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2018年7月3日火曜日

もはや国民はだまされない「増税で財政再建」という虚構―【私の論評】2014年前後の経済記事を読めば、誰が正しかったかは一目瞭然(゚д゚)!

もはや国民はだまされない「増税で財政再建」という虚構


 2017年度の一般会計税収が、当初見込みを約1兆円上回ると報じられている。だが、メディアの報道は「国債依存は変わらない」「財政再建は厳しい」といった論調に終始している。

 税収が増えた理由は単純で、経済成長したからだ。2017年度の名目国内総生産(GDP)成長率は2次速報値で1・7%だった。

 この名目成長率に対して、税収がどの程度伸びるかを税収弾性値という。財政当局は、この値を「1・1」と見積もっているが、実際の数字は「3」程度である。今回も税収は5%程度も伸びており、やはり財政当局の数字は過小だったことがわかってしまった。

 経済の伸び以上に税収が伸びるのはなぜか。一つは所得税が累進税率であるためだが、もう一つは、それまで赤字で法人税を払っていなかった企業が払うようになるからだ。

 これは、財務省で税務の執行を経験した人なら誰でも知っていることなのだが、税収弾性値の議論となると、かたくなに低めに設定しており、意図的だといわれても仕方ないだろう。

 税収弾性値を低めに見積もるのは、「経済成長しても財政再建はできないので増税が必要だ」とのメッセージだといえる。これに国民は納得しているのだろうか。マスコミをだませたとしても、そのマスコミを信じない人が多くなりつつある。いつまでこの虚構がもつだろうか。

 ほとんどのマスコミは財務省が取材のネタ元なので、はっきりいえば財務省の言いなりである。マスコミとの財務省の関係をみるうえで、今回の報道では別の問題も抱えている。

 16年度の税収は昨年7月5日に発表された。それが17年度の税収見込みは多くのマスコミで6月26日に報じられた。これは、財務省からのリークの可能性がある。

 筆者がその意図を邪推すると、「ちょっと早めに教えるけど、『財政再建はやはり必要だ』と書いてほしい」ということではないだろうか。

 本コラムのように、財政状況について中央銀行を含む統合政府のネット債務残高対GDP比でみるという世界標準のまともな報道は、今の日本のマスコミではほとんどない。

 統合政府のネット債務残高は実質的にほぼゼロであるが、一部の政府関係者は「日銀の日銀券などは債務なので、ネット債務額は450兆円程度あり、筆者の意見が間違っている」と主張しているようだ。

図表、写真はブログ管理人挿入 以下同じ

 日銀券などは確かに形式的には債務である。しかし、本来無利息、無償還のものであるので、経済的にみて債務にカウントする必要はない。ノーベル経済学賞を受賞したスティグリッツ教授は「日銀の国債保有分は、政府の国債が無効化されている」と表現している。

 そういえば、このスティグリッツ教授の意見もマスコミはほとんど取り上げない。財政当局に対して軽減税率導入などをめぐる恩義や思惑があるのかと勘ぐられることのないように、国民に正しい情報を伝えてほしい。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】2014年前後の経済記事を読めば、誰の説が正しかったかは一目瞭然(゚д゚)!

ブログ冒頭の高橋洋一氏の税収に関する話を整理します。昨年度の国の税収は当初の見込みから1兆円ほど上振れし、58兆円台後半となったということですから、一昨年度の税収が55兆円台だったことからすれば、前年比+5%以上の増加ということになります。

一方で、昨年度の名目経済成長率は+1.7%でしたから、政府が1強程度としている税収弾性値は、昨年度は3を超えたことになります。

昨年度の名目経済成長率が政府見通し(+2.0%)を下振れたのに、税収が見通しを上振れたのには、こうした背景があります。

税収弾性値に関しては、以前もこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【日本の解き方】経済成長なくして財政再建なし 歳出カットのみ主張なら財務省の術中―【私の論評】財務省・内閣府の嘘吐き官僚には、徹底した報復人事を行い、政治主導を達成せよ(゚д゚)!
この記事は2015年5月9日のものです。この記事から税収弾性値に関わる部分のみ以下に引用します。
上の記事で、税収弾性値については非常に重要です。これを良く理解していれば、昨年4月の8%増税など全く必要なく、百害あって一利なしであったということが良く理解できたと思います。 
まずは、税収=名目GDP✕税率✕税収弾性値ということを念頭においていただき、時を金融緩和を実施しはじめた2013年に戻して、考えてみます。 
この時点で平成14年4月から増税など決定せずに、増税をせずに現在まで金融緩和のみを続けていれば、2年連続、毎年名目5%程度の経済成長は十分あり得ました。ここで仮に税収弾性値を3(倍)とすれば毎年歳入の15%、6〜7兆円の増収が見込まれ、二年で消費税5%相当の約12兆円となり今頃増税自体不要になっていたはずです。 
下のグラフ2012年のG7諸国の名目GDP成長率の平均値です。ここからデフレ日本を除いた6カ国平均値は3.3%です。日本もデフレを脱却すれば、当時の△0.6%から3.3%程度の名目成長率は十分可能であったはずです。 
この名目GDP平均値と、税収弾性値として3を用いると、上記で掲載したような名目5%成長前提ほどではないですが、それでも毎年歳入の約10%、4兆円で、二年で8兆円程度の増収が見込めたはずです。これでも、昨年4月の増税など全く必要がありませんでした。

各国の名目GDP成長率 (1997-2012)
出所:IMF WEO Apr 2013 縦軸:パーセント

税収弾性率を低く見積もれば、当然このようなことは考えられないということになります。しかし、現実にはブログ冒頭の高橋洋一氏景気の回復局面では税収弾性値は3~4程度になって、景気が巡航速度に達するにつれて低下し、1・1程度に近くなるとしているように、昨年や今年あたり増税さえしていなければ、少なくとも3くらいにはなっていたはずです。
しかし、財務省も内閣府も弾性値を1.1で計算して、それをもとにして、増税やむなしとし、大増税キャンペーンを繰り返し、政治家からマスコミ、識者まで巻き込んでとうとう、一昨年には昨年4月の増税が決められ、そうして本当に増税され、多くの人々が消費税増税の影響は軽微などとしていたにもかかわらず、昨年はマイナス成長となりました。
財務省は、2014年4月の消費税増税のときも、税収弾性値によるトリックにより、増税しなかった場合の税収を低く見積もり、消費税増税の正当化をはかるということをしていました。

今回も、全く同じような論拠で、10%増税の正当化をしようとしているとしか思えません。

しかし、この税収弾性値によるトリックを論拠の一つとして、実行された8%増税はすでに財務省によって、実行され大失敗したことが明らかになったものです。

野口悠紀雄氏

「消費増税の影響は軽微」と言い募ってきた財務省や御用エコノミストや、野口悠紀雄氏のように「1ドル=120円で日本経済は危険水準」と断言した経済学者は無責任といわざるをえないです。いっさい謝罪も釈明もせず、執筆や講演を続けること自体、私には全く理解不能です。

2014年前後のいわゆる識者という人たちの経済記事など今でも読むことができるものがかなりあります。誰の説が正しかったか、間違っていたか、一目瞭然です。

書籍を購入するのは、経済的負担が多いと思いますし、そもそもトンデモ経済論の書籍など誰も購入したくはないと思いますので、是非とも、グーグルなどで、人名で検索して読むことをおすすめします。トンデモ経済論に関しては、まともに読めば時間の無駄でもありますので、立ち読みで結論部分を読むか、流し読みで十分だと思います。

このような事実を目の前にして、まだ税収弾性値の罠にひっかかる、マスコミは愚かですし、その罠にのりかかって再びトンデモ経済論を語る識者は、何らかの悪意があるとしか思えません。

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2018年6月13日水曜日

明確な定義なく「煽る」だけ…非論理的な財政破綻論者 不要な緊縮招く危険な存在―【私の論評】不況時に増税をする等の緊縮財政は「狂気の沙汰」ということだけは覚えておこう(゚д゚)!

明確な定義なく「煽る」だけ…非論理的な財政破綻論者 不要な緊縮招く危険な存在

財政破綻を煽る記事 写真はブログ管理人挿入 以下同じ


 「日本が財政破綻する」「国債が暴落する」と煽(あお)る論者はいまだに少なくない。

 そもそも財政破綻などを煽る人は、なぜかその定義を明らかにしない。これまでの筆者の体験も次のようなものだった。

 その1。私「国債暴落の定義を言ってください。何カ月以内で何%とか。暴落はあるのですか」

 先方「暴落なき暴落が『あります』」(ありますを強調)

 私「暴落はないのですか」

 先方「暴落『なき』暴落があります」(なきを強調)

 その2。私「ハイパーインフレの定義は何ですか。ケーガン(経済学者)のもの? 国際会計基準?」

 先方「(一切答えず)ハイパーインフレになっていいんですか。日銀引受はハイパーインフレになるのです」

 私「日銀引受は毎年やっていますよ。私はその最高記録保持者ですが」

 先方「…」

 かつて役所内で議論した際にも、「財政破綻の定義は難しい」と言われ、定義することも避けられた。

 不良債権処理の専門書を書いたこともある筆者にとって、民間の破綻認定は簡単だった。債務の支払い能力がないというためには、基本的には貸借対照表(B/S)で債務超過を示せばいいからだ。

 政府の場合、徴税権(見えない資産)があるから債務超過でも即破綻ではないが、資産を考慮したネット債務残高がポイントだ。通貨発行権は統合政府のB/Sに出てくるので、ネット債務残高を見ればいい。ちなみにインフレ目標は、通貨発行権の乱用予防の役割もある。

 ネット債務残高というものの、その国の経済力との関係が問題になる。となれば、ネット債務残高対国内総生産(GDP)比が将来的に発散(ブログ管理人注:数列の極限値や積分の値などが有限値に定まらない、つまり無限大や不定になること。数学に詳しくない人は無限大になったとの理解で十分です)したら、破綻と言っていいだろう。

 こうした計量的に明確な定義もなく財政破綻を唱える人は、客観的に説明できずに煽るだけになる。日本の今の財政状況とは関係なく、実際に財政破綻した国で行政サービスが低下したことなど、国民生活面での不都合を強調しがちだ。または、B/Sの片方の借金だけを強調して「借金は避けるべきだ」「将来世代の負担になる」というが、見合い(ブログ管理人注:対応していること、釣り合っていること)の資産があると、こうした論法は馬脚をあらわす。

 正確に定義され計算された基礎的財政収支(プライマリーバランス)の動向は、ネット債務残高対GDP比の発散条件と密接に関わっている。通常、プライマリーバランスが赤字であっても改善傾向にあれば、ネット債務残高対GDP比はめったなことでは発散しない。プライマリーバランスが均衡化するに越したことはないが、改善さえすれば「財政破綻」を過度に心配する必要はない。

 財政破綻の定義を明確にせずに財政再建を語るのは、不必要な緊縮財政(増税、歳出カット)を招き、意図せざる失業者を発生させるので、経済にとって危険である。

 今の多くのマスコミ、学者や財界は財務省に洗脳され、財政再建を盲目的に追求し、緊縮財政そのものを目的化している。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】不況時に増税をする等の緊縮財政は「狂気の沙汰」ということだけは覚えておこう(゚д゚)!

何でも緊縮すれば良いと思い込む「緊縮脳」は始末に負えない

財政破綻論者のほとんどは当然のことながら、緊縮策の支持者です。

不況時に緊縮策をとれば景気はさらに冷え込み、その結果税収は落ち、財政状況はますます悪化する。このような事は経済学を学んだことがない人でも直感としてすぐにわかるはずだと言いたいところですが、日本のみならず、世界的に見ても不況時に緊縮こそが答えだと信じてしまう人のほうがむしろ多数派かもしれません。

さらには経済学を学んだことのある人どころか、権威あるとされる経済学者の中にも、依然としてこのような主張をする人までいます。古今東西の歴史を紐解けば緊縮策の結果として手痛い思いをした経験を持つ国は歴史的に数多くあり、その教訓を嫌というほど学んでいるはずなのに、なぜ緊縮策という「ゾンビ経済学」はこのように蘇ってくるのでしょうか。

ジョン・クギンのオーディオブック"ゾンビ経済"の表紙

日本でも、古くは江戸時代に徳川吉宗の緊縮策などを皮切りに、様々な緊縮策が何度も実行されましたが、長続きはしませんでした。さらに、戦前には日本が世界で一番はやく金融恐慌(日本では昭和恐慌)から脱却したのは、無論緊縮策ではなく、高橋是清による積極財政と金融緩和によるものでした。

こうした貴重な体験をした日本人が、過去の歴史を忘れて、緊縮策になびく人が多いというのは、全く理解に苦しむところです。しかし、世界恐慌の原因がデフレであったことが、わかったのはなんと1990年代の経済研究によるということを考えると無理もないのかもしれません。

高橋是清

それだけ、緊縮は多くの人々に支持される経済政策なのです。経済が悪い時に緊縮策が機能しないのははっきりと確かめられた事実です。緊縮策は倫理的な問題を別にしても、経済学的に不合理で誤った政策です。

経済的に正しいのは、不況の時は、財政政策と金融政策を二つとも発動せよ、です。

これはマクロ経済学を学んだ者にとっては当たり前の話です。通常の教科書モデルでも、変動相場制の国ではマンデル=フレミング効果が働いて、金融緩和の後ろ盾のない財政政策はあまり効果がありません。かといって、金融緩和だけでは、痛みの出ている箇所への集中投下ができないので即効性がなく、また大きな需給ギャップを埋めるには財政政策が不可欠になってきます。

さらに流動性の罠の下での財政出動は、クラウディングアウト(民間投資圧迫)も“後世へのツケ”も残すことはありません。

ノーベル賞受賞者でもあるアメリカの経済学者ジョセフ・スティグリッツも、不況の時の緊縮策は「自殺」への処方箋だとしています。同じくノーベル賞受賞者であるクルーグマンも、はっきり「狂気の沙汰」と言っています。過去おいては、欧州では緊縮財政で失敗しています。

日本も、安倍政権が誕生して、積極財政に踏み切るかとみられましたが、14年4月から、増税という緊縮策に踏み切ってしまいました。そのため、個人消費が低迷してしまい、今でもデフレに一歩手前の状況にあります。

ただし、金融緩和は政権発足当時が継続して行ってきたので、雇用は過去にない程良い状況になっています。

2012年に民主・自民・公明の三党合意で消費税増税法案が成立しました。そうして、14年4月から消費税が8%に増税されました。19年10月には、10%増税が予定されています。増税しないと日本が駄目になるというのですが、今の日本で緊縮財政を強行するのはデフレを長引かせるだけであり、まさに「狂気の沙汰」です。


緊縮策とは個人の行為でいえば、節約ですが、これが多くの人々の琴線に触れるのかもしれません。だれでも、贅沢三昧することよりは、節約のほうが、良いと考えるものですが、それを政府の支出にまで拡大して解釈し、緊縮こそ善であると思い込むのは完璧な「狂気沙汰」です。これは、社会の常識として多くの人々に認識していただきたいです。

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2016年5月2日月曜日

大地震を利用する増税派の悪質な手口を忘れるな 田中秀臣―【私の論評】課税の平準化理論すら理解できない輩には、復興予算の議論をさせるな(゚д゚)!


自民党の全国政調会長会議であいさつする谷垣幹事長。
隣は稲田政調会長=4月18日午後、東京・永田町の党本部
「熊本地震」による深刻な被害が次第に明らかになっている。しかも強い余震がこの原稿を書いている時点でも続いていて、現地の方々の精神的な不安と肉体的な疲労は募るばかりだろう。まだ救援活動も継続している中で、熊本地震に関わる経済的な側面について論説を書くことを早急すぎると思われる方々もいるかもしれない。(総合オピニオンサイト iRONNA)

 東日本大震災の翌々日には、菅直人首相(当時)と自民党の谷垣総裁(当時)との間で、災害対策としての「臨時増税」が議論されている。この協議自体はのちに復興特別税として結実し、またこのときの与野党協議を基礎にして消費増税路線が構築されていった。増税派のやり口は急速で、また時には驚くほど露骨かつ大胆に進められる。

 2011年当時、このような復興目的を利用して増税路線をまい進する政府と財務省、またそれを支援する経済学者・エコノミスト、マスコミに対して、私は経済評論家の上念司氏との共著で『震災恐慌』(宝島社)<後に『「復興増税」亡国論』として再刊>を出版するなどして猛烈な批判を展開した。

 経済学の常識からすれば、大規模災害は、復興目的の国債を発行して、なるべく災害に遭遇している現時点の国民に負担を集中的に課すのではなく、きわめて長時間(場合によれば一世紀でもいい)をかけてゆっくりと負担するのが望ましいとされている。もし災害に直面している国民にも税負担を課してしまうと、経済的な困難がさらに増してしまう。また被災地を救援する多くの国民にも経済的な余裕を失わせてしまうことで、復興事業自体が滞ってしまうだろう。

 だが、過去の阪神・淡路大震災のときもまだ復興の道半ばで、消費税増税が行われ、日本は経済危機に直面してしまった。もちろん経済的に弱まっていた阪神・淡路地域の方々の経済的困難は他に比べても深刻なものになってしまった。この教訓があるにもかかわらず、2011年当時の与野党の増税派は、大地震を口実に消費増税を推し進めたのである。

 2011年から12年にかけて復興税に反対するために、言論の場だけではなく、きわめて少数ではあったが、与野党の議員の中で復興税に反対する勢力が形成され、積極的に反対活動が行われた。その中で、自民党の取りまとめ役として活躍したのが、安倍首相であった。この復興税に反対する議員連盟の中で、いわゆるリフレ派(デフレ不況を金融政策の転換で克服しようとする経済学者・エコノミスト集団)との接点が生まれた。それがのちのアベノミクスに至る大きな道になった、と私は推測している。

 他方で、不幸なことに、復興特別税の法案は通過し、また消費税増税法案も決まってしまった。この消費増税がいまも日本経済の不調の主因であることは、本連載でも繰り返し強調してきたところである。

 では、今回の熊本地震に際しての増税派的な動きはどうだろうか?

 例えば自民党総務会メンバーは、4月19日に会合をもち、報道によれば「財政規律」や「(景気対策のための)財源のための増税」を主張する議員がいたとされている。景気対策のためには財源が必要であるとすることはいかにももっともらしいが、現時点で経済的な困難に直面している国民を救うために、一方では景気対策をし、一方では増税でさらに負担を増やす、という意味が不明の「悪しき財源論」は、日本の経済政策の中でも最もトンデモな議論といっていい。しかも前者の景気対策は短期的に終わってしまうが、後者の増税は恒久化してしまう。まさに国民の不幸につけこんだ非情なやり口である。

 また稲田朋美自民党政調会長は、「固定概念にとらわれることなく議論する必要がある」として消費税のまずは1%の引き上げを志向する発言も伝えられている。もし「固定観念」にとらわれないとしたら、いままでの大災害や景気対策での「財源」としての増税路線を転換することが、まさに「固定観念」を打破するものではないだろうか?

 他方で、与党の中では、景気の悪化や今回の熊本地震を考慮して、消費増税が困難になったという見方も強い。ただ安倍首相自身は、繰り返し消費税増税のスケジュールに変更はないことを今でも強調している。もしこれを額面通りにとれば、もちろん(地震災害と景気悪化の前では)最悪の選択となる。

 ただ消費増税をするか否かの政治的判断はまだ最終的なものではない、というのが大方の見方である。仮に現段階で、首相が消費増税の「先送り」や「凍結」を打ち出してしまうと、野党勢力はいまも公言しているが、このことを安倍政権の「口約違反」や政策のミスとして追及していくだろう。場合によっては内閣不信任案の口実とさえなりかねない。野党は(いろいろな能書きがあるようだが)表向きは消費増税に反対する態度を示しているが、政治的にみれば首相の消費増税凍結を阻止しているともいえる。参議院選挙を控える中で、首相はぎりぎりまで消費税に関する態度決定を回避することになろう。

 また首相が玉虫色な政策決定をする可能性はあるだろう。例えば消費増税と同時に、一時的な給付金や大規模な公共事業を行う政策である。しかしこのような給付金&公共事業の組み合わせは、前回の5%から8%への税率引き上げ時にも行われたが、結局は金額も過小になり、また効果も持続的なものではなかった。その証拠に、今日の景気失速の主因は2014年4月の増税開始からまったく実質消費が回復しないことである。いまは景気対策をする一方で、他方で増税するという「悪しき財源論」や「財政規律」に依存する政策から脱することが必要なのである。後者でいえば、むしろいまこそ「財政規律」を破壊すべきなのだ。国の財政はなんであるのか? それは我々国民の生活を豊かにするためだ。現時点で経済的な困難に直面している国民に対して財政的救済を行わない政府などその存在意義を疑われてしかるべきだろう。それはもちろん被災された方々の苦境を救うために必要な絶対条件ともいえるものだ。

 具体的な政策の大枠は前回のコラム「消費減税には100兆円「余剰資金」を動員するしかない!」 で書いた通りである。消費減税を中心とする財政政策がベストであり、それをサポートする金融緩和政策が必要条件になる。金融政策の決定会合は、今週27日(水)28日(木)に迫っている。例えば、長期国債の買い取りペースを拡大し、政府が震災対策として発行する新規国債を吸収して予算をバックアップするのもいいだろう。また新規発行された「財投債」、既存の地方債や社債、さらに有力候補としては外債の買い取りによって、日本銀行のバランスシートの規模を拡大させ、緩和基調の経済を生み出していく。このような金融緩和政策を前提にして、政府は「悪しき財源論」「財政規律」論を封じこめ、より積極的な財政政策を打ち出すことが、何度も繰り返すが必要であろう。

 われわれ国民ができることは、災害を利用する増税勢力をつねに監視し、警戒を強めていくことである。彼らは甘くはない。

■田中秀臣 上武大学ビジネス情報学部教授、経済学者。1961年生まれ。早稲田大学大学院経済学研究科博士後期課程単位取得退学。専門は日本経済思想史、日本経済論。主な著書に『経済論戦の読み方』(講談社現代新書)『デフレ不況 日本銀行の大罪』(朝日新聞出版)など多数。近著に『ご当地アイドルの経済学』(イースト新書)。

(総合オピニオンサイト iRONNA)

【私の論評】課税の平準化理論すら理解できない輩には、復興予算の議論をさせるな(゚д゚)!

地震などの、大規模自然災害のときに、その復興を増税で賄うなどは、古今東西どの国も実行したことはありません。ただし、これには一つだけ例外があります。それは、上の記事にも掲載されている復興税です。

日本は、失敗することがはっきりしている、政策を実行して、実際に大失敗しました。これは、現代史に残る、大きな大失敗です。そうして、この失敗に懲りることもなくまだ復興が十分とはいえない、平成14年4月からは、8%増税を実施してしまいました。

この増税は、未だデフレの影響からも抜けきっていないし、東日本大震災の復興途上にあった、日本において行われました。これによって、日本は失敗に懲りることもなく、さらに大失敗を繰り返したわけです。

さて、ブログ冒頭の田中秀臣氏の記事、全く正しくこれを特段論評するなどという必要もないです。

大地震を利用する増税派の悪質な手口に関しては、このブログでも、今年だけでも二回掲載しています。

一つ目は、元記事は高橋洋一によるものです。
増税勢力はこうして東日本大震災を「利用」した~あの非情なやり方を忘れてはいけない―【私の論評】財務省、政治家、メディアの総力を結集した悪辣ショック・ドクトリンに幻惑されるな(゚д゚)!
被災地にかがみこむ若い女性
この記事は、今年の3月14日に掲載したものです。その時は、熊本地震など発生しておらず、一月後に熊本であのような大地震がおこるとは予想だにしていませんでした。

この記事も掲載したように、経済学には課税の平準化理論というものがあり、例えば百年の一度の災害であれば、100年債を発行して、毎年100分の一ずつ負担するのが正しい政策です。これは、何も私の思いつきなどで語っているのではなく、標準的なまともなマクロ経済学のテキストには普通に掲載されている理論です。

無論、標準的なテキストに掲載されるのですから、長年にわたって研究され実証された理論です。古今東西において、この理論に関して、否定する人などいません。

否定するような人は、経済の本質がわかっていない人だけです。課税の平準化理論など、とくに経済学の理論として学ばなくても、常識のある人なら誰にでもすぐにりかいできます。大震災などの大規模な災害の復興に、震災の復興を賄うのに、増税などあてれば、震災が起きた時の世代が、震災による停滞に見舞われるなかで、将来世代が使うインフラまで整備しなければならなくなります。

これはとんでもない不公平です。であれば、その災害が100年に一度起きるような災害であれば、100年債で応分に以外に見舞われた世代と、その後将来世代も応分に負担するというのが、当たり前のことです。こんなことは、小学生でも理解できると思います。

これを理解できないお粗末な政治家がいます。さらには、これを本当は理解しているのでしょうが、省益などを優先する財務省などが、経済理論など無視して、災害を利用して、増税キャンペーンを実施したというのが実態でしょう。

この記事では、大震災・大津波・原発事故を利用して、増税を実施する悪辣なこのやり方を「悪辣なショック・ドクトリン」と形容しました。

ショック・ドクトリンを提唱したジャーナリストのナオミ・クライン
ショック・ドクトリンとは、「大惨事につけ込んで実施される過激な市場原理主義改革(The Rise of Disaster Capitalism)」という意味で、カナダのジャーナリスト、ナオミ・クライン(Naomi Klein)氏が昨年著した本のタイトルでもあります。ただし、ナオミ・クラインは、市場原理主義を主張したシカゴ学派 (経済学) のミルトン・フリードマンを批判していますが、実際にはフリードマンの考えは悪辣な政治家などが、自分たちのとんでもない政策を正当化するために、フリードマンの理論を悪用したとみるべぎです。

しかし、震災などの復興につけ込んで、復興税などを導入し、さらにその後にも増税するという二段構えの悪辣な手口は、まさにショック・ドクトリンと形容しても良いというか、悪辣さらにおいてはさらに上手と言っても良いやり口でした。だからこそ、私は復興税を「悪辣なショック・ドクトリン」と形容したのです。

もう一つは、熊本の大地震の後まもなくの、今年の4月22日に掲載したものです。
【お金は知っている】菅直人政権時の無為無策を繰り返してはいけない 増税は論外、公共投資を粛々と―【私の論評】熊本震災復興は復興税ではなく国債発行を!東日本震災復興の過ちを繰り返すな(゚д゚)!
 
この記事の元記事は、産経新聞の田村秀男氏によるもので、上のグラフも掲載されていて、東日本大震災と阪神淡路大震災を比較していました。このグラフをみても、わかるように、阪神淡路大震災のときには、公共投資が速やかに行われ、GDPの回復も速やかであったことがわかります。このときの復興は無論のこと、復興税ではなく、国債によって賄われています。これに比較して、復興税により賄われた、東日本大震災では、公共投資が速やかには行われておらず、GDPも上昇していないことがわかります。

これは、為政者の能力がどうのこうのというより、やはり、復興税が大失敗であったことを物語っています。

そうして、この記事の私の論評は、以下のように締めくくりました。
以上のようなことから、今回の熊本震災による復興は復興税ではなく国債によるべきであり、東日本震災復興の過ちを繰り返すべきではありません。 
今後の政治課題は、10%増税は見送りは当然のこととして、熊本震災復興そうして、未だ停滞している東日本大震災復興にも、国債を用いて十分な財源を確保して、一日も早く復興を成し遂げることです。
この結論、ブログ冒頭の田中秀臣氏の記事を読んで、ますます確信をもてようになりました。

熊本の震災復興に復興税を用いたり、それだけではなくさらに来年4月に10%増税してしまえば、日本経済はまたまた落ち込み、とんでもないことになります。

そんなバカ真似は断じてさせるべきではありません。復興は、国債ではなく、復興税でと考えるような政治家は、そもそも物事の基本的な仕組みがわかっておらず、本来は政治家などになべきではありませんでした。そうはいっても、選挙で候補者から選ばれているわけですから、すぐに政治家をくびにするというわけにもいきません。

しかし、経済に関して、課税の平準化理論すら理解できない政治家には、復興予算の議論をさせるべきではありません。彼らの存在が、足を引っ張り、議論を混乱させ、いたずらに危機を煽るだけになります。

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2016年4月22日金曜日

【お金は知っている】菅直人政権時の無為無策を繰り返してはいけない 増税は論外、公共投資を粛々と―【私の論評】熊本震災復興は復興税ではなく国債発行を!東日本震災復興の過ちを繰り返すな(゚д゚)!

【お金は知っている】菅直人政権時の無為無策を繰り返してはいけない 増税は論外、公共投資を粛々と

九州の熊本・阿蘇地方の地下奥深くから入った亀裂は四国、本州へと伸びる兆候を示している。この美しい国土は荒々しい地球の営みの賜物(たまもの)である現実を改めて知らされた。

であれば、なおさらのこと、わが国では人々の安全と利便を確保するインフラの修復と再整備が世界でも抜きんでて重要だ。その役割は主として政府が受け持つ。

グラフは1995年1月の阪神淡路大震災と2011年3月の東日本大震災以降の公共投資と国内総生産(GDP)の前年比実質増減率を比較しながら推移を追っている。これをみると、当時の政権がどのくらい迅速に震災後の復旧に当たったか、成果はどうか、その結果、景気はどうなったかの見当がつく。

阪神淡路大震災当時は自民、社会、新党さきがけの連立による村山富市(社会党出身)政権で、震災当初の対応は大きくもたついた。しかし、震災の3カ月以降はインフラ復興・復旧のための公共投資が着々と進められるようになった。公共投資による経済への波及効果で景気のほうは下支えされていく。

対照的なのが東日本大震災時である。民主党の菅直人政権は4月に有識者による「復興構想会議」という首相の諮問機関を立ち上げたが、主要議題は復興のための財源をどうするかだ。同会議は財務官僚に牛耳られ、増税が真っ先に話し合われた。
伊藤元重(左)と伊藤隆敏(右)
 これに合わせて、財務省の受けの良い東大の伊藤元重、伊藤隆敏両教授が復興財源のための消費税増税を提唱し、日経新聞の「経済教室」欄を通じて主だった大学教授から賛同の署名を集めた。民主党政権は復興財源を所得税・法人税増税、そして消費税増税構想を12年の3党合意へと結実させていく。

肝心の公共投資はどうか。遅々として進まず、わずかに伸びたのは翌年になってからだが、それも一時的だった。「福島原発事故処理に手間取った」とか、「急激な復旧工事のために人手不足になった」などの言い訳はあるだろうが、データが示すのは公共投資の驚くべき停滞ぶりである。戦後未曾有の大災厄に対し政権の無為無策はおろか、政権が大震災後の大災害を引き起こしたと批判されても仕方あるまい。


もともと「コンクリートから人へ」という触れ込みで政権を奪取した民主党は公共投資をネガティブにとらえ、その削減を財務官僚に丸投げしていた。財務官僚は渡りに船とばかり、菅政権、続いて野田佳彦政権を洗脳し、増税と緊縮路線に乗せた。経済が停滞するのは当たり前で、実質ゼロ成長が続いていく。

今回の熊本大震災では、以上の失敗の教訓を安倍晋三政権がどう生かすかである。危機対応はさすがに素早いし、自衛隊の出動、米軍の協力とぬかりない。

財務官僚はどうか。非常識にも、復興財源のためにも予定通り消費税増税せよという世論誘導を仕掛けるのだろうか。今回はさすがに御用学者や御用メディアは沈黙しているのだが。 (産経新聞特別記者・田村秀男)

【私の論評】熊本震災復興は復興税ではなく国債発行を!東日本震災復興の過ちを繰り返すな(゚д゚)!

熊本震災の惨状
震災からの復興を復興税で賄うなど、本当に言語道断のとんでもないやり方です。このようなことをした国など古今東西を問わず、あのときの日本以外には存在しません。これは、はっきり言い切ります。

震災からの復興には通常は、建設国債などの国債で賄われるのが普通です。建設国債とは、財政法第4条において「公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる」と規定されており、この規定に基づいて、建設国債が発行できるとしています。四条国債という別名は財政法第4条を根拠にしていることからです。

建設国債が財政法で発行が可能なのは、建設される公共施設は後世にも残って国民に利用できるためです。建設国債は、後世に残らない事務経費や人件費に充てることはできません。日本では建設国債は1966年から発行されています。2000年8月3日、森喜朗内閣下で、IT関連費等も建設国債で調達できるように財政法4条を見直す方針が決められました。

なぜ、復興のための財源には、復興税などの税金ではなくて、建設国債などの国債が用いられるかといえば、それは世代間の負担の格差を平準化するためです。復興税などの税で震災などの復興を賄うとすれば、震災など受けた当の世代にばかり負担がしわ寄せされるからです。

こんなことは、経済学を学んだ人なら、すぐ間違いとわかる政策です。上で説明したように、課税の平準化理論というものがあり、例えば百年の一度の災害であれば、100年債を発行して、毎年100分の一ずつ負担するのが正しい政策です。

復興税で復興を賄うとすれば、後の世代のために、震災などで大きな被害を受けた現在の世代だけが、復興のための税を負担するということになり、その負担はあまりに多すぎます。だからこそ、震災などの自然災害などの大規模な災害のときには、建設国債などの国債で賄うのが常識です。

こんなことは、別にマクロ経済学など学んでいなくても、常識で理解できる範囲です。にもかかわらず、結局上の記事のように、復興財源は、復興税と消費税で賄うなどというとんでもないことが、企図され、実行に移されたのです。

復興税の概要はどのようなものだったか、以下にチャートを掲載します。


デフレの真っ最中で、しかも大規模な震災と津波による被害に見舞われているときに、こんな愚かなことが実行され、その後8%増税も実行されたわけですから、いつまでたっても、デフレからなかなか脱却できないのは、当たり前のことです。

田村秀男氏によるブログ冒頭の記事の内容のような記事は、以前にもこのブログに掲載しました。その時は、まだ熊本地震が発生していないときでした。その記事のリンクを以下に掲載します。
増税勢力はこうして東日本大震災を「利用」した~あの非情なやり方を忘れてはいけない―【私の論評】財務省、政治家、メディアの総力を結集した悪辣ショック・ドクトリンに幻惑されるな(゚д゚)!
東日本震災の被災地にかがみこむ若い女性
詳細はこの記事をご覧いただくものとして、この記事では、復興税制を推進したり、賛同したりした愚かな経済学者どものリスも掲載しました。この経済学者どもは、日本では主流といわれる、東京大学を頂点とした、日本の経済学主流派のグループです。

本当に情けないです。財務省主導の増税キンペーンにすっかりのせられて、復興税なる奇妙奇天烈、摩訶不思議な税を導入し、それだけにあきたらず、8%増税、10%増税まで提唱したというのですから、もう、世も末です。

財務省の頼みとあらば、まともな経済学説を曲げてでも、ありえないような経済政策を導入する片棒をかつぐというのですから、まともではないです。

この記事でも、掲載してありましたが、東日本大震災の復興が満足に進んでいません。その上、今度は熊本地震です。


多くの民間人や、芸能人や、一般の人からも、熊本復興のために様々な考えが表明されています。しかし、こういう善意によるせっかくの試みも、政府の復興への対応が、まずければ全体として停滞してしまうことになります。

財務省や、上記の頭のいかれた経済学者どは、熊本地震の復興にも、復興税の導入とか、10%増税などといいかねません。このような稚拙な言論に騙されるべきではありません。

それは、全くの間違いです。8%増税でも甚大な被害があったにもかかわらず、さらなる熊本のための復興税導入とか、10%増税どしてしまえば、その結果は破滅的なことになります。

熊本の復興は、そんなことをさせるわけにはいきません。阪神淡路大震災以上の復興政策を実行するべきです。そのためには、復興には建設国債などの国債を用いて対処すべきです。償還期間は最低でも数十年にすべきです。

これ以上国債発行などというと、将来の世代の負担に押し付けることになるという、これまた、財務省の洗脳された人々が、財政破綻するなどとのたまったり、信じこんだりするでしょうが、それは全くの間違いであることも、このブログで掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
いまだはびこる国債暴落説と財務省の説明を妄信する人たち ―【私の論評】財政破綻などしないのは常識で理解できるのに、それができない馬鹿真面目共が多すぎ(゚д゚)!
詳細はこの記事をご覧いただくものとして、以下に国債が暴落する可能性はかなり低いことを示した部分のみ掲載します。
   日本の現状をいえば、グロス (総合計)の債務残高(大部分が国債)は1100兆円程度であるが、ネット(正味)でみれば500兆円で、GDP比で100%程度。さらに、日銀も含めた連結ベース(経済学でいえば統合政府ベース)の債務は200兆円、GDP比では40%程度である。この程度であれば、先進各国と比較しても、それほど悪い数字ではない。 
 ちなみに米国ではネットでみてGDP比80%程度、統合政府ベースでみれば65%程度。英国ではネットで見てGDP比80%程度、統合政府ベースで見て60%程度である。 
 こうした基礎データが頭に入っていないとしたら、高度な議論をしているようにみえても上滑りになってしまう。
 財政破綻の文献をみれば、国債の投資家が国内か海外かは、破綻するかどうかと基本的には無関係である。日本国債の外国人保有比率が上昇したことで、金利の振れ幅が大きいとの指摘も破綻問題とは関係がない。国債残高をネットや統合政府でみれば、たいした数字ではないので、暴落の可能性はさほど高くないだろう。
日本の借金は、このようにさほどでもありません。日本の国債は、暴落するどころか、金利はゼロに限りなく近く、場合によってはマイナス金利になることもあります。このような状況では、国債が暴落するなどのことは考えられず、復興に国債をあてたとしても、財政破たんするとか、将来の世代に過大なつけを回すなどの考えは、当てはまりません。

以上のようなことから、今回の熊本震災による復興は復興税ではなく国債によるべきであり、東日本震災復興の過ちを繰り返すべきではありません。

今後の政治課題は、10%増税は見送りは当然のこととして、熊本震災復興そうして、未だ停滞している東日本大震災復興にも、国債を用いて十分な財源を確保して、一日も早く復興を成し遂げることです。

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2016年2月24日水曜日

アベノミクスついに沈没「消費税8%」がすべての間違いだった―【私の論評】すでに、財務省による緊縮の病がぶり返している!増税すれば安倍内閣には致命傷(゚д゚)!

アベノミクスついに沈没「消費税8%」がすべての間違いだった

「どうする?」「どうしよう……」

失われた20兆円
'12年の年末、アベノミクスが始まった当初、日本のGDP(国内総生産)は順調な成長を続けていた。アベノミクス開始時のGDPが約517兆円。これが、'14年3月には実に約535兆円にも達した。

ところが、'14年4月の8%の消費税率導入を境に状況が一変した。'14年度第2四半期までに、GDPが一気に約14兆円も急落してしまったのだ。

その後もGDPは伸び悩み、直近の'15年7-9月期の数字は約530兆円。私の試算では、仮に消費増税さえしていなければ、GDPはその後も右肩上がりの成長を続け、今頃は約550兆円まで達していただろう。

差額は20兆円。これだけの金額が、増税によって失われたのだ。

この20兆円分の伸びがあれば、物価も上昇し、賃金も消費も好調という、良好な循環が生まれ、昨年中には「デフレ脱却宣言」ができただろう。日経平均株価も2万円台、為替も1ドル=120円の水準は保てたはずだ。

そもそも、GDPの6割を個人消費が占めている以上、増税による消費減退でGDPが下がるのはわかりきっていた。

増税の影響で失われた20兆円のGDPを国民一人頭で割ると、約15万円。所得が15万円も下がったと考えれば、買い物をする気が失せるのも当然だろう。

いま、日本では格安商品ばかりが売れる、デフレ時代と同じ状況が生まれている。アベノミクスの目標である、2%の物価上昇に相反する事態が起きているわけだ。だが、経済学の常識からして、増税すれば物価が下がるのは自明の理だ。

優秀なはずの財務官僚たちはそんなことすら理解できていなかった。自分たちの歳出権を拡大するため、なんとしても消費増税を可決させようと、「増税をしてもGDPは下がらない」という机上の空論を組み立て、押し切った。

5%に戻すしかない
失われた20兆円のGDPから試算される消えた税収は約5兆円。一方で、消費増税で増えた税収は約8兆円。

「3兆円多いのだから、増税のほうがいいのでは」と思うかもしれない。

しかし、冷静に考えると、増税によって税収を8兆円増やすのと引き換えに、一人当たり15万円のGDPを吹き飛ばしてしまったのだ。これが日本経済に与えたダメージは、計り知れない。

収益が上がらないのに税負担だけを増やしたので、企業は苦しみ、賃金も上がらない。消費も当然伸び悩む。アベノミクスの理想とは真逆の悪循環にはまりこんでいる。

結局、無知な財務官僚が身勝手な思惑で推し進めた増税で、国民は8兆円を取り上げられたあげく、本来、得られるべき所得までを失ったのだ。

この状況に、本来であれば、「責任をもって2%の物価上昇を達成させる」と明言している日銀の黒田東彦総裁こそが、「増税で物価が上がらないのなら、失敗を認めて減税するか、景気対策をしてください」と政府に強く進言すべきだろう。

だが、黒田総裁は「消費増税で成長が大きく損なわれることはない」と繰り返し発言してきた手前、今更もう何も言えない。起死回生のマイナス金利政策も、消費増税のダメージが大きすぎたため、いまのところ本来の効果が出ていない。

もし、安倍政権が予定通り、'17年の春に10%への増税を実行すると、どうなるか。8%増税の時と同じくらい、いや、それ以上の致命的なダメージを引き起こすだろう。

3%の増税でGDPが14兆円急落した。ということは、上げ幅が2%なら、単純計算で約10兆円のGDPが一瞬で失われる。さらに、今回は中国経済失速などの要因も加わるため、長期的に考えれば、8%増税時を上回る規模のGDPが失われる可能性がある。

消費増税が引き起こした負の連鎖から脱却するには、いますぐにでも消費税を5%に戻すのがベストなのは言うまでもない。だが、政府もいまさら引き返せないだろう。

それでも、本気で景気回復を目指すのならば、取れる策は消費減税の他にもいくらでもある。

例えば、国の特別会計上で余った資金、すなわち、いわゆる「霞が関埋蔵金」を使う手だ。

「外国為替資金特別会計」には円安の含み益の約20兆円、「労働保険特別会計」には約7兆円もの埋蔵金がある。これを原資に、国民に10兆円規模の給付金を配り、増税の痛みを和らげる。

この「埋蔵金10兆円バズーカ」をぶっ放し、景気に良好な刺激を与えて上向かせたところで、日銀が一気に金融緩和を推し進め、国債の購入量を今の80兆円から100兆円まで増やす。

極端な話に聞こえるかもしれないが、ここまでしてようやく、「8%増税の呪縛」は払拭される。

それほどまでに、消費増税が日本経済に与えたダメージは大きい。

高橋洋一

【私の論評】すでに、財務省による緊縮の病がぶり返している!増税すれば安倍内閣には致命傷(゚д゚)!

8% 増税に関しては、最初から大きな懸念がありました。そもそも、デフレの真っ最中であれば、減税するとか、減税しないというのなら、公共工事を増やすとか、給付金政策をするなどで、積極財政を実行すべきでした。ただし、公共工事に関しては、公共工事の供給制約が顕著でしたので、これは実行してもあまりは効果は期待できませんでした。

このような状況でアベノミクスは2013年の4月から、異次元の包括的金融緩和から始まりました。経済指標は、良くなる一方でした。しかしその直後の2014年4月になぜか、まだデフレから完璧に脱していない日本なのに、8%増税などという馬鹿げた緊縮財政政策を行ってしまい、病み上がりの日本経済に冷水を浴びせるようなことをしてしまいました。

緊縮財政というと、何も増税だけではありません。下のグラフをご覧ください。26年6月あたりから、財務省による緊縮財政と病がすでにぶり返しています。

緊縮財政という病は今でも進行中、これに10%消費税増税が加わると破滅的!
グラフは財政資金の対民間収支統計をもとに作成したものです。今さらながらですが、安倍内閣は緊縮財政に回帰していることに驚きました。政府は民間から税を徴収する一方で公共事業、社会保障などに支出しますが、支出増加額よりも税収の増加額が多ければ緊縮財政、少なければ積極財政となります。税収は急速に増えてきました。財政支出のほうは消費税増税前に大きく上積みされたましたが、増税後は急激に減りました。なかでも公共事業、社会保障と防衛費の合計でみるとこの傾向は顕著です。

税収が増えること自体は財政の健全化を最優先する考える向きにとっては万々歳です。しかし、民間の所得を政府が取り上げたまま、支出を通じて民間に資金を還元しない状態を続けると民間の需要を圧縮することになります。好景気で民間需要が旺盛で、インフレ率が上がる状態だと、財政支出を引き締めるのは理にかなっています。ところが、「20年デフレ」の日本にとって緊縮財政はまったく不合理です。

8%増税したたげではなく、さらに支出を減らし緊縮財政を推進する・・・・。こんなことでは、せっかく回復基調となってきたふたたび景気の好循環を破壊してまたデフレ経済へと戻してしまうことになりかねません。今のままでも、もうそうなりかけていますし、これをそのまま継続しても、日本経済はデフレに逆戻りすることでしょう。

来年予定通り、10%増税などしてしまえば、デフレスパイラルの底に沈む速度を飛躍的に高めるだけです。10%増税をしてから、2、3ヶ月もすれば、それは誰の目にも明らかになることでしょう。

このような、緊縮財政の繰り返しから政府の借金だけが膨らみ続け、民間の借金が縮小し続ける(=民間の投資が縮小し続ける)、こんなことを20年以上繰り返してきたのが日本でした。ただ最近過去の日本と比較すると多少ともましなのが、日銀が金融緩和を継続していることです。

しかし、今の日本はデフレから完全脱却していないのに、金融緩和は継続しているものの、8%増税などという愚かな緊縮財政を実行して、その悪影響が続いている状況にあります。

これを改善するには、積極財政と金融緩和を同時に実行することです。そうして、これは標準的なマクロ経済学の教科書に当たり前に掲載されている内容です。景気が悪化したときには、金融緩和と積極財政を行う、景気が過熱したときには、金融引き締めと、緊縮財政を行うというのが、マクロ経済学での当たり前のど真ん中です。

しかし、過去の日本は、景気が悪化しているにもかかわらず、金融引き締めと、緊縮財政を行うというバカ真似を実行し、15年以上もデフレを放置してきました。

そうして、2014年春からの日本は、日銀は金融緩和を、財務省は増税で緊縮という、非常にアンバランスな政策をとっています。

そうして、直近の10-12月の四半期GDPの速報が最近でたばかりですが、非常に悪化しているのは誰の目から見ても明らかです。

2月15日に2015年10-12月期のGDP速報値が内閣府から公表された。結果をみると、実質GDP成長率は前の四半期と比べて0.4%減、年あたりの換算で1.4%減となり、2015年4-6月期以来のマイナス成長に沈んだ。


これに関しては、暖冬のせいで冬物衣料が落ち込んだなどとするむきもありますが、それは全くの間違いであり、暖冬などには全く関係なく、個人消費の長期的な落ち込み傾向によるものであることは、以前のこのブログでも掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
GDPマイナス成長は暖冬のせいではない―【私の論評】増税派はどこまでも、8%増税が大失敗だったことを認めたくない(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、統計値では8%増税の悪影響が色濃く出ているにもかかわらず、財務省はこれについて何もコメントしません。政治家の多くも、増税推進派が多いため、8%増税は大失敗という声は大きくありません。さらに、マスコミも増税一色だったため、今更自分の非を認めたくないのか、ほとんど8%増税の失敗を報道しません。さらに、いわゆる日本の主流の経済学者らも、増税を後押ししてきた手前、あからさまに大失敗とする人もいません。

そのためでしょうか、多くの人が、8%増税は大失敗であるという事実をあまり認識さえしていないようではあります。とはいいながら、多くの国民が、消費を控えるという行動に出ているのですから、自分の消費行動などみれば、誰でもこの失敗は理解できるものと思います。

安倍首相は「リーマンショックや大震災のような重大な事態が発生しない限り確実に実施する」と言い続けていますが、昨年来の原油価格の崩落や世界的な株価下落、さらには中国経済の失速、さらに南シナ海、中東なども含む世界の各地に拡散した、いわゆる地政学的リスクはそれに匹敵するどころか、それ以上かもしれません。

安倍総理は「リーマンショック級ではない」と今も10%増税先送りを否定しています。しかし、7月の参議院議員選挙を控えて、景気ムードを好転させることが安倍内閣の必須課題になってくるだけに、数少ない「切り札」として消費増税再延期を打ち出すタイミングを慎重に見極めているのだと思います。

もちろん、財務省は再増税は既定路線として譲らない姿勢で、仮に首相が先送りを決める場合でも相当な政治的な軋轢が生じることでしょう。あまり早く消費増税を打ち出し、その後、海外株式相場などが大崩れするなど外的要因で景況感がさらに悪化した場合、打つ手がなくなってしまうことも予想されます。

前回の延期時と違い、再延期には法律を出して国会で通過させる必要があります。これも10%増税見送りのハードルを上げています。

そうはいっても、2014年の増税の影響が完全に吸収されていないことは誰の目から見ても明らかで、さらに消費が下り坂になっている中で、ここで再度の消費増税を打ち出せば、一気に消費が腰折れすることになります。

来年の消費増税をそのまま決行すれば、日本経済にとっては破滅的なことにになりかねません。

やはり、ここは10%増税は何がなんでも見送るべきです。そうして、その手段としては、夏の参院選のときに衆院も同時解散して、衆参同時選挙として、そうして安倍総理としては、当然のことながら「10%増税」も公約として掲げは、選挙で大勝利することです。方法として、10%増税を見送るのは、この方法しかないと考えられます。

とにかく、もうボンクラ財務官僚や、ぼんくら経済学者などの言いなりになる必要などありません。

とにかく、選挙で大勝利して、国民の信任を得て、10%増税は日本経済がデフレから完全に脱却して、インフレが加熱するまで、実行しないようにしていただきたいものです。

選挙で大勝利した後は、日銀法の改正と、財務省の解体を強行し、ボンクラ経済学者などは、政府関係の仕事などからは、完全パージして頂きたいです。


ボンクラ官僚や、ボンクラ学者などが、この国の経済の舵取りをとんでもない方向に持っていく可能性を完璧に排除していただきたいです。これが、達成されれば、日本の政治主導の夜明けとなることと思います。

これを実行しないかぎり、また日本は失われた20年に舞い戻り失われた40年が続くかもしれません。そうなれば、自民党政権も政権運営がかなり難しくなり、誰が総理大臣になったにしても、短期政権で終わることになってしまうでしょう。

私は、そう思います。皆さんはどう思われますか?

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【関連図書】

結局のところ、日本の政治は官僚特に財務官僚が主導しているところがまだまだ大きいです。官僚が政治に関与することは一概に悪いことではありませんが、意思決定はその時々の空気に流されることなく政治家、政府が地頭を使って行うべきものです。それすらも、官僚に譲ってしまえば、民主主義は成り立ちません。それを実感していただける三冊の書籍を以下にチョイスさせていただきこました。

総理の実力 官僚の支配 ─教科書には書かれていない「政治のルール」─
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2015年3月19日木曜日

「2%インフレ目標未達」の批判は誤解で的外れ―【私の論評】復興を税で賄おうとか、8%増税の失敗を認めたくない輩の多いこの国で、いつまともな経済論議ができるようになるのか?間違いを認める潔さのない人々のリストはこれだ(゚д゚)!


高橋洋一 [嘉悦大学教授]

「目標未達なら辞任」は短絡思考
求められるのは説明責任


2月23日、黒田東彦日銀総裁は、衆議院予算委員会で、原油価格が緩やかに上昇するとの
前提に立てば下落の影響がはく落するに伴い、消費者物価は上昇していくとの見方を示した。


日銀は17日開いた金融政策決定会合で、現状の金融緩和の継続を決めた。原油安の影響で目先のインフレ率は上昇しにくく、0%程度になる可能性もあるが、物価の上昇基調は崩れていないとしている。

黒田東彦総裁の記者会見では、面白い光景もあった。質問したのは、元日経記者の土屋氏。2%インフレ目標の達成を2年程度と言っておきながら、3年というのは日本語でない、岩田副総裁は目標達成できない場合に辞任すると言ったがどうなのか、などと質問していた。

インフレ目標はガチガチのルールではない。バーナンキの言を借りれば、市場とのコミュニケーションツールである。ガチガチのルールではないが、それが達成できない場合には、説明責任を果たさなければいけない。だから、目標達成ができない場合には、即辞任というのは、社会部系新聞記者の短絡思考である。実際、岩田副総裁も説明責任をまず果たすと言うのであるから、辞任という話にはならない。

消費増税がなければ
2%は早い段階で達成できた


2%インフレ目標がすぐには達成できないのは明らかである。その理由として、黒田総裁は、物価上昇の基調は変わりないものの、原油価格下落で当面のインフレ率が伸び悩むと説明していた。

黒田日銀が2年たったので、その前の2年とあわせた4年間における、インフレ率(消費者物価指数総合の対前年同月比)の分析をしてみよう。それによれば、インフレ率は、マネタリーベース対前年同月比(3ヵ月ラグ)と消費増税(半年ラグ)でかなり説明できる。


インフレ率=-0.68+0.044*マネタリーベース対前年同月比(3ヵ月ラグ)
-0.54*消費増税(半年ラグ)
相関係数0.94

やはり、消費増税の影響は大きかったと言わざるを得ない。もし消費増税が行われなかったら、2%インフレ目標は2015年度の早い段階で確実に達成できただろう。

ちなみに、予想インフレ率を、例えば物価連動国債から計算されるブレークイーブン・インフレ率で見ると、2014年の5月頃までは2013年初めに0.7%程度だったのが2.5%程度になるまで上昇した。しかし、4月からの消費増税の影響で消費減退したので、6月くらいから下がり始め、2015年始めに底を打ち、最近再び上昇し始めている。
原油価格の物価への影響は
ほとんど無視できる


一方、黒田総裁が言う原油価格の影響というのはどうだろうか。

下図は、最近4年間におけるインフレ率と原油輸入価格の推移である。両者の相関はない。ということは原油価格の全体の物価に与える影響はほとんど無視できるということだ。


もちろん、原油は全商品の一定割合を占めているので、その下落は一般物価であるインフレ率の低下につながるようにみえる。ところが、一般物価は全商品が対象なのだが、原油以外の商品では、原油価格が低下したことによって購買力が増す恩恵を受けることができ、その分価格が上向きになるのだ。その結果、原油価格の下落が直ちに一般物価の下落に直結するわけではなくなる。

黒田総裁も、記者会見では原油価格の下落は日本経済にプラスといっており、その効果を先取りする可能性もあるわけで、原油価格の下落をインフレ目標が達成できない理由とするのは、やや言いすぎではないか。

むしろ、消費増税の影響を言ったほうがすっきりする。記者会見では、それを避けているような雰囲気がある。マスコミもみんな消費増税に賛成していたので、日銀記者会見に出ているマスコミの中では、この話を切り出せるところはないだろう。

2%インフレ目標は
ガチガチのルールではない


なお、インフレ目標はエネルギーの影響を除くコアコア指数に切り替えるべき、あるいは2年で2%という目標自体を修正(あるいは撤回)すべきという意見もある。

インフレ目標は世界各国で採用されているが、ほとんどはすべての商品を含む総合指数を目標としている。部分的な指数にして目標クリアというのは安直な方法だ。目標達成できない場合、説明責任を果たすことをまず行うべきであって、経済がいい方向であれば、目標の厳密な達成に過度に拘るべきでない。

インフレ目標ではプラスマイナス1%が許容範囲と言われている。先進国のこれまでの実績では、その許容範囲に7割程度収まっており、これを外した場合には説明責任が発生するという程度の「ルール」である。

マスコミはインフレ目標を正確に理解していないので、ピシャリ2%だと思い込んでいる人が多い。もともと、「2015年4月~2016年3月という1年間で消費者物価総合指数対前年同月比1~3%」というのがインフレ目標であるが、「2015年4月で消費者物価総合指数対前年同月比2%」と思い込んでいる人が多い。

2%インフレ目標の目標数字や達成時期を変更すべきというのは、インフレ目標をガチガチのルールと誤解している。もともとガチガチのルールではない。まして、目標達成できない場合には辞任というのは、完全に社会部記者のノリで論外だ。

問題は、説明責任を果たすべき黒田総裁が、消費増税の悪影響をまったく説明しないことだ。この点を追求できない増税賛成マスコミも同罪である。

この記事の詳細はこちらから(゚д゚)!

【私の論評】復興を税で賄おうとか、8%増税の失敗を認めたくない輩の多いこの国で、いつまともな経済論議ができるようになるのか?間違いを認める潔さのない人々のリストはこれだ(゚д゚)!

2%の物価目標に関しては、国会の予算委員会でも黒田総裁が質問を受けていました。その内容を以下に掲載します。
[東京 23日 ロイター] - 黒田東彦日銀総裁は、2月23日の衆議院予算委員会で、原油価格が緩やかに上昇するとの前提に立てば、下落の影響がはく落するに伴い、消費者物価は上昇していくとの見方を示した。そのうえで、「できるだけ早期に、2年程度で達成するとの目標も変わっていない」と述べた。
民主党の階猛議員の質問に答えた。
黒田総裁は、「わが国経済は先行き緩やかな上昇を続けていく。その下で需給ギャップ改善、あるいは予想物価上昇率が上昇してくことを通じて、軌道的な物価上昇率は確実に上がっていくと考えている」と指摘。
「長い目で見ると、原油価格下落は経済にプラスになる。また、前年比で見た物価下押しの圧力はいずれはく落していくと見ている」と述べた。
さらに、「原油価格下落の影響がはく落するに伴い、消費者物価の前年比は伸び率を高めていき、15年度中心とする期間に2%に達すると見ている。ただ、原油価格の状況により多少前後する可能性がある」との従来からの認識を繰り返した。
政府の経済見通しで16年度も消費者物価上昇率が2%には届かないとしていることとの相違については、「15年度見通しはおそらく石油価格前提が違っている。16年度以降については、政府は中期財政試算との関係で、一定のモデルで推計している」と説明した。
この質問でも、階猛議員は、何度も執拗に2%の物価目標を達成していないことについて、質問を繰り返していました。そうして、この人も増税に関しては一言も触れていませんでした。

それに対する黒田総裁の返答も、原油価格の下落と試算方法に述べるにとどまっていました。私は、この内容をテレビの国会中継で見ていたのですが、終始消化不良を感じてしまいました。

階猛議員も、結局2%の物価目標が、もともとガチガチのルールではないし、その目標の本来の意味は市場とのコミュニケーションツールであり、もしそれが達成できないにしても、その時には説明責任が生じるということですが、黒田総裁はその説明責任に対して十分に責任を果たしていないということで、最後の最後まで、消化不良感が拭えないものでした。

あの中継を見ていた人は、誰も最後まで納得できなかったでしょう。

2%物価目標に関しては、他にも奇妙な意見を言う人がいます。その典型的な例をあげてみましょう。
日銀に物申す、脱デフレ秘策は賃金上昇率にあり-東大渡辺氏 
 詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部のみ抜粋させていただきます。
日本銀行はデフレ脱却を確実にするため、物価に代わり賃金上昇率を目標にすべきだ--。元日銀マンで、現在は東京大学大学院で教壇に立つ渡辺努教授はこう訴える。2%の物価上昇目標の達成が厳しさを増す中、現状を放置すれば2年間の苦労が水泡に帰す可能性があり、これまでにないアプローチも必要と言う。 
物価と金融政策が専門の渡辺教授はこのほど、ブルームバーグ・ニュースのインタビューに応じ、「今のままでは物価上昇率がもう少し下がる可能性があり、ゼロがあってもおかしくない。2年頑張ってきたが、もう1回デフレなんだという考えが支配する」と指摘。デフレの根は深く、異次元緩和後も多くの品目の価格が据え置かれ、これを動かすために日銀は「少々伝統的な範囲から外れていても、ミクロの産業政策も責任を持つべき」と述べた。
以上、抜粋したのですが、この抜粋では何を言いたいのか意味不明だと思います。しかし、この記事末尾まで読んでも、意味不明です。そのため、最初の部分のみ掲載しました。

とにかく、この記事も2%の物価目標があたかも、キチキチの目標でこれを達成しないと日銀の責任問題になるというような内容です。

そうして、きわめつけは、 増税の悪影響については一言も述べていないということです。

この意味不明の記事に関して、経済評論家上念氏は以下のようにツイートしています。
やはり、東大の渡辺教授も、日銀出身ということで、増税が完璧な大失敗であったことを認めたくないのでしょうか。

しかし、特に日本の経済学の主流派ともいえる人たちが、過ちを認めなかったからこそ、20年にもおよぶデフレが放置されたのだと思います。

まさに、過ちを過ちと認めないことが、過ちなのです。



過ちは人間には誰にでもあることです。過ちをおかせば、はやい時期に素直に認めて、謝ればそれですむことだと思います。しかし、それがなかなかできない人たちも大勢いるようです。

これについて、高橋洋一氏が以下のようにツイートしています。



上のリストに名前を連ねている人々の名前を以下に列挙します。
伊藤 隆敏 (東京大学)
伊藤 元重 (東京大学)
浦田 秀次郎 (早稲田大学)
大竹 文雄 (大阪大学) 
齊藤 誠 (一橋大学)
塩路 悦朗 (一橋大学) コメント土居 丈朗 (慶応義塾大学)
樋口 美雄 (慶応義塾大学)
深尾 光洋 (慶応義塾大学)
八代 尚宏 (国際基督教大学)
吉川 洋 (東京大学)

(★印のついた方は「第3提言の賛成は留保」)
青木 浩介 (東京大学)
青木 玲子 (一橋大学)★ コメント赤林 英夫 (慶應義塾大学)
安藤 光代 (慶應義塾大学)
井伊 雅子 (一橋大学)
飯塚 敏晃 (東京大学)
池尾 和人 (慶應義塾大学)
生藤 昌子 (大阪大学) コメント石川 城太 (一橋大学)
市村 英彦 (東京大学)★ コメント伊藤 恵子 (専修大学)
岩井 克人 (国際基督教大学)
祝迫 得夫 (一橋大学)
岩壷 健太郎 (神戸大学)
宇南山 卓 (神戸大学)
大来 洋一 (政策研究大学院大学) コメント大野 泉 (政策研究大学院大学) コメント大橋 和彦 (一橋大学) コメント大橋 弘 (東京大学) コメント岡崎 哲二 (東京大学) コメント小川 英治 (一橋大学)
小川 一夫 (大阪大学)
小川 直宏 (日本大学)
翁 邦雄 (京都大学)★ コメント翁 百合 (日本総合研究所)
奥平 寛子 (岡山大学)
奥野 正寛 (流通経済大学)
小塩 隆士 (一橋大学)
小幡 績 (慶應義塾大学)
嘉治 佐保子 (慶應義塾大学) コメント勝 悦子 (明治大学) コメント金本 良嗣 (政策研究大学院大学)
川口 大司 (一橋大学) コメント川﨑 健太郎 (東洋大学) コメント川西 諭 (上智大学) コメント北村 行伸 (一橋大学)
木村 福成 (慶應義塾大学)
清田 耕造 (横浜国立大学)
清滝 信宏 (プリンストン大学)
國枝 繁樹 (一橋大学)
久原 正治 (九州大学)
グレーヴァ 香子 (慶應義塾大学) コメント黒崎 卓 (一橋大学)
黒田 祥子 (早稲田大学)
玄田 有史 (東京大学)
鯉渕 賢 (中央大学)
小林 慶一郎 (一橋大学) コメント小峰 隆夫 (法政大学)
近藤 春生 (西南学院大学)
西條 辰義 (大阪大学) コメント櫻川 幸恵 (跡見学園女子大学)
櫻川 昌哉 (慶應義塾大学) コメント佐々木 百合 (明治学院大学) コメント佐藤 清隆 (横浜国立大学)
佐藤 泰裕 (大阪大学)
澤田 康幸 (東京大学)
清水 順子 (専修大学) コメント新海 尚子 (名古屋大学) コメント鈴村 興太郎 (早稲田大学 / ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジ) コメント清家 篤 (慶應義塾大学)
瀬古 美喜 (慶應義塾大学)
高木 信二 (大阪大学)
高山 憲之 (一橋大学)
武田 史子 (東京大学)
田近 栄治 (一橋大学) コメント田渕 隆俊 (東京大学)
田村 晶子 (法政大学)
田谷 禎三 (立教大学)
中条 潮 (慶應義塾大学) コメント筒井 義郎 (大阪大学)
常木 淳 (大阪大学)
釣 雅雄 (岡山大学)
中田 大悟 (経済産業研究所)
中村 洋 (慶應義塾大学) コメント長倉 大輔 (慶應義塾大学)
畠田 敬 神戸大学
林 文夫 (一橋大学)
原田 喜美枝 (中央大学)
深川 由起子 (早稲田大学) コメント福田 慎一 (東京大学)★
藤井 眞理子 (東京大学)
藤田 昌久 (経済産業研究所)
星 岳雄 (UCSD)
細田 衛士 (慶應義塾大学)
細野 薫 (学習院大学) コメント堀 宣昭 (九州大学)
本多 佑三 (関西大学) コメント本間 正義 (東京大学)
前原 康宏 (一橋大学)
松井 彰彦 (東京大学)★
三浦 功 (九州大学)
三重野 文晴 (神戸大学)
三野 和雄 (京都大学)
森棟 公夫 (椙山女学園)★ コメント柳川 範之 (東京大学)
藪 友良 (慶應義塾大学)
山上 秀文 (近畿大学) コメント家森 信善 (名古屋大学)
吉野 直行 (慶應義塾大学)
若杉 隆平 (京都大学)
和田 賢治 (慶應義塾大学)
渡辺 智之 (一橋大学)

以 上
以上のリストに掲げられている人たちが、復興を増税で賄おうなどという、奇妙奇天烈・摩訶不思議な意見を撤回し、昨年4月の増税の誤りを認めるようになれば、 この国でもまともな経済論議ができるようになります。

<過ちて改めざる 是を過ちと謂う>隷書体


しかし、これだけの人数ですから、その道は険しいかもしれませ。しかし、だからといって、私達は経済対策の失敗続きという過去を繰り返すわけにはいきません。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?


【追記】
本日3月20日に面白いツイートを発見したので以下に追記します。




【関連記事】

UPDATE1: 「無制限」緩和は額ではない、物価目標2%達成まで緩和継続を=安倍自民総裁―【私の論評】ただ反対すれば、良いというものではない!反リフレ派は、反対するだけではなく、日本経済が良くなるための対案を提供せよ!!

【日本の解き方】インフレ目標2%に黄信号 黒田日銀は審議委員人事でピンチも ―【私の論評】日本国がまともな金融政策ができるようにする立場からすると、いつも薄氷を踏むような人事にハラハラするのはおかしい。やはり、政府が人事権を握るのが当然、そのため日銀法改正を実現すべき(゚д゚)!


日銀の決算は赤字でも気にする必要なし 政府と連結して考えれば些細な事―【私の論評】国や国際財政、金融を家計と同レベルて考える政治家・官僚をこの世界から駆逐しよう!なぜなら、彼らはあまりに幼稚すぎて、国ましてや世界のことなどに考えることなどできないから(゚д゚)!

日銀総裁「経済状況反映した円安はプラス」、財務相は為替に沈黙―【私の論評】今の水準で"円安ガー"、"円安でも輸出ガー"と叫ぶ人は現実を見ていないただの馬鹿か、あるいはスパイかのいずれかである(゚д゚)!

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