん底に舞い戻ることになります。 
このようなことは、一般に周知されるにはある程度時間がかかるようです。だとすれば、来年早々衆院解散選挙をするよりは少し伸ばしたほうが、選挙戦は有利になるかもしれません。これからも、蓮舫代表はブーメランを繰り返し、民進党の支持率はさらに下がるでしょうから、その頃に選挙に踏み切るべきなのかもしれません。

しかし、もう一つ圧倒的に有利なやり方があります。それは、現在3%程度の失業率を2.7%程度に下げることです。そのためには、さらなる追加金融緩和が必要です。

さらに、GDPをもっと上向かせる必要があります。そのためには、機動的な財政政策が必要です。そのためには、減税なども視野にいれるべきです。そのためには、増税一辺倒で国民の敵である財務省を完膚なきまでに打ち砕く必要があります。

これらのことを実行して、経済を完璧に上向かせるためには、それなりにある程度の時間を要します。経済が上向きつつあり、これからかなり良くなることがはっきり見えてきた段階で選挙にすれば、大勝利は間違いないです。

経済のことを考えれば、どう考えても、他の党では駄目で、やはり今のところは自民党に大勝利してもらう以外にありません。何とか、頑張って、次の選挙では大勝利していただきたいものです。
さて、民進党の蓮舫代表が「廃案」の大号令をかけたカジノを含む統合型リゾート施設(IR)整備推進法案は最終的に本日成立しました。民進党は衆院段階では賛否すら決められずに退席し、その後、廃案にかじを切ったのですが、逆に参院では自民党と協調して審議重視の姿勢を取りました。国会対応が最後まで迷走したのは明らかで、蓮舫氏の指導力不足が露呈したといえます。

これは、昨日も述べたことですが、カジノに猛烈に反対する蓮舫氏が、実は民主党政権のときに行政改革担当大臣として、カジノを日本に導入しようとしていた張本人であることが分かっています民進党代表定例記者会見において、そのことをフリーの記者に指摘され、しどろもどろの返答をしていました。

民進党としては、このような事実もあることから、いつまでもカジノ法案に反対し続ければ、このことがさらにマスコミなどで吹聴され、かなり不利になることを認識したのでしょう。そのため、蓮舫氏抜きで、参院では自民党と協調して審議重視の姿勢を取り、カジノ法案成立を容認したものとみられます。

このような状況ですから、安倍政権としては、民進党に関しては蓮舫代表が代表である限りにおいては、民進党はかなり扱いやすいとみていることでしょう。

さらに、安倍政権にとっては、さらに有利なことがあります。それは、あの日本の一大背支持勢力でもあった財務省が最近弱体化の様相を呈していることです。

それについては、以前このブログで指摘したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
麻生大臣を怒らせた、佐藤慎一・財務事務次官の大ポカ―【私の論評】日本の巨大政治パワー財務省の完全敗北は意外と近い?
参院本会議で、民進党の蓮舫代表の代表質問を
聞く安倍晋三首相(左奥右)=9月28日午前
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
017年度税制改正について、8月末から9月にかけて盛り上がった配偶者控除見直しの動きが10月上旬、一気にしぼんだ。新聞報道によると、その理由は「衆院解散風」が吹き、有権者の反発を怖れた自民、公明両党が消極的になった、とされている。 
だが、首相官邸筋によると、迷走させた張本人は財務事務次官・佐藤慎一と主税局長・星野次彦だという。 
彼らは財務省内の合意を得ないまま、与党幹部には「首相官邸の了承を得ている」とウソをつき、暴走した。それを止めたのは副総理兼財務相・麻生太郎と官房長官・菅義偉だった。
麻生財務大臣はこれについては激怒したそうで、従来であれば、財務省は麻生氏を手球にとって、国際会議で、「増税は、国際公約」などと言わせるようなことまてしていましたが、最近は風向きが違います。財務省が衰退傾向にあるのは間違いないようです。

財務省がまだ強固で、民進党もいまよりはまだ活力のあった次期を振り返ってみると、安倍総理は、本来政権の専権事項である、「増税見送り」の決断を過去には、衆院解散総選挙という形で民意を問うて実行しました。

しかし、本来財務省は政府の一下部機関に過ぎないわけで、増税をするとか、減税するなどの方針は政府が決めて、財務省がそれに従い、専門家的な立場から、その実施方法などを選択するというのが、正しいあり方です。

しかし、日本では、そうではなく、財政に関しては、財務省があたかも一大政治勢力のように振る舞い、官庁や政治家などに働きかけ、自分たちのやりたいようにやってきたというのが実体でした。

しかし、先にも述べたようにこの状況は変わりつつあります。衰退した財務省と、最大野党の蓮舫・民進党の「体たらく」というこの2つが重なると、安倍総理としてかなりいろいろなことがやりやすくなります。

そうです。安倍総理は、財務省の意向とは、関係なしに、さらには財務省に無理やり納得させるために、選挙という手段に訴えることもなく、大規模な第3次補正予算等を推進す可能性があります。

来年のことを言うと鬼が笑うという諺もありますが、来年は財務省の意向とは関係なく、安倍総理が、積極財政を実行し始める元年となるかもしれません。そうして、日本における政治主導の元年となるかもしれません。どうなるか、今から楽しみです。

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2016年12月13日火曜日

蓮舫・民進党の「体たらく」が、首相の解散判断に影響を与える可能性―【私の論評】嘘吐き蓮舫砲が轟きつづける限り、安倍政権は安泰(゚д゚)!

蓮舫・民進党の「体たらく」が、首相の解散判断に影響を与える可能性

時間が経つほど、自民党がトクをする?

田崎 史郎

最近とみにブーメランに見舞われる民進党代表蓮舫氏
衆院解散・総選挙時期をめぐる報道がまた、にぎわしくなってきた。産経新聞が12月8日付朝刊で「首相、年内解散見送り 外交優先 来秋ずれ込みか」と打てば、日経新聞は「早期解散巡り臆測 年内?年明け? 真珠湾訪問で与野党に警戒感」(同9日付朝刊)、朝日新聞は「1月解散論 自民に浮上 真珠湾訪問 支持率上昇期待 年明け情勢調査へ」(同10日付朝刊)と報じた。「年内・年明け解散」の有無をめぐって、朝日、日経両紙と産経新聞が真っ向から対立する構図だ。

衆院解散・総選挙時期の見立ては首相退陣と同じくらい、各社政治部の力量が問われる。その戦いに、私も加わってみよう。

     「自民60議席減」の予測もあるなか…

衆院解散は首相の専権事項だから、解散時期を予測するには、安倍晋三、およびその側近にどれだけ食い込んでいるかが試される。と同時に、衆院解散・総選挙をめぐる情勢への認識が問われる。

まず、今、解散するべき時期なのか。2014年12月14日投票の衆院選から2年が経過したので、いつ解散が行われても不思議ではない時期に入った。だから今後、政局は解散の可能性がつねに1割程度はある展開になる。

だが、解散には、国民がなるほどと思う一定の理解が必要だ。米国で来年1月、大統領にトランプが就任。トランプがどんな政策を打ち出すかによって世界が大きく変わる。今年6月、英国の国民投票で欧州連合(EU)からの離脱が決まった。今月、イタリアでは憲法改正の是非を問う国民投票が行われ、敗れた首相・レンツィは辞意を表明した。

来年4~5月にフランス大統領選、来秋にはドイツで連邦議会(下院)選がある。その結果次第では、ドイツ首相・メルケルが続投できるかどうか分からない。世界が不安定化している中で、先進7カ国( G7)首脳会議(サミット)参加国で安定した政権運営を長期に続けているのは日本だけである。こんな時に解散して、国民が納得するだろうか。

国内の政治日程を見ても、安倍は来年1月中旬に豪州、東南アジア訪問を検討し、下旬には訪米してトランプと正式な日米首脳会談を行うことも計画している。そんな時期に衆院解散を行うのは日程的に厳しい。政権の命運がかかった衆院選を行うには、選挙態勢づくり、公約作成、争点設定など緻密な作業が求められるからだ。

また、衆院議員の定数削減・是正は4月の衆院議員選挙区画定審議会(区割り審)の勧告を経て、6月ごろ実現する見込み。このため、年明け解散だと「定数削減・是正逃れ」と批判されるようになるだろう。

次期衆院選で、自民党が議席を減らすのは必至とみられていることも、解散を判断する重要な要素だ。自民党が衆院選で続けて290を上回る議席を獲得したのは12年、14年しか例がない。次期衆院選では、野党統一候補が増える一方、自民党の12年当選組の選挙準備不足などによって、自民党は少なくとも30議席、多い場合には60議席近く減るとみられている。

    解散先延ばしの原因は「民進党」にアリ 

安倍は18年の自民党総裁選で3選され、21年まで続投する可能性が高い。これが現実となるなら、21年までにもう1回、衆院を解散することができる。

その場合、可能性が高いのは20年夏の東京オリンピック・パラリンピック直後の20年秋だ。年明け解散だと当選した議員の任期は21年2月ごろとなり、任期満了近くになってしまう。来秋以降の解散なら、任期満了までに余裕を持つことができる。

安倍官邸が衆院解散を急いでいない最大の理由は、9月に民主党代表に就任した蓮舫の人気が沸かないことだ。7日の党首討論で蓮舫は安倍を「息をするようにウソをつく」となじった。蓮舫の発言は前大阪市長・橋下徹が「人格攻撃」と指摘したように度を超えており、反安倍の人たちには受けても、分厚い保守層は民進党からますます離れただろう。

蓮舫の任期は19年9月まで。蓮舫を見る党内外の目は冷ややかであっても、当分、辞めそうにない。政権中枢部はこう言う。

「蓮舫の支持は今後も伸びず、民進党はもっと落ちていくだろう。解散は先に延ばした方が有利ではないか」

民進党の体たらくが解散時期を先延ばした方が有利という安心感をもたらしている。新聞社の攻防は産経の勝利になるのではないか。

(文中敬称略)

【私の論評】嘘吐き蓮舫砲が轟きつづける限り、安倍政権は安泰(゚д゚)!

野党共闘により、次期衆院選では自民党がかなり議席数を減らすことは、産経新聞も予測の記事を出しています。その予測では、47議席を失う可能性を指摘しています。

その産経新聞の予測記事のリンクを以下に掲載します。
【衆院選シミュレーション】4野党共闘ならば47選挙区で当落逆転 与党326→279 全野党共闘ならば84選挙区で逆転…
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事に掲載されていた、チャートと表を掲載します。



この記事の、結論部分を以下に掲載します。
 試算では、4野党共闘と距離を置く維新の党(現日本維新の会)や次世代の党(現日本のこころを大切にする党)を第三勢力として別枠としたが、維新など全野党が共闘した場合、計83選挙区で与野党の勝敗が逆転する。この場合、与党は243議席と過半数(238議席)をわずかに上回る勢力まで落ち込み、政権運営は極めて不安定となる。
この状況をみると、田崎史郎氏が予想するように、確かに来年早々の解散はないかもしれません。

上の記事で、田崎氏は、"蓮舫の任期は19年9月まで。蓮舫を見る党内外の目は冷ややかであっても、当分、辞めそうにない"としています。

実際にそうです。特に最近の蓮舫代表は、大ブーメランの連続です。政策論争など抜きで、舌鋒鋭く自民党や、安倍首相を攻撃するたびに、鋭く大ブーメランが蓮舫氏を突き刺すことになっています。

特にカジノ法案については、蓮舫代表は党首討論でも、舌鋒鋭くギャンブル依存症の酷さを指摘しましたが、この指摘は非常に矛盾に満ちたものでした。

なぜなら、日本ではカジノは解禁されておらず、現在日本でギャンブル依存症に陥った人々の大多数が、パチンコでそのような依存症に陥っていることは明らかなのに、蓮舫代表はパチンコによる被害に関しては何もいいませんでした。

「パチンコでこのくらい酷い被害があるのだから、カジノを解禁すればもっと酷くなる可能性もある」というのならわかるのですが、パチンコについては一切述べず、まだ解禁になってもいないカジノの危険性を指摘するにとどまっています。これは、大きな矛盾です。

そうして、カジノといえば、カジノに猛烈に反対する蓮舫氏が、実は過去にカジノを日本に導入しようとしていた張本人であることが分かっています。

12月8日の民進党蓮舫代表定例会見において、ある記者が質問をしていました。



この動画の、11分16秒あたりで、フリーの記者の佐藤りょうへいという方が質問をしています。この動画また民進党に削除されるかもしれないので、以下に質問の要旨のみ掲載しておきます。

2011年、民主党はカジノ導入を成長戦略として考えていました。カジノ解禁に向けてつくられた資料は証拠として残っており、当時の行政改革担当大臣を調べるとなんと蓮舫氏。記者はこの点について「蓮舫氏の方針が当時と変わったという理解でよろしいでしょうか?」と質問しました。

これに対し、蓮舫氏は「カジノ解禁は当時たくさんあった規制改革案の一つにすぎない。私がカジノ解禁について議員立法に力を入れたことはない。政府として一つの選択としてあったという程度の認識です」と回答しました。

しかしこれは真っ赤な嘘。この受け答えはあまりにも卑怯です。

蓮舫氏のこわばった表情が全てを物語っています。要するに過去に自分自身もカジノをつくろうとしていたのに、安倍総理がやろうとするとたちまち反対派にまわったということです。

当時の民主党政権下でつくられた「国土交通省成長戦略」の資料によると、観光戦略としてカジノを中心に総合リゾート開発を推し進めることが力説されており、しかも数年以内の実現を目指すと具体的なスケジュールまで明記されています。

さて、その資料の一部を掲載します。

▼「2~3年後の実現を目指すもの」にカジノが挙げられています。治安が悪くなるリスクに配慮しながら、実施すると書かれています。


▼「早期の実現を目指すもの」に新しい観光アイテムとしてカジノが挙げられている。



党首討論において蓮舫氏は安倍総理を嘘つき呼ばわりすることで見事な自虐ネタを披露し盛大な笑いをとってました。蓮舫氏が投げるブーメラン攻撃がことごとく投げた本人に当たるものだから見ていて滑稽です。

この党首討論については、このブログでも紹介しています。その記事のリンクを以下に掲載します。
蓮舫代表、醜悪ブーメラン直撃 首相相手に罵詈雑言連発の党首討論デビュー―【私の論評】パチンコ業界守護神の蓮舫民進党は風前の灯火(゚д゚)!
7日の党首討論で、安倍晋三首相への口汚い批判を繰り返した蓮舫民進党代表
民主党政権時代の大臣としてカジノをつくろうとしていたのに、今では涼しい顔でカジノ反対派に転身です。白々しい以下のツイートをご覧頂きたいです。


多くの有権者は、そもそも戸籍謄本も公開できない日本人かどうかすら怪しい人に「世界に誇る美しい国」などと言われたくないでしょう。これぞ息をするように嘘をつく、蓮舫氏の嘘のつきっぷりはまさに神ってます。

それにかなり心配というか、蓮舫氏に関しては"大丈夫なのか?"と言いたくなります、わずか5年くらい前のことも記憶にない、記憶になかったとしても、党首討論などに備えるためには、その頃のことを調べてみたりするのが当たり前だと思います。私自身は、民主党政権は、カジノ法案を推進していた事は、うっすらとですが覚えています。

政治の世界は、本来少なくとも3年〜5年くらいのスパンで物事を考えてもらわないと困ります。民間会社ですら、最近では3年〜5年くらいの長期経営計画を立案して、会社の舵取りをしています。政治の世界では、10年、20年場合によっては、50年くらいのスパンで物事を考えなければならないことがあるはずです。

たとえば、総務省が11月29日発表した10月の労働力調査によると、正社員は前年同月に比べ74万人増え3405万人となりました。非正規は31万人増の2028万人でした。正社員の増加が非正規を上回るのは2カ月連続です。


企業は年末の繁忙期を前に、待遇のよい正社員でないと人手が集めにくくなっています。

厚生労働省が同日発表した正社員の有効求人倍率(原数値)は0.92倍と過去最高になった。全体の有効求人倍率(季節調整値)も1991年8月以来となる1.40倍の高水準に達しています。

10月の完全失業率は前月と同じ3.0%。総務省の同月の家計調査によると、実質消費支出は前年同月比0.4%減でした。正社員化による待遇改善が続けば、消費の活性化につながる可能性があります。

雇用に関してほとんど、無知と言っても良い、民進党は、雇用と金融政策との相関関係について全く理解していません。だから、雇用に関する質問や、発言はいつも頓珍漢です。

一般に金融緩和の過程で、雇用状況が改善していく過程において、最初はパート・アルバイトなどの雇用が増えます。そのため、実質賃金が下がるのですが、さらに雇用状況がよくなると、正社員の雇用も増え、実質賃金も増えるようになります。しかし、このようになるには少なくとも3年はかかります。

そのことを認識しない民進党は、金融緩和を始めて一年も経っていない時から、やれ「非正規ばかり増えている」とか「実質賃金が下がっている」挙げ句の果てに「民主党政権の時代のほうが正規雇用が多かった」などと大騒ぎをしていました。

民進党は、雇用に関しては、ほんとうに数ヶ月くらいのスパンでしか物事を見ていないようです。これは、民進党だけではなく、他の野党も大同小異です。野党はもつそろそろ、雇用と金融政策との関係を認識して雇用に関してもっと前向きでまともな論議をすべきです。

普通の会社ですら、業績が一端低下すると、それを元に戻したり、さらに成長させるためには、数年の年月を必要とします。

私は、最初は民進党のこの愚かな振る舞いや、蓮舫代表の愚かな発言に関して、何でも政争の道具にしようとするからあのようなことになると思っていたのですが、最近ではそうではないと思うようになりました。

雇用情勢や経済に対する民進党の発言をみていたり、わずか5年前に、カジノを推進していたことをきれいさっぱり、忘れている蓮舫代表などを見ていると、本当に数ヶ月単位でしか物事を考えていないのだと思います。まるで、脊髄反射のようです。

脊髄反射を起こすための刺激の伝導路、脊髄反射弓
この状況が続く限り、民進党には政権与党に返り咲く資格など全くないと思います。返り咲けば、雇用も経済もぶち壊しになり、日本はまた酷いデフレスパイラルのどん底に舞い戻ることになります。

このようなことは、一般に周知されるにはある程度時間がかかるようです。だとすれば、来年早々衆院解散選挙をするよりは少し伸ばしたほうが、選挙戦は有利になるかもしれません。これからも、蓮舫代表はブーメランを繰り返し、民進党の支持率はさらに下がるでしょうから、その頃に選挙に踏み切るべきなのかもしれません。

しかし、もう一つ圧倒的に有利なやり方があります。それは、現在3%程度の失業率を2.7%程度に下げることです。そのためには、さらなる追加金融緩和が必要です。

さらに、GDPをもっと上向かせる必要があります。そのためには、機動的な財政政策が必要です。そのためには、減税なども視野にいれるべきです。そのためには、増税一辺倒で国民の敵である財務省を完膚なきまでに打ち砕く必要があります。

これらのことを実行して、経済を完璧に上向かせるためには、それなりにある程度の時間を要します。経済が上向きつつあり、これからかなり良くなることがはっきり見えてきた段階で選挙にすれば、大勝利は間違いないです。

経済のことを考えれば、どう考えても、他の党では駄目で、やはり今のところは自民党に大勝利してもらう以外にありません。何とか、頑張って、次の選挙では大勝利していただきたいものです。

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