2024年9月28日土曜日

トランプはハメられたのか…下院委員会調査で新たに判明!「米議事堂襲撃事件」で握りつぶされていた「大統領の州兵派遣要請」―【私の論評】衝撃の真相:トランプ無罪と日本総裁選の意外な共通点

トランプはハメられたのか…下院委員会調査で新たに判明!「米議事堂襲撃事件」で握りつぶされていた「大統領の州兵派遣要請」

まとめ
  • トランプは1月6日の事件前に、安全確保のため州兵または国防軍の派遣を要請していたが、国防総省はこれを無視し、逆に州兵の出動を制限した。
  • 1月6日の議事堂襲撃時、州兵の派遣が大幅に遅れ、事態対応が遅れた。マッカーシー陸軍長官の不可解な行動(出動命令の遅れ、電話応答の拒否)が指摘されている。
  • 公開された議事堂内の監視カメラ映像では、トランプ支持者の暴力的な行動はほとんど見られなかった。
  • 多くのトランプ支持者は、議事堂警察の誘導に従って議事堂内を平和的に見学していたことが明らかになった。
  • これらの事実から、トランプが意図的に陥れられた可能性や、反トランプ派が事件を仕組んだ可能性が示唆されている。

議事堂内を見学するトランプ支持者    左は「Qアノン・シャーマン」とも呼ばれたジェイコブ・チャンスリー

2021年1月6日の米連邦議事堂襲撃事件について、主流メディアはトランプが支持者を扇動したと報じたが、トランプはこれを否定し、平和的な集会を意図していたと主張した。最近の米下院管理委員会の調査で、トランプの主張が裏付けられた。

トランプは事前に国防総省高官と会い、州兵または国防軍の派遣を要請していたことが明らかになった。しかし、この要請は無視され、さらに1月5日にマッカーシー陸軍長官が州兵の出動を制限する異例の命令を出した。

1月6日の時系列は以下の通り:
  • 午後0:53: 暴徒が議事堂に侵入
  • 午後3:04: ミラー国防長官代理が州兵の即時配備を承認
  • 午後5:08: マッカーシー陸軍長官が出動命令を出す
  • 午後5:53頃: 州兵が議事堂に到着
この遅延について、ラウダーミルク委員長は国防総省高官が軍隊の出動を「見た目がよくない」と懸念したためだと説明している。しかし、事態の深刻さを考えると、この説明には疑問が残る。

さらに、ワシントンDC州兵の副司令官アーロン・ディーンの証言によると、州兵の司令官ウォーカー少将が午後2:30から5:00の間にマッカーシー陸軍長官に3回電話をかけたが、すべて留守番電話になったという。

これらの事実から、反トランプ派がトランプを陥れるために事件を仕組んだという仮説が浮上している。この仮説では、反トランプ派が暴力的な行動を起こし、トランプ支持者を議事堂内に誘導したとされる。

この仮説を支持する要素として、議事堂内の監視カメラ映像が2022年秋の中間選挙後まで公開されなかったこと、公開された映像にはトランプ支持者の暴力的な行動がほとんど見られないことが挙げられる。

公開された動画から、多くのトランプ支持者は議事堂内を平和的に見学していたことが判明した。これにより、トランプ側が議事堂襲撃を起こしたという主張は誤りである可能性が高まった。むしろ、トランプを陥れようとする勢力が計画的に事件を引き起こした可能性が示唆される。

アメリカでトランプが依然として大きな支持を得ている理由は、この構図に気づく国民が増えているためと考えられる。主流メディアがトランプを批判し続ける中、そうした報道を信用しない層が分厚くなっているのが今のアメリカであると理解すべき。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】衝撃の真相:トランプ無罪と日本総裁選の意外な共通点

まとめ
  • トランプ氏は2020年の大統領選に敗北し法的問題に直面、高市氏も自民党総裁選で敗れ、党内での支持基盤が課題となっている。
  • メディアの影響: 高市氏は保守的な政策が過度に強調され、ネガティブなイメージを持たれた。また、トランプ氏も「フェイクニュース」としてメディアを批判しており、両者のメディアとの関係に類似性が見られる。
  • 高市氏は保守層からの強い支持を受けており、トランプ氏も熱心な支持者が存在する。両者は共通の支持基盤を持っているようだ。
  • トランプ氏と高市氏は、国民の不満に応えつつ解決策を提示する点で、ポピュリズム的な側面を持っているが、その解釈には注意が必要。この米国英語の本来の意味は、「中産階級の代弁者」
  •  高市氏は党内改革を目指し、トランプ氏はエスタブリッシュメントに挑戦しており、両者は異なる背景ながら共通の挑戦を抱えている。
トランプ氏

2021年1月6日に起きた米国連邦議会襲撃事件について、トランプ前大統領の支持者が襲撃を主導したわけではないという説が、強い根拠を持っていることをご説明します。

まず、トランプ前大統領の姿勢を理解する必要があります。彼は常に「法と秩序」を重んじてきた人物であり、米国の正義や国家機関の神聖さを強く信じています。そのため、彼が自らの支持者に暴力を煽ったり、違法行為を奨励することは考えにくいのです。トランプ氏は、以前から平和的な集会や言論の自由を主張しており、1月6日の演説でもこの立場を貫いていました。

さらに、この事件にはトランプ氏を意図的に陥れようとする動きがあったことが示唆されています。上の記事にもある通り、州兵の派遣を制限する命令や、国防総省の対応が遅れたことから、混乱を意図的に引き起こそうとした可能性が浮かび上がっています。特に、議会警察が抗議活動の事前情報を持ちながらも、十分な対応を取らなかったことは疑問が残ります。もしトランプ氏が暴力的な行動を計画していたならば、なぜ彼は軍の強化を求め、違法行為を防ごうとしたのでしょうか。

また、事件に関与した反トランプ派の個人やグループの行動にも注意が必要です。事件当日に暴力を煽るために組織的に動いた勢力が存在し、彼らがトランプ支持者を装って議会突入を主導したという証拠が増えています。この行動の背後には、トランプ氏を悪者に仕立て上げ、彼に反対する政治勢力に利用させる意図があったとされています。

加えて、米国の主流メディアがこの事件を誤って報じたことも問題です。偏った報道や、映像の断片的な使用が、トランプ氏が暴力を煽ったという誤解を広め、多くの人々が公正な審議を経ずに彼を非難する状況を生んでしまいました。しかし、米国内では、メディアの偏向に気づいた市民が増え、別の情報源を求める動きが広がっています。

そして、事件当日に現場にいた多くのトランプ支持者たちの証言も重要です。彼らは、事件が暴力に転じるまでは、集会は非常に平和的だったと証言しています。こうした証言は、事件の真相を語る上で貴重な情報となっており、主流メディアの報道に対して異議を唱える内容となっています。

結論として、トランプ氏側が議会襲撃を引き起こしたのではないという説は、単なる憶測ではなく、多くの事実に基づいて支持されています。公正かつ偏りのない調査が求められており、政治的な圧力に左右されず、すべての証拠を公平に検討する必要があります。真実を追求することは、米国だけでなく、どの民主主義国家においても正義の実現に欠かせないものであり、我々はこの問題に対して冷静かつ客観的に注視するべきです。

高市早苗氏が敗北した2024年の自民党総裁選においても、メディアの影響が少なからず関与していたと考えられます。特に、メディアによる報道の仕方が彼女の印象を悪化させたとの指摘があります。

高市早苗氏

まず、メディアは高市氏の保守的な政策に焦点を当て、その強硬さを強調する形で報道していたケースが多く見られます。特に、彼女の「経済安全保障」や「日本の防衛力強化」などの政策は、メディアによって過度に強硬的なものとして描かれたとされ、その結果、穏健派の有権者には不安を与えた可能性があります。例えば、高市氏の過去の発言や政策提案が「過激」と見なされ、メディアによってネガティブな方向に押し出されたという指摘もあります。

さらに、総裁選の選挙戦ではメディアが注目するテーマや焦点が彼女にとって不利に働いたことがあったとされています。他の候補者との討論会の際、一部のメディアは高市氏の強気な姿勢を「対立を助長する」として報じ、より穏健な立場を取る候補者が相対的に好意的に扱われたケースが見受けられました。討論会やインタビューの報道では、彼女の政策の一部が断片的に取り上げられ、その文脈が正確に伝わらなかったことが、支持者以外の層に誤解を与えた可能性があります。

また、特定のスキャンダルが選挙に悪影響を与えた可能性もあります。高市氏を支持する議員が「裏金問題」に関連して批判されるなど、メディアがこれを強調することで彼女のイメージが悪化し、支持層に影響を与えたという見方もあります。

こうした状況の中で、高市氏の支持基盤の弱さや党内の権力闘争が、彼女の敗北に繋がったとみられます。

石破政権は成立したばかりですが、前途多難といえます。その根拠には、党内での支持基盤の弱さ、信頼の欠如、メディアとの関係悪化、経済・外交政策への不満、そして世論支持率の低下が挙げられます。これらの要因が複合的に作用し、石破氏の政権運営は、困難を極める可能性が高いです。

石破総理が衆院解散総選挙を急いで実行する場合、自民党が大敗する可能性が高いです。

まず、現在の自民党の支持率が顕著に低下していることが一つの重要な要因です。最新の世論調査によれば、自民党の支持率は30%を切ることが多く、特に都市部や若年層の支持が弱体化しています。例えば、2024年3月の調査では、東京都内での自民党支持率はわずか25%であり、これは過去数年で最低の数字とされています 。こうした低支持率の背景には、経済政策やリベラル的な政策に対する国民の不満が大きく影響しており、これらが選挙において自民党にとって逆風となる可能性があります。

次に、野党の連携の進展も無視できない要素です。近年、立憲民主党や共産党などの野党が協力して選挙戦に臨む動きが強まっており、これにより自民党に対抗する力が増しています。たとえば、2023年の参院選では野党が共闘し、接戦を繰り広げた結果、自民党が重要な選挙区で敗北する場面が見られました 。このように、野党の連携が進むことで、自民党にとって有利な選挙戦を展開することが難しくなることが予想されます。

また、経済状況も重要な要因です。現在、日本経済はインフレ圧力や円安などの影響を受け、生活費の高騰が問題視されています。特に2023年においては、消費者物価が前年同月比で3%以上上昇している状況が続いており、国民の生活に直接的な影響を及ぼしています 。こうした経済問題は選挙における大きな争点となり、自民党の現政権がその対応を問われることになるでしょう。もし石破氏が解散を急ぐことで選挙戦が経済問題に焦点を当てられれば、自民党への批判が強まり、大敗を招く恐れがあります。

さらに、自民党内部の結束の欠如も懸念材料です。石破氏は自民党内の派閥との関係が薄く、派閥の支持が得られにくい状況が続いています。自民党内の多くの議員が安定した政権運営を望んでいる中、石破氏が一枚岩でない党内をまとめきれない場合、選挙戦において不利な状況が生まれかねません。特に、2024年の選挙では複数の派閥が独自に候補者を立てる可能性もあり、これが自民党全体の票を分散させる要因となるでしょう 。

このように、石破総理が急いで解散総選挙を実施した場合、自民党が大敗するリスクは高いと考えられます。支持率の低下、野党の連携、経済問題の深刻化、党内の結束の欠如が重なり合うことで、自民党の政権維持が非常に困難になる可能性が高いのです。


石破政権が危機的な状況に陥った場合、高市氏にとって総裁選への挑戦は自然な流れになると考えられます。党内での支持を受け、新たなリーダーシップを展開するチャンスが巡ってくることでしょう。彼女の知名度や人気も影響し、次回の総裁選においてはより重要な候補となるのは間違いないと思います。次の総裁選においては、メディアもさすがに高市氏を今回の初期の総裁選報道のように、泡沫候補扱いはできないでしょう。

その時は意外と近いかもしれません。高市氏今回の敗北に臆することなく、今回の総裁選における、勢いを維持しさら拡大し、次の総裁選に臨んでいただきたいです。

高市早苗氏とドナルド・トランプ氏の現状には、いくつかの共通点が見られます。まず、両者は政治的逆境に直面しています。高市氏は自民党総裁選で敗北し、党内での支持基盤に課題を抱えており、トランプ氏は2020年の大統領選に敗れた後も法的な問題に苦しんでいます。

また、彼らはメディアとの関係においても似たような立場にあります。高市報道は高市氏のイメージに悪影響を及ぼしており、トランプ氏もメディアを「フェイクニュース」として批判しています。どちらも特定の支持層から強い支持を受けており、高市氏は保守層からの支持を得ており、トランプ氏も熱心な支持者がいます。

さらに、彼らの政治的アプローチにはポピュリズム的な側面があり、国民の不満に応えつつ解決策を提示しています。ただし、ここでいうポピュリズムとは、本来の意味のそれです。

日本で一般的に認知されているポピュリズムは「大衆迎合主義」と訳され批判の対象とされます。しかしこの解釈は米国の左翼によって作られたものであり、この米国英語の言葉の元々の定義では中産階級の代弁者という意味です。

中産階級というと、現代人には普通の人は除外されるように感じられるかもしれませんが、この言葉ができた時代を考えると、米国といえども現代の水準でいえば貧しく、多くの人は政治に関心を持つのは難しく、中産階級になってはじめて政治に関心を持つことができ、しかも富裕層とは異なるということで、現代の感覚でいえば、国民というのと同じような意味ととらえて良いと思います。
 
「ポピュリズム」の対義語は「エスタブリッシュメント」です。エスタブリッシュメントは支配階級・上流階級の意味ですが、分かりやすく現在の日本で例えるなら朝日新聞のような自称インテリ、朝日岩波文化人を指します。

これに対して国民の意見を代弁する少数の政治家を、左翼が悪いイメージを付加し「ポピュリスト」とレッテル貼りをしたのです。私は、この言葉の原義からすれば、トランプ、高市両氏ともポピュリストだと思います。

トランプ・高市両氏は、以上に加えて、既存の政治体制に対する反発も共通しており、高市氏は自民党の伝統を尊重しつつも、時代に合わせた党の変革を目指しており、トランプ氏はエスタブリッシュメントに挑戦しています。このように、高市氏とトランプ氏は、異なる背景にありながらも、類似した挑戦と戦略を持っていることがわかります。

この両者とも、次の機会には必ず勝利を収めていただきたいです。そうでないと、これは日米だけの問題ではなく、世界に大きな悪影響に及ぼすことになりかねないです。

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2024年9月27日金曜日

中国最新鋭の原子力潜水艦が春ごろに沈没か 犠牲者不明 アメリカメディア報じる―【私の論評】中国最新鋭原子力潜水艦沈没事故:衛星写真で判明か、軍事力増強にダメージ

中国最新鋭の原子力潜水艦が春ごろに沈没か 犠牲者不明 アメリカメディア報じる

まとめ
  • 中国の最新鋭原子力潜水艦が2024年5月下旬から6月上旬に武漢近郊で沈没したと報じられ、事故の原因は不明であり、核燃料を積んでいた可能性が指摘されている。
  • 中国政府はこの事故を公表せず、隠蔽を試みたとされ、アメリカ当局者は犠牲者の有無や核物質漏えいの危険性についても言及している。
  •  沈没した潜水艦は引き揚げられたが、再出航には数カ月かかる見込みで、この事故が中国の原子力潜水艦増強計画に「大きな後退」をもたらすと分析されている。
AI写真ソフトで拡大修正してみやすくした写真

中国の最新鋭原子力潜水艦が2024年5月下旬~6月上旬に武漢近郊の造船所で沈没したとアメリカメディア(ウォール・ストリート・ジャーナル)が報じた。

専門家は核燃料搭載の可能性を指摘し、中国政府は事故を隠蔽したとされる。アメリカ当局者は犠牲者不明とし、核物質漏えいの危険性は低いとの見方を示した。

潜水艦は引き揚げられたが、再出航には数カ月かかる見込みで、中国の原子力潜水艦増強計画に「大きな後退」をもたらすと分析されている。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】中国最新鋭原子力潜水艦沈没事故:衛星写真で判明か、軍事力増強にダメージ

まとめ
  • 今回の事故に関して衛星写真と推測される画像が報道されているか、米軍の監視能力に関連するため詳細な説明は控えられているとみられる。
  • 2024年5月下旬から6月上旬に中国の造船所で、中国最新の攻撃型原子力潜水艦が沈没したとされる。
  • この事故は、中国の原子力潜水艦艦隊拡張計画に遅れをもたらす可能性があり、米シンクタンク、ヘリテージ財団のセドラー研究員は「かなり重大な事件」と評価している。
  • 中国の原子力潜水艦の数は米国に比べて大きく不足しており、今回事故は中国の潜水艦技術の成熟度に疑問を投げかける。
  • 現時点では事故の詳細や犠牲者の有無は不明であり、中国政府からの公式な確認もない。
上記の記事に掲載されている画像は、中国・武漢にある武昌造船所の衛星画像(6月13日)とされています。各メディアがこの写真を掲載していますが、特に詳細な説明はされていません。これは、米軍の衛星監視能力など機密性の高い情報に関わるため、解説が控えられていると考えられます。

画像の一部を拡大したものが下の写真です。4隻のサルベージ船と思われる船舶が取り囲んで作業している箇所に黒い影のようなものが確認できますが、これが当該潜水艦と推測されます。米軍は航空機などから微量な放射線の増減や種類を検知できるため、この付近で放射線の増減・種類などからこの潜水艦事故や潜水艦の型などを感知した可能性があります。


WSJの英語原文記事は以下のリンクから閲覧可能です:


中国の潜水艦沈没については、昨年も報道がありました。当時、このブログでも信憑性が低いことを指摘しました。その後、追加情報もなく、おそらく誤報だったと結論づけて良いでしょう。

しかし、今回の報道は衛星写真画像も掲載されており、信憑性が高いと思われます。

WSJの報道によると、この潜水艦は中国最新の攻撃型原子力潜水艦で、Type-093B(写真下)または商級改と呼ばれる可能性があります。潜水艦の具体的な仕様や能力については詳細な情報が提供されていません。


ヘリテージ財団のセドラー研究員は、この事故が中国の原子力潜水艦艦隊拡張計画に遅れをもたらす可能性が高く、「かなり重大な事件」と評価しています。

中国は近年、海軍力の強化を積極的に進めており、特に原子力潜水艦の開発に力を入れてきました。しかし、この事故により技術的な問題や安全性の再評価が必要となり、計画の遅延につながる可能性があります。

中国の海軍力増強は、アジア太平洋地域の軍事バランスに大きな影響を与える要因です。原子力潜水艦艦隊の拡張計画に遅れが生じれば、地域の軍事バランスにも影響を及ぼす可能性があります。

ヘリテージ財団のセドラー研究員

現在、中国の原子力潜水艦の数は依然として米国に大きく後れを取っています。一方米海軍は71隻の潜水艦を保有しており、その多くが原子力潜水艦です。

一方、中国の原子力潜水艦の正確な数は公表されていませんが、米国に比べてはるかに少ないと考えられています。推測では、おそらく10〜12隻程度とされています。この数の差は、中国が海軍力の拡大を急ぐ理由の一つとなっています。この隻数で一隻の沈没はかなりのダメージです。

さらに今回の最新鋭の原子力潜水艦の事故は、中国の潜水艦技術がまだ完全には成熟していない可能性を示唆しています。この事故は、中国の軍事技術力に対する国際的な評価にも影響を与える可能性があります。

セドラー研究員の発言は、この事故が単なる一過性の出来事ではなく、中国の軍事力発展に重大な影響を与える可能性があることを示唆しています。

ただし、事故の詳細や実際の影響については、さらなる情報や分析が必要です。現時点では、事故の具体的な詳細や犠牲者の有無は不明であり、中国政府からの公式な確認もありません。この情報は米国政府当局者の話に基づいており、今後の展開に注目が集まっています。

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2024年9月26日木曜日

海自護衛艦「さざなみ」が台湾海峡を初通過、岸田首相が派遣指示…軍事的威圧強める中国をけん制―【私の論評】岸田政権の置き土産:台湾海峡通過が示す地政学的意義と日本の安全保障戦略

海自護衛艦「さざなみ」が台湾海峡を初通過、岸田首相が派遣指示…軍事的威圧強める中国をけん制

まとめ
  • 海上自衛隊の護衛艦「さざなみ」が台湾海峡を初めて通過し、オーストラリアやニュージーランドの艦艇も同行した。
  • 中国軍は日本周辺での軍事活動を活発化させており、情報収集機による領空侵犯や空母「遼寧」の接続水域航行が初めて確認された。
  • 中国の軍事活動に対抗するため、岸田首相は海自派遣を決断した。
  • 日本の歴代政権は中国側の反発を考慮し、海自艦艇による台湾海峡通過を控えてきたが、今回初めて踏み切った。
  • 習近平国家主席が2027年までに台湾侵攻の準備を命じたことを背景に、日本の安全保障環境に対する危機感が高まっている。
日米豪共同訓練を実施中の「さざなみ」 先頭の艦艇

 海上自衛隊の護衛艦「さざなみ」が25日、自衛隊発足以来初めて台湾海峡を通過した。これは中国の軍事的威圧に対する対抗措置として、岸田首相の指示により実施された。さざなみは東シナ海側から南方向に航行し、オーストラリアやニュージーランドの艦艇も同時に通過した。

 中国軍は8月以降、日本周辺での軍事活動を活発化させており、情報収集機による領空侵犯や空母「遼寧」の接続水域航行が初めて確認された。首相は中国軍の行動がエスカレートする可能性を懸念し、海自派遣を決断した。

 台湾海峡は最狭部でも幅約130キロメートルあり、米国などは国際水域とみなしているが、中国はこれに反対している。日本の歴代政権は中国側の反発を考慮し、海自艦艇による通過を控えてきたが、今回初めて踏み切った。

 この決断は、日本の主権を脅かす中国軍の活動に対し、毅然とした態度を示すためである。習近平国家主席は2027年までに台湾侵攻の準備を整えるよう命じているとされ、最近の中国軍の動きはその一環とみられている。

 岸田首相は日本の安全保障環境に危機感を強め、従来の慎重な姿勢では平和を守れないと判断したようだ。今後は中国側の反発や対抗措置が予想され、新総裁は対中政策のあり方を問われることになる。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】岸田政権の置き土産:台湾海峡通過が示す地政学的意義と日本の安全保障戦略

まとめ
  • 台湾海峡は重要な地政学上でいうチョークポイントであり、世界の海上貿易や資源輸送に極めて重要な役割を果たしている。
  • 経済的に重要な海上交通路であるとともに、軍事的にも中国の太平洋進出や米日の中国けん制の要所となっている。
  • 台湾海峡の封鎖は多国のエネルギー安全保障や経済活動に大きな影響を与える可能性がある。
  • 海自艦艇初の台湾海峡通過は、「航行の自由」の主張や中国の軍事的威圧へのけん制を示している。
  • この行動は岸田政権による「自由で開かれたインド太平洋」構想の実践であり、同盟国との連携強化や次期政権への政策継続性を示している。


今回海自の護衛艦が通過した、台湾海峡は重要なチョークポイントです。これは、地政学において重要な概念であり、海上交通の要衝を指します。具体的には、海上輸送の集中点となる狭い海峡や運河など、戦略的に重要な海上水路のことを意味します。これらの地点は、世界の海上貿易や資源輸送において極めて重要な役割を果たしており、その管理や安全確保は国際的な関心事となっています。

例えば、大西洋から太平洋に物資を運ぶのに、もしパナマ運河を通れなければ、南米をぐるっと大回りするルートしかなく、かかる日数は大幅に伸び、燃料や人件費などコストが跳ね上がってしまいます。チョークポイントを支配する国に高い通行料を払ってでも、他の国の船はパナマ運河を通るほうが効率は良いです。

ですから海上ルートを支配するには、チョークポイントを押さえれば効率よく影響力を持てるわけです。逆にチョークポイントを封鎖すれば世界の貿易や安全が脅かされてしまいます。

台湾海峡は、このようなチョークポイントの代表的な例の一つです。中国本土と台湾島の間に位置し、東シナ海と南シナ海を結ぶ重要な海上交通路である台湾海峡は、世界の海上貿易の主要ルートとして多くの商船が通過する経済的に重要な海域です。特に、エネルギー資源や工業製品の輸送に欠かせない航路となっています。

また、台湾海峡は軍事的にも非常に重要な意味を持っています。中国の「第1列島線」上に位置し、中国軍にとって太平洋への進出を可能にする重要な海域である一方、米国や日本にとっては中国の海洋進出を抑制するための要所となっています。さらに、中国と台湾の関係やアメリカの台湾支援など、国際的な緊張関係が集中する場所でもあります。

台湾海峡の重要性は安全保障の観点からも顕著です。この海峡が封鎖されると、日本を含む多くの国のエネルギー安全保障や経済活動に大きな影響を与える可能性があります。また、中国軍が頻繁に軍事演習を行う場所でもあり、台湾や周辺国にとっては常に警戒が必要な海域となっています。

台湾海峡は重要なチョークポイントであり、中国がその支配を試みることに対して、米国は強い懸念を示しています。もし台湾海峡が自由に航行できなくなれば、地域の安全保障や経済に深刻な影響を及ぼすため、米国はその自由を維持することを重視しています。

沖縄の米軍基地は、台湾海峡に近接しており、有事の際に迅速に対応できる戦略的な位置にあります。このため、米国は台湾への支援を迅速に行える態勢を整え、中国に圧力をかけています。米軍は定期的に台湾海峡を航行し、「航行の自由」を示すことで、中国の行動をけん制しています。

沖縄の米軍基地

今回の海上自衛隊の護衛艦「さざなみ」による台湾海峡の通過は、極めて重要な意味を持つ出来事です。まず、これは海上自衛隊の艦艇として初めての台湾海峡通過であり、日本が「航行の自由」を実践的に主張したことを示しています。

台湾海峡は国際水域であり、自由に航行できるべきだという立場を日本が明確に示したといえます。次に、この行動は中国の軍事的な威圧に対するけん制の意味合いが強いです。中国が日本周辺での軍事活動を活発化させている中、日本もまた自国の安全保障上の利益を守る姿勢を示したと解釈できます。

さらに、オーストラリアやニュージーランドの艦艇と共に通過したことは、同盟国や友好国との連携を深め、地域の安全保障を共同で維持しようとする日本の姿勢を表しています。この行動は、台湾海峡の安定が日本の安全保障にとって重要であるという認識を示すとともに、中国に対して日本が受動的な立場にとどまらないことを明確に伝えるメッセージとなっています。同時に、アメリカの「航行の自由」作戦を支持し、日米同盟の強化にもつながる行動だといえるでしょう。

岸田首相

今回の日本の護衛艦による台湾海峡通過は、岸田政権の「置き土産」として評価される重要な出来事です。この行動は、岸田政権が推進してきた「自由で開かれたインド太平洋」構想の具体的な実践を示し、次期政権への政策の継続性を確保することになります。

また、オーストラリアやニュージーランドの艦艇と共に通過することで、同盟国との連携を強化し、中国への明確なメッセージを発信しました。さらに、台湾海峡の安定が日本の安全保障にとって重要であることを具体的に示し、「航行の自由」という国際法の原則を支持する姿勢を貫いたことも意味します。これらの要素は、岸田政権が残した重要な政策的遺産となり、次期政権にとっても大きな基盤となるでしょう。

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2024年9月25日水曜日

中国のSNSに“反日”氾濫──地方政府幹部「我々の規律は日本人を殺すこと」 当局、男児殺害は「偶発的」主張…どう対応?―【私の論評】中国人の日本への渡航制限をすべき理由:安全保障・経済・社会的リスクを検討すべき

中国のSNSに“反日”氾濫──地方政府幹部「我々の規律は日本人を殺すこと」 当局、男児殺害は「偶発的」主張…どう対応?

まとめ
  • 中国南部の深センで日本人の男児が殺害された事件の後、地方政府幹部がSNSに反日的な書き込みをしたと報じられた。中国当局は事件を「偶発的」だと主張しているが、十分な説明をしていない。
  • 日中両政府は国連総会で会談したが、議論は噛み合わず、中国は事件の計画性や反日思想との関連を否定しようとしている一方、日本は中国のSNS上の反日投稿の取り締まりと事件の真相解明を求めている。
  • 同様に、中国で米国人教員が刺される事件も起きており、中国政府の対応が厳しく批判されている。事件が遠方で起きているように思えても、問題は身近なところまで広がっていることに気づくべき。

中国南部の深センで日本人の男児が殺害された事件の後、地方政府幹部が悪意ある投稿をSNSに書き込んだと報じられた。中国では反日的な投稿がネット上にあふれているが、当局は事件について「偶発的」と居直り、十分な説明をしていない。

香港メディアによると、四川省の地方政府幹部である黄如一副県長が、SNSに「我々の規律は日本人を殺すことだ」などと書き込んだとされている。この書き込みは、深センの事件の後に行われたものだ。中国のSNS上では、この副県長の行為を批判する声が上がっている。

また、中国のIT大手企業が、中国と日本の対立を煽ったり、有害な情報を流したりしているユーザーに対して、アカウントの閉鎖などの処分を行っていることが報じられた。これは中国当局の意向を反映した新たな規制とみられているが、依然として悪質な投稿が後を絶たない。

国連総会の場で行われた日中外相会談では、日本側が中国のSNS上での反日投稿の取り締まりと、事件の真相解明を求めたが、中国側は「偶発的な個別事案」だと主張し、両政府の立場は噛み合っていなかった。

同様に、中国で米国人の大学教員4人が刺される事件も起きており、中国政府の対応が厳しく批判されている。被害者の家族の痛みに寄り添うことが重要であり、事件が遠方で起きているように思えても、問題は身近なところまで広がっていることに気づく必要がある。 

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】中国人の日本への渡航制限をすべき理由:安全保障・経済・社会的リスクを検討すべき

まとめ
  • 日本政府は中国への渡航危険情報を「レベルゼロ」に維持しているが、他の環太平洋の先進国は警戒レベルを引き上げている。
  • 日本人の中国での事件を受けても、日本政府は危険情報の引き上げを検討していない。
  • 中国の「国家情報法」により、中国人旅行者の日本国内での情報収集活動が懸念されている。
  • 中国人旅行者の日本への渡航は、様々なリスクがある。
  • さらに中国の反日教育による社会的リスクも存在し、日本人の中国への渡航制限だけではなく、中国人の日本への渡航制限をすべきである。

環太平洋の先進国や地域で、中国本土への渡航や滞在に関する危険情報が引き上げられている中、日本のみが「レベルゼロ」を維持していることが明らかになっています。米国は4段階の警戒レベルのうち、上から2番目のレベル3を発令し、中国国内での不当な拘束のリスクを理由に「渡航の再考」を求めている。台湾も今年6月にレベル3へ引き上げ、不必要な渡航の自粛を勧告しています。

カナダやオーストラリア、ニュージーランドはレベル2、韓国はレベル1としており、日本以外の環太平洋の先進国ではいずれも一定の警戒がなされている状況です。

一方で、G7の欧州4カ国(英国、フランス、ドイツ、イタリア)では、中国への危険情報は引き上げられていません。

日本外務省の危険情報は4段階で、レベル1からレベル4まで設定されていますが、6月に発生した蘇州での日本人母子切りつけ事件や、深圳での日本人児童刺殺事件を受けても、レベルの引き上げは行われておらず、新疆ウイグル自治区やチベット自治区を除いては「レベルゼロ」のまま維持されています。

外務省は事件後に「特にお子さん連れの方は、十分注意して行動してください」とのスポット情報を出すに留まっており、現時点で危険情報の見直しは検討していないとしつつも、中長期的な観点で総合的に判断するとしています。

こうした中、国会議員からは危険情報のレベル引き上げを求める声が出ており、元拉致問題担当相の松原仁議員は「中国で暮らす日本人は反日教育の影響を受けるリスクがあり、今回の事件を契機に日本が危険情報を引き上げることで、習近平政権に対して対応の改善を促すべきだ」と主張しています。

私は、日本人の中国への渡航制限は、当然すべきと思います。日本政府がなぜためらっているのか全く理解に苦しみます。

私は自身は、日本人の中国への渡航制限に加えて、中国人の日本への渡航制限もすべきと思います。

まず、安全保障の観点から、中国政府は自国民に対し、海外で情報収集を行うよう求める法律を持っており、これが日本国内におけるスパイ活動や情報漏洩のリスクを高めています。中国の「国家情報法」第7条には、中国国民が国家のために情報提供を行う義務が明記されています。

この背景から、中国人が日本国内で重要な情報を収集し、それが日本の国家安全保障に悪影響を及ぼす可能性が懸念されています。実際、他の国々でも中国による技術や情報の盗用が問題視されており、日本でも同様の懸念が現実的なものとなっています。

さらに、健康・衛生のリスクも考慮に入れる必要があります。中国からの渡航者が新型感染症を持ち込む可能性は、2020年の新型コロナウイルスの世界的流行において顕著になりました。COVID-19は初期段階で中国から拡散し、世界中で甚大な被害を引き起こしました。

このような感染症のリスクが再び高まることを防ぐためには、予防策として渡航制限を設けることが重要です。特に、今後も中国政府が感染症に関する情報開示に不透明さを見せるようであれば、渡航制限はますます必要となるでしょう。

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経済的な側面でも、中国人による日本国内での不動産や企業の買収が問題となっています。特に北海道や沖縄など、戦略的に重要な地域での土地購入が増加しており、これが長期的には日本の経済的自立や安全に悪影響を及ぼすリスクがあります。

また、観光産業においても、日本は一部の観光業が中国人観光客に過度に依存していると信じ込まされているところがあります。これは、日本の観光産業に占める割合をみると明らかです。

2021年の観光消費のうち、海外旅行者(インバウンド)の支出はわずか日本のGDPに占める割合は0.7%でした。

日本の観光産業のGDPに対する貢献度は、2021年には約4.2%であり、2023年には6.8%に増加すると予測されています。しかし、特にインバウンド消費は非常に小さく、2021年時点ではGDP全体のわずか0.7%に過ぎません。

このことは、日本の観光業が外部からの旅行者による消費に依存していないことを示しています。また、日本の観光産業のGDP貢献度は、スペインの12.4%やフランスの7.5%と比較して低い水準にあり、他の先進国と比べても相対的に影響力が小さいことがわかります。これらのデータから、日本の観光業はGDP全体に対して比較的小さな影響を持つことが明らかです。

これらのデータから、日本の観光産業全体のGDPに対する貢献度は全体の4〜7%程度であり、さらにインバウンド消費自体の割合が非常に小さいことがわかります。中国のインバウンド消費となるとさらに小さくなります。日本のマスコミは中国のインバウンドだけを過大に扱ってきたといえます。中国のインバウンド消費がなくなっても日本に与える影響はほとんどないといえます。

中国人のインバウンド消費は超過大に評価されてきた AI生成画像


しかし、この状況か続けば、中国政府が観光客の渡航を制限することで、日本人の心理に影響を与えようと試みる可能性もあります。そのような試みをはねのけるためにも、渡航制限を考えるべきです。

さらに、国際的な地政学的対立も影響しています。米中関係が緊張する中で、米国は中国人の渡航を制限する動きを強化しており、他の西側諸国でも同様の対策が進んでいます。特に技術流出や国家安全保障の問題が絡んでおり、日本もこれに追随する形で、中国人の渡航制限を検討すべきだという声が高まっています。

最後に、反日教育による社会的リスクも無視できません。中国国内では反日感情が教育の一環として強調されており、これが中国人の日本滞在中に問題を引き起こす可能性があります。実際に、中国では反日デモが過去に暴力事件に発展した事例があり、このような感情が日本国内での対立や事件につながるリスクがあります。このため、中国人の日本への渡航を制限することで、日本国内の社会的安定を維持し、安全を確保する必要性が増しているといえます。

以上のように、安全保障、健康リスク、経済的影響、国際情勢、そして社会的安定の観点から、中国人の日本への渡航制限は多面的に検討されるべき重要な課題であり、その実施が日本の安全や国益を守るために必要であると言えます。

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2024年9月24日火曜日

ロシア軍機に初のフレア警告、無線通告では不十分と判断か…防衛省「警告の意図を明確に」―【私の論評】ロシア太平洋艦隊の戦闘力不足と日本への影響:米戦争研究所の分析と日本の安保意識の高まり

ロシア軍機に初のフレア警告、無線通告では不十分と判断か…防衛省「警告の意図を明確に」

まとめ
  • 23日、ロシア軍機が礼文島付近で3回領空侵犯し、木原防衛相は厳重に監視する方針を示した。
  • 初めてフレアを使った警告が行われた。
  • 領空侵犯はロシア・中国の艦艇との連携の可能性がある。
  • 防衛省は意図を分析し、警戒監視を続けている。
ロシア軍哨戒機「IL38」

23日、北海道・礼文島付近でロシア軍哨戒機「IL38」が3回領空侵犯し、木原防衛相はこれを「軍事的挑発」とし、厳重に監視する意向を示しました。

ロシア軍機による領空侵犯は2019年の沖縄付近以来で、フレアを使用して警告するのは今回が初めてです。木原氏は、この警告が相手の動きに応じたものであると説明。防衛省も、フレアの使用を「強度の高い警告」と位置づけています。

さらに、22日と23日にはロシア軍と中国軍の艦艇9隻が宗谷海峡を東に進み、ロシア軍機の領空侵犯が艦艇との連携に関連する可能性があると防衛省は見ています。防衛省は引き続き警戒監視を強化し、ロシア側の意図について分析を進めています。

この記事は元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】ロシア太平洋艦隊の戦闘力不足と日本への影響:米戦争研究所の分析と日本の安保意識の高まり

まとめ
  • ロシア太平洋艦隊は日本を脅かすほどの戦闘力がなく、現状での軍事的挑発は意味が薄い。
  • ロシアの軍事演習や領空侵犯は、実際の軍事的脅威というより政治的メッセージや威嚇の手段として行われている可能性が高い。
  • これらの行動は、ロシアが限られた軍事力で存在感を示し、地域での影響力を維持しようとする試みかもしれない。
  • 日本にとっては、防衛産業の活性化や国民の安全保障意識の向上など、一部プラスの影響もある。
  • しかし、これらの「プラスの影響」は平和と安定を脅かす行為を肯定するものではなく、現状対応の副産物として捉えるべきである。
ロシアが日本に対する「軍事的挑発」をしたとして、現状ではあまり意味はありません。そもそも、ロシア太平洋艦隊に日本を脅すほどの戦闘力はありません。これについては、以前このブログでも述べたことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
北方領土で演習のロシア太平洋艦隊は日本を脅かせるほど強くない──米ISW―【私の論評】ロシアが北方領土で軍事演習を行っても日本に全く影響なし(゚д゚)! 2023年4月17日

詳細は、この記事もしくは元記事をご覧いただくものとして、この記事の元記事の内容を要約したものを以下に掲載させていただきます。

米シンクタンク戦争研究所(ISW)の分析によると、ロシアの太平洋艦隊は他国から脅威とみなされるには戦闘力が不足している可能性が高いとされている。 
ロシアは太平洋艦隊の抜き打ち検査の一環として、ミサイル発射と魚雷のテストを実施した。ISWはこれを、近日開催されるG7サミットで日本のウクライナ支援を抑止するための威嚇と分析している。 
ロシア国防相はこの検査の目的を「海洋における敵の攻撃を撃退するための能力向上」と説明し、千島列島南部とサハリン島への敵上陸を撃退する能力も含むと付け加えた。 
ISWは、ロシアが日本の北方領土周辺で軍事態勢を強化していることを、日本のウクライナ支援増加への警告と見ているが、同時にロシア軍が現時点で日本を脅かす立場にないと評価している。太平洋艦隊の一部部隊がウクライナ東部で大きな損害を被ったことを指摘し、ISWは太平洋艦隊が戦力投射能力に必要な戦闘力を欠いており、日本への真の脅威や中国に対する軍事大国としての印象を与えることは困難だと結論づけている。
米国のシンクタンク戦争研究所(ISW)のロゴ

私は、この分析は正しいと思います。現状のロシア太平洋艦隊は、日米に比して貧弱で駆逐艦以上の戦闘艦艇は7隻程度しかなく海上自衛隊の10分の1程度です。さらに、海上自衛隊は、現代海戦の要ともいえるASW(Anti Sumarine Wafare:対戦戦争)能力では、ロシアをはるかに上回っています。では、ロシアはなぜこのような「軍師的挑発」を行ったのでしょう。

ロシアの太平洋艦隊の戦闘力不足に関する分析と最近の領空侵犯事件は、一見矛盾するように見えますが、これらは異なる観点から解釈することができます。

戦力投射能力の不足は大規模な軍事作戦や持続的な脅威を与える能力の欠如を示唆していますが、単発的な挑発行為や小規模な軍事行動は依然として可能です。領空侵犯は実際の軍事的脅威というよりも、政治的メッセージや威嚇の手段として使用されることがあり、ロシアは限られた軍事力でも存在感を示そうとしている可能性があります。

この行動はロシアが地域での影響力を維持しようとする試みかもしれず、実際の軍事力が不足していても、こうした行動で緊張を高め、注目を集めることができます。また、領空侵犯はロシアの軍事戦略の一部である可能性もあり、相手国の対応を試したり、防空システムの情報を収集したりする目的があるかもしれません。

内政的な理由も考えられ、国内向けに強硬な姿勢を示すことで政権の支持を維持しようとしている可能性があります。したがって、太平洋艦隊の全体的な戦闘力不足と個別の挑発的行動は必ずしも矛盾するものではなく、ロシアは限られた能力の中で最大限の効果を得ようとしている可能性が高いと考えられます。

プーチンロシア大統領

ただ、このような軍事的挑発がロシアの思惑通りに運ぶかどうかは、全く別の話です。

これ、日本にとって必ずしもマイナスの影響だけではなく、いくつかのプラスの側面も見られます。中国やロシアの軍事的挑発は、日本にとって必ずしもマイナスの影響だけではなく、いくつかのプラスの側面も見られます。

特に注目すべきは防衛産業の活性化です。実際に、三菱重工業の株価は上昇傾向にあり、2023年5月頃から値上がりを強め、2024年2月には1万2000円を突破しました。

2024年2月時点で約12,000円だった株価は、4月に1:10の株式分割が行われ、株式分割後には理論上約1,200円となりました。アナリストたちは三菱重工業の株価がさらに上がると予想しています。2024年9月19日時点の株価から、さらに5.92%上昇すると予測されており、アナリストの平均目標株価は1,966円となっています。この上昇傾向は、防衛関連企業への注目度の高まりを反映している可能性があります。

このような状況は、直近で政治的にも影響を与える可能性があります。例えば、自民党総裁選において、高市早苗氏のような世界水準からみれば真っ当な安全保障政策を主張する候補者が注目を集める可能性があります。高市氏は「国の究極の使命は、国民の皆様の生命と財産を守り抜くこと、領土領海領空、資源を守り抜くこと」と主張しており、このような状況下でその主張が注目されています。

また、軍事的挑発は日本国民の安全保障に対する意識を高める効果があり、長期的に見て国の防衛力強化に対する理解と支持につながる可能性があります。同時に、日米同盟をはじめとする国際的な安全保障協力の強化にもつながり、日本の外交的立場を強化し、国際社会での影響力を高める機会となる可能性もあります。

さらに、防衛力強化の必要性から、先端技術の研究開発が促進される可能性があり、これらの技術は民間分野にも応用され、産業全体の競争力向上につながる可能性があります。ただし、これらの「プラスの影響」は、平和と安定を脅かす行為を肯定するものではなく、あくまでも現状に対応する中で生じる可能性のある側面として捉えるべきです。ただし、現状のロシアの日本への軍事的挑発はロシアの意図を成就させるものとはならないでしょう。

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2024年9月23日月曜日

アメリカは中国との絆を切る―【私の論評】総裁選に埋没する日本の対中政策:米国の中国特別委員会から学ぶべき課題

アメリカは中国との絆を切る

まとめ
  • 米国議会下院中国特別委員会が、中国共産党の活動に対し厳しい監視と規制を行っている。
  • 米中の大学間の共同研究が、中国軍との関係を理由に中止されるなど、学術分野にも影響が。
  • 米国の中国に対する強硬姿勢は、日本にも重要な教訓となり得る。


アメリカでは大統領選に注目が集まる一方で、中国問題が連邦議会で重要な課題となっている。特に下院の中国特別委員会は、超党派で中国の活動を監視し、強硬な対応を進めている。最近の公聴会では、中国政府が批判者を抑圧するために法律を利用している事例が取り上げられ、議員たちは人権弾圧や領土拡張を厳しく非難した。

この委員会は、ジョージア工科大学と中国の天津大学との共同プログラムを終了させた。これは、天津大学が人民解放軍と密接な関係にあることから、安全保障上の懸念が理由とされている。アメリカでは、中国を「敵性国家」と呼ぶことも一般化しており、警戒感が高まっている。日本も同様の対中認識を見直す必要があるかもしれない。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事を御覧ください。

【私の論評】総裁選に埋没する日本の対中政策:米国の中国特別委員会から学ぶべき課題

まとめ
  • 日本にはアメリカの中国特別委員会に相当する単一の組織が存在せず、対中政策が複数の機関に分散しているため、一貫した戦略の策定と実行が困難になっている。
  • 最近の日本人児童刺殺事件や福島処理水問題は、中国による反日教育や情報操作が背景にあると考えられ、これらの問題に対する対応が不十分である。
  • 米国は下院特別委員会を通じて、中国に対する統一された戦略を立案・実行しており、これが国家統治術として位置づけられている。
  • 日本も米国の例を参考にし、対中政策を国家統治術の次元に引き上げる必要があり、専門的な組織の設立が求められている。
  • 総裁選に注力するあまり、対中政策が埋没している現状は、日本の国益を損なう可能性があり、早急な対応が必要である。

総裁選には過去最大の候補者が立候補

日本でも総裁選にあまりに多くの光が集中し、他の重要課題がみすごされがちです。

そもそも、日本には米国の「中国共産党とアメリカの戦略的競争に関する下院特別委員会」に相当する単一の組織が存在しないことは、深刻な問題です。この欠如は、日本の国益を損なう可能性がある多くの理由があります。

現在の日本の対中政策は、国家安全保障会議(NSC)、外務省中国・モンゴル第一課、国会の外交防衛委員会、自民党外交部会、そして「日本の領土を守るため行動する議員連盟」などの超党派の議員連盟など、複数の機関や枠組みによって分散して形成・実施されています。この分散した体制により、一貫した戦略の策定と実行が困難になっています。

最近の日本人児童刺殺事件は、この問題の深刻さを浮き彫りにしました。この事件の背景には、中国による組織的・体系的な反日教育があるとみられています。長年にわたる反日感情の醸成が、このような悲劇的な事件につながった可能性があります。また、福島第一原子力発電所の処理水放出問題に関しても、中国政府による情報操作や過剰反応が、両国間の緊張を高めています。

これらの問題に対して、日本の現在の分散した体制では十分に対応できていない可能性があります。例えば、中国残留邦人等への支援など、特定の問題に対しては厚生労働省が対応していますが、より包括的な対中政策の立案と実施には至っていません。

一方、米国は下院特別委員会を通じて、中国に対する統一された戦略を立案・実行しています。この委員会は、中国の脅威を包括的に分析し、それに対する効果的な対策を提案する役割を果たしています。日本もこのような専門的な組織を設立することで、中国の反日教育や情報操作、経済制裁などの問題に、より効果的に対応できる可能性があります。

中国共産党とアメリカの戦略的競争に関する下院特別委員会初代委員長マイク・ギャラガー

また、中国に進出した日系企業が直面する問題や困難に対しても、統一された対応が不足しています。行政上の問題や規制の問題など、企業が直面する課題に対して、日本政府が一貫した支援や交渉を行うためには、専門的な組織が必要不可欠です。

さらに、台湾問題に関しても、日本の対応は分散しています。米中関係の行方は台湾問題と密接に関係しており、台湾が米中摩擦の代理戦争的な舞台となることが懸念されています。日本も、この問題に対して統一された戦略を持つ必要があります。

このように、日本の対中政策における分散した体制の問題点は多岐にわたります。米国の中国特別委員会のような単一の専門組織を設立することで、これらの課題に効果的に対応し、日本の国益を守ることができるでしょう。同時に、こうした組織は、日中関係の改善や相互理解の促進にも貢献する可能性があります。

米国が中国特別委員会を設置したことは、対中政策を米国のstatecraft(国家統治術)の次元に高めた重要な動きです。statecraftとは、国家の利益を追求し、国際関係を管理するために用いられる政治的手腕や外交技術を指します。これには外交、経済政策、軍事戦略など、国家が用いるあらゆる手段が含まれます。

米国ではステートクラフト・シミュレーターが学生向けに提供されている


中国特別委員会の設置により、米国は対中政策を単なる外交問題や経済問題としてではなく、国家の総合的な戦略として位置づけました。この委員会は、経済、技術、安全保障、人権など、多岐にわたる分野で中国との競争や対立に対処するための包括的な戦略を立案し、実行する役割を担っています。

これにより、米国は中国との競争を国家の最重要課題の一つとして明確に位置づけ、政府のあらゆるリソースを動員して対応する体制を整えました。この アプローチ は、単なる対症療法的な対応ではなく、長期的かつ戦略的な視点から中国との関係を管理し、米国の国益を守るためのものです。

日本も同様のアプローチを採用し、対中政策をstatecraftの次元に引き上げることで、より効果的かつ一貫した対応が可能になるでしょう。これは、日本の国益を守り、地域の安定に貢献する上で極めて重要な課題となっています。

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2024年9月22日日曜日

ユニクロ柳井氏の「日本人滅びる」発言 混同に注意、企業経営者の「ミクロ」の視点で「マクロ」経済の答えは出てこない―【私の論評】マクロ・ミクロ経済の違いを水道管理の例で徹底解説:相互作用とバランスの重要性

 高橋洋一「日本の解き方

ユニクロ柳井氏の「日本人滅びる」発言 混同に注意、企業経営者の「ミクロ」の視点で「マクロ」経済の答えは出てこない

まとめ

  • ユニクロの柳井正会長は生産性向上のために移民受け入れを提唱し、日本人の働き方について警鐘を鳴らした。
  • 楽天の三木谷浩史会長は、海外企業の労働環境を引き合いに出し、労働規制の見直しを求めた。
  • ZOZOTOWNの創業者前沢友作氏は「日本人らしさ」を重視し、連帯の重要性を主張した。
  • 経営者の意見はミクロ経済の視点に基づいており、日本全体の問題はマクロ経済で考えるべきである。
  • 日本経済の低迷は金融政策と財政政策に起因しており、経営者にマクロ経済の解決策を求めても効果が薄い。

 ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長の「日本人は滅びる」発言が論争を呼んでいる。柳井氏は生産性向上のため移民受け入れを提唱し、楽天グループの三木谷浩史会長兼社長は労働規制の見直しを求めた。

 一方、ZOZO創業者の前沢友作氏は「日本人らしさを生かして連帯すべき」と反論した[2]。これらの意見の相違は、企業経営のアプローチの違いと捉えることができる。

 しかし、経営者の発言はミクロ経済の範疇であり、日本全体の問題はマクロ経済の視点が重要となる。マクロ経済の観点からは、バブル崩壊後の日本経済の低迷は金融政策と財政政策の問題に起因するのだ。

 経営者にマクロ経済の問題を尋ねても適切な解決策は得られず、問題を複雑化させるだけである。政府と日銀にとっては、この状況が過去の失政を隠蔽するのに好都合となっている。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事を御覧ください。まとめは、元記事の内容をまとめ5つの箇条書きにしたものです。

【私の論評】マクロ・ミクロ経済の違いを水道管理の例で徹底解説:相互作用とバランスの重要性

まとめ
  • ミクロ経済は企業や家庭の水道管理に例えられ、マクロ経済は政府や水道局による大規模な水の供給管理に相当する。
  • マクロの適切な水管理があって初めて、企業や家庭は効率的に水を利用でき、両者は相互に支え合っている。
  • 個別の企業や家庭が自己利益のみを追求すると、渇水時の水確保やインフラ整備が不十分になり、全体に悪影響を与える。
  • マクロレベルでの水源管理やインフラ投資が不足すると、個々の節水努力では水の安定供給を維持できない。
  • 水道の例と同様に、経済政策でもミクロとマクロの両方を考慮し、バランスの取れた対策が必要である。

最近の水道メーターはデータを管理会社に発信し、さらにスマホで確認できる

マクロ経済とミクロ経済を巡っては、上の記事で述べられているような混乱がよく生じます。ここでは、水の管理を例に挙げて、両者の違いを説明しましょう。ミクロ経済を企業経営者の視点から見ると、自社の建物内の水道設備、つまり蛇口から水道メーターまでの管理に例えられます。これには社内の水の使用量管理、水道料金の支払い、配管の修理や維持、節水対策の実施が含まれます。

一方、マクロ経済を政府や水道局の視点から見ると、より大規模な水の供給と管理を担当します。具体的には、水源の確保と保護、浄水場の運営、主要な水道管のネットワーク整備、水質管理、供給量全体の調整、水道料金の設定、渇水時の対応などが含まれます。

マクロ経済は単にミクロ経済の積み上げではない

マクロ経済が単にミクロ経済の積み上げではない理由は、水の管理でも明らかです。例えば、ある企業の水の使用が他の企業や家庭の利用可能な水量に影響を与えることがあります。また、個々の企業が水を大量に使用したり、汚染を発生させたりすれば、社会全体の水質や供給に影響を及ぼすこともあります。

さらに、政府の水道料金設定や節水政策が、企業や家庭の水使用に大きな影響を与えます。大規模な水道システムの運営は、各企業や家庭が独自に水を確保するよりも効率的です。

このように、水の管理においては、ミクロとマクロの両方の視点で異なる要素や対応が必要となります。マクロ経済は、複雑な相互作用や大規模な要素を考慮に入れる必要があるため、単にミクロの行動を足し合わせたものでは説明できません。この例は、経済全体にも当てはまります。

ミクロの観点だけで水道を管理すると、いくつかの問題が生じる可能性があります。例えば、企業や家庭が自己の利益のみを考えると、全体としての水資源の効率的な利用が難しくなることがあります。渇水時に一部の企業が過剰に水を確保すれば、他の利用者に深刻な影響を与える可能性があります。また、大規模なインフラ整備が疎かになると、水の安定供給が脅かされる恐れがあります。

さらに、個別の利用者では一貫した水質管理が難しくなり、公衆衛生上の問題に発展する可能性もあります。各家庭や企業が独自に水を確保する場合、非効率な投資が生じ、災害時には大規模な供給が困難になることも考えられます。このように、ミクロの視点だけでは水道システム全体の持続可能性を確保することは難しく、マクロ的な視点が必要です。

マクロ的な管理が長期間適切に行われないと、ミクロの努力では補えない深刻な問題が生じることがあります。例えば、水源の管理や大規模な浄水場、主要な水道管ネットワークの整備が適切でない場合、個々の家庭や企業が節水に努めても、安全で安定した水の供給は困難になります。

安定した水の供給があってこそ、ミクロレベルでの水道管理が意味を持ちます。蛇口をひねれば清浄な水が出るという状況が確保されているからこそ、個々の利用者は自分たちの使用量や料金管理に集中できるのです。水源や主要設備に問題があれば、いくら注意深く水を使っても水質や供給量の問題を解決することはできません。

つまり、水道事業はマクロとミクロの両方の視点が調和して初めて機能します。マクロレベルでの適切な計画や投資が、ミクロレベルでの効率的な水利用を可能にし、それが全体の水道システムの持続可能性を支えるのです。

マクロ的な管理が不足している状況をミクロの視点だけで捉えると、様々な問題が生じます。個別の事例や短期的な現象に注目することで、長期的かつ構造的な問題を見逃す恐れがあります。例えば、水道インフラの老朽化を単なる漏水事故としか認識できないことがあります。

水道は局所的な対策では対処できない場合がある

局所的な解決策では根本的な原因に対処できず、同じ問題が繰り返されるリスクもあります。資源が効率的に配分されないことで、全体のパフォーマンスが低下することもあります。相互依存性を無視した対策は、他の部分に悪影響を及ぼす可能性もあります。したがって、ミクロ的アプローチだけでは複雑な経済システムや社会インフラの問題に適切に対処することはできず、マクロとミクロの両方の視点が必要です。

水道の例から得られる教訓は、経済においてもマクロとミクロの視点を統合することの重要性です。個々の経済主体の行動(ミクロ)を理解し、それが集積して形成される経済全体の動き(マクロ)を把握することが不可欠です。

水道システムの持続可能性が適切なマクロ管理とミクロレベルでの効率的な利用に依存するように、経済の健全な発展も、適切なマクロ経済政策と個々の経済主体の合理的行動の調和に依存します。一方だけでは十分ではなく、両者のバランスが重要なのです。この教訓は、経済政策の立案や企業戦略の策定において、常にマクロとミクロの両面から分析し、総合的な視点を持つことの重要性を示しています。

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2024年9月21日土曜日

3位転落 小泉進次郎の「誤算」、自民党総裁選の終盤情勢は?「高市総理」誕生なるか―【私の論評】高市早苗氏の支持急増と派閥政治への影響:保守主義と急進改革の対立

3位転落 小泉進次郎の「誤算」、自民党総裁選の終盤情勢は?「高市総理」誕生なるか

まとめ
  • 自民党総裁選は2024年9月27日に投開票予定で、候補者は9人。小泉進次郎氏の支持が伸び悩む中、高市早苗氏が勢いを増している。
  • 各種世論調査では、石破茂氏、高市氏、小泉氏が上位3位にランクインしており、高市氏の支持が特に強い。
  • 国会議員票の行方が重要で、小泉氏は約50票を確保しているが、目標には届いていない。
  • 決選投票では高市氏と石破氏が進む可能性が高く、政策を明確に打ち出す候補が有利になる傾向がある。
  • 各メディアの調査結果では、候補者間での支持率に差が見られ、総裁選の行方は依然として不透明である。

小泉進次郎氏

自民党総裁選は2024年9月27日に投開票が予定されており、9人の候補者による論戦が繰り広げられている。当初、有力視されていた小泉進次郎氏の支持が伸び悩む一方で、高市早苗氏が勢いを増しており、石破茂氏も有力候補として注目されている。小泉氏は改革派として、国政選挙において「改革といえば自民」というイメージを掲げ、迅速な変革を進めることを主張している。

世論調査の結果では、石破氏、高市氏、小泉氏が上位3位を占めることが多く、自民党支持層では高市氏の支持が強い傾向がある。地方党員票では石破氏と高市氏が優位に立ち、国会議員票の行方が重要な要素となっている。小泉氏は約50票を確保しているが、目標には届いていない状況だ。多くの議員がまだ態度を決めかねているため、選挙戦は流動的だ。

今後の展開として、高市氏と石破氏が決選投票に進む可能性が高いとの見方があります。決選投票では国会議員の動向が鍵を握り、政策を明確に打ち出す候補が票を伸ばす傾向にあるため、高市氏に有利な局面も考えられます。

各種調査結果の現状は以下の通り:

●共同通信(9月15~16日)
1位 高市早苗氏 27.7%
2位 石破茂氏  23.7%
3位 小泉進次郎氏 19.9%

●朝日新聞(9月14~15日)
1位 石破茂氏 32%
2位 小泉進次郎氏 24%
3位 高市早苗氏 17%

●読売新聞(9月14~15日)
1位 石破茂氏 26%
2位 高市早苗氏 25%
3位 小泉進次郎氏 24.1%

●産経新聞(9月14~15日)
1位 小泉進次郎氏 29.4%
2位 石破茂氏 24.1%
3位 高市早苗氏 16.3%

●日経新聞(9月13~15日)
1位 石破茂氏 25%
2位 高市早苗氏 22%
3位 小泉進次郎氏 21%

総裁選の行方は依然として不透明であり、上位3候補による激戦が続いている状況だ。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】高市早苗氏の支持急増と派閥政治への影響:保守主義と急進改革の対立

まとめ
  • 高市早苗氏の支持率上昇は、自民党内の主要派閥に危機感を与え、従来の派閥政治の構図を揺るがす可能性がある。
  • 高市氏の支持が急増している理由は、経済安全保障政策の実績や保守的な国家観、経済成長を重視する政策によるもの。
  • 高市氏の政策は、戦略的な財政出動や既存の制度を基盤とした着実な改革を強調し、企業からの支持も集めている。
  • ドラッカーの保守主義を例に、高市氏の漸進的な改革が予測可能で実現可能なアプローチと評価できる一方、小泉進次郎氏の急進的な改革はリスクを伴う可能性が大きい。
  • 小泉氏の急進的な改革路線は、自民党の保守的支持層には危険と映る可能性があり、それに対して高市氏の保守的な政策が支持を集めている。

高市早苗氏

高市早苗氏の支持率上昇と勢いの増加は、自民党内に大きな波紋を広げています。当初は泡沫候補に近い扱いを受けていた高市氏ですが、最近では急速に支持を集めており、この状況は一部の派閥にパニックを引き起こしています。

特に旧岸田派、麻生派、旧二階派などの主要派閥は、高市氏の台頭に危機感を抱いているとされています。これらの派閥は従来の派閥政治の枠組みの中で影響力を維持してきましたが、高市氏の支持拡大により、その構図が崩れる可能性が出てきたためです。

高市氏の支持が急増している理由として、経済安全保障担当大臣としての実績や、明確な国家観と経済政策の主張が挙げられます。彼女は経済や国防に関して保守的な立場を示しており、一部の支持層から強い支持を得ています。

また、高市氏は「子育て支援金制度」について、「社会保険料で財源を生み出すことになると、実質的に増税と同じだ」と述べています。さらに、「特に子育て世代の生活を圧迫することになり、やるべきではない」と明確に否定的な立場を示しています。

代替案として、「所得が増えれば歳入は2倍から3倍に増える。まずはいかに所得を増やすか、GDPを大きくしていくかということで成長戦略を訴えている」と述べ、経済成長を通じた財源確保を主張しています。

さらに、高市氏は成長分野や危機管理分野への戦略的な財政出動を主張しており、これが企業からの支持を集めている可能性があります。「明確な国家観を持ち、国家経営理念をしっかり打ち出せる人」という姿勢を強調する彼女のアプローチは、従来の派閥政治とは異なる動きを生み出しています。

この状況は、自民党内の力学や総裁選の行方に大きな影響を与える可能性があり、今後の展開が注目されています。特に、岸田派や麻生派、二階派などの主要派閥が高市氏の台頭にどのように対応するかが、総裁選の結果を左右する重要な要素となるでしょう。

麻生太郎氏

麻生派が高市早苗氏を支持する可能性は十分に考えられます。まず、河野太郎氏の支持が伸び悩んでいる現状があり、麻生派としても期待通りの展開にはなっていません。また、麻生派内には石破茂氏に対して否定的な感情を持つ議員が多く、小泉進次郎氏が菅義偉元首相の後ろ盾を得ていることから、麻生派にとって小泉氏を支持することは難しい状況です。

高市氏の経済安全保障政策や保守的な姿勢は麻生派の政策方針と比較的近く、決選投票で高市氏と石破氏、または高市氏と小泉氏という構図になった場合、麻生派にとって高市氏を支持することが戦略的に有利な選択肢となる可能性があります。麻生氏が派閥内で柔軟な対応を取る余地を示唆していることも、高市氏への支持につながる要因となるでしょう。

当初、泡沫候補に近い扱いを受けていた高市氏がここまで勢いを増したことは驚くべきことです。一方で、当初は有望視されていた小泉進次郎氏が勢いを落としたことも、同様に注目すべき点です。

これは、小泉氏が改革推進派である一方、高市氏が保守派であるという立場の違いの結果かもしれません。ただし、保守主義については多くの人に誤解があるように思われます。保守主義とは、政治上の立場ではないことをこのブログでは過去に掲載しました。どちらかというと、日本語でいうところの中庸に近いものです。

経営学の大家ドラッカーは保守主義について次のように明確に述べています。

「保守主義とは、明日のために、すでに存在するものを基盤とし、すでに知られている方法を使い、自由で機能する社会を保つための必要条件に反しないかたちで具体的な問題を解決していく原理である。これ以外の原理はすべて破綻を招く」(ドラッカー名著集(10)『産業人の未来』)。

ドラッカーが提唱する保守主義は、過去を懐かしむものではなく、未来志向のもとで現実的な問題解決を目指すものです。この考え方には、未来志向であること、現実的な問題解決を重視すること、既存の知識や方法を活用することという3つの特徴があります。

ドラッカーは「過去は復活しえない」「青写真や万能薬をあきらめ、目前の問題に対して有効な解決策を見つける」「使えるものはすでに手元にあるものだけである」と述べ、既存の制度や知識を基盤とした漸進的な改革を重視しています。

彼は、急激な変化が社会に不安定をもたらす可能性があるため、予測可能で実現可能な改革を推奨しています。また、漸進的な改革は広範な合意を得やすく、社会の分断を防ぐ効果もあります。

ドラッカー

一方で、小泉進次郎氏の改革路線は、より急進的で大胆な政策を打ち出しています。彼は「聖域なき構造改革」を掲げ、選択的夫婦別姓やライドシェアの全面解禁、解雇規制の緩和などを提案しています。こうした改革は革新的と評価される一方、急激な変革が社会に混乱をもたらすリスクも指摘されています。特に労働市場改革などの敏感な分野では、慎重なアプローチが求められるべきです。

2023年6月に成立したLGBT理解増進法は、急進的改革の一例として挙げられます。この法律は性的マイノリティへの理解を促進するものですが、その成立過程や内容は、ドラッカーの保守主義的アプローチとは異なり、急進的な側面が目立ちました。拙速な成立には疑問が呈されており、急進的な改革には予期せぬ結果が生じる可能性もあることを認識する必要があります。

こうした背景から、小泉進次郎氏の急進的な改革路線が、保守的な自民党の支持層には危険と映った可能性があります。小泉氏が総理となり、改革を実行すれば、自民党の保守岩盤支持層がさらに離れるという危機感を抱いているのかもしれません。

これは必ずしも上で述べた理路整然としたドラッカーの保守主義の認識に基づくものではなく、肌で感じ取った危機感や地頭での判断かもしれません。しかし、従来の派閥の論理からは離れた動きとして注目すべきと思います。

一方で、高市氏は急激な変革よりも既存の制度や価値観を基盤とした政策を重視しており、それが支持を集める要因となっていると考えられます。彼女の政策や行動を過激と見なす人もいますが、歴史的および国際的な視点から見ると、高市氏の政策等は保守本道を着実に進めているに過ぎないと言えるでしょう。

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2024年9月20日金曜日

<主張>日本人児童刺殺 中国政府に反省ないのか―【私の論評】深セン日本人児童殺害事件:邦人保護の緊急性と中国入国管理強化の必要性

<主張>日本人児童刺殺 中国政府に反省ないのか

まとめ
  • 中国深圳市で日本人男子児童が刺殺され、以前にも日本人母子が襲撃される事件が発生し、日本人の安全に対する懸念が高まっている。
  • 中国外務省は「同種の事件はどの国でも起こり得る」とし、具体的な再発防止策を示さない姿勢は大問題である。
  • 岸田首相は中国側に説明を求めるよう指示したが、より積極的な外交的対応をすべきである。
  • 事件の根本には中国共産党による反日教育があり、在留邦人の安全確保には中国の姿勢の変化が必要である。
  • 日本政府は中国への不要不急の渡航自粛を促し、企業は駐在員や家族の帰国を検討し、政府は帰国後の支援を行うべきである。

 中国深圳市で日本人学校に通う10歳の男児が刺殺され、数ヶ月前には蘇州市でも日本人母子が襲撃される事件が発生した。これらの事件は、日本人が中国で安全に暮らし、活動できるかという深刻な疑問を投げかけている。無辜の児童が命を奪われた痛ましさと、理不尽な凶行への怒りは計り知れない。

 中国外務省の対応は不十分で、「同種の事件はどの国でも起こり得る」という発言は許しがたい。短期間に日本人が相次いで襲撃される国は中国以外にない。中国政府は事態を深く反省し、具体的な再発防止策を明確に示すべきだ。

 岸田首相は中国側に説明を求めるよう指示したが、自ら動いて中国首脳に対策を講じるよう直接迫るべきである。また、日本政府は中国側に犯行動機などの情報公開を強く求めるべきだ。

 事件の根本的な原因として、中国共産党政権による反日教育が指摘される。東京・九段北の靖国神社で相次ぐ中国人の落書きも同じだ。政治的思惑で反日をあおる中国の姿勢が改まらない限り、在留邦人の安全は確保できない。

日本政府は中国への不要不急の渡航自粛を国民に促し、企業は駐在員や家族の帰国を検討すべきだ。政府は帰国後の住居や教育などの支援も行うべきである。

 このような邦人が被害を受ける悲劇を二度と繰り返さないために、日中両政府による迅速かつ効果的な対策が急務である。

 この記事は元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい

【私の論評】深セン日本人児童殺害事件:邦人保護の緊急性と中国入国管理強化の必要性

まとめ
  • 深センでの日本人児童殺害事件は、意図的に日本人を標的とした可能性があり、邦人に対する重大な脅威として捉えるべきである。
  • 日本政府は海外で生活する日本人、特に子供の安全を守る責務があり、迅速かつ的確な対応が求められる。
  • 過去の事例(バングラデシュでの日本人殺害など)を踏まえ、今回の事件でも邦人保護のため帰国を強く促すべきである。
  • 中国での組織的な反日教育や歴史的対立の背景を考慮し、予防的に邦人の帰国を促すことが重要である。
  • 国内の安全確保のため、中国人の入国管理についてより厳密な審査や監視体制の検討が必要である。

この事件は確かに大変悲惨で、特に子供が犠牲となったことは多くの人々に深い衝撃を与えています。まずはなくなったお子さんの御冥福をお祈りさせていただきます。

深センでの日本人児童刺殺事件は、南山区(Nanshan District)で発生したと報道されています。南山区は、深セン市の中でも比較的裕福なエリアで、特に高い技術産業や外国人居住者が多く、日本人学校もこの地域に位置しています。


中国における日本人学校での事件がどのような意図のもとで発生したか、現時点での公式な情報はまだ明確ではないものの、日本政府は迅速かつ的確な対応を行うべきです。

日本政府は、海外で生活する日本人を保護をする責務があります。特に子供の安全が脅かされる状況では、迅速な対応が求められます。過去の例では、政治的緊張が高まった国や地域で、政府が自国民に対し帰国を促すケースは少なくありません。

たとえば、2020年の新型コロナウイルスのパンデミック初期には、日本政府は感染リスクの高い地域からの邦人の帰国を奨励しました。こうした前例に基づき、今回の事件を受けて、深刻な安全保障上の懸念がある場合には帰国を強く促すことは正当です。

バングラデシュ北部ラングプルで、日本人男性の星邦男さんを銃撃し死亡させたとされる四人の犯人

日本人がターゲットとなった事件は、過去にも世界各地で発生してきました。たとえば、2015年10月3日、バングラデシュ北部ラングプルで、日本人男性の星邦男さんが銃撃され、死亡しました。星さんは農業プロジェクトに従事しており、移動中にバイクに乗った二人組に襲撃されました。

この事件では、イスラム国(ISIS)が犯行声明を出しましたが、バングラデシュ政府は国内の過激派組織「ジャマートゥル・ムジャヒディン・バングラデシュ(JMB)」が関与している可能性を指摘しています。同時期にイタリア人もダッカで殺害されており、外国人を狙った一連の襲撃として国際的に大きな警戒が高まりました。日本政府も邦人保護のため、対応を強化しました。

今回の深センでの事件も、確証が得られていないものの、意図的に日本人を標的とした可能性が考えられるため、同様に邦人に対する脅威と捉えるべきです。

テロ行為はしばしば、社会に大きな恐怖や不安をもたらすことを目的としています。そして、その恐怖を最大化するために、無防備で弱い立場にある人々が意図的に狙われることが多いです。

2014年にパキスタンの学校で発生したタリバンによる襲撃事件での犠牲者

たとえば、2014年にパキスタンの学校で発生した襲撃事件では、タリバンが学生を標的にし、多くの子供たちが犠牲となりました。今回の深センでの事件がテロと見なされるべきかどうかはまだ議論の余地がありますが、子供が犠牲になったという事実は、深刻な意図を感じさせるものであり、日本政府としても「テロ」として警戒することは必要です。

中国当局が今回の事件をどのように認識し、対応するかは、今後の調査次第ですが、日本政府としては慎重かつ迅速な外交的対応が求められます。中国は1990年代から組織的・体系的な反日教育を実施しており、日中間の歴史的な対立や領土問題などが影響し、特定の個人や集団が日本人を敵視するケースも考えられます。

日本政府がこうした背景を踏まえて邦人保護に努めることは当然であり、事件の背景が明らかになるまでの間でも、予防的に帰国を促すべきです。

国内での安全を確保するため、中国人の入国管理について議論することも必要です。多くの国が、テロリズムや犯罪を防ぐために、特定の国からの入国に対して厳しい審査を行っています。

例えば、米国は9.11以降、特定の国からの入国者に対して厳しいセキュリティチェックを行う政策を導入しました。日本においても、中国からの移民や短期滞在者に対して、より厳密な審査や監視体制を検討することは、安全保障の観点から必要です。

深センでの事件は、偶然の犯行ではなく、日本人をターゲットにした計画的な襲撃である可能性が高く、邦人の安全が脅かされる状況にあります。日本政府は、まずは邦人保護を最優先に考え、帰国を強く促すことが重要です。また、国内でのテロの脅威に備えるため、中国人の入国についての議論も行う必要があります。

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