2023年12月5日火曜日

前原誠司氏離党の余波、自民・国民の連携加速か…飛び出す「公明党不要論」 前原新党〝いずれ維新と合流〟の声―【私の論評】自公連立を運命づけた「日本列島総不況」が思い起こさせる政権の安定に必要不可欠なもの

 前原誠司氏離党の余波、自民・国民の連携加速か…飛び出す「公明党不要論」 前原新党〝いずれ維新と合流〟の声

まとめ
  • 国民民主党の分裂は、自民党と国民民主党の連携を加速させる可能性が高い。
  • 一方、公明党は国民民主党の連立入りを警戒し、自民党の非主流派と連携して揺さぶってくる可能性がある。
  • 自民党内では、民間労組との関係強化を進めており、国民民主党との接近はそうした動きの上でのものと考えられる。
  • こうした動きを踏まえて、自民党の一部からは「公明党不要論」まで出ている。



 国民民主党の前原代表代行らが離党し、新党「教育無償化を実現する会」を結成した。この新党は、日本維新の会の看板政策である「教育無償化」を掲げており、今後は維新の会に合流する可能性が高い。

 前原氏らの離党は、国民民主党と与党の連携を加速させる可能性がある。前原氏らは与党との協調路線に強く批判的だったため、彼らの離党で国民民主党内の与党協調派が台頭し、自民党との連携が進むと考えられる。

 これに対し、公明党は国民民主党の連立入りに警戒感を強めている。公明党は、憲法改正や安全保障政策などで自民党と協力関係にあるため、国民民主党が連立入りすれば、自民党との関係が悪化する可能性がある。

 自民党内では、公明党不要論も浮上している。自民党は、民間労組との関係強化を進めており、国民民主党との連携により、公明党の存在意義が薄れつつあるとの見方もある。

 今後、岸田政権は国民民主党とどのような形で連携していくのか、注目される。連立協議にまで突き進めば、党内政局に大きな波紋を呼ぶことになるだろう。

 この記事は元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】自公連立を運命づけた「日本列島総不況」が思い起こさせる政権の安定に必要不可欠なもの

まとめ
  • 自公連立は、日本列島総不況(全国的な不況)による自民党政権の不安定化を回避するため成立したといえる。
  • 自民党は、国民民主党と連立することで、政権運営の安定化を図ろうとしている。
  • 国民民主党の玉木代表は、マクロ経済に関するまともな認識を持っているため、連立することで、経済政策が改善する可能性がある。
  • しかし、現状では、自民党の多数派によって、国民民主党の影響力は限定的である。
  • 自民党も野党も、政権安定には経済安定化が必要不可欠であることを認識すべきである。

こうした動きは、自民党側からみれば次の選挙で勝ち、圧倒的に多数の議席を占め、政権運営を安定させるということが狙いでしょう。方法については、異論はあるでしょうが、多くの自民党議員はこのこと自体には反対しないでしょう。

しかし、現状のままで政権の運営を安定させるために、このような動きをするのは全く無駄になる可能性が高いです。それは、なぜ自民党が公明党と連立政権を組まなければならなくなったのかを振り返れば理解できます。これは、以前このブログにも述べたことです。

自民・公明が連立政権を組む前の年である、1998年度に日本経済は、主要な需要項目が前年を下回り、大部分の業種が減収減益に見舞われる「日本列島総不況」に陥りました。 こうした需要の低迷を背景に物価も弱含みとなり、物価の下落が企業経営の悪化や雇用の減少を招き、それがさらに景気を悪くする「デフレ・スパイラル」に陥る可能性さえ考えられ状態になり、実際その後日本はそうなりました。

「日本列島総不況」は1998年の流行語大賞を獲得した これを模したTシャツが販売された

日本経済が、このような状態になったのは、バブル期に確かに株価や地価はうなぎ登りでしたが、一般物価の上昇はさほどでもなかったのに、日銀官僚の誤謬によって、本来実施すべきでなかった金融引締に転じ、政府も緊縮財政に舵を切るなど、マクロ経済政策が間違ってしまったせいです。

日本列島総不況とは、1997年から1999年まで続いた不況のことです。この時期は「第2次平成不況」とも呼ばれています。

日本列島総不況は、経済状況が全国的に急速かつほぼ一様に悪化し、大都市圏と地方圏の区別なく、一気に飲み込んでしまったことを指しています。

この時期は、バブル経済が崩壊(現実には、この時期の一般物価は比較的安定していたにもかかわらず、日銀が金融引き締めをしたことによる景気の悪化)した1990年代初頭からの10年間を指す「失われた10年」に含まれます。この期間はバブルの後遺症ともいえる景気後退と長期不況が続いたため、日本の経済に大打撃を与えました。

「失われた10年」の時期は次のとおりです。
第1次平成不況(バブル崩壊・複合不況):1991年から1993年まで
第2次平成不況(日本列島総不況・複合不況):1997年から1999年まで
第3次平成不況(IT不況・デフレ不況):2000年から2002年まで
この時期に、マスコミや政治家、識者も、この不況の原因を理解せず、現象面だけをとらえ、政府は何らの抜本的解決策も取りませんでした。金融・財政政策に問題があるとした識者はごく少数にすぎませんでした。


1999年1月前後のコアコアCPIは3%少し超えた程度であり、CPIは最高で4%程度です。これでは、とてもバブルなどとは言えない水準てす。ロシアや米国で昨年は11%にも及んだことを思い出してください。ここで、金融緩和をしないというのならまだ理解できますが、金融引き締めに転じたというのはかなり悪手だったといえます。

その後は、物価の下落が続き、日本は長いデフレに入ることになります。

経済の悪化は自民党にも相当影を落とし、支持率が低迷し連立しないと過半数を取れないような状況になってしまったのです。

この時代に、日本がまともな財政・金融政策をとっていれば、経済が落ち込むこともなく、自民党の支持率もあまり落ちることかなく、連立など組まなかったかもしれません。それは、高度成長期に自民が連立を組む必要などないどころか、思いもしなかったことでもはっきりしていると思います。

実は、経済は政権維持のために重要なファクターなのです。それは当たり前です。多くの有権者にとって、天下国家の話より、まずは自分たちの生活が安定することが最優先課題です。自分の生活が安定した後に、天下国家の話になります。それに気づいたからこそ、安倍首相は第二次政権においてはアベノミックスを打ち出し、長期政権を築くことができたのです。

安倍首相

安倍政権は結果として三党合意、財務省などに阻まれ、二度消費税増税をしなければならない状況に追い込まれました。それでも金融緩和は継続されこともあり、雇用は急速に改善され続けたからこそ、長期政権になったことは否めないと思います。

国民民主党の玉木代表は、マクロ経済に関してまともな認識を持たれているようです。玉木代表は、2023年9月2日に行われた立憲民主党との合同会見において、インフレ対策について「財政出動と金融緩和の両輪を組み合わせて、経済全体を下支えすることが重要だ」と述べました。これは、インフレ対策において、財政出動による需要創出と金融緩和による資金供給の両方を組み合わせることが重要であるという、マクロ経済学の基本的な考え方に基づくものです。

また、2023年10月21日に行われた日本経済新聞のインタビューにおいて、「経済成長のためには、民間投資を促進することが重要だ」と述べました。これは、経済成長の原動力は民間投資であるという、マクロ経済学の基本的な考え方に基づくものです。

2023年11月11日に行われた自民党との会談において、「財政再建のためには、歳出削減と税収増の両方が必要だ」と述べました。これは、財政再建には、歳出削減による支出抑制と税収増による収入増の両方が必要であるという、マクロ経済学の基本的な考え方に基づくものです。

これらのエビデンスから、玉木代表はマクロ経済に関する基本的な知識と理解を有しており、マクロ経済政策に関するまともな判断ができると考えられます。

こうしたことから、国民民主党と自民党が連立することは、自民党にとっては経済面では良い影響を及ぼすものと考えられます。

ただ、国民民主党が自民と連立すれば、確かに与党内で経済政策に対して、一定の影響力を及ぼすことはできるものの、現状では、多勢に無勢でまともなマクロ経済対策が実施される状況ではないようで。

この状況では、大きな政治的な動きがあったにしても、結局雲散霧消してしまう可能性が高いでしょう。それは、過去の不況時の政治的な動をみればわかります。

経済が安定しない状況では、国民の生活や将来に対する不安が募り、政治に対する関心も低下します。そのため、政治的な動きは、短期的に盛り上がることはあっても、中長期的には支持を獲得することが難しくなります。

安倍政権は、デフレ脱却と経済成長を掲げ、国民の支持を集めました。コロナ禍においても、安倍・菅両政権で合計100兆円の補正予算を組み、経済対策を実行しました。これにより、他国にみられたような、コロナ禍中の失業率のかかなりのたかまりは日本においてはみられませんでした。

自民党は、政権を安定させるためにも、経済再生に全力を尽くす必要があります。そのためには、財政出動と金融緩和を組み合わせた積極的な経済対策を実施し、インフレ対策や物価高対策にも取り組むことが求められます。

野党も、経済再生に向けた具体的な政策を示すことで、国民の支持を獲得する必要があります。そのためには、政権交代後の経済政策を具体的に示すとともに、自民党の経済政策の課題を明確に批判する必要があります。

いずれにしても、まずは経済が安定しないと、政治の安定も望めないという点は、自民党も野党も共通認識として持つべきです。

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2023年12月4日月曜日

紅海で米軍艦や商業船攻撃 中東の緊張高まる―【私の論評】海上自衛隊、フーシ派の襲撃にどう対処すべきか? ネガティブリストへの移行が喫緊の課題

紅海で米軍艦や商業船攻撃 中東の緊張高まる

まとめ
  • アメリカ軍の駆逐艦と商業船が中東の紅海で攻撃を受けた。
  • アメリカ海軍のカーニー駆逐艦と商船が5時間にわたり攻撃され、少なくとも1機の無人機が撃墜された。
  • 攻撃はイエメンの首都から始まり、イラン支援のイエメン武装組織フーシ派によるものとされ、緊張が高まっている。

米海軍駆逐艦「カーニー」

 米国防総省は3日、紅海で米海軍の駆逐艦カーニーと複数の商業船が攻撃されたと明らかにした。AP通信が報じた。相手には言及していない。カーニーは11月29日にイエメンの親イラン武装組織フーシ派の支配地域から飛来したイラン製無人機を撃墜。フーシ派は同19日にイスラエルに関係する貨物船を乗っ取るなどして緊張が高まっている。

 フーシ派は3日、警告に従わなかったため、イスラエルの船舶2隻を攻撃したと発表。「1隻目をミサイルで、2隻目を無人機でそれぞれ標的にした」としているが、カーニーへの攻撃の言及はなかった。一方、ロイター通信によると、イスラエル軍の報道官は「2隻はイスラエルと関係ない」と述べた。

 米国はイスラエルと敵対するイランや親イラン勢力がパレスチナ自治区ガザ情勢の混乱に乗じて、中東で活動する米軍部隊に揺さぶりをかけているとみて警戒。APは「イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘に関連した中東での一連の海上攻撃が大幅にエスカレートした可能性がある」と報じた。

【私の論評】海上自衛隊、フーシ派の襲撃にどう対処すべきか? ネガティブリストへの移行が喫緊の課題

まとめ
  • 2023年11月27日、中東のイエメン沖で民間タンカー「セントラル・パーク」号が、襲撃を受けた。
  • 海上自衛隊は、ソマリア沖の海賊対処に加え、中東海域での航行妨害などに対応するため、護衛艦1隻と対潜哨戒機2機をジブチに展開している。
  • 海上自衛隊は、フーシ派による襲撃に遭遇した場合、海賊対処行動または海上警備行動によって対処することができる。
  • 海上自衛隊は、ポジティブリスト方式で統制されており、状況に応じた柔軟な対応が難しいという問題がある。
  • 中東は日本の重要なエネルギー資源の供給地域であり、海上自衛隊の迅速かつ柔軟な対応が求められている。そのため、ネガティブリスト方式への移行は喫緊の課題。
先日もこのブログに掲載したとおり、2023年11月27日、中東のイエメン沖を航行していた民間タンカー「セントラル・パーク」号が、武装勢力による襲撃を受けました。米海軍と日本の海上自衛隊が現場に急行し、襲撃犯は逃走しましたが、米軍により身柄を拘束されました。

海上自衛隊は、ソマリア沖の海賊対処に加え、中東海域での航行妨害などに対応するため、護衛艦1隻と対潜哨戒機2機をジブチに展開しています。

中東に派遣されている海自護衛艦「あけぼの」

今後、中東海域でフーシ派による襲撃が発生した場合、海上自衛隊は「海賊対処行動」または「海上警備行動」によって対処することができます。そうして、まさしく上の記事にもあるように今回フーシ派による米駆逐艦と商船に対する攻撃があったのです。

「海賊対処行動」であれば、船籍を問わず、襲撃を受けている船舶を助けることができます。また、武器使用も可能です。

「海上警備行動」であれば、日本籍船や日本人が乗船する外国籍船、日本の船舶運航事業者が運航する外国籍船などを保護できます。武器使用は、日本籍船に限られます。

どちらの行動を選択するかは、状況に応じて判断されます。

海上自衛隊がフーシ派による襲撃に遭遇した場合は、まずこれを海賊行為とみなして対処すべきでしょう。

フーシ派は、国際法上の海賊行為に該当する可能性が高いからです。また、海賊対処行動であれば、船籍を問わず、襲撃を受けている船舶を助けることができます。

ただし、海賊行為とみなすかどうかは、国際法の解釈次第です。今後、海上自衛隊がフーシ派による襲撃に遭遇した際には、慎重な判断が求められるでしょう。

さらに自衛隊は他国の軍隊と異なり、ネガティブリストではなくポジティブリストで動かなければならいないという制約があります。

いわゆるルールには、ポジティブリスト方式とネガティブリスト方式の両タイプがあります。一般的に、警察はやっていいことだけを規定するポジティブリスト型であるのに対し、軍隊の権限規定は「原則無制限」であり、やってはならないことだけ規定するネガティブリスト型です。

有事にあっては、予測しがたいすべての事態に法令を整備することは不可能という認識が根底にあります。しかしながら、自衛隊はポジティブリストで統制されており、2009 年3 月に北朝鮮がミサイル打ち上げを予告した際、当時の浜田防衛相が初めて「破壊措置命令」を発令しましたが、これは命令がなければミサイルを撃墜できないポジティブリストの特徴を端的に表しています。

国防上は臨機応変に対応するために早急にネガティブリストへ移行することが望まれます。一刻の猶予もありません。

ネガティブリストは、やってはいけないことをリスト化する

例えば、フーシ派による襲撃のような事態の場合、海上自衛隊は、これを海賊行為とみなして海賊対処行動をとることができます。しかし、これが海賊行為に該当するかどうかは、国際法の解釈次第であり、必ずしも明確とは言えません。

もし、ポジティブリスト制限が撤廃され、自衛隊がネガティブリスト制限による行動制限以外の行動を許されるようになった場合、このような状況でも、海上自衛隊は、自衛隊法の解釈に縛られることなく、状況に応じた適切な判断と対応を行うことができるようになります。

厳格な交戦規定やポジティブリストに過度に依存することが、軍事的な効果を妨げ、紛争を拡大させた事例があります。以下はその例です。
  • 1979年のイラン人質事件では、米国の救出作戦が遅れと混乱、そしてワシントンの微細な管理に悩まされ失敗しました。指揮官により多くの自主性を与えることが成功につながったかもしれません。
  • 1993年のモガディシュの戦い(後に「ブラックホーク・ダウン」として映画化された戦い)では、厳格な交戦規定により米軍は要請された支援を受けられませんでした。規則を柔軟にしていれば、米軍の死傷者を減らすことができたかもしれません。
  • 2016年のブリュッセル爆弾テロ事件では、ベルギーの治安部隊がテロリストの隠れ家への突入を妨げる法律によって批判されました。もっと慎重な行動があれば、テロを阻止できたかもしれません。
  • 1995年のスレブレニツァ大虐殺では、オランダの平和維持軍は厳格な国連の規則により、8,000人のボスニア人虐殺を防げませんでした。柔軟な武力行使があれば、命を救うことができたかもしれません。
  • 2004年のベスラン学校包囲事件では、ロシア軍の戦術が混乱し、300人以上の人質が死亡しました。現場での統制と慎重さが高まれば、より良い結果が得られたかもしれません。
  • イラク/アフガニスタンにおける米軍は、テロリストとの交戦を制限する厳格な規則によって影響を受けました。過度な法整備は効果と士気を低下させました。

映画「ブラックホーク・ダウン」より

軍の行き過ぎた行為には問題がありますが、一般的に、厳格な規則は軍の行動を制限し、混乱と遅延を招き、敵を増長させ、作戦の有効性を損ないます。ある程度の制限と監視は必要ですが、軍の司令官は任務を遂行するために信頼と裁量を必要とします。

テロリストとの交渉や戦術部隊による攻撃など、ポジティブ・リストではなくネガティブなリストの使用が、国防とテロ対策に最も効果的であることを歴史は示しています。ただし、軍事的自由度が高まれば高まるほど、適切な判断と自制に対する責任も増します。

中東は、日本にとって重要なエネルギー資源の供給地域であり、また、日本の安全保障にとっても重要な地域です。そのため、中東で活動する海上自衛隊は、迅速かつ柔軟な対応が求められます。ネガティブリストへの移行はまさに喫緊の課題といえます。国会などで議論や審議を迅速にすすめていただきたいです。

LGBT理解増進法案には大反対ですが、この法律は迅速に制定されました。この迅速さを見習いネガティブリスト方式への移行を迅速にすすめていただきたいものです。


首相、中東とエネルギー協力深化 中国意識、3年半ぶり訪問―【私の論評】米国にとって原油調達先としての重要度が低下した中東は、日本にとってますます重要に(゚д゚)!

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2023年12月3日日曜日

補正予算案「真水」は10兆円程度か あまりにひどい〝低い税収見積もり〟のカラクリ 国債はもっと減額できるはずだ―【私の論評】マスコミの偽りと保守の課題:岸田政権の減税案に隠された真実と救国シンクタンクの警告

高橋洋一「日本の解き方」

まとめ
  • 歳出総額は13.1992兆円で、前年度補正予算の10.6兆円を大幅に上回った。
  • 経済対策関係経費は13.1272兆円で、GDPの0.7%程度にとどまっている。
  • 物価高対策の規模が小さく、ガソリン補助金や家計支援金などの実施が遅れている。
  • 定額減税の実施が来年度予算送りとなり、経済への効果が大きく減退するだろう。
  • 財務省の税収見積もりは桁違いに過小であり、公債依存度が高さの演出をしているとみられる。
【衆議院 本会議(2023.11.24)】2023年度補正予算案を与党などの賛成多数をもって17 時過ぎに可決

 2023年度の補正予算案が衆院を通過した。この予算案は、経済対策を裏付けるための財政措置を含んでいる。財務省の予算フレームによれば、経済対策関連の経費総額は約13兆1272億円に上る。これには、物価高対策や賃上げ・所得向上、国内投資、社会変革、国土強靱化などの分野が含まれている。

 ただし、この中でGDPに直接影響を与える部分(いわゆる真水)は約10兆円ほどであり、残りの3兆円以上は即効性を持たない支出と見られる。また、今回の補正予算には定額減税も含まれており、これにより経済対策の実効性が高まるとの見方もあるが、その実施が来年6月以降になるため、予算案の十分性に疑問符がつく。

 予算案の税収見積もりについても懸念がある。過去の実績から予測される税収増加に対して、予算案の税収見積もりは慎重すぎる。2023年度の政府の中期財政試算では、名目成長率が4・4%と見込まれており、それに基づく税収増加率から計算すると74兆5400億円の税収が予想される。しかしこの見積もりは、実際の税収増加がこの予測を上回る可能性を無視しており、過去の実績から考えると、6兆円以上の増収が予想されます。そのため、補正予算のため国債発行8兆8750億円は減額できるはずである。

 こうした予算案の評価から、経済対策への予算配分や税収見積もりの慎重さについて、今後の議論が続くことが予想される。政府が財政措置をどのように調整し、実施していくかによって、経済への影響や財政の持続可能性にも大きな影響が及ぶだろう。

この記事は、元記事の要約です。詳細は、元記事をご覧ください。

【私の論評】マスコミの偽りと保守の課題:岸田政権の減税案に隠された真実と救国シンクタンクの警告

まとめ
  • 2023年度補正予算案は、予算の使い方や税収見積もりが慎重すぎる。
  • 税収弾性値は慎重すぎると見直すべき。
  • 国民は減税そのものを否定していない。
  • 岸田内閣は、大胆な減税を提案し、本気であることを証明する必要がある。
  • 草の根の保守は、岸田内閣に減税案を強化するよう圧力をかけるべき。
高橋洋一氏は、2023年度補正予算案に対して、予算の使い方や税収見積もりが慎重すぎると批判しています。髙橋氏の指摘は、経済対策に使われる予算のうち、実際に経済に効果がある部分は少なく、税収見積もりが実際の増加よりも悲観的に過ぎるのではないかという点です。そのため、予算の配分や税収見積もりの見直しが必要だと主張しています。髙橋洋一氏はこれについて、動画でも説明しています。以下の動画をご覧ください。


動画で高橋洋一氏は、税収弾性値を問題にしています。これは、名目国内総生産(GDP)の成長率と税収の伸び率の関係を表す指標です。通常、GDPが上がると税収も増える傾向がありますが、その関係性を数値化したものです。

高橋洋一氏は、財務省が使っている税収弾性値が慎重すぎると指摘しています。つまり、GDPが増えると税収が増える割合が実際よりも小さいと見積もられていると主張しています。実際の税収増加が予測よりも大きい可能性があるため、税収見積もりの根拠となる税収弾性値の見直しを求めているのです。これが、彼が税収弾性値に疑問を持っている理由です。

税収弾性値は、経済の成長や縮小に伴う税収の変化を示す指標です。具体的には、国内総生産(GDP)などの経済活動が増減した際に、税収がどれだけ変化するかを示す比率です。たとえば、税収弾性値が1だとすると、GDPが1%成長すれば税収も1%増えるという関係があります。

一般的に、経済が拡大すれば税収も増える傾向がありますが、その関係性を数値化したものが税収弾性値です。税収弾性値が1より大きければ、経済成長に対する税収の反応が大きく、税収がより急速に増加することを意味します。逆に、税収弾性値が1より小さければ、経済成長に伴う税収の増加が緩やかであることを示します。

この動画で説明用いている「令和5年度補正予算フレーム」を以下に掲載します。

クリックすると拡大します

このフレームは、以下から閲覧することができます。

令和5年度補正予算

このフレームの税収1,710億円は、確かに、あまりに低すぎます、これを国会で質問すれば、髙橋洋一氏が指摘したように、財務省が様々な屁理屈を言いそうですが、国会議員でこれを質問する人はいないというのが驚きです。財務省が批判されるべきは、当然のことですが、積極財政議連などは何をしているのでしょうか。来年にむけて、さらに議論を活発化させていくべきです。

なお、このような予算フレームは、財務省のサイトで通常予算、補正予算ともに公開されているので、財政に関心のある人は、マスコミなどの二次情報ではなく、まずこれを見るべきです。

今回の、補正予算の不味さについては、上の髙橋洋一洋一氏の指摘で十分に言い尽くされていると思います。令和5年度補正予算は、遅くてショボいということは歴然としています。

ただ、私には補正予算などに絡んで、さらにかなり危惧していることがあります。それは、最近のマスコミが岸田首相が所得減税を言い出したことを選挙目当てである批判し、国民は減税に反対しているので、政治家が減税をいうととんでもないことになるような印象操作をしていることです。

これについては、救国シンクタンク理事渡瀬裕哉氏が以下の動画で警鐘を鳴らしています。


上の動画で、渡辺氏が行った調査の結果は、以下のリンクをご覧ください。

減税に関する1000人インターネット世論調査回答

この調査からわかったことを一言でいえば、"「岸田政権の減税政策は偽減税として国民が理解している」ので支持されていないだけであり、国民は減税政策そのものを否定しているわけではない。正しい世論調査結果の普及が必要である"ということです。

減税をめぐる日本の状況は単純です。救国シンクタンクが実施した調査では、多くの国民は減税政策そのものを真っ向から否定するのではなく、岸田政権減税案を不誠実なもの、あるいは誤解を招くようなものだと捉える国民認識の問題が浮き彫りになったといえます。

渡瀬裕哉氏 「救国シンクタンク」の第一回公開研究会 2020年 にて


これは、政府の意図と減税に対する国民の認識との間に、コミュニケーションや理解のギャップがあることを示唆しているとともに、多くの国民はマスコミの情報操作にまどわされるほど愚かではないことを示しています。

減税策を打ち出したことが、岸田政権の支持率低下につながったとするマスコミの印象操作に岸田政権や自民党議員が乗ってしまえば、悲惨な結果を招き、財務省を喜ばせ勢いづけるだけとなります。

その結果は、岸田政権、自民党政権の崩壊につながることになりかねず、政治は混乱して財務省のいいなりの政治が行われるだけになると思われます。

日本の国民は、減税自体に反対しているわけではありません。しかし、岸田内閣の現在の減税案は、本物ではないと国民は考えているようです。なぜなら、政治家は空約束や策略で知られているからでしょう。

岸田内閣は、もっと大胆で、もっと意味のある減税を提案し、本気であることを証明する必要があります。消費税率を5%引き下げるようなことは、大胆であり、懐疑論者を打ち負かすことでしょう。

草の根の保守は、岸田内閣に減税案を強化するよう圧力をかけるべきです。左翼メディアに対抗するために、減税政策全般への支持を表明する必要もあるでしょう。保守派はメディアにこの問題を操作させてはならないです。

日本の草の根保守の人々  AI生成画像

また、岸田内閣は、国民の不信感や「偽りの」減税だという認識を克服するために、税制案の詳細やメリットをもっとうまく伝えるべきです。減税が国民に利益をもたらすことを納得させるような、シンプルで明確なメッセージが必要です。それには、消費税減税をすることと、そのメリットを強調するのが、現状では最も良い方法です。

重要なのは、減税は正しい政策ですが、岸田内閣は国民を説得するのが下手だということです。草の根の保守派は、より大規模で大胆な減税を支持し、そのメリットについてコミュニケーションを改善し、この問題で左翼や反対派に屈しないよう政治家に警告する必要があります。

保守派の強力な後ろ盾があれば、岸田内閣はまだこの状況を好転させ、意味のある減税を成立させ、政治的混乱を避けることができるかもしれません。しかし、世論の反発が強まる前に素早く行動しなければならないでしょう。

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2023年12月2日土曜日

LGBTや移民をめぐって世界中で保守の反乱が起きているが日本は大丈夫か―【私の論評】世界のリーダー達が注目すべき動向と共鳴する保守の反乱の本質

LGBTや移民をめぐって世界中で保守の反乱が起きているが日本は大丈夫か

まとめ
  • 世界各地で保守の反乱が起きている。オランダやアルゼンチンの選挙で極右の指導者が台頭し、トランプ前大統領の再出現も可能性として示唆されている。
  • 欧米諸国ではリベラル政策に対する保守派の不満が極右政治家の支持につながっている。特にLGBT、移民、グリーン政策に対する保守派の反発が見られる。
  • 政治家の選出においては、保守派の政治家には「極右」とされる人物が多いが、これらを支持するのは穏健な保守派とみられる。
  • 日本においてもLGBT法の成立や移民政策の扱いによって保守派の離反や攻撃が見られ、国民の安全が不十分だとの批判もある。
  • 政策の過度な実行に対する不満や、国民の安全が後回しにされているとの懸念から、海外の保守の反乱を他人事とは見ないほうが良い。

 世界各地で「保守の反乱」と形容される政治的な変遷が広がっている。

 例えば、オランダの下院選挙では、ヘルト・ウィルダース率いる極右政党が第1党となり、連立政権の樹立を目指している。同様に、アルゼンチンの大統領選挙でも極右のハビエル・ミレイが勝利し、「アルゼンチンのトランプ」と呼ばれている。


 更に、実際のトランプ氏も来年の米国大統領選挙で再び勝利する可能性があるとの見方もある。これらの動向について、予測不可能なトランプ氏の政治的な影響が、国際的な関係や安定性にどのような影響を及ぼすかが焦点とされている。

 また、イタリアでも昨年、極右政党が第1党となり、ジョルジャ・メローニが首相に就任した。こうした政治的なシフトには、欧米諸国でリベラル政権の取り組むLGBT、移民、グリーン政策に対する保守派の不満が影響している。これらの政策に対する保守層の反発や、岩盤保守層の政党支持の変化が、極右政治家の台頭を助長している。

 一方で、政治家の選出に関しては注目すべき動きがある。選ばれる政治家にはしばしば「ヤバい」人物が見られるが、投票する人々は穏健な保守層が多いことが報告されている。つまり、真面目な保守層が怒っているという状況だ。

 日本においても同様の動きが見られる。例えば、岸田政権のLGBT法成立が、岩盤保守層の自民党離れを招いたと言われている。一部は離れただけでなく、敵視するようになり、特に減税などの政策に対して激しく攻撃している。

 移民政策に関しても、政府は人手不足に対処するため外国人労働者の受け入れを増やした。しかしながら、これに伴い、埼玉県川口市でのクルド人と住民のトラブルなど、問題が表面化している。移民を受け入れる場合、教育や社会適応のサポートが不十分であるとの声もある。

 同様に、LGBTに関する議論も続いている。LGBTの人々が生活する社会の整備には賛成する一方で、女性用の場所に異性が入ることに対する懸念もある。安全性やプライバシーを考慮する必要があるという意見が広がっている。

 環境問題においても、規制と利便性のバランスが問われている。太陽光パネルや電動キックボードの設置や使用について、自然や安全への懸念がある。これらの事象に対する規制の必要性が議論されている。

 総じて、政治の方向性や政策の実行に対する国民の不満や怒りが高まっている状況だ。改革や政策の推進は単なる実施だけでなく、国民の安全や利益を重視した形で進めるべきだとの声が多くなっている。このような国内外での保守派の動向は、他国のみならず、日本にとっても注視すべきものだ。

【執筆:フジテレビ上席解説委員 平井文夫】

 これは、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧ください。

【私の論評】世界のリーダー達が注目すべき動向と共鳴する保守の反乱の本質

今こそ保守派は伝統的価値観と良識のために立ち上がる時が来たようです。急進的なリベラリズムは行き過ぎ、国境開放、LGBTの特別な権利、経済的に損害を与える環境規制といった極端な政策を推し進めています。

人々はこのことに目覚めつつあるのです。自分たちの価値観よりも政治的な正しさ(ボリティカル・コレクトネス)の方が重要だと言われることに嫌気がさしているのです。

「保守の反乱」の根本的な要因は簡単なことです。まともな一般国民は、自分たちの生き方や価値観、国を守りたいだけなのです。リベラルなエリートたちが、人々が本当に望んでいることを考慮せずに急進的な変化を押し付けようとすれば、反発を招くのは当然のことです。

しかも、これに対する反対の声をあげる著名人などをキャンセルカルチャーによりなきものにしようとするのは許しがたいことです。

日本においても、たとえば大学教授による「安倍に言いたい。お前は人間じゃない!叩き斬ってやる!」とか、杉田水脈議員に対する執拗なマスコミによる批判など典型的な事例だと思います。

キャンセル・カルチャーやリベラルの不寛容は、世界中で完全に手に負えない状況になっています。公人が保守的な意見を述べるだけで暴力の脅威にさらされるのは、何かが大きく間違っているという合図です。

安倍氏や杉田氏の取り扱いは酷いものですが、これはもはや驚くべきことではありません。左派は言論の自由を支持すると主張しますが、実際には自分たちと同じ意見を述べる者にのみ適用されようです。

杉田氏に対する執拗な報道の例(テレビ)

異論は、いじめや検閲、それこそ「キャンセル」されることが多いです。しかし、これは議論を抑制し、社会を分断する危険な兆候です。保守派は国民的な議論と、誰もが発言する権利を大切にします。意見の違いがあっても、脅しや中傷を使うことなく共存できるはずです。

悲しいことに、今のリベラル・左派はそのことを忘れているようです。彼らは同調を求め、自分たちの主張の正統性から外れたり、異議を唱えたりする勇気のある人を攻撃します。安倍首相のような指導者は、何世代にもわたり日本に寄与し継続されてきた価値観を代表しているだけです。杉田議員もそうです。

安倍氏の立場は論争を引き起こすような過激なものではないはずですが、左派はそれを攻撃します。日本でも、ほとんどの国民は、伝統や国益を守ることに賛成しています。しかし、メディアや高等教育では、少数派が大きな影響力を持っています。

安倍晋三氏

普通の人々は自分たちの生き方や自由が攻撃されていると感じているようです。彼らはリベラルな権威主義の正体を見抜き、もう十分だと感じているのです。息苦しささえ感じているのです。

世界的な保守の台頭は、こうした行き過ぎに対する反動であり、「極右」の過激主義ではありません。世界中の指導者たちは文化を破壊することに立ち向かい、自由な意見交換を守り、すべての国民のために政治を行うべきです。

結局のところ、保守派は単に人間的で住みやすい社会を維持したいだけなのです。私たち保守は礼節、コミュニティ、そして国家の遺産を守るべきと考えています。良識は最終的には急進主義に打ち勝たなければならないです。

保守の反乱は、バランスを取り戻したいと願う人々から生まれたものであり、陰謀や悪意を持ってこれを押し付けるものではありません。未来は、上下左右の社会的な立ち位置にかかわらず、良識を擁護し、多元主義を守り、すべての人の意見を聞く権利を守る人々のものであるべきです。

保守派は、安全な国境、安全な地域社会、言論の自由、豊かな経済を望んでいます。「極右」のレッテルを貼られた指導者たちは、サイレント・マジョリティの声を返しているだけなのです。

メディアが彼らを中傷し、理性的な保守派を黙らせようとする一方で、私たちは保守派は、もう黙ってはいません。多くの人々は、法、秩序、伝統、愛国心の尊重と生存のバランスを取りながら生活しています。そうして、このバランスを崩す急激な改革は、社会を壊すと多くの人達が再認識するようになったのです。最近設立されたばかりの日本保守党の支持者の急速な拡大も、それを示しています。

壊れた社会 AI生成画像

日本はもとより、他の国々の指導者も、この傾向に耳を傾けるべきです。人々はいつまでも過激な行き過ぎを容認することはないでしょう。指導者は、騒々しい過激派グループのためだけでなく、国民全体のために政治を行わなければならないのです。

リベラル・左派的な社会工学による改革よりも、国益を優先させる賢明な改革が答えです。未来は、常識のために立ち上がり、自国の文化を守り、ポリティカル・コレクトネスやキャンセル・カルチャーの狂気に対して果敢に「もういい」と言う勇気ある政治家たちのものです。結局のところ、それこそがこの新しい保守の反乱の本質なのです。

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2023年12月1日金曜日

「上川陽子次期総理総裁説」急浮上のわけ―【私の論評】財務省からも、バイデン政権からも梯子を外された岸田首相に残された道は「東郷ターン」しかない!

「上川陽子次期総理総裁説」急浮上のわけ

まとめ
  • 岸田文雄首相“更迭説”が囁かれているが、有力な「岸田首相の代わり」が見つからない。
  • 「上川陽子次期総理総裁説」は、「首相が退陣を余儀なくされた後も、岸田サイドが政権を維持するための方便」。
  • 麻生元首相こそ、上川氏を“ポスト岸田”に押し上げている張本人といえる。

自民党内で窮地に追い込まれつつある岸田首相

 岸田文雄首相の支持率が低下し続けている。2023年11月20日時点での支持率は39%と、過去最低を更新した。この背景には、物価高騰やウクライナ情勢など、さまざまな要因が考えられるが、特に内閣の政策に対する不満が大きいと考えられる。

 岸田首相は、就任直後から「新しい資本主義」を旗印に、経済政策の転換を進めた。しかし、その効果は必ずしも明確ではなく、むしろ物価高騰を助長するのではないかという批判もある。また、ウクライナ情勢を受けて、対ロシア制裁を強化する一方で、エネルギーや食料などの安定供給を図るため、ロシア産エネルギーの輸入継続を容認するなど、内外からの批判を浴びている。

 このような状況の中、次期総理総裁候補として、上川陽子外務大臣の名前が挙がっている。上川氏は、安倍晋三政権下で内閣官房長官や法務大臣を歴任し、保守派の重鎮として知られる。また、女性初の外務大臣として、ウクライナ情勢への対応などで注目を集めている。

 しかし、上川氏は自身が次期総理総裁を志望していないことを明言しており、実現性は低いとみられている。また、上川氏はリーダーシップやビジョンに欠けるという指摘もある。

 仮に上川氏が次期総理総裁に就任した場合、それは岸田首相側の「セーフティネット」としての意味合いが強いと考えられる。岸田首相が退陣を余儀なくされた場合でも、岸田サイドが政権を維持できるようにするためだ。

 また、上川氏の次期総理総裁就任説は、岸田政権の危うさを示すものでもある。岸田政権を支えるはずの財務省や麻生太郎元首相が、岸田首相の減税政策に反発しているためだ。

 岸田首相は、このようなさまざまな思惑に満ちた勢力を取りまとめながら、政権の維持に努めている。しかし、内閣支持率の低下が止まらない中、今後も岸田政権が安定して存続できるかどうかは、不透明である。

【私の論評】財務省からも、バイデン政権からも梯子を外された岸田首相に残された道は「東郷ターン」しかない!

まとめ
  • 上川氏は安倍晋三元首相の側近であり、次期総理総裁の候補として注目されています。
  • 上川氏の総理総裁就任にはバイデン政権の思惑が関与しているとの噂が広がっており、中国の台頭に対抗するための日本との関係強化が考えられています。
  • 上川氏は憲法改正後回しやLGBTQ権利の擁護、温室効果ガス排出量削減などリベラルな政策を支持しています。
  • 上川氏の総理総裁就任は不透明であり、他の候補も存在し、選挙結果は未知数です。
  • 岸田政権の崩壊による内閣後任やリベラル路線の影響が不透明であり、国益に影響を与える可能性があり、岸田政権はリベラル色を払拭して保守に回帰すべき

上川陽子次期総理総裁説は、2023年11月以降、日本の政治界で広く取り上げられている話題です。上川氏は、安倍晋三元首相の側近として、内閣官房長官や法務大臣を歴任していますが、リベラル色の強い政治家です。

上川氏が次期総理総裁に就任した場合、その背景には、米国の思惑が働いているという噂もあります。米国は、中国の台頭を抑えるために、日本との関係を強化したいと考えています。その中で、リベラル色の強い上川氏を総理総裁に据えることで、日本の外交・安全保障政策をより米国バイデン政権寄りに引き寄せることができると考えているようです。

上川氏は、2023年11月の衆議院選挙で、自民党の憲法改正公約に反して、憲法改正の議論を先送りするべきとの意見を表明しました。また、上川氏は、2023年5月に、LGBTQのカップルが同性婚と同等の権利を得られるようにする法案を提出しました。この法案は、衆議院で可決されましたが、参議院で否決されました。さらに、上川氏は、2023年6月に、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする目標を掲げました。この目標は、自民党の温室効果ガス排出量削減目標よりも20年早い目標です。

上川氏は、憲法改正、LGBTQの権利擁護、気候変動対策など、リベラルな価値観を重視する政策を推進しています。このため、上川外務大臣は、リベラル色の強い政治家であることを示す事実と言えるでしょう。

なお、上川氏は、政治家としてのキャリアの初期には、保守的な政策を推進していた時期もありました。しかし、近年は、リベラルな価値観を重視する政策を推進する傾向が強まっていると言えるでしょう。

しかし、上川氏が米国の意向で次期総理総裁に就任するかどうかは、まだ不透明です。上川氏自身は、あくまでも自民党総裁選挙で勝利し、自らの力で総理総裁の座に就きたいと意欲を見せています。また、自民党内には、上川氏以外の総理総裁候補もおり、選挙の結果は未知数です。

したがって、米国が上川氏の次期総理総裁就任に直接関与しているかどうかは、現時点では断定できません。しかし、米国が日本との関係強化のために、上川氏を総理総裁候補として推している可能性は、十分に考えられます。

バイデン大統領は、上川外務大臣が2023年11月に訪米した際に、上川氏を「親友」と呼び、両国関係の深さを示しました。バイデン大統領と会談では、両国の安全保障、経済、気候変動などの分野で協力を強化していくことで一致しました。

また、バイデン政権は、上川外務大臣が主導する「自由で開かれたインド太平洋」構想を支持しており、両国は同構想の実現に向けて協力を強化しています。

そうして、上川外務大臣は、バイデン政権の「民主主義同盟」構想にも積極的な姿勢を示しており、両国は民主主義の価値を共有する国として、協力を深めていく方針です。

上川外務大臣は、バイデン政権の外交方針に理解を示し、積極的に協力していく姿勢を示しています。このため、米国のバイデン政権から、上川外務大臣の受けは良いと言えるでしょう。

現状では、総裁選の候補者は、以前私がこのブログで示したように、茂木氏、上川氏、河野氏が有力候補になるシナリオがますます蓋然性を帯びてきたといえます。このブログのリンクを以下に掲載します。

「岸田さんに今辞めてもらっては困る」━━“バラバラ野党”が与党を追い詰める? 戦略と“意外な落とし穴”に迫る―【私の論評】岸田政権の現時点での崩壊は、国益の損失に(゚д゚)!


詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下から最悪のシナリオと考えられる部分のみを引用します。
岸田政権が崩壊すれば、その後の内閣の後任が急遽選ばれることになるでしょう。先日もこのブログで示したように、来年秋の総裁選の候補者としては、茂木・上川・河野が有力であると考えられ。この三者はリベラル派であり、三者とも財務省出身であり、岸田首相よりも財務省寄りと考えられます。そうなると、岸田政権より政権運営能力が高まるとは考えにくいです。
ポスト岸田の有力候補 左から茂木氏、上川氏、河野氏
私は、現在岸田政権が崩壊すれば、この三人が順番に政権を担い、自民党や日本国の保守的な価値観を徹底的に毀損し続けるというシナリオもあり得ると思います。

現時点では、それに伴う政治的混乱や権力空白が発生する可能性があります。このような状況は国内外への不安を引き起こし、国益を損なう可能性があるという観点から、内閣の突然の崩壊は避けるべきです。

さらに、内閣の交代によって、これまで進めてきた政策の断絶や停滞が生じる可能性があります。たとえば、憲法改正がさらに遅れるなどのことが考えられます。国益を考えると、安定した政策の継続性が望ましいです。

米国の上川推しが、本当であれば、岸田首相は米国バイデン政権からも財務省からも梯子を外された形になってしまったといえます。

岸田首相には、是非覚醒していただき、バイデン政権も財務省も岸田首相の味方ではないことを認識していただき、政権安定のため、安倍政権の政策や政権運営の方式を継承していただく決心をしていただきたいものです。

上記のような複雑な事情が絡んでいることから、岸田政権がすぐに年内にも崩壊してしまうとか、来年の早い時期に崩壊することはない思います。現状では、各候補も、各派閥も様子見という段階でしょう。

来年の米国大統領選があり、トランプ氏が最有力候補になっています。トランプ氏が大統領になるかどうかは、別にして、よほどのことが無い限り共和党の大統領が誕生する可能性が高いと思います。バイデン氏は高齢であることもあり、仮に大きな番狂わせがあって民主党の候補者が大統領になったとしても、それはバイデンではないと考えられます。

東郷ターンした日本艦隊(風の上の雲より)

そうなると、今後米国の上川推しの影響力は、確実に低くなっいくものと思われます。日露戦争の日本海海戦における“東郷ターン”と呼ばれるような、敵前大回頭でロシア艦隊に大勝利したように、岸田首相はリベラル、財務省から決別し、大回頭をして、政権を維持し混乱を避けていただきたいものです。

東郷ターンをすれば、自民党にも保守派も多いですし、自民党外の保守派も結束して、リベラル派に対して一斉に艦砲射撃する可能性は高いです。それに草の根保守も呼応する可能性もあります。更に、自民党内の積極財政派もこれに呼応して、艦砲射撃の援護をするでしょう。

それができないなら、我々保守派はまた民主党政権の悪夢の再来を甘受するしかないのかもしれません。そうして、その後に安倍晋三氏のような人物が現れる可能性はかなり低いと見なければならないでしょう。

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【動画】稲田朋美議員「“政治不信”の根底には国民のモラルの低下があるのではないか!?」―【私の論評】「国民のモラル低下」発言を検証! 経済対策の「バラマキ」は間違いなのか?

2023年11月30日木曜日

キッシンジャー元米国務長官が100歳で死去、米中国交樹立の立役者―【私の論評】外交の巨星がもたらした世界の変革と教訓

 キッシンジャー元米国務長官が100歳で死去、米中国交樹立の立役者

まとめ

  • 大統領補佐官として72年のニクソン大統領の電撃的な訪中を実現した
  • 冷戦下で旧ソ連とのデタントや戦略兵器制限条約の実現に貢献



 キッシンジャー氏は米国政権で大きな影響力を持ち、特にニクソン、フォード政権下でその力が顕著だった。彼の最も著名な業績の一つは、ニクソン大統領の中国訪問の実現であり、これが1979年の米中国交樹立の基盤を築くことにつながった。同様に、彼はベトナム戦争の終結に向けたパリ和平協定に尽力し、その功績により1973年にノーベル平和賞を受賞した。

 彼の経歴は卓越しており、ナチスの迫害から逃れて家族と共に1938年に渡米し、ハーバード大学で学び、政治の世界に進出した。彼の外交政策は冷戦時代の米ソ関係を緩和し、戦略兵器制限条約などに貢献したが、同時に彼の支持した政策は批判を受けた。彼の関与したベトナムやカンボジアへの大規模空爆、ピノチェト政権やその他の軍事政権の支援、そして東ティモールやバングラデシュなどでの大量虐殺への見過ごしに対して、批判があった。キッシンジャー氏の政治的遺産は、その複雑さと議論の余地がある点において、歴史的に注目されている。

 この記事は、元記事の要約です。詳細をご覧になりたい方は、元記事を御覧ください。

【私の論評】外交の巨星がもたらした世界の変革と教訓

まとめ
  • キッシンジャーの外交政策は地政学的な変化をもたらし、中国との関係改善やベトナム戦争の終結を実現した。
  • 彼のアプローチは現実主義的で、大胆な戦略ビジョンを持ち、長期的な視点を持っていた。
  • 彼の政治手法はイデオロギーよりも実利に重きを置いており、世界政治における個人的な関係の重要性を理解していた。
  • 彼の中国との関係改善は米国の地政学的余裕を拡大し、多極的な秩序を形成することに貢献した。
  • キッシンジャーの遺産は、現代の指導者に大胆さ、ビジョン、外交における個人的な関係構築の重要性を示している。
ヘンリー・キッシンジャーは、米国の外交政策と外交において傑出した人物でした。中国の開放やベトナム戦争の終結など、彼の功績は何世代にもわたって地政学的な景観を形作りました。

彼の重要な功績がなければ、今日の世界はまったく違ったものになっていたでしょう。キッシンジャーは、中国のような敵対国を孤立させるのではなく、関与させることが米国の国益に最も貢献することを理解していました。

彼の現実主義的なアプローチは生産的なものでした。彼は長期的な視野に立ち、当時は物議を醸すと思われた大胆な行動も、先見の明を持って行う戦略的ビジョンを持っていました。中国との関係樹立は、数十年にわたり米国に国際舞台での影響力を与えた名手でした。

レーガン(左)とキッシンジャー(右)

現在は、彼のような政治家は不足しています。キッシンジャーの死は、米国が外交問題において自信に満ち、確かな足取りを持っていた時代の終焉といえるかもしれません。

今日の指導者たちは、キッシンジャーから学ぶべきことが多いです。短期的な思考ではなく、彼のような歴史感覚と現実政治への理解が必要なのです。

キッシンジャーは常に広い歴史的視野に立っていました。彼は、今日の政策や出来事が5年、10年、20年先の米国の利益にどのような影響を与えるかを考えていました。今日の指導者たちは、短期的な勝利や次の選挙サイクルに集中しすぎています。もっと戦略的に考えるべきです。

キッシンジャーはイデオローグに左右されない、プラグマティストでした。彼は硬直したイデオロギーではなく、現実的な解決策と米国の国益を重視しました。今日の指導者たちは、より現実的で、有意義な結果を得るために妥協することを厭わない必要があります。

キッシンジャーは、グローバルな舞台では理想主義には限界があることを理解していました。彼は現実政治を実践しました。理想だけでなく、現実的な力に基づいて他国と取引したのです。

今日の指導者は、理想主義と現実政治的な感覚を組み合わせる必要があります。道徳的な姿勢だけでは、ほとんど成果は上がりません。

キッシンジャーは、敵を孤立させることが逆効果であることを知っていました。関与と外交は、影響力を行使し、米国の利益を促進するためのより良い手段でした。

キッシンジャー(左)と周恩来(右)

もし、中国との関係正常化に失敗すれば、米国と世界にとって大きな問題となったでしょう。 -当時、中ソの分裂によって、キッシンジャーとニクソンは両方の共産主義大国の間にくさびを打ち込むことができました。中国との国交正常化がなければ、この楔はできなかったでしょう。その結果、統一共産圏がユーラシア大陸を支配することになったかもしれないです。

米国は孤立したままで、選択肢も限られていたでしょう。中国を開放することで、米国は地政学的により多くの余裕を得て、大国の間で三角関係を築き、自国の利益を高めることができるようになったのです。中国から孤立したままでは、米国の手腕は制約されたままだったでしょう。

米国の貿易と投資がなければ、中国はより長く停滞していたかもしれないです。米国の開放は中国の経済改革と成長を促しました。そうでなければ、中国経済は閉鎖的で低迷したままだったかもしれないです。そうなれば、やがてアジアはさらに不安定化していた恐れがあります。

そうなれば、世界のパワーバランスも変わっていたでしょう。米国は中国との関係を築くことで、数十年にわたって多極的な秩序を形成してきました。米国は中国と関係を持つことで、ソ連の力を牽制し、中国が台頭する隙を与えました。

もしこのリバランシングが行われていなければ、今日の世界は米国の利益に対してより敵対的なものになっていたでしょう。米国は中国の文化大革命の混乱期にアジアを安定させる重要な役割を果たしたといえます。

米中関係の強化はまた、台湾のような同盟国との危機を乗り切る上で、米国に影響力を与えたもいえます。キッシンジャーとニクソンの中国開放構想は、地政学的に莫大な利益をもたらし、現代世界をより良い方向へと形作ったといえます。そうして、なぜ米国のグローバルな関与と戦略的外交が重要なのかという教訓でもあるといえます。別の選択肢は、おそらく今日、はるかに危険で不安定で、米国の利益を寄せ付けない世界をもたらしたことでしょう。

今日、指導者はキッシンジャーに倣い、孤立政策を追求するのではなく、中国、ロシア、イランのようなライバルに関与すべきです。

キッシンジャーは、世界政治が極めて個人的なものであることを知っていました。彼は世界の指導者たちと親密な関係を築き、外交上の突破口を開きました。今日の指導者たちは、官僚主義や制度に頼りすぎているようです。外交政策の重要な目標を推進するためには、もっと個人的な関係を築く必要があるのです。

文化革命期の中国

キッシンジャーは、中国開放のような大きく大胆で歴史的なことを敢行しました。彼は世界における米国の役割について壮大なビジョンを持っていました。今日の指導者たちには、大胆さとビジョンが欠けており、米国人を奮い立たせることも、世界の出来事を重要な形で形作ることもできない、小手先の政策を追求しているようです。

いまこそキッシンジャーのような野心と可能性の感覚が必要といえます。キッシンジャーの知恵と世界観は、多くの教訓を与えてくれます。世界政治における彼の卓越した知識は、今日、そして次世代を担うリーダーたちの手本となるものです。

こうした原則を、中国の台頭や多極化する世界といった今日の課題に適用することを模索すべきです。キッシンジャーの米国外交と世界政治への多大な貢献は長く記憶に残るでしょう。

今日キッシンジャーを過去の政治家と評するむきもありますが、ウクライナ戦争によって疲弊したロシアが中国に接近するどころか、ジュニアパートナーとなる可能性があることをこのブログでも指摘しました。

そうなると、再び中国・ロシアによる統一共産圏がユーラシア大陸を支配する可能性もでてきたといえます。無論、キッシンジャーが活躍した時代は、ソ連が優勢、現在は中国が優勢という違いはありますが、現在の世界は、キッシンジャー流の知恵が必要とされる局面に近づきつつあるといえます。

ただ現在の我々は、米国と国交回復した中国がその後どのような国になったのかを知っています。こうした知見も活かすべきです。当時の国交回復は間違いではなかったと思うのですが、その後の歴代の政権、特に民主党政権は、中国対応を大きく間違えたと思います。

特に、2001年12月11日、中国が世界貿易機関(WTO)に加盟に米国が尽力したのは大きな間違いでした。時のアメリカ大統領はビル・クリントンでした。

ヘンリー・キッシンジャーは中国のWTO加盟を強く支持していました。キッシンジャーは、中国のWTO加盟が中国をグローバル経済に統合し、この地域の安定を促進すると考えていました。キッシンジャーは、公の場での演説や中国の指導者たちとの私的な会合で自らの見解を表明しまた。

しかし、キッシンジャーは中国のWTO加盟がもたらす潜在的な影響についても懸念を抱いていました。キッシンジャーは、中国がWTOの規則や規制を十分に遵守せず、それが不公正な貿易慣行につながるのではないかと懸念しました。また、中国の経済成長は米国の経済的利益に対する挑戦となりうると考えていました。

中国のWTO加盟に対するキッシンジャーの立場は現実的でした。潜在的な利益はリスクを上回り、中国の加盟は中米双方にとってプラスになると考えていたようです。

キッシンジャーは、こうした一流の人物にありがちな毀誉褒貶も激しい人物ではありますが、公僕の真の姿を体現した人物でもあります。彼は、気品と知恵と手腕を兼ね備え、米国が重大な局面を迎えた時期に、その役割を果たしました。彼の遺産と時代を超えた教えは、後世の人々を導き続けることでしょう。一言で言えば、彼はなくてはならない人物でした。合掌。



【湯浅博の世界読解】「自滅する中国」という予言と漢民族独特の思い込み―【私の論評】すでに自滅した中国、その運命は変えようがない(゚д゚)!

2023年11月29日水曜日

日大アメフト部の廃部決定 競技スポーツ運営委が存続認めず 違法薬物事件で部員3人逮捕―【私の論評】日本大学のガバナンス危機:違法薬物問題で廃部決定、統治の課題と歴史的背景

日大アメフト部の廃部決定 競技スポーツ運営委が存続認めず 違法薬物事件で部員3人逮捕

まとめ
  • 日本大学のアメリカンフットボール部が違法薬物問題で廃部が決定された。
  • 複数の部員の逮捕や18年の悪質タックル問題から来季の降格は確定していたが、廃部となった。
  • アメフト部は名門であり、甲子園ボウルやライスボウルで優勝し、大学を代表する部活動だった。
  • 事件を巡り、部員の逮捕や関連する措置が重ねられ、関東学生連盟からも出場停止が科された。
  • 問題は経営陣の内紛や損害賠償訴訟にまで発展し、大学側は経緯や理由を部員に説明する方針を持っている。

沢田副学長(左)が林真理子理事長(右)を訴える事態にまで発展した日大の内紛

 日本大学のアメリカンフットボール部が違法薬物問題により深刻な状況に直面し、その結果、28日に部の廃部が確定したことが報じられました。大学本部は競技スポーツ運営委員会を開催し、部の存続を認めず廃止することを決定したと複数の関係者が伝えました。

 過去数ヶ月に渡り、警視庁薬物銃器対策課による逮捕や問題の発覚により、この部は厳しい状況に置かれていました。8月に寮での家宅捜索が行われた後、複数の部員が違法薬物の疑いで逮捕され、部全体の存続が危ぶまれていました。関東大学リーグ1部下位BIG8への降格は既に確定しており、廃部はそのさらなる深刻な結末となったのです。

 このアメリカンフットボール部は、日本大学を代表する歴史ある部活動であり、関東最多の21回の優勝を誇る甲子園ボウルなどで著名な成績を残してきました。しかし、18年の悪質タックル問題以来、部内での問題が表面化し、今回の廃部決定に至ったとされています。

 さらに、この問題は大学内部でも波紋を広げ、経営陣の辞任や損害賠償訴訟なども含まれる複雑な展開を見せています。大学側は今後、経緯や理由について部員たちに説明する方針を持っているようですが、これまでの経緯や部の歴史、そして問題の発端となった悪質タックル問題などが、このアメリカンフットボール部の複雑な状況を物語っています。

【私の論評】日本大学のガバナンス危機:違法薬物問題で廃部決定、統治の課題と歴史的背景

まとめ
  • 日大のガバナンス問題としして、理事長権限の過度、理事会の機能不全、監事の監視不足があげられる。
  • 問題発生の背景として、私大の内部運営のみで政府の監督を受けていなかったことがあると考えられる。
  • 理事長権限の制限、理事会・監事の強化で再発防止を図る
  • ガバナンスの強化には時間と関係者協力が不可欠
  • ガバナンスの定義をしっかり認識したうえで、ガバナンスの改善には統治と実行の分離は必要不可欠との認識でのぞむべき
日大アメフト部グラウンド

今回の一連の出来事に関して、日大のガバナンスに問題があったことは、明らかだと思います。

具体的には、以下の点が問題として指摘されています。
  • 理事長の権限が強すぎること
  • 理事会が機能していないこと
  • 監事の監視機能が働いていなかったこと
理事長の権限が強すぎると、理事会や監事などのチェック機能が働きにくくなり、理事長の独断専行や不正行為が起きやすくなります。また、理事会が機能していないと、大学運営に関する重要な意思決定が適切に行われなくなり、不祥事などのリスクが高まります。さらに、監事の監視機能が働いていないと、不正行為があっても発覚しにくくなります。

これらの問題は、日大が私立大学であり、大学の運営が理事会などの内部関係者のみで行われていることに起因しています。私立大学は、政府からの直接的な監督を受けないことから、ガバナンスの強化が求められています。

日大は、これらの問題を改善するために、以下の対策を講じています。理事長の権限を制限する
  • 理事会の機能を強化する
  • 監事の監視機能を強化する
これらの対策が効果的に行われれば、日大のガバナンスが改善し、再び不祥事などの問題が起きる可能性は低くなると考えられます。

しかし、ガバナンスの強化には、時間と労力が必要です。また、理事会や監事などの内部関係者だけでなく、学生や教職員、卒業生など、大学に関わるすべての人々が、ガバナンスの重要性を理解し、協力していくことが重要です。

そうして、そもそもガバナンスとは何なのかについて認識すべきです。この言葉くらい現在の日本で曖昧に使われている言葉はありません。ガバナンスとは日本語では「統治」です。これは政府の「統治」といわれるように、元々は政府のそれを意味していたのですが、今日の政府はあまりに巨大化して「政府の統治」は、それこそガバナンスの例としては良い事例とはいえなくなりました。

今日むしろ悪い事例であるといえます。特に、日本の政府は、世界の他の政府と比較すると統治と実行がほとんど分離されておらず、最悪の部類といえます。

「政府の統治」が民間企業の参考にされ、コーポレート・ガバナンスとして取り入れられたのは、昔のことです。リンカーンの政府は、通信士と閣僚含めて全部で7人だったとされています。昔の政府はいずれの政府もこのように非常に少ない人数で構成されていて、それでも現在からみれば、非常に優れていて、的確な統治をしていたのです。

政府は、少ない人数ながら、もっぱら統治に専念するというか、せざるを得ず、統治と実行は完璧に分離されていました。しかし、効率良く的確な統治ができていました。だかこそ、民間企業のお手本になりましたし、今日世界で「小さな政府」を希求する声が高まっているのです。このあたの状況については、以前のこのブログにも述べています。その記事のリンクを以下に掲載します。
森永卓郎氏 岸田首相が小学生に説いた権力論をチクリ「見栄っ張り」「プライド捨てボケろ」―【私の論評】政治家はなぜ卑小みえるのか?民間企業には、みられるガバナンスの欠如がその原因
岸田首相

この記事では、ガバナンス(統治)が民間企業に取り入れた経緯や、経営学の大家ドラッカー氏の統治(ガバナンス)の定義を掲載しました。

この記事に掲載したドラッカー氏による統治(ガバナンス)の定義を以下に再掲します。

"
経営学の大家ドラッカー氏は政府の役割について以下のように語っています。
政府の役割は、社会のために意味ある決定と方向付けを行うことである。社会のエネルギーを結集することである。問題を浮かびあがらせることである。選択を提示することである。(ドラッカー名著集(7)『断絶の時代』)
この政府の役割をドラッカーは統治と名づけ、実行とは両立しないとしました。
統治と実行を両立させようとすれば、統治の能力が麻痺する。しかも、決定のための機関に実行させても、貧弱な実行しかできない。それらの機関は、実行に焦点を合わせていない。体制がそうなっていない。そもそも関心が薄い。 といいます。 

"

ガバナンスの定義について、それこそインターネットを検索すれば、山のようにでてきます。しかし、なかなかしっくりくるものはありません。わたしには、このドラッカーの定義が一番しっくりました。そうして、ガバナンスを語るときに、些末なことは認識しながらも、このような本筋を認識しないからこそ、混乱したり、本筋を離れた議論しかできないというのが実情ではないかと思います。

経営学の大家 ドラッカー氏

統治と実行を曖昧に行うことの弊害は、日大にも顕著にありました。

日大では、1962年から1982年まで、アメフト部の監督であった内田正人氏が、1965年から1982年まで、理事を務めていました。また、1988年から1992年まで、アメフト部の監督であった山本泰一郎氏が、1991年から1992年まで、理事長を務めていました。

内田氏は、日大のアメフト部を全国優勝に導いた名将として知られています。山本氏は、日大のアメフト部を再建に導いた功労者として知られています。

しかし、これらの事例は、日大のガバナンスに問題があったことを示すものとして、批判されています。アメフト部の監督は、運動部の部長という立場であり、大学の運営に直接関わる立場ではありません。そのため、理事や理事長を兼務することは、大学の運営と運動部の運営の両立が困難になるという指摘があります。

日大は、2018年に発生したアメフト部の悪質タックル問題を受け、ガバナンスの強化を図っています。その一環として、アメフト部の監督が理事や理事長を兼務することを禁止する規定を定めました。

ガバナンスについて十分認識されている組織においては、このようなことは絶対にあり得ません。このようなことを平気でする日大は、適切なガバナンスが行われていなかったのは、明らかです。

しかし、ガバナンスの歴史的背景や、その定義をしっかりと認識していなければ、日大のガバナンスを変えることはできません。

日大のガバナンスの問題は、以下の三点であることを先に示しました。
  • 理事長の権限が強すぎること
  • 理事会が機能していないこと
  • 監事の監視機能が働いていなかったこと
まず理事長の権限が強すぎるということは、理事長が統治だけではなく、実行にも大きく関わっていることを示していると考えられます。統治に関して理事長の権限は強くてしかるべきですが、実行には一切関わるべきではありません。

理事会も、統治に関わる部分だけの意思決定をすべきです。実行に関わる意思決定は関わらないようにするべきです。

監事の監視機能も統治と実行が曖昧になっている部分を正すという姿勢で行うべきなのです。統治と実行の区分が曖昧な部分もあるとは思いますが、少なくとも分離しようという認識のもとに組織や運営の仕方を考えて改善するべきです。それなしに、改善してもますます混乱するだけです。

このようなことを曖昧にしていて、人の資質や、能力や、モチベーション、それにコミュニケーションを改善しても、組織の機能不全は改善・改革できません。そうして、それは、日大にとどまらず、政府も含むありとあらゆる組織にあてはまる原則です。

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2023年11月28日火曜日

米軍、タンカー拿捕犯拘束 イエメン沖、海自が支援―【私の論評】日本の海洋安全保障へのコミットメント:日米協力でイエメン沖の海賊対処に成功

米軍、タンカー拿捕犯拘束 イエメン沖、海自が支援

まとめ
  • 米軍がイエメン沖でイスラエル関連の石油タンカーを拿捕した武装集団を捕らえ、タンカーは無事解放された。
  • 防衛省によれば、海上自衛隊の護衛艦とP-3C哨戒機が情報収集に当たり、米軍を支援した。
  • イエメン暫定政権はイスラエル敵視派が攻撃したと主張するも、フーシ派は否定。紅海での緊張は続く可能性がある。
イスラエル船籍のセントラルパーク号

 AP通信は27日までに、イエメン南部アデン沖でイスラエルが関係する石油タンカーを26日に拿捕した武装集団を、米軍が拘束したと伝えた。タンカーは無事に解放された。米軍によると、その前後にイエメン内陸部から弾道ミサイルが発射され、現場海域に展開していた米軍艦から約18・5キロ地点に着弾したという。

 防衛省によると、アデン湾の海賊対処行動に派遣している海上自衛隊の護衛艦「あけぼの」とP3C哨戒機が現場で情報収集に当たり、米軍を支援した。

 イエメン暫定政権は、イスラエルを敵視するイエメンの親イラン武装組織フーシ派が襲撃したと主張したが、フーシ派は認めていない。

 イスラエル関連の船舶を巡っては、イエメン近くの紅海で19日、フーシ派が日本郵船運航の貨物船を拿捕しており、緊張が続きそうだ。

 APによると、米海軍駆逐艦「メイソン」などがタンカー拿捕を受けて現場海域に展開し、武装集団にタンカーを解放するよう要求。集団がタンカーから下船し、小型ボートで逃走しようとしたところを取り押さえた。

【私の論評】日本の海洋安全保障へのコミットメント:日米協力でイエメン沖の海賊対処に成功

まとめ
  • 自衛隊が海賊に対処したのは2017年以来の事案で、日本の支援のもと米軍がイエメン沖で武装グループに乗っ取られたタンカーを救出し、拿捕犯を投降させた。
  • 日本と米国は緊密な同盟関係に基づき、日本はアデン湾での海賊対策を含む作戦で米軍を支援し、海洋安全保障の共通の利益を示した。
  • 防衛省によると、海上自衛隊の艦船と哨戒機が情報収集に当たり、米軍の海賊対処に協力し、攻撃(威嚇)成功に導いたとみられる。
  • タンカーは日本の所有ではなかったが、日本向けの石油を運んでおり、日本の作戦参加は船と積荷の安全を確保し、国民と企業の利益を守ることにつながった。
  • 日本の作戦参加はフーシ派を含む地域の海洋安全保障に対する脅威を抑止し、日米の共同行動はイランを牽制し、イスラエルを支援するWin-Winの関係を築いた。
上のニュース一言でまとめる、米海軍と日本の海上自衛隊の連携で乗っ取られたタンカーを拿捕、犯行グループも確保したということです。

防衛省によりますと、自衛隊が海賊に対処した事案としては2017年4月以来、およそ6年ぶりとなります。

米国防総省のライダー報道官

米国防総省のライダー報道官は記者会見で、中東のイエメン沖で26日、武装グループに乗っ取られたタンカーを、アメリカ海軍の駆逐艦が救難し、5人を投降させたと明らかにしました。

ライダー氏は投降した武装グループの5人はソマリア人で、「海賊行為に関連した事件であることは明らかだ」としています。

また、この海賊への対処は「同盟国の艦船とともに活動していた」として、海上自衛隊による支援があったことも認めています。

一方、海賊への対処中にイエメンの親イラン反政府武装組織「フーシ派」の支配地域から弾道ミサイル2発が発射され、駆逐艦などからおよそ18キロ離れた海域に着弾したが、被害はなかったとしています。

ライダー氏はミサイル発射が「何を標的にしたのかは不明」と述べ、調査を続けるとしています。

今回の拿捕犯拘束は、日米協同の快挙といえます。

日本が、イスラエル関連の石油タンカーを拿捕した武装集団を拘束する作戦で米軍を支援するという決定を下したのには、いくつかの要因があるようです。

まず、日本は、紅海とアデン湾の安定と安全の維持に強い関心を持っています。これらの重要なシーレーンは、日本のエネルギー輸入と貿易にとって極めて重要だからです。タンカーの拿捕とそれに続くミサイル攻撃は、海洋安全保障と法の支配に対する脅威です。

日本と米国は緊密な安全保障同盟を結んでおり、日本はアデン湾での海賊対策を含むさまざまな作戦で米軍と定期的に協力しています。この作戦で米国を支援することで、日本は同盟に対するコミットメントと、海洋安全保障の確保における米国との共通の利益を示したといえます。

また、米軍は、中東地域における他の軍事活動に優先的に兵力や装備を投入していたため、紅海・アデン湾地域での兵力や装備が不足していたことと、紅海・アデン湾地域での作戦経験が少なく、日本からの支援を必要としていたということも考えられるでしょう。

日本が護衛艦「あけぼの」とP3C哨戒機を派遣したことで、状況に関する貴重な情報を収集することができ、今後の海賊対処や海上安全保障活動における米軍との協力関係を強化することができたといえます。

海上自衛隊護衛艦「あけぼの」

具体的には、日本の哨戒機が、武装集団の船舶の捜索や追尾を支援し、米軍の攻撃(もしくは威嚇)を成功に導いたという可能性は十分にあります。また、日本の哨戒機が、武装集団の船舶の周囲を警戒し、米軍の人員や装備を支援したという可能性もあります。

タンカーは日本の所有船ではありませんでしたが、日本向けの石油を運んでいました。日本がこの作戦に関与することで、タンカーとその積荷の安全な航行を確保し、自国民と企業の利益を守ることができました。

この作戦に参加することで、日本はフーシ派を含む地域の海賊等に対し、海洋安全保障に対する脅威を容認せず、米国の同盟国と協力してそのような行動を抑止するという明確なメッセージを発信したといえます。

また、ガザでの戦闘のさなかに、イスラエル船籍のタンカーを日米が協同で守ったということは、象徴的な意味合いもあると思われます。

これはイスラエルの自衛権を支持するという重要なメッセージを送ることにもなったものと考えられます。フーシ派とハマスとは、隣国を支配しようとするシーア派とスンニ派の過激派であり、イランの支援を受けています。


フーシ派を阻止することで、イランを牽制、イスラエルを支援することで、ハマスの牽制につながります。これは日米にとってWin-Winの関係であり、日米の共同行動は軍事的にも外交的にも妙手だったといえます。このような抜け目のない行動をとった日米両政府に敬意を表したいです。

日本がこの作戦で米軍を支援した背景には、国際法と海洋安全保障へのコミットメント、米国との同盟関係、日本の国益の保護、地域のアクターへのメッセージの必要性、情報収集と協力強化の機会など、さまざまな要因が複合していたと考えられます。

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