2023年11月27日月曜日

【動画】稲田朋美議員「“政治不信”の根底には国民のモラルの低下があるのではないか!?」―【私の論評】「国民のモラル低下」発言を検証! 経済対策の「バラマキ」は間違いなのか?

 【動画】稲田朋美議員「“政治不信”の根底には国民のモラルの低下があるのではないか!?」

本日は、ある方のツイートを掲載します。

今朝(ブログ管理人注:26日)、NHK日曜討論に出演された

自民党 稲田朋美幹事長代理
『政治不信の根底には国民のモラルの低下があるのではないか』

おいおい、それは違うだろ。

政治とカネ、政治と宗教など様々な問題を抱える自民党政治家のモラル低下こそが政治不信を招いているんだろ!

#日曜討論

【私の論評】国民のモラル低下」発言を検証! 経済対策の「バラマキ」は間違いなのか?

まとめ
  • 稲田朋美議員の「国民のモラルが低下した」発言は問題である
  • 経済対策は、需給ギャップを埋めるために行うものであり、減税か補助金かは二義的である
  • 経済対策では量が重要であり、その範囲の中で行うバラマキは正しい政策である
  • 稲田朋美議員や熊谷亮丸氏のような、国民を甘やかすと批判する政治家やアナリストこそ、モラルを喪失している
  • このような傲慢で思い上がった人たちは、経済に関わる分野から排除すべきである
国民のモラルが低下しているのではないでしょう。自民党の稲田朋美議員のような議員を、甘やかし続けてきた有権者が多くの国会議員のモラルを低下させたというのなら、まだ理解できますが、稲田氏のこの発言はかなり問題があります。

それに、国民とはいっても1億2千万人も存在します。その中には、モラルの低い人や高い人、普通の人など様々な人達がいるはずです。

そもそも、稲田朋美のように、過去の政府の経済対策などについてバラマキと明確な根拠もなく批判する人もいますが、こういう人に限って経済対策について誤った認識を持っています。

有効需要を喚起するためには、需給ギャップ(髙橋洋一氏等の試算によれば現在16兆円)を埋めなければならないのです。マクロ的には、経済対策はまずは量が重要なのであって、減税にするか、補助金にするかは二義的な問題に過ぎず、マクロ的に両方とも同じような効果があります。

髙橋洋一氏

標準的なマクロ経済学の教科書においては、有効需要を喚起するためには、需給ギャップを埋めなければならないと教えています。需給ギャップとは、潜在GDPと実際GDPの差であり、経済が潜在能力を十分に発揮できていない状態を指します。

経済対策は、この需給ギャップを埋めるために行われるものであり、その効果は、経済規模に占める割合(量)が重要であるとされています。つまり、同じ規模の経済対策であれば、減税でも補助金でも、マクロ的には同じような効果があると考えられます。

これに関して、かつて元FRB議長のノーベル経済学賞を受賞した、ベン・バーナンキ氏は「日銀はトマトケチャップを買え」と発言していました。非常にわかりやすいたとえだと思います。マクロ的に考えれば、量や方法を巡って考え込んで、実行を引き伸ばすよりも、適切な量で対策を素早く実行したほうが良いでのです。この点において、需給ギャップに相当する額のバラマキは正しい政策なのです。

ベン・バーナンキ氏は昨年ノーベル経済学賞を受賞

ただし、減税と補助金には、それぞれに異なる効果もあります。減税は、家計や企業の所得を増やすことで、消費や投資を促進する効果があります。一方、補助金は、特定の財やサービスを買うように誘導する効果があります。

したがって、経済対策の目的や対象によって、減税と補助金のどちらが適切かは変わってきます。例えば、消費を促進したい場合は、減税が有効です。その中でも、現状では消費税減税が特に有効です。一方、特定の産業を育成したい場合は、補助金が有効です。ただ、マクロ経済的な見方からは両者にさほど違いはありません。

しかし、需給ギャップを埋められるだけの、量がなければ、経済対策は効果をあげることできません。政府が行うべきまともな経済対策に関して、バラマキと語り、国民のモラルを低下させたと語る稲田氏のような政治家こそ、モラルを喪失しているのでないでしょうか。

それは、政治家に限らず、たとえば 熊谷 亮丸氏のようなアナリストは、さすがに「国民のモラルの低下を招いた」とまではいいませんでしたが、「国民を甘やかした」などと稲田氏と同じようなことを語っていました。

熊谷亮丸氏はかつて「消費税増税しても経済は悪くならない」と主張していました。しかし、現実には多くの人が予想したとおりに悪くなりました。かつては、テレビの報道番組などに頻繁にでていましたが、最近ではほとんどみかけなくなりました。

2023年11月26日現在の番組表を見ると、熊谷亮丸氏は、テレビ東京系列「ワールドビジネスサテライト」のレギュラー出演のみで、他にはテレビ出演の予定がありません。 他にも理由があるのかもしれませんが、さすがに、テレビ局も頻繁にテレビに出演させられなくなったのでしょう。


稲田氏もそのようなことになるかもしれません。いや、有権者がそうしなければなりません。もうこのような議員は日本に必要ありません。

「国民のモラルを下げる」「国民を甘やかす」などという考えの傲慢で思い上がった人は、何も稲田氏や熊谷氏だけではありません。政治家、官僚、マスコミ、財界人の中にも多いです。こういった人たちは、考えを改めさせるか、改まらないというのなら、経済に関わる分野や、経済に大きく影響を及ぼす立場等からは、排除すべきでしょう。

むろん、合法的にです。選挙なら有権者がそのような政治家には投票しないとか、企業ならそのようなアナリストは採用しないなどの方法です。

そうでないと、日本の経済はいつまでたっても、良くならず、日本人の賃金もいつまでも上がらないでしょう。

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2023年11月26日日曜日

台湾初の“国産”潜水艦が完成、戦略を見誤った中国の海軍膨張一本鎗のやぶ蛇―【私の論評】台湾が潜水艦建造国になったこと自体が、中国への強烈な政治・軍事的メッセージに!

台湾初の“国産”潜水艦が完成、戦略を見誤った中国の海軍膨張一本鎗のやぶ蛇

台湾有事で中国空母が撃沈されれば、習近平は権力の座から引きずり降ろされる

まとめ
  • 台湾初の国産潜水艦「海鯤」が進水式を行い、中国への牽制として注目されている。中国の台湾侵攻への脅威が、台湾をして潜水艦建造へと駆り立てたのだが、台湾の新型潜水艦は中国にとって台湾侵攻への大きな障害となるだろう。
  • 海鯤は高性能な装備を備え、中国にとって技術的脅威であり、静かで長時間潜航が可能なリチウムイオン電池が決定的な要素。2025年に実戦配備され、2027年までに最低2隻が就役し、10年以内には合計8隻が戦力化される予定。
  • 台湾が自主建造の潜水艦を完成させた後、「スタンド・オフ・ミサイル」を発射できる潜水艦の開発が話題。中国への対抗手段として、ミサイルを潜水艦に搭載する計画が進行中。
  • 台湾の技術的な限界やアメリカの通常型潜水艦製造能力の不足などが懸念されつつも、台湾は自前で潜水艦を製造する取り組みを進めており、これが中国にとっても重要な安全保障手段となる可能性がある。
  • 中国の習近平政権は台湾の武力統一に執着しているが、これが台湾が潜水艦を建造するこ要因となり、中国にとって台湾の武力統一への執着がやぶ蛇だった感を示すものとなった。

台湾初の国産潜水艦「海鯤」(かいこん/ハイクン:想像上の巨大魚)進水式

海自「たいげい」型より性能が上と噂の台湾「海鯤」

 台湾初の国産潜水艦「海鯤」(かいこん/ハイクン:想像上の巨大魚)型の1番艦が、高雄の造船所で進水式を行った。この自主建造計画は台湾総統の蔡英文が支持し、彼女は進水式で「我々は成し遂げた」と述べ、中国への牽制としても注目されている。メディアは中国の台湾侵攻を警戒する一方、中国にとって潜水艦は大きな脅威である。中国は装飾的で目立つ軍艦に力を入れる一方で、台湾の後ろ盾である日米に比べて対潜能力が劣るとみられる。

 台湾の技術や分析力は中国にとって脅威であり、中国は台湾の行動を過敏に反応して非難するものの、それは中国にとって深刻な問題である可能性がある。海鯤は通常動力型で、推定排水量2500~3000トン、全長70~80mで、日本のたいげい型と似た性能を持つがやや小さい。リチウムイオン電池や高性能な戦闘システムを搭載し、高性能の長距離誘導魚雷も装備する。特に「Mk48」魚雷は非常に優れた性能を持ち、世界最高峰の潜水艦の一つとされるたいげい型よりも性能が上だとの見方もある。

 これらの能力を生かし、海鯤はバシー海峡などで敵艦を待ち伏せる戦法も可能であり、静かで長時間潜航が可能なリチウムイオン電池が決定的な要素となる。海鯤は近い将来に台湾海軍に引き渡され、2025年に実戦配備される予定で、2027年までに最低2隻が就役し、10年以内には合計8隻が戦力化される見通しとなっている。

最大の後ろ盾・アメリカは通常型潜水艦が造れない

 台湾は現在、使える潜水艦が4隻あるものの、そのうち2隻は第二次世界大戦時の古い艦で、残りの2隻も40年以上前に建造された老朽艦。台湾は自分たちで潜水艦を造ろうとしているが、技術やノウハウがなく、アメリカを中心に7カ国が協力していると報じられている。ただ、現在のアメリカは、原潜を製造する能力はあるが、最新の通常型を製造する能力はない。

 台湾は国際的な立場が微妙であり、簡単に潜水艦を売ってくれる国はほとんどない。中国は台湾に武器を売ることを強く嫌い、制裁をかける可能性があるため、多くの国が中国と国交を持っている「一つの中国」原則に従って台湾に武器を輸出しない。

 ただし、アメリカは台湾関係法を盾にして台湾に武器を売り続けており、他の7カ国も中国の報復を恐れながらも台湾を支援している。台湾が自前で潜水艦を製造できるようになったことは中国にとって大きな衝撃であり、これが台湾にとっても重要な安全保障手段となる。

スタンド・オフ・ミサイル搭載型潜水艦の開発も視野

 台湾が自主建造の潜水艦を完成させた後、「スタンド・オフ・ミサイル」を発射できる潜水艦の開発が話題になっている。この新たな取り組みは、敵勢力の射程範囲外から攻撃が可能な巡航ミサイルを潜水艦に搭載する計画だ。このミサイルは敵の領域や拠点を狙うことができ、台湾は自身の防衛能力を強化するために積極的に研究開発を進めている。その背景には、中国の台湾への侵攻に備えるという意味がある。中国が台湾を侵攻した場合、相手の攻撃拠点や軍事施設を最初に撃破することが軍事上の基本戦略となる。台湾はそのような攻撃に対抗するため、自衛のための手段を確保しようとしている。  中国との緊張関係の中、台湾は自国の安全を確保するため、自主開発の対地巡航ミサイル「雄風2E」の生産を始め、さらに射程が広い改良型ミサイルの開発にも着手している。これらのミサイルは中国本土へと届く射程を持ち、主要港湾都市をはじめとする攻撃拠点を狙っている。また、中国が攻撃しにくい台湾の地理的に有利な山岳地帯の東側にもミサイルを配備している。しかしながら、巡航ミサイルは撃墜を避けるために飛行ルートを変えるため、全ての射程が有効とは限らない。台湾はそのようなリスクを少しでも減らすために移動式のミサイル発射装置を山岳地帯やトンネルに隠すとともに、移動できるようにしている。  今後、台湾は「スタンド・オフ・ミサイル」を潜水艦に搭載する計画を推進し、それによって中国の攻撃拠点や重要施設に対して有力な反撃手段を持つことを目指している。この潜水艦の開発は12〜24発のミサイルを搭載することが計画されており、これによって台湾は防衛力を一層高めることが期待されている。台湾の行動は中国の行動を抑制する可能性があり、台湾有事の際、中国の行動を制限する要因となる。

「台湾武力統一」に執着する中国・習近平政権

 中国の習近平政権は、台湾を武力で統一することに執着しているが、海軍力が伴っていない。フォークランド諸島紛争では、アルゼンチン海軍は満載排水量1万トン超の「ヘネラル・ベルグラーノ」巡洋艦を使ってイギリスに挑んだが、英海軍の原潜に撃沈され、300名以上の死者を出しました。その後、アルゼンチン海軍は主要な艦艇を洋上に出せなくなり、その威厳は損なわれ、敗北の大きな原因の一つとされた。

 専門家らは、台湾有事の場合、西側諸国の潜水艦が台湾を支援する可能性があると指摘している。台湾の潜水艦が中国の航空優勢を阻止すれば、中国の海洋展開は困難になるだろう。さらに、中国の潜水艦が撃沈された場合、潜水艦の行動は秘中の秘とされており、中国は公式にその事実を認めることができず、中国による台湾の海上封鎖というシナリオは機能しなくなる可能性が高い。

 台湾2027年までに5隻以上の潜水艦を量産する計画が議論されているという情報も西側諸国からでている。これは台湾をめぐる習近平政権の武力統一への執着が顕著になっている兆候とされています。

 少なくとも台湾を潜水艦建造に向かわせた、中国・習体制の「台湾武力統一」への執着がやぶ蛇だった感は否めないだろう。

 この記事は元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】台湾が潜水艦建造国になったこと自体が、中国への強烈な政治・軍事的メッセージに!

まとめ
  • 台湾の最新潜水艦と舵の公開: 台湾の「海鯤(カイコン)」型潜水艦の進水式写真が公開され、舵が「Xウイング型」であることが注目された。写真から日本の「そうりゅう型」に似た特徴も見られる。
  • ドイツのダイムラー・ベンツ社が1970年代に開発したXウイング舵は、小型化と軽量化を実現し、操縦性を向上させる利点がある。
  • 日本の舵の進化: 現在の日本の潜水艦には、十字舵とX舵があり、X舵は操縦性の向上に貢献している。将来的に日本の潜水艦はX舵を採用し続ける見通し。中国の潜水艦にはX舵はみられない。
  • 台湾の進水式での情報公開は、従来の潜水艦情報の秘匿と対照的であり、中国に対する情報戦における一環と見られる。情報公開は台湾の軍事力を強調し、中国に対するメッセージとなる。
  •  日本や米国など他国も潜水艦を運用し、情報公開によって中国へのメッセージングや情報戦が展開されている。台湾の新型潜水艦は、今後情報戦における重要な要素となる。

上の記事に掲載された情報等は、過去にこのブログにほとんど掲載しており、このブログを読まれている方なら、ほぼ全部をご存知だと思います。ただ、この記事のようにコンパクトにはまとまっておらず、このブログでは記事がいくつかあり、さらにあちらこちらに分散されていたり、内容も重複するものもあり、相対的に理解しにくい面もあったため、上の記事を掲載させていただきました。皆様の理解がさらに深まれば、幸いです。

上の記事の進水式の写真(ブログ管理人挿入)は、台湾政府が公開したものですが「海鯤(カイコン)」の尾部にご注目ください。この写真は、スクリューは隠しているものの、舵は露出しています。この舵は真後ろからみればX状の形をしています。このような形状の潜水艦の舵を「Xウイング型」と呼びます。

さらに、写真を良く見ると、舵の他に安定板のようなものがみえます、これは日本の「そうりゅう型」潜水艦にかなり似ており、尾部だけをみていると日本の潜水艦のようにみえます。

進水式直前の「はくげい」 舵は「Xウイング型」になっていることがわかる

ドイツのダイムラー・ベンツ社は、1970年代にXウイング型の舵を開発しました。この舵は、従来の舵と比べて、小型化と軽量化が図れるというメリットがあります。また、操縦性も向上するという利点があります。しかし、この当時は、Xウイングの舵のメリットが十分に理解されておらず、さらに実際に操縦するのは当時の技術で難しく採用する潜水艦はありませんでした。

Xウイングの舵が本格的に採用されるようになったのは、1990年代以降です。この頃になると、コンピューター制御技術の進歩やコンピュータそのものの小型化により潜水艦に高性能なコンピュータを搭載することも可能になり、Xウイングの舵の操縦性が十分に確保できるようになったためです。

現在日本の潜水艦の舵には、十字舵とX舵があります。十字舵は制御が簡単ですが、細かい動きの制御が難しいため、X舵が主流になりつつあります。

X舵は4枚の舵がそれぞれ独立して動くことで、上下左右に動くことができます。しかし、4枚の舵を同時に制御するのが難しいため、コンピューター制御が必須です。

日本では、そうりゅう型潜水艦からX舵が採用されています。X舵の採用により、潜水艦の操縦性が向上し、より複雑な動きが可能になりました。

今後、日本の潜水艦はX舵になっていくと思われます。

台湾当局は、進水式において尾部の舵は露出させ、スクリューは隠すということで、潜水艦建造技術、特に工作技術においては未だ先進国の1990年代のレベルにとどまっているとみられる、中国に対して、台湾の潜水艦は中国の先をいっていることを示したものと思われます。

スクリューに関しては、新たな技術が用いられている可能性もあります。またスクリューの形状や大きさがわかると、潜水艦の性能をかなり類推することができます。だからこそ、隠しているのかもしれません。ただ、これは隠さなければならないほどの先端技術を用いたスクリューが用いられていることを暗に中国側に示したものかもしれません。

潜水艦の尾部について、長々と書いてしまいましたが、これは台湾をはじめ、西側諸国による中国に対する潜水艦に関する情報戦が始まっていることを示したかったからです。

基本的には昔から潜水艦の行動は秘中の秘とされ、潜水艦の情報は隠されるのが常でした。進水式の情報ですら隠されていたのです。

その理由は、潜水艦は海中を自由に移動できるため、敵国にとっても脅威となるからです。潜水艦の情報が敵国に知られてしまうと、潜水艦の行動を予測しやすくなり、攻撃の対象とされやすくなってしまいます。

そのため、潜水艦の建造は秘密裏に行われ、進水式も一般には公開されませんでした。進水式が公開されると、潜水艦の外観や性能が知られてしまうためです。

しかし、近年では、潜水艦の技術が進歩し、敵国による探知や攻撃が困難になってきています。そのため、潜水艦の情報も徐々に公開されるようになってきました。

日本では、1990年代以降、潜水艦の進水式が一般公開されるようになり、潜水艦の情報も積極的に公開されるようになりました。

2017年潜水艦「しょうりゅう」の進水式

ただし、現在でも、潜水艦の詳細な情報は依然として秘密にされています。具体的には、潜水艦の性能や搭載兵器、配備先などは、一般には公開されていません。

しかしながら、このブログで様々な台湾の潜水艦に関する情報を掲載できるようになったり、上の記事のように台湾の潜水艦に関する情報がかなり開示されていることをみると、これは中国の情報戦に対抗するための、情報戦の一環でもあるともみられます。

それも、台湾だけではなく、日米やその同盟国にとっても、情報戦の強力なツールになります。

台湾の最新の潜水艦に関する情報公開は、このような軍事開発を取り巻く典型的な秘密主義を考慮すれば、通常とは一線を画すものです。これを中国の情報戦に対抗するための情報戦の一環として、台湾の軍事力を誇示し、より広い意味で台湾の防衛態勢について台湾と台湾を守ろうとする国々が中国に対してメッセージを送るための有効な手段ともなるでしょう。

ただし、このメッセージは、以前このブログも掲載した中国の空母のような政治的メッセージに終止するものではありません。台湾が強力な最新型潜水艦を建造し、これからも建造し続けるということで、強力な軍事的メッセージを発信できるようになったのです。

これには、様々なことが考えられます。現在でも台湾を守ろうとする国々は、台湾付近に潜水艦を潜ませていることは間違い無いでしょう。これをある程度開示すれば、対潜水艦戦(ASW:Anti Submarine Wafare)能力が、脆弱な中国にとっては、これは強力なメッセージとなります。

ASWの概念図

私は、尖閣付近にも日本の潜水艦が潜んでいると推測しています。これは、中国側も意識しており、様々な尖閣付近で様々な示威行動はするものの、尖閣上陸などのことは未だに実行しないことからも十分に予想がつきます。日本側がこれを多少でも開示すれば、これも強力なメッセージなるでしょう。

南シナ海にも、米国とその同盟国の潜水艦が潜んでいることでしょう。これもある程度開示すれば、強力なメッセージになります。

台湾は潜水艦を建造したばかりで、未だASWの能力は高いとはいえません。上の記事の元記事にもあるように、ASWの中でも、敵潜水艦の動向を探る地味な対潜水艦(対潜)哨戒能力は、台湾の“後ろ盾”である日米と比べてかなり劣ると見られます。高度な半導体技術と長年のノウハウの蓄積、そして得られたデータの分析力がモノを言う分野で、一朝一夕には力がつかないからです。

これをASWの能力が世界トップレベル日米が支援したり、訓練したり、演習を行うことも、中国に対する強力なメッセージとなります。

日米台だけではなく、他の国々も演習に参加すれば、これも強力なメッセージとなります。さらに、日米と台湾を支援する国々は、潜水艦を用いて、中国海軍に関する情報収集なども共同で行えるでしょう。

さらには、以上のようなことを元に、他の様々なメッセージを効果的に送ることができます。中国が台湾海峡で、何かをすれば、これに対して、すぐにメッセージを返すことができます。

今後習近平は、単に台湾の新型潜水艦というに軍事事実だけにとどまらず、台湾や台湾を守ろうとする国々からの、様々な政治的、軍事的メッセージに翻弄されることになるでしょう。まさに、台湾と台湾を守ろうとする国々とって、台湾が新型高性能潜水艦の建造国となったことによって、新たな情報戦のツールをも得たといえます。

日本も、日本の潜水艦隊や台湾の潜水艦、米国など同盟国の潜水艦やASW能力を巧みに用いた中国に対する情報戦を効率的に運用すべきです。

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2023年11月25日土曜日

米国が世界で失いつつある二つの力とは― 【私の論評】中東平和合意と国内価値観の変化がもたらした、米トランプ大統領の抑止力強化

 米国が世界で失いつつある二つの力とは

岡崎研究所

まとめ
  • ウォールストリート・ジャーナルの記事は、米国の抑止力喪失と戦略的後退に警鐘を鳴らす。
  • バイデン政権は中東の複雑な危機に直面し、イスラエルとハマスの緊張が高まっている。
  • 中国やロシアの挑発行動もあり、米国の抑止力の低下が懸念されている。
  • 問題は軍事力だけでなく、国内の価値観や公共意識の変化も影響している。
  • バイデン政権は軍事的な対応だけでなく、国内の価値観にも焦点を当てる必要があると指摘されている。

安倍晋三首相(当時)とミード氏(2016年)

 2023年10月19日付のウォールストリート・ジャーナル紙は、「米国が抑止力を失い、戦略的受動性に向かって次第に退却を始めると、世界はあるとき突然失速し、制御不能の錐もみ状態に陥る」という、ウォルター・ラッセル・ミードの警告記事を掲載している。

 この記事は、世界が抑止力を喪失し、戦略的な後退を経験する中で、国際情勢が混迷し、制御不能の状態に陥る危険性を警告している。この警告は、バイデン政権が中東で巨大で複雑な危機に直面していることを裏付けている。イスラエルとハマスの緊張が高まり、周辺のアラブとイスラム世界を巻き込んでいる。さらに、中国やロシアの挑発行動も顕在化しており、米国の抑止力が薄れつつあるとの指摘もある。


 この問題は、軍事力だけでなく、国内の価値観や意識の変化にも根差している。特に、前政権の大統領の行動やそれを支持する一部の米国民の態度、国内の社会的変化、そして抑止力における「ソフトウェア」とも言える価値観や公共意識の変化が問題視されている。

 このような状況が国際的な緊張を高め、地域的な軋轢をエスカレートさせる可能性がある。バイデン政権は、単に軍事的な対応だけでなく、国内の価値観や意識を巡る問題にも目を向ける必要がある。この議論は、今後の国際政治に大きな影響を与える可能性がある点で重要である。

 この記事は、元記事の要約です。詳細は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】トランプ大統領のリーダーシップ:中東平和合意と国内価値観の変化がもたらした米国の抑止力強化

まとめ
  • トランプ前大統領の政策が中東の地政学を変革し、イスラエルと複数のアラブ諸国の間で歴史的な合意であるアブラハム合意を実現させた。
  • アブラハム合意により、イスラエルとアラブ諸国の関係が正常化し、イランの侵略に対抗する重要な同盟が形成された。
  • ハマスやその過激なイスラム原理主義のイデオロギーはアブラハム合意によって打撃を受け、中東での憎しみと戦争からの脱却が可能となった。
  • トランプ大統領は国内では保守的価値観を重視し、国旗や国歌、法の支配を尊重し、キリスト教的価値観を公共の場に取り戻すことを推進した。
  • 急進左派の政策は米国を弱体化させるものであり、トランプ大統領のリーダーシップが米国の立場を強化したといえる。
上の記事の一部を以下に引用します。これは、ウォルター・ラッセル・ミード氏による見解ではなく、岡崎研究所のものとみられます。
 この問題は、軍事力だけでなく、国内の価値観や意識の変化にも根差している。特に、前政権の大統領の行動やそれを支持する一部の米国民の態度、国内の社会的変化、そして抑止力における「ソフトウェア」とも言える価値観や公共意識の変化が問題視されている。
これに関しては、抑止力は軍事力だけではなく「ソフトウェア」とも言える価値観や公共の意識の変化も重要であるという点には同意します。

しかし、「前政権の大統領の行動やそれを支持する一部の米国民の態度」を問題視するという指摘にはとうてい同意できません。特に、一部の米国民の態度を問題視するという、発言はとうてい容認できません。犯罪者や、詐欺師を支持するようなことは、問題ですが、いかなる国においても、誰が誰を支持しようと、いかなる政策を支持しようと、それは自由であるはずです。

トランプ氏の支持者

前大統領とは、もちろんトランプ大統領を意味するのでしょうが、トランプ大統領はあらゆる面で米国を強化しました。彼は軍を再建し、退役軍人の処遇を改善し、中東に平和をもたらし、ここ国内でも愛国的な価値観を広めました。トランプ大統領の登場で抑止力が弱まったというのは、民主党のプロパガンダに過ぎません。ミード氏が心配しているのは、むしろバイデン大統領でしょう。

トランプ大統領は、平和は宥和ではなく力のパランスによってもたらされることを理解していました。彼はISISやイランのような敵に戦いを挑み、イスラエルとアラブ近隣諸国との間にこれまで想像もできなかったような協力をもたらしました。

トランプ大統領の指導の下、イスラエルはアブラハム合意として知られる一連の歴史的合意において、いくつかのアラブ諸国との関係を正常化することができました。何十年もの間、ほとんどのアラブ諸国はイスラエルの生存権を認めることさえ拒否していました。

彼らは不倶戴天の敵だったのです。しかし、トランプ大統領はイスラエルを強力に支持しつつイランに対する強硬路線とも相まって、中東の地政学的な同盟関係を再編成しました。UAE、バーレーン、スーダン、モロッコといった国々は、イランの侵略に対抗するなど、イスラエルと重要な利害を共有していることに気づきました。

そこで彼らは、外交関係と協力関係を正式に結ぶことに合意しました。数年前には考えられなかったことです。しかし、トランプ大統領のイスラエルとの揺るぎない友好関係と、過去の誤ったイデオロギーに屈しない中東へのビジョンが、これを可能にしたのです。

初めてイスラエルの民間機がサウジアラビア領空を通過できるようになりました。イスラエル人と首長国は公然とビジネスを共にすることができるようになりました。何世代にもわたって立ちはだかってきた憎しみの壁は崩れ始めました。

イスラエルと複数のアラブ諸国との間でこれらの国交正常化協定を締結したことで、トランプ大統領は、それまでのどの大統領もなし得なかったことを成し遂げました。彼は世界で最も戦争が絶えない地域のひとつに、恒久的な平和の見通しをもたらしたのです。

アブラハム合意は最高の成果であり、トランプ大統領の就任が世界における米国の地位を強化に貢献しました。

以下は、ドナルド・J・トランプ大統領、バーレーンのアブドゥラティフ・ビン・ラシド・アル・ザヤニ外務大臣、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相、アラブ首長国連邦のアブドゥッラー・ビン・ザーイド・アル・ナヒヤニ外務大臣が、2020年9月15日(火)、ホワイトハウスの南芝生でアブラハム合意に署名した直後の写真です。


テロリスト集団のハマスは、アブラハム協定とイスラエルとアラブ諸国の協力関係の拡大に激怒したのです。これらの合意は、ハマスと彼らの過激なイスラム主義イデオロギーにとって存亡の危機です。何十年もの間、ハマスはパレスチナ人や他のアラブ人の間でイスラエルへの憎悪を煽ることによって、彼らの大義を主張してきました。

彼らはイスラエルを全イスラム教徒の不倶戴天の敵として描いてきました。しかし、アブラハム合意はその物語を粉々に吹き飛ばしたのです。アラブの指導者たちは、イスラエルが脅威なのではなく、イランとハマスのようなテロリストたちが真の脅威なのだと認識したのです。

だからハマスは、ロケット攻撃やその他の暴力でイスラエルを攻撃したのです。彼らは和平プロセスを頓挫させ、イスラエルを再び孤立させ、自らの存在感を保とうと必死なのです。彼らの力は、協力や協調ではなく、対立から生まれるものです。

アブラハム合意は、中東が憎しみと戦争から脱却しつつあることを示すものでした。今回のテロ攻撃は、アブラハム合意によってもたらされた脅威に対する反動なのです。ハマスが恐れているのは、イスラエルによる反撃よりも平和的な協調とそれによる繁栄です。

彼らのロケット弾攻撃は、アラブ人の多くがもはや望まない、必要としない戦争に火をつけようとする絶望的な試みといえるでしょう。しかし、ハマスが暴力と憎悪によって地政学的にガザを支配する時代は終わろうとしています。

だからこそ、彼らはますます絶望的で破壊的な行動をとっているのです。アブラハム合意は、地域全体のテロリストにとって戦略的敗北でした。アラブ諸国が和平プロセスに参加すればするほど、ハマスとその一派は暴れ続けるでしょう。

しかし、彼らの大義は失われました。日本ではほとんど報道されませんが、多くのパレスチナ人は絶え間ない戦争ではなく、協力と協調で繁栄する未来を望んでいます。だからこそ、和平合意はイスラエルにとっても、中東全域の平和を愛するアラブ人にとっても勝利だったのです。ハマスの暴力は長期的には無益なものです。アブラハム合意は、取り消すことのできない協力の力を解き放ったのです。

ガザを行進するハマス戦闘員

国内では、トランプ大統領は、国旗、国歌、法の支配を尊重しました。トランプ減税で、景気を抑止、雇用を生み出しました。彼はキリスト教的価値観を公共の場に呼び戻しました。ホワイトハウスの現職とは異なり、米国の強さは、道徳に裏打ちされた勇気と価値観から始まることを確信していました。「国内の価値観や態度」の変化が国家の安全保障に大きく影響するというのは、まったくその通りです。

トランプ大統領は、米保守派の伝統的な価値観である「信仰、家族、自由」を大切にすることこそが、米国を真に偉大な国にするものと信じていました。こうした原則を攻撃し、分断の種をまくことで抑止力を弱めようとするのが急進左派です。

彼らの政策は、米国を弱くするものであって、強くするものでありません。トランプ大統領のリーダーシップは、世界の舞台における米国の立場を強化しました。米民主党こそ、移民政策をはじめとするその悲惨な政策、米国の伝統的価値観に対する軽蔑、独善的なポリティカル・コレクトネスと全体的な戦略的消極性によって、米国の抑止力を脅かしているといえると思います。

米国の最近の国内の価値観や公共意識の変化による抑止力の低下は、トランプ前大統領が招いたのではなく、アフガン撤退にも失敗し、ロシアへのウクライナ侵攻直前の対応等にも失敗したバイデン大統領が招いたと言って良いと思います。

バイデン氏が今後すべきは、上の記事にもあるとおり、軍事的な対応だけでなく、国内の価値観や意識を巡る問題にも目を向けるべきです。

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2023年11月24日金曜日

森永卓郎氏 岸田首相が小学生に説いた権力論をチクリ「見栄っ張り」「プライド捨てボケろ」―【私の論評】政治家はなぜ卑小みえるのか?民間企業にはみられるガバナンスの欠如がその真の原因

森永卓郎氏 岸田首相が小学生に説いた権力論をチクリ「見栄っ張り」「プライド捨てボケろ」

まとめ
  • 森永卓郎氏が岸田文雄首相に対し、内閣支持率低迷と減税策への不満を指摘し、「ボケろ」とアドバイスした。
  • 岸田首相の責任転嫁姿勢を批判し、責任を取らない点を指摘。「減俸しない理由」についても皮肉を交えて述べた。
  • 過去の発言にも言及し、「見栄っ張りでなく素直になるべき」と岸田首相にアドバイス。
  • 森永氏は自身の逸話を交えつつ、「正直に行こうよ」という意図を明かした。
  • 司会者のツッコミにも笑いながら対応し、「正直さを大切に」というメッセージを述べた。

森永卓郎氏

 経済評論家の森永卓郎氏が22日、ニッポン放送のラジオ番組「垣花正あなたとハッピー!」に出演し、岸田文雄首相に対して内閣支持率低迷に関連して、「ボケろ」というアドバイスを送った。岸田内閣では、9月の内閣改造後に政務三役が相次いで辞任し、岸田首相の打ち出した減税策にも批判が高まっていた。

 この日の国会では、野党から岸田首相の人事に関して不適切との指摘があり、岸田首相は「人事は適材適所だが、政治は結果責任。責任を感じている」と答弁したことが取り上げられた。これに対し、森永氏は岸田首相の責任を取らない姿勢を批判し、「重く受け止めると言ってるけど、どう責任を取るかは一切言わない。減俸さえしない」と述べた。そして、「減俸しない理由はわかる。例えば1人辞めて3割減俸にしたら、今は3人辞めてるんで9割カットになっちゃう。4人目出ると、逆にその分を払わなくてはいけなくなってしまう」と皮肉を交えて指摘した。

 また、森永氏は岸田首相の過去の発言にも言及し、「今年3月の福島視察時に小学生から首相を目指した理由を聞かれて『日本で一番権限が大きい人なので首相を目指した』と答えたが、見栄っ張りなのは良くない。プライドを捨てて素直になるべきだ」とアドバイスした。

 司会者の垣花アナが森永氏のアドバイスをツッコむと、森永氏は「実は僕のことを〝増税くそメガネ〟って言う人がいて、それが気になって気になって…。みなさん見てください、メガネに付いた〝うんちくん〟をどうしても外したかったんで、給付金じゃなくて減税にしたかったんですよ、と言ったら伝わるじゃないですか!」と珍アドバイスを披露。垣花アナは笑いながらツッコんだが、森永氏は「言いたいのは、もっと正直に行こうよってことです」と真意を語った。

【私の論評】政治家はなぜ卑小にみえるのか?民間企業にみられるガバナンスの欠如がその真の原因

まとめ
  • 安倍晋三氏は統治に重点を置き、政策展開やリーダーシップを大きな枠組みで行い、国家戦略やビジョンを重視した。
  • 安倍氏の経済政策「アベノミクス」は、日本経済の活性化や国際競争力強化を俯瞰した大局的な政策であった。
  • 安全保障政策や外交政策も、地域情勢や国家の安全を大きな視点から見据えた政策展開を行っていた。
  • 彼の統治スタイルは、政治を身近に感じさせるユーモアを交えた演説や会見を通じても表現されていた。
  • 安倍氏の統治姿勢は、細かな点よりも大局的な視野を重視し、国家全体を俯瞰して政策を推し進めることに焦点を当てていた。岸田首相はこの点を見習うべき。
私は、岸田首相に関しては、どうしても首相在任期間が歴代で最長となった安倍首相と比較されるということで、最初から負い目を背負っているところがあると思います。

安倍晋三元首相は、日本憲政史上最も長い8年8カ月にわたって首相を務めました。

安倍元首相の在任期間は次のとおりです。
第1次安倍内閣(2006年9月26日~2007年9月26日)
第2次安倍内閣(2012年12月26日~2014年9月3日)
安倍元首相は、2022年7月8日に奈良県奈良市で選挙演説中に暗殺され死亡しました。

悲劇的な最期を遂げた安倍氏です。一部の、リベラル・左翼勢力などの奇人、変人などは、別にして、多くの日本人は故人の悪し様に語るようなことはしません。良かったことを語ります。

安倍元首相

20歳〜30歳台の若い世代の人にとっては、物心ついてからつい最近まで、成人してからつい最近まで、総理大臣といえば、安倍晋三氏です。

人の世の常として、安倍総理にも毀誉褒貶はありましたが、安倍総理を正統に評価する人々の心の中では悲劇的最期を迎えてしまった安倍晋三氏に関して語るとき「毀」「貶」より「誉」「褒」のほうが強くなってしまいます。

私もそうです。実は第一次安倍政権のときは、私は安倍首相をあまり評価していませんでしたが、第二次安倍政権になってから高く評価するようになりました。そうして、現在安倍晋三氏のことを語るとすれば、第二次安倍政権における安倍首相のことを語ります。

このような、安倍晋三氏と岸田氏はどうしても比較されてしまうというか、多くの人は安倍晋三氏を総理大臣のスタンダード(基準)として、岸田総理大臣を見るわけです。

そうなると、なぜか岸田首相をはじめとして多くの政治家が、卑小な存在見えてしまうのです。

岸田首相

ただし、安倍晋三氏をスタンダートとすると、他の政治家が卑小に見えてしまうのには、それなりの理由があります。

ここで、安倍晋三氏がどのような人だったかを振り返っておきます。

どなたかは、忘れてしまったのですが、安倍晋三氏は細かいチマチマしたことが大嫌いで、大きく物事を考えることを好んだという人がいます。私は、これは本当だと思います。

安倍晋三氏は、政治家としてのキャリアを通じて、大きなビジョンや国家戦略を重視する姿勢を示してきました。彼がリーダーシップを取った際に焦点を当てたのは、経済政策の改革や安全保障政策の強化、外交戦略の構築など、国家全体を俯瞰した大きな枠組みでした。

例えば、安倍氏は「アベノミクス」として知られる経済政策を推進しました。これは、日本の経済を活性化するための包括的な政策であり、金融緩和、財政出動、構造改革などを含んでいました。彼の焦点は国家全体の経済の活性化であり、それによって国際競争力を高め、日本経済を持続可能なものにすることにありました。

また、安全保障政策においても、日本の国家安全保障の強化に力を注ぎました。中国や北朝鮮などの地域情勢を鑑みつつ、アメリカとの同盟関係強化や安全保障法制の整備など、大きな視点から国家の安全を図る政策を進めました。

さらに、外交政策においても、アジア太平洋地域や国際社会での日本の役割強化に重点を置きました。経済外交や国際貢献、他国との協力関係構築など、大局的な視点で日本の地位向上を目指す政策を展開していました。

これらの事実は、安倍氏が大きな枠組みや国家全体の視点で政策を展開し、細かい点よりも大局的な視野を重視していたことを裏付けるものです。

一方で、安倍晋三氏は政治家として公の場で饒舌であり、時折ジョークを交えて話すことがありました。彼の演説や会見では、政策や重要なテーマに関しては真剣に語る一方で、軽い雰囲気を作るためにジョークを交えたり、会場の雰囲気を和ませることもありました。

一例として、彼は自身の政策を説明する際に比喩やイメージを使うことがあり、その中にはジョークの要素も含まれていることがありました。一般の人々に政治を身近に感じてもらうために、ユーモアを交えたアプローチをとることがあったようです。

実際、私はそのような場面にたちあったことがあります。私は、安倍首相の講演会や選挙演説に何度か立ち会ったことがあるのですが、確かに、気さくな人柄で、饒舌で、多くの人々が度々笑っていました。

それに加えて、安倍氏の人柄や人間味あふれる一面が多くの支持を集めた一因とも言われています。高橋洋一氏は、安倍氏は饒舌であり、ジョークを交えて人々を楽しませることがあったと述懐しています。

しかし安倍晋三氏と、他の政治家との違いを際立てさせたのは、何といっても大きな枠組みで物事を考えるという姿勢です。

これこそが「政治家に欠かせない」姿勢です。なぜなら、政府の役割は、統治すること(ガバナンス)だからです。これについては、以前このブログにも掲載したことがあります。
ただ事ではない財務省の惨状 同期ナンバーワン・ツー辞任 ちやほやされてねじ曲がり…―【私の論評】統治と実行は両立しない!政府は統治機能を財務省から奪取せよ(゚д゚)!

以下にこの記事から、統治に関わる部分を引用します。

"経営学の大家ドラッカー氏は政府の役割について以下のように語っています。
政府の役割は、社会のために意味ある決定と方向付けを行うことである。社会のエネルギーを結集することである。問題を浮かびあがらせることである。選択を提示することである。(ドラッカー名著集(7)『断絶の時代』)
この政府の役割をドラッカーは統治と名づけ、実行とは両立しないとしました。
統治と実行を両立させようとすれば、統治の能力が麻痺する。しかも、決定のための機関に実行させても、貧弱な実行しかできない。それらの機関は、実行に焦点を合わせていない。体制がそうなっていない。そもそも関心が薄い。 といいます。 

ガバナンスや統治という言葉は、多くの人に曖昧な意味合いで使われていることが多いです。一昔前の、大企業は世界中でガバナンスなどあまり意識しないで、運営していましたが、多くの企業が機能不全にいたるようになりました。そのような中、一部の企業がガバナンスという考え方を導入し、組織を編成しなおすと、また急激に成長するようになりました。

世界で初めて、ガバナンスという概念を取り入れた企業は、オランダの東インド会社(Vereenigde Oost-Indische Compagnie、通称VOC)だといわれています。ご存知のように、西洋列強による植民地政策は、ほとんどが失敗し宗主国に利益をもたらすことはありませんでしたが、唯一オランダ東インド会社による植民地政策だけが例外で、宗主国オランダに利益をもたらしました。

VOCは、ガバナンスの概念をどこから導入したのかは、はっきりしていません。しかし、当時のオランダでは、共和国制が採用されており、政府の統治は、議会、行政、司法の三権分立によって行われていました。この三権分立の考え方は、VOC憲章にも取り入れられ、VOCの統治体制の根幹となりました。さらに、当時の行政府は現在と比較するとかなり規模が小さく、特に政府の規模は小さく、統治に専念していました。統治と実行は厳密に区分されていました。

また、VOCは、東インド貿易を通じて、アジア諸国の政治や経済を学ぶ機会にも恵まれました。これらの経験から、VOCは、ガバナンスの重要性を認識し、それを自社の統治体制に導入したと考えられます。

VOC憲章は、ガバナンスの概念を初めて企業に導入したものとして、世界史上重要な役割を果たしました。VOC憲章は、その後のヨーロッパの企業経営に大きな影響を与え、現代のコーポレートガバナンスの基礎を築いたのです。

イギリスのインド統治も、統治と実行の分離は劇的に功を奏しました。統治者は、インド総督とその補佐官たち(20人程度の若者たち)でした。彼らは、インドの行政、軍事、外交などの全体的な統治を担っていました。しかし、実行の細かい部分は、現地の官僚や軍人、警察官に委ねられていました。

統治と実行を分離したことで、インド総督とその補佐官たちは、インドという巨大な植民地を、わずかな人数で統治することが可能になったのです。

このことを学んだ大企業は今日世界中で、統治と実行を分離しています。多くの形式や様式がありながらも、本社(本部)と子会社(事業会社)に分離し、本部が統治をし、事業会社が実行をするのです。これを曖昧にしたまま、企業規模を大きくすると、統治も実行もその能力が麻痺してしまうのです。

一方、行政府のほうは世界中で年を追うごとに肥大化し、統治と実行の区分が曖昧になり、今日機能不全に至っています。これを是正すべきとして、「小さな政府」を望む声も上がったのですが、未だそれは実現されていません。

さて、話を元にもどさせていただきます。多くの小規模事業や、中小企業がある時点から成長しなくなるのは、統治と実行を分離しないままというのが大きな要因です。急速に成長するベンチャー企業等が、途中から駄目になってしまうのもこれを曖昧にしたままというのがほとんどです。

中小企業においても優れた経営者は、ある時期から実行部分からは手を引き、部下や親族にそれを任せて自らは統治に専念するようにします。実行部分にはほぼ口を出しませんが、ただし、統治の観点からずれた場合にだけ、それを是正させるためにだけ口を出すようにします。

そうして、名ばかりの取締役ではなく、本当の意味での統治ができる取締役を育てることができた企業だけが、さらなる成長ができるのです。

ただ、世界中の巨大化してしまった政府が、未だに統治と実行が明確に分離されていません。その中でも、日本は特に分離されていません。政府の統治部分と官公庁の実行部分が分離されておらず、両方とも統治と実行を同時に中途半端に行い、能力が麻痺しているのです。そのような観点からみると、現状の日本の政治が信じられないほど非生産的で非効率であることが良く理解できます。

その中にあって、安倍晋三氏は首相として、大きな枠組みでものごとを考え、他の政治家よりは、統治に注力できたのでしょう。

安倍首相のセキュリティダイヤモンド構想で言及された四カ国

岸田首相や現状の多くの政治家に欠けるのはこの部分なのかもしれません。私は、上の記事「見栄っ張り」「プライド捨てボケろ」というアドバイスには概ね賛成なのですが、ただ、「大きな枠組み」でものを考えると言う姿勢なしに、このアドバイスに従えば、ただの「ボケ」にしかならないと思います。

現在の政治の仕組みは、残念ながら政府が統治に専念できる仕組みにも、官公庁が実行に専念できる仕組みになっていません。そのため、双方とも能力が麻痺しています。マスコミや評論家は、この麻痺状態を報道したり、仔細に分析するのみです。

ありていにいえば、政治家も、官僚も本来できもしないことを、できるという幻想に浸って、日々摩耗しているといえるのではないでしょうか。マスコミ等も出来もしないことを、できるはずだといって、本質には触れず、人の資質などに原因を求め、見当違いの批判を続けているというのが実情です。だから、それを見ている視聴者も閉塞感に苛まされることになるのです。

そこに、大きな枠組みで物事を考える、既存の政治家からみると稀有な存在である、安倍晋三氏が登場して、様々な改革を行ったのてす。

ただ、国民とすれば、稀有な存在である安倍晋三氏のような人物がでてくるのをいつまでも待つわけにはいきません。

やはり、現在大企業が行っているように、政治組織の統治と実行は分離すべきなのです。そうして、双方の麻痺を取り払い、まともに機能するようにすべきなのです。これは、旧来の枠組みから一歩もはみ出ることのできない、既存の政治家などにはできないことです。自民党内の若い世代の政治家、日本保守党などのような新たな勢力がこうしたことを推進していただきたいです。

それになし、個別で経済、安保、外交などを推進したとしても、物事はうまくは進まず、その挙げ句の果てに、政権が変わったり、状況が変わってしまえば、なし崩しになってしまいかねません。

私は、最終的には政府の下部組織である、官公庁は、何らかの形で、政府の外に出すべきと思っています。そうして、政府は統治、政府の外の官公庁は実行に専念する形を取るべきと思います。官僚組織は、そのようになってはじめて有効に機能するようになります。

しかし、ここで完璧主義の罠に嵌ることは避けるべきとは思います。完璧でなくても、少しでも改善すれば、結構な成果をあげられます。改善するたび、齟齬がないかを検証しながら実行すべきでしょう。急激な改革は、大きな歪をもたし政治的混乱をもたらす可能性もあります。

しかし、この方式の正しさは、すでに大きな枠組みで物事を考える安倍首相の登場で、それまで停滞していた、経済、安保、外交が進んだことでも証明されたと思います。大きな枠組みで考える習慣こそが、安倍晋三首相をして、他の政治家と比較すれば、統治に注力させることになったのです。

現状においては、岸田首相には、こうした安倍首相の統治に力点を置く、姿勢を見習ってほしいです。無論、大きな枠組みで考えるとはいっても、安倍晋三氏のようにはできないかもしれません。しかし、自らの得意分野だけでも、そうすれば、それだけでも、随分と変わると思います。そうして、統治と実行を分離することを目指しつつ、現状でできうる範囲内で組織改革をすべきです。そうすれば、さらに政治の世界もす少しずつでも変わっていくでしょう。

多くの政治家が政治改革にこれまでも取り組んできました。しかし、あまり成功したためしはありません。それは、おそらく、政府は統治に専念すべきという原則を忘れていたからだと思います。それなしに、政府や各官公庁がたとえどんなに素晴らしい戦略・戦術案や企画を立案し、能力が高く素晴らしい政治家が、理想に燃えて、政策提言を行ったとしても、統治も実行も麻痺している現状では、何事もうまくいきません。当然の帰結なのです。

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「心は女」事件 稲田朋美氏見解に有本香氏が反論「逮捕されたからいい、では済まされない」―【私の論評】トランプ氏の影響力が日本政治にも?日本保守党の注目の動向


2023年11月23日木曜日

「心は女」事件 稲田朋美氏見解に有本香氏が反論「逮捕されたからいい、では済まされない」―【私の論評】トランプ氏の影響力が日本政治にも?日本保守党の注目の動向

「心は女」事件 稲田朋美氏見解に有本香氏が反論「逮捕されたからいい、では済まされない」

稲田朋美議員

 三重県桑名市の温泉施設で男性が女性風呂に入った事件が、LGBT理解増進法に関連する議論を巻き起こしている。この出来事を受け、自民党の稲田朋美議員は事件と法律の関連性を否定しているが、これに対しジャーナリストの有本香氏は疑問を投げかけている。有本氏は、このような問題が法制定時から予測されていたことを指摘し、稲田氏に対する説明責任を求めている。一方、厚生労働省は公衆浴場での男女の判断基準を身体的特徴に基づいていることを改めて確認し、LGBT理解増進法の実施に合わせて通知を発出した。

 稲田氏は、理解増進法法制定前後で変わらず、この行為が犯罪であることを主張しているが、有本氏は法律よりも上位に位置する法制度に注目すべきだと主張している。彼女は、公衆浴場側が利用を拒否した場合に差別として訴えられる可能性や、犯罪者に免罪符を与えることになる問題を指摘している。さらに、同様の事件が起きた際、稲田氏がどのように対応するか、そしてLGBTに対する偏見を助長しないための法改正の必要性について言及。

 一部からは、稲田氏に対して責任を求める声も上がっている。有森氏は、日本社会は性転換や女装を含め包括的な姿勢を取ってきたため、LGBTに関する法律は必要ないとしつつも、少なくとも法改正は不可欠だと主張している。同様の問題が続けば、LGBTに対する偏見が増幅され、理解増進とは逆の方向に進む可能性があると懸念されている。稲田氏には、誤りを認め、是正する姿勢が求められています。

 稲田朋美衆院議員の回答全文は次の通り。


「事案の詳細を承知しませんが、理解増進法とは関係ないようです。公衆浴場や温泉施設の利用に関して厚労省が管理要領を定めており、男女の判断基準は身体的特徴によるものとすることになっています。これは理解増進法が制定される前後で全く変更はありませんし、法制定前も後も犯罪であるということをX上などで繰り返し申し上げてきました。いずれにせよ犯罪行為に対して、引き続き厳正に対応していくことは当然です」

以上は、稲田議員の回答を除き、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧ください。

【私の論評】トランプ氏の影響力が日本政治にも?日本保守党の注目の動向

私には、有本氏の主張はもっともであり、稲田氏の回答は、無責任であり政治家としてあるまじきものだと思います。

そうして、従来はこのような政治家がいたとしても、犯罪でも犯さない限り辞めさせることはできず、多くの有権者はこれをどうすることもできず、我慢するしかなかったというのが実情でした。

無論選挙で票を投じないということで、有権者は意思表示はできるのですが、稲田氏のような世襲の有力政治家には、資産があり選挙運動資金は潤沢であり、地元で強力な支援団体が存在しており、政治家としては相応しいとか相応しくない、あるいは能力などに関係なく、比較的若いうちに政治家になり、当選回数を重ねると、自民党内で重要な役割を担ったり、閣僚になっていくというのが今までのスタイルでした。

多くの有権者は、数十年に一回に現れるか現れないかの、安倍晋三氏のような政治家が現れることを待つしかありませんでした。その安倍氏も暗殺されてしまいました。今後すぐに安倍氏のような政治家が現れることはないでしょう。

安倍晋三首相

そのため、多くの有権者は「どうせ」などと諦め、政治に無関心になっていくという傾向がさらに強くみられるようになりました。

しかし、この古い政治スタイルが破られる可能性がでてきました。何と「日本保守党」の事務総長を務める有本香氏が、22日放送のネットニュース番組「ニュース生放送 あさ8時!」において、福井県に近々訪れることを明らかにしました。

この県は稲田朋美元防衛相の地元であり、LGBT法を推進したことで保守派の一部から離反を招いていました。有本氏は、「年末の予定が変動していましたが、ようやく福井1区にお邪魔する機会が見えてきた」と述べ、この目的については、全国からの支持や立候補についての意向を探るためだと説明しています。

また、有本氏は直接の候補者指名には否定的で、「立候補するか否かは未定であり、情勢を踏まえた上で判断するが、現時点でははっきりとは決めていない」と述べています。国際政治学者の島田洋一名誉教授も番組に出演し、「保守派の支持を集める魅力的な候補が立てば、福井1区では充分に勝算がある」と励ましました。

一方で、日本保守党が直面する課題について有本氏は、「政党要件を満たさないため、比例代表への重複立候補ができない。候補者に対して『小選挙区1本での戦い』を促すしかないため、候補者を見つけることが難しい状況にある」と述べています。

おそらく、私は、日本保守党は当初はこのようなことを実施するだろとみていましたが、やはりそうかと、思いを新たにしました。

現在日本保守党は、小さな存在ですが、一流作家の代表百田氏が率い、共同代表の河村たかし氏は、選挙戦術と戦略に長けた人物としてい知られていますし、事務総長の有本香氏有本氏はジャーナリストとして活動し、その明確な根拠に基づく保守派としての舌鋒鋭い発言は、保守党の発信力を強化することでしょう。

私は日本保守党は、当面結党の精神を忘れリベラル化してしまった自民党にかつをいれることになるのではと期待しています。

そうして、日本保守党は、来年の大統領選挙で最も有力とみられる、トランプ氏の選挙戦術・戦略を参考にすると良いと思います。

日本保守党が見習うべきトランプ勝利の鍵はいくつかあります。 

まずは、国民を第一に考えるポピュリズム的政策に焦点を当てることです。ポビュリズムとは、政治変革を目指す勢力が、既成の権力構造やエリート層を批判し、国民に訴えて、その主張の実現を目指す運動のことです。日本では、ネガティブに受け取られがちですが、米国ではポジティブに受け取られることが多いです。ここでいうポビュリズムとは、無論良い意味のそれです。

トランプ大統領にとってこれは、貿易や移民などに関する「アメリカ・ファースト」の政策を意味するものです。日本保守党にとっては、文化的価値、経済、外交をめぐる、よりナショナリスト的な政策を意味するかもしれないです。そうして、日本保守党はすでにこれに関する、スローガンをあげています。それは、「日本を豊に、強く」です。

トランプ氏の「アメリカ・ファースト」はマスコミなどに曲解されましたが、これは米国の孤立主義を意味するものではなく「米国を豊に、強く」というのが元々の意味です。実際、トランプ氏は大統領のときに、米国孤立主義など実行しませんでした。



トランプ氏は「沼地(The Swamp)」と戦うアウトサイダーとして立候補しました。「沼地(The Swamp)」とは、ドナルド・トランプが大統領選挙キャンペーン中に腐敗している、あるいは利己的であると描いた、ポリティカル・コレクトネスに凝り固まった政治組織やエリートのことです。

トランプ氏は「沼の水を抜く」と公約することで、一般市民よりも政治家やロビイストに利益をもたらすように仕組まれた政府機関に対する多くの有権者の不安を取り除くことを約束したたのです。

より具体的に言えば、「沼」とは次のような意味です。 長年の政治家や政府関係者は、公共の利益のためというよりも、現状維持や自分たちの権力を守ることに関心がある。 政治におけるカネとロビイストの影響力により、有権者よりもむしろ自分たちの利益のために、強力な特別利益団体が政策や法案を形成することができる。 実力よりもコネや便宜、特権に基づいて動く政治的王朝や階層のことです。「沼の水を抜く」とは、こうした状況を一掃するという意味です。

「沼の水を抜く」をイメージ化したイラスト

日本保守党が、これらから「アウトサイダー」として売り込むことができる候補者は、ポピュリストにアピールできるでしょう。

 連邦政府の官僚主義が拡大し、規制の行き過ぎがお役所仕事とコンプライアンスに起因するコスト高でビジネスを阻害し、経済に損害を与えているとトランプは主張しました。

「沼」とは、有権者が政府や政治体制について腐敗している、利己的である、非効率的であると認識しているすべてのものの比喩なのです。このことが日本では、ほとんど報道されていません。こうした「沼の水を抜く」ことを誓うトランプのような候補者が大きな支持を得るのは当然のことだと思われます。

日本保守党は、ますます「リベラル化」していく自民党に対抗して、真の保守主義を代表する立場をはっきりとさせています。有権者は、いままでの枠内でものごとをすすめようとするのではなく、枠を破り現状を打破しようとする候補者に熱狂するでしょぅ。このようなことは、安倍首相の登場を除けば、久しくなかったことから、支持するなどの次元ではなく熱狂することになるでしょう。

トランプ氏のように、日本保守党のリーダーたちも、保守層の有権者の心に響くような直接的な表現ができます。有本氏の「明確な証拠」に基づく「舌鋒鋭い発言」は、より信憑性を求める多くの有権者の心をつかむことでしょう。

日本保守党は、より重要な問題に焦点を当てるべきです。トランプ氏にとっては、移民問題やNAFTA(北米貿易協定)のような貿易取引などがそれに当たります。日本保守党にとっては、LGBT問題、教育政策などがそれに当たるでしょう。特に自民党が保守の核となる価値観を「忘れてしまった」分野で強い姿勢を示せば、自民党の支持者を引き離すことができるでしょう。

トランプ氏、百田氏、河村氏、有本氏のような指導者のカリスマ的人格は、草の根の熱烈な支持を集めます。支援者の熱狂を活用し、ポピュリスト的な魅力とメディアに精通した候補者を中心とした「ムーブメント」を構築することが鍵となります。

街頭演説をする、左から河村氏、百田氏、有本氏

現状維持の体制に対する有権者の不満を利用したこの種の反乱キャンペーンは、本質的に反体制的です。保守党はまだ小規模ですが、コミュニケーション、価値観、パーソナリティをめぐるこうした戦略に注力することで、その知名度を大幅に高め、成長を加速させることができるでしょう。

今後日本では、米国でトランプ旋風が起こったような、日本保守党旋風が巻き起こる可能性もでてきました。ただ、それまでの道のりは長いです。しかし、保守派からすれば、どうしても容認できないような議員に対して、一矢を報いることができるようになる可能性は高まってきました。これが具体化すれば、有権者の関心は嫌が負うでも高まると考えられます。

自分では、日本保守党はトランプ氏を参考にすべきという記事を書いたつもりなのですが、百田氏としてはトランプ氏の戦術・戦略を最初から参考にしているように思えてきました。百田氏はトランプ氏に注目してきたのは明らかであり、そもそも日本保守党は日本でもトランプ旋風のようなことを起こせないかということが、結党の動機となっている部分があるのかもしれません。

世襲政治家の典型でありながら、稀有の安倍晋三氏の戦術・戦略は、百田氏には参考にしたくてもできません。しかし、トランプは違います。日米では政治風土は無論、国民性や文化などは異なるものの、トランプ氏のやり方は、百田氏に多いに参考になっているものと思います。

無論、日本ではトランプというとネガティブに捉えられがちですが、日米メディアともトランプ氏をあれだけネガティブに報道しながらも、現在トランプ氏が来年の大統領選の最有力候補になっていることを考えれば、多くの米国人はそうは思ってはいないようです。私もそう思います。

この動きが、有権者の政治への関心を高め、さらに日本の政治を変える原動力になれば、幸いです。

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2023年11月22日水曜日

膠着状態のウクライナ戦争 カギはテクノロジーの革新―【私の論評】ウクライナ戦争、反転攻勢は膠着状態? 2~3年で占領地奪還の可能性も!

 膠着状態のウクライナ戦争 カギはテクノロジーの革新

岡崎研究所

まとめ
  • ウクライナのザルジニー総司令官は、戦争は膠着状態に陥っていると主張。
  • その原因は、双方のテクノロジーの水準が同じ水準に達したこと。
  • ウクライナが勝利するためには、ドローンや電子戦などの分野でテクノロジーの革新が必要。
  • 西側諸国はウクライナへの支援を継続する必要がある。
  • 米国の支援が減少すれば、ウクライナの勝利が遠のく。
ウクライナの攻撃型ドローン「バックファイア」

ウクライナ戦争は、2022年2月24日にロシアがウクライナに侵攻したことで始まった。当初は、ウクライナ軍がロシア軍を撃退し、首都キーウの奪還に成功するなど、ウクライナが優勢に進んでいた。しかし、その後、ロシア軍は反撃に転じ、東部・南部で攻勢を開始した。

ウクライナ戦争は、現在も膠着状態が続いている。両軍とも大きな損害を被っており、戦況は大きく動いていない。

ウクライナ戦争の膠着状態の主な原因は、双方のテクノロジーの水準が同じ水準に達したことにあると分析されている。

具体的には、ドローンや電子戦などの分野で、両軍の技術は急速に進歩した。そのため、両軍とも有効な打撃を与えることができず、泥沼の戦いが続いている。

ウクライナが勝利するためには、ドローン、電子戦、砲撃制圧、地雷除去の4つの分野でテクノロジーの革新が必要だと、ウクライナ軍のワレリー・ザルジニー総司令官は主張している。

ドローン

ウクライナ軍は、ドローンを使ってロシア軍の戦車や部隊を攻撃している。しかし、ロシア軍もドローン対策を強化しており、ウクライナ軍のドローンも撃墜されるケースが増えている。

電子戦

電子戦とは、敵の通信やレーダーを妨害する技術です。ウクライナ軍は、電子戦を使ってロシア軍の砲撃を妨害している。しかし、ロシア軍も電子戦能力を強化しており、ウクライナ軍の電子戦も効果が薄れつつある。

砲撃制圧

砲撃制圧とは、敵の陣地や戦力を砲撃によって無力化することである。ウクライナ軍は、砲撃制圧を使ってロシア軍の進撃を阻止しようとしている。しかし、ロシア軍は地雷や防御陣地を強化しており、ウクライナ軍の砲撃も効果が薄れつつある。

地雷除去

ウクライナには、ロシア軍が敷設した地雷が数十万個あると推定されている。これらの地雷は、民間人やウクライナ軍兵士の生命を脅かしている。

ウクライナが地雷を除去するためには、最新の技術や機材が必要となる。

西側諸国の支援

西側諸国は、ウクライナへの支援を継続している。しかし、ウクライナが要求する最新のテクノロジーや兵器を供給することには慎重だ。

特に、米国は、ウクライナが敗北しないよう、しかし米国がロシアとの対決に引きずり込まれないよう確保することに目的を定めている。そのため、ウクライナへの支援を慎重に検討している。

【私の論評】ウクライナ戦争、反転攻勢は膠着状態? 2~3年で占領地奪還の可能性も(゚д゚)!

まとめ
  • ウクライナの反転攻勢は、当初から2~3年かかると予想されていた。
  • ウクライナ軍は、ロシア軍の占領地を分断し、弱い方を攻める戦略をとっているようだ。
  • 反転攻勢に成功すれば、2~3年以内に占領された土地を奪還できる可能性があると考えられた。
  • 反転攻勢に失敗した場合は、5年以上、下手をすると10年膠着状態が続く可能性がある。
  • ウクライナは、2024年前半までに占領地を分断し、戦況を有利に導こうとしている。
現在のウクライの反転攻勢を膠着しているとみるのは、まだ時期尚早です。私は、もともとウクライナの反転攻勢は時間がかかるとみていました。それについては、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
ウクライナ、反攻で「破滅的」損失 プーチン氏―【私の論評】今回の反転攻勢が成功すると、2~3年以内に占領された土地を奪還できるかも!戦争はまだ続く(゚д゚)!

ダム決壊で発生した水害

 ウクライナでダムが決壊したのは、テレビ報道などで皆さんご存知でしょう。決壊したのは2023年6月6日です。ウクライナ南部ヘルソン州のカホフカ水力発電所のダムが、ロシア軍の攻撃によって決壊されたとされています。このダムは、ドニプロ川に建設されており、貯水池の水量は日本の琵琶湖の約3分の2に相当します。ダムの決壊により、洪水が発生し、少なくとも21人が死亡しました。また、広範囲にわたる農地や住宅が浸水し、深刻な被害をもたらしました。

この直前から、それまで散発的だったウクライナ反攻が、組織的に体系的に行われるようになったとされています。それが本当かどうかは、軍事機密なので、未だに明らかにされていません。真相は戦後に公表されるでしょう。ただ、大方の軍事筋はこの前後で、ウクライナの本格的反攻が始まったのは間違いないものとしています。

この事実をもとに、当時の私の分析では、この時点から2022年2月24日にロシアのウクライナ侵攻によって奪われた土地を奪い返すのに、2〜3年はかかるだろうとこの記事に掲載しました。現在は、この時からまだ5ヶ月が経過したばかりです。

この記事より、予測の元となった根拠の部分をあげます。
今後の見通しとしては 、 今回の反転攻勢によりロシアの占領地の分断に成功すれば かなり有利になります 。

ただ 、分断すると 、今度は突破した部分が挟み撃ちに遭うので 、逆にウクライナ側は挟み撃ちから守りきる陣地をつくらなければなりません 。

これを秋冬の地面がぬかるむ時期にまでに できれば 、 分断されたロシア軍の弱い方を来年 ( 2024年 ) 攻めることになるでしょう 。 つまり 、 ドンバス地方かクリミアのどちらか弱い方を攻めて 、 再来年にもう片方残った方を攻める形になるでしょう 。

今回の反転攻勢が成功すると 、 2 ~ 3年以内には占領された土地を奪還できるかも知れないです 。 無論奪還しても戦争が終わるとは限りませんが 、 少なくとも見通しは立ちます 。

一方で反転攻勢に失敗し 、 投入された12旅団が磨り潰されるようなことになると、組織的な反転攻勢は今後 、 難しくなります 。 そうなると5年以上 、 下手をすると10年ぐらい膠着状態が続くかもしれません。いずれにせよ、現在の反転攻勢が成功したとしても、すぐに戦争が終わるとはみるべきではないです。

結論を言うと、反転攻勢がうまくいったとして、2〜3年でロシアに今回ロシアに占領された地域を取り返すことができる、失敗した場合は、5年以上、下手をすると10年かかる可能性があるということです。そうして、クリミア奪還などはその後ということになります。

ウクライナ軍女性兵士 実写写真

このように時間がかかることは、多くの現代人がなかなか理解しにくいところがあると思います。現代人は、何をするにしてもスイツチ一つですぐにできます。部屋を温めたり、風呂に入るにしても、一昔前はそれなりに時間と労力がかかりましたが現在ではすぐにできます。

ただ、これは第二次世界大戦を振り返ると、理解できるかもしれません。

連合軍がノルマンディー上陸をしたのは1944年6月6日です。ヨーロッパでの戦争が完全集結したのは1945年5月8日です。したがって、ノルマンディー上陸からヨーロッパでの戦争が完全集結するまで、1年11ヶ月かかりました。

具体的には、ノルマンディー上陸から1年後の1945年6月6日には、連合軍がベルリンに進攻し、ドイツ軍の抵抗が激化しました。その後、ソ連軍が東から、連合軍が西からドイツに迫り、1945年5月8日にドイツは降伏しました。

物量では圧倒的に有利で、制空権、制海権を完全掌握していた連合軍がノルマンディーに上陸したという時点で、すでに戦争の帰趨は決まり、ドイツの敗北は決定的だったといえます。しかし、実際に 連合軍が勝利を手にするには、それから2年近くの歳月を要したのです。

これを考えれば、兵器弾薬は西側諸国がウクライナに供与しているものの、戦っているのはほぼウクライナ軍のみであり、しかも地上戦が主戦場ですから、最終的な勝利を得るためには、戦況の不利、有利にかかわらず、ある程度時間がかかるとみるべきものと思います。

地上戦であれば、兵員輸送車などはありますが、それでも移動手段の多くは、歩兵の歩行ということになります。しかも、歩兵は敵と戦闘しながら歩きますし、さらに弾薬や食料などの重装備を背負っての移動ということになります。

そうなると、一日では最大で10km、現実的には数キロと考えて良いでしょう。このようなことを考えれば、通常の移動からみれば、はるかに時間がかかることは、理解できると思います。

ノルマンディー上陸作戦

現時点で、膠着状態かどうかは、はっきりとはわかりません。そのため、現状の膠着状態は、当初から予想されたものなのかどうか、見極める必要があります。ただ、これはウクライナ、ロシア双方とも、情報戦を展開していることから、現時点では正しく判断するのは難しいです。正しく判断できるようになるのは、これも戦後でしょう。

ただ、ワレリー・ザルジニー総司令官が「膠着状態」であると強調することには、それなりの理由があると考えられます。

ウクライナは、2024年アメリカの大統領選を前に、西側諸国からの支援を維持するために、冬季にも攻勢を続けることを決めたようです。

その理由の一つは、2024年以降は、米国に共和党の大統領が登場した場合、米国の支援が減少する可能性があるため、なるべく目に見える戦果を挙げて米国の支持を取り付けたいのでしょう。

もう一つは、前回の反攻作戦で、ロシア軍に地雷原を敷設される時間を与えてしまった反省から、冬季でも攻勢を継続して、地雷を敷設する時間を奪いたいからとみられます。

もちろん、冬季攻勢にはリスクもあります。しかし、ウクライナは、ドローンなどによる上空からの支援を計算したうえで、決断したようです。

ウクライナは、2024年前半までに、初期に想定された戦果である、南部から東部に広がるロシアの占領地の分断をしなければならないという悲壮な決意を持って戦いを継続しているとみられます。無論、分断に成功したとしても、それだけでは決着はつかず、戦争は継続します。しかし、2024年の前半までに、分断しなければ、戦況はかなり不利になる可能性もあります。

ただ、戦闘は不確実なものであり、当初の目論見どおりになる可能性は低いとみておくべきです。

ウクライナ側は、こうした状況を、支障のない限りにおいて、西側諸国に伝え、西側諸国は、短気を起こさず、気長にウクライナに対して支援を継続すべきでしょう。

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2023年11月21日火曜日

支持率低下は「不思議」 岸田政権の政策を評価―十倉経団連会長―【私の論評】岸田政権の支持率低下を打開し、長期政権を維持するために必要な施策とは?

支持率低下は「不思議」 岸田政権の政策を評価―十倉経団連会長

経団連 戸倉会長

 経団連の十倉雅和会長は20日の記者会見で、岸田政権の支持率低下に歯止めがかからないことについて、「一つ一つの政策は正しい方向で、それぞれ評価している。なぜこれで支持率が上向かないのか私も不思議だ」と述べ、現政権が掲げる政策について前向きに評価した。

【私の論評】岸田政権の支持率低下を打開し、長期政権を維持するために必要な施策保守回帰?

まとめ
  • 岸田政権が崩壊した場合、次の政権は岸田政権とあまり変わらないか、よりリベラル寄りでかつ財務省よりになるかのいずれかになる可能性が高い。
  • 岸田政権が崩壊した場合、安倍政権からの懸案である憲法改正などの議論が遅れたり、首相交代で日本の国際的地位の低下などが考えられなどの混乱は必至であり、であれば現状では政権は維持したほうが良い。
  • 岸田政権の支持率は低下しており、政権運営能力の向上が求められている。
  • 具体的な施策としては、内閣と党内からリベラルでいわゆる進歩的な人物を一掃し、消費税減税を実施、中国と北朝鮮に対して強硬路線をとる、LGBT理解増進法などリベラルな社会政策を縮小すべき。
  • 安倍政権から懸案になっている憲法改正を強力に推進する、権力を強化し、改革を積極的に推進すべき

岸田首相

私は、以前このブログで、岸田政権が現在崩壊することは、国益の損失につながる可能性があることを指摘しました。

自己の希望や観測などを廃して冷静に分析すると、岸田政権が崩壊すれば、次の政権は現在の岸田政権とあまり変わりないか、よりリベラル寄りでかつ財務省よりになるかのいずれかになる可能性が高いです。

岸田政権が崩壊した場合、安倍政権からの懸案である憲法改正などの議論が遅れたり、首相交代ということで日本の国際的地位の低下などが考えられ政治的大混乱は必至なので、であれば現状では政権は維持したほうが良いとい結論になるというものです。

安倍首相


自民内党保守派もこのことを理解しているので、いまのところ大きな派手な動きはしないのでしょう。そうして、最近の池田大作氏の大往生も、この傾向に拍車をかけるでしょう。

そうして、来年の総裁選までの間に岸田政権には、政権運営能力をつけるべきであり、そうでなければ、来年の総裁選で敗北か、そもそも菅氏のように総裁選に出馬しないということもやむ無しだと思います。ただ、政権運営能力がつけば、当面は継続したほうが良いと思います。

支持率の低下をみれば、とても戸倉氏のように手放しで、称賛する気にはなれません。岸田政権が崩壊した場合、公明党との連立が破棄されるとか、高市氏が次期総裁になるということが確約されているというのであれば、岸田政権はすぐにも崩壊したほうが良いと思います。ただ、現実はそのようなものではないです。だから、気軽に岸田政権崩壊などという事などできないのです。

私は、財務省が倒閣運動に走っているとか、自民党内で岸田おろしが始まっているなどの声もありますが、崩壊後の自民党内の大混乱を考えると、岸田政権崩壊はすぐにおこることはないと考えています。各派閥とも、現在は状況を見極めている段階で、すぐに何かをするという状況にはないと思います。無論何か状況が変わるということもあり得ますが、支持率が落ちても岸田政権はしばらくは存続すると思います。

財務省

岸田首相はこのような状況をただ、甘受することなく、政権運営能力に向上につとめていただきたいです。

政権運営能力とは、政府の政権運営能力とは、政府が国政を円滑に運営する能力のことです。具体的には、以下の要素が挙げられます。

政策形成能力

政策形成能力とは、国民の要望を踏まえて、効果的な政策を立案・実行する能力です。具体的には、以下の能力が求められます。

  • 国民のニーズを的確に把握する能力
  • 政策の目的や効果を明確に定める能力
  • 政策の実現可能性を検討する能力
  • 政策を実行するための計画を立てる能力

政治調整能力

政治調整能力とは、与党内、また与野党間において政策や人事を調整する能力です。具体的には、以下の能力が求められます。

  • 相手の立場や意見を理解する能力
  • 妥協点を探る能力
  • 合意形成のためのリーダーシップを発揮する能力

危機管理能力

危機管理能力とは、自然災害や経済危機などの危機に迅速かつ適切に対応する能力です。具体的には、以下の能力が求められます。

  • 危機の兆候をいち早く察知する能力
  • 危機の状況を正確に把握する能力
  • 危機に対処するための計画を迅速に策定する能力
  • 危機対応を統括する能力

国民とのコミュニケーション能力

国民とのコミュニケーション能力とは、国民の理解と支持を得るために、政策や施策をわかりやすく説明する能力です。具体的には、以下の能力が求められます。

  • 国民の視点に立って、政策や施策を説明する能力
  • わかりやすい言葉で、簡潔に説明する能力
  • 国民との信頼関係を構築する能力

政府の政権運営能力は、国政の成否を左右する重要な要素です。政府は、これらの要素を向上させ、国民の期待に応える政権運営を行うことが求められます。

岸田首相が政権運営能力を改善するためは、 内閣と党内からリベラルでいわゆる進歩的な人物を一掃すべきです。一掃が無理なら、要所要所に保守派を配置し、牽制すべきです。自由市場経済、伝統的価値観、強力な軍事力を支持する堅実な保守派と入れ替えるべきです。岸田首相には、弱腰の穏健派ではなく、忠実な保守派が必要だと思われます。これを実施することにより、自民党の岩盤支持層が戻ってくるでしょう。

自民党本部

消費税減税を実施すべきです。現在の国民の不満は、物価上昇に賃金の上昇が追いついていないことです。これを解消するには現時点で最も有効なのは、消費税減税です。これによって、多くの国民の支持を回復することとができます。

海外からのエネルギー、資源価格は、来年は下がるとみられ、物価の急激な上昇は来年は収まるものとみられます。小麦の値下げなど、その兆候はすでに現れつつあります。

物価が落ち着けば、消費税減税は、今年あたりは、物価上昇分を補うという性格が強かったものが、消費者の購買意欲を加速し、経済に良い影響を与えることでしょう。これは、ビジネスリーダーや市場関係者からも歓迎されるでしょう。そうすることで経済成長を刺激し、多くの国民からの支持が回復するでしょう。

特に減税措置は、補助金よりも実施が簡単で、迅速に実行できます。これでいわゆるお役所仕事はかなり削減できます。そうして、有効需要の考え方からすれば、減税も同じ効果があります。しかも、はやく実現できるので、国民の納得感は他の施策をはるかに上回ります。

そうして、こうした政策の根底には、時給ギャップ16兆円を埋めることが第一義であることを忘れるべきではありません。マクロ経済を知らない愚かな政治家や官僚、マスコミが「バラマキ」と批判しますが、需給ギャップを埋めるだけの対策を行わなければ意味がありません。経済対策はまずは何よりも「量」であることを認識すべきです。

中国と北朝鮮に対して強硬路線をとるべきです。防衛増税は廃止し、国債で資金を調達し防衛費増をすることを高らかに宣言すべきです。米国との同盟を強化し、中国の領土的野心に立ち向かい、国家安全保障の強さを示し、「タフリーダー」としての信任を高めるべきです。

岸田首相は保守主義に回帰し、真の保守主義者を目指すべき AI生成画像

LGBT理解増進法などリベラルな社会政策を縮小し、警察や国境警備の予算を増やし、伝統的価値観を教える教育改革を進めるべきです。さらに、安倍政権から懸案になっている憲法改正を強力に推進すべきです。これにより保守層を取り込むことができます。

権力を強化し、改革を積極的に推進すべきです。党内や官僚機構からの抵抗に打ち勝つため、臆することなく政治的権限を行使すべきです。大胆な改革は、たとえ物議を醸すとしても、多くの国民は岸田首相を変革的リーダーとみなすことになるでしょう。

自民党の結党の精神は「保守主義」です。岸田首相は真の保守主義者としての役割を果たし、お役所仕事を削減し、経済を浮揚させ、ビジネスを支援し、軍備を増強し、伝統的な価値観を推進し、大きな政治的反対勢力が形成される前に迅速に動くことで、機先を制するべきです。

以上は、私の願望なのですが、岸田首相がこの願望をいくつかでも果たしていただいて、岸田政権が長期政権になり、真の国民目線の保守政権ができるまでの揺りかごとしての役割を果たしていいただきたいものです。無論、上で述べたことをすべて実現していただけるなら、安倍政権を超える長期政権を目指すべきです。

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