2018年1月31日水曜日

【メディア政争】大新聞・朝日は一体、どうしたのか “弱者”の声に過剰反応、司法訴え言論で勝負せず―【私の論評】森友・加計事件は、朝日による「安倍疑惑」という大きな捏造である(゚д゚)!


朝日新聞本社
 朝日新聞は昨年末、『徹底検証「森友・加計事件」-朝日新聞による戦後最大級の報道犯罪』で名誉を傷つけられたとして、著者で文芸評論家の小川榮太郎氏と、発行元の飛鳥新社を東京地裁に提訴した。


 天下の大新聞が、こう言っては悪いが一介の物書きと、朝日新聞から見れば零細企業に過ぎない出版社を訴えたことに驚いた。賠償請求額が5000万円というケタ外れぶりにもびっくりした。

 これで、朝日新聞を批判する言論の一部は確実にしぼむ。勝ち負け以前に、個人の著者や中小出版社には裁判を戦うだけでも大きな負担だ。うっかり朝日新聞を批判して訴えられたらたまらないと、口をつぐむ論客は今後増えるだろう。

こうして、「自主規制の空気一丁上がり」となるのは、朝日新聞がよくいう「多様な言論」に逆行する道ではないか。

 疑問を感じた私は、同じ飛鳥新社が発行している『月刊Hanada』(3月号)に、「これは典型的なスラップ訴訟だ」と題する一文を急ぎ寄稿した。詳しくは同誌を購読いただきたい。

 スラップ訴訟とは、大企業や公的機関などの「社会的強者」が、個人などの権力を持たない「弱者」を訴え、その言論や活動を封じようとする恫喝(どうかつ)的、威圧的な訴訟を指す。

 一体、朝日新聞はどうしてしまったのか。

 権力の監視役を自任し、総理のクビもとれる力を持っていた大新聞が、小川氏や飛鳥新社といった「弱者」の声に、なぜこれほど過剰反応するのか。権力と対峙(たいじ)する言論機関である朝日新聞が、なぜ言論で勝負せず、司法という「権力」に助けを求めるような挙に出たのか。

 そのあたりの心理は、今後じっくり解明していきたい。

 その前に、小川氏が著書で指摘した中で、昨年の国会審議の大半を費やした「モリカケ騒動」のポイントとなった、一本の記事の真相が、司法の場で明らかにされるかどうかが気にかかる。

 昨年5月17日、朝日新聞1面トップを飾った「加計学園の新学部『総理のご意向』 文科省に記録文書」という記事である。記録文書の写真が添えられていたが、一部だけにスポットが当たって周囲が暗く、いかにも「秘密の文書」感たっぷりの演出がされていた。

 だが、暗くてよく読めない部分には、「『国家戦略特区諮問会議決定』という形にすれば、総理が議長なので、総理からの指示に見えるのではないか」と、真逆の意味にとれる記述があったのだ。小川氏はこのあたりを著書で指摘している。

 仮に、小川氏の指摘が正しければ、いずれ朝日新聞に対し、当該記事が空転させた国会の審議時間や、それに伴って浪費された国費の賠償をという、国民からの訴えが起きてもおかしくないと思うが、いかがか。

 ■有本香(ありもと・かおり) ジャーナリスト。1962年、奈良市生まれ。東京外国語大学卒業。旅行雑誌の編集長や企業広報を経て独立。国際関係や、日本の政治をテーマに取材・執筆活動を行う。著書・共著に『中国の「日本買収」計画』(ワック)、『リベラルの中国認識が日本を滅ぼす』(産経新聞出版)、『「小池劇場」の真実』(幻冬舎文庫)など多数。

【私の論評】森友・加計事件は、朝日による「安倍疑惑」という大きな捏造である(゚д゚)!

朝日新聞社は「事実に基づかない内容で本社の名誉や信用をいちじるしく傷つけた」として小川氏と飛鳥新社に対し5,000万円の損害賠償と謝罪広告の掲載を求める訴えを東京地方裁判所に起こしました。訴状によれば、謝罪広告は「朝日・読売・毎日・日経・産経・東京」の各紙において「社会面記事下、横9cm、縦2段」など掲載条件まで指定されています。

朝日新聞は12月25日に提訴を報じた自社記事の中で広報担当執行役員の談話を紹介していますが、「事実に反する記載が数多くありました」「本社には一切取材もないまま、根拠もなく、虚報、捏造、報道犯罪などと決めつけています」と非難した上で「事実に反した誹謗・中傷による名誉毀損の程度はあまりにもひどく、言論の自由の限度を超えています」として「やむを得ず裁判でこの本の誤りを明らかにするしかないと判断しました」と提訴に至った理由を説明していました。
これに対し小川氏も12月25日深夜にFacebookを更新し「訴状の初見の印象からの簡単なコメントをまず発表します」と反論しており、前述の執行役員の言葉に対しては「笑止千万とはこのこと」と一笑に付し、裁判に訴える手法を選んだ点について「自説を証明できる膨大な紙面と圧倒的な読者数を誇る朝日新聞社の取る道としてあってはならぬ最悪の邪道と言う他ありません」と呆れると共に、訴状についても小川氏が12月5日に送付した朝日新聞社への回答を「ほぼ全く踏まえていません」と指摘しています。
小川氏は朝日新聞からの質問に「全て丁寧に反論しています」と主張、朝日新聞側が今回「具体的にどう違うか指摘し訂正を求めましたが(中略)応じませんでした」としている点について「私との言論戦から逃げて、まるで私がろくな回答をせず不誠実な対応をしたかのような印象操作の上で、訴訟を挑んできた」と非難、今回の提訴に対しては「裁判は当然徹底的に受けて立ちますが」「朝日新聞が社会的に決して逃れられない形で訴えてゆく所存です」と語っています。
また、小川氏は投稿の中で慰安婦報道問題など複数の朝日新聞報道問題を挙げ「再三にわたる『言論の自由の限度を超えた』捏造」と指摘、これらを「なかったかのようにしておきながら」「巨額の賠償請求訴訟を起こすことは自由社会を破壊する言論弾圧に他なりません」と朝日新聞側の姿勢を厳しく批判すると共に今回の提訴によって「言論人の中には、朝日新聞を批判することが訴訟リスクを含むと考え、批判を手控える方も出てくるのではないでしょうか」と懸念を示していますが、朝日新聞に対しては既に数多くの批判が出ており、複数の著名人からも苦言が呈されています。
自民党の山田宏参議院議員は「『○○猛々しい』とは、朝日のこういった姿を言う」、産経新聞の阿比留瑠比氏も「いくらでも反論できる紙面を持ちながら、個人の言論への嫌がらせのよう悪質な手法をとるとはね…。最低ですね。」、またジャーナリストの有本香氏も「越えてはならない一線を越えたと思う」とした上で「社内の人達はこれをよしとしているのかねえ」と疑問を添えています。
評論家の石平氏は今回の提訴を「戦後70数年の偏向報道に対する日本国民の戦い」と位置づけており「小川さんの著書を一人一冊ずつ買って読もう」と呼びかけ。著書購入は小川氏の秘書も「この機会にご購読を!」「読んでご判断を!」としていますが、同時に小川氏のTwitterアカウントでは小川氏が理事長を務める日本平和学研究所へのサポートを呼びかけるツイートを再投稿しました。
小川氏は12月26日の午前にも当日の朝日新聞紙面を添付する形で再びFacebookに投稿を寄せており、「彼らには社会的な責任を取らせます」「朝日は自滅へのパンドラの箱を開けてしまいました」と述べています。
朝日新聞の言い分は不可思議です、たとえば朝日新聞のコラム「素粒子」一つとっても大問題です。例えば、「首相を侮辱すれば私人を証人喚問。首相夫人の説明を求めたら採決強行。内閣支持率が53%あるからいいのだと」。全く因果関係のないものを関係づけています。

「安倍晋三記念小学校と書いてあったか。財務省が出した黒塗りの書類。『ずぶずぶ』で品が悪けりゃ癒着と言おう」。「安倍晋三記念小学校」は全く事実と違います。 

安倍晋三首相は昨日の衆院予算委員会で、立憲民主党の川内博史氏への答弁で、森友学園が「安倍晋三記念小学校」の校名を記した設置趣意書を財務省に提出したとの朝日新聞の昨年5月の報道について「真っ赤なうそだった」と重ねて批判しました。朝日の報道を前提に議論され、疑惑が広がったとの認識も示しました。

朝日放送はイメージ画像として「安倍晋三 記念小學院」の画像を報道した
首相は、森友学園が財務省に提出した小学校名は「開成小学校」だったと説明。朝日の報道を根拠に「忖度(そんたく)されたのではないかと(国会で)質問されたが、そうではなかった」と強調しました。

首相は昨年11月の衆院予算委でも朝日新聞の当時の記事を取り上げ、学園前理事長の籠池泰典氏の話を「うのみにした」と批判していました。

 朝日がこんなむちゃな非対称的な状況で個人や弱小出版社を訴える姿を見ていると、「安倍政権は安倍首相夫妻への重大な人権侵害に対し、きちんと提訴せよ」と言ってやりたくさえなります。


「徹底検証『森友・加計事件』朝日新聞による戦後最大級の報道犯罪」著者の小川榮太郎氏が1月25日、訴訟に関する特設サイトを公開しました。

これは小川氏と小川氏が理事長を務める日本平和学研究所が開設したもので、URLは「asahislapp.jp」。サイト名は「朝日新聞5000万円訴訟の記録」となっています。


コンテンツは「私たちの主張」「5000万円訴訟の経緯」「朝日の代表的な過去の事例」と共に「本の贈呈運動」として全国の朝日新聞販売店に対し「徹底検証・・・」をプレゼントする運動についてのページが含まれています。

プレゼント運動は「徹底検証・・・」を購入し、朝日新聞の販売店に郵送または手渡しで書籍を「プレゼント」、その後サイト上で報告するという流れで、小川氏側では報告のあった販売店を公表していくとしており、「この活動で発生した印税につきましては、著者の収入とせず、然るべき団体に寄付します」と明記されています。

小川氏は「asahislapp.jp」上で朝日新聞による提訴を「言論機関による言論封殺」「こんな裁判を認めては、今後の日本の『言論の自由』は大幅に制限される」と訴えており、「私たちは、これは『スラップ訴訟』であると考えます」と主張しています。

また「朝日の代表的な過去の事例」を紹介したページでは朝日新聞による過去の誤報がまとめられており、サンゴ事件や慰安婦報道問題なども紹介されています。

サイト開設について小川氏はFacebookで「今後、裁判の経緯や有識者の見解など更新してまいります」としており、同時に現在「徹底検証・・・」の新聞広告が各新聞社から拒否されているとしてこのように協力を求めています。

小川氏は、"私は新聞各社に対しては、民事訴訟での一律な広告掲載拒否を見直すよう強く主張するとともに、新聞広告が出せない状況で国民に広く「森友加計の安倍疑惑が朝日主導の捏造だったこと」を知らせる輪を広げていただきたいと切望します。"と語っています。

今回の森友・加計事件は、朝日による「安倍疑惑」という大きな捏造(ねつぞう)です。これをあいまいにしたまま、小川氏による名誉毀損(きそん)案件としてごまかすことは絶対に許されません。

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2018年1月30日火曜日

河野氏、外相会談で中国に反転攻勢の背景 苦しい外貨不足、『日本なら外貨を取りやすい』と歩み寄り―【私の論評】中国は傍若無人な札束外交はもうできない(゚д゚)!


河野氏と王毅氏(左から)の外相会談でも中国の苦境が見て取れた=28日、北京
 安倍晋三政権が、中国への外交攻勢を強めている。28日の日中外相会談では、中国の原子力潜水艦が今月中旬、沖縄県・尖閣諸島の接続水域を潜航したことに、河野太郎外相が強く抗議した。いつもなら猛反発するはずの中国だが、逆に日中友好強化を進める方針を確認した。中国の不可解な変化には、外交的に「八方塞がり」となっていることに加え、経済的に外貨不足に陥り、日本への接近を強めているとの見方が浮上している。

「日中関係改善を阻害しかねない事態を引き起こすべきではない」

 河野氏は28日、北京の釣魚台迎賓館で中国の王毅外相と会談した際、中国潜水艦による暴挙について厳重抗議した。

 通常ならば、日本に猛反発してくる中国だが、この日は違った。

 王氏は、尖閣諸島が中国の領土だとする見解を示しながらも、両外相は、東シナ海での偶発的衝突を防ぐ「海空連絡メカニズム」の早期運用開始に向け努力することを確認したのだ。

 不自然だったのは王氏だけではない。

 チャイナセブン(共産党中央政治局常務委員)ナンバー2である李克強首相も「中日関係は改善の勢いが表れ始めているが、寒いところも残っている。平和友好条約締約40周年を、真に中日関係が正常発展の軌道に向かうチャンスにしなければならない」と、河野氏との会談で語った。

 対日強硬路線を維持してきた「中華外交」は影を潜め、中国の融和姿勢が目立った。背景には、米国やインド、北朝鮮など、中国外交が「見かけ以上に四苦八苦している」(北京の外交筋)現状があるとの見方がある。

 中国が最重要視する対米関係では、米国防総省が今月、「国家防衛戦略」を発表し、中国を「現状変更勢力」と位置づけた。17日には、南シナ海のスカボロー礁(中国名・黄岩島)の近接海域で、ドナルド・トランプ米政権が「航行の自由」作戦を実施した。米国が対中戦略を転換した一環として受け止められている。

 朝鮮半島でも、中国の優位性は失われつつある。

 金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長率いる北朝鮮は保護者的存在である中国を無視するかのように、「核・ミサイル開発」に邁進(まいしん)している。

 中国に接近しているかのように見える文在寅(ムン・ジェイン)大統領の韓国も、米国の顔色も伺う玉虫色の外交でどっちつかずだ。

 歴史的に国境をめぐって摩擦の続く大国・インドとの関係も好転していない。インド、中国、ブータンの国境付近のドクラム地区では昨年6月、中国軍が道路建設に着手したことを契機に中印両軍のにらみ合いが発生し、1962年の国境紛争以来、「軍事衝突の恐れが最も高まった」とも指摘されている。

 中国が経済的苦境から、日本に接近してきたという見方もある。

 国際政治学者の藤井厳喜氏は「中国経済は現在、外貨不足に苦しんでおり、特に米ドルが厳しい。このため、外国企業の中に共産党の支部を作って介入し、日本企業が中国でもうけても窓口規制で送金させないという現象も起きている。『日本なら外貨を取りやすい』とみて、歩み寄りを見せているのではないか」と指摘する。

 前出の王氏は日中外相会談で、安倍首相の訪中、習近平国家主席の来日についても、「着実に進めていくことの重要性」を改めて確認したが、見せかけの友好ムード演出に過ぎない可能性もある。

 日本は今後、中国にだまされないため、何をしていくべきなのか。

 藤井氏は「中国に一時的なおべっかを使っても、真の友好関係は築けない。自国の政治・外交方針を明確に示すべきだ。(中国潜水艦や艦船の侵入を阻止するため)尖閣諸島に自衛隊を置いた方がいい。それができないなら海上保安庁の常駐施設でもいい。世界に対して、『尖閣は日本の領土である』というアピールになる。中国が反発してくるなら、それは日中友好ではない」と話している。

【私の論評】中国は傍若無人な札束外交はもうできない(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事には、掲載されていませんが、もう一つ従来の中国なら猛反発するはずなのに、まったくそうではないことがあります。それは、海自の黄海での監視活動です。

核・ミサイル開発を続ける北朝鮮に対する国連安全保障理事会の制裁決議を履行するため、海上自衛隊の護衛艦や哨戒機が昨年12月から日本海や朝鮮半島西側の黄海で、外国船から北朝鮮船舶への石油などの移し替えがないか警戒監視活動に当たっています。

ここで、注目すべきは黄海です。自衛隊は、設立されてからつい昨年の12月まで、一度も黄海で艦船や航空機などを派遣したことはありません。自衛隊は1954年7月1日に創設されたわけですから、もう60年以上もの間、一度も黄海に行ったことはないのです。


これ中国にとっては、あり得ないことのはずです。自衛隊の行動範囲は、日本列島と沖縄県あたりの海域に完全に限定されてたんですよ。それが黄海に入ったのです。

それもアジアではトップクラス海軍力を持ってる海上自衛隊が理由が何であれ、ここに来たということは、中国にとってはとんでもないことのはずです。

これは北朝鮮にとっても中国にとっても非常に有効な抑止力になります。場合によっては、北朝鮮が追い詰められた場合には、拉致被害者を返すというカードを切らなければならないかなと思わせるきっかけにもなり得る、重要な判断でした。安倍内閣はこのような判断に踏み切ったのです。このようなことができるようになった背景には無論、2015年の安保法制の改正があります。
 
海自が黄海に踏み入ってまで、監視活動をしても、中国側がこれに対して何も抗議をしない、それどころか、いつもなら中国の側にたって報道する日本のマスコミもこのことの重大性を報道しないのですから、中国は何かが大きく変わったと判断せざるを得ないです。

この中国の変化を、ブログ冒頭の記事では、"外交的に「八方塞がり」となっていることに加え、経済的に外貨不足に陥り、日本への接近を強めている"としています。

外交的には、安倍首相の安全保障のダイヤモンド構想が功を奏しているのは間違いないです。もし、これがなかった、今日これほど中国が外交的に「八方塞がり」にはなっていなかったことでしょう。

そうして、経済的には外貨不足に落ちいているることについては、このブログにも掲載したことがあります。

その記事のリンクを掲載します。
【田村秀男のお金は知っている】外貨準備増は中国自滅のシグナル 習近平氏の野望、外部からの借金なしに進められず―【私の論評】頼みの綱の一帯一路は幻影に過ぎない(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事にも掲載したグラフを引用します。

 

このグラフを見ると、対外負債の外貨準備費比率が右肩上がりにあがつていることを示しています。これは、何を意味しているかといえば、対外準備が国外からの借金でまかなわれており、その比率が年々拡大しているということです。

これには、中国当局もかなりの危機感を感じていることでしょう。中国が国外で何かをするときの資金のかなりの部分が国外からの借金で賄っているということです。

なぜこのようなことになってしまったかといえば、原因は中国国内での経済成長が鈍化した上に、貿易で稼いだ以上に外国で浪費してきたからで、世界中の原油採掘権や鉱山を買いあさったり、企業買収や一帯一路などで外国投資で使い切った上に、人民元買い支えでこのようなことになったと考えられます。

中国は、人民元買い支えにおいては、1ドル=7元を超える元安にしないという一線を守ろうとする試みを貫いています。

中国国家外貨管理局は今月、2017年9月末時点の中国の対外債務残高が約11兆1498億元(約193兆円)で、1兆6800億ドルに相当と発表しました。人民銀行(中央銀行)が昨年7月に更新した『2016年12月資産負債表』によると、対外債務を含まない中国の総負債は244兆元(約4221兆円)。両者を合わせると、中国の内外債務総規模は約255兆元(約4412兆円)を上回ったことが分かりました。

中国共産党機関紙・人民日報電子版「人民網」が昨年12月29日に報道したところによります、国家外貨管理局が29日に公表した同統計によれぱ、中長期対外債務残高は全体の35%、短期対外債務は65%をそれぞれ占めています。

政府機関別でみると、広義政府部門の対外債務残高は全体の9%、中央銀行が1%、銀行(金融機関)は50%、その他の部門が27%、また直接投資での企業間融資による対外債務残高は13%、となっています。

一方、人民銀行が昨年7月に更新した資産負債表によると、16年末まで中国国内の総負債規模は244兆元で、対外債務は約1兆5000億ドル。人民銀行は、中国の内外負債は約255兆元との見方を示しましたた。

中国経済金融情報サイト「新浪財経」は同月、国内専門家の評論記事を引用し、16年中国国内総生産(GDP)が74兆4000億元だったため、16年総債務規模の対GDP比率は342.7%だと報道しました。これは、もし中国が米国のような基軸通貨国であれば、あまり問題にならないのかもしれませんが、中国はそうではないので、かなり問題です。

「新浪財経」はまた、国際決済銀行(BIS)が16年中国非金融部門の債務規模は対GDP比で約260%と予想したため、「人民銀行の統計は、実際より過小評価されている」と指摘しました。

台湾企業家の高為邦氏は今年、中国経済の鈍化が続くとの見方を示しました。これまで中国経済の高成長を支えたのは輸出のほか、国内インフラ投資を刺激するための信用拡大でした。

今年、中国の主要輸出国であるアメリカは中国製品の関税引き上げなど様々な貿易制裁措置を実施するため、輸出は低迷するでしょう。輸出と債務拡大で、中国経済は一段と失速することになります。

トランプ大統領は中国の太陽光バネルの緊急輸入制限(セーフガード)を発動する文書に署名した
中国当局は大規模な債務不履行(デフォルト)の発生を回避する金融危機の先延ばしのため、今紙幣を大量に印刷することで信用貨幣の供給量を増大しています。

貨幣供給量の増加によって発生するインフレは、同様に中国経済の崩壊につながる大きな要因になります。中国当局は安易に地方政府や国有企業の破産を認めないとの見解を示しています。

これを認めると、政権も一緒に滅びることになるからでしょう。当局が今できることは、債務拡大による金融危機の発生を先延ばしにするだけのようです。

いよいよ、中国の金融崩壊が近づきつつあるようです。金融崩壊を何とかとどめたにしても、かつてのように破格の経済支援や格安のインフラ工事引き受けといったいわゆる札束外交で、世界各国での影響力増大を目指し続けるようなことはできなくなるでしょう。

日本は、間違っても中国に対する資金援助をするなどという馬鹿真似はするべきではありません。

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2018年1月29日月曜日

「世界のリーダーの品評会」での黒田日銀総裁の発言に失望した理由ここでビシッと決めてほしかったのに―【私の論評】野党、マスコミ、官僚はマクロ政策に目覚めよ(゚д゚)!

「世界のリーダーの品評会」での黒田日銀総裁の発言に失望した理由ここでビシッと決めてほしかったのに…

髙橋 洋一 経済学者 嘉悦大学教授 プロフィール

「問題発言」の内容

スイス東部のダボスで、1月23日から26日まで、世界経済フォーラムの年次総会、いわゆる「ダボス会議」が開かれていた。今年は、トランプ大統領が初めて出席する関係もあり、例にない警備体制だったという。

周知のとおり、トランプ大統領は、再交渉を前提にTPP(環太平洋パートナーシップ協定)への復帰の可能性を示唆した。アメリカが抜けた後、TPP11というアメリカ除きの自由貿易協定が日本のリーダーシップで既に合意しているので、アメリカも焦ってきたのだろう。

筆者は、トランプ自身は自由貿易論者であり、オバマ前大統領主導のTPPという枠組みが嫌いなだけで、かわりに日米FTAなどの自由貿易を提案してくるとみていたが、結局その通りになった。日本としては、日米FTAとTPP12の両方のカードがあるため、アメリカの出方を待って作戦が取るとれるので、トランプ大統領のこのスタンス変更は歓迎だろう。

さて、ダボス会議は世界のリーダーが集まる会議であり、各リーダーの品評会のようなところだ。小泉政権以降、日本の政治家も積極的にダボス会議に参加していたが、今年はちょっと寂しい状況だ。

ダボス会議に出席した日銀黒田総裁
そのダボス会議において、日銀・黒田総裁が出ていた会合で、金融政策についての興味深いやりとりがあった(https://www.weforum.org/events/world-economic-forum-annual-meeting-2018/sessions/a0Wb000000AlJAXEA3 の55分あたりから)。筆者の知り合いがダボス会議事務局をやっているので、ダボス会議には注目していたが、ネットの一部でもこの会合に出席した黒田総裁の発言を疑問に思う声が出ていた。

なお、マスコミはこのことについてまったく言及していない。黒田総裁の発言は至極重要なはずで、ネットで見られるものであるが、日本のマスコミはおそらく見ていないのだろう(役所の解説がないと記事を書けないマスコミが多いためだろ思われる)。

一部で問題視されているのが、26日に行われた「Global Economic Outlook」での発言である。参加者は、黒田日銀総裁の他に、カーニー・イングランド銀行総裁、ラガルド・IMF専務理事、ラム香港特別区行政長官、フィナンシャルタイムズのウルフ記者らであった。

ウルフ氏が進行役で登壇者に質問していたが、その後の質疑応答の際に、フロアーから「インフレ目標は2%がいいのか」という質問があった。ウルフ氏は、その他の質問も含めて、まずラガルド氏に聞いた。ラガルド氏は、「インフレ目標2%がいいのかどうかは、国によって異なることもある」などと無難に答えた。

ウルフ氏は、「日本はデフレが長かったので、2%では低く、4%目標でもよいのでは」と黒田氏に質問した。それに対する黒田氏の答えは、要約すると次の通りだった。

<インフレ目標の物価統計には上方バイアスがあるので、若干のプラスが必要なこと、ある程度プラスでないと政策の対応余地が少なくなること、先進国間の為替の変動を防ぐことなどの理由で、先進国で2%インフレ目標が確立されてきた。>

ハッキリ言って、役人答弁そのもので、何を言っているのかさっぱり分からなかった。

クルーグマンに問われたこと

実は、筆者は日本では2%ではなく、4%インフレ目標にすべきということを、かつてプリンストン大学でクルーグマン教授に同じことを問われたことがある。その時は筆者は、

「インフレ目標は、フィリップス曲線上でNAIRU(Non-Accelerating Inflation Rate of Unemployment、インフレを加速しない失業率)を達成するための、最低のインフレ率である。

日本では、NAIRUは2.5%程度なので、インフレ目標は2%(が適当だ)。もし2%より高い、例えば4%のインフレ目標にしたら、失業率は2.5%程度でそれ以下には下がらないが、インフレ率だけが高くなるので、無駄で社会的コストが発生するインフレになってしまう」

と答えた。黒田総裁は、世界が注目するダボス会議で日本のリーダーとして男を上げる機会を逸してしまった。ラガルドがちょっと逃げて答えたので、ここでびしっと決めれば格好良かったのに。

おそらくなぜインフレ目標を2%にしているのか、筆者の解答部分の前半について、黒田総裁は明確に理解していないのだろう。それは、日銀事務局も同じである。それは、日銀が毎四半期ごとに出している「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」(https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/index.htm/)をみればわかる。

その中で、各回レポートに失業率の件があるのだが、直近のものでは「失業率も、足もとでは構造失業率をやや下回る2%台後半となっている」と書かれている。

その注には、「構造失業率には様々な考え方があるが、前掲図表3では、所謂『ベバリッジ曲線』の考え方に基づき、失業率と欠員率が一致する(=ミスマッチを勘案したマクロ的な労働需給が均衡する)場合の失業率として定義している。したがって、ここでの構造失業率は、NAIRU(Non-Accelerating Inflation Rate of Unemployment)の概念と異なり、物価や賃金との直接的な関係を表す訳ではない。」とされている(https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1801b.pdf)。

この「構造失業率であって、NAIRU」でないというのは、典型的な役人の言い訳だ。この言い訳が使われたのは、2016年7月のレポートからだ。その直前に、筆者が「日銀の構造失業率は3%台半ばとしており、計算違いである」と指摘した。その理由は簡単だ。構造失業率が、長きにわたって現実の失業率を下回るはずはないからだ。

たしかに「構造失業率」と「NAIRU」とは、その概念は違うが、計算すればほぼ同じ数値になるものだ。どうしても違うというのなら、日銀はNAIRUをいくらと推計しているのか、誰か国会質問で聞いたらいい。これが答えられなくては、中央銀行失格である。NAIRUの代替物として構造失業率を計算しているのではないか。

中央銀行として、NAIRUが重要なのは、それがインフレ目標に直結しているからだ。それは以下の図をみてもわかる。


これが、筆者の解答に書かれている、

「インフレ目標は、フィリップス曲線上でNAIRU(Non-Accelerating Inflation Rate of Unemployment=インフレを加速しない失業率)を達成するために最低のインフレ率である」

というところだ。

では、その次にある

「NAIRUは2.5%程度」

はどうだろうか。日銀のレポートでは間違い続けているが「NAIRUは2.5%程度」というのは、かなり専門的な知識が必要である。

構造失業率でも日銀は間違っている
NAIRUの推計には、UV分析による方法と、潜在GDPによる分析がある。

まず、厚生労働省「職業安定業務統計」による欠員統計の利用が可能であるので、UV分析を若干アレンジしたい。UV分析とは、縦軸に失業率(U、通常は雇用失業率)、横軸に欠員率(V)をとり、失業率を需要不足失業率と構造的・摩擦的失業率に分解し、その動向からNAIRUを算出するものだ。

まず、1963年からのUV図を描いてみよう。欠員率=(有効求人数-就職件数)/(有効求人数-就職件数+雇用者数)、雇用失業率に対応する完全失業率としている。

これを見ると、1980年代は安定しており、左下方にシフトしてNAIRUが低下し、90年代には逆に右上方にシフトしNAIRUが高くなっていることがわかる。動きとしては右回りになっていることもわかる。


そこで、最近の2002年1月から2009年7月までの経路をみると、やはり右回りになっている(もっとも、リーマンショックがあったので、右下までこないままに右回りで一周している)。

最近の2009年8月から現時点までの経路を見ると、筆者の予想線の通りに右下に向かって下がっている。ここで、右回りになるとすると、さらに左下に下がり、完全雇用は下図のようになると、筆者はみている。その点に対応する失業率は2.5%程度であり、これが筆者の考えるNAIRUである。


ちなみに、この分析は、日銀レポートで構造失業率と言っているものと同じである。つまり構造失業率でも日銀は間違っていることを指摘しておこう。

ここでも野党は間抜けな批判を……
次に、潜在GDPからの分析である。この分析のために、内閣府が四半期ごとに公表しているGDPギャップを利用しよう。このGDPギャップとインフレ率と失業率の関係をみるのだ。

GDPギャップとインフレ率の関係は、GDPギャップがプラス方向に大きくなるとインフレ率が上昇する、正の相関関係がある。具体的には、GDPギャップがプラス2%程度になると、インフレ率が2%程度になる。


GDPギャップと失業率は、逆に負の相関関係である。GDPギャップがプラス方向に大きくなると失業率は低下する。具体的には、GDPギャップがプラス2%程度になると、失業率は2.5%程度になる。


これで、失業率2.5%に対応するのはインフレ率2%程度であり、これがインフレ目標になっているわけだ。

なお、GDPギャップとインフレ率は正の相関、GDPギャップと失業率は負の相関なので、インフレ率と失業率は負の相関になり、これが先の掲げたインフレ率と失業率の関係を表すフィリップス曲線になる。

現状の経済を見ると、失業率は2.7%であり、NAIRUにあと一歩の状況である。この傾向が続き、現実の失業率がNAIRUに近づくと、賃金はかなり上がり出す。現にその傾向は出ているが、今一歩の状況である。

そのためには、あと10兆円弱の有効需要を、金融緩和の継続または財政出動で作ればいい。そうなると、人手不足によって賃金を上げないと企業活動に支障が出てくるようになる。

安倍首相が賃上げを経済界に要請しているのは、こうした現状を踏まえた上のことであって、極めて政治的に巧妙である。経済界も現状をみると、首相に言われなくても賃金を上げないと企業活動に支障が出てくるのはわかっているから、要請に応じた形になるだけだ。決して、マスコミが報道するような「官製賃上げ」ではなく、マクロ経済をわかっていれば、賃上げは自然の動きなのだ。

こうした状況下で、いま、働き方改革が行われている。立憲民主などの旧民主党系の野党は「働き方改革は残業代をゼロにするためのもので、労働者に不利になる」とか言っているが、残業代ゼロでも、人手不足によって手取り給与総額は増えるだろう。何より、雇用を作れなかった旧民主党系の政治家たちがこんなことを言っているのだから、まったくお笑いの世界である。

雇用も作って、その上で給料も上がりそうな状況が出現している。野党は全く安倍政権にお株を奪われた状態なのである。

【私の論評】野党、マスコミ、官僚はマクロ政策に目覚めよ(゚д゚)!

私は、高橋洋一氏のように数学はさほど得意ではないので、上記のような計算はなかなかできないですが、それでも過去の統計資料と、現状の雇用情勢を比較すれば、いわゆる構造的失業率ないしはNAIRUは2%台半ばであることは過去から現在の失業率の統計資料などをみればわかります。

私自身は、以前このブログに掲載したように、大体2.7%ではないか目見当をつけたことがあります。

以下に、その検討をつけたときの資料などを掲載したブログ記事のリンクを掲載します。
「リフレ派敗北」という人の無知と無理解と統計オンチ デフレに逆戻りさせるのか―【私の論評】俗説、珍説を語る輩はエビデンス(証拠・根拠、証言、形跡)を出せ(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事より以下にグラフを掲載します。

 
上のグラフをみるだけでも、完全失業率は2%台半ばくらいであることは大体察しがつきます。90年代の半ばあたりからは、日本はデフレ気味であり、97年あたりから完璧にデフレに突入したことを知っていればこのあたりの失業率の値はあまり参考にならないことがわかります。

このときよりも前のデーターを参照すれば、大体2%の半ばくらいと見るのが妥当です。完全失業率はその時々で変わるのではといわれていますが、まともなマクロ経済学のテキストによれば、このくらいの期間ではさほど変わることはなく変わったとしても0.5%くらいといわれています。

これは、1990年代の半ばより以前は、日本では失業率が3%を上回ると、危険信号といわれていたこととも符号します。米国ではずっと前から、米国の構造的失業率は4%くらいであるといわれてきました。それは今でも変わりません。

しかし日本では、2000年代にはいってから、完全失業率が3%台などは当たり前で、4%台や5%台になったこともありました。これは、日銀の金融政策が失敗していたことを物語っています。過去の日銀は、金融緩和すべきときに、金融引締めをするなどの愚策を行ってきたので、このようなことになったのです。

ブログ冒頭の記事で、高橋洋一氏は日本の構造的失業率ないしNAIRUを2.5%程度と考えていることが示されています。

高橋洋一氏は統計的手法を用いて、この試算を実施したのでしょう。おそらく、かなり正確なものと考えられます。

政治家などは、このような試算をすることは難しいかもしれません。しかし、私のように過去の統計などをみれば、どう考えても4%や5%の失業率がまともであるとは思えないはずです。さらに、自分で計算できなくなても、高橋洋一のような人、それも複数の人に計算してもらうことはできるはずです。そうすれば、まともではないということが認識できるはずです。

そのような見方をすれば、何かがおかしいということに気づき、金融政策に問題ありということになるはずです。しかし、多数の政治家はそのような見方がまだできません。特にブログ冒頭で高橋洋一氏が指摘するように野党はそうです。そうして、残念ながら、官僚もマスコミもそのような見方ができない人が多いです。

彼らの頭の中では、雇用とはマクロ経済政策である、金融政策などとは全く関係なく、ミクロ的な見方しかできません。そうして、雇用というと政府にミクロ政策のみを実行せよと迫ります。

これが根本的な誤りです。政府が行うべきはまずは、マクロ政策なのです。その他のミクロ政策は、政府としては法律や規制、インフラの整備はすべきですが、政府自身がミクロ政策を実行してしまえば、ことごとく失敗してしまいます。これがうまくいくというのなら、共産主義は大成功したはずです。でも現実はそうではありません。

だから、ミクロ政策は民間が実行すべきなのです。そうして、日本では民間というと営利企業のみがクローズアップされるのですが、これだけでは不十分で本来ならば民間非営利企業(NPO)が十二分に活躍しなければならないのです。

しかし、日本では未だに民間非営利企業(NPO)が欧米のように発達していないことが問題です。このあたりは、述べると長くなりそうなので、また機会を改めて、掲載します。

そうして、それ以前に日本では、政府は主にマクロ政策を実行すべきものということが、未だ前提となっていないところがあります。特に、雇用はそうです。マクロ政策である金融政策や、財政政策がまともでないときに、ミクロ政策(労務問題の解決など)だけを実行したとしても、雇用は改善できません。

まずは、これを根付ける必要があります。野党の政治家、マスコミ、官僚も政府はマクロ政策を実行する主体であることをはやく認識すべきです。はやく目覚めて欲しいものです。

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2018年1月28日日曜日

トランプ大統領がTPP復帰検討「有利な条件なら」 完全否定から大転換した理由―【私の論評】トランプはTPPが中国国内の構造改革を進めるか、中国包囲網のいずれかになることをようやく理解した(゚д゚)!


ダボス会議で演説したトランプ大統領は、「米国でビジネスを行うには最良の時期だ」と訴えた
 ドナルド・トランプ米大統領は、米CNBCテレビのインタビューで、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)への復帰を検討する用意があると表明した。復帰を完全否定していた従来の政権方針を大転換する発言といえる。米国の復帰が実現すれば、アジア太平洋地域をカバーする貿易・投資ルール確立という、TPPの本来の目的が達成されそうだ。

 「米国にとってより有利な条件になるならば、TPPをやる」

 トランプ氏は25日、スイス・ダボスで行われたインタビューでこう語った。トランプ氏がTPP復帰に言及したのは初めて。復帰を検討する具体的な条件には言及しなかった。

 トランプ氏は大統領就任直後の昨年1月、TPPから永久に離脱するとの大統領令に署名した。通商政策では2国間交渉を重視し、日本とは自由貿易協定(FTA)も視野に経済対話を始めた。

 通商政策の柱とする2国間交渉が思うように進まないなか、米国を除くTPP参加11カ国が新協定に合意し、早ければ2019年に発効する見通しになったことが、復帰検討の背景にあるとみられる。

 ただ、トランプ氏は「現在のTPPはひどい協定だ」と従来の認識を改めて強調し、離脱を決めた昨年の政権の判断を肯定した。

 TPPを推進する安倍晋三政権としては、米国の再加入に向け、関係が良好なトランプ政権への働きかけを強める方針だ。

 トランプ政権はこれまで、TPPや、気候変動に関する国際的枠組み「パリ協定」などの多国間協定に敵対的な姿勢を示してきた。ところが、トランプ氏は今月中旬、パリ協定についても「ことによっては復帰も考えられる」と復帰の可能性に言及していた。

 トランプ氏は現在、スイスでの世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)に参加している。

【私の論評】トランプはTPPが中国国内の構造改革を進めるか、中国包囲網のいずれかになることをようやく理解した(゚д゚)!

TPPといえば、ひところTPP芸人と呼ばれる「TPPに加入すれば日本は完璧に米国の属国になる」という極論を吐く一団がいました。

そもそも、TPPとは何かといえば、通商交渉です。戦後の通商交渉の歴史を少しでもかじれば、どういう流れかわかるはずですが、なぜかこれら芸人たちは大騒ぎを繰り返しました。私も、一時この大騒ぎに取り込まれそうになりました。

そうして、これらの芸人たちは、トランプ氏が大統領になった直後TPPから離脱することを公表して以来誰も信用しなくなりました。

TPP芸人らによれば、TPPはアメリカが日本を再占領する亡国最終兵器だったはずです。

一時期、善良な人の無知に付け込み、恐怖で人を煽る「TPP商法」がかなり流行っていました。
不可思議なTPP芸人の主張
TPP芸人の主張は、「TPPは日本の国体を破壊する」、「TPPに交渉参加を表明した瞬間、日本は抜けられなくなりアメリカの言いなりになる」、「TPPにはISD条項と言う恐ろしい条項があり、関税自主権が無くなる」等など、とてつもないデマを飛ばしていました。
TPPなどという国際的な行政問題などに普通の人間が関心を持つはずもないですし、その実体についても知らないのが当たり前です。TPP芸人どもが悪徳商法として成功したのは、単なるマイナー問題を、さも国際政治的な大問題の如く信じ込ませたという一点につきると思います。
その人たち、今はどんな言論をしているのでしょうか。涼しい顔をして、何もなかったような顔をしています。

私は、TPPに関してはこのブログにはあまりとりあげませんでした、というのも反対論者の語ることが胡散臭いと思ったからです。

通商交渉の歴史をたどれば、TPPのような交渉は賛成の立場の側が通すのに苦労する条約だからです。にもかかわらず、反対派はすべての戦力をTPP反対に注げと煽っていました。

この有様は、戦前、「英米の世界支配に対抗せよ」と言いながら、ソ連の存在を華麗にスルーした偽装転向右翼と同じような臭いを感じさせました。

戦前日本にはスターリンのソ連を華麗にスルーした偽装転向右翼が存在した
TPPは成長市場であるアジア地域で遅れていた知的財産保護などのルールを作りました。社会主義国のベトナムでさえ国有企業改革を受け入れました。TPPが棚上げとなれば各国の国内改革の動きも止まってしまうことになります。

TPP合意を機に、日本の地方の中小企業や農業関係者の海外市場への関心は高まっていました。電子商取引の信頼性を確保するルールなどは中小企業などの海外展開を後押しするものです。日の目を見ないで放置しておくのは、本当に勿体無いです。

さて、米国が離脱したままTPP11が発効して、それに対して中国が入りたいという要望を持つことは十分に考えられます。

ただし、中国はすぐにTPPに加入させるわけにはいかないでしょう。中国が加入するには、現状のように国内でのブラックな産業構造を転換させなければ、それこそトランプ氏が主張するようにブラック産業によって虐げられた労働者の労働による不当に安い製品が米国に輸入されているように、TPP加盟国に輸入されることとなり、そもそも自由貿易など成り立たなくなります。


このあたりのことを理解したため、トランプ大統領は、TPPに入ることを決心するかもしれません。そもそも、政治家としての経験のないトランプ大統領は、これを理解していなかっただけかもしれません。だからこそ、完全否定から大転換したのかもしれません。

そうして、これを理解して、それが米国の利益にもなると理解すれば、意外とすんなり加入するかもしれません。

中国がどうしても、TPPに参加したいというのなら、社会主義国のベトナムでさえ国有企業改革を受け入れたのと同じように、中国国内の民主化、政治と経済の分離、法治国家化を進めなければならないでしょう。

それによって、中国自体の構造改革が進むことになります。こうして、TPPにより、中国の体制を変えることにもつなげることも可能です。

しかし、改革を実行しない限りTPPは中国抜きで、自由貿易を進めることになり、結果として環太平洋地域において、中国包囲網ができあがることになります。

大統領に就任した直後のトランプ大統領は、このような可能性を見ることができなかったのでしょう。しかし、最近はその可能性に目覚め、完全否定から大転換したのでしょう。

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2018年1月27日土曜日

韓国は在韓邦人を「人間の盾」にするつもりかもしれない―【私の論評】日米の対北対応について、韓国は蚊帳の外に置かれることになる(゚д゚)!

韓国は在韓邦人を「人間の盾」にするつもりかもしれない

有事の自衛隊受け入れを認めないのなら

長谷川 幸洋 ジャーナリスト 東京新聞・中日新聞論説委員 プロフィール

北の思惑通りに動く韓国

安倍晋三首相が平昌五輪の開会式に出席するため、韓国を訪問する。訪韓に反対意見も強かった中、何が首相の背中を押したのか。五輪後の朝鮮半島情勢を睨んで、在韓邦人の退避問題が重要案件になっていたからではないか。

安倍首相の開会式出席をめぐっては、自民党内に出席を促す声もあった一方、文在寅(ムン・ジェイン)政権が慰安婦問題を事実上、見直す考えを表明したのを受けて「首相は出席を見合わせるべきだ」という意見が強まっていた。

2015年12月の日韓合意後、日本側は韓国が設立した「和解・癒やし財団」に約束した10億円をすでに拠出したが、韓国側は在韓日本大使館前に置かれた慰安婦像を撤去していない。約束したような撤去する努力も見えない。

それどころか、釜山の日本総領事館前に新たな慰安婦像が置かれるありさまだ。韓国ではバスの中にも慰安婦像が置かれる異様な事態になっている。にもかかわらず、文政権は安倍首相に対して、新たな謝罪の手紙を書くよう求めた。

一方、北朝鮮に対して文政権は宥和路線に走っている。1月17日に開かれた南北次官級会談では、女子アイスホッケーの合同チーム結成、開会式での合同入場行進、北朝鮮の応援団・芸術団派遣、北朝鮮のスキー場で合同練習実施などで合意した。

このうち、女子アイスホッケーの合同チームは国際五輪委員会(IOC)と韓国、北朝鮮の五輪委員会、平昌五輪組織委員会の会議でチームの登録人数を北朝鮮12人、韓国23人の計35人とした。試合に出るのは22人だが、その中に北朝鮮選手が3人入る。

他の国は登録選手の上限が規定通りの23人なので、あきらかに優遇だ。登録選手が増えれば、それだけ疲労回復面で有利になる。IOCのバッハ会長は「五輪精神が双方にもたされる素晴らしい日」などと言っているが、ルール無視もいいところである。

さらに、韓国の康京和外相はカナダで開かれた北朝鮮問題をめぐる外相会議で、北への人道支援再開を繰り返し訴えた。日米などが強く反対して議長声明には盛り込まれなかったが、北の宥和路線は一段と鮮明になっている。

日本に対する慰安婦合意の追加要求と北朝鮮に対する宥和強化は「セット」になっているとみていい。北朝鮮から見れば、いずれも日米韓の北包囲網から韓国を引き剥がす効果がある。文政権はそんな北朝鮮の思惑にぴったり沿って行動しているのだ。

在韓邦人は退避できるのか?

文政権について、私はかねて「中国とロシアの手先」と指摘してきた(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52283)。「米韓合同軍事演習と核・ミサイル開発の同時凍結」という中ロの主張を最初に言い出したのが文政権だったからだ。つまり「中ロの露払い役」を担っていた。

ここへきて、文政権は中ロへの肩入れにとどまらず、北に直接接近する意図を隠さなくなった。それだけ緊張が増してきたからだ。そんな姿勢に「韓国は本当に北朝鮮を押さえ込んで、核とミサイルを断念させるつもりがあるのか」という疑念が高まっている。

米国のトランプ政権は平昌五輪・パラリンピック期間中の軍事行動停止に同意した。だが、その後の米韓合同軍事演習は実施する構えだ。一部には「演習からそのまま実戦に移行するのではないか」という観測も出ている。

パラリンピックが終わる3月18日以降は、何が起きてもおかしくない状況と言える。文政権はあくまで宥和路線に固執するなら「韓国は演習に参加しない」と言い出す可能性さえあるかもしれない。軍事力行使のブレーキ役を目指しているのは間違いない。

そんな韓国に日本はどう対応すべきか。いまや焦眉の課題になったのは、ソウルをはじめ韓国各地に在留している日本人の退避問題である。

日本政府は有事となれば、自衛隊を動員して約6万人とも言われる在韓邦人を日本に退避させる方針だ。

ところが、韓国側は自衛隊の韓国上陸や港への自衛艦接岸を容認していない(1月16日付読売新聞、http://premium.yomiuri.co.jp/pc/#!/news_20180115-118-OYT1T50129/newstop)。

どちらの側に立つのか

安倍首相は開会式出席に合わせて日韓首脳会談を求める方針だ。

産経新聞のインタビューで、首相は「在韓邦人の安全を守るためにも日韓の協力が不可欠」と語っている(http://www.sankei.com/politics/news/180124/plt1801240006-n2.html)。この一言が物語るように、安倍首相は首脳会談で慰安婦問題で日本の毅然とした態度を伝えるのは当然として、文大統領に直接、有事の自衛隊受け入れを求めるだろう。

これは文政権の姿勢を占うリトマス試験紙にもなる。試されるのは、韓国は日米の側に立つのか、それとも北朝鮮の側に立つのか、だ。もしも文政権が日本の要請を断るなら事実上、日本人を「人間の盾」として使う思惑があるとみていいのではないか。

北朝鮮は米国が攻撃すれば、報復で「ソウルを火の海にする」と公言している。日本人が退避していなければ、米国が攻撃をためらう理由になる。つまり、在韓邦人の存在が米国の攻撃をけん制する効果がある。文政権はそこを狙っているかもしれない。

もう1点。安倍首相が首脳会談で日本人退避問題を取り上げれば、北朝鮮と韓国に対するけん制にもなる。日本人の退避が議題になるのは、まさしく有事を前提にしているからにほかならない。つまり「米国は本気だぞ」というメッセージになるのだ。

同時に、安倍首相のメッセージは文政権の親北容共体質を考えれば、水面下で北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長にそのまま伝わる可能性もある。今回の首相訪韓は、それも織り込んだうえでの決断だったかもしれない。いわば「最後通牒」だ。

韓国は北朝鮮包囲網の一員として、もはや完全には信頼できない。今回の首相訪韓は五輪後に迎える危機本番を前に、文政権の本質を見極める絶好のチャンスである。以上の点から考えれば、慰安婦問題を理由に訪韓を見送るのは必ずしも得策とは言えない。

最後に一言。もしも私がいま韓国駐在の立場だったら、政府の支援を受ける前に、家族のために五輪・パラリンピック後の帰国航空便のチケットを予約する。事が動き始めてからでは遅い。

【私の論評】日米の対北対応について、韓国は蚊帳の外に置かれることになる(゚д゚)!

上の記事、要約すると、分在寅は在韓邦人の存在が米国の攻撃をけん制する効果があると考えており、在韓邦人を「人間の盾」にするつもりであるようなので、それを安倍総理は防ぐために、平昌五輪に参加する意向を決めたということです。

映画「マッドマックス・怒りのデスロード」にでてきた人間の楯
そうして、日韓の間で、日本人の退避が議題になることは、まさしく有事を前提にしているからにほかならないことを示すわけで。これは、「米国は本気だぞ」という北朝鮮へのメッセージになるということです。

昨日も、安倍総理が平昌に行く理由を掲載しまし、背後にはトランプ大統領による韓国の対北融和姿勢を打ち砕くため、踏み込んだ決断をしたと結論しました。そうして、そのような決断をするに至った韓国の対北への融和的姿勢について述べました。

しかし、その融和的姿勢の中に在韓邦人を「人間の楯」にすることまでは掲載しませんでした。

そもそも、文在寅が在韓邦人を「人間の楯」にするという考え方は、なかなか考えにくいです。普通の人なら、在韓邦人を「人間の楯」にしたとして、何になるのかと考えてしまいます。たとえ、「人間の楯」にしたとしても、金正恩には全く関係ないと思ってしまうと思います。

しかし、その考えは、そもそも韓国が日米と同じ位置にいると考えているから、そうなるのであって、文は「在韓邦人」を、北を米国の攻撃から守るための楯にしようと考えているということなのですから、もうこれは驚天動地の大異変としか思えないです。

トランプ大統領もまさか、米国が北に攻撃するなどの緊急事態になれば、自衛隊が韓国の領土に一時的に入り、邦人を救出にあたることくらいは韓国は認めるだろうと思っていたのでしょうが、そうではないことを知り愕然としたに違いありません。

トランプ氏としては、以下の図ような日米共同での在韓米・邦人の退避のイメージもあったと思うのですが、これが韓国のおかげでできなくなるのです。


たとえ、「日韓合意」などで韓国がこれに対する新方針を決めるなどしていたにしても、トランプ大統領からすれば、北の脅威に対抗することと、これとは別次元の問題であると考えているところに、「人間の楯」問題が浮上して、文在寅のとんでもない意図を感じ取り、文在寅の対北融和的な態度の異常さに目覚めたのでしょう。

そうして、北と韓国との融和の象徴のようになったオリンピックの開会式の前々日に、トランプ大統領は中韓に対して、通商法201条に基づく緊急輸入制限(セーフガード)を発動することにしたのです。

中韓ともに、北に対しては融和的であるため、トランプ大統領はこの措置に踏み切ったのでしょうが、北の融和的な態度のほうが、より危機的とみたトランプ大統領は、自らの考えを良く理解している安倍総理を韓国に対する最後通牒を告げる役割として選んだのでしょう。

本来なら、自らこれを実行したいとも思ったでしょうが、外交経験もほとんどなく、韓国情勢についても、さほど詳しくない自分が、この重要な役割を担えば、言質をとられかねないと考え、満を持して、この役割を安倍総理に託したのでしょう。

ただし、マイク・ペンス副大統領も今回の交渉に安倍総理とともに臨むということで、安倍総理が交渉をやりやすくしたのだと思います。

ペンス副大統領
そうして、今回のオリンピックに安倍総理とペンス副大統領が参加し、文在寅に最後通牒を言い渡すとともに、オリンピック終了後も韓国が対北融和的な態度を改めなかった場合には、その後は韓国を外して日米の強力な協同のもとに北の脅威にあたることになるでしょう。そうして、その可能性はかなり高いです。

その後韓国は日米の対北対応について、韓国は蚊帳の外に置かれることになります。それは仕方のないことです。日米韓で対北対応をすれば、日米の動きは韓国を通じて金正恩に筒抜けになるからです。

そうして、米国が北を攻撃するときには、韓国には事前に伝えることなく、攻撃を始めるでしょう。韓国へは事後通知ということになるでしょう。そうして、北朝鮮と交戦中にも、日米の動きは韓国には知らされず、完璧に蚊帳の外に置かれることになるでしょう。

米軍は、これから韓国と共同訓練もしなくなるかもしれません。そうなれば、米軍による北朝鮮への攻撃は本番に限りなく近づいたとみなすべきでしょう。

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2018年1月26日金曜日

安倍首相が平昌出席で殴り込み「慰安婦像撤去しろ!」 ペンス米副大統領と圧力かける狙い―【私の論評】トランプ大統領は、韓国の対北融和姿勢を打ち砕くため、踏み込んだ決断をした(゚д゚)!

安倍首相が平昌出席で殴り込み「慰安婦像撤去しろ!」 ペンス米副大統領と圧力かける狙い

平昌に乗り込む安倍総理
 安倍晋三首相が、韓国・平昌(ピョンチャン)冬季五輪の開会式(2月9日)出席のため訪韓する決意を固めた。文在寅(ムン・ジェイン)大統領と首脳会談を行い、慰安婦問題をめぐる日韓合意を反故にする「新方針」を示したことを「受け入れることはできない」と断固抗議する。加えて、「核・ミサイル開発」を強行する北朝鮮に対する「日米韓の連携」を確認する。同時期に訪韓するマイク・ペンス米副大統領とともに強い圧力をかける狙いだが、「従北・反日・反米」の文政権は目を覚ますのか。事実上の「日米殴り込み」は、韓国への最後通告ともいえそうだ。

 「五輪は平和とスポーツの祭典であり、日本は2020年に東京五輪を主催する立場だ。諸般の事情が許せば平昌五輪開会式に出席し、日本人選手たちを激励したい」

 安倍首相は23日、産経新聞のインタビューでこう語った。

 新年早々、文政権が「最終的かつ不可逆的に解決」とした日韓合意を蒸し返す新方針を発表して以降、日本では「納得できない」「理解できない」という怒りの声が8、9割に上っている。

 加えて、「従北」の文政権は、平昌五輪を「南北連携の政治ショー」と変貌させつつあり、米国や中国、ロシア、フランスなどの首脳は軒並み開会式欠席を表明した。

 安倍首相も出席見送りを検討していたが、緊迫する北朝鮮情勢などを考慮し、再考したという。前出のインタビューで、次のように語っている。
「(文氏との会談で)慰安婦問題をめぐる日韓合意について、韓国が一方的にさらなる措置を求めることは受け入れることはできない。この考え方を直接伝えるべきだと考えている」「(ソウルの日本大使館前の慰安婦像撤去も)当然強く主張することになる」

 官邸や外務省に慎重意見が強いなか、安倍首相が苦渋の決断を下した背景には、同盟国・米国の意向もあったようだ。

 同紙によると、文政権が行き過ぎた対北融和政策に走らないようクギを刺したい米ホワイトハウスから、「安倍首相に開会式に出てほしいという強い要請があった」(政府高官)という。

 五輪直前には、開会式に出席するペンス氏が来日する。安倍首相は、ペンス氏との会談や夕食会などを通じ、日韓合意の経緯や日本の立場を説明する考えという。強固な日米関係を背景として、ペンス氏とともに、文氏に「対北連携」と「日韓合意履行」を迫る。

 ただ、韓国の「反日」姿勢はまともではない。

 東京五輪誘致の際、韓国は妨害工作を行った。平昌五輪のHPの地図から、日本列島を消したこともある。ドナルド・トランプ米大統領が昨年11月に訪韓したときは、晩餐(ばんさん)会に元慰安婦を招き、「独島エビ」を出した。朝鮮有事に向けた日本人避難の協議にも応じない。

 もはや「敵性国家」に近い存在である。

 自民党内にも不満が高まっている。「日本の名誉と信頼を回復するための特命委員会」と外交部会の合同会議が24日午前、党本部で開かれ、安倍首相の五輪開会式出席への反対論が続出した。「訪韓すれば(安倍政権の)支持率が下がる」といった声も上がった。首相訪韓への賛成論はなかった。これを受け、同委員長の中曽根弘文元外相らが同日中にも首相官邸を訪れ、「訪韓見送り」を申し入れる方向で調整する動きもあった。

安倍首相の決断を、専門家はどうみるのか。

 作家で元外務省主任分析官の佐藤優氏は「韓国のことは不愉快だが、賢明な判断だ。日韓の懸案である慰安婦問題を理由に、安倍首相が開会式に出席しなければ、国際社会から『日本は大人ではない』とみられる。韓国につけ込むスキを与え、北朝鮮が悪用する可能性もある」と語った。

 これに対し、朝鮮近現代史研究所所長の松木國俊氏は「反対だ。韓国に『日本は日韓合意にこだわっていない』という誤ったメッセージを送ることになる。日本の怒りも伝わらず、慰安婦問題は解決しない。日本は1ミリたりとも動いてはならない。(首脳会談も)韓国から頼んでくるのが筋だ。『ゴネれば、日本は言うことを聞く』とナメられるだけ。腹を割って話しても通じる相手ではない」と懸念を示した。

 国連などで、朝日新聞などが広めた「慰安婦問題のウソ」を修正する活動を続けている「なでしこアクション」代表の山本優美子氏も「訪韓すべきではない」としたうえで、注文を付けた。

 「韓国に行く場合、日韓合意を履行するよう厳しく突きつけなければいけない。米国との連携は不可欠になる。国際社会が韓国を指導し、プレッシャーをかけて追い込んでいく姿勢を見せつけることが必要だ」

 拓殖大学の藤岡信勝客員教授は「安倍首相の訪韓方針にはがっかりだ。なぜ、文氏に『新方針は受け入れられない』と伝えるために、直接会う必要があるのか。理解できない。北朝鮮問題でも(従北の)韓国と連携できないことは明白だ。韓国は約束を破ってきた。日本に対する『甘えと傲慢さ』が根強くあり、これらは究極の侮蔑にほかならない」と批判した。

 安倍首相の決断は、吉と出るか凶と出るか。

【私の論評】トランプ大統領は、韓国の対北融和姿勢を打ち砕くため、踏み込んだ決断をした(゚д゚)!

慰安婦問題の日韓合意については、韓国が”新方針”なるものを一方的に打ち出していました。韓国の康京和外相は今月9日、従軍慰安婦問題をめぐる2015年の日韓合意について、日本側に再交渉を求めない方針を発表しました。

ただ、日本政府が拠出した10億円については、返還すべきとの元慰安婦らの主張を踏まえて韓国政府が同額を負担し、今後、日本側と拠出金の扱いについて協議するとしています。

さらに、康外相は、「被害者の望みは自発的で心のこもった謝罪だ」と述べ、日本政府が新たな措置を講じることを暗に促しました。

新方針を発表した康京和(カン・ギョンファ)外相
そうして、今月24日の産経新聞の朝刊トップに載っていたのは『首相、平昌開会式に出席 日韓合意新方針 文氏に「拒否伝える」』という見出しでした。

その後は「安倍総理は平昌オリンピックの開会式出席を見合わせる」という報道が相次いでいました。 日本政府はすでに韓国の新方針をもちろん「受け入れられない」と言葉の意思表示をしていましたが「オリンピックの開会式に行かない」という”無言の行動”もこれまた韓国の新方針を「受け入れらない」と示すことになります。

ただこういう場合は「相手が道理に合わない」とか「不愉快だから」という理由ではなく「国会日程があるので行けません」などとさらりと無視するようなやり方で、今回はそのようになるのではないかと思っていました。

ところがその後一転して、安倍総理は開会式に行くという決断をしたのです。産経新聞の単独インタビューによると「何をすべきかを熟慮して判断し、実行するのは政権を担う者の責任だ」ということで、背景にあるのは日韓合意を履行して「在ソウル日本大使館前の慰安婦像撤去についても」言う、と述べたとのことです。

9日、2015年12月以来となる正式な南北会談を行った韓国と北朝鮮の政府高官
また南北対話については「五輪は五輪で切り離して考えるべきだ。北朝鮮への圧力を最大化していく方針はいささかもぶれてはならない。この考え方も文大統領に明確に伝えたい」と答えています。

そうして、この記事で一番注目したのは以下の部分です。
「実は、米ホワイトハウスからも、安倍首相に開会式に出てほしいという強い要請があった」 政府高官はこう明かす。(ウェブサイト「産経ニュース」より)
平昌オリンピックにアメリカのペンス副大統領が出席をすることになっています。その時にペンス氏は韓国に行く直前に日本に来ます。これは、すなわち日米で韓国の文在寅大統領に北朝鮮や日韓合意への対応を迫るという意味があるものと考えられます。

追加関税措置を命じる文書に署名するトランプ米大統領 1月23日
このような最中に、ドナルド・トランプ米大統領が、通商法201条に基づく緊急輸入制限(セーフガード)を発動する文書に署名したことが、注目されています。「国内産業の保護」のため、太陽電池製品と家庭用大型洗濯機で競争力の強い、中国と韓国を特にターゲットにしたものです。

両国は「核・ミサイル開発」を強行する北朝鮮への制裁に慎重とされ、発動日(2月7日)は、韓国・平昌(ピョンチャン)冬季五輪開会式の前々日です。この動きは、決して偶然ではなく、安倍晋三首相の、突然の訪韓決断との関係があるものと考えられます。

これは、トランプ政権の中韓への懲罰・牽制(けんせい)の可能性が濃厚です。 米通商代表部(USTR)は、低価格の太陽電池と大型洗濯機の輸入量が急増し、米国内のメーカーが被害を受けているという認識を示していました。トランプ氏は、USTRが引き続き調査に取り組むことを強調しました。

 これに対し、中韓両国は強く反発しています。

中韓が反発するのは、セーフガードが発動された場合に、現行の関税のほかに追加関税の支払いを求められるためです。追加関税は、中国が世界的に優位な太陽電池で4年にわたり、最大30%。韓国が強い大型洗濯機は、年間輸入数が120万台までは最大20%、これを超えた分には最大50%もの追加関税を課します。期間は3年間です。

韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権は、平昌冬季五輪前に、北朝鮮への露骨なすり寄りを見せいます。カナダ・バンクーバーで16日に開かれた外相会合でも、康京和(カン・ギョンファ)外相が北朝鮮への人道支援再開に強い意欲を表明した。

こうしたなか、安倍首相は24日、平昌五輪の開会式(2月9日)出席のため訪韓する意向を明らかにしたのです。安倍首相がこのような苦渋の決断を下した背景には、文政権が極端な「従北」政策に走らないようクギを刺したい同盟国・米国の意向もあるのでしょう。

「政治と五輪」「五輪と貿易」は一見、無関係にも思えます。しかし、国際政治は冷徹で複雑な計算の上に成り立っています。

文政権に不信感を高めているトランプ政権が、セーフガードを開会式直前に発動する。その開会式には、安倍首相とペンス氏が出席して、文政権に「日米韓の対北連携」を迫ります。これにより、日米は韓国の優柔不断で八方美人的な姿勢をただし北の脅威に本格的に備えようとしているのでしょう。

今思い返すと、2015年末の「日韓合意」そのものについても、日本国内では異論・反論がかなりありました。しかし、その後どうなったか振り返ってみると、安倍総理は無論のこと、岸田・河野外務大臣ともに、韓国側が「慰安婦問題蒸し返し」を言ってきても、ことごとく無視しました。そうできたのは、この合意に当時のオバマ政権が関与していたということがあります。

2015年12月28日の会談で慰安婦問題の解決方法で合意した日韓外相
今回も、ペンス副大統領の目の前で、安倍総理と文在寅が話し合いをして、「日韓合意」について文が色よい返事をしなければ、ペンス副大統領は、さらに懲罰を加えることをほのめかすなどのやりかたで、文に因果を含めることになるのでしよう。

また、実際に武力攻撃などがあった場合に、米国や日本の在韓市民を避難させることなどについても、話し合いが行われるでしょう。いずれにしても、日米により韓国の文在寅に相当な圧力を加えるのは間違いないでしょう。

北朝鮮の後ろ盾である中国と、『従北』姿勢を強める韓国は、『核・ミサイル開発』を放棄させようという国際社会の足並みを乱しています。さらに、「日韓合意」を反故にしようとするなど、日米韓の足並みを乱しています。トランプ大統領としては、韓国に融和姿勢を改めさせるために、踏み込んだ決断に至ったのでしょう。

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2018年1月25日木曜日

安倍首相はなぜ「リフレ派」になったのか―【私の論評】ポスト安倍は金融政策を理解しなければ国民からNOをつきつけられる(゚д゚)!

安倍首相はなぜ「リフレ派」になったのか

第196回国会における施政方針演説を行う安倍首相 写真はブログ管理人挿入 以下同じ

 経済評論家の上念司氏が面白いものを書いていた(“週刊「1億人の平成史」 第19回 上念司さんの「アベさんがアベノミクスにたどり着くまで」”)。

 もっとも、この記事は上念氏らが「リフレ派」に入った経緯を書いているが、安倍首相のことは書かれていない。安倍首相がどのようにリフレ派になっていったのか、筆者はその当時のことを知っている。

 それは2006年3月の日銀の量的緩和解除の「失敗」までさかのぼる。

関心の最初は06年の量的緩和解除の「失敗」

 上念氏が書いたものは、時系列的には、安倍氏が日銀の量的解除失敗で金融政策に関心を強め、安倍氏や自民党が在野の時代に、党内の勉強会などで内々に勉強した後、表に出て行ったときの話である。

 その頃には安倍氏は、日銀政策審議委員として金融政策をしていた当時の経済学者やエコノミストよりもはるかに勉強しており、金融緩和がデフレ脱却、雇用環境の改善に大きな効果があることを確信していた。


 この国会答弁によれば、いわば「指南役」は、山本幸三代議士(前地方創成・規制改革担当相)、イエール大学名誉教授の浜田宏一先生と、筆者となっている。

 安倍氏の国会発言の背景を説明しよう。

 時は、12年前の小泉政権と第一次安倍政権に遡る。小泉政権の末期だったが、2006年3月、福井俊彦総裁時代の日銀が、2001年3月から実施してきたそれまでの量的緩和策を解除した。

量的緩和に解除を受けて会見する福井俊彦・日銀総裁=2006年7月14日午後、日銀本店
 この量的緩和策については、中央銀行の手法として、「量的緩和は効果がない」という声と、逆に「副作用が強過ぎてハイパーインフレになる」という二つの極端な批判的な意見が多かった。

 特に、日本では、著名な学者が批判論者であった。

 実は、量的緩和策の先駆者は先進国でいち早くデフレに陥った日本だ。

 日本では、デフレ解消の策として、速水優総裁時代の2001年3月から実施された。

 筆者は、当時の小泉政権で竹中平蔵・総務相補佐官をしていて、政権内で量的緩和の有効性を説き、弊害がないことを指摘していた。

 当時の日銀の量的緩和の問題点は、量の面で不十分であったことだ。

 ところが、量的緩和そのものに反対している学者やマスコミが多く、日銀は2006年3月に量的緩和を解除してしまった。筆者はこれを批判、デフレ脱却が遠のくことを予測し、それは的中した。

 そのことが誰の目にも明らかになったのは、小泉政権の後の第一次安倍政権になってからだ。

「デフレ状態」なのに金融を引き締めた

 その理由は単純で、形式的なインフレ率が0.5%とすると、物価指数の上方バイアスを考えれば、物価はマイナス0.1%という、「デフレ状態」なのに、量的緩和を解除し金融引き締めをしてしまったからだ。

 筆者は、バーナンキ・元FRB総裁やクルーグマン教授がいたプリンストン大学に留学した経験があり、その関係で各国の中央銀行にも知り合いがいた。念のために彼らの意見を聞いたが、やはり量的緩和解除は「時期尚早」だったと言っていた。

 しかし、当時、筆者の意見に賛同してくれた政治家は、竹中総務相、中川秀直自民党政調会長と山本幸三代議士だけだった。

 この事情をよく覚えていたのが、当時の官房長官だった安倍氏だ。

 安倍氏は2度目の首相になった後でも、2006年の量的緩和の解除は時期尚早で失敗だったと言っている。これが、上に引用した国会発言である。

 それ以外にも、その類いの発言はしばしば行い、2006年3月の量的緩和解除は失敗であり、その失敗を踏まえて、2%のインフレ目標を明確に導入したアベノミクスを作ったと言っている。

 もし、その当時に、2%インフレ目標があれば、量的緩和解除の失敗をしなかったはずだと、筆者も考える。

 安倍氏は、記憶力がいい。誰がどのような意見を言って、誰の予測が正しかったのか、間違っていたのかをよく覚えている。

 これは、政治家に求められる資質である。

 経済見通しなどの予測の当たらないエコノミストの話を聞いても時間の無駄であり、予測の打率の高い人の意見を聞いたほうがいい。

 おそらく、その当時から、いろいろなエコノミストの打率を安倍氏は把握するようになったのだろう。

 筆者は、しばしば安倍氏から個別のエコノミストの評価を聞かれることもあるが、安倍氏の論評はかなり正確である。

首相辞任後、金融政策に改めて関心

 ただし、残念ながら、安倍氏はそうした勉強成果を生かす間もなく、2007年9月に首相を辞任してしまった。

 健康問題とはいえ、突然だった。筆者はその当時、官邸勤務だったが、朝の国会質問答弁の打ち合わせを終え、国会に向かうところで体調不良になって、驚くばかりだった。

 その後、かなり療養していた。しばらくすると政治活動を再開したが、安倍氏自身が国会答弁で話したように、時間がたくさんある。

 そうした中、金融政策に関心を持ち始めたように見えた。

 金融政策については、小泉政権の時は、安倍官房長官、竹中大臣、中川政調会長の間で、筆者が説明役になって、しばしば議論していた。

 例えば、中央銀行の独立性について、日本では単に独立性というが、世界では、目的の独立性と手段の独立性を区別して、中央銀行には手段の独立性はあるが、目標の独立性はない、などである。

 そして、金融政策は、海外では雇用を確保する「雇用政策」の側面があり、例えば、アメリカの中央銀行(FRB)は、「物価の安定」とともに「雇用の確保」という責務を担っているとも説明していた。

 筆者の印象では、このときの安倍氏は、そういうものもあるのかという感じで、それほど確信していたわけではないように見受けられた。

自民在野時代に勉強会浜田イエール大教授とも親交

 その後、安倍氏は、健康を回復し政治活動に復帰後、自民党内で金融政策などについての内々の勉強会を開いていたが、その時の会合の発起人は、安倍氏、山本幸三氏、中川秀直氏だった。そこの事務局で筆者も手伝っていた。

 民主党政権になっていたころだ。

 ちょうどその時、筆者のところに浜田先生が訪ねてきた。

 聞くところによると、浜田先生は、安倍フェローシップから研究助成を受けているという。

 もっとも、安倍フェローシップは、安倍氏の父である安倍晋太郎氏のフェローシップである。それならということで、浜田先生を内々の勉強会に呼び、金融政策を様々な角度から話してもらった。

 山本代議士、浜田先生そして筆者は、2006年3月の量的緩和解除の失敗や、2008年9月のリーマンショック以降の金融緩和不作為の失敗、2011年3月の東日本大震災後の政策の失敗などを話した。

 安倍氏はこうした議論を通じて、国会答弁で明らかにしているように、「リフレ派」になっていったようだ。

 その段階で、自民党の中でも、他党を含めても、有数の「リフレ派」になっていた。なお、上記の政策の失敗についての筆者の意見は、本コラムのバックナンバーを見ればわかる。

「金融政策は雇用政策」との理解深める

 その後は、上念氏が書いているように、派閥、党を超えて、安倍氏は積極的に活動を広げていった。

 筆者は、その中で、安倍氏に、「金融政策は雇用政策なので、海外では左派政策と思われるがいいか」と何度も確認している。

 安倍氏は、まったくかまわないし、そのほうが相手のお株を奪えると、まさに政治家らしい反応だった。

 そういえば、トランプ大統領も共和党なのに雇用重視である。

(嘉悦大学教授 高橋洋一)

【私の論評】ポスト安倍は金融政策を理解しなければ国民からNOをつきつけられる(゚д゚)!

第一次安倍政権のつまづきは、諸説ありますが、やはり最大のものは、小泉政権の末期だったが、2006年3月、福井俊彦総裁時代の日銀が、2001年3月から実施してきたそれまでの量的緩和策を解除したことでしょう。

ここで、解除しないで緩和を続けていれば、数年で日本はデフレから脱却できていたことでしょう。この時点で金融引締めをしてしまったのは、完璧な失敗でした。その後、日本の経済はふるわず、第一次安倍政権は短命に終わりました。

その後2013年まで金融引締めが続き、その煽りを受けて、第一次安倍政権の後の政権も短命に終わり、政権交代によって成立した民主党政権における政権もすべて短命に終わりました。

このようにどの政権もすべて短命に終わったのは、雇用も経済もふるわなかったせいです。少なくとも、金融緩和を維持していれば、雇用は改善されていたので、国民の不満もおさまりこのように短期政権が続くようなことはなかったでしょう。

平成12年には安倍総裁の自民党が衆院選で大勝利し、平成13年4月からようやっと金融緩和に転じました。そのため、現在に至るまで雇用情勢の改善が継続されています。ただし、平成14年春から消費増税をしてしまったため、経済の成長率はあまり伸びていないというのが現状です。

やはり、当時の福井日銀総裁による量的緩和の解除は日本経済に甚大な悪影響を及ぼしました。

そうして、最近当時の日銀の議事録が公表されています。以下にそれに関する新聞記事のリンクを掲載します。
日銀、06年1~6月の議事録公表 量的緩和解除要因に外圧も
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、量的緩和解除要因が外圧であったことをうかがわせる部分のみを引用します。

当時の水野温氏日銀審議委員 
同年1月の会合では、水野温氏審議委員が「(量的緩和による)低金利が他国に迷惑を掛けているという論調が(世界の)中央銀行の中である」と指摘。福井俊彦総裁も量的緩和が招く円安に言及し、「『これを単純にエンジョイするのか』という感覚が(国際会議の)共通の認識」と呼応した。
ただし、この発言は明らかに間違いでした。そもそも、世の中には「通貨戦争」なる考えがありますが、それは全くの虚妄です。

ある国が「通貨戦争」をするつもりで、金融緩和をすれば、どうなるかといえば、確かに通貨安になります。 それは、他国の通貨に比較して、自国の通貨の量を意図的に増やすわけですから、当然そうなります。

しかし、さらに自国の通貨を安くするために、量的金融緩和を継続し続けるとどうなるかといえば、今度は国内が大インフレになります。だから、「通貨安」のために量的緩和を続けることはできず、インフレになる前に「緩和」を打ち切るのが普通です。

ある国が大インフレになっても良いからと、どこまでも「金融緩和」を続けたとしたら、その先はハイパーインフレになり、金融破綻してしまいます。だから、どこか妥当なところで緩和をやめざるを得なくなります。

そもそも、「通貨戦争」など幻想に過ぎないのです。当時「円安」を非難する国があれば、この話をして反論すれば、それですんだと思います。実際、まともな経済学者であれば、「通貨戦争」の幻想など誰も信じていません。水野氏はこのような考えができなかったのでしょう。

それに、本当にそのような圧力があったかどうかも、疑問です。たとえば、話は少し違いますが、8%の消費税増税に関して、麻生財務大臣は「国際公約だ」などと語っていましたが、これは麻生財務大臣が国際会議の席上で「増税」すると語っただけの話であり、いずれの国からも「日本は増税すべきだ」などとの声は上がっていませんでした。

独立国に対して「増税しろ」「金融緩和をやめろ」などということは内政干渉です。

私は、水野氏の外圧という話も、麻生氏の「増税は国際公約」ような程度のものであり、日本に対して「金融緩和をやめろ」とはっきり言った国など存在しなかったと思います。

ただし、これには例外はありました。それは中国人民銀行総裁の周小川です。しかし、それも2012年に自民党安倍総裁が政権交代のあかつきには金融緩和をすると表明した時であり、2006年当時はそのような声はなかったと思います。ネットで検索しても、ヒットしません。どなたか、その事実をご存知の方は教えていただきたいものです。

中国人民銀行行長(日本では総裁)
それに周小川の要求は、虫の良い話でした。当時の円高、元安はとんでもない水準で、日本企業が日本で製品を製造して国内で販売するより、中国に材料を送って、中国で組み立てて、それを日本に輸入して販売たほうが、安く製品を販売できるという異常事態でした。

これは、中国にとってはぬるま湯のようなもので、日本の製造業はこぞって中国に進出していました。このような異常事態がいつまでも続くと考えるほうが異常でした。

そうはいいながら、周小川の懸念はピタリとあたって、日本が金融緩和したあたりから、中国の経済成長は政府によって公表されている信憑性の低い数字ですら、かなり下がっています。しかし、これは日銀の金融引締めにあぐらをかいて、中国が分不相応なことをしていたというだけであって、何ら日本が批判の対象にされるいわれはありません。

実際、中国を除いた国ではほとんどそのような苦言を呈した国はありませんし、周小川もその後は苦言を呈したことはありません。

さて、2006年の金融緩和解除がいかに異常なものであったのかは、以上のことからもご理解いただけるものと思います。

それにしても、今思えば、2006年当時は、安倍晋三氏を含めたほとんどの政治家が金融政策を理解しておらず、たまに理解している人がいたにしても、今日の安倍総理のように、金融政策を理解しつつ、高い地位にいて影響力のがある人はいませんでした。

だからこそ、当時金融緩和解除はすんなりと実現してしまったのです。

しかし、その後安倍晋三氏は金融政策について真摯に学び、再び総理大臣になることができました。もし、安倍晋三氏が金融政策について理解をしていなかったら、総理大臣に返り咲きもできなかったかもしれません。私自身も、安倍総理が金融政策について理解を示したことを知る前までは、失礼ながら「過去の人」と思っていました。

私はここに、現在の政治家、特にポスト安倍と目されている人たちに警告を発しておきます。あなた方は、安倍晋三氏が真摯に学んだように、2006年から2012年までの日本の金融政策の間違いについて真摯に学ぶべきです。


そうでないと、誰が次の総理大臣になったとしても、その政権は短命に終わります。それでも、金融政策を理解せず正しい金融政策を実行しなければ、自民党そのものが衰えていきます。そうして、その果には金融政策を正しく理解する新たな勢力に政権を奪われることになります。

その後自民党が、与党に返り咲くことはかなり困難になります。日本国民はそれほど馬鹿ではありません。一度安倍総理が、金融政策の有効性に関して範を示したにも関わらず、それを反故にするような、総理大臣や与党には、それが自民党であれ他の党であれ、国民の大多数は当然のことながら、NOを突きつけます。国民を馬鹿にしないで下さい。

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2018年1月24日水曜日

原子力潜水艦が尖閣接続水域に侵入、追尾許す中国の失態―【私の論評】今回の事件の真相は、中国原潜の敗走(゚д゚)!

原子力潜水艦が尖閣接続水域に侵入、追尾許す中国の失態

東シナ海公海上で中国国旗を掲げて航行する潜水艦=12日午後
 2018年の幕が明けて間もない1月11日、尖閣諸島沖の接続水域に中国人民解放軍(以下、解放軍)に所属すると思われる原子力潜水艦が侵入したというニュースが日本列島を駆け巡った。

 駆け巡ったというのは、久しぶりのキーワードのそろったニュースで、メディアが張り切っていることが伝わってきたからだ。

 当初、国際面で展開される程度かなと考えていたら、一面トップのニュースとなったので、少し驚いた。

 それほど大騒ぎする話なのかな、というのが私の第一印象だった。

 というのも中国はもとより経済力に見合った海洋への進出を公言していて、宮古沖や津軽海峡を通って西太平洋に向かうことを恒常的に行うとしていた。つまり、日本のメディアが大騒ぎするほとんどの行為を、中国は隠してもいなければ、むしろ国内では「昨年、中国の太平洋への進出はこんなに進みました」と個別事例を挙げて誇っている。

 そして残念ながら空も海も通過が無害通航であれば日本として、それを妨げることもできない。

 そのため当初、私はこれも海洋進出のための一つのデモンストレーションではないかと考えた。

 紛らわしかったのは潜水艦だけではなく海上で中国海軍の軍艦も同時に接続水域へと侵入したこと。

 実は、日本は2015年の秋以降からとくに尖閣諸島への軍艦の接近ということに神経質になってきていた。これは別名「27度線問題」とも呼ばれているが、要するに中国海軍の“南下”にどう対処すべきか--つまり自衛隊をどう向き合わせるのかという課題--を突きつけられる極めて難しい問題であるからだ。

 つまり、後者であれば単に西太平洋への意思ではなくなるので深刻さは一気にエスカレートすることは避けられない。

 だが、その後の中国側の対応からも軍艦は、原潜をとらえて動いた自衛隊艦の動きを追尾したものとみられ、今回の問題はやはり潜水艦をメインにとらえて間違いないと考えた。

 だとすれば、なおさら日本が大騒ぎする話ではない。むしろ焦らなければならないのは中国だろう。

 そもそも原潜の脅威のほとんどは姿の見えない点にある。どこから攻撃してくるのか分からない存在だからこそ敵にとっての脅威になる。

 その原潜が自ら正体をさらして国旗まで掲げたのだから、ありがたい話であろう。写真1枚撮られるだけで、どれだけの情報が流出するかしれないのに、しっかり追尾までされてしまった。

 こんな中国の失態について、「習近平の指示だ」などと堂々書いている記事もあったが、それならば米軍は習近平に感謝状を贈るべきだろう。

 ■富坂聰(とみさか・さとし) 拓殖大学海外事情研究所教授。1964年生まれ。北京大学中文系に留学したのち、週刊誌記者などを経てジャーナリストとして活動。中国の政・官・財界に豊富な人脈を持つ。『中国人民解放軍の内幕』(文春新書)など著書多数。近著に『中国は腹の底で日本をどう思っているのか』(PHP新書)。

【私の論評】今回の事件の真相は、中国原潜の敗走(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事、理解しにくい面があります。特に、軍事面にあまり詳しくない方にとってはそうでしょう。なぜなら、確信的なことをはっきり言わないからです。

中国の潜水艦は日本の海上自衛隊に追尾され、お手上げになってしまったということです。挙句の果てには日本の海上自衛隊に潜水艦撃沈のシミレーション訓練に使われた可能性もあります。

それどころか、潜水艦、航空機、艦船などによって利用され、いろいろな場面で何度か撃沈シミレーションで撃沈されたかもしれません。潜水艦だ、航空機だけ、艦船だけ、あるいは潜水艦と航空機の組み合わせや、他の組み合わせ、あるいは全部の組み合わせなど幾通りものシミレーション訓練が行われたかもしれません。

潜水艦のソナー


しかも、下手をすると中国側にもわかるように、模擬魚雷、模擬爆雷などから、最近では漁船でも魚群探知機としても用いられるソナーで音波を発信させ、ソナーが潜水艦にあたりそれが反射して、海自側で確認したときに撃沈シミレーションで撃沈と判定したかもしれません。



潜水艦の場合、何らかの方式で、強烈なソナーを当てられると、乗組員全員がその音を聴くことができる場合もあります。直接聞けるだけあって、その恐怖は尋常なものではありません。何しろ、敵側の強烈なソナーの音響が響き渡るということは、自分たちは補足されていて、その次には魚雷や爆雷その他で攻撃され撃沈されることもありえるからです。(ただし、このあたりは、どの国でも極秘事項なので憶測の域を超えません)

そこまではしなくても、日本の海自は、中国の潜水艦の位置を示しつつ、何らかの方法で退去するように中国の潜水艦の艦長対し、警告を出したのは間違いないでしょう。

無論、中国の潜水艦はそのような警告に従うつもりはないので、様々な回避行動をとったのでしょうが、その都度探知され、どう頑張っても回避できないことがわかり、パニックに陥り精も根も尽き果ててどうしようもなくなって、浮上して中国の旗を掲げたのでしょう。こうすれば、少なくとも撃沈されることはありません。

039型潜水艦の発令所内部
対潜作戦で、潜水艦が浮上して国旗を掲げることは相手に、こっちは攻撃性がないことを告げていることを意味します。つまり、相手の艦隊により強制送還されること認めていることになります。中国の潜水艦は、ここまで追い詰められたということです。

これは機密事項ですから、日本政府が表に出すことはないでしょうが、これによって、中国の原潜は日本の海上自衛隊に対して手も足もでないことが、前から認識されていたのですが、それがはっきりと白日の下にさらされたということです。

軍事的に、潜水艦のステルス性が非常に重要視されているため、中国国内では潜水艦の公海での浮上・国旗掲げの理由をめぐって、推測が飛び交いました。

小野寺五典・防衛相は15日、中国の潜水艦は「商級」と呼ばれる093型原子力潜水艦だとの分析結果を発表しました。中国海軍の新型の攻撃型原潜で、全長110メートル、水中での排水量は6100トン、最大速力は30ノット。また、射程の長い巡航ミサイルを搭載可能だといいます。そうして、これは戦略型原潜ではなく攻撃型原潜です。

093型原子力潜水艦
海外中国語メディアは、「商級」原潜の浮上・国旗掲げは、日本に対して主権を主張しようとした狙いがあるほか、日本海上自衛隊の対潜作戦でやむ得ず浮上し、身元を明かしたのではないかと分析しました。日本の琉球諸島は、米軍のアジア太平洋地域におけるいわゆる中国がいうところの、第1列島線に位置し日米の軍事重要拠点であり、両軍の対潜戦力が非常に強いといわれています。

今回のような出来事は、過去にもありました。それは、漢級原子力潜水艦領海侵犯事件と呼ばれるものです。2004年(平成16年)11月10日に発生した中国人民解放軍海軍の漢型原子力潜水艦が石垣島周辺海域を領海侵犯した事件です。日本政府は、海上自衛隊創設以来2度目となる海上警備行動を発令しました。

中国海軍の改良型漢級原子力潜水艦
日本は、潜水艦を完璧にマークすることには成功したものの、海上警備行動発令のタイミングが遅れ、潜航したまま30分も領海侵犯されながら、その間必要な対処が出来なかったことが問題になりました。

事前に、海上保安庁単独では対応できない水中航行する潜水艦と判明していたにもかかわらず、国土交通省と防衛庁との間の調整と政治決断に時間がかかり過ぎたためです。本件の経過を受け、潜水艦のように明らかに海上保安庁では対応不能な不審船事案に関しては、最初から海上自衛隊が対処するよう運用が改められました。

また、当初より漢級原子力潜水艦とわかっていても最終的な音紋特定に時間がかかり、正式に抗議したのは事件の数日後になったことから、情報確定の困難さ、有事体制発動遅延の可能性が浮き彫りになりました。

しかし、この時の反省から今回は、海上自衛隊が適切に対応したどころが、その対応ぶりがあまりに迅速だったため中国の潜水艦は、浮上して国旗を掲げて航行し、敗走したということです。中国側は、さぞ肝をつぶしたことでしょう。

日米に追いつけ追い越せとばかりに、装備の近代化に血道をあげる中国海軍ですが、近年は空母を就役させたり、"チャイニーズ・イージス"の異名を取る旅洋Ⅱ型駆逐艦を運用するなど、その陣容は近代海軍そのものようにもみえます。

052C型駆逐艦(ルヤンII型/旅洋II型)
ただし、まだまだ中国の海軍力は、日米のには10年以上遅れています。多くの艦艇が、その実は"どんがら"ともいわれています。どんがらとは、外見は立派でも中身はスカスカという意味です。水上艦艇同士の戦いでは日米の敵ではありません。

そこで中国は、「潜水艦戦力の拡充」に活路を求めているとされてきました。中国が尖閣上空を含む空域に防空識別圏を設定してみせたのも、"鉄クズ"と揶揄(やゆ)された空母を就役させてみせたのも、すべて潜水艦部隊を守るためです。

水上艦艇では日米に敵(かな)わない中国は、潜水艦を"決戦兵器"と考えているようです。その虎の子の潜水艦を守るためには、空と海上をわがものとしなければなりません。尖閣周辺で、領空、領海侵犯が頻発していますが、その下には、必ず潜水艦が潜んでいると考えて間違いありません。

中国海軍は、原子力潜水艦(原潜)と通常動力型潜水艦の2種類の潜水艦を70隻近く保有しています。ただし、なかには旧式で使い物にならない明(ミン)型などが多く含まれているとされ、近代艦と呼べるのは、半数程度というのが実情です。

対して、海自の保有する潜水艦総数は20隻(練習艦を除く)です。中国は現状、数にものを言わせた"飽和攻撃"ができる点が有利です。わが国が警戒するべき"質"を備えた中国の潜水艦は、ロシアから購入したキロ型と、これまたロシアの技術を利用した今回接続水域に入った商(シャン)型(原潜)くらいです。

潜水艦に関する情報を公開すると、その能力が判明してしまうことが多いので、公に報じられることは滅多にありません。しかし、その実中国海軍の潜水艦はしばしば日本領海を侵犯しています。尖閣周辺はもちろん、南沙諸島、房総沖の日本海溝周辺にも頻繁に出没しています。

海自および米軍は、こうした中国潜水艦の動向を逐一、捕捉しているといいます。中国の原潜はとにかく音がデカく、静粛(せいしゅく)性(静けさ)が命の潜水艦にあって、ドラを叩きながら水中を進むようなものです。

潜水艦の位置を特定するには、スクリューやエンジンの雑音を用います。海自は艦種ごとに異なる雑音のデータ(「音紋(おんもん)」という)を日夜収集しているといいます。

潜水艦からも音紋データは収集できますが、空には、P-3C哨戒機やSH- 60K哨戒ヘリが、敵潜水艦が海中に息を殺して潜もうと、空から音波を収集するソノブイを海中に投下、さらには磁気測定機を用いて即座に居場所を特定します。海自の対潜哨戒能力は世界一とされていますから、中国の潜水艦は生きた心地がしないでしょう。

SH- 60K哨戒ヘリ
自衛隊の潜水艦部隊は、2週間から、最大3か月程度の演習を繰り返します。演習とはいえ、重要な水上航路に潜み、絶えず情報収集を行っています。潜水艦の"ホットスポット"は、冷戦時代だとソ連太平洋艦隊の潜水艦や水上艦艇が通過する宗谷、津軽、対馬海峡。現在だと、中国対策で豊後水道や浦賀水道に目を光らせなければなりません。その他、作戦海域は東シナ海全域、台湾海峡、フィリピン沖のバシー海峡にまで及びます。


海自の潜水艦基地は横須賀(神奈川)と呉(広島)の2か所です。各国潜水艦が最も激しく蠢動(しゅんどう)しているのは、水深200メートル前後だと言われています。対潜戦は先手必勝、一撃必沈が大原則です。海中で息を潜め、敵艦の動きを察知し、先に魚雷を打ち込むことが唯一の勝機です。

中国のキロ型や商型は、海自の誇る「そうりゅう」型に肉薄する能力を持つとされますが、今回の接続水域に侵入した商型とみられる原潜が、旗を掲げて航行したということは、海自の前に白旗をあげたのと同じです。

これは中国への大きな牽制(けんせい)になったはずです。我々の知らない海中では、日中両国の"鉄鯨(てつげい)"が絶えず睨み合っているのです。

そうして、我が国の対潜哨戒能力や、潜水艦の能力は今のところ中国を大幅に上回ってはいますが、それでも中国側が必至に近代化に邁進していることからすれば、この優位性もいつまで保てるかわかりません。それに、上の地図をみても作戦領域はかなり広いです。やはり、予算を強化して、これから先も優位を保てるようにすべきでしょう。

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