2010年12月29日水曜日

中国初の空母、来年にも誕生か 軍事拡張への疑念が強まる―【私の論評】いたずらに、危機を煽る必要はないが事実として認識すべき

中国初の空母、来年にも誕生か 軍事拡張への疑念が強まる



【大紀元日本12月28日】中国が購入した旧ソ連製空母ワリャーグの修復作業は、米軍事専門家の当初の予想より1年早く進んでおり、来年の7月1日、中国共産党建党90周年のタイミングで運用が始まる可能性が高い。また、ワリャーグを参考に、純国産空母2隻の建造も同時に進められている。23日のロイター通信が報じた。

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一方、中国国家海洋局が今年5月に発表した「中国海洋発展報告2010」に、「2009年、中国は空母建造の構想と計画を定めた」との一文をそっと登場させていた。空母保有へ闊歩する姿や、空母計画を当局出版物の中に隠すように公表するやり方に対し、中国の軍事的意図に対する国際社会の疑念がさらに強まった。

空母建造の狙いについて、ロイターの同報道によると、中国の消息筋は「空母があれば、南シナ海の主権は守れる。我々(中国)には覇権の野心はない」と話しており、中国の空母建造はアメリカと競争するためではないと主張している。

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中国国防部は空母についてのコメントを避けている。

一方、台湾元防務高官・林仲斌氏は、ワリャーグはマラッカ海峡に配備され、中国のインド洋における石油航路の安全確保に利用されると推測している。また、中国は空母の配備で、南沙諸島(スプラトリー諸島)への勢力拡大も目論んでいると指摘した。

23日の米軍事ウェブサイトstrategypageによると、ワリャーグはすでに「施琅号」と改名したという。「施琅」は清の康煕帝配下の海軍名将の名前で、1683年に清が台湾を治めたことから、今回の空母命名で台湾に脅威を与える狙いもあるとみている。

ワリャーグは旧ソ連時代に建造された空母だが、ソ連の崩壊で建造が中止された。1998年に2千万ドルで香港の会社に海上カジノの名義で売却されたが、背後にある本当の買い主は中国当局だった。2002年にワリャーグは大連港に入り、そこで改修作業が進められてきたという。

一方、空母の建造はスタートにすぎず、空母のもつ戦闘力を発揮させるには数十年かかることもある、とカナダの防衛評論家ロバート・カーニオルはロイターに語った。中国軍筋も、中国はまだ空母で戦闘機を発着させる技術をマスターしていないとロイターに話している。「この技術の習得には巨大な財力と命の代価を伴うことも認識してほしい」と米海軍専門家は指摘した。

なお、ロイター通信は中国軍筋の話として、中国国産空母2隻の建造は世界最大の造船所・上海江南造船所で行われていると明かした。

【私の論評】いたずらに、危機を煽る必要はないが事実として認識すべき
さて、空母の脅威に関しては、過去に掲載もしたことなので、ここでことさら詳細を掲載するつもりはありません。しかし、上の記事にもあるように、空母を持ったからといってすぐに、軍事力となるとおもうべきではないと思います。

これは、軍事の常識ですが、たとえば、戦車を導入したからといって、すぐに戦力にはならないのと同じことです。戦車も、操縦士、砲手、車長らの連携がうまくいかなければ、ほんど戦力となりません。

ちなみに、これらの役割を簡単に以下に掲載しておきます。


車長 戦車単体の指揮官。操縦手に前進、停止や方向の指示を出したり、砲手に射撃目標を指示するなどその戦車単体の指揮を担当する。

砲手 主砲、同軸機関銃などの照準、射撃を担当する。

操縦手 車体の操縦を担当する”運転手”


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90式戦車
さて、これらの三者の連携がうまくいったからといって、それだけでは、多少の戦力とはなりえますが、それでもまだ十分な軍事力とはなりえません。なぜなら、場合によっては、他の歩兵や、野砲などとの連携、他の戦車との連携も必要になるからです。

さらに、実際の戦争になれば、実際に戦争に参加する軍団の中での位置づけなどもはっきり認識していなければ、無用の長物になってしまいます。さらには、燃料、弾薬の補充、乗員の食料の補給などの兵站も考慮しなければなりません。

さて、わざわざ、戦車の例を出したのは、戦車の乗員はわずか3名ですが、それでも、これだけ考慮しなければならないことがあるということを示したかったからです。

空母に関しても、空母のみを軍事力にするわけにはいきません。やはり、艦隊を組んで派遣する必要があります。そうなると、その艦隊の乗組員だけでも数千人も要することになります。そうなると、空母を建造しただけで、すぐに軍事力になるわけなどないわけです。

艦隊をひとまとめにして動かすだけでも、かなりの練度を必要とします。さらに、これを特定の軍事目的にそって機能させるためには、ただ動くだけでは駄目で、軍事目的に沿った連携を行わなければなりません。そのためには、特定の軍事目的のための演習を少なくとも、机上や、実践も含めて、10回くらいはしなければ、実戦には役立たないということになります。

だからこそ、中国も今にいたるまで、空母を持つことなど考えなかったのです。というより、持てなかったというのが事実だと思います。世界を見回しても、空母を持っている国は少ないです。これは、空母を運用するということ自体が、その国の工学、軍事、通信、コミュニケーションなどをはじめとする、その国の知的水準の粋を集めなければできないためです。

開発途上国などが、空母を持ったとしても宝の持ち腐れになってしまうことでしょう。そう考えると、日本が第二次世界大戦中に空母を運用していたということは、すごいことだと思います。

おそらく、中国が空母を建造したとしても、実際に軍事力まで高めるためには、30年くらいかかるものと思います。

中国の軍事力を過大評価する人たちは、今回の空母の配備について脅威を煽ることでしょうが、少なくとも、ここ10年くらいの間は、たとえ中国の空母艦隊が日本に迫ってくるようなことがあっても、日本の潜水艦の対潜能力が中国のそれよりもはるかに高いため、日本の自衛隊だけでも、全艦撃沈可能です。これに、アメリカ軍なども加わった場合も想定すれば、ほとんど問題外でしょう。

しかし、われわれがここで注視しなければならないことは、中国が空母を必要とする国家戦略を持ったということです。空母を必要とする国家戦略とは、少なくとも日本や、東南アジアなどを自らの覇権ま傘下に収めるということです。さらに、一歩進めれば、日本や、東南アジアなどを自らの領土にするということです。

日本は、こうした中国の国家戦略を前提として、安全保証や、国防、軍事の問題を考えていかなければ、ならなくなったということです。これに関して、少なくとも、10年以内には、日本は現状のあり方を崩し、いずれかの道に進まなければならないということです。

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