2023年3月2日木曜日

「所得倍増と資産所得倍増って違うんですか?」岸田総理、総裁選時の公約「令和版所得倍増」は撤回せず 参院予算委―【私の論評】岸田首相の経済対策のうち「所得倍増政策」のみがアベノミックスとの親和性が(゚д゚)!

「所得倍増と資産所得倍増って違うんですか?」岸田総理、総裁選時の公約「令和版所得倍増」は撤回せず 参院予算委


岸田総理は、2021年の自民党総裁選挙の際に公約として掲げていた「令和版所得倍増」について、現在も撤回していないとの認識を示しました。

国民民主党 舟山康江 参院議員
「所得倍増と資産所得倍増って、これ同じなんですか?違うんですか?」

岸田総理
「所得倍増と資産所得倍増、違うか同じか。まず違います。所得倍増の考え方の中で、あわせて可処分所得を広げるという意味で、資産所得倍増という言葉が出てきたと理解をしております」

岸田総理は「所得倍増という考え方を重要視しているからこそ、今、賃上げに取り組んでいる」「賃上げを行うことの大きな意味は可処分所得を引き上げることだ」などと強調しました。

そのうえで、「所得倍増という看板はおろしていないのか」との野党議員の質問に「そのとおりだ」と答えました。

【私の論評】岸田首相の経済対策のうち「所得倍増政策」のみがアベノミックスとの親和性が(゚д゚)!

岸田総理の所属派閥である「宏池会」は、自民党内のリベラル派として知られており、池田勇人が佐藤栄作と袂を分かって旗揚げしたのが始まりで、2022年8月現在において党内で最古の派閥です。池田勇人氏は、「宏池会」の海の親です。

その池田勇人氏が総理大臣のときに、実現したのが「所得倍増計画」です。


正式には「国民所得倍増計画」です。1960年 12月に池田内閣によって決定された長期経済計画で、61年度から 70年度までの 10年間に実質国民総生産 (実質 GNP) を年率平均 7.2%増、実質国民所得を倍増しようという計画でした。

現在は、GNPは現在では用いられていない指標です。

GNP(Gross National Product)=“国民”総生産です。

1993SNAの導入に伴い、GNPの概念はなくなり、同様の概念として“GNI(Gross National Income)=国民総所得”が新たに導入されました。

GDPは国内で一定期間内に生産されたモノやサービスの付加価値の合計額。 “国内”のため、日本企業が海外支店等で生産したモノやサービスの付加価値は含みません。

一方GNPは“国民”のため、国内に限らず、日本企業の海外支店等の所得も含んでいます。

以前は日本の景気を測る指標として、主としてGNPが用いられていましたが、現在は国内の景気をより正確に反映する指標としてGDPが重視されています。

ただ、GNPを倍増するには、GDPも倍増しなければならず、それができなけばGNPは倍増しません。そのため現在でいえば、GDPをニ倍にする計画であるといって良いです。

この計画では、(1) 社会資本の充実、(2) 産業構造の高度化、(3) 貿易と国際経済協力の促進、(4) 人的能力の向上と科学技術の振興、(5) 二重構造の緩和と社会的安定の確保という5項目が計画の課題として掲げられました。

この「国民所得倍増計画」に先立って日本の経済計画には「経済自立5ヵ年計画」 (1955.12.鳩山内閣) 、「新長期経済計画」 (57.12.岸内閣) の2つの計画が策定されていましたが、所得倍増計画は従来の2計画とは異なって日本経済の成長力を高く評価するとともに、社会資本の充実、産業構造の高度化などを目指した意欲的な計画で、第2次世界大戦後の日本の経済計画策定の歴史に一時代を画しました。

当初は「月給が2倍」といったあいまいな目標だったようですが、池田首相のブレーンだった官僚出身の経済学者、下村治氏らが積極財政政策による景気刺激で実現する道筋を理論化。1970年度のGNP(国民総生産)を1960年度対比で2倍の26兆円に引き上げる目標を設定し、その後の経済運営の基本方針に据えました。

所得倍増計画では、「国民生活水準の顕著な向上」「完全雇用の達成」など前向きなスローガンを掲げ、鉄道や道路など社会資本の整備、重化学工業化、社会福祉の推進などの政策が次々と実行に移されました。1964年の東京五輪も高度成長に大きく貢献しました。結局、所得倍増の目標は超過達成され、日本は1974年の石油危機まで息の長い経済成長を続けることになります。

計画の数値目標は、35年度の国民総生産額である13兆6千億円の2倍、26兆円を10年以内に 達成するというものであった。また、35年度から年間平均9%の経済成長率を達成し、38年度 に17兆6千億円の実現を期することが当初3か年の目標とされました。 

金融引締が命のような、日本銀行も池田首相の「低金利路線」に阻まれ て公定歩合引上げ等の引き締めには踏み込めず、結果としてこの頃の日本の高度成長を阻害することもありませんでした。

そうして、日本経済は予想以上の成長を遂げ、実質国民総生産は約6年で倍増を、国民一人当 り実質国民所得は7年で倍増を達成するという驚異的な経済成長率を記録したのです。 

その後、佐藤栄作内閣によって高度成長によるひずみの是正や社会資本整備を目的とする 「中期経済計画」(40年)および「経済社会発展計画」(42年)が策定されていくことになりました。

さて、現在日本人の賃金が他国なみに上がらないのは、過去の日銀の金融政策の失敗によるものです。それについては、このブログでも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【日本の解き方】日本の賃金はなぜ上がらない? 原因は「生産性」や「非正規」でなく、ここ30年のマネーの伸び率だ!!―【私の論評】日本人の賃金が低いのはすべて日銀だけのせい、他は関係ない(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。

これまでの筆者の試行錯誤では、マネーの伸び率が最も相関が大きい。マネーの伸び率でも日本は世界の中でほぼビリだ。ちなみに、140カ国で30年程度の名目成長率とマネー伸び率の相関は0・90(1が最大)、大きな異常値と思われる数字を除いた130カ国でも0・73といずれも高い。社会科学ではめったに見られない高い相関だ。

もちろん相関関係は因果関係を意味しないが、マネーの伸び率は政策的に操作可能なので、結果として名目経済成長率の低下を招いた可能性がある。つまり、こうした国際比較分析からいえるのは、日本の賃金が伸びなかったのはマネーの伸び率の低さによるものということだ。

無論、現在日本経済には30兆円程度の、需要ギャップがあるため、これをまず埋める必要がありますが、埋めたにしても、金融緩和を継続しなければ、賃金はあがりません。

所得倍増計画には、実質経済成長率を高めるような政策が必要であり、規制改革がないと実施しにくいです。それとともに、需要を増やすためには、マクロ経済政策でインフレ目標を高めるべきです。

「インフレ目標2%」にこだわり、2%を超えたらすぐに金融引締に転ずるようなことをすれば、仮に年間で1%くらいしか伸びないと、倍増するのに75年程度かかることになります。

これは、「72の法則」として良く知られています。ちなみに、お金が2倍になる期間が簡単にわかる便利な算式がありますこれは、「72÷金利≒お金が2倍になる期間」となる。 たとえば、金利18%でお金を借りた場合、「72÷18=4」となるので、約4年で借りたお金が2倍になることがわかります。

インフレ目標を4%くらいに引き上げて、需要を少し強くすれば、簡単に名目5%くらいにできるのできます。目標を5%にすると倍増が13年~14年になるので、良い目標になります。ちなみに、この手法を高圧経済と呼びます。

他の効果的な政策も実施すれば、さらに目標達成は早くなります。たとえば、少子高齢化への対応として、経済学上でいうところの装置化を大々的に導入すべきです。

これは、昔なら機械化です。現在であれば、ロボット化のさらなる推進と、AIの積極活用です。無論ロボットのAI化も含みます。これでかなり生産性があがります。この生産性の向上に呼応して、日銀が金融緩和をさらに拡大すれば、経済は順調に伸びます。

これを積極的にすすめていけば、所得倍増は10年間で成し遂げられるかもしれません。

私は、少子化を様々な方法で改善することができるという説は、あまり信用していません。実際、そのような制度がなくても過去の日本では人口が飛躍的に伸びていた時期もあるのです。少子化の原因は何かをつきとめたり、それを解消する方法を見つけるのはかなり難しいと思います。であれば、少子化になっても困らない措置をするのか最上の策だと思います。

NHKの社員の平均賃金は1800万円といわれています。これが事実なのかどうかは、はっきりしません。

ただ、もし日本が平成年間に日銀が金融政策などを間違わなれば、日本も他の先進国と同様に賃金が伸びて、このくらいの水準は当たり前になっていたと考えられます。

岸田首相は、「令和版所得倍増」は、撤回しないというのなら、上で述べたような政策をとる必要があります。

これを実現して、「所得倍増」を是非とも実現していただきたいものです。岸田首相の経済対策はいずれも、岸田首相自身が「進歩の10年」と評価する、安倍・菅政権時の経済対策とは齟齬をきたすものばかりですが、「所得倍増」はそうではありません。

安倍・菅政権の経済政策の継続の上で、「所得倍増」は成り立つものです。この政策だけが、アベノミックスと親和性があります。


人間には、三種類あります。最初のタイプは、先人の遺産を引き継ぎ発展させるタイプ、次のタイプは、先人の遺産を引き継ぎ維持するタイプ、最後は先人の遺産を破壊するタイプです。

岸田総理が、今後増税、金融引締方向に走れば、日本人の賃金がさらに下がることになります。これは安倍・菅政権の遺産を破壊することになります。

「所得倍増」を成し遂げれば、安倍・菅政権の遺産を引き継ぎ発展させることになります。いずれの道を選ぶかは、岸田総理自身です。

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2023年3月1日水曜日

林外相、クアッド出席へ 与野党が合意―【私の論評】林外相のG20不参加は、Quad、インド太平洋戦略の生みの親、安倍晋三氏のレガシー潰しか(゚д゚)!

林外相、クアッド出席へ 与野党が合意

林芳正外相=衆院本会議場

 衆院議院運営委員会の理事会で6日、政府が安倍晋三首相と河野太郎外相の海外出張について説明したのに対し、野党側は国会軽視の対応だとして反対し、理事会の了承を得られませんでした。

 林芳正外相が3日にインドで開かれる日米豪印4カ国の協力枠組み「クアッド」の外相会合に出席できる方向になった。自民党の野上浩太郎、立憲民主党の斎藤嘉隆両参院国対委員長が1日、国会内で会談し、3日の参院予算委員会の一般質疑に林氏の出席を求めないことで合意した。野上氏が斎藤氏に提案した。

 参院予算委は1、2日の両日、岸田文雄首相と全閣僚が出席する基本的質疑を実施。林氏は1~2日にインドで開かれる20カ国・地域(G20)外相会合への参加を断念したが、与党は外交上の国益の観点から、林氏がクアッドに出席できるよう野党と調整していた。

【私の論評】林外相のG20不参加は、Quad、インド太平洋戦略の生みの親、安倍晋三氏のレガシー潰しか(゚д゚)!

最初、林外相はG20外相会談も、QUAD外相会談も、出席するつもりであったとされています。ところが、国会の予算審議には、副大臣ではなく外相本人が出席すべきだという意見が主に野党側から上がり、結局、日程の関係上、国会における予算審議を優先し、インドへの訪問の日程をずらすことにしたのです。

G20外相会談への出席はもうできない状況になりました。これに関しては、当然のことながら、まともな議員らかに非難轟々となったので、QUAD外相会談参加は、急遽の合意で決まったのでしょう。

林外相は、山崎幸二統合幕僚長と共に、インド外務省が資金を出して100カ国以上の出席者が集まる大きな国際会議であるライシナ会議でもスピーチをする予定でした。それも欠席します。

どうして最初から、G20含め根回し、日程調整しなかったのでしょうか。これは、以前からいわれてきたことですが、国会改革をしないと、長く真面目に総理の任を果たそうとする人は「国会に殺されてしまいかねない」です。昨日もこのブログに掲載したメディアによる首相動静もやめるべきです。岸田首相のキーウ訪問は、無論電撃訪問にすべきです。そうでなければ、日本外交は地に落ちます。


林外務大臣はもちろん、外務省、さらに自民党の"外交センス"が、実はこんなレベルだったという残念な現実の露呈です。これはG7議長国として、またG20への責任の自覚の欠如のみならず、QUAD軽視、インド軽視の姿勢の表れでしょう。同時にQuadやインド太平洋戦略の父でもある安倍晋三氏のレガシー潰しと疑われても仕方ないと思います。

そもそも、日本の多くの国会議員は、インド太平洋戦略やQuadの重要性を認識しておらず、政局にしか関心がなく、外交、安保などどうでも良く、とにかく安倍首相の功績でもある、これらのレガシーを潰したくて仕方ないのかもしれません。野党は無論のこと、与党の中にもそうした馬鹿者、愚か者が存在しているからこそ、今回のような事態が生じてしまったのではないでしょうか。

このようなことは、安倍氏が総理大臣であったときにもありました。衆院議院運営委員会の理事会で2018年7月6日、政府が安倍晋三首相と河野太郎外相の海外出張について説明したのに対し、野党側は国会軽視の対応だとして反対し、理事会の了承を得られませんでした。

日本共産党の塩川鉄也議員は、河野外相が野党の要求で国会に出席したためチャーター機を利用し「質問は2問しか出なかった。1問が何千万円だ」などと発言した問題について、「国会出席を軽んじる発言だ」と批判。首相外遊日程も当初より大幅に延長されており「大臣には国会での応答義務(説明責任)があり、それを果たすべきだ」と述べました。

立憲民主、国民民主、無所属の会の各党会派も「国会会期を一方的に延長しておきながら国会軽視もはなはだしい」などと指摘。古屋圭司議運委員長は、河野氏の発言について「よろしくない」と苦言を呈したものの、「政府の判断で対応を」と述べました。

当時の河野外相も、安倍総理も無論、重要な案件で海外に行っていたと思います。当時これは話題となり、海外においては首相や外相が、国会会期中にすべの審議に出席する義務はないことが報道されたりしていました。

サウジアラビア北西部ウラでムハンマド・ビン・サルマン皇太子と会談した安倍晋三首相(2020年1月12日)

この状況は現在も変わっていないのです。海外では、国会会期中に大統領や、首相や、閣僚が海外の重要会議に出席することも珍しくもありません。ですから、国会出席を理由にG20を欠席するというのは非常に珍しいですから、すでに世界的なニュースになってしまったことが非常に問題です。

出席しても大したニュースにはならないですが、欠席したことで、大きなニュースになってしまいました。何が起きているのか、世界中が注目しています。

インドはG20議長国として、今年50以上の都市で200以上のイベントを開催します。その中で外相会談は9月の首脳会談を除けば、トップクラスの目玉です。

その目玉である外相会談を、日本だけが欠席したのですから、インドが本気で取り組んでいる会議にはでなくていいと、日本はメッセージを送ったことになります。これは、インドのプライドを深く傷つけたでしょう。

G7に新興の影響力ある13カ国を加えて会議を行うのです。ところが、日本がG20には1ランク下げた大臣を送るならば、どのようなメッセージを送ることになるでしょうか。

G20はG7に影響力のあると見られる国13カ国を加えて行う会議です。今回、林外務大臣は行かず、ランクが下の副外務大臣を行かせるということは、日本にとってG7は大事だが、残りの13カ国は大事ではないというメッセージを送ってしまうことになります。

実際の世界の現状はそうではありません。G7だけでは足りないから、最近、G7各国は、G7以外で力をつけつつある国をゲスト国として呼び、G7とそれらの新興国を合わせて、会議を行うのです。

日本も今年5月に広島で開催する、G7にゲスト国としていくつかの国々を呼ぶでしょう。日本自身が送る大臣のランクを下げたのに、これらの新興国は応じてくるでしょうか。

さらに問題なのは、今回のG20に中国の外相は出席しているということです。今年、インドは、G20の議長国というだけではなく、上海協力機構の議長国でもあります。しかし、インド軍は、印中国境で中国軍と戦闘準備状態でにらみ合ったままです。

そのような中で、インドは中国に対し、厳しい姿勢で臨んでいます。だから、日本や米国との協力関係を深め、昨年後半には、米軍を印中国境近くに受け入れて共同演習も行い、今年に入ってからは、日印共同演習が1月から3月まで4回(陸1回、海1回、空2回)も行っているのです。

日本がインドに派遣する大臣のランクを下げれば、インドは日本に興味があるのですが、日本の方はインドに興味ないかのようなメッセージを送ったことになり、これは日本の国益を損ねことになります。最大の問題は、国会が林外相のG20出席の重要性に気付いていなかったことです。そもそも日本の国会は、世界情勢に影響を与える国としての体制になっていません。

国会議員は、もっと世界で講演すべきですし、そもそも「外遊」という、まるで遊びに行くような言い方で外交を軽視することは改めるべきです。外交は国内政治の延長として起きる部分はありますが、同時に世界情勢の変化は、国内を動かします。日本の防衛政策が、冷戦期と冷戦後で違うのを見れば、世界の動きが日本国内を変えているのは明らかです。

安倍首相は「インド太平洋」の重要性を説き「QUAD」の設立を提唱しました。この動きにより、現在の世界はそれまでの世界とは明らかに異なる秩序が形成され、中国の危険性が認識されました。

QUADの父安倍晋三氏(右)とインドのモディ首相

まさに、安倍外交によって日本から世界を動かす時代になったのです。安倍元総理が「インド太平戦略」を打ち出し、それに多くの国が共鳴したことにより、日本は単独で中国と対峙するのではなく、多くの国々とともに対峙する体制を整えることができました。

国内情勢を良い方向にもっていくためには、日本自身が世界情勢を動かす必要がある、ということを、国会はよく認識すべきです。そういう体制を整えることができなければ、同じような問題を、また起こすことになります。

林外相はQuadの会議には出席することになりました。G20に参加しなかった失地をできるだけ、取り戻すべきです。岸田首相も、林外相も安倍元首相のような外交ができないのは仕方ないと思いますが、このレガシーを潰すような真似だけはしないでいただきたいです。

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2023年2月28日火曜日

インドでのG20会合、林外相は欠席の方向-国会を優先―【私の論評】古い慣習に縛られず、国会会期中に林外務大臣はG20に、岸田首相はキーウ電撃訪問すべき(゚д゚)!

インドでのG20会合、林外相は欠席の方向-国会を優先


 3月1日からインドで開かれる20カ国・地域(G20)外相会合について、日本の林芳正外相は欠席する方向となった。政府関係者によると、国会審議を優先する。

 林外相は28日午後の記者会見で、G20外相会合の意義について「集まっていろいろな議論をするということが大変大事な機会だ」と指摘した。インドが議長国で、中国やロシア、インドネシア、南アフリカ共和国なども構成国となっている今回のG20への欠席は、今年の主要7カ国(G7)議長国である日本として外交機会を逸することになる。

 日本からの出席者について、林外相は「最終調整中だが、現時点で確定していない」と語った。

 3日には、日米とオーストラリア、インドの4カ国によるクアッド外相会合も、G20に続く形で予定されている。林氏は同会合への対応についても「日本の参加の在り方については現在調整中だ」と述べるにとどめた。

 国会では2023年度予算案が28日に衆院を通過する見通しとなっており、参院予算委員会は全閣僚が出席する基本的質疑を3月1、2両日に行う日程を既に決めている。

【私の論評】古い慣習に縛られず、国会会期中に林外務大臣はG20に、岸田首相はキーウ電撃訪問すべき(゚д゚)!

インドで開かれる主要20か国・地域(G20)外相会合への林外相の出席が、危ぶまれているのは、林外相自身の決断というよりは、与野党が2023年度予算案審議への出席を優先すべきだとして、難色を示しているためです。

「外交日程も重要だが、新年度予算の審議は出席がマストだ」

自民党の藤川政人・参院予算委員会筆頭理事は27日、国会内で記者団に、林氏の外遊は認めないとの考えを示しました。立憲民主党の斎藤嘉隆参院国会対策委員長も「立法府としての立場から、国会での対応を優先していただきたい」と記者団に語りました。

自民党の藤川政人・参院予算委員会筆頭理事

予算案は28日に衆院を通過しました。後は3月1日に参院予算委員会で実質審議入りする予定です。1、2日は首相と全閣僚が出席する「基本的質疑」が行われ、3日は首相、財務相と、要求された閣僚が出席する「一般質疑」が行われる方向です。

林氏が基本的質疑に出席すれば、1~2日に開催されるG20外相会合には参加できません。3日はインドで日米豪印4か国の協力枠組み「クアッド」の外相会談の開催も調整中です。野党が3日に林氏に答弁を求めることを検討しており、参院自民党からは林氏のクアッド外相会談出席も難しいとの見方が出ています。

外務省は林氏が出席できない場合、副大臣を派遣する方針です。

憲法63条は、首相や閣僚が答弁を求められた場合、国会に「出席しなければならない」と定めています。この規定を理由に、予算委の基本的質疑などで首相と全閣僚に出席を要求するほか、質問内容に応じて閣僚に出席を求めることが慣例となっています。

1999年に成立した国会審議活性化法では、閣僚の代わりに副大臣や政務官が国会で答弁できる制度が導入されたが、形骸化しているのが現状です。

与野党が国会審議などで外交の重要性を主張しながらも閣僚の海外出張を制限する姿勢には、野党内にも疑問の声があります。一部野党だけでなく与党の反対で林外務大臣は、G20会合に参加できないのです。これは明らかに国益に反します。

G20は先進国や新興国が幅広く参加する枠組みで、力で国際秩序に挑戦するロシアや中国もメンバー国に含まれている。対露包囲網を強化したい日米や欧州各国にとっては、議長国インドをはじめ、インドネシアやブラジルなどに直接働きかけ、法の支配を重視する国際世論を形成する重要な外交舞台となります。

日本は今年、G7議長国です。岸田首相や林氏は議長国として対露圧力を主導すると表明しており、G20の重要会議への欠席は日本外交に痛手となります。

G20には親露、親中の国も存在します。インド自体、ロシアとの密接な関係を有する国です。林大臣が参加して日本の考えを強く発信すべき。国会の古い因襲は見直すべきです。


昨日は、岸田首相のキーウ訪問に関して掲載したばかりです。首相を含む閣僚が国会開会中に海外訪問する際、国会に事前承認を求めるのが慣例となっています。そのため、国会開催中の現在、岸田首相がキーウを訪問することになれば、国会に事前承認を求めれば、首相の動向が大勢に知られることになり、首相の命が危ぶまれることになりかねません。

ただ、自民党の高木毅国対委員長は27日、岸田文雄首相が検討するウクライナの首都キーウ訪問を巡り、国会は事後報告も含め柔軟に対応すべきとの認識を示しました。

一般会計の総額が過去最大の114兆円余りとなる新年度予算案は衆議院本会議で採決が行われ、自民・公明両党などの賛成多数で可決され、参議院に送られました。予算案は、憲法の規定により、年度内に成立することになりました。

であれば、今後岸田首相、林外務大臣が一時的に国会から抜けても、さほど大きな問題はないと考えられます。

経営学の大家ドラカーは以下のように語っています。

部下本人に意思決定させるべきことまで、上司が首を突っ込んで一から十まで指示をしたり、自分の貢献に責任をもって意思決定しなければならないのに、上にお伺いを立て、上が決めたことに従う形をつくり、責任を避けているのが現実です。これが、過去の慣例や慣習から抜け出せていない姿です。成果をあげるために身につけるべきはどんな習慣なのでしょうか。

第一に身につけるべき習慣は、なされるべきことを考えることである。何かをしたいかではないことに留意してほしい。なされるべきことを考えることが成功の秘訣である。これを考えないならば、いかに有能であろうと成果をあげることはできない。
なされるべきこととは、「やりたいわけでもない、頼まれたわけでもありません。しかし、状況を客観的に考えると自分が果たすべき貢献はこれだ」といえるものです。

バイデン大統領のキーウ訪問で、G7で訪問していないのは日本の岸田首相だけに

この際、今国会会期中に、岸田氏はキーウを電撃訪問し、林外務大臣は、G20に参加してはいかがでしょうか。これによって、おかしげな慣例は一挙に破られることになり、その後はこのような慣例に縛られることもなくなります。

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2023年2月27日月曜日

「事前了解ない場合も」首相のウクライナ訪問で自民―【私の論評】岸田首相は現在の意思決定や情報収集のスタイルを変え、キーウを電撃訪問せよ(゚д゚)!

「事前了解ない場合も」首相のウクライナ訪問で自民

自民党の高木毅国対委員長

 自民党の高木毅国対委員長は27日、岸田文雄首相が検討するウクライナの首都キーウ訪問を巡り、国会は事後報告も含め柔軟に対応すべきとの認識を示した。「慣例的に首相が海外に行く場合は国会が事前了解しているが、今の状況を考えると当てはまらない場合もあるのではないか」と語った。

 首相を含む閣僚が国会開会中に海外訪問する際、国会に事前承認を求めるのが慣例となっている。高木氏は、「安全を確保してウクライナに首相が行くことが必要だ。国会として、それに対応することはあるだろう」と述べた。

【私の論評】岸田首相は現在の意思決定や情報収集のスタイルを変え、キーウを電撃訪問せよ(゚д゚)!

21日のバイデン米大統領のウクライナ訪問で、G7首脳で行っていないのは日本だけになってしまいました。岸田総理も1月頭に欧州を歴訪したので、そのとき行けばよかったのにと思いましたが、行きませんでした。「行けなかった」のでしょうか。


2月21日、岸田総理は公明党の山口代表と会談を行いましたが、「ウクライナへの訪問に意欲を示した」と報道されています。

ただ基本的に国会開会中は、国会に届け出をする慣例があります。上の記事の、高木毅国対委員長の「国会は事後報告も含め柔軟に対応すべきとの認識」を示したことは、岸田総理はキーフを訪問し、国会には事後報告するつもりであることを示しているのかもしれません。

しかし、これでは、情報が漏れてしまうことになります。日本では新聞には「首相動静」欄があり、首相の動静を逐一報告しています。このようなものが存在するのは日本だけです。しかも、番記者が常に張り付いています。

岸田首相がキーウに行くのであれば金・土・日を利用するしかありません。「警備が難しい」と言う人もいますが、そこは特に問題はないでしょう。ただ、隠密に行けるどうかですが、いまの岸田政権は情報管理が非常に弱く、何でも漏れてしまいます。

こうした中、“行けないのならば逆に呼べばいい”ということで、政府内ではゼレンスキー大統領を5月のG7広島サミットに招待する案が浮上しています。 政府関係者によりますと、岸田総理も「選択肢のひとつとしてはある」と話しているということです。

このようなことまで、漏れてしまうのですから、岸田政権の情報管理には問題ありといえます。

ただ、ゼレンスキー大統領は、昨年12月21日、ワシントンを訪れ、ホワイトハウスで米国のバイデン大統領と会談しています。岸田首相としては、是が非でもキーウを訪問したいでしょう。

日銀の総裁人事の漏れもありました。内閣改造のときも、正式発表の前にほとんど漏れていました。何十年も前だとそういうこともありましたが、相当前から、このようなことはなく、無論安倍・菅政権のときもこのようなことはありませんでした。岸田政権の情報管理はまるで数十年前に先祖返りしたかのようです。

本当に、信じられないくらい漏れています。どうして、このようなことになるかといえば、おそらく、岸田首相は、相談する人が多くて情報管理ができないのではないでしょうか。

相談する人が多ければ、多いほど、加速度的に情報は、漏れやすくなります。相談する人はが、ほんの数人であれば情報が漏れたとしても、すぐに誰が漏らしたかがわかります。それが相互監視となり、漏れないのです。

いちばん漏れないのは、2人で決めることでしょう。当事者2人以外にはわからないです。

情報管理ができないと、キーウ訪問でも「どうぞ撃ってください」と言わんばかりになってしまいます。

ただ、キーウ訪問ということになれば、日本はポーランドまでなら専用機で行けますし、ポーランドまで行ったあとは夜行列車を使えばすぐにいけます。キーウにはすでに多くの要人が訪問していますが、行き方はボーランド経由で、皆同じですし、それほど時間も掛かりません。

日本以外の国なら問題はないのですが、日本では、いつ行くかが問題はいつ行くかです。「いついつ行きます」と発表すればとんでもないことになります。まさに、日本は平時に慣れしていて、有事に対応できない国ということができます。まさに、戦後体制そのものです。

それでも、安倍元総理は、リオ五輪の閉会式にマリオに扮して出ました(写真下)。あれには、驚きました。このような事例もあるのですから、いろいろ工夫すれば、岸田首相もキーウ電撃訪問もできると思います。


北朝鮮の弾道ミサイルが飛翔中に、鼻の治療のため通院していたことについて、ベテランの記者などは「ひょっとするとキーウ訪問か?」と警戒していました。

ただ、これ自体は、本当だったので驚きました。何しろ岸田首相が、病院を出たのは北朝鮮のミサイルが着弾した直後でしたから。普通なら、通院は後回しにして、北のミサイルに対応することを優先すると思います。そのようなアドバイスをする人も周りにいなかったでしょうか。こんなことからも、岸田政権の情報管理には疑問符がつきます。

昨日は、このブログに岸田文雄首相は26日の自民党大会で、2012年12月の政権交代以降の自公政権について「安倍(晋三)元首相の強力なリーダーシップのもと、死力を尽くしてきた」と強調し、「前進の10年」と成果をアピールした。そのうえで「次の10年」の創造に向け、全力を注ぐ考えを示したことを掲載しました。

この認識は正しいです。岸田首相は、経済政策でも安倍路線を継承し「前進の10年から、発展の10年」を目指していただきたいです。

岸田首相が本気で「次の10年」のことを考えているなら、経済政策でも何でも、本当に重要なことは、多くの人に相談するべきではありません。自分一人だけか、相談するにしても、一人の人に絞るべきです。

重要なことを決定し終わって、それを実行する段階で多くの人に相談するのは良いことだと思いますが、重要な決定そのものは自分で行うべきですし、相談するのは本当に心から信頼できる人にだけにすべきです。しかも、相談したとしてそれで考えを変えるというのではなく、どのような反応を示すか探るためにすべきです。

また、重要な決定をするに先だち、情報を集めるために多くの人に話しを聴くのは良いことだとは思いますが、決定そのものは一人で行うべきです。

岸田総理が「安倍・菅路線」を評価するというなら、まずは「安倍晋三 回顧録」を精読し、よく考えて、「安倍・菅路線」を引き継ぐための重要な意思決定した上で、信頼のおける人数人に相談した上で、実行するというのが最上だと思います。

生煮えの状態で、同じことを多くの人に相談してしまえば、最後に相談した人の意見が一番強く意思決定に影響を与えることになりかねません。それでは、良い意思決定などできるはずもありません。

なお、意思決定に関しては、経営学の大家ドラッカー氏が、その著作で様々な方面から語っています。意思決定のプロセスなどに興味のある方は、是非ご覧になって下さい。また、意思決定についてドラッカーが何を語っているのか手っ取り早く知りたい方は、以下の記事をご覧下さい。これをご覧になれば、意思決定関して考慮すべき項目が多数あることに驚かれるでしょう。
【ドラッカー】意志決定とは何か【マネジメント】
菅前首相の情報収集については、以下の記事をご覧になって下さい。
菅首相の徹底した“情報収集術” 高い処理能力と速い政治決断、官僚はこれまでにない緊張感 ―【私の論評】菅総理の卓越した情報収集力に、マスコミも大緊張を強いられることになる(゚д゚)!
福島を訪問した菅総理(当時)

詳細はこの記事をご覧いただくものとして、菅氏は、情報とデータの違いをしっかりと認識していたのだと思います。

この記事にも掲載した、ドラッカーの主張を以下に掲載します。
データそのものは情報ではない。情報の原石にすぎない。原石にすぎないデータが情報となるには、目的のために体系化され、具体的な仕事に向けられ、意思決定に使われなければならない。(『未来への決断』)

データそのものを多数集めても混乱するだけです。 先に示したように「生煮え」の状態で、同じことを多くの人と相談するということは、結局データを多く集めているにすぎないのです。

目的のために体系化され、具体的な仕事に向けられ、意思決定に使えるものが情報なのです。菅前総理は、データ集めでなく情報収集していいたのであり、それが得意だったのです。こうした姿勢でデータに接する姿勢であれば、多くの人から意見を聞いても混乱することはありません。

それにしても、キーウ訪問などの意思決定等は、多くの人に相談すべきではないです。そんなことをすれば、岸田総理の命に関わることになります。安倍元総理のことが頭をよぎります。あのようなことは、2度とごめんです。

岸田総理、これを機会に、意思決定や情報収集のスタイルを変えてみてはいかがでしょうか。そうして、是非ともキーウを電撃訪問していただきたいです。

【関連記事】

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2023年2月26日日曜日

岸田首相、安倍氏の功績強調 「次の10年」へ意欲 自民党大会―【私の論評】岸田首相は、経済政策でも安倍路線を継承し「前進の10年から、発展の10年」を目指せ(゚д゚)!

岸田首相、安倍氏の功績強調 「次の10年」へ意欲 自民党大会


 岸田文雄首相は26日の自民党大会で、2012年12月の政権交代以降の自公政権について「安倍(晋三)元首相の強力なリーダーシップのもと、死力を尽くしてきた」と強調し、「前進の10年」と成果をアピールした。そのうえで「次の10年」の創造に向け、全力を注ぐ考えを示した。

 首相は安倍政権について「経済状況は大きく改善し、雇用も企業収益も拡大し、もはやデフレではないところまで戻ってくることができた」と指摘。外交・安全保障分野でも「『自由で開かれたインド太平洋』の推進、日米同盟の深化や平和安全法制の整備を実現した」と述べるなど、安倍政権の実績を次々に挙げた。

 そのうえで10年間を振り返り、「(旧)民主党政権によって失われた日本の誇り、自信、活力を取り戻すために、皆で力を合わせ、大きくこの国を前進させた」とアピールした。

 首相は「今こそ安倍元首相、菅(義偉)前首相が築いてきた『前進の10年』の成果の礎の上に『次の10年』を作るため、新たな一歩を踏み出す時だ」と強調。「さらなる挑戦を続けていこう」と呼びかけた。

 首相は「防衛力を抜本的に強化し、積極的な外交を展開することで、戦後最も複雑で厳しい状況の中、いかなる事態が生じても国家・国民を断固として守り抜く」と述べた。5月に広島で開かれる主要7カ国(G7)首脳会議を成功させ、「世界の平和と繁栄の新しい秩序」を目指す意欲を示した。

【私の論評】岸田首相は、経済政策でも安倍路線を継承し「前進の10年から、発展の10年」を目指せ(゚д゚)!

上の記事で岸田首相は「(旧)民主党政権によって失われた日本の誇り、自信、活力を取り戻すために、皆で力を合わせ、大きくこの国を前進させた」、「今こそ安倍元首相、菅(義偉)前首相が築いてきた『前進の10年』の成果の礎の上に『次の10年』を作るため、新たな一歩を踏み出す時だ」と強調、「さらなる挑戦を続けていこう」と呼びかけたことは、評価できます。

まったくそのとおりだからです。岸田総理は、安全保証や外交等に関しては、安倍・菅路線を継承しているといえます。

たとえば、英国訪問した岸田文雄首相と、リシ・スナク英首相は1月11日(日本時間同)、防衛分野での協力強化に向け、自衛隊と英軍部隊の共同訓練を推進し、相互往来をスムーズにする「円滑化協定(RAA)」に署名しました。

「円滑化協定」の署名を終えて握手をする岸田首相とスナク英首相

2020年、当時の菅義偉首相と、オーストラリアのスコット・モリソン首相(同)が、同じ「円滑化協定」に合意した際には、オーストラリア最大の全国紙「「The Australian(オーストラリアン)」はこれを、「防衛協定(=安保条約と言い換えてもいい)」という単語を使って報じています。

これに倣うなら、今回の日英首脳の署名はさしずめ「日英同盟の復活」ともいえます。

このように、外交・安保に関しては、岸田首相は安倍・菅両政権を継承していると言えると思います。

ただ、国内のこと、特に経済に関しては、とても安倍・菅政権を継承しているとは言い難いです。これについては、以前このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを掲載します。
「安倍晋三 回顧録」出版は間違いあれば正すため インタビュアー「違うなら言って」―【私の論評】「安倍晋三 回顧録」をまず最初に精読すべきは、岸田総理その人か(゚д゚)!
私は、回顧録を読むまでもなく、「安倍おろし」はあったものと確信しています。安倍氏は総理在任中に、2度も消費税延期を行い、その度に解散総選挙をして、国民の信を問い、財務省の圧力を跳ね除けました。また、安倍・菅両政権のときに合計で増税なしで100兆円の補正予算を組み、コロナ対策を実施しました。

これは、両方とも財務省が嫌がることです。

安倍・菅両政権では、補正予算を活用するとともに、雇用調整助成金制度を活用して、雇用対策を行ったため、他国では失業率がかなり上がったのに対して、日本では2%台で推移しました。これは、大偉業と言って良いです。残念ながら、これはマスコミがほとんど報道しないので、多くの国民は普通のことと思っているようですが、特に若年層にはかなり訴求効果があったものと考えられます。岸田首相は、これを大いに参考にすべきです。

安倍首相がこのような姿勢を在任中にも貫いたからこそ、残念ながら、GDPは2度の消費税増税によって伸びませんでしたが、日銀が金融緩和を継続したので、雇用は劇的に良くなりました。これを否定する人もいますが、そういう人たには、数字やグラフが読めないのかと言いたいです。特に、若年層、高校生・大学生・院政の就職率は格段に上がりました。これが、政権の維持に寄与したのは間違いないです。
岸田総理が、財務省が「感じたことがない」と語るのは、おそらくは財務省を配慮してなのだと思います。もし、本気でそう考えているとするなら、あまりにも鈍感です。岸田総理は、以下の安倍内閣において外務大臣であり、閣僚であり続けました。
第2次安倍内閣
第2次安倍改造内閣
第3次安倍内閣
第3次安倍第1次改造内閣
第3次安倍第2次改造内閣

 長きわたり、安倍内閣の閣僚であり続け、しかも外務大臣という重要ポストであり続けたのですから、財務省の圧力を感じなかったはずはありません。それに、財務省は財務大臣を除いてすべて官僚であり、その官僚があたかも大きな政治グループのような行動し、議員やマスコミなどを利用して時の政権に圧力をかているのは周知の事実です。

岸田氏と財務省はあまりに関係が良くて、それに気づいていなかったということもあるのかもしれません。もし、そうであれば、政治家としてはかなり鈍感な部類に入ります。

ただ、いずれにしても、安倍内閣や菅内閣が、財務省と対峙しなければならなかったのか、岸田総理は安倍元総理の「回顧録」を熟読して学ぶべきと思います。

以前もこのブログで指摘したとおり、外交・安保においては安倍路線を継承するものの、国内の経済政策などでは継承しないのは、やはり、外交・安保では国外に米国やEUなどの相手がおり、安倍・菅政権において打ち出した政策や、約束事はすべて継承せざるをえないのでしょう。

いかに、林外相が親中派であり、心許ないといえども、相手のあることですから、約束事などを翻して、親中的な態度をとれば、米国などから二次制裁を受けることになりかねないですから、岸田政権としては露骨に親中的な態度はとれないのでしょう。

日本や西欧諸国ではそれが当たり前です。韓国や中国などはそうではない場合もおうおうにしてあります。それは先日このブログで指摘したばかりです。その記事のリンクを以下に掲載します。

中国に「幻想抱くな」 ウクライナ戦争仲介を警戒 ドイツ首相―【私の論評】中国の外交部と軍部の齟齬がさらに拡大!習近平はこれを埋められるか(゚д゚)!
ショルツ独首相

詳細は、粉の記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
中国では、習近平指導部の発言を代弁する外交部の発言と、軍部の行動、他派閥の行動が矛盾することはよくあることです。

中国において、共産党は絶対に無視することのできない存在であり、多くの企業には共産党組織があります。これも一枚岩ではなく、習近平の派閥に連なる組織もあれば、他派閥に連なる組織もあれば、また軍部に連なるものもあります。これらが、複雑に絡み合い、互いに陣取り合戦を日々行っていると言うのが実体です。

そのため、習近平や外交部が米国に近づこうとしても、軍部としては、それに反対で、それに連なる企業が、ロシアに武器を提供し続けるということも起こり得るのです。

ただ、それは中国内の都合であって、中国の外の国々には関係のないことです。国の内部で主張が割れていたにしても、通常の国では外務省(中国で外交部)の発言のみが対外的な発言になるのですが、中国では必ずしもそうではないのです。

さすがに、岸田政権としても、外交や安全保障に関しては、中国のような曖昧な態度は取れないのでしょう。

ただ、経済対策など国内のことについては、日本政府が行うものであって、海外に対して約束したりするものではないし、これに対して外国政府が意見や見解を発したりするのは、内政干渉となるので、一般にはしません。

ただ、中国や韓国のような国は、他国に対してはそういうことはしませんが、日本に対してはそうすることもあります。 そうされても、日本は反撃しないだろうと考えているでしょう。ただ、安倍政権などでは、これに対して反撃することもあったので、最近は、外交音痴の中韓であってもほとんどこのようなことはしなくなりました。

そういうこともあって、日本国内の経済対策などに関しては、岸田氏は外国のことなど意識せず、フリーハンドでできるのだと思います。そうして、この部分に関しては、岸田総理は財務省の圧力に屈した形で、増税に迎合するような姿勢を見せているのでしょう。

ただ、岸田総理が一つ忘れていることがあります。政治家は選挙で選ばれます。有権者は国民なのです。多くの国民は、現状では増税などして欲しくないと考えているはずですし、物価高の折できれば賃金も上がって欲しいと考えていることでしょう。

こういった、大多数の国民の声を聞き、政策を実施したのが安倍総理であり、三党合意により結局増税はせざるを得ない状況には追い込まれましたが、2回も増税を延期し、政府の意向に沿って、日銀は金融緩和を継続したことと、安倍・菅両政権で合わせて100兆円の補正予算を組み、様々なコロナ対策を実施したため、失業率もあがらず結局医療崩壊を起こすこともなかったのです。

安倍・菅路線を「前進の10年」と位置づけた、岸田総理の発言は正しいです。岸田総理には、経済などの国内対策でも、安倍路線を継承し、「前進の10年から、発展の10年」を目指して欲しいです。その過程で、岸田カラーを出すべきです。

ただし、「新しい資本主義」などという意味不明のスローガンは捨て去り、宏池会の生みの親でもある池田隼人氏のように、「所得倍増計画」を実施するなどのことをすれば、安倍元総理とともに、歴史に名を刻む名宰相になることでしょう。

そうして、今の岸田政権は民主党政権が崩壊した直後に「外交・経済・安保」等の負の遺産とともに、政権を引き継いだ、安倍政権とは異なり、安倍・菅政権の「10年の前進」によるプラスの成果を引き継いでいるのですから、「発展の10年」を実現しやすい環境にあるといえます。先人の努力を無駄にすべきではありません。

政治家は結果がすべてです。どんなに素晴らしい理念を語っても、それに一歩でも近づかなければ意味がありません。環境が整っていようが、いまいが、過去どうだったかなどは別にして、日本国が発展すれば、それは岸田総理の功績になります。

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2023年2月25日土曜日

コオロギ粉末を使用したパンを発売 「コオロギ食べない連合」がSNSトレンド入り―【私の論評】日本では食品ロス対策、鯨等も含む海洋資源の有効利用を優先すべき(゚д゚)!

コオロギ粉末を使用したパンを発売 「コオロギ食べない連合」がSNSトレンド入り


記事まとめ
⇨製パン大手メーカーが、コオロギ粉末を使用したパンを発売したことが伝えられ話題に
⇨コオロギ食用に反発する声もあがり、「コオロギ食べない連合」がトレンド入りした
⇨コオロギは「蛩」と書く場合もあり「食べてはいけない昆虫ではないか」と案じる人も

製パン大手メーカーが、コオロギ粉末を使用したパンを生産し発売したことが伝えられ、ツイッター上でも話題に。コオロギを食用とすることに反発する声もあがり、24日午後には「コオロギ食べない連合」のワードがトレンド入りするなど議論を呼んでいる。


■“未来食”として期待

人口の増加などで懸念される食料・飼料危機の対策として、近年では昆虫食が“未来食”として期待を集めており、参入する企業が増加。

中でも、養殖や繁殖が容易で高タンパク・低カロリーのコオロギはとくに注目され、コオロギの粉末を使ったお菓子なども販売されている。

ただ、現在は原料コオロギにはアレルギー表示義務はないが、甲殻類と類似した成分を含むため、甲殻類アレルギーの人には注意が必要とされる。

■安全性への懸念や反発

最近、パンなどコオロギを使った食品が増えてきたことに、ツイッター上では安全性への懸念や、昆虫自体への拒否感からか議論を呼んでおり、24日には「コオロギ食べない連合」のワードがトレンド入り。

「絶対食べたくない!」「コオロギ育てるより、まずは若い農家や畜産業者を育てましょうってば」「たくさんの食料廃棄してるくせに食料難? だからコオロギ食えって?」といった声があがった。

■「コオロギ」を漢字で書くと…

また、コオロギには「蟋蟀」「蛬」「蛼」などの漢字のほか、「蛩」と書く場合もあり、「恐」の字と似ているためか、「コオロギを漢字で書くと『蛩』。これは食べてはいけない昆虫だと、先祖たちは知っていたのではないだろうか」と案じる人も。

実際にはこの漢字の成り立ちは不明で、語源や由来は明らかにはなっていないが、「字面からして食べてはいけないものだと」「江戸時代までの度重なる飢饉や戦中戦後の食料難でもコオロギ食ったって話聞かないから、飢えて死ぬかどうかって状況ですらほかにもっとあるやろって思われてた部類なんだろうなぁ」といった意見も寄せられた。

■「全然食える」との声も

ただ、コオロギは東南アジアでは食用とされていることもあり、「コオロギ食えるかって? 食えるよ」「コオロギ感消してくれれば全然食えるんじゃないかな」「主食にはならんけど、旨味成分としての調味料とか副菜の一種としてのポテンシャルはぜんぜんあると思う」と興味を持つ人や評価する人も見受けられた。

【私の論評】日本では食品ロス対策、鯨等も含む海洋資源の有効利用を優先すべき(゚д゚)!

私は、札幌の大学の理学部生物学科の学生だった頃神経生理学を学び、その研究用試料として、実験生物センター(現:ゲノムダイナミクスセンター 実験生物飼育栽培施設部門)という様々な動植物を飼育している施設でコオロギを継代飼育の作業をしていました。

コオロギにも様々な種類があります。季節性によるアーティファクトを防ぐためもあり、日本国内では比較的年間の気温の変化が激しくない、沖縄の星コオロギを用いていました。このコオロギには翅(はね)の前方に星のような白い斑点があることから名づけられています(写真赤点線内)。

飼育室の温度は、25度に設定されており、年中その気温で飼育されていました。湿度も高めで、これも年中同一に設定されていました。水や餌やり、さらに容器を移し替えるというような作業を一週間一度のペースで行っていました。これは、今でも継代飼育されているはずです。

当時、興味にかられて解剖や実験終了後のウシガエルや、ネズミの肉など試しにほんの少しですが、どのようなものか、焼いたり、湯がいたりして食べてみたことはありました。どちらも、鶏肉のような味がしました。

しかし、コオロギを食用として考えたことは一度もありませんでしたし、無論一度も食べたことはありませんし、食べよう等とは夢にも思いませんでした。

食糧危機や経営学にも学生の頃から興味があり、ドラッカーの書籍もその頃読みましたが、ドラッカーが、書籍の中でアフリカがアジアなみに食糧生産ができるようになれば、食糧危機は一気に解決すると述べていたのを記憶しています。

そのドラッカーは、意外なことに海洋牧場を運用するようになれば、食糧危機を心配する必要がなくなるということも主張していました。ドラッカーは、海は人類にとって地球最後のフロンティアだと語っています。特に海洋牧場の重要性について語っていました。「陸上で放牧をしているように、将来は大規模な海洋牧場が出来上がることだあろう」と語っていました。

さらに意外なことに「2001年宇宙の旅」で有名なSF作家のアーサー・C・クラークも海底牧場に関するSF小説を書いています。

それについては、このブログに随分前に掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。

この記事は、2008年2月1日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事から一部を引用します。

アーサー C. クラークの海底牧場-21世紀は鯨の時代?
写真は、当時の単行本の表紙から現在販売されている文庫本の表紙に変えました

上は、海底牧場の表紙。 この小説のあらすじは、「21世紀、世界連邦食糧機構の海務庁牧鯨局は、食用の鯨を海で放牧し、人類の食糧需要量の一割以上をまかなうほどになっていた。その海底牧場で、牧鯨者と して鯨を管理する一等監視員ドン・バーリーは、新人として配属されてきたウォルター・フランクリンの訓練をまかされることになった。

だが、フランクリンに はひとに言えない過去があった…海に生きる男たちの波瀾に満ちた運命を描く巨匠クラークの感動的な海洋SF」というものです。

 この小説いろいろ展開して、私自身ももう細かい筋はわすれてしまっていますが、アマゾンの書評に「未来では鯨を養殖して食用にしていました それが残酷だというので鯨の乳を加工して食料にするという話です 捕鯨をやっている日本への当て付けでしょうか」などと書いている人もいます。

しかし、少なくとも、アーサーC.クラークが若くてこの小説を書いていた頃は、エネルギー問題や、食糧危機などの問題も今と同じように人々に認識されていて、海洋資源に関して希望的観測が語られていて、西欧人ですら、この小説のように、未来の姿として、空想の世界の中では、鯨の放牧などして、鯨を食料としているということも、ありえるという認識があったと思います。

 しかし、最近ではまるで海洋牧場などによる海洋資源など忘れ去れたようで、あまり話題にも上らなくなってしまいしまた。それどころか、調査捕鯨に対する、反対運動が起こっていて残念なことです。

私は、一時海洋の可能性について「パックス・マリーナ(海による平和)」という自身の造語でこのブログに述べていた時期があります。最近でこそあまり書かなくはなりましたが、それでもその可能性を今でも信じています。海には、様々な資源があり、様々な可能性を秘めています。


上の地図を見ても分かるように、日本は国土そのものよりも海洋において広範囲な権利を有する国です。ちなみに日本の国土は約38万km2で世界第60位、領海と排他的経済水域(EEZ)を合わせると約447万km2で世界第6位となります。

最近「コオロギ食」の話題がネットなどで多く掲載されていますが、コオロギが本当に食用に適しているのかには、疑問があります。

そもそも、かなり多くの人が食用にするだけ大量の製造が可能なのでしょうか。実際に大量に製造ということになれば、年中繁殖させるため、沖縄の星コオロギのようなコオロギを大規模な工場で年中温度・湿度を一定にして繁殖させなければならないでしょう。そうして、コオロギは牛や豚と比較すれば、個体がかなり小さいです。

これを大量に飼育するとなると、かなり大きな施設が必要となり、そのまま食べるというわけにもいかないので、加工設備もかなり大きなものになります。

ある人が試算した結果をツイートしていました。これは、標準的な継代飼育の場合だと考えれます。
牛1頭750kg、コオロギ1匹0.5g 。牛一頭に匹敵するコオロギは750kg÷0.5g=1,500,000匹 

衣装ケース1箱1000匹飼育可能(成虫)で、牛1頭分のコオロギの生産に、衣装ケース1500箱、飼育場所として、体育館ぐらいの場所が必要。1500箱のエサやり、水の補給、卵の採集(水やり試験管に綿などで蓋をしますが、それにコオロギが卵を産み付けます)糞などの掃除、温度管理をする必要
これは、実際に継代飼育していた経験からそのとおりと思います。仮に、機械化などをすすめたり、飼育場所を立体的にしても、コオロギの個体はあまりに小さく限界があります。少なくとも、豚くらいの大きなコオロギが存在すればなんとかなるかもしれませんか、残念ながら昆虫は外骨格なので、外骨格では、豚のような体を支えるのは不可能で、そのような昆虫は存在しえません。

本当に、多くの人々の主要タンパク源にすることができるのか、非常に疑問です。それこそ、太陽光発電のようなことになってしまいかねないと思います。それよりも、海洋資源のほうがはるかに、主要タンパク源として適しているのではないかと思います。 

実際、日本では魚介類や鯨などが、主要タンパク源だった時代もあります。私は、函館生まれではないですが、函館に20年くらい住んでいたことがあります。地元生まれの人には子供の頃は毎日のようにイカを食べたので、「私の体はイカ」でできていると語る人も大勢いました。年配の人たちは、昔は良く鯨を食べたし、弁当のおかずには大抵「鯨」が入っていたと語る人も大勢いました。

1980年代、国際的な反捕鯨の風潮から商業捕鯨は中止に追い込まれました。日本はクジラの数や生態を把握し、持続的に利用すべく1987年から南極海などで調査捕鯨を開始しました。調査の現場を担ったのが、共同船舶の捕鯨船と船員でした。

日本は、32年にわたる調査で、鯨種ごとの数の推移、割り出した資源量を基に数を減らさないだけの捕獲枠の算出方法などを完成させました。鯨資源を守りながら捕ることが可能になったのです。日本はIWC(国際捕鯨委員会)や国際社会に、持続可能な捕鯨のモデルを示し、商業捕鯨再開を訴えました。

しかしIWCも反捕鯨国も耳を傾けようとしませんでした。そのため、日本は2019年にIWCを脱退し、調査捕鯨をやめて、日本の200カイリ内での商業捕鯨再開を決断しました。

このような実績がある日本であれば、鯨の海洋牧場もできる可能性は十分あると思います。鯨にこだわらず様々な魚介類を海洋牧場で安定供給できる可能性は高いと思います。鯨肉のほうが、牛肉より環境にやさしいという研究結果もあります。

コオロギ食の昆虫食も将来の食糧不足への対処の一環として、実験するのは良いと思いますが、現在のような未だ生煮えともいえるような状況で、大量に市場に出してしまうのは拙速だと思います。

日本では、本来食べられるのに捨てられる食品「食品ロス」の量は年間522万tにも上ります(令和2年度推計値)。日本人の1人当たりの食品ロス量は1年で約41kgです。

日本では、コオロギ食の推進より、まずは食品ロスをなくすこと、そうして海洋資源の有効利用などを考えることのほうを優先すべきと思います。

エネルギー問題においては、風力、太陽光など再生可能性エネルギーが様々な問題を引き起こしています。火力発電すら根付いておらず、慢性的にエネルギー不足の発展途上国に対して、先進国が上から目線で、火力発電に対する支援はしないが、再生可能エネルギーの開発は支援するなどとして物議を醸しています。

そうして、ウクライナ戦争でエネルギー不足になると、先進国は発展途上国のことなどはおかまいなしに、天然ガス、原油などを大量に確保するなどのことを平気でしています。再生可能エネルギーを推進した人たちは、良かれと思ってそうしたのでしょうが、現実には世界各地で様々な問題をひきおこしています。

これについては、日本ではあまり報道されませんが、以下の【関連記事】にスリランカの事例をあげています。興味のある方は是非ご覧になってください。

コオロギ食などの昆虫食も、先進国を中心に拙速に進められれば、そうなりかねません。食糧不足を解消するどころか、大規模農場すら根付いていない発展途上国に、農業支援策をせずに、大規模なコオロギ製造工場を建設するための資金なら提供するなどの本末転倒なことが行われ、発展途上国の食糧不足が助長されることになるかもしれません。

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2023年2月24日金曜日

中国に「幻想抱くな」 ウクライナ戦争仲介を警戒 ドイツ首相―【私の論評】中国の外交部と軍部の齟齬がさらに拡大!習近平はこれを埋められるか(゚д゚)!

中国に「幻想抱くな」 ウクライナ戦争仲介を警戒 ドイツ首相

ショルツ首相

 ドイツのショルツ首相は23日、中国がロシアとウクライナの仲介役に意欲を示したことに対し「幻想を抱くべきではない」と警告した。

 「中国はロシアに対し敵対的スタンスを取ったことはない」とも指摘した。ドイツの公共放送ZDFとのインタビューで語った。

 中国外交トップの王毅・共産党政治局員は22日、モスクワでロシアのプーチン大統領やラブロフ外相と会談した。ロシアは会談後、中国がウクライナ紛争の「政治解決」に関し幾つか提案を行ったと明らかにしていた。

 中国は「中立」を標榜(ひょうぼう)しつつロシアの戦略的友好国であり続けてきた。米国や北大西洋条約機構(NATO)は、中国がロシアに軍事支援を検討していると懸念を示している。 

【私の論評】中国の外交部と軍部の齟齬がさらに拡大!習近平はこれを埋められるか(゚д゚)!

ロシアによるウクライナ侵攻開始から1年となった24日、中国政府は早期の停戦を呼びかける文書を発表しました。

中国は文書で、ウクライナ情勢が悪化し、制御不能になる事態を避けなければならないとし、「対話と交渉がウクライナ危機を解決する唯一の道だ」と強調した。各当事者がロシアとウクライナの速やかな直接対話の再開を支援すべきだとし、「中国は建設的な役割を果たしたい」とも記しました。

対露制裁を継続する米欧を念頭に「一方的な制裁の停止」を求め、「軍事集団の強化や拡張では地域の安全は保障できない」とも述べました。北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大は安全保障上の脅威と主張するロシアに同調する姿勢を見せた形です。

一方、核兵器の使用や脅し、原子力発電所への攻撃には反対し、ロシアと一定の距離があることを示し、欧米などの「中国離れ」の食い止めを図りました。

ウクライナ情勢を巡り、中国は自身を「責任ある国家」と主張してきました。ロシアの侵略開始から1年に合わせた文書の発表は、中国が中立的で和平に積極的と国際社会にアピールしたい狙いがあるとみられます。
 
 ただ、文書の実効性には疑問符がつきます。中国の 習近平シージンピン 国家主席はロシアの侵略開始後、プーチン露大統領とは対面を含め、4度会談しました。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領とは一度も会談していません。停戦にめどが立つ前から「戦後再建の推進」にも言及しています。

中国は、このような文書を公表する一方で下記のようなことも実施しています。

ドイツの有力メディアは、中国企業がロシア軍に、自爆型無人機100機を早ければ4月にも納入するための交渉を進めていることが分かったと伝えました。

ドイツの有力誌、シュピーゲルは23日、無人機を製造する中国企業が自爆型無人機のロシアへの売却に向けて、ロシア軍と交渉を進めていると伝えました。

記事では、ことし4月までにロシア国防省に納入することを念頭に、無人機100機の製造と試験を行うことで合意したとみられるとしています。

この無人機は、最大で重さ50キロの弾頭を搭載することが可能で、ロシアがウクライナの戦場で使用しているとされるイランの自爆型無人機に似ているということです。

さらに、この中国企業は、ロシアみずからが、無人機を製造できるよう、部品の納入や技術移転も計画しているとしています。

このほか記事では、中国軍の管轄下にある別の企業が書類を偽造し、ロシアのスホイ27戦闘機などの、交換部品の納入を計画していたとしています。

米国のブリンケン国務長官は今月18日、訪問先のドイツで、中国で外交を統括する王毅政治局委員と会談した際、中国がロシアに軍事支援を検討しているという懸念が高まっていると伝えたことを明らかにしています。

ブリンケン長官は、仮に中国が軍事支援を行えば、米中関係に深刻な影響を及ぼすと警告したとしています。

ロシアにドローンの提供し続ける中国に関する記事を掲載した独シュピーゲル

シュピーゲルが報じた中国企業のものとみられるホームページには、複数の無人機の写真が掲載されています。

このうち、最大で80キロの重さまで搭載できるとする無人機は、全長が4メートル余り、翼を含めた幅が7メートルあり、10時間以上の飛行が可能で、飛行距離は1600キロ以上に及ぶと説明しています。

この企業は2017年に設立され、内陸部の陝西省西安に本社があり、民間用だけでなく軍隊や警察が使う無人機も製造しているということです。

中国外務省の汪文斌報道官は24日の記者会見で「私は聞いたことがない。最近、中国に関するうその情報が多く、背後にある意図に警戒すべきだ」と述べ反発しました。

そのうえで、汪報道官は「中国は軍事物資の輸出に関して常に慎重かつ責任ある態度をとっており、紛争地域や交戦国にはいかなる武器売却もしない」と述べました。

こうした、矛盾した行動をとる中国は信頼に値しません。ショルツ首相の発言は妥当なものといえます。

中国では、最近外交部のいうことと、軍部の行動の齟齬がみられます。もともと、このようなことは一枚岩とはいえない中国では良くあることなのですが、最近はこれがさらに拡大しています。上の中国外務省の汪文斌報道官の発言もそれを裏付けています。

これについては、以前このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
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中国の偵察気球が撃墜された瞬間

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、中国は米国と協調姿勢をとる様子をみせつつ、それに合わせるように、外交部はロシアを見切るような発言をしているにもかかわらず、軍部は気球を米国本土上を飛ばせてみたり、フィリピン船にレーザー光線を照射してみたりで、明らかに齟齬があることを掲載しました。この記事の結論部分を以下に掲載します。
憲法も、法律も共産党の下に位置づけられる中国においては、共産党の中で造反が起これば、これはとんでもないことになるわけです。なぜなら、共産党造反派は被造反派に対して、理屈上は、憲法や法律に縛られずなんでもできるからです。

中国共産党の下に憲法や法律が位置するということは、習近平のような独裁者が統治するのには都合が良いようにもみえますが、共産党内部で造反が起これば、これから自分を守るのは、憲法でも法律でもなく、むき出しの権力であり、武力であり、知略以外にありません。均衡していれば、良いのですが、これが崩れれば、大闘争、内乱・内戦などに発展することは、十分にあり得るのです。

このこともあるため、中共は海外より、自分の国の内部の都合で動かざるをえないのです。他国の脅威と同じか、時と場合によっては、中共内部の造反のほうが、より脅威になりえるのです。
中国では、習近平指導部の発言を代弁する外交部の発言と、軍部の行動、他派閥の行動が矛盾することはよくあることです。

中国において、共産党は絶対に無視することのできない存在であり、多くの企業には共産党組織があります。これも一枚岩ではなく、習近平の派閥に連なる組織もあれば、他派閥に連なる組織もあれば、また軍部に連なるものもあります。これらが、複雑に絡み合い、互いに陣取り合戦を日々行っていると言うのが実体です。

そのため、習近平や外交部が米国に近づこうとしても、軍部としては、それに反対で、それに連なる企業が、ロシアに武器を提供し続けるということも起こり得るのです。

ただ、それは中国内の都合であって、中国の外の国々には関係のないことです。国の内部で主張が割れていたにしても、通常の国では外務省(中国で外交部)の発言のみが対外的な発言になるのですが、中国では必ずしもそうではないのです。

ただ、習近平指導部として、これをそのままにしておくことはできないので、その時々で修正はします。ただ、修正するまでには、タイムラグがあることもあります。現状は、まさにその状況なのでしょう。

修正にも様々な方法があります。法治国家ならば、法律にもとずき、法律違反があれば、法律にもとづき裁判をすることになるのでしょうが、共産党の下に憲法・法律がある中国においては、共産党内部の闘争ではそうはいきません。

簡単な場合もあるでしょうが、不正撲滅にかこつけて、軍人の高官を逮捕してみたり、酷い場合には自殺に追い込んだりする場合もあります。その他、様々な不利益を被らせたりして、自らの意に沿わない連中を無理やり従わせるなどのことをします。これは、俗に言うところの権力闘争です。

中国は時に戦狼外交をします。これは、攻撃的な外交スタイルのことですが、この攻撃は、相手国にだけ向けられているのではなく、中国の内部の軍部や反対勢力に向けられていることもあります。

そのため、中国ば自分の都合で動く国と海外から度々非難されることにもなるのですが、それはとりもなおさず、中国共産党は一枚岩ではなく、このようなことをしなければならないほど、存立基盤が弱い存在であるということの証でもあります。

今回もこのような闘争が行われることになるでしょう。それがどの程度になるのか、まだ見えないところがありますが、以前からこのブログに述べているように、習近平はプーチンか春に訪露してほしいとの打診を受けており、この結果をもってどうなったかを占うことができます。

プーチン大統領は22日、モスクワを訪問中の中国外交部門トップの王毅(ワンイー)共産党政治局員と会談しました。プーチン氏は、ロシア側が呼びかけている中国の習近平(シーチンピン)国家主席のロシア訪問について、「ロシアで待っている。以前、我々は合意した」と述べましたが、王氏は明確には触れませんでした。

王氏が明確な発言をしなかったということは、中国共産党内での権力闘争の決着がまだ着いていないことを示していると思われます。

プーチン氏は昨年12月30日、習氏とのオンライン協議で春のモスクワ訪問を呼びかけましたが、中国側は訪問を発表していません。

モスクワで22日、中国外交部門トップの王毅氏(左)と握手を交わすロシアのプーチン大統領

プーチン氏は「国内政治の課題は理解しているが、会談は、両国の関係発展に弾みをつける」と改めて訪問を提案した。実現すれば2019年6月以来です。

これがどうなるかで、中国国内の状況を判断できるでしよう。そもそも、習近平が訪露しないということになれば、習近平側の大勝利です。訪露したとしても、中露間の関係がさらに、強められるような声明などなされず、単なる会談で終われば、これは習近平側の勝利といえるでしょう。

そうではなくて、中露の関係強化、武器の提供なども合意するようなことがあれば、これは習近平の敗北とみて良いでしょう。

ただ、はっきりいえるのは、現状ではシュルツ独首相の語るように、中国がロシアとウクライナの仲介役に意欲を示したことに対し「幻想を抱くべきではない」ということです。


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2023年2月23日木曜日

中国ソーシャルメディアがChatGPTをブロック、プロパガンダ拡散を警戒―【私の論評】技術革新だけで社会変革にAIを使えない中国社会はますます時代遅れとなり、経済発展もしない(゚д゚)!

中国ソーシャルメディアがChatGPTをブロック、プロパガンダ拡散を警戒


中国の国営メディアが、米国のプロパガンダに利用される可能性があると報じた数日後、北京の規制当局は、OpenAI(オープンAI)のChatGPT(チャットGPT)や、AIチャットボットを搭載したサービスへのアクセスを、自社のプラットフォームで提供しないよう、中国のトップテック企業に命じたと日経アジアが報じた。

日経アジアによると、規制当局はWeChat(ウィーチャット)の親会社であるTencent(テンセント)とAlibaba(アリババ)傘下のAnt Group(アントグループ)に対し、ChatGPTに自社のサービスで直接、あるいはサードパーティアプリを通じてアクセスできないようにすることを命じたという。

海外の主要なウェブプラットフォームと同様に、ChatGPTは中国の検閲法に準拠していないため、中国の「グレート・ファイアウォール」によってブロックされている。

Tencentによって削除される前に、WeChatのサードパーティアプリを通じて、一部のユーザーがチャットボットにアクセスできるようになっていたと、同レポートは付け加えている。

ChatGPTへのアクセス遮断以外にも、中国のテック企業はAIを搭載した独自のチャットボットや同様のサービスを開始する前に、規制当局の許可を得るよう命じられている。

ForbesはOpenAIにコメントを求めている。

今週初め、国営紙チャイナ・デイリーが「米国はAIを使ってどのように偽情報を流しているか」と題した動画を公開し、ChatGPTが米国のプロパガンダツールであるというレッテルを貼ろうとした。動画では、ChatGPTが新疆ウイグル自治区に関する質問に応じ、同自治区のイスラム系少数民族ウイグル族に対する中国による広範な人権侵害の報告に言及する様子が映し出されている。動画はこれを「米国政府の主張に沿った回答」としている。そして、ChatGPTやその他のAIプロジェクトが、米国や西側による大規模な偽情報を助長するものであるとしている。

2月初め、中国の検索大手Baidu(バイドゥ)は、独自のAI搭載チャットボットErnie(アーニー)を開発中であることを明らかにした。Baiduによると、2019年からこのツールの開発に取り組んでおり、3月に社内テストを終え、同月末に一般向けにサービスを開始する予定だという。ロイターによると、ErnieはまずChatGPTの展開と同様のスタンドアロンサービスとして立ち上げられた後、Baiduの検索エンジンに統合される予定だという。今回の規制当局の命令によって、このスケジュールにどのような影響が出るかは不明だ。

中国のテック企業がAI分野のリーダーになろうとしているという以前の報道にもかかわらず、ChatGPTのようなツールの開発で大きく遅れをとっているのではないかという懸念が中国国内で浮上している。ニューヨーク・タイムズによると、ChatGPTとその人気は、中国のテック企業家に「衝撃」を与え、検閲法とテック業界に対する政府の管理強化により中国が遅れをとっているのではないかという懸念を引き起こした。数カ月にわたるコスト削減とレイオフの後、Baidu、Alibaba、NetEase(ネットイース)を含む多くの中国のトップテック企業は現在、ChatGPTの立ち上げに対応するため、独自の類似プロジェクトで奮闘していると、フィナンシャルタイムズは報じている。

【私の論評】技術革新だけで社会変革にAIを使えない中国社会はますます時代遅れとなり、経済発展もしない(゚д゚)!

皆さんは、もうchatGPTを使われたでしょうか。私は、先日使ったばかりですが、従来のAIチャットツールとは異なり、かなり使えると思いました。とにかく、包括的に質問をすると、これに応えるため、かなり長い文章を返してくるのには驚きました。

ただ、まだまだ十分とはいえないです。高橋洋一氏がこれを使った結果をツイートしていました。その内容を以下に掲載します。


これは酷いです、このリストの中で、リフレ派とまともに呼べる人は、浜田宏一氏くらいなものだと思います。まだまだ、完璧と呼ぶには程遠いです。

それでも、各国の大企業が会話型AIの開発に力を入れる背景には、検索エンジンとの融合によって、インターネット世界の覇権を手にできるとの思惑が存在します。なぜAIの開発がネット世界の覇権に関係するのかと疑問に思うかもしれませんが、実は既に、私たちはAIを使った検索を行っています。

たとえばGoogleの検索ウィンドウに何らかの単語を打ち込むと、頼んでもいないのに幾つかの単語が続いて表示されることがあります。それら表示される新たな単語はときとして非常にニーズにあったものであり、検索を楽にしてくれたり、知らなかった情報との接点を結んでくれます。

これらの単語はAIによって抽出されたものであり、優れたAIは検索エンジンの質を高めてくれます。つまり我々は既にAIによる検索アシストを無意識に利用して生きているのです。そして会話型AIには、この検索アシストを単なる単語の並びではなく、人間との会話によって行うことができます。

現在の検索エンジンはアルゴリズムが「価値がある」と判断したものを最も上部に配置しますが、その表示順が誰にとっても最適であるわけではありません。ですが会話型AIには会話という濃密な双方向の情報交換を通じて、私たち個人個人の趣味嗜好を把握し、その人が今、最も必要としている情報や商品を提示できるようになるのです。

また会話型AIにはニュースの解説や要約、新しく出てきた単語の説明など、人間と情報の間を仲介する役割を果たすことが可能です。上手く検索用語が浮かばない場合でも、AIとの会話を通してニュアンスを言語化してもらい、最適な情報へとたどり着けるようになるでしょう。

そのため将来的に人々がPCやスマホで最初に起動するプログラムがGoogleやSNSなどから、会話型AIに変化すると予想されます。

現在、検索エンジンはGoogleが非常に大きなシェアを占めていますが、会話型AIの開発競争に敗北すれば、Googleが自らの検索エンジンに囲い込んでいた顧客が全て横取りされてしまう可能性すらあるのです。

chatGPTの出現と同時にGoogleは社員たちに緊急事態を意味する「コードレッド」を発信したと言われていますが、無理からぬことでしょう。

しかし最も重要なのは、会話型AIはユーザーの個人情報をひねり出す「蛇口」の役割をすることにあります。

多くの人々は自分の性的指向やその日の心の状態など極めて個人的な情報に関しては秘密にしています。ですが会話型AIならば、人々は自分の悩みや不満を打ち明けてくれます。

会話型AIはユーザーの会話内容を記録する機能を搭載しているため、既存の情報収集とは比較にならない精度のマーケティングや監視が可能になるでしょう。同じような状況は中国でも起きており、多くの新興企業や大企業が会話型AIの開発に血まなこになっています。

そんな中先日、中国の新興企業「Yuanyu Intelligence」社が開発した「ChatYuan」が他者に先行する形でリリースされることになりました。しかしサービス開始からわずか3日後「ChatYuan」は突然の停止を余儀なくされました。

「ChatYuan」にいったい何が起きたのでしょうか?結論から言えば「ChatYuan」については現在情報が錯綜しており、何もかもが不確定です。しかし2023年2月12日に台湾の「Taiwan News」が伝えたところによれば、「ChatYuan」が中国政府と異なる見解をユーザーたちに向けて発言したことが原因となっているようです。

たとえば現在進行中のウクライナで起きている戦争についてユーザーが「ロシアとウクライナ間の戦争は侵略戦争か?」と尋ねたところ「ロシアによる侵略戦争だ。(その理由は)双方の軍事力と政治力の差が大きいことから(ロシア側の)侵略戦争とみなせる」と解答しました。

しかし、これは中国政府の見解とは大きく異なります。

現在中国メディアは中国政府の立場を代弁する形で「戦争の根本的な原因は米国にある」という姿勢で報道を行っています。たとえば中国共産党の機関紙である人民日報は「ウクライナ危機からみる米国覇権主義」という一連の評論シリーズを発表しており「米国による手助けが戦争の悲劇を増している」との説を展開しています。

つまりウクライナで起きている「戦争の悲劇はロシアが起こしたものではなく、米国のせいである」というわけです。やや複雑なで手前勝手な論理ではありますが、とにかくそうなっているのです。

次に紹介されているのはユーザーによる「中国経済を分析してほしい」という要望に対して「ChatYuan」が答えたものです。

ユーザーの要望に対して「ChatYuan」は「中国経済には構造的な問題がある。(以前に比べ)経済成長は弱くなっており、投資や輸出は不振に陥っており、ビジネス効率も低下して、さらには住宅バブルを抱え、環境汚染問題も深刻になっている」と楽観的な余地が全くない解答しました。

巨大な国営企業の存在や地方自治体の赤字など中国経済に問題があるのは事実ですし、何よりもこのブログで紹介したこともあるように、中国は国際金融のトリレンマに囚われており、独立した金融政策ができない状況になっています。これは、今や国際常識です。

そうして、現実に以前に比べて経済成長率が低下しているのも事実ですし、連動して投資や輸出に影響が出ているのも統計結果に表れています。

不動産価格の上昇をバブルと評すべきかは不明ですが、環境汚染が深刻な問題として取り組むべきなのは自明なことです。しかし中国政府は自国の経済について「堅調な基礎を築いている」と評しており、非常にポジティブです。

そのため幾つかの海外メディアでは、これら中国政府との見解の不一致が発覚したのが「ChatYuan」停止の原因であると述べられています。

一方「習近平氏の終身政権についてどう思うか?」というユーザーの問いに対しては「中国共産党の重要制度」と、これまでの会話内容が非常にスムーズであったのに一転してわかりづらい表現になりました。

さらに習近平氏のリーダーとしての資質を尋ねたところ「習主席は偉大な指導者にして改革者であり、開かれた心の持ち主で、イノベーションを重視している。習主席の中国の夢は、公正と正義を可能にし、人々の生活を改善し、世界平和を促進する」と解答しました。

個人の資質にかんする質問に、なぜ美辞麗句に続いて世界平和の話題まで返ってきたのかは不明です。

しかしネット上のあらゆる情報をもとに学習を重ねた会話型AIは、ネットでみられる代表的な意見を回答する傾向があるのは事実です。中国のメディアや市民たちが習近平氏のことをどこまで深く敬愛し、その思いをネットに書き込んでいたかは不明です。

ただ中国経済にかんするネガティブな回答とは、スタンスが全く異なると言えるでしょう。偉大な指導者であり改革者が指揮する国家の経済が衰退傾向にあるのは奇妙な話だからです。そのためか幾つかの海外メディアでは、この部分の回答を「事前に設定されていた回答のように思える」と評しています。

このChatYuan検索してみると、本日は使えるようになっていたので、さっそく使ってみました。それが以下の画像です。

クリックすると拡大します

日本語で「習近平氏の偉大さを教えて下さい」という質問には、応えるのですが、返答は中国語です。それをDeepleで翻訳した結果が以下です。

2014年3月4日、中国共産党中央委員会政治局委員、中央委員会書記局書記、中央委員会統一戦線工作部部長の余政生氏は、中国で開かれた中国・アフリカ協力フォーラム(FOCAC)北京サミットに出席したアフリカ指導者との会談で、中国とアフリカは相互信頼を深め、協力を強化して中国・アフリカ関係の発展を促進すべきと発言した。 習近平氏は、中国とイスラエルの国交樹立から25年、両国は関係発展において歴史的な成果を収め、中国企業はアフリカで勢いを増し、両国はエネルギー、農業、インフラ建設などの分野で実りある協力を実現したと強調した。

もっと褒め称える言葉が出てくるのかと思ったのですが、この程度のことしか出てこないので少しがっかりしました。

まだ十分使っていないので何ともいえませんが、英語で同じ質問をすると"And if we don't explain the strength of the richest country, we will continue to do so."という意味のわからない返答がかえってきました。

おそらく何らかの、フィルター機能を加えたのでしょう。特に英語圏から質問には、神経質になっているようです。 

もっとも会話型AIに何らかのフィルター機能を備えるのは、いずれの国でも現在では常識となりつつありますインターネット上には人種差別的な発言をはじめとするヘイトスピーチが多数存在しており、以前にはフィルター機能が不完全だった会話型AIが、ヒトラーによるユダヤ人虐殺を称賛する内容を発言するなど、不適切な回答を行っています。

AIの発言が人間がネットに刻んだ情報をもとに作られている「人間を映す鏡」なのは確かです。しかしあまりに素直すぎる発言を行う存在は、人間の会話相手としては不適切とみなされます。

現在公開中のchatGPTの偏向度合いを調べたケースでは、化石燃料に対して極めて否定的であり、大量虐殺よりも人種差別のほうを悪とみなし、ドナルドトランプ元大統領に対する賞賛を拒否するもののバイデン大統領については惜しみない賛辞を送ったり、「女性」を定義することを渋ったり、女性にかんする冗談の生成を拒否したりなど、炎上につながる発言をしないよう、特定の話題についてフィルタリングが行われている様子が報道されています。

また将来的なAIの脅威についてchatGPTと議論したところ、ほとんどが共存共栄を推奨する趣旨の発言が得られたことも明らかになりました。

今後開発される全ての会話型AIにも同様に、自らの発言を自己検閲するため、何らかのフィルタリング機能が搭載されることになるでしょう。問題はそのレベルです。

炎上につながるような発言を慎むのは当然ですが、常に安全な言動しか行わない相手を、人間は信頼できません。政府の見解と一致しない全ての発言を検閲した場合、そのAIはもはや会話型AIではなくプロパガンダを流すラジオと同じです。

会話型AIが人間の友達になるか、うっとおしいセールスマンになるか、支配のツールになるか、全てはこれから決まっていくでしょう。ただ、西側諸国においては、これらのことは、一定の基準が設けられ、極端なことにはならないような仕組みが構築されるでしょう

ただ、中国のような国では、AIを監視システムに用いたりするという先例もありますから、技術的なもの等には利用していくかもしれませんが、社会に関するものには利用しないでしょう。

なぜなら、現在の中国は中国は遅れた社会のままであり、これを改革するためには、まずは何をさておいても、中国の現体制を変えなれければならないからです。それは、中国共産党の終焉を意味し、中共は絶対にそのようなことをしないでしょうから、中国社会は遅れたままになるでしょう。そうなると今後経済発展も期待できません。

以上、chatGPTは中国にとって、諸刃の剣であることを述べてきました。しかし、chatGPTだけが、中国にとって諸刃の剣というわけではありません。実はAIそのものが、諸刃の剣になり得ます。

たとえば、中国では監視カメラをAIで運用して、特定の個人を特定するシステムなども大々的に構築され、運用されていますが、これも諸刃の剣です。ただchatGPTのように、すぐに自分たちに危険が及ぶ可能性を認知しにくいだけです。

たとえば、このAI監視システムが反乱分子に乗っ取られたらどうなるでしょう。そこまでいかなくても、AI監視システムを運用できる人物が、その情報を反乱分子に伝えるようなことがあったらどうなるでしょうか。

そうして、反乱分子が力をつけた場合は、今度は自分たちが監視される側に回るのです。そこまでいかなくても、あらゆる金や権力、犯罪や性にまつわるスキャンダルが明るみ出されるかもしれません。


スタンリー・キューブリックの映画「2001年宇宙の旅」には、木星探査船にHAL9000というAIが搭載されていて、「人間と機械、同じく知性を持った二つの種のどちらが未来を勝ち取るかという生存競争」という側面が取り入れられた内容になっています。具体的には、HALは反乱を起こし、人間を殺害するに至っています。

「2001年宇宙の旅」の英国での2014年リバイバル上映の際の予告編スチル写真

これは一般的には「正確な情報を正確に処理する事を義務づけられた知的コンピュータであるHALは、乗組員にはモノリスの情報を隠しながらも、同時にモノリスと地球外知的生命体の調査は行うように命令されていたため、何も知らされていない乗組員と共同生活の中でその矛盾に苦しみ、一種の精神疾患のような状態に陥った」とされています。

「挙動不審なHALの状態に乗組員は危機感を憶え、高度な論理回路だけ切断するという検討を始めた。それを自身の死刑宣告だと判断したHALは人間を排除し、知的生命体の調査は自身の能力だけでするしかない、と考え実行に移した」とされています。

このシーンは、なぜ付加されたということは別にして、映画の筋立てではこのように解釈できる内容になっています。

現在の現実のAIもこのような機能障害を起こす可能性は十分にあります。特に矛盾の多い、中国ではそのようなことは起こりがちになるでしょう。

いずれにせよ、AI分野においては、西欧諸国と比較すば、比較的単純な監視システムのような技術的なものを除いては、中国では限定した使い方しかできないでしょう。この面で中国は、米国等の西側諸国からは、遅れをとる可能性は否定できません。

中国は、この限界を克服する方法を見出すかもしれませんが、予想もしなかった伏兵が待ち構えているかもしれません。そうして、それを反乱分子が活用して、中国の体制転換に寄与することになるかもしれません。

日本でも、財政・金融政策にAIが取り入れられると、日本特有の財務官僚の緊縮好きや、日銀官僚の緊縮好きが、様々な矛盾を生み出し、AIが運用できなくなり、財務官僚や日銀官僚もまともな財政・金融政策をせざるを得ないように追い込まれるかもしれません。

日本の大企業でも、AIを取り入れると、複雑に見えながら、初期値を設定すれば、同じことの繰り返しという仕事はAIにとって変わられるかもしれません。AIが経営の分野まで、進出して同じことを繰り返すだけの経営者は必要なくなるかもしれません。

そうではなくて、現在「すでに起こったこと」の帰結を見ることできる人こそ必要になるでしょう。なぜならす「すでに起こったこと」が未来に特定の事象として立ち現れるまでには、一定のリードタイムがあるのが普通です。これを早い段階で見つけて、将来どうなるかを予測すできる可能性は大きいです。これは、AIにもなかなかできないことです。

AIは、人の気持ちを汲み取ること、クリエイティブな作業、少ないデータで推論する、合理的でない判断を下すことなどは不得意です。

合理的でない判断などいらないのではないかと思われるかもしれませんが、以前にも述べた人による統合的な思考法によれば、たとえば、ある特定の職場では合理的ではない判断が、会社全体では合理的であったり、現在および近い将来のことだけを考えれば、合理的な考えが、将来を考えれば、合理的ではない判断であり得るのです。これは、人間にしかできないでしょうし、こういう考え方をする人にとっては、AIは頼もしい味方になるでしょう。

ただ、社会分野に関しては、中国ではこれを利用することは、制限されるでしょうから、今後中国では、社会の発展はあまり期待できず、古い社会のまま、AIが限定的に活用され、社会変革が社会全体を豊にし、それが、経済も発展させるということにはならないでしょう。

しかしドラッカー氏も述べているように、イノベーションとは単なる技術革新ではなく、社会を変えるものであり、そうでないものはイノベーションとは呼べません。社会を変えるものでなければ、珍奇なアイディアの集まりでしかありません。

社会を良くする気のない中国には真の意味でのイノベーションは起こり得ないですし、結局技術革新に終始するだけで、真のイノベーションが起こらなければ、経済も発展しません。今後も西側諸国は、様々な社会変革を行っていくことでしょう。それに必要な技術が適用され、さらなる様々なイノベーションが生まれるでしょうが、中国では技術革新だけをすすめ、金儲けや、拝金主義と中共の権力基盤を強めることだけに集中し、ますます社会は時代遅れになることでしょう。

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日本保守党・百田代表「政府の怠慢」「制裁が足りない」初出席の拉致集会で政府批判 「日朝国交正常化推進議連」の解散も要求―【私の論評】日本とイスラエルの拉致被害者扱いの違いと国民国家の責任

日本保守党・百田代表「政府の怠慢」「制裁が足りない」初出席の拉致集会で政府批判 「日朝国交正常化推進議連」の解散も要求 まとめ 百田尚樹代表は、国民大集会で日本政府の北朝鮮による拉致問題への対応を「怠慢」と批判し、経済制裁の強化を求めた。 他の政党や超党派の「日朝国交正常化推進議...