2018年1月19日金曜日

難民認定制度、厳格化の背景に…民主党政権下の就労許可制度 正しいルールで外国人雇用を―【私の論評】また一つ民主党政権の負の遺産が払拭された(゚д゚)!


総務省
 難民認定制度の厳格化が行われている。法務省は、難民認定申請から6カ月後に一律就労を認めている現行の制度を見直し、借金逃れなど明らかに難民に該当しない事情を述べている申請者には就労を認めず、在留期限後に退去強制の手続きを取ることとした。

まず、しばしば引用される数字を示そう。2016年の先進7カ国(G7)諸国と韓国の難民認定者数(認定率)は次の通りである。ドイツが26万3622人(41%)、フランス2万4007人(20%)、米国2万437人(62%)、英国1万3554人(33%)、カナダ1万226人(67%)、イタリア4798人(5%)、韓国57人(1%)、日本28人(0・3%)。

 この数字について、いわゆる「人権派」から、日本の難民認定があまりに厳しすぎると批判の対象になることもある。日本は、難民条約に加入しており、その条約における難民の定義に即しているが、批判者から見れば、難民条約そのものが「政治難民」を主に対象としているため既に時代遅れになっており、難民の範囲が狭すぎるという意見である。

 ちなみに、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、「経済・紛争難民」もやや広い範囲で含みうるガイドラインも作っているが、それは法的拘束力を持っていないので、日本としては難民条約に基づいて法執行しているという立場である。

 このスタンスが人権派から批判されているのだが、あくまで難民条約は遵守している。それは日本の移民政策の反映でもある。難民条約だけなのか、難民条約にガイドラインを加えるのがいいのかはそれぞれの価値判断によるので、政策判断でもある。

 いずれにしても、現在の法務省の難民認定行政では、「難民」と認定できない人が大量に難民申請をしてきたと言わざるを得ない。

 それは、現行の難民申請6カ月後から一律に就労許可が得られる仕組みの影響が大きい。この仕組みは民主党政権において2010年から導入された。この運用方針によって、就労目的で難民申請する人が増えてきたのは事実だろう。

 現状について法務省は、難民申請の多くが出稼ぎを目的とした「偽装難民」とみている。そこで、法務省は1月12日、申請者を分類し「偽装難民」に該当する場合には就労許可を出さない方針を公表したというのが、厳格化の背景である。

 難民申請6カ月後から一律に就労許可が得られるというのは、明らかにおかしい。今回の方針によって「偽装難民」だけに一律の就労許可を与えないだけなので、「難民」には関係のない話である。

 一方、こうした「偽装難民」を生み出すのは、アベノミクスの成果である国内の雇用環境が好転したことも影響している。国内で人手不足になって、海外からの雇用が必要になっていることも一因だ。国内雇用を損なわない形で、正しいルールでの外国人雇用も必要である。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】また一つ民主党政権の負の遺産が払拭された(゚д゚)!

法務省は今月12日、難民申請制度について、申請6カ月後から就労を許可する現在の運用を廃止すると発表しました。就労目的の難民申請が急増していることを受け、「濫用・誤用的な申請を抑制する」としています。15日から適用しました。

上川陽子法相
上川陽子法相は午前の会見で「(難民の)受け入れを消極的にするという趣旨ではない。保護が必要な難民への適正な対応に傾注したい」と述べました。

今回の見直しでは、難民申請後2カ月以内に申請者を、1)難民の可能性が高い人、2)明らかに難民に該当しない人、3)再申請を繰り返している人、4)その他──に分類する。1)には速やかに就労を許可する一方、2)や3)については就労不可として、在留期限終了後に新たな在留資格を付与しないことにしました。

日本では2010年3月から、難民申請を行った6カ月後から認定手続きが完了するまでの間、就労が認められるようになりました。これは、本当に摩訶不思議な制度です。運転免許の資格試験を受けて、まだ合格もしていないのに、合否が決まるまでの間は、運転できるようなものです。

上の記事を読んだだけでは、なかなか理解できない部分があると思います。難民申請は何度できるるし、しかも審査に2年以上かかるというところが肝です。

とにかく外国人が、本当に難民であろうがなかろうが、難民申請をして半年過ぎれば、申請が認可されようがされまいが、審査が終了する2年後までは、日本で働くことができるということです。これでは、申請を何回か繰り返せば、自分の好きなだけ働けることになります。

申請数はその後増加を続け、2016年の申請者は1万0901人と初めて1万人を上回りました。認定数は28人にとどまりました。

2017年1─9月の申請者は1万4043人に上り、前年同期からさらに1.8倍に増加しました。認定数は9人でした。

説明を追加

これをこのまま放置しておけば、この事実が世界中に広まり、世界中から日本に偽装難民が押し寄せることなったかもしれません。それを恐れたからこそ、政府はこの制度をやめて元に戻したのでしょう。

それにしても、民進党も、立憲民主党も希望の党も、このことには一切触れません。自民党安倍政権には何でも反対なのに、なぜでしょう。やはり、そんなことをすれば、逆に自民党側から自分たちの旧悪を暴露されれば、自分たちに不利になると考えているのでしょう。それは、マスコミも右にならえというところなのでしょう。

さらに、高橋洋一氏の記事には掲載されていませんが、日本は難民・移民を受け入れていないし、最近でも受け入れていないという認識が多くあるようですが、それは明らかな間違いです。

日本は、戦後多くの朝鮮半島からの難民・移民を多数受け入れています。これについては、以前もこのブログに掲載したことがあります。
パリ同時多発テロの根底にある100年の歴史―【私の論評】本当の歴史を知らなければ、今の世界も日本国内の難民・移民問題も見えなくなる(゚д゚)!
パリ同時多発テロがあったレストラン前に集まり、ろうそくに火をともすパリ市民ら
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、現在の中東難民などを多く生み出してしまう原因を作り出した、EU諸国について掲載するとともに、日本ではマスコミも政治家も口を閉ざしていますが、いわゆ在日朝鮮人・韓国人の中にも難民・移民が存在することを掲載しました。

それにしても、場合によっては難民を事実上無制限に受け入れてしまいかねないようなこのような仕組み、それも法律にも基づかないような仕組みを入れた当時の民主党は何を考えていたのでしょうか。

これは、明らかに日本を破壊しようとしていたといわれても、致し方ないでしょう。そうして、民主党政権は他にも日本を破壊しようとしたとしか思えないようなことをしていました。たとえば、外交・経済・安全保障面での衰退です。その他数え上げればきりがないです。

民主党政権が崩壊してから、5年になりますが、この5年間で多くの国民がこの民主党政権の悪辣さを忘れてしまったようです。

民主党政権を率いた菅直人氏始め多くのメンバーは社会主義者であり、社会主義者の本質は破壊主義です。多くの破壊主義者は、まずは自分自身を善人であるとまわりを騙して、その次に自分が属する組織(国家や社会、自分の属する会社や学校、地域社会)を騙し扇動して破壊しようとするのです。このような性質があるからこそ、党の名前を変えたり、挙句の果は分裂するということも平気でできるのです。

最近の心理学では、以前は人間が物事を判断し決定をするのは理性だとされていましたが、実は人間の理性を支配するのは感情であることが判明しています。人は必ずしも合理的には動いていないのです。

破壊主義者は建設精神よりも破壊本能が大きいので、自分勝手に夢想して、建設的であると称して破壊に専念します。ヒトラー、毛沢東、スターリン、ポルポト等がその最も典型的で極端な例です。

このような日本弱体化への推進勢力である、民主党はなくなりましたが、そのDNAは民進党へ、そうして立憲民主党、希望の塔へも受け継がれていることを忘れはならないと思います。

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2018年1月18日木曜日

“フェイクニュース大賞” 米大統領が発表―【私の論評】日本のマスコミによる米国報道は間違いだらけ!話1/5くらいで受け止めよ(゚д゚)!

“フェイクニュース大賞” 米大統領が発表



就任から1年となるアメリカのトランプ大統領は、うそだったと見なしたニューヨーク・タイムズやABCテレビなどの報道を“フェイクニュース大賞”と称して発表し、メディアとの対立が深まっています。

今月20日で就任から1年となるトランプ大統領は17日、ツイッターを通じ、“フェイクニュース大賞”と称して、自身がうそだったと見なした報道を発表しました。

“大賞”には11の報道が選ばれていて、トップには、おととしの大統領選挙でトランプ氏が勝利した際、「これで経済は決して回復しない」とする経済学者の見解を報じた有力紙のニューヨーク・タイムズの報道を挙げています。

そして、2つ目には、先月、いわゆる「ロシア疑惑」をめぐりトランプ大統領とロシアとの関わりを伝え、内容に誤りがあったとして担当した記者が停職処分になったABCテレビの報道を選び、これによって株価が急落したと批判しています。

さらに、トランプ大統領が去年日本を訪れた際、迎賓館でこいが飼育されている池に、木箱に残っていた餌をすべて投げ入れる様子を報じたCNNテレビの編集を挙げ、過剰な餌のやり方に見せているが、安倍総理大臣にならっただけだと反論しています。

また、有力紙のワシントン・ポストなどの報道も“大賞”に選んだほか、最後には、ロシアとの共謀をめぐる報道を挙げ、「最大のでっちあげで、共謀はない」と主張しています。

そして、「偏向し、不公正な報道やフェイクニュースの1年だった」と回顧し、トランプ大統領としては、みずからに批判的なメディアに圧力をかける狙いがあると見られます。

これに対し、メディア側は「報道の信頼をおとしめる攻撃だ」などと反発していて、対立がさらに深まっています。
11の“大賞” 「授賞理由」とトランプ氏の「反論」
トランプ大統領が選んだ11の報道。トランプ氏はみずからの言い分や反論も記しています。

【ニューヨーク・タイムズに】
おととしの大統領選挙でトランプ大統領が勝利した際、ノーベル経済学賞を受賞した経済学者のポール・クルーグマン教授が「これで経済は決して回復しない」とした見解を掲載した報道。

大統領就任以来、アメリカ経済は200万人近い雇用を創出し、8兆ドル以上の富を獲得している。

黒人やヒスパニック系の市民は歴史上で過去最低の失業率を享受している。

【ABCテレビに】
先月、いわゆるロシア疑惑をめぐり、トランプ大統領がフリン前大統領補佐官にロシア側と接触するように指示したと報じた内容について、接触を指示した時期に誤りがあったとして担当した記者が停職処分になったことと、これによって株価が急落したことについて。

【CNNテレビに】
大統領選挙の期間中、内部告発サイト、ウィキリークスからハッキングされた資料を、当時のトランプ候補と長男のジュニア氏が入手したという報道。

【雑誌「タイム」に】
トランプ大統領が大統領の執務室からキング牧師の胸像を撤去したという報道。

【ワシントン・ポストに】
フロリダ州で開かれたトランプ大統領の集会にほとんど人が集まっていなかったとするツイッターの写真を載せたこと。

大勢の人が会場の外でこれから入ろうとするところで、中に入れない人もいるほどだった。

不誠実な記者が、人がいっぱいになる前の写真を掲載した。

【CNNテレビに】
トランプ大統領が去年、日本を訪れた際、迎賓館でこいが飼育されている池に木箱の餌をすべて投げ入れた映像の編集。

過剰な餌のやり方に見せているが、先に餌をすべて投げ入れた安倍総理大臣にならっただけだ。

【CNNテレビに】
トランプ政権の元広報責任者のスカラムッチ氏がロシア側と接触していたという報道で、編集のプロセスが守られていなかったとして担当した3人の記者が辞職したことについて。

【週刊誌「ニューズウィーク」に】
ポーランドの大統領夫人がトランプ大統領と握手をしなかったという報道。
握手をしている写真を公開。

【CNNテレビに】
トランプ大統領がロシア疑惑をめぐる捜査の対象になっていないとする主張に対して、FBIのコミー前長官が議会の公聴会で異議をとなえる見通しとする報道。

【ニューヨーク・タイムズに】
トランプ大統領が気候変動に関する報告書を隠蔽していたとする報道。

【ロシアとの共謀をめぐる報道】
ロシアと共謀したとする報道はアメリカ国民に対する最大のでっちあげ。
ロシアとの共謀はない!

このように11の項目を “フェイクニュース大賞” として並べ、メディアは90%の時間をトランプ大統領のネガティブな報道かフェイクニュースに費やしているものの、トランプ大統領は就任からおよそ1年の間に多くの成果を出している、と強調しました。

共和党議員が「恥ずべきこと」大統領を批判

与党・共和党のフレイク上院議員は17日、本会議場で演説し、トランプ大統領がメディアを「人々の敵だ」と主張していると指摘し、旧ソビエトの指導者のスターリンを引き合いに出して、「恥ずべきことだ。事実に忠実でなければ民主主義は続かない」と述べ、厳しく批判しました。

おひざ元の共和党からも、メディアとの対立を懸念する声が上がっていることについてホワイトハウスのサンダース報道官は17日の記者会見で、「われわれは日々、メディアを歓迎し、質問を受けている。トランプ大統領もそうだ」と反論しました。

CNN記者がトランプ大統領を非難

アメリカの首都ワシントンでは17日、トランプ政権を取材する記者らが参加したシンポジウムが開かれました。

この中で、ホワイトハウスを担当するCNNテレビのアコスタ記者は「トランプ大統領はわれわれをフェイクニュースと呼び、報道に対する信頼をおとしめている。大統領としてふさわしくない対応をしており、容認すべきでない」と非難しました。そのうえで、「われわれの行動指針は真実を伝えることだ。大統領が誰であれ、われわれをなんと呼ぼうが、それがわれわれの仕事だ」と強調しました。

シンポジウムを聴きに来た男性はNHKの取材に対し、トランプ大統領が“フェイクニュース大賞”を発表したことについて「報道の自由は憲法で保障されており、政治家を追及するのは報道機関の責務だ。トランプ大統領が憲法を尊重していない証拠であり、不必要にメディアと敵対的な関係をつくることは憲法の価値に反する」と話していました。
トランプ大統領ツイッター「いいニュースもある」トランプ大統領は17日、ツイッターに「非常に腐敗し不誠実な報道があるが、私が尊敬するすばらしい記者もいるし、アメリカ国民が誇りに思ういいニュースもある」と書き込みました。

今回の“フェイクニュース大賞”には、トランプ大統領が日頃、評価するFOXテレビは入っておらず、そうした報道を指しているものと見られます。

批判とひいき メディアで一線

トランプ大統領は、ツイッターを通じてアメリカの主要メディアの報道を「フェイクニュース」と呼んで繰り返し攻撃してきました。

トランプ大統領のツイッターをモニターしているウェブサイトによりますと、トランプ大統領が就任以降、今月17日までに投稿した2600回のツイートのうち、「フェイクニュース」と書き込んだ回数は186回に及んだということです。

さらに、ツイッターに主要メディアの名前を名指しで書き込んだ回数は、ニューヨークタイムズが38回、CNNが34回、NBCが31回で、その多くが批判でした。

一方、トランプ大統領がこうした主要メディアと一線を画してツイッターでも特別扱いしているメディアが保守系のテレビ局FOXです。

トランプ大統領は、これまでにツイッターで174回、FOXやその番組について投稿していますが、批判したことはなく、去年11月のツイッターでは「FOXニュースはCNNよりもはるかに重要だ」とか、「FOXを除くテレビ局の間で最も不誠実で不正確な放送をしている局がどこか、コンテストを開催すべきだ」と投稿するなど、FOXをひいきにする姿勢を明確にしています。

政治家の発言確認団体「大統領こそ間違い多い」

一方、政治家の発言の真偽を確認する団体「ポリティファクト」のアンジー・ホラン編集長は、トランプ大統領の発言こそ間違いが多いと指摘しています。

ホラン編集長はNHKのインタビューで、「トランプ大統領は、頻繁に不正確で誇張した話をする。私たちが調べた彼の発言のうち、およそ70%に間違いがあり、選挙期間中とほぼ同じ割合だった。大統領になれば、冷静になってもっと正確に話すのではないかと見られていたが変わっていないようだ」と述べました。

さらに「特にツイッターに頻繁に不正確やうその情報が含まれている。準備されたスピーチは、側近が内容をチェックできるが、ツイッターは自分で思いついたことを書き込んでいるようだ」と分析しました。

また、ホラン編集長は「大統領は時折、発言内容を変えるほか、同じスピーチの中で矛盾する発言もするので、発言の趣旨を確認するのが非常に難しい」と述べました。

「ポリティファクト」は、先月、去年2017年の最大のうそ=「ライ・オブ・ザ・イヤー」にトランプ大統領がおととしの大統領選挙にロシアが干渉したことを認めず、作り話だなどと発言したことを選んでいます。

【私の論評】日本のマスコミによる米国報道は間違いだらけ!話1/5くらいで受け止めよ(゚д゚)!

米国のマスコミのニュースは確かにフェイクが満載です。上のトランプ大統領がフェイクであると主張するニュースのほとんとは妥当だと思います。

一例だけ具体的に解説しておきます。一番最初の【ニューヨーク・タイムズに】の項目で、おととしの大統領選挙でトランプ大統領が勝利した際、ノーベル経済学賞を受賞した経済学者のポール・クルーグマン教授の見解です。

ポール・クルーグマン氏
クルーグマン氏は、トランプ氏が空調大手キャリア社のメキシコ移転を阻止したことに関して、ニューヨーク・タイムズに反論を展開していました。
巨大な経済の中で、本件の雇用数は1000人ほどに過ぎない。これを毎週一回実行しても、オバマ大統領が自動車産業救済で創出した雇用数を達成するには30年かかる。同様に、製造業が2000年以来失った雇用を取り戻すには、1世紀かかる。
これは、トランプ氏が選挙運動中に語ったことをもとに、クルーグマン氏が語ったことであり、これは事実です。確かに、空調大手キャリア社のメキシコ移転を阻止したとしても、それによって維持された雇用は1000人程度のものです。そうして、これはトランプ氏が選挙遊説中に語ったことをもと言っているだけで、この時点ではトランプ政権の具体的な経済政策が出ていない段階です。その後出されたトランプ氏の経済対策については、まとも論評しています。

アメリカのアカデミズムの世界はほとんどがリベラル派です。クルーグマン氏もリベラル派です。選挙直後に意見を求められれば、当然のことながらこのようなコメントになるものと思います。

これは、トランプ氏を批判するために、ニューヨーク・タイムズが著名な経済学者の発言を都合良くトランプ氏を貶めるために印象操作に利用したと言っても良いです。

他のニュースも似たり寄ったりで、私自身はここに掲載されているものは、すべてトランプ氏を貶めるためのフェイクと断定しても良いものと思います。

トランプ大統領は、なぜ米国のメディアにこれほどまでに攻撃されるのしょうか、その理由はこのブログにも何度か掲載してきました。以下に再度まとめておきます。

トランプ大統領
それは、トランプがキリスト教や道徳を重んじ、強い軍隊を支持し、頑張った人が報われる社会を願う保守主義の考え方の持ち主だからです。

日本ではほとんど知られていませんが、アメリカの大手新聞は、日本で言えば朝日新聞や赤旗といったサヨク・リベラル系ばかりで、産経新聞のような保守系の全国紙は存在しません。

ここでいうサヨク・リベラル系とは、道徳を毛嫌いし、企業は国民を酷使し搾取する存在だと決めつけ、保守派をファシストだと非難し、自分たちこそ人道的で理想主義的だと思い込んでいる人たちのことです。

テレビも同様です。世界的に有名なCNNに対して「コミュニスト(共産主義)・ニュース・ネットワーク」と揶揄する保守派もいるぐらいで、アメリカのマスコミの偏向ぶりは、日本以上にひどいと言っていいです。


日本のテレビも新聞も、アメリカのそのようなサヨク偏向のテレビや新聞の論調をそのまま紹介していますから、「サヨク・リベラルから見たアメリカ」ばかりが日本で報じられることになります。

こうした基本的な「構図」を知らずに、アメリカのサヨク偏向報道を真に受けて、「アメリカを再び偉大な国にしようと主張するトランプは、粗暴な人種差別主義者だ」と思い込んでしまっている日本人も多いようです。

だが、ちょっと待って欲しい。(ブログ管理人注:朝日新聞が良く使うフレーズです(笑))

安倍政権反対の意見こそが日本の世論であるかのごとく報じる朝日新聞や赤旗ばかりを読んでいて、日本の政治の実情を理解できるでしょうか。

朝日新聞などが連日、安倍政権を批判していますが、安倍政権の支持率は上がる一方ではありませんか。昨年は、朝日新聞などの森友・加計批判で一時は、支持率が落ちましたが、衆院選が終わって蓋をあけてみれば、安倍政権の議席数は変わらずで、野党は惨敗しました。

はっきり言いますが、アメリカのサヨク偏向マスコミと、それをそのまま紹介する日本のマスコミ報道を見ているだけでは、トランプ政権のことも、アメリカの実情も正確にする理解することは難しいです。

サヨク・リベラル系のマスコミが長年米国を牛耳ってきたため、本来は米国には昔から少なくても人口の半分は存在した保守層の意見などはかき消されてきたのです。しかし、一昨年の大統領選挙で、この事実が白日のもとに晒されたのです。

もし、米国の人口の約半分が保守層でなれければ、トランプ大統領が誕生したその理由が説明できません。米国のテレビやマスコミをみると、そこで流布されているのは、「サヨク・リベラル」の価値観やものの考え方ばかりであるため、これだけを見ていては米国の半分しか見ていないことになります。

私たちは、半分の米国には詳しかったのですが、これからはもう半分の米国も見ていく必要があります。そうしないと、米国の実態を見誤ることになります。実際、大統領選挙では日米の両メデイアも最後の最後まで、ヒラリー・クリントン優勢としていたにもかかわず、実際にはトランプ氏が大統領になり、このことが実証されました。

ヒラリー・クリントン大統領は誕生しなかった
トランプがアメリカ国民から支持されているのは、それなりに理由があります。その理由を正確に説明しないマスコミこそが米国内や国際社会を混乱に陥れているのです。

日本のマスコミや識者も様々なフェイクを発信しています。

金融緩和をするとハイパーインフレになり国債は暴落する。消費増税の日本経済への影響は軽微。このままだと、財政破綻するとか、財政危機に陥る。森友・加計問題で、総理の関与や総理のご意向があった。地下水検査の結果から豊洲は危険である等々。フェイクニュースはこの他にも、まだまだ数多く存在します。

このようなフェイクニュースを発信する日本のメディアが、こと米国に関しては正しく報道できると考えるほうがおかしいです。

日本のマスコミによる米国報道は話半分、いやそれでは駄目です、話1/5くらいで受け止めるくらいが良いと思います。もし事実を知りたいというのなら、そこで終わらせることなく、発信している人の立場を知ったり、他のソースをあたってみたり、推移を見てから、事実を見極めるべきです。

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2018年1月17日水曜日

中国の米国債購入停止報道は外交カードにらむ観測気球か 日本は「利益」得るチャンスに―【私の論評】中国は米国の金融制裁を恐れている(゚д゚)!

中国の米国債購入停止報道は外交カードにらむ観測気球か 日本は「利益」得るチャンスに


 ブルームバーグが、中国の外貨準備の当局者の話として、米国債の購入を減らすか停止することを勧告したと報じた。これを受けて米国債が売られ、円高が進む場面もあった。

 筆者は旧大蔵官僚時代に国債の入札・買いオペなどの実務を経験したことがある。1日の大半を通称「ディーリングルーム」と呼ばれ、役所内で人の出入りを制限した隔離部屋で過ごしていた。

 その部屋では、さまざまな情報を見たり聞いたりするようになっていたが、多くの時間を、市場で自分のポジションに有利に働くような発言、いわゆる「ポジショントーク」の類いに費やさざるを得なかった。

 金融資本市場では、さまざまな発言が流布している。そのほとんどは、ポジショントークである。それらの発言がマスコミなどを通じて市場に流されている。

 金融商品取引法では「何人も(中略)相場の変動を図る目的をもつて、風説を流布」してはいけないとされている(第158条)。ここでいう「風説」とは、虚偽の情報である。事実に基づく市場予測は風説に当たらないので、ポジショントークでも事実に基づいていれば問題ない。しかし、事実に基づくかどうかの検証はかなり難しい。

 冒頭の「中国の外貨準備の当局者の話」というのを検証するのはかなり困難である。当局者がマスコミの取材に応じることは少なくない。その際、意図的にリークすることもある。これも広い意味で、ポジショントークである。今回の場合、中国当局者がポジショントークしたとみるのが自然だ。その目的は、影響力を測るため、つまり観測気球であろう。

 米国債を大量に保有している者が、その影響力に関心があるのは当然だ。日本政府も米国債を外国為替資金特別会計で保有している。保有有価証券の総額は120兆円程度あり、その内訳は公表されていないものの、多くが米国債といわれている。

 これは、文字通り米国への「貸し」なので、米国に対して優位に立てるのではないかと思うのが一般的な印象であろう。実際、そのことを対米交渉の際に口に出した政治家もいたようだ。しかし、それは外交としては最悪であった。

 したたかな中国外交では、表だって言わずに、裏からポジショントークとして流して影響力を見たのだろう。

 ただ、実際の影響力はしれている。いくら大量に米国債を保有しているからといって、世界での取引を考えると影響力は限定的だ。しかも、効果は持続しない。やるぞやるぞといううちが花である。そうした限界はあっても、中国の対米外交としてはカードになりうる。

 日本にとっては、中国に一定の影響力が出たとしても問題はない。むしろ日本の出番だといえる。外為特会で米国債購入と為券(政府短期証券)の日銀購入によって対応できる。これは金融緩和の口実となって日本の利益となりうるのだ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】中国は米国の金融制裁を恐れている(゚д゚)!

米国債については、昨年の大晦日にとりあげました。その記事のリンクを以下に掲載します。
【お金は知っている】国連の対北制裁強化で追い込まれる習主席 「抜け穴」封じなければ米から制裁の恐れ―【私の論評】中国が米国の要求を飲むのは時間の問題(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして以下に米国債に関係するところだけ、掲載します。
超大国といわれるアメリカの一番の強さは、軍事力でもなく、イノベーション力でもありません。それは、米国による世界の金融支配にあります。現在の世界の金融体制は、ブレトン・ウッズ体制に端を発しています。これは、第二次世界大戦末期の1944年にアメリカのブレトン・ウッズで連合国通貨金融会議が開かれ、国際通貨基金(IMF)や国際復興開発銀行(IBRD)の設立が決定されたものです。 

当時、世界の金の80%近くがアメリカに集中しており、アメリカは膨大な金保有国でした。その金と交換できるドルを基軸通貨とし、他国の通貨価値をドルと連動させるという仕組みで、金・ドル本位制ともいわれます。

米国の金融街 ウォール・ストリート

米国に金融制裁を実施されたら、最近は輸入も多くなっている中国の食料事情は逼迫するでしょうし、食料以外にも様々な物資の供給に支障をきたすことになります。
 
だからこそ、中国はドル支配体制からの脱却を目指し、人民元の国際化を進めていました。IMFの特別引出権(SDR)の構成通貨入りも、そういった流れの中で推し進められたものです。人民元はSDR入りしましたが、ドル決済を禁じられてしまえば中国経済は破綻に追い込まれることになります。 
米国に本格的に金融制裁をされると、中国は資源を購入することもできず、戦闘機や軍艦を出動させることもできなくなります。これでは、最初から勝ち目はありません。 
それに、中国の米国債保有は6月に5カ月連続で増加し、外国勢で首位の座を取り戻したようです。米財務省が15日発表した6月の対米証券投資動向によると、中国の米国債保有額は1兆1500億ドル(約127兆円)で、前月比で443億ドル増加。日本は1兆900億ドルで、5月に比べて205億ドル減少しました。日本は昨年10月に外国勢の米国債保有で中国を抜いて首位となっていました。
これは米国の脅威になるなどドヤ顔で吹聴する人もいますが、これも中国の大きな弱みとなります。米国がこれを凍結すれば、一気に中国は127兆円を失うことになります。 
そもそも、元に信用があれば、中国は米ドルを大量に保有したり、米国債を保有する必要などもありません。逆のほうからみれば、中国元は中国が米ドルや米国債を大量に保有しているからこそ、一定の信用が保たれているのです。 
その原則が崩れれば、元の信用は一気に崩れ、中国の金融は崩壊します。
そもそも、米国債(ドル建て)はどんなに売られても米国中央銀行がドル札増し刷りして米国債を買えば良いだけのことで、米国は全く困りません。

日本や中国が保有していた米国債が米国中央銀行の金庫に溜まり、代わりにドル札が日銀や中国銀の金庫に置き変わるだけで市場には何ら影響はしません。

ただ、それ大変だと思う馬鹿な輩がいるので米国債に多少の値下がりはあり得るでしょうが直ちに元に戻るだけです、それでドル札には金利がつかないですから米国は大喜びするたげです。

そもそも日本や中国が米国債を大量に購入したのは輸出で得たドル札を持っていても金利がつかないから利殖のために米国債を買っただけの話です。それに輸出で得たドル札は既に元や円に交換しているので利殖の投資だけにしか使えません。国の財政赤字の補填などには使えないのす。

いずれの国の中央銀行でも市場に出回っている国債価格安定化のために自国債の売買は日常業務です。
一旦市場に出た国債に限ってですが(これが重要)買うためには自国通貨の増し刷りは日常業務の一つです。

ただし、ギリシャ国債が売られたらギリシャは破綻します。なぜなら、ギリシャではユーロを増し刷りできません。これは、夕張が破綻したのと同じ理屈です。夕張は勝手に円を擦り増しできません。

だからユーロ圏では日本のように安易に国債発行はできません。統一通貨の問題点です。特に為替レートにも関係ないので各国間の格差は拡大します。だからユーロ圏では特に「輸出額=輸入額」ということが必要になります。

米国、日本、中国のような国では、自国で自国通貨を擦り増しできるので、そのようなことはありません。本来、貿易黒字がどうの赤字がどうのと騒ぐ必要性など全くないです。

ところで、米国には「国際非常時経済権限法」(IEEPA)という法律があります。米国の安全保障や経済に重大な脅威が発生した場合、外国が保有する米国の資産については、その権利の破棄や無効化などができるという法律です。つまり、非常時には日中が持つ米国債も凍結されてしまう可能性もあるのです。

日本やASEAN諸国と領土紛争を抱える中国は、そのために最後の一線を越えることができないのです。もし中国が他国をあからさまに侵略すれば、IEEPAが発動され、中国が持つ1兆2732億ドル(約130兆円)もの米国債は紙くずになりかねないのです。

米国は、沖縄・尖閣諸島について「日米安全保障条約の適用対象」とされていますが、これは尖閣有事がIEEPAの対象となることを示唆したものです。そういうことから、中国は沖縄・尖閣諸島をなかなか奪取することはできません。


ブログ冒頭の、中国の外貨準備の当局者の話として、米国債の購入を減らすか停止することを勧告したとありますが、これは無論高橋洋一氏が主張するようにポジショントークに過ぎないです。

もしも中国が米国債の購入を停止したとしても、利殖のための米国債がなくなるだけの話であり、損をするのは中国です。さらに、中国元そのももの信用は著しく低いので、中国はこれからも大量のドルや米国債を保有しなければ、中国の金融が大混乱に陥るのは必至です。

このポジショントークやはり、米国の市場関係者などの様子をうかがっているのでしょう。その背後には、やはり中国は米国の金融制裁を恐れているという面があるでしょう。もし、今回の中国の北朝鮮への制裁がうまくいかなければ、米国は中国に金融制裁を課すということは多いにあり得ます。もし、市場関係者が大騒ぎして、様々な対策などに打って出れば、そこに付け入るすきを見出すことができると考えているのでしょう。

1997年6月23日、コロンビア大学での講演において聴衆から「日本が米国債を蓄積し続けることが長期的な利益」に関して質問が出た際、当時の橋本総理は「大量の米国債を売却しようとする誘惑にかられたことは、幾度かあります。」と返しました。


橋本龍太郎氏
そして、アメリカ経済が与える世界経済への影響などを理由に挙げた上で「米国債を売却し、外貨準備を金に替えようとしたい誘惑に、屈服することはない」と続けました。しかし、大量の米国債を保有する日本の首相が「米国債を売却」への言及をしたことが大きく注目され、ニューヨーク証券取引所の株価が一時下落しました。

しかし、今回はそうはならないでしょう。米国の市場はこのような中国の動きに惑わされることはないでしょう。何か影響があっても、一時的なことに過ぎないでしょう。

このように金融面からみても、中国が迂闊に戦争などできないことははっきりしています。日本のメデイアはこのあたりを報道すべきです。無論、中国が未来永劫戦争をしないと言っているわけではありません。ただ、当面は戦争しても全く良いことはないということです。

しかし、これは国際情勢が変われば、どうなるかはわかりません。実際、日米戦争では互いに相手国の資産を凍結しました。

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2018年1月16日火曜日

このままでは見放される論拠薄弱な護憲派―【私の論評】改憲派にも矛盾あり!日本は軍隊を持つべきという国民的合意が必要不可欠(゚д゚)!

このままでは見放される論拠薄弱な護憲派

リアルな防衛から目を背けてはいけない

2016年4月3日フィリピンのスービック港に寄港した海上自衛隊の潜水艦「おやしお」(左)、
護衛艦「ありあけ」と「せとぎり」 写真はブログ管理人挿入 以下同じ
 憲法改正問題は、間違いなく今年の一番の政治的焦点になるだろう。安倍首相の意向を受けた自民党の二階俊博幹事長は、1月12日夜、BSフジの番組で、安倍晋三首相が狙う9条改憲について「今までで(議論が)相当のところまできている。1年もあればいいんじゃないか」と述べ、年内の改憲発議を明言した。

 安倍首相も7日放送のNHK番組で「多くの党の賛同を得る形で発議してほしい」と述べ、公明党や野党に協力を求めると共に、年内発議への期待感を表明した。

 安倍首相が提案している改憲案というのは、憲法9条の改正である。その内容は、現行9条はそのままにして、自衛隊の存在を明記するという、いわゆる「加憲」案である。つまり自衛隊の存在をどう評価するのかが、重要な争点だということである。

共産党の支離滅裂を解きほぐす本

 いま、護憲を唱える有力な政党といえば、日本共産党であろう。ただ、私はこの政党の主張をかねてから厳しく批判してきた。「自衛隊は憲法違反の軍隊」というのが、この党の主張である。では、自衛隊は即刻解体せよ、と主張するのかと思えば、“解体賛成”という国民合意ができるまでは存在を認めるとしている。その一方で「立憲主義を守れ」というのである。9条には触れず、長期にわたって憲法違反の軍隊の存在を認めるという立場が、立憲主義とどう整合するのか? 支離滅裂というしかない。

 こんな時、この支離滅裂さを解きほぐす本が出版された。ジャーナリスト、編集者である松竹伸幸氏が著した『改憲的護憲論』(集英社新書)である。

 松竹氏は、みずから明言しているように護憲派であり、間違いなくその論客である。私が共産党の政策委員長をしていた当時、共に机を並べていた仲でもある。いつも杓子定規なものの見方や共産党流の定型的な見方ではなく、自分なりに問題意識を深めた意見を持っていて、その意見を重宝させてもらったものである。

 本書には、次のような一文が記載されている。

<これまで自分なりの自衛隊論、憲法論を盛り込んだ書籍を上梓(じょうし)するなどのことはしてきましたが、共産党とこの分野で意見の違うことは、活字にしてきませんでした。共産党の規約は、『党の決定に反する意見を、勝手に発表することはしない』とされています。それなのに、いまなぜ活字にして発表しているのか。それは、私の意見が『党の決定に反する』ものではなくなったからに他なりません。>

 少し話が脱線した。『改憲的護憲論』などという刺激的なタイトルの本をなぜ執筆したのか、同氏は「おわりに」で次のように記している。「執筆に本気になったのは、改憲されることそれ自体への危機感からではありません。加憲案に対する護憲派の反応が気になったからです」。安倍首相の加憲案というのは、同氏が指摘するように、本来の自民党の改憲案に比べて「かなり穏やか」なものである。ところが護憲派の批判は、おどろおどろしい改憲案であるように印象づけるため、論拠の薄い、無理矢理なものになっていると指摘する。 本書の中身は、共産党の主張とは大きく隔たっている。それでも「決定に反しない」ということは、同氏がこの拘束から離れたということだろう。つまり共産党を離党したということなのだと思う。

 その上で、「自衛隊は絶対に憲法に明記してはならない」というのが護憲派の立場だが、国民の目には、自衛隊を認めるのか、認めないのかという争いに映ってしまう。そうなれば、「圧倒的多数は自衛隊に共感を持っている世論の現状において、護憲派は見放される」、そうならないためには「別の論点を提示しなければならないと、痛切に思ったのです」と同氏は述べている。

 その通りだと思う。いまの現状で自衛隊違憲論や自衛隊解体論が広範な国民に受け入れられることなど、あり得ない。本書は、この厄介な課題を解きほぐそうとするものであり、護憲派の人々こそが読むべきものである。

迷走する共産党の自衛隊論

 共産党がいかに自衛隊の取り扱いで迷走してきたか、本書を読めばよく分かる。20年近く前まで、共産党の安全保障政策の基本は、「中立自衛」であった。「自衛」には、軍事力が必要である。つまり、自衛隊は憲法違反だが、9条を改正して合憲の自衛軍を持つというのが、長らく共産党の考え方であった。

 ところが本書でも指摘するように、冷戦終結後、1994年の党大会で「憲法9条を将来にわたって堅持する」という大転換を行った。

 このとき党内では、この大転換についてほとんど議論らしい議論は巻き起こらなかった。本書によれば、かつて共産党が批判していた社会党の「非武装中立」と同じだということを上田耕一郎副委員長(当時、故人)が新聞インタビューで答えていたそうである。

 この結果、急迫不正の主権侵害に対して、「警察力や自主的自警組織など憲法9条と矛盾しない自衛措置をとることが基本」となった。“竹やり作戦”である。これで国民の命や安全を守れるはずもなく、論争にも耐えられないものであった。

 2000年8月、不破哲三議長がテレビ番組で「(日本に)自衛の権利はあるが、現憲法下では自衛隊は認めない」と発言したところ、「敵が攻めてきて、自衛隊がなかったら誰が自衛の行動をとるのか」と問われ、「必要なあらゆる手段」としか答えられないことがあった。これでは、もちろん答えになっていない。国民に玉砕しろと言うようなものである。

 この後、「(自衛隊解消前に)急迫不正の主権侵害、大規模災害など、必要に迫られた場合には、存在している自衛隊を国民の安全のために活用する」という「自衛隊活用」論に方針転換をせざるを得なくなった。

 ところが松竹氏の本にも詳述されているが、またまた方針転換が行われる。2005年、松竹氏が政策委員会在籍中に書いた論文に、共産党指導部からいちゃもんがつけられた。松竹氏の論文は、「侵略されたら自衛隊を活用する」という党の方針に基づいたものであった。ところが指導部からは、「『自衛隊活用』論は、共産党が与党となる民主連合政府ができた段階のものであり、現時点で自衛隊の活用を一般化するものではない」と説明されたというのである。

 共産党が「自衛隊活用」論を採用した当時、私は政策委員長として指導部の一員であった。“民主連合政府が誕生したとき”などという制約がかけられた事実はない。言うまでもなく、民主連合政府などいつできるかも分からないし、未来永劫できない可能性すらある。こんな馬鹿げた方針を決めるわけがない。これでは事実上、活用論を取り下げるのと同じである。おそらく取り下げようということだったのだろう。

 いま共産党は、野党共闘にすべてを賭けている。自衛隊違憲論や自衛隊解体論が他の野党に受け入れられるはずもなくい。そこでまたまた活用論が復活してきている。

 この迷走ぶりは、自衛隊問題も、国の自衛に関わる問題も、真剣に検討していないことの証でもある。

日本防衛はリアルな問題

 松竹氏は、本書の「はじめに」で、「護憲派には、日本防衛の問題をわが事として捉える覚悟が求められている」と述べている。

 多くの護憲派は、そもそも主体的に日本防衛を論じることすら忌避する傾向になる。多くの地方で、共産党議員が自衛隊の演習に反対する運動を繰り広げている。「9条守れ」というスローガンを掲げることが運動のすべてのように思える。これでは無責任の誹りを免れない。

 日本防衛はリアルな問題である。防衛のあり方を真剣に考えないような運動が、国民の多数の支持を得ることなどあり得ないことを護憲派は知るべきだ。そのためにも『改憲的護憲』の一読をすすめたい。私は護憲派ではないが。

【私の論評】改憲派にも矛盾あり!日本は軍隊を持つべきという国民的合意が必要不可欠(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事では、護憲派の矛盾について掲載されていました。そうして、共産党ほど酷いものではありませんが、改憲派の中にも矛盾があります。

私は、護憲派か改憲派のいずれかといえば、改憲派です。ただし、9条3項改憲で自衛隊を憲法典に明記しようとの主張に対して、無条件で賛成ではありません。あくまで条件付き賛成です。

その条件とは、これまでの憲法解釈を一掃し、法体系を軍隊式のネガティブリスト(禁止事項列挙型)に全改正し、十分な国防予算をつけるというのなら、改憲に賛成です。


現状のポジティブリストの法体系では戦争になれば、自衛隊員に「死ね」と言っているようなものです。新型兵器の導入には熱心な自衛隊の陸上自衛隊員がアメリカ軍楽隊よりも銃撃訓練ができていない状態を改める必要があります。だからこそ、これを改めることは絶対条件です。

しかし、「解釈も法律も予算も無視して一点突破」だけなどという9条3項改憲ならば、大反対です。そもそも、意味がありません。憲法典が変わっても現状と何も変わりません。

そうして、憲法の条文の前に重要なことがあります。最も重要なのは、内容です。

なぜ自衛隊が合憲なのか、自衛隊をどう位置付けるのか。憲法典の条文に加筆した場合、関連措置として何が必要なのか。これらの議論なくして「9条3項一点突破」などと声高に叫ぶこと自体が無意味かつ有害となりかねません。

しかし、日本国憲法制定以来、曖昧な状態に置かれていた自衛隊を条文で明記するのに反対するつもりはありません。そこで、日本国憲法九条に自衛隊を明記しようとした場合、いかなる議論が必要なのでしょうか。

まずは、大前提として、日本国が軍隊をもつか否かの国民の合意はあるのでしょうか。改憲論議においては、ここから逃げるべきでありません。

世界の大多数の国は、「軍隊をもつ」という合意をしています。そのうえで、いつの時期にどの程度の軍備を充てるか、国際情勢と経済状態から勘案してます。

逆に、「軍隊をもたない」という合意をしている国もあります。軍隊を廃止し準軍隊(国際法で定義されるParamilitary)による防衛を国是とするコスタリカ、安全保障をスイスに全面的に依存しているリヒテンシュタイン、ツバルのような小規模の島嶼国家などです。軍隊を保有していない国は世界で25カ国あるが、いずれも小国です。


では、領土と経済規模において大国であり、核保有国が密集する地政学上の重要地帯である東アジアに位置するわが国が、「軍隊をもたない」「他国に安全保障を一任する」などと主張して許されるのでしょうか。その程度のことを国民に説得できなくて、どうやって憲法改正などという大それたことができるのでしょうか。

あるいは、憲法典に「国防軍」だの「自衛軍」だの、「軍」を明記すれば合意ができるなどと甘い考えを抱いているのでしょうか。憲法典に書き込みさえすれば、狂信的な護憲派を説得できるとでも思っているのでしょうか。憲法典の条文を万能だと思っているのなら、改憲派も護憲派と同じ穴のムジナに過ぎません。


私は、日本国は軍隊をもつべきだと思います。圧倒的多数の国民は当然だと思いながらも、護憲派を罵るばかりで、これまで真っ当な説明をしてこなかった改憲派にも問題ありです。

では、なぜ日本国は軍隊をもつべきなのでしょうか。それは、地球上で文明国として生きていくためです。

文明国とは、誰にも媚びずに、自分の力で、自分の生存を主張できる国のことです。わが国を取り巻く環境を一望すれば、比喩ではなく火薬庫と化した朝鮮半島で、米中露の3大国がにらみ合っています。米国陣営にはわが国と台湾、そして東南アジア諸国。中国陣営にはロシアと北朝鮮、最近では韓国がなびいています。この両者を分かつものは何なのでしょうか。

1つは、海洋勢力と大陸勢力の地政学的環境です。もう1つは、価値観です。人を殺してはならない。この、日本人にとって当たり前の価値観を共有できるかどうかなのです。

金正恩はいうに及ばず、習近平やウラジーミル・プーチンの核兵器がわが国を向いています。守ってくれるのは、気まぐれなドナルド・トランプです。ここで一足飛びに、いますぐ核武装しろなどと、主張するつもりはありません。

ロシアの核兵器も日本に標準をあわせていることを忘れてはならない
しかし、圧倒的多数の国民が、この危険な状況をいつまでも唯々諾々と受け入れるでしょうか。日本人は、未来永劫、アメリカの属国として生き、中国やロシアに媚びへつらい、北朝鮮に足蹴にされ続けることを望むのでしょうか。

名前が自衛隊のままであるかどうか等問題ではありません。名前がどうであれ、国民のあいだに合意がなければ、軍隊なのかどうなのか曖昧なままです。まさか改憲後も、「9条3項に明記されている自衛隊が軍隊か、どうか」という議論を続ける気なのでしょうか。自衛隊の名称を憲法典に書き込むにしても、軍隊なのかどうなのかを曖昧にしたままでは何の意味もありません。

今後、日本国は軍隊をもつのか持たないのか、国民の合意が必要です。こうした憲法観の合意なしの憲法論議など、百害あって一利なしです。

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2018年1月15日月曜日

スリランカの港に中国旗 99年間譲渡「一帯一路」債務重く“借金のカタ”に奪われる―【私の論評】日印の逆サラミ戦術は功を奏するか(゚д゚)!



 スリランカ政府は、中国の援助で建設した南部ハンバントタ港を中国国有企業へ引き渡し、現地紙によると今月1日、港湾当局の建物に中国国旗が掲げられているのが確認された。債務の返済に窮したスリランカが“借金のカタ”に海のインフラを奪われた形だ。南アジアで中国と主導権を争うインドは、対抗するように近隣の空港の権益を買い入れる計画を進める。かつての小さな漁村は国同士の思惑がぶつかり合う舞台となっている。

ハンバントタ港は海上シルクロードの再重要地点。一方、同港は
内戦終了時のラージャパクサ前大統領の利権貪る地でもある
 スリランカ国営企業と中国国有企業は昨年7月、スリランカ側が中国側に港の管理会社の株式の70%を99年間譲渡することで合意した。11億2千万ドル(約1240億円)の取引の合意文書に調印し港は先月、中国側に渡っていた。

 そもそも、港は親中派のラジャパクサ前政権時代に着工されたが、約13億ドルとされる建設費の大半は中国からの融資だ。しかし、最高6・3%にも上る高金利は財政が苦しいスリランカにとって「悪夢」とされ、リースの形で中国に引き渡されることとなった。

 現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」を掲げる中国に乗った結果、港を明け渡した格好で、国内でも批判が噴出。昨年末からは職を奪われることに危機感を募らせた港湾労働者がストライキを断続的に起こしており、政府は経済効果を繰り返し強調して批判の沈静化に躍起だ。

スリランカのマッタラにあるマッタラ・ラジャパクサ国際空港で、最初の利用者となる
同国の当時の大統領マヒンダ・ラジャパクサ氏の到着を待つ僧侶たち(2013年3月18日)
 こうした動きに対してインドは、ハンバントタ港から約20キロの距離にあるマッタラ・ラジャパクサ国際空港の権益の購入に関心を示している。空港はラジャパクサ前大統領の肝いりで建設されたが、利用客は1日10人ほどに低迷し、一時はコメの貯蔵庫として利用されるありさまだった。インドにとって空港入手による経済的利益があるとは考えにくく、中国のハンバントタ支配に対する牽制(けんせい)の意味合いが強い。

 インド洋では中国の潜水艦航行が常態化するなど、インドにとって座視できない状況が続く。「このままでは、南アジアで中国の好きなようにされてしまう」(インド紙記者)という危機感があるようだ。

【私の論評】日印の逆サラミ戦術は功を奏するか(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事にもあるように、インド洋での中国の影響力を削ぐため、インドは世界で最も利用者の少ない空港を買収する計画です。
1日あたり100万人を受け入れるべく設計されたスリランカのマッタラ・ラジャパクサ国際空港は、 同国の当時の大統領マヒンダ・ラジャパクサ氏の肝入りで、2013年に開港しました。ところが、この空港 は全く機能しておらず、1日あたりの利用者はわずか10人ほどです。
それでもインドは共同事業者として3億ドル(約340億円)を出資、一時は米の備蓄庫として使われていたこのスリランカ南部にある約2000エーカー(約800万平方メートル)の空港を、40年間借り受ける予定です。
インドがこの空港を将来的にどう使うのか、計画はよく見えない。航空学校? インドの新しい新婚旅行先? 利益を生む可能性はほとんどないように見える。だが、今回の契約のポイントはそこではない。
インド洋の戦略に詳しいオーストラリア国立大学のデビッド・ブリュースター(David Brewster)氏は、シンクタンクが運営するメディア『The Interpreter』にこう書いています。
代わりに、今回の買収の背景には、中国が運営するハンバントタ港に近いことがあるようです。港は空港から車で30分ほどの距離にあります。
中国がアジアとヨーロッパを結ぶ新シルクロード経済圏構想「一帯一路」を推し進める中、インドやアメリカ、日本は、中国がスリランカの港を軍事拠点として使うつもりではないかとの懸念を抱いています。でも、空港へのアクセスがなければ、その可能性も大きく阻まれます。
ブリュースター氏は以下のように述べています。
海外の海軍拠点はもちろん、物流施設にとっても、人や物に空から容易にアクセスできることが重要だ。海軍の拠点であれば、沿岸の空中監視能力も必要になる。ハンバントタ港に近い空港をコントロールできれば、港の使い道に関しても、インドがある程度の影響力を持つことができる。 
空港抜きでは、中国海軍がハンバントタをその重要な拠点として開発することも難しくなる。要するに、インドは3億ドルで空港を買うことで、中国の海軍拠点をブロックしている。
インド洋で影響力を増す中国を、インドが脅威とみなしていることには根拠があります。

アメリカ国防総省の2015年のレポートは、インド洋で中国のミサイル潜水艦が活動していることを認めています。
その前の年には、スリランカとの関係を強化しており、これはインドに混乱を与えました。中国はコロンボ港に軍艦や潜水艦を入港させ始めました。

中国がおよそ14億ドルを融資して建設が進められていた、スリランカ南部のハンバントタ港。 シーレーン・海上交通路の要衝で、南アジア最大級の港です。中国は昨年から、 この港を99年間にわたって管理運営することで、スリランカ政府と合意する見通しであると公表していました。
スリランカが中国政府にハンバントタ港の運営を正式に譲り渡したのは、最近のことです。中国の国有企業、招商局集団(China Merchants Group) に、11億ドルで99年間リースされます。

この契約により、中国は世界で最も交通量の多い運輸ルートへのアクセスだけでなく、インド洋に面した数十カ国に対するアクセスを手に入れました。これには中国が急速にその影響力を高めているアフリカ諸国の他、人口が多く、市場規模も大きいインド、パキスタン、バングラデシュも含まれます。

フィナンシャル・タイムズは、中国が運営するこの港は「地域全体のサプライチェーンを改善し、より低い価格を実現し、貿易量を大幅に成長させるだろう」と述べています。

「中国による港の買収は、特にインド洋周辺での中国政府の戦略的、経済的な存在感の高まりを懸念するインドの不安を掻き立てた」アジア・太平洋地域のニュースに詳しい雑誌『The Diplomat』の安全保障担当の編集者アンキット・パンダ(Ankit Panda)氏はこう書いています。

インドでは、ハンバントタ港の買収は、中国の海上交通路戦略「真珠の首飾り」の一環と捉えられています。

1つ1つの真珠は、中国の軍事資産やインド洋やアジア太平洋の同盟国を意味し、それをつなげることでインドを取り囲もうというものです。マレーシアやパキスタン、バングラデシュ、ミャンマーもこれに含まれます

中国は昨年の夏、初の海外軍事基地をインドのすぐ西に位置するジブチに設置しました。

ジブチ(Djibouti)の地図上の位置
このジブチにおいては、日本政府は、昨年アフリカ東部ソマリア沖アデン湾での海賊対処活動を展開するためジブチにある自衛隊の活動拠点に隣接する土地をジブチ政府から新たに借り上げることで合意しました。日本政府関係者が昨年11月18日、明らかにしました。周辺国の治安悪化などに備え拠点を拡大し、邦人保護施設を整備することなどを検討します。

借り上げたのは現在の活動拠点に隣接する約3ヘクタールの土地で、日本、ジブチ両政府間で交渉を進め、11月に手続きを済ませました。
政府は平成23年からジブチ国際空港北西地区の約12ヘクタールの敷地を借り上げて自衛隊初の本格的な海外拠点として運用しています。海賊対策に従事する航空機の駐機場や司令部庁舎、隊員の宿舎などを設置。安倍晋三首相は25年に同施設で隊員を激励しました。

25年ジブチで自衛隊員を激励する安倍首相
このような、インドによるほとんど乗降客のいない空港の取得、日本によるジブチの土地取得など、当然のことながら、中国を意識してのことです。

そうして、このような日印の行動は、私は中国のサラミ戦術に対抗する逆サラミ戦術であると思います。

この逆サラミ戦術とは、私の造語です。これについては以前このブログに掲載したことがあります。
中国、印北東州で道路建設 インド側反発「インフラ整備で領有権主張する常套手段」―【私の論評】中華サラミ戦術には逆サラミ戦術で対抗せよ(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、中国のサラミ戦術と逆サラミ戦術に関する部分のみを以下に引用します。
サラミ戦術(サラミせんじゅつ、ハンガリー語: szalámitaktika [ˈsɒlɑ̈ːmitɒktikɒ] サラーミタクティカ)とは、敵対する勢力を殲滅または懐柔によって少しずつ滅ぼしていく分割統治の手法です。 別名サラミ・スライス戦略、サラミ・スライシング戦略ともいわれます。
私はサラミ戦略に対しては、「逆サラミ戦略」という戦略を採用すべきだと思います。 それは、さきほどのバス停を動かした婆さん(ブログ管理人注:自分の家の入り口より10mくらい離れたバス停を毎日5mmずつ移動して、自分の家に持ってきた婆さんの話)のたとえでいえば、バス停が動いたと認識した段階で、それを元に戻すのです。元に戻すにしても、いきなり元の位置に戻すというのではなく、これも一度に5mm程度を戻すのです。 
これは、婆さんが毎日5mm動かしているとすると、ある時点で、婆さんが日々5mm移動しても、バス停は全く動かなくなることを意味します。そうすると婆さんは、動かしても無駄だと思うようになり、諦めてしまいます。 
諦めた後でも、毎日5mmずつ動かすのです。そうして、元の場所に戻ったら動かすのをやめるのです。このやり方を「逆サラミ戦略」とでも名付けたいと思います。
要するに、中国がサラミ戦術で何かをやりはじめたら、それをに対抗する措置もこちら側も必ずとるということです。中国がスリランカの港を手に入れたら、インドは空港を手に入れる。中国が、ジブチに海軍基地をつくれば、日本はジブチの基地を拡充するなどのことを必ずするのです。

そうして、中国のサラミ戦術のように、いきなり軍事基地化などするのではなく、十年、二十年、長ければ数十年もかけてそれを少しずつ実行するのです。1年、2年ではあまり目立った変化ではないのですが、20年もすれば大きな変化になっているという具合に実行するのです。

とにかく、中国が何かをすれば、日印だけではなく、日米中露印豪ASEAN諸国などが合同で、これに対してして中国のサラミ戦術のように対抗策を長年かけてすこしずつ実行するのです。

そうして、これは、中国が一見南シナ海で成功しているようにみえる、サラミ戦術のように、徐々にボディーブローのように効いてくることでしょう。

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2018年1月14日日曜日

南北会談で油断するな「アメリカは手遅れになる前に北を空爆せよ」―【私の論評】ルットワックの真骨頂は綺麗事を排して、リアリズムに徹すること(゚д゚)!

南北会談で油断するな「アメリカは手遅れになる前に北を空爆せよ」
エドワード・ルトワック (米CSIS戦略国際問題研究所シニア・アドバイザー)
グアムから朝鮮半島にかけて行われた米韓合同軍事演習
<2年ぶりの南北会談はまたも問題先送りで終わるだろう。北朝鮮がアメリカに届く核ミサイルを完成させる前に、核関連施設を破壊すべきだ>
1月9日、韓国と北朝鮮による2年ぶりの南北高官級会談が行われているが、結果は今までと同じことになるだろう。北朝鮮の無法なふるまいに対し、韓国が多額の援助で報いるのはほぼ確実だ。かくして、国連安保理がようやく合意した制裁強化は効力を失う。一方の北朝鮮は、核弾頭を搭載した移動発射式の大陸間弾道ミサイル(ICBM)を複数配備するという目標に向けて着実に歩みを進めていくだろう。

北朝鮮の過去6回の核実験はいずれも、アメリカにとって攻撃に踏み切る絶好のチャンスだった。イスラエルが1981年にイラク、2007年にシリアの核関連施設を爆撃した時のように。いかなる兵器も持たせるべきでない危険な政権が、よりによって核兵器を保有するのを阻止するために、断固として攻撃すべきだった。幸い、北朝鮮の核兵器を破壊する時間的余裕はまだある。米政府は先制攻撃をはなから否定するのではなく、真剣に考慮すべきだ。

当然ながら、北朝鮮を攻撃すべきでない理由はいくつかある。しかしそれらは、一般に考えられているよりはるかに根拠が弱い。北朝鮮への軍事行動を思い止まる誤った理由の一つは、北朝鮮が報復攻撃をしてくるのではないかという懸念だ。

ソウルが火の海になっても

アメリカの情報機関は、北朝鮮がアメリカ本土に到達しうる核弾頭を搭載した弾道ミサイルをすでに開発したと言ったと伝えられる。しかし、これはほぼ間違いなく誇張だ。むしろ、将来の見通しとでもいうべきものであり、迅速な行動によってまだ回避できる。

北朝鮮が、長距離弾道ミサイルの弾頭に搭載しうる小型化可能な核兵器を初めて実験したのは2017年9月3日。そして、ICBM(大陸間弾道ミサイル)の初の本格実験を行ったのは2017年11月28日。それから今までの短期間で核搭載のICBMを実用化することなど不可能だ。

北朝鮮を攻撃すれば、報復として韓国の首都ソウルとその周辺に向けてロケット弾を撃ち込む可能性はある。南北の軍事境界線からわずか30キロしか離れていないソウルの人口は1000万人にのぼる。米軍当局は、そのソウルが「火の海」になりかねないと言う。だがソウルの無防備さはアメリカが攻撃しない理由にはならない。ソウルが無防備なのは韓国の自業自得である面が大きいからだ。

約40年前、当時のジミー・カーター大統領が韓国から駐留米軍を全面撤退すると決めた際(最終的には1師団が残った)、アドバイザーとして招かれた国防専門家たち(筆者自身を含む)は韓国政府に対し、中央官庁を北朝鮮との国境から十分に離れた地域に移転させ、民間企業に対しても移転のインセンティブを与えるよう要請した。

避難シェルター設置の義務化も促した。例えばスイスのチューリッヒは、新しく建築される建物は独自のシェルターを設置しなくてはならない。さらに今の韓国には、イスラエルが開発したロケット弾迎撃システム「アイアンドーム」を安く購入するという選択肢もある。アイアンドームは、人の住む建造物を狙って北朝鮮がロケット弾攻撃をしてきた場合、9割以上の確率で迎撃できる能力を持つ。

イスラエルが開発したロケット弾迎撃システム「アイアンドーム」
写真はブログ管理人挿入 以下同じ
しかし、韓国政府は過去40年にわたり、これらの防衛努力を一切行ってこなかった。ソウル地区には「シェルター」が3257ヵ所あることになっているが、それらは地下商店街や地下鉄の駅、駐車場にすぎず、食料や水、医療用具やガスマスクなどの備蓄は一切ない。アイアンドームの導入についても、韓国はそのための資金をむしろ対日爆撃機に注ぎ込むことを優先する始末だ。

北は軍事技術を売却している

今からでも北朝鮮によるロケット砲やミサイル攻撃に備えた防衛計画を韓国が実行すれば、犠牲者を大幅に減らすことができる。支柱や鉄骨を使ってあらゆる建物を補強するのも方法の1つだ。3257基の公共シェルター(避難施設)に生活必需品を備蓄し、案内表示をもっと目立たせることもそうだ。当然、できるだけ多くの住民を前もって避難させるべきだ(北朝鮮の標的に入るおよそ2000万人の市民は、南へ30キロ離れた場所に避難するだけでも攻撃を免れられる)。

とはいえ、長年にわたってこうした対策を怠ってきたのが韓国自身である以上、最終的に韓国に被害が及ぶとしてもアメリカが尻込みする理由にはならない。北朝鮮の核の脅威にさらされているアメリカと世界の同盟国の国益を考えれば当然だ。北朝鮮はすでに独自ルートでイランなど他国に弾道ミサイルを売却している。いずれ核兵器を売却するのも目に見えている。

アメリカが北朝鮮に対する空爆を躊躇する理由として、成功が極めて困難だから、というのも説得力に欠けている。北朝鮮の核関連施設を破壊するには数千機の戦略爆撃機を出動させる必要があり不可能だ、というのだ。しかし、北朝鮮にあるとされる核関連施設はせいぜい数十カ所で、そのほとんどはかなり小規模と見てほぼ間違いない。合理的な軍事作戦を実行するなら、何千回もの空爆はそもそも不要だ。

アメリカの軍事作戦の不合理さが露呈するのは、今回が初めてではない。米空軍は昔から、標的を絞った限定攻撃の代わりに、「敵防空網制圧」(SEAD)の実施を主張してきた。敵防空網制圧とは、米軍パイロットの身の安全を守るため、敵国の防空レーダーや地対空ミサイル、滑走路、戦闘機を余さず破壊するという、いかにも奇抜な作戦だ。北朝鮮の防空レーダーやミサイル、戦闘機はひどく老朽化し、電子機器もずいぶん前から交換されずに古いままであることを考慮すれば、米空軍が示した条件は何もしないための口実にすぎない。確かに限定攻撃だと手押し車の1台や2台は見逃すかもしれないが、今はまだ、北朝鮮には核弾頭を搭載したミサイルの移動式発射台が存在しない。叩くのは今のうちだ。

北朝鮮空軍のミグ21戦闘機

中国も北朝鮮を見放した

アメリカが北朝鮮への空爆を躊躇する唯一の妥当な理由は、中国だろう。だがそれは別に、中国がアメリカに対抗して参戦してくるからではない。中国がなんとしても北朝鮮を温存するという見方は、甚だしい時代錯誤だ。もちろん中国としては、北朝鮮の体制が崩壊し、北朝鮮との国境を流れる鴨緑江まで米軍が進出してくる事態を決して望まない。だが戦争行為の常套手段である石油禁輸を含め、中国の習近平国家主席は国連安保理で採択された対北朝鮮経済制裁の強化を支持する姿勢を見せており、核問題をめぐって北朝鮮を見放し始めている。アメリカが北朝鮮の核関連施設を先制攻撃すれば中国が北朝鮮を助けに行く、という見方は的外れだ。

今のところ、北朝鮮に対する先制攻撃という選択肢を米軍幹部が排除しているのは明らかに見える。だが、北朝鮮が核兵器を搭載可能な長距離弾道ミサイルを実戦配備するまでに残された月日でアメリカが北朝鮮を空爆すれば、果てしない危険から世界を救える。

インド、イスラエル、パキスタンの3カ国が核兵器を保有しているのは事実だが、今のところ破滅的結果を招いていない。3カ国は北朝鮮にないやり方で、自国の信頼性を証明してきた。北朝鮮のように、大使館でヘロインや覚醒剤などのいわゆる「ハードドラッグ」を売ったり、偽造紙幣で取引に手を染めたりしない。3カ国とも深刻な危機に見舞われ、戦争すら経験したが、核兵器に言及すらしなかった。ましてや金正恩のように、核攻撃をちらつかせて敵を脅すなどあり得ない。北朝鮮は異常だ。手遅れになる前に、アメリカの外交政策はその現実を自覚するべきだ。

From Foreign Policy Magazine

【私の論評】ルットワックの真骨頂は綺麗事を排して、リアリズムに徹すること(゚д゚)!

ルトワックの上記の提言に関しては、乱暴であるという意見も多いです。織田邦男元空将の意見はその典型的なものです。以下にその意見を述べている動画を掲載します。


上の動画は、日本の安全保障を考える上で、非常に参考になることが多いです。特に、米国ではなく、日本の安全保障については参考になることが多いです。しかし、ルトワック氏の提言は乱暴であると簡単に言うことができるのでしょうか。私自身は、腑に落ちないところがあります。

織田邦男元空将は、米国が現時点で北を攻撃することは、予防的攻撃になるとして、これは国際法違反であると断じています。そうして、先制攻撃は国際法に照らして合法ですが、予防的攻撃は違法だと断じています。しかし、私はそのようにきっぱりと割り切れるものではないと思います。

私自身は、現在米国が北を攻撃したとしても、予防的先制攻撃ということで国際法違反になるかどうかは別にして、多くの国々から批判を受けるということにはならないのではないかと思います。

結論から言って、国家元首が核で周辺国を脅し、兄を暗殺し、叔父を処刑し、国内での人権侵害は常軌を逸するレベルです。そんな国に核兵器を持たせたままで良いのでしょうか。

北朝鮮がもし完全な核兵器保有国となれば、韓国や日本はもちろん、全世界にとっても非常に危険な状態が生まれます。

そもそも、朝鮮民主主義人民共和国は、異常な国、無法の国です。先程は述べませんでしたが、日本国民の拉致事件もその一例です。政府が工作員を日本国内に潜入させ、罪のない日本人男女を冷酷に拉致して、そのまま長い年月の間むごたらしく拘束するという非人道的な行為を他のどの国家がするでしょうか。

核兵器についても、金正恩委員長は核を使用するという脅しを平然と語ります。国際社会の要請に逆らって核兵器を開発した国は北朝鮮だけではありません。しかし、たとえばインド、パキスタン、さらにはイスラエルなど、あるいは好戦的な対外姿勢をとる中国でさえも、国家首脳が核兵器の威力を外部に向けて宣伝して、威嚇の手段にするようなことはしていません。北朝鮮は異常です。異様な危険国家、犯罪国家です。だからその核武装は軍事手段に訴えてでも阻止すべきです。

それとともに、韓国に関するルトワック氏の見解ですが、これも一概に否定できないと思います。軍事でも経済でも韓国は強い力を持っています。しかしその力を使って、目前に迫った北朝鮮の核武装という重大危機を除去しようという国家的な意思がいまだにまとまっていません。それは韓国内で、自国の基本的なあり方をめぐって意見の分裂があり、国としての結束が決定的に欠けるからです。

韓国の文在寅政権に対しては、トランプ大統領自身も「appeasement」(宥和)という言葉を使い、軟弱すぎると非難したこともありました。「宥和」とは、第2次世界大戦前にイギリスのチェンバレン首相がドイツのヒトラーに対して必要以上の譲歩をしたときによく使われる表現です。その際のイギリスの過剰な譲歩がナチス・ドイツを増長させ、侵略へと駆り立てたとされています。

そうして、「国家としての結束の欠落」といった場合、最近では、「日韓合意」において韓国が日本に対してみせる態度の特徴であるようにもみえます。

韓国は、自分の首都すら守る意志がないにもかかわらず、日本に対する軍事攻撃の準備にだけは妙に熱 心です。

下の写真は去年6月15日に行われた竹島周辺を艦隊で通過する韓国海軍の訓練風景です。


もちろん、「訓練」と言う名の挑発行為です。駆逐艦や海洋警察の巡視船など7隻と、P3C哨戒機やF15K戦闘機など海・空軍機4機を投入した大規模なものでした。

わが国は、北の脅威も考慮に入れた上で冷静に対応したか良いようなものの国際常識では係争地でこんなまねをすれば開戦事由になりかねません。

この6月の前後は「週刊弾道ミサイル」といっていいような、北のミサイル実験が頻発していた頃です。 間違いなく、日米韓でもっとも緊密に協力すべき時期でした。なぜこの時期に、わが国にこのようなことを仕掛けたのか理解に苦しみます。

ルトワック氏は国際制裁が、韓国の裏切りによって破綻するだろうと予言していました。いくら国連決議を積み上げようと、制裁強化を叫ぼうと、韓国がそれをいっさい無効にしてしまうと読んでいます。

ブログ冒頭のルトワックの寄稿は、1月9日の板門店で開かれた南北会談以前に書かれたものでしょうが、まさにルトワックの観測どおりとなりました。

韓国は北の冬季五輪への参加の見返りとして、「南北関係のすべての問題はわが民族が当事者として解決する」という凶悪なまでに間抜けな言質を与えてしまっています。

この条項は、国連制裁決議を韓国は破壊して、北の核ミサイル開発を間接に「支援」するという意思表示にほかなりません。これでは、文在寅は自由主義陣営に後ろ足で砂をかけて、北と一緒に「わが民族」の側に与すると宣言したに等しいです。

以上のようなことを考慮すれば、ルトワックがソウルが無防備なのは韓国の自業自得である面が大きいと言うのも無理はないと思います。韓国のこの状況はこれからも変わらないでしょう。

ただし、私は北に「ソウルを火の海」とするような攻撃能力はないと思っています。詳述は別の機会に譲りますが、北の通常兵器による攻撃能力はとうに錆び付いて陳腐化しており、ほとんど使い物にならないと考えられています。

先日、マティスがソウルへの反撃については対処方法があると発言しましたが、米軍はMOABなどを使って38度線に張りついた北の砲撃部隊は、短時間で制圧できると考えているようです。

MOABはアメリカ空軍が開発した現在、通常兵器としては史上最大の破壊力を持つとされる爆弾
ルトワックはこのまま北の時間稼ぎを許せば、もう軍事的手段をとりようがない時期になると見ています。

それは過去の北の暴走に対して、米国がなすすべもなく「戦略的忍耐」という美名の不作為を重ねてきた結果として、現在のこじれきった状況があるからです。

ルトワックの真骨頂は綺麗事を徹底的に排して、リアリズムに徹するという思考型式です。 

ルトワックは著書『戦争にチャンスを与えよ』のなかで、欧米型民主主義の頭デッカチが、かえって中東に災厄をもたらしたと断じています。 

たとえばイラクです。独裁者フセインを排して民主主義を導入しようとした結果、スンニ派とシーア派の果てしなき宗教紛争の地獄の釜の蓋を開けてしまいました。 

イラクだけにとどまらず、米国はリビア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、コソボ、パレスチナ、そしてシリアなどで、こんなことなら昔の独裁者が統治していたほうがましだった、と住民たち言われるような状況を生み出してしまいました。 

そしてとどのつまりISというモンスターを生み出し、テロリストを退治するためにロシアの中東介入を許すはめになっていきました。 

ルトワックは、イラクには介入するな、するなら今の世代が消えて新世代に替わる半世紀は駐屯する覚悟で介入しろと主張していました。 

また、善意のNGOがテロリストにいいように利用され、紛争をいっそう血生臭くしたことも厳しく批判しています。 

私は、朝鮮半島でも米国が中途半端なことをすれば、後々現在の中東と同じようなことになり、禍根を残すことになると思います。

それを考えれば、いまのままであれば、たとえ韓国や日本に被害が出たとしても、米国はルトワックが主張するように、北の核施設を爆撃するべきだと思います。

もし、今年中にも爆撃をせずに、北を放置しておけば、北の思う壺にはまり、米国は北の核を容認するようなことにでもなれば、米国はまた第二のISを生み出してしまうことになるかもしれません。オバマ流の綺麗事では、世界の混迷は深まるばかりだと思います。

今すぐ攻撃すべきかどうかは別にして、米国による北爆撃は選択肢としてはいつでも実行できるように準備しておくべき筋のものと思います。

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2018年1月13日土曜日

池坊保子氏「モンゴル人は狩猟民族のDNA」発言の見識―【私の論評】相撲界こそ真のマネジメントを学びそれを運用すべき(゚д゚)!

池坊保子氏「モンゴル人は狩猟民族のDNA」発言の見識

池坊保子 日本相撲協会・評議員会議長
「(モンゴル人は)狩猟民族だからね。勝ってもダメ押ししないと殺されちゃう。良い悪いは別にして、DNAかもしれないわ」

『週刊文春』1月18日号

年始からの名言、珍言、問題発言を振り返る。年をまたいでも一向に収束する気配がない大相撲に関する騒動。そんな中、日本相撲協会の中でも強い権限を持ち、貴乃花親方を批判し続けてきた池坊保子氏が問題発言をぶっ放した。
日本相撲協会の臨時評議員会後、記者会見する池坊保子議長
池坊氏は『週刊文春』の取材で、張り手やかち上げなどを繰り返す横綱白鵬の取り口を「(ルールが)ある以上は『張り手した』と、ガーガー(批判を)言わないで。理事会で取り上げてほしい」と擁護。その上で、「(モンゴル人は)狩猟民族だからね。勝ってもダメ押ししないと殺されちゃう。良い悪いは別にして、DNAかもしれないわ」と語った。

池坊氏の発言に対して、評論家の荻上チキ氏は「どの地域にもいろんな農耕のスタイルがあり、いろんな放牧のスタイルもあり、いろんな狩猟のスタイルなどなどもあるわけですね。なのになぜ、日本人は狩猟ではなく農耕民族で、たとえば○○は狩猟で……みたいな分け方をした上で、だからこういう風な行動になるんだ、みたいな一括りにする議論がいまだに生存しているのかがわからない」と強く批判(TBSラジオ『荻上チキ・Session-22』1月10日)。さらに「『民族』と『DNA』ってどんな関係があるんだ?」「早くそういった文明論は滅びてほしいなと思っている」とも語った。

理事解任の処分を受けた貴乃花親方
 なお、池坊氏は第一次安倍政権下で相撲協会の監督官庁でもある文科省の副大臣を務めていた。こんなに見解の浅い人が日本の教育をつかさどる省庁の要職を務めていたとは信じられない。

【私の論評】相撲界こそ真のマネジメントを学びそれを運用すべき(゚д゚)!

(モンゴル人は)狩猟民族という発言には、本当に驚きました。モンゴル人というと、私はが一番先に思い浮かべるのは、遊牧であり、遊牧をなりわいとしてきた多くのモンゴル人は遊牧民族というのならわかりますが、どう考えても狩猟民族ではないと思います。これは、はっきりとした間違いです。

その珍妙な知識から、「勝ってもダメ押ししないと殺されちゃう。良い悪いは別にして、DNAかもしれない」として、「張り手」を擁護するというのもどうもわかりません。

これじゃ血液型性格診断などと何も変わりないではありませんか。むしろ、「張り手」を禁止するとか、あるいはその逆に「張り手」を解禁にするなどのことでもしたほうがまだましです。

そもそも、モンゴル人に対する理解が最初から間違っています。以下の動画をご覧いただくと、モンゴル人のことがある程度理解できます。



この動画で、宮脇淳子先生は、「遊牧民であるモンゴル人は、人と同じことをしない。人と同じことをしていては、餌である草原がなくなった場所にしか行くことしかできなくなる。人が来ていないところにの良い所に行くには、人と同じことをしていてはできない」と述べています。日本のモンゴル専門家がそういうのですから、やはりモンゴル人は狩猟民族とはいえないと思います。

元々は遊牧民でったモンゴル人の住居「ゲル」
なお、モンゴルについて詳細を知りたいかたは、是非宮脇先生の著書をご覧になってください。以下のサイトも参考になります。


相撲界については、以前もこのブログに掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
貴乃花親方を公開説教、笑う白鵬と緊張感ない力士たち 暴力問題の再発防止研修のはずが…―【私の論評】まともな「組織の精神」を根付けなければ抜本的解決にはならない(゚д゚)!
日馬富士
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、相撲界は組織としてみた場合、健全な「組織の精神」を保っているとはいえないようであることを掲載しました。相撲界全体、そうして理事会、評議員会も組織です。いかなる組織もマネジメントの原則を適用することができます。

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、「組織の精神」について一部この記事から引用します。

"
組織は以下の4点を満たさなければ健全な精神を持っているとは言えません。
①組織の焦点は成果に合わせなければならない 
②組織の焦点は機会に合わせなければならない
人事に関わる意思決定は組織の信条と価値観に沿って行わなければならない
④真摯さこそが唯一絶対の条件である
これだけだと、何のことかわからないと思いますので、以下に簡単に説明します。

組織の目的は、凡人をして非凡なことを行わせることにある。天才に頼ることはできない。天才はまれである。あてにできない。凡人から強みを引き出し、他の者の助けとすることができるか否かが、組織の良否を決定する。同時に、組織の役目は人の弱みを無意味にすることである。要するに、組織の良否は、そこに成果中心の精神があるかどうかによって決まる。(『マネジメント──基本と原則[エッセンシャル版]』)
人間は多様です。しかも、でこぼこした存在です。あることを得意とし、あることは不得意とします。得意なことを伸ばすのは簡単ですが、不得意なことを直すのは至難です。そこで不得意なことを意味のないものとし、得意なものを引き出して組み合わせることが必要になります。
ところが、組織の中に、何事も成果を中心に考え、行動するという成果中心の精神が根付いているならば、人びとの得意なことだけを組み合わせるという手品が、いとも簡単に行えます。
成果中心の精神を持つための方法は簡単です。第1に、あらゆることの焦点を成果に合わせることです。第2に、あらゆることの焦点を機会に合わせることです。第3に、人事は真摯さを絶対の条件として行うことです。
ドラッカーは、実例をもって教えています。かつての帳簿係が組織の成長に伴い、50歳で経理担当役員になったものの、仕事をこなせなくなりました。人は変わらないのに、仕事が変わったのです。だが、彼はずっと真摯に働いてきました。
ドラッカー氏は、そのような真摯さに対しては、真摯さをもって報いなければならないといいます。ただし、彼を担当役員のままにしておいてはならないのです。仕事上差し支えがあるだけではありません。士気を低下させ、マネジメントへの不信をもたらすことになります。
しかし、退職させるのも間違いです。正義と礼節にもとることになります。
成果中心の精神を高く維持するには、配置、昇給、昇進、降級、解雇など人事に関わる意思決定こそ、最大の管理手段であることを認識する必要がある。それらの決定は、人間行動に対して数字や報告よりもはるかに影響を与える。組織の中の人間に対して、マネジメントが本当に欲し、重視し、報いようとしているものが何であるかを知らせる。(『マネジメント[エッセンシャル版]』)
「組織の精神」について、詳細を知りたいかたは、当該記事をご覧いただくか、これは元々ドラッカーのマネジメントの原則ですので、ドラッカーの書籍を御覧ください。

「組織の精神」など、マネジメントの原則を知りそれをまともに運用できなければ、組織は腐ります。ドラッカー流のマネジメントは、非常に優れていると思うのですが、まだ経験の浅い若手の企業人などに、ドラッカーの書籍を読ませて、意見などを聴くと、字面は追いかけてわかったようなつもりになっているようですが、その実ほとんど理解しない人も結構います。

また、企業の経営者の中には、ドラッカーの書籍など一度読んだこともないのに、おどろくほどドラッカー的な考え方をして、経験的にマネジメントの原則を身につけている人もいます。

上記のような錯誤を公然と口にしたり、昨年の研修会の発言などから、おそらく池坊氏はマネジメントなどとは程遠い人物であるように思います。

ドラッカー氏は、マネジメントには3つの役割と2つの次元があるとしています。

3つの役割とは、以下のようなものです。
(1)組織は、組織に特有の使命、すなわちそれぞれの目的を果たすために存在する。 
(2)仕事を通じて働く人を生かす。組織こそ自己実現を図る手段である。 
(3)自らの組織が社会に与える影響を処理するとともに、社会の問題の解決に貢献する。
2つの次元とは以下のようなものです。
(1)時間の要素が介在する。存続と健全さを犠牲にして、目先の利益を手にすることに価値はない。しかし未来は現在からしか到達できないので、基礎をしっかりさせなければならない。 
(2)マネジメントは管理する。成果の小さな、縮小しつつある分野から、成果の大きな、増大する分野に資源を向けなければならない。そのために昨日を捨て、明日を創造しなければならない。
しかし、ドラッカー氏は、マネジメントは絶対かつ無条件のものではなく、果たすべき役割によって決定されるべきだとしています。

ドラッカーのマネジメントの定義は、「目的を果たす」、「人を生かす」、「社会貢献」、「未来を見据える」、「昨日を捨て、明日を創造する」、しかも「果たすべき役割」で変化するという柔軟性を主張する内容であり、まさに「戦略的」で、「人を生かし」、「能動的」に「変革」し、変化にも柔軟に対応するという包括的な意味を持っているのです。

いわゆる、多くの人が誤解している「マネジメント=管理」あるいはせいぜい「PDCAサイクル」ではないことが、良くご理解いただけるものと思います。

これを良く知れば、池坊氏はドラッカー氏の説くところの真の意味のマネジメントについてあまりにも無知なのでしょう。そもそも、人の強みを活かすことの重要性などあまり認識していないかもしれません。管理することだけが、マネジメントであると思い込んでいる節があります。

これは、評議会や理事会も多くの人がそうなのでしょう。彼らは、ドラッカーのマネジメントの定義を肝に銘じて、日頃実行している己のマネジメントを大いに恥じ、反省して、真のマネジメントを実行するよう努力しなければならないでしょう。何よりも自分たちは、マネジメントをする主体であることを理解すべきです。

そのためには、まず自らを厳しく反省し、マネジメントの真に意味するところを厳しく学ぶべきなのです。

では、どのようにして学ぶか。トップはマネジメントの真の意味を、あらゆる機会を通じて理事や親方に知らしめ、学ばさなければならないのです。そうして、池坊氏は本来その役割を果たすべきなのです。

そうして、これには手法が重要です。馬を水場に引いてきても、水を欲さない馬は水を飲まないです。馬に水を飲ませるには、運動をさせたり、炎天下に放置したりして喉を乾かすようにすればよいのです。

同じように、理事や親方に水を飲むように諭す必要がありますが、諭しても飲まない場合は喉を乾かせばよいわけです。例えば会議の席上や力士たちの面前で、「マネジメント」に対する無知さ加減を暴き、大恥をかかせるという手もあります。

これはひとつの方法ですが、一旦恥をかけばそれを契機にドラッカーなどの経営書をひもとくとか、一見全く関係ないようにみえる外の組織のマネジメントに関する講義を受講するとか、仲間と勉強会を開いて議論をするとかを始めるきっかけになります。その他に、喉を乾かすようにする方法はいくらでもあります。

日本相撲協会は昨年12月「暴力問題の再発防止について」と題した研修会を、東京・両国国技館で開いていましたが、これは非常にお粗末なものでした。

相撲界の講習などでも、ドラッカーの主張する真のマネジメントを習得するコースを組み込むべきです。それらのきっかけを作るのは、組織のトップに他ならないです。彼ら自身が、まず気づき、厳しく学ばなければならないのです。そこがスタートです。トップがそのことに気づかない場合は、相撲界も悲劇の道を歩まざるを得ないです。

相撲界の評議会や理事会にも、「組織の精神」を健全に保つためにも、真のマネジメントについて学んで、実行すべきことが充用でることを一刻も早くそれに気づいて欲しいものです。

そうして、これは無論相撲界だけではなく、あらゆる組織にあてはまることでもあります。

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