ディスカウント大手のドン・キホーテが18日発表した2009年6月期連結決算は、既存店の活性化や格安の食料品などを扱う新業態店の増収効果に加え、販管費削減なども寄与し、営業利益は前期比7.5%増の171億円と、営業段階で19年連続の増益となった。徹底した低価格戦略を通じて、景気低迷で節約志向が高まる状況を追い風として消費者を呼び込み、利益を底上げした形だ。
売上高は18.8%増の4808億円で、こちらも19年連続の増収。主力のディスカウント店「ドン・キホーテ」で実施した販売点数の増加策により客数も増え、既存店売上高は0.5%増と堅調に推移した。また、07年10月に買収した「長崎屋」を中心に業態転換を推進しているディスカウント型総合スーパー「MEGAドン・キホーテ」が主婦層らの取り込みに成功し、売上高を押し上げた。
増収に加え、長崎屋で実施したコスト削減策などが寄与し、販管費が2月の計画値よりも約26億円減ったことで営業増益となった。
ただ、経常利益は約20億円の金融商品評価損などを計上したことが影響し7.1%減の159億円、最終利益も店舗撤退に絡む約12億円の特別損失などを計上した結果、3.2%減の90億円と減益だった。
同時に発表した10年6月期の業績見通しは、売上高が3.4%増の4970億円、営業利益が4.8%増の180億円と、20年連続の増収と営業増益を予想する。最終利益は11.0%増の100億円としたものの、安田隆夫会長は「今後も外部環境の先行き不透明感は強く、大きな変化にも対応できるよう慎重な予想にした」と説明した。
ドンキ・ホーテには「小売の輪」の理論は当てはまるのか?
株式会社ドン・キホーテ(東証1部:7352)とは、食料品・衣料品・雑貨・くすり・家電・カー用品・パーティーグッズなどが揃うディスカウントショップ。 陳列が特殊であり、「買う予定がなかった商品も、つい手にとって買ってしまうよう」な迷路(宝島)のような売場です。また、深夜遅くまで営業しているためか深夜には若者やカップルで店内が賑わっています。イメージキャラクターはペンギンのドンペン君。 なお、姉妹店にはピカソがあります。
ドンキホーテは取扱商品のカテゴリーも、商品数も多く、特にメガ・ドンキホーテのような大型店では、既存のスーパーと変わらないか、それ以上の品揃えがあるようです。それらを全て陳列するために、陳列棚だけでなく、店内の壁や天井、床、階段までと縦横無尽に使って展示していますから、店内は極めて“カオス的”なものです。
ドンキホーテのチラシを見てみると、意外とすっきりしていて、ドラッグ・ストアなどのものとあまりかわりありません。ドンキホーテでは、特に売りたい商品すべてが掲載できるわけではないのですから、考えてみれば店内の様子とチラシが連動するという仕組みを持つ従来のスーパーマーケットとは似て非なるものなのです。店内のカオスは従来のスーパーなどの考え方とは、全く違います。
スーパーだとなるべく買い物をしやすくするとか、顧客の滞留時間を長めにして関連商品も買っていただくとか、陳列棚エンドにいろいろマグネットになるものを配置するとか、売りたい商品は、思いっきり陳列してフェイス(商品のお客見える部分)を広くするとか・・・・・・・・。こうしたものは完全に無視です。極端にいうと、どこに何が置いてあるのか良くわからないという感じてす。
確かに、ここまで徹底すると、面白みというのがでてきます。さらに、廉価だということが、商品を発見した喜びに加わります。それに、カオスとはいっても、ある程度のまとまりがあり大体、どの商品がどのへんにあるのかは、あたらずとも遠からずという感じで探すことができます。
これは、たとえば、中途半端なスーパーなどとは違います。以前ヤオハンの例を述べましたが、ヤオハンの場合は、チェーンストアのスーパーを見よう見真似でやってみたが、やはり、所詮物まねで地方の八百屋の域を出なかったという感じてす。
ドンキホーテの場合は、おそらく、最初は、コスト削減のため、陳列にあまり経費をかけないようにして、什器やショーケースなどもほとんど使わないで独自の陳列をするようにして、低価格を追及したのだと思います。置いてある商品もいつも決まったものではありません。これは、ディスカウント・ストアの宿命みたいなものだと思います。
スーパーのように、基本的にいはいつも同じ商品が同じ場所にあるというシステムにすると、低価格は追求できません。メーカーに一定の商品をいつも生産し続けるということをしてもらわないと、これは実現できないからです。これに比して、ドンキホーテの場合は、その時々で安いところから仕入れできます。特に、現在では企業業績もよくないので、大目に作りすぎた製品など巷にあふれています。
ところが、陳列にあまり経費をかけないということが、ある一定のカオスや、面白みを生み出し消費者を惹きつけたのだと思います。
さて、小売業界には、昔から「小売の輪」の理論というのがあります。
Malcolm P.McNairによって提唱された小売業態の進展を説明する理論仮説です。1957年にピッツバーグ大学で開催されたシンポジウムで発表されて以来、半世紀近くが経過していますが、現在でも小売業態の変化を理論的に説明する際によく用いられます。
- 新しい小売業態は、提供サービスを抑え、設備も簡素化するなど革新的なローコスト経営を通じ、既存小売業者よりさらに低価格を訴求する形で市場に登場する。この革新的な小売業者は、価格競争によって既存小売業者の顧客を奪って成長し、市場での地位を確立する
- やがて、同様のシステムで同程度の低価格を実現した追随業者が続々と登場し、競争が激化していく。各々が低価格なので価格は競争の武器にならず、 品揃えやサービス、設備の向上などを通じた競争が展開される。その結果、革新的な小売業者が登場した時の低コスト・低マージン経営は、高コスト・高マージ ン経営へと移行していく(トレーデョングアップ(格上げ))
- 徐々に価格が上昇していくところへ、次の新たな革新的小売業者が、低マージン、低価格の形態で市場に参入することで成功を勝ち取ることができる
Malcolm P.McNairは、アメリカでの百貨店、バラエティ・ストアやスーパーマーケットなどのチェーンストア、戦後のディスカウント・ストアなどの主な小売形態の革新がこの小売の輪の理論仮説にあてはまるとしています。
ドン・キホーテもこの理論に当てはまるのではないかと思います。メガ・ドンキホーテでも、「什器やショーケースなどほとんど使わず独自の陳列方式によって、独特のカオスを生み出すとともに低価格を追求する、しかし、ある一定の基準はあり、そこからはみ出してしまうほどのカオスではない」という、路線は追求されているようです。
しかし、今後景気がよくなった場合、ドン・キホーテは今までの路線をとり続けることができるのでしょうか。特に、景気がよくなれば、現状のように多くの製品を低価格で仕入れすることは困難になりますし、顧客の方も、廉価というだけでは、魅力を感じなくなります。そうした時代にあって、廉価+一定のカオス(発見の楽しみ)ということで、消費者をひきつけられるのでしょうか。今後ドン・キホーテの動向を見守っていきたいです。
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