2020年6月12日金曜日

中国共産党が進めるオーストラリア支配計画 目に見えぬ侵略は日本でも始まっている—【私の論評】日本は旗幟を鮮明にし、日米豪同盟を強化せよ!(◎_◎;)

中国共産党が進めるオーストラリア支配計画 目に見えぬ侵略は日本でも始まっている
国際 中国 2020年6月11日掲載




 先月、中国共産党の対オーストラリア工作を明らかにした『目に見えぬ侵略 中国のオーストラリア支配計画』(飛鳥新社)が出版された。著者はオーストラリアの作家で、チャールズ・スタート大学の教授、クライブ・ハミルトン氏である。地政学者の奥山真司氏が翻訳した問題作。オーストラリアだけでなく世界覇権を目論む中国は、すでに日本にも触手を伸ばしている。オーストラリアの失敗から学ぶべきことは?

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 原著は、出版社と契約を結んでいたが刊行中止。その後も2社から断られた、ようやく出版にこぎつけたいわくつきの書である。英紙フィナンシャル・タイムズは、「販売中止を決めた自粛は自己検閲だ」と批判している。

 公共倫理を専門とするハミルトン氏は2016年8月、労働党のサム・ダスティヤリ上院議員の政治スキャンダルが発覚した際、中国共産党の工作に気づいた。この議員は中国共産党とつながりのある中国人富豪と癒着。これをきっかけにオーストラリアの主要政党にとって、裕福な中国人や中国系オーストラリア人のビジネスマンたちが最大の資金提供者となっていたことが判明したのだ。

 さらにハミルトン氏の調査で、中国共産党は、オーストラリアの連邦政府、企業、主要政党、大学、メディアなどに浸透し、影響を与え、コントロールするための体系的な活動を行なっていることがわかったという。

 中国がオーストラリアにターゲットを定めたのは、2004年8月。世界中に散らばる中国の外交官を北京に集め、秘密会議が開かれた。当時の共産党総書記であった胡錦濤(こきんとう)のもと、党の中央委員会がオーストラリアを中国の周辺地域に組み込むべきであると決定した。中国最大の狙いは、米豪同盟を壊し、オーストラリアを属国化することだったという。

 05年2月には、共産党の外交部副部長であった周文重(しゅうぶんじゅう)がキャンベラを訪れて、在豪中国大使館の高官たちとの会合で中央委員会が決定した戦略を伝えた。ハミルトン氏の取材に応じた在シドニー中国領事館の政務一等書記官だった陳用林氏(ちんようりん‐2005年にオーストラリアに政治亡命)によれば、中国は経済的な手段を使って、オーストラリアに対して軍事関連や人権問題を含む、様々な分野で譲歩を迫り、オーストラリアをアメリカに対してノーと言える西洋の国にしようと画策しているという。

    2002年8月、オーストラリアは中国広州省に天然ガスを供給する契約を結び、有頂天になって喜んだ。しかし、陳用林氏によれば、中国は数カ国を招いて入札を行い、1番安い金額を提示したインドネシアに決めていたが、

北京の共産党中央委員会があえてオーストラリアに決めたのだという。これはいわば中国の対オーストラリア工作の伏線で、オーストラリアを中国の方に振り向かせる狙いがあった。

日米同盟の弱体化

    「中国の対オーストラリア工作は、主に在外華僑を使っています。これを僑務工作と呼んでいます。オーストラリアに移住している中華系住民を使って、政界や財界工作を行うのです。中でも、最も影響力があった富豪実業家のひとりが黄向墨(ほわんしゃんも)でした。彼はオーストラリアの政界、財界、メディアまで大変影響力のあった人物で、シドニー工科大学に豪中関係研究所を設立し、元外相のボブ・カーを所長に据えました。ボブ・カーは、天安門事件が起こった時、中国の一党独裁体制を『滑稽なほど時代遅れ』と批判していました。ところが中国の工作によって、親中派になってしまったのです。そのため、“北京ボブ“という渾名が付いています。2019年、オーストラリア当局は黄向墨と中国共産党とのつながりを調査した結果、永住権を剥奪し、再入国を禁止、市民権申請を却下しました」

 と解説するのは、本書の監訳者で「日本国際戦略研究所」を主宰する山岡鉄秀氏。同氏はオーストラリアに約23年間在住し、オーストラリアの変化を肌で感じていた。

 豪中関係研究所は、表向きは中関係発展のための研究機関となっている。しかし、そのセミナーや出版物の内容を見ると、中国共産党のプロパガンダそのものだという。黄向墨は、冒頭で紹介したサム・ダスティヤリ上院議員に資金提供していた人物でもある。

    「私は、シドニーで大学院生だった頃、中国系の学生たちと仲良くなりました。彼らは、オーストラリアで生まれ育った移民2世、3世で、適度に西洋化され付き合いやすかった。真面目でよく勉強もしていました。ところが最近のオーストラリアの主だった大学は、雰囲気がガラっと変わりましたね。留学生の4割は中国人で、彼らは中国政府の管理下にあります。中国からガチガチの愛国教育を受けています。中国の留学生のミッションには、中国に批判的な個人や団体の監視が含まれます。教師が中国に批判的な発言をしたり、中国政府の見解に合わない資料を使ったりすれば、吊るし上げて謝罪を求める。領事館から大学に直接抗議が入ることもあります」(同)

 中国は次に日本をターゲットにする可能性もある。ハミルトン氏によれば、中国は、日本をアメリカから引き離すために「エコノミック・ブラックメール」(経済的強迫)を使って政治面での譲渡を迫っている。すでに日本には、北京の機嫌をとる親中派の財界人が多いという。中国は、日米同盟を決定的に弱体化させなければ日本を支配できないことをよく知っているのだ。

    「すでに中国は、日米同盟を弱体化するための手を打っています。米中の貿易戦争が厳しくなっている中、安倍晋三首相が一昨年10月に財界人を伴って訪中しました。中国は、天安門広場に日の丸を掲げて大歓迎。その際経団連の中西宏明会長は、『中国は敵ではなく、我々を求めている』と発言しています」(同)

 コロナ禍でも同様だという。

    「他国が中国全土からの入国を拒否している中、日本はなかなか入国を拒否しませんでした。武漢や浙江省だけ拒否していました。これは習近平の来日が予定されていたこと、中国から「大ごとにしないで欲しい」と言われたことへの配慮だと思われます。政府は国民の安全より中国を優先してしまいました。中国からすれば、まさに思う壺ですよ。日本が米中の狭間で漁夫の利を得ようとして姑息なことを考えれば、破滅につながります。米中が争っているのだから、アメリカの同盟国である日本は、中国に対して毅然とした態度を取るべきです」(同)

週刊新潮WEB取材班

【私の論評】日本は旗幟を鮮明にし、日米豪同盟を強化せよ!(◎_◎;)

クライブ・ハミルトン氏

『目に見えぬ侵略 中国のオーストラリア支配計画』の著者のハミルトン氏は豪州キャンベラのチャールズ・スタート大学公共倫理学部の教授です。ハミルトン氏は2008年、北京五輪の年、豪州における中国勢力の浸透に不審を抱きました。

聖火が到着したキャンベラに何万人もの中国系学生が集まり、一般のオーストラリア人が中国人たちから蹴られ、殴られました。自分の国で外国人学生の乱暴狼藉をなぜ受けなければならないのでしょうか。そもそも万単位の中国人学生たちは如何にして突如キャンベラに集結したのでしょうか。この疑問が氏の中国研究の始まりでした。

氏の体験は、同じ年、長野市に中国人学生が集結しチベット人や日本人に暴力を振るった事件とほぼ完全に重なります。

本書は日本に対する警告の書でもあります。豪州の人々は中国の侵略の意図など夢にも気づかず国を開きすぎたとハミルトン氏は書いています。

中国の意図は米国の同盟国を米国から分離させ、米国の力を殺ぎ落とし、中華の世界を築き上げることです。『目に見えぬ侵略』は、北京が豪州とニュージーランド(NZ)を米国の同盟国の中の「最弱の鎖」と見ていること、この両国を第二のフランス、つまり「米国にノーと言う国」に仕立て上げたいと考えていること、その為に両国の国全体、社会全体をコントロールし易いように親中的に変えていく政策を、中国政府が採用したことをつきとめています。

これは中国の常套手段と言っても良い手法です。1998年に江沢民国家主席(当時)が国賓として訪日しました。それに先立って中国共産党がまとめた対日政策の中に「日本を支配するには日本人が自ら中国に尽くすように日本人の価値観を変えていくことが重要で、その為に未来永劫歴史問題を活用するのが最上の手段だ」などと書かれています。

豪州全体を親中色に染め上げるべく、北京政府は2000年に試験的に華僑の活用を開始し、11年に完全に制度として確立したとハミルトン氏は断じています。世界に散らばる華僑は2300万人規模、豪州総人口2500万人の内100万人以上が中国系市民で、彼らも北京政府の標的に含まれているといいます。

華僑を大勢力としてまとめる司令塔が僑務弁公室でした。同室は豊かな中国人ビジネスマンの政治献金、選挙時における中国系市民の組織票の動員、中国系候補者当選への支援、政府高官の取り込み、中国を利する政策決定の誘導等、幅広く活動します。

ハミルトン氏は、われわれは「中国共産党は支配のための、考え抜かれた長期的戦略」に従って動いていることを忘れてはならないと強調しています。中国は豪州人の精神を親中国に変えることに加えて、豪州に対する有無を言わさぬ支配権を握るべく工作してきました。そのひとつがインフラの買収です。

数ある事例のひとつが電力です。ビクトリア州の電力供給会社5社と南オーストラリア州唯一の送電会社はすでに、中国国営企業の国家電網公司と香港を拠点とする長江基建集団の所有とな離ました。

豪州西部州の三大電力販売会社のひとつ、エナジーオーストラリアは300万人の顧客を持つ大企業ですが、これも香港に拠点を持ち北京と深い関係にある「中電集団」に買い取られました。豪州最大級のエネルギーインフラ企業、アリンタ・エナジーも香港の大富豪、周大福に40億豪ドルで売却されました。

電力は産業のコメです。安定した供給なしにはその国の産業は成り立ちません。豪州政府が中国の意向に逆らうような政策を打ち出す場合、北京政府は中国系資本所有の電力会社の供給を止めることで豪州を締め上げることができます。

ハミルトン氏は警告しています。豪州の配電網は電信サービス網と融合しているため、前者の所有者は豪州全国民全組織のインターネットと電話のメッセージ機能すべてにアクセス可能になります。豪州政府の情報すべてを中国は文字どおり、手にとって見ることが可能なのです。豪州は政府ごと丸裸にされているということです。

中国はさらに攻勢を強め首都キャンベラや、シドニーを擁するニューサウスウェールズ州の電力インフラ、オースグリッドを99年間租借しようとしました。豪州連邦政府が危うくこれを阻止したのが16年8月でした。

ところが、豪州内の親中勢力はこの政府決定に徹底的に反撃しました。そして奇妙なことが起きました。17年4月に対中警戒レベルを上げていたはずの外国投資監査委員会が突如軟化し、巨大インフラ運用会社「デュエット社」を長江基建を主軸とする中国のコンソーシアムに74.8億豪ドルで売却することを許可したのです。

豪州の国運をかけての戦いは一進一退です。現在、北京はモリソン豪首相が新型コロナウイルスの発生源に関する独立調査を求めたのに対して豪州産農産物の輸入規制で報復中です。

モリソン豪首相

さらに中国は今月、輸入した牛肉の検疫で違反が見つかったとして、オーストラリアの企業4社からの肉製品の輸入を停止していて、新型コロナウイルスをめぐるオーストラリアの対応に反発した措置ではないかという見方も出ています。

中国がオーストラリア産の大麦が不当に安く輸入されているとして関税を上乗せする措置を始めたことについて、オーストラリアのリトルプラウド農相は「控えめに言って失望している。中国の決定に対して冷静かつ系統的に対処し、WTO=世界貿易機関にはかる権利は残しておく」と述べ、WTOを通じた解決も視野に対応を検討していく考えを明らかにしています。

輸出の3割を中国に依存する豪州には大きな痛手ですが、首相支持率は66%、2倍にはね上がりました。

業を煮やした北京政府が特別に甘い言葉をかけ始めたのが日本です。

中国共産党機関紙の環球時報が5月26日、「日本は豪州に非ず」という社説を配信しました。日本は豪州とは異なる、米国側につかず、中国側に来いとして、次のようにも書いていました。

「米中摩擦の中で日本が正義の側(中国側)でなく、同盟国側につくなら、日米同盟を当然の(安全)策として活用することはできない」

米国側につけばただでは措かないという恫喝です。日豪はいま中国の攻勢の真っ只中にあります。共に力を合わせて中国共産党の侵略から国と国民、経済を守り通さなければな離ません。

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2020年6月11日木曜日

消費の落ち込みは当面は続く…安倍政権は消費増税一時停止を! いまこそドイツを見習うとき— 【私の論評】日本では緊縮命のぶったるみドイツのように期間限定の減税ではなく、物価目標を達成するまで減税せよ!(◎_◎;)

消費の落ち込みは当面は続く…安倍政権は消費増税一時停止を! いまこそドイツを見習うときだ

安倍首相と麻生財務大臣

 総務省は5日、4月の家計調査を発表した。それによると、2人以上世帯当たりの消費支出は26万7922円、物価変動を除いた実質では前年同月比11・1%減だった。これは統計が比較可能な2001年以降最大の落ち込みだ。食料などが堅調な一方、外食や飲酒代が大きく落ち込んでいる。こうした消費の落ち込みはいつごろ回復基調となるのか、落ち込みをカバーするための施策はないのか。

 大きく落ち込んだのは、パック旅行費97・1%減、交通73・0%減、外食67・0%減、洋服58・9%減、理美容サービス41・9%減、保健医療サービス14・8%減など。それぞれ3月も減少していたが、4月になってその減少幅が拡大した。これらの多くは外出する人数の減少に伴うものである。

 逆に伸びたものもある。光熱・水道が7・4%増、麺類34・2%増、パソコン72・3%増、保健用消耗品123・9%増など。逆に、これらは外出が減り、家の中にいることで増えた需要だ。

 例えば、外食するかわりに、家で飲食をするので、麺類、生鮮肉、「宅飲み」用アルコール飲料が増えた。もっとも、人はどこかで3食するが、外食の代わりに内食だと、経済活動全体についてはマイナスである。

 新型コロナウイルスは生活様式も変化させてしまった。「3密」回避やソーシャルディスタンス(社会的距離)の確保により、消費の基本構造も一部は変わった。これまで外食は会話をする意味も大きかったが、これからは食事中の会話そのものを控えるというのであれば、機会は減少してしまうだろう。

 テレワークも意外に使えることが分かったので、これまでのような出張が絶対に必要かというと、そうでもなくなり、出張による人の移動も確実に少なくなるだろう。

 政府の緊急事態宣言を受け全国で外出自粛が広がったが、宣言が解除され外出自粛がなくなった後も、元には戻らない部分が残るだろう。あと半年か1年くらいは、新しい行動様式への調整過程であるので、消費は今一歩の状態が続くのではないか。これが、構造変化に伴う消費減退だ。

 さらに、これから雇用環境が悪化するとともに、可処分所得が落ち込むので、それに伴う消費減退もあるはずだ。こうした雇用・所得環境の変化に伴う消費減退も半年か1年くらいは出てくるだろう。

 消費は国内総生産(GDP)の過半を占めるので、このような消費減退は、GDP成長率にも悪影響である。もともと昨年10月からの消費増税により消費が弱含んでいたのが根本原因であるので、少なくとも昨年の増税分は一時的に止めるべきだ。さらには安倍晋三政権によって引き上げられた14年4月の消費増税分も含めて一時的に停止したらいい。

 財務省周辺は「緊縮財政のドイツを見習うべきだ」と言ってきたが、そのドイツでさえ、今年7月から12月までの期間限定で、付加価値税の税率を19%から16%へ引き下げる消費減税を行う。今こそ、これを見習うべきだ。定額給付金と異なり、すぐに実施でき効果が出る政策だ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】日本では緊縮命のぶったるみドイツのように期間限定の減税ではなく、物価目標を達成するまで減税せよ!(◎_◎;)

高橋洋一氏は、ドイツを見習えと言っていますが、ドイツはもともとは緊縮財政の権化のような国で本来は見習えるような国ではありませんでした。これについては、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
メルケル独首相、与党党首再選を断念 首相は継続…後継選び議論加速―【私の論評】「ぶったるみドイツ」の原因をつくったメルケルの敗退は当然(゚д゚)!

この記事は、2018年10月のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。この記事ではドイツの緊縮財政についてまとめて記した部分があるので、まずはその部分を引用します。
ドイツ空軍(ルフトヴァッフェ)の主力戦闘機「ユーロ・ファイター」のほぼ全機に“深刻な問題”が発生し、戦闘任務に投入できない事態となっています。現地メディアによれば全128機のうち戦闘行動が可能なのはわずか4機とも。原因は絶望的な予算不足にあり、独メルケル政権は防衛費の増額を約束したが、その有効性は疑問視されるばかりです。 
ドイツは“緊縮予算”を続けており、その煽りを受けてドイツの防衛費不足は切迫しています。空軍だけではなくドイツ陸軍においても244輌あるレオパルト2戦車のうち、戦闘行動可能なのは95輌などといった実態も報告されています。 
こうした状況に追い込まれた原因の一つとして、ドイツを含む欧州連合(EU)には、財政赤字が対GDP比で3%、債務残高が対GDPで60%を超えないこととする「マーストリヒト基準」があり、財政健全化を重視しすぎるとの声が経済専門家の間にはあります。
ドイツの主力戦車「レオパルド2」
昨年(ブログ管理人注:2017年)10月15日、ドイツ潜水艦U-35がノルウェー沖で潜航しようとしたところ、x字形の潜航舵が岩礁とぶつかり、損傷が甚大で単独帰港できなくなったのです。 
ドイツ国防軍広報官ヨハネス・ドゥムレセ大佐 Capt. Johannes Dumrese はドイツ国内誌でU-35事故で異例の結果が生まれたと語っています。
ドイツ海軍の通常動力型潜水艦212型。ドイツが設計 建造しドイツの優れた造艦技術と
最先端科学の集大成であり、世界で初めて燃料電池を採用したAIP搭載潜水艦である。
紙の上ではドイツ海軍に高性能大気非依存型推進式212A型潜水艦6隻が在籍し、各艦は二週間以上超静粛潜航を継続できることになっています。ところがドイツ海軍には、この事故で作戦投入可能な潜水艦が一隻もなくなってしまったというのです。 
Uボートの大量投入による潜水艦作戦を初めて実用化したのがドイツ海軍で、連合国を二回の大戦で苦しめました。今日のUボート部隊はバルト海の防衛任務が主で規模的にもに小さいです。 
212A型は水素燃料電池で二週間潜航でき、ディーゼル艦の数日間から飛躍的に伸びました。理論上はドイツ潜水艦はステルス短距離制海任務や情報収集に最適な装備で、コストは米原子力潜水艦の四分の一程度です。 
ただし、同型初号艦U-31は2014年から稼働不能のままで修理は2017年12月に完了予定ですが再配備に公試数か月が必要だとされています。
日本でも財務省の緊縮財政により、一方ではF35などの装備品を新規購入されているなどのこともありながら、その他の自衛隊の予算が減らされており、トイレットペーパーの節約が励行されたり、陸自では実弾を用いた訓練が減らされ、米国の軍楽隊よりも、実弾訓練がなされていないということを聞いたことがありますが、それにしてもドイツのように酷い状態ではありせん。

ドイツの軍事的脅威といえば、まずはロシアでしょうが、ロシアのGDPは東京都並みであり、しかも現状では、最大の財源である原油価格はコロナ以前から低迷して世界的な需要減になっています。だから、軍事的脅威はあまり感じていないのかもしれません。日本は、中国や北朝鮮に隣接しているという特殊事情がありますから、ドイツのようなわけにはいかないのかもしれません。それにしても、ドイツでは、なぜこのように緊縮財政がまかり通るのか、不思議というほかありません。

08年の世界金融危機はアングロ・サクソン型の資本主義が作り出したものだとドイツ人は考えているようです。しかし、自分たちは別の道を歩んでいると考えているようです。確かにドイツは英米とは同じではありません。例えば、ドイツは労働規制が厳しく、労働時間は世界最短です。

しかし、こうした考え方は欺瞞です。実際、ドイツ銀行は強欲さにおいてウォール街に決して引けを取りません。市場の自由と規律を重んじるドイツ政府は、計画経済とケインズ主義に反対し、他国に緊縮財政を押しつけています。ドイツ連邦銀行を模範として作られた欧州中央銀行は物価安定に固執しています。

ギリシャなど危機に陥った国は外部からの助けを必要とし、ドイツに大きな期待が寄せられていました。ところが、ドイツは覇権国として弱小国を助ける力と意思を持っていないようです。逆に準覇権国として、弱小国に緊縮と構造改革を押しつけたのです。これが危機を悪化させ、ヨーロッパを分裂させました。

しかし、ドイツ人から見れば、こうした行動は防衛的なものなのでしょう。その意味で、現在の「ドイツ帝国」は覇権を強化し、他国に侵略し続けたナチス時代の第三帝国とは異なるようです。

破壊はたやすく、建設は難しいです。現在のドイツは、中東、世界環境、貿易などの問題で、秩序を建設する力も意思もないようですが、破壊するための力と意思は有り余っているようです。

このようなドイツの財政政策が日本の参考になるはずもありません。見習うべきは、米英の財政・金融政策だと思います。金融政策にいては、ドイツはEUに属しており、EUの中央銀行がこれを定めるので、これも日本には参考になりません。

しかし、そのドイツの財政政策を高橋洋一氏が見習うべきと言うには、それなりの理由があります。それは緊縮大好きのドイツでさえ、今年7月から12月までの期間限定で、付加価値税の税率を19%から16%へ引き下げる消費減税を行うからです。

何しろ定額給付金と異なり、すぐに実施でき効果が出る政策です。実施しない手はありません。

ドイツではさらに、大きな動きがあります。

ドイツのメルケル首相(右)とショルツ財務相( 左)

ドイツのショルツ財務相は大規模な景気刺激策の資金調達のために追加で最大500億ユーロ(568億ドル)の借り入れを検討しているそうです。協議に詳しい政府高官がロイターに話したそうです。
新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)による景気への打撃に対処するため、これまで緊縮財政派だったドイツが域内で最も支出が大きい国の一つに政策を転換する動きとなりそうです。

高官によると、メルケル政権は1300億ユーロの景気刺激策を賄うため第2次補正予算案を17日に承認させる計画。別の高官も、政権が17日に補正予算を可決させたい意向だと話したそうです。ドイツ財務省は借り入れ規模が当初想定の250億ー300億ユーロを上回るとみているといます。

高官2人によると、財務省は下半期に起き得る予想外の状況に対し、財政的な余裕を広げたい意向だそうです。

ドイツでは3月、国債発行による1560億ユーロの補正予算が成立。追加で最大500億ユーロを発行した場合、今年の新規発行額はドイツの国内総生産(GDP)の約6%に当たる2000億ユーロを超える可能性があります。

財務省の報道官は追加の国債発行について明確な数字を明らかにしませんでした。 政府は今年の債務残高がGDP比で75%を超えるとみています。大規模な景気刺激策を導入した10年以上前の世界金融危機以来の高水準です。2019年は60%をやや下回る水準でした。

緊縮大好きドイツが、このように域内で最も支出が大きい国の一つに政策を転換しそうな状況になってきました。

一方日本はどうなのでしょうか。日本では、昨年の消費税を10%に引き上げたことによって、日本経済はかなり低迷していました。そこにさらに今回のコロナ禍が追い打ちをかけました。

安倍首相は増税前に「リーマン級の経済悪化がない限り増税」と言っていました。今回のコロナ禍は、間違いなくリーマン級の経済悪化を超えるものになります。さらに、あの緊縮大好きのドイツでさえ、減税と、支出を大幅に増やすと言っているのですから、これ以上の減税の口実はないかもしれません。

これで、財務省を説得して、減税に踏み切るか、財務省を説得できないなら、解散総選挙の公約にしてでも、減税を実施すべきです。

その動きは、もうあります。例えば、安倍晋三首相は10日午後、麻生太郎副総理兼財務相と官邸で約1時間会談しました。麻生氏は安倍首相の「相談相手」として知られますが、平日の日中に、これほど長時間話し合うのは異例です。

新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)を受けて国内外に難題が山積するなか、今後の政権運営について協議したとみられ、さまざまな臆測を呼んでいます。

国会会期末(17日)を前に、第2次補正予算を成立させた後、第3次補正予算を編成すべきかなどを話し合った可能性があります。第2次補正の財源では、かなりの国債を充てているものの、それでも国債の金利が上がることもなく、まだまだ国債を刷り増し、日銀による買取で、第3次補正にも十分に資金が割り当てられる余地があることも確認したかもしれません。

経済政策では、「消費税減税」を求める声があります。「消費税減税」と「衆院解散」は検討課題になった可能性があります。

私も減税は賛成です。ただし、緊縮大好きのドイツを見習うべきでない点もあります。それは、ドイツが今年7月から12月までの期間限定で、減税を行う点です。さすがドイツです。どこまでも、緊縮が大好きなようです。

本来は、期間限定ではなく、物価目標や雇用目標を定めて、その目標が達成されるまで、財政政策や、金融政策を継続すべきなのです。

日本では、ドイツ方式ではなく、物価目標2%を実現してもすぐに消費税を元に戻すのではなく、明らかにインフレになった時に元に戻すべきです。物価目標が達成できないなら、最初は8%への減税から、それで物価目標が達成できないのなら5%に、それでもまだ駄目なら0%にして、物価目標が達成できるまで、続けるべきです。

それで令和時代は、平成時代の負の遺産であるデフレときっぱりと決別できます。

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2020年6月10日水曜日

中国に隠ぺい新疑惑! 武漢市で新型コロナ感染“昨夏拡大”か 米ABCニュース「中国がWHOと結託、解明を困難にしている」— 【私の論評】昨年の夏にすでに武漢ウイルスの蔓延の事実があれば、世界の世論は激昂する!(◎_◎;)

中国に隠ぺい新疑惑! 武漢市で新型コロナ感染“昨夏拡大”か 米ABCニュース「中国がWHOと結託、解明を困難にしている」


中国・武漢の病院窓口に並ぶ市民ら。新型コロナウイルスは早くから拡大していたのか=1月31日

 新型コロナウイルスが、中国湖北省武漢市で昨年夏から広がり始めていた可能性があるという研究結果が発表された。米ハーバード大学医学部のチームが、衛星画像とインターネット検索のデータをもとに分析したという。中国政府は7日に公表した新型コロナウイルスの白書に「武漢市で昨年12月27日に『原因不明の肺炎』を確認し、今年1月3日に世界保健機関(WHO)に報告した」と記載しているが、事実はまったく違うのか。ノンフィクション作家の河添恵子氏による緊急寄稿第16弾-。


 「2019年夏、(武漢市で)起きたのかもしれない」

 こう語ったのは、ハーバード大学医学部のジョン・ブラウンスタイン教授である。ボストン小児病院のイノベーション責任者でもあり、医療センターの計算疫学研究所長も務める人物だ。

 注目の調査結果は、米ABCニュースが8日、「衛星データは、コロナウイルスが以前、中国を襲った可能性を示唆している」とのタイトルで報じた。米CNN(日本語版)も9日、「武漢市の新型コロナ、昨夏にすでに感染拡大か」と伝えている。

 ブラウンスタイン氏の研究チームはまず、18年と19年の商業衛星の画像を解析した。昨年夏の終わりから秋にかけて、武漢市にある5カ所の主要な病院周辺で、交通量が大幅に急増していた、という。

 昨年10月、武漢科技大学天祐医院の駐車場の車両数は前年同月と比べて、何と67%も多かった。華中科技大学同済医学院付属の湖北省婦幼保健院の交通量も昨年9月にピークを記録していた。

 さらに同時期、中国の検索エンジン「百度(バイドゥ)」において、「せき」「下痢」などのキーワードで検索する回数が激増していた。「せき」や「下痢」は現在、「武漢肺炎」の典型的な症状として認識されている。

 これらのデータと新型コロナウイルスの関係を直接証明できないが、研究チームは「呼吸器疾患は、地域で特定の行動パターンにつながる」「行動パターンを示す衛星画像は、患者が当時、重大な問題に気づいていなくても、何かが起きていたことを説明するのに役立つ」という視点で調査・分析した。

 ブラウンスタイン教授は「新型コロナウイルス大流行の始まりとされる以前から、明らかに社会的混乱が起きていた」「この研究が、新型コロナウイルスの『起源の謎』の中で、重要かつ新しいデータポイントになった」と総括している。

 実は、日本でも昨秋、医師が「なかなか治らない不可解な肺炎が流行っている」と語っていたのを、筆者も聞いている。また、葬儀関係者が「昨秋から年末にかけて肺炎死が激増した」とオフレコで語ってくれた。

     武漢市には約200社の日本企業が進出しており、人々の行き来は頻繁だった。日本にも同時期、武漢ウイルスが入ってきていた可能性は捨てきれない。

 前出のABCニュースは「世界の一流科学者、専門家が新型コロナウイルスの秘密を明らかにするため競争している。だが、中国当局がWHOと結託し、西側社会との完全なる協力体制を拒否していることが、その解明を困難にしている」と報じていた。

 欧州一の発行部数を誇るドイツの週刊誌「デア・シュピーゲル」最新号では、WHO名誉事務局長のグロ・ハーレム・ブルントラント氏がインタビューに応じ、「中国共産党の報告の遅れが流行拡大の原因」「ヒトへの感染経路は1月1日には明確だったが、中国共産党は1月20日まで公に確認しなかった」と批判した。

習近平
習近平政権の「人命無視」の隠蔽体質を、世界は決して放置しないはずだ。

 ■河添恵子(かわそえ・けいこ) ノンフィクション作家。1963年、千葉県生まれ。名古屋市立女子短期大学卒業後、86年より北京外国語学院、遼寧師範大学へ留学。著書・共著に『「歴史戦」はオンナの闘い』(PHP研究所)、『トランプが中国の夢を終わらせる』(ワニブックス)、『世界はこれほど日本が好き』(祥伝社黄金文庫)、『覇権・監視国家-世界は「習近平中国」の崩壊を望んでいる』(ワック)など。

【私の論評】昨年の夏にすでに武漢ウイルスの蔓延の事実があれば、世界の世論は激昂する!(◎_◎;)

私はこのブログで以前米国はウイルスの発生源がどこであるかなどを突き止めることに労力を費やすよりは、武漢の中国人医師らが、ウイルスの存在を突き止めた段階で、中共がこれを隠蔽したことが後にパンデミックを招いたことこそ詳細に調査するべきであると主張しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
中国が言い張るコロナ「市場起原説」は覆されるのか―【私の論評】中国人医師らが、ウイルスの存在を突き止めた段階で、中共がこれを隠蔽したことが後にパンデミックを招いたことこそ詳細に調査するべき(゚д゚)!

武漢にある中国政府のウイルス研究機関(手前) 
これは、今年4月19日の記事です。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、 この記事から一部を引用します。
中国ウイルスの発生源がいずれであろうと、それが生物兵器であろうとなかろうと、それに米国などが資金援助をしていたかどうかなどとは、別にして、 少なくとも一人、あるいは複数の高名な医師が、十分に世界が、そうして当の中国が、中国ウイルスに対応できる時間がある段階でこのウイルスを突き止めたにもかかわらず、中国政府は対応する措置を取る代わりに情報の隠蔽を試み、そうした声、良識ある声を黙殺し、情報を抑え込んだことは事実です。
米国やフランスも、「中国・武漢の生物研究所から流出」「中国政府による発生源の情報隠蔽」などを追求することも実施できるならすべきですが、中国人医師らが、ウイルスの存在を突き止めた段階で、中国政府がこれを隠蔽、それが後のパンデミックにつながったことこそ、時系列的に整理し、詳細を調査するべきです。
それなしに、他の調査を詳細に行ったところで、それが今後中共がパンデミックスを起こすことを防ぐための端緒にはならないどころか、中国に格好の隠れ蓑を与える結果になってしまいかねません。
そうして、詳細を調査し、さらに具体的な改善点を指摘し、それを中共に実施させるべきです。そうして、実施したか否かを模擬的に試験などをして、調査すべきです。
そうして、もし中国がそうした要請に応じないというのなら、世界の国々は、中国を自分たちの社会から隔離すべきです。これは、厳しい措置にみえるかもしれませんが、曖昧にしたまま、中国を隔離しなければ、次に何か中国発でウイルスとなども含めて、危険なことが発生した場合、また危機が世界に及ぶこと可能性は否定できないどころか、かなりの高い確率で発生しうるからです。
なぜこのような主張をしたかと言えば、発生源を辿ることは学問的に意義があることですが、政治的にはほとんど意味がないどころか、中共に格好の隠蓑を提供することになる懸念があったからです。私は感染学という学問の立場からの研究まで、否定するつもりは毛頭ありません。

米国などが、政治的意図で、発生源が中国国内でないと突き止めた場合は、中国はそれを格好の宣伝材料に用い、今回のパンデミックは、中国も被害者であり、発生源になった国を糾弾すべきとの、プロパガンダを打つことでしょう。

発生源が明らかにならなくても、あるいは中国であることが明らかになっても、中国はこれをプロパガンダに用いる可能性は、十分にあります。米国などが、これを立証できない場合、中共が証拠を捏造し、発生源は中国ではないし、中国は被害者であると主張する可能性が十分あります。

米国などが、発生源にこだわり、学術的な探索ではなく、政治的な目的で、発生源調査をして、それなりの時間をかけてると、中共にこれを利用され、発生源は米国であるとか、日本であるとのでっちあげをされて、数十年後には、「武漢ウィルス」や「美國(中国語で米国の意味)ウィルス」になってしまっているかもしれません。

日本はすでに、そのような被害を受けています。日本軍による南京虐殺30万人などは、その典型です。中共はまともな総力戦を、戦ったことが一度もないので、そのような話をでったあげ、人民に信じ込ませることができました。

30万人を殺すという作業がとてつもない手間と労力であることを彼らは認識していないようです。これと同じように、武漢ウイルスを米国起源とすることなど、彼らは躊躇もなくやってしまう可能性は十分あります。

それが事実であろうが、なかろうが、どうでも良いのです。ただ、中国の人民が信じれば、それで良いのです。それによって、中共の統治の正統性が高まれば、それで良いのです。中国の人民の他に、他国の左翼などがそれを信じこみ、米国を糾弾すれば、さらに自分たちに有利になり、さらに彼らにとっては、良いことです。

南京虐殺記念館 壁に各国の言葉で「犠牲者30万人」と刻まれている

そんなことは絶対に避けるべきなのです。だからこそ、私は、米国が政治的意図を持って、武漢ウイルスの調査をするなら、中国人医師らが、ウイルスの存在を突き止めた段階で、中国政府がこれを隠蔽、それが後のパンデミックにつながったことこそ、時系列的に整理し、詳細を調査するべきと主張したのです。

しかし、うえの新たな情報は、発生源に関するものではなく、「武漢市の新型コロナ、が昨夏にすでに感染拡大していた」可能性を示唆するものです。

これが明らかになれば、習近平政権の「人命無視」の隠蔽体質を露わにし、多くの人命を失った世界、特に先進国はこれを許さないことでしょう。

中国がこれを一切認めず、南シナ海の実行支配を国際司法裁判所の裁定で無効とされた後でも、実効支配を続けたように、被害者面を続け何も改めようとしなかった場合、世界は中国に対処するため、国境封鎖などの厳しい措置に出ることも十分予想されます。

中国はそれでも、南シナ海の実効支配の経験があるので、米国は結局何もできないだろうと、たかを括っているかもしれませんが、今度ばかりはそうはいかないでしょう。

特に甚大な被害を被った米国世論は、激昂するでしょう。

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ノーベル賞作家、中国が「独裁国家」でなければ事態は違った 新型コロナ―【私の論評】中国に対する怨嗟の声が世界中から沸き上がり世界は大きく変わる(゚д゚)!



2020年6月9日火曜日

【日本の選択】習主席の「国賓」来日“事実上の白紙”は朗報 日本は米中対立の時代に右顧左眄すべきではない — 【私の論評】日本の経済は黄金期を迎え、「戦後レジーム」から解き放たれ、自由に羽ばたくことができるようになる!(◎_◎;)

【日本の選択】習主席の「国賓」来日“事実上の白紙”は朗報 日本は米中対立の時代に右顧左眄すべきではない 
米中貿易戦争

安倍首相(右)と、トランプ大統領は「共通の価値観」を共有している。

   中国の習近平国家主席の「国賓」来日が、事実上の白紙となったようだ。新型コロナウイルスの世界的感染拡大(パンデミック)を受け、日中両政府は今春の来日を延期していたが、無期延期状態が継続しそうだというのだ。習氏率いる中国共産党政府には、「死のウイルス」の初動対応や、「高度な自治」を無視した香港への強硬姿勢をめぐり、米国をはじめ世界各国で批判が高まっている。「米中新冷戦」も指摘されるなかで「日本の選択」とは。新進気鋭の政治学者、岩田温氏が斬り込む。


 コロナ禍があぶり出したのは冷厳な事実だ。

 「リベラル」と称する人々は、国家の存在を軽んじ、「国家の時代は終わった」などと安易に主張していた。だが、パンデミックという世界的な危機に際して、適切な対応を取ることが可能だったのは国家だけであった。

 もちろん、国家間の協調が重要であることは言をまたないが、国家を超越した組織が国家以上に機能することはなかった。あくまで現代政治の基本単位は国家なのである。

 空想を排し、冷静に現実を眺めてみると、必然的にわが国の進むべき道がみえてくる。

 コロナ以前から既に「米中対立の時代」に入っていたが、コロナの問題を機にますます対立は深まっていくだろう。それは現実政治において米中が対立するだけでなく、「あるべき国家とは何か」という理念上の対立にまで発展する。

 ドナルド・トランプ米大統領は名指しで中国を批判し、中国も米国を強く非難している。だが、こうした表面的な批判の応酬以上に重要なのが理念としての国家のあり方なのである。

 ◇

 コロナ禍があぶり出したのは冷厳な事実だ。

 「リベラル」と称する人々は、国家の存在を軽んじ、「国家の時代は終わった」などと安易に主張していた。だが、パンデミックという世界的な危機に際して、適切な対応を取ることが可能だったのは国家だけであった。

 もちろん、国家間の協調が重要であることは言をまたないが、国家を超越した組織が国家以上に機能することはなかった。あくまで現代政治の基本単位は国家なのである。

 空想を排し、冷静に現実を眺めてみると、必然的にわが国の進むべき道がみえてくる。

 コロナ以前から既に「米中対立の時代」に入っていたが、コロナの問題を機にますます対立は深まっていくだろう。それは現実政治において米中が対立するだけでなく、「あるべき国家とは何か」という理念上の対立にまで発展する。

 ドナルド・トランプ米大統領は名指しで中国を批判し、中国も米国を強く非難している。だが、こうした表面的な批判の応酬以上に重要なのが理念としての国家のあり方なのである。
    米国が最も重視するのは「自由と民主主義」だ。これは米国の一貫した理念であり続けている。

 これに対して、中国が掲げるのは「共産党によって強力に指導された政治体制」だ。中国が武漢におけるウイルスを封じ込めたと喧伝した際、中国共産党の強力な指導体制を誇った。これは単純に共産党をたたえているのではなく、「自由民主主義社会は自分たちの理念ではない」ことを暗に世界に示したのだ。

 危機の際、自由民主主義社会の対応が遅れがちになるのは事実だ。なぜなら、自由民主主義社会においては効率以上に「国民の基本的人権」や「自由」を尊重するからだ。国民の権利や自由など全く意に介することなく、ひたすら効率を追い求める非・自由民主主義社会の方が迅速な対応を取ることが可能である。

 だが、効率のみを追求する社会において、人々は幸せに生きることができるのだろうか。

 現在、香港で「国家安全法」が導入されようとしており、多くの市民が怒りの声をあげている。なぜ、彼らは必死に戦うのか。それは、「自由民主主義社会こそが、最も人間らしく生きることができる」という確信があるからだ。

 天安門事件(1989年6月4日)を思い返せば分かるように、中国は「経済の自由化」は認めても「政治の自由化」は認めない。なぜなら、政治の自由化は中国共産党による支配を根底から覆す可能性が高いからだ。

 一度、香港の自由が失われれば、自由を復活させることは困難だ。「表現の自由」「思想信条の自由」などの自由が奪われ、生きづらい社会が到来する。

 ■習主席の「国賓」来日「事実上の白紙」は朗報

 米中対立の時代に、わが国はどうあるべきなのか。

 多くの日本国民は、その重要性を閑却(かんきゃく=いい加減にしておくこと)しがちだが、われわれもまた自由を享受して生きており、そうした体制の下における生を望んでいるのだ。「リベラル」を自称する人々は「安倍独裁」などというが、テレビで堂々と政権批判をしても何も問題とならないわが国が独裁政治であるはずがない。

 習主席の「国賓」来日が「事実上の白紙」となったとの報道があった(産経新聞6日朝刊)。朗報というべきだ。香港への「国家安全法」の導入決定問題を厳しく論ずるべきときに、習主席の鼻息を仰ぐような態度をとるべきではないからだ。

 日本は米中対立の時代に右顧左眄すべきではない。もちろん、中国との対立を激化させる必要はない。しかし、理念が異なる国家であることを忘れずに堂々と批判すべきときには批判すべきなのだ。基本的人権を無視し、国民の自由を蹂躙(じゅうりん)する国家に阿諛追従(あゆついしょう=気に入られようとして、媚びへつらうこと)してはならない。

 ■岩田温(いわた・あつし) 1983年、静岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、同大学院修士課程修了。拓殖大学客員研究員などを経て、現在、大和大学政治経済学部政治行政学科准教授。専攻は政治哲学。著書・共著に『「リベラル」という病』(彩図社)、『偽善者の見破り方リベラル・メディアの「おかしな議論」を斬る』(イースト・プレス)、『なぜ彼らは北朝鮮の「チュチェ思想」に従うのか』(扶桑社)など。

【私の論評】日本の経済は黄金期を迎え、「戦後レジーム」から解き放たれ、自由に羽ばたくことができるようになる!(◎_◎;)

安倍晋三首相も、基本的人権を無視し、国民の自由を蹂躙する国家に阿諛追従するつもりはないようです。

安倍晋三首相は9日の衆院予算委員会の国民民主党の渡辺周氏への答弁で、中国の習近平国家主席の国賓来日に関し、日程調整を当面行わない考えを表明しました。新型コロナウイルス感染症に触れ「状況を収束させることが何よりも重要だ。日中間で意思疎通を続けるが、少なくとも今は具体的な日程調整をする段階にはない」と述べました。

9日の衆院予算委員会の国民民主党の渡辺周氏への答える安倍総理

中国による香港への国家安全法制導入決定を巡り「情勢を深く憂慮している。香港は一国二制度の下、自由で開かれた体制が維持され、民主的、安定的に発展することが重要だ」と改めて強調しました。

当然といえば、当然の反応です。そうして、政府としては、これからの世界がどのように変わっていくのか、見通しをもって今後の政策を遂行していくべきです。

これからの世界は、どのように変わっていくのでしょうか。コロナ禍による社会隔離措置の結果として、全世界的に、サービス消費に関わる産業の多くが世界的に壊滅的な打撃を受けています。

一方、巣ごもり消費やリモートワーク等の恩恵を受ける分野では代替需要と特需が発生していることも、見逃されるべきではありません。経済全体に対しては良くない影響がありながら、それとともに、勝ち組と負け組を二極化させることもまた、「コロナ共生の時代」の特徴として捉えておくべきです。

もちろん、コロナ狂騒曲はいずれ終焉を迎えます。その後、「コロナ共生の時代」の優劣が続くとは限らないです。しかし産業構造が「コロナ以前」の時代へと再び回帰するかと問われれば、それも難しいといわざるを得ないです。

なぜなら、コロナ以前の時代から始まっていた国際政治経済の変化がコロナ禍を触媒として加速しているからです。これが最終的に受容されることになれば、社会構造の変化が言わば「コロナ遺産」として残され、「コロナ後の時代」における経済産業構造を規定することにります。

コロナ以前から既に始まっていた国際政治経済の一つの潮流が「主権国家の逆襲」もしくは、グローバルガバナンスの修正でした。国家は「国家主権」「民主主義」「(ハイパー)グローバリゼーション」の三つのうち、少なくとも一つを放棄せざるを得ません。

ダニ・ロドリックが提唱した、この有名な「国際政治経済のトリレンマ」になぞらえれば、冷戦終結を契機として西側諸国は国家主権を限定することと引き換えにグローバリゼーションを進展させてきたとも言えます。

しかし進み過ぎたグローバリゼーションは深刻な問題を露呈させました。第一は、「底辺への競争」と「再分配機能の低下」に伴う(国内)格差の拡大です。これは戦間期(第一次大戦終結から第二次大戦開始まで)としばしば重ねられる現象でもあります。グローバリゼーションの恩恵にあやかるべく、各国は競って(法人)所得減税・関税減免・規制緩和に励む。その財源は、(輸出に有利な)付加価値税の増税です。

結果として資本効率は高まるのですが、他方で実質的な労働所得は抑制されることになります。わかりやすくはっきり言えば、資本家と労働者の格差が拡大します。トマ・ピケティの議論を持ち出すまでもなく、トランプ現象にせよ、サンダース旋風にせよ、英国のEU離脱にせよ、大陸欧州で深刻化するネオナチ運動にせよ、通底しているものは皆、ルサンチマンが導くグローバリゼーションに対する反発だったのかもしれません。

露呈した第二の問題は、中国共産党の台頭に伴う「(サミュエル・ハンチントンが指摘するところの)文明の衝突」リスクの顕在化です。グローバリゼーションの進展が中国経済の躍進に機会を与えたことは言うまでもないのですが、中国の台頭は通信・航空技術など軍事関連分野でもリープフロッグ型発展を促し、西側諸国の安全保障を脅かすに至りました。米中冷戦の底流にこの問題が存在していることもまた、論をまたないでしょう。

これらへの対処こそが、「ポスト・コロナ時代」への伏線だった、とは考えられないでしょうか。第一の問題への処方箋として検討されていたのが「ベーシックインカムに代表される所得再分配制度の再設計」、および「過度なグローバリゼーションの是正(と国家主権の回復)」です。

第二の問題への処方箋としては、「経済のブロック化と内製化の進展」、「軍事関連技術への国家的介入」などが検討・実施されてきました。無論、グローバリゼーションによる経済的恩恵を放棄しながら上述したような政策を行うためには、莫大な財源確保を必要とします。この財源問題を克服するに当たって一部で検討されていたのがシニョレッジ(通貨発行益)の議論でもありました。

上述したような処方箋の多くが、主流派の経済学者・政治学者らの目には荒唐無稽な発想に写ったに違いないです。しかし翻って現在、コロナ禍への対応を口実として、前述した対策と近しい政策が矢継ぎ早に実行に移されていることは否定できないです。

国際移動は半ば強制的にシャットダウンされました。内製化およびサプライチェーンの再構築に向けて、国家を挙げた対策が講じられています。ボーイング等に代表される軍需関連産業の保護は早急に進められています。

リモートワーク推進等を奇貨として、中国共産党が近年進めてきたことと全く同様に、仮想空間における監視強化と通信技術の発展が志向されることになるかもしれません。緊急事態宣言により国民主権は一部制限されることになりますが、他方で、一時的とはいえベーシックインカムに近しい現金給付が行われ、一定水準の生活が保障されます。そして政府支出の増加は中央銀行の量的緩和によって一旦ファイナンスされます。

かつて荒唐無稽と一笑に付されてきた「グローバルガバナンスの修正」に向けた過激な政策が、コロナ禍を触媒として予定調和的に進められているのが現状だとと見做すこともできるかもしれません。

もしそうだとすれば、コロナ制圧後の人類は新たな世界秩序を受容するのでしょうか。それとも、コロナ以前の世界を希求するのでしょうか。この社会選択が「ポスト・コロナ時代」における経済産業の「ゲームのルール」を強力に規定することになるでしょう。

コロナ制圧後の世界秩序はまだどうなるかは、わかりませんが、中国は一党独裁のため、民主化ができず、グローバリゼーションと国家主権に拘泥しようとするのですが、ある程度民主化しなければ、世界の大きなプレイヤーである日米などの先進国と貿易ができなくなるでしょう。

かといって、先進国とは別の経済圏を作ったにしても、結局は旧ソ連と同じで、その経済圏が発展することもなく、ソ連と同じで衰退していくことになるでしょう。米国は中国が体制を変えない限り、制裁をさらに加速します。

そうして中国はソ連と同じ運命を辿り、崩壊するか、今の体制のまま、経済が衰退して世界に対して影響力を及ぼすことができなくなるでしょう。

日本については、グローバリゼーションの度合いを減らすことにより、自給自足型経済で“V字回復”し、黄金時代を迎えることになるでしょう。

コロナ禍の前は、明らかに人手不足傾向でしたが、コロナ禍により、一時的に雇用がダメージを受けるかもしれませんが、反グローバル化で、自給自足型経済を推進すれば、また人手不足の状況に戻り、それが日本の大繁栄の基礎となるでしょう。

恒常的人手不足により、誰もが普通に働けば生活に困ることなく、普通に努力すれば、応分に報いられる社会に変容していくことでしょう。ただし、リーダーといわれる人々には大変な時代となります。

利害が対立しがちな部門同士の調整をするとか、カリスマ性を発揮するなどの従来型のリーダーシップから真のリーダーシップを発揮することが求められるようになるでしょう。

これについては、すでにこのブログで解説したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
自給自足型経済で“V字回復”日本の黄金時代到来へ! 高い衛生観念でコロナ感染・死者数抑え込みにも成功―【私の論評】今後も続く人手不足が、日本を根底から変える。普通の人が普通に努力すれば応分に報いられる時代がやってくる(゚д゚)!



詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事の結論部分を掲載します。
常に人手不足にさらされるこれからの時代には、合理性を無視した極端な緊縮財政や極端な金融引締は回避されるのではないかと思います。であれば、日本は黄金時代を迎えるのは、間違いないと思います。
ただ、日銀や財務省は、国民による厳しい監視を続け、昨年の増税などの非合理な動きをしたときには、厳しく糾弾していく必要性は、ここしばらくはありそうです。
日本が反グローバル化の波に乗り、ある程度は自由貿易をしつつも、自給自足型の経済に戻れば、 間違いなく黄金期を迎えます。

ただし、日銀や財務省が政策を間違え、それを政治家が正せないようなら、黄金期を迎えることはできないかもしれません。日本が黄金期を迎えられるか否かは、日本が軍事的脅威にさられる以外は、国外の事情とはあまり関係ありません。

一重に、国内の財政政策と金融政策が問題です。これらが、まともに遂行されれば、日本は黄金期を迎えます。財務省や日銀が誤った政策を実施しても、それを政治家が修正できなければ、平成時代と同じく、デフレが続くことになります。

そうして、日本が黄金期を迎えれば、日本の社会は変わります。「国際政治経済のトリレンマ」でいうところの、「(ハイパー)グローバリゼーション」を捨て去り、日本は黄金期を迎えるわけですから、「国家主権」「民主主義」のいずれを強めても成り立つわけです。

そうなると、これらの両方を強化をすべきです。今の日本で、「国家主権」と「民主主義」のいずれが、強化できる余地があるかといえば、言わずもがなの「国家主権」です。

ただし、民主主義も欠けている面などは、補いつつも、国家主権を強化すべきです。そうして、黄金期を迎えた、日本ではそれ比較的容易になるはずです。

今でも、現在コロナ対策の二次補正予算はバラマキなどとのたまう、政治的にも経済的にも物差しが狂った野党はほとんど相手にされなくなっているでしょう。まともな野党だけが、多くの国民に支持されることになります。

そうなると、憲法改正などの「国家主権」に関わる分野は、かなり是正できることになります。その頃には、中国はかなり弱体化しており、その影響力もほとんどなくなり、日本は「国家主権」を強化することが容易になるはずです。

これには、米国の議会も大統領も賛成することでしょう。彼らも、戦後長期にわたって、平和主義を貫いてきた日本が、よもや中国のように米国を脅かす存在になることはなく、頼りになるパートナーが生まれることを期待するようになるでしょう。

日本経済は黄金期を迎え、「戦後レジーム」からも解き放たれて、自由に羽ばたくことができるようになるでしょう。

黄金期を迎える日本の将来を信じて、政府はそれを目指して、戦略を立てるべきです。私たちも、その未来が来ることを信じて、まずは目の前の私たちの責務を果たしていこうではありませんか!

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2020年6月8日月曜日

【新型コロナと米中新冷戦】中国共産党「全正面同時攻撃」の“粗雑” 『超限戦』著者は「米国に絞って対決せよ」と主張 — 【私の論評】コロナで変わった世界で、米中対立は短くて2年、長くて4年で決着がつく‼︎

【新型コロナと米中新冷戦】中国共産党「全正面同時攻撃」の“粗雑” 『超限戦』著者は「米国に絞って対決せよ」と主張 
米中貿易戦争

中国全人代に出席した習近平国家主席(左)と、李克強首相=5月22日、北京の人民大会堂


     新型コロナ禍における中国共産党が採用した措置について、私は「実に『超限戦』的だ」と思ってきた。『超限戦』(角川新書)は、1999年に出版されて世界的なベストセラーになった本だ。同書は、「目的のためには手段を選ばない。制限を加えず、あらゆる手段を活用して目的を達成せよ」と主張している。

 中国共産党は現在、米国やNATO諸国、台湾、香港の反中国勢力など、多くの国・組織・個人を敵に回す「全正面同時攻撃」を展開している。

 具体的には、沖縄県・尖閣諸島周辺や、南シナ海での中国海警局の不法行動、インド国境付近での国境争い、台湾軍事統一の脅し、香港国家安全法を制定しようという動きなどだ。そして、外交における「戦狼外交」だ。

     5月末に、中国共産党の権威主義を示す2つのイベントがあった。同月28日に、香港に「国家安全法」を直接導入する方針が決定し、翌29日に「反国家分裂法」の制定15周年を記念する式典があった。

 式典に参加した人民解放軍の李作成総参謀長は「台湾との平和的な再統一の可能性がなくなった場合、必要なあらゆる手段を用いる」「われわれは武力行使を放棄すると約束しておらず、台湾海峡の状況安定と制御のために必要なあらゆる選択肢を持っている」と台湾に警告した。

     一方、『超限戦』の著者である喬良・退役空軍少将は、中国共産党とは違う主張をしている。

喬良・退役空軍少将


 例えば、喬氏は「主敵である米国に集中すべきだ」「ギャングの抗争においては、まず最も強い相手(ボス)を倒すことに集中するのが原則だ。ボスを倒してしまえば、雑魚は怖がる。まず、強敵に対処すべきで、その他の弱い相手にかまうべきではない。台湾が本当に独立の行動を起こさない限り、台湾を相手にすべきではない」「米国との力比べ(腕相撲)に集中すべきだ」「香港国家安全法は不可欠であり、香港問題はローカルな問題ではなく、米中対立の第一線だ。米国の抑圧をかわす重要な戦場だ」「中国が米国の包括的な抑圧に抵抗できれば、香港も抵抗できる。結局、香港問題は中米の競争問題なのだ」と主張している。

     つまり、喬氏の考えでは、現在、台湾よりも危険なのは香港であり、香港が米中対立の最前線になるという判断だ。

 軍事のセオリーでは、「全正面同時攻撃」は圧倒的な力がないと失敗に終わる。中国共産党が行っている「中国の意に沿わない国家・組織・個人をすべて攻撃する」やり方は粗雑だ。喬氏が主張する「米国に焦点を絞って対決せよ」は間違っていない。喬氏は手ごわい。

 ■渡部悦和(わたなべ・よしかず) 元陸上自衛隊東部方面総監、元ハーバード大学アジアセンター・シニアフェロー。1955年、愛媛県生まれ。78年東京大学卒業後、陸上自衛隊に入隊。その後、外務省安全保障課出向、ドイツ連邦軍指揮幕僚大学留学、第28普通科連隊長(函館)、防衛研究所副所長、陸上幕僚監部装備部長、第2師団長、陸上幕僚副長を経て2011年に東部方面総監。13年退職。著書・共著に『中国人民解放軍の全貌』(扶桑社新書)、『台湾有事と日本の安全保障』(ワニブックスPLUS新書)など。

【私の論評】コロナで変わった世界で、米中対立は短くて2年、長くて4年で決着がつく‼︎

ルトワック氏

毎日新聞2018年10月14日付に、世界一の戦略家ルトワックのインタビューに関する記事が出ていました。その内容を以下に紹介します。
米国防総省のアドバイザーなどを務め、戦略論研究で知られるエドワード・ルトワック氏が来日し、毎日新聞のインタビューに応じました。貿易や知的財産権などを巡る米中対立について「長期間に及ぶことになる。対立は中国共産党政権が崩壊するまで続くだろう」と語りました。そうして、米政界における親中派はもはや「壊滅状態」と指摘しました。(毎日新聞)
米国の「親中派」はこの時点で「壊滅状態」だったのです。驚くべきことです。米国は、ニクソンの時代から、基本的に一貫して「親中」でした。キッシンジャーは、70年代から「米中は事実上の同盟関係にある」と宣言していました。
中国が急成長をつづけることができたのは、米国(と日本)から資金と技術を好きなだけ受け取ることができたからです。レーガンもブッシュ(父)もクリントンもブッシュ(子)もオバマも、基本的には皆親中でした(オバマは、2015年3月のAIIB事件以降、反中)。ところが当時から「親中派は壊滅状態」だというのです。

当時から軍需産業や外交ロビーに加え、シリコンバレーなどのハイテク企業も対中圧力を求めるようになり、米政府の「締め付けが始まっている」と強調していました。
トランプ政権の発足直後、ハイテク産業は「自分たちのビジネスに干渉しないでくれという姿勢だった」が、中国による知的財産権の侵害事案が相次ぎ、現在は「ワシントンに来て、助けが必要だと要請するようになっている」というのです。(毎日新聞)
何と、シリコンバレーも「反中」に転じていたのです。米国は、「挙国体制」になったのです。
米中両国が核兵器保有国であることから「米中が軍事衝突する可能性はない」とも強調。ただ、その結果、かえって対立は長引き、共産党支配が終わる「レジーム・チェンジ(体制変革)」まで収束しないと予測しました。(毎日新聞)
これに関しては、このブログでは何度か掲載したことがあります。ルトワック氏は、米中共に、両国ばかりか地球を破壊できる量の核をもっています。だから大戦争(大戦闘)にはなりにくいです。主戦場は、「経済戦争」に移行しているのです。そうして、共産党支配が終わる「レジーム・チェンジ(体制変革)」まで収束しないと予測したのです。

そうして、このルトワック私の説は日本にとって 何を意味するのでしょうか。
1.安全保障面では、大きなプラス

皆さんご存知のように、中国は明確な「日本破壊戦略」をもっています。中国、ロシア、韓国で、「反日統一共同戦線」をつくる。 中ロ韓で、日本の領土要求を断念させる。 日本に断念させる領土とは、北方4島、竹島、尖閣・沖縄のことです。
 日本には、沖縄の領有権はない。 反日統一共同戦線には、米国も入れなければならない。

中国の現政権は、「日本壊滅」を願い、実際積極的に行動しているのです。ですから中共政権がなくなるのは、日本にとっては良いことです。
2.経済では悪影響のはずがコロナで状況は変わった
米国とソ連の冷戦時代、2つのシステム間には、ほとんど経済交流がありませんでした。それで、冷戦時代、日本は問題なく経済成長することができた。しかし、米中冷戦は、事情が違います。中国は、世界経済に完璧に組み込まれています。

冷戦下のソ連での軍事パレード

というわけで、米中貿易戦争の悪影響から、日本は逃れることができないでしょう。昨年は消費税増税、今年は、コロナが日本も直撃し、現在そこから、回復すべく日本は努力しています。
これによって日本では、マスク不足など過度な中国依存の弊害が明るみに出て、中国依存をやめようという動きが広がっています。この動きは日本だけではなく、全世界に広まっています。
米国など先進国は、中国をサプライチェーンから引き離そうとしています。そうなると、かつての米国とソ連の冷戦時代、に2つのシステム間には、ほとんど経済交流がなかった時代のようになるかもしれません。
そうなると、日本はまた、経済的に大発展するかもしれません。それについては、このブログでも掲載したことがあります。
3.日本の針路

日本は、習近平首席を国賓待遇で招くという話があります、安倍総理は「米国の敵国の大将」を招くのだという自覚をはっきりもっていただきたいと思います。

日中両政府が、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で延期した中国の習近平国家主席の国賓としての来日について、年内の実施を見送ることが5日、分かっています。
習氏の来日は来年以降も無期延期状態が継続するとみられ、事実上、白紙となる公算が大きいようです。中国のコロナ対応や香港問題などへの強硬姿勢をめぐっては、米国をはじめ世界各国で批判が高まっており、政府高官は「習氏は来日できないし、来ないだろう」との見通しを明らかにしました。
米中貿易戦争で『歴史的岐路』に立つ日本としては、中国は負ける側であることをしっかり認識すべきです。日本は前回、負けるナチスドイツと同盟を組み、破滅しました。今回は、すでに「勝つ側」と「同盟関係」にあります。日本としては、しっかりと現状を維持すべきです

コロナによって、世界は随分変わりました。コロナ以前には、5年から10年かかった世界の変化が、コロナ後には1年から2年で変わるであろうことをイアンブレマー氏が語っていました。
私も、そう思います。私は、米中対立は中共が体制を変えるか、中共が体制を変えることを拒むなら、経済的に弱体化して世界に大きな影響を及ぼせなくなるまで続くだろうと見ています。そうして、コロナ前には、短くても10年、長けば20年継続するだろうと考えていました。
この長丁場の中では、『超限戦』の著者である喬良・退役空軍少将が主張するように、米国だけを相手にするとか、超限戦を挑むということも意味があったかもしれません。
しかし、金融制裁や資産凍結なども含むありとあらゆる手段で中国を潰そうとする米国に対抗するのは難しいです。しかも、コロナ禍により、他国も中国に対して硬化しています。いくら中国が米国だけを相手にしようとしても、他の国々がそれを許さないでしょう。
コロナ後の世界では、中国VS米国等の国々の対立は、短くて2年、  長くても4 年で決着がつきそうです。5年後には、中共は姿を消し、現在の中国を姿を消し、新たな国が生まれているかもしれません。その時には、チベットやウイグル、内蒙古や旧満州も別な国になっているかもしれません。

日本は、このような展望に立脚し、中国への経済ての依存を断ち切り、冷戦下の時のように、内需を拡大して、令和時代は、平成時代とは一線を画して、経済的にも黄金時代を迎え、国際的にも、米国と並んでリーダー的な地位を勝ち得るように努力すべきです。
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2020年6月7日日曜日

“中国の貧困”をまさかの暴露、李首相の真意とは?— 【私の論評】売り家と唐様で書く三代目と言う格言を地でいく習近平は、四面楚歌の状態にある(゚д゚)!


全人代で飛び出した「月収1000元が6億人」発言

(澁谷 司:JFSS政策提言委員・アジア太平洋交流学会会長)

李克強首相

 今年(2020年)528日、中国の李克強首相は、全国人民代表大会の記者会見で「昨2019年、中国人の平均年収は3万元(約45万円)だった」と公表した。だが、一方で、「中国には月収1000元(約15000円)の人が6億人もいる」と明かしたのである。

 月収1000元ということは、年収12000元(約18万円)にしかならない。この月収では、1キロ30元(約450円)以上もする肉は食べられない。また、中小都市の1カ月分の家賃にもならないだろう。

 一般に、貧困は「絶対的貧困」と「相対的貧困」とに分けられる。世界的には、「絶対的貧困」は1日当たり1.90米ドル(約205円)以下の収入とされる。月収にすると57米ドル(約6150円)、年収は684米ドル(約73800円)である。

 世界的基準から見ると、月収1000元しかない中国の6億人は「絶対的貧困」層には当たらない。

 では、この月収1000元の6億の人々をどのように位置付けたら良いのだろうか。確かに、「絶対的貧困」とは言えないが、中国国内でも平均年収額の40%しかない。したがって、「相対的貧困」層と言えよう(ちなみに、我が国では、1人世帯の場合、年収約122万円以下が「相対的貧困」に当たる)。

 問題は、月収1000元の人々が6億人も存在する中国が、(今年中に)「小康(ややゆとりのある)社会」を実現したと言えるだろうか。もちろん“ノー”である。

 実は、20163月、王岐山 中央紀律委員会書記(当時)が、第135カ年計画(2016年~2020年)で「小康社会」を実現するという目標を掲げた。けれども、昨2019年から今年にかけ「新型コロナ」の世界的蔓延で、習近平政権は、今年のGDP目標数値さえ打ち出すことができなかった。

 そのため、王が掲げた今年末までに「小康社会」実現という目標は、“絵に描いた餅”に終わる公算が大きい。

「習近平派」に対する反撃か

 さて、この度、李克強首相は、なぜ中国共産党に“不都合な数字”を暴露したのだろうか。

 元来、経済に関しては、首相の“専権事項”だったはずである。ところが、前述の通り、首相でもない王岐山が、第135カ年計画で「小康社会」を実現するとぶち上げた。李首相からすれば、王による“越権行為”である。無論、それを許したのは、習近平主席だろう。

 同時に、習主席は、かねてより劉鶴副首相を重用してきた。だから、これまで李首相には、ほとんど出番がなかったのである。

 もしかすると、今回、全人代での記者会見で、李首相は「習近平派」に対する反撃を試みたのかもしれない。習主席の「中国の夢」を打ち砕くためである。

 当然、李首相には党内で確固たる「反習近平派」の支持があると見るべきだろう。そうでなければ、たとえ首相といえども、やすやすと中国の実態を暴露することはできなかったはずである。

習近平の暴走に眉をひそめる元老たち

「反習派」の代表格は江沢民系「上海閥」に間違いない。習主席と王岐山の「反腐敗運動」で同派は徹底的に叩きのめされた。習主席らに対する同派の深い怨みは、想像に難くない。

 他方、胡錦濤系「共青団」(李首相の出身母体)は、以前、微妙な立ち位置だった。だが、現時点では「反習派」の一翼を担っているのではないだろうか。

 201211月、胡錦濤主席は辞任する際、(これ以上)「腐敗がはびこれば党が不安定となるリスクが増し、党の統治が崩壊する可能性がある」と党内で訴えた(したがって、最初「共青団」は習主席と王岐山の「反腐敗運動」を支援していたふしがある)。その時、胡主席は江沢民前主席ら古参幹部に対し、習近平新指導部へ干渉しないよう、涙ながらに訴えたと伝えられる。胡主席は、任期時、散々、江沢民元主席らから干渉を受けたため、新指導部には自らが経験した苦労をさせたくなかったのだろう。ところが、皮肉にも、それが習主席の“暴走”を招いたとも言えよう。

 実際、「反習派」は「紅2代」「紅3代」(元党幹部の2世・3世)の中にも存在する。また、一部の元老たちは、習主席の政治手法―終身制導入や「第2文革」発動等に対し、眉をひそめているだろう。


家族も離反し、四面楚歌?

 近頃、習近平夫人の彭麗媛と娘の習明沢が、習主席と別居したと報じられている。その理由だが、彭夫人と明沢が、中国共産党による香港への武力弾圧に反発しているからだという。2人は、香港版「国家安全法」制定にも反対だと噂されている。明沢はハーバード大学で心理学を専攻したが、香港出身の友人もいる。そのため、香港市民に深く同情しているかもしれない。

 このように、目下「習近平派」は“四面楚歌”の状態にあると言っても過言ではない。だからこそ、習政権は、香港版「国家安全法」の制定や尖閣諸島や南シナ海等で強硬路線(「戦狼外交」?)に転じているのではないだろうか。

[筆者プロフィール] 澁谷 司(しぶや・つかさ)
 1953年、東京生れ。東京外国語大学中国語学科卒。同大学院「地域研究」研究科修了。関東学院大学、亜細亜大学、青山学院大学、東京外国語大学等で非常勤講師を歴任。200405年、台湾の明道管理学院(現、明道大学)で教鞭をとる。20112014年、拓殖大学海外事情研究所附属華僑研究センター長。20203月まで同大学海外事情研究所教授。現在、JFSS政策提言委員、アジア太平洋交流学会会長。
 専門は、現代中国政治、中台関係論、東アジア国際関係論。主な著書に『戦略を持たない日本』『中国高官が祖国を捨てる日』『人が死滅する中国汚染大陸 超複合汚染の恐怖』(経済界)、『2017年から始まる!「砂上の中華帝国」大崩壊』(電波社)等多数。

【私の論評】売り家と唐様で書く三代目と言う格言を地でいく習近平は、四面楚歌の状態にある(゚д゚)!

習近平を一言で言えば、他の中共幹部と同じく、自らも不正行為をしているにもかかわらず、多くの幹部の腐敗を追及し失脚させ、カメラを大量配置して反対派人民を監視し、スマホアプリで「習近平思想」を押しつけただけの男です。

中国の建国の父は、毛沢東であり、中国の経済発展は、鄧小平の成果であり、習近平はそれを食い潰しているに過ぎません。売り家と唐様で書く三代目と言う格言を地でいくような男です。


そのことが、どうやら中国共産党内部でも「共通の見解」になりはじめたようです。
武漢肺炎の処理の方法が不評だったのでしょう。さらに、これによって、全世界から不興を買うような行動ばかりする習近平には、愛想が尽きたのでしょう。

現状の中国で何が起きているかは不明です。しかし、習近平にリーダーシップがあるようには見えません。

習近平政権のリーダーシップが期待されるのは、胡錦濤政権が解決できなかった課題への取り組みです。その課題は、解決方法によって、大きく 2 つに分類できます。 1 つは、一党支配の「枠」に付け足す、修正にとどまる課題です。

例えば、格差縮小のための社会保障や所得引き上げなど民生分野の改善や都市化などが該当します。

もう 1 つは、一党支配の「枠」を壊す必要のある課題です。例えば、共産党の権力を監督するための政治改革です。 前者の課題には、胡錦濤政権のやり残した余地が大きいです。

その原因の 1 つは、胡錦濤のリーダーシップの欠如にあると思われます。政策の策定過程、実施過程で胡錦濤が 軍や国有企業、主力産業などの既得権益層の抵抗を排除することができなかったのです。

習近平政権になったからといって、既得権益層が消滅するわけではありません。 しかし、主席になったばかりの、習近平は、胡錦濤に 比べると抵抗を排除することが可能と思われ成果が期待できたのです。



他方、後者の課題に取り組むことは、習近平でも難しいでしょう。なぜならば、習近 平も江沢民や胡錦濤と同様に、一党支配の「枠」の中から誕生した総書記だからです。そのため、習近平が一党支配の「枠」を壊すような政治改革、例えば選挙制度の 導入や司法制度改革、メディア改革を行うことは考えられないです。

例えば、「協商民主」は、そもそも西側の選挙による政策選択である「選挙 民主」のアンチテーゼとして提起されたものであり 、しかも「国の政権機関や政治協商組織、党派、団体などのチャネル」といった既存のチャネルに限定されています。

また党内選挙での差額選挙方式も、政策を選ぶのではなく、人を選ぶ選挙にすぎません。 報告で言及された「党の指導を堅持し」、「西側の政治制度のモデルをそのまま引き 写しにしない」ということは、党中央が政治改革において越えてはならないラインと しての認識を示しています。

それは、「政治協商」にせよ、「差額選挙」方式にせよ、党 中央が認識する一党支配の「枠」内での政治的寛容性の範囲内にあるということです。中国が一党支配体制という世界でも特異な政治体制であることから、政治改革には常に注目が集まります。しかし実際に中国国内で一党支配の「枠」を壊すような政治改革 を求める声はまだ大きくないです。

一党支配の「枠」を修正するだけの余地はまだ大きいです。胡錦濤がやり残した課題に、 習近平がリーダーシップを発揮し取り組むだけで、多くの民衆は習近平政権を評価し、 党と社会の亀裂を修復することは可能と見られていました。そのため、短期的、総書記長になってから5年ぐらいは、 習近平政権は安定を勝ち取ることが可能であるとも見られてきました。

習近平は、胡錦濤政 権 10 年の失政のおかげで、「猶予」期間を手にしたといえるかもしれれませんでした。しかし、習近平が総書記長になった2013年からすでに、今年は7年目です。修復を進めつつ、支持を得て、政権基盤を再編し強化しながら、他方で「枠」を 壊す必要のある課題について,どう対応するかも問われつつあります。


「枠」を壊すという意味では、先ほども述べたように、習近平は建国の父である毛沢東や、中興の祖ともいえる、鄧小平による経済発展に及ぶような成果は何も挙げていないし、その見込みも全くありません。

本年2020年は、中国の二つの100年計画の一つ「小康社会の全面的実現」目標の期限である建党100周年の2021年より一年前であり、もしこの時点で習近平が、毛沢東や鄧小平に匹敵するする成果をあげることができれば、習近平政権にとっては長期独裁を全党および人民に納得させるだけの効果を持つ歴史的偉業になります。

そのためでしょうか、習近平焦っているようではありますが、米国などとの対立はますます激化し、コロナ対応などでは、多くの国々との対立を深め、一向に大きな成果は挙げられそうにありません。

だからこそ、売り家と唐様で書く三代目と言う格言を地でいくような習近平は、四面楚歌の状態にあるのでしょう。

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2020年6月6日土曜日

香港デモ同様の手口か。全米に広がる暴動の裏に中国「関与」の噂―【私の論評】米国人の中共に対する憤りは、コロナ禍も相まってますます激烈になる(゚д゚)!

香港デモ同様の手口か。全米に広がる暴動の裏に中国「関与」の噂

米国の暴動

燎原の火のごとく全米中に広がり、収集がつかない状況となっている大規模な暴動。各地で放火や略奪が多発していますが、その裏に「あの国」の関与が囁かれ始めているようです。今回のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では台湾出身の評論家・黄文雄さんが、「デモ隊のなかに中国からの指示を受けた工作員が紛れ込んでいてもなんら不思議ではない」としてそう判断する理由を記すとともに、日本に対しても尖閣海域でも不穏な動きを見せる中国への警戒を呼びかけています。

※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2020年6月3日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

【中国】中国のアメリカ暴動への関与疑惑が出はじめた

トランプ大統領SNS投稿 暴動起こしている人たち「急進左派」

ミネソタ州ミネアポリスで白人警官が偽札使用の容疑で拘束した男性の首を圧迫し死亡させた事件をきっかけに、全米で大きな暴動が発生しています。抗議デモに便乗して店を襲撃、略奪を行う輩や破壊活動を行うアナーキストなども入り混じって、アメリカは大変な混乱状態にあります。

これほどまでに騒動が大きくなった一因には、新型コロナウイルスによる失業拡大で、貧困層のフラストレーションがたまり、人種差別による事件をきっかけにそれが一気に爆発したと言われています。

発展途上国など、コロナ災禍により多くの被害が生じた地域や国では、これから経済的なダメージが本格化すると見られており、このアメリカの混乱が他国へと広がれば、感染と同じくらい、あるいはそれ以上に世界情勢は大きなショック状態に陥ることが懸念されます。中国発の新型コロナの怖さは、負の連鎖がどこまでも続くことです。

この状況に、トランプ大統領はツイッターで、暴動を起こしている者を「アナーキスト」として、「野党・民主党が主導する都市や州は、ミネアポリスの州兵の鎮圧を参考にすべきだ」と述べました。

このようなアメリカの状況について、中国は積極的に国内で報道しています。香港での人権弾圧をアメリカから批判されているだけに、「アメリカも人のことをいえるのか」ということを、国内にアピールする狙いがあるのでしょう。

以前、アメリカがウイグルでの人権弾圧を批判し、人権侵害に関わった当局者に制裁発動をするための「ウイグル人権法案」を可決した際には、中国政府は「アメリカは先住民を虐殺したではないか、こんな法案をつくる資格があるのか」と反発しました。

ウイグル人権法案可決に激怒、「アメリカも先住民を虐殺した」と言い始めた中国

とはいえ、150~400年前の先住民弾圧と、現在の少数民族弾圧を同一に語るのは、明らかに欺瞞です。それならば清末のイスラム教大虐殺の洗回を中国はどのように考えているのか。そもそも中華歴代王朝は周辺民族をすべて野蛮な夷狄として扱ってきました。夷狄とは、その文字を見てもわかるように、禽獣のことです。

米中の民族問題は、それぞれまったく異なるものです。中国のほうは非漢族の言語を潰して漢化させる同化主義であり、民族浄化でもあります。

それはともかく、中国は自らの正当性を主張するために、とにかく屁理屈をこねて、相手の不当性を訴えます。

中国南部広東省の省都広州にある「リトルアフリカ」の路上に集まる人々(2018年3月2日)

以前のメルマガで、中国ではアフリカ系の黒人が新型コロナ感染の第2波の元凶であるかのように目され、入店拒否や住居からの退避、さらには集団隔離が行われているということをお伝えしました。こうした黒人差別によって、中国はアフリカ諸国から抗議を受けています。

「銃殺してしまえ」…コロナ禍の中国で深刻な黒人差別が始まった

そうした批判を交わすため、さかんにアメリカでの黒人差別の様子や、それによって大きな暴動が起こっていることを報じているわけです。

こうしたやり方は、中国の「三戦」という戦術に基づいたものです。これは、2003年に修正された「中国人民解放軍政治工作条例」のなかに盛り込まれた、人民解放軍の戦術です。

この三戦とは、世論戦、心理戦、法律戦の3つのことです。世論線とは国内および国際世論に影響を及ぼし、自分たちへの支持を築くこと、心理戦は威嚇や脅迫、恫喝などによって相手の士気を低下させること、そして法律戦は国際法や国内法を利用して、相手の不当性に非を鳴らすとともに、自らの絶対的な正当性を主張することです。そのためにはどんな屁理屈も厭わない。

たとえば、南シナ海の領有権については、「古文書に書いてある」などという不確かな情報を根拠に、とにかく「漢の時代から管理していた」などと主張し、オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所から「中国の主張に根拠なし」という判決が下されれば、西側諸国が勝手に決めた国際法に従う必要はないとし、「そんな判決は紙くずだ」と吐き捨て、まったく判決を守ろうとしません。

言い換えれば、あくまで自己中心的で、自分の都合いいように何でも解釈するということです。

今回のアメリカでの暴動についても、中国はアメリカの黒人差別を人権問題だとして、ウイグルや香港問題に口を挟むなと牽制するつもりなのでしょう。

ところで、この全米での暴動について、中国が裏で関与しているのではないか、という噂があちらこちらから出てきています。

私もよく知る元中国人の石平氏は自身のツイートで「アメリカの『抗議者』、どういうわけか中国共産党党旗、中国の国旗を掲げている。暴動の背後に中共の暗影があるのではないかとの疑惑が深まっている」と述べ、ジャーナリストの門田隆将氏もこの投稿をリツイートしながら、「やはりというべきか“中国の関与”が取沙汰されてきた。SNS上の映像では中国語が飛び交い、抗議者の掲げる旗に中国国旗も」と指摘しています。

ジャーナリスト・門田隆将氏 米国全土の暴動で「“中国の関与”が取沙汰されてきた」

以前、香港デモでは変装した香港警察や中国軍がデモ隊に潜り込ませ、過激な暴動を演出したことがありました。香港人は英語が話せるのに、彼らはまったく英語を話せなかったことから、大陸の中国人だということがバレたことがありました。

こうしたことも、世論戦の一環なのです。そのため、アメリカでのデモ隊のなかに中国からの指示を受けた工作員が紛れ込んでいても、なんら不思議ではありません。

台湾も、中国から多くのフェイクニュースを流されており、蔡英文政権も中国発のフェイクニュースによって扇動されないよう注意を呼びかけています。

武漢発のパンデミックを利用して、中国は南シナ海だけでなく、尖閣海域にも手を伸ばしているという、不穏な動きがあります。日本は中国の火事場泥棒への警戒を緩めてはいけません。

【私の論評】米国人の中共に対する憤りは、コロナ禍も相まってますます激烈になる(゚д゚)!

上の黄文雄氏の記事では、香港デモでは変装した香港警察や中国軍がデモ隊に潜り込ませ、過激な暴動を演出したことがあったとしています。これは、いかにもありそうな話で、中国が、そのようなことをしていたとしても驚くには、値しません。

しかし、現実の中国はそれ以上のことをしていました。デモが10週目に入ろうとしていた、昨年の8月10日に、中国政府は米国が香港の抗議デモを扇動しているとして非難を強めました。

同9日には全身黒ずくめの数百人の参加者が市内の国際空港に集まり、3日間の座り込みを始めました。週末に予定されていたいくつかのデモが地元警察によって禁止されたことで、さらなる衝突につながる可能性がありました。中国政府は数日前、香港警察が騒動を沈静化できなければ直接介入に踏み切る用意があると警告しました。

中国本土と香港の中国政府系メディアは同8日と9日、香港の米総領事館員ジュリー・イーデー氏がホテルのロビーで反対派の主要人物らと面会した写真を公開しました。5年前に香港を揺るがした抗議デモの主導者、黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏(22)の姿もありました。

中国の国営英字紙チャイナデイリーなど本土のメディアはこの面会を、米国の「黒い手」が抗議活動の背後にある証拠だと論じました。一部のメディアはイーデー氏の経歴や子供の名前も公表しました。

国営の中国中央テレビ(CCTV)は同9日、米中央情報局(CIA)は2000年代に旧ソ連諸国で起きた抗議活動「カラー革命」を扇動したことで知られると伝えました。中国政府は今週、香港の騒乱はカラー革命の様相を呈しているとの見方を示しました。

香港の米総領事館員の報道官は、イーデー氏はコメント要請に応じられないと述べました。

黄氏は9日、自身も自身の団体も全米民主主義基金や米政府から資金を受け取っておらず、また米総領事館からも物資や助言を受けていないと述べました。

昨年の香港デモで星条旗を掲げる参加者達

確に香港のデモでは、デモ隊の中には米国の星条旗を掲げる人たちもいましたが、それは米国に煽られたということではなく、米国の支援も期待していることを表明したものであると思われます。実際その後米国では11月に香港人権・民主主義法が成立しました。

この法律に対しても、中国は「内政干渉」だと強く抗議をしました。しかし、国際法においては、人権に関わるものに関して、内政干渉には当たらないとされています。

ここで、国際法の適用などの可否などの判断はしませんが、それにしても確かなことがあります。中国が米国が香港のデモを煽ったとか、内政干渉であると主張するなら、国際司法裁判所などに提訴すれば良いと思うのですが、なぜかそのようなことはしないですし、国際法という言葉も用いることはありません。

そもそも、中国は南シナ海の領有に関して、上の記事にもあるように国際司法裁判所に提訴され、「中国の南シナ海領有に関しては、全く根拠がない」との裁定を下されています。にも関わらず、中国はその裁定を守るどころか、最近でも南シナ海の実効支配地域の軍事化を強化している有様です。

それに、中国は未だに、米国が香港デモを煽ったと言う証拠をあげていません。もしあげていたとすれば、これをもとに、米国を徹底的に叩いていたでしょう。


中国が米国の暴動を裏で煽っているとすれば、その理由は明らかです。上で、黄文雄氏が述べている理由もありますが、そのほかにもトランプ大統領の再選阻止という目的もあるでしょう。

ただし、次の大統領が仮にトランプ氏以外の、バイデン氏やその他の人になったとしても、今後の米国の対中国政策はあまり変わらず、中国に対して厳しいものになるでしょう。なぜなら、米国では既に議会が上下院ともに、中国に対して厳しい見方をしているからです。

それよりも何よりも、米国人の多くが、今や中国に対して、厳しい見方をしているからです。今回の米国内の暴動が、中共によって煽られたことが、今後の調査などで明らかになれば、米国人の中国に対する憤りは、中共がもたらしたコロナ禍も相まってますます激烈になるでしょう。

さて、最後に新唐人テレビの動画を掲載します。


この動画では、ホワイトハウス付近の放火現場で飛び交う中国語をはじめ、 暴動の背後に中共の鬼影があることが示されています。

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