2020年11月9日月曜日

中国は米大統領選の混乱をついて台湾に侵攻するのか―【私の論評】中国は台湾に侵攻できない(゚д゚)!

 中国は米大統領選の混乱をついて台湾に侵攻するのか

岡崎研究所

 英フィナンシャル・タイムズ紙のコメンテーター、ギデオン・ラックマンが、10月19日付の同紙に「気が散った米国は台湾にとり危険である。ワシントンでの政治的混乱は北京に機会の窓を開くかもしれない」と題する論説を寄せ、米中衝突の危険性を指摘している。


 最近、中国の軍用機は、より頻繁に台湾と中国との中間線を越え、台湾の領空を侵犯し、台湾側はスクランブル発進をかけている。11月3日の米国大統領選挙後の混乱の時期を狙って、北京が台湾に何かしかけてこないとも限らない。

 台湾への中国の侵攻は、長年、米国により抑えられてきた。米国は、台湾関係法により、台湾に武器を売り、米国が台湾防衛のために戦う可能性をオープンにしてきた。1996年、中国が台湾周辺海域にミサイルを発射した時には、米国は地域に空母を送り、警告した。その時以来、中国は大規模軍拡を行ってきた。

 現在の危機の背景には、習近平が2012年に指導者になった後の北京の台湾政策の急進化がある。習近平は、台湾に対する言辞を強めるとともに、中国は百万以上のウイグル人を収容所に入れ、香港の民主化運動を粉砕し、南シナ海で軍事基地を作り、ヒマラヤでインド兵を殺した。

 台湾への中国の全面攻撃は巨大なリスクである。台湾海峡を越え、兵力を台湾に上陸させる試みは多くの死傷者を出す。よって、北京は、より小規模な軍事、経済、心理的介入で、台湾人の士気と自治を侵食することを狙うことがもっとありうる。

 このラックマンの論説は頭の体操としてはよく書けているものである。台湾問題は、日本の安全保障に極めて重要なので、紹介すべきであると思い、取り上げた。

 台湾が米中覇権競争の中で一番発火しやすい問題であり、日本の安全の脅威になる可能性が一番高い問題であると考えている。北朝鮮の核の脅威などより、もっと心配すべき問題であり、我々は台湾問題に大きな注意を払っていくべきであると考えている。

 ラックマンの言う米中衝突の危険はもちろんゼロではないだろうが、その可能性はそれほど大きくないとも考えられる。それは、台湾に中国が武力侵攻しても、米国が介入に躊躇する事態は想像しがたく、米国の出方を中国が読み間違う怖れは小さいと考えられるからである。

 現在の中国の国家主席である習近平は、鄧小平とは考え方が外交姿勢に関して違うように思えるが、孫子の兵法、すなわち戦わずして勝つことを最善の策とみなしており、台湾人の士気を崩すなど、サラミ戦術をとってくる可能性が高い。ラックマンも同じ考えであるように思える。

 日本としては、台湾の民主主義を助け、台湾ナショナリズムがしっかりと台湾に根を下ろすことを、これまで同様に支援していくということだろう。中国が両岸関係の平和的解決という日米の要請を無視した場合には、日本もそれなりの覚悟をして対応するということだろう。

【私の論評】中国は台湾に侵攻できない(゚д゚)!

台湾に中国が武力侵攻した場合、米国が何の躊躇もなくすぐにこれに介入することになるでしょう。

そうして、米軍としてはすでに台湾、尖閣諸島では中国軍を迎え撃つ準備を、南シナ海では中国の軍事基地を攻撃する準備を整えているでしょう。

そうして、その準備とは、これらの海域に多数の米軍の原潜艦隊を配置し終わっているということです。

東シナ海や、南シナ海、台湾海峡などに、米軍が原潜を定期的に派遣しているのは、間違いないでしょう。水中の「航行の自由作戦」は、ずっと前から定期的に行われ、中国海軍の動向は、すでに米軍によってしっかりと把握されていることでしょう。通常潜水艦の行動は、いずれの国も表には出さないのですが、米軍はすでに5月下旬に潜水艦の行動に関して公表しています。

この潜水艦群の動きは太平洋艦隊司令部のあるハワイ州ホノルルの新聞が同司令部からの非公式な通告を受けて今年5月下旬に報道されました。米海軍は通常は潜水艦の動向を具体的には明らかにしていません。とこが、この時は太平洋艦隊所属の潜水艦の少なくとも7隻が西太平洋に出動中であることが同司令部から明らかにされました。

その任務は「自由で開かれたインド太平洋」構想に沿っての「有事対応作戦」とされています。この構想の主眼は中国のインド太平洋での軍事膨張を抑えることだとされるため、今回の潜水艦出動も中国が覇権を目指す南シナ海や東シナ海での展開が主目的とみられます。

私自身は、米国はコロナに関係なく、原潜を南シナ海や東シナ海に常時派遣しているのでしょうが、今回はコロナ感染により、米軍の力が弱っていると中国にみられ、この地域で中国の行動を活発化することが予想され、それを抑止すためあえて公表したものとみています。米軍は潜水艦のみでも、中国軍を抑止ができるとみているということです。

そうして、この公表は米軍としては、普段から定期的に西太平洋に派遣している潜水艦隊に加えて、さらに7隻程度派遣しているということを示唆しているのだと思います。

そうすると、この地域におそらく少なくとも14隻、あるいはもっと多く20隻あまりもの米軍原潜艦隊が潜んでいるとみて間違いないと思います。

米国ではコロナ禍は今でも続いていますから、この体制は今も崩していないでしょう。潜水艦というと、その破壊力はあまり知られていませんが、現代の米軍の原潜の破壊力は相当なものです。

かつてトランプ大統領が、朝鮮有事を懸念して空母とともに、原潜を派遣したときに、自慢げに「米軍の原潜は空母に匹敵する破壊力を持つ、水中の空母のようなものだ」と語っていたことがあります。

米空母ロナルド・レーガン(CVN-76)

空母と原潜の破壊力を単純に比較することはできないですが、現在の米軍の原潜の破壊力はたしかに空母に匹敵します。原潜のなかには、魚雷はもちろん、各種のミサイル、戦術核や戦略核を搭載するものもあります。しかも、それが海中深くに潜んでいて、なかなか発見しにくいのです。

ただし、原潜は構造上どうしてもある程度騒音がでるので、発見しやすいです。ただし、中国の対潜哨戒能力はかなり低いですが、米軍は世界一ですので、潜水艦隊の運用では米軍のほうが、中国軍より圧倒的に優れています。

深海に潜んで動かなければ、中国が発見するのはかなり困難です。米軍要所要所に原潜を配置しておき、中国軍が不穏な動きを見せれば、水中からミサイルを発射して、攻撃するという戦法をとれば、米軍は圧倒的に有利です。

この原潜が潜むだけではなく動き回れば、中国軍もこれを発見できるチャンスもありますが、米軍のほうが哨戒能力に優れていますから、動き回る前に中国の対潜哨戒機、哨戒艦艇、潜水艦等を破壊してしまえば、中国側が米潜水艦を発見できなくなります。

これに対して、中国の原潜はかなりの騒音を出すので、米軍はこれをすぐに発見できます。そうなると、中国が台湾を奪取しようとして、航空機や艦艇を派遣すれば、これらはことごとく撃墜、撃沈されてしまうことになります。

仮に、中国軍が台湾に上陸して、橋頭堡を築いたにしても、それを維持することはできません。米潜水艦隊が台湾を包囲すれば、中国軍は補給ができずお手上げになるからです。

さらに、西太平洋には中国にとって別の手強い伏兵がいます。それは、日本の潜水艦隊です。日本も今年の3月に最新鋭艦「たいげい」が進水しましたが、これを加えると日本が保有する潜水艦は22隻となりました。

今年進水した「たいげい」

日本の潜水艦は、このブログにも掲載したように、原潜ではない通常型のものですが静寂性は世界一です。その静寂性を利用すれば、あらゆる海域で中国に発見されず哨戒活動等にあたることができます。無論、これによって得られた情報は米軍と共有することができます。

これでは、中国に勝ち目は全くありません。そのため、中国は台湾に侵攻しても、意味がありません。中国ができるのは、せいぜい台湾海峡等で大規模な軍事演習をして台湾を脅すことくらいでしょう。そのことを理解しているからこそ、中国は三戦に力をいれているのでしょう。

それでも敢えて中国が台湾に侵攻した場合、ますば米国潜水艦隊によりほとんどの中国の艦艇、航空機が破壊されることになります。無論上陸用舟艇なども破壊され、上陸部隊は殲滅されるかもしれません。

それでも、中国軍が無理やり上陸した場合は、米軍は場合によっては、中国本土のミサイル基地等も潜水艦によって破壊するでしょう。そうして、中国の脅威を取り除いた後に、さらに台湾を包囲して、補給を断ち弱らせた後に空母打撃群を派遣して中国陸上部隊を攻撃してさらに弱らせ、最終的に強襲揚陸艦等で米軍を台湾に上陸させ、上陸した中国軍部隊を武装解除して無力化することになるでしょう。

今年4月11日、上海にある造船所の桟橋に係留艤装中だった中国海軍初の
大型強襲揚陸艦「075型」1番艦から出火、未だに中国は公表していない

よく軍事評論家の中にも、空母を派遣しても中国の超音速ミサイルに攻撃されて、米国は負けるなどとする人もいますが、こういう人たちに限って、なぜか潜水艦隊のことをいいません。

今年の5月に、太平洋艦隊所属の潜水艦の少なくとも7隻が西太平洋派遣されたことをもって、米軍は有事の時には、特に海洋での有事の時には最初に潜水艦隊を用いる戦術に変えたと認識すべきです。私自身は、ずっと前から変えていると思います。海洋で、わざわざ初戦で空母打撃群を派遣して、敵に格好の的を提供する必要性などありません。

ただ、手の内をわざわざバラす必要もないので、黙っていただけだと思います。ただ、コロナ禍に中国につけこまれることを防ぐため、わざわさ公表したということです。この公表の裏には、以上で述べたことを、それとなく中国に伝える目的もあったと思います。

そうして、それは日本も同じことでしょう。だからこそ、潜水艦22隻体制をはやばやと築いたのでしょう。

中国は台湾に侵攻しません。いや、できません。尖閣にも侵攻できません。南シナ海は何十年にもわたって、サラミ戦術で確保できたのですが、もはやその戦術も通用しません。

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2020年11月8日日曜日

中国の国連ハイジャック作戦―【私の論評】国連に変わる新たな複数の国際組織をつくれ(゚д゚)!

 中国の国連ハイジャック作戦


【まとめ】

・中国が多数の国連機関トップ占め、中国有利に影響力を強めている。

・米「独裁を守る多国間主義」と非難。中国影響力抑止する措置展開。

・国連が中国にハイジャックされるなら、日本も認識の転換迫られる。


中国が国際連合の多様な機関の主導権を握り、国連全体を自国に有利な方向へ動かそうとする活動がますます顕著となってきた。アメリカ政府は中国の苛酷な人権弾圧までが国連で許容されることにもなりかねないこの国連ハイジャック作戦の阻止に力を注いでいる。 

だが果たして中国のこの影響力拡大をどこまで防げるのか。そのせめぎあいは国連重視を過度なまでにうたってきた日本政府にとっても注意せざるをえない展開である。

中国は現在、国連専門機関合計15のうち国連食糧農業機関(FAO)国連工業開発機関(UNIDO)国際電気通信連合(ITU)国際民間航空機関(ICAO)の4つに中国人の最高責任者を送り込んでいる。

なぜ国連で影響力を強くすることが中国にとって重要なのか。

2020年夏、香港での中国の弾圧を非難する決議案が国連人権理事会に提出された。イギリス、その他の民主主義諸国が主体の決議案だった。だがほぼ同時にキューバなど非民主主義の傾向の強い諸国による香港についての別の決議案が出された。その内容は香港に関して結局、中国政府を弁護する趣旨だった。

二つの決議案が同時期に個別に採決された。イギリス主導の中国非難の決議案は人権理事会で27ヵ国の賛成票を得た。キューバ主導の中国弁護の決議案は53ヵ国の賛成票を得た。中国政府による人権弾圧や国際公約違反が明白であっても、その中国の動きを非難するよりも弁護する国が二倍ほども存在するのである。この事実は中国の人権弾圧への国連全体による非難を消してしまうことになる。

中国は新型コロナウイルス大感染でも国連機関である世界保健機関(WHO)の支持を得て、国際的な糾弾を薄めることができた。中国から経済援助をふんだんに得たエチオピアのテドロス・アドノム元外相が事務局長だったWHOはコロナ発生に際しては中国政府の意向を忠実に受けて、発生自体を秘密にする隠蔽工作に完全に加わったのだ。

中国は国連やその関連機関の効用を十分に認識して、ここ数年、各種国連機関のトップの座を自国の代表が得るよう工作を重ねてきた。その結果がいまの4機関の実績なのだ。その工作は露骨である。

2019年6月のFAOの事務局長選では中国の屈冬玉候補が圧勝したが、その背後では中国代表たちが票を投じる多くの国の政府に対して債務の取り消しや輸出の停止などアメとムチとの激しい勧誘や威迫をかけたことが伝えられている。

2020年3月には国連専門機関の世界知的所有権機関(WIPO)の事務局長選挙が実施された。中国はこの選挙でも自国民の王彬穎氏を強く推し、中国にとって5番目の国連機関のトップポストを獲得しそうな気配だった。

だが実際の選挙では対抗馬のシンガポール知的財産権庁長官のダレン・タン氏が選出された。アメリカ政府が介入し、強力な反中国のロビー工作を進めた結果だった。シンガポール代表に反中国票のすべてを集めるために他の諸国の候補を辞退させての勝利だった。

このように国連でのアメリカの動きは重要である。トランプ政権はすでにWHOなどから脱退しているが、なお逆に介入しての中国阻止の活動も進めてきた。こうしたアメリカ政府の国連での中国抑止の政策と活動についてトランプ政権の国連大使ケリー・クラフト氏が10月21日、報告を発表した。アメリカの新聞ニューヨーク・ポストへの寄稿論文という形だった。

トランプ政権の国連大使ケリー・クラフト氏

そのクラフト大使の報告の骨子を紹介して、アメリカの国連での中国への対抗策に光をあてよう。クラフト大使はまず国連での中国の活動について以下の諸点を述べた。

・中国は国連安全保障理事会の常任メンバーの地位を利用してシリアベネズエライランなどの圧政政権を守ってきた。

・中国は国連で中国への債務を抱えた諸国に圧力をかけて、国連の人権理事会や総会で中国政府の弾圧行動を賞賛する声明に署名をさせてきた。

・国連に勤務する中国人は国際公務員として中立を保つはずなのに、国際民間航空機関(ICAO)の 柳芳事務局長はその地位を利用して台湾を国際民間航空から排除するためのサイバー攻撃などに参加した。

・国際電気通信連合(ITU)の趙厚麟事務局長はアメリカの反対する中国政府の「一帯一路」構想を推進し、中国軍部と密着するファーウェイ社の事業拡大を支援する言動をとった。

クラフト大使はこうした中国の動きへのアメリカ政府としての反対を明確にしたうえで、アメリカ側が実際にとってきた措置について次のように述べた。

アメリカ政府は2020年6月、国連の新たな政治宣言の草案に中国の提案による「習近平思想」という表現があることに反対し、最小限30ヵ国の賛同を得て、その削除に成功
した。

・今年9月、クラフト大使はニューヨークの台湾政府事務所の代表と1対1の会談をして、台湾の国連機関へのかかわりを強めることを協議した。国連を舞台とするアメリカと台湾の政府代表のこの種の会談は初めてだった。

・アメリカ政府は国連の各種の場で中国政府によるウイグル人などの民族弾圧に抗議を続ける一方、今年10月にはウイグル香港、チベットでの中国の弾圧を非難するドイツとイギリスの共同声明を支援して、共同署名国を39ヵ国に拡大することに成功した。

・アメリカ政府は多国間主義から離脱するのではなく、人権、民主主義、法の支配に依拠する多国間主義が破壊されることを防止し、破壊された部分を修復することに全力をあげているのだ。

・アメリカは一部の国連機関から離脱したが、当面、修復が困難とみなした機関からの脱退であり、修復が可能な機関に対しては関与を続けて、その改善に努める。多国間主義も独裁的な覇権を促進するようになれば、意味がない。

・この戦いは決してアメリカと中国との闘争ではない。世界の市民に寄与する民主的な多国間主義システムと独裁を守る多国間主義システムとの闘いなのだ。アメリカにとっては独裁的な政権の下で苦しむ人々のための闘いである。

以上のようなクラフト大使の言明はトランプ政権の対外姿勢を一国主義と断じ、国際問題への関与を拒むという非難への反論だともいえよう。

しかしトランプ政権の国連大使のこうした言明は中国が国連機関への影響力行使を強めている実態をまず指摘しているという点で日本にとっても重要な警告だともいえる。人権や民主主義を基調とする国連の機能が共産党独裁支配の中国にハイジャックされるような事態となれば、戦後の日本の国連への認識も根本からの変革を迫られるだろう。

***この記事は日本戦略研究フォーラムの古森義久氏の連載コラム「内外抗論」からの転載です。

【私の論評】国連に変わる新たな複数の国際組織をつくれ(゚д゚)!

上の記事にもある通り戦後の日本の国連への認識も根本からの変革を迫られる可能性が大きくなってきました。そもそも、国際連合とは「United Nations」であり、これは直訳する「連合国」であり、元々は第二次世界大戦の「連合国」を意味しており、国連憲章には、未だに敵国条項が存在しています。

敵国条項とは、国連憲章第53条、第77条1項b、第107条に規定されています。その内容を端的に言えば、第二次大戦中に連合国の敵国であった国が、戦争の結果確定した事項に反したり、侵略政策を再現する行動等を起こした場合、国際連合加盟国や地域安全保障機構は、安保理の許可がなくとも当該国に対して軍事制裁を科すことができる、としています。

つまり、あらゆる紛争を国連に預けることを規定した、国連憲章51条の規定には縛られず、敵国条項に該当する国が起こした紛争に対して、自由に軍事制裁を課する事が容認されるのです。さらに言えば、これらの条文は敵国が敵国でなくなる状態について言及していません。

そのため旧敵国を永久に無法者と宣言したのも同様であり、旧敵国との紛争については平和的に解決義務すら負わされていないとされています。従って、敵国が起こした軍事行動に対しては話し合いなど必要なく、有無を言わせず軍事的に叩き潰してもよろしいということになります。

一方、国連憲章第2章では、主権平等の原則を謳っており、この敵国条項の規定は国連の基本趣旨に反し、特定の国を差別していることになります。


では、いったい敵国はどのように定義されているのでしょうか。敵国とは1945年4月サンフランシスコで開かれた連合国の会議で、連合国憲章が完成したことに由来しています。

国際連合の英語名UNITED NATIONSは、戦時同盟国と同じであり、そこには連合国の団結を戦後も維持し、「米国方式」での国際秩序維持を図るとの発想があったのです。従ってサンフランシスコ会議で憲章に署名した米国、イギリス、フランス、ソ連、中華民国を含むUNITED NATIONSの原加盟国51カ国、すなわち第2次世界大戦で連合国に敵対していた国が敵対国となります。

これに対する日本政府の見解では、当時の枢軸国であった大日本帝国、ドイツ(現ドイツ連邦共和国)、イタリア王国(現イタリア共和国)、ブルガリア王国(現ブルガリア共和国)、ハンガリー王国(現ハンガリー)、ルーマニア王国(現ルーマニア)、フィンランド共和国がこれに相当するとしています。

一方、タイ王国は連合国と交戦した国ではありますが、この対象に含まれていません。またオーストリアは当時ドイツに、大韓民国と朝鮮民主主義人民共和国はそれぞれ日本にそれぞれ併合されていましたが、旧敵国には含まれないという見方が一般的です。

これらの点からすれば、戦勝国とは1945年のUNITED NATIONS憲章成立時に署名した国に限定されることになり、この時国家として存在さえしていなかった中華人民共和国と韓国・北朝鮮は戦勝国としての資格を持っていないことになります。

日本が国連に加盟したのは1956年、以来延々60年にわたって国連外交を政策の重要な柱として優等生的な役割を果たしてきたことは、多くの日本人の間ではほぼ常識となっているでしょう。

たとえば、直近の国連向け加盟国負担金の割合を見ても、そのことは一目瞭然です。2018年までは、日本が米国についで2位でした。2019年からは日本が第三位で中国が第二位となっています。

これは国連安保理常任理事国のイギリス、フランス、ロシアよりも多いです。

当然のことながら、日本は多額を負担しながら、敵国条項が存在する状態に抗議を続け、1995年の第50回国連総会では憲章特別委員会による旧敵国条項の改正削除が賛成155、反対0、棄権3で採択され、同条項の削除が正式に約束されました。

しかし、憲章改正には安保理常任理事会5カ国を含む加盟国3分の2以上に批准されたうえでの発行となっており、これらの国が批准するかどうかは各国の自由です。敵国条項は死文化しているとして、敗戦国とされた日本、ドイツなどの国以外にはあまり関心を持たれず、実際の国連活動には支障がないとされているますが、昨今の事情はこのような見方を許さなくなってきています

戦後70年をファシスト日本に勝利した戦勝記念として大々的にアピールする中国の存在がそれです。事実、中国は国連の場で尖閣諸島を巡る問題に関して「第二次大戦の敗戦国が戦勝国中国の領土を占領するなどもってのほかだ」(2012年9月27日)と日本を名指しで非難しているのです。

つまり中国は、国連の場で暗に敵国条項を意識した発言を行ったわけです。スプラトリー諸島の埋め立ての例を挙げるまでもなく、東シナ海での尖閣に対する領海侵犯、さらには勝手に防空識別圏を設定するなど、国際海洋法などの国際法をことごとく無視してきた中国が、70年前の条文を案に持ち出してきたのてす。

1945年の終戦当時、成立もしていなかった中華人民共和国が国連敵国条項を持ち出して、自らを戦勝国と位置付けるカードとして使っているわけです。事実上は死文化していると言われていても、敵国条項は未だに削除されていません。

このような論理を持ち出してくる中国は、国連の場において戦勝国の資格のない自己矛盾もお構いなく、日本国家の選択肢を狭めようとするばかりでなく、国連安保理の常任理事国である限り、いつでも敵国条項を持ち出して、日本の安保理常任理事国就任の道を閉ざす口実になるのです。

もう第二次世界大戦が終了してから、70年以上も経過しています。国連そのものが制度疲労を起こしているのです。

中国は、国連では侵略的な態度で、できるだけ多くの権利を得ようとしているのです。加盟国は、自国および他国の利益を守る姿勢が必要です。まさに、日本も日本の利益、他国の利益を守る姿勢を堅持するべきです。

もともと「国連」とは世界平和を目的として作られたものではなく、戦争遂行の為の攻守同盟がその本質です。

「国連」が、世界的な環境問題や貧困問題や人権問題に関しても全く無力であるのは、当然の帰結です。

1945年に成立した世界的レジームを固定化し、それに伴う既得権益の維持を最大の目的として存在しているのが「国連」である以上、そもそも「国連」は、世界の人類全体の利益の為に活動する動機を持ちません。

「国連」が世界の環境問題や貧困問題や人権問題について何かをやっているように見えるのは、単なるアリバイ作りに過ぎません。

それぞれの国よって、状況が異なり全体主義国も、自由主義国も、富める国も貧しい国も包含する現在の「国連」は、「世界平和」「環境保全」「人権擁護」といった普遍的価値観には馴染みません。

ましてや、未だに敵国条項を温存している「国連」では、紛争をもたらす事はあっても、「世界平和」など実現し得るはずもありません

また、全体主義国家もその構成要素として複数加盟している「国連」では、「人権擁護」など到底不可能ですし、国連の活動の眼中に「人権擁護」など重要なものとは写っていないのは当然のことです。様々な矛盾があるのに「1945年の原状変更を認めない」というのが、「国連」の国際官僚の至上命題なのです。

「国連」が、「1945年レジーム」の固定化を最大目的とする以上、貧困問題も環境問題も人権問題も、全て既存の状態のまま「固定化」されるのが必然的帰結です。

今や、「新しい国際組織」が必要なのです。現在の「国連」に代わる、新たな世界組織が必要です。価値観や文化や経済発展の度合いが異なる国々が「戦勝国」の築いた一つの国際組織に収まるという事自体が最初から無理なことだったのです。

第二次世界大戦中の"United Nations"のポスター

複数の国際組織をつくり、互いに競争し、さらにはその複数の組織のいかなる組織も永劫不滅ではなく、場合によっては消滅し、他の組織に吸収されることもあるような新たな秩序を形成していくべきと思います。

さらに、これら複数の組織には、当該組織における理念を尊重した行動をとることを条件に、他国の影響を受けることなく、各々の国が国民の意思で自由に加盟したり、離脱したりできるようにすべきです。

またこれは、ブロック経済を意味するのではなく、自由貿易はこれからも実行していくべきでしょう。さらには、ある国際組織が別の国際組織を手助けすることも可能にすべきです。

理念が未来永劫不変でありしかも、一つしか存在しない組織など、最初から腐敗し、何もできなくなってしまうのは最初からわかりきっています。腐敗した組織は、中国の影響も浸透しやすいです。もう現在の国連は用済みだと思います。

そのようなことは、日本の社会を考えても分かります、もし日本という国に一つしか民間企業がなければどういうことになるでしょうか。あるいは、日本政府が各地の自治体なしで、すべてを直轄したらどうなるのでしょうか。おそらく、何もできないし、組織を維持することが目的となり、すぐに腐敗することでしょう。

国際機関はもとより、あらゆる組織が社会の機関です。組織が存在するのは、組織それ自体のためではありません。社会的な目的を実現し、社会、コミュニティ、個人のニーズを満たすためです。組織は目的ではなく手段です。したがって問題は、その組織は何かではありません。その組織は何をなすべきか、あげるべき成果は何かです。

国際機関もすべきこと、あげるべき成果は、種々様々です、「国連」という一つの組織がすべてを実行するのは不可能です。であれば、すべきごと、あげるべき成果にもとづき、複数の国際機関が存在するのは、当然のことです。

国際的な活動は当該国の政府が主体となるのではなく経験や実績のある国際的活動をするNGOやNPO等が実行部隊の主体となるべきであって、国際組織、それも複数の国際組織はそれを適正に統治するというのが正しい姿だと思います。適正に統治できない国際組織は消えるしかないのです。消す仕組みもつくっておくべきでしょう。

また、国際的なニーズは、時間とともに変わっていきます。ニーズなどに適応できない組織も、消す仕組みをつくり、新たなニーズがでてきたときには、新しい国際組織を設立する仕組みを構築すべきでしょう。

統治とは、社会のために意味ある決定と方向付けを行うことです。社会のエネルギーを結集することです。問題を浮かびあがらせることです。選択を提示することです。

無数のNGOやNPOができあがって、あちこちで独自に無秩序に行動すれば、様々な混乱や、場合によっては、かえって不利益をもたらすことすらあり得ます。そういうことがないように統治するのが、国際組織の本来実行すべき仕事だと私は思います。

また、国際組織は自らの理念にもとづき行動し、理念にあわない国は、最終的には排除できる仕組みもつべきです。ただし、国は排除しても、社会は排除できないという仕組みをつくっておくべきでしょう。

そうなると、全体主義の国の政府は排除できても、社会は排除しないということになり、全体主義国家はこれを内政干渉などと受け取るでしょうが、この問題は行動しながら考えていくしかないでしょう。しかし、それでも、今の国連よりははるかにましになるでしょう。

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2020年11月7日土曜日

米国、再び「南北戦争」突入へ 偏向メディアやSNSは不正投票や「バイデン疑惑」に沈黙…敵は内側の“共産主義勢力” ―【私の論評】日本のメディアに問いたい!トランプ氏は日本に対して何か悪いことでもしたのか(゚д゚)!

 米国、再び「南北戦争」突入へ 偏向メディアやSNSは不正投票や「バイデン疑惑」に沈黙…敵は内側の“共産主義勢力” 


激突!米大統領選

一触即発。激戦のペンシルベニア州フィラデルフィアで、トランプ、バイデン両氏の支持者が向かい合った

 開票作業が続く米大統領選は、民主党のジョー・バイデン前副大統領(77)が勝利目前だが、共和党のドナルド・トランプ大統領(74)は郵便投票などに不正があったと強調し、徹底的な法廷闘争を辞さない構えだ。今回の選挙も、事前の「バイデン氏圧勝」という世論調査と異なる結果となり、「メディア不信」と「米国内の分断」が浮き彫りになった。国際投資アナリストの大原浩氏は緊急寄稿で、「米国内の敵」の存在を指摘した。


 米大統領選ではいくつかの事実が明らかになった。

 一つは、偏向メディアによる「世論調査」なるものはまったくあてにならず、それらの情報を基に組み立てた記事の信憑(しんぴょう)性もほとんどないということだ。世論調査ほどのバイデン氏優勢ではなく、今回の選挙でも「隠れトランプ派」が大量に存在したことははっきりした。

 トランプ氏側は「選挙・開票作業の公正さ」を問題視し、法廷で争うとしているが、特に郵便投票の問題は見過ごせない。民主党や偏向メディアは無視を続けているが、郵便投票が不正を誘発しやすいのは確かだ。トランプ陣営を中心に、投票用紙の入った郵便物が大量に道路にばらまかれたり、死亡しているはずの有権者から投票用紙が届いたりといった「事件」も指摘されている。

 バイデン氏や次男のハンター氏の「ウクライナ」「中国」などに絡む金銭疑惑の証拠があれほど大量に出たのに、バイデン氏にそれほど打撃を与えなかったことも大きな問題だ。

 トランプ氏の疑惑であれば「あることないこと」騒ぎ立てる旧来の偏向メディアが、バイデン氏の疑惑に、ほぼ「だんまり」を決め込んだことは、逆に証拠の信憑性を高めている。

 新興の大手SNSまでが「バイデン疑惑」の拡散制限をかけ、「偏向メディア」の仲間入りをしてしまった。米国民が「バイデン疑惑の真実」にもっと触れていたら、バイデン氏完敗のシナリオもあり得たと思う。

 ジョージ・オーウェルの名作『1984年』が発表されたのは49年だが、当時は50年の朝鮮戦争の前で、冷戦ムードが高まっていた時期であった。第二次世界大戦でやっとファシズムを倒したと思ったら、共産主義が民主主義・自由主義国家を侵食し始めた恐怖は想像に難くない。

 共産主義国家に侵略され、『1984年』に描かれたビッグブラザー(今で言えばGAFA級の巨大ITと国家権力が結びついたような国民監視組織)に支配されるような事態を何としてでも避けようと、民主主義国家が懸命な努力をした結果、89年のベルリンの壁崩壊、91年のソ連邦崩壊に至った。

 しかし、切り倒したと思った共産主義の胞子は全世界に広がり、民主主義国家の内部から30年間侵食し続けた。その結果を象徴するのが、今回の米大統領選だといえる。冷戦当時は外側の敵との戦いだったが、今回は内側の敵との戦いであるから、より難しい。

 投票日前から、米国民の間では「投票日以降数日間は危険だから外出しない方がいい」という呼びかけが多数流れていた。BLM(ブラック・ライブズ・マター=黒人の命は大切だ)運動を隠れみのにした略奪や放火が続き、自警活動も活発になっているようなので無理もない。

 ■重要なのは「正しい道」に進めるか

 1861年から65年にかけて行われた南北戦争は、「奴隷制廃止」を掲げたエイブラハム・リンカーン大統領率いる共和党と、南部の農園主などの「奴隷制支持者」を母体とした民主党との戦いだったともいえる。

 われわれはその結果を知っているが、終結までに4年もかかったことからも分かるように、工業力で劣っても、南軍のロバート・E・リー将軍率いる部隊は手ごわく、北軍は苦戦した。

 その時リンカーン大統領が、北軍の司令官として白羽の矢を立てたのがユリシーズ・グラント将軍だった。50ドル札にもなっている英雄で、指揮官として優秀であることは誰もが認めるところだったが、不祥事もたくさん起こしていた。幹部たちはこぞって反対したのだが、リンカーン大統領の一言で起用が決まり、期待通り北軍を勝利に導いた。

 現在、トランプ氏を嫌う人が多いのは、彼の言動や不祥事が多いことによるためだが、そんなことよりも米国の政治を「正しい道」に進めることができるかどうかが重要なのだ。

 米国はこれから「南北戦争」に突入するかもしれないが、自国を正しい道に進めることができる「資質」とは何かを十分考えなければならない。それは、日本の政治においてもまったく同じである。

 ■大原浩(おおはら・ひろし) 人間経済科学研究所執行パートナーで国際投資アナリスト。仏クレディ・リヨネ銀行などで金融の現場に携わる。夕刊フジで「バフェットの次を行く投資術」を連載中。

【私の論評】日本のメディアに問いたい!トランプ氏は日本に対して何か悪いことでもしたのか(゚д゚)!

上の記事に出てくるグラント将軍の処遇めぐる、リンカーン大統領の逸話は有名な話です。これについては、経営学の大家ドラッカー氏も著書の中で述べています。それも、「人の強みを生かす」という文脈の中で述べています。
 成果をあげるには、人の強みを生かさなければならない。弱みを気にしてはならない。利用できるかぎりのあらゆる強み、すなわち同僚の強み、上司の強み、自らの強みを総動員しなければならない。(『経営者の条件』)
強みを生かすことは組織特有の機能です。ドラッカーは、組織における権力の正統性の基盤も、この人の強みを生かすという組織の機能に置くべきであるとまでいいます。

組織といえども、人それぞれが持つ弱みを克服することはできません。しかし、組織は人の弱みを意味のないものにすることができます。

成果をあげるには、強みを中心に据えて異動を行ない、昇進させなければならないのです。人事には、人の弱みを最小限に抑えるよりも、人の強みを最大限に発揮させなければならないのです。

グラント将軍

ドラッカーは、リンカーンの例を引きます。グラント将軍の酒好きを聞いたとき、リンカーンは「銘柄がわかればほかの将軍たちにも贈りなさい」と言ったといいます。

おそらく、リンカーンはグラントを司令官に登用することを幹部たちがこぞって反対しているのを知っていてこのようなことを言ったのでしょう。

酒好きだとしても、アルコール中毒になるほどではなく、日々能力を発揮してくれれば、何の問題もないです。リンカーンは酒好きという弱点より、指揮官として優秀であることのほうを重視したのです。

できることではなく、できないことに気をとられ、弱みを避ける者は弱い人間です。しかし部下が強みを持ち、成果をあげることによって苦労させられた者など、一人もいないです。
米国の鉄鋼王アンドリュー・カーネギーが自らの墓碑に刻ませた『おのれよりも優れた者に働いてもらう方法を知る男、ここに眠る』との言葉ほど大きな自慢はない。これこそが成果をあげる処方である。(『経営者の条件』)

 

アンドリュー・カーネギーの墓


まさに米国メディアやそれに追随する日本のメディアもこのドラッカーの主張する原則を全く無視しているのでしょう。本来ならばトランプ氏にできないことに注目するのではなく、できることに注目すべきなのです。

米国ではトランプ氏のできることに注目する人も多いので、前回の大統領選挙では勝利して、不可能と思われていたトランプ大統領が登場し、今回も選挙がこれほど伯仲したものになっているのです。

特に、日本のメディアまでが、米国のメディアに追随するのは本当に理解できません。トランプ大統領が日本に何をしたというのでしょうか。

確かにトランプ氏が大統領になったばかりのころは、 日本に対して理不尽な要求を口にしたこともありますが、それは影を潜めました。

その後現状では、日米関係は従来に比較して、最も良い状態になっていると言っても過言ではありません。

さらに、コロナ禍には悩まされていますが、これがトランプ政権の失敗によるものという明らかな証拠はありません。仮にヒラリーが大統領になっていたとしても、同じようなものだったかもしれません。

私は、6月あたりのBLM運動のデモ等で参加者のほとんどがマスクをしていなかったので、これはかなり感染が増えるだろうと漠然と思っていましたが、まさにそのとおりになりました。

ブラック・ライヴス・マター運動


大統領に就任して以来の経済対策は成功しており、それは空前の雇用状況の良さによって示されていました。さらに、コロナ禍による経済の低迷からの立ち直りも、先日もこのブログに掲載したように、米国史上空前ともいえるような速さでした。

安全保障に関しては、ご存知のように中国に対して厳しい措置をとり、米国は尖閣は日本の領土であると公式に発表しました。ちなみに、オバマ政権ではこのようなことはありませんでした。

さて、上の大原氏の記事に関しては、大部分は賛成なのですが、"自国を正しい道に進めることができる「資質」とは何かを十分考えなければならない"という部分には賛成しかねます。

なぜなら、ドラッカー氏はリーダーシップについて、以下のように述べいますし、私もそう思うからです。

リーダーシップとは人を引きつけることではない。そのようなものは煽動的資質にすぎない。仲間をつくり、人に影響を与えることでもない。そのようなものはセールスマンシップにすぎない。(『現代の経営』)

リーダーシップとは仕事であるとドラッカーは断言します。リーダーシップの素地として、責任の原則、成果の基準、人と仕事への敬意に優るものはありません。

リーダーシップとは、資質でもカリスマ性でもありません。カリスマ性といえば、ヒトラー、毛沢東、スターリン、金日成はかなりのカリスマ性を持っていたと思います。カリスマ性とは全体主義者や独裁主義に特有の資質かもしれません。

意味あるリーダーシップとは、組織の使命を考え抜き、それを目に見えるかたちで確立することです。リーダーとは、目標を定め、優先順位を決め、基準を定め、それを維持する者です。

リーダーは、妥協を受け入れる前に、何が正しく望ましいかを考え抜きます。リーダーの仕事は明快な音を出すトランペットになることだとドラッカーは言います。

リーダーと似非リーダーとの違いは目標にあります。リーダーといえども、妥協が必要になることがあります。しかし、政治、経済、財政、人事など、現実の制約によって妥協せざるをえなくなったとき、その妥協が使命と目標に沿っているか離れているかによって、リーダーであるか否かが決まるのです。

ドラッカー氏自身は多くの一流のリーダーたちを目にしてきました。外交的な人も内省的な人もいました。多弁な人も寡黙な人もいました。優秀なリーダーに共通する特有の資質などなかったと、ドラッカーは語っています。その上でドラッカーは以下のように語っています。

 リーダーたることの第一の要件は、リーダーシップを仕事と見ることである。(『プロフェッショナルの条件』)

トランプ氏は、大統領になる直前に大統領就任後直ちに実行するという公約「100日プラン」を公表していました。

この公約は次から次へと実行されていきました。無論、すぐには実行できないものもありましたが、それでもかなり実行しましたし、現在でも実行しつつあります。

中には、TPPからの脱退とか、国境の壁を築くというものもありましたが、これも公約でした。そのほか、様々な公約を実現していますが、特に経済には目覚ましいものがありました。特に、雇用に関しては神経質すぎるほどで、とにかく公約を実現することに執着しつづけ、実際かなり良くしました。

このようなことは、従来の政治家にはみられませんでした。実業家出身のトランプ氏だったからこそ、このようなことを実行したのでしょう。

コロナ禍で米国経済は、一時的にかなり落ち込みましたが、7月〜9月期にはほぼ元通りに回復したと予想されています。これは、このブログにも掲載したように歴代で最もはやい回復といわれています。

これだけ、公約としての目標を掲げて、実際に実行した大統領はかつて存在しないのではないかと思います。

このようなトランプ大統領を狂ったピエロのように報道する日米のメディアは、いずれもかなり偏向しており、トランプ大統領報道に関しては全く信用できません。

今回の選挙戦はもつれにもつれましたが、最後の勝敗は無論米国民の良心に委託するものとして、日米のメディアには、もっとまともな報道をするようにすべきです。

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2020年11月6日金曜日

法廷闘争、敗北拒否の構え トランプ氏、郵便投票「不正の温床」―大統領選出に影響―【私の論評】トランプもバイデンも大統領にならないというシナリオすらあり得る今後の米大統領選(゚д゚)!

法廷闘争、敗北拒否の構え トランプ氏、郵便投票「不正の温床」―大統領選出に影響

 開票が進む米大統領選で、共和党のトランプ大統領の陣営は4日、接戦州で集計中止などを求める訴訟を相次いで起こした。選挙人獲得数で民主党のバイデン前副大統領に後れを取るトランプ氏は、大幅に増えた郵便投票について「不正の温床」だと主張し、敗北しても結果の受け入れを拒否する構え。各州で選ばれた選挙人が大統領候補に投票する来月14日を目安に、法廷闘争を交えた論争が続きそうだ。

 トランプ陣営は中西部ミシガン州と東部ペンシルベニア州で、それぞれ「州内の開票所で陣営スタッフによる合法的な立ち会いが拒否された」として提訴。郵便投票分の集計中止を求めた。ミシガン州のベンソン州務長官は「根拠がない」と反発している。

 トランプ陣営は南部ジョージア州でも、投票日を過ぎて選管に到着した郵便投票に偽造用紙が紛れ込んでいる可能性があると裁判所に訴え、問題ありとされた票とそれ以外の票を分けて保管するよう求めた。

 今回の大統領選では、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、史上最多の6500万人以上が郵便投票を行った。民主党支持者に郵便投票を選ぶ傾向が強いとされ、集計中止なら相対的に共和党が有利になるとみられている。

 法廷闘争は、その後の大統領選出手続きにも影響する可能性がある。来月14日には50州と首都ワシントンで選挙人集会が開かれ、正副大統領候補に投票。通常は形式的な手続きだが、裁判が長引くなどして同8日の期限までに選挙結果が確定しない州が出れば、その州から正規の選挙人が参加できない異常事態に陥りかねない。

 選挙人投票の結果は、来年1月6日の上下両院合同会議で正式に確認される。一部州で決着がつかず、トランプ、バイデン両氏とも選挙人の過半数(270人)を確保できなかった場合、憲法修正12条の規定に基づき、大統領選出は下院の手に委ねられる。

 下院では、州単位で構成する全50の議員団が各1票を投じ、過半数の26票を得た候補が大統領となる。下院は大統領選と同時に行われた選挙で全議員が改選されており、1月3日に就任する新下院議員の構成に議員団の投票行動は左右されることになる。

【私の論評】トランプもバイデンも大統領にならないというシナリオすらあり得る今後の米大統領選(゚д゚)!

現在でもまだ大統領選でトランプ氏が勝利する可能性はあります。トランプ氏が法廷闘争をしようがしまいが、12月14日の選挙人投票は行われる可能性が十分あります。なぜなら、法廷闘争を始めたからといって、すぐに選挙の差し止めということになることは考えにくいからです。ただし、最高裁で判決がでるというシナリオも否定しきれません。

バイデンもトランプも大統領にならないというシナリオも・・・・・

実は、この選挙人投票が曲者なのです。

大統領選でバイデン氏が選挙人の過半数270人以上を獲得した場合でも、270人ギリギリの場合だと、「選挙人投票」(12月14日)で造反投票が出て、当選できなくなる危険性すらあるのです。

選挙人投票は通常はセレモニー的に行われるといわれていす。通常は全くの形式でニュースにもならないのですが、今回はここが主戦場になる可能性もあります。

バイデン氏が270人以上の選挙人をこれからか獲得したとして、選挙人全員が宣言通りに投票すれば過半数を超えるでしょうが、これが確実にそうなるという保証はないのです。それは、不誠実な選挙人が存在するからです。

前回2016年の選挙人投票でも、トランプ氏は306人を獲得していたのですが結果は304人、クリントン氏も232人のはずが227人しか得票が入らず、両陣営で計7人が自陣営候補に入れない「謀反」があったとし、これはこのときの選挙に限らず以前から発生しています。

前回の選挙ではトランプ氏が過半数を大きく超える306とっていたので大勢に影響なかったのですが、今回のようなギリギリ270のケースだと、たった1人か数人の不誠実でもバイデン氏が当選できなくなる可能性が出てくるのです。

そうして、これは政治的に問題がありますが、違法というわけではありません。選挙人投票がまったくセレモニーなどとして軽視できないのです。現に違う人に入れている人は過去にも決して少ないとはいえなかったのです。

さらに、双方270に届かない場合は、連邦議会の下院の投票で決めることになります。この場合も混乱が予想されます。ただ、現状では下院州代表は共和党が多数派なので、トランプ氏に有利です。1800年代に2回、下院で大統領が選出された例があります。

とはいいながら何があろうと、1月20日に次の大統領の任期が始まると、憲法は定めています。

1月20日の正午には、誰かを大統領にしなくてはならないのです。結論が出ないときは、後任選びの計画を進めることになります。

ペンス氏が大統領になるというシナリオも・・・・

下院が大統領を巡ってこう着する一方で、上院が副大統領候補を承認する状況も考えられます。

仮に下院が大統領就任式の日までに決着しない場合は、上院が選んだ副大統領が大統領になります。もし、上院が現行のペンス氏を副大統領として承認した場合は、ペンス氏が大統領になる可能性もあります。

下院議長ナンシー・ペロシ氏が大統領になるシナリオも・・・・・

上院が副大統領を選べない場合は、下院議長(現在は民主党のナンシー・ペロシ氏)が大統領の職に就くことになります。

トランプでもバイデンでもない人が、米国大統領になる可能性もあるのです。どのシナリオになったとしても、1月20日の午前には次期米大統領が決まります。


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2020年11月5日木曜日

【有本香の以読制毒】米大統領選、バイデン票“異常膨張”の混乱横目に中国・習主席「市場開放を進める」 トランプ氏が負ければ日本も世界も中国の軍門に… ―【私の論評】バイデン氏には選挙で負ける以上の、耐え難い屈辱の日々が待っているかもしれない(゚д゚)!

 【有本香の以読制毒】米大統領選、バイデン票“異常膨張”の混乱横目に中国・習主席「市場開放を進める」 トランプ氏が負ければ日本も世界も中国の軍門に… 

激突!米大統領選

バイデン氏

 米大統領選は4日開票が進み、民主党のジョー・バイデン前副大統領(77)が、激戦の「ラストベルト」(=さびた工業地帯)の一角、中西部ウィスコンシン州とミシガン州を制し、優位に立った。ただ、共和党のドナルド・トランプ大統領(74)の陣営は、郵便投票などの不正投票疑惑を指摘しており、ウィスコンシン州では再集計を申し立てる意向で、ミシガン州では集計停止を求めて法廷闘争に着手した。大混乱する米国を横目に、中国共産党政権は「市場開放」を強調したうえ、沖縄県・尖閣諸島周辺に連日のように侵入する中国海警局に外国船への武器使用を認める草案を公開した。日本に求められる覚悟とは。ジャーナリストの有本香氏が人気連載「以読制毒」で迫った。


 これほどメチャクチャな米大統領選を見ることになるとは思わなかった。現在、日本時間5日未明だが、大勢はまだ判明していない。それどころか、まさに混沌の中に入らんとしている。

 そもそも、米民主党が、どう見ても認知能力に問題のあるバイデン氏を候補に立てるしかなかった時点で、嫌な予感はした。「本当に米国民の多数が、この人に『核のボタン』を預けていいと思うのか?」と。

 だが、民主党側はそんな良識などお構いなしだった。

 「トランプ氏を引きずり下ろせるなら、候補者など誰でもいい」と言わんばかりの、手段を選ばないすさまじい攻勢。政策もビジョンも何もないまま、ただただトランプ氏を貶すだけ。これは民主党というより、米国の極左勢力と大メディア、さらにSNS含む主要ネット企業までもが共闘して仕掛けた「仁義なき戦い」だった。

 この戦線になぜか、日本のリベラル気取りのメディア人や学者らが喜んで便乗し、4年前同様、日本の世論を「反トランプ」に誘導せんと励んだ。何とも情けない限りである。

 他方、米国の開票作業のいい加減さ、不明朗にもあきれさせられた。

 トランプ氏が、オハイオ州やフロリダ州、テキサス州を制し、そのまま逃げ切るかと思いきや、日本時間4日夜半から突如、残りの激戦州で相次いでバイデン票が大量に加算される「異常」が起きた。その1つであるミシガン州では、「1ケタ違いのタイプミスでした」と、シラッと修正される。日本では考えられないずさんさだ。

 さらに、バイデン氏がウィスコンシン州を取ったと伝えられた直後、トランプ陣営は同州に票の再集計を求めると報じられ、結果はますます読めなくなっている。

 郵便があてにならない米国で、民主党側が「郵便投票を」と呼びかけ出した時点で、まともな選挙にならないと予想はできた。それにしても、一体どこの途上国かと言いたくなる顛末(てんまつ)だ。

 そんな米国の混乱を見透かしたように、4日夜、中国の習近平国家主席が「国内市場の開放を一層進める」とのビデオ演説をしたと報じられた。

 「バイデン氏が勝てば中国が勝つ。私が勝てば米国が勝つ」

 ■永田町には緊張感なし…

 投票日の2日前、トランプ氏は、ミシガン州での演説でこう訴えたが、この言葉がまさに真実味を帯びてきている。

 トランプ氏は1カ月ほど前、ツイッターに次のような趣旨の書き込みをしていた。

 「私は中国から数十億ドルを奪って、米国の農家と財務省に配った。バイデン氏とハンター氏(=バイデン氏の次男)が勝てば、中国が米国を支配することになる」

 このツイートを読んだとき、筆者は「仮に、トランプ氏が負ければ、日本も、世界も中国の軍門に下っていくことになるだろう」と暗澹(あんたん)たる思いになったものだ。

 こうした状況下にあっても、永田町に緊張感はない。

 予算委員会は案の定、日本学術会議がどうこうとやり合う「高給遊技場」と化している。せめてもの救いは、今回、一般国民が過去になかったほど真剣に、米大統領選の行方をウオッチしていたことだ。政治家も大メディアも当てにならない。かくなる上は、自力で現地情報に触れ、今後のことを考えたいと思う国民が増えたことの証左だ。

 米国でも、大メディアや世論調査の世論誘導に左右されない多くの国民の意思が、トランプ氏の大きな得票数に表れている。

 日米の自立した国民はどこへ向かうべきなのか。その一員を自認する筆者としては、まず立ち向かうべき敵を見間違えないよう肝に銘じたいところである。

 ■有本香(ありもと・かおり) ジャーナリスト。1962年、奈良市生まれ。東京外国語大学卒業。旅行雑誌の編集長や企業広報を経て独立。国際関係や、日本の政治をテーマに取材・執筆活動を行う。著書・共著に『中国の「日本買収」計画』(ワック)、『「小池劇場」の真実』(幻冬舎文庫)、『「日本国紀」の副読本 学校が教えない日本史』『「日本国紀」の天皇論』(ともに産経新聞出版)など多数。

【私の論評】バイデン氏には選挙で負ける以上の、耐え難い屈辱の日々が待っているかもしれない(゚д゚)!

日本では、トランプ大統領が米国を分断させたと思い込んでいる人が多いですが、米国でも保守であろうが、リベラルてあろうが、まともな人はそうではないことを知っています。

そもそも米国は当初から分断した国家だったのです。だからこそ、南北戦争が起こったのです。

さらに、「米国ファースト」というキャッチフレーズなどから、米国の孤立主義が懸念されましたが、これも結局間違いでした。考えてみれば、米国大統領が「米国ファースト」というのは当たり前です。米国大統領が「他国ファースト」を唱えれば全く異常です。どの国のリーダーもまずは自国民ファーストです。

「日本列島は日本人だけの所有物じゃない」とは、鳩山由紀夫 民主党幹事長(当時)が、2009年4月17日に行われたニコニコ生放送において、外国人参政権について質疑応答している最中に口にした発言ですが、このような発言をするリーダーこそ異常です。

トランプ氏との対比から、国際社会を重んじる大統領というイメージが強くなったオバマ前大統領ですが、オバマ氏こそ米国の孤立主義的なスタンスを先鋭化した大統領です。

オバマ氏は、国際社会(欧州社会)から何度も要請を受けたにもかかわらず、頑なにシリア問題への介入を拒んでいました。またオバマ氏は、米国史上最大規模の軍縮を行っており、米軍予算を大幅に縮小しました。米軍の海外展開の象徴のひとつでもあった沖縄の海兵隊を、大量にグアムに撤退させたのもオバマ政権です。

また、日本ではあまり報道されなかったのですが、オバマ政権下では日本に配備する空母の不要論まで飛び出していました。横須賀を母港とする米海軍第7艦隊の主力空母ジョージ・ワシントンは、大規模修繕に入るため米国に戻る予定でしたが、一時は後継の空母を横須賀に配備しないという話が浮上していました。

オバマ氏
最終的にはロナルド・レーガンの配備が決定し、同艦は現在、横須賀に常駐しています。とろで、アジア太平洋地域の地政学に少しでも関心のある人なら、横須賀に空母を配備しないという議論が出たことの重大性を理解できるはずです。これは在日米軍撤退を匂わせたトランプ政権の話ではなくオバマ政権での話です。

つまり米国の「引きこもり」はトランプ氏が思いつきで始めたことではなく、以前からその潮流が出来上がっていたと考えた方が自然です。大統領になりたてのトランプ氏はその流れを継承しようとして、後に誤りだと気づいたということです。

そもそ米国が引きこもりなるための経済的な諸条件はすべて整っていました。米国はシェール革命の結果、サウジアラビアを抜いて世界最大の石油産出国となりました。米国はこの先、エネルギーを外国に頼る必要がまったくなったのです。

しかも世界最大の消費市場を持ち、食糧も自国で生産することができます。高度なITを持ち、圧倒的な規模の金融市場を運営しています。こうした基礎的条件の変化は、確実に米国民の意識を変えているはずであり、それが政治の表舞台に顔を出すことがあるのです。

米国内の対立・分断についても同様です。米国は南北戦争という激しい内戦を行った国であり、公民権運動が盛り上がった1960年代にも、すさまじい対立がありました。

米国は常に分断と融和を繰り返し、変化を遂げてきた国であり、それは政党も同じです。多くの人が民主党はリベラルな政党と思っているようですが、それは党の戦略として、あえてリベラルに舵を切った結果にすぎません。民主党は以前は南部の土地所有者を支持基盤としており、どちらかというと人種差別的であり、共和党の方がむしろ融和的でした。

そうして、米国社会に目を向けると、特にメディアは、大手新聞はすべてリベラル系であり、大手テレビ局はフォックスTVを除きすべてがリベラルです。そのため、社会のあらゆる分野でリベラル系の考え方が主流であり、保守などのリベラル以外の考え方は異端です。

米国社会のほとんどが、リベラル的な考え方が主流とされています。それは、多くの職場でも、役所でも、学校でも同じです。米国にも保守をはじめリベラル以外の人々も大勢いるはずですが、そういう人たちの考え方や、行動、ライフスタイルなどはかき消されてしまうのです。

だから、米国メデイアがトランプ氏に対して否定的であるのは、当然のことなのです。しかも、こうしたリベラル主流の世論が左翼などに利用される場合もおうおうにしてあるのです。

現在はリベラルと目されている、民主党ですが、必ずしもそうとはいえないことは過去に遡ればよくわかります。

たとえば、公民権運動のひとつのきっかけとなった出来事にリトルロック高校事件と呼ばれるものがあります。1954年、黒人と白人の融合教育が進み、南部アーカンソー州リトルロックの公立高校に黒人生徒が登校を開始すると、当時のフォーバス州知事が混乱を避けるとの名目で州兵を学校に送り、事実上、黒人の登校を阻止してしまいました。

これに対して全米から反発の声が上がり、州と連邦政府は対立、最終的には連邦政府が軍をアーカンソー州に派遣するなど、一触即発の状態となりました。この時、しぶしぶながらも連邦軍の派遣を決定したのは、共和党のアイゼンハワー大統領であり、一方、黒人の登校を阻止したフォーバス州知事は民主党です。しかもフォーバス氏は、その後、辞任するどころか、再選を果たし、6期も州知事を務めました。

この事件を見れば、人種差別というものがいかに根深いものであるのかがよく分かります。また、共和党=保守、民主党=リベラルという簡単な図式では判断しない方がよいということも理解できます。ちなみにリトルロックは、民主党のビル・クリントン大統領ゆかりの地です。

米国は当初、白人同士での人種差別(メジャーなアングロ・サクソンに対して、マイノリティであるイタリア系、アイルランド系という図式)が深刻でした。そもそも米国ではイタリア系、アイルランド系が白人とはみなされない時代があったのです。

対立が解消された現在でも、人材登用がオープンな公務員にはアイルランド系やイタリア系が多いなど、かつての時代の名残りがあります。また米国の映画やドラマなどを見るとよく分かlりますが、今でも多少の差別意識は残っていることがわかります。

その後、対立の図式は黒人と白人にシフトし、公民権運動を経て黒人と白人の融和が進みました。現在ではそれがヒスパニック系やイスラム教徒との対立にシフトしていると考えれば、それほど驚くにはあたらないです。

個人的には、多くの対立を経て民主主義を確立してきた歴史を踏まえ、米国が新しい融和社会を構築してくれることを願っていますが、あくまでそれを決めるのは米国人です。ただし、わたしたち日本人は、米国社会には様々な面があり、常に対立で揺れ動いてきた国だという冷静な認識を持つ必要があるでしょう。

単純に米国メディアやそれを受け売りをする日本のメディアみて、トランプ氏のことを米国社会を分断させた、狂ったピエロのように考えるのは完璧な間違いです。

ましてや、大統領選挙の結果に不満を持ち、法廷闘争に持ち込もうとするトランプ氏を一方的に批判するのは間違いです。

バー司法長官は選挙前のCNNのインタビューで「郵便投票は論理的に、不正や強要のリスクが非常に高い。この手法のルールを変更しようとするのは無鉄砲で危険だ。火遊びをするようなものだ」と述べました。

米国のバー司法長官は、不在者投票が潜在的な不正投票の最大の温床と結論付けた連邦選挙改革委員会の2005年の報告書を引き合いに出し「それ以降、新聞やテレビ、学術論文などで不正や強要のリスクがあると言われてきた。こうした指摘が変化したのは、現政権が就任してからだ」と主張しました。

バー長官は、外国政府が投票用紙を偽造する可能性にも言及しました。ただ、そうした動きを示す証拠は確認していないとしました。

ただこうした懸念は的中したようです。激戦州で相次いでバイデン票が大量に加算される「異常」が起きたのです。

冒頭の記事ににも指摘されていた突然大量の票が加算された様子は以下のグラフではっきり分かります。ミシガンでは4日朝7時17分に突然バイデン票がトランプ票に追い付いています。それを示したのが以下のグラフです。


そしてウィスコンシンも6時23分、突然バイデン票が増えて、これまたトランプ票に追い付いてしまいました。


さらに不思議なことがあります。米大統領選挙、激戦州においては、 登録された有権者数よりも 多くの人が投票していることになっています。 余りにも不自然です。


ジョージア州では、登録した人のうち96%が投票したことになっていますが、これはかなり不自然です。独裁国家でもない限り、このようなことにはなりません。多めに見積もっても70%もいけば良い方です。

実際、今回の米大統領選挙の投票率の米メディアによる予想値は、65〜66.9%です。



他の接戦州では、100%を超えています。これではまるで、中国のGDPの統計のようです。中国のGDPは、最近はそのようなことはありませんが、ひところは、国全体のGDPが、全省の合計よりも上回っているということが何度かありました。これは、微博などでも有名になったため、その後改めたようではありません。それ以来中国のGDPは、単なる「政治的メッセージ」とみなされるようになりました。

これは何と言うか、あまりにも解りやすい不正で、露骨すぎます。また、ペンシルベニアでは投票締め切り後の票を締め切り前のものとしてカウントすると、民主党所属の州財務長官が計画し、それを実行したようです。

要するに民主党総出でツイッターなどのSNSも加わっての国家的犯罪の様相を呈してきたのです。誰もが理解できるこれだけ大掛かりな不正となれば、バイデン派でも、トランプ派でもこのからくりを知っている人も多いのでないかと思います。

バイデン派自分たちは不正をしているという負い目もあるし、不正でも勝利しそうなので、そもそも暴動を起こす必要性がないし、トランプ派は不正があまりに明らかなので、自分たちがあえて暴動を起こさなくても、トランプ氏は確実に司法に訴えるだろうし、そうすればかなり勝ち目があるだろうし、わざわざ暴動を起こすまでもないと考えるでしょう。だかこそ暴動騒ぎが起こっていない可能性があります。これからも起こらないかもしれません。

これをトランンプ陣営が見逃す筈は無いですが、民主党というか、これを計画した悪の枢軸は簡単には引き下がらないでしょう。ただし、この悪の枢軸、頭が悪すぎるとみえて、調子に乗りすぎました。要するにやりすぎたのです。中国共産党のようにさじ加減ということを知らない連中のようです。

トランプ陣営からすれば、当初の最悪の想定で進んでいます。 郵便投票と不正投票による混とんをトランプ側はその有効性を認めないでしょう。 まずは、州の再集計結果待ち その上で法廷闘争になる可能性が高いです。

トランプ側はすでに勝利宣言をしていて、これを取り下げないでしょう。勝利宣言の場で不正投票に言及しており、一部の州でそれが確認されています。また、そのような州の多くは最終結果ではないとしており、個別の票の適格性有効性をめぐる審査を要求するものと思われます。

日本の「もりかけ桜」と異なり、これだけの客観的数値的裏付けがあれば、調べれば必ず何かがでてくるでしょう。

バイデン氏には選挙で負ける以上の、耐え難い屈辱の日々が待っているかもしれません。あるいは、バイデンは単なる操り人形で、多くの人が想定している以上に大きな存在が背後で動いている可能性もあります。バイデン氏は思いもかけずに、自ら危険な領域に踏み込んでしまったようです。米司法当局はそこまで踏み込んで欲しいものです。

そうして、米国人にはこうしたマイナスの出来事にひるむことなく、過去の米国のように、米国の政治、米国の選挙方式等に大きな変革を成し遂げていただきたいです。

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2020年11月4日水曜日

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 米大統領選、中国裏工作で大混戦! メディア沈黙のバイデン氏「チャイナ・ゲート」疑惑をFBIが捜査 米名門紙は異例のトランプ支持 河添恵子氏緊急寄稿 

激突!米大統領選

トランプ大統領

 世界が注視する米大統領選は3日夜(日本時間4日午前)投票が締め切られ、開票作業が始まった。世論調査で優勢が伝えられる民主党のジョー・バイデン前副大統領(77)を、共和党の現職、ドナルド・トランプ大統領(74)が猛追する構図だ。新型コロナウイルス対策の郵便投票が多く、開票作業の遅れが懸念される。こうしたなか、米主要メディアが「報道しない自由」を行使した、バイデン父子の「チャイナ・ゲート」が選挙後も米政界を直撃しそうだという。注目される米連邦捜査局(FBI)の動き。ノンフィクション作家、河添恵子氏の緊急寄稿第25弾。


 「世論調査はあてにならない」との姿勢を貫くトランプ陣営は「大差で勝利する」と意気込み、バイデン陣営は「僅差で勝利」としている。ともかく、米大統領選は大接戦のようだ。

 背景には、日米主要メディアはほとんど報じないが、米紙ニューヨーク・ポストが先月中旬、バイデン氏の次男、ハンター氏が、中国やウクライナ、ロシアなどと不正取引をした疑惑があるとスクープしたことがある。

 衝撃的な報道について、同紙はハンター氏が修理屋に預けたまま引き取らなかったパソコンのハードディスクに残っていた記録に基づくものと説明している。

バイデン親子

 ハードディスクには、バイデン氏の複数の連絡先はもちろん、ビル・クリントン元大統領、ヒラリー・クリントン元国務長官、ナンシー・ペロシ下院議長らを含む、政府高官らの電話番号やメールアドレスのリスト(英紙デーリー・メール報道)や、「中共マネーで送る奔放な性生活」と揶揄(やゆ)されたハンター氏とみられる映像まで含まれていたという。

 膨大な量の電子メールや文書ファイルを分析したIT専門家は「この仕事を20年間してきたが、(ハンター氏の)パソコンとデータが、いかなる方法でも妨害、変更、追加された兆候はない」と述べている。

 皮肉なことに、米主要メディアが沈黙し、交流サイトが拡散を制限したことが、バイデン父子の疑惑をネット上で広め、結果的にトランプ支持者を増やし、最後の追い上げを激しくしたようだ。

 ハンター氏のビジネスパートナーだったトニー・ボブリンスキー氏は先月22日、記者会見を開き、「バイデン氏が、ハンター氏の海外事業について知らないと言うのはウソだ」と証言した。

 ボブリンスキー氏は、ハンター氏とともに、中国共産党や人民解放軍と関係があるエネルギー複合企業「中国華信能源(チャイナ・エナジー)」と共同で設立した合弁会社のCEOを務めた人物である。「ハンター氏は中国華信の常務だった」とも述べている。

 中国華信の葉簡明会長は、世界のVIPに寄り添う「謎の人物」として注目されてきた。米紙ニューヨーク・タイムズは以前、葉氏について、「習近平国家主席が推進する政策に基づき、ビジネスチャンスとしている人物」と指摘した。葉氏自身、「われわれは(中国の巨大経済圏構想)『一帯一路』構想の、最も積極的な実践者だ」と豪語していた。

 葉氏は2年前、表舞台から姿を消した。中国当局の取り調べを受けているとの話も流れた。バイデン父子と深くつながる「チャイナ・ゲート」の鍵となる人物だったからではないのか。

 トランプ氏は先月29日、激戦区であるフロリダ州で行った選挙集会で、「バイデン氏が選出されたら、米国を中国共産党に売り渡す」と演説した。

元ニューヨーク市長 ルドルフ・ジュリアーニ氏

 トランプ氏の個人弁護士である元ニューヨーク市長、ルドルフ・ジュリアーニ氏は「バイデン氏は、中国共産党政府と沖縄県・尖閣諸島に関する交渉を行ったが、その後、中国側のテリトリーが拡大した。中国の銀行からハンター氏関連の口座に大金が振り込まれた」と、ネット番組で証言している。

 ちなみに、ジュリアーニ氏や、スティーブ・バノン元大統領首席戦略官・上級顧問らが推薦する華人ユーチューバーは、ハンター氏のパソコンにあった政府高官らのリストについて、「中国当局に連絡リストを転送できるようにするためだった」と指摘している。

 これらが事実なら、「国家に対する裏切り」と言われても仕方ない。

 米名門紙ボストン・ヘラルドは先月27日、過去16年間の大統領選では中立的な立場をとってきたが、「トランプ氏を支持、バイデン氏の政策は非現実的である」と旗幟(きし)を鮮明にした。

 米紙ウォールストリート・ジャーナルも1日、「トランプ氏はすでに勝利している」とのタイトルの記事を発表した。

 私の在米の知人も「トランプ人気は非常に高い。バイデン氏はメディアの宣伝工作に支えられている」と語る。両陣営の選挙集会の様子をユーチューブで見れば、大差のアクセス数を含め、知人の言葉が真実を物語っていることは明らかだ。

 バイデン父子は、米国の国家安全保障だけでなく、日本を含めた同盟国も危険にさらす取引に関与していたのか。一連の疑惑について、FBIが捜査中であることも公になっている。ニューヨーク・ポストなどの報道通りなら、バイデン・ファミリーが向かう先は、ホワイトハウスではなく司法の場だ。

 ■河添恵子(かわそえ・けいこ) ノンフィクション作家。1963年、千葉県生まれ。名古屋市立女子短期大学卒業後、86年より北京外国語学院、遼寧師範大学へ留学。2020年、アパ日本再興財団が主催する、第13回「真の近現代史観」懸賞論文の最優秀藤誠志賞を受賞。著書・共著に『トランプが中国の夢を終わらせる』(ワニブックス)、『覇権・監視国家-世界は「習近平中国」の崩壊を望んでいる』(ワック)、『習近平が隠蔽したコロナの正体』(同)など多数。


【私の論評】バイデン父子は大統領選挙どころでなくなる可能性もでてきた(゚д゚)!

バイデン一家の裏を積極的に暴露したのは元ニューヨーク市長ジュリアーニ氏でした。9月24日のNEWS MAXのインタビューで、彼はバイデン氏のスキャンダルを暴き続けることで身の危険を感じたと述べました。

また、こののインタビューを通して、ジュリアーニ氏がバイデン一家の不正を早くから把握していることもわかります。彼のインタビューは9月24日で、バイデン一家のスキャンダルは10月14日にニューヨーク・ポストによって公開され、それはちょうどジュリアーニ氏が言った「次の3週間」に当てはまりました。

ジュリアーニ氏は米国で有名な政治家であり、大胆な行動派です。彼は1994年から2001年までニューヨーク市長を務め、最も優れた政治的業績の1つは、ニューヨークでの凶悪犯罪を撲滅したことです。



彼が市長に就任するまで、ニューヨーク市の治安は悪く、マフィアが横行していました。連邦検察官兼ニューヨーク市長在任中、ニューヨークの「五大ファミリー」で有名なマフィアのトップを一掃し、ニューヨークの公安状況を一新しました。 9.11事件の中で、彼は市長として高い危機管理の能力を発揮し、卓越した業績と相まって、アメリカ人から「米国市長」の称号を与えられました。

現在、彼はバイデン一家を標的にしていますが、把握した証拠は、クリントン一家や他の著名な米国人家族も含め、3、4、またはそれ以上の家族に及んでいます。

ジュリアーニ氏は10月18日のインタビューで、バイデン氏の息子のパソコンにある、約18,000通のEメールと24,000枚の写真などのデータを分析中で、ハンター氏を有罪にするための十分な証拠を得たと話しました。

それはRICO法案(犯罪組織取締法)によって実現させることができるといいます。過去にも、彼はこのRICO法案を使用して、ニューヨークの5つの主要なマフィアファミリーを取り締まりました。当時状況の裏付けは、約200人のマフィアメンバーの4,000時間の録音記録のみでしたが、現在バイデン氏息子自身のパソコン上の大量の資料のほか、6人のウクライナ人の証人もいます。

ジュリアーニ氏は、バイデン氏が自ら罪を認める時期が来たと述べました。悪の勢力との戦いで卓越した経験を持つジュリアーニ氏は、バイデン氏などの腐敗な政治勢力と戦うに最適な人物だと云えます。

現在、バイデン一家に関するスキャンダルは絶えずほじくり出されています。10月19日、アメリカの保守派作家、ウェイン・ルート氏は、友人がハンター・バイデン氏のパソコンにある衝撃的な動画や画像を見たとツイートし、思春期前の少女との「性行為」は強姦であるとし、動画の中に映ったハンター氏が強姦したのは中国人少女だと明かしました。

ルート氏の友人はジュリアーニ氏と同様に、この動画は中共も所有していることから、中共がバイデン一家を脅迫することは容易であり、決して、バイデン氏を大統領にさせてはいけないと警告しました。

最新情報によると、デラウェアの修理店のオーナーから、ハンター氏の3台のパソコンを受け取ったFBIがパソコンの中身を調べた際、そのうちの1つは子どもに対する強制わいせつに関連していることが判明しました。また、児童ポルノ調査に長年携わってきたFBI調査員は、パソコンの内容を調査するための召喚状を出していましたが、その後の進展は不明です。米議会は、同件についてFBIの調査結果を求めています。

また、最近メディアの注目を集めている別の事件があります。 「外交政策」誌のウェブサイトや「ビジネスインサイダー」は2018年に、2010年から2012年の間に中国本土の約30人のCIA情報提供者が中共当局によって処刑されたと報じました。

元米国家安全保障委員会のメンバーであるリッチ・ヒギンズ氏は10月18日のツイートで、2010年4月7日から9日まで、ハンター・バイデン氏が中国で収益を上げ始め、同年、中国にいたアメリカの工作員は全員が逮捕され、処刑されたと述べ、「国家を裏切る」という厳しい言葉で疑問を投げかけました。バイデン氏のスキャンダルが続出する時期に、一般の人と異なる立場にいるヒギンズ氏の投げかけた疑問は人々の注目を集めました。

元米国家安全保障委員会のメンバーリッチ・ヒギンズ氏

現在、イギリスのメディアでも、オバマ・バイデン政権の他の政府機関を巻き込み、バイデン一家の不正を暴露し始めています。英国の「デイリーメール」の報道によると、バイデン氏の副大統領の期間の2012年から2014年にかけて、息子のハンター氏は、カザフスタンの富豪、ケネス・ラキシェフ氏と取引を開始しましたが、ラキシェフ氏は現国家安全保障委員会の委員長であるカザフスタン前大統領ヌルスルタン・アビシュリ・ナザルバエフと密接な関係にあります。

「デイリーメール」は最近、カザフスタンの反汚職活動家からのメールで、ハンター氏はラキシェフ氏のニューヨーク、ワシントンD.C.、ネバダなどの鉱山会社への投資を支援したことに加え、当時の国務長官ジョン・ケリーの娘で、映画プロデューサーのアレクサンドラ・フォーブズ・ケリー 氏への「100万米ドル」(約1億483万円)の投資も支援したと告げました。

これらの続出するスキャンダル、特にハンター氏のパソコンの資料に関して、一部の民主党員は先週、これはロシアによる撹乱行為であり、誤りのプロパガンダであると主張し始めました。しかし、10月19日、アメリカ国家情報長官ジョン・ラトクリフ氏は、メディアによって公開されたハンター氏のパソコンの情報はロシアとは関係がないことを明らかにしました。

トランプ氏の支援集会では、有権者は「バイデンを投獄せよ」と叫んでいました。これらのスキャンダルが次々と公開され、強硬派ジュリアーニ氏の指揮が加わったことで、バイデン氏の立場は極めて危うくなります。

今後、バイデン親子は、大統領選どころではなくなるかもしれません。この際ですから、他の悪党も白日のもとにさらし、罰するべきです。米国の大統領選は当然のことながら、日本などの同盟国の安全保障などにも大きな影響を及ぼします。誰が大統領になろうと、司法当局はこの問題を追求し続けて欲しいものです。

トランプ大統領は日本時間4日午後、ホワイトハウスで演説し、一方的に事実上の勝利宣言を行った。「われわれはこの選挙に勝つ。ただ、わたしからしたら、すでに勝ったも同然だ」
トランプ大統領は、フロリダ州やオハイオ州などの激戦州で次々に勝利を確実にしたことを指摘し、「勝ったも同然だ」と強調しました。

また、郵便投票については、最高裁に訴えて集計を止める考えを示しました。

トランプ大統領はこれまでのところ、獲得選挙人がまだ過半数に至っていないですが、激戦州で次々と勝利を確実にしていて、勝利に自信を深めた形です。

一方で、ラストベルトと言われる中西部のミシガン州、ウィスコンシン州、ペンシルベニア州の開票作業はまだ続いていて、この3つの州をバイデン候補が取れば形勢は逆転する可能性があり、訴訟合戦へとつながる可能性も出てきました。



2020年11月3日火曜日

中国、2025年までに内部崩壊する可能性も…未曾有の少子高齢化、工場と人の海外逃避―【私の論評】中国は少子化で発展できなくなるのではない!中共が体制を変えないからだ(゚д゚)!

 中国、2025年までに内部崩壊する可能性も…未曾有の少子高齢化、工場と人の海外逃避


 中国共産党の重要会議である第19期中央委員会第5回全体会議(5中全会)が10月29日に閉幕した。

 会議に集まった約200人の最高幹部により「第14次5カ年計画」の骨格が固められたが、新たな5カ年計画の特徴は「2つの循環」である。貿易を柱とする「外」と消費を柱とする「内」の2つの経済循環で成長を維持する考えだが、その重点は「内」にある。中国指導部は今年5月、米国をはじめとする西側諸国との経済的デカップリング(切り離し)を想定し、国内経済(内循環)を柱とする新発展モデルを提唱していた。

 1978年に故トウ小平が掲げた「改革開放」の重点は「外」にあったのはいうまでもない。米国との良好な関係の下で中国は積極的に外貨を取り込み、「世界の工場」として輸出主導による高度成長をなし遂げた。今年の中国経済はGDPが100兆元(約1500兆円)を突破する見込みである。今回打ち出された「2つの循環」は、米国との対立の長期化に備え、消費など内需を拡大し、自力での安定成長を目指すものであり、改革開放からの大きな路線転換を図ろうとするものである。

「一人っ子政策」による人口構成のアンバランス

 だが「2つの循環」路線の成功の鍵を握る個人消費は、中国経済にとっての長年の懸案である。中国の昨年の個人消費の対GDP比は39%である。米国の68%、日本の55%、ドイツの52%に比べると格段に低いが、その理由は所得格差の大きさにある。

 中国の所得分配が非常に不公平であることは周知の事実である。人口の約半分にあたる7億1000万人の国民は、月収2000元(約3万2000円)以下で生活をしている。中国の高度成長を支えてきた2億9000万人の農民工の収入も、2015年以降、減り続けており、所得格差が改善されない限り、個人消費が伸びることはない。

 個人消費が今後さらに低迷する要因がある。少子高齢化である。中国民政部は10月23日、「2021~25年までの5年間に60歳以上の高齢者の人口は3億人を超える」ことを明らかにしたように、「少子高齢化」が急速なペースで進んでいるのである。

 「総人口に占める65歳以上の割合が14%を超える」社会を国連は「高齢社会」と定義づけているが、中国の民間シンクタンクは10月、「2022年に総人口に占める65歳以上の割合は15%以上になる」と予測した。

 日米など先進諸国が高齢社会となった時点の1人当たりのGDPは、2万ドルをはるかに上回っていたが、これに対して中国の1人当たりのGDPは1万ドル程度にとどまっている。中国社会は「豊かになる前に老いる」という事態に直面しているのである。

 中国の人口構成に極端なアンバランスをもたらしたのは、いわゆる「一人っ子政策」である。中国政府は2016年から「二人っ子政策」の実施を決定したが、多くの国民は住宅ローンや医療費、教育費などの負担が大きく、「産めても養えない」との不安を抱えており、出生数が増える兆しが見えない。2019年の出生率は、1949年以来の過去最低を記録する有様である。

 中国の生産年齢人口(15歳~64歳)は、2013年をピークに減少しているが、「中国の総人口も2018年から人口減少が始まった可能性がある」とする海外の研究がある。中国政府系シンクタンクの社会科学院は2019年1月、「人口減少は早ければ2027年から始まる」としている。社会科学院の予測の元になっている出生率は1.6との前提だが、「実際の出生率は1.05前後ではないか」との意見が多い。

 日本では、生産年齢人口が1995年、総人口も2011年から減少し、人口動態が経済成長にマイナスに働く「人口オーナス」が常態化している。中国でも少子高齢化が政府の大きな負担となりつつある。文革などで伝統文化が破壊されたことから、家族で高齢者を扶養する風習がなくなり、政府が主体となって介護サービスを提供する状態になっているのは日本と同様である。中国の社会保障費(介護を含まず)は国家歳出の2割以上を占め、その伸びは国防費を上回っているが、実態に比べて財政の投入量ははるかに少ない。このような事情から、「中国経済も2015年に人口オーナス時代に突入したのではないか」との懸念が出始めている。

「外循環」にも赤信号

 実現の目途が立たない「内循環」だが、中国経済をこれまで支えてきた「外循環」にも赤信号が点滅し始めている。人件費の高騰に加え、米国との貿易摩擦の激化により、外資企業が中国から相次いで撤退していることから、移転先であるベトナムに密入国しようとする中国の失業者が続出しているのである(10月28日付米ラジオ・フリー・アジア)。中国政府は国境付近に、長さ数百キロメートル、高さ2メートル以上の壁を建設せざるを得ない状況に追い込まれているが、このことは中国経済の悪化が予想以上に深刻化していることの証左だろう。

 5中全会では党幹部の人事が発表されなかったことから、習近平総書記が2022年以降も続投することが確定したとされている。「中国共産党の存亡に最も危機感を持っているのは習氏だ」と言われているが、「内外から批判が高まっている習氏が最高指導者の地位を他の人に譲らない場合、党内の権力闘争が一段と熾烈になる」との心配の声も上がっている。ネット上では「習氏は中国の崩壊を加速させる『総加速師』」と揶揄されている。

 「今後10年以内に米国を超え世界一の経済大国となる」とされている中国だが、「内外からの圧力の高まりで一瞬の内に瓦解してしまう」というリスクが高まっているように思えてならない。

(文=藤和彦/経済産業研究所上席研究員)

【私の論評】中国は少子化で発展できなくなるのではない!中共が体制を変えないからだ(゚д゚)!

少子化や人口減少は「国難」ではなく、そこから生じる「弊害」はいかようにも対処可能で、むしろ少子化や人口減少の危機を過剰に煽ることが問題解決を誤らせることになります。これは、日本に限らず中国でも、他の国でも同じことです。

そもそも人口減少問題は、大した問題ではありません。国力を国内総生産(GDP)と定義すると、「GDP=みんなの平均給与✕総人口」となります。

人口が減ると国単位でのGDPも減るのは当たり前ですが、実生活では「だからそれがなんなの?」という話に過ぎません。

なぜなら人口減少は、GDP成長率に対して最大7%の影響がでるかどうかの程度に過ぎず、ほとんど影響はないからです。

たとえば人口減少が経済にマイナスに作用する「人口オーナス」は、女性や高齢者の積極登用やAIによる生産性向上によって回避できます。

さらに、ひところ国内ではやった「デフレは人口減少が原因」説にも根拠がありません。デフレ、インフレは純粋に貨幣の流通量の問題であつて、人口減少が原因ではありません。

極端な話をしますが、現在日本の人口が何かの原因で、半分になったとします。そのときに日銀が何もしなかったらどうなるでしょう。それはインフレです。なぜなら、人口が半分になっても、日本国内に流通している貨幣は変わらずそのままだからです。

逆に、現在日本の人口が何ら化の原因で2倍になったとします。そのときに日銀が何もしなかったらどうなるでしょう。それは、デフレです。なぜなら、人口が半分になつても、日本国内に流通している貨幣は変わらずそのままだからです。

そうはいっても、これをなかなか信じない人もいるでしょう。そういう方々のために、以下に物証をあげておきます。

以下のグラフは1870(明治3)年から20世紀の終わりまで125年間の人口と実質GDP(国内総生産)の推移を比較したものです。このグラフからマクロ経済の成長が決して人口によって決まるものではないということが見て取れると思います。


この間、GDPと人口はほとんど関係ないほどに乖離しています。戦後の日本経済にとって最大のエピソードといってもよい高度成長期(1955~1970)には、経済は年々10%成長したが、人口の伸びは約1%程度でした。1%という数字は、全人口、生産年齢人口、労働力人口、どれをとっても大差はありません。毎年10%-1%=9%ずつ「1人当たりの所得」が上昇していたのです。

グラフは20世紀末で終わっていますが、この図に描かれている125年間は人口が増えている時代です。人口が減り始めたら、どうなるか分からない、と思った人がいるかもしれません。

これはもっともな疑問です。人口減少はたしかにそれ自体としては経済成長にとってマイナス要因です。しかし、先進国の経済成長は人口要因よりも「1人当たりの所得」の上昇によってもたらされる部分のほうが大きい、という結論は、人口減少の時代にも人口増加の時代と同じように成立するのです。

では、人口が減り始めた人口が減り始めた現在の日本経済の実績を見てみましょう。厚生労働省社会保障審議会・年金財政における経済前提に関する専門委員会(2017年10月6日)の資料にある過去20年間(1996-2015)の「成長会計」の結果は以下の通りです。


「成長会計」とは、実質GDPの成長率を資本投入・労働投入と、それでは説明できない残差としての「全要素生産性」(Total Factor Productivity、頭文字をとりTFP、通常イノベーションないし技術進歩を表すものと解釈されている)、3つの要素それぞれの貢献に分解する手法です。

さて、結果をみると、1996年から2015年まで、この間には1997~1998年の金融危機、2008年のリーマン・ショック、2011年の東日本大震災などさまざまな出来事がありました。にもかかわらず、20年間の平均成長率は0.8%、そのうち資本投入の貢献分が0.2%、労働投入はマイナス0.3%であり、TFPの貢献が0.9%となっています。

注目されるのは、労働投入の貢献分マイナス0.3%です。この期間、人口は減り始め、それに先立ち労働力人口は減少してきましたから、労働の貢献は0.3%のマイナスになっています。しかし、TFP(イノベーション)の貢献0.9%により日本経済は年々0.8%ずつ成長しました。

人口が減っているから1人当たりに直せば、1%を超えます。人口減少それ自体はマイナス要因ですが、先進国の経済成長にとっていちばん重要なのは、やはりイノベーションなのです。

そのうえで、日本国内では出生率の推計や人口減少の動向も「想定内」に収まっており、人口は減るでしょうが、出生率もこれからほとんど横ばいでしょうから、社会保障の設計には支障は何もないでしょう。

では、大した問題ではないはずの人口減少が、なぜこれほどまで「危機」とされるのでしょうか。

人口が減り続けたら困るのは地方公共団体の関係者でしょう。なぜなら人口が減ると、行政規模の簡素化のため市町村を合併しなければならないからです。

また人口減少の危機を煽る世間の評論家も、なんでも人口減少のせいにすれば、誰も傷つかないので、いい方便になります。

こうした人たちは、人口減少の危機を高唱することで、本を売り、名前を売り、政策を売りこむことができます。

実は政府も「人口増加のストーリーを地方公共団体の関係者に示しておけば、彼らはきっと満足するだろう」というのが本音であり、出生率が上がらず、人口問題政策が失敗しても、何らダメージはありません。

それは歴代の日本政府が「人口減少は大きな問題ではない」と考えているからであり、働き方改革や子育て安心プランなどの少子化対策も、「人口減少を不安視している国民の要望に応える」という政治的な意味があって取り組んでいるに過ぎないからでしょう。

要するに少子化対策や人口減少対策は、人口減少危機論に煽られた国民の不安に応えるポピュリズム的政策にすぎないのです。

さて、以上は日本について掲載しました。結局のところ、日本では人口の増減そのものは、経済にさほど影響を与えないということです。

では、中国はどうなのでしょうか。私自身は、中国が「一人っ子政策」をしばらく間実行したために、少子高齢化が過度に進んだということがあり、これは人口問題だけではなく、特定の世代が少なくなったという問題を生んだことは間違いないとは思います。

しかし、特定の世代が少なくなったことは経済自体にはさほど大きな問題ではないです。たとえば、最近は緩和されたようですが、一人っ子政策の影響で、一時大学の教員が少なくなったということもありましたが、それは高齢になった教員でも働ける人は働けるようにして何とかしのいできました。これは、多くの分野でも同じように対応してきたのだと思います。

しかし、人口が減れば、スケールメリットを享受できなくなることも事実です。たとえば、南シナ海の中国の軍事基地に兵士を派遣しようとした場合、これに人口の1%を充当しようとしたとします。これは、全体の人口が多いほうがより多くの兵士を派遣できることになります。これは、軍事だけではなく、多くの産業にもあてはまることかもしれません。

しかし、以上のようなことは、AIなどか発展した現在では、経済に関していえば、いずれもさほどのもんだいではないと思います。やはり、個々の人民の経済を考えた場合は、人口そのものは関係はないようです。

これから、人口が減ったにしても、あるいは逆に増えたとしても、現在の中国の1人当たりのGDPは1万ドル程度という状況はさほど変わらないでしょう。この状況は俗に言われる、中進国の罠というものです。

これは、発展途上国が長足な経済発展をして中進国になっても、なぜかその後1人あたりのGDPは1万ドル台で止まってしまい、そこからなかなか発展しないというものです。実際多くの国々がそうです。この例外は、日本とアルゼンチンだけです。

日本は、中進国の罠から逃れて、先進国となりました。もう一つの例外は、アルゼンチンです。アルゼンチンは、先進国から發展途上国になりました。先進国と、発展途上国の垣根を超えた事例はこの2つしかありません。中国も例外とはならないでしょう。

アルゼンチン・タンゴは、ラプラタ川流域近辺で演奏されるタンゴの一伝統様式を指す

ただし、中国にもチャンスはあります。それは、中国でもある程度民主化を推進し、経済と政治の分離を行い、政府が経済に直接介入できないようにし、中国共産党が中国憲法の上にあるという現状の体制を改め、法治国家に転身するのです。

そうなると、何が変わってくるかというと、いわゆる経済・社会的に中間層といわれる人々が多数でてきます。この中間層といわれる人々が、様々な社会・経済活動を自由に展開するようになります。この活動が様々、社会のあらゆる場所でイノベーションに結びついていくのです。

富裕層だけでも、貧困層だけでもイノベーションは起こりにくいです。富裕層はそもそも経済的には満足しているので、それ以上の富を欲することもなく、イノベーションの担い手にはなり得ません。貧困層は目の前の生活に窮しているのですから、イノベーションなど思いもよりません。中間層は、イノベーションによって富を得ようとします。だから、多数の中間層が存在する社会ではイノベーションが起こりやすいのです。

これが、日本が通って来た道であり、それに先駆けて他の先進国が歩んで来た道でもあります。先進国の経済成長にとっていちばん重要なのは、やはりイノベーションなのです。だから、先進国は中国も経済的にある程度豊かになれば、体制を変えるだろうと思ってきたのですが、結局そうはなりませんでした。

中国もイノベーションの取り組みには熱心なようですが、政府が掛け声をかけ、それだけでなく金も出したということで今までの中国の経済力はついてきたのですが、一番の弱点は世界の知的所有権を盗んで成長してきたということです。

これをどこかで転換して、自前でイノベーションを起こせるようにしなければならないのです。それも、社会のあらゆる場所において、そうしなければならないのです。そうでないと、中国共産党が関わっている部分だけで迅速なイノベーションが起こっても他の大部分ではイノベーションが停滞したままになります。そのため、社会的な不経済・非効率が温存されてしまいます。これが、中進国の罠から抜け出られない原因となってしまいます。

先程も述べたように、民主化、政治と経済の分離、法治国家化は避けて通れないのです。しかし、そうすれば中国共産党は統治の正当性を失い、崩壊します。中国共産党を崩壊させても、中国を富める国、強い国にするつもりがなければ、今後中国は中進国の罠に嵌ったまま、終わるでしょう。

しかし、これを実行しない限り中国は「内外からの圧力の高まりで一瞬の内に瓦解してしまう」か、中進国の罠から逃れることができず、どちらの道を歩んでも図体が大きいだけの、凡庸なアジアの独裁国家にとどまることになるでしょう。それだけ、発展途上国から先進国に転身することは、難しいことなのです。

米国の中国への制裁は、もともとこのような状況の中国の衰退を早めるだけの話であって、早晩中国はそうなる運命だったのです。

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2020年11月2日月曜日

【独話回覧】米大統領選後の景気 どちらが勝つにせよ、株高基調維持ならコロナ不況回復 経済動向見るとトランプ氏圧勝だが…バイデン氏がつけ込む“隙”も―【私の論評】菅政権もトランプのように、財政赤字に対する日本人の常識を覆すべき(゚д゚)!

 【独話回覧】米大統領選後の景気 どちらが勝つにせよ、株高基調維持ならコロナ不況回復 経済動向見るとトランプ氏圧勝だが…バイデン氏がつけ込む“隙”も



 いよいよ米大統領選の投票日が迫った。米国の世論調査はいずれも民主党のバイデン前副大統領が共和党のトランプ大統領を8%程度の幅でリードしている。現職大統領が再選に失敗したとしたら1992年のブッシュ父大統領以来となるが、経済面での実績が世論の現職支持に結びつく度合いが弱いというのは、拙論の記憶にある限り初めてだ。

 トランプ氏は景気の立て直しに成功したが、中国・武漢発の新型コロナウイルス禍対策の印象が悪く、評価を下げた。トランプ氏が「チャイナウイルス」憎しの一念をますます募らせるのも無理はない。

 経済こそは、これまで現職大統領の再選を左右してきた。古くは80年、民主党のカーター大統領が共和党のレーガン氏に敗れた。当時は第2次石油危機を受けて、高インフレと不況が同時並行していた。レーガン大統領は84年の大統領選では、有権者に向かって「Are you better off?(あなた方の暮らし向きはよくなったか)」と問いかけ、圧倒的な「Yes(そうだ)」との反応を得て、大勝した。

 92年、再選をめざすブッシュ父大統領が民主党のクリントン氏に敗れた主因も経済問題だ。景気が思わしくないのに「増税」の可能性を否定せず、「ジョブ(職)」を連呼して雇用促進を目指し、訪問した日本で米国製品の売り込みを図ったものの、宮沢喜一首相との晩餐(ばんさん)会で倒れ込んだ映像を全米のTVに流されてしまった。

 クリントン氏は経済重視を唱えて、カリフォルニア州シリコンバレーのハイテク業界やニューヨーク・ウォール街の金融資本の支持を取り付けた。ホワイトハウスの主に収まると、経済面でライバル視する日本の市場をこじ開けると称して日本たたきを画策したが、結果は不発。とみるや、中国市場に着目し、日本を飛び越えて親中路線を敷いた。

 日本にとってみれば、悪夢のような民主党政権だったが、大統領任期を終えたクリントン氏を超高額の報酬を支払って日本の民間が招いたのも、日本人として情けなく思ったものだ。しかも親中路線は以来、ブッシュ子政権、オバマ政権と続き、中国の脅威を膨張させてきた。

 2008年9月のリーマン・ショック後の選挙で共和党のマケイン候補に勝った民主党のオバマ大統領は12年に再選を果たした。景気回復は極めてなだらかだが、米連邦準備制度理事会(FRB)による量的緩和政策によって株価が上昇軌道に乗ったことが背景にある。

 トランプ政権はどうか。米国に雇用やビジネスを取り戻す「アメリカ・ファースト」を掲げ、4年前に民主党のヒラリー・クリントン氏を接戦の上で破ったのは記憶に新しい。筆者はちょうどその投票直前に早稲田大学の埼玉県稲門会総会に呼ばれて講演したが、経済の流れはトランプ氏を指し示していると説明しながら、彼が勝つとまでは言わなかったことが、ちょっと悔やまれる。

 今回は、経済動向からすれば、トランプ圧勝、再選になるはずだ。

 グラフはリーマン・ショック後の米株価と米実質国内総生産(GDP)を指数化して推移を追っている。株価は一時的な調整局面を経ながらも、上昇軌道に乗ったままだ。下落時はFRBによる利上げが影響しているのだが、コロナ・ショックは株価に関する限りはどこ吹く風どころか、追い風にすらなっている。

 株価が米国の実体経済動向と連動する度合いが高いというのが、拙論の分析であることは本欄などで述べてきた。株価と実質GDPについて、統計学でいう相関係数(完全相関値は1)は08年9月からコロナシ・ョック勃発時の今年3月までの期間でみると、0・98と完全相関に近いのには驚かされる。

 相関係数自体は因果関係を示すわけではないが、家計や年金基金の株式資産の運用比率は高く、株高は個人消費を押し上げる。株式市場が活況だと、企業も設備資金をやすやすと株式市場から到達し、新規分野に投資する。

 コロナ感染拡大が人の動きを止め、飲食サービス業などの雇用の重圧になっていても、株高は景気の先行きを明るくする。トランプ氏にしてみればしてやったり、との思いもあり、そのことが、コロナ対策についてのぞんざいな発言につながったのではないか。

 もう一つ、株高は富裕層をますます富ませるが、コロナ不況に苦しむ中低所得層との格差が拡大する。米国社会の分断問題深刻化の要因であり、トランプ氏はそれに対応しきれていない。コロナ対策と合わせた、トランプ政権に対するネガティブな印象がバイデン氏につけ込ませる隙を与えている。

 さて、大統領選後の米景気はどうなるか。大統領の座をどちらが得るにせよ、グラフが示す通り、株価さえ上昇基調が維持されれば、コロナ不況からの回復は確保されるだろう。

 ■田村秀男(たむら・ひでお) 産経新聞社特別記者。1946年高知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後の70年日本経済新聞社入社。ワシントン特派員、米アジア財団(サンフランシスコ)上級研究員、日経香港支局長などを経て2006年産経新聞社に移籍した。近著に『検証 米中貿易戦争』(ML新書)、『消費増税の黒いシナリオ デフレ脱却はなぜ挫折するのか』(幻冬舎ルネッサンス新書)など多数。

【私の論評】菅政権もトランプのように、財政赤字に対する日本人の常識を覆すべき(゚д゚)!

トランプ氏が経済政策面でもたらした最大のインパクトは、自らの想定とはかけ離れたものになるのかもしれないです。それは、財政赤字に対する米国人の常識を覆した、ということです。

トランプ氏は企業や富裕層に対して大幅減税を行う一方で、軍事支出を拡大し、高齢者向けの公的医療保険「メディケア」をはじめとする社会保障支出のカットも阻止し、財政赤字を数兆ドルと過去最悪の規模に膨らませました。新型コロナの緊急対策も、財政悪化に拍車をかけています。

これまでの常識に従うなら、このような巨額の財政赤字は金利と物価の急騰を引き起こし、民間投資に悪影響を及ぼすはずでした。しかし、現実にそのようなことは起こっていません。トランプ氏は財政赤字を正当化する上で、きわめて大きな役割を果たしたといえます。


米国では連邦政府に対して債務の拡大にもっと寛容になるべきだと訴える経済学者や金融関係者が増えています。とりわけ現在のような低金利時代には、インフラ、医療、教育、雇用創出のための投資は借金を行ってでも進める価値がある、という主張です。

もちろん、財政赤字をめぐる対立軸が消えたわけではありません。民主党が政権を握ったとしても、財政赤字を伴う政策を提案すれば、共和党が反対に回るのは間違いないでしようし、その逆も然りです。ただ、連邦政府の債務が拡大すれば大惨事になるとの警告は、もはや以前のような重みをもって受け止められることはなくなるでしょう。

最近まで、ほとんどのエコノミストは、政府が平常時にささやかな規模以上に借り入れを膨らませる行為を非難してきました。彼らはおおむね政府を信用せず、公的債務が民間投資を圧迫するだけでなく、物価を高騰させ、景況感を冷やすと証明できる理論を持っていました。ところが今や、財政赤字はそれほど悪い存在ではありません。むしろ総じて良いとの見解が優勢です。

古い考え方が死に絶えたわけではありません。政府はいわば国家という大きな家族で、収入以上にお金を使うべきでないという理屈は直観的に訴えかける力があります。ドイツのメルケル首相も、こうした価値観を「シュバーベン地方の主婦」たちの倹約精神になぞらえています。

メルケル首相

「財政赤字悪玉論」により、ユーロ圏加盟国は平常時に財政赤字を国内総生産(GDP)比3%までに抑えるよう求められ、ドイツは「債務ブレーキ」と呼ばれる制度を導入。財政赤字がGDPの0.35%に達すると、原則としてさらなる政府借り入れを禁じているほどです。

依然として少数の政治家(主としてドイツ人)は、大規模な財政赤字を計上するのは単純によろしくないと考えています。一部の有名エコノミストも同意見です。米大統領経済諮問委員長を務めたクリスティナ・ローマー氏は最近、大幅な財政赤字の持続は「強力かつ健全な超経済大国になるための方策にならない」と発言しました。

ところが、ほぼ全ての面で判断基準は変わりつつあります。今ある数々の事実は、旧理論と相いれないのです。

米国、日本、ドイツ、フランス、英国、イタリア、カナダという先進7カ国(G7)を検討してみます。国際通貨基金(IMF)のデータに基づいた2007年時点のG7の財政赤字の対GDP比は平均1.5%で、カナダとドイツは黒字でした。そして世界金融危機が発生後の3年間で同平均は7%を超え、15年以降も3%を下回っていません。

しかし財政赤字が明らかに成長を損なった形跡はありません。G7の国民1人当たりGDPの年平均成長率が下振れしたのは確かです。01年から07年まで1.4%でしたが、14-19年は1%になっています。もっとも01-07年は持続不可能な金融活動によって水増しされ、14-19年は貿易戦争と先進国の全般的な景気減速が圧迫要因になりました。

G7の物価上昇率の平均は、まさに金融危機が勃発した08年に2.9%とピークを付けました。翌年には0.3%に鈍化し、11年に2.6%に戻った後、また下振れしました。IMFは19年の平均を1.4%と見込んでいます。インフレを起こす要因を本当に理解している人はいませんがが、財政赤字が「容疑者リスト」に入っているようには見受けられません。

財政赤字を嫌う人々は、いつでも自分たちの思想を正当化する論理を見つけてくることができます。実際、足元で無害に思われる借り入れが、長期的な問題を蓄積させているのかもしれないです。

IMFの計算で米国の今年の財政赤字はGDPの5.6%、つまり1兆ドルを超える規模で、長らく予想されていた経済への悪影響がいよいよ顕在化する恐れもあるかもしれませんが、いまのとこ全くそのような兆候はありません。

今後、財政赤字の功罪を巡る理論的な闘争は激化するでしょうが、思考のバランスを取る助けになってきたのは現実的な心配です。中央銀行は今、景気後退に対処して利下げする余地が乏しいです。債券などの資産を買い入れて金融市場に新たな資金を投入することは可能とはいえ、そうした手法の効果はまだ証明されていません。だから財政支出拡大の方が、景気対策として妙味があるように見えます。

理論的な見地からも情勢変化は歓迎されるべきです。政府は実際には「非常に大きな家計」ではなありません。通貨当局としての最終的な権限を持ち、経済活動を維持するのに十分なお金を確実に流通させる責任を負っています。通貨創造の任務はほとんどを民間銀行に請け負わせているものの、彼らが満足に機能しなくなった場合は、政府が乗り出すことができるし、乗り出さなければならないのです。

政府向けのローンは、全てのローンと同様に基本的に新たなお金を生み出すので、財政赤字は旧理論で想定されたような、民間投資に向かう資金を奪うわけではありません。また政治的に有能な政府であれば国内で借り入れを賄い、債務残高がGDP比で高水準になっても維持できます。その上、本来使われなかった経済的な諸資源を活用する財政支出なら、赤字であってもインフレを醸成させるよりも生産を押し上げるでしょう。

財政赤字についてもっと柔軟になるべきだとの考え方を受け入れる点では、エコノミストよりも有権者や政治家の方が積極的なようです。追加的な財政支出は、有益なインフラ整備の投資を後押しし、貧困を減らして質量両面で雇用状況を改善してくれます。さらに次の景気後退の到来時期を遅らせ、その深刻度を和らげてくれる可能性もあります。さすがのドイツでさえ、財政赤字への抵抗感が弱まっているのも、むべなるかなと言えそうです。

当然リスクはあります。財政赤字は適度な規模なら大抵は好ましいですが、危険な存在になり得ます。アルゼンチンやジンバブエの事例で分かるように、歯止めなしの通貨発行は、最終的に制御不能のインフレをもたらします。先進国で40年もディスインフレが続いた後で、狂乱的な物価高騰などは想像しがたいです。それでも政治家が選挙で勝つことに執念を燃やし、彼らを抑制する財政規律が存在しない世界では、インフレの暴走が現実に起きるかもしれないです。

ただ、先進国においては、物価目標というものがあります。日本なら、2%です。これは、政府がどのように大規模や金融緩和や積極財政をしようと、物価上昇率が2%未満であれば、安全ということです。

それにしても、トランプ氏は財政赤字は決して悪いことではないということを知っていたというのは、やはりトランプ氏のバックグラウンドが政治家ではなく、実業家だったからでしょう。

トランプ大統領

企業でもある程度規模の大きい企業なら、企業の財政赤字を家計の赤字のように即悪いことなどとは考えません。借金をしてでも、場合によっては、企業規模を増したり設備投資をします。それで企業業績を伸ばし借金を返せれば、何も問題はありまません。

ましてや、政府の場合は、企業などよりもはるかに規模は大きいし、さらには、生身の人間と比較すれば、不死身のような存在ですから、ある程度の借金をしても全く問題はないのです。

それを身をもってトランプ氏は示したといえます。日本でも現在政府が国債を発行して、日銀がそれを引き受けるという形で、政府がコロナ対策に要する資金を調達していますが、これも全く問題はありません。日本は、デフレ気味なのですから、まだまだ余裕があります。物価目標2%にはまだ程遠いです。仮に2%以上になれば、すぐにこれをやめ、金融引締や緊縮財政に転じれば何の心配もありません。

日本の菅政権も、トランプ氏のように、財政赤字に対する日本人の常識を覆すべきです。2%の物価目標に達するまで、国債を発行し日銀はそれを引き受け、従来では考えられなかったほどの規模の対策を実行してほしいものです。

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