2020年12月4日金曜日

米民主党、トランプ政権にクーデタ―【私の論評】必ずしも大統領選で、トランプ氏不利とは言えない状況になってきた(゚д゚)!

 米民主党、トランプ政権にクーデタ


 

【まとめ】
・トランプ大統領側は不正選挙を暴く重要なデータを得た可能性あり。
CIAがトランプ政権に反旗を翻し「クーデター」を起こしたか。 
・一部では、投票数が登録有権者数の100%をはるかに超え、不正は明らか。
今年(2020年)11月14日、米大統領選挙関連の裁判で活躍しているシドニー・パウエル(軍事)弁護士は「クラーケン(海の怪獣)を解き放て」という意味深長な言葉を口にした。

シドニーパウエル弁護士

 同弁護士の言う「クラーケン」とは国防総省のサイバー戦争プログラムの事を指すという。もしかして、トランプ大統領側がバイデン前副大統領(以下、バイデン候補)ら「反トランプ派」の違法行為を見つけ出し、犯罪の決定的な証拠を得たのだろうか。

 実は、パウエル弁護士が「クラーケン」を口にする前、米軍はドイツ政府の協力を得て、フランクフルトにあるサイトル(Scytl)社(スペイン)のドミニオン(Dominion)のサーバーを没収したと言われる。その際、CIAと米特殊部隊デルタフォースの間で銃撃戦が行われ、CIA側1人、デルタフォース側5人が死亡したという。この銃撃戦が事実ならば、大統領側は不正選挙を暴く重要なデータを得た公算が大きい。

 更に、同月30日、パウエル弁護士は、不気味な言葉を吐いた。「私が判事にすべての証拠を渡す前に、バイデン候補に最後の忠告をします。すぐに選挙を辞退しなければ、あなたは人生最期を刑務所で送らなければなりません」と。 

パウエル弁護士の警告は刺激的である。おそらく同弁護士はバイデン候補を刑務所送りにできるだけの十分な証拠を持っているのではないか。

 目下、パウエル弁護士は、ジョージア州とミシガン州で大規模な訴訟を起こしている。訴状には、数人の証言が添付され、そのうちの1人がサイバーセキュリティ専門家のナビッド・ケシャワルズニア(Navid Keshavarz-Nia)である。不正選挙の実態(主に投票集計ソフト)を暴いた同氏による宣誓証言は興味深い。

 ただ、裁判所がパウエル弁護士の思惑通り、バイデン候補に対し「国家反逆罪」のような厳しい判決を下すかどうか不明である(場合によっては、裁判に時間がかかりすぎて、来年1月20日、バイデン新大統領が誕生してしまうかもしれない)。

前述のドイツでの銃撃戦が真実ならば、なぜCIAが(票集計の不正が疑われている)ドミニオンのサーバーを秘匿しようとしたのか。CIAが「反トランプ派」へ回ったという事なのだろうか。

ならば、CIAがトランプ政権に反旗を翻し「クーデター」を起こしたと言える。一説には、FBI・米軍・司法省の大半も「反トランプ派」で、トランプ政権に対する「クーデター」に参加したという。 

一般に、「ディープステート」(「影の政府」)の存在を唱えている人達は“陰謀論者”だと決めつけられる。だが、仮に、「反トランプ派」が「ディープステート」とイコールだとしよう。そして、彼らがトランプ政権に対し「クーデター」を仕掛けたとする。もし、これが本当ならば、「ディープステート」の存在は“陰謀論者”の“妄想”と簡単に切り捨てる訳にはいかないだろう。 

さて、トランプ大統領は、共和党やQアノンに代表される“右翼”(保守派)に支えられている。一方、民主党系「反トランプ派」はANTIFA(“anti-fascist”の略称)に象徴される“左翼”(リベラル派)が支持層だろう。だとすれば、「反トランプ派」は、中国・ベネズエラ・キューバと近い理由がよくわかる。全面的ではないにせよ、お互い共鳴し合う部分があるに違いない(なお、イランやロシアの米大統領選挙関与説もある)。

昨今、米マスコミには、トランプ大統領を何が何でもその座から引きずり降ろそうという意図が窺える。そして、彼らは民主党による不正投票をまったく報じない。Facebook、Google、Twitter等も、それに追随している。不思議ではないか。

実際、激戦州の一部の郡では、投票数が登録有権者数の100%をはるかに超えている。少なくても郵便投票に関して不正があった事は火を見るよりも明らかだろう。

選挙前、米マスコミは、バイデン候補の息子、ハンター・バイデンのスキャンダルをほとんど報道しなかった。Facebook、Google、Twitterも、その隠蔽工作に加担している。選挙後、CNNは、バイデン候補が選挙で3.2億米ドル(約334億円)のブラックマネーを受け取ったと報じた。

これでは、まるで中国共産党が情報を隠匿しているのと同じではないか。いつから、米国はこのような情報統制国家に成り下がったのだろうか。面妖である。

選挙後に行われた“Biden Voter Messaging Survey Analysis”(2020年11月9月~18日)という調査結果は刮目に値する。バイデン候補に投票した16%の有権者が「もし、バイデン一家のスキャンダルを知っていたら、同候補に投票しなかった」と答えている。

最後に、12月2日現在、まだ勝者(トランプ大統領かバイデン候補)が決まっていない激戦州の状況を記しておこう。 

ペンシルベニア州(選挙人20人)では、選挙が公明正大とは言えないため、州議会が勝者を決定する事になった。他の激戦州―ウィンスコンシ州(同10人)、ネバダ州(同6人)、アリゾナ州(11人)、ジョージア州(同16人)―での法廷闘争の行方は、依然、微妙な情勢にある。

澁谷 司(アジア太平洋交流学会会長)

【私の論評】必ずしも大統領選で、トランプ氏不利とは言えない状況になってきた(゚д゚)!

澁谷 司氏

やっと Yahooニュース にこの分野の情報が掲載されました。すでに多くのネット放送局が報道していて感度の高い多くの人には周知の情報が発信されました。この記事を書いた澁谷司氏は現代支那学、安全保障専門の学者です。

澁谷 司(しぶや つかさ、1953年 - )氏は、アジア太平洋交流学会会長。元 拓殖大学 海外事情研究所 附属華僑研究センター長、元拓殖大学海外事情研究所教授です。

専門は、現代中国政治、現代台湾政治、東アジア国際関係論[。中国語が堪能で、現代中国の情報を駆使して、多数のメディアで中国共産党の崩壊への過程を論評している。

澁谷氏といえば、中国分析では定評があり、このブログでも澁谷氏の中国に関する論評を何度か取り上げたことがあります。

その澁谷氏が、以上のような文章を公にしているわけですから、確かな筋から様々な情報を得ての上でこのような記事を書いているのでしょう。私自身はこれを全くの妄想として、否定することは到底できません。

"当確"のはずのバイデン前副大統領側の不正選挙疑惑が、払拭できていません。わかりやすい例をあげると、バイデン候補自身は大勝したにもかかわらず、なぜか上下両院の議会選挙では、民主党候補が振るいませんでした。

一般的に、大統領選挙で勝利した候補の党が、議会選挙でも票を伸ばします。過去はほとんどがそうでした。ここで、民主党が躍進していれば、私自身も米国大統領選挙で今だに抱いている消化不良のような状況は払拭されていたかもしれません。

11月24日時点で、トランプ大統領側が一部の激戦州で選挙不正の訴えを起こしているため正確には、未だ大統領選挙は終わっていないのです。

それにもかかわらず、なぜバイデン陣営は政権移譲を急かすのでしょうか。無論、政権移行がスムーズに行われるべきではあります。ただし、大掛かりな不正選挙がない場合に限るのはいうまでもありません。

経営コンサルタント・鈴木貴博氏の「米大統領選でやはり『不正』があったかもしれない、ちょっとした状況証拠」(ダイヤモンド・オンライン)というコラムでは、鈴木氏は、1938年に米物理学者のフランク・ベンフォードが提唱した「ベンフォードの法則」を使って、大統領選挙の結果が不自然だと指摘しています。これに関しては、ここでは詳細は説明しませんが、興味のある方は、是非ご覧になってください。こうした不自然さもあります。

そもそも、バイデン氏、8000万票獲得した初の候補者になったということ自体が俄に新しじらません。

今回の大統領選挙では、ドミニオン社製の投票集計マシンが、全米28州で使用されました。ドミニオン社はカナダ発の投票機器製造および集計ソフトウェア開発企業ですが、そのソフトはスマートマティック製のものを使用しています。このソフトウェアは、ベネズエラの指導者が選挙の際、投票集計を操作し、権力を保持するために開発されたと言われています。

ドミニオン社製の投票集計マシン

なお、スマートマティック社会長ピーター・ネフェンジャー氏は、バイデン政権移行チームのメンバーとなっています。

トランプ大統領の顧問弁護士、ルドルフ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長によれば、2020年1月、ドミニオン社のジョン・プロスCEO(ナンシー・ペロシ米下院議長の元側近)は米議会の公聴会で、同社が製造する投票機は、中国製のLED液晶ディスプレイ、チップコンデンサ、可変抵抗器などの部品を使っていると証言したといいます。このプロス証言で、ドミニオン社が中国と繋がっていることが明らかになりました。

おそらく、中国共産党は、バイデン当選を渇望しているのではないでしょうか。なぜなら、習近平政権は、対中強硬策をとるトランプ大統領を最大の脅威と捉えているはずだからです。そのため、北京政府が米民主党と組んで、トランプ降ろしを画策したとしても不思議ではないです。

バイデン候補には認知症の疑念が生じています。選挙直前(10月24日)、同候補が「私たちはアメリカ政治史上最も広範囲で包括的な"不正投票組織"を作り上げた」と口を滑らせました。実に、"意味深長"な発言です。

上記を含むさまざまな状況証拠と合わせれば、「バイデン候補が認知症のため、思わず"真実"を暴露した」と勘ぐりたくもなります。

もしそれが真実であり、トランプ大統領が再選すれば、民主党も中国も不正選挙を暴かれて窮地に陥ることになります。そこでバイデン候補は、不正が白日の下に晒されないうちに政権移譲を完了しなければならないのでしょう。

さもないと、大統領選挙での大規模な不正行為という前代未聞の"犯罪"が明らかになってしまいます。だからこそ、バイデン候補は、盛んにトランプ大統領に政権移譲を迫っていたのではないでしょうか。

今回の大統領選を巡る不正疑惑を巡り、既にトランプ陣営と軍法弁護士のシドニー・パウエル氏による訴訟は本格化してきています。当初は門前払いのように敗訴ばかりだと言われていたのですが、最近は受理されるケースもあり、かなり通常の裁判になってきています。

ジョージア、アリゾナ、ウィスコンシンの3州では、トランプ陣営がどう少なく見積もっても確実と言える不正投票数が、現在のバイデン候補のリード数を上回るまでになりました。こうした流れは、必ずしもトランプ大統領に不利と言い切れない状況だと言えます。

米司法省パー長官

同時に、選挙不正について宣誓供述をした証言者が200人を超す中で、これまでは憶測としか言われなかった事実も表面化してきました。司法省のバー長官も、現段階では大統領選挙の結果を変えるような情報を米中央情報局(CIA)も米連邦捜査局(FBI)も持っていないと発言しのですが、後にFBIには新たな情報提供があったことも認めています(バー長官の発言段階では未確認)。

仮に時間的な面においても最高裁判決を仰ぐことが可能となるならば、どんな事態となるかは徐々にわからなくなりつつあります。それが、足元の状況です。

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2020年12月3日木曜日

「やっぱり」のCNN報道、中国の公式発表に真実なし―【私の論評】日本政府は、GOTOキャンペーン自粛等の前に中国とのビジネス関係者などの往来を再度封鎖すべき(゚д゚)!

「やっぱり」のCNN報道、中国の公式発表に真実なし

コロナ感染者数を過少発表、この先も治らない中国政府の隠蔽体質


   中国・武漢で開かれた、新型コロナウイルス感染症との戦いを振り返る展覧会
   (2020年10月15日、写真:新華社/アフロ)

(福島 香織:ジャーナリスト)

 12月に入った。中国湖北省武漢市で新型コロナウイルス感染症の最初の患者が確認されてからこれで1年がたったことになる。

 世界で最も感染者が多い米国は、新規感染者だけで1日20万人以上を数える。欧州最多の感染者が出ているフランスでは、中国人を「コロナ感染源」とみなしてSNSで暴行を呼びかける者が現れるなど、日本人を含むアジア系全体へのヘイトクライムが増大している。日本でも感染者が急増中でこのままではクリスマスや正月に緊急事態宣言が再び出るかもしれないと不安が広がっている。

中国の感染コントロールは「信じがたい」

 こういう中で、中国は感染をほとんど制圧しコントロールできている、というのが中国自身を含め世界の専門家たちの認識であろう。

 だが先日、長年、仕事や報道で中国と関わってきた“中国通”の人たちとの会合の席で「中国は本当に感染をコントロールできていると思うか」という話になったとき、ほとんどの人が「信じがたい」と声を揃えていた。

 彼らの指摘は“印象”でしかなく、根拠らしい根拠を挙げることはできない。だが、たとえば10月に新疆ウイグル自治区カシュガルで集団感染者が急増し、最終的に80人近い入院者、約350人の無症状感染者の存在が公表されたが、現地にいる何人かの友人から聞いた「親戚に〇〇人の感染者が出た」「△△人の友人が入院した」というような話を総合すると、公表された人数よりもずっと深刻な感染状況が起きているのではないか、と思われる。

 中国の地方の医療システムや医療資源の配置、人々の暮らしの習慣や衛生観念、官僚の仕事に対する基本姿勢、中国のプロパガンダ政策やその歴史、「虚偽情報」を事実として発表する共産党政治の情報コントロール能力、世論誘導力、そしてこれまで何度も中国共産党が発してきた嘘、などを深く知り、経験している人ほど、1月、2月の武漢の状況と春節移動による影響などを踏まえて、いくら徹底的なPCR検査と非人道的とさえ言えるような移動制限を実施したとしても、そんなにたやすく感染を制圧してコントロールできるわけがない、という疑いを持つようになる。

 これは理屈ではなく、長らく中国と関わって仕事をしてきた人たちならではの肌感覚であり危機管理能力の1つである。そして実は、ある一定の立場以上の中国人、つまり中国の知識人や官僚自身がこういう「疑う」感覚を一番持っている。そうした知識人や官僚と友だち付き合いをして、本音に近い部分で情報交換ができる一部外国人がそういう感覚を共有するようになるというわけだ。

世界への感染拡大はいつ始まったのか

 なので、12月1日に米CNNが「2月の段階で中国当局が国内感染者数を大幅に隠蔽していたことが内部文書からわかった」と報じても、まったく意外感はなく、「やっぱり」という感想しか出てこない。

 CNNが入手した内部文書は117ページにわたるもので、この文書によれば、新型コロナ感染症発生当初、感染の確診判定が出るまで平均23日の時間がかかっており、公表されている数字と医療現場が把握している数字に大きな差があったことが明らかにされている。

 たとえば、2月10日、中国の公式発表では新たな新型コロナ感染確診数は2478例で、うち2097例が湖北省となっていた。しかし湖北省の現場で実際に把握されていた数字は5918例で、うち1772例が臨床診断、1776例が感染疑い例と記録されていた。

 また中国当局は3月7日の湖北省内の累計死亡数は2986人と発表していたが、CNNが入手した文書によれば実際は3456人であるという。

 さらに当初、診断に時間がかかり、発症から確診にいたるまで平均23.3日の時間がかかっていたことも明らかにされた。

 個別の症例の追跡や公共衛生措置の推進にも深刻な障害があった。たとえば2019年12月2日、湖北でインフルエンザが前年同期比で2059%増という異常な増加率を示したが、現地の医療人員はインフルエンザと新型コロナ感染症との判別がつかず、また当時は検査薬も不足していた上、検査薬の精度も50%以下の低さであり、実際の状況を把握できていなかったという。

 湖北省の医療体制は、これだけの患者の急増によって、12月の段階ですでにぎりぎりであったか、あるいは崩壊が始まっていたと考えられる。

 米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによれば、米疾病コントロールセンター(CDC)の専門家が11月30日にある研究リポートを発表しているが、それによれば2019年12月中旬、米国にはすでに新型コロナウイルス感染者が現れていたという。つまり中国が正式に新型コロナ感染確診を発表するより数週間早く、そして米国の公衆衛生当局が米国発の感染例を発表するより1カ月早く、米国内で感染例が出ていた、ということになる。

 米誌「臨床感染疾病雑誌」(Clinical Infectious Diseases)に寄稿された論文では、米国赤十字が米国9つの州から集めた住民7398人分の血液サンプル中、106人から感染の痕跡が見つかり、最初の米国における感染は米国西海岸だという。つまり、中国が感染を確認するかなり以前から、実は世界に感染拡大が始まっていた。フランスやイタリアでも2019年末にすでに感染が発生していたという指摘があるのも、こう考えると納得できるのだ。

素直に信じてはいけない中国の公式発表

 さてこのCNNの特ダネから改めて言えることは、中国の公式発表というのはまず鵜呑みにはできない、ということである。

 その背景には、中国共産党(中共)官僚システムの構造自体に問題が多いということもある。悪意ある隠蔽や陰謀などもあるが、そもそも問題が発生したときに現場の判断で正確、的確な対応をとって上に報告するというシステムが機能しない。官僚システムが厳密なヒエラルキー構造の独裁体制に基づいているので、上から下への一方通行だけであり、下から上への報告や現場のフィードバックによる上層部の計画や方針の修正、改変が事実上不可能なのだ。この体制である限り、中国から出てくる情報は素直に信じてはならない。

 残念なことに、日本人の中には、中国当局が発表する数字に対して、少なくとも今の時点で隠蔽はない、ウソはないと信じて疑わない人が多く、そういった人たちが日本の感染症対策への発言権や影響力を持っていたりする。

 しかし、中国は習近平政権になってから恐怖政治的な「(習近平を核心とする)共産党中央が一切を指導する」(逆らったら失脚、冤罪逮捕)という方針が徹底され、「下部組織は上部組織に絶対逆らえない」という中国共産党のトップダウン構造がさらに強固なものになっている。世論やメディアが正確な情報が精査することが許されない社会では、公式発表は最初から信じられないという前提を持たねばならない。中国通のほとんどの人は「中国の公式発表はとりあえず疑う」という習性が身についているが、今の日本の政権担当者や専門家にはそういう感覚がなさそうで心配である。

「犯人は輸入冷凍品」世論誘導を目論む中国

 経済が切迫しているという理由もあるのだろうが、たとえば日中ビジネス関係者の往来について早々に再開してよかったのかどうか。

 中国は日本からの渡航者に対し二重の陰性証明(登場前2日以内のPCR検査陰性証明と血清特異性IgM抗体検査)を求めているが、日本は中国からの渡航者に対する検査は求めていない。これは、日本政府が「中国はほぼ完全にウイルスを制圧できている」と信じ切って安心しているからだろうが、本当に安心しきっていいのか?

 上海の浦東国際空港周辺で発生している感染者数も公式発表通りでない可能性があると疑うべきだろう。11月22日に空港の職員1万6000人にPCR検査を一斉実施し大混乱になった様子の写真などがメディアで取り上げられていたが、なぜこんなに慌てて措置をとるかというと、上海当局者自身が慌てているからだ。おそらく現状を把握できておらず、ひょっとすると上海市中感染も疑っているからこその慌てぶりではないか。

 中国はこうした感染再発生の理由をこれまでは「海外から持ち込まれた」と説明してきたが、上海の感染はそういう説明ができなくなってきた。そこで、感染者が冷凍物流チェーン周辺に集中していたり、大連、天津、青島などの輸入冷凍食品の包装から新型コロナが検出されたことなどを根拠に、「海外からの輸入冷凍品から人が感染した」可能性を主張し始めている。冷凍食品輸出国のドイツやニュージーランドはこの見方を否定している。

 もし、本当に「モノ→人」感染の可能性があるとしたら、それこそ予防対策のあり方の根本的な見直しが必要な事態である。この中国の主張は無視してはいけないが、鵜呑みにしてもいけないだろう。

 独立系華字ニュースサイト「明鏡」が掲載した「中国最新版新型コロナ神話」という記事によると、中国共産党は新型コロナの起源が中国以外の外国であるという印象を国内外に喧伝しようとしているという。そして、その最新の世論誘導策が、海外から輸入した冷凍品によって武漢に持ち込まれたウイルスが新型コロナウイルス感染症を発生させたというストーリーの定着を図るということらしい。

 いずれにしても、中国の公表する情報をそのまま受け止めて政策決定の基準にしてはならない、ということだ。

 2021年の春節(2月12日)は、中国で「民族大移動」が解禁されるのかどうか。中国としては大々的に春節旅行を推進して、「ポストコロナ」をアピールするかもしれない。世界のなかで比較的感染規模の小さい日本の観光地は、中国人観光客の来訪を心待ちにしているかもしれないが、ここで誤った対応をすると、東京五輪が吹っ飛ぶくらいの後悔では済まないかもしれない。

【私の論評】日本政府は、GOTOキャンペーン自粛等の前に中国とのビジネス関係者などの往来を再度封鎖すべき(゚д゚)!

私自身は、中国共産党が発表する内容をそのまま文字通りに受け取ることは一切ありません。わざわざ発表するには、何らかの意図が必ずあるとみなし、その意図を探ろうとします。

たとえば、中国のGDPの発表は、ほとんど出鱈目です。なぜなら、中国の輸出・輸入データと整合性がないからです。通常は、どこの国でも景気が良くなると輸入が増えるのですが、なぜか中国にはこの原則があてはまりません。

李克強氏もこの事実を認めています。李克強氏は李克強指数という、中国の本当のGDPを知るための指数を開発しているくらいです。

そもそも、過去には中国の全省の合計のGDPよりも、中国全体のGDよりも大きいという信じがたいことが何度かありました。これは、中国内でも指摘されていて、中国のSNS微博などで囁かれていました。無論、そのような指摘は現在では削除されているようです。

最近では、中国の王毅国務委員兼外相が、24日の日中外相会談後、茂木敏充外相と行った共同記者会見で、大暴言を連発しました。

茂木氏は記者発表で、「尖閣周辺海域に関する日本の立場を説明し、中国側の前向きな行動を強く求めた」と強調しました。

これに対し、王氏からは、次のような看過できない発言が飛び出しました。

「ここで1つの事実を紹介したい。この間、一部の真相が分かっていない日本の漁船が絶えなく釣魚島(=尖閣諸島の中国名)の周辺水域に入っている事態が発生している。中国側としてはやむを得ず非常的な反応をしなければならない。われわれの立場は明確で、引き続き自国の主権を守っていく。敏感な水域における事態を複雑化させる行動を避けるべきだ」

この発言に関しても、私はそののまま文字通り受け取りはしませんでした。これについては、このブログでもとりあげ、その真意を分析してみました。その記事のリンクを以下に掲載します。
中国外相、あきれた暴言連発 共同記者会見で「日本の漁船が尖閣に侵入」 石平氏「ナメられている。王氏に即刻帰国促すべき」―【私の論評】王毅の傍若無人な暴言は、中共の「国内向け政治メッセージ」(゚д゚)!
王騎外相

詳細はこの記事をご覧いただくものとして、この記事から結論部分を引用します。
王毅や中国のタカ派がよく見せる過激な発言は、必ずしも国際情勢に合わず、時には中国の利益にも反するものですが、ただその主要目的は国内宣伝にあるのです。

政権の対外強硬姿勢を見せなければ、怒りを沸騰させる愛国ネットユーザー等や権力闘争には対処できないのです。そしてそうした憤怒のマグマを、特に習近平政権には向けたくないのです。

以前中国は自分の都合て動く国だということをこのブログにも掲載したことがあります。このような中国は日中外相会談すら、中共の「国内向け政治メッセージ」を発信する場にするということも珍しくないてす。
そもそも、中国の軍事力は増強されているのは間違いないですが、それにしても歪な成長をしています。マスコミは宇宙兵器や超音速対艦ミサイルなどで大騒ぎしていますが、その実、基本的な能力はまだまだです。

対潜哨戒能力を含めた、哨戒能力は日米のほうがはるかに上回っていますし、潜水艦のステルス性ということでは、日米に劣っていますし、日本の潜水艦のように無音に近いような通常型潜水艦を製造できません。これに比して中国の潜水艦は最新型でもかなり騒音がするので、日米に簡単に探知されますが、日本の通常型潜水艦は無音に近く中国には探知できません。

米国の原潜は中国の原潜よりは静寂性がありますが、それでも原潜はある程度は必ず騒音が出るのて、中国にも探知できるチャンスはありますが、それにしても、米軍の対潜哨戒能力は世界一で中国を遥かに凌駕しています。それに米軍の原潜はかなりの破壊力を持ちます。さらには、兵站でも劣っています。いずれにしても、中国は海洋戦では日米に比較するとかなり不利なのです。

潜水艦で勝てないと、他にどのような艦艇を持とうが、空母を持とうが、すぐに潜水艦に攻撃されて沈没するだけで、現代の海洋戦では勝てません。

そのため、中国海軍のロードマップでは、今年2020には第二列島線まで確保することになっていますが、未だに台湾、尖閣諸島を含む第一列島線すら確保していません。さらに、台湾は自前で高性能潜水艦を作ることを公表しました。

この絶望的な状況を習近平政権は理解しているからこそ、王毅にあのような暴言を吐かせて、国内の人民や権力闘争の相手方の憤怒のマグマを自分たちからそらす必要があったのでしょう。

この記事では書き忘れましたが、この暴言によって、日本側としては習近平の国賓来日を断るか延期することができるようになりました。

中国としては、習近平の来日が駄目になっても、国内向けにプロパガンダをする必要があったものと思われます。

「中国がコロナの発生源でないというのは不確かな推測だ」したWHOのマイク・ライアン氏

最近中国で、輸入冷凍食品から新型コロナウイルスが相次いで検出され、政府は輸入を一時停止したり、全面消毒を義務付けたりして警戒を呼び掛けています。この事実も全く信用できませんウイルスの「武漢起源説」を否定する材料にしようとしているとしか思えません。さらには、最近中国ではコロナ再発の兆候があるので、もし再発した場合は外国のせいにしようとしているのかもしれません。

そもそも、環境表面やモノに触れた際にウイルスが付着した手で口、鼻、眼に触れて感染することはおこり得ますが、頻度としては低いという世界の医学的共通認識は変わっていません。

アルゼンチン産牛肉(江蘇省南京市)、ブラジル産牛肉(武漢市)、マレーシア産タチウオ(山東省臨沂市)…。輸入冷凍食品の主に包装からコロナウイルスを検出したとの発表が11月だけでも30件近くに上ったといいます。

6月に北京市で広がった感染「第2波」については、市の研究員らが「卸売市場で処理された輸入冷凍サーモンが感染源だった可能性が極めて高い」との分析結果を発表。10月に山東省青島市の病院で発生した集団感染では、入院していた青島港の貨物作業員2人が扱っていた輸入冷凍タラの包装から「生きた」ウイルスが検出されたといいます。

こうした事例を受け、中国疾病予防コントロールセンターの呉尊友首席専門家は、中国紙に対し「武漢の感染も最初は海鮮市場で始まった。輸入された水産品が引き起こした可能性もある」と指摘しました。

ただ、中国当局は冷凍食品からのウイルス検出について「現段階の陽性率は1万分の0.48」(国家食品安全リスク評価センター)と、極めてまれなケースであることを認めています。世界保健機関(WHO)は冷凍食品からの感染に懐疑的で、緊急事態対応を統括するマイク・ライアン氏は11月27日の記者会見で、中国メディアの質問に「中国が発生源でないというのは不確かな推測だ」と答え、海外から中国にウイルスが流入したとの見方にくぎを刺しました。

11月30日成田空港では感染を防ぐ対策として防護服を着用した中国人の姿も見られた

新型コロナウイルス対策の入国制限措置をめぐり、政府は、11月30日から中国との間でビジネス関係者などの往来を再開させました。成田空港では感染を防ぐ対策として防護服を着用した中国人の姿が多く見られました。

政府は、入国制限措置を緩和する一環として30日から、中国との間で、短期滞在と長期滞在双方のビジネス関係者などの往来を再開させました。

中国各地とを結ぶ便が現在、週に20便ほど運航されている成田空港には、30日午後、160人余りが乗った便が浙江省杭州から到着し、感染を防ぐ対策として白い防護服や、代わりの雨がっぱを身につけた中国人の姿が多く見られました。

一方、成田から中国に向かう便でも搭乗する前に防護服などを着用する人の姿が目立ちました。

上で指摘したように、中国は外国まで自国内のプロパガンダに利用する国です。自国内でコロナを制圧したということも実は「国内向け政治メッセージ」とも考えられます。

この「国内向け政治メッセージ」に沿った形で、各地方政府がコロナ撲滅に努力したのは確かだと思います。とにかく、コロナ患者は暴力を用いても強制的に隔離して、撲滅に邁進したとは思います。

しかし、そもそもコロナウイルスは、CPR検査でも正しく判定できるのは、70%止まりです。偽陰性者も大勢出ることから、いくら隔離を完璧にしようとしてもできないです。しかし、地方政府は完璧に撲滅したと中央政府に報告するでしょう。

そのような中国共産党中央政府によるコロナ撲滅の公表など、そもそも信用できません。日本政府としては、GOTOキャンペーン自粛等の前に中国とのビジネス関係者などの往来を再度封鎖すべきです。

少なくとも来年の春節前には、完全封鎖すべきです。いずれは再開することになるでしょうが、それは他国の封鎖を解除した一番最後にすべきです。

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2020年12月2日水曜日

イエレン氏の財務長官起用で米国は積極財政と緩和両立へ 日本は無策なら円高で苦境に…半年後に120万人超の失業者出てもおかしくない ―【私の論評】予備費すらまともに使わず「医療崩壊」の危機を招いた現状では、失業や自殺の増加は不可避か(゚д゚)!

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高橋洋一 日本の解き方

イエレン氏

 バイデン次期米大統領は、イエレン前米連邦準備制度理事会(FRB)議長を財務長官に指名すると発表した。

 イエレン氏は、オバマ政権でバーナンキ氏の後任としてFRB議長になった。トランプ政権はイエレン氏を再任せず、現パウエル議長を指名した。バイデン政権では、トランプ政権と逆をやるのだろう。

 イエレン氏は、クリントン政権下の1994年からFRB理事、97年から大統領経済諮問委員会委員長、ブッシュ政権下の2004年からサンフランシスコ連邦準備銀行総裁、オバマ政権下の10年からFRB副議長-と実務に長く関わってきた。民主党政権での中央の実務経験が多いので、民主党の財務長官としては格好の人物だ。

 FRB副議長時代には、バーナンキ議長と長年の共通の考えであったインフレ目標政策を公式採用させたのが大きな貢献だ。FRBに長く関わってきたイエレン氏は2%のインフレ目標を理事時代から主張しており、暗黙のものとして事実上採用されていた。

 雇用の最大化と物価の安定、金融システムの安定というFRBの使命にも理解を示すだろう。実務経験も長く、しかも学問的な素養も十分なので、安定感がある。イエレン氏の予測の精度は高いことで有名だ。思いつきで発言せず、十分な調査を行っているからだ。

現在は跡形もなく消えた、米国のティーパーティー運動

 FRB時代に、議会共和党の一部にいる緊縮財政論者の茶会派(ティーパーティー)ともうまく対処してきた。ただし、マクロ経済重視で雇用重視なので、緊縮財政とは一線を画している。現在、コロナで米経済がズタズタなので、かなり思い切った財政政策を行うだろう。コロナはデフレ傾向を加速するので、国債発行を伴った積極財政で、その国債を中央銀行が購入しても、ひどいインフレにならないので、積極財政は金融緩和と両立しうる。

 となると、日本が第3次補正予算でショボい追加対策だと、追加国債もあまり発行されず、日銀の金融緩和に要する国債も市中に不足するので、結果として十分な金融緩和ができなくなる。米国で金融緩和、日本で緩和せずとなると、円高になり日本経済は苦しくなる。しかも、ショボい追加対策だと、筆者によるGDPギャップ(潜在GDPとの乖離)推計は40兆円程度なので、半年後の失業者は120万人、自殺者6000人以上が出てもおかしくない。

 にもかかわらず日本の財政当局は、残り7兆円もある予備費を3次補正の一部に組み込み、さらに、民間需要が出てくるという考えにくい前提をとることで、3次補正を小さくしようとしている。

 民間需要が出てくるというのは考えにくい。ちなみに、内閣府モデルでは政府支出乗数は1・1もない。これは政府支出に対して誘発される民間需要が1割にも満たないことを意味しており、GDPギャップを公的需要で埋めないと、失業や自殺の増加は不可避だ。(内閣官房参与・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】予備費すらまともに使わず「医療崩壊」の危機を招いた現状では、失業や自殺の増加は不可避か(゚д゚)!

大統領選挙の結果はまだ出ない状態ですが、バイデン氏が大統領になった場合の人選においては、他の人選はたとえば、中国問題の専門家がほとんどいないなどの問題点が指摘されていますか、財務長官の人選は良かったと思います。

トランプ政権も、経済を良くしてきたのですが、イエレン氏が財務長官になれば、少なくと誤った政策に翻弄されることはなく、それどころか的確な政策運営ができると思います。カマラ・ハリスを副大統領に指名するようなバイデン政権としては、かなりまともな人選だと思います。

さて、上の高橋洋一氏の記事では、日本のショボい経済政策で、現状のままなら、とんでもないことになりそうなことを指摘していますが、その状況はすでに露見しています。

それは、最近テレビのワイドショーで盛んに指摘されている「医療崩壊の危機」です。本当はこのような状況は完璧に防げたことのはずでした。

テレビでは毎日コロナ第三波と「医療崩壊」

事前に予測ができて、財源があれば、ほとんど対応可能のはずです。冬に入ると、またコロナが蔓延する可能性については以前から、複数の専門家が指摘していました。

それに財源もありました。その財源とは、2次補正において計上された、10兆円の予備費です。この予備費が少しは使われたようですが、未だに7兆円も積まれたままになっているといいます。

これを使って5月までにコロナ専門病棟をつくるとか、それにあてる人員を確保したり、足りなければ養成したりすることも十分に可能なはずでした。

多くの問題は事前に対応策がわからないことがあります。それは対応できません。さらに、対応策がわかっていても、それを実行するための財源がなければ、対応できないです。

ところが、事前にわかっていて財源もある事柄には対応策は簡単に実行できるはずです。今回の医療崩壊への対応はまさしくこの範疇にあてはまるものです。「第3波が来る」ということは、確実なことで、4~5月のときにわかっていました。

「いつ来るか、どの大きさか」は正確にはわからないことでしたが、来事自体確実でした。4月に1次補正をして、5月に2次補正をしました。その2次補正をしたときの、10兆円の予備費はそのこの十分に予測できる事柄に臨機応変に対応するためにつくったのです。

医療崩壊の危機の問題の本質は、あの予備費がどうなったかということです。予備費が検討されていたときにのは野党が、「大き過ぎる」と批判しました。そのため、執行停止しているような状態だったのです。そちらの方が大問題です。コロナ専門病棟をどこかに建てておけば、少なくとも病床は確保できていたはずです。5ヵ月あれば十分建てられます。人員も足りなければ、養成もできたはずです。

最悪でも、応急処置でプレハブを設置し、機械を入れれば問題ないですし、諸外国はそうやっているところもあります。

それに日本は感染者の数、重症者の比率は海外に比べて桁違いで低いです。1桁、2桁違います。それでなぜ対応できないのか、全く理解できません。そういうようなところをきちんと見て、いまからでも対応することが国民のためになるはずです。

それに当初はコロナは感染症法上の扱いで、特に最初の方で感染した方々は、厚生省の感染分類で2類相当の扱いで、全員入院しなくてはいけなかったのですが、10月の終わりくらいに変えました。基本的には5類相当で扱って、即入院でなくて自宅や宿泊施設での療養も可能になりました。そのためホテルを借り上げることでも対応できるはずです。そのための財源も十分ありました。

それを考えると、「厚生労働省は何をやっている」ということになります。野党も「桜を見る会」よりもそういうところを議論したほうが、国民にとってより意味があると思います。桜の話をされても一部野党は盛り上がりますが、いまのこのコロナには関係ありません。

それに、すでに検察当局がすでに介入しているわけですから、「桜問題」など国会で少し話すくらいなら良いですが、それで野党が審議時間のほとんど使ってしまうことは、多くの有権者は到底容認できないでしょう。そもそも、国会とは立法府であり、人を裁く場ではありません。

桜を見る会

ただ野党としては、「予備費」については積みすぎであると批判していた手前国会で審議することには抵抗があるのでしょう。しかし、元々厚顔無恥な野党なのですから、反対したことなどおくびにも出さす「せっかく積んだのだから使え」と批判する手もあったと思います。

いままで、野党はは恥ずかしいことを散々繰り返してきたのですから、いまさら恥の上塗りをしたところで、何も失うものはないはずです。今回は国民を救うことにもなる「予備費」で政府を責めてほしかったです。

5月に、「2波、3波のときにどう対応するのか」ということで予備はがつくられたはずですが、「なぜこんなに積むのか」という批判も相当あります。この補正予算の名称は、「新型コロナウイルス感染症対策予備費」です。

「資金使途をどうのこうの」と言っていた人もいましたが、第二波、三派波が来るのは確実視されていたのですから、それを使うしかないかったはずです。もし、使って第二波、第三波が来なかったとしても、誰も批判する人はいないでしょうし、批判するような人がいたとしても逆に多くの人から批判されることになったと思います。

予備費は第三波事前に使うべきというのは、当然のことであり、なぜそうしなかったのか、あまりに不思議ですし、異様だともいえます。

政府、その中でも特に厚労省は、「いままで一体何をしていたんだ」ということになります。幸いなことに、日本では諸外国に比較して、重傷者、死者ともに桁違いに少ないですし、コロナ感染の過去の状況をみていれば、1月、2月あたりにはある程度落ち着くとは思われますが、それにしても今からでも遅くないので、予備費を使って感染症対策を十分に行うべきです。

第三波対応でもこの有様ですから、日本の財政当局は、本当に残り7兆円もある予備費を3次補正の一部に組み込み、さらに、民間需要が出てくるという考えにくい前提をとることで、3次補正を小さくしてしまうかもしれません。

完璧にできることですら、できないのですから、今のままだと3次補正も小さな規模になり、失業や自殺の増加は不可避となる可能性が大です。菅政権はこの問題を何とかすべきです。

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2020年12月1日火曜日

中国が輸出管理法を施行 梶山経産相「企業はしっかり備えを」―【私の論評】先進国が中国から唯一学べることは、統治と実行を分離しない政権はいずれ崩壊すること(゚д゚)!

  中国が輸出管理法を施行 梶山経産相「企業はしっかり備えを」

梶山弘志経済産業相=1日午前、首相官邸


 中国が、国家安全に関わる戦略物資や技術の輸出を規制する「輸出管理法」を1日に施行した。中国の安全保障に害を及ぼすとみなした企業をリスト化して禁輸措置をとることが可能となり、対中圧力を強めている米国に対抗する狙いがある。施行までに管理対象となる品目を公表していないなど、運用をめぐる不透明さに海外で懸念が強まっている。

 同法は、安全保障に関わると判断した物資や技術などを当局がリスト化して輸出を制限する。対象品目を輸出する際には、事前に輸出先や使い道を中国当局に申請し、許可を得ることが必要になる。特定の外国企業をリスト化して輸出を禁止できるようにするなど、米国などに対する報復措置を整える狙いが鮮明だ。




 管理対象品目には、中国が世界の生産シェアの6割強を占めるレアアースが入るとの見方があり日本企業も警戒している。

 梶山弘志経済産業相は1日の閣議後記者会見で、同法については「どのように運用され、どんな品目が対象になるのか依然として明らかでない」と指摘。日本企業に「米中それぞれの市場における事業が阻害されないよう、しっかりと備えてほしい」と求めた。問題が起きれば政府が支援する意向も示した。

【私の論評】先進国が中共から唯一学べることは、統治と実行を分離しない政権はいずれ崩壊すること(゚д゚)!

安全保障上の問題を理由とする輸出規制のための法律は多くの国がすでに制定しています。輸出品が核兵器などの武器開発に使われた結果、自国の安全保障が危うくなることを防ぐためで、日本にも「外国為替及び外国貿易法」などがあります。中国が同様の法律を整備することも当然です

ところがその内容を詳しく見ると、伝統的な安全保障に関する世界の常識とはかけ離れた中国の異様な考え方が見えてきます。


この法律はまず、戦略物資など管理品目を決めて輸出を許可制にするとともに、自国の安全保障などを理由に禁輸企業のリストを作り、これら企業への輸出を禁止するとしています。管理品目や禁輸対象企業のリストは年内にも策定すると伝えられています。

米国が大統領選と政権移行期というタイミングでのこうした動きは、中国に対する米国のさまざまな輸出規制への対抗措置手段を法的に整備し、次の大統領がトランプになろうがバイデンになろうが、新政権の出方次第では厳しい措置を発動するという構えを見せる意図があるのでしょう。

しかし、この法律にはそれ以外に注目すべき点があります。法案作成の最終段階でこの法律には「域外適用規定」が追加されました。その内容は「中国国外の組織と個人が、本法の規定に違反し、拡散防止などの国際義務の履行を妨害し、中国の国家安全と利益に危害を及ぼした場合は、法に基づいて処理し、その法的責任を追及する」となっています。こうした条文は主要国の法律にはありません。

この条文が何を意味しているのか、実はよくわかりません。「中国国外の組織と個人」「中国の国家安全と利益」「危害」などのキーワードの定義が書かれていないからです。「中国の国家安全」は漠然とながら想像できますが、その次に出てくる「利益」や「危害」は幅広い意味を持つ言葉です。

「利益」は軍事にとどまらず、政治、経済、社会などあらゆる分野に拡大解釈できます。その判断は中国共産党しかできないでしょうし、特定国の特定企業を意図的に排除しようと思えばいくらでも恣意的に法律を執行できます。一方、企業にとってはリスクを回避しようのない規定です。

さらに続く部分で「法に基づいて処理」と書かれているが、ここでいう「法」はその前に出てくる「本法」とは明らかに区別されており、輸出管理法以外の法が適用されそうです。ただ、どの法律が適用されるのか不明です。そうして最後の「法的責任の追及」も何を意味しているのかわかりません。

意図的に抽象的な言葉を並べることで、中国当局が好きなように解釈し、幅広く適用できるようにしているとしか考えられないです。日米欧の主要産業団体は法律の草案が公表された段階で危機感を持ち、中国政府に対して「外国企業を著しく不安にさせる」などとして同条項の削除を求めたのですが、要求は受け入れらませんでした。

中国の習近平国家主席が昨年5月20日、江西省内のレアアース企業を視察した


さらに、この条項とともに注意深く分析しなければならないのが、中国の安全保障についての考え方です。

中国の国家安全についての考え方は習近平国家主席が2014年に打ち出した「総体国家安全観」によく示されています。その内容は日米欧など主要国の伝統的安全保障の概念とはかなり異なっています。

まず、国家安全の対象に「国土の安全」「軍事の安全」など10余りの領域を列挙していますが、その冒頭に挙げているのは「政治の安定」です。さらに習氏は「対外的安全保障と対内的安定維持を同時に重視する」とも語っています。

中国憲法の前文には「中国の各民族人民」が「中国共産党の指導の下」にあることが明記されています。さらに習氏は2017年の党大会で、「党政軍民学、東西南北中、一切の活動を党は領導する」と発言しています。

これは共産党はもとより、政府、人民解放軍、民間部門、学術部門などすべての分野において、また地理的にも中央を含め中国全土で共産党指導部が主導権を持つという権力集中を意味しています。つまり、中国における政治の安定とは、中国共産党の一党支配の維持・継続を意味しているのです。

近年、安全保障という言葉は軍事に限定されず、経済や地球環境など幅広く使われることが増えてきました。伝統的には軍事的な面が中心で、外国軍の侵略などから領土、主権、国民を守ることなどを意味しています。そのため各国は自国の軍事力を整備するとともに、貿易面では武器に転用されかねない製品や技術の輸出を規制しています。

ところが中国共産党の安全保障の考え方は、習近平主席が強調しているように政治の安定が最優先であり、また「外からの脅威」とともに「国内の安定」も安全保障政策上、重要な課題になっているのです。

対内的安定がなぜ重要なのでしょうか。中国共産党は、新疆ウイグルやチベット、内モンゴルなど各自治区での少数民族の独立運動や香港の民主化運動、さらに台湾問題など中国は国内に深刻な問題を抱えています。また、人民が政府や企業を相手に集団で諸要求の実現を求めてデモや暴動を起こす「群体性事件」も深刻な問題となっています。正確な数は公表されていないが1年間に10万件以上起きていると言われています。

群体性事件は、中国社会が抱える地域格差、所得格差などさまざまな矛盾が解決できないため、人民に不満がたまっていることを示しています。そうして、これらの運動が政府批判、反体制運動に広がっていくと、共産党一党支配の正統性を揺るがしかねません。中国共産党にとってこうした運動を抑え込むことが対内安定維持であって、最も重要な安全保障上の課題となっているのです。

問題は中国流の安全保障観では、中国国内の安定と対外的安全保障が不可分となっていることです。少数民族の独立運動や香港の民主化運動について、中国政府は中国共産党の統治の正統性に傷をつけないため自らの非を一切認めず、一貫して「外国勢力が国内勢力と裏で連携、結託している」として暴動などを取り締まっています。そうして米国などが人権問題であると非難すると、「内政干渉である」と激しく反発しています。

こうした観点から輸出管理法の域外適用規定を読めば、そこに込められた政治的意図が透けて見えます。つまり、中国政府は国内の民主化運動などに関与した国があれば、本来の輸出管理の目的を外れてこの規定を自由に使い、その国の企業などを制裁対象にすることができるのです。

同じような内容は6月に成立した香港国家安全維持法の条文にも盛り込まれています。同法には「国家安全保障を脅かす外国または域外勢力との共謀罪」が規定され、香港に住んでいない外国人もこの法律によって処罰すると書かれています。

つまり、中国の安全保障の最大の目的は共産党支配を安定させることであり、それは国外の脅威への対処だけでなく国内の反政府運動などを抑え込むことも意味しているのです。そうして、国内政策の矛盾に対する批判の矛先が共産党に向かわないようするため、「内政干渉」などを理由に国外に批判の対象を作って制裁措置をとるのです。それを正当化するための法律の一つが今回の輸出管理法なのでしょう。

よく言われることですが、日本や欧米諸国は、法によって権力を拘束する「法の支配」(Rule of Law)が定着しています。これに対し中国のシステムは法が権力者である中国共産党に奉仕する「法による統治」(Rule by Law)となっています。今回の輸出管理法も明らかにこの規則が当てはまっています。

ドラッカー氏は、政府の役割である統治について、以下のように語っています。
政府の役割は、社会のために意味ある決定と方向付けを行うことである。社会のエネルギーを結集することである。問題を浮かびあがらせることである。選択を提示することである。(ドラッカー名著集(7)『断絶の時代』)
この政府の役割をドラッカーは統治と名づけ、実行とは両立しないと喝破しました。「統治と実行を両立させようとすれば、統治の能力が麻痺する。しかも、決定のための機関に実行させても、貧弱な実行しかできない。それらの機関は、実行に焦点を合わせていない。体制がそうなっていない。そもそも関心が薄い」というのです。

しかし、ここで企業の経験が役に立ちます。企業は、これまでほぼ半世紀にわたって、統治と実行の両立に取り組んできました。その結果、両者は分離しなければならないということを知りました。現在の上場企業等は、両者が分離されているのが普通です。

たとえば、最近は「○○ホールディングス」等という持株会社の名前を聞くことがありますが、これら持株会社は株を所有して管理するだけの会社ではありません。様々な事業会社グループの中で、この持株会社が本部として、グループ全体の統治の役割を担っているです。

セブン・アンド・アイ ホールディングスの取締役会

企業において、統治と実行の分離は、トップマネジメントの弱体化を意味するものではありませんでした。その意図は、トップマネジメントを強化することにありました。実際、統治と実行を厳密に区分した企業は、大企業となっても成長しています。

憲法や人民解放軍を中国共産党の下に位置づけ、経済運営にまで直接介入し、さらに法律に「域外適用規定」の規定を設けて海外にまで直接介入しようとする中国共産党は、会社の規模が大きくなっても、統治と実行の両方を無理やり実行しようとする、企業の経営者のようです。そのような試みは必ず失敗することが、過去の歴史が示しています。

そうして、中国共産党とて例外とはならないでしょう。早晩、統治不能となり崩壊します。中国が例外のように見えるのは、その図体があまりにも大きいからです。大きな会社が、無理をして統治と実行を分離せずに、旧態依然の経営をしていれば、しばらくの間は小さな企業よりは持つでしょうが、いずれ崩壊します。今の中国もそうなります。

ただし、中国以外の国々、それも先進国といわれる国々や国連などの国際組織も、統治と実行の分離がしかりなされていないところがあります。それが、今日政府や国際組織の機能不全を招いています。

日本でも、そのために財務省があたかも大きな政治グループのように振る舞い政治に関与し、「政治主導」というあたりまえのことが未だに実現されていません。

今後数十年で、中国共産党は崩壊するでしょうが、統治と実行が分離されていなければ、何が起こるのかを、我々も中国共産党の崩壊の過程から学ぶべきです。

ちなみに、ドラッカー氏は、政府は統治をすべきであって、それ以外は政府の外に出すべきと主張しています。先進国の政府もいずれ段階的にでも、そのようにすべきです。そうでないと、いずれ現在の中国のように、機能不全を起こし、政府が崩壊するということにもなりかねません。

先進国が中国から学べるとすれば、これだけかもしれません。

未だ米国大統領選挙の結果がでていませんが、トランプ政権は輸出管理法に対抗する措置を実施するでしょう。それもかなり厳しい措置になると思います。たとえ、バイデンが大統領になったとしても、就任前に取り返しがつかなくなるくらいの、厳しい措置を実行するのではないかと思います。

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2020年11月30日月曜日

豪首相、中国外務省報道官の偽画像投稿巡り謝罪を要求―【私の論評】人民解放軍や民兵は、台湾や尖閣を確保できないが、それと中国の傍若無人な発言・行動に抗議をしないこととは別問題(゚д゚)!

 豪首相、中国外務省報道官の偽画像投稿巡り謝罪を要求


    11月30日、モリソン豪首相(写真)は、同国軍の兵士がアフガニスタン人の子どもの喉元にナイフを
    突きつけているように見える偽の合成画像が中国外務省報道官の趙立堅氏によってツイッターに投稿された
    のを受け、「非常に不快」と批判し、削除を要求していると明らかにした。

 モリソン豪首相は、同国軍の兵士がアフガニスタン人の子どもの喉元にナイフを突きつけているように見える偽の合成画像が中国外務省報道官の趙立堅氏によってツイッターに投稿されたのを受け、「非常に不快」と批判し、削除を要求していると明らかにした。 

 中国政府に謝罪を求めていると述べ、豪政府としてツイッターに、30日掲載の同ツイートの削除を要請したと説明した。

 「甚だしく非常識で、いかなる理由でも正当化されない」と強調。「中国政府は恥を知るべきだ。世界の目から見れば地位を落とす行為だ」と続けた。

 豪中関係は、豪政府が新型コロナウイルスの起源に関する国際的な調査を求めて以来、悪化している。 豪軍は先に、アフガニスタンに派遣された軍特殊部隊の兵士25人が非武装の捕虜や民間人ら39人を違法に殺害したとの調査結果を発表。先週末には兵士13人に解雇を通知したと明らかにしていた。

 趙氏は投稿で「豪軍兵士によるアフガン民間人と捕虜の殺害にショックを受けた。われわれは強くこのような行為を非難し、責任を負わせるよう求める」としていた。

 同メッセージは27日に投稿されていたが、偽の画像はその時点ではなかった。
【私の論評】人民解放軍や民兵は、台湾や尖閣を確保できないが、それと中国の傍若無人な発言・行動に抗議をしないこととは別問題(゚д゚)!

モリソン豪首相の中国への抗議は、当然といえば、当然です。もし、厳しく抗議をしなければ、中国は中共の命令で、様々な機会にこのようなフェイク画像を合成して、SNSに投稿することでしょう。ちなみに掲載された合成写真を以下に掲載します。(一部加工しています)


日本の菅総理や政権幹部もこうしたモリソン豪首相の態度を見習うべきでしょう。

尖閣問題も、慰安婦問題も、最初に首相や幹部が厳しい抗議をしていれば、今日のようなことになっていなかった可能性が大です。

最近の例では、河野克俊前統合幕僚長は今月16日、東京都内で講演し、旧民主党の野田佳彦政権を念頭に、尖閣諸島(沖縄県石垣市)の周辺海域に中国海軍の艦艇が接近した場合は「海上自衛隊の護衛艦は『相手を刺激しないように見えないところにいろ』と(官邸に)いわれた」と明かしました。野田政権が平成24年9月に尖閣諸島を国有化した当時、日中の緊張関係が高まっており、中国側に配慮した措置とみられます。

野田佳彦氏

中国軍の艦艇は通常、中国海警局の巡視船が尖閣周辺を航行する際、尖閣から約90キロ北東の北緯27度線の北側海域に展開します。これに対して、海自の護衛艦は不測の事態に備え、27度線の南側で中国軍艦艇を警戒監視しています。


河野氏は「安倍晋三政権では『何をやっているのか。とにかく見えるところまで出せ』といわれ、方針転換しました。今ではマンツーマンでついている」と語りました。自民党の長島昭久衆院議員のパーティーで明かしました。

野田氏は尖閣で中国に配慮したつもりなのでしょうが、それが今日の度重なる領海審判、領空審判につながっているのは間違いないでしょう。

本来実施すべきだったのは、軍事衝突になることもおそれす護衛艦を前に出すことでした。そうすれば、今日のような有様はなかったかもしれません。

このような腰砕け的な、中国につけこまれるようなことをするのは、民主党(現在の立憲民主党、国民民主党)だけかと思えば、自民党も似たり寄ったりでがっくりきました。

皆さんもご存知のように、今月24日の茂木外相と王騎との会談です。これについては、このブログでもとりあげました。その記事のリンクを以下に掲載します。
中国外相、あきれた暴言連発 共同記者会見で「日本の漁船が尖閣に侵入」 石平氏「ナメられている。王氏に即刻帰国促すべき」―【私の論評】王毅の傍若無人な暴言は、中共の「国内向け政治メッセージ」(゚д゚)!
王毅

中国の王毅国務委員兼外相が、大暴言を連発しました。24日の日中外相会談後、茂木敏充外相と行った共同記者会見で、沖縄県・尖閣諸島をめぐり、中国の領有権を一方的に主張したのです。両外相は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて制限しているビジネス関係者の往来を11月中に再開することで合意したといいますが、菅義偉政権はこの暴言を放置するのでしょうか。

茂木氏は記者発表で、「尖閣周辺海域に関する日本の立場を説明し、中国側の前向きな行動を強く求めた」と強調しました。

 これに対し、王氏からは、次のような看過できない発言が飛び出した。

「ここで1つの事実を紹介したい。この間、一部の真相が分かっていない日本の漁船が絶えなく釣魚島(=尖閣諸島の中国名)の周辺水域に入っている事態が発生している。中国側としてはやむを得ず非常的な反応をしなければならない。われわれの立場は明確で、引き続き自国の主権を守っていく。敏感な水域における事態を複雑化させる行動を避けるべきだ」

尖閣諸島は、歴史的にも国際法上も日本固有の領土です。

この傍若無人な王毅の振る舞いの背景には何があるのかをこの記事で分析しましたが、簡単にいうと、これは中国人民解放軍の制服組がときおり実行する、「国内向けブロパガンダ」です。

制服組が時折強硬発言するのは、結局彼らは他国と真正面から戦うと負けることはわかっているのですが、それを表面に出せば、人民や権力闘争の相手方から付け入るすきを与えることになるので、強硬発言をして、彼らの憤怒のマグマを直接浴びることをそらすことが目的です。

現在の中国の戦力は金をかけた分、核兵器なども含めて侮ることはできませんが、核兵器はおいそれと使うことができないし、通常兵器で戦えば、軍事的な弱小国には勝てますが、米露はもとより、海洋戦では日本にも勝てないです。

特に海洋戦においては、日米の潜水艦隊や哨戒力には中国はおよびもつかず、とうていかなわないと自覚しているのです。しかし、それはおくびにも出さず、強硬発言で国内向けプロパガンダを行い、自分たちや習近平政権を守っているというのが実情です。

実際に海洋戦になれば、日米は中国より数段優れた、哨戒能力により空母や艦艇をことごとく撃沈できますが、中国は日本の潜水艦の静寂性や、米国原潜の空母なみの破壊力には勝つことはできません。一方、中国の潜水艦は静寂性からは程遠く、すぐに日米に発見され、日米の潜水艦や日本の対艦ミサイル、米国のステルス機などに撃沈されてしまいます。

他の艦艇や航空機も同じです。台湾や尖閣に人民解放軍や民兵が上陸したとしても、日米の潜水艦隊に包囲されてしまえば、上陸部隊に補給ができず、結局上陸部隊はお手上げになってしまいます。このあたりのことは、なぜか日米のメディアでは報道されません。

潜水艦の行動は、昔から表に出さいないというのが、常識ですが、米軍は今年の5月に太平洋艦隊司令部がインド太平洋地域に新たに潜水艦を7隻派遣していますし、日本では今年の3月に最新鋭艦「たいげい」が進水し、潜水艦22隻体制にすることは周知ですし、これらの事実から日米はすでに海洋戦の戦術・戦略を変えたと認識すべきでしょう。

特に初戦でわざわざ、対艦ミサイル、魚雷などに対して脆弱な空母打撃群や艦艇を派遣して、中国に格好の目標を与えるような馬鹿マネはしないでしょう。初戦は潜水艦隊を派遣して、中国の潜水艦、他の艦艇、ミサイル基地などを破壊した後に必要があれば、空母打撃群派遣するというのが妥当な戦術・戦略です。

尖閣や台湾の守備には、日米とも潜水艦隊だけで十分に対応できるでしょう。何しろ、日米ともこれらの島嶼を確保する必要性などありません。これらを潜水艦艇で包囲し、中国潜水艦、補給船、航空機を近づけないようにすれば良いだけです。これだけなら、犠牲も少なくてすみます。一方、島嶼を確保しなければならない中国にはおびただしい犠牲がでることになります。

このあたりは、このブログでも最近力を入れて何度か解説しているので、興味のある方は是非ご覧になってください。

結局、中国は尖閣諸島や台湾なども、日米の潜水艦隊に阻まれ、これを奪取することは無理なのです。中国海軍のロードマップでは、今年は第二列島線を確保することになっていますが、現実には台湾、尖閣諸島を含む第一列島線すら確保できていません。

しかしこうした現実と、中国の強硬発言にすぐに抗議をしないということは別問題です。やはり、日本も豪州のように、中国が問題発言・行動をした場合には、すぐさま抗議をすべきでしょう。

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2020年11月29日日曜日

「未来投資会議」の廃止で、いよいよ菅総理が「経済政策」に本腰を入れ始めた…!―【私の論評】人事を駆使し、トップダウン方式の政策決定過程を日本でも定着させる菅総理(゚д゚)!

「未来投資会議」の廃止で、いよいよ菅総理が「経済政策」に本腰を入れ始めた…!

発足から2ヵ月…



「成長戦略会議」を新設

菅義偉内閣が発足して、約2ヵ月が経った。この間、「ハンコ行政」の廃止や、デジタル庁新設の決定など、霞が関周りでいくつもの変化があった。

中でも大きかったのが、前政権において経済政策の旗振り役だった「未来投資会議」を廃止し、「成長戦略会議」を新設したことだろう。そもそも、未来投資会議は2016年9月、安倍晋三前首相を本部長とする「日本経済再生本部」の下に設置されたものだ。

元来、経済財政運営を議論してきたのは、'01年に創設された経済財政諮問会議だった。

ところが、同会議は財務省や内閣府の影響力が大きかった。そこで、政策決定の主導権を握ろうと考えた経済産業省が音頭を取って'13年に立ち上げたのが、産業競争力会議で、その発展形が未来投資会議だった。

産業競争力会議も未来投資会議も、閣僚のほか民間議員により構成され、消費増税対策や社会保障改革、最近では新型コロナ後の社会像の設計など、幅広い分野の議題に取り組んできた。

そして、その会議運営には、総理大臣補佐官だった今井尚哉氏を筆頭に、経産官僚の意向が色濃く反映されてきた。

ところが、菅内閣が発足すると、同会議は「成長戦略会議」と名前を変えて機能を縮小され、議長も首相から官房長官に格下げされた。これは今後、首相が議長を務め財務省が主導する財政諮問会議よりも格下の会議として位置づけられることを意味する。

財務省の手練手管には乗らない菅総理

官邸周りの人事からも言えることだが、経産省の影響力が、菅政権において大幅に縮小されるのは明らかだろう。そのうえ、菅首相は官房長官時代に自らの秘書官だった財務省の矢野康治主計局長と親密であるとされる。

財務省の主流である東大法学部ではなく、一橋大学出身の矢野氏が入省同期でトップの主計局長に抜擢されたのは、菅政権の成立を見越した「布石」だったというのが、大方の霞が関ウォッチャーの見立てだ。

財務省矢野康治主計局長

こうして見ると、すっかり財務省優位のように思われるが、事はそう簡単ではない。

菅首相は、官房長官時代に内閣人事局を通じて霞が関官僚を掌握しているため、財務省といえども、かつてのように政策を完全にコントロールするのは難しいからだ。

さらに、菅首相は政治の師として故・梶山静六氏を挙げている。梶山氏は、官房長官時代の1996年、旧大蔵官僚の振り付けの下で、消費増税を決断した。ところが、後に梶山氏が「俺は大蔵省に騙された」と深く悔いていたというのは、よく知られたエピソードだ。

その姿を間近で見てきた菅首相が、財務省の手練手管にそう簡単に乗せられるとは思えない。

実際、政権発足以来、菅首相は学者やマスコミ、経済人など官僚以外の様々な人々を広く呼び込み、じっくりと話を聞いて判断を下している。こうした菅首相の人柄やスタイルから見れば、いずれかの省庁が主導権を握るとはどうしても思えないのだ。

課題によっては、省庁の判断を待たず、菅首相が自らで決断するという、これまでの日本にはなかったトップダウン方式の政策決定過程が生まれることになるかもしれない。

『週刊現代』2020年11月28日号より

【私の論評】人事を駆使し、トップダウン方式の政策決定過程を日本でも定着させる菅総理(゚д゚)!

財務省優位の組織の筆頭というか、実質財務省の隠れ蓑の組織としては、財務大臣の諮問機関である「財政制度等審議会」が筆頭にあげられるでしょう。その財政制度審議会は25日来年度予算案の編成に向けた意見書をとりまとめ、麻生財務大臣に提出しました。

財政制度等審議会=財政審は大学教授や経営者らがメンバーで、毎年11月頃に予算編成の在り方について提言する意見書=建議を取りまとめています。

財政制度等審議会 財政制度分科会 委員名簿

< 委員 > 赤井 伸郎大阪大学大学院国際公共政策研究科教授
 遠藤 典子慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュート特任教授 
  大槻 奈那マネックス証券(株)執行役員チーフアナリスト・名古屋商科大学大学院教授
  黒川 行治千葉商科大学大学院会計ファイナンス研究科教授
  神津 里季生日本労働組合総連合会会長
 榊原 定征東レ(株)社友 元社長・会長
櫻田 謙悟SOMPOホールディングス(株)グループCEO 取締役 代表執行役社長
佐藤 主光一橋大学国際・公共政策大学院教授
  角   和夫阪急電鉄(株)代表取締役会長
  

十河 ひろ美 

(株)ハースト婦人画報社ラグジュアリーメディアグループ編集局長
兼リシェス編集長 
  

武田 洋子

(株)三菱総合研究所シンクタンク部門副部門長兼政策・経済センター長
  中空 麻奈BNPパリバ証券(株)グローバルマーケット統括本部 副会長 
  南場 智子 (株)ディー・エヌ・エー代表取締役会長 
  藤谷 武史東京大学社会科学研究所教授
 増田 寛也東京大学公共政策大学院客員教授
宮島 香澄日本テレビ放送網(株)報道局解説委員
    

<臨時委員>

 秋池 玲子ボストン・コンサルティング・グループ
マネージング・ディレクター&シニア・パートナー 
雨宮 正佳日本銀行副総裁
  上村 敏之関西学院大学学長補佐・経済学部教授
  宇南山 卓京都大学経済研究所教授
葛西 敬之東海旅客鉄道(株)名誉会長
  河村 小百合(株)日本総合研究所調査部主席研究員
喜多 恒雄(株)日本経済新聞社代表取締役会長
  木村 旬(株)毎日新聞社論説委員
  権丈 英子亜細亜大学副学長・経済学部教授
  小林 慶一郎東京財団政策研究所研究主幹・慶應義塾大学経済学部客員教授
小林 毅(株)フジテレビジョン取締役
進藤 孝生日本製鉄(株)代表取締役会長
末澤 豪謙SMBC日興証券(株)金融経済調査部部長金融財政アナリスト
  竹中 ナミ(社福)プロップ・ステーション理事長
  田近 栄治一橋大学名誉教授
  伊達 美和子森トラスト(株)代表取締役社長
  田中 里沙事業構想大学院大学学長・(株)宣伝会議取締役
土居 丈朗慶應義塾大学経済学部教授 
  冨田 俊基(株)野村資本市場研究所客員研究員
  冨山 和彦(株)経営共創基盤IGPIグループ会長
  平野 信行(株)三菱UFJフィナンシャル・グループ 取締役執行役会長
  広瀬 道明東京ガス(株)取締役会長 
別所 俊一郎東京大学大学院経済学研究科准教授
  堀   真奈美東海大学健康学部長・健康学部健康マネジメント学科教授
神子田 章博日本放送協会解説主幹
村岡 彰敏(株)読売新聞東京本社代表取締役副社長
横田 響子(株)コラボラボ代表取締役・お茶の水女子大学客員准教授 
吉川 洋立正大学長
 

 (注)◎は分科会長、○は会長代理


東レ会長 榊原 定征氏

今年の建議ではまず、日本は危機的な財政状況にあり、新型コロナウイルスの感染拡大防止、経済回復、それに財政健全化という“三兎”を追う厳しい戦いを強いられるとしました。

その上で、新型コロナ対策で行った持続化給付金など、非常時の支援を常態化させれば「モラルハザードを通じて、今後の成長の足かせとなりかねない」と懸念を表明しました。「単なる給付金」ではなく、コロナ後を見据え経済構造の変化への対応などに支援の軸足を移し、成長力の強化につなげるよう求めました。

また、社会保障制度については、受益と負担のアンバランスを正す取り組みを着実に進め、「将来に不安を感じている現役世代が希望を持てるようにしていくことで、消費の促進にもつながる」としました。

言うに事を欠いて『新型コロナ対策で行った持続化給付金など、非常時の支援を常態化させれば「モラルハザードを通じて、今後の成長の足かせとなりかねない」』とは、なんという非情で傲慢な言葉でしょうか。財務省の隠れ蓑となっている財政制度等審議会こそが日本の未来をぶち壊すといっても過言ではありません。

そもそも「財政制度等審議会」は国民生活を無視し財政カットだけしか考えない財務省の隠れ蓑組織です。今やインフラ関連公共事業も1998年をピークに右肩下がりで減らされる一方です。政府には赤字であっても維持しなければならないものがあります。インフラは赤字であっても必要なのです。

しかも、このブログでも何度か掲載してきたように、日本政府の貸借対照表(BS)では、膨大な政府負債があるのは事実ですが、一方では政府債権もあり、正味(ネット)でみると、日本政府の負債は大したことはなく、英米よりも低い水準です。

それどころか、日本政府に中央銀行(日銀)も含める見方でみても、英米より良いどころか、2018年あたりには、財政赤字はなくなった状況です。

このような状況で、緊縮財政や増税などする必要性など全くありません。一日も早く、大幅な減税と、数十兆円規模の積極財政を行うべきです。積極財政として、実行しなければならないことは、コロナ禍の現在いくらでもあります。効果のある方式ですぐにも実行すべきです。

菅総理もそのことは、熟知していることでしょう。

さて、上にあるように菅総理は、官房長官時代に内閣人事局を通じて霞が関官僚を掌握しているため、財務省といえども、かつてのように政策を完全にコントロールするのは難しいというのは事実だと思います。

上の記事では、課題によっては、省庁の判断を待たず、菅首相が自らで決断するという、これまでの日本にはなかったトップダウン方式の政策決定過程が生まれることになるかもしれないとしていますが、本当にそうなるかもしれません。

菅総理は、すでに人事の魔術師ともいうべき面を垣間見せています。それについては、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載ます。
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人事の魔術師菅総理

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では菅総理は、「人事が最大のコントロール」手段であることを熟知していると評価しました。まさに、人事こそは、他のどのようなコントロール手段にも増して最大のコントロール手段なのです。

この記事より一部を引用します。
"
経営学の大家ドラッカーは、組織において真に力のあるコントロール手段は、人事の意思決定、特に昇進の決定だといいます。
貢献させたいのならば、貢献する人たちに報いなければならない。つまるところ、企業の精神は、どのような人たちを昇進させるかによって決まる。(『創造する経営者』)
まさに、真に力のあるコントロール手段は、人事なのです。他にも様々なコントロール手段もありますが、しかし人事にまさるものはありません。単純な人事なら、AIにもできますが、政府の仕事に関わる重要な人事はやはり、総合的な観点から人間が行わなければなりません。
"
人事というと、報復人事などネガティブなものを思い浮かべがちですが、ドラッカーの言うように、特に昇進の決定、どのような人たちを昇進せるかによつて、菅政権の精神を示すことなのです。このことも、菅総理は熟知しているでしょう。無論、普通の会社で行われるような、マイナスの人事も当然行うことでしょう。これができて、はじめて政治主導が可能になります。

民主党が掲げた「政治主導」はまさに絵に描いた餅に過ぎませんでしたが、菅総理は、様々な人事手段を駆使して、トップダウン方式の政策決定過程を日本でも定着させ政治主導を実現するかもしれません。

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