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2018年6月6日水曜日

【高論卓説】信用不安が広がるドイツ銀行 共存の大株主・中国企業も経営危機 ―【私の論評】ドイツ銀行の中国へのデリバティブ残高は7000兆円、破綻すればリーマンショック級の危機に(゚д゚)!

 【高論卓説】信用不安が広がるドイツ銀行 共存の大株主・中国企業も経営危機 

ドイツ銀行

 ドイツ銀行への信用不安が広がっている。米国の連邦預金保険公社が米国のドイツ銀の子会社を「存続が脅かされるほどに財務に弱さがある銀行」のリストに加え、昨年、米連邦準備制度理事会(FRB)も同様の判断をしたと報じられたからである。また、米格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は、ドイツ銀の格付けを「BBB+」に引き下げた。この2つの要因からドイツ銀行の株が売られ、株価が過去最安値を記録したのである。

 ドイツ銀危機の背景には、ヨーロッパの金融機関が抱える構造的な問題が潜んでいる。リーマン・ショック直後の2008年10月、ヨーロッパの金融機関は会計基準の変更を行った。保有する債権を「満期目的」と「その他」に再分類し、「満期目的」については所得原価をベースに資産計上ができるようにした。ドイツ銀は約8億4500万ユーロに上る評価損を約8億2500万ユーロの黒字(08年第3四半期の税引き前)に転換させた。この会計のマジックによって黒字化したドイツ銀は経営を大きく誤ってしまったのである。

 リーマン・ショック後、英米の金融機関は経営危機対応と金融当局の指導により、積極的な資産の売却とハイリスク部門からの撤退を進めた。これを買い進め、投資銀行部門を拡大させたのがドイツ銀だった。その後、欧州でもギリシャ危機などソブリンショックが発生、15年に中国の株価が暴落したことで、この問題が表面化してしまったのである。

 ドイツ銀は欧州ソブリンショック後の資本増強を「CoCo債」という一種の転換社債で行った。この債券は経営が健全な際は、一般の債券よりも高い金利が得られるが、自己資本が危機的状況になった場合、自動的に株式に転換される社債である。つまり、借金が自己資本に変わるという非常に便利な債券であるが、これにも大きな問題がある。それは転換されることによって株式が希薄化し、株価暴落の要因になることだ。

 16年、ドイツ銀はこの問題に大きく揺れた。この問題に関しては、積極的な資産の売却などにより何とかごまかすことができたが、本質的な収益の改善には程遠く、赤字決算が続く中で、今回の危機が起きた。

中国の海航集団

 また、この問題の背景には中国との問題も絡んでいる。実はドイツ銀の筆頭株主は中国の海航集団であり、海航集団も経営危機に陥っており大規模な業務再編の最中にある。つまり、共依存の関係にあるともいえるのだ。どちらかが破綻すればそれが連鎖する可能性もある。ドイツ銀は排ガス問題を抱えるフォルクスワーゲン(VW)グループと世界最大の自動車部品、素材メーカーであるボッシュのメインバンクであり、このどちらもが中国が最大の顧客なのである。つまり、中国の製造業の要の一つでもあるのだ。

 そして、ドイツ政府としては、自国の産業基盤の破壊ともいえるドイツ銀の破綻を許すわけにもいかず、非常時には国有化を含む資本注入を含めた対応を行うものと思われる。トランプ米大統領はこれをドイツと中国との貿易戦争の交渉カードに利用する可能性もある。


【プロフィル】渡辺哲也

 わたなべ・てつや 経済評論家。日大法卒。貿易会社に勤務した後、独立。複数の企業運営などに携わる。著書は『突き破る日本経済』など多数。48歳。愛知県出身。

【私の論評】ドイツ銀行の中国へのデリバティブ残高は7000兆円、破綻すればリーマンショック級の危機に陥る可能性も(゚д゚)!

中国にのめり込み、筆頭株主が中国の企業となっていたドイツ銀行が信用不安に揺れています。ドイツ銀行はサブプライムローンで経営危機に落ち、2015年の中国株暴落でも損失を食らって瀕死の状態でした。中国にのめり込んだドイツは、そのツケを払うことになるでしょう。

ドイツ銀行の中国へのデリバティブ残高が、ユーロ圏GDPの9倍の64兆ドル(約7000兆円)に達しています。これは、チャイナが経済破綻かドイツ銀行デフォルトの危機です。

この危機的な状況以下のグラフをご覧いただければ、わかります。まずは、ドイツ銀行の信用危機を示すグラフです。2016年の時点で161を超えています。この状況現在も悪化しつつあります。


次に、ドイツ銀行の中国へのデリバティブ残高を示すグラフです。ユーロ圏全体のGDPの9倍のお64兆ドル(約7000兆円)に達しています。

以下はリーマンショックのときのリーマン・ブラザースの株価とドイツ銀行の株価の推移を比較したものです。


ドイツ銀行あともう少しで、破綻したリーマン・ブラザーズと同水準まできています。

さて、紛らわしいですが、ドイツ銀行(Deutsche Bank)は日銀のような中央銀行ではなく、ドイツ最大ではありますが単なる商業・投資銀行です。日本で言えば東京三菱UFJ銀行や三井住友銀行みたいなものです。

日銀に相当するドイツの中央銀行はドイツ連邦銀行(Deutsche Bundesbank)で、ユーロ導入以降は欧州中央銀行のドイツ支店のような機能を果たしています。ドイツ連銀は、ドイツマルクの現金の保管もしており、今でもそこに行けばドイツマルク紙幣をユーロに両替してくれます。

米連邦準備理事会(FRB)が昨年、ドイツ銀行(DBKGn.DE)の米国内事業を「問題のある状態」と判定していたことが、31日付の米紙報道で明らかになった。自国ではなく米国の監督当局からこのような警告を受けたことで、ゼービング最高経営責任者(CEO)の事業縮小計画は一段と切迫感を増してきました。

米当局は何年も前からドイツ銀の米国事業に懸念を抱いてきました。2013年にはニューヨーク連銀がドイツ銀の報告体制を批判。16年のFRBのストレステスト(健全性審査)では、リスク管理に欠陥があるとして米子会社が不合格となっています。

こうした経緯を踏まえても「問題のある」との認定は警戒レベルがさらに引き上げられたことを示しており、リスク管理の強化などにつながる可能性があります。機密情報が漏れたことは、監督当局との関係が緊迫化していることの証左でもあります。ドイツ銀の株価がこの日7%も下げ、25年ぶりの安値となったのも無理はないです。

ゼービングCEOは最近、米国での貸し出しと、ヘッジファンドを相手にするプライムブローカレッジ部門のレバレッジ縮小を決めています。FRBの判定は、さらに事業縮小を進める十分な誘因となります。株主からは、米国事業からの完全撤退を望む声さえ出ています。つまり20年前のバンカース・トラスト買収から始まった、米投資銀行と張り合う路線を巻き戻すということです。

ドイツ銀行ゼービングCEO

もっとも、撤退が望ましいことなのか、あるいは実現可能かどうかは、まったく定かではありません。欧州の顧客に集中するというドイツ銀の目標を満たすには、米資本市場へのアクセスが必要となります。しかも米国での新規事業を中止しても、既存投資の管理コストは背負わなければならないのです。ドイツ銀の米持ち株会社の資産は昨年末時点で1480億ドル。これらを処分することは、さらに大きなリスクを伴うことでしょう。

とはいえ、FRBの警告によりゼービング氏の選択肢が狭まったのは確かです。警告対象から外れるには長い時間とコストを要しそうですが、差し当たってはウォール街からの撤退スピードを速める以外に道はないでしょう。

それにしても、このようなことでは、先の中国への天文学的デリバティブ残高を解消するにはいたらないでしょう。一体どうするのでしょうか。

ドイツ銀行が破たんすると、世界経済への影響があまりに大きすぎる為、国有化以外ないと思われます。 この場合、他国がいろいろと条件を付けると思われるわけです。特にサブプライムでドイツにいじめられた英国は、ブレグジットでの条件闘争のカードに利用するでしょう。

ドイツ銀行危機のお陰で、英国の金融センターシティは安泰になる可能性が高くなったといえるでしょう。 ユーロの為替拠点を金融が危機的状態にある国には移せないわけで、今まで通りになる可能性が高まったわけです。

ドイツ銀行の大株主は、先にも述べたように、中国の海航集団です。そうして、海航集団は習近平の右腕でもある、王岐山中国共産党副主席が後ろ盾になっています。フォルクスワーゲンVW、そしてVWの排ガス規制回避不正プログラムを作った世界最大の自動車部品会社ボッシュのメインバンクはドイツ銀行です。中国とドイツは軍事産業でも一蓮托生の関係です。 中国に対抗することを決めた、トランプ大統領がこれを見逃すはずがありません。

王岐山(左)と習近平(右)
  
ドイツ銀行が危機的な状況になり、米国が中国の1300品目に制裁関税をかけると報じられています。トランプ大統領はドイツ銀行の実体を理解すれば、これを狙い撃ちすることにより、中国に大きな打撃を与えることも十分考えらます。

ドイツ銀行の破綻があれば中国への飛び火は必然です。そうなると、リーマンショック級の経済危機が世界を襲うことも十分に可能性があります。安倍総理は昨年10月22日夜、民放のテレビ番組に出演し、2019年10月に予定している消費税率の10%への引き上げについて「すでに法律で決まっていること」と述べていました。そのうえで「リーマン・ショック級の危機がないかぎり予定通り行う」との考えを改めて述べていました。

だとすると、延期というシナリオも十分ありえるということになります。いずれにしても、もしこれがリーマン・ショック級の危機となれば、増税は絶対駄目ですし、むしろ減税し、他国が量的金融緩和を行うなら、日銀もさらなる量的緩和を行うべきです。

リーマン・ショック時は他国が大規模な金融緩和を行っているにもかかわらず、日銀は実施せず、そのため他国は危機からはやめに脱出したにもかかわらず。日本だけが一人負けの状態に陥ってしまいました。ドイツ銀行の破綻の際には、その二の舞いを舞うことはだけは避けるべきです。

【私の論評】

2017年1月17日火曜日

アベノミクスの破綻を煽る「金融岩石理論」は簡単に論破できる―【私の論評】常識を働かせば金融岩石論にははまらない(゚д゚)!


田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)

日本にはさまざまな経済上の「逆神」たちがいる。株価や為替レートの予想をすると、まったく真逆の方向に相場が振れるエコノミストや経済学者たちのことだ。もちろん毎回逆神たちの予測が正しい(予測をした本人たちにとっては間違いなのだが)のかどうかを実証した研究者は知らない。

晴れ着姿の女性が見守る中でスタートした東京株式市場 写真はブログ管理人挿入 以下同じ
 ところで世界経済、日本経済の予測もやはり難しい。昨年だけみても、イギリスのEU離脱やトランプ氏の大統領当選による世界経済へのショックをいい意味でも悪い意味でも正確に言い当てたエコノミストや経済学者はほとんどいない。それに予測が当たったとしても「まぐれ当たり」ということもある。

 筆者もリーマン・ショックの後に、この種の「(世界経済危機の)まぐれ当たり」で知名度をあげた何人かのエコノミストについて、マスコミや一般の方々から意見を求められたことがある。残念ながら、「それは(運がよくて)すごいですねえ」と言うしかできなかった。本当にそう思う。常に経済を「バブル」「危機的な状況」であるといい続けて、それが数年、10年、いや20年という時間の中で「的中」しても、あまり筆者には感心するところはないからだ。

 さてこのような「逆神」たちと同じかどうかは、筆者には判断がつかないのだが、現在の日本の経済政策-特に日本銀行の金融政策-を批判する人たちの中に、「金融岩石論者」とでもいうべき人たちがいる。これはなにか。

 坂に岩石があり、びくともしない。だがこれをいったん動かすと、猛烈な勢いで坂を転がりだしてしまう。これと同じで、日銀がマネーをどんどん増やしても物価はまったくあがらない。しかしいったん上がりだすと、どんどん物価は上昇してハイパーインフレ(猛烈なインフレ)になってしまう、という理論である。

 この金融岩石理論の主張者は実に多い。特に同じ「種族」なのだが、日本国債の岩石理論も支持者に困らない。日本の財政は危機的な状況だ、いまは国債価格が安定しているように思えても、少しだけでも国債利子率が上昇(すなわち少しだけでも国債価格が低下)すれば、あれよあれよと国債価格は暴落し、日本の財政は破綻してしまう、というものだ。このハイパーインフレと財政破綻のふたつの岩石理論は、ほとんど表裏一体化しているので、両方とも主張する人が多い。

 例えば、前回この連載でも登場した朝日新聞編集委員の原真人氏の新刊『日本「一発屋」論』(朝日新書)はその典型である。安倍政権の経済政策は、金融と財政の一体化という名目での「財政ファイナンス」であり、「意図的にバブルを起こそうとする試み」である。低成長が常態になった日本経済で、日銀によってマネーでじゃぶじゃぶにする政策を行えば、バブルが生じてしまう。そしてバブルはやがて破裂するので、経済への反動は深刻化する、だろうというものだ。バブルの破裂を、原氏の著作ではハイパーインフレや財政破綻などとしても表現されている。

 この原氏と同様の意見を、経済学者の浜矩子氏と評論家の佐高信氏がその対談『どアホノミクスの正体』(講談社+α新書)の中で語っている。その対談の一部はネットでも読める。
浜矩子 アベノミクスは、すでにして行き詰まっていると言えます。屋上屋を重ねるように場当たり的な金融政策を続けているわけですが、いつそれが崩壊してもおかしくない。「アホノミクス」、いや「どアホノミクス」と言うべき状況です。
浜氏によれば、アベノミクス(日銀の金融政策)は、極端な国債の買い取りによりマネーを無制限に供給する政策である。この無責任な政策は、実体経済と乖離したバブルを生み出し、やがて破綻することが目に見えているものだという。

 浜氏は経済評論家の高橋乗宣氏と共著で、21世紀に入ってから(リーマンショックが起きた2008年以外)毎年のように、世界や日本の経済危機を予測する書籍を出していることでも著名だ。今年(2017年)の経済危機を予測する高橋氏との共著はまだ出されていないのが、筆者の少し心配するところではある。それだけの人気経済学者でもある。

浜矩子氏の昨年年頭の株価予想
さて原氏も浜氏も、それぞれ「金融岩石理論」的な主張だといって差し支えないだろう。この「金融岩石理論」が、理論的にも実証的にも成立しがたいことを、丁寧に解説した良書が出版された。原田泰・片岡剛士・吉松崇編著『アベノミクスは進化する』(中央経済社)がそれだ。

 現在の先進国(日本、ユーロ圏、イギリス、アメリカ)は、それぞれインフレ目標を設定していて、その目標値を大きく上回るようなインフレになれば、積極的に金融引き締めにコミットするように公約している。どんなに経済が過熱してもその結果としてインフレが目標値以上に高騰すれば、やがて中央銀行が金融引き締めに転じるであろうと、多くの市場関係者たちが予測し、またはすぐに予測できなくても次第に学習することで、自分たちの経済上のポジションを金融引き締めに適合したものに変更する。これによって自己実現的に経済は金融引き締め型に転換していく、というのがインフレ目標の重要なポイントだ。

 簡単に言うと、人々の予測をコントロールしていく政策である。人々の多くは、ときにヘンテコな予測をする人がいても、よほど非合理的な思考に陥る人でもないかぎり、時間をかければほとんどの人が経済の状況(ここでは中央銀行の引き締めスタンスの予測)を正確に把握するだろう。中央銀行がインフレ目標から乖離したら引き締めるといっているのは嘘だ、と思い込む人は極めて少数だ、という意味である。

 さてこのようなインフレ目標を採用していなかった時代、1970年代は年率数十パーセントのような高いインフレに見舞われた。日本でも第一次石油ショックの後の「狂乱物価」が代表的だ。『アベノミクスは進化する』の編著者のひとり、現在の日銀政策委員である原田泰氏は、1)マネーと物価は連動している、2)物価はいきなり猛烈に上昇するのではなく半年以上、通常は1年から数年かかる、ことを指摘している。このことから、中央銀行はインフレ目標を設定することで、物価が上昇し始めても十分にインフレを抑制することが可能だ、ということになる。

原田泰氏
日本がデフレを継続してきたのは、90年代から2012年までのインフレ目標なき時代の日銀による政策運営の時期にちょうど該当する。インフレ目標は上限も定めるが、デフレに陥らないようにできるだけ目標値に近い水準を目指して経済を運営するのが、いまの中央銀行の標準であり、日本もそうだ。しかし、このインフレ目標のない時代があまりにも長すぎて、マネーと物価(デフレ)は、21世紀に入る頃には連動しなくなってしまった。この時期に何が起きていたのだろうか。

 当時の日銀(そしてその時々の政府、第一次安倍政権も含む)は、インフレ目標の導入や積極的な金融緩和を拒否する一方で、「デフレ脱却に努力する」と空手形を出し続けてきた。その10年以上に及ぶ「ウソ」の累積によって、人々は日銀と政府の「デフレ脱却」を信じなくなってしまったのだ。

 これはこれで実に合理的な態度であるが、このデフレ予想が固着してしまったことの弊害は深刻である。マネーをどんなに供給してもそれがいつか縮小するのではないか、(デフレ脱却には)不十分なままで終わるのではないか、と人々が予測することで、物価とマネーの連動が壊れてしまったからだ。

 いわば十数年かけて、日銀は人々の物価とマネーの連関を見事に破壊してしまったのである。これを再度、連動するような正常な状態に戻すことを、いまの日銀は最終的な目標にしてはいる。ただしまだデフレ脱却の途中であり、過去のしがらみ(デフレ予測)はかなり強靭である。

 では、デフレ予想のしがらみが一気になくなるとしたら、どうなるか。これはこれでインフレ目標政策がしっかりと有効になるということなので、高率のインフレがいきなり出現するわけではない。先のインフレ目標政策の効果から自明である。

 原田氏らはこのような事例をふんだんに先の著作の中で示し、金融岩石理論を理論的にも実証的にも論破している。ちなみに、原氏などの懸念とは真逆に、積極的な金融緩和政策をすることで、政府の財政は大きく改善することも同書では実証的に示されている。むしろ財政危機は、経済の停滞を自明としてしまい、経済停滞の中で緊縮政策(財政再建政策という名前の政府支出減少や増税)で生じてしまうことも明らかにされている。

 まだ一年が始まったばかりである。安易に危機を煽る本よりも、地に足がついた経済書や議論をしっかりとこの一年読んでいきたいと思っている。

【私の論評】常識を働かせば金融岩石論にははまらない(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事のように、金融岩石論とは、日銀が国債の購入を増やすなど、量的緩和を強化した場合、その結果は、効果がゼロか、ハイパーインフレが発生するかどちらかであり、適度のインフレが発生することは有り得ない、という考え方です。

こうした考えを持つ人は多いのですが、その根拠となる理論構成は、あまりはっきりしていません。私は、説得力のある理論構成に、まだ出会ったことはありません。

なぜこのように呼称することになったかとえば、岩を押しても全く動かないが、一旦、動き始めると、崖から急に転がる様に落ちて行き、止めることができない状況になるのと似ているかららしいです。

黒田総裁の前の日銀総裁白川氏もこの金融岩石論者の考えに近かったと思います。実際白川氏は、2012年5月24日には、「ゼロ金利下では日銀が大量に資金を供給しても、資金はそのまま当座預金に預けられる、のれんに腕押しの状況になっているため、量では金融緩和の度合いは測れない」と発言していましたし、同4月21日には、「中央銀行は国債担保の流動性供給、あるいは国債買い入れを通じて、最終的に際限のない流動性供給に追い込まれる可能性があります。それによる膨大な通貨供給の帰結は、歴史の教えにしたがえば制御不能なインフレです」と発言していました。

日銀前総裁白川氏
資金を大量に供給した場合は、白川氏はハイパーインフレになると考えていたのです。そして、財政ファイナンスという政策が、量的緩和の効果をゼロからハイパーインフレへと非連続的に転換させる、誤った政策である、と考えていたようです。
さて、金融岩石論とは異なる、金融政策の粘着理論があります。

金融政策が効果を発揮するまでには長く複雑なラグがあるが、効果は少しずつ表れるというのが金融政策の粘着理論です。

この理論の詳細については、以下のリンクをご覧になって下さい。
金融政策の岩石理論と粘着理論
あるいは、書籍『アベノミクスは進化する』をご覧になって下さい。

上の記事で、原田泰氏は、「1)マネーと物価は連動している、2)物価はいきなり猛烈に上昇するのではなく半年以上、通常は1年から数年かかる」ことを指摘しているとあります。

原田氏は金融政策の粘着理論を正しいものとしています。2013年4月から、黒田体制の日銀はそれまでの白川体制の日銀の金融引き締め一辺倒の金融政策から、異次元の包括的金融緩和に転じました。以下に、当時の金融緩和政策について振り返っておきます。以下にチャートを掲載します。



その時から、この包括的金融緩和により、金融岩石論ではなく、金融粘着理論に従い日本経済は以下のような段階を踏むはずでした。
1.日銀がマネタリーベースを増やす
2.予想インフレ率が約半年かけて徐々に上昇し、実質金利が下がる
3.消費と投資が徐々に増える
4.外為市場で円安が起こり、徐々に輸出が増える
5.約2年~をかけて、徐々にGDPが増え、失業率が下がり、賃金が上がり、インフレ率も上昇する。その過程で株価も上がる。
金融政策が効果を発揮するまでには長く複雑なラグがありますから、上記のように綺麗に段階を踏むというわけではなく、ある項目のほうが進んだり、あるいは遅れたりしつつ、効果は少しずつ現れたはずです。しかし、これを4、5年も継続していれば、上記すべての項目について達成できたに違いありません。

ところが、ここで番狂わせが生じてしまいました。その番狂わせとは、2014年4月からの消費税増税でした。もし、消費税増税をしていなければ、金融緩和に転じてから4年を過ぎた今頃には、完璧に上の5段階まで到達していたことでしょう。

しかし、経済上の「逆神」たちは、これを無視してアベノミクスは失敗だったとして、ブログ冒頭の田中秀臣氏が指摘するように、岩石理論を主張しているのです。

そうして、今までの推移からでも、岩石理論は完全に間違いだったことがはっきりしています。結局のところ、金融緩和をしてもハイパーインフレには見舞われていません。

それよりも、粘着理論のほうがあてはまっていることがわかります。たとえば、昨年は雇用状況がかなり改善され、その象徴的な出来事として、昨年春の大卒、高卒の就職率は、記録を初めて以来最高となりました。

さらに、金融緩和をはじめたばかりの頃には、これは当然のことなのですが、実質賃金が下がりました。これは、雇用が改善しはじめると、まずはアルバイト・パートや、新人を新たなに雇い入れるため、全体では賃金が下がるのが普通なのですが、経済の「逆神」たちは、「実質賃金がー」と大騒ぎしました。

これも、一昨年あたりからは徐々にあがりはじめています。これは、どう考えても粘着論のほうがあてはまっています。

そうして、物価目標2%は未だに達成されていません。これに関しては、日本の構造的不況はおそらく2.7%以下であるのに、現状では失業率が3%を切っていないので、量的緩和がまだ不十分であると考えられるということを主張しました。

やはり、追加緩和を行い、早期に失業率を3%を切るようにし、物価目標を一日でもはやく達成すべきです。

しかし、金融政策粘着論からいえば、追加金融緩和をしても、緩和した直後に失業率が3%を切り、さらに物価目標をすぐに達成できるわけではありません。少なくとも2年くらいはみるべきでしょう。

それにしても、日本の経済の「逆神」たちは、金融政策の粘着理論を全く理解していないようです。

金融政策の粘着理論の理論的背景などについては、それこそ書籍『アベノミクスは進化する』をご覧になるのが良いとは思いますが、これは、常識的に考えてもわかります。

企業を例にとると、会社の業績が悪くなったときに、業績を改善するには、何か手を打ったとして、即座に良くなるわけではありません。会社の規模にもよりますが、3年から5年はかかるとみるべきではないでしょうか。無論、あまり時間をかけてしまえば、業績が悪くなり過ぎて会社が潰れてしまいますからそんなに時間をかけることはできません。

業績を回復させるために、手っ取り早くまずは、銀行からお金を借りることができれば、そのお金をつかって設備投資や人材の雇用などをすれば、それで短期的に効果があげられ、業績が回復するかもしれません。これは、マクロ経済対策でいえば、財政政策に相当すると思います。

しかし、時流にあったまともなマーケティングやイノベーションをするとなると、それだけではすみません。ただ、設備投資をしたり、人材を採用すれば良いというわけではありません。企業の人々の心をそれ以前と比較して、根本的に変えなければならないわけです。これには、ある程度時間がかかります。これを実施することが、マクロ経済政策でいえば、金融政策にあたるのだと思います。デフレ予想をインフレ予想に変えるにも時間がかかるのです。

このように考えれば、金融政策の粘着性などかなり理解しやすいです。やはり、経済の「逆神」は常識はずれということなのだと思います。

田中秀臣氏は、「こういう人たちの本を読むくらいなら、地に足がついた経済書や議論をしっかりとこの一年読んでいきたいと思っている」と上の記事を締めくくっています。

そうて、田中氏はご自身のブログで"[経済]お正月特別企画:2016年心に残る経済書ベスト20発表!!(ベスト10日本人著者全コメント公開)"という記事を掲載されています。

以下に、その記事のリンクを掲載します。


私も、金融岩石理論のはまらないように、これらの書籍のうち、まだ読んでないものも読んでみようと思いまます。

【関連記事】


2015年5月10日日曜日

問題だらけの中国経済 都市はゴーストタウン化 レアアースでは大失敗―【私の論評】鬼城が誕生した信じがたい中国中央政府の出鱈目、こんな政府の主導するAIIBなど最初から破綻するのはわかりきっている(゚д゚)!


誰一人、人が住まない中国のゴーストタウン 鬼城
2015.05.10

ZakZak 連載:大前研一のニュース時評

中国国家統計局が先月15日に発表した2015年1-3月期の国内総生産(GDP)は、前年同期比7%増程度だった。これは09年以来最低の数字。中国の経済成長の鈍化は今後も続くことが予想される。

特に足を引っ張っているのは不動産関連だ。先月16日の日経新聞には「中国・重慶市郊外の売れ残った大規模マンションをさばくため、開発業者が『1軒購入すれば、もう1軒おまけします』と売り出した」という記事が載っていたが、こんなトンデモないことをしなければならないほど追い詰められているようだ。

中国ではいま、「鬼城」(グイチャン)という言葉が注目されている。意味は「廃棄された街」。不動産投資の過熱によって各地で巨大都市開発が進められたものの、建設途中でストップしたり、完成しても入居者はなく、建物だけが立ち並んでゴーストタウン化している地域のことだ。

100万人都市として巨大高層マンション群が開発されたのに、実際に居住しているのは3万人程度というところもある。これが中国全土には、大きなものだけでも20-30はあるとされる。だが、中国経済がダウンすると世界も大きな影響を受けることになる。また、過剰な生産設備が海外に目を向けた時には、ダンピングで日本はじめアジア企業は大打撃を受ける。いまは「もう少し踏ん張ってくれ」と言うしかない。

その中国は、蓄電池や発光ダイオード、磁石などのエレクトロニクス製品の性能向上に必要不可欠なレアアースや、超硬工具の原料に必要なタングステンにかけていた輸出関税を5月1日から撤廃した。昨年夏、世界貿易機関(WTO)が中国のレアアース輸出規制を協定違反と認定したことを受けたものだ。

5年前の沖縄・尖閣諸島沖中国漁船衝突事件後、中国は日本に対する嫌がらせのために強引な禁輸措置を取った。しかし、日本や世界各国は知恵を絞って再生利用したり、ほかの物で代用して省レアアース化を進め、需要を縮小させた。いまごろになって、中国側は「もう意地悪はしない」「いや、もともと意地悪なんかしていなかった」と主張しているが、時すでに遅しだ。

最後は毎度おなじみ、「中国人の爆買い」に関する話題だ。広東省の深●(=土へんに川)市の公安当局は先月13日、「深●(=土へんに川)住民による香港訪問を週1回に制限する」と発表した。香港では粉ミルクなど日用品を爆買いする中国人の運び屋のため、日用品不足や商業施設の混雑が深刻化し、香港住民の反中感情も高まっている。それを収めるのが狙いだ。

粉ミルクがまったくなくなってしまうなど、日常生活を荒らされた香港の人たちにとって、とんでもない規模でやってくる中国人の爆買いは迷惑以外の何物でもない。近い将来、東京・銀座でもこういうことが起きないともかぎらない。そうならないことを祈っている。

■ビジネス・ブレークスルー(スカパー!557チャンネル)の番組「大前研一ライブ」から抜粋。

【私の論評】鬼城が誕生した信じがたい中国中央政府の出鱈目、こんな政府の主導するAIIBなど最初から破綻するのはわかりきっている(゚д゚)!

中国の鬼城

上記の記事、大前研一氏によるものであり、大体まともなのですが、以下の下りは全く納得できません。

だが、中国経済がダウンすると世界も大きな影響を受けることになる。また、過剰な生産設備が海外に目を向けた時には、ダンピングで日本はじめアジア企業は大打撃を受ける。いまは「もう少し踏ん張ってくれ」と言うしかない。

まずは、特に日本は円安傾向にあることから、大打撃を受けるなどということはないです。むしろ、円高傾向だったときのほうが、はるかに大打撃を受けました。日本で、部品を作成して、それを組み立てて日本国内で販売するよりも、日本で部品を作成して、それを中国で組み立てて、日本に輸入したほうがはるかに安上がりという異常状況にありました。

さらに、部品も中国で作成して、それを中国で組み立てて、日本に輸入したほうがさらにコストダウンとなるということで、多くの企業が中国に進出して、日本の産業は空洞化しました。しかし、このようなことは、円安によって終止符が打たれ、今では、そのようなこともなくなり、中国に進出した日本企業が日本に回帰するという動きが顕著になっています。

今でも、中国製品の多くには、日本製部品が多く組み込まれています。これについては、このブログにも掲載したことがあります。その記事のURLを以下に掲載します。
GDPで日本の2倍の中国だがいまだ日本抜きで経済成り立たない―【私の論評】張り子の虎の実体はもう明らか、日本は本物の虎に対する投資を増やすなど正しい資源配分をするべき(゚д゚)!
日本は、中国のような張り子の虎を相手にするのではなく、中身も充実した本当の虎を相手にすべき(゚д゚)!
詳細はこの記事をご覧いただくものとして、この記事では円安のため見かけ上、GDPが日本の二倍になったとされる中国ではありますが、その実日本なしには未だに成り立たない中国の現実を掲載しました。

以下に一部をコピペさせていただきます。

 中国のGDP(国内総生産)はすでにドルベースで日本の約2倍となった。しかし、実態は「張り子の虎」。いまだ日本抜きで中国経済は成り立たない。中国の製造業は日本企業の製品や技術が支えているといっても過言ではない。企業のコンサルティングを行なうなど中国ビジネスに詳しい高田拓氏が語る。 
「例えば、白物家電でトップクラスの世界シェアを誇る中国の家電メーカー・ハイアールの冷蔵庫を分解してみると、特に上位機種ほど、コンプレッサーなどの基幹部品はパナソニックなど日本製が使われています」

ハイアールの基幹部品は、日本製(゚д゚)!
他にも、2008年にノンインバーターエアコンで世界市場1位だった中国メーカー・珠海格力電器(グリー・エレクトリック)と業務提携した空調大手のダイキン工業は、同社に独自の「インバーター技術」を供与。代わりにグリーのコスト競争力を得ることで、かつてはゼロに近かった中国国内のインバーター機普及率を6割近くまで高めた。 
「最近では中国市場に数多くあった日本ブランドの家電製品、携帯電話の影が薄くなっているが、ハイアールやダイキンの例に見られるように、基幹部品や技術で多くの“日本製”が内蔵されている。つまり、日本企業は『BtoB』に構造転換しているのだ。一見して見えにくいが、実は日本が中国企業の躍進を下支えしているといえる」
さてこのような中国ですが、いわゆる不動産投資も出鱈目中の出鱈目でした。日本のデベロッパーなど、大規模な開発をするときには、徹底的に市場調査を行い、需要と供給のバランスをはかるような開発をします。

ところが、中国では全く異なります。中央政府も、地方政府も出鱈目でした、不動産投資をして開発がなかなかうまくいかないと、その次に何をしたかといえば、最初の開発で、10の開発したとすとると、さらに大々的に再投資してそのすぐ横に、100の開発をます。その100の開発がうまくいかないとなると、さらに大再投資して、すぐ横に1000の投資をして開発するという具合で、とにかく投資を続けてしまうというとんでもないことを繰り返していました。

だから、ブログ冒頭にもあるような、鬼城が多数生まれてしまったのです。全くの出鱈目で、このようなことが起こってしまったのです。

中国の鬼城

しかし、このようなことは永遠に続くはずもなく、1〜2年前くらいから破綻が始まり、現在に至っています。そうして、このようなことは、中国中央政府がどんどん地方政府に金を流して、地方政府に実行させていたということです。

それは、そうです。現在の中国は共産主義ではないものの、国家資本主義体制ですから、中央政府がこのようなことをさせていたということです。そうして、投資の元手はどこから来るからといえば、ほとんどが海外からの借金です。

さて、このような中国政府が主導するAIIBなど、結局中央政府が、国内では失敗した投資を国外で実行して、儲けようという腹なのでしょうが、投資に関するノウハウがほとんどない中国中央政府によるAIIBなど、最初から破綻するかあるいは、参加表明した国々も、このように信用のおけない中国の実体を知るようになり、有名無実になるのがおちです。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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2014年6月19日木曜日

【石平氏ツイート】中国経済の硬着陸は現実味を帯びてきた―【私の論評】中国経済はもともとすでに破綻している、ただ体裁を繕ってきただけ(゚д゚)!

【私の論評】中国経済はもともとすでに破綻している、ただ体裁を繕ってきただけ(゚д゚)! 

エリザベス女王に謁見した李克強

中国の李克強首相のイギリス訪問に関しては、日本国内では、エリザベス女王との謁見などのことが話題になったようです。

これに関しては、以下の記事をご覧下さい。
中国の李首相が英女王との面会を要求した理由とは?
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、李首相が英女王との面会を要求した理由は、2009年に当時まだ国家主席にはなっていなかった習近平氏が、天皇との面会にこだわったのと同じような理由であるとしています。

その理由とは、結局のところ、両方とも、中国国内での、政治的な権威を誇示するためには、必要であったというわけです。

どうせ、その程度のことだと思います。それにしても、中国の共産党内部などその程度のことで外国に対してゴリ押しをするということで、相変わらずというところです。国内政治を海外にも持ち出すという中国特有の低次元の馬鹿さ加減が露呈したというだけの話であると思います。

習近平も李克強も日本やイギリスからいえば、建国70年程度の新興野蛮国家の、氏素性もわからないような馬の骨に過ぎないわけですから、日本やイギリスの権威を利用して、国内で泊をつけようとの魂胆が見え透いています。

中国幻想も終末に近づきつつある?


こんなことは、さほど重要なことではありません。やはり、このブログの冒頭に掲載した、石平氏のツイートで述べられていた事実のほうが余程重要です。

石平氏の言うように、中国経済の硬着陸は現実味を帯びてきました。

それは、以下のような事実からも明らかです。
 「事実上破綻状態」にある中国・天津市 筆者 鳥羽賢 | 05/05/2014 - 19:48

 ここ10~20年で目覚ましい発展を遂げてきた中国経済だが、一方で最近数年は「バブル崩壊」の噂も少しずつ広がっている。そんな中、中国第5の都市である天津市が「事実上破綻状態」にあるという衝撃的なニュースが流れている。

開発計画が不況のため頓挫

まず天津市という都市の場所と役割を再確認しよう。天津は中国の首都・北京のすぐ南東にあり、海に面している港湾都市である。そして天津は都市としての経済規模で言えば、上海、北京、広州、深センに次いで中国全土でも第5位の規模を持つ。ところが中国の汪洋副首相は2月の国務院の会議で「天津は事実上破綻している」と述べていた。一体どうしてこうなってしまったのか? 
 こうなった経緯は、少し前の2006年頃にさかのぼる。2006年に中国は天津において「東洋のマンハッタン」建設を目指した、大規模プロジェクトを開始した。このプロジェクトには中国は約600億元(日本円で1兆円弱)も投資されることとなった。日本円で1兆円弱だが、中国のお金の価値を考えると、日本で言えば数兆円にも匹敵するであろう巨額の数字だ。600億元ものお金を投資し、39のプロジェクトによって49棟の超高層ビルを建設する予定であった。 
 しかし「東洋のマンハッタン」プロジェクトは、2008年のリーマンショック後の世界的不況、そして地価の伸び悩みの末に、頓挫することになる。天津には建設途中で放棄された多くのビルなどが残っており、さながらゴーストタウンのようになっているという。しかしこのようなゴーストタウンは、すでに中国各地に存在する。 
 そして先月の19日に、天津の破綻を象徴するような出来事が起こる。「東洋のマンハッタン」プロジェクトを手掛ける主要な不動産会社の1つである北方信託公司の劉恵文会長が、自宅で自殺したのだ。これは会社の経営難を苦にしての自殺であろうと見られている。 
天津市の夕暮れ
 天津はプロジェクトの失敗によってすでに多額の債務を抱えており、直接的な債務だけでも2246億元(約3兆6600億円)に上るというデータがすでに出ている。さらに前述の汪洋副首相の話では、その他の債務も含めると天津市の債務総額は約5兆元(約81兆6000億円)にもなるとのことだ。 
 しかしさらに問題なのが、このような開発プロジェクトの失敗が天津市に留まるものではないことだ。中国はここ数年無鉄砲な大規模開発プロジェクトを全国的に行っており、その多くが「東洋のマンハッタン」プロジェクトのように、リーマンショック後の世界不況や地価の下落で利益を出せずに頓挫してしまっている。このようなプロジェクトの多くは地方が行っているので、その債務は地方財政にのしかかってくる。そして、それらを全て把握できている人間などほとんどいない。すでに知られていることだが、中国の統計は正確さにかなり欠けるものであるからだ。 
 GDP規模で中国第5位の天津が「事実上破綻状態」にあるという事実は、かなり重く受け止められなければならない。しかもこの言葉は、外国のメディアではなく中国の汪洋副首相から出たものだ。今後中国投資をするなら、慎重にしていきたい。
天津市はどうしようもなくなって、表に浮上したのですが、地方政府が繕いをしているの表にはまだでてきませんが、中国各地がこのように状態になっています。中国の経済は、本当はリーマン・ショック時に破綻していたのです。

中国の厚化粧は女の子だけではない! 発展する中国経済も厚化粧そのものだった!

これを何とか繕うため、少し前までは元を多量に刷り増しなどしましたが、これをやり過ぎたたため、現状さらに大量に刷り増し等したりして、大規模な金融緩和をすると、ハイパーインフレになるおそれがあるので思い切って実行することができません。

かといってそのまま放置しておけば、熱銭が入り込まなくなるということで、これでは、先日もこのブログに掲載した中国のポンジ・スキーム(投資詐欺)が成り立たなくなるということで、これは自転車操業もそろそろ継続できない状況に陥りつつあります。

リーマンショッ後から継続してきた、厚化粧・見かけのとりつくろいによる投資詐欺もそろそろ、終わりに近づいています。もう、なるようにしかなりません。

こんなときに、中国投資をするのは愚かしいことです。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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2014年4月29日火曜日

国の借金 2060年度に1京円超! 財政審試算―【私の論評】お馬鹿な財政審試算!!経済は破綻するか均衡するかだけ、そんなことは血圧を考えてみてもわかる簡単な理屈(゚д゚)!

国の借金 2060年度に1京円超! 財政審試算


財政制度等審議会(財務相の諮問機関)の財政制度分科会は28日、国と地方を合わせた財政の長期試算を公表した。財政再建に取り組まず、税収などで政策経費をどれだけ賄えるかを示す基礎的財政収支の黒字化も達成できなかった場合、2060(平成72)年度の国の借金は国内総生産(GDP)比約5・6倍の約1京1400兆円に膨らむとの試算を示した。実質経済成長率が2%で、60年度のGDPが約2053兆円の想定。

政府は20年度の基礎的財政収支の黒字化を目指しているが、達成のめどは立っていない。仮に目標を達成した場合でも、その後も収支改善に取り組まなければ、60年度の借金はGDPの約4倍に当たる約8150兆円に達するとした。

分科会では、経済再生や労働力人口の改善だけでなく、歳出と歳入両面の抜本改革が不可欠としている。

60年度の借金を国内総生産(GDP)と同規模に抑えるためには、21~26年度の計6年間で12.71%(約81兆円)~6.98%(約45兆円)の収支改善が必要になるとも指摘した。

試算は、実質経済成長率2%と1%の2つのパターンで、それぞれ国際公約である20年度の収支黒字化を達成できる場合と、できなかった場合の計4つのケースを推計。消費税率については来年10月に現行の8%から10%へ引き上げる前提とした。借金が最も膨らむ最悪ケースは、成長率2%で、黒字化が達成できない場合だった。

【私の論評】お馬鹿な財政審試算!!経済は破綻するか均衡するかだけ、そんなことは血圧を考えてみてもわかるだろがー!!今必要なのは、金融緩和の継続と、減税・給付だ(゚д゚)!

上の記事、何やら本当におかしいです。これじゃまるで、増税キャンペーンみたいじゃないですか。いや、「みたい」じゃなくて、増税キャンペーンそのものですね。はっきりいって、「いやらしぃー」の一言です。

国の借金が、増え続けて1京円にもなるなんて、いい加減にしろよといいたいです。そんなことにはならないことは、素人にだってわかります。たとえば、人の血圧を考えても判ると思います。

たとえば、人の血圧いくらあがったとしても、250とか、それくらいが最大であり、それ以上にはなりません。上の記事の国の借金1京円などという与太話、ハイパーインフレにでもなれば、わからぬでもないですが、借りにハイパーインフレになっていっとき国の借金が1京円になったとしても、いずれハイパーインフレはどこかで収束しますから、長続きはしません。

ハイパーインフレにならないで、国の借金が1京円ということはあり得ないです。そうなる前に、経済が破綻するから、どこかで均衡して借金が増え続けることはありません。それは、実際に破綻した国などをみていてもわかることです。

1000まで測れる血圧計はない

それは、人体でいえば、血圧があがり続け、血圧が1,000とか、10,000になるなどということはないのと同じです。人の血圧はどんなに高くても、数百以上にはなりません。数百を超えたら、死ぬか、また元の正常な血圧に戻るかの二通りであり、永続的に血圧が上がり続けることなどないです。だから血圧計の測定できる範囲は決まっています。1000まで測れるようなものはありません。

血圧と、国の借金は比較の対象にはならないですが、どちらも天井がないなどというのは、馬鹿げた妄想にすぎません。

そもそも、日本国自体には借金などありません。このブログでも何度か掲載してきたように、日本国は、世界に一番お金を貸し付けている金満国家です。

これについては、以前もこのブログで、説明したことがあるので、その記事のURLを以下に掲載します。
対外純資産、過去最大の296兆円 2位中国の2倍、22年連続「世界一の債権国」―【私の論評】対外金融資産が世界一の国日本が、財政破綻すると思い込むのは狂気の沙汰、そんなことをいい触れ回る輩は大馬鹿かスパイに決まり(゚д゚)!
これは、昨年5月度の記事です。2012年度の対外金融純資産(日本が外国に貸し付けている金から、借りている金を控除したもの)が296兆円だったというものです。これは、世界一です。これだけの金満国家が借金だらけなどということはあり得ません。

来月になれば、対外金融純資産の13年度分が発表されることになりますが、今回もおそらく似たような結果になると考えられます。

上の記事の間違いは、国の借金としていることです。正しくは、政府の借金としなければなりません。政府=国家ではありません。特にマクロ経済的にはそうではありません。

政府の借金、即国の借金ではありません。日本には、政府のほかに、家計、民間企業、金融機関など他の経済主体もあります。

国そのものが借金しているというのなら、対外金融純資産はマイナスになるはずです。

では、国そのものでは、世界で外国に一番お金を貸し付けるような金満国家の政府が大赤字で借金をしているかといえば、それはデフレだからです。

デフレになれば、国民の所得は減り、税収も減ります。デフレも20年近くになれば、税収はどんどん減り、政府は借金せさるをえなくなったのです。

しかしながら、日本では家計、金融機関、民間企業など政府以外の経済主体にはお金があるので、政府は外国から借金をせず、日本国内で借金するだけで、まかなうことかできます。だから、外国から借金などしなくても何とかなってきたのです。

このような状況は、そもそも、国自体が真っ赤かのギリシャなどとは根本的に違うのです。

だから、日本では何をさておいても、デフレから脱却しなければならないのです。デフレから脱却できれば、政府の借金も相当減ります。政府の借金を減らすには、まずは何か何でもデフレから脱却するべきなのです。

デフレにある現在は、これを克服するために実施すべきは、金融緩和と財政政策です。金融緩和に関しては、昨年4月よりすでに実施していますから、あまり問題はないのですが、問題は財政政策です。

財政政策として、すぐに頭に浮かぶのは、公共工事です。しかし、公共工事は、ここ20年近くも政府が公共工事を減らし続けてきたので、公共工事などの携わる事ができる人々、すなわち、建築・土木関連の企業数や、携わる人々が減ったしまったのでおのずと、工事のできる範囲は決まってしまいます。

これは、公共工事の供給制約という言葉で広く知られています。これに関しては、このブログでも過去に掲載したことがあるので、以下にそのURLを掲載させていただきます。
【日本の解き方】高く評価できる黒田日銀の1年目 懸念は増税による成長率下振れ―【私の論評】財政政策にも限りが、追加財政政策をしたとしても、公共工事の供給制約がある(゚д゚)!
公共工事を多めに実施すれば、確かに積極財政となるはずですが、残念ながら現状ではそれも、公共工事の供給制限によってできないということです。

では、外国人労働者でも大量に雇い入れて、国債を大量に発行して、どんどん公共工事をやってしまえば良いではないかという極端な意見もありますが、これにも限界があります。これも、やりすぎれば、クラウディングアウトのような状況を招く危険があります。

クラウディングアウト(英: crowding out)とは、行政府が資金需要をまかなうために大量の国債を発行すると、それによって市中の金利が上昇するため、民間の資金需要が抑制されることを意味します。「クラウディングアウト」(crowding out)の字義は「押し出す」という意味です。IT関係のクラウドとは直接関係はありません。

一般には、クラウディングアウト効果としてつかわれます。典型は失業対策などのために国債を発行して公共事業や福祉政策を拡充させようとする際、大量に発行した新発国債が意図せず市中金利を高騰させ、民間の経済活動(投資のための資金調達や住宅購入などの消費行動)に抑制的な影響を与えてしまう場合です。

外国人労働者でも雇って、大々的に公共工事をやれば良いというものでもない

こんなこともあるので、現下で行うべき財政政策は、減税もしくは、何らかの給付です。公共工事は、徐々に増やして供給制約による悪影響や、クラウディングアウトを避けつつ行うべきであって、ただ直線的にドンと増やせば良いというものではありません。

しかし、財政制度審議会は上記のような頓珍漢、奇妙奇天烈な長期試算を発表して、国民を幻惑するばかりです。これでは、単純に読めば、歳入を増やすため、増税し、歳出を減らすために、節約するべきであると言っているようにしかみえません。こんなことをすれば、ますます、デフレの深みにはまるばかりです。

こんな馬鹿な話はありません。デフレを是正する王道は、金融緩和と積極財政しかありません。積極財政に関しては、公共工事は増やすにしても、当面増やせそうもないので、大規模な減税(所得税減税)と、大規模な給付です。

8%増税は、すでにスタートしてしまったので、とりかえしがつきませんが、10%増税は何が何でも阻止です。

増税キャンペーンのような試算結果を発表する財政審は、どこか狂っています。やはり、増税派の木下大元帥閣下のご意向にそっているということなのでしょうか。


このデフレからまだ抜けきっていない、現状をいったい木下や、その他増税賛成派の人々はどう捉えているのでしょうか。これに関しは、田中秀臣先生が興味深い記事を書いています。その記事のURLを以下に掲載します。
国民の重税を喜ぶ人たちの経済学ー消費税増税8%時代の開幕ー
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、田中氏は、この記事の中で以下のように述べています。
おそらくこのような予算に群がる寄生虫ネットワークの住人たちにとっては、消費税増税対策の補正予算は、甘い蜜以外のなにものでもない。むしろこの甘い蜜をほしいために、消費税増税をすすめたり黙認しているのだろう。
甘い蜂蜜には利権亡者たちが集まる

要するに、デフレで国民や国がどうなっても良い人たち、消費税増税対策の補正予算という甘い密が欲しい人たちが消費税増税をすすめたり黙認しているのです。

そうして、その中心には木下財務次官や、その取り巻きがいて、大増税キャンペーンを実施し、8%増税を成立させ、次の10%増税を狙っているのです。

しかし、こんなことをやられては、国民がさらにデフレによる塗炭の苦しみを味わうだけで、何も良いことはありません。政府の税収も減ります。とにかく、デフレは経済の正常な状態から逸脱した状態です。人体でいえば、癌と同じです。このまま放置しておけば、利権を貪りたい人にもその機会がなくなります。

デフレ脱却は、実は今この日本に住んでいる、日本人にとっては共通の利益になるものです。日本のデフレで一番喜ぶのは、中国であるということをお忘れなく。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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